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  • 特許-分電盤接続検査装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】分電盤接続検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/55 20200101AFI20230622BHJP
【FI】
G01R31/55
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019208169
(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公開番号】P2021081283
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 亮介
(72)【発明者】
【氏名】大橋 均
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-208431(JP,A)
【文献】特開2006-197703(JP,A)
【文献】特開2013-102612(JP,A)
【文献】特開2001-74800(JP,A)
【文献】特開平5-199624(JP,A)
【文献】実開平3-65986(JP,U)
【文献】特開2020-38064(JP,A)
【文献】特開2020-112420(JP,A)
【文献】特許第7270521(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/74
H02B 1/00-3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐ブレーカから配設された個々の分岐電路の接続確認を実施するための分電盤接続検査装置であって、
それぞれの前記分岐電路に接続されて、それぞれ異なる信号を前記分岐電路に出力する複数の検査子機と、
前記分岐ブレーカの二次側端子に接触させる一対のプローブ、前記検査子機の個々に設定された前記信号をIDを紐付けして記憶する判別情報記憶部、受信した信号から前記検査子機のIDを判別する子機判別手段、そして判別したIDを表示する親機表示部を備えた検査親機とを有し、
オフ操作した分岐ブレーカの二次側端子に前記プローブを接触させて、入手した信号情報を基に判別したID情報を前記親機表示部に表示させて、分岐電路の接続確認を可能としたことを特徴とする分電盤接続検査装置。
【請求項2】
前記検査子機は、前記判別情報記憶部と同一の情報を記憶する子機ID記憶部、前記信号を設定する設定部、そして選択した信号のID情報を表示する子機表示部を有し、選択された信号を前記分岐電路に出力することを特徴とする請求項1記載の分電盤接続検査装置。
【請求項3】
前記検査子機は、接続した分岐電路から電源供給を受ける第1電源部と、蓄電池を備えた第2電源部と、電源を切り替える電源切替制御部とを有し、
前記電源切替制御部は、前記分岐電路上の商用電源の有無を判別して、商用電源無しと判定したら電源を前記第1電源部から前記第2電源部に切り替えると共に、前記信号の出力を開始させることを特徴とする請求項1又は2記載の分電盤接続検査装置。
【請求項4】
前記検査子機は電源プラグを備え、前記分岐電路に接続されている電源コンセントに前記電源プラグを差し込むことで、前記検査子機が前記分岐電路に接続されることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の分電盤接続検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分電盤の施工完了時に行われる接続検査で使用する分電盤接続検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分電盤の施工が完了した際に行われる分岐電路の検査は、分電盤側と分岐電路末端の双方に人を配置して、二人で分岐ブレーカ毎に実際に通電して実施するため、容易に実施できる検査では無かった。また、近年の住宅においては分電盤の分岐回路数が増加傾向にあるため、ますます面倒な作業となっていた。
そのため、この作業者の負担を軽減するための装置が提案されている。例えば、特許文献1には、分電盤に配置されて分岐電路毎の通電電流を計測する親機と、この親機から送信される電流情報を受信する子機とから成るチェック装置が開示されている。
これは、分岐電路の末端側で子機を携行した作業者が負荷のオン/オフ操作を行い、変化する電路電流を分電盤側の親機に計測させ、親機が計測した電流情報を子機に送信するよう構成されている。こうして子機が親機から受信することで、負荷を操作する作業者により分岐電路の接続確認をすることができ、負荷が接続されている分岐ブレーカを特定することが1人の作業者で可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5167568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の技術は、子機を作業者が携行することで一人で分岐電路の検査を行うことが可能であった。しかしながら、親機を設置する際に分電盤の各分岐電路に変流器を接続しなければならないため、その作業が面倒であったし、検査中は分電盤は開放状態となり、充電部が露出されるにも関わらず無人となるため不安であった。
