(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】標準化された冠動脈疾患メトリック
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
A61B6/03 360Z
A61B6/03 360J
(21)【出願番号】P 2019554673
(86)(22)【出願日】2018-04-02
(86)【国際出願番号】 EP2018058376
(87)【国際公開番号】W WO2018185040
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-26
(32)【優先日】2017-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】スミット ホルヘル
(72)【発明者】
【氏名】ニッキス ハンネス
(72)【発明者】
【氏名】フェムバル マニンドラナス
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-057103(JP,A)
【文献】国際公開第2015/150128(WO,A1)
【文献】特表2016-528002(JP,A)
【文献】特開2014-128651(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0032097(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055、6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物物理シミュレータを含むコンピュータ実行可能命
令を有するコンピュータ可読記憶媒体と、
前記生物物理シミュレータを実行
するプロセッサと
、
を有する
計算システムであって、前記生物物理シミュレータが、
心臓医用画像データから冠状血管をセグメント化するステップと、
前記冠状血管内の狭窄を識別するステップと、
前記冠状血管の形状を表す値を測定するステップと、
前記測定された値の関数である又は一定の値である距離を決定するステップと、
前記狭窄の遠位端から遠位側に前記決定された距離離れた前記冠状血管内の位置である基準位置を決定するステップと、
前記狭窄の近位側の位置及び前記基準位置の血流量に基づくFFR(冠血流予備量比)値である基準FFR値を決定するステップと、
を有する、計算システム。
【請求項2】
前記生物物理シミュレータは、心臓コンピュータ断層撮影画像データから前記冠状血管をセグメント化
するステップと、
前記セグメント化された冠状血管についてフローシミュレーションの境界条件を決定
するステップと、前記境界条件
を用いて前記フローシミュレーションを実行し
て前記セグメント化された冠状血管に沿ったシミュレートされたFFR値を生成するステップと、
前記シミュレートされたFFR値のうち前記冠状血管に沿ったユーザ
指定された位置に
おけるFFR値を
選択FFR値として決定
するステップと、前記シミュレート
されたFFR値から
前記基準位置における前記基準
FFR値を決定する
ステップと、
を有する、請求項1に記載の計算システム。
【請求項3】
前記生物物理シミュレータが、前記基準位置及び前記ユーザ
指定された位置を
それぞれ示す
標示とともに、前記基準FFR値及び
前記選択
FFR値をそれぞれ視覚的に表示する
ステップを有する、請求項2に記載の計算システム。
【請求項4】
前記生物物理シミュレータは、前記基準位置及び前記ユーザ
指定された位置を
それぞれ示す前記
標示並び
に前記基準FFR値及び前記選
択FFR値とともに前記セグメント化された冠状血管を視覚的に表示する
ステップを有する、請求項3に記載の計算システム。
【請求項5】
前記生物物理シミュレータは、血管造影
画像データから前記冠状血管をセグメント化
するステップと、侵襲性FFR測定が行われた前記セグメント化された冠状血管上の位置を決定
するステップと、
前記セグメント化された冠状血管に沿った前記決定された位置において、シミュレートされたFFR値を計算するステップと、を有する、請求項1に記載の計算システム。
【請求項6】
前記生物物理シミュレータは、前記基準位置及び前記侵襲性FFR測定
の位置を
それぞれ示す
標示と共に、前記基準FFR値及び前記侵襲性FFR測定
の値を視覚的に表示する
ステップを有する、請求項
5に記載の計算システム。
【請求項7】
前記生物物理シミュレータは、前記基準位置及び前記侵襲性
FFR測定の位置を
それぞれ示す前記
標示並び
に前記基準FFR値及び前記侵襲性FFR測定
の値とともに前記セグメント化された冠状血管を視覚的に表示する
