(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】適合性コーティングを含む研磨物品及びそれらからのポリッシングシステム
(51)【国際特許分類】
B24D 3/00 20060101AFI20230622BHJP
B24B 53/017 20120101ALI20230622BHJP
B24B 37/12 20120101ALI20230622BHJP
B24B 37/24 20120101ALI20230622BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
B24D3/00 320A
B24B53/017 A
B24B37/12 D
B24B37/24 C
H01L21/304 622M
(21)【出願番号】P 2020500829
(86)(22)【出願日】2018-07-05
(86)【国際出願番号】 IB2018054977
(87)【国際公開番号】W WO2019012388
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-07-05
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チ-ファン
(72)【発明者】
【氏名】リドル,ジャスティン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ラライア,ヴィンセント ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,カレブ ティー.
(72)【発明者】
【氏名】シェ,ウェン-シャン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド,モーゼズ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ナイヨン
(72)【発明者】
【氏名】マ,ジュン
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-503670(JP,A)
【文献】特表2015-530265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00
B24B 53/017
B24B 37/12
B24B 37/24
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨物品であって、
研削面及び反対側の第2の面を有するセラミック体であって、前記セラミック体の前記研削面が、それぞれが基部及び前記基部の反対側の遠位端を有する複数の加工特徴部を含み、かつ前記セラミック体が、少なくとも7.5のモース硬度を有する、セラミック体と、
前記複数の加工特徴部に隣接し、かつそれに適合した適合性金属酸化物コーティングであって、第1の面を有する、適合性金属酸化物コーティングと、
前記適合性金属酸化物コーティングの第1の面に接触している適合性極性有機金属コーティングであって、
少なくとも1つの極性官能基を有する
オルガノシランと、前記適合性金属酸化物コーティングに含まれる金属酸化物との反応生成物を含む、適合性極性有機金属コーティングと
を備える、研磨物品。
【請求項2】
前記少なくとも1つの極性官能基が、ヒドロキシル、酸、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ケトン、カチオン性及びアニオン性官能基のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項3】
前記少なくとも1つの極性官能基が、カチオン性官能基及びアニオン性官能基のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項4】
前記少なくとも1つの極性官能基が、少なくとも1つのカチオン性官能基及び1つのアニオン性官能基を含む、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項5】
前記オルガノシランが、オルガノクロロシラン、オルガノシラノール及びアルコキシシランのうちの少なくとも1種を含む、請求項
1に記載の研磨物品。
【請求項6】
オルガノシランが、アルコキシシランを含む、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項7】
オルガノシランが、n-トリメトキシシリルプロピル-n,n,n-トリメチルアンモニウムクロリド、n-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミントリアセテート三ナトリウム塩、カルボキシエチルシラントリオール二ナトリウム塩、3-(トリヒドロキシシリル)-1-プロパンスルホン酸及びn-(3-トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミドのうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項8】
前記セラミック体が、炭化物セラミック体であり、かつ99重量%の炭化物セラミックを含む、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項9】
