(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】三次元計測装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20230622BHJP
G01B 9/02055 20220101ALI20230622BHJP
【FI】
G01B11/24 D
G01B9/02055
(21)【出願番号】P 2020179484
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】石垣 裕之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 点
(72)【発明者】
【氏名】二村 伊久雄
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/198287(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/037678(WO,A1)
【文献】特開2018-54406(JP,A)
【文献】特許第5289383(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 - 11/30
G01B 9/02 - 9/04
H04N 23/60
G01N 21/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射する所定の光を2つの光に分割し、一方の光を物体光として被計測物に照射しかつ他方の光を参照光として参照面に照射すると共に、これらを再び合成して出射可能な所定の光学系と、
前記所定の光学系に対し入射させる所定の光を出射可能な照射手段と、
複数の受光素子からなり、かつ、透過軸の設定角度が異なる複数種類の偏光子が所定の配列で前記各受光素子に対応して1つずつ配置された撮像素子を有し、前記所定の光学系から出射される光を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像素子の各受光素子に係る前記偏光子の透過軸の絶対角度を事前に実測して得た透過軸絶対角度データを記憶する角度データ記憶手段と、
前記撮像手段により取得された輝度画像データの各画素の輝度データと、該画素に対応する前記撮像素子の受光素子に係る前記偏光子の透過軸絶対角度データを基に、位相シフト法により、前記被計測物の所定の計測位置に係る前記参照光及び前記物体光の位相差を算出し、該計測位置の高さ計測を実行可能な画像処理手段とを備えた三次元計測装置。
【請求項2】
入射する所定の光を偏光方向が互いに直交する2つの偏光に分割し、該分割した一方の偏光を物体光として被計測物に照射しかつ他方の偏光を参照光として参照面に照射すると共に、これらを再び合成して出射可能な偏光ビームスプリッタと、
前記偏光ビームスプリッタの第1面に対し入射させる所定の光を出射可能な照射手段と、
複数の受光素子からなり、かつ、透過軸の設定角度が異なる複数種類の偏光子が所定の配列で前記各受光素子に対応して1つずつ配置された撮像素子を有し、前記偏光ビームスプリッタの第2面から出射される光を撮像可能な撮像手段と、
前記参照光が出入射される前記偏光ビームスプリッタの第3面と前記参照面との間に配置された第1の1/4波長板と、
前記物体光が出入射される前記偏光ビームスプリッタの第4面と前記被計測物との間に配置される第2の1/4波長板と、
前記偏光ビームスプリッタの第2面と前記撮像手段との間に配置される第3の1/4波長板と、
前記撮像素子の各受光素子に係る前記偏光子の透過軸の絶対角度を事前に実測して得た透過軸絶対角度データを記憶する角度データ記憶手段と、
前記撮像手段により取得された輝度画像データの各画素の輝度データと、該画素に対応する前記撮像素子の受光素子に係る前記偏光子の透過軸絶対角度データを基に、位相シフト法により、前記被計測物の所定の計測位置に係る前記参照光及び前記物体光の位相差を算出し、該計測位置の高さ計測を実行可能な画像処理手段とを備えた三次元計測装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、
前記輝度画像データの複数の画素に係る所定位置を前記計測位置とする場合には、
前記複数の画素のうちの一部又は全部の画素の輝度データと、該一部又は全部の画素それぞれに対応する前記偏光子の透過軸絶対角度データを基に、前記計測位置の高さ計測を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の三次元計測装置。
【請求項4】
前記画像処理手段は、
前記輝度画像データの1つの画素に対応する所定位置を前記計測位置とする場合には、
前記計測位置の高さ計測に必要な複数の輝度データのうち、前記撮像手段により取得された前記1つの画素に係る輝度データを除く他の輝度データを補間する輝度データ補間処理と、
前記計測位置の高さ計測に必要な複数の透過軸絶対角度データのうち、前記角度データ記憶手段に記憶された前記1つの画素に係る透過軸絶対角度データを除く他の透過軸絶対角度データを補間する角度データ補間処理とを行い、
前記補間された輝度データ及び透過軸絶対角度データを含む前記計測位置に係る前記複数の輝度データ及び透過軸絶対角度データを基に、前記計測位置の高さ計測を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の三次元計測装置。
【請求項5】
前記計測位置の高さ計測に4つの前記輝度データ及びこれらにそれぞれ対応する4つの前記透過軸絶対角度データを用いる場合において、
前記4つの輝度データをそれぞれIα,Iβ,Iγ,Iδとし、
前記4つの透過軸絶対角度データをそれぞれα,β,γ,δとしたとき、
前記計測位置に係る前記位相差は、下記式(S1)により算出されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の三次元計測装置。
【数8】
ここで、Iα:第1の輝度データ
Iβ:第2の輝度データ
Iγ:第3の輝度データ
Iδ:第4の輝度データ
α :第1の透過軸絶対角度データ
β :第2の透過軸絶対角度データ
γ :第3の透過軸絶対角度データ
δ :第4の透過軸絶対角度データ
φ :参照光と物体光の位相差。
【請求項6】
前記計測位置の高さ計測に3つの前記輝度データ及びこれらにそれぞれ対応する3つの前記透過軸絶対角度データを用いる場合において、
前記3つの輝度データをそれぞれIα,Iβ,Iγとし、
前記3つの透過軸絶対角度データをそれぞれα,β,γとしたとき、
前記計測位置に係る前記位相差は、下記式(S2)により算出されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の三次元計測装置。
【数9】
ここで、Iα:第1の輝度データ
Iβ:第2の輝度データ
Iγ:第3の輝度データ
α :第1の透過軸絶対角度データ
β :第2の透過軸絶対角度データ
γ :第3の透過軸絶対角度データ
φ :参照光と物体光の位相差。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被計測物の形状を計測する三次元計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、干渉計を利用した三次元計測装置が知られている。その1つとして、位相シフト法を利用して被計測物の三次元形状を計測するものがある。
【0003】
一般に、干渉計を利用した三次元計測装置は、偏光ビームスプリッタ等からなる所定光学系と、該光学系に対し入射させるコヒーレント光を出射する光源と、所定光学系から出射される光を撮像する撮像装置とを備えている。
【0004】
かかる三次元計測装置において、所定光学系に入射されたコヒーレント光は、2方向に分岐され、一方が物体光として被計測物に照射されると共に、他方が参照光として参照面に照射された後、再び合成されて所定光学系から出射される。そして、所定光学系から出射された参照光及び物体光を干渉させ、それを撮像装置により撮像し、得られた輝度画像データを基に位相シフト法により被計測物の三次元計測を行う。
【0005】
ここで、参照光と物体光の位相差を変化させる位相シフトの方法として、従来では、所定光学系から出射された参照光及び物体光を干渉させる偏光板を回転させ、該偏光板の透過軸の角度を変化させる方法や、参照光が照射される参照面の位置を光軸方向へ変化させる方法などが用いられていた。
【0006】
そのため、従来では、位相シフト法を利用した三次元計測を行うに際し、参照光及び物体光の位相差を4段階(又は3段階)に変化させ、それらをそれぞれ異なるタイミングで撮像することが必要となり、4通り(又は3通り)の輝度画像データを取得するのに、計4回分(又は3回分)の撮像時間が必要となっていた。
【0007】
これに対し、近年では、データ取得時間の短縮を図るため、所定光学系から出射される光(参照光及び物体光)を4つに分岐させた後、該4つの分光に係る参照光及び物体光をそれぞれ干渉させ、それらを4台のカメラにより個別かつ同時に撮像する計測装置も見受けられる(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
かかる計測装置では、4つの分光のうち、基準とする分光を除く、他の3つの分光の光路上にそれぞれ特性の異なる波長板を設置し、他の3つの分光に係る参照光をそれぞれ所定量ずつ位相シフトさせることで、4つの分光に係る参照光及び物体光に90°ずつ異なる位相差を生じさせる構成なっている。
【0009】
尚、位相シフト法を利用した三次元計測をより正確に行うためには、より正確に位相シフトを行う必要があるが、特許文献1に係る構成においては、各波長板の製造誤差や設置誤差等に起因して位相シフト量にバラツキが生じるおそれがある。
【0010】
この点、特許文献1では、波長板が設置されない光路を通る分光を基準として、他の3つの分光の光路上に設置された各波長板による位相シフト誤差を事前に把握し、これを計測時に補正する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、特許文献1のように、複数台のカメラにより複数の分光(参照光及び物体光の干渉光)を個別に撮像する構成とした場合には、各カメラ固有のレンズや撮像素子の特性の違い等に起因して計測誤差が生じるおそれがある。
【0013】