ステップを有する、請求項
6に記載の計算システム。
【請求項8】
前記生物物理シミュレータは、前記セグメント化された冠状血管の狭窄及び前記狭窄の遠位端を識別
するステップを有し、前記
距離の値は、前記遠位端からの一定の距離を表す定数値である、請求項1乃至
7の何れか一項に記載の計算システム。
【請求項9】
前記生物物理シミュレータは、前記セグメント化された冠状血管の狭窄及び前記狭窄の遠位端を識別
するステップと、前記狭窄に近接した前記セグメント化された冠状血管の直径を測定
するステップとを有し、前記
距離の値は前記測定された直径の倍数である、請求項1乃至
8の何れか一項に記載の計算システム。
【請求項10】
計算システムのプロセッサによって実行されるとき、前記プロセッサに、
心臓医用画像データから冠状血管をセグメント化するステップと、
前記冠状血管内の狭窄を識別するステップと、
前記冠状血管の形状を表す値を測定するステップと、
前記測定された値の関数である又は一定の値である距離を決定するステップと、
前記狭窄の遠位端から遠位側に前記決定された距離離れた前記冠状血管内の位置である基準位置を決定するステップと、
前記狭窄の近位側の位置及び前記基準位置における血流量に基づくFFR(冠血流予備量比)値である基準FFR値を決定するステップと、
を実行させるコンピュータ可読命令
を有するコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下は、一般に、冠動脈疾患メトリックの決定に関し、より詳細には、冠動脈に沿って、所定の基準位置又は共通位置に対して冠動脈疾患メトリックを標準化することに関し、特に冠血流予備量比コンピュータ断層撮影(fractional to flow reserve-computed tomography、FFR-CT )に関して記述されるが、X線FFR(xFFR)、瞬時血流予備量比(iFR)などにも適用できる。
【背景技術】
【0002】
冠血流予備量比(FFR)は、FFRインデックスを介して、石灰化プラーク又は軟質プラークによる冠動脈病変の血行動態的重要性を定量化する、心臓カテーテル検査室(Cath Lab)の侵襲性測定法である。インデックスは、冠動脈造影中に行われた圧力測定から計算される冠動脈狭窄の機能的重症度を示し、充血状態での近位圧力(冠動脈入口の近く)に対する遠位血圧(狭窄の背後)として定義される。そのため、FFRインデックスは、狭窄が存在しないと仮定した場合の最大流量と比較して、狭窄が存在する場合の血管の下流の最大流量を表す。 FFR値は0乃至1の数値であり、値0.50は、所与の狭窄により血圧が50%低下することを示す。機能的に有意であると確立された臨床的閾値は0.8であり、小さいFFR値の病変を治療する必要がある。
【0003】
侵襲性FFR処置は、カテーテルを大腿動脈又は橈骨動脈に挿入し、カテーテルを狭窄部まで前進させる必要があり、カテーテルの先端にあるセンサーが、血管の形状、コンプライアンス及び抵抗、及び/又はその他の特性に影響を与えるさまざまな造影剤によって促進される状態の間、狭窄部の間の圧力、温度、及び流れを検出する。非侵襲性アプローチ(FFR-CT)は、冠動脈を通る血流と圧力がシミュレートされる計算流体力学(CFD)シミュレーションを通じて、心臓のCT画像データ(例えば、造影冠動脈CT血管造影、CCTA)からFFRインデックスを推定する。これには、CCTA画像データを使用して冠動脈ツリーの幾何学的モデルを導出し、シミュレーションのためにそこから境界条件を決定することが含まれる。
【0004】
一般に、狭窄の背後の血圧(遠位血圧)は、狭窄の端部からの距離が増加するにつれて低下する。たとえば、摩擦の法則により、より遠位の位置での圧力測定値は、より遠位の位置での圧力測定値と比較して小さな値を生成し、この影響は、大きな血管よりも小さな血管でより深刻である。結果として、FFR値は、FFR値が計算される冠動脈に沿った位置に依存する。そのため、FFR値は、たとえば、FFR測定を実行するために臨床医によって選択された位置に関する違い/不一致により、患者、臨床医、医療施設の間で容易に比較されることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書で説明される態様は、上記で参照された問題及びその他に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、計算システムは、基準位置及び生物物理シミュレータを含むコンピュータ実行可能命令を備えたコンピュータ可読記憶媒体と生物物理シミュレータに構成され、基準位置によって示されるセグメント化された冠血管に沿った所定の位置で基準FFR値をシミュレートするように構成されるプロセッサとを含む。別の態様では、計算システムのプロセッサによって実行されるとき、プロセッサに、所定の基準によって示されるセグメント化された冠状血管に沿った所定の位置で基準FFR値をシミュレートさせるコンピュータ可読命令でコンピュータ可読記憶媒体がエンコードされる。別の態様では、方法は、所定の基準位置によって示されるセグメント化された冠状血管に沿った所定の位置で基準FFR値をシミュレートすることを含む。
