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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】サーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/32 20060101AFI20230622BHJP
   B41J 15/04 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
B41J2/32 Z
B41J15/04
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019140534
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021024083
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】川口 幸治
(72)【発明者】
【氏名】須戸 伸一
(72)【発明者】
【氏名】清野 匠
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-239333(JP,A)
【文献】国際公開第2006/038624(WO,A1)
【文献】特開平07-033291(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0297850(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 15/00 - 15/24
B41J 2/315 - 2/345
B65H 16/00 - 16/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙に印字するサーマルヘッドを有するヘッドユニットと、
前記記録紙を搬送するプラテンローラを有し、前記ヘッドユニットに分離可能に組み合わされるプラテンユニットと、
前記記録紙を収容する記録紙収容部を有するとともに、前記ヘッドユニットが取り付けられたプリンタ本体と、
前記プラテンユニットが取り付けられ、前記プリンタ本体に対して回動可能に連結されたプリンタカバーと、を備え、
前記記録紙収容部の内部に、前記プラテンユニットと前記ヘッドユニットとの間隙部に芯体にロール状に巻回された記録紙が前記芯体から完全に巻き解かれて搬送される際、前記記録紙のうち、前記芯体に巻き付けられた折り返し形状を有する巻始め部の山側端部の表面側の記録紙と当接することによって、互いに折り重ねられた前記記録紙同士を分離するための分離手段を備えていることを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記分離手段は、前記記録紙の前記巻始め部が巻き解かれたときに、前記記録紙の剛性による反発力に伴い、前記巻始め部の周面の少なくとも一部が当接する位置に設けられた第1分離壁であることを特徴する請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記第1分離壁は、前記記録紙の前記巻始め部の周面の少なくとも一部に対して与圧するように設けられていることを特徴とする請求項2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記第1分離壁は、前記記録紙の前記巻始め部の周面の少なくとも一部が当接する位置に、摩擦抵抗部材が備えられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記第1分離壁は、前記記録紙の前記巻始め部の周面の少なくとも一部が当接する位置に、前記巻始め部における折り返し形状とされた端部を係止させるための係止部が設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のサーマルプリンタ。
【請求項6】
前記第1分離壁が、前記プリンタカバーに取り付けられていることを特徴とする請求項2~請求項5の何れか一項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項7】
さらに、前記分離手段として、巻き解かれた前記記録紙を介して前記第1分離壁と対向する位置で、前記記録紙の前記巻始め部が巻き解かれたときに、前記記録紙の剛性による反発力に伴い、前記巻始め部の周面の少なくとも一部が当接する位置に設けられた第2分離壁を備えることを特徴とする請求項2~請求項6の何れか一項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項8】
前記第2分離壁は、前記記録紙の前記巻始め部の周面の少なくとも一部が当接する位置に、摩擦抵抗部材が備えられていることを特徴とする請求項7に記載のサーマルプリンタ。
【請求項9】
前記第2分離壁は、前記記録紙の前記巻始め部の周面の少なくとも一部が当接する位置に、前記巻始め部における折り返し形状とされた端部を係止させるための係止部が設けられていることを特徴とする請求項7に記載のサーマルプリンタ。
【請求項10】
前記第2分離壁が、前記プリンタ本体に取り付けられていることを特徴とする請求項7~請求項9の何れか一項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項11】
さらに、前記分離手段として、前記プラテンユニットにおける、巻き解かれた前記記録紙を介して前記第2分離壁と対向する位置であって、且つ、前記記録紙が搬入される間隙部の入口近傍の位置に、前記記録紙をガイドするガイド部が設けられていることを特徴とする請求項7~請求項10の何れか一項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項12】
前記ガイド部は、前記記録紙の前記芯体と平行で回動可能なガイド軸からなることを特徴とする請求項11に記載のサーマルプリンタ。
【請求項13】
前記ガイド部は、前記第2分離壁と対向するように突出するガイド壁からなることを特徴とする請求項11に記載のサーマルプリンタ。
【請求項14】
さらに、前記分離手段として、巻き解かれた前記記録紙を介して前記第1分離壁と対向する位置で、前記記録紙を前記第1分離壁側にガイドするテンションバーが備えられていることを特徴とする請求項2~請求項5の何れか一項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項15】
前記テンションバーの表面の少なくとも一部に、前記記録紙の前記巻始め部における折り返し形状とされた端部を係止させるための係止部が設けられていることを特徴とする請求項14に記載のサーマルプリンタ。
【請求項16】
前記分離手段は、
巻き解かれた前記記録紙を介して前記プラテンユニットと対向する位置で、前記記録紙を前記プラテンユニット側にガイドするテンションバーと、
前記プラテンユニットにおける、前記記録紙が搬入される間隙部の入口近傍の位置に、前記テンションバーと対向するように設けられ、前記テンションバーによって前記プラテンユニット側にガイドされた前記記録紙が当接するガイド部と、
前記間隙部の入口近傍における、前記ガイド部とは前記間隙部を介して反対側に設けられ、前記テンションバー及び前記ガイド部によってガイドされた前記記録紙の少なくとも一部が当接する第3分離壁と、を備え、
前記テンションバーの先端と、前記ガイド部の先端とが、前記プラテンユニットと前記テンションバーとの対向方向でオーバーラップするように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項17】
前記第3分離壁は、前記記録紙の前記巻始め部の周面の少なくとも一部が当接する位置に、前記巻始め部における折り返し形状とされた端部を係止させるための係止部が設けられていることを特徴とする請求項16に記載のサーマルプリンタ。
【請求項18】
前記分離手段は、
巻き解かれた前記記録紙を介して前記プラテンユニットと対向する位置で、前記記録紙を前記プラテンユニット側にガイドするテンションバーと、
前記プラテンユニットと前記テンションバーとの間に配置され、前記テンションバーとの間で前記記録紙をガイドする第4分離壁と、
前記プラテンユニットと前記ヘッドユニットとの間隙部の入口近傍に設けられ、前記テンションバー及び前記第4分離壁によってガイドされた前記記録紙の少なくとも一部が当接する第3分離壁と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項19】
前記第4分離壁が、前記プリンタカバーに取り付けられていることを特徴とする請求項18に記載のサーマルプリンタ。
【請求項20】
前記分離手段は、前記記録紙の前記巻始め部が巻き解かれたときに、摩擦抵抗部材に対して前記記録紙の少なくとも一部が当接するように、前記記録紙を与圧するように設けられる一対のガイドロールからなることを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、サーマルプリンタに代表されるような、記録紙に所定の情報を印刷するプリンタにおいては、芯体に感熱紙がロール状に巻回された記録紙が用いられる(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたようなサーマルプリンタにおいては、記録紙が無い状態で駆動すると、発熱体(サーマルヘッド)が熱破壊する等の不具合が生じるおそれがある。このような記録紙の空駆動を防止するため、通常、発熱体よりも上流側の位置に、記録紙の有無を検出する記録紙センサが設けられる。また、記録紙の経路における記録紙センサの位置においては、より確実に記録紙の有無を検出するため、記録紙の厚み方向で狭い隙間になるように規制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-047592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ロール状に巻回された記録紙は、その製造上の理由から、図17A中に示すように、記録紙100の軸部(コア;芯体)への巻始め部102において、記録紙100の先端100aを巻き方向とは逆方向の折り返し形状とすることが必要になる場合がある。しかしながら、図17B及び図17C中に示すように、記録紙100の巻始め部102を折り返し形状とした場合、この巻始め部102が折り返し形状のままで狭い隙間に搬入されると、紙詰まりが発生して駆動用のモータが脱調したり、ギアの歯飛び等が生じたりすることで記録紙100に駆動力が伝わらず、紙送りが出来なくなるおそれがある。このよう場合、記録紙100の経路におけるセンサ付近には記録紙100が停滞するため、センサの検出信号は紙有り状態のままとなり、発熱体による印字処理が継続される一方、紙送りができなくなることで、例えば、レシート等の発行ができない状態となる。特に、現金自動預け払い機(ATM)や、鉄道駅売店における無人端末において上記のような状況が生じることは、営業上並びに信用上の両面で深刻な問題となる。さらに、このような状態が長時間にわたって継続した場合には、記録紙100上における同じ位置で発熱体による印字処理が行われることとなり、発熱体に熱篭もりが生じ、発熱体の熱破壊や、抵抗値の上昇による印字不良等の不具合が発生するおそれもあった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、ロール状に巻回された記録紙における巻始め部が折り返し形状である場合であっても、互いに折り重ねられた記録紙同士を確実に分離でき、紙詰まり等が生じるのを防止することが可能な、信頼性に優れたサーマルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のサーマルプリンタは、記録紙に印字するサーマルヘッドを有するヘッドユニットと、前記記録紙を搬送するプラテンローラを有し、前記ヘッドユニットに分離可能に組み合わされるプラテンユニットと、前記記録紙を収容する記録紙収容部を有するとともに、前記ヘッドユニットが取り付けられたプリンタ本体と、前記プラテンユニットが取り付けられ、前記プリンタ本体に対して回動可能に連結されたプリンタカバーと、を備え、前記記録紙収容部の内部に、芯体にロール状に巻回された前記記録紙のうち、前記芯体に巻き付けられた折り返し形状を有する巻始め部に対し、互いに折り重ねられた前記記録紙同士を分離するための分離手段を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、上記のように、芯体にロール状に巻回された記録紙のうち、芯体に巻き付けられた折り返し形状を有する巻始め部に対し、互いに折り重ねられた記録紙同士を分離するための分離手段を備えていることで、巻始め部が折り返し形状のままでヘッドユニットとプラテンユニットとの間隙部に搬送されるのを防止できる。これにより、ロール状の記録紙が紙切れとなる際に、プリンタ内部で紙詰まり等が生じるのを防止できるとともに、センサによる誤検知も防止できる。