前記炭化物セラミック体が、99重量%の炭化ケイ素セラミックを含む、請求項
8に記載の研磨物品。
【請求項10】
前記セラミック体が、モノリシックセラミック体である、請求項
8に記載の研磨物品。
【請求項11】
材料を含むポリッシングパッドと、
研削面を有するパッドコンディショナーと
を備えるポリッシングシステムであって、
前記パッドコンディショナーは、請求項1に記載の少なくとも1つの研磨物品を含み、前記パッドコンディショナーの前記研削面は、前記少なくとも1つの研磨物品の前記適合性極性有機金属コーティングを含む、ポリッシングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、適合性コーティングを有する研磨物品、例えば適合性コーティングを有するパッドコンディショナー、及びそれらからのポリッシングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
コーティングを有する研磨物品は、例えば、米国特許第5,921,856号、同第6,368,198号及び同第8,905,823号、並びに米国特許出願公開第2011/0053479号及び同第2017/0008143号に記載されている。
【発明の概要】
【0003】
研磨物品は、典型的には、基材自体から、研削された基材表面の一部を除去するために、様々な基材を研削するのに使用される。基材表面から除去された材料は、典型的には、切屑と呼ばれる。研磨物品にとっての1つの問題は、切屑が、研磨物品の研削面の上に蓄積して研磨物品の研削能力を低下させ得ることである。研磨物品から切屑を除去することは、多くの場合、困難であり、その理由は、切屑が研磨物品の研削面に容易に付着し得るためである。
【0004】
化学機械的平坦化(chemical mechanical planarization、CMP)用途において、ポリッシングシステムは、ポリッシングパッド、多くの場合ポリマー系材料、例えばポリウレタン;パッドを研削するように設計された研磨物品、例えばパッドコンディショナー;ポリッシングされている基材、例えば半導体ウェハ;及び研削液、例えばポリッシングされている基材をポリッシングする/研削するように設計された研磨粒子を含有するポリッシングスラリーを含む。ポリッシングスラリー及びポリッシングパッドを用いてウェハをポリッシングする間、ポリッシングパッドがスラリーからのスラリー粒子により光沢が出るようになり、これが、一貫した方法でウェハをポリッシングするポリッシングパッドの能力を低下させてしまうことがある。ダイヤモンド粒子研削層、セラミック研削層、又はダイヤモンドコーティングされたセラミック研削層を含有し得るパッドコンディショナーは、多くの場合、光沢を除去し及び/又は新しいポリッシングパッド面を露出させ、それによってポリッシング時間の長期間にわたってパッドの一貫した研磨性能を維持するために、ポリッシングパッドを研削するのに使用される。しかしながら、使用中、パッドコンディショナーは、切屑の蓄積を生じやすく、例えば、ポリッシングパッド及び/又はスラリーからの研磨粒子から研削されたポリッシングパッド材料が、パッドコンディショナーの研削面に付着し得る。この現象は、パッドコンディショナーの、ポリッシングパッドから光沢を除去し及び/又は新しいポリッシングパッド面を露出させる能力を低下させ、最終的にポリッシングパッド自体の、低下した研磨性能へと至らせる。この状況を改善するために、切屑の蓄積を低減させる及び/又は切屑が洗浄されやすい研削面を有するパッドコンディショナーが必要とされる。
【0005】
本開示は、固有の親水性表面を有する研磨物品に関する。親水性表面は、研磨物品の表面の濡れ性を改善し、研磨物品の親水性表面に起因する防汚性能の向上及び/又は洗浄性能の向上へと至らせることができる。これは、従来技術、例えば、パッドコンディショナー表面などの切断工具表面の汚染を防止するために疎水性切断表面が必要であると示唆している米国特許出願公開第2011/0053479(Kim et al.)とは対照的である。本開示はまた、本開示の研磨物品を組み込むポリッシングシステムも提供する。
【0006】
一態様において、本開示は、研磨物品であって、
研削面及び反対側の第2の面を有するセラミック体であって、セラミック体の研削面が、それぞれが基部及び基部の反対側の遠位端を有する複数の加工特徴部(engineered features)を含み、かつセラミック体が、少なくとも7.5のモース硬度及び/又は少なくとも1300kg/mm2のビッカース硬さを有する、セラミック体と、
複数の加工特徴部に隣接し、かつそれに適合した適合性金属酸化物コーティングであって、第1の面を含む、適合性金属酸化物コーティングと、
適合性金属酸化物コーティングの第1の面に接触している適合性極性有機金属コーティングと
を備える、研磨物品を提供する。いくつかの実施形態では、適合性極性有機金属コーティングは、少なくとも1種の金属と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを有する化合物を含む。任意選択で、適合性極性有機金属コーティングの少なくとも1種の金属は、Si、Ti、Zr及びAlのうちの少なくとも1種であってもよい。セラミック体は、4mm~25mmの厚さを有してもよい。いくつかの実施形態では、研削面の投影表面積は、500mm2~500000mm2である。
【0007】
本開示のなおも別の実施形態では、
