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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】ドアロックシステム
(51)【国際特許分類】
   E05B 77/26 20140101AFI20230622BHJP
   E05B 81/20 20140101ALI20230622BHJP
   E05B 85/12 20140101ALI20230622BHJP
   E05B 85/24 20140101ALI20230622BHJP
   E05B 77/54 20140101ALI20230622BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
E05B77/26
E05B81/20 B
E05B85/12 A
E05B85/24
E05B77/54
B60J5/00 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019196989
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021070946
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】赤木 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】山崎 浩平
(72)【発明者】
【氏名】田中 優希
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-241346(JP,A)
【文献】特開2012-184578(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0017645(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側のストライカに係合するラッチ位置、前記ストライカとの係合状態を解除するオープン位置、及び前記ラッチ位置と前記オープン位置の間の半ラッチ位置に回転可能なフォーク、並びに前記フォークに係止して前記ラッチ位置に位置決めするクローレバーを備えたラッチ機構と、前記半ラッチ位置に位置するフォークを前記ラッチ位置に回転駆動させるクロージャ機構と、
前記ラッチ機構による前記ストライカの係止状態を、インナーハンドルの操作によって解除可能なアンロック状態と、解除不可能なロック状態とに切り換えるチャイルドロック機構とを有するドアラッチ装置と、
前記チャイルドロック機構がアンロック状態またはロック状態のいずれであるのかを検出するチャイルドロック状態検出部と、
前記チャイルドロック状態検出部によってロック状態が検出されることにより、前記クロージャ機構を駆動不能とするチャイルドロック優先モードを実行する制御部と、
を備える、ドアロックシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記チャイルドロック優先モードを、前記クロージャ機構を駆動可能とする通常モードに切替可能である、請求項1に記載のドアロックシステム。
【請求項3】
前記通常モードと前記チャイルドロック優先モードとを切替可能なモード切替スイッチを備える、請求項2に記載のドアロックシステム。
【請求項4】
ドアを車体に対して自動的に開閉する自動開閉装置を備え、
前記制御部は、前記チャイルドロック優先モードで、前記自動開閉装置によって前記ドアを閉状態に動作させる場合、半ドア状態で停止させる、請求項1から3のいずれか1項に記載のドアロックシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアロックシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドアをインナーハンドルの操作によっては開放できないようにしたチャイルドロック機構を備えたドアラッチ装置が公知である(例えば、特許文献1参照)。
また、ドアが半ドア状態であれば、自動的に閉鎖状態とする機構を備えたドアラッチ装置が公知である(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
チャイルドロック機構は、後部座席に子どもが乗車している場合にインナーハンドルが操作されてドアが開放してしまうことを防止するために設けられている。このため、チャイルドロック機構を備えたドアラッチ装置において、半ドア状態である場合に自動的に閉鎖する機能を追加した場合、ドアと車体との間に子どもが指を差し込んで挟まれてしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-273173号公報