【0009】
本発明のサーマルプリンタは、上記構成において、前記分離手段が、前記記録紙の前記巻始め部が巻き解かれたときに、前記記録紙の剛性による反発力に伴い、前記巻始め部の周面の少なくとも一部が当接する位置に設けられた第1分離壁である構成を採用することができる。
【0010】
本発明によれば、分離手段を、上記のような第1分離壁から構成することで、芯体から巻き解かれて丸みを帯びた記録紙が、該記録紙のコシ(剛性)によって第1分離壁に当接し、第1分離壁と記録紙の周面との摩擦により、巻始め部において互いに折り重ねられた記録紙同士を効果的に分離できる。
【0011】
本発明のサーマルプリンタは、上記構成において、前記第1分離壁が、前記記録紙の前記巻始め部の周面の少なくとも一部に対して与圧するように設けられていることが好ましい。
【0012】
本発明によれば、上記のように、第1分離壁が、記録紙の巻始め部の周面の少なくとも一部を与圧することで、第1分離壁と記録紙の周面との摩擦力が上昇し、巻始め部において互いに折り重ねられた記録紙同士をより効果的に分離できる。
【0013】
本発明のサーマルプリンタは、上記構成において、前記第1分離壁が、前記記録紙の前記巻始め部の周面の少なくとも一部が当接する位置に、摩擦抵抗部材が備えられている構成を採用することが好ましい。
【0014】
本発明によれば、上記のように、第1分離壁における記録紙の巻始め部が当接する位置に摩擦抵抗部材が備えられていることで、摩擦抵抗部材と記録紙の周面との間の摩擦力が上昇し、巻始め部において互いに折り重ねられた記録紙同士をさらに効果的に分離できる。
【0015】
本発明のサーマルプリンタは、上記構成において、前記第1分離壁が、前記記録紙の前記巻始め部の周面の少なくとも一部が当接する位置に、前記巻始め部における折り返し形状とされた端部を係止させるための係止部が設けられている構成を採用することが好ましい。
【0016】
本発明によれば、上記のように、第1分離壁における記録紙の巻始め部が当接する位置に係止部が設けられていることで、巻始め部における折り返し形状とされた端部が係止部に係止されるので、巻始め部において互いに折り重ねられた記録紙同士を効果的に分離できる。
【0017】
本発明のサーマルプリンタは、上記構成において、前記第1分離壁が、前記プリンタカバーに取り付けられている構成を採用してもよい。
【0018】
本発明によれば、上記のように、第1分離壁がプリンタカバーに取り付けられていることで、サーマルプリンタの製造時の組立性やメンテナンス性を高めながら、巻始め部において互いに折り重ねられた記録紙同士を効果的に分離できる。
【0019】
本発明のサーマルプリンタは、上記構成において、さらに、前記記録紙収容部の内部に、前記分離手段として、巻き解かれた前記記録紙を介して前記第1分離壁と対向する位置で、前記記録紙の前記巻始め部が巻き解かれたときに、前記記録紙の剛性による反発力に伴い、前記巻始め部の周面の少なくとも一部が当接する位置に設けられた第2分離壁を備える構成を採用することが好ましい。
【0020】
本発明によれば、上記のように、分離手段として、さらに、記録紙を介して第1分離壁と対向する位置で、記録紙の剛性による反発力に伴い、巻始め部の周面が当接する位置で第2分離壁が設けられていることで、芯体から巻き解かれて丸みを帯びた記録紙が、該記録紙のコシ(剛性)によって上記の第1分離壁に当接するとともに、第2分離壁にも当接する。これにより、第1分離壁及び第2分離壁の両方と記録紙の周面との摩擦により、巻始め部において互いに折り重ねられた記録紙同士を確実に分離できる。
また、第2分離壁が設けられた構成を採用することで、例えば、芯体の径が大きいために巻始め部の丸みの径も大きくなり、第1分離壁では巻始め部の周面を当接させることが難しい場合においても、第2分離壁側に巻始め部が当接するので、種々の芯径を有する記録紙に対応できる。
【0021】
本発明のサーマルプリンタは、上記構成において、前記第2分離壁が、前記記録紙の前記巻始め部の周面の少なくとも一部が当接する位置に、摩擦抵抗部材が備えられている構成を採用することが好ましい。
【0022】
本発明によれば、上記のように、第2分離壁における記録紙の巻始め部が当接する位置に摩擦抵抗部材が備えられていることで、摩擦抵抗部材と記録紙の周面との間の摩擦力が上昇し、巻始め部において互いに折り重ねられた記録紙同士をより効果的に分離できる。
【0023】
本発明のサーマルプリンタは、上記構成において、前記第2分離壁が、前記記録紙の前記巻始め部の周面の少なくとも一部が当接する位置に、前記巻始め部における折り返し形状とされた端部を係止させるための係止部が設けられている構成を採用することが好ましい。
【0024】
本発明によれば、上記のように、第2分離壁における記録紙の巻始め部が当接する位置に係止部が設けられていることで、巻始め部における折り返し形状とされた端部が係止部に係止されるので、巻始め部において互いに折り重ねられた記録紙同士をさらに効果的に分離できる。
【0025】
本発明のサーマルプリンタは、上記構成において、前記第2分離壁が、前記プリンタ本体に取り付けられている構成を採用してもよい。
【0026】
本発明によれば、上記のように、第2分離壁がプリンタ本体に取り付けられていることで、サーマルプリンタの製造時の組立性やメンテナンス性を高めながら、巻始め部において互いに折り重ねられた記録紙同士を効果的に分離できる。
【0027】
本発明のサーマルプリンタは、上記構成において、さらに、前記プラテンユニットにおける、巻き解かれた前記記録紙を介して前記第2分離壁と対向する位置であって、且つ、前記記録紙が搬入される間隙部の入口近傍の位置に、前記記録紙をガイドするガイド部が設けられている構成を採用することが好ましい。
【0028】
本発明によれば、上記のように、プラテンユニットにおいて、記録紙をガイドするガイド部が設けられていることで、記録紙の巻始め部が第2分離壁に対して確実に当接するので、巻始め部において互いに折り重ねられた記録紙同士を確実に分離できる。
【0029】
本発明のサーマルプリンタは、上記構成において、前記ガイド部は、前記記録紙の前記芯体と平行で回動可能なガイド軸からなる構成を採用してもよい。
【0030】
本発明によれば、上記のように、ガイド部を回動可能なガイド軸から構成することで、記録紙を確実にガイドして第2分離壁に当接させることができるので、巻始め部において互いに折り重ねられた記録紙同士をより確実に分離できる。
【0031】
本発明のサーマルプリンタは、上記構成において、前記ガイド部は、前記第2分離壁と対向するように突出するガイド壁からなる構成を採用してもよい。
【0032】
本発明によれば、上記のように、ガイド部をガイド壁から構成することで、記録紙を確実にガイドして第2分離壁に当接させることができるので、巻始め部において互いに折り重ねられた記録紙同士をより確実に分離できる。また、ガイド部をガイド壁から構成することで、プラテンユニットを構成する部材と一体に形成することができるので、当該サーマルプリンタの生産性が向上するとともに、製造コストを低減できる。
【0033】
本発明のサーマルプリンタは、上記構成において、さらに、前記記録紙収容部の内部に、巻き解かれた前記記録紙を介して前記第1分離壁と対向する位置で、前記記録紙を前記第1分離壁側にガイドするテンションバーが備えられている構成を採用してもよい。
【0034】
本発明によれば、上記のように、記録紙を第1分離壁側にガイドするテンションバーが備えられていることで、記録紙を確実にガイドして第1分離壁に当接させることができるので、巻始め部において互いに折り重ねられた記録紙同士をより確実に分離できる。
【0035】
本発明のサーマルプリンタは、上記構成において、前記テンションバーの表面の少なくとも一部に、前記記録紙の前記巻始め部における折り返し形状とされた端部を係止させるための係止部が設けられている構成を採用してもよい。
【0036】
本発明によれば、上記のように、テンションバーの表面に係止部が設けられていることで、記録紙を第1分離壁側にガイドする際に、巻始め部における折り返し形状とされた端部が係止部に係止されるので、巻始め部において互いに折り重ねられた記録紙同士をさらに効果的に分離できる。
【0037】
本発明のサーマルプリンタは、上記構成において、前記分離手段が、巻き解かれた前記記録紙を介して前記プラテンユニットと対向する位置で、前記記録紙を前記プラテンユニット側にガイドするテンションバーと、前記プラテンユニットにおける、前記記録紙が搬入される間隙部の入口近傍の位置に、前記テンションバーと対向するように設けられ、前記テンションバーによって前記プラテンユニット側にガイドされた前記記録紙が当接するガイド部と、前記間隙部の入口近傍における、前記ガイド部とは前記間隙部を介して反対側に設けられ、前記テンションバー及び前記ガイド部によってガイドされた前記記録紙の少なくとも一部が当接する第3分離壁と、を備え、前記テンションバーの先端と、前記ガイド部の先端とが、前記プラテンユニットと前記テンションバーとの対向方向でオーバーラップするように配置されている構成を採用することができる。
【0038】
本発明によれば、上記のような、テンションバー、ガイド部及び第3分離壁を備え、テンションバー及びガイド部における各々の先端が対向方向でオーバーラップするように配置されていることで、記録紙を確実にガイドして第3分離壁に当接させることができるので、巻始め部において互いに折り重ねられた記録紙同士をより確実に分離できる。
【0039】
本発明のサーマルプリンタは、上記構成において、前記第3分離壁が、前記記録紙の前記巻始め部の周面の少なくとも一部が当接する位置に、前記巻始め部における折り返し形状とされた端部を係止させるための係止部が設けられている構成を採用することが好ましい。
【0040】
本発明によれば、上記のように、第3分離壁に係止部が設けられていることで、記録紙を第3分離壁側にガイドする際に、巻始め部における折り返し形状とされた端部が係止部に係止されるので、巻始め部において互いに折り重ねられた記録紙同士をさらに効果的に分離できる。
【0041】
本発明のサーマルプリンタは、上記構成において、前記分離手段が、巻き解かれた前記記録紙を介して前記プラテンユニットと対向する位置で、前記記録紙を前記プラテンユニット側にガイドするテンションバーと、前記プラテンユニットと前記テンションバーとの間に配置され、前記テンションバーとの間で前記記録紙をガイドする第4分離壁と、前記間隙部の入口近傍に設けられ、前記テンションバー及び前記第4分離壁によってガイドされた前記記録紙の少なくとも一部が当接する第3分離壁と、を備える構成を採用することができる。
【0042】
本発明によれば、上記のような、テンションバー、第4分離壁及び第3分離壁が備えられていることで、記録紙を確実にガイドして第4分離壁及び第2分離壁に当接させることができるので、巻始め部において互いに折り重ねられた記録紙同士をより確実に分離できる。