【0007】
当業者は、添付の説明を読んで理解すると、本出願のさらに他の態様を認識するであろう。
【0008】
本発明は、様々なコンポーネント及びコンポーネントの配置、ならびに様々なステップ及びステップの配置の形をとることができる。図面は、好ましい実施形態を説明するためだけのものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】生物物理シミュレータ及び基準位置を備えた計算システム、及びイメージングシステムを含む例示的なシステムを概略的に示している。
【
図2】生物物理シミュレータの例を概略的に示している。
【
図3】狭窄の位置、FFR値
に関してユーザ
指定される位置、及びFFR値
に関する基準位置を示すセグメント化された冠状血管の例を概略的に示している。
【
図4】侵襲性FFR測定及び血管造影
像(アンギオグラム、angiogram)を処理するように構成された生物物理シミュレータ及び基準位置を備えた例示的な計算システムを概略的に示している。
【
図5】シミュレーションされたFFR測定値及びCT画像を処理するように構成された生物物理シミュレータ及び基準位置を備えた例示的な計算システムを概略的に示している。
【
図6】本明細書の一実施形態による例示的な方法を示す。
【
図7】本明細書の一実施形態による別の例示的な方法を示す。
【
図8】本明細書の一実施形態による別の例示的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、CTスキャナなどの撮像システム102を含むシステム100を概略的に示している。変形例では、撮像システム102はX線装置を含む。撮像システム102は、ほぼ静止したガントリ104と、静止したガントリ104によって回転可能に支持され、z軸を中心に検査領域108の周りを回転する回転ガントリ106とを含む。カウチなどの被験者支持部110は、検査領域108内の対象又は被験者を支持する。
【0011】
X線管などの放射線源112は、回転ガントリ106によって回転可能に支持され、回転ガントリ106と共に回転し、検査領域108を横断する放射線を放出する。放射線感受性検出器アレイ114は、検査領域108の間で放射線源112に対向して反対側の角度アークを定める。放射線感受性検出器アレイ114は、検査領域108を横断する放射線を検出し、それを示す電気信号(投影データ)を生成する。再構成器116は、投影データを再構成し、検査領域108内に位置する被験者又は物体のスキャン部分を示す体積画像データを生成する。
【0012】
システム100はさらに、この例ではオペレータコンソールとして機能する計算システム118を含む。コンソール118は、プロセッサ120(例えば、マイクロプロセッサ、中央処理装置など)と、一時的媒体を除外し、物理メモリデバイスなどの非一時的媒体を含むコンピュータ可読記憶媒体122とを含む。コンソール118は、モニタなどの人間が読み取り可能な出力装置130、及びキーボード、マウスなどの入力装置132をさらに含む。
【0013】
コンピュータ可読記憶媒体122は、少なくとも一つの生物物理シミュレータ126のための命令124を含み、所定の基準位置128を含む。基準位置128は静的又はプログラム可能とすることができる。プロセッサ120は、オペレータがグラフィカルユーザインターフェース(GUI)などを介してスキャナ102と対話し、及び/又はそれを操作することを可能にする命令124及び/又はソフトウェアを実行するように構成される。プロセッサ120は、追加的又は代替的に、搬送波、信号及び/又は他の一時的な媒体によって運ばれるコンピュータ可読命令を実行してもよい。
【0014】
変形例では、生物物理シミュレータ126及び所定の基準位置128は、コンソール118及びシステム100とは別の計算システムの一部である。この場合、他の計算システムはコンソール118に類似しており、プロセッサ、コンピュータ可読記憶媒体、入力デバイス、及び出力デバイスを含むが、オペレータがスキャナ102と対話し、及び/又はそれを操作することを可能にするソフトウェアを含まない。
【0015】
