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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】スクロール圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20230622BHJP
   F04C 28/26 20060101ALI20230622BHJP
   F04C 29/04 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
F04C18/02 311X
F04C28/26 C
F04C29/04 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019095975
(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公開番号】P2020002947
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2018118938
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】新井 丈二
(72)【発明者】
【氏名】村越 康司
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 郁人
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-303858(JP,A)
【文献】特開2015-014195(JP,A)
【文献】特開2003-139077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
F04C 28/26
F04C 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧の冷媒を外部から導入する吸入ポートと、高圧の冷媒を外部へ吐出する吐出ポートと、前記低圧の冷媒と前記高圧の冷媒との間の圧力である中間圧の冷媒を外部から導入するインジェクションポートと、を有するハウジングと、
前記ハウジングへ回転可能に収容された駆動軸と、
前記ハウジングの内部において前記駆動軸の回転により旋回し、且つ前記駆動軸の軸方向から見て渦巻き状に形成された旋回側渦巻き部を有する旋回スクロールと、
前記ハウジングの内部に固定され、且つ前記旋回側渦巻き部と噛み合うことで前記旋回側渦巻き部との間に圧縮室を形成する固定側渦巻き部を有する固定スクロールと、
前記吸入ポートと前記圧縮室とを連通させる吸入流路と、
前記圧縮室と前記吐出ポートとを連通させる吐出流路と、
前記インジェクションポートと前記圧縮室とを連通させるインジェクション流路と、
前記固定スクロールに取り付けられ、且つ前記インジェクション流路を開閉可能なインジェクションバルブと、
電子制御によって前記インジェクションバルブを開閉する開閉制御部と、を備え
前記開閉制御部は、閉じている前記インジェクション流路を開く前記旋回スクロールの旋回角度と、開いている前記インジェクション流路を閉じる前記旋回角度と、を運転条件に応じて個別に変化させることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項2】
前記開閉制御部は、前記インジェクションバルブが開いている時間を変化可能であることを特徴とする請求項1に記載したスクロール圧縮機。
【請求項3】
前記開閉制御部は、前記旋回スクロールの旋回角度に応じて前記インジェクションバルブを開閉することを特徴とする請求項1または請求項2に記載したスクロール圧縮機。
【請求項4】
前記インジェクション流路のうち前記インジェクションポートと前記インジェクションバルブとの間に、前記インジェクション流路よりも断面積が大きいバッファータンクを配置したことを特徴とする請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載したスクロール圧縮機。
【請求項5】
前記インジェクションバルブの吐出口は、前記固定スクロールの前記圧縮室と対向する面に開口していることを特徴とする請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載したスクロール圧縮機。
【請求項6】
前記インジェクションバルブは、前記圧縮室に連通した連通路に向かって進退可能なプランジャを備え、前記プランジャにおける先細り形状の先端によって前記連通路を開閉することを特徴とする請求項1から請求項のうちいずれか1項に記載したスクロール圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、冷媒が循環する冷凍サイクルの一部を形成するスクロール圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