【0043】
本発明のサーマルプリンタは、上記構成において、前記第4分離壁が、前記プリンタカバーに取り付けられている構成を採用してもよい。
【0044】
本発明によれば、上記のように、第4分離壁がプリンタカバーに取り付けられていることで、サーマルプリンタの製造時の組立性やメンテナンス性を高めながら、巻始め部において互いに折り重ねられた記録紙同士を効果的に分離できる。
【0045】
本発明のサーマルプリンタは、上記構成において、前記分離手段が、前記記録紙の前記巻始め部が巻き解かれたときに、摩擦抵抗部材に対して前記記録紙の少なくとも一部が当接するように、前記記録紙を与圧するように設けられる一対のガイドロールからなる構成を採用してもよい。
【0046】
本発明によれば、上記のように、分離手段が、摩擦抵抗部材に対して記録紙が当接するように、記録紙を与圧するように設けられる一対のガイドロールから構成されることで、巻始め部が折り返し形状とされた記録紙の周面を確実に摩擦抵抗部材に当接させることができるので、巻始め部において互いに折り重ねられた記録紙同士を確実に分離できる。
【発明の効果】
【0047】
本発明のサーマルプリンタによれば、上記構成を備えることにより、芯体にロール状に巻回された記録紙のうち、芯体に巻き付けられた折り返し形状を有する巻始め部において、互いに折り重ねられた記録紙同士が効果的に分離される。これにより、巻始め部が折り返し形状のままでヘッドユニットとプラテンユニットとの間隙部に搬送されるのを防止できるので、ロール状の記録紙が紙切れとなる際に、プリンタ内部で紙詰まり等が生じることがなく、センサによる誤検知も防止できる。従って、信頼性が顕著に優れたサーマルプリンタを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の第1の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、プリンタカバーを閉じた状態を示す斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、図1に示すサーマルプリンタにおいて、プリンタカバーが開いた状態を示す斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、図1及び図2中に示すサーマルプリンタに備えられるヘッドユニット及びプラテンユニットを示す斜視図である。
図4A】本発明の第1の実施形態であるサーマルプリンタの要部を模式的に説明する図であり、記録紙収容部に備えられる第1分離壁と、折り返し形状とされた記録紙の巻始め部との関係を示す部分破断図である。
図4B】本発明の第1の実施形態であるサーマルプリンタの要部を模式的に説明する図であり、記録紙収容部に備えられる第1分離壁と、折り返し形状とされた記録紙の巻始め部との関係を示す部分破断図である。
図4C】本発明の第1の実施形態であるサーマルプリンタの要部を模式的に説明する図であり、記録紙収容部に備えられる第1分離壁と、折り返し形状とされた記録紙の巻始め部との関係を示す部分破断図である。
図5】本発明の第1の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、図4A図4Cに示したサーマルプリンタの変形例を示す図で、第1分離壁に摩擦抵抗部材を設けた構成を示す部分破断図である。
図6A】本発明の第1の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、図4A図4Cに示したサーマルプリンタの変形例を示す図で、第1分離壁に凹状の係止部を設けた構成を示す部分破断図である。
図6B】本発明の第1の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、図6A中の要部を示す部分拡大図である。
図7】本発明の第1の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、記録紙における巻始め部の丸みが大きい場合における、記録紙収容部に備えられる第1分離壁及び第2分離壁と、折り返し形状とされた記録紙の巻始め部との関係を示す部分破断図である。
図8A】本発明の第2の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、図7中に示した第2分離壁に凹状の係止部を設けるとともに、回動可能なガイド軸からなるガイド部を設けた構成を示す部分破断図である。
図8B】本発明の第2の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、図8A中の要部を示す部分拡大図である。
図9A】本発明の第2の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、図7中に示した第2分離壁に凹状の係止部を設けるとともに、第2分離壁と対向するように突出するガイド壁からなるガイド部を設けた構成を示す部分破断図である。
図9B】本発明の第2の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、図9A中の要部を示す部分拡大図である。
図10A】本発明の第3の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、記録紙収容部に備えられる第1分離壁及びテンションバーと、折り返し形状とされた記録紙の巻始め部との関係を示す部分破断図である。
図10B】本発明の第3の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、記録紙収容部に備えられる第1分離壁及びテンションバーと、折り返し形状とされた記録紙の巻始め部との関係を示す部分破断図である。
図10C】本発明の第3の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、図10B中の要部を示す部分拡大図である。
図11A】本発明の第4の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、記録紙収容部に備えられる第3分離壁、テンションバー及びガイド壁と、折り返し形状とされた記録紙の巻始め部との関係を示す部分破断図である。
図11B】本発明の第4の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、図11A中の要部を示す部分拡大図である。
図12A】本発明の第4の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、サーマルプリンタの要部を示す図で、第3分離壁に凹状の係止部を設けた構成を示す部分破断図である。
図12B】本発明の第4の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、図12A中の要部を示す部分拡大図である。
図13】本発明の第5の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、記録紙収容部に備えられる第3分離壁、テンションバー及びプラテンユニットの下端と、折り返し形状とされた記録紙の巻始め部との関係を示す部分破断図である。
図14A】本発明の第6の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、記録紙収容部に備えられる第2分離壁、ガイド壁及びガイドローラーと、折り返し形状とされた記録紙の巻始め部との関係を示す部分破断図である。
図14B】本発明の第6の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、図14A中の要部を示す部分拡大図である。
図15A】本発明の第7の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、記録紙収容部に備えられる第3分離壁、ガイド壁及び規制壁と、折り返し形状とされた記録紙の巻始め部との関係を示す部分破断図である。
図15B】本発明の第7の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、図15A中の要部を示す部分拡大図である。
図16A】本発明の第6の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、一対のガイドロールと、折り返し形状とされた記録紙の巻始め部との関係を示す部分破断図である。
図16B】本発明の第6の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、一対のガイドロールと、折り返し形状とされた記録紙の巻始め部との関係を示す部分破断図である。
図16C】本発明の第6の実施形態であるサーマルプリンタを模式的に説明する図であり、一対のガイドロールと、折り返し形状とされた記録紙の巻始め部との関係を示す部分破断図である。
図17A】従来のサーマルプリンタを模式的に説明する部分破断図である。
図17B】従来のサーマルプリンタを模式的に説明する部分破断図である。
図17C】従来のサーマルプリンタを模式的に説明する部分破断図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明のサーマルプリンタの実施形態を挙げ、その構成について図1図16Cを適宜参照しながら詳述する。なお、以下の説明で用いる各図面は、本発明のサーマルプリンタの特徴をわかりやすくするため、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なる場合がある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0050】
<第1の実施形態>
以下に、本発明の第1の実施形態について、図1図7を参照しながら詳述する。
【0051】
[サーマルプリンタの構成]
以下に、本実施形態のサーマルプリンタの構成について説明する。
図1は、本実施形態のサーマルプリンタ1においてプリンタカバー3を閉じた状態を示す斜視図であり、図2はプリンタカバー3を開いた状態を示す斜視図である。また、図3は、本実施形態のサーマルプリンタ1に備えられるヘッドユニット5及びプラテンユニット4を示す斜視図である。
【0052】
図1及び図2に示すように、本実施形態のサーマルプリンタ1は、例えば、ATMや鉄道駅売店における無人端末、コンビニエンスストア等において、各種発券に用いられる小型の感熱式プリンタである。即ち、サーマルプリンタ1は、ロール紙Rから引き出された記録紙(例えば感熱紙)100に感熱印刷を施すことで、記録紙100をチケットやレシート等として利用することができるプリンタ(端末)である。
【0053】
サーマルプリンタ1は、ケーシング(プリンタ本体)2と、プリンタカバー3と、プリンタカバー3側に設けられたプラテンユニット4と、ケーシング2側に設けられたヘッドユニット5と、を備えている。また、本実施形態では、プラテンユニット4及びヘッドユニット5で印字ユニット8が構成されている。
【0054】
本実施形態においては、図1に示すプリンタカバー3の閉位置において、紙面に対して左下側(プリンタカバー3側)を前方(矢印FW方向)、右上側(ケーシング2側)を後方(矢印BA方向)、上側を上方、下側を下方とする。また、記録紙Pは前方FWに排出されるものとする。さらに、前後方向L1及び上下方向L2に対して直交する方向を左右方向L3とする。また、その他の各図面において、サーマルプリンタ1の方向を変更して示している場合には、上記の各方向を示す各記号を図中に記している。
【0055】
より詳細に説明すると、本実施形態のサーマルプリンタ1は、記録紙100に印字する図視略のサーマルヘッドを有するヘッドユニット5と、記録紙を搬送するプラテンローラ33を有し、ヘッドユニット5に分離可能に組み合わされるプラテンユニット4とから構成される印字ユニット8を有する。また、サーマルプリンタ1は、記録紙100を収容する記録紙収容部10を有するとともに、ヘッドユニット5が取り付けられたケーシング2と、プラテンユニット4が取り付けられ、ケーシング2に対して回動可能に連結されたプリンタカバー3とを備え、概略構成される。