これに鑑み、例えばカメラの撮像素子として、所定方向に振動する所定の偏光のみを通過させる透過軸の設定角度が異なる複数種類の偏光子(例えば基準軸に対する透過軸の設定角度が「0°」,「45°」,「90°」,「135°」となる4種類の偏光子)が所定の配列で各画素(受光素子)に対応して1つずつ配置された偏光イメージセンサを用いることにより、1台のカメラによる1回の撮像で、位相シフト法の計算に必要な4通りの輝度データを同時に取得する構成とすることも考えられる。
【0014】
但し、かかる構成において、偏光イメージセンサの各偏光子における透過軸の実際の角度(絶対角度)が、製造誤差等により、当初の設定角度に対し少量でもずれている場合には、位相シフト誤差が生じ、正確な輝度データが取得できず、計測精度が低下するおそれがある。
【0015】
従って、偏光イメージセンサを用いる構成においても、特許文献1と同様に、位相シフト誤差を補正する必要があるが、偏光イメージセンサの各偏光子は相対変位不能に固定されており、偏光子毎に個別に透過軸の角度調整などを行うことはできない。
【0016】
また、偏光イメージセンサにおいては、当初の設定角度が同じ同種の偏光子(例えば設定角度が同じ「0°」の偏光子)であっても、製造誤差等により画素毎にバラツキが生じ、透過軸の絶対角度が異なる(例えば設定角度「0°」±誤差)。つまり、偏光イメージセンサにおいては絶対的な基準となる光路が存在しない。
【0017】
このため、特許文献1のように、位相シフトされない光路(位相シフト量「0°」の光路)を基準として、他の光路における位相シフト誤差を把握し、それを補正する等といった方法を用いることができない。
【0018】
以下、偏光イメージセンサを用いた構成において、特許文献1に係る従来の補正方法を適用した場合の問題点について、
図10に示す具体例を参照して詳しく説明する。
図10は、透過軸の設定角度が異なる4種類(例えば設定角度α=「0°」,β=「45°」,γ=「90°」,δ=「135°」)の偏光子が所定の配列で配置された偏光イメージセンサ100の一部を拡大して示した模式図である。
【0019】
ここで、例えば偏光イメージセンサ100の「第2画素位置」、「第3画素位置」、「第6画素位置」及び「第7画素位置」の4つの画素(
図10の破線太枠エリア参照)から取得される輝度データを基に高さ計測を行う場合には、「第6画素位置」の偏光子の透過軸の絶対角度「α
6」、並びに、これを基準とした「第2画素位置」の偏光子の透過軸の相対角度「β
2´(=β
2-α
6)」、「第3画素位置」の偏光子の透過軸の相対角度「γ
3´(=γ
3-α
6)」、「第7画素位置」の偏光子の透過軸の相対角度「δ
7´(=δ
7-α
6)」を用いることになる。
【0020】
尚、ここで「β2」は「第2画素位置の偏光子の透過軸の絶対角度」であり、「γ3」は「第3画素位置の偏光子の透過軸の絶対角度」であり、「δ7」は「第7画素位置の偏光子の透過軸の絶対角度」である。
【0021】
一方、偏光イメージセンサ100の「第3画素位置」、「第4画素位置」、「第7画素位置」及び「第8画素位置」の4つの画素(
図10の実線太枠エリア参照)から取得される輝度データを基に高さ計測を行う場合には、「第8画素位置」の偏光子の透過軸の絶対角度「α
8」、並びに、これを基準とした「第4画素位置」の偏光子の透過軸の相対角度「β
4´(=β
4-α
8)」、「第3画素位置」の偏光子の透過軸の相対角度「γ
3´(=γ
3-α
8)」、「第7画素位置」の偏光子の透過軸の相対角度「δ
7´(=δ
7-α
8)」を用いることになる。
【0022】
尚、ここで「β4」は「第4画素位置の偏光子の透過軸の絶対角度」であり、「γ3」は「第3画素位置の偏光子の透過軸の絶対角度」であり、「δ7」は「第7画素位置の偏光子の透過軸の絶対角度」である。
【0023】
上述した2つのケースを比較して分かるとおり、「第6画素位置」の偏光子の透過軸の絶対角度「α6(設定角度α±誤差a6)」と、「第8画素位置」の偏光子の透過軸の絶対角度「α8(設定角度α±誤差a8)」が異なれば、当然、「第3画素位置」の偏光子の透過軸の相対角度「γ3´」も、「第7画素位置」の偏光子の透過軸の相対角度「δ7´」も、それぞれ同一画素の同一偏光子であるにもかかわらず、透過軸の相対角度が異なる値となり、これらに係る補正値も異なるものとなる。
【0024】
つまり、計測位置(計算対象とする4つの輝度データ)が異なる毎に基準が異なってしまい、その都度、補正値を変更する必要がある。また、同一画素に対し複数の補正値を用意する必要がある。通常、三次元計測に用いられる撮像素子(偏光イメージセンサ)は画素数が非常に多い。そのため、上記のような方法では、計測処理が非常に複雑化すると共に、処理負荷が著しく増大するおそれがある。
【0025】
さらに、特許文献1に係る構成のように、撮像素子における複数の画素間の相対誤差を調整するキャリブレーションが行われていない場合には、例えば同一高さ平面を有した基準板を三次元計測したとしても、計測位置毎に異なる高さデータが算出されてしまい、高さがバラバラの凸凹した物体のように計測されてしまうおそれがある。
【0026】
本発明は、上記事情等に鑑みてなされたものであり、その目的は、計測精度の向上等を図ることのできる三次元計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0028】
手段1.入射する所定の光を2つの光に分割し、一方の光を物体光として被計測物に照射しかつ他方の光を参照光として参照面に照射すると共に、これらを再び合成して出射可能な所定の光学系(特定光学系)と、
前記所定の光学系に対し入射させる所定の光を出射可能な照射手段と、
複数の受光素子からなり、かつ、透過軸の設定角度が異なる複数種類の偏光子(例えば透過軸の設定角度が「0°」,「45°」,「90°」,「135°」となる4種類の偏光子)が所定の配列で前記各受光素子に対応して1つずつ配置された撮像素子(偏光イメージセンサ)を有し、前記所定の光学系から出射される光を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像素子の各受光素子に係る前記偏光子の透過軸の絶対角度を事前に実測して得た透過軸絶対角度データを記憶する角度データ記憶手段と、
前記撮像手段により取得された輝度画像データの各画素の輝度データと、該画素に対応する前記撮像素子の受光素子に係る前記偏光子の透過軸絶対角度データを基に、位相シフト法により、前記被計測物の所定の計測位置に係る前記参照光及び前記物体光の位相差を算出し、該計測位置の高さ計測を実行可能な画像処理手段とを備えた三次元計測装置。
【0029】
尚、上記「偏光子の透過軸の絶対角度」を「偏光子の透過軸の設定角度に対するズレ量(例えば設定角度「45°」+誤差「1°」など)」として把握してもよい。
【0030】
上記手段1によれば、撮像手段の撮像素子として、所定方向に振動する所定の偏光のみを通過させる透過軸の設定角度が異なる複数種類の偏光子が所定の配列で各受光素子に対応して1つずつ配置された偏光イメージセンサを用いることにより、1つの撮像手段による1回の撮像で、被計測物の所定の計測位置に係る位相シフト法による高さ計測に必要な複数通りの輝度データを同時に取得することができる。結果として、複数の撮像手段を使用する構成や複数回の撮像を行う構成に比べて、構成の簡素化やデータ取得時間の短縮等を図ることができる。
【0031】
尚、参照光及び物体光に複数通りの位相差を付与する位相シフト手段として、例えば特許文献1のように、複数の分光に対しそれぞれ特性の異なる波長板を利用する構成では、各波長板の製造誤差のみならず、温度変化に起因した各波長板の膨張や収縮によっても、位相シフト誤差が生じ得るため、その誤差を正確に補正することが非常に難しくなる。
【0032】
これに対し、本手段では、位相シフト手段として、透過軸の設定角度が異なる複数種類の偏光子を用いているため、波長板を利用して位相シフトを行う構成に比べて、位相シフトやその誤差補正等を行う上で温度変化の影響を受けにくく、上記不具合は発生しにくくなる。結果として、計測精度の向上等を図ることができる。
【0033】
また、本手段では、位相シフト法による参照光及び物体光の位相差の算出に用いられる偏光子の透過軸の角度データとして、透過軸の設定角度ではなく、事前に実測して得た実測値である透過軸絶対角度データを使用しているため、より正確な位相差を求めることができる。結果として、さらなる計測精度の向上等を図ることができる。
【0034】
さらに、本手段によれば、全ての計測位置に共通する基準を用いる必要もなく、位相シフトに関する複数の画素間の相対誤差を調整する必要もない。また、同一画素に対し複数の補正値を用意して、計測位置が異なる毎に補正値を変更する必要もない。
【0035】
加えて、特許文献1のように、所定の光学素子を動かし、所定の誤差調整等を行う構成では、その作業に伴う誤差等が加わるおそれがある。これに対し、本手段では、各種光学素子を動かすことなく、ソフト的な処理により誤差調整を行うことができる。結果として、さらなる計測精度の向上等を図ることができる。
【0036】
手段2.入射する所定の光を偏光方向が互いに直交する2つの偏光に分割し、該分割した一方の偏光を物体光として被計測物に照射しかつ他方の偏光を参照光として参照面に照射すると共に、これらを再び合成して出射可能な偏光ビームスプリッタと、
前記偏光ビームスプリッタの第1面に対し入射させる所定の光を出射可能な照射手段と、
複数の受光素子からなり、かつ、透過軸の設定角度が異なる複数種類の偏光子(例えば透過軸の設定角度が「0°」,「45°」,「90°」,「135°」となる4種類の偏光子)が所定の配列で前記各受光素子に対応して1つずつ配置された撮像素子(偏光イメージセンサ)を有し、前記偏光ビームスプリッタの第2面から出射される光を撮像可能な撮像手段と、
前記参照光が出入射される前記偏光ビームスプリッタの第3面と前記参照面との間に配置された第1の1/4波長板と、
前記物体光が出入射される前記偏光ビームスプリッタの第4面と前記被計測物との間に配置される第2の1/4波長板と、
前記偏光ビームスプリッタの第2面と前記撮像手段との間に配置される第3の1/4波長板と、
前記撮像素子の各受光素子に係る前記偏光子の透過軸の絶対角度を事前に実測して得た透過軸絶対角度データを記憶する角度データ記憶手段と、
前記撮像手段により取得された輝度画像データの各画素の輝度データと、該画素に対応する前記撮像素子の受光素子に係る前記偏光子の透過軸絶対角度データを基に、位相シフト法により、前記被計測物の所定の計測位置に係る前記参照光及び前記物体光の位相差を算出し、該計測位置の高さ計測を実行可能な画像処理手段とを備えた三次元計測装置。
【0037】