スクロール圧縮機としては、例えば、特許文献1に記載されている構成のものがある。特許文献1に記載されているスクロール圧縮機は、旋回スクロールの渦巻き部と固定スクロールの渦巻き部が互いに噛み合って圧縮室を形成している。また、固定スクロールには、インジェクションパイプを介して、インジェクション配管が接続されている。さらに、固定スクロールには、インジェクションパイプの流路(インジェクション流路)を開閉するインジェクションバルブが設けられている。そして、インジェクションバルブが閉じてインジェクションパイプの圧力が降下すると、圧縮室の圧力によってインジェクションバルブの本体(弁本体)が押し上げられる。これにより、弁本体がインジェクションパイプと接触して、インジェクション流路と圧縮室を遮断するため、圧縮室の冷媒が、インジェクション流路へ逆流することを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-14195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているスクロール圧縮機では、インジェクション流路の圧力と圧縮室の圧力との差に応じた差圧制御によって、インジェクションバルブの動作を制御しているため、機械的にインジェクション流路を開閉する構成となる。このため、旋回スクロールの回転数や圧力、温度条件によっては、最適なインジェクション量を流入させることが困難となるという問題点がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、インジェクション流路を開閉するタイミングを、電子制御により最適なタイミングに調整することが可能なスクロール圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、ハウジングと、駆動軸と、旋回スクロールと、固定スクロールと、吸入流路と、吐出流路と、インジェクション流路と、インジェクションバルブと、開閉制御部を備えるスクロール圧縮機である。ハウジングは、低圧の冷媒を外部から導入する吸入ポートと、高圧の冷媒を外部へ吐出する吐出ポートと、低圧の冷媒と高圧の冷媒との間の圧力である中間圧の冷媒を外部から導入するインジェクションポートを有する。駆動軸は、ハウジングへ回転可能に収容される。旋回スクロールは、ハウジングの内部において駆動軸の回転により旋回し、且つ駆動軸の軸方向から見て渦巻き状に形成された旋回側渦巻き部を有する。固定スクロールは、ハウジングの内部に固定され、且つ旋回側渦巻き部と噛み合うことで旋回側渦巻き部との間に圧縮室を形成する固定側渦巻き部を有する。吸入流路は、吸入ポートと圧縮室とを連通させる。吐出流路は、圧縮室と吐出ポートとを連通させる。インジェクション流路は、インジェクションポートと圧縮室とを連通させる。インジェクションバルブは、固定スクロールに取り付けられ、且つインジェクション流路を開閉可能である。開閉制御部は、電子制御によってインジェクションバルブを開閉する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、電子制御によってインジェクションバルブを開閉することで、インジェクション流路を開閉するため、インジェクション流路を開閉する応答性を向上させることが可能なスクロール圧縮機を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第一実施形態におけるスクロール圧縮機の構成を表す図である。
図2】スクロール圧縮機の動作を表すフローチャートである。
図3】旋回スクロールの旋回角度と圧縮した冷媒の圧力との関係を表すグラフである。
図4】第一実施形態の変形例を表す図である。
図5】第二実施形態におけるインジェクションバルブの構成を示す図である。
図6】第二実施形態の作用効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明の第一実施形態を以下において説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係や、各層の厚さの比率等は、現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
さらに、以下に示す第一実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質や、それらの形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0011】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
(構成)
図1を用いて、第一実施形態の構成を説明する。
【0013】
(スクロール圧縮機)
図1中に表すように、スクロール圧縮機1は、フロントハウジング2と、リアハウジング3と、駆動軸4と、電動モータ5と、インバータ6と、固定スクロール7と、旋回スクロール8と、インジェクションバルブ9と、開閉制御部10を備える。第一実施形態では、一例として、スクロール圧縮機1が、車両に搭載され、車両の空調装置に用いられる場合について説明する。したがって、第一実施形態では、スクロール圧縮機1が圧縮する対象の作動流体が、冷媒である場合について説明する。
【0014】
(フロントハウジング、リアハウジング)