【0056】
そして、本実施形態のサーマルプリンタ1は、図4A図4Cに示すように、記録紙収容部10の内部に、芯体101にロール状に巻回された記録紙100(ロール紙R)のうち、芯体101に巻き付けられた折り返し形状を有する巻始め部102に対し、互いに折り重ねられた記録紙100同士を分離するための第1分離壁(分離手段)80を備えている。図4A図4Cに示す例においては、第1分離壁80に当接した記録紙100の巻始め部102が、第1分離壁80との間の摩擦によって折り重ねられた記録紙100同士が分離されることで、記録紙100が、1枚分のみの厚さでプラテンユニット4とヘッドユニット5との間に搬送されている
以下、本実施形態のサーマルプリンタ1の各構成について説明する。
【0057】
(ケーシング(プリンタ本体))
ケーシング(プリンタ本体)2は、例えば、樹脂材料や金属材料、あるいは、これらの各材料を適宜組み合わせることで、前方FWに開口するキューブ状に構成されている。但し、ケーシング2の形状は、図示例の形状に限定されるものではなく、デザイン性やサイズ面を勘案しながら、適宜変更しても構わない。
【0058】
ケーシング2は、その詳細な図示は省略するが、例えば、基本骨格となるフレーム体と、フレーム体を覆う外装カバーとから構成される。ケーシング2の内部には、ロール紙Rが収容される記録紙収容部10が形成され、プリンタカバー3を開けることで記録紙収容部10が前方FWに開放される。
【0059】
記録紙収容部10は、上述した図視略のフレーム体の一部によって構成された、前方FWに向けて開口する箱型とされ、その内側に、ロール紙Rが幅方向を左右方向L3に一致させた状態で収容される。
【0060】
ケーシング2の開口縁における下部には、左右方向L3に沿って延在する第1回動軸11が配設されている。第1回動軸11には、プリンタカバー3がケーシング2に対して回動可能に連結されている。プリンタカバー3は、ケーシング2の開口部を閉塞する閉位置(図1中に示す位置)と、ケーシング2の開口部を開放する開位置(図2中に示す位置)との間で、概ね90度程度の角度範囲で回動する。これにより、ケーシング2の開口部(即ち、記録紙収容部10)がプリンタカバー3によって開閉される。
なお、サーマルプリンタ1は、プリンタカバー3が開位置のときに、例えば、ロール紙Rを記録紙収容部10内に投入することが可能とされ、所謂ドロップイン方式に構成されている。
【0061】
サーマルプリンタ1は、プリンタカバー3が閉位置に位置しているときに、プリンタカバー3の先端部とケーシング2との間に、若干の隙間が空くように構成されている。記録紙100は、この隙間を利用してケーシング2の内部から前方FWに引き出される。従って、上述した「若干の隙間」は、記録紙100の排出口12として機能する。
【0062】
ケーシング2及びプリンタカバー3は、プリンタカバー3が閉位置に位置しているときに、プラテンユニット4とヘッドユニット5との組み合わせに伴ってロック状態とされる。また、ケーシング2における上部前側に位置する角部のうち、左右方向L3の一方側に位置する角部には、プラテンユニット4とヘッドユニット5との組み合わせ(ロック状態)を解除して、プリンタカバー3の開操作を行うための操作レバー13が設けられている。
【0063】
(印字ユニット)
図2及び図3に示すように、ヘッドユニット5は、図視略のサーマルヘッドの他、可動刃22等が組み込まれたユニットであり、ケーシング2内における上部前側に配設されている。ヘッドユニット5は、ケーシング2の上面から下方に向けて延設された図示略の内部プレート上に固定され、記録紙収容部10よりも前方FWで保持されている。
【0064】
ヘッドユニット5は、ヘッドフレーム23と、サーマルヘッドと、可動刃22と、駆動機構24と、操作レバー25と、戻し機構26と、ロック解除機構27と、を備えて概略構成されている。
ヘッドフレーム23は、例えば金属製のフレームで形成されている。
図視略のサーマルヘッドは、左右方向L3に沿ってライン状に並んだ複数の発熱素子を有している。
【0065】
プラテンユニット4は、プリンタカバー3の内面の上部において、補強部材31と前後方向L1で重なる位置に取り付けられ、プリンタカバー3の開閉動作に伴ってヘッドユニット5に分離可能に組み合わせられている。
具体的には、プラテンユニット4はプラテンローラ33の他、固定刃34と、プラテンフレーム35とを備えて概略構成されている。
【0066】
プラテンローラ33は、記録紙100をプリンタカバー3の外部に搬送するローラである。
固定刃34は、プリンタカバー3の内部に設けられ、プラテンローラ33に対して前方FWに配置されている。
プラテンフレーム35は、プラテンローラ33及び固定刃34を支持するフレームである。
【0067】
なお、図視略のサーマルヘッドは、プリンタカバー3が閉位置に位置しているときに、プラテンローラ33に対向し、プラテンローラ33との間で記録紙100が通過可能となるように配置されている。さらに、サーマルヘッドとプラテンローラ33との間には、サーマルヘッドを下方(プラテンローラ33側)に向けて付勢する図視略のコイルバネが介在されている。これにより、プラテンローラ33によって送り出される記録紙100に対してサーマルヘッドを確実に押し付けることができ、印字ユニット8による良好な印刷特性が得られるように構成されている。
【0068】
図3に示すように、可動刃22は、駆動機構24を介してケーシング2(図2を参照)に設けられている。
可動刃22は、プリンタカバー3が閉位置(図1を参照)に配置され、ヘッドユニット5とプラテンユニット4とが組み合わされた状態において、固定刃34に前後方向L1で対向するように配設されている。可動刃22は、根元22aから刃先22bまでの長さが両端から中央に向かって漸次短くなるように形成されたV字状の板状刃とされている。
【0069】
可動刃22は、可動刃ホルダ29を介して駆動機構24の駆動ラック46に取り付けられている。可動刃22は、駆動機構24の動作によってヘッドフレーム23に対して上下方向L2に移動可能に構成されている。これにより、可動刃22は固定刃34に対して上下方向L2に移動可能に支持されている。
【0070】
図3中に示した駆動機構24は、記録紙100に対する切断位置と待機位置(図3中の可動刃22の位置)とに可動刃22を移動させる機構である。詳細な図示は省略するが、切断位置とは、可動刃22が固定刃34に乗り上げて、可動刃22が固定刃34と共に記録紙100を切断する位置である。待機位置 とは、固定刃34から可動刃22が離れた位置、即ち、図3中に示す可動刃22の位置である。
具体的には、駆動機構24は、駆動用モータM1と、第1~第4の駆動歯41~44と、駆動ピニオン45と、駆動ラック46とを備えている。
【0071】
駆動用モータM1は、正逆回転可能なモータである。第1駆動歯41は、駆動用モータM1の駆動軸に連結されている。第1駆動歯41は、第2~第4の駆動歯42~44を介して駆動ピニオン45に連結されている。
駆動ピニオン45は、ピニオン支持軸48に同軸上に取り付けられている。ピニオン支持軸48は駆動ピニオン45と共に一体に回転する。駆動ピニオン45は、左右方向L3にそれぞれ一対設けられている。一対の駆動ピニオン45は、左右方向L3の駆動ラック46に噛み合わされている。一対の駆動ピニオン45は、ピニオン支持軸48により連結されている。
【0072】
駆動ラック46には、待機位置側の端部(上端部)から切断位置側の端部(下端部)に亘って複数の駆動ラック歯47が形成されている。すなわち、駆動ラック46には、全域に亘って駆動ラック歯47が形成されている。
駆動ラック46は、可動刃ホルダ29の左右方向L3に沿う両端部に取り付けられ、上下方向L2に沿って延在されている。すなわち、駆動ラック46には可動刃ホルダ29を介して可動刃22が取り付けられている。
【0073】
以下、本実施形態のサーマルプリンタ1の全体構成の理解を容易にするために、駆動用モータM1側の駆動ピニオン45及び駆動ラック46について詳細に説明する。なお、駆動用モータM1とは左右方向L3で反対側に位置する駆動ピニオン45及び駆動ラック46については、その詳細な説明を省略する。
【0074】
駆動用モータM1が正転することにより、駆動用モータM1の回転が第1~第4の駆動歯41~44を経て駆動ピニオン45に伝えられる。これにより、駆動ピニオン45が図3に示す矢印A方向に回転して、駆動ラック46が、戻し機構26の戻しラック64とともに、図3中に示す矢印B方向に移動する。このように、駆動ラック46が移動することにより、駆動ラック46とともに可動刃22が矢印B方向に直線移動する。これにより、可動刃22を切断位置まで移動させることができる。
【0075】
一方、駆動用モータM1が逆転することにより、駆動用モータM1の回転が第1~第4の駆動歯41~44を経て駆動ピニオン45に伝えられる。駆動ピニオン45が図3中に示す矢印C方向に回転することで、駆動ラック46が図3中に示す矢印D方向に移動する。このように、駆動ラック46が移動することにより、駆動ラック46とともに可動刃22が矢印D方向に直線移動する。これにより、可動刃22を待機位置まで移動させることができる。
【0076】
操作レバー25は、ヘッドフレーム23の側壁部側にレバー支持軸52を介して回動可能に支持されている。
操作レバー25は、操作力F1によって、レバー支持軸52を軸にしてロック位置から、後述する当接位置や解除位置へ向けて後方(矢印BA方向)に押込み操作可能に構成されている。レバー支持軸52は、ケーシング2の外装カバーから内側へ向けて突出されている。
【0077】
ここで、操作レバー25のロック位置とは、ヘッドユニット5に対してプラテンユニット4がロック状態に保持される位置をいう。また、操作レバー25の当接位置とは、操作レバー25に備えられる図視略のレバー突部が、リリースカム91に備えられる図視略のカム突部に当接する位置をいう。また、操作レバー25の解除位置とは、ヘッドユニット5に対するプラテンユニット4のロック状態が解除される位置をいう。
【0078】
操作レバー25は、外側面25aから図視略のプラネタリ軸が外側へ向けて突出され、外側面25aに図視略の係止溝部が形成されている。さらに、操作レバー25は、外側面25aとは反対側の内側面から、図視略のレバー突部が内側へ向けて突出されている。
【0079】
操作レバー25の先端部25cは、操作レバー13における連結体16(図2を参照)の内側に嵌合されている。そのため、操作レバー25は、操作レバー13の操作に連動して操作される。これにより、操作レバー13をロック位置からリリース位置に操作することにより、操作レバー25がロック位置から解除位置に向けて操作される。
【0080】
戻し機構26は、可動刃22を切断位置から待機位置側に向けて戻す機構である。
戻し機構26は、紙ジャムの発生によって可動刃22が切断位置に止められた状態において、操作レバー25と連動して可動刃22を待機位置側に向けて移動させる。
具体的には、戻し機構26は、加速機構61と、戻しピニオン63と、戻しラック64とを備えている。
【0081】
加速機構61は、図視略のサンギアと、プラネタリギア67と、図視略のインターナルギアとを備えている。
また、プラネタリギア67は、上記のサンギアに噛み合うように配置されている。
【0082】
プラネタリギア67は、操作レバー25に図視略のプラネタリ軸を介して回転自在に支持されている。プラネタリ軸は、レバー支持軸52に対してオフセットされた位置に配置されている。よって、操作レバー25がレバー支持軸52を軸にして回転することにより、操作レバー25の移動に追従してプラネタリ軸(即ち、プラネタリギア67)がレバー支持軸52を中心にして公転する。
【0083】
プラネタリギア67には図視略のインターナルギアが噛合い可能に設けられている。このインターナルギアは、操作レバー25がロック位置に位置する状態において、プラネタリギア67との噛合いが回避されるように形成されている。