生物物理シミュレータ126は、心臓画像データからFFR値を決定するように構成される。これには、血管に沿った標準位置、例えば、基準位置128によって示される位置でのFFR値が含まれる。以下により詳細に説明するように、標準位置でのFFR値は、少なくとも、1)(例えば、撮像システム102及び/又は他のシステムからの)心臓CT画像を用いて、血管に沿ったユーザ指定されるポイントでのFFRとともに決定されることができ、2)血管造影及び侵襲性FFR測定から決定されることができ、及び/又は3)心臓CT画像データ及びそれから決定される以前にシミュレートされたFFR値から決定されることができる。標準化されたFFRは、臨床医、医療施設などに依存せず、例えば臨床医が指定した場所に関係なく、患者間でFFR値が比較されることを可能にする。
【0016】
図2は、生物物理シミュレータ126の例を概略的に示している。この例では、生物物理シミュレータ126は、セグメンター202、境界条件決定器204、及びフローシミュレータ206を含む。生物物理シミュレータ126は、入力として、イメージングシステム102、データリポジトリ(例えば、放射線情報システム(RIS)、写真及びアーカイブシステム(PACS)など)、及び/又は他の装置からの画像データを受信し、基準位置128でのFFR値を含むFFR値を出力する。
【0017】
セグメンター202は、セグメンテーションアルゴリズムを使用して、画像データから冠動脈ツリーをセグメント化する。セグメンテーションは、自動的に(たとえば、機械学習など)又は半自動で(たとえば、ユーザの支援を受けて)実行できる。一例では、セグメンテーションは、そこから冠動脈の中心線及び/又は管腔ジオミトリ(たとえば、直径、周囲、断面積など)を識別及び/又は抽出することを含む。セグメンテーションは、ボクセルの強度、対象の形状、及び/又はその他の特性に基づくことができる。
図3は、冠動脈ツリーの部分300のセグメント化を概略的に示している。
【0018】
画像データから冠動脈ツリーと心腔を抽出するための適切なアプローチの例は、Zhengらの「モデル駆動型アプローチとデータ駆動型アプローチの組み合わせによる、CTAでの堅牢かつ正確な冠動脈中心線抽出」(Med Image Comput Assist Interv 。 2013; 16(Pt 3):74乃至81)、Ecabertらの「モデルベースの適応フレームワークを使用したCT画像での心臓と大血管のセグメンテーション」(Med Image Anal、 2011年 12月; 15(6):863乃至76)、及びFreiman らの「自動冠動脈内腔セグメンテーションにおける部分ボリュームモデリングを考慮することによるCCTAベースの病変の血行動態の重要性評価の改善」(Med Phys、 2017年3月; 44(3):1040-1049)に開示される。本明細書では他のアプローチも考えられる。
【0019】
境界条件決定部204は、冠状ツリーのセグメンテーションから血管内の血流のシミュレーションのための境界条件を決定する。 1つのアプローチでは、パラメトリック集中モデルが使用される。このモデルは、流入及び流出境界条件を示す要素と、血管形状(直径、周囲、断面など)及び/又は流体力学的効果を反映する一連の線形及び非線形抵抗要素を含むツリーセグメント伝達関数を表す要素とともに非線形抵抗を使用した中心線表現を含む。
【0020】
集中モデルの例は、Nickischらの「インタラクティブな冠動脈血流シミュレーションのための患者特定集中モデルの学習」(医用画像計算及びコンピュータ支援介入-MICCAI 2015:18th International Conference、LNCS、9350巻、2015、9350巻、pp.433-441)に開示される。境界条件を導出する例は、2014年6月30日に提出された「FFR-CTに対する患者特定モデリング強化」と題されたEP14174891.3に記載されている。本明細書では他のアプローチも考えられる。
【0021】
フローシミュレータ206は、境界条件でフローシミュレーションを実行し、セグメント化された冠状ツリーに沿ってFFR値を生成する。出力FFR値は、血管に沿ったユーザ
指定される位置でのFFR値と、基準位置128により識別される位置でのFFR値とを含む。例えば、
図3では、セグメント化血管302は狭窄304を含む。
狭窄304は、セグメント化された冠状ツリー
において、たとえばエッジ検出アルゴリズムを使用して、又はボクセル強度値を評価して、血管の内壁の最大の狭まり(例えば減少する血管の半径又は直径)に対応する位置によって識別されることができる。
【0022】