上記手段2によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏される。
【0038】
ここで、「偏光ビームスプリッタ」は、その境界面において、第1の偏光方向を有する第1偏光(例えばP偏光)を透過させ、第2の偏光方向を有する第2偏光(例えばS偏光)を反射する機能を有する。
【0039】
従って、偏光ビームスプリッタの第1面から入射した所定の光は、例えば第1偏光よりなる参照光と、第2偏光よりなる物体光とに分割されることとなる。また、例えば偏光ビームスプリッタの第3面から入射した第2偏光よりなる参照光と、偏光ビームスプリッタの第4面から入射した第1偏光よりなる物体光とが合成されて、偏光ビームスプリッタの第2面から出射されることとなる。
【0040】
「第1の1/4波長板」は、直線偏光を円偏光に変換しかつ円偏光を直線偏光に変換する機能を有するものである。従って、偏光ビームスプリッタの第3面から出射される直線偏光(参照光)は「第1の1/4波長板」を介して円偏光に変換された上で参照面に対し照射される。また、参照面で反射した参照光は、再度、「第1の1/4波長板」を介して円偏光から直線偏光に変換された上で偏光ビームスプリッタの第3面に入射することとなる。
【0041】
「第2の1/4波長板」は、直線偏光を円偏光に変換しかつ円偏光を直線偏光に変換する機能を有するものである。従って、偏光ビームスプリッタの第4面から出射される直線偏光(物体光)は「第2の1/4波長板」を介して円偏光に変換された上で被計測物に対し照射される。また、被計測物にて反射した物体光は、再度、「第2の1/4波長板」を介して円偏光から直線偏光に変換された上で偏光ビームスプリッタの第4面に入射することとなる。
【0042】
「第3の1/4波長板」は、偏光ビームスプリッタの第2面から出射される参照光成分の直線偏光、及び、物体光成分の直線偏光をそれぞれ円偏光に変換する機能を有するものである。
【0043】
手段3.前記画像処理手段は、
前記輝度画像データの複数の画素(例えば2行2列で隣接する4画素、又は、1列に並んだ3画素)に係る所定位置を前記計測位置とする場合には、
前記複数の画素のうちの一部又は全部(例えば4画素のうちの所定の3画素又は4画素全て)の画素の輝度データと、該一部又は全部の画素それぞれに対応する前記偏光子の透過軸絶対角度データを基に、前記計測位置の高さ計測を実行することを特徴とする手段1又は2に記載の三次元計測装置。
【0044】
上記手段3によれば、1つの計測位置について比較的簡単に高さ計測を行うことができる。結果として、処理負担の軽減や計測時間の短縮を図ることができる。
【0045】
手段4.前記画像処理手段は、
前記輝度画像データの1つの画素に対応する所定位置を前記計測位置とする場合には、
前記計測位置の高さ計測に必要な複数(例えば3つ又は4つ)の輝度データのうち、前記撮像手段により取得された前記1つの画素に係る輝度データを除く他の輝度データを補間する輝度データ補間処理と、
前記計測位置の高さ計測に必要な複数(例えば3つ又は4つ)の透過軸絶対角度データのうち、前記角度データ記憶手段に記憶された前記1つの画素に係る透過軸絶対角度データを除く他の透過軸絶対角度データを補間する角度データ補間処理とを行い、
前記補間された輝度データ及び透過軸絶対角度データを含む前記計測位置に係る前記複数(例えば3つ又は4つ)の輝度データ及び透過軸絶対角度データを基に、前記計測位置の高さ計測を実行することを特徴とする手段1又は2に記載の三次元計測装置。
【0046】
上記手段4によれば、輝度画像データの1つの画素に対応する所定位置を計測位置とするにあたり、データの欠落部分が生じるといった不具合の発生を抑制することができる。さらに、輝度データ及び透過軸絶対角度データの両者の補間を行うことにより、計測精度の向上を図ることができる。尚、各種データの補間処理の方法については、線形補間をはじめ、種々の補間方法を採用することができる。
【0047】
手段5.前記計測位置の高さ計測に4つの前記輝度データ及びこれらにそれぞれ対応する4つの前記透過軸絶対角度データを用いる場合において、
前記4つの輝度データをそれぞれIα,Iβ,Iγ,Iδとし、
前記4つの透過軸絶対角度データをそれぞれα,β,γ,δとしたとき、
前記計測位置に係る前記位相差は、下記式(S1)により算出されることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の三次元計測装置。
【0048】
【0049】
ここで、Iα:第1の輝度データ
Iβ:第2の輝度データ
Iγ:第3の輝度データ
Iδ:第4の輝度データ
α :第1の透過軸絶対角度データ
β :第2の透過軸絶対角度データ
γ :第3の透過軸絶対角度データ
δ :第4の透過軸絶対角度データ
φ :参照光と物体光の位相差。
【0050】
上記手段5によれば、3通りの輝度データ及び偏光子の透過軸絶対角度データを基に位相シフト法により高さ計測を行う場合に比べて、より精度の高い計測を行うことができる。
【0051】
手段6.前記計測位置の高さ計測に3つの前記輝度データ及びこれらにそれぞれ対応する3つの前記透過軸絶対角度データを用いる場合において、
前記3つの輝度データをそれぞれIα,Iβ,Iγとし、
前記3つの透過軸絶対角度データをそれぞれα,β,γとしたとき、
前記計測位置に係る前記位相差は、下記式(S2)により算出されることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の三次元計測装置。
【0052】
【0053】
ここで、Iα:第1の輝度データ
Iβ:第2の輝度データ
Iγ:第3の輝度データ
α :第1の透過軸絶対角度データ
β :第2の透過軸絶対角度データ
γ :第3の透過軸絶対角度データ
φ :参照光と物体光の位相差。
【0054】
上記手段6によれば、4通りの輝度データ及び偏光子の透過軸絶対角度データを基に位相シフト法により高さ計測を行う場合に比べて、より計測に要する時間や手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図2】三次元計測装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図6】偏光子アレイの構成を説明するための模式図である。
【
図7】偏光子の透過軸の絶対角度を把握するキャリブレーションの方法を説明するための図である。
【
図8】キャリブレーション時における基準偏光板の回転角度と、偏光子を透過した光の輝度との関係を示した図である。
【
図9】第2実施形態に係るデータ補間処理の手順を説明するための図である。
【
図10】透過軸の設定角度が異なる4種類の偏光子が所定の配列で配置された偏光イメージセンサの一部を拡大して示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
〔第1実施形態〕
以下、三次元計測装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態に係る三次元計測装置1の概略構成を示す模式図であり、
図2は三次元計測装置1の電気的構成を示すブロック図である。以下、便宜上、
図1の紙面前後方向を「X軸方向」とし、紙面上下方向を「Y軸方向」とし、紙面左右方向を「Z軸方向」として説明する。
【0057】
三次元計測装置1は、マイケルソン干渉計の原理に基づき構成されたものであり、特定波長の光を出力可能な2つの投光系2A,2B(第1投光系2A,第2投光系2B)と、該投光系2A,2Bからそれぞれ出射される光が入射される干渉光学系3と、該干渉光学系3から出射される光を撮像可能な2つの撮像系4A,4B(第1撮像系4A,第2撮像系4B)と、投光系2A,2Bや干渉光学系3、撮像系4A,4Bなどに係る各種制御や画像処理、演算処理等を行う制御装置5とを備えている。
【0058】
ここで、「制御装置5」が本実施形態における「画像処理手段」を構成し、「干渉光学系3」が本実施形態における「所定の光学系(特定光学系)」を構成する。尚、本実施形態においては、光の干渉を生じさせること(干渉光を撮像すること)を目的として、入射する所定の光を2つの光(物体光及び参照光)に分割し、該2つの光に光路差を生じさせた上で、再度合成して出力する光学系を「干渉光学系」という。つまり、2つの光を内部で干渉させることなく、単に合成光として出力する光学系についても「干渉光学系」と称している。従って、本実施形態のように「干渉光学系」から2つの光(物体光及び参照光)が干渉することなく合成光として出力される場合には、後述するように、少なくとも撮像される前段階において、所定の干渉手段を介して干渉光に変換することとなる。
【0059】
まず、2つの投光系2A,2B(第1投光系2A,第2投光系2B)の構成について詳しく説明する。第1投光系2Aは、第1発光部11A、第1光アイソレータ12A、第1無偏光ビームスプリッタ13Aなどを備えている。
【0060】
図示は省略するが、照射手段を構成する第1発光部11Aは、特定波長λ1の直線偏光を出力可能なレーザ光源や、該レーザ光源から出力される直線偏光を拡大し平行光として出射するビームエキスパンダ、強度調整を行うための偏光板、偏光方向を調整するための1/2波長板などを備えている。
【0061】
かかる構成の下、本実施形態では、第1発光部11Aから、X軸方向及びY軸方向に対し45°傾斜した方向を偏光方向とする波長λ1(例えばλ1=1500nm)の直線偏光がZ軸方向左向きに出射される。以降、第1発光部11Aから出射される波長λ1の光を「第1光」という。
【0062】
第1光アイソレータ12Aは、一方向(本実施形態ではZ軸方向左向き)に進む光のみを透過し逆方向(本実施形態ではZ軸方向右向き)の光を遮断する光学素子である。これにより、第1発光部11Aから出射された第1光のみを透過することとなり、戻り光による第1発光部11Aの損傷や不安定化などを防止することができる。
【0063】
第1無偏光ビームスプリッタ13Aは、直角プリズム(直角二等辺三角形を底面とする三角柱状のプリズム。以下同様。)を貼り合せて一体としたキューブ型の公知の光学部材であって、その接合面13Ahには例えば金属膜などのコーティングが施されている。
【0064】
以下同様であるが、無偏光ビームスプリッタは、偏光状態も含め、入射光を所定の比率で透過光と反射光とに分割するものである。本実施形態では、1:1の分割比を持った所謂ハーフミラーを採用している。つまり、透過光のP偏光成分及びS偏光成分、並びに、反射光のP偏光成分及びS偏光成分が全て同じ比率で分割されると共に、透過光と反射光の各偏光状態は入射光の偏光状態と同じとなる。