フロントハウジング2とリアハウジング3は、共に、底部を有する円筒形状に形成されており、通しボルト(図示せず)により締結されることで、スクロール圧縮機1のハウジングを形成している。また、フロントハウジング2とリアハウジング3は、互いに開口部同士が突き合わさった状態で締結されている。フロントハウジング2には、吸入ポートP1が形成されている。吸入ポートP1は、フロントハウジング2の側面に配置されており、低圧の冷媒を外部から導入する。なお、吸入ポートP1には、吸入ポートP1における冷媒の圧力と温度を検出する低圧側センサ11が配置されている。
【0015】
リアハウジング3には、吐出ポートP2と、インジェクションポートP3が形成されている。吐出ポートP2は、リアハウジング3の側面に配置されており、高圧の冷媒を外部へ吐出する。なお、吐出ポートP2には、吐出ポートP2における冷媒の圧力と温度を検出する高圧側センサ12が配置されている。
【0016】
インジェクションポートP3は、リアハウジング3の底面に配置されており、中間圧の冷媒を、外部から導入する。なお、インジェクションポートP3には、インジェクションポートP3における冷媒の圧力と温度を検出する中間圧側センサ13が配置されている。中間圧とは、吸入ポートP1が導入する冷媒の圧力(低圧)と、吐出ポートP2が吐出する冷媒の圧力(高圧)との間の圧力である。なお、ハウジングの内部には、潤滑用のオイル(図示せず)が封入されており、スクロール圧縮機1の内部を冷媒が移動すると、冷媒と共にオイルが移動して、スクロール圧縮機1の内部が潤滑される。
【0017】
(駆動軸)
駆動軸4は、ハウジング(フロントハウジング2)に収容されている。駆動軸4の一端は、第一軸受41を介して、フロントハウジング2へ回転可能に支持されている。第一軸受41は、駆動軸4の外周面に固定された内輪と、フロントハウジング2の内周面に固定された外輪と、内輪と外輪との間に配置された複数の転動体を備えている。駆動軸4の他端は、第二軸受42を介して、フロントハウジング2へ回転可能に支持されている。第二軸受42は、駆動軸4の外周面に固定された内輪と、軸支部材43の内周面に固定された外輪と、内輪と外輪との間に配置された複数の転動体を備えている。軸支部材43は、フロントハウジング2の内部において、電動モータ5よりもリアハウジング3に近い位置に配置されており、フロントハウジング2に固定されている。
【0018】
(電動モータ)
電動モータ5は、フロントハウジング2に収容されており、軸支部材43よりもリアハウジング3から遠い位置に配置されている。また、電動モータ5は、駆動軸4を回転させることにより、旋回スクロール8を公転運動させるものであり、ロータ5aと、ステータ5bを備えている。ロータ5aは、円筒状に形成されており、駆動軸4の外周面を包囲した状態で駆動軸4に連結され、駆動軸4と一体的に回転する。また、ロータ5aには、永久磁石(図示せず)が設けられている。ステータ5bは、フロントハウジング2の内周面に固定されている。また、ステータ5bは、ロータ5aに対して径方向に対向するステータコア(図示せず)と、ステータコアに捲回されたコイル(図示せず)を有している。
【0019】
(インバータ)
インバータ6は、電動モータ5を駆動させる駆動回路であり、フロントハウジング2に取り付けられた円筒形状のカバー部材60に収容されている。また、インバータ6は、ステータ5bが有するコイルと電気的に接続されている。なお、インバータ6には、電動モータ5の回転角度を検出する回転角センサ14が設けられている。なお、回転角センサ14は、図1に設けたセンサに限定されるものではなく、電動モータの回転角を検出することができる方法であれば、他の方法によって、電動モータの回転角を検出してよい。
【0020】
(固定スクロール)
固定スクロール7は、旋回スクロール8よりも駆動軸4から離れた位置で、ハウジングに収容されている。また、固定スクロール7は、固定側基部7aと、固定側渦巻き部7bと、排出路7cと、吸入路7dと、導入路7eを有する。これに加え、固定スクロール7には、インジェクションバルブ9が取り付けられている。固定側基部7aは、円板状に形成されており、一方の面が、リアハウジング3のフロントハウジング2と対向する面に固定されている。
【0021】
固定側渦巻き部7bは、固定側基部7aの他方の面から突出して形成されており、駆動軸4の軸方向から見て渦巻き状に形成されている。排出路7cは、固定側基部7aの中央付近に形成されており、固定側基部7aを貫通する貫通孔である。また、排出路7cは、リアハウジング3に収容された吐出流路31を介して、吐出ポートP2と連通している。
【0022】
吸入路7dは、固定側基部7aの径方向で端部側に形成されており、固定側基部7aの側面との他方の面とを連通させる貫通孔である。また、吸入路7dは、フロントハウジング2に形成された吸入流路32を介して、吸入ポートP1と連通している。導入路7eは、排出路7cよりも固定側基部7aの径方向で端部側に形成されており、固定側基部7aの一方の面と、インジェクションバルブ9とを連通させる貫通孔である。なお、インジェクションバルブ9の説明は、後述する。
【0023】