位置306は、FFR値についてのユーザ選択された位置を表す。ユーザは、例えば、セグメント化された冠動脈ツリー上の特定の位置でマウスなどで「クリック」することにより、入力デバイス132を介して位置を指定することができる。基準位置308は、所定の基準位置128によって特定される位置を示す。一例では、所定の基準位置128は、狭窄の端部から下流の特定の距離310における基準位置308を示す。前記端部は、画像データの半径又は直径の測定値から決定できる。一例では、距離310は一定である(例えば、10mm)。別の例では、距離310は血管形状の関数である(例えば、狭窄304(健康な血管)の前の血管の部分の3×半径)。他の距離も考えられる)。
【0023】
例えば、CFD及び/又は他のアプローチを使用して、フローシミュレーションを実行できる。 FFR値の計算例は、2013年5月10日に出願され、「血管の狭窄に対するフラクショナルフローリザーブ(FFR)値の決定」と題されるUS 2015/0092999 A1、及び2013年10月24日に出願され、「冠血流予備量比(FFR)インデックス」と題されるUS 2015/0282765 A1に開示され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。生物物理シミュレータ126の出力は、ユーザ
指定される位置306のFFR値及び位置308のFFR値を含む。値は、それぞれの位置を示す
標示(indicia、インディシア)とともに出力装置130を介して表示することができる。一例では、これには、たとえば
図3に示すように、冠動脈ツリーのグラフィカル表現に値を重ねることが含まれる。
【0024】
図4は、計算システム118がシステム100から分離され、撮像システム102のコンソールではない例を概略的に示している。この例では、計算システム118は、入力として侵襲性FFR測定値及び対応する圧力測定を行うときに使用され
た血管造影
像(アンギオグラム、angiogram)を受信する。本明細書及び/又は別の方法で説明したように、血管造影
像をセグメント化して冠動脈ツリーを抽出する。血管造影
像も分析して、圧力測定に使用
された圧力センサーを支えるワイヤの先端の位置を決定する。一例では、これは血管造影
像のボクセル強度値を評価することにより達成される。
【0025】
セグメント化された冠状ツリー、決定された位置、及び侵襲性FFR測定を使用して生物物理シミュレータ126は、侵襲性FFR測定値と同じ決定された位置でFFR値を生成するシミュレーションをもたらすモデル境界条件を決定する。このため、特定の位置のFFR値を使用して境界条件を決定する以外は、FFR値を決定するための同じシミュレーションパイプラインを使用できる。次に、これらの境界条件でシミュレーションを実行して、血管全体に沿ったFFR値をシミュレートし、基準位置128により特定された位置でのFFR値を決定できる。 FFRは、本明細書で説明するように、セグメント化された冠動脈ツリー上の対応する位置を示す数値的及び/又はグラフィカルな標示で表示することができる。
【0026】
図5は、計算システム118がシステム100から分離され、イメージングシステム102のコンソールではない別の例を概略的に示す。この例では、計算システム118は、入力として、以前にシミュレートされたFFR値、及びFFR値をシミュレートする
ために使用される画像データを受け取る。生物物理シミュレータ126は、画像データから冠状ツリーをセグメント化し、モデル境界条件を決定し、冠状ツリーに沿ってFFR値をシミュレートする。以前にシミュレートされたFFR値は、冠動脈ツリーに沿ったシミュレートされたFFR値に基づいて冠動脈ツリー上の位置にマッピングされ、基準位置に変換される。 FFRは、本明細書で説明するように、セグメント化された冠動脈ツリー上の対応する位置を示す数値的及び/又は
グラフィカルな標示グラフィカルな標示で表示することができる。
【0027】
図1乃至5は、冠動脈疾患の機能的重要性の尺度としてFFRを使用する例を説明している。変形例では、本明細書で説明するアプローチは、瞬時血流予備量比(iFR)及び/又は他の測定にも適用することができる。一般に、iFRは
、冠動脈狭窄の遠位
に通
される圧力ワイヤを使用して、FFRとは対照的に安静時に実行され、
無波期間(wave-free period)と呼ばれる拡張期の特定期
間を分離し、この期間に大動脈で観察される圧力に対する遠位冠動脈圧の比を計算する
ことりにより実行される。
【0028】
図6は、本明細書に記載される実施形態による例示的な方法を示す。
【0029】
602で、冠動脈ツリーが心臓CT画像データからセグメント化される。
【0030】
604では、フローシミュレーションのためにそこから境界条件が決定される。
【0031】
606で、境界条件を用いてフローシミュレーションが実行され、冠動脈ツリーに沿ってFFR値がシミュレートされる。
