(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】LED駆動装置及び表示装置、並びにLED駆動装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
H05B 45/30 20200101AFI20230622BHJP
【FI】
H05B45/30
(21)【出願番号】P 2019104528
(22)【出願日】2019-06-04
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 圭
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-153271(JP,A)
【文献】特開2012-155923(JP,A)
【文献】特開2011-129655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00
H05B 45/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDへ電力を供給するように構成されたDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータを駆動するように構成された駆動装置と、
前記LEDのカソード側の電圧を検出するように構成された第1の検出器と、
前記LEDに流れる電流を検出するように構成された第2の検出器とを備え、
前記駆動装置は、前記LEDのカソードが接地する異常が発生していない場合には第1の処理を実行し、前記異常が発生した場合に第2の処理を実行するように構成され、
前記第1の処理は、前記第1の検出器により検出される電圧に基づいて前記DC/DCコンバータを駆動する処理を含み、
前記第2の処理は、
前記LEDに流れる電流が、前記LEDを点灯可能であり、かつ、前記第1の処理の実行時よりも小さい電流となるように、前記第2の検出器により検出される電流に基づいて前記DC/DCコンバータを駆動する処理を含む、LED駆動装置。
【請求項2】
前記第1の処理は、前記第1の検出器により検出される電圧が第1の電圧となるように前記DC/DCコンバータを駆動し、
前記駆動装置は、前記第1の検出器により検出される電圧が、前記第1の電圧よりも低い第2の電圧を下回ると、前記異常が発生したものと判定する、請求項1に記載のLED駆動装置。
【請求項3】
前記第2の処理は、前記第2の検出器により検出される電流が所定の電流となるように前記DC/DCコンバータを駆動し、
前記所定の電流は、
前記LEDを点灯可能であり、かつ、前記第1の処理の実行時に前記LEDに流れる電流よりも小さい、請求項1又は請求項2に記載のLED駆動装置。
【請求項4】
前記第2の処理は、前記第2の検出器により検出される電流が所定の電流を超えないように前記DC/DCコンバータを駆動し、
前記所定の電流は、
前記LEDを点灯可能であり、かつ、前記第1の処理の実行時に前記LEDに流れる電流よりも小さい、請求項1又は請求項2に記載のLED駆動装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のLED駆動装置と、
前記LED駆動装置によって駆動されるLEDとを備える表示装置。
【請求項6】
LED駆動装置の制御装置であって、
前記LED駆動装置は、LEDへ電力を供給するように構成されたDC/DCコンバータを含み、
前記制御装置は、
前記LEDのカソード側の電圧を検出するように構成された第1の検出器と、
前記LEDに流れる電流を検出するように構成された第2の検出器と、
前記LEDのカソードが接地する異常が発生していない場合には第1の処理を実行し、前記異常が発生した場合に第2の処理を実行するように構成されたコントローラとを備え、
前記第1の処理は、前記第1の検出器により検出される電圧に基づいて前記DC/DCコンバータを駆動する処理を含み、
前記第2の処理は、
前記LEDに流れる電流が、前記LEDを点灯可能であり、かつ、前記第1の処理の実行時よりも小さい電流となるように、前記第2の検出器により検出される電流に基づいて前記DC/DCコンバータを駆動する処理を含む、LED駆動装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、LED駆動装置及びそれを備える表示装置、並びにLED駆動装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギ光源としてのLED(Light Emitting Diode)の用途が近年ますます拡大している。LEDの駆動には、LEDの順方向電圧-電流特性と発光特性とから、LEDに定電流を供給するためのLEDドライバが用いられる。
【0003】