【0084】
このように構成された加速機構61によれば、操作レバー25がロック位置から当接位置や解除位置へ向けて操作されることにより、操作レバー25の移動に追従してプラネタリギア67が図視略のインターナルギアに向けて公転する。このように、プラネタリギア67が公転することにより、インターナルギアに対して噛み合う。そして、さらなる操作レバー25の操作により、プラネタリギア67がインターナルギアに噛み合いながら回転(自転)する。
【0085】
付勢部材75は、詳細な図示を省略するが、図視略の支持ピンに支持されたコイル部と、外装カバーに係止された第1端部75bと、操作レバー25に備えられる図視略の係止溝部に係止された第2端部とを有する。これにより、操作レバー25は、付勢部材75の付勢力で図視略のレバーストッパに当接した状態に保持されることにより、ロック位置に位置決めされる。
ただし、付勢部材75としては上述の構成に限定されるものではなく、例えば、板ばね等であっても構わない。
【0086】
さらに操作レバー25は、ロック位置から当接位置や解除位置まで付勢部材75の付勢力に抗して操作された状態において、操作レバー25から操作力が除去されることにより、操作レバー25が付勢部材75の弾性復元力(付勢力)によってロック位置に復帰する。
【0087】
図3に示すように、戻しピニオン63は、駆動ピニオン45の外側において同軸上に配置され、ピニオン支持軸48に回転自在に支持されている。即ち、戻しピニオン63は、操作レバー25に連動可能に連結されている。
戻しピニオン63は、戻しラック64の複数のラック歯59に噛み合うように形成されている。戻しラック64は、駆動機構24の駆動ラック46の外側に配置された状態において駆動ラック46に一体に形成されている。戻しラック64は、可動刃22の刃先22bの反対側にのみラック歯59が形成されている。
よって、戻しラック64は、可動刃22が切断位置に位置したときに戻しピニオン63と噛み合い、可動刃22が待機位置に位置したときに戻しピニオン63との噛み合いが解除される。
【0088】
また、駆動ラック46に戻しラック64を形成することにより、駆動ラック46と戻しラック64とを一体に形成でき、部品点数を増やすことなく戻しラック64を備えることができる。これにより、印字ユニット8やサーマルプリンタ1の構成の簡素化を図ることができるとともに、製造コストを抑えることができる。
【0089】
図3中に示すように、操作レバー25の内側にはロック解除機構27が配置されている。
ロック解除機構27は、操作レバー25の回動動作に連動してプリンタカバー3のロックを解除する機構である。つまり、ヘッドユニット5に対するプラテンユニット4のロックが操作レバー25で解除される。ロック解除機構27は、リリースカム91と、図視略のレバー突部及びカムストッパとを備えている。
ロック解除機構27は、上記構成により、ヘッドユニット5に対するプラテンユニット4のロックを解除することが可能とされている。
【0090】
(分離手段)
本実施形態のサーマルプリンタ1は、さらに、プラテンユニット4とヘッドユニット5との間隙部Sに、芯体101にロール状に巻回された記録紙100が巻き解かれて搬送される際、芯体101に巻き付けられた折り返し形状を有する巻始め部102に対し、互いに折り重ねられた記録紙100同士を分離するための分離手段を備えている。
【0091】
具体的には、本実施形態のサーマルプリンタ1は、上記の分離手段として、図4A図4C中に示すような、記録紙100の巻始め部102が巻き解かれたときに、記録紙100の剛性による反発力に伴い、巻始め部102の周面の少なくとも一部が当接する位置に設けられる第1分離壁80を備えている。
【0092】
第1分離壁80は、記録紙収容部10に、ロール紙Rの近傍に設けられており、図示例では、短手壁81と長手壁82とからなる、概略L字状の部材として構成されている。短手壁81は、ロール紙Rから巻き解かれた記録紙100の経路の近傍に配置される。
また、第1分離壁80は、上記の長手壁82が、プリンタカバー3の内壁に取り付けられることで支持されている。
【0093】
第1分離壁80は、上記の短手壁81の表面81aが、巻き解かれた記録紙100における巻始め部102が当接する面として機能する。また、同図中において、短手壁81の表面81aは、図中の前後方向L1を向く面となる。
【0094】
上記のような、第1分離壁80を備えた構成を採用することにより、以下に説明するような作用が得られる。
まず、記録紙収容部10の内部に収容された、芯体101に記録紙100がロール状に巻回されたロール紙Rは、順次、プラテンユニット4とヘッドユニット5との間に搬送され、感熱印刷された後、図3中に示すような可動刃22と固定刃34とによって裁断され、外部に向けて、レシート等として搬出される。
【0095】
その後、図4Aに示すように、ロール紙Rは、順次、記録紙100が巻き解かれ、最後に、折り返し形状を有する巻始め部102の部分が芯体101から離間する。芯体101から離れた巻始め部102は、プラテンユニット4とヘッドユニット5との間隙部Sに向けて搬送され、第1分離壁80における短手壁81の表面81aに当接する。この際、巻始め部102は、記録紙100の紙としての特性に由来するコシ(剛性)によって表面81aに当接する。
【0096】
図4Bに示すように、巻始め部102は、第1分離壁80における表面81aに当接した後、表面81aと記録紙100(巻始め部102)の周面との摩擦により、互いに折り重ねられた記録紙100同士が次第に離間する。
そして、図4Cに示すように、巻始め部102は、記録紙100が折り重ねられることなく完全に分離され、1枚分のみの厚さでプラテンユニット4とヘッドユニット5との間隙部Sに向けて搬送され、感熱印刷、裁断が施された後、詰まり等を生じることなく外部に向けて搬出される。
【0097】
第1分離壁80の材質としては、特に限定されず、例えば、記録紙100との間で一定の摩擦力を確保できる材料を適宜採用することができる。このような材料としては、特に限定されないが、サーマルプリンタ1におけるプラテンユニット4やヘッドユニット5を構成する樹脂材料と同様のものを用いることができ、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂やポリカーボネート(PC)樹脂等が好適に用いられる。
【0098】
本実施形態のような第1分離壁80を備えた構成によれば、上述したように、芯体101から巻き解かれて丸みを帯びた記録紙100が、記録紙の剛性によって第1分離壁80の表面81aに当接し、巻始め部102における表面81a側の記録紙100が、表面81aとの摩擦によって留まり、巻始め部102の他方の記録紙100のみが通紙方向に引っ張られる。これにより、巻始め部102において折り重ねられた記録紙100同士の相対的作用で、巻始め部102が開きながら、つまり、記録紙100同士が分離しながらヘッドユニット5とプラテンユニット4との間隙部Sに搬送されるので、巻始め部102が折り返し形状のままで通紙されるのを防止できる。つまり、通常の搬送である重送の無い状態で記録紙100が搬送されるため、サーマルプリンタ1の内部で紙詰まり等が生じることなく、ロール紙R(記録紙100)が紙切れとなる間際であっても、最後まで通紙できる。これにより、図視略の紙切れセンサの近傍を、記録紙100の先端100aが通過し、正常に紙切れ検知ができるので、紙切れセンサによる誤検知も防止することができる。
【0099】
また、本実施形態によれば、第1分離壁80を設けるのみの簡便な構成で、記録紙100の巻始め部102における折り返し形状を開放・解消することができるので、大幅なコストアップを招くことなく、内部における紙詰まりや紙切れセンサによる誤検知を回避することができ、サーマルプリンタとしての性能向上にもつながる。
【0100】
本実施形態においては、上記の第1分離壁80を備えた構成において、第1分離壁80に備えられる短手壁81が、記録紙100の巻始め部102の周面の少なくとも一部に対して与圧するように設けられていることが好ましい。即ち、短手壁81の表面81aの位置が、記録紙100の搬送経路上において、図4A図4Cに示す例のように、丸みを帯びる癖がついた記録紙100を与圧できる位置(例えば、後述する第2分離壁90側に寄った位置)とされていることが好ましい。
【0101】
上記のように、第1分離壁80が、記録紙100の巻始め部102の周面の少なくとも一部を与圧することで、第1分離壁80と記録紙100の周面との摩擦力が上昇し、巻始め部102において互いに折り重ねられた記録紙100同士をより効果的に分離できる。
【0102】
なお、本実施形態における分離手段は、上記の構成には限定されない。
例えば、図5に示す例のように、上記の第1分離壁80に、記録紙100の巻始め部102の周面の少なくとも一部が当接する位置に、摩擦抵抗部材83が備えられている構成を採用することがより好ましい。
【0103】
このように、第1分離壁80における記録紙100の巻始め部102が当接する位置に摩擦抵抗部材83が備えられていることで、摩擦抵抗部材83と記録紙100の周面との間の摩擦力が上昇し、巻始め部102において互いに折り重ねられた記録紙100同士をさらに効果的に分離できる。
【0104】
摩擦抵抗部材83の材質としても、特に限定されないが、記録紙100との間で高い摩擦力を発揮できる摩擦係数を有する材料、例えば、ポリウレタンフォームや各種ゴム材料等を何ら制限無く用いることができる。
【0105】
また、本実施形態においては、図6A及び図6Bに示す例のように、第1分離壁80が、記録紙100の巻始め部102の周面の少なくとも一部が当接する位置に、巻始め部102における折り返し形状とされた先端100aを係止させるための係止部81bが設けられている構成を採用することがより好ましい。図示例においては、第1分離壁80における短手壁81の先端に凹状の係止部81bが設けられている。
【0106】
このように、第1分離壁80における記録紙100の巻始め部102が当接する位置に係止部81bが設けられていることで、巻始め部102における折り返し形状とされた先端100aが係止部81bに係止されるので、巻始め部102において互いに折り重ねられた記録紙100同士をさらに効果的に分離できる。このとき、記録紙100の通紙経路を、折り返し形状とされた先端100aが、係止部81bに係合して記録紙100の進行方向とは逆方向にターンするように構成することで、巻始め部102を浮かせた状態とし、互いに折り重ねられた記録紙100同士を効果的に分離できる。
なお、図示例においては、短手壁81に凹状の係止部81bを設置しているが、これには限定されず、例えば、凸状の係止部を設けた場合でも上記の効果が得られる。
【0107】
本実施形態のサーマルプリンタ1によれば、第1分離壁80を備えていることで、上記のような、巻始め部102で折り重ねられた記録紙100同士を分離する効果が得られるが、これに加え、さらに、図4A図4C図5図6A及び図6B中に示すような第2分離壁90が設けられていることがより好ましい。図示例においては、記録紙収容部10の内部に、巻き解かれた記録紙100を介して第1分離壁80と対向する位置で、記録紙100の剛性による反発力に伴い、巻始め部102の周面の少なくとも一部が当接する位置に第2分離壁90が設けられている。
【0108】
このように、第1分離壁80と対向する位置であって、且つ、巻始め部102の周面が当接する位置で第2分離壁90が設けられていることで、芯体101から巻き解かれて丸みを帯びた記録紙100が、この記録紙100の剛性によって上述した第1分離壁80に当接するとともに、第2分離壁90にも当接する。これにより、第1分離壁80及び第2分離壁90の両方と記録紙100の周面との摩擦により、巻始め部102において互いに折り重ねられた記録紙100同士を確実に分離できる効果が得られる(図7に示す例も参照)。
【0109】
