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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】スイッチング素子の駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
H02M1/08 C
H02M1/08 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019190431
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021069136
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直久
(72)【発明者】
【氏名】李 海鎮
【審査官】町田 舞
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-114558(JP,A)
【文献】特開2004-274262(JP,A)
【文献】特開2011-244185(JP,A)
【文献】特開平08-182321(JP,A)
【文献】特開2010-244367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスの一次巻線に接続された一次側スイッチング素子を駆動信号にしたがってオンオフ動作させて該トランスの二次巻線にスイッチング電圧を生じさせるとともに、前記スイッチング電圧を利用して二次側スイッチング素子をオンオフ動作させる駆動装置であって、
前記スイッチング電圧の倍化により倍電圧を生成する倍化回路と、
前記倍電圧の降圧により所定のレギュレート電圧を生成するレギュレータ回路と、
を備え、
前記二次側スイッチング素子が、前記スイッチング電圧および前記レギュレート電圧のうちの高い方によってオンオフ駆動され、
前記レギュレート電圧が、前記駆動信号のONデューティが最大値となるときの前記スイッチング電圧と前記倍電圧との間にあり、かつ前記二次側スイッチング素子をオンさせるために必要な電圧よりも高い
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記倍化回路は、一端が前記二次巻線の一端に接続されたコンデンサと、アノードが前記二次巻線の他端に接続されるとともにカソードが前記コンデンサの他端に接続された第1ダイオードと、アノードが前記第1ダイオードのカソードに接続されるとともにカソードが前記レギュレータ回路の入力に接続された第2ダイオードとを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記スイッチング電圧がゼロになると前記レギュレータ回路の動作を停止させる停止回路をさらに備える
ことを特徴とする請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記駆動信号が停止したことを示す停止信号を受信すると前記レギュレータ回路の動作を停止させる停止回路をさらに備える
ことを特徴とする請求項2に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から入力された駆動信号にしたがってスイッチング素子をオンオフ動作させる駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動信号にしたがってスイッチング素子をオンオフ動作させる駆動装置として、図5に示した駆動装置100が知られている(例えば、非特許文献1参照)。この駆動装置100は、トランスTの一次巻線T1に接続された一次側スイッチング素子Q1を駆動信号PWMにしたがってオンオフ動作させると、トランスTの二次巻線T2に生じたスイッチング電圧によって駆動対象である二次側スイッチング素子Q2がオンオフ動作するように構成されている。この駆動装置100によれば、駆動信号PWMを絶縁しながら二次側スイッチング素子Q2の駆動に必要な電力を一次側から二次側に伝達することができる。なお、図5に示した例では、二次側スイッチング素子Q2はMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】稲葉保著,「パワーMOS FET 活用の基礎と実際」,CQ出版社,2004年11月,p.77-78