また、導入路7eは、リアハウジング3に収容されたインジェクションパイプ33を介して、インジェクションポートP3と連通している。したがって、導入路7eとインジェクションパイプ33は、インジェクションポートP3と後述する圧縮室20とを連通させるインジェクション流路34の一部を構成している。なお、インジェクション流路34のうち、インジェクションポートP3とインジェクションバルブ9との間には、インジェクション流路34よりも断面積が大きいバッファータンクBTが配置されている。
【0024】
(旋回スクロール)
旋回スクロール8は、固定スクロール7に対して公転運動が可能であり、旋回スクロール8よりも駆動軸4に近い位置で、ハウジングに収容されている。なお、図示を省略するが、旋回スクロール8には、旋回スクロール8の公転運動を許容する一方、旋回スクロール8の自転を規制する自転規制部が設けられている。また、旋回スクロール8は、旋回側基部8aと、旋回側渦巻き部8bを有する。旋回側基部8aは、円板状に形成されており、第二軸受42と固定スクロール7との間に配置されている。旋回側基部8aの一方の面は、固定スクロール7と対向している。
【0025】
旋回側基部8aの他方の面には、偏心軸50の一端面が固定されている。偏心軸50の他端面は、駆動軸4の他端側の端面のうち、駆動軸4の中心軸線に対して偏心した位置に固定されている。旋回側渦巻き部8bは、旋回側基部8aの一方の面から突出して形成されており、駆動軸4の軸方向から見て渦巻き状に形成されている。また、旋回スクロール8は、旋回側渦巻き部8bが固定側渦巻き部7bと噛み合うように配置されている。また、固定側渦巻き部7bの先端面は、旋回側基部8aに接触しており、旋回側渦巻き部8bの先端面は、固定側基部7aに接触している。
【0026】
そして、互いに噛み合う固定側渦巻き部7bと旋回側渦巻き部8bとの間には、吸入ポートP1、吸入流路32、吸入路7dを順に経由して吸入された冷媒を圧縮する圧縮室20が形成されている。すなわち、吸入流路32は、吸入ポートP1と圧縮室20とを連通させる。また、吐出流路31は、圧縮室20と吐出ポートP2とを連通させる。以上により、駆動軸4が予め定められた正方向に回転すると、旋回スクロール8が固定スクロール7の中心軸線(駆動軸4の中心軸線)の軸周りに正方向へ公転する。なお、正方向とは、冷媒の圧縮が正常に行われる方向である。旋回スクロール8が公転すると、圧縮室20の容積が減少するため、吸入ポートP1、吸入流路32、吸入路7dを順に経由して圧縮室20に吸入された冷媒が圧縮される。そして、圧縮された冷媒は、圧縮室20から、排出路7cと吐出流路31を順に経由して、吐出ポートP2から吐出される。
【0027】
(インジェクションバルブ)
インジェクションバルブ9は、筒部9aと、弁体9bと、ソレノイドコイル9cと、付勢部材9dを備えている。筒部9aは、円筒状に形成されており、インジェクション流路34の一部を構成する空隙部が内部に形成されている。筒部9aの側面には、インジェクションパイプ33と空隙部とを連通させる導入口が形成されている。筒部9aの先端面には、空隙部と連通する吐出口が形成されている。また、筒部9aは、固定スクロール7の内部に固定されている。
【0028】
第一実施形態では、一例として、インジェクションバルブ9の吐出口が、固定側基部7aの他方の面に開口している場合について説明する。すなわち、第一実施形態では、インジェクションバルブ9の吐出口が、固定スクロール7の圧縮室20と対向する面に開口している場合について説明する。弁体9bは、筒部9aに収容されており、吐出口を開閉する。ソレノイドコイル9cは、筒部9aの基端に配置されており、開閉制御部10から受信した信号に応じて、弁体9bを開く方向へ移動させる。
【0029】
付勢部材9dは、例えば、コイルスプリングを用いて形成されており、弁体9bを閉じる方向へ移動に付勢する。すなわち、インジェクションバルブ9は、固定スクロール7に取り付けられており、インジェクション流路34を開閉可能に形成されている。第一実施形態では、一例として、インジェクションバルブ9の構成を、スクロール圧縮機1の運転条件により開閉タイミングを変更可能にするために、少なくとも1[°]単位で開閉タイミングの変更が可能な構成とした場合について説明する。これは、スクロール圧縮機1の最大回転数によって、インジェクションバルブ9に要求される性能が変わるためである。
【0030】
また、第一実施形態では、一例として、インジェクションバルブ9の構成を、最大回転数が9000[rpm]であるときに、20[μs]程度の時間でインジェクション流路34を開閉することが可能な応答性を有する構成とした場合について説明する。なお、インジェクション流路34を開閉する時間(上述した20[μs])の算出方法を、一例として、以下に記載する。最大回転数が9000[rpm]のスクロール圧縮機1であれば、旋回スクロール8が、1[s]の間に最大で9000/60回転するため、旋回スクロール8が1回転するまでには、最大で60/9000[s]の時間を要する。
【0031】
また、インジェクションバルブ9は、少なくとも1[°]単位で開閉タイミングの制御が可能であることが望ましいため、1[°]回転するために要する時間[s]は、以下の式(1)で算出される。
60/9000×1/360=18.5×10-6≒20×10-6[s] … (1)