【0065】
尚、本実施形態では、
図1の紙面に平行な方向(Y軸方向又はZ軸方向)を偏光方向とする直線偏光をP偏光(P偏光成分)といい、
図1の紙面に垂直なX軸方向を偏光方向とする直線偏光をS偏光(S偏光成分)という。
【0066】
また、第1無偏光ビームスプリッタ13Aは、その接合面13Ahを挟んで隣り合う2面のうちの一方がY軸方向と直交しかつ他方がZ軸方向と直交するように配置されている。つまり、第1無偏光ビームスプリッタ13Aの接合面13AhがY軸方向及びZ軸方向に対し45°傾斜するように配置されている。より詳しくは、第1光アイソレータ12Aを介して、第1発光部11AからZ軸方向左向きに入射する第1光の一部(半分)をZ軸方向左向きに透過させ、残り(半分)をY軸方向下向きに反射させるように配置されている。
【0067】
第2投光系2Bは、上記第1投光系2Aと同様、第2発光部11B、第2光アイソレータ12B、第2無偏光ビームスプリッタ13Bなどを備えている。
【0068】
照射手段を構成する第2発光部11Bは、上記第1発光部11Aと同様、特定波長λ2の直線偏光を出力可能なレーザ光源や、該レーザ光源から出力される直線偏光を拡大し平行光として出射するビームエキスパンダ、強度調整を行うための偏光板、偏光方向を調整するための1/2波長板などを備えている。
【0069】
かかる構成の下、本実施形態では、第2発光部11Bから、X軸方向及びZ軸方向に対し45°傾斜した方向を偏光方向とする波長λ2(例えばλ2=1503nm)の直線偏光がY軸方向上向きに出射される。以降、第2発光部11Bから出射される波長λ2の光を「第2光」という。
【0070】
第2光アイソレータ12Bは、第1光アイソレータ12Aと同様、一方向(本実施形態ではY軸方向上向き)に進む光のみを透過し逆方向(本実施形態ではY軸方向下向き)の光を遮断する光学素子である。これにより、第2発光部11Bから出射された第2光のみを透過することとなり、戻り光による第2発光部11Bの損傷や不安定化などを防止することができる。
【0071】
第2無偏光ビームスプリッタ13Bは、第1無偏光ビームスプリッタ13Aと同様、直角プリズムを貼り合せて一体としたキューブ型の公知の光学部材であって、その接合面13Bhには例えば金属膜などのコーティングが施されている。
【0072】
また、第2無偏光ビームスプリッタ13Bは、その接合面13Bhを挟んで隣り合う2面のうちの一方がY軸方向と直交しかつ他方がZ軸方向と直交するように配置されている。つまり、第2無偏光ビームスプリッタ13Bの接合面13BhがY軸方向及びZ軸方向に対し45°傾斜するように配置されている。より詳しくは、第2光アイソレータ12Bを介して、第2発光部11BからY軸方向上向きに入射する第2光の一部(半分)をY軸方向上向きに透過させ、残り(半分)をZ軸方向右向きに反射させるように配置されている。
【0073】
次に干渉光学系3の構成について詳しく説明する。干渉光学系3は、偏光ビームスプリッタ(PBS)20、1/4波長板21,22、参照面23、設置部24などを備えている。
【0074】
偏光ビームスプリッタ20は、直角プリズムを貼り合せて一体としたキューブ型の公知の光学部材であって、その接合面(境界面)20hには例えば誘電体多層膜などのコーティングが施されている。
【0075】
偏光ビームスプリッタ20は、入射される直線偏光を偏光方向が互いに直交する2つの偏光成分(P偏光成分とS偏光成分)に分割するものである。本実施形態における偏光ビームスプリッタ20は、P偏光成分を透過させ、S偏光成分を反射する構成となっている。
【0076】
偏光ビームスプリッタ20は、その接合面20hを挟んで隣り合う2面のうちの一方がY軸方向と直交しかつ他方がZ軸方向と直交するように配置されている。つまり、偏光ビームスプリッタ20の接合面20hがY軸方向及びZ軸方向に対し45°傾斜するように配置されている。
【0077】
より詳しくは、上記第1無偏光ビームスプリッタ13AからY軸方向下向きに反射した第1光が入射する偏光ビームスプリッタ20の第1面(Y軸方向上側面)20a、並びに、該第1面20aと相対向する第3面(Y軸方向下側面)20cがY軸方向と直交するように配置されている。
【0078】
一方、第1面20aと接合面20hを挟んで隣り合う面であって、上記第2無偏光ビームスプリッタ13BからZ軸方向右向きに反射した第2光が入射する偏光ビームスプリッタ20の第2面(Z軸方向左側面)20b、並びに、該第2面20bと相対向する第4面(Z軸方向右側面)20dがZ軸方向と直交するように配置されている。
【0079】
また、偏光ビームスプリッタ20の第3面20cとY軸方向に相対向するように1/4波長板21が配置され、該1/4波長板21とY軸方向に相対向するように参照面23が配置されている。
【0080】
1/4波長板21は、直線偏光を円偏光に変換しかつ円偏光を直線偏光に変換する機能を有するものであり、本実施形態における「第1の1/4波長板」を構成する。つまり、偏光ビームスプリッタ20の第3面20cから出射される直線偏光(参照光)は1/4波長板21を介して円偏光に変換された上で参照面23に対し照射される。また、参照面23で反射した参照光は、再度、1/4波長板21を介して円偏光から直線偏光に変換された上で偏光ビームスプリッタ20の第3面20cに入射する。
【0081】
一方、偏光ビームスプリッタ20の第4面20dとZ軸方向に相対向するように1/4波長板22が配置され、該1/4波長板22とZ軸方向に相対向するように設置部24が配置されている。
【0082】
1/4波長板22は、直線偏光を円偏光に変換しかつ円偏光を直線偏光に変換する機能を有するものであり、本実施形態における「第2の1/4波長板」を構成する。つまり、偏光ビームスプリッタ20の第4面20dから出射される直線偏光(物体光)は1/4波長板22を介して円偏光に変換された上で設置部24に置かれた被計測物としてのワークWに対し照射される。また、ワークWにて反射した物体光は、再度、1/4波長板22を介して円偏光から直線偏光に変換された上で偏光ビームスプリッタ20の第4面20dに入射する。
【0083】
次に2つの撮像系4A,4B(第1撮像系4A,第2撮像系4B)の構成について詳しく説明する。
【0084】
第1撮像系4Aは、1/4波長板31A、撮像手段を構成する第1カメラ33Aなどを備えている。
【0085】
1/4波長板31Aは、第2無偏光ビームスプリッタ13BをZ軸方向左向きに透過してきた直線偏光(第1光の参照光成分及び物体光成分)をそれぞれ円偏光に変換するためのものであり、本実施形態における「第3の1/4波長板」を構成する。
【0086】
本実施形態に係る第1カメラ33Aは、撮像素子として偏光イメージセンサ70Aを備えた偏光カメラである。
【0087】
図5に示すように、偏光イメージセンサ70Aは、センサ本体部となる受光素子アレイ71と、その受光面側となる前面側に設けられた偏光子アレイ72と、その前面側に設けられたマイクロレンズアレイ73とを備えている。
【0088】
受光素子アレイ71は、複数の受光素子(画素)74が行列状に二次元配列されてなる一般的なCCDイメージセンサなどの半導体素子構造を有する。
【0089】
尚、実際の受光素子アレイ71は、多数の画素(例えば1280×1024画素)が配列されたものであるが、
図5,6等においては、説明の簡素化を図るため、その一部である4行4列のみ図示している(偏光子アレイ72及びマイクロレンズアレイ73についても同様)。
【0090】
偏光子アレイ72は、複数の偏光子75が行列状に二次元配列されたものである。各偏光子75は、受光素子アレイ71の各受光素子74と1対1で対応するように設けられている。
【0091】
偏光子75は、上記のように円偏光に変換された参照光成分及び物体光成分を選択的に透過させるものである。これにより、回転方向の異なる参照光成分と物体光成分とを干渉させることができる。また、参照光成分及び物体光成分に所定の位相差が付与される。従って、各偏光子75が本実施形態における「位相シフト手段」及び「干渉手段」を構成することとなる。
【0092】
偏光子75は、製造時における透過軸の設定角度α,β,γ,δが45°ずつ異なる4種類の偏光子75a,75b,75c,75dからなる。より詳しくは、基準線(水平線)に対する透過軸の設定角度α=「0°」となるように設定(製造)された第1偏光子75aと、透過軸の設定角度β=「45°」となるように設定された第2偏光子75bと、透過軸の設定角度γ=「90°」となるように設定された第3偏光子75cと、透過軸の設定角度δ=「135°」となるように設定された第4偏光子75dとを備えている。
【0093】
これにより、偏光子アレイ72の各偏光子75を透過する光の参照光成分及び物体光成分を4通りの位相差で干渉させることができる。つまり、参照光及び物体光の位相差が90°ずつ異なる4通りの干渉光を生成することができる。
【0094】
具体的な設定としては、第1偏光子75aを透過する光の参照光成分の位相シフト量が「0°」となり、第2偏光子75bを透過する光の参照光成分の位相シフト量が「90°」となり、第3偏光子75cを透過する光の参照光成分の位相シフト量が「180°」となり、第4偏光子75dを透過する光の参照光成分の位相シフト量が「270°」となるように設計されている。
【0095】
そして、偏光子アレイ72においては、これら透過軸角度が異なる4種類の偏光子75a,75b,75c,75dが所定順序で2行2列の行列状に並んだ特定の偏光子配列パターン(
図5の太枠部分参照)が行列状に繰り返し配置された構成となっている。
【0096】
本実施形態における前記偏光子配列パターンは、偏光子アレイ72の正面視で、右下に第1偏光子75aが配置され、右上に第2偏光子75bが配置され、左上に第3偏光子75cが配置され、左下に第4偏光子75dが配置された構成となっている。
【0097】
これにより、偏光子アレイ72のどの位置で、2行2列の行列状に並んだ4つの偏光子75を抽出した場合であっても、透過軸角度が異なる4種類の偏光子75a,75b,75c,75dが必ず1ずつ含まれることとなる。
【0098】
但し、各偏光子75の実際の透過軸角度(絶対角度)は、製造誤差により、厳密には上記設定角度α=「0°」,β=「45°」,γ=「90°」,δ=「135°」とはならず、微小な誤差を含んでいる。
【0099】
例えば
図6に示す例のように、透過軸の設定角度が同じ「0°」である第6画素位置の第1偏光子75aの透過軸絶対角度α
6(0°±誤差a
6)、第8画素位置の第1偏光子75aの透過軸絶対角度α
8(0°±誤差a