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、二次側スイッチング素子Q2を十分にオンさせるためには、二次側スイッチング素子Q2のゲート-ソース間に入力される電圧、すなわちドライブ電圧VPb(=点P0を基準とした点Pbの電位)が所定の最低電圧値VLowよりも大きくなければならない。しかしながら、従来の駆動装置100では、駆動信号PWMのONデューティが大きくなるにつれてスイッチング電圧VPa(=点P0を基準とした点Paの電位)が低下し、これにともなってドライブ電圧VPbも低下するので、最低電圧値VLowを確保することができず、二次側スイッチング素子Q2を十分にオンさせることができない場合があった(図6および図7参照)。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、駆動信号のONデューティが広い範囲で変化してもスイッチング素子を確実にオンオフ動作させることが可能な駆動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る駆動装置は、トランスの一次巻線に接続された一次側スイッチング素子を駆動信号にしたがってオンオフ動作させて該トランスの二次巻線にスイッチング電圧を生じさせるとともに、スイッチング電圧を利用して二次側スイッチング素子をオンオフ動作させる駆動装置であって、スイッチング電圧の倍化により倍電圧を生成する倍化回路と、倍電圧の降圧により所定のレギュレート電圧を生成するレギュレータ回路とを備え、二次側スイッチング素子が、スイッチング電圧およびレギュレート電圧のうちの高い方によってオンオフ駆動され、レギュレート電圧が、駆動信号のONデューティが最大値となるときのスイッチング電圧と倍電圧との間にあり、かつ二次側スイッチング素子をオンさせるために必要な電圧よりも高い、ことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、駆動信号のONデューティが大きくなってスイッチング電圧が二次側スイッチング素子をオンさせることができない程に低下しても、倍化回路およびレギュレータ回路がスイッチング電圧に基づいて生成したレギュレータ電圧(=二次側スイッチング素子をオンさせるために必要な電圧よりも高い電圧)によって二次側スイッチング素子を確実にオンオフ動作させることができる。
【0008】
上記駆動装置の倍化回路は、例えば、一端が二次巻線の一端に接続されたコンデンサと、アノードが二次巻線の他端に接続されるとともにカソードがコンデンサの他端に接続された第1ダイオードと、アノードが第1ダイオードのカソードに接続されるとともにカソードがレギュレータ回路の入力に接続された第2ダイオードとを含んでいてもよい。
【0009】
上記駆動装置は、より確実に二次側スイッチング素子をオフさせるために、スイッチング電圧がゼロになるとレギュレータ回路の動作を停止させる停止回路、または、駆動信号が停止したことを示す停止信号を受信するとレギュレータ回路の動作を停止させる停止回路をさらに備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駆動信号のONデューティが広い範囲で変化してもスイッチング素子を確実にオンオフ動作させることが可能な駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施例に係る駆動装置の回路図である。
図2図1に示した駆動装置における、駆動信号のONデューティと各部の電圧との関係を示す図である。
図3図1に示した駆動装置の各部の電圧波形図であって、(A)は駆動信号のONデューティが20%である場合の波形図、(B)はONデューティが80%である場合の波形図である。
図4】本発明の第2実施例に係る駆動装置の回路図である。
図5】従来の駆動装置の回路図である。
図6図5に示した従来の駆動装置における、駆動信号のONデューティと各部の電圧との関係を示す図である。
図7図5に示した従来の駆動装置の各部の電圧波形図であって、(A)は駆動信号のONデューティが20%である場合の波形図、(B)はONデューティが80%である場合の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る駆動装置の実施例について説明する。
【0013】
[第1実施例]
図1に、本発明の第1実施例に係る駆動装置10Aを示す。同図に示すように、駆動装置10Aは、トランスTの一次巻線T1を含む一次側回路と、トランスTの二次巻線T2を含む二次側回路とから構成されている。
【0014】
一次側回路は、前述の一次巻線T1と、カソードが一次巻線T1の一端(●側)に接続されたダイオードD1と、コレクタが一次巻線T1の他端に接続されたNPN型の一次側スイッチング素子Q1と、一端が一次側スイッチング素子Q1のベースに接続された抵抗R1とを含んでいる。ダイオードD1のアノード、一次側スイッチング素子Q1のエミッタおよび抵抗R1の他端は接地されている。また、一次側スイッチング素子Q1のベースには上位の制御回路(不図示)が出力した駆動信号PWMが入力され、一次巻線T1の中間タップには電源電圧VCCが入力されるようになっている。