【文献】特開2017-101412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、チャイルドロック機能と、半ドア状態のドアを自動閉鎖する機能とを兼ね備え、しかも半ドア状態のドアと車体の間に指を挟み込む恐れのないドアラッチ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、車体側のストライカに係合するラッチ位置、前記ストライカとの係合状態を解除するオープン位置、及び前記ラッチ位置と前記オープン位置の間の半ラッチ位置に回転可能なフォーク、並びに前記フォークに係止して前記ラッチ位置に位置決めするクローレバーを備えたラッチ機構と、前記半ラッチ位置に位置するフォークを前記ラッチ位置に回転駆動させるクロージャ機構と、前記ラッチ機構による前記ストライカの係止状態を、インナーハンドルの操作によって解除可能なアンロック状態と、解除不可能なロック状態とに切り換えるチャイルドロック機構とを有するドアラッチ装置と、前記チャイルドロック機構がアンロック状態またはロック状態のいずれであるのかを検出するチャイルドロック状態検出部と、前記チャイルドロック状態検出部によってロック状態が検出されることにより、前記クロージャ機構を駆動不能とするチャイルドロック優先モードを実行する制御部とを備えるドアロックシステムを提供する。
【0007】
この構成によれば、チャイルドロック優先モードであれば、クロージャ機構を駆動不能とすることにより、フォークが半ラッチ位置からラッチ位置に回転することがない。したがって、ドアと車体の間に指等を挟み込むことを確実に防止することができる。
【0008】
前記制御部は、前記チャイルドロック優先モードを、前記クロージャ機構を駆動可能とする通常モードに切替可能であるのが好ましい。
【0009】
この構成によれば、ドアと車体の間に指等を挟み込む恐れがあり得ない状況であれば、通常モードを選択することにより、迅速に半ドア状態のドアを閉状態にすることができる。
【0010】
前記通常モードと前記チャイルドロック優先モードとを切替可能なモード切替スイッチを備えるのが好ましい。
【0011】
この構成によれば、通常モードとチャイルドロック優先モードとを簡単に切り替えることができる。
【0012】
ドアを車体に対して自動的に開閉する自動開閉装置を備え、前記制御部は、前記チャイルドロック優先モードで、前記自動開閉装置によって前記ドアを閉状態に動作させる場合、半ドア状態で停止させるのが好ましい。
【0013】
この構成によれば、スライドドア等の自動開閉可能なタイプのドアであっても、ドアと車体の間に指等を挟み込むことがないように構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インナーハンドルの操作によってストライカとフォークの係止状態を解除できなくしたチャイルドロック機能と、半ラッチ位置のフォークをラッチ位置に自動的に回転させる自動閉鎖機能とを兼ね備えているにも拘わらず、チャイルドロック優先モードであれば、自動閉鎖機能を実行させないようにすることができる。このため、ドアと車体の間に指等を挟み込む恐れがなく、安全に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係るドアラッチ装置を備えたドアの概略正面図である。
図2図1に示すドアラッチ装置のカバー等を外し、内部構成部品が視認可能な状態とした斜視図である。
図3図2に示すドアラッチ装置の正面図である。
図4図2の側面図である。
図5図2に示すドアラッチ装置のメインロック機構とラッチ機構の正面図である。
図6図5の側面図である。
図7図2に示すサブロック機構のアンロック状態での正面図である。
図8図7に示すサブロック機構のロック状態での正面図である。
図9】本実施形態に係るドアロックシステムのブロック図である。
図10図9のECUで実行する自動閉鎖処理を示すフローチャートである。
図11図9のECUで実行するチャイルドロック処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また以下の説明では、車長方向をX方向、車幅方向をY方向、車高方向をZ方向と記載することがある。
【0017】
車両前方の運転席用及び助手席用のドアには、後述するクロージャ機構を備えたドアラッチ装置が設けられている。一方、車両後方の後部座席用のドアには、後述するクロージャ機構とチャイルドロック機構を備えたドアラッチ装置が設けられている。つまり、チャイルドロック機構は、後部座席用のドアにのみ設けられている。
【0018】