以上により、スクロール圧縮機1の最大回転数が9000[rpm]の場合、弁を1回開閉するために要する時間が、少なくとも20[μs]程度の応答性を有するインジェクションバルブを使用することとなる。
【0032】
(開閉制御部)
開閉制御部10は、例えば、ハウジングの外部に配置されており、電子制御によって、インジェクションバルブ9を開閉する。具体的に、開閉制御部10は、低圧側センサ11、高圧側センサ12、中間圧側センサ13が検出した冷媒の圧力及び温度と、回転角センサ14が検出した電動モータ5の回転角度に応じて、インジェクション流路34を開閉する。また、開閉制御部10は、スクロール圧縮機1の運転条件に応じて、インジェクションバルブ9が開いている時間を変化させることで、圧縮室20へ流入する冷媒の流入量を変化させる。
【0033】
さらに、開閉制御部10は、旋回スクロール8の旋回角度に応じて、インジェクションバルブ9を開閉する場合について説明する。なお、旋回スクロール8の旋回角度は、例えば、回転角センサ14が検出した電動モータ5の回転角度を用いて検出する。また、開閉制御部10は、閉じているインジェクション流路34を開く旋回スクロール8の旋回角度と、開いているインジェクション流路34を閉じる旋回スクロール8の旋回角度を、運転条件に応じて個別に変化させる。
【0034】
(動作・作用)
図1を参照しつつ、図2及び図3を用いて、第一実施形態のスクロール圧縮機1で行う動作の一例と、作用を説明する。スクロール圧縮機1の使用時には、吸入ポートP1から導入した低圧の冷媒を、吸入流路32と吸入路7dを介して、圧縮室20に吸入する。そして、駆動軸4を正方向に回転させて旋回スクロール8を正方向に公転させることで、圧縮室20の容積を減少させて、圧縮室20に吸入した冷媒を圧縮する。さらに、圧縮して高圧となった冷媒を、吐出ポートP2から吐出する。第一実施形態のスクロール圧縮機1は、中間圧の冷媒を外部から圧縮室20へ導入するとともに、低圧の冷媒を圧縮室20で高圧の冷媒に圧縮する動作モードである、「インジェクションモード」で動作することが可能である。
【0035】
以下、図2を参照して、インジェクションモードにおける動作について説明する。図2に表すように、ステップS10において、インジェクションモードを開始する処理(図に表す「インジェクションモード開始」)を行う。その後、ステップS11において、開閉制御部10に、低圧側センサ11、高圧側センサ12、中間圧側センサ13が検出した冷媒の圧力及び温度を入力する処理(図に表す「各冷媒の圧力と温度を入力」)を行う。
【0036】
次に、ステップS12において、回転角センサ14が検出した電動モータ5の回転角度に応じて、旋回スクロール8の回転数を計算する処理(図に表す「スクロール回転数計算」)を行う。旋回スクロール8の回転数を計算した後、ステップS13において、閉じているインジェクションバルブ9を開く時点の、すなわち、インジェクションバルブ9の開放によって、導入路7eと圧縮室20とを連通させる旋回スクロール8のバルブ開放開始旋回角度Dsを算出する処理(図に表す「バルブ開放開始角度算出」)を行う。
【0037】
これに加え、ステップS13では、インジェクションバルブ9を閉じる時点の旋回スクロール8のバルブ開放終了旋回角度Dpと、インジェクションバルブ9が開いている時間に相当する、旋回スクロール8のバルブ開放旋回角度範囲Dpaとを算出する処理(図に表す「バルブ開放期間算出」)を行う。なお、ステップS13では、バルブ開放開始旋回角度Dsとバルブ開放終了旋回角度Dpを、個別に算出する。バルブ開放開始旋回角度Dsとバルブ開放終了旋回角度Dpは、ステップS11において開閉制御部10に入力した、低圧側センサ11、高圧側センサ12、中間圧側センサ13が検出した冷媒の圧力及び温度を用いて算出する。例えば、圧力や温度が高いほど、バルブ開放終了旋回角度Dpを小さい値とする。
【0038】
すなわち、低圧側センサ11、高圧側センサ12、中間圧側センサ13が検出した冷媒の圧力及び温度は、スクロール圧縮機1の運転条件に対応する。また、バルブ開放開始旋回角度Dsは、閉じているインジェクション流路34を開く旋回スクロール8の旋回角度に対応する。さらに、バルブ開放終了旋回角度Dpは、開いているインジェクション流路34を閉じる旋回スクロール8の旋回角度に対応する。ステップS13においてバルブ開放開始旋回角度Ds及びバルブ開放終了旋回角度Dpを算出した後、ステップS14において、開閉制御部10に旋回スクロール8の現在旋回角度Daを入力する処理(図に表す「スクロール回転角Daを入力」)を行う。
【0039】
すなわち、ステップS14において開閉制御部10に入力する現在旋回角度Daは、インジェクションバルブ9を閉じている状態における、旋回スクロール8の旋回角度である。ステップS14において、開閉制御部10に現在旋回角度Daを入力した後、ステップS15において、現在旋回角度Daがバルブ開放開始旋回角度Dsに達しているか否かを判定する処理(図に表す「Da=Ds」)を行う。ステップS15において、現在旋回角度Daがバルブ開放開始旋回角度Dsに達している(図に表す「Yes」)と判定した場合、ステップS16において、閉じているインジェクションバルブ9を開く処理(図に表す「バルブ開放」)を行う。
【0040】