【0015】
二次側回路は、前述の二次巻線T2と、アノードが二次巻線T2の一端(●側)に接続されたダイオードD2,D3と、一端がダイオードD2のカソードに接続された抵抗R3と、一端が抵抗R3の他端に接続された抵抗R4と、エミッタがダイオードD2のカソードに接続されるとともにベースがダイオードD3のカソードに接続されたPNP型のスイッチング素子Q3と、一端がスイッチング素子Q3のベースに接続された抵抗R2とを含んでいる。スイッチング素子Q3のコレクタおよび抵抗R2,R4の他端は、二次巻線T2の他端に接続されている。
【0016】
抵抗R3の他端(抵抗R4の一端)は、駆動対象である二次側スイッチング素子Q2のゲートにも接続されている。また、二次巻線T2の他端は、二次側スイッチング素子Q2のソースにも接続されている。なお、本実施例では、二次側スイッチング素子Q2はMOSFETである。
【0017】
二次側回路は、倍化回路11と、レギュレータ回路12Aと、ダイオードD6とをさらに含んでいる。
【0018】
倍化回路11は、一端が二次巻線T2の一端に接続されたコンデンサC1と、アノードが二次巻線T2の他端に接続されるとともにカソードがコンデンサC1の他端に接続されたダイオードD4と、アノードがダイオードD4のカソードに接続されるとともにカソードがレギュレータ回路12Aの入力に接続されたダイオードD5とを含んでいる。ダイオードD4は、本発明の「第1ダイオード」に相当する。また、ダイオードD5は、本発明の「第2ダイオード」に相当する。
【0019】
ダイオードD6は、アノードがレギュレータ回路12Aの出力に接続されるとともにカソードがダイオードD2のカソードに接続されている。
【0020】
なお、以下では、点P0を基準とした点P1の電位をスイッチング電圧VP1と呼び、点P0を基準とした点P2の電位を倍電圧VP2と呼び、点P0を基準とした点P3の電位をレギュレート電圧VP3と呼び、さらに、点P0を基準とした点P4の電位をドライブ電圧VP4と呼ぶこととする。
【0021】
駆動信号PWMが矩形状に変化すると、スイッチング電圧VP1、倍電圧VP2、レギュレート電圧VP3およびドライブ電圧VP4は、駆動信号PWMと同相で矩形状に変化する。つまり、駆動信号PWMがLレベルからHレベルに変化すると、電圧VP1,VP2,VP3,VP4もLレベルからHレベルに変化し、駆動信号PWMがHレベルからLレベルに変化すると、電圧VP1,VP2,VP3,VP4もHレベルからLレベルに変化する。また、ドライブ電圧VP4の変化により、二次側スイッチング素子Q2のゲート-ソース間に入力される電圧が所定の最低電圧値VLowを上回ると二次側スイッチング素子Q2はオンし、最低電圧値VLowを下回ると二次側スイッチング素子Q2はオフする。
【0022】
図2に示すように、スイッチング電圧VP1のHレベルは、駆動信号PWMのONデューティが大きくなるにつれて低下していく。そして、本実施例では、駆動信号PWMのONデューティが65%を超えると、スイッチング電圧VP1のHレベルが最低電圧値VLowを下回る。
【0023】
倍電圧VP2は、倍化回路11がスイッチング電圧VP1の倍化により生成したものである。スイッチング電圧VP1のHレベルと同様、倍電圧VP2のHレベルも、駆動信号PWMのONデューティが大きくなるにつれて低下していく。しかしながら、倍電圧VP2のHレベルは、駆動信号PWMのONデューティが最小値である20%と最大値である80%との間で変化しても、最低電圧値VLowを下回ることはない。一方で、倍電圧VP2のHレベルは、駆動信号PWMのONデューティが小さくなると、二次側スイッチング素子Q2のゲート-ソース間電圧の上限値である所定の最高電圧値VHighを上回ることがある。
【0024】
レギュレート電圧VP3は、レギュレータ回路12Aが倍電圧VP2の降圧により生成したものである。レギュレート電圧VP3のHレベルは、電圧値VRegを有している。電圧値VRegは、最低電圧値VLowよりも高く、かつ駆動信号PWMのONデューティが80%であるときのスイッチング電圧VP1の値と倍電圧VP2の値との間に設定されている。前述した通り、倍電圧VP2のHレベルは最高電圧値VHighを上回ることがあるが、レギュレータ回路12Aが倍電圧VP2をレギュレート電圧VP3に制限(降圧)することにより、最高電圧値VHighを上回る電圧が二次側スイッチング素子Q2のゲート-ソース間に印加されることはない。