図1は、本実施形態に係るドアラッチ装置4を備えた後部側のドア1を示す。ドア1には、アウターハンドル2とインナーハンドル3が設けられている。ドア1は、車体にはヒンジ(図示せず)を介して回動可能に取り付けられている。
【0019】
図2に示すように、ドアラッチ装置4は、ケーシング5内に、ラッチ機構6、開放機構7、メインロック機構8、サブロック機構9、及びクロージャ機構10を備える。またドアラッチ装置4は、車両に搭載されたECU11(Electronic Control Unit)に電気的に接続されており、ECU11からの指令信号によって駆動する。
【0020】
(ケーシング5)
ケーシング5は樹脂製であり、ドア1の端面(概ねYZ平面)に沿って配置される第1収容部12と、ドア1のインナーパネル(XZ平面)に沿って配置される第2収容部13とを備える。
【0021】
図3及び図4に示すように、第1収容部12には樹脂製のフェンスブロック14が設けられている。フェンスブロック14には、ラッチ機構6、開放機構7の一部分、及びメインロック機構8の一部分が配置されている。またフェンスブロック14には、ストライカ15が挿通される挿通溝16が形成されている。挿通溝16は、X方向外側とY方向車内側とが開放された概ねU字形状となっている。
【0022】
第2収容部13には、開放機構7の他の部分、及びメインロック機構8の他の部分、及びサブロック機構9が配置されている。フェンスブロック14の端面の一部は金属製のカバー17によって覆われている。カバー17には、挿通溝16に対応する位置に挿通溝18が形成されている。第2収容部13は樹脂製のカバー19(図1参照)によって覆われている。
【0023】
(ラッチ機構6)
ラッチ機構6は、車体に対してドア1を閉じることで、車体に配置されたストライカ15(図4参照)を係止し、ドア1を閉状態に保持するための機構である。
【0024】
図2に示すように、ラッチ機構6はフォーク20及びクローレバー21を備える。
【0025】
図6に示すように、フォーク20は略U字形で、車外側に位置する第1腕部22と、車内側に位置する第2腕部23を備え、フェンスブロック14に回転軸20aを中心として回転可能に取り付けられている。第1腕部22と第2腕部23の外縁には、後述するクローレバー21が係脱する第1係止受部24と第2係止受部25がそれぞれ形成されている。フォーク20は、スプリング(図示せず)によって回転軸20aを中心として時計回り方向に付勢され、オープン位置に回転している。オープン位置のフォーク20は、挿通溝16内に進入したストライカ15に押圧されて反時計回り方向に回転する。フォーク20は、半ラッチ位置でストライカ15に係止し、ラッチ位置でドア1を閉状態に維持する。フォーク20が半ラッチ位置とラッチ位置に位置していることは、半ラッチ位置検出スイッチ26とラッチ位置検出スイッチ27によってそれぞれ検出される(図9参照)。また、フォーク20の外縁には押圧受部28が形成されている。フォーク20は、後述するクロージャ機構10によって押圧受部28を押圧されることにより、図中、回転軸20aを中心として反時計回り方向に回転可能となっている。
【0026】
クローレバー21は、フェンスブロック14に回転軸21aを中心として回転可能に取り付けられ、スプリング(図示せず)によって回転軸21aを中心として反時計回り方向に付勢されている。クローレバー21の外縁には、フォーク20の第1係止受部24及び第2係止受部25に係脱する係止部29が形成されている。係止部29は、フォーク20が半ラッチ位置に回転することにより第1係止受部24に係止し、ラッチ位置に回転することにより第2係止受部25に係止する。係止部29が第1係止受部24に係止した状態が半ドア状態であり、第2係止受部25に係止した状態が閉状態である。
【0027】
(開閉機構)
図2に示すように、開放機構7は、クローレバー21と同一の回転軸21aに連結された開放レバー30と、開放レバー30を作動させるためのリンク31と、リンク31を作動させるためのアウターレバー32及びインナーレバー33とを備える。
【0028】
アウターレバー32は、ケーブル(図示せず)を介してアウターハンドル2に連結された第1連結レバー34と、リンク31に係着された第1作動レバー35とを備える。
【0029】
インナーレバー33は、ケーブル(図示せず)によってインナーハンドル3に連結された第2連結レバー36と、リンク31を作動させるための第2作動レバー37とを備える。これらは、第2収容部13から突出する回転軸33aに回転可能に取り付けられている。
【0030】
図7に示すように、第2連結レバー36は、回転軸33aに回転可能に支持される筒状部38と、筒状部38から一方に延びる第1突出部39と、他方に延びる第2突出部40とを備える。第1突出部39の縁部は、後述する第1スライダを押圧可能な押圧縁41となっている。第2突出部40は、インナーハンドル3から延びるワイヤ(図示せず)が接続される接続部42を備える。第2連結レバー36は、インナーハンドル3の操作により、図7に示す非操作位置から、回転軸33aを中心として反時計回り方向に回転する。そして、押圧縁41によって、後述するように、連結位置に位置するスライダ82を押圧し、このスライダ82を介して第2作動レバー37を回転させる。
【0031】
第2作動レバー37はガイド部44及び押圧部45を備え、回転軸33aに回転可能に支持されている。ガイド部44にはガイド溝46が形成されてU字状となっている。押圧部45は、ガイド部44の一方からさらに延び、リンク31(図2参照)を押圧可能となっている。
【0032】
(メインロック機構8)
メインロック機構8は、ラッチ機構6によるストライカ15の係止を、アウターハンドル2及びインナーハンドル3の操作によって解除可能なアンロック状態と解除不可能なロック状態とに切り換える。つまり、メインロック機構8は、インナーハンドル3とアウターハンドル2の操作を有効な状態と無効な状態とに切り換えるための機構である。
【0033】
図2及び図5に示すように、メインロック機構8は、第1モータ47、第1ウォームギア48、第1ウォームホイール49、ロータ50、ジョイント51、及び第1切替レバー52を備える。また、メインロック機構8には、エマージェンシーシャフト53が設けられている。
【0034】
第1モータ47の出力軸には第1ウォームギア48が取り付けられている。第1ウォームホイール49は、第2収容部13に回転軸49aを中心として回転可能に取り付けられ、第1ウォームギア48に噛合している。ロータ50は、第2収容部13に回転軸50aを中心として回転可能に取り付けられ、第1ウォームホイール49と連動する。ジョイント51は第2収容部13に配置され、ロータ50と連動する。第1切替レバー52は、フェンスブロック14に配置され、ジョイント51に連結されている。第1切替レバー52は、リンク31を開放レバー30に係合可能なアンロック位置に移動させる位置と、係合不能なロック位置に移動させる位置とにそれぞれ回動可能となっている。
【0035】
エマージェンシーシャフト53は、第1モータ47を駆動できない非常時に、機械的にメインロック機構8をロック駆動させるためのものである。エマージェンシーシャフト53は、差込穴54に板部材(図示せず)を差し込んで時計回り方向に回転させることにより回転する。エマージェンシーシャフト53の回転により、ジョイント51が上方側に移動して第1切替レバー52を回転させ、リンク31がロック位置に移動する。
【0036】
(サブロック機構9)
サブロック機構9は、ラッチ機構6によるストライカ15の係止を、インナーハンドル3(インナーレバー33)の操作によって解除可能なアンロック状態と、解除不可能なロック状態とに切り換えるための機構である。サブロック機構9は、例えば小さな子どもを乗車させる時のチャイルドロック機構として使用できる。
【0037】
図7及び図8に示すように、サブロック機構9は、第2モータ55、第2ウォームギア56、第2ウォームホイール57、及び第2切替レバー58を備える。
【0038】
第2モータ55は第2収容部13に配置されている。第2モータ55の出力軸には第2ウォームギア56が取り付けられている。
【0039】
第2ウォームホイール57は、第2収容部13から突出する回転軸57aに回転可能に支持される円筒部59を有する。円筒部59からは、第1ギア部60、第2ギア部61及び当接部62が径方向外側へと突出している。第1ギア部60は、円筒部59から扇形状に突出しており、その外周には第2ウォームギア56が噛合している。第2ギア部61は、円筒部59から半円環状に突出しており、その外周に第1回転レバー64のギア部74が噛合している。第2ギア部61と当接部62は同一円周上に配置され、これらと第1ギア部60とは軸心方向に位置がずれている。第2ウォームホイール57の近傍には、チャイルドロック状態検出部であるマイクロスイッチ63が設けられている。マイクロスイッチ63は、第2ウォームホイール57が回転軸57aを中心として反時計回り方向に回転することにより当接部62に押圧されてオン状態となる。
【0040】
第2切替レバー58は、Y方向に重なるように配置した第1回転レバー64と第2回転レバー65とを備える。
【0041】
第1回転レバー64は略円形状で、中心の筒状部66がケーシング5から突出させた回転軸64aに回転可能に支持されている。外周部には周方向に対向する第1縁部67と第2縁部68を有する第1切欠部69が設けられ、そこからさらに周方向に凹部70がそれぞれ形成されている。第1切欠部69によって形成された各角部からは第1当接部71と第2当接部72がそれぞれ上方側に突出している。第1切欠部69内にはケーシング5に固定したストッパ73が位置し、第1回転レバー64の回転範囲が規制されている。これにより、第1回転レバー64は、第1当接部71がストッパ73に当接する第1作動位置(図7)と、第2当接部72がストッパ73に当接する第2作動位置(図8)の間を回転する。第1回転レバー64の外周部の一部は扇状のギア部74で構成されている。ギア部74には第2ウォームホイール57の第2ギア部61が噛合している。
【0042】
第2回転レバー65は、円形部75とそこから延びる腕部76とで構成されている。円形部75の中心には軸受部77が形成され、第1回転レバー64の筒状部38に回転可能に支持されている。円形部75の外周部分には第2切欠部78が形成されている。第2切欠部78によって形成された角部には第1当接部79と第2当接部80が下方側に突出している。第2切欠部78には前記ストッパ73が位置し、第1当接部79と第2当接部80がそれぞれ当接することにより第2回転レバー65の回転範囲が規制されている。また、第1当接部79には第1回転レバー64の第1縁部67が当接し、第2当接部80には第2縁部68が当接する。これにより、第1回転レバー64の正逆回転によって第2回転レバー65も正逆回転することになる。腕部76には長穴81が形成され、そこにはスライダ82がスライド可能に配置されている。スライダ82は、第2回転レバー65の回転により、第2作動レバー37のガイド溝46内を、第2連結レバ-36の回転動作によって第2作動レバー37を回転可能とする連動位置(図7)と、回転不能とする非連結位置(図8)とに移動する。
【0043】
(クロージャ機構10)
図6に示すように、クロージャ機構10は、回転軸を中心として回転可能に設けたクローズレバー83を備える。クローズレバー83の外周部からは押圧部84が突出している。クローズレバー83は、図示しないスプリングにより、図中、回転軸83aを中心として反時計回り方向に付勢されている。そして、ECU11からの作動信号により第3モータ91(図9参照)が駆動すると、クローズレバー83がワイヤ(図示せず)を介して時計回り方向に回転する。クローズレバー83の回転により、その押圧部84でフォーク20の押圧受部28を押圧し、フォーク20を半ラッチ位置からラッチ位置へと回転させることができるようになっている。
【0044】
図9に示すように、ECU11には、キー85(携帯機)、オープンスイッチ86、クロージャスイッチ87、ロックスイッチ88、アンロックスイッチ89、チャイルドロックスイッチ90、半ラッチ位置検出スイッチ26、ラッチ位置検出スイッチ27、マイクロスイッチ63、モード切替スイッチ92などから信号が入力される。クロージャスイッチ87は、ユーザがクロージャ機構10の作動の要否を切り替えるためのロッカースイッチである。チャイルドロックスイッチ90は、ユーザがサブロック機構9の状態を切り替えるためのロッカースイッチである。モード切替スイッチ92は、ユーザが後述するチャイルドロック優先モードと通常モードを切り替えるためのスイッチである。
【0045】
ECU11は、これらの入力信号に基づいて第1モータ47、第2モータ55、第3モータ91などに駆動信号を出力し、後述するようにしてドア1の開閉制御を行う。
すなわち、ECU11は、クロージャスイッチ87からオン信号が入力されると、クロージャ機能をオンし、全てのドアのドアラッチ装置のクロージャ機構10を作動可能とする。そして、各ドアラッチ装置で半ラッチ位置検出スイッチ26からオン信号が入力されると、第3モータ91を駆動してクロージャ機構10を作動させる。一方、クロージャスイッチ87からオフ信号が入力されると、クロージャ機能をオフし、全てのドアのドアラッチ装置のクロージャ機構10を駆動不能とする。そして、各ドアラッチ装置で半ラッチ位置検出スイッチ26からオン信号が入力されても、第3モータ91を駆動せず、クロージャ機構10は作動させない。
また、ECU11は、チャイルドロックスイッチ90からオン信号が入力されると、チャイルドロック機能をオンし、後部座席用のドア1のドアラッチ装置4の第2モータ55を駆動してサブロック機構9をロック状態とする。一方、チャイルドロックスイッチ90からオフ信号が入力されると、チャイルドロック機能をオフし、後部座席用のドア1のドアラッチ装置4の第2モータ55を駆動してサブロック機構9をアンロック状態とする。
【0046】
(動作)
以下、ECU11によるドア1の開閉制御について説明する。ここでは、半ドア状態のドア1を自動的に閉鎖させる自動閉鎖処理と、アウターハンドル2によるドア1の開放を可能とする一方、インナーハンドル3によるドア1の開放を不能とするチャイルドロック処理とについて説明する。
【0047】
図10に示すように、自動閉鎖処理では、フォーク20が半ラッチ位置に位置しているか否かを、半ラッチ位置検出スイッチ26からオン信号が入力されるか否かで判断する(ステップS1)。半ラッチ位置検出スイッチ26からオン信号が入力されれば、第3モータ91を駆動する(ステップS2)。第3モータ91の駆動により、クローズレバー83が図示しないワイヤを介して、図6中、時計回り方向に回転し、押圧部84がフォーク20の押圧受部28を押圧する。そして、ラッチ位置検出スイッチ27からオン信号が入力されたか否かを判断する(ステップS3)。ラッチ位置検出スイッチ27からオン信号が入力されれば、フォーク20が半ラッチ位置からラッチ位置へと回転したと判断し、第3モータ91の駆動を停止する(ステップS4)。これにより、ドア1は自動的に半ドア状態から閉状態となる。
【0048】
図11に示すように、チャイルドロック処理では、チャイルドロックスイッチ90からオン信号が入力されたか否かを判断する(ステップS11)。チャイルドロックスイッチ90からオン信号が入力されれば、第2モータ55に駆動信号を出力して正転駆動させる(ステップS12)。第2モータ55の駆動により、第2ウォームギア56を介して第2ウォームホイール57が、図7中、回転軸57aを中心として反時計回りに回転する。さらに第2ウォームホイール57の回転により、第1回転レバー64が回転軸64aを中心として時計回り方向に回転する。第1回転レバー64の回転により第2回転レバー65も回転軸64aを中心として時計回り方向に回転する。これにより、スライダ82は第2作動レバー37のガイド溝46を第2連結レバー36によって回転不能な非連結位置に移動する。そして、当接部62によってマイクロスイッチ63がオン状態となったか否かを判断する(ステップS13)。マイクロスイッチ63がオン状態となれば、チャイルドロック状態であると判断して第2モータ55を停止し、車内のメータパネル等にその旨を表示させる(ステップS14)。ユーザは、この表示によってドア1がチャイルドロック状態となっていることを確認することができる。
【0049】
この場合、チャイルドロック優先モードであれば、ドア1が半ドア状態であったとしてもクロージャ機構10は駆動させない。すなわち、半ドア位置検出スイッチからオン信号が入力されたとしても、クロージャ機構10の第3モータ91には駆動信号を出力しない。これにより、後部座席の乗員(主に、子ども)が、半ドア状態のドア1と車体との隙間に指を差し込んでいたとしても、誤って挟まれてしまうことを未然に回避することができる。なお、ドア1を閉状態とする場合には、ユーザがドア1と車体の間に指などが挟まっていないことを確認してから、手動によりドア1を閉操作すればよい。
【0050】
ドア1が閉鎖されれば、チャイルドロック状態となっているため、インナーハンドル3を操作したとしても、ドア1を開放することはできない。すなわち、チャイルドロック状態では、インナーハンドル3の操作によって第2連結レバー36が回転するが、スライダ82は第2連結レバー36によっては押圧できない非連結位置に移動している。このため、第2作動レバー37を回転させてリンク31を作動させることができないため、開放機構7を介してラッチ機構6を開駆動できない。このため、ドア1は閉状態に維持される。
【0051】
一方、チャイルドロック状態となった閉状態のドア1で、アウターハンドル2を操作すると、メインロック機構8がアンロック状態にあるドア1を開放する場合と同様に、アウターレバー32が回転し、リンク31を介して開放レバー30が回転し、クローレバー21によるフォーク20の係止状態が解除され、ドア1は開放される。
【0052】
なお、モード切替スイッチ92を操作することで、チャイルドロック優先モードと通常モードのいずれか一方を選択できるようにしてもよい。また、モード切替スイッチ92の代わりに、クロージャスイッチ87とチャイルドロックスイッチ90をモーメンタリ式のスイッチとし、各スイッチ87,90を所定時間以上長押しすることで、チャイルドロック優先モードと通常モードとを切り替えるようにしてもよい。この場合、現在選択されているモードを表示するモード表示部を車両内部のインスツルメントパネルなどに設けてもよい。
【0053】
チャイルドロック優先モードでは、表1に示すように、クロージャスイッチ87がオン状態である場合、運転席側及び助手席用のドアのドアラッチ装置のクロージャ機構10はそのまま作動可能とする一方、後部座席用のドアのドアラッチ装置のクロージャ機構10の作動の可否をチャイルドロック機構の状態に応じて切り替える。具体的には、クロージャスイッチ87がオン状態で、サブロック機構9(チャイルドロック機構)がアンロック(オフ)状態であれば、クロージャスイッチ87は駆動可能とする。一方、クロージャスイッチ87がオン状態であっても、サブロック機構9(チャイルドロック機構)がロック(オン)状態であれば、クロージャ機構10は駆動不能とする。クロージャ機構10が駆動不能となった場合、ドア1が半ドア状態であったとしてもクロージャ機構10は駆動させない。
【0054】
【表1】
【0055】
一方、通常モードでは、表2に示すように、クロージャスイッチ87がオン状態である場合、サブロック機構9の状態に関係なく、全てのドアのドアラッチ装置4のクロージャ機構10を駆動可能とする。クロージャ機構10が駆動可能となった場合、ドア1が半ドア状態であると判断されれば、自動的にクロージャ機構10を駆動し、閉状態とする。
【0056】
【表2】
【0057】
本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0058】
前記実施形態では、一般的なスイングドアについて説明したが、スライドドアやガルウィングドアなどの他のタイプのドア1であっても、前記ドアロックシステムを採用することができる。
【0059】
ドアロックシステムをスライドドアに採用する場合、ドア1を自動開閉可能な構成としてもよい。この場合、チャイルドロックスイッチ90が操作されていれば、前記同様、ドア1を閉状態とはせず、半ラッチ状態で一旦停止させる。これにより、指等がドア1と車体の間に挟まれることを防止できる。
【0060】
前記実施形態では、クロージャ機構10によりフォーク20を間接的に回転させるようにしたが、フォーク20の回転軸をギアを介してモータにより直接正逆回転駆動するようにしてもよい。
【0061】
前記実施形態では、チャイルドロックスイッチ90を操作することによりドア1をチャイルドロック状態とするようにしたが、手動操作できるようにしてもよい。この場合、ドア1の開口端(ドア1が閉状態で隠れる部分)に操作ノブを設け、この操作ノブの操作により、直接又は間接的にスライダ82を非連結位置に移動させるようにしてもよい。操作ノブが操作されたか否かは、操作ノブの操作位置を検出するスイッチやセンサ等で検出できるようにすればよい。
【0062】
前記実施形態では、チャイルドロック状態検出部を、サブロック機構9の状態を検出するマイクロスイッチ63で構成したが、ユーザが操作するチャイルドロックスイッチ90で構成するようにしてもよい。この場合、ECU11は、チャイルドロック優先モードで、チャイルドロックスイッチ90からオン信号が入力されることにより、クロージャ機構10を駆動不能とし、オフ信号が入力されることにより駆動可能とすればよい。
【符号の説明】
【0063】
1…ドア
2…アウターハンドル
3…インナーハンドル
4…ドアラッチ装置
5…ケーシング
6…ラッチ機構
7…開放機構
8…メインロック機構
9…サブロック機構
10…クロージャ機構
11…ECU
12…第1収容部
13…第2収容部
14…フェンスブロック
15…ストライカ
16…挿通溝
17…カバー
18…挿通溝
19…カバー
20…フォーク
21…クローレバー
22…第1腕部
23…第2腕部
24…第1係止受部
25…第2係止受部
26…半ラッチ位置検出スイッチ
27…ラッチ位置検出スイッチ
28…押圧受部
29…係止部
30…開放レバー
31…リンク
32…アウターレバー
33…インナーレバー
34…第1連結レバー
35…第1作動レバー
36…第2連結レバー
37…第2作動レバー
38…筒状部
39…第1突出部
40…第2突出部
41…押圧縁
42…接続部
43…軸受部
44…ガイド部
45…押圧部
46…ガイド溝
47…第1モータ
48…第1ウォームギア
49…第1ウォームホイール
50…ロータ
51…ジョイント
52…第1切替レバー
53…エマージェンシーシャフト
54…差込穴
55…第2モータ
56…第2ウォームギア
57…第2ウォームホイール
58…第2切替レバー
59…円筒部
60…第1ギア部
61…第2ギア部
62…当接部
63…マイクロスイッチ
64…第1回転レバー
65…第2回転レバー
66…筒状部
67…第1縁部
68…第2縁部
69…第1切欠部
70…凹部
71…第1当接部
72…第2当接部
73…ストッパ
74…ギア部
75…円形部
76…腕部
77…軸受部
78…第2切欠部
79…第1当接部
80…第2当接部
81…長穴
82…スライダ
83…クローズレバー
84…押圧部
85…キー
86…オープンスイッチ
87…クロージャスイッチ
88…ロックスイッチ
89…アンロックスイッチ
90…チャイルドロックスイッチ
91…第3モータ
92…モード切替スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11