さらに、上記構成の第2分離壁90が設けられていることで、例えば、図7中に示すように、図視略の芯体の径が大きいことに起因し、巻始め部102の丸みの径が大きくなり、第1分離壁80では巻始め部102の周面を当接させることが難しい場合であっても、第2分離壁90側に巻始め部102が当接するので、種々の芯径(コア径)を有するロール紙に対応できる。
【0110】
また、本実施形態においては、第1分離壁80がプリンタカバー3に取り付けられ、第2分離壁90がケーシング2に取り付けられた構成を採用することで、サーマルプリンタ1の製造時の組立性やメンテナンス性を高めながら、巻始め部102において互いに折り重ねられた記録紙100同士を効果的に分離できる。
【0111】
<第2の実施形態>
以下に、本発明の第2の実施形態のサーマルプリンタ1Aについて、主として図8A及び図8B、並びに、図9A及び図9Bを適宜参照しながら説明する。
なお、以下に説明する第2の実施形態のサーマルプリンタ1Aにおいて、上述した第1の実施形態のサーマルプリンタ1と共通する構成については、図中において同じ符号を付与するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0112】
図8Aは、第2の実施形態のサーマルプリンタ1Aを説明する図であり、記録紙100における巻始め部102の丸みが大きい場合における、記録紙収容部10に備えられる第1分離壁80及び第2分離壁90と、折り返し形状とされた巻始め部102との関係を示す部分破断図であり、図8Bは、図8Aの要部拡大図である。
図8A及び図8Bに示す第2の実施形態のサーマルプリンタ1Aは、図7中に示したサーマルプリンタ1に備えられる第1分離壁80及び第2分離壁90に加え、さらに、巻き解かれる記録紙100を介して第2分離壁90と対向する位置であって、且つ、記録紙100が搬入される間隙部Sの入口近傍の位置に、記録紙100をガイドするガイド部が設けられている。図8A及び図8Bに示す例では、サーマルプリンタ1Aは、ガイド部が、記録紙100の芯体(即ち、軸部)101(図4A等を参照)と平行で回動可能なガイド軸95からなる構成を採用している。
【0113】
本実施形態のサーマルプリンタ1Aによれば、プラテンユニット4において、記録紙100をガイドするガイド軸95からなるガイド部が設けられていることで、図8A及び図8B中に示すように、記録紙100の巻始め部102が第2分離壁90に対して確実に当接する。即ち、芯体101から巻き解かれて大きな丸みを帯びた記録紙100が、第1分離壁80に当接しなかった場合であっても、ガイド軸95のガイド作用によって第2分離壁90側に当接し、記録紙100は、第2分離壁90の表面90aとの摩擦によって留まり、巻始め部102の他方の記録紙100のみが通紙方向に引っ張られる。そして、第1の実施形態の場合と同様、巻始め部102において折り重ねられた記録紙100同士の相対的作用で、巻始め部102が開かれ、記録紙100同士が分離しながらヘッドユニット5とプラテンユニット4との間隙部Sに搬送されるので、巻始め部102が折り返し形状のままで通紙されるのを防止できる。従って、上記同様、重送の無い状態で記録紙100が搬送されるため、サーマルプリンタ1Aの内部で紙詰まり等が生じることなく、ロール紙R(図4A等を参照)が紙切れとなる間際であっても、最後まで通紙でき、また、紙切れセンサによる誤検知も防止できる。
【0114】
なお、本実施形態においても、第1の実施形態における第1分離壁80の場合と同様、図8A及び図8B中に示すように、第2分離壁90における、記録紙100の巻始め部102の周面の少なくとも一部が当接する位置に、巻始め部102における折り返し形状とされた先端100aを係止させるための凹状の係止部90bが設けられていることが好ましい。このような係止部90bが設けられた構成を採用することで、巻始め部102における先端100aが係止部90bに係止されるので、巻始め部102において互いに折り重ねられた記録紙100同士をさらに効果的に分離できる作用が得られる。
また、本実施形態においても、第1の実施形態の場合と同様、第2分離壁90に設けられる係止部は、図示例のような凹状のものには限定あれず、凸状の係止部を設けることも可能である。
【0115】
また、詳細な図示は省略するが、上記の係止部に代えて、第2分離壁90の表面90aにおける、記録紙100の巻始め部102の周面の少なくとも一部が当接する位置に、摩擦抵抗部材を設けた構成を採用することも可能である。このように、第2分離壁90の表面90aに摩擦抵抗部材が備えられていることで、第1の実施形態における第1分離壁80の場合と同様、図視略の摩擦抵抗部材と記録紙100の周面との間の摩擦力が上昇し、巻始め部102において互いに折り重ねられた記録紙100同士をより効果的に分離できる。
【0116】
ガイド軸95としては、図8A及び図8Bにおいては詳細な図示を省略しているが、例えば、ステンレス材料等からなる軸心に、ゴム材料の他、樹脂材料(例えば、ABS樹脂やPC樹脂等)からなるローラを組み付けたもの等を用いることができる。
【0117】
また、第2分離壁90の表面90aに図視略の摩擦抵抗部材を設ける場合も、上述した第1の実施形態のサーマルプリンタ1に備えられる摩擦抵抗部材83と同様の材質のものを用いることができる。
【0118】
なお、本実施形態において説明したガイド部は、図8A及び図8Bに例示したような、回動可能なガイド軸95からなるものには限定されない。例えば、図9A及び図9Bに示すような、プラテンユニット4におけるプラテンローラ33の近傍に設けられ、プラテンフレーム35から、第2分離壁90と対向するように突出するガイド壁96からガイド部を構成してもよい。ここで、図9Aは、ガイド部をガイド壁96から構成した場合の、記録紙100における巻始め部102の丸みが大きい場合における、記録紙収容部10に備えられる第1分離壁80及び第2分離壁90と、折り返し形状とされた巻始め部102との関係を示す部分破断図であり、図9Bは、図9Aの要部拡大図である。
【0119】
図9A及び図9Bに示すようなガイド壁96を設けた場合でも、上記のガイド軸95を設けた場合と同様、記録紙100を確実にガイドして第2分離壁90に当接させることができるので、巻始め部102において互いに折り重ねられた記録紙100同士をより確実に分離できる。また、ガイド部をガイド壁96から構成することで、プラテンユニット4を構成する樹脂部材と一体に形成することができるので、サーマルプリンタ1Aの生産性が向上するとともに、製造コストを低減することが可能になる。
【0120】
<第3の実施形態>
以下に、本発明の第3の実施形態のサーマルプリンタ1Bについて、主として図10A図10B及び図10Cを適宜参照しながら説明する。
なお、以下に説明する第3の実施形態のサーマルプリンタ1Bにおいて、上述した第1,2の実施形態のサーマルプリンタ1,1Aと共通する構成については、図中において同じ符号を付与するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0121】
図10Aは、第3の実施形態のサーマルプリンタ1Bを説明する図であり、記録紙収容部10に備えられる第1分離壁80及びテンションバー84と、折り返し形状とされた記録紙100の巻始め部102との関係を示す部分破断図である。
【0122】
本実施形態のサーマルプリンタ1Bによれば、上記のテンションバー84が設けられていることで、図10A中に示すように、記録紙100がテンションバー84でガイドされることにより、記録紙100の巻始め部102が第1分離壁80に対して与圧された状態で確実に当接する。即ち、芯体101(図4A等を参照)から巻き解かれて丸みを帯びた記録紙100が、テンションバー84のガイド作用によって第1分離壁80側に当接し、記録紙100は、第1分離壁80の表面81aとの摩擦によって留まり、巻始め部102の他方の記録紙100のみが通紙方向に引っ張られる。そして、第1,2の実施形態の場合と同様、巻始め部102において折り重ねられた記録紙100同士の相対的作用で、巻始め部102が開かれ、記録紙100同士が分離しながらヘッドユニット5とプラテンユニット4との間隙部Sに搬送されるので、巻始め部102が折り返し形状のままで通紙されるのを防止できる。従って、上記同様、重送の無い状態で記録紙100が搬送されるため、サーマルプリンタ1Bの内部で紙詰まり等が生じることなく、ロール紙R(図4A等を参照)が紙切れとなる間際であっても最後まで通紙でき、また、紙切れセンサによる誤検知も防止できる。
【0123】
テンションバー84に用いる材料としては、特に限定されず、プラテンユニット4を構成する各部材に用いられる樹脂材料と同じものを用いることができ、例えば、ABS樹脂やPC樹脂等が挙げられ、これらの樹脂材料を用いた射出成形等により、テンションバー84が得られる。また、テンションバー84は、例えば、図視略のコイルばね等により、記録紙100に対して与圧・付勢できるように構成することができる。
【0124】
また、本実施形態のサーマルプリンタ1Bに備えられるテンションバーは、上記の構成には限定されず、例えば、図10B及び図10C中に示すような、表面84aの一部に、記録紙100の巻始め部102における折り返し形状とされた先端100aを係止させるための係止部84bが設けられた構成のテンションバー84Aを採用してもよい。ここで、図10Bは、係止部84bが設けられた構成のテンションバー84Aを採用した場合の、記録紙収容部10に備えられる第1分離壁80及びテンションバー84Aと、折り返し形状とされた記録紙100の巻始め部102との関係を示す部分破断図であり、図10Cは、図10B中の要部を示す部分拡大図である。図示例のように、係止部84bは、テンションバー84Aの表面84aにおける、記録紙100の巻始め部102をなす先端100aが当接する位置に形成されている。
【0125】
図10B及び図10C中に示すような、係止部84bが設けられた構成のテンションバー84Aを採用することにより、記録紙100をテンションバー84Aで第1分離壁80側にガイドする際に、巻始め部102における折り返し形状とされた先端100aが係止部84bに係止される。これにより、巻始め部102において互いに折り重ねられた記録紙100同士をさらに効果的に分離できる。
【0126】
なお、図10B及び図10Cでは、テンションバー84Aの表面84aに係止部84bが設けられた例を説明しているが、本実施形態においては、このような構成には限定されない。例えば、テンションバー84Aにおける係止部84bに代えて、これと同じ箇所に、図視略の凸状の係止部や摩擦抵抗部材を設けた構成を採用した場合でも、上記同様、巻始め部102において互いに折り重ねられた記録紙100同士をより効果的に分離することが可能になる。
【0127】
<第4の実施形態>
以下に、本発明の第4の実施形態のサーマルプリンタ1Cについて、主として図11A図11Bを適宜参照しながら説明する。
なお、以下に説明する第4の実施形態のサーマルプリンタ1Cにおいて、上述した第1~3の実施形態のサーマルプリンタ1,1A,1Bと共通する構成については、図中において同じ符号を付与するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0128】
図11Aは、第4の実施形態のサーマルプリンタ1Cを説明する図であり、記録紙収容部10に備えられる第3分離壁92、テンションバー84及びガイド壁94と、折り返し形状とされた記録紙100の巻始め部102との関係を示す部分破断図であり、図11Bは、図11A中の要部を示す部分拡大図である。
【0129】
図11A及び図11Bに示す第4の実施形態のサーマルプリンタ1Cは、図10A等に示す第3の実施形態のサーマルプリンタ1Bに対し、第1分離壁80が備えられていない点で異なる。一方、本実施形態のサーマルプリンタ1Cには、巻き解かれた記録紙100を介してプラテンユニット4と対向する位置で、記録紙100をプラテンユニット4側にガイドするテンションバー84が備えられている。