特開2018-19498号公報(特許文献1)には、このようなLEDドライバが開示されている。このLEDドライバは、LEDへ電流を供給するDC/DCコンバータと、LEDに流れる電流を調整するカレントドライバ(定電流制御回路)とを含む。このLEDドライバでは、LEDのカソード側の電圧を帰還信号とする帰還制御が行なわれ(第2帰還制御モード)、PWM(Pulse Width Modulation)制御によってDC/DCコンバータを駆動することにより、LEDのカソード側の電圧が一定に制御される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなLEDドライバでは、LEDのカソード側がショート(地絡)すると、LEDのカソード側の電圧を高める方向にDC/DCコンバータが作動し、その結果、LEDに大電流が流れ得る。このため、一般的には、LEDのカソード側のショート故障が発生すると、LEDに大電流が流れてLEDが壊れないように、DC/DCコンバータをシャットダウンすることが行なわれている。しかしながら、DC/DCコンバータがシャットダウンされると、LEDは不点灯となる。このような問題について、上記の特許文献1では特に検討されていない。
【0006】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、LEDのカソード側がショートした場合に、LEDが不点灯となるのを回避可能なLED駆動装置及びそれを備える表示装置、並びにLED駆動装置の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のLED駆動装置は、LEDへ電力を供給するように構成されたDC/DCコンバータと、DC/DCコンバータを駆動するように構成された駆動装置と、LEDのカソード側の電圧(帰還電圧Vfb)を検出するように構成された第1の検出器と、LEDに流れる電流(電流Iout)を検出するように構成された第2の検出器とを備える。駆動装置は、LEDのカソードが接地する異常が発生していない場合には第1の処理を実行し、上記の異常が発生した場合に第2の処理を実行するように構成される。第1の処理は、第1の検出器により検出される電圧に基づいてDC/DCコンバータを駆動する処理を含む。第2の処理は、第2の検出器により検出される電流に基づいてDC/DCコンバータを駆動する処理を含む。
【0008】
上記のLED駆動装置においては、LEDのカソードが接地する異常(以下、LEDのカソードの「ショート故障」と称する。)が発生すると、LEDのカソード側の電圧に基づいてDC/DCコンバータを駆動する第1の処理に代えて第2の処理が実行され、LEDに流れる電流に基づいてDC/DCコンバータが駆動される。これにより、LEDに大電流が流れるのを防止するためにDC/DCコンバータをシャットダウンする必要はなく、LEDに流れる電流を調整してLEDを点灯させることができる。
【0009】
第1の処理は、第1の検出器により検出される電圧が第1の電圧となるようにDC/DCコンバータを駆動してもよい。そして、駆動装置は、第1の検出器により検出される電圧が、第1の電圧よりも低い第2の電圧を下回ると、LEDのカソードのショート故障が発生したものと判定してもよい。
【0010】
第2の処理は、第2の検出器により検出される電流が所定の電流となるようにDC/DCコンバータを駆動してもよい。或いは、第2の処理は、第2の検出器により検出される電流が所定の電流を超えないようにDC/DCコンバータを駆動してもよい。なお、所定の電流は、第1の処理の実行時にLEDに流れる電流よりも小さい。
【0011】
また、本開示の表示装置は、上述したいずれかのLED駆動装置と、LED駆動装置によって駆動されるLEDとを備える。
【0012】
また、本開示の制御装置は、LED駆動装置の制御装置である。LED駆動装置は、LEDへ電力を供給するように構成されたDC/DCコンバータを含む。制御装置は、LEDのカソード側の電圧(帰還電圧Vfb)を検出するように構成された第1の検出器と、LEDに流れる電流(電流Iout)を検出するように構成された第2の検出器と、コントローラとを備える。コントローラは、LEDのカソードが接地する異常が発生していない場合には第1の処理を実行し、異常が発生した場合に第2の処理を実行するように構成される。第1の処理は、第1の検出器により検出される電圧に基づいてDC/DCコンバータを駆動する処理を含む。第2の処理は、第2の検出器により検出される電流に基づいてDC/DCコンバータを駆動する処理を含む。
【発明の効果】
【0013】
本開示のLED駆動装置及び表示装置、並びにLED駆動装置の制御装置によれば、LEDのカソード側のショート故障が発生した場合に、LEDが不点灯となるのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の実施の形態に従うLEDドライバを用いた表示装置の全体構成を示す図である。
【
図2】
図1に示すLEDドライバの動作例を概略的に示すタイミングチャートである。
【
図3】コントローラにより実行される処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0016】
<LEDドライバの構成>
図1は、本開示の実施の形態に従うLEDドライバを用いた表示装置の全体構成を示す図である。
図1を参照して、表示装置1は、LED列10と、DC/DCコンバータ20と、抵抗素子40と、駆動装置50とを備える。DC/DCコンバータ20及び駆動装置50、並びに抵抗素子40は、LED列10を駆動するLEDドライバを構成する。