一方、ステップS15において、現在旋回角度Daがバルブ開放開始旋回角度Dsに達していない(図に表す「No」)と判定した場合、ステップS14へ移行する。ステップS16において閉じているインジェクションバルブ9を開いた後、ステップS17において、開閉制御部10に旋回スクロール8の現在旋回角度Daを入力する処理(図に表す「スクロール回転角Daを入力」)を行う。すなわち、ステップS17において開閉制御部10に入力する現在旋回角度Daは、インジェクションバルブ9を開いている状態における、旋回スクロール8の旋回角度である。
【0041】
ステップS17において、開閉制御部10に現在旋回角度Daを入力した後、ステップS18において、現在旋回角度Daがバルブ開放終了旋回角度Dpに達しているか否かを判定する処理(図に表す「Dp終了」)を行う。ステップS18において、現在旋回角度Daがバルブ開放終了旋回角度Dpに達している(図に表す「Yes」)と判定した場合、ステップS19において、開いているインジェクションバルブ9を閉じる処理(図に表す「バルブ閉鎖」)を行う。
【0042】
一方、ステップS18において、現在旋回角度Daがバルブ開放終了旋回角度Dpに達していない(図に表す「No」)と判定した場合、ステップS17へ移行する。ステップS19において、開いているインジェクションバルブ9を閉じた後、ステップS20において、インジェクションモードを終了させる条件が成立しているか否かを判定する処理(図に表す「インジェクションモード終了」)を行う。ステップS20において、インジェクションモードを終了させる条件が成立している(図に表す「Yes」)と判定した場合、ステップS21において、通常モードへ移行する処理(図に表す「通常モードへ移行」)を行う。
【0043】
なお、通常モードとは、インジェクションモードと異なり、中間圧の冷媒を圧縮室20へ導入せずに、低圧の冷媒を圧縮室20で高圧の冷媒に圧縮する動作モードである。また、インジェクションモードを終了させる条件は、例えば、吐出ポートP2から吐出する冷媒の圧力等である。一方、ステップS20において、インジェクションモードを終了させる条件が成立していない(図に表す「No」)と判定した場合、ステップS11へ移行する。
【0044】
図3中に示すように、インジェクションモードでスクロール圧縮機1を使用すると、通常モードでスクロール圧縮機1を使用した場合と比較して、吐出ポートP2から吐出する冷媒の圧力を増加させることが可能となる。なお、図3中には、旋回スクロール8の旋回角度を「旋回角度[deg]」と表し、吐出ポートP2から吐出する冷媒の圧力を「圧力[Mpa]」と表す。また、図3中には、通常モードでスクロール圧縮機1を使用した場合における、旋回スクロール8の旋回角度と吐出ポートP2から吐出する冷媒の圧力との関係を、実線で表す。同様に、図3中には、第一実施形態のスクロール圧縮機1をインジェクションモードで使用した場合における、旋回スクロール8の旋回角度と吐出ポートP2から吐出する冷媒の圧力との関係を、点線で表す。
【0045】
さらに、図3中には、従来の構成を有するスクロール圧縮機をインジェクションモードで使用した場合における、旋回スクロール8の旋回角度と吐出ポートP2から吐出する冷媒の圧力との関係を、破線で表す。なお、従来の構成を有するスクロール圧縮機とは、インジェクション流路を、電子制御ではなく、逆止弁等を用いて機械的に開閉する構成を有するスクロール圧縮機である。図3中に示すように、従来の構成を有するスクロール圧縮機では、機械的にインジェクション流路を開閉するため、最適なタイミングでインジェクションを行うことが不可能であり、図中に「旋回角度範囲Dpb」で示すように、インジェクション期間も一定である。このため、インジェクションを行っても、旋回スクロールの回転数や圧力、温度条件によっては、最適なインジェクション量を流入させることが困難である。
【0046】
これに対し、第一実施形態のスクロール圧縮機1では、電子制御によってインジェクション流路34を開閉するため、最適なタイミング(インジェクションタイミング)でインジェクションを行うことが可能となる。このため、旋回スクロール8の回転数や圧力、温度条件によって、最適なインジェクション量を流入させることが可能となる。なお、図3中には、一例として、バルブ開放開始旋回角度Dsが「0[deg]」であり、バルブ開放終了旋回角度Dpが「160[deg]」である場合を示している。また、図3中には、インジェクションバルブ9の開いている時間を変化させることが可能な範囲である可変範囲を、符号「Vtr」で示している。なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0047】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態のスクロール圧縮機1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)インジェクションポートP3と圧縮室20とを連通させるインジェクション流路34を開閉可能なインジェクションバルブ9が、固定スクロール7に取り付けられている。これに加え、開閉制御部10が、電子制御によって、インジェクションバルブ9を開閉する。その結果、電子制御によってインジェクションバルブ9を開閉することで、インジェクション流路34を開閉するため、インジェクション流路34を開閉する応答性を向上させることが可能な、スクロール圧縮機1を提供することが可能となる。また、機械的にインジェクション流路を開閉する構成と比較して、開いているインジェクション流路34を閉じる応答性が高くなり、最適なインジェクション量を流入させることが可能となる。