また、親機と子機との間で通信するための電源を分電盤から採るため、電源配線の接続時に短絡が発生したり作業者が感電する危険性もあった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、分岐電路の末端側に作業者を配置することなく、分電盤側の一人で分電盤の接続検査を実施できる分電盤接続検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、分岐ブレーカから配設された個々の分岐電路の接続確認を実施するための分電盤接続検査装置であって、それぞれの分岐電路に接続されて、それぞれ異なる信号を分岐電路に出力する複数の検査子機と、分岐ブレーカの二次側端子に接触させる一対のプローブ、検査子機の個々に設定された信号をIDを紐付けして記憶する判別情報記憶部、受信した信号から検査子機のIDを判別する子機判別手段、そして判別したIDを表示する親機表示部を備えた検査親機とを有し、オフ操作した分岐ブレーカの二次側端子にプローブを接触させて、入手した信号情報を基に判別したIDを親機表示部に表示させて、分岐電路の接続確認を可能としたことを特徴とする。
この構成によれば、検査子機から送信される信号を受信することにより、分岐電路と検査子機の関係を判別することができるため、検査親機と分岐ブレーカを操作する一人の作業者を分電盤側に配置することで、個々の分岐ブレーカから延設された分岐電路が正しく配設されているか確認が可能となる。
また、検査親機には検査子機毎に送信される信号に関連付けられているIDが表示されるため、分電盤に対して複数の検査子機が接続されていても、分岐電路と検査子機の関係を容易に特定できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、検査子機は、判別情報記憶部と同一の情報を記憶する子機ID記憶部、信号を設定する設定部、そして選択した信号のID情報を表示する子機表示部を有し、選択された信号を分岐電路に出力することを特徴とする。
この構成によれば、個々の検査子機に対する信号形態の設定は、記憶している信号を選択するだけであり、容易に設定できる。また、検査親機は検査子機に設定される信号の全種類を記憶しているため、検査子機に設定されたIDを新たに入力する必要がなく、検査する作業者は検査子機に設定したIDを把握するだけで良い。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の構成において、検査子機は、接続した分岐電路から電源供給を受ける第1電源部と、蓄電池を備えた第2電源部と、電源を切り替える電源切替制御部とを有し、電源切替制御部は、分岐電路上の商用電源の有無を判別して、商用電源無しと判定したら電源を第1電源部から第2電源部に切り替えると共に、信号の出力を開始させることを特徴とする。
この構成によれば、蓄電池は分岐電路に商用電源が供給されている間は使用されないため、消費電力は少なくて済む。そして、商用電源が供給されなくなると、即ち分岐ブレーカがオフ操作されたら信号が出力されるため、分岐ブレーカの操作で検査子機のオン/オフ操作ができ、分電盤上で複数の信号が交錯することがない。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の構成において、検査子機は電源プラグを備え、分岐電路に接続されている電源コンセントに電源プラグを差し込むことで、検査子機が分岐電路に接続されることを特徴とする。
この構成によれば、電源コンセントに電源プラグを差し込むことで検査子機を分岐電路に接続でき、検査子機を容易に接続できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、検査子機から送信される信号を受信することにより、分岐電路と検査子機の関係を判別することができるため、検査親機と分岐ブレーカを操作する一人の作業者を分電盤側に配置することで、個々の分岐ブレーカから延設された分岐電路が正しく配設されているか確認が可能となる。
また、検査親機には検査子機毎に送信される信号を基にID情報が表示されるため、分電盤に対して複数の検査子機が接続されていても、分岐電路と検査子機の関係を容易に特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る分電盤接続検査装置の一例を示す構成図であり、主要機器をブロック図で示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る分電盤接続検査装置の一例を示す構成図であり、1は検査子機、2は検査親機、3は分電盤、4は電源コンセントである。検査子機1と検査親機2とで分電盤接続検査装置を構成している。
【0013】
分電盤3には主幹ブレーカ5、複数の分岐ブレーカ6が組み付けられており、商用電力系統からの引き込み線である単相3線式の電源線L1が主幹ブレーカ5の一次側に接続され、その2次側に接続された主電路L2に分岐ブレーカ6が接続されている。
そして、各分岐ブレーカ6から分岐電路L3が配設され、ここでは分岐電路L3の末端に電源コンセント4が接続された状態を示している。
【0014】
検査子機1は、分岐電路L3に信号を出力する信号送信部11、複数のID情報を記憶する子機ID記憶部13、検査子機1のIDを設定するID設定部14、設定したIDを表示する子機表示部15、検査子機1の駆動電源を生成する第1電源部16a及び第2電源部16b、電源の切替を制御すると共に検査子機1を制御するCPUを備えた子機制御部17等を備えている。第1電源部16aは、接続された分岐電路L3に通電される商用電源を基に電源を生成する。第2電源部16bは乾電池等の蓄電池である。
そして、検査子機1のハウジングには電源プラグ1aが設けられており、電源コンセント4である壁面コンセント等に差し込むことで、電源コンセント4から分電盤3に信号が送信される。また、第1電源部16aに分岐電路L3から電源が供給され、検査子機1が起動するよう構成されている。
【0015】
尚、子機ID記憶部13には、例えば100個のシリアル番号がIDとして登録されており、それぞれに異なる信号が紐付けされて記憶されている。この信号は、例えば一定電圧のオン/オフからなる2値の信号であり、8桁程度の信号が出力される。
【0016】
検査親機2は、分岐ブレーカ6の二次側端子に接触させる一対のプローブ2a、プローブ2aを介して受信した検査子機1の出力信号が入力される信号受信部21、複数のID情報を記憶する親機ID記憶部22、受信した信号からIDを判別すると共に検査親機2を制御する親機制御部23、判別結果を表示する親機表示部24、蓄電池25aを備えた親機電源部25等を備えている。
親機ID記憶部22は、子機ID記憶部13と同一の情報を記憶し、複数の信号形態がそれぞれIDが紐付けされて記憶されている。
【0017】
上記の如く構成された分電盤接続検査装置の動作は以下のようである。はじめに、分岐電路L3の数だけ検査子機1を用意し、それぞれ異なるIDを設定する。ID設定部14は、例えば6桁のDIPスイッチで構成され、スイッチ操作で設定される。
IDの設定により出力する信号形態が設定され、設定されたIDは子機表示部15に表示され、子機制御部17に記憶される。
ID設定が成されたら、検査対象の分岐電路L3に接続された電源コンセント4に電源プラグ1aを挿入して接続する。
尚、電源コンセントに接続した状態でID設定を行っても良い。また、検査作業者は、検査時に検査親機2での表示を確認するために、検査子機1に設定したIDをメモしておく。
【0018】
電源コンセント4に接続することで、子機制御部17は分岐電路L3に商用電源が印加されていたらそれを認識し、電源を第2電源部16bから第1電源部16aに切り替える。また、同時に信号送信部11からの信号送出は保留状態となる。こうしてID設定した検査子機1を、検査対象の複数の分岐電路L3に対してそれぞれ接続し、作業者は分電盤3での検査親機2を使用する確認作業に移る。
【0019】
分電盤3での作業は、検査親機2のプローブ2aを検査対象の分岐ブレーカ6の二次側端子に接触させて行われる。まず、検査対象の分岐ブレーカ6をオフして分岐電路L3への通電を遮断する。そして、オフ操作した分岐ブレーカ6の二次側端子にプローブ2aを接触させる。
オフ操作したことで、分岐電路L3の先に接続されている検査子機1から信号が送信され、プローブ2aを介して検査親機2がそれを受信する。
【0020】
検査親機2の親機制御部23は、受信した信号を判別し、信号に紐付けされているIDを親機ID記憶部22の情報を基に判定し、判定結果(検査子機1のID)を親機表示部24に表示する。
この表示されたIDが、分岐電路L3に接続された検査子機1に設定されたIDであれば、分岐ブレーカ6をオフ操作した分岐電路L3が正しく配設されている状態を確認できる。そして、確認が終了した分岐ブレーカ6はオン状態に戻し、次の分岐電路L3の検査に進む。この確認検査を個々の分岐ブレーカ6を順次オフ操作して実施することで、全ての分岐電路L3の検査が実施される。
【0021】
尚、分岐電路L3が正しく配設されていなければ、予定していたIDとは異なるIDが表示されるためそれを認識できるし、何れの検査子機1も接続されていない場合はエラー表示がなされ、接続不良であることを認識できる。
【0022】
このように、検査子機1から送信される信号を受信することにより、分岐電路L3と検査子機1の関係を判別することができるため、検査親機2と分岐ブレーカ6を操作する一人の作業者を分電盤3側に配置することで、個々の分岐ブレーカ6から延設された分岐電路L3が正しく配設されているか確認が可能となる。
また、検査親機2には検査子機1毎に送信される信号に関連付けられているID表示されるため、分電盤3に対して複数の検査子機1が接続されていても、分岐電路L3と検査子機1の関係を容易に特定できる。
更に、個々の検査子機1に対する信号形態の設定は、記憶している信号を選択するだけであり、容易に設定できる。また、検査親機2は検査子機1に設定される信号の全種類を記憶しているため、検査子機1に設定されたIDを新たに入力する必要がなく、検査する作業者は検査子機1に設定したIDを把握するだけで良い。
また、第2電源部16bの蓄電池は、分岐電路L3に商用電源が供給されている間は使用されないため、消費電力は少なくて済む。そして、商用電源が供給されなくなると、即ち分岐ブレーカ6がオフ操作されたら信号が出力されるため、分岐ブレーカ6の操作で検査子機1のオン/オフ操作ができ、分電盤3上で複数の信号が交錯することがない。
加えて、電源コンセント4に電源プラグ1aを差し込むことで検査子機1を分岐電路L3に接続でき、検査子機1を容易に接続できる。
【0023】
尚、上記実施形態では、検査親機2は親機電源部25に蓄電池25aを備えているが、分電盤3から電力の供給を受けても良い。
また、検査対象の分岐ブレーカ6のみオフして検査を行っているが、全ての分岐ブレーカ6をオフして順次検査を行っても良い。
更に、検査子機1は電源コンセント4に接続する電源プラグ1aを備えているが、電源コンセント4の無い分岐電路L3のために、例えばクリップを備えてスイッチボックス内の電線に接続させても良い。
また検査子機1に、コンセント4に差し込んだタイミングで、電圧やコンセント電極の極性、接地の有無を判断し、その判断結果をLED等で表示する機能を持たせても良い。
【符号の説明】
【0024】
1・・検査子機、1a・・電源プラグ、2・・検査親機、2a・・プローブ、3・・分電盤、4・・電源コンセント、5・・主幹ブレーカ、6・・分岐ブレーカ、11・・信号送信部、13・・子機ID記憶部、14・・ID設定部(設定部)、15・・子機表示部、16a・・第1電源部、16b・・第2電源部、17・・子機制御部(電源切替制御部)、21・・信号受信部、22・・親機ID記憶部(判別情報記憶部)、23・・親機制御部(子機判別手段)、24・・親機表示部、25・・親機電源部、25a・・蓄電池、L1・・電源線、L3・・分岐電路。
図1