【0032】
608で、シミュレートされたFFR値から、冠状ツリーに沿ったユーザ指定された位置におけるシミュレートされたFFR値が決定される。
【0033】
610で、シミュレートされたFFR値から、冠状ツリーに沿った基準位置128における別のシミュレートされたFFR値が決定される。
【0034】
本明細書で説明されるように、シミュレートされたFFRは、セグメント化された冠動脈ツリー上の対応する位置を示す数値的及び/又はグラフィカルな標示で表示することができる。
【0035】
図7は、本明細書で説明される実施形態による別の例示的な方法を示す。
【0036】
702で、冠動脈ツリーが血管造影像からセグメント化される。
【0037】
704で、セグメント化された冠状ツリーに沿った侵襲性FFR測定の位置が血管造影像から決定される。
【0038】
706で、セグメント化された冠動脈ツリー、侵襲性FFR測定値、及び決定された位置から境界条件が決定される。
【0039】
708で、境界条件を用いてフローシミュレーションが実行され、冠動脈ツリーに沿ってFFR値がシミュレートされる。
【0040】
710で、冠動脈ツリーに沿ったシミュレートされたFFR値から、冠動脈ツリーに沿った基準位置128におけるシミュレートされたFFR値が決定される。
【0041】
本明細書で説明されるように、シミュレートされた侵襲性FFRは、セグメント化された冠動脈ツリー上の対応する位置を示す数値的及び/又はグラフィカルな標示で表示することができる。
【0042】
図8は、本明細書で説明される実施形態による別の例示的な方法を示す。
【0043】
802で、冠動脈ツリーがCT画像データからセグメント化される。
【0044】
804で、セグメント化された冠動脈ツリーから境界条件が決定される。
【0045】
806で、境界条件を用いてフローシミュレーションが実行され、冠動脈ツリーに沿ってFFR値がシミュレートされる。
【0046】
808で、入力された以前にシミュレートされたFFR値の位置が、冠状ツリーに沿ったシミュレートされたFFR値から決定される。
【0047】
810で、冠動脈ツリーに沿ったシミュレートされたFFR値から、冠動脈ツリーに沿った所定の基準位置128におけるシミュレートされたFFR値が決定される。
【0048】
本明細書で説明されるように、シミュレートされたFFR及び以前にシミュレートされたFFRは、セグメント化された冠動脈ツリー上の対応する位置を示す数値的及び/又はグラフィカルな標示で表示され得る。
【0049】
上記は、コンピュータ可読記憶媒体にエンコード又は埋め込まれたコンピュータ可読命令により実装され、コンピュータプロセッサによって実行されるとき、プロセッサに記述された行為を実行させる。それに加えて、又はその代わりに、コンピュータ可読命令の少なくとも1つは、コンピュータ可読記憶媒体ではない信号、搬送波又は他の一時的な媒体によって運ばれる。さらに、行為の順序は限定的ではないことを理解されたい。したがって、本明細書では他の順序付けが考えられる。加えて、1つ以上の行為が省略されてもよく、及び/又は1つ以上の追加の行為が含まれてもよい。
【0050】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に図示及び説明されたが、そのような図示及び説明は、限定的ではなく例示的又は例示的であると見なされるべきである。本発明は開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求された発明を実施する際に当業者によって理解及び達成され得る。
【0051】
請求項において、「含む」という語は他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。単一のプロセッサ又は他のユニットは、特許請求の範囲に記載されたいくつかのアイテムの機能を果たし得る。特定の測定値が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの測定値の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
【0052】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアとともに、又はその一部として提供される光学式記憶媒体又はソリッドステート媒体などの適切な媒体に格納/配布できるが、インターネットやその他の有線又は無線の通信システム。請求項中の参照符号は、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0053】