材料を含むポリッシングパッドと、
研削面を有するパッドコンディショナーと
を備えるポリッシングシステムであって、本開示の研磨物品のうちのいずれか1種による少なくとも1つの研磨物品を含み、パッドコンディショナーの研削面は、少なくとも1つの研磨物品の適合性極性有機金属コーティングを含む、ポリッシングシステムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本開示の例示的な一実施形態による例示的な研磨物品のうちの少なくとも一部の概略上面図である。
【
図1B】本開示の例示的な一実施形態による
図1Aの例示的な研磨物品の、1B線を通った概略断面図である。
【
図2】本開示の例示的な一実施形態によるセグメント化パッドコンディショナーの概略上面図である。
【
図3】本開示のいくつかの実施形態による、研磨物品を利用するための例示的なポリッシングシステムの概略図である。
【0009】
明細書及び図面中での参照文字の繰り返しの使用が、本開示の同じ又は類似の特徴部又は要素を表すことが意図されている。図面は、縮尺どおりに描かれていない場合がある。本明細書で使用するとき、記号「~」は、数値範囲に適用されるとき、別途明記しない限り、範囲の端点を含む。端点による数の範囲の記述は、その範囲内の全ての数を含み(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を含む)、かつその範囲内の任意の範囲を含む。
【0010】
多くの他の変更形態及び実施形態を当業者であれば考案することができ、それらは本開示の原理の範囲及び趣旨に入ることが理解されるべきである。本明細書で使用される全ての科学用語及び技術用語は、別途明記しない限り、当該技術分野で通常使用される意味を有する。本明細書で与えられる定義は、本明細書で頻繁に用いる特定の用語の理解を助けるためのものであり、本開示の範囲の限定を意図するものではない。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上特に明示的に指示しない限り、複数の指示対象を有する実施形態を包含する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するとき、用語「又は」は、文脈上特に明示的に指示しない限り、一般的に「及び/又は」を含む意味で使用される。
【0011】
本開示全体を通して、「加工特徴部」は、機械加工された形状を有する三次元特徴部(長さ、幅及び高さを有するトポグラフィ的特徴部)を指し、すなわち、形状への、又は成形された形状への切断であって、加工特徴部の成形された形状は、対応する成形型キャビティの逆形状であり、この形状は、加工特徴部が成形型キャビティから取り外された後に保持される。加工特徴部は、例えば、セラミック加工特徴部を形成するためのグリーン体セラミックの焼結に起因して、寸法が縮小し得る。しかしながら、収縮された加工特徴部は、グリーン体セラミックが形成された成形型キャビティの一般的な形状を依然として維持し、それでもなお加工特徴部と見なされる。
【0012】
本開示全体を通して、「高精細(micro-replication)」は、精密に成形されたトポグラフィ的特徴部が、生産工具内、例えば成型工具又はエンボス加工工具内でセラミック粉末前駆体を鋳造又は成形することによって調製される製造技術を指し、その生産工具は、最終的な所望の特徴部の逆形状である複数のミクロンサイズからミリメートルサイズとされたトポグラフィ的特徴部を有する。生産工具からセラミック粉末前駆体を除去する際、一連のトポグラフィ的特徴部が、グリーン体セラミックの表面に存在する。グリーン体セラミック表面のトポグラフィ的特徴部は、元の生産工具の特徴部の逆形状を有する。
【0013】
本開示全体を通して、語句「適合性コーティング」は、複数の加工特徴部を含む研削面に又はトポグラフィを有する表面に、コーティングする及び適合したコーティングを指す。コーティングは、加工特徴部又は表面トポグラフィに適合し、プラナー面を生成するために、一般的に、加工特徴部又は表面のトポグラフィに完全に充填されず、例えば、コーティングは、複数の加工特徴部又はトポグラフィを有する表面を平坦化しない。
【0014】
本開示全体を通して、用語「極性有機金属」は、少なくとも1種の金属(例えば、アルカリ、アルカリ土類、遷移及び半導体金属)と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを有する化合物を意味する。
【0015】
本開示全体を通して、用語「有機金属」は、有機化合物の炭素原子と、遷移金属及び半導体金属を含む金属との間に少なくとも1つの結合を含有する化合物を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、様々な研削用途において有用な研磨物品に関する。本開示の研磨物品は、パッドコンディショナーとして又はセグメント化パッドコンディショナーの要素として特定の有用性を示し、様々なCMP用途で使用することができる。本開示の研磨物品は、研磨物品の本体の研削面に隣接して位置された親水性表面を伴う固有の防汚及び/又は洗浄特性を示す。親水性表面は、研磨物品の本体の研削面に適用された1つ以上の適合性コーティングの結果である。親水性表面は、研磨物品の研削面に隣接して適用された極性有機金属コーティングを伴ってもよい。本開示の研磨物品は、研削面、すなわち基材を研削するