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特許7300380閾値更新装置、学習装置、制御装置、閾値更新方法、および制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】閾値更新装置、学習装置、制御装置、閾値更新方法、および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/04 20060101AFI20230622BHJP
   B01D 21/30 20060101ALI20230622BHJP
   C02F 11/14 20190101ALI20230622BHJP
【FI】
G01N15/04 D
B01D21/30 A ZAB
C02F11/14
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019225873
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2021096093
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】東 隆司
(72)【発明者】
【氏名】石田 健
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-079330(JP,A)
【文献】特開平04-083503(JP,A)
【文献】国際公開第2016/157646(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/04
B01D 21/30
C02F 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥に凝集剤を加えて撹拌することにより、当該汚泥中の固形物をフロックとして凝集させるフロキュレータ内の汚泥を撮影した画像において、前記フロックが写るフロック領域とその背景領域とを区分するための二値化処理に用いる閾値を更新する閾値更新装置であって、
前記フロキュレータに供給される汚泥、または前記フロキュレータの内部で形成されたフロックの性状の変化を検出する検出部と、
前記検出部が前記変化を検出したことを契機として、前記閾値を、当該変化の後の前記フロキュレータ内の汚泥を撮影した変化後画像に応じた値に更新する更新部と、を備える、閾値更新装置。
【請求項2】
前記検出部が検出する前記変化は、前記フロックの色の変化である、請求項1に記載の閾値更新装置。
【請求項3】
前記検出部が検出する前記変化は、前記フロキュレータに投入される前の前記汚泥の色の変化である、請求項1に記載の閾値更新装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記フロキュレータの後段に配設され、前記汚泥を脱水する脱水機のトルクまたは駆動電流値の変化を、前記性状の変化として検出する、請求項1に記載の閾値更新装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記フロキュレータへの前記汚泥の供給速度の変化を、前記性状の変化として検出する、請求項1に記載の閾値更新装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記フロキュレータの後段に配設され、前記汚泥を脱水する脱水機により脱水された水量、または前記脱水機の脱水速度の変化を、前記性状の変化として検出する、請求項1に記載の閾値更新装置。
【請求項7】
前記更新部は、フロックが写る画像と当該画像におけるフロック領域と背景領域とが区分できるように設定された前記閾値との関係を機械学習することによって生成された学習済みモデルに、前記変化後画像を入力して得られる出力値に基づいて前記閾値を更新する、請求項1から6のいずれか1項に記載の閾値更新装置。
【請求項8】
請求項7に記載の学習済みモデルを生成する学習装置であって、
前記フロキュレータ内の汚泥を撮影した画像に、当該画像におけるフロック領域と背景領域が正しく区分されたときの前記閾値が正解データとして対応付けられた教師データを用いて機械学習を行うことにより、前記学習済みモデルを生成する学習部を備える学習装置。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の閾値更新装置が更新した閾値を用いて前記フロキュレータの撹拌速度を制御する制御装置であって、
前記フロキュレータの撹拌速度を、前記閾値更新装置が更新した閾値を用いて、前記フロキュレータ内の汚泥を撮影した画像を二値化処理したフロックのサイズに応じた速度とする撹拌制御部を備える制御装置。
【請求項10】
汚泥に凝集剤を加えて撹拌することにより、当該汚泥中の固形物をフロックとして凝集させるフロキュレータ内の汚泥を撮影した画像において、前記フロックが写るフロック領域とその背景領域とを区分するための二値化処理に用いる閾値を更新する閾値更新装置が実行する閾値更新方法であって、
前記フロキュレータに供給される汚泥、または前記フロキュレータの内部で形成されたフロックの性状の変化を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにて前記変化を検出したことを契機として、前記閾値を当該変化の後に前記フロキュレータ内の汚泥を撮影した変化後画像に応じた値に更新する更新ステップと、を含む、閾値更新方法。
【請求項11】
請求項1に記載の閾値更新装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記検出部および前記更新部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥を撮影した画像を二値化処理する際に用いる閾値を更新する閾値更新装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥に凝集剤等の薬品を添加して撹拌することにより、汚泥中の固形物を凝集させてフロックを形成し、このフロックの集合体である凝集汚泥を脱水することにより、脱水汚泥を得るという技術が従来から用いられている。
【0003】
汚泥の脱水を安定的に行うためには、適正なサイズのフロックを形成することが必要である。そのため、フロックを形成する工程においては、形成中のフロックの状態を把握しながら、フロックのサイズを適正なサイズで維持するための制御を随時行うことが望ましい。
【0004】
フロックの状態を把握するための技術が開示された文献としては、例えば下記の特許文献1が挙げられる。特許文献1には、フロックの面積や個数を計算するために、フロックを撮影したフロック画像を二値化処理してフロックを検出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平3-89141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような従来技術には、汚泥の性状が変化した場合や、フロックの性状が変化した場合に、フロックが写る領域を的確に検出することができなくなる場合があるという問題がある。これについて、図9に基づいて説明する。図9は、フロック画像を二値化処理した例を示す図である。
【0007】
図9には、A1~A3の3つのフロック画像と、これらを二値化した二値化画像a1~a3-2を示している。フロック画像A1とA2は、閾値Thaで二値化しており、これにより、フロック領域と背景領域とが概ね良好に区分できている。
【0008】
一方、フロック画像A3は、写っているフロックのサイズはフロック画像A2と同程度であるが、フロックの色がフロック画像A2よりも白に近くなっている。汚泥またはフロックの性状が変化した場合には、このような事態が発生し得る。
【0009】
このフロック画像A3を、フロック画像A1、A2と同様に閾値Thaで二値化したものが二値化画像a3-1である。二値化画像a3-1では、フロック領域と背景領域との境界が不分明となっており、このような画像からはフロックの状態を正確に把握することはできない。フロック画像A3からフロックの状態を正確に把握するためには、閾値としての輝度を表す画素値をThaよりも大きいThbに更新する必要がある。閾値をThbに更新することにより、フロック画像A3から、フロック領域と背景領域とが区分された二値化画像a3-2を得ることができる。
【0010】
本発明の一態様は、汚泥またはフロックの性状が変化した後も、フロック領域と背景領域とを的確に区分することを可能にする閾値更新装置等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る閾値更新装置は、汚泥に凝集剤を加えて撹拌することにより、当該汚泥中の固形物をフロックとして凝集させるフロキュレータ内の汚泥を撮影した画像において、前記フロックが写るフロック領域とその背景領域とを区分するための二値化処理に用いる閾値を更新する閾値更新装置であって、前記フロキュレータに供給される汚泥、または前記フロキュレータの内部で形成されたフロックの性状の変化を検出する検出部と、前記検出部が前記変化を検出したことを契機として、前記閾値を、当該変化の後の前記フロキュレータ内の汚泥を撮影した変化後画像に応じた値に更新する更新部と、を備える。この構成によれば、汚泥またはフロックの性状が変化した後も、フロック領域と背景領域とを的確に区分することが可能になる。また、汚泥やフロックの性状に変化が生じた場合にのみ閾値を更新することができ、閾値の更新頻度を大幅に抑えることも可能になる。
【0012】
本発明の一態様に係る閾値更新装置では、前記検出部が検出する前記変化は、前記フロックの色の変化であってもよい。この構成によれば、フロックの色の変化を検出して閾値を更新するので、フロックの色が変化した後も、フロック領域と背景領域とを的確に区分することが可能になる。
【0013】
本発明の一態様に係る閾値更新装置では、前記検出部が検出する前記変化は、前記フロキュレータに投入される前の前記汚泥の色の変化であってもよい。この構成によれば、投入前の汚泥の色の変化を検出して閾値を更新するので、投入される汚泥の色が変化した後も、フロック領域と背景領域とを的確に区分することが可能になる。
【0014】
本発明の一態様に係る閾値更新装置では、前記検出部は、前記フロキュレータの後段に配設され、前記汚泥を脱水する脱水機のトルクまたは駆動電流値の変化を、前記性状の変化として検出してもよい。これにより、脱水機のトルクまたは駆動電流値が変化した後、閾値を適正化して、フロキュレータの撹拌速度も適正化し、適正なサイズのフロックが形成されるようにすることが可能になる。
【0015】
本発明の一態様に係る閾値更新装置では、前記検出部は、前記フロキュレータへの前記汚泥の供給速度の変化を、前記性状の変化として検出してもよい。これにより、汚泥の供給速度が変化した後、閾値を適正化して、フロキュレータの撹拌速度も適正化し、適正なサイズのフロックが形成されるようにすることが可能になる。
【0016】
本発明の一態様に係る閾値更新装置では、前記検出部は、前記フロキュレータの後段に配設され、前記汚泥を脱水する脱水機により脱水された水量、または前記脱水機の脱水速度の変化を、前記性状の変化として検出してもよい。これにより、脱水された水量または脱水速度が変化した後、閾値を適正化して、フロキュレータの撹拌速度も適正化し、適正なサイズのフロックが形成されるようにすることが可能になる。
【0017】
本発明の一態様に係る閾値更新装置では、前記更新部は、フロックが写る画像と当該画像におけるフロック領域と背景領域とが区分できるように設定された前記閾値との関係を機械学習することによって生成された学習済みモデルに、前記変化後画像を入力して得られる出力値に基づいて前記閾値を更新してもよい。これにより、変化後画像を閾値更新装置に入力することにより、その画像の二値化処理に用いる閾値を、フロック領域と背景領域とを正しく区分することが可能な値に更新させることが可能になる。
【0018】
本発明の一態様に係る学習装置は、前記学習済みモデルを生成する学習装置であって、前記フロキュレータ内の汚泥を撮影した画像に、当該画像におけるフロック領域と背景領域が正しく区分されたときの前記閾値が正解データとして対応付けられた教師データを用いて機械学習を行うことにより、前記学習済みモデルを生成する学習部を備えている。これにより、フロック画像を入力することにより、フロック領域と背景領域とを正しく区分することが可能な閾値を出力する学習済みモデルを生成することができる。
【0019】
本発明の一態様に係る制御装置は、前記閾値更新装置が更新した閾値を用いて前記フロキュレータの撹拌速度を制御する制御装置であって、前記フロキュレータの撹拌速度を、前記閾値更新装置が更新した閾値を用いて、前記フロキュレータ内の汚泥を撮影した画像を二値化処理したフロックのサイズに応じた速度とする撹拌制御部を備えている。この構成によれば、フロキュレータの撹拌速度をフロックのサイズに応じた速度とするので、適正なサイズのフロックを安定的に生成することが可能になる。
【0020】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る閾値更新方法は、汚泥に凝集剤を加えて撹拌することにより、当該汚泥中の固形物をフロックとして凝集させるフロキュレータ内の汚泥を撮影した画像において、前記フロックが写るフロック領域とその背景領域とを区分するための二値化処理に用いる閾値を更新する閾値更新装置が実行する閾値更新方法であって、前記フロキュレータに供給される汚泥、または前記フロキュレータの内部で形成されたフロックの性状の変化を検出する検出ステップと、前記検出ステップにて前記変化を検出したことを契機として、前記閾値を当該変化の後に前記フロキュレータ内の汚泥を撮影した変化後画像に応じた値に更新する更新ステップと、を含む。この閾値更新方法によれば、本発明の一態様に係る閾値更新装置と同様の作用効果を奏する。
【0021】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る閾値更新装置は、汚泥に凝集剤を加えて撹拌することにより、当該汚泥中の固形物をフロックとして凝集させるフロキュレータ内の汚泥を撮影した画像において、前記フロックが写るフロック領域とその背景領域とを区分するための二値化処理に用いる閾値を更新する閾値更新装置であって、フロックが写る画像と当該画像におけるフロック領域と背景領域とが区分できるように設定された前記閾値との関係を機械学習することによって生成された学習済みモデルに、前記画像を入力して得られる出力値に基づいて、前記閾値を更新する更新部を備える。この構成によれば、汚泥またはフロックの性状が変化した後も、フロック領域と背景領域とを的確に区分することが可能になる。
【0022】
本発明の各態様に係る閾値更新装置、制御装置、および学習装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記閾値更新装置、制御装置、および学習装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記閾値更新装置、制御装置、および学習装置をコンピュータにて実現させる閾値更新装置、制御装置、および学習装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、汚泥またはフロックの性状が変化した後も、フロック領域と背景領域とを的確に区分することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態1に係る閾値更新装置および制御装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
図2】上記閾値更新装置および上記制御装置を含む汚泥処理システムの構成例を示す図である。
図3】閾値決定テーブルの例を示す図である。
図4】上記閾値更新装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図5】汚泥を脱水する脱水機のトルクの変化を、汚泥またはフロックの性状の変化として検出する例を示す図である。
図6】フロキュレータへの汚泥の供給速度の変化を、汚泥またはフロックの性状の変化として検出する例を示す図である。
図7】脱水ろ液の水量の変化を、汚泥またはフロックの性状の変化として検出する例を示す図である。
図8】学習装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
図9】フロック画像を二値化処理した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔実施形態1〕
<システム構成>
本実施形態に係る汚泥処理システム100の概要を図2に基づいて説明する。図2は、汚泥処理システム100の構成例を示す図である。汚泥処理システム100は、汚泥を脱水して脱水汚泥と脱水ろ液を得るためのシステムであり、図示のように、閾値更新装置1と、制御装置3と、フロキュレータ5と、脱水機9とを含む。なお、汚泥とは、排水処理などで生じる微細な固形物を含む液体であり、スラリーと呼ぶこともできる。
【0026】
フロキュレータ5は、汚泥中に分散していた固形物を凝集させてフロックを形成させ、凝集汚泥を得る装置である。図2のフロキュレータ5は、撹拌槽51と、撹拌翼52と、モータ53と、点検窓54とを備えている。また、フロキュレータ5には、汚泥投入口55と、薬品投入口56と、排出口57とが設けられている。
【0027】
さらに、点検窓54には、撮影装置72と、撮影用の照明装置71とが取り付けられている。撮影装置72は、少なくとも静止画像が撮影できるものであればよい。汚泥処理システム100の稼働中、フロックへの光の当たり方が変化しないように、撹拌槽51は光透過性のないものとすることが好ましい。また、撮影装置72および照明装置71は図示の例のように、点検窓54側が開口した遮光性の暗箱に収容し、点検窓54のその余の分についても、少なくとも撮影中は遮光しておくことが好ましい。
【0028】
脱水機9は、フロキュレータ5の後段に配設され、フロキュレータ5から排出される凝集汚泥を脱水する装置である。図2の脱水機9は、外胴スクリーン91とスクリュー92とを備えるスクリュープレス型脱水機である。また、脱水機9には、汚泥投入口93と、ろ液排出口94と、脱水ケーキ排出口95とが設けられている。なお、図示していないが、脱水機9は、スクリュー92を回転駆動するモータ等も備えている。無論、脱水機9は凝集汚泥を脱水できるものであればよく、スクリュープレス型に限られない。例えば、遠心脱水機、フィルタープレス型脱水機、またはベルトプレス脱水機等を適用することもできる。
【0029】
汚泥処理システム100において、処理対象の汚泥は、図示しない供給装置により、汚泥投入口55からフロキュレータ5の撹拌槽51内に連続的あるいは断続的に供給される。汚泥の供給速度は、フロキュレータ5および脱水機9による汚泥の処理速度に応じて、供給装置あるいはその制御装置が自動で制御する構成となっていてもよい。
【0030】
そして、撹拌槽51内の汚泥に対して、薬品投入口56から汚泥を凝集させるための薬品(少なくとも凝集剤を含む)が投入される。この状態でモータ53を駆動させて撹拌翼52を回転させ、汚泥と薬品を撹拌し、フロックを形成させる。形成されたフロックと、汚泥に含まれていた水との混合物である凝集汚泥は排出口57から排出される。
【0031】
続いて、この凝集汚泥は、脱水機9の汚泥投入口93から外胴スクリーン91内に供給される。脱水機9内において、上記凝集汚泥は、スクリュー92による加圧下で脱水されて、ろ液がろ液排出口94から排出され、脱水された凝集汚泥の固まりである脱水ケーキが脱水ケーキ排出口95から排出される。
【0032】
制御装置3は、フロキュレータ5の動作を制御する。詳細は後述するが、この制御において、制御装置3は、撮影装置72がフロキュレータ5内の汚泥を撮影した画像の解析結果に基づいてフロキュレータ5の撹拌速度を調整する。上記画像にはフロックが写っているため、以下では当該画像をフロック画像と称する。
【0033】
閾値更新装置1は、上記の解析に用いる閾値を更新する。この閾値は、フロック画像をフロックが写るフロック領域とその背景領域とに区分するための二値化処理に用いられる閾値である。詳細は以下説明するが、閾値更新装置1は、この閾値を適正な値に保つために更新を行う。
【0034】
汚泥処理システム100では、汚泥またはフロックの性状が変化した場合に、閾値更新装置1が閾値を更新するので、制御装置3はフロック領域と背景領域とを的確に区分してフロキュレータ5の撹拌速度を的確に調整し、これにより汚泥を安定して処理することができる。
【0035】
<閾値更新装置の構成>
閾値更新装置1のより詳細な構成について図1に基づいて説明する。図1は、閾値更新装置1および制御装置3の要部構成の一例を示すブロック図である。なお、制御装置3の構成は後記「制御装置の構成」で説明する。
【0036】
図1に示すように、閾値更新装置1は、閾値更新装置1の各部を統括して制御する制御部10と、閾値更新装置1が使用する各種データを記憶する記憶部11とを備えている。また、閾値更新装置1は、閾値更新装置1に対する入力を受け付ける入力部12と、閾値更新装置1が情報を出力するための出力部13と、閾値更新装置1が他の装置(例えば制御装置3)と通信するための通信部14とを備えている。また、制御部10には、検出部101と、更新部102とが含まれている。そして、記憶部11には閾値決定テーブル111が記憶されている。
【0037】
検出部101は、フロキュレータ5に供給される汚泥、またはフロキュレータ5の内部で生じたフロックの性状の変化を検出する。性状変化の検出の詳細は後述する。
【0038】
更新部102は、検出部101が性状変化を検出したことを契機として、フロック画像におけるフロック領域とその背景領域とを区分するための二値化処理に用いられる閾値を更新する。より詳細には、更新部102は、上記閾値を上記変化の後のフロキュレータ5内の汚泥を撮影することにより得られたフロック画像(以下、変化後画像と称する)に応じた値に更新する。
【0039】
閾値決定テーブル111は、更新部102が更新後の閾値を決定する際に用いるテーブルである。閾値決定テーブル111の詳細は図3に基づいて後述する。
【0040】
以上のように、閾値更新装置1は、フロキュレータ5に供給される汚泥、またはフロキュレータ5の内部で形成されたフロックの性状の変化を検出する検出部101を備えている。また、閾値更新装置1は、検出部101が上記変化を検出したことを契機として、上記閾値を変化後画像に応じた値に更新する更新部102を備えている。
【0041】
フロキュレータ5に供給される汚泥の性状が変化したときや、フロキュレータ5の内部で形成されたフロックの性状が変化したときには、フロック画像におけるフロック領域と背景領域とを区分するための二値化処理用の閾値の適切な値も変化している可能性がある。そこで、上記の構成によれば、汚泥またはフロックの性状の変化を検出して、閾値を当該変化の後に撮影された変化後画像に応じた値に更新する。これにより、汚泥またはフロックの性状が変化した後も、フロック領域と背景領域とを的確に区分することが可能になる。
【0042】
<制御装置の構成>
制御装置3のより詳細な構成について図1に基づいて説明する。図1に示すように、制御装置3は、制御装置3の各部を統括して制御する制御部30と、制御装置3が使用する各種データを記憶する記憶部31とを備えている。また、制御装置3は、制御装置3に対する入力を受け付ける入力部32と、制御装置3が情報を出力するための出力部33と、制御装置3が他の装置(例えば閾値更新装置1)と通信するための通信部34とを備えている。また、制御部30には、画像取得部301と、更新反映部302と、二値化処理部303と、フロックサイズ算出部304と、撹拌制御部305とが含まれている。そして、記憶部31には閾値311が記憶されている。閾値311は、二値化処理部303がフロック画像の二値化に使用する閾値である。
【0043】
画像取得部301は、撮影装置72が撮影したフロック画像を取得する。フロック画像は撮影装置72から取得してもよいし、フロック画像が記憶されている記憶装置から取得してもよい。後者の場合、撮影装置72が撮影したフロック画像を当該記憶装置に記憶する構成とすればよい。このように、装置間におけるデータのやり取りは、フロック画像に限られず、当該装置間で直接に行ってもよいし、他の装置を介して行ってもよい。
【0044】
更新反映部302は、閾値更新装置1による閾値の更新を、記憶部31に記憶されている閾値311に反映させる。具体的には、更新反映部302は、通信部34を介して、閾値更新装置1から更新後の閾値が通知された場合に、閾値311を通知された値に更新する。
【0045】
二値化処理部303は、閾値311の値を基準としてフロック画像を二値化する。二値化は、フロック画像においてフロック領域とその背景領域とを区分するための処理であり、フロックサイズ算出部304によるサイズ算出のための前処理である。
【0046】
フロックサイズ算出部304は、二値化処理部303が二値化したフロック画像に写るフロックの個々のサイズを示す指標値を算出する。指標値はフロックの個々のサイズが反映された値となるものであればよい。
【0047】
例えば、フロックサイズ算出部304は、フロック間の隙間の1個あたりの面積を上記指標値として算出してもよい。フロック1個あたりのサイズが大きくなると、フロック間の隙間のサイズも大きくなるためである。この場合、フロックサイズ算出部304は、フロック領域の背景領域を抽出する。そして、フロックサイズ算出部304は、背景領域に含まれる画素のうち、隣接する画素からなる連続領域を1個の隙間とみなして、隙間の個数をカウントする。そして、フロックサイズ算出部304は、背景領域の総面積を、隙間の個数で割った値を、上記指標値として算出する。
【0048】
また逆に、フロックサイズ算出部304は、フロック1個あたりの面積を上記指標値として算出してもよい。この場合、フロックサイズ算出部304は、フロック領域として抽出した画素のうち、隣接する画素からなる連続領域を1個のフロックとみなして、フロックの個数をカウントする。そして、フロックサイズ算出部304は、フロック領域の総面積を、フロックの個数で割った値を、上記指標値として算出する。
【0049】
なお、フロックは暗色であることが一般的であるが、フロキュレータ5内に照明装置71等で投光すると、フロックが光を反射するため、フロック画像においてフロック領域はその背景領域よりも画素値が大きくなる。このため、二値化したフロック画像の画像領域のうち、高画素値側の画像領域をフロック領域とし、低画素値側の画像領域を背景領域として区分すればよい。
【0050】
撹拌制御部305は、フロキュレータ5のモータ53の動作を制御することにより、撹拌翼52による撹拌速度を調整する。撹拌制御部305は、この制御において、フロックサイズ算出部304が算出した上記指標値を考慮する。具体的には、撹拌制御部305は、上記指標値が適正範囲に収まるように撹拌速度を調整して、形成されるフロックのサイズが小さすぎたり、大きすぎたりすることに起因する各種の問題が生じることを防ぐ。
【0051】
例えば、撹拌制御部305は、上記指標値が適正範囲内(上限値以下、下限値以上)である場合には、所定の撹拌速度となるようにモータ53を制御してもよい。そして、撹拌制御部305は、上記指標値が上限値を超えている場合には、撹拌速度を上記所定の撹拌速度よりも早くする制御を行い、上記指標値が下限値未満である場合には、撹拌速度を上記所定の撹拌速度よりも遅くする制御を行ってもよい。
【0052】
なお、撹拌制御部305は、形成されるフロックのサイズが適正化されるように撹拌速度を調整すればよく、調整方法は上記の例に限られない。例えば、上記指標値の値と撹拌速度あるいはモータ53の駆動速度との対応関係を数式化しておいてもよい。この場合、撹拌制御部305は、上記数式を用いることにより、フロックサイズ算出部304が算出した指標値から、撹拌速度の調整量を特定することができる。
【0053】
以上のように、制御装置3は、フロキュレータ5の撹拌速度を、閾値更新装置1が更新した閾値を用いて、フロキュレータ5内の汚泥を撮影した画像を二値化処理したフロックのサイズに応じた速度とする撹拌制御部305、を備えている。
【0054】
この構成によれば、フロキュレータ5の撹拌速度をフロックのサイズに応じた速度とするので、適正なサイズのフロックを安定的に生成することが可能になる。また、上記フロックのサイズは、閾値更新装置1が更新した閾値に基づいて算出されたものであるから、汚泥またはフロックの性状が変化しても、確度の高い速度制御が可能である。
【0055】
<性状変化の検出と閾値決定の詳細>
以下では、検出部101によるフロックまたは汚泥の性状変化の検出について説明すると共に、図3に基づいて更新部102による閾値決定の詳細について説明する。図3は、閾値決定テーブル111の例を示す図である。
【0056】
(フロックの色変化の検出)
上述のように、検出部101は、フロキュレータ5に供給される汚泥、またはフロキュレータ5の内部で生じたフロックの性状の変化を検出する。例えば、検出部101は、フロキュレータ5の内部で生じたフロックの色が変化したことを、フロックの性状の変化として検出してもよい。
【0057】
フロック領域と背景領域とを区分するための二値化処理において、フロックの色は、適切な二値化の閾値を決めるための重要な因子である。上記の構成によれば、フロックの色の変化を検出して閾値を更新するので、フロックの色が変化した後も、フロック領域と背景領域とを的確に区分することが可能になる。
【0058】
例えば、検出部101は、フロック画像を解析することにより特定されたフロックの色が、複数の色範囲の何れに属するか判定し、属する色範囲が変化した場合にフロックの色が変化したと検出してもよい。なお、フロックの色は、所定の指標値で表し、色範囲も当該指標値の数値範囲で規定しておけばよい。
【0059】
フロック画像の解析は検出部101が行ってもよいが、制御装置3がフロック画像を用いた制御を継続的に行っているので、検出部101は、制御装置3から上記指標値または当該指標値の元になるデータを取得すればよい。例えば、検出部101は、制御装置3からフロック画像と二値化閾値を取得してもよい。この場合、検出部101は、当該フロック画像からフロック領域を抽出し、抽出したフロック領域の平均画素値を上記指標値として算出してもよい。なお、指標値は、フロックの色が反映された値であればよく、例えば、フロック領域のR値、G値、B値等からフロックの色成分を考慮した指標値を算出してもよい。
【0060】
検出部101が以上のようにしてフロックの色変化を検出する場合、更新部102は、図3の閾値決定テーブル111aを用いて閾値を決定することができる。閾値決定テーブル111aは、フロックの色範囲に応じた閾値を決定するためのテーブルである。
【0061】
閾値決定テーブル111aでは、フロックの色範囲が複数規定されていると共に、各色範囲に閾値が対応付けられている。これらの閾値は、フロックの色が、当該閾値に対応する色範囲に属する状態において、フロック領域と背景領域とを正しく区分可能な閾値である。
【0062】
検出部101がフロックの色範囲が変化したことを検出した場合、更新部102は、閾値決定テーブル111aにおいて、変化後の色範囲に対応付けられている閾値を、更新後の閾値とする。
【0063】
例えば、検出部101が、フロックの色範囲がx1以上x2未満から、x2以上x3未満に変化したことを検出した場合、更新部102は、閾値決定テーブル111aにおいてx2以上x3未満の色範囲に対応付けられている閾値Th3を、更新後の閾値とする。なお、閾値決定テーブル111aにおいて、x1<x2<x3であり、Th1<Th2<Th3である。
【0064】
(汚泥の色変化の検出)
また、検出部101は、フロキュレータ5に投入される前の汚泥の色の変化を、汚泥の性状の変化として検出してもよい。上述のように、フロック領域と背景領域とを区分するための二値化処理において、フロックの色は、適切な二値化の閾値を決めるための重要な因子である。そして、フロックの色は、投入される汚泥の色の影響を受ける。よって、投入前の汚泥の色の変化を検出して閾値を更新することにより、投入される汚泥の色が変化した後も、フロック領域と背景領域とを的確に区分することが可能になる。
【0065】
例えば、検出部101は、フロキュレータ5に投入される前の汚泥を撮影した汚泥画像を解析することにより特定した汚泥の色が、複数の色範囲の何れに属するか判定し、属する色範囲が変化した場合に汚泥の色が変化したと検出してもよい。なお、汚泥の色は、所定の指標値で表し、色範囲も当該指標値の数値範囲で規定しておけばよい。
【0066】
例えば、検出部101は、汚泥画像の平均画素値を上記指標値として算出してもよい。なお、指標値は、汚泥の色が反映された値であればよく、例えば、汚泥画像のR値、G値、B値等から汚泥の色成分を考慮した指標値を算出してもよい。
【0067】
検出部101が以上のようにして汚泥の色変化を検出する場合、更新部102は、図3の閾値決定テーブル111bを用いて閾値を決定することができる。閾値決定テーブル111bは、汚泥の色範囲に応じた閾値を決定するためのテーブルである。
【0068】
閾値決定テーブル111bでは、汚泥の色範囲が複数規定されていると共に、各色範囲に閾値が対応付けられている。これらの閾値は、汚泥の色が、当該閾値に対応する色範囲に属する状態において、フロック領域と背景領域とを正しく区分可能な閾値である。
【0069】
検出部101が汚泥の色範囲が変化したことを検出した場合、更新部102は、閾値決定テーブル111bにおいて、変化後の色範囲に対応付けられている閾値を、更新後の閾値とする。
【0070】
例えば、検出部101が、汚泥の色範囲が、y1未満から、y2以上y3未満に変化したことを検出した場合、更新部102は、閾値決定テーブル111bにおいてy2以上y3未満の色範囲に対応付けられている閾値Th3を、更新後の閾値とする。なお、閾値決定テーブル111bにおいて、y1<y2<y3であり、Th1<Th2<Th3である。
【0071】
<処理の流れ>
閾値更新装置1が実行する処理(閾値更新方法)の流れを図4に基づいて説明する。図4は、閾値更新装置1が実行する処理の一例を示すフローチャートである。以下説明するS1~S4の処理は、汚泥処理システム100の稼働中、継続して行われる。
【0072】
S1では、検出部101が、汚泥またはフロックの性状の変化の検出に用いるデータを取得する。例えば、フロック領域の画素値を、フロックの色を示す指標値として使用する場合には、検出部101は当該画素値の値を取得する。なお、当該画素値の値は、制御装置3が算出する構成としてもよいし、検出部101が算出する構成としてもよい。前者の場合、検出部101は、通信部14を介して画素値の値を取得すればよい。後者の場合、検出部101は、フロック画像を撮影装置72から取得し、これを解析することにより画素値の値を取得すればよい。
【0073】
S2(検出ステップ)では、検出部101は、S1で取得したデータに基づいて、汚泥またはフロックの性状の変化の検出を試みる。ここで性状の変化を検出した場合(S2でYES)にはS3の処理に進む。一方、性状の変化が検出されなかった場合(S2でNO)にはS1の処理に戻る。
【0074】
S3では、更新部102が、更新後の閾値を決定する。より詳細には、更新部102は、S3で検出された変化の後にフロキュレータ5内の汚泥を撮影した変化後画像に応じた値となるように閾値を決定する。このような閾値の決定には閾値決定テーブル111を用いればよい。より詳細には、S2で検出された性状変化がフロックの色範囲の変化であれば閾値決定テーブル111aを、S2で検出された性状変化が汚泥の色範囲の変化であれば閾値決定テーブル111bを用いればよい。
【0075】
S4(更新ステップ)では、更新部102は、制御装置3がフロック画像の二値化に用いる閾値をS3で決定された値に更新する。より詳細には、更新部102は、S3で決定された値を、通信部14を介して制御装置3に通知する。これにより、制御装置3の更新反映部302が、記憶部31に記憶されている閾値311の値を、通知された値に更新する。この後、処理はS1に戻る。
【0076】
<性状変化の検出の他の例(脱水機のトルクまたは駆動電流値の変化検出)>
汚泥またはフロックの性状の変化は、フロックや汚泥の色以外に基づいて検出することもできる。ここでは、汚泥またはフロックの性状の変化を検出する他の例を図5に基づいて説明する。
【0077】
ここで、上述のように、フロキュレータ5の撹拌速度は、更新部102が更新する閾値を用いて二値化されたフロック画像から算出したフロック領域のサイズに基づいて、制御装置3により決定されている。また、脱水機9へ汚泥を供給する際の供給圧力と脱水機9のスクリュー92の回転速度は基本的に一定値となるように制御される。
【0078】
この場合、検出部101は、図5に示すように、汚泥を脱水する脱水機9においてスクリュー92を回転させるモータのトルクまたは駆動電流値の変化(以下、脱水機9のトルクまたは駆動電流値の変化と称する)を、汚泥またはフロックの性状の変化として検出してもよい。
【0079】
図5は、フロックを脱水する脱水機9のトルクまたは駆動電流値の変化を、汚泥またはフロックの性状の変化として検出する例を示す図である。図5の例では、閾値更新装置1は、脱水機9による脱水時のトルク値を取得しているので、検出部101は、このトルク値からトルクの変化を検出することができる。同様に、検出部101は、脱水機9から駆動電流値を取得すれば、駆動電流値の変化を検出することができる。
【0080】
フロック領域のサイズに基づいてフロキュレータ5の撹拌速度を決定する場合、閾値が適切な値でなければ、適切な撹拌速度での撹拌が行われないことがある。そして、その結果、撹拌速度が速すぎて生成されるフロックのサイズが不十分となったり、撹拌速度が遅すぎてフロックのサイズが過大となったりすることがある。
【0081】
また、生成されるフロックのサイズが変われば脱水機9のトルクと駆動電流値も変化し得る。具体的には、生成されるフロックのサイズが過大または過小となったときに脱水機9のトルクと駆動電流値が小さくなることがある。
【0082】
このため、上記のとおり、脱水機9のトルクまたは駆動電流値の変化を、汚泥またはフロックの性状の変化として検出する構成としてもよい。これにより、脱水機9のトルクまたは駆動電流値が変化した後、閾値を適正化して、フロキュレータ5の撹拌速度も適正化し、適正なサイズのフロックが形成されるようにすることが可能になる。
【0083】
例えば、トルク値の正常範囲を予め定めておき、検出部101は、トルク値が正常範囲の下限値を下回る値になったことを検出してもよい。なお、トルク値は、脱水機9が出力する値を用いればよい。
【0084】
この場合、更新部102は、トルク値が正常範囲の下限値を下回ったことが検出されたときに、閾値を更新すればよい。更新後の閾値の値は、例えば、当該閾値を適用する条件(トルク値が正常範囲の下限値を下回ること)と対応付けた閾値決定テーブル111として予め記憶部11に記憶させておけばよい。
【0085】
なお、脱水機9の駆動電流値の変化を、汚泥またはフロックの性状の変化として検出する場合も、上記と同様の処理が適用可能である。
【0086】
<性状変化の検出の他の例(汚泥供給速度の変化検出)>
検出部101は、図6に示すように、フロキュレータ5への汚泥の供給速度の変化を、汚泥またはフロックの性状の変化として検出してもよい。図6は、フロキュレータ5への汚泥の供給速度の変化を、汚泥またはフロックの性状の変化として検出する例を示す図である。図6の例では、閾値更新装置1は、フロキュレータ5への汚泥の供給速度を示す情報を取得しているので、検出部101は、この情報に基づいて供給速度の変化を検出することができる。
【0087】
上述のように、フロック領域のサイズに基づいてフロキュレータ5の撹拌速度を決定する場合、閾値が適切な値でなければ、適切な撹拌速度での撹拌が行われないことがある。そして、その結果、撹拌速度が速すぎて生成されるフロックのサイズが不十分となったり、撹拌速度が遅すぎてフロックのサイズが過大となったりすることがある。
【0088】
また、生成されるフロックのサイズが変われば、フロキュレータ5および脱水機9等の各種機器における汚泥の処理速度が変化し、これにより、フロキュレータ5への汚泥の供給速度が変化する場合がある。すなわち、フロックのサイズが過大または過小であることにより、脱水機9の脱水時間が長大化し、それに伴ってフロキュレータ5への汚泥の供給速度が減少することがある。
【0089】
このため、上記のとおり、フロキュレータ5への汚泥の供給速度の変化を、汚泥またはフロックの性状の変化として検出してもよい。これにより、フロキュレータ5への汚泥の供給速度が変化した後、閾値を適正化して、フロキュレータ5の撹拌速度も適正化し、適正なサイズのフロックを安定的に生成することが可能になる。
【0090】
例えば、供給速度の正常範囲を予め定めておき、検出部101は、供給速度が正常範囲の下限値を下回る値になったことを検出してもよい。なお、供給速度は、例えば、フロキュレータ5に汚泥を供給する供給装置あるいはその制御装置が出力する値を用いればよい。
【0091】
この場合、更新部102は、供給速度が正常範囲の下限値を下回る値になったことが検出されたときに、閾値を更新すればよい。更新後の閾値の値は、例えば、当該閾値を適用する条件(供給速度が正常範囲の下限値を下回ること)と対応付けた閾値決定テーブル111として予め記憶部11に記憶させておけばよい。
【0092】
<性状変化の検出の他の例(脱水水量の変化検出)>
検出部101は、図7に示すように、脱水機9により脱水された脱水ろ液の水量を、汚泥またはフロックの性状の変化として検出してもよい。図7は、脱水機9により脱水された脱水ろ液の水量の変化を、汚泥またはフロックの性状の変化として検出する例を示す図である。図7の例では、閾値更新装置1は、ろ液排出口94から排出される脱水ろ液の水量を示す情報を取得しているので、検出部101は、この情報に基づいて脱水ろ液の水量の変化を検出することができる。
【0093】
上述のように、フロック領域のサイズに基づいてフロキュレータ5の撹拌速度を決定する場合、閾値が適切な値でなければ、適切な撹拌速度での撹拌が行われないことがある。そして、その結果、撹拌速度が速すぎて生成されるフロックのサイズが不十分となったり、撹拌速度が遅すぎてフロックのサイズが過大となったりすることがある。
【0094】
また、生成されるフロックのサイズが変われば、脱水ろ液の水量や脱水速度が変化する場合がある。例えば、フロックのサイズが過大であれば、汚泥中に残る水分が多くなるので、脱水ろ液の水量は少なくなり、脱水速度は遅くなることがある。また逆に、フロックのサイズが過小であっても、フロックがろ材の目に詰まってしまうことから、脱水ろ液の水量は少なく、脱水速度は遅くなることがある。
【0095】
このため、上記のとおり、脱水機9により脱水された脱水ろ液の水量を、汚泥またはフロックの性状の変化として検出してもよい。また、脱水機9の脱水速度の変化を、汚泥またはフロックの性状の変化として検出してもよい。これらの構成によれば、脱水ろ液の水量または脱水速度が変化した後、閾値を適正化して、フロキュレータ5の撹拌速度も適正化し、適正なサイズのフロックを安定的に生成することが可能になる。なお、以下では脱水ろ液の水量の異常を検出して閾値を更新する例を説明するが、脱水速度の異常についても同様の方法で検出して閾値を更新することができる。
【0096】
例えば、所定時間にろ液排出口94から排出される水量の正常範囲を予め定めておき、検出部101は、所定時間にろ液排出口94から排出される水量が正常範囲の下限値を下回る値になったことを検出してもよい。
【0097】
この場合、更新部102は、脱水された水量が正常範囲の下限値を下回る値になったことが検出されたときに、閾値を更新すればよい。更新後の閾値の値は、例えば、当該閾値を適用する条件(脱水された水量が正常範囲の下限値を下回ること)と対応付けた閾値決定テーブル111として予め記憶部11に記憶させておけばよい。
【0098】
〔実施形態2〕
上記実施形態1では、閾値決定テーブル111を予め準備しておき、汚泥やフロックの正常変化にあわせて閾値を決定していたが、本発明の他の実施形態では、機械学習を利用して、汚泥を撮影した画像から、都度、閾値を更新してもよい。
【0099】
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。これは実施形態3以降も同様である。
【0100】
<学習装置の構成>
図8は、学習装置4の要部構成の一例を示すブロック図である。学習装置4は、フロック画像の二値化に用いる閾値の決定に用いられる学習済みモデルを機械学習によって構築する装置である。詳細は以下説明するが、学習装置4は、フロック画像と当該画像におけるフロック領域と背景領域とが区分できるように設定された閾値との関係を機械学習することによって生成される。
【0101】
図8に示すように、学習装置4は、学習装置4の各部を統括して制御する制御部40と、学習装置4が使用する各種データを記憶する記憶部41を備えている。また、制御部40には、画像取得部401、正解データ生成部402、教師データ生成部403、および学習部404が含まれている。そして、記憶部41には、教師データ生成部403が生成する教師データ411と学習部404が構築する学習済みモデル412が記憶されている。
【0102】
画像取得部401は、フロック画像を取得する。フロック画像は、学習済みモデル412の生成に必要な教師データ411の数だけ取得すればよい。フロック画像の取得先は特に限定されず、例えば撮影装置72から取得してもよいし、制御装置3から取得してもよく、これら以外の装置から取得してもよい。
【0103】
正解データ生成部402は、画像取得部401が取得した各フロック画像について、当該フロック画像においてフロック領域と背景領域とを区分できるように設定された閾値を特定し、該閾値を当該フロック画像に対応する正解データとする。
【0104】
正解データ生成部402が、正解データを生成する方法は任意である。例えば、正解データ生成部402は、入力部12を介してユーザが入力した閾値を正解データとしてもよい。
【0105】
また、例えば、正解データ生成部402は、汚泥処理システム100が正常に稼働している期間に制御装置3が使用していた閾値を正解データとしてもよい。この場合、画像取得部401は、汚泥処理システム100が正常に稼働している期間に撮影されたフロック画像を取得する。そして、正解データ生成部402は、取得された各フロック画像の二値化に用いられた閾値を、当該フロック画像の正解データとする。
【0106】
なお、正常に稼働しているか否かの判定基準は適宜定めておけばよい。例えば、画像取得部401は、脱水機9のトルク、駆動電流値、フロキュレータ5への汚泥供給速度、および脱水ろ液の水量などのパラメータが正常範囲内であるか否かによって、正常に稼働しているか否かを判定してもよい。そして、画像取得部401は、正常な稼働期間に制御装置3が二値化に用いていたフロック画像を取得すればよい。
【0107】
教師データ生成部403は、正解データ生成部402が生成した正解データを、その正解データに対応するフロック画像に対応付けて教師データを生成する。そして、教師データ生成部403は、生成した教師データを教師データ411として記憶部41に記憶させる。このようにして生成され、記憶された教師データ411は、フロック画像に、当該フロック画像におけるフロック領域と背景領域とが正常に区分されたときの閾値が正解データとして対応付けられたデータである。
【0108】
学習部404は、教師データ411を用いて機械学習を行うことにより学習済みモデルを生成する。そして、学習部404は、生成した学習済みモデルを学習済みモデル412として記憶部41に記憶させる。学習装置4は、学習部404を備えているので、フロック画像を入力することにより、フロック領域と背景領域とを正しく区分することが可能な閾値を出力する学習済みモデルを生成することができる。
【0109】
学習のアルゴリズムとしては、フロック画像を入力として、閾値を出力可能な学習済みモデルを構築できるようなものであれば、任意のアルゴリズムを適用可能である。例えば、学習部404は、畳み込みニューラルネットワーク等の学習済みモデルを構築してもよい。
【0110】
<学習済みモデルを用いた閾値の決定>
本実施形態の閾値更新装置1は、上述のようにして構築された学習済みモデル412を用いて、閾値をどのような値に更新するかを決定する。具体的には、閾値更新装置1の更新部102は、閾値を決定する際(図4のS3の処理時)に、学習済みモデル412にフロック画像を入力して得られる出力値に基づいて閾値を更新する。なお、このフロック画像は、汚泥またはフロックの性状の変化が変化した後で撮影された変化後画像である。
【0111】
これにより、変化後画像を閾値更新装置1に入力することにより、その画像の二値化処理に用いる閾値を、フロック領域と背景領域とを正しく区分することが可能な値に更新させることが可能になる。
【0112】
なお、学習済みモデル412を用いた演算は、更新部102が実行してもよいし、学習装置4または他の情報処理装置に実行させてもよい。前者の場合、閾値決定テーブル111の代わりに学習済みモデル412を記憶しておけば、更新部102は、この学習済みモデル412を用いて出力値を算出することができる。後者の場合、更新部102は、当該演算を行う装置にフロック画像を送信して、学習済みモデル412の出力結果を当該装置から取得すればよい。
【0113】
〔実施形態3〕
上述のような学習済みモデルを用いて閾値を更新する場合、検出部101を省略して、汚泥またはフロックの性状の変化を検出しない構成としてもよい。本実施形態では、検出部101を省略した例を説明する。この場合、閾値更新装置1は、撮影装置72が撮影したフロック画像を取得し、閾値更新装置1の更新部102は、このフロック画像を学習済みモデルに入力して得られる出力値から、当該フロック画像の二値化に用いる閾値を決定する。
【0114】
また、更新部102は、決定した閾値と当該フロック画像を対応付けて制御装置3に送信する。そして、これらのデータを受信した制御装置3では、二値化処理部303が、当該閾値で当該フロック画像を二値化し、フロックサイズ算出部304が、二値化された当該フロック画像からフロックサイズを示す指標値を算出する。
【0115】
本実施形態の構成によれば、新たなフロック画像が取得される度に、そのフロック画像の二値化に適した閾値が決定されるため、汚泥またはフロックの性状が変化した後も、フロック領域と背景領域とを的確に区分することが可能になる。なお、閾値の決定は必ずしも毎回行う必要はなく、所定期間(例えば数時間~数日)毎に行ってもよい。
【0116】
〔システム構成の他の例〕
上記各実施形態では、閾値更新装置1と制御装置3と学習装置4とをそれぞれ独立した装置とした例を説明したが、これらを1つまたは2つの装置にまとめてもよい。また、これらの各装置が実行する処理の一部を、これらの装置とは別の他の情報処理装置に実行させてもよい。このように、上記各実施形態で説明した各処理の実行主体は適宜変更することができ、本発明に係る汚泥処理システム100は、様々なシステム構成で実現することが可能である。
【0117】
〔ソフトウェアによる実現例〕
閾値更新装置1、制御装置3、および学習装置4の制御ブロック(特に制御部10、制御部30、および制御部40に含まれる各部)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0118】
後者の場合、閾値更新装置1、制御装置3、および学習装置4は、各機能を実現するソフトウェアである制御プログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記制御プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記制御プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記制御プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記制御プログラムは、該制御プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記制御プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0119】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0120】
1 閾値更新装置
101 検出部
102 更新部
3 制御装置
305 撹拌制御部
4 学習装置
404 学習部
412 学習済みモデル
5 フロキュレータ
9 脱水機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9