8)、第14画素位置の第1偏光子75aの透過軸絶対角度α
14(0°±誤差a
14)、第16画素位置の第1偏光子75aの透過軸絶対角度α
16(0°±誤差a
16)は、厳密には、それぞれ値が異なることとなる。
【0100】
このため、本実施形態においては、三次元計測を行う前段階において事前に、これらの誤差を把握するキャリブレーションを行っている。かかるキャリブレーションの詳細については、後述する。
【0101】
マイクロレンズアレイ73は、複数のマイクロレンズ76が行列状に二次元配列されたものである。マイクロレンズ76は、画素毎の集光効率を向上させるためのものであり、偏光子アレイ72の各偏光子75と1対1で対応するように設けられている。
【0102】
これにより、マイクロレンズアレイ73の各マイクロレンズ76によって集光された光は、それぞれ対応する偏光子アレイ72の各偏光子75を通過することで、その参照光成分及び物体光成分にそれぞれ所定の位相差が付与されると共に、干渉光となって、それぞれ対応する受光素子アレイ71の各受光素子74に受光されることとなる。
【0103】
第1カメラ33Aによって撮像され取得された輝度画像データは、第1カメラ33A内部においてデジタル信号に変換された上で、デジタル信号の形で制御装置5(画像データ記憶装置54)に入力されるようになっている。
【0104】
第2撮像系4Bは、第1撮像系4Aと同様、1/4波長板31B、撮像手段を構成する第2カメラ33Bなどを備えている。
【0105】
1/4波長板31Bは、第1無偏光ビームスプリッタ13AをY軸方向上向きに透過してきた直線偏光(第2光の参照光成分及び物体光成分)をそれぞれ円偏光に変換するためのものであり、本実施形態における「第3の1/4波長板」を構成する。
【0106】
第2カメラ33Bは、第1カメラ33Aと同様、撮像素子として偏光イメージセンサ70Bを備えた偏光カメラである。偏光イメージセンサ70Bは、第1カメラ33Aに係る上記偏光イメージセンサ70Aと同一構成であるため、その詳細な説明は省略する。
【0107】
第1カメラ33Aと同様、第2カメラ33Bによって撮像され取得された輝度画像データは、第2カメラ33B内部においてデジタル信号に変換された上で、デジタル信号の形で制御装置5(画像データ記憶装置54)に入力されるようになっている。
【0108】
ここで制御装置5の電気的構成について説明する。
図2に示すように、制御装置5は、三次元計測装置1全体の制御を司るマイクロコンピュータ51、キーボードやマウス、あるいは、タッチパネルで構成される「入力手段」としての入力装置52、液晶画面などの表示画面を有する「表示手段」としての表示装置53、カメラ33A,33Bにより撮像され取得された輝度画像データ等を順次記憶するための画像データ記憶装置54、各種演算結果を記憶するための演算結果記憶装置55、各種情報を予め記憶しておく設定データ記憶装置56を備えている。
【0109】
尚、マイクロコンピュータ51は、演算手段としてのCPU51aや、各種プログラムを記憶するROM51b、演算データや入出力データなどの各種データを一時的に記憶するRAM51cなどを備え、上記各種装置52~56と電気的に接続されている。
【0110】
ここで、三次元計測の開始前に行うカメラ33A,33B(偏光イメージセンサ70A,70B)のキャリブレーションについて説明する。本実施形態のキャリブレーションでは、各受光素子74の特性に基づく感度(ゲイン)のばらつきを予め把握する処理や、偏光子75の透過軸の絶対角度(透過軸絶対角度データ)を予め把握する処理などが行われる。
【0111】
まず、各受光素子74の感度のばらつきを把握する処理について説明する。その手順としては、まずハロゲンランプ等の光源を用いて、カメラ33A,33B(偏光イメージセンサ70A,70B)に対し無偏光かつ均一な光を照射し、これを撮像する。次に、この撮像により得られた輝度画像データを基に、各画素の輝度データ(光強度データ)のばらつきを求め、これらを補正し、その内容を設定データ記憶装置56に記憶する。
【0112】
次に、偏光子75の透過軸の絶対角度(透過軸絶対角度データ)を予め把握する処理について
図7,8を参照して説明する。
【0113】
その手順としては、まず回転可能な基準偏光板91を第1カメラ33A(第2カメラ33B)の前に配置し、その回転軸を第1カメラ33A(第2カメラ33B)の光軸Jに合わせると共に、これらに対し無偏光かつ均一な光を照射可能なハロゲンランプ等の光源92を配置する。
【0114】
続いて、光源92から光を照射しつつ基準偏光板91を連続回転させる。この状態で、例えば基準偏光板91が1°回転する毎に、第1カメラ33A(第2カメラ33B)による撮像を行い、取得された輝度画像データを順次記憶していく。
【0115】
これにより、例えば所定の画素位置に配置された第2偏光子75bの透過軸絶対角度βが設定角度通り「45°」で誤差がない場合、該画素位置に係る輝度データは、
図8に示すように、基準偏光板91の回転角度が45°となった場合に計測される値が最大となるようなサインカーブ(
図8の実線のサインカーブ参照)を描くこととなる。
【0116】
一方、所定の画素位置に配置された第2偏光子75bの透過軸絶対角度βが設定角度「45°」に対し少しずれている場合、該画素位置に係る輝度データは、
図8に示すように、基準偏光板91の回転角度が45°とは少しずれた位置(例えば回転角度45°+3°)で計測される値が最大となるようなサインカーブ(
図8の一点鎖線のサインカーブ参照)を描くこととなる。
【0117】
そして、所定の画素位置に係る輝度データが最大となる基準偏光板91の回転角度位置に相当する角度を、該画素位置に係る偏光子75の透過軸の絶対角度(透過軸絶対角度データ)として設定データ記憶装置56に記憶する。つまり、設定データ記憶装置56が本実施形態における角度データ記憶手段を構成する。
【0118】
このようにして、本処理では、偏光子アレイ72における全ての偏光子75それぞれの透過軸絶対角度データを事前に実測して記憶する。
【0119】
例えば
図6に例示した偏光子アレイ72では、第1画素位置の第3偏光子75cの透過軸絶対角度データγ
1(設定角度90°±誤差c
1)、第2画素位置の第2偏光子75bの透過軸絶対角度データβ
2(設定角度45°±誤差b
2)、第3画素位置の第3偏光子75cの透過軸絶対角度データγ
3(設定角度90°±誤差c
3)、第4画素位置の第2偏光子75bの透過軸絶対角度データβ
4(設定角度45°±誤差b
4)、第5画素位置の第4偏光子75dの透過軸絶対角度データδ
5(設定角度135°±誤差d
5)、第6画素位置の第1偏光子75aの透過軸絶対角度データα
6(設定角度0°±誤差a
6)、第7画素位置の第4偏光子75dの透過軸絶対角度データδ
7(設定角度135°±誤差d
7)、第8画素位置の第1偏光子75aの透過軸絶対角度データα
8(設定角度0°±誤差a
8)、第9画素位置の第3偏光子75cの透過軸絶対角度データγ
9(設定角度90°±誤差c
9)、第10画素位置の第2偏光子75bの透過軸絶対角度データβ
10(設定角度45°±誤差b
10)、第11画素位置の第3偏光子75cの透過軸絶対角度データγ
11(設定角度90°±誤差c
11)、第12画素位置の第2偏光子75bの透過軸絶対角度データβ
12(設定角度45°±誤差b
12)、第13画素位置の第4偏光子75dの透過軸絶対角度データδ
13(設定角度135°±誤差d
13)、第14画素位置の第1偏光子75aの透過軸絶対角度データα
14(設定角度0°±誤差a
14)、第15画素位置の第4偏光子75dの透過軸絶対角度データδ
15(設定角度135°±誤差d
15)、第16画素位置の第1偏光子75aの透過軸絶対角度データα
16(設定角度0°±誤差a
16)となっており、各偏光子75の絶対角度が設定角度α=0°,β=45°,γ=90°,δ=135°に対し、それぞれ所定の誤差を含んでいる。
【0120】
次に三次元計測装置1の作用について説明する。尚、後述するように、本実施形態における第1光及び第2光の照射は同時に行われるものであり、第1光の光路と第2光の光路が一部で重なることとなるが、ここでは、より分かりやすくするため、第1光及び第2光の光路ごとに異なる図面を用いて個別に説明する。
【0121】
まず第1光の光路について
図3を参照して説明する。
図3に示すように、波長λ
1の第1光(偏光方向がX軸方向及びY軸方向に対し45°傾斜した直線偏光)が第1発光部11AからZ軸方向左向きに出射される。
【0122】
第1発光部11Aから出射された第1光は、第1光アイソレータ12Aを通過し、第1無偏光ビームスプリッタ13Aに入射する。第1無偏光ビームスプリッタ13Aに入射した第1光の一部はZ軸方向左向きに透過し、残りはY軸方向下向きに反射する。
【0123】
このうち、Y軸方向下向きに反射した第1光(偏光方向がX軸方向及びZ軸方向に対し45°傾斜した直線偏光)は、偏光ビームスプリッタ20の第1面20aに入射する。一方、Z軸方向左向きに透過した第1光は、何らかの光学系等に入射することなく、捨て光となる。
【0124】
偏光ビームスプリッタ20の第1面20aからY軸方向下向きに入射した第1光は、そのP偏光成分がY軸方向下向きに透過して第3面20cから参照光として出射される一方、そのS偏光成分がZ軸方向右向きに反射して第4面20dから物体光として出射される。
【0125】
偏光ビームスプリッタ20の第3面20cから出射した第1光に係る参照光(P偏光)は、1/4波長板21を通過することにより右回りの円偏光に変換された後、参照面23で反射する。ここで、光の進行方向に対する回転方向は維持される。その後、第1光に係る参照光は、再度、1/4波長板21を通過することで、右回りの円偏光からS偏光に変換された上で偏光ビームスプリッタ20の第3面20cに再入射する。
【0126】
一方、偏光ビームスプリッタ20の第4面20dから出射した第1光に係る物体光(S偏光)は、1/4波長板22を通過することにより左回りの円偏光に変換された後、ワークWで反射する。ここで、光の進行方向に対する回転方向は維持される。その後、第1光に係る物体光は、再度、1/4波長板22を通過することで、左回りの円偏光からP偏光に変換された上で偏光ビームスプリッタ20の第4面20dに再入射する。
【0127】
ここで、偏光ビームスプリッタ20の第3面20cから再入射した第1光に係る参照光(S偏光)が接合面20hにてZ軸方向左向きに反射する一方、第4面20dから再入射した第1光に係る物体光(P偏光)は接合面20hをZ軸方向左向きに透過する。そして、第1光に係る参照光及び物体光が合成された状態の合成光が出力光として偏光ビームスプリッタ20の第2面20bから出射される。