また、サーマルプリンタ1Cには、プラテンユニット4における、記録紙100が搬入される間隙部Sの入口近傍の位置に、テンションバー84と対向するように設けられ、テンションバー84によってプラテンユニット4側にガイドされた記録紙100が当接するガイド壁(ガイド部)94が備えられている。このガイド壁94は、プラテンユニット4に備えられるプラテンフレーム35の一部が突出するように形成されている。
さらに、サーマルプリンタ1Cは、間隙部Sの入口近傍における、ガイド壁94とは間隙部Sを介して反対側に設けられ、テンションバー84及びガイド壁94によってガイドされた記録紙100の少なくとも一部が当接する第3分離壁92を備える。
【0130】
そして、本実施形態においては、テンションバー84の先端84cと、ガイド壁94の先端94aとが、プラテンユニット4とテンションバー84との対向方向でオーバーラップするように配置されている。即ち、図11A及び図11Bに示す例では、プラテンユニット4に設けられたガイド壁94の先端94aが、テンションバー84の先端84cよりも、図中のL1方向で下方(即ち、図11A及び図11B中の縦長方向における下方)に突出するように配置されている。
【0131】
図11A及び図11Bに示すサーマルプリンタ1Cにおいては、記録紙100の通紙経路を、プラテンユニット4に備えられるプラテンフレーム35の一部が突出するように設けられたガイド壁94により、テンションバー84側に向かうように急に変化させている。そして、記録紙100の巻始め部102における先端100aが第3分離壁92に当接したとき、第3分離壁92の表面92aに対する記録紙100の角度Kが90°未満になるように、テンションバー84、ガイド壁94及び第3分離壁92を配置している。
【0132】
本実施形態のサーマルプリンタ1Cによれば、上記のテンションバー84、ガイド壁94及び第3分離壁92が設けられていることで、図11A及び図11B中に示すように、まず、記録紙100がテンションバー84でガイドされ、記録紙100の巻始め部102が、ガイド壁94に対して与圧された状態で当接する。この際、テンションバー84の先端84c及びガイド壁94の先端94aが、記録紙100の両面側から互いに与圧することで、記録紙100は、ガイド壁94の先端94aで急にターンするような形状となるので、巻始め部102の折り返し形状が開く。これにより、記録紙100の巻始め部102における先端100aが第3分離壁92に当接し、記録紙100同士が分離しながらヘッドユニット5とプラテンユニット4との間隙部Sに搬送されるので、巻始め部102が折り返し形状のままで通紙されるのを防止できる。従って、上記同様、重送の無い状態で記録紙100が搬送されるため、サーマルプリンタ1Bの内部で紙詰まり等が生じることなく、ロール紙R(図4A等を参照)が紙切れとなる間際であっても最後まで通紙でき、また、紙切れセンサによる誤検知も防止できる。
【0133】
なお、テンションバー84とガイド壁94との隙間は、可能な限り狭く規制することが、巻始め部102の折り返し形状を開きやすくする観点からより好ましい。
また、上記のように、記録紙100の先端100aが第3分離壁92に当接したときの、第3分離壁92の表面92aに対する記録紙100の角度Kが90°未満になるように、テンションバー84、ガイド壁94及び第3分離壁92の各々を配置することが、巻始め部102の折り返し形状を開きやすくする観点からさらに好ましい。
【0134】
本実施形態で用いるテンションバー84としても、第3の実施形態で説明した材料からなるものを採用することができ、また、記録紙100に対して与圧・付勢するための構成としても、第3の実施形態で説明した図視略のコイルばね等を用いた構成を採用することができる。
【0135】
また、本実施形態では、図12A及び図12Bに示す例のように、第3分離壁92の表面92aにおける、記録紙100の巻始め部102の周面の少なくとも一部が当接する位置に、折り返し形状とされた先端100aを係止させるための係止部92bが設けられている構成を採用することがより好ましい。
【0136】
このように、第3分離壁92に係止部92bが設けられていることで、巻始め部102における折り返し形状とされた先端100aが係止部92bに係止されるので、互いに折り重ねられた記録紙100同士をさらに効果的に分離できる。また、第3分離壁92に係止部92bが設けられていることで、記録紙100の先端100aが第3分離壁92の表面92aに当接する角度に関わらず、互いに折り重ねられた記録紙100同士を効果的に分離できる作用が得られる。
なお、図示例においては、第3分離壁92に凹状の係止部92bを設置しているが、これには限定されず、例えば、凸状の係止部を設けた場合でも上記の効果が得られる。
【0137】
<第5の実施形態>
以下に、本発明の第5の実施形態のサーマルプリンタ1Dについて、主として図13を適宜参照しながら説明する。
なお、以下に説明する第5の実施形態のサーマルプリンタ1Dにおいて、上述した第1~4の実施形態のサーマルプリンタ1,1A,1B,1Cと共通する構成については、図中において同じ符号を付与するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0138】
図13は、第5の実施形態のサーマルプリンタ1Dを説明する図であり、記録紙収容部10に備えられる第3分離壁92、テンションバー84及びプラテンユニット4の下端99と、折り返し形状とされた記録紙100の巻始め部102との関係を示す部分破断図である。
本実施形態のサーマルプリンタ1Dは、記録紙100を介してプラテンユニット4と対向する位置で、記録紙100をプラテンユニット4側にガイドするテンションバー84と、プラテンユニット4とテンションバー84との間に配置され、テンションバー84との間で記録紙100をガイドする第4分離壁93と、間隙部Sの入口近傍に設けられ、テンションバー84及び第4分離壁93によってガイドされた記録紙100の少なくとも一部が当接する第3分離壁92とを備える。
【0139】
図13に示す本実施形態のサーマルプリンタ1Dは、図11A及び図11Bに示す第4の実施形態のサーマルプリンタ1Cに対し、さらに、上記の第4分離壁93を備えている点で異なる。また、本実施形態のサーマルプリンタ1Dは、プラテンユニット4のプラテンフレーム35に、大きく突出するガイド壁が設けられていない点でも、第4の実施形態のサーマルプリンタ1Cとは異なる。
【0140】
第4分離壁93は、記録紙収容部10に、ロール紙Rの近傍に設けられており、上記のように、プラテンユニット4とテンションバー84との間に配置される概略板状の部材である。
第4分離壁93は、一端93a側がプラテンユニット4とテンションバー84との間に配置される。これに伴い、第4分離壁93の一端93a側における一面93cは、プラテンフレーム35の下端99の丸みを帯びた外形状に合わせ、なだらかに凹む凹状領域93eとして形成されている。
また、第4分離壁93は、上記の一面93cと反対側の他面93dが、巻き解かれた記録紙100における巻始め部102が当接する面として機能する。
【0141】
また、第4分離壁93は、一端93aが、テンションバー84の先端84cと、プラテンユニット4(プラテンフレーム35)とテンションバー84との対向方向でオーバーラップするように配置されている。
また、図示例における第4分離壁93は、他端93b側がプリンタカバー3の内壁に取り付けられることで支持されている。
【0142】
本実施形態のサーマルプリンタ1Dによれば、上記のテンションバー84、第4分離壁93及び第3分離壁92が設けられていることで、図13中に示すように、まず、記録紙100がテンションバー84でガイドされ、記録紙100の巻始め部102がプラテンフレーム35の下端99に当接する。このとき、第4の実施形態のサーマルプリンタ1Cの場合とは異なり、記録紙100の通紙経路は、比較的なだらかにカーブした形状となる。
【0143】
そして、テンションバー84と第4分離壁93の間に通紙された記録紙100における、巻始め部102の折り返し形状が開く。これにより、記録紙100の巻始め部102における先端100aが第3分離壁92に当接し、記録紙100同士が分離しながらヘッドユニット5とプラテンユニット4との間隙部Sに搬送されるので、巻始め部102が折り返し形状のままで通紙されるのを防止できる。従って、上記同様、重送の無い状態で記録紙100が搬送されるので、サーマルプリンタ1Bの内部で紙詰まり等が生じることなく、ロール紙R(図4A等を参照)が紙切れとなる間際であっても最後まで通紙でき、また、紙切れセンサによる誤検知も防止できる。
【0144】
第4分離壁93の材質としては、特に限定されず、例えば、第1の実施形態のサーマルプリンタ1に設けられる第1分離壁80と同様、ABS樹脂やPC樹脂等、プラテンユニット4やヘッドユニット5を構成する樹脂材料と同様のものを用いることができる。
【0145】
また、本実施形態においては、第4分離壁93がプリンタカバー3に取り付けられた構成を採用することで、サーマルプリンタ1Dの製造時の組立性やメンテナンス性を高めながら、巻始め部102において互いに折り重ねられた記録紙100同士を効果的に分離できる。
【0146】
<第6の実施形態>
以下に、本発明の第6の実施形態のサーマルプリンタ1Eについて、主として図14A図14Bを適宜参照しながら説明する。
なお、以下に説明する第6の実施形態のサーマルプリンタ1Eにおいて、上述した第1~5の実施形態のサーマルプリンタ1,1A,1B,1C,1Dと共通する構成については、図中において同じ符号を付与するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0147】
図14Aは、第6の実施形態のサーマルプリンタ1Eを説明する図であり、記録紙収容部10に備えられる第3分離壁92、ガイド壁94及びガイドローラー85と、折り返し形状とされた記録紙100の巻始め部102との関係を示す部分破断図であり、図14Bは、図14A中の要部を拡大して示す図である。
本実施形態のサーマルプリンタ1Eは、間隙部Sの入口近傍における、ガイド壁94とは間隙部Sを介して反対側に設けられ、記録紙100の少なくとも一部が当接する第3分離壁92と、プラテンユニット4における、記録紙100が搬入される間隙部Sの入口近傍の位置に設けられるガイド壁94と、このガイド壁94の近傍に設けられ、ガイド壁94との間で記録紙100をガイドするガイドローラー85とを備える。
【0148】
図14A図14Bに示すサーマルプリンタ1Eにおいては、プラテンユニット4に備えられるプラテンフレーム35の一部が突出するように設けられたガイド壁94と、ガイドローラー85とを、記録紙100の通紙経路が急に変化するような関係で配置している。そして、記録紙100の巻始め部102における先端100aが第3分離壁92に当接したとき、第3分離壁92の表面92aに対する記録紙100の角度Kが90°未満になるように、ガイドローラー85、ガイド壁94及び第3分離壁92を配置している。
【0149】
本実施形態のサーマルプリンタ1Eによれば、上記のガイドローラー85、ガイド壁94及び第3分離壁92が設けられていることで、図14A及び図14B中に示すように、まず、記録紙100がガイドローラー85でガイドされ、記録紙100の巻始め部102が、ガイド壁94に対して与圧された状態で当接する。この際、ガイドローラー85及びガイド壁94の先端94aが、記録紙100の両面側から互いに与圧することで、記録紙100は、ガイド壁94の先端94aで急にターンするような形状となるので、巻始め部102の折り返し形状が開く。これにより、第4の実施形態の場合と同様、記録紙100の巻始め部102における先端100aが第3分離壁92に当接し、記録紙100同士が分離しながらヘッドユニット5とプラテンユニット4との間隙部Sに搬送されるので、巻始め部102が折り返し形状のままで通紙されるのを防止できる。従って、上記同様、重送の無い状態で記録紙100が搬送されるため、サーマルプリンタ1Eの内部で紙詰まり等が生じることなく、ロール紙R(図4A等を参照)が紙切れとなる間際であっても最後まで通紙でき、また、紙切れセンサによる誤検知も防止できる。