以下、本発明の各種形態を付記する。
[付記1]
生物物理シミュレータを含み、基準位置及びコンピュータ実行可能命令を備えたコンピュータ可読記憶媒体と、
前記生物物理シミュレータを実行し、前記基準位置によって示されるセグメント化された冠状血管に沿った所定の位置で基準FFR値をシミュレートするように構成されるプロセッサと
を有する、計算システム。
[付記2]
前記生物物理シミュレータは、心臓コンピュータ断層撮影画像データから前記冠状血管をセグメント化し、それに基づいてフローシミュレーションの境界条件を決定し、前記セグメント化された冠状血管に沿ってシミュレートFFR値を生成する前記境界条件で前記フローシミュレーションを実行し、前記冠状血管に沿ったユーザ特定位置に対応する前記シミュレートFFRの選択FFR値を決定し、前記シミュレートFFRから前記基準FFR値を決定する、付記1に記載の計算システム。
[付記3]
前記生物物理シミュレータが、前記基準位置及び前記ユーザ特定位置を示すインディシアとともに、前記基準値及び選択FFR値をそれぞれ視覚的に表示する、付記2に記載の計算システム。
[付記4]
前記生物物理シミュレータは、前記基準位置及び前記ユーザ特定位置を示す前記インディシア並びに重畳される前記基準FFR値及び前記選択シミュレートFFR値とともに前記セグメント化された冠状血管を視覚的に表示する、付記3に記載の計算システム。
[付記5]
前記生物物理シミュレータは、血管造影図から前記冠状血管をセグメント化し、侵襲性FFR測定が行われた前記セグメント化された冠状血管上の位置を決定し、前記侵襲性FFR測定及び前記決定された位置に基づいて前記侵襲性FFR測定と同じ前記決定された位置でシミュレートFFR値を計算する境界条件を決定する、付記1に記載の計算システム。
[付記6]
前記生物物理シミュレータは、前記決定された境界条件でシミュレーションを実行して、前記セグメント化された冠状血管に沿ってFFR値をシミュレートし、前記侵襲性FFR測定値を前記基準位置に変換して前記基準FFR値を決定する、付記5に記載の計算システム。
[付記7]
前記生物物理シミュレータは、前記基準位置及び前記侵襲性FFR測定位置を示すインディシアと共に、前記基準FFR値及び前記侵襲性FFR測定値を視覚的に表示する、付記6に記載の計算システム。
[付記8]
前記生物物理シミュレータは、前記基準位置及び前記侵襲性FFR測定位置を示す前記インディシア並びに重畳される前記基準FFR値及び前記侵襲性FFR測定値とともに前記セグメント化された冠状血管を視覚的に表示する、付記7に記載の計算システム。
[付記9]
前記生物物理シミュレータは、心臓コンピュータ断層撮影画像データから前記冠状血管をセグメント化し、それに基づいてフローシミュレーションのための境界条件を決定し、前記セグメント化された冠状血管に沿ってシミュレートFFR値を生成する前記境界条件で前記フローシミュレーションを実行し、前記セグメント化された冠状血管に沿って、入力された以前のシミュレートFFR値を前記シミュレートFFR値の1つとマッチングさせることにより、前記入力された以前のシミュレートFFR値の位置を識別し、前記シミュレートFFRから前記基準FFR値を決定する、付記1に記載の計算システム。
[付記10]
前記生物物理シミュレータは、前記基準FFR値及び前記入力された以前のシミュレートFFR値を、前記基準位置及び前記入力された以前のシミュレートFFR値の前記位置を示すインディシアとともにそれぞれ視覚的に表示する、付記9に記載の計算システム。
[付記11]
前記生物物理シミュレータは、前記基準FFR値及び前記入力された以前のシミュレートFFR値の前記位置を示す前記インディシア並びに重畳される前記基準FFR値及び前記入力された以前のシミュレートFFR値とともに前記セグメント化された冠状血管を視覚的に表示する、付記10に記載の計算システム。
[付記12]
前記生物物理シミュレータは、前記セグメント化された冠状血管の狭窄及び前記狭窄の遠位端を識別し、前記基準位置は、前記遠位端からの一定の距離を表す定数である、付記1乃至11の何れか一項に記載の計算システム。
[付記13]
前記生物物理シミュレータは、前記セグメント化された冠状血管の狭窄及び前記狭窄の遠位端を識別し、前記狭窄に近接した前記セグメント化された冠状血管の直径を測定し、前記基準位置は前記測定された直径の倍数である、付記1乃至11の何れか一項に記載の計算システム。
[付記14]
前記生物物理シミュレータは、前記冠状血管に沿ったユーザ特定位置でのFFR値を、前記基準位置によって示される前記位置での前記基準FFR値に変換する、付記1乃至13の何れか一項に記載の計算システム。
[付記15]
計算システムのプロセッサによって実行されるとき、前記プロセッサに、