【0128】
偏光ビームスプリッタ20の第2面20bから出射された第1光に係る合成光(参照光及び物体光)は、第2無偏光ビームスプリッタ13Bに入射する。第2無偏光ビームスプリッタ13Bに対しZ軸方向左向きに入射した第1光に係る合成光は、その一部がZ軸方向左向きに透過し、残りがY軸方向下向きに反射する。このうち、Z軸方向左向きに透過した合成光(参照光及び物体光)は第1撮像系4Aに入射することとなる。一方、Y軸方向下向きに反射した合成光は、第2光アイソレータ12Bによりその進行を遮断され、捨て光となる。
【0129】
第1撮像系4Aに入射した第1光に係る合成光(参照光及び物体光)は、まず1/4波長板31Aにより、その参照光成分(S偏光成分)が左回りの円偏光に変換され、その物体光成分(P偏光成分)が右回りの円偏光に変換される。ここで、左回りの円偏光と右回りの円偏光は回転方向が異なるので干渉しない。
【0130】
第1光に係る合成光は、続いて第1カメラ33A(偏光イメージセンサ70A)に入射し、偏光子アレイ72を通過することにより、その参照光成分と物体光成分とが各種偏光子75a,75b,75c,75dの透過軸角度に応じた位相で干渉する。そして、かかる第1光に係る干渉光が第1カメラ33A(受光素子アレイ71)により撮像される。
【0131】
具体的に、第1偏光子75aに対応する受光素子74では、該第1偏光子75aにおいて参照光成分及び物体光成分に約「0°」の位相差が付与された第1光に係る干渉光が受光される。
【0132】
同様に、第2偏光子75bに対応する受光素子74では、該第2偏光子75bにおいて参照光成分及び物体光成分に約「90°」の位相差が付与された第1光に係る干渉光が受光される。第3偏光子75cに対応する受光素子74では、該第3偏光子75cにおいて参照光成分及び物体光成分に約「180°」の位相差が付与された第1光に係る干渉光が受光される。第4偏光子75dに対応する受光素子74では、該第4偏光子75dにおいて参照光成分及び物体光成分に約「270°」の位相差が付与された第1光に係る干渉光が受光される。
【0133】
但し、厳密には、各偏光子75を透過した干渉光(参照光成分及び物体光成分)には、該偏光子75に係る上記絶対角度データに対応した位相差が付与される。
【0134】
次に第2光の光路について
図4を参照して説明する。
図4に示すように、波長λ
2の第2光(偏光方向がX軸方向及びZ軸方向に対し45°傾斜した直線偏光)が第2発光部11BからY軸方向上向きに出射される。
【0135】
第2発光部11Bから出射された第2光は、第2光アイソレータ12Bを通過し、第2無偏光ビームスプリッタ13Bに入射する。第2無偏光ビームスプリッタ13Bに入射した第2光の一部はY軸方向上向きに透過し、残りはZ軸方向右向きに反射する。
【0136】
このうち、Z軸方向右向きに反射した第2光(偏光方向がX軸方向及びY軸方向に対し45°傾斜した直線偏光)は、偏光ビームスプリッタ20の第2面20bに入射する。一方、Y軸方向上向きに透過した第2光は、何らかの光学系等に入射することなく、捨て光となる。
【0137】
尚、第2光の光路においては、第2光が入射する「偏光ビームスプリッタ20の第2面20b(Z軸方向左側面)」が上記手段2の「第1面」に相当する。
【0138】
偏光ビームスプリッタ20の第2面20bからZ軸方向右向きに入射した第2光は、そのS偏光成分がY軸方向下向きに反射して第3面20cから参照光として出射される一方、そのP偏光成分がZ軸方向右向きに透過して第4面20dから物体光として出射される。
【0139】
偏光ビームスプリッタ20の第3面20cから出射した第2光に係る参照光(S偏光)は、1/4波長板21を通過することにより左回りの円偏光に変換された後、参照面23で反射する。ここで、光の進行方向に対する回転方向は維持される。その後、第2光に係る参照光は、再度、1/4波長板21を通過することで、左回りの円偏光からP偏光に変換された上で偏光ビームスプリッタ20の第3面20cに再入射する。
【0140】
一方、偏光ビームスプリッタ20の第4面20dから出射した第2光に係る物体光(P偏光)は、1/4波長板22を通過することにより右回りの円偏光に変換された後、ワークWで反射する。ここで、光の進行方向に対する回転方向は維持される。その後、第2光に係る物体光は、再度、1/4波長板22を通過することで、右回りの円偏光からS偏光に変換された上で偏光ビームスプリッタ20の第4面20dに再入射する。
【0141】
ここで、偏光ビームスプリッタ20の第3面20cから再入射した第2光に係る参照光(P偏光)は接合面20hをY軸方向上向きに透過する一方、第4面20dから再入射した第2光に係る物体光(S偏光)は接合面20hにてY軸方向上向きに反射する。そして、第2光に係る参照光及び物体光が合成された状態の合成光が出力光として偏光ビームスプリッタ20の第1面20aから出射される。
【0142】
尚、第2光の光路においては、第2光に係る参照光及び物体光の合成光が出射する「偏光ビームスプリッタ20の第1面20a(Y軸方向上側面)」が上記手段2の「第2面」に相当する。
【0143】
偏光ビームスプリッタ20の第1面20aから出射された第2光に係る合成光(参照光及び物体光)は、第1無偏光ビームスプリッタ13Aに入射する。第1無偏光ビームスプリッタ13Aに対しY軸方向上向きに入射した第2光に係る合成光は、その一部がY軸方向上向きに透過し、残りがZ軸方向右向きに反射する。このうち、Y軸方向上向きに透過した合成光(参照光及び物体光)は第2撮像系4Bに入射することとなる。一方、Z軸方向右向きに反射した合成光は、第1光アイソレータ12Aによりその進行を遮断され、捨て光となる。
【0144】
第2撮像系4Bに入射した第2光に係る合成光(参照光及び物体光)は、まず1/4波長板31Bにより、その参照光成分(P偏光成分)が右回りの円偏光に変換され、その物体光成分(S偏光成分)が左回りの円偏光に変換される。ここで、左回りの円偏光と右回りの円偏光は回転方向が異なるので干渉しない。
【0145】
第2光に係る合成光は、続いて第2カメラ33B(偏光イメージセンサ70B)に入射し、偏光子アレイ72を通過することにより、その参照光成分と物体光成分とが各種偏光子75a,75b,75c,75dの透過軸角度に応じた位相で干渉する。そして、かかる第2光に係る干渉光が第2カメラ33B(受光素子アレイ71)により撮像される。
【0146】
具体的に、第1偏光子75aに対応する受光素子74では、該第1偏光子75aにおいて参照光成分及び物体光成分に約「0°」の位相差が付与された第2光に係る干渉光が受光される。
【0147】
同様に、第2偏光子75bに対応する受光素子74では、該第2偏光子75bにおいて参照光成分及び物体光成分に約「90°」の位相差が付与された第2光に係る干渉光が受光される。第3偏光子75cに対応する受光素子74では、該第3偏光子75cにおいて参照光成分及び物体光成分に約「180°」の位相差が付与された第2光に係る干渉光が受光される。第4偏光子75dに対応する受光素子74では、該第4偏光子75dにおいて参照光成分及び物体光成分に約「270°」の位相差が付与された第2光に係る干渉光が受光される。
【0148】
但し、厳密には、各偏光子75を透過した干渉光(参照光成分及び物体光成分)には、該偏光子75に係る上記絶対角度データに対応した位相差が付与される。
【0149】
次に、制御装置5によって実行される形状計測処理の手順について詳しく説明する。まずは、設置部24へワークWを設置した後、第1投光系2Aから第1光を照射すると同時に、第2投光系2Bから第2光を照射する。その結果、干渉光学系3の偏光ビームスプリッタ20の第2面20bから第1光に係る合成光(参照光及び物体光)が出射されると同時に、偏光ビームスプリッタ20の第1面20aから第2光に係る合成光(参照光及び物体光)が出射される。
【0150】
そして、偏光ビームスプリッタ20の第2面20bから出射された第1光に係る合成光を第1撮像系4Aにより撮像すると同時に、偏光ビームスプリッタ20の第1面20aから出射された第2光に係る合成光を第2撮像系4Bにより撮像する。
【0151】
そして、各カメラ33A,33Bからそれぞれ取得された輝度画像データが制御装置5へ出力される。制御装置5は、入力した輝度画像データを画像データ記憶装置54に記憶する。
【0152】
このように、それぞれ1回の撮像処理で取得された輝度画像データ(第1光に係る輝度画像データ、及び、第2光に係る輝度画像データ)には、三次元計測を行う上で必要な4通りの輝度データ(位相の異なる4通りの干渉光の強度データ)が含まれている。
【0153】
そして、制御装置5は、画像データ記憶装置54に記憶された第1光に係る輝度画像データ、及び、第2光に係る輝度画像データを基に、位相シフト法によりワークWの表面形状を計測する。つまり、ワークWの表面上の各計測位置における高さ計測を行う。
【0154】
本実施形態では、2行2列で隣接する4つの画素の範囲の中央位置を1つの計測位置として、該4つの画素の輝度データから1つの高さデータ(位相差)を算出する。
【0155】
例えば
図6に示す「第1画素位置」、「第2画素位置」、「第5画素位置」及び「第6画素位置」に係る輝度データから、これら4つの画素の範囲の中央位置を1つの計測位置として、1つの高さデータを算出する。続いて、「第2画素位置」、「第3画素位置」、「第6画素位置」及び「第7画素位置」に係る輝度データから、これら4つの画素の範囲の中央位置を1つの計測位置として、1つの高さデータを算出する。
【0156】
このように、順次、計測位置を縦方向や横方向へ1画素ずつずらしつつ、各計測位置の高さデータを取得していくことにより、ワークWの表面全域について高さ計測することができる。
【0157】
ここで、位相シフト法を用いた高さ計測の方法について説明する。第1光又は第2光に係る輝度画像データの所定の画素位置(座標位置)における輝度は、下記式(T1)で表すことができる。
【0158】
【0159】
ここで、IA:輝度データ(干渉光の強度データ)
A:偏光子の透過軸絶対角度データ
a:物体反射率(0<a≦1)
φ:参照光と物体光の位相差。
【0160】
したがって、所定の計測位置に係る2行2列の4つの画素の輝度データは、それぞれ下記式(T2)、(T3)、(T4)、(T5)で表すことができる。
【0161】
【0162】
ここで、Iα:第1画素の輝度データ
Iβ:第2画素の輝度データ
Iγ:第3画素の輝度データ
Iδ:第4画素の輝度データ