【0150】
なお、本実施形態においても、第4の実施形態と同様、ガイドローラー85とガイド壁94との隙間は、可能な限り狭く規制することが、巻始め部102の折り返し形状を開きやすくする観点からより好ましい。
また、第4の実施形態と同様、記録紙100の先端100aが第3分離壁92に当接したときの、第3分離壁92の表面92aに対する記録紙100の角度Kが90°未満になるように、ガイドローラー85、ガイド壁94及び第3分離壁92の各々を配置することが、巻始め部102の折り返し形状を開きやすくする観点からさらに好ましい。
【0151】
本実施形態で用いるガイドローラー85としては、上述した第2の実施形態のサーマルプリンタ1Aにおけるガイド軸95と同様、例えば、ステンレス材料等からなる軸心に、ゴム材料や、例えば、ABS樹脂やPC樹脂等の樹脂材料からなるローラを組み付けたもの等を用いることができる。
【0152】
<第7の実施形態>
以下に、本発明の第7の実施形態のサーマルプリンタ1Fについて、主として図15A図15Bを適宜参照しながら説明する。
なお、以下に説明する第7の実施形態のサーマルプリンタ1Fにおいて、上述した第1~6の実施形態のサーマルプリンタ1,1A,1B,1C,1D,1Eと共通する構成については、図中において同じ符号を付与するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0153】
図15Aは、第7の実施形態のサーマルプリンタ1Fを説明する図であり、記録紙収容部10に備えられる第3分離壁92、ガイド壁94及び規制壁86と、折り返し形状とされた記録紙100の巻始め部102との関係を示す部分破断図であり、図15Bは、図15A中の要部を拡大して示す図である。
本実施形態のサーマルプリンタ1Fは、間隙部Sの入口近傍における、ガイド壁94とは間隙部Sを介して反対側に設けられ、記録紙100の少なくとも一部が当接する第3分離壁92と、プラテンユニット4における、記録紙100が搬入される間隙部Sの入口近傍の位置に設けられるガイド壁94と、このガイド壁94と記録紙100を介して対向するように設けられる規制壁86とを備える。
【0154】
そして、本実施形態においては、規制壁86の先端86aと、ガイド壁94の先端94aとが、プラテンユニット4と規制壁86との対向方向でオーバーラップするように配置されている。即ち、図15A及び図15Bに示す例では、プラテンユニット4に設けられたガイド壁94の先端94aが、規制壁86の先端86aよりも、図中のL1方向で下方(即ち、図15A及び図15B中の縦長方向における下方)に突出するように配置されている。
【0155】
図15A及び図15Bに示すサーマルプリンタ1Fにおいては、プラテンユニット4に備えられるプラテンフレーム35の一部が突出するように設けられたガイド壁94と、規制壁86とを、記録紙100の通紙経路が急に変化するような関係で配置している。そして、上記同様、記録紙100の巻始め部102における先端100aが第3分離壁92に当接したとき、第3分離壁92の表面92aに対する記録紙100の角度Kが90°未満になるように、規制壁86、ガイド壁94及び第3分離壁92を配置している。
【0156】
本実施形態のサーマルプリンタ1Fによれば、上記の規制壁86、ガイド壁94及び第3分離壁92が設けられていることで、図15A及び図15B中に示すように、まず、記録紙100が規制壁86の先端86aでガイドされ、記録紙100の巻始め部102が、ガイド壁94に対して与圧された状態で当接する。この際、規制壁86の先端86a及びガイド壁94の先端94aが、記録紙100の両面側から互いに与圧することで、記録紙100は、ガイド壁94の先端94aで急にターンするような形状となるので、巻始め部102の折り返し形状が開く。これにより、記録紙100の巻始め部102における先端100aが第3分離壁92に当接し、記録紙100同士が分離しながらヘッドユニット5とプラテンユニット4との間隙部Sに搬送されるので、巻始め部102が折り返し形状のままで通紙されるのを防止できる。従って、上記同様、重送の無い状態で記録紙100が搬送されるため、サーマルプリンタ1Fの内部で紙詰まり等が生じることなく、ロール紙R(図4A等を参照)が紙切れとなる間際であっても最後まで通紙でき、また、紙切れセンサによる誤検知も防止できる。
【0157】
なお、規制壁86の先端86aとガイド壁94との隙間についても、上記同様、可能な限り狭く規制することが、巻始め部102の折り返し形状を開きやすくする観点からより好ましい。
また、上記同様、記録紙100の先端100aが第3分離壁92に当接したときの、第3分離壁92の表面92aに対する記録紙100の角度Kが90°未満になるように、規制壁86、ガイド壁94及び第3分離壁92の各々を配置することが、巻始め部102の折り返し形状を開きやすくする観点からさらに好ましい。
【0158】
<第8の実施形態>
以下に、本発明の第8の実施形態のサーマルプリンタ1Gについて、主として図16A図16B及び図16Cを適宜参照しながら説明する。
なお、以下に説明する第6の実施形態のサーマルプリンタ1Gにおいて、上述した第1~7の実施形態のサーマルプリンタ1,1A,1B,1C,1D,1E,1Fと共通する構成については、図中において同じ符号を付与するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0159】
図16A図16B及び図16Cは、それぞれ、第8の実施形態のサーマルプリンタ1Gを説明する図であり、一対のガイドロール97A,97Bと、折り返し形状とされた記録紙100の巻始め部102との関係を示す部分破断図である。
本実施形態のサーマルプリンタ1Gは、分離手段が、記録紙100の巻始め部102が巻き解かれたときに、摩擦抵抗部材98に対して記録紙100の少なくとも一部が当接するように、記録紙100を与圧するように設けられる一対のガイドロール97A,97Bからなる構成を採用している。
【0160】
具体的には、サーマルプリンタ1Gは、図16A図16B及び図16Cに示すように、プラテンユニット4におけるプラテンローラ33の近傍に、記録紙100の上流側からガイドロール97A及びガイドロール97Bが順次配置されている。そして、これら一対のガイドロール97A,97Bを直線で結んだラインよりもプラテンローラ33から離間した位置に、摩擦抵抗部材98が設置されている。また、図16A等に示す例においては、上流側のガイドロール97Aと下流側のガイドロール97Bとが、ロール紙Rの位置に対し、図中の縦長方向における位置がずれた配置とされている。これにより、一対のガイドロール97A,97Bは、摩擦抵抗部材98に対して記録紙100の少なくとも一部が当接するように、記録紙100を与圧できる構成とされている。
【0161】
本実施形態のサーマルプリンタ1Gによれば、まず、ロール紙R(図4A等を参照)から巻き解かれた記録紙100が、順次、一対のガイドロール97A,97Bを経由しながら、ヘッドユニット5とプラテンユニット4との間隙部Sに搬送され、感熱印刷の後、適宜裁断されて外部に搬出される。そして、ロール紙R(記録紙100)の残量が少なくなり、図16Aに示すように、芯体101(図4A等を参照)に巻回された巻始め部102が巻き解かれると、芯体101から巻き解かれて丸みを帯びた記録紙100が、記録紙100の剛性、及び、下流側のガイドロール97Bによるガイド作用により、与圧された状態で摩擦抵抗部材98に当接する。これにより、図16Bに示すように、巻始め部102における摩擦抵抗部材98側の記録紙100が、摩擦抵抗部材98との摩擦によって留まり、巻始め部102の他方の記録紙100のみが通紙方向に引っ張られる。そして、巻始め部102において折り重ねられた記録紙100同士の相対的作用で、巻始め部102が開き、記録紙100同士が分離しながらヘッドユニット5とプラテンユニット4との間隙部Sに搬送される。つまり、巻始め部102が折り返し形状のままで重送されることなく記録紙100が搬送されるため、サーマルプリンタ1Gの内部で紙詰まり等が生じることなく、ロール紙R(記録紙100)が紙切れとなる間際であっても最後まで通紙でき、また、紙切れセンサによる誤検知も防止することができる。
【0162】
一対のガイドロール97A,97Bとしては、上述した第2の実施形態のサーマルプリンタ1Aにおけるガイド軸95や、第6の実施形態のサーマルプリンタ1Fのガイドローラー85と同様、例えば、ステンレス材料等からなる軸心に、ゴム材料や、例えば、ABS樹脂やPC樹脂等の樹脂材料からなるローラを組み付けたもの等を用いることができる。
【0163】
また、摩擦抵抗部材98としても、特に限定されないが、上述した第1の実施形態のサーマルプリンタ1における摩擦抵抗部材83等と同様、例えば、ポリウレタンフォームや各種ゴム材料等、記録紙100との間で高い摩擦力を発揮できる摩擦係数を有する材料を適宜採用することができる。
【0164】
<作用効果>
以上説明したように、第1~8の実施形態に係るサーマルプリンタ1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gによれば、それぞれ、上記の各構成を備えることにより、芯体101にロール状に巻回された記録紙100のうち、芯体101に巻き付けられた折り返し形状を有する巻始め部102において、互いに折り重ねられた記録紙102同士が効果的に分離される。これにより、巻始め部102が折り返し形状のままでヘッドユニット5とプラテンユニット4との間隙部Sに搬送されるのを防止できるので、ロール状の記録紙100が紙切れとなる際に、プリンタ内部で紙詰まり等が生じることがなく、センサによる誤検知も防止できる。従って、信頼性が顕著に優れたサーマルプリンタを提供することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明のサーマルプリンタは、上述したように、ロール状の記録紙が紙切れとなる際であっても、プリンタ内部で紙詰まり等が生じることがなく、センサによる誤検知も防止できる。従って、例えば、ATMや鉄道駅売店における無人端末、コンビニエンスストア等において、各種発券に用いられる小型のサーマルプリンタのような、高い信頼性が求められる用途において非常に好適である。
【符号の説明】
【0166】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G…サーマルプリンタ
2…ケーシング(プリンタ本体)
3…プリンタカバー
4…プラテンユニット
5…ヘッドユニット
8…印字ユニット
10…記録紙収容部
22…可動刃
24…駆動機構
25…操作レバー
26…戻し機構
27…ロック解除機構
33…プラテンローラ
34…固定刃
46…駆動ラック
59…ラック歯
63…戻しピニオン
64…戻しラック
67…プラネタリギア
91…リリースカム
80…第1分離壁(分離手段)
81…短手壁
81a…表面
81b…係止部
82…長手壁
83…摩擦抵抗部材
84,84A…テンションバー(分離手段)
84a…表面
84b…係止部
84c…先端
85…ガイドローラー
86…規制壁
86a…先端(86a)
90…第2分離壁(分離手段)
90a…表面
90b…係止部
92…第3分離壁(分離手段)
92a…表面
92b…係止部
93…第4分離壁(分離手段)
93a…一端
93b…他端
93c…一面
93d…他面
93e…凹状領域
94…ガイド壁(ガイド部;分離手段)
95…ガイド軸(ガイド部;分離手段)
96…ガイド壁(ガイド部;分離手段)
97A,97B…ガイドロール(一対のガイドロール;分離手段)
98…摩擦抵抗部材
99…下端
S…間隙部
100…記録紙(ロール紙)
100a…端部
101…芯体
102…巻始め部
R…ロール紙(記録紙)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C