【0048】
さらに、旋回側渦巻き部8bと固定側渦巻き部7bとの噛み合わせ状態に関わらず、インジェクションを行うことが可能となる。このため、機械的にインジェクション流路を開閉する構成と比較して、圧縮室20へ中間圧の冷媒を導入する開口部の開口面積を、大きく設計することが可能となる。これにより、単位時間当たりのインジェクション冷媒流入量を増加させることが可能となるため、インジェクション流路34を開いている時間を短くすることが可能となる。また、最適なインジェクション量を流入させることが可能となるため、吐出ポートP2から吐出する冷媒の圧力を高くすることが可能となる。
【0049】
(2)開閉制御部10が、スクロール圧縮機1の運転条件に応じて、インジェクションバルブ9が開いている時間を変化可能である。その結果、スクロール圧縮機1の運転条件に応じて、圧縮室20へ流入する中間圧の冷媒の流入量を変化させることが可能となり、中間圧の冷媒を適切な流入量として、インジェクションモードにおける動作を行うことが可能となる。
【0050】
(3)開閉制御部10が、旋回スクロール8の旋回角度に応じて、インジェクションバルブ9を開閉する。その結果、旋回側渦巻き部8bと固定側渦巻き部7bとの噛み合わせ状態に関わらず、中間圧の冷媒を圧縮室20へ流入させることが可能となり、圧縮室20へ中間圧の冷媒を導入する開口部(吐出口)を設置する自由度を向上させることが可能となる。
【0051】
(4)開閉制御部10が、閉じているインジェクション流路34を開く旋回スクロール8の旋回角度と、開いているインジェクション流路34を閉じる旋回スクロール8の旋回角度を、スクロール圧縮機1の運転条件に応じて個別に変化させる。その結果、スクロール圧縮機1の運転条件に応じて、適切なタイミングで中間圧の冷媒を圧縮室20へ流入させることが可能となる。
【0052】
(5)インジェクション流路34のうちインジェクションポートP3とインジェクションバルブ9との間に、インジェクション流路34よりも断面積が大きいバッファータンクBTを配置する。その結果、中間圧の冷媒をバッファータンクBTに貯留することが可能となり、閉じているインジェクション流路34を開くときに、中間圧の冷媒を圧縮室20へ流入させる際の応答性を向上させることが可能となる。
【0053】
(6)インジェクションバルブ9の吐出口が、固定スクロール7の圧縮室20と対向する面に開口している。その結果、中間圧の冷媒がインジェクションポートP3から圧縮室20へ移動する過程で圧力が低下することを抑制することが可能となり、中間圧の冷媒を、効率的に圧縮室20へ流入させることが可能となる。
【0054】
(第一実施形態の変形例)
(1)第一実施形態では、インジェクションモードにおける動作で、ステップS11からステップS20の処理を行ったが、これに限定するものではなく、例えば、ステップS11からステップS13のうち、いずれかの処理を省略してもよい。
【0055】
(2)第一実施形態では、インジェクションバルブ9の吐出口が、固定側基部7aの他方の面に開口している構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、図4中に示すように、インジェクションバルブ9の吐出口が、固定スクロール7の内部に開口している構成としてもよい。この場合、図4中に示すように、固定スクロール7に、固定側基部7aの他方の面とインジェクションバルブ9の吐出口とを連通させる連通路7fを形成する。なお、図4中では、説明のために、固定側基部7a、固定側渦巻き部7b、連通路7f、インジェクションバルブ9、インジェクションパイプ33以外の構成を省略して図示している。
【0056】
(第二実施形態)
(構成)
第二実施形態では、インジェクションバルブ9の具体的な構成例を示す。それ以外の構成については、前述した第一実施形態と同一であるため、共通する部分については同一符号を付し、詳細な説明は省略する。インジェクションバルブ9は、図5に示すように、第一の筒部61と、第二の筒部62と、連結部材63と、プランジャ64と、圧縮コイルばね65と、ソレノイド66と、を備える。
【0057】
固定スクロール7は、固定側基部7aの旋回スクロール8とは反対側の面に、凹部71が形成されている。凹部71の底には、圧縮室20に連通する連通路7fが形成されている。第一の筒部61は、スクロール圧縮機1の軸方向に延びる円筒状に形成されており、一端がOリング72を介して凹部71に嵌め合わされ、他端がリアハウジング3を貫通して外部に突き出ている。第二の筒部62は、スクロール圧縮機1の外部に位置して当該圧縮機1の軸方向に延び、一端側が閉塞された円筒状に形成されている。第一の筒部61の直径と第二の筒部62の直径とは同等である。
【0058】