α :第1画素に係る偏光子の透過軸絶対角度データ
β :第2画素に係る偏光子の透過軸絶対角度データ
γ :第3画素に係る偏光子の透過軸絶対角度データ
δ :第4画素に係る偏光子の透過軸絶対角度データ
a :物体反射率(0<a≦1)
φ :参照光と物体光の位相差。
【0163】
続いて、上記式(T2)~(T5)を基に、干渉光(参照光成分及び物体光成分)の位相差φを下記式(T6)により求めることができる。
【0164】
【0165】
その後、この位相差φを用いて、位相高さ変換処理等を行い、ワークWの表面の凹凸形状を3次元的に示す高さデータを算出する。このように求められたワークWの計測結果(高さデータ)は、制御装置5の演算結果記憶装置55に格納される。
【0166】
次に2波長位相シフト法の原理について説明する。波長の異なる2種類の光(波長λ1,λ2)を用いて計測を行った場合には、その合成波長λ0の光で計測を行ったことと同じこととなる。そして、その計測レンジはλ0/2に拡大することとなる。合成波長λ0は、下記式(M1)で表すことができる。
【0167】
λ0=(λ1×λ2)/(λ2-λ1) ・・・(M1)
但し、λ2>λ1とする。
【0168】
ここで、例えばλ1=1500nm、λ2=1503nmとすると、上記式(M1)から、λ0=751.500μmとなり、計測レンジはλ0/2=375.750μmとなる。
【0169】
2波長位相シフト法による計測手順は、公知技術(例えば特許第6271493号公報参照)であるため、その詳細な説明は省略する。上記のように波長の異なる2種類の光を用いることで計測レンジを広げることができる。
【0170】
以上詳述したように、本実施形態では、カメラ33A,33Bの撮像素子として、透過軸の設定角度が45°ずつ異なる4種類の偏光子75a,75b,75c,75dが所定の配列で各受光素子74に対応して1つずつ配置された偏光イメージセンサ70A,70Bを用いることにより、各カメラ33A,33Bによる1回の撮像で、ワークWの所定の計測位置に係る位相シフト法による高さ計測に必要な複数通りの輝度データを同時に取得することができる。結果として、構成の簡素化やデータ取得時間の短縮等を図ることができる。
【0171】
また、本実施形態では、位相シフト法による参照光及び物体光の位相差の算出に用いられる偏光子75の透過軸の角度データとして、透過軸の設定角度ではなく、事前に実測して得た実測値である透過軸絶対角度データを使用しているため、より正確な位相差を求めることができる。結果として、さらなる計測精度の向上等を図ることができる。
【0172】
さらに、本実施形態によれば、全ての計測位置に共通する基準を用いる必要もなく、位相シフトに関する複数の画素間の相対誤差を調整する必要もない。また、同一画素に対し複数の補正値を用意して、計測位置が異なる毎に補正値を変更する必要もない。
【0173】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、撮像処理により取得した輝度画像データを基に、所定の計測位置に係る干渉光の位相差φを算出する手順が第1実施形態と異なる。従って、本実施形態では、かかる特徴部分について詳しく説明し、その他、第1実施形態と同一構成部分については、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0174】
本実施形態では、撮像処理が終了し、各カメラ33A,33Bによって輝度画像データ(第1光に係る輝度画像データ、及び、第2光に係る輝度画像データ)が取得されると、まず
図9に示すように、これらをそれぞれ元画像データG0として、ここから4通りの中間画像データG1~G4をそれぞれ作成する。
【0175】
具体的には、元画像データG0から第1偏光子75aに対応する画素の輝度データを抜き出した第1中間画像データG1、元画像データG0から第2偏光子75bに対応する画素の輝度データを抜き出した第2中間画像データG2、元画像データG0から第3偏光子75cに対応する画素の輝度データを抜き出した第3中間画像データG3、及び、元画像データG0から第4偏光子75dに対応する画素の輝度データを抜き出した第4中間画像データG4をそれぞれ作成する。
【0176】
続いて、各中間画像データG1~G4におけるデータ欠落部分(
図9において散点模様が付されたデータ空欄部分)の輝度データを補間して、補間画像データG1´~G4´を作成する。かかる補間処理が本実施形態における輝度データ補間処理に相当する。以下、
図6,
図9等を参照して、輝度データ補間処理について具体的に説明する。
【0177】
尚、
図6に示すように、例えば偏光子アレイ72の「第6画素位置(
図6,9にて破線で囲まれた画素位置)」については、第1偏光子75aが配置されていると共に、計測前のキャリブレーションにより、該第1偏光子75aの透過軸絶対角度データα
6が把握されている。
【0178】
また、
図9に示すように、例えば元画像データG0の「第6画素位置」については、第1偏光子75aを透過した干渉光の輝度データIα
6が取得されている。そのため、第1中間画像データG1の「第6画素位置」においては、輝度データが欠落していない。一方、他の中間画像データG2~G4の「第6画素位置」においては、輝度データが欠落している。
【0179】
そして、輝度データ補間処理では、「第6画素位置」のみならず、このように輝度データが欠落している中間画像データG1~G4のすべての画素位置(
図9において散点模様が付されたデータ空欄部分)について、該データ欠落部分の周囲に隣接して存在する既知の輝度データを基に線形補間により補間データを算出し、補間画像データG1´~G4´を作成する。
【0180】
例えば第2補間画像データG2´における「第6画素位置」の輝度データIβ6は、元画像データG0(第2中間画像データG2)において既知の「第2画素位置」の輝度データIβ2と「第10画素位置」の輝度データIβ10の2つの輝度データの平均値とする。
【0181】
第3補間画像データG3´における「第6画素位置」の輝度データIγ6は、元画像データG0(中間画像データG3)において既知の「第1画素位置」の輝度データIγ1、「第3画素位置」の輝度データIγ3、「第9画素位置」の輝度データIγ9及び「第11画素位置」の輝度データIγ11の4つの輝度データの平均値とする。
【0182】
第4補間画像データG4´における「第6画素位置」の輝度データIδ6は、元画像データG0(中間画像データG4)において既知の「第5画素位置」の輝度データIδ5と「第7画素位置」の輝度データIδ7の2つの輝度データの平均値とする。
【0183】
次に、上述した輝度データ補間処理と同様の方法(
図9で示した手順参照)で、上記補間画像データG1´~G4´の各画素位置に対応する透過軸絶対角度データを補間する角度データ補間処理を行う。
【0184】
角度データ補間処理では、まず事前に実測して設定データ記憶装置56に記憶されている各カメラ33A,33B(偏光イメージセンサ70A,70B)の全画素に係る偏光子75の透過軸絶対角度データの配列を元角度データアレイF0として、ここから4通りの中間角度データアレイF1~F4をそれぞれ作成する。
【0185】
具体的には、元角度データアレイF0から第1偏光子75aの透過軸絶対角度データを抜き出した第1中間角度データアレイF1、元角度データアレイF0から第2偏光子75bの透過軸絶対角度データを抜き出した第2中間角度データアレイF2、元角度データアレイF0から第3偏光子75cの透過軸絶対角度データを抜き出した第3中間角度データアレイF3、及び、元角度データアレイF0から第4偏光子75dの透過軸絶対角度データを抜き出した第4中間角度データアレイF4をそれぞれ作成する。
【0186】
続いて、各中間角度データアレイF1~F4におけるデータ欠落部分の透過軸絶対角度データを補間して、補間角度データアレイF1´~F4´を作成する。以下、かかる角度データ補間処理について具体的に説明する。
【0187】
尚、
図6に示すように、例えば偏光子アレイ72の「第6画素位置」に配置された第1偏光子75aについては、計測前のキャリブレーションにより、透過軸絶対角度データα
6が把握されている。
【0188】
そのため、第1中間角度データアレイF1の「第6画素位置」においては、透過軸絶対角度データが欠落していない。一方、実際の偏光子アレイ72の「第6画素位置」には、第2偏光子75b、第3偏光子75c及び第4偏光子75dが存在しないため、他の中間角度データアレイF2~F4の「第6画素位置」においては、透過軸絶対角度データが欠落している。
【0189】
そして、角度データ補間処理では、「第6画素位置」のみならず、このように透過軸絶対角度データが欠落している中間角度データアレイF1~F4のすべての画素位置について、該データ欠落部分の周囲に隣接して存在する既知の透過軸絶対角度データを基に線形補間により補間データを算出し、補間角度データアレイF1´~F4´を作成する。
【0190】
例えば第2補間角度データアレイF2´における「第6画素位置」の透過軸絶対角度データβ6は、元角度データアレイF0(第2中間角度データアレイF2)において既知の「第2画素位置」の透過軸絶対角度データβ2と「第10画素位置」の透過軸絶対角度データβ10の2つの透過軸絶対角度データの平均値とする。
【0191】
第3補間角度データアレイF3´における「第6画素位置」の透過軸絶対角度データγ6は、元角度データアレイF0(第3中間角度データアレイF3)において既知の「第1画素位置」の透過軸絶対角度データγ1、「第3画素位置」の透過軸絶対角度データγ3、「第9画素位置」の透過軸絶対角度データγ9及び「第11画素位置」の透過軸絶対角度データγ11の4つの透過軸絶対角度データの平均値とする。
【0192】
第4補間角度データアレイF4´における「第6画素位置」の透過軸絶対角度データδ6は、元角度データアレイF0(第4中間角度データアレイF4)において既知の「第5画素位置」の透過軸絶対角度データδ5と「第7画素位置」の透過軸絶対角度データδ7の2つの透過軸絶対角度データの平均値とする。
【0193】
次に、上記のように作成された4つの補間画像データG1´~G4´の各画素位置の輝度データ、及び、これに対応する上記4つの補間角度データアレイF1´~F4´の各画素位置に係る透過軸絶対角度データを用いて、撮像処理により取得した輝度画像データの各画素に対応する計測位置の干渉光(参照光成分及び物体光成分)の位相差φを上記式(T6)により求める。
【0194】