所定の基準位置によって示されるセグメント化された冠状血管に沿った所定の位置で基準FFR値をシミュレートさせる
コンピュータ可読命令でエンコードされるコンピュータ可読記憶媒体。
[付記16]
前記プロセッサは、心臓コンピュータ断層撮影画像データから前記冠状血管をセグメント化し、それに基づいてフローシミュレーションの境界条件を決定し、前記セグメント化された冠状血管に沿ってシミュレートFFR値を生成する前記境界条件で前記フローシミュレーションを実行し、冠状血管に沿ったユーザ特定位置に対応する前記シミュレートFFRの選択シミュレートFFR値を出力し、前記シミュレートFFRから前記基準FFR値を決定し、最初の基準FFR値を出力する、付記15に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
[付記17]
前記プロセッサは、血管造影図から前記冠状血管をセグメント化し、侵襲性FFR測定が行われた前記セグメント化された冠状血管の位置を決定し、前記侵襲性FFR測定及び前記決定された位置に基づいて前記侵襲性FFR測定と同じ前記決定された位置についてシミュレートFFR値を計算する境界条件を決定し、前記セグメント化された冠状血管に沿ってシミュレートFFR値を生成する前記境界条件で前記フローシミュレーションを実行し、前記シミュレートFFRの前記基準FFR値を決定し、少なくとも前記基準FFR値を出力する、付記15に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
[付記18]
前記プロセッサは、心臓コンピュータ断層撮影画像データから前記冠状血管をセグメント化し、それに基づいてフローシミュレーションのための境界条件を決定し、前記セグメント化された冠状血管に沿ってシミュレートFFR値を生成する前記境界条件で前記フローシミュレーションを実行し、前記セグメント化された冠状血管に沿った入力された以前のシミュレートFFR値の位置を前記シミュレートFFR値で識別し、前記シミュレートFFRから前記基準FFR値を決定し、少なくとも前記基準FFR値を出力する、付記15に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
[付記19]
所定の基準位置によって示されるセグメント化された冠状血管に沿った所定の位置で基準FFR値をシミュレートするステップ
を有する、方法。
[付記20]
心臓コンピュータ断層撮影画像データから前記冠状血管をセグメント化するステップと、
それに基づいてフローシミュレーションのための境界条件を決定するステップと、
前記セグメント化された冠状血管に沿ってシミュレートFFR値を生成する前記境界条件で前記フローシミュレーションを実行するステップと、
ユーザ特定位置を示すインディシアで前記ユーザ特定位置のための選択シミュレートFFR値を視覚的に表示するステップと、
前記シミュレートFFRから前記基準FFR値を決定するステップと、
前記所定の基準位置を示すインディシアとともに前記基準FFR値を視覚的に表示するステップと
を更に有する、付記19に記載の方法。
[付記21]
血管造影図から前記冠状血管をセグメント化するステップと、
前記血管造影図から、侵襲性FFR測定が行われた前記セグメント化された冠状血管の位置を決定するステップと、
フローシミュレーションのための境界条件を決定して、前記侵襲性FFR測定値と前記決定された位置とに基づいて、前記侵襲性FFR測定と同じ前記決定された位置のためのシミュレートFFR値を計算するステップと、
前記セグメント化された冠状血管に沿ってシミュレートFFR値を生成する前記境界条件で前記フローシミュレーションを実行するステップと、
前記シミュレートFFRから前記基準FFR値を決定するステップと、
前記所定の基準位置を示すインディシアで少なくとも前記基準FFRを視覚的に表示するステップと
を更に有する、付記19に記載の方法。
[付記22]
心臓コンピュータ断層撮影画像データから前記冠状血管をセグメント化するステップと、
それに基づいてフローシミュレーションの対するための境界条件を決定するステップと、
前記セグメント化された冠状血管に沿ってシミュレートFFR値を生成する境界条件で前記フローシミュレーションを実行するステップと、
前記セグメント化された冠状血管に沿った前記シミュレートFFR値で、入力された以前のシミュレートFFR値の位置を識別するステップと、
前記シミュレートFFRを用いて前記入力された以前のシミュレートFFR値を前記基準FFR値に変換するステップと、
前記所定の基準位置を示すインディシアで少なくとも前記基準FFRを視覚的に表示するステップと
を更に有する、付記19に記載の方法。