【0025】
レギュレート電圧VP3およびスイッチング電圧VP1のうちの高い方が、太線で示されたドライブ電圧VP4となる。つまり、本実施例では、駆動信号PWMのONデューティが50%未満であるときはスイッチング電圧VP1がドライブ電圧VP4となり、駆動信号PWMのONデューティが50%以上であるときはレギュレート電圧VP3がドライブ電圧VP4となる。
【0026】
図3を参照しながら、本実施例に係る駆動装置10Aの動作を整理する。駆動信号PWMのONデューティが20%であるとき、スイッチング電圧VP1のHレベルは、レギュレート電圧VP3のHレベル(=電圧値VReg)よりも高く、かつ最低電圧値VLowよりも高いので、ドライブ電圧VP4としてのスイッチング電圧VP1が二次側スイッチング素子Q2をオンオフ動作させる(同図(A)参照)。一方、駆動信号PWMのONデューティが80%であるとき、スイッチング電圧VP1のHレベルは、レギュレート電圧VP3のHレベルよりも低いので、ドライブ電圧VP4としてのレギュレート電圧VP3が二次側スイッチング素子Q2をオンオフ動作させる(同図(B)参照)。
【0027】
このように、本実施例に係る駆動装置10Aによれば、駆動信号PWMのONデューティが広い範囲で変化しても、スイッチング電圧VP1およびレギュレート電圧VP3のうちの高い方がドライブ電圧VP4となって二次側スイッチング素子Q2を確実にオンオフ動作させることができる。
【0028】
[第2実施例]
図4に、本発明の第2実施例に係る駆動装置10Bを示す。同図に示すように、駆動装置10Bは、二次側回路が停止回路13をさらに含んでいる点と、二次側回路がレギュレータ回路12Aの代わりにレギュレータ回路12Bを含んでいる点とにおいて第1実施例に係る駆動装置10Aと相違しているが、それ以外の点においては駆動装置10Aと共通している。
【0029】
停止回路13は、アノードが二次巻線T2の一端に接続されたダイオードD7と、一端がダイオードD7のカソードに接続された抵抗R5と、エミッタがレギュレータ回路12Bに接続されるとともにベースがダイオードD7のカソードに接続されたPNP型のスイッチング素子Q4とを含んでいる。スイッチング素子Q4のコレクタおよび抵抗R5の他端は、二次巻線T2の他端に接続されている。
【0030】
スイッチング素子Q4のベースには、ダイオードD7を介してスイッチング電圧VP1が入力される。スイッチング電圧VP1がHレベルのとき、スイッチング素子Q4はオフする。このとき、スイッチング素子Q4は、レギュレータ回路12Bに何も影響を与えない。一方、スイッチング電圧VP1がLレベルのとき、スイッチング素子Q4はオンする。このとき、スイッチング素子Q4によって電流を引き抜かれたレギュレータ回路12Bは、動作し得なくなってレギュレート電圧VP3の出力を停止させる(レギュレート電圧VP3がゼロになる)。
【0031】
二次側スイッチング素子Q2のオンオフ動作を終えるとき、上位の制御回路は、駆動信号PWMをLレベルに変化させて、スイッチング電圧VP1およびドライブ電圧VP4をLレベルに変化させる。このとき、停止回路13を備えていない第1実施例に係る駆動装置10Aでは、コンデンサC1に蓄積された電荷でレギュレータ回路12Aが作動してしまい、二次側スイッチング素子Q2を完全にオフさせることができない場合がある。この点、本実施例に係る駆動装置10Bでは、スイッチング電圧VP1がLレベル(ゼロ)になると停止回路13がレギュレータ回路12Bの動作を停止させるので、二次側スイッチング素子Q2を確実にオフさせることができる。
【0032】
[変形例]
以上、本発明に係る駆動装置の第1実施例および第2実施例について説明してきたが、本発明に係る駆動装置の構成は、これらに限定されるものではない。
【0033】
例えば、本発明の倍化回路は、スイッチング電圧の倍化により倍電圧を生成する任意の回路であってもよい。
【0034】
また、本発明の停止回路は、スイッチング電圧がゼロになるとレギュレータ回路の動作を停止させる任意の回路であってもよいし、駆動信号が停止したことを示す停止信号を上位の制御回路からフォトカプラを介して受信したときにレギュレータ回路の動作を停止させる回路であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
10A,10B 駆動装置
11 倍化回路
12A,12B レギュレータ回路
13 停止回路
一次側スイッチング素子
二次側スイッチング素子
T トランス
一次巻線
二次巻線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7