例えば「第6画素位置」については、既知の輝度データIα6及び透過軸絶対角度データα6、並びに、上記各種データ補間処理により求めた輝度データIβ6, Iγ6, Iδ6及び透過軸絶対角度データβ6,γ6,δ6を上記式(T6)へ代入することにより位相差φを算出することができる。
【0195】
その後、この位相差φを用いて、位相高さ変換処理等を行い、ワークWの表面の凹凸形状を3次元的に示す高さデータを算出する。
【0196】
以上詳述したように、本実施形態では、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0197】
また、本実施形態では、輝度画像データの1つの画素に対応する所定位置を計測位置とするにあたり、データの欠落部分が生じるといった不具合の発生を抑制することができる。さらに、輝度データ及び透過軸絶対角度データの両者の補間を行うことにより、計測精度の向上を図ることができる。
【0198】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0199】
(a)上記各実施形態では、ワークWの具体例について特に言及していないが、被計測物としては、例えばプリント基板に印刷されたクリーム半田や、ウエハ基板に形成された半田バンプなどが挙げられる。
【0200】
また、上記各実施形態においてワークWを設置する設置部24を、光軸と直交する方向へ変位可能に構成し、ワークWの表面を複数の計測エリアに分割し、各計測エリアを順次移動しつつ各エリアの形状計測を行っていき、複数回に分けてワークW全体の形状計測を行う構成としてもよい。
【0201】
(b)干渉光学系(所定の光学系)の構成は上記各実施形態に限定されるものではない。例えば上記各実施形態では、干渉光学系として、マイケルソン干渉計の光学構成を採用しているが、これに限らず、例えばマッハ・ツェンダー干渉計やフィゾー干渉計の光学構成など、入射光を参照光と物体光に分割してワークWの計測を行う構成であれば、他の光学構成を採用してもよい。
【0202】
(c)上記各実施形態では、波長の異なる2種類の光を利用してワークWの計測を行う構成となっているが、これに限らず、1種類の光のみを利用してワークWの計測を行う構成としてもよい。例えば第2投光系2B及び第2撮像系4Bを省略した構成としてもよい。
【0203】
また、第2投光系2B及び第2撮像系4Bを省略した構成において、波長の異なる2種類の光を利用する構成としてもよい。例えば第1波長光と第2波長光を合成した状態で干渉光学系へ入射させ、ここから出射される干渉光を所定の光学分離手段(ダイクロイックミラー等)により波長分離し、第1波長光に係る干渉光と、第2波長光に係る干渉光とを得て、各波長光に係る干渉光を個別に撮像した輝度画像データを基にワークWの計測を行う構成としてもよい。
【0204】
(d)照射手段に係る構成は上記投光系2A,2Bの構成に限定されるものではない。例えば上記各実施形態に係る発光部11A,11Bは、レーザ光源を採用し、レーザ光を出射する構成となっているが、これに限らず、他の構成を採用してもよい。少なくとも干渉を生じさせることができるコヒーレンスの高い光(コヒーレント光)を出射可能な構成となっていればよい。
【0205】
例えばLED光源などのインコヒーレント光源と、特定の波長のみを透過させるバンドパスフィルタやスペイシャルフィルタなどを組み合わせてコヒーレンスを高め、コヒーレント光を出射可能な構成としてもよい。
【0206】
(e)撮像手段及び撮像素子に係る構成は、上記各実施形態に限定されるものではない。
【0207】
(e-1)例えば上記各実施形態では、受光素子アレイ71の一例としてCCDイメージセンサを挙げているが、受光素子アレイ71は、これに限定されるものではなく、例えばCMOSイメージセンサなどの半導体素子構造を有するものであってもよい。
【0208】
(e-2)上記各実施形態に係る偏光イメージセンサ70A,70Bは、受光素子アレイ71と、偏光子アレイ72と、マイクロレンズアレイ73とを備えた構成となっているが、これに限らず、例えばマイクロレンズアレイ73を省略した構成としてもよい。
【0209】
(e-3)偏光子アレイ72における偏光子75の配列は、上記各実施形態に限定されるものではない。
【0210】
例えば上記各実施形態では、透過軸の設定角度α,β,γ,δが45°ずつ異なる4種類の偏光子75a,75b,75c,75dが所定順序で配置された構成となっているが、これとは異なる順序で配置された構成としてもよい。
【0211】
また、透過軸角度が異なる3種類の偏光子が所定順序で配置された構成としてもよい。例えば透過軸の設定角度α,β,γが60°又は45°ずつ異なる3種類の偏光子が所定順序で配置された構成としてもよい。
【0212】
(e-4)上記各実施形態では、偏光子アレイ72の各偏光子75の具体例について特に言及していないが、各偏光子75は、偏光子としての機能を有するものであれば、特に構造については限定されない。例えば自己クローニング技術により形成されたフォトニック結晶を用いた偏光子や、細いワイヤを周期的に配列することにより形成されたワイヤグリッド型の偏光子などが採用してもよい。
【0213】
(f)上記各実施形態では、位相シフト法によりワークWの表面上の各計測位置における高さ計測を行うにあたり、該計測位置に係る4つの輝度データ及びこれに対応する4つの透過軸絶対角度データを用いて、該計測位置に係る干渉光(参照光成分及び物体光成分)の位相差φを算出する構成となっている。
【0214】
これに限らず、所定の計測位置に係る3つの輝度データ及びこれに対応する3つの透過軸絶対角度データを用いて、該計測位置に係る位相差φを算出する構成としてもよい。
【0215】
例えば上記第1実施形態のように、撮像処理により取得した輝度画像データにおいて、2行2列の4つの画素の範囲の中央位置を計測位置として高さ計測を行う構成において、このうちの3つの画素の輝度データ及び該画素に対応する3つの透過軸絶対角度データを用いて位相差φを算出する構成としてもよい。
【0216】
ここで、第1偏光子75a(透過軸の設定角度α)に対応する画素、第2偏光子75b(透過軸の設定角度β)に対応する画素、及び、第3偏光子75c(透過軸の設定角度γ)に対応する画素に係る輝度データ及び透過軸絶対角度データを用いて、位相差φを算出する場合には、上記式(T1)より、所定の計測位置に係る3つの画素の輝度データは、それぞれ下記式(U1)、(U2)、(U3)で表すことができる。
【0217】
【0218】
ここで、Iα:第1画素の輝度データ
Iβ:第2画素の輝度データ
Iγ:第3画素の輝度データ
α :第1画素に係る偏光子の透過軸絶対角度データ
β :第2画素に係る偏光子の透過軸絶対角度データ
γ :第3画素に係る偏光子の透過軸絶対角度データ
a :物体反射率(0<a≦1)
φ :参照光と物体光の位相差。
【0219】
そして、上記式(U1)~(U3)を基に、干渉光(参照光成分及び物体光成分)の位相差φは下記式(U4)により求めることができる。
【0220】
【0221】
勿論、所定の計測位置の計測に用いる3つの画素に係る輝度データ及び透過軸絶対角度データは、上述したものに限定されるものではない。
【0222】
例えば2行2列で隣接する4つの画素の範囲の中央位置を計測位置として高さ計測を行う場合において、例えば第2偏光子75b(透過軸の設定角度β)の画素に係る各種データ、第3偏光子75c(透過軸の設定角度γ)の画素に係る各種データ、第4偏光子75d(透過軸の設定角度δ)の画素に係る各種データを用いて位相差φを算出する構成としてもよい。
【0223】
同様に、第3偏光子75c(透過軸の設定角度γ)の画素に係る各種データ、第4偏光子75d(透過軸の設定角度δ)の画素に係る各種データ、第1偏光子75a(透過軸の設定角度α)の画素に係る各種データを用いて位相差φを算出する構成としてもよい。
【0224】
また、第4偏光子75d(透過軸の設定角度δ)の画素に係る各種データ、第1偏光子75a(透過軸の設定角度α)の画素に係る各種データ、第2偏光子75b(透過軸の設定角度β)の画素に係る各種データを用いて位相差φを算出する構成としてもよい。
【0225】
このような場合においても、上記式(U1)~(U4)において、代入する各種データを置き換えることにより、位相差φを算出することができる。
【0226】
尚、上記式(U4)は、上記第1実施形態に限らず、上記第2実施形態において、各種データ補間処理により求めた所定の画素位置(計測位置)に係る4つの輝度データ及び透過軸絶対角度データのうちの3つの輝度データ及び透過軸絶対角度データを用いて、該画素位置に係る位相差φを算出する場合においても用いることができる。
【0227】
勿論、透過軸角度が異なる3種類の偏光子しか設けられていない偏光イメージセンサを用いて三次元計測を行う構成においても、上記式(U4)等を用いることはできる。
【0228】
(g)上記第2実施形態における各種データの補間処理の方法は、上記線形補間に限定されるものではなく、例えばBicubic法など他の補間方法を採用してもよい。また、線形補間を行う際に、平均値から最も離れたデータを排除する構成としてもよい。
【0229】
(h)上記各実施形態では、偏光子75の透過軸の絶対角度を実測した透過軸絶対角度データをそのまま(例えば絶対角度「46°」など)記憶する構成となっているが、これに限らず、偏光子75の透過軸の設定角度に対するズレ量(例えば設定角度「45°」+誤差「1°」など)として記憶してもよい。
【0230】
(i)上記第1実施形態では、2行2列の4つの画素に係る輝度データ及び透過軸絶対角度データを基に、所定の計測位置に係る位相差φを算出する構成となっているが、これに限らず、1列に並んだ3つ又は4つの画素に係る輝度データ及び透過軸絶対角度データを基に、所定の計測位置に係る位相差φを算出する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0231】
1…三次元計測装置、2A…第1投光系、2B…第2投光系、3…干渉光学系、4A…第1撮像系、4B…第2撮像系、5…制御装置、11A…第1発光部、11B…第2発光部、20…偏光ビームスプリッタ、20a…第1面、20b…第2面、20c…第3面、20d…第4面、21,22…1/4波長板、23…参照面、24…設置部、31A…1/4波長板、31B…1/4波長板、33A…第1カメラ、33B…第2カメラ、70A…偏光イメージセンサ、70B…偏光イメージセンサ、71…受光素子アレイ、72…偏光子アレイ、73…マイクロレンズアレイ、74…受光素子、75(75a,75b,75c,75d)…偏光子(第1偏光子、第2偏光子、第3偏光子、第4偏光子)、W…ワーク。