連結部材63は、略円筒状に形成されており、圧縮機の外部に突き出した第一の筒部61の他端と開放された第二の筒部62の他端とを連結する。円筒状の連結部材63の側面にはインジェクションパイプ33が接続されている。インジェクションバルブ33は、気密性を保った状態で連結部材63の内部、及び第一の筒部61の内部を連通する。
【0059】
プランジャ64は、連結部材63の第二の筒部62側から挿通されており、進退可能な状態で第一の筒部61及び第二の筒部62に収容されている。プランジャ64は、軸方向に沿って延びる軸部材であり、連通路7fよりも大径で、且つ第一の筒部61の内径よりも小径である。第一の筒部61側に位置するプランジャ64の一端には、先細り形状の円錐突起73が形成されている。プランジャ64が連通路7fに向かって前進するときに、円錐突起73が連通路7fに進入することで、連通路7fを閉塞すると共に、連通路7fのデッドボリュームを減少させる。
【0060】
第二の筒部62内に位置するプランジャ64の端部には、鉄心部74が形成されている。鉄心部74は、第二の筒部62の内径よりも僅かに小径であり、第二の筒部62の内部を進退可能である。第二の筒部62の内部において、第二の筒部62内のプランジャ64の端部と第二の筒部62の底部との間には、圧縮コイルばね65が設けられている。圧縮コイルばね65は、プランジャ64を軸方向に伸長する方向に付勢されている。第二の筒部62の外周面には、軸方向の所定部位にソレノイド66が設けられている。ソレノイド66は、通電によって励磁されたときに、第二の筒部62の内部にある鉄心部74を吸引し、圧縮コイルばね65の反発力に抗してプランジャ64を後退させる。
【0061】
したがって、ソレノイド66が非励磁であるときには、プランジャ64の前進によって連通路7fが閉じている。これにより、第一の筒部61と圧縮室20とは遮断される。一方、ソレノイド66が励磁されたときには、図5に示すように、プランジャ64の後退によって連通路7fが開く。これにより、第一の筒部61と圧縮室20とが連通し、中間圧力の冷媒が圧縮室20に供給される。インジェクションバルブ9の開閉タイミングについては、前述した第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0062】
(作用効果)
次に、作用効果について説明する。旋回スクロール8の旋回角度に応じた圧縮室20の圧力、及び当該旋回角度に応じた連通路7fの開口面積を、図6を用いて説明する。ここでは、第二実施形態のインジェクションバルブ9を用いた場合を実施例とし、第二実施形態のインジェクションバルブ9がない場合を比較例としている。図6では、実施例の圧力を太い実線で示し、比較例の圧力を太い点線で示し、実施例の開口面積を細い実線で示し、比較例の開口面積を細い点線で示す。実施例及び比較例では、何れもCOを冷媒として用いている。
【0063】
固定スクロール7に対して旋回スクロール8が旋回するときに、旋回側渦巻き部8bの位置によって連通路7fの開口面積が変化する。比較例では、連通路7fが開き、開口面積が最大になる頃からインジェクションによって圧力の増加率が上昇し、連通路7fが閉じ始めると、圧力の増加率が低下する。これは、圧縮室20から連通路7fへと冷媒が逆流することに起因している。
【0064】
これに対し、実施例では、圧縮室20から連通路7fへと冷媒が逆流し始めるときに、インジェクションバルブ9のプランジャ64が直ちに連通路7fを閉じる。これにより、圧縮室20から連通路7fへと冷媒が逆流することを抑制でき、高いインジェクション流量を確保できる。また、単なる逆止弁を用いる場合とは異なり、逆止弁による圧損が少ないため、インジェクション流量を大きくすることができる。さらに、インジェクションバルブ9が閉じたときに、円錐突起73が連通路7fのデッドボリュームを減少させるので、圧縮効率の低下を最小限に抑制することができる。その他、前述した第一実施形態と共通する部分については、同様の作用効果が得られるものとし、詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0065】
1…スクロール圧縮機、2…フロントハウジング、3…リアハウジング、4…駆動軸、5…電動モータ、5a…ロータ、5b…ステータ、6…インバータ、7…固定スクロール、7a…固定側基部、7b…固定側渦巻き部、7c…排出路、7d…吸入路、7e…導入路、7f…連通路、8…旋回スクロール、8a…旋回側基部、8b…旋回側渦巻き部、9…インジェクションバルブ、9a…筒部、9b…弁体、9c…ソレノイドコイル、9d…付勢部材、10…開閉制御部、11…低圧側センサ、12…高圧側センサ、13…中間圧側センサ、14…回転角センサ、20…圧縮室、31…吐出流路、32…吸入流路、33…インジェクションパイプ、34…インジェクション流路、41…第一軸受、42…第二軸受、43…軸支部材、50…偏心軸、60…カバー部材、P1…吸入ポート、P2…吐出ポート、P3…インジェクションポート、BT…バッファータンク、61…第一の筒部、62…第二の筒部、63…連結部材、64…プランジャ、65…圧縮コイルばね、66…ソレノイド、71…凹部、72…Oリング、73…円錐突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6