【0017】
LED列10は、直列接続された複数のLED12を含む。この例では、4つよりも多い複数のLED12を含む1列のLED列10が示されているが、LED列の数は複数であってもよく、各LED列に含まれるLED12の数は4つ以下であってもよい。
【0018】
DC/DCコンバータ20は、電源ノード22と、コイル24と、スイッチング素子Q1と、ダイオード26と、キャパシタ28とを含んで構成される。コイル24は、電源ノード22とスイッチング素子Q1との間に接続される。スイッチング素子Q1は、コイル24と接地ノードとの間に接続される。スイッチング素子Q1のゲートは、駆動装置50の外部端子T1に接続されている。この例では、スイッチング素子Q1は、N型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であるが、NPN型バイポーラトランジスタ等であってもよい。
【0019】
ダイオード26は、コイル24とスイッチング素子Q1との接続点にアノードが接続され、LED列10のアノード側にカソードが接続される。この例では、ダイオード26は、ショットキーバリアダイオード(以下「SBD(Schottky Barrier Diode)」と称する。)である。SBDは、順方向電圧が小さいため、順方向の損失が小さく高効率であり、また、スイッチングが高速である。なお、ダイオード26がSBDであることは必須ではなく、SBD以外のダイオードを採用することも可能である。キャパシタ28は、SBD26のカソードが接続される電力線と接地ノードとの間に接続される。
【0020】
これらの電源ノード22、コイル24、スイッチング素子Q1、SBD26、及びキャパシタ28によって、いわゆる非同期整流型の昇圧チョッパ回路が形成されている。駆動装置50によってスイッチング素子Q1がスイッチング制御され、電源ノード22から供給される電力が昇圧されてLED列10へ供給される。
【0021】
抵抗素子40は、DC/DCコンバータ20とLED列10との間の電力線に設けられる。抵抗素子40の一端は、駆動装置50の外部端子T2に接続され、抵抗素子40の他端は、駆動装置50の外部端子T3に接続されている。この抵抗素子40は、DC/DCコンバータ20からLED列10へ流れる電流Ioutを検出するためのセンス抵抗である。
【0022】
駆動装置50は、カレントドライバ60と、コントローラ70と、検出器80と、エラーアンプ85とを含む。駆動装置50は、たとえば、これらの各要素を集積化したIC(Integrated Circuit)として構成される。駆動装置50は、外部の要素と電気的に接続するための外部端子T1~T4をさらに備えている。
【0023】
カレントドライバ60は、スイッチング素子62と、抵抗素子64と、エラーアンプ66とを含む。スイッチング素子62は、LED列10のカソード側が接続される外部端子T4と抵抗素子64との間に接続される。この例では、スイッチング素子62は、N型MOSFETであるが、NPN型バイポーラトランジスタ等であってもよい。抵抗素子64は、スイッチング素子62と接地ノードとの間に接続される。
【0024】
スイッチング素子62と抵抗素子64との接続点は、エラーアンプ66の反転入力端(-)に接続される。エラーアンプ66の非反転入力端(+)には、基準電圧Vrefが与えられる。エラーアンプ66の出力端は、スイッチング素子62のゲートに接続される。
【0025】
エラーアンプ66の反転入力端(-)には、スイッチング素子62に流れる電流(すなわちLED列10に流れる電流)を抵抗素子64によって電圧に変換した検出信号(電圧)が入力される。エラーアンプ66の非反転入力端(+)に入力される基準電圧Vrefは、LED列10に流れる電流の目標値を抵抗素子64の抵抗値によって電圧に変換した信号である。
【0026】
エラーアンプ66は、基準電圧Vrefと上記検出信号(電圧)との差分を増幅した信号をスイッチング素子62のゲートへ出力することでスイッチング素子62を駆動する。これにより、スイッチング素子62に流れる電流、すなわちLED列10に流れる電流が、基準電圧Vrefに対応する電流目標値に調整される。なお、カレントドライバ60は、ICの外部に設けられてもよい。
【0027】
検出器80は、LED列10のカソード側が接続される外部端子T4に電気的に接続され、LED列10のカソード側の電圧Vfbを検出する。検出器80によって検出された電圧Vfb(以下「帰還電圧Vfb」と称する場合がある。)は、コントローラ70へ出力される。
【0028】
コントローラ70は、検出器80によって検出される帰還電圧Vfbに基づいてDC/DCコンバータ20を駆動する。具体的には、コントローラ70は、エラーアンプと、PWM(Pulse Width Modulation)回路とを含んで構成される(いずれも図示せず)。エラーアンプは、帰還電圧Vfbが所定値(たとえば0.5V)となるように、帰還電圧Vfbと所定値との差を増幅して出力する。PWM回路は、エラーアンプの出力に基づいてPWM信号を生成し、その生成されたPWM信号をスイッチング素子Q1のゲートが接続される外部端子T1へ出力する。
【0029】
なお、コントローラ70は、ハードウェア(電子回路)で実行するものに限られず、ソフトウェアで実行するもので構成されてもよい。具体的には、コントローラ70を、CPU(Central Processing Unit)、メモリ(ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory))、各種信号を入出力するための入出力バッファ等を含んで構成してもよい。CPUは、ROMに格納されているプログラムをRAM等に展開して実行する。ROMに格納されるプログラムは、コントローラ70の処理手順が記されたプログラムである。そして、コントローラ70は、このプログラムに従って各種処理を実行するように構成されてもよい。
【0030】
このLEDドライバでは、カレントドライバ60により、LED列10に流れる電流が基準電圧Vrefに対応する電流目標値に調整される。また、帰還電圧Vfbが所定値となるように、帰還電圧Vfbに基づいてコントローラ70によりDC/DCコンバータ20が駆動される。これにより、LED列10に流れる電流が目標に制御される。
【0031】
<LED列10のカソード側のショート故障>
上記の構成において、LED列10のカソード側がショート(地絡)した場合を考える。このような状況は、たとえば、LED列10のカソード側から延びるフラットケーブルのコネクタが外部端子T4においてコネクタ接続される場合にその接続部でショートしたり、ノイズ除去の目的等で外部端子T4に設けられたキャパシタ(図示せず)がショートしたりする場合に発生する可能性がある。
【0032】
LED列10のカソードがショートすると、帰還電圧Vfbが接地レベルに低下するため、帰還電圧Vfbを高める方向にDC/DCコンバータ20が作動し、その結果、LED列10に大電流が流れ得る。このような場合に、一般的には、LEDが壊れないようにDC/DCコンバータをシャットダウンすることが行なわれ得る。しかしながら、DC/DCコンバータ20がシャットダウンすると、LED列10が不点灯となってしまう。
【0033】
そこで、本実施の形態に従うLEDドライバでは、LED列10に流れる電流Ioutが検出され、LED列10のカソード側のショート故障が発生すると、電流Ioutに基づいて、LED列10が点灯可能な程度に電流Ioutを制限しつつDC/DCコンバータ20が駆動される。
【0034】
そのため、駆動装置50は、電流Ioutを検出するためのエラーアンプ85をさらに備えている。エラーアンプ85の非反転入力端(+)は、抵抗素子40の一端が接続される外部端子T2に接続され、エラーアンプ85の反転入力端(-)は、抵抗素子40の他端が接続される外部端子T3に接続される。そして、エラーアンプ85は、外部端子T2,T3から入力される電圧の差分を増幅した信号、すなわち抵抗素子40に生じる電圧に応じた信号をコントローラ70へ出力する。抵抗素子40に生じる電圧は、抵抗素子40に流れる電流Ioutを抵抗素子40によって電圧に変換したものであるから、抵抗素子40及びエラーアンプ85は、電流Ioutを検出する電流検出器を構成する。
【0035】
そして、コントローラ70は、LED列10のカソード側のショート故障が発生すると、帰還電圧Vfbに基づいてDC/DCコンバータ20を駆動する制御(以下「帰還電圧制御」と称する。)に代えて、電流Ioutに基づいて、LED列10が点灯可能な程度に電流Ioutを制限しつつDC/DCコンバータ20を駆動する制御(以下「制限電流制御」と称する。)を実行する。これにより、LED列10に大電流が流れるのを防止するためにDC/DCコンバータ20をシャットダウンする必要はなく、LED列10に流れる電流Ioutを調整しながらLED列10を点灯させることができる。
【0036】
LED列10のカソード側のショート故障は、検出器80により検出される帰還電圧Vfbに基づいて判定される。コントローラ70は、帰還電圧制御において、帰還電圧Vfbが所定値(たとえば0.5V)となるようにDC/DCコンバータ20を駆動するため、帰還電圧Vfbが上記の所定値よりも低いしきい値(たとえば0.2V)を下回ると、LED列10のカソード側のショート故障が発生したものと判定する。
【0037】
図2は、
図1に示したLEDドライバの動作例を概略的に示すタイミングチャートである。
図2を参照して、時刻t1において、LED列10のカソード側のショート故障が発生したものとする。
【0038】
ショート故障の発生前は、帰還電圧Vfbに基づいてスイッチング素子Q1のデューティが適宜調整されることにより、帰還電圧Vfbが所定値V1(たとえば0.5V)に調整されている(帰還電圧制御)。
【0039】
時刻t1において、帰還電圧Vfbが、しきい値Vth(Vth<V1)よりも低いV2に低下し、LED列10のカソード側のショート故障が発生したものと判定されると、LED保護フラグがオンになる。このLED保護フラグは、帰還電圧制御が継続されると、LED列10に大電流が流れてLED列10が壊れる可能性があることから、LED列10を保護するための制御が行なわれることを示すフラグである。
【0040】
LED保護フラグがオンになると、LEDドライバは、保護モードで作動する。すなわち、コントローラ70は、LED列10に流れる電流Ioutに基づいて、LED列10が点灯可能な程度に電流Ioutを制限しつつDC/DCコンバータ20を駆動する(制限電流制御)。制限電流制御は、LED保護フラグがオフされるまで、すなわちLED列10のカソード側のショート故障が修理により解消するまで継続される。
【0041】
制限電流制御中は、コントローラ70は、電流Ioutが帰還電圧制御中の電流Ioutよりも小さい所定の電流となるように、電流Ioutに基づいてスイッチング素子Q1のデューティを適宜調整する。或いは、コントローラ70は、制限電流制御中は、電流Ioutが上記の所定の電流を超えないように、スイッチング素子Q1のデューティを適宜調整してもよい。なお、所定の電流は、LED列10を構成する各LED12の特性に基づいて適宜決定される。
【0042】
図3は、コントローラ70により実行される処理の手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、所定周期毎に繰り返し実行される。
【0043】
図3を参照して、コントローラ70は、LED列10のカソード側のショート故障が発生したか否かを示すLED保護フラグがオンであるか否かを判定する(ステップS10)。LED保護フラグがオンであるときは(ステップS10においてYES)、コントローラ70は、ステップS50(後述)へ処理を移行する。
【0044】
ステップS10においてLED保護フラグがオフであると判定されると(ステップS10においてNO)、コントローラ70は、LED列10のカソード側の電圧である帰還電圧Vfbがしきい値Vthよりも低いか否かを判定する(ステップS20)。なお、帰還電圧Vfbは、検出器80(
図1)により検出される。また、しきい値Vthは、帰還電圧Vfbに基づく帰還電圧制御における帰還電圧Vfbの調整値(所定値V1)よりも低い値である。
【0045】
ステップS20において、帰還電圧Vfbがしきい値Vth以上であると判定されると(ステップS20においてNO)、LED列10のカソード側のショート故障は発生しておらず、コントローラ70は、帰還電圧Vfbに基づいてDC/DCコンバータ20を駆動する帰還電圧制御を実行する(ステップS30)。
【0046】
一方、ステップS20において、帰還電圧Vfbがしきい値Vthよりも低いと判定されると(ステップS20においてYES)、コントローラ70は、LED列10のカソード側のショート故障が発生したものと判断し、LED保護フラグをオンにする(ステップS40)。
【0047】
LED保護フラグがオンになると、コントローラ70は、LED列10に流れる電流Ioutに基づいて、LED列10が点灯可能な程度に電流Ioutを制限しつつDC/DCコンバータ20を駆動する制限電流制御を実行する(ステップS50)。なお、電流Ioutは、抵抗素子40及びエラーアンプ85(
図1)を用いて検出される。これにより、LED列10のカソード側のショート故障が発生した場合に、DC/DCコンバータ20をシャットダウンすることなく、LED列10を点灯させることができる。
【0048】
以上のように、この実施の形態においては、LED列10のカソード側のショート故障が発生すると、LED列10のカソード側の電圧である帰還電圧Vfbに基づく帰還電圧制御に代えて、LED列10に流れる電流Ioutに基づく制限電流制御が実行される。制限電流制御では、電流Ioutが、帰還電圧制御中の電流Ioutよりも小さい所定の電流となるように、或いはその所定の電流を超えないように、電流Ioutに基づいてDC/DCコンバータ20が駆動される。これにより、LED列10に大電流が流れるのを防止するためにDC/DCコンバータ20をシャットダウンする必要はなく、LED列10に流れる電流Ioutを調整しながらLED列10を点灯させることができる。
【0049】
なお、上記の実施の形態では、DC/DCコンバータ20は、非同期整流型の昇圧チョッパ回路としたが、DC/DCコンバータ20の構成はこれに限定されるものではない。たとえば、DC/DCコンバータ20は、非同期整流型の降圧チョッパ回路であってもよいし、同期整流型のDC/DCコンバータであってもよい。
【0050】
なお、上記の表示装置1は、たとえば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)の光源に適用することができ、特に、車両の運転状況等をドライバに表示する車載ディスプレイの光源に好適である。上記の表示装置1によれば、LED列10のカソード側のショート故障が発生しても、車載ディスプレイが完全に消灯してしまうのを防止し、リンプホーム走行を行なうことができる。
【0051】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 表示装置、10 LED列、20 DC/DCコンバータ、22 電源ノード、24 コイル、26 SBD、28 キャパシタ、40,64 抵抗素子、50 駆動装置、60 カレントドライバ、62,Q1 スイッチング素子、66,85 エラーアンプ、70 コントローラ、80 検出器、T1~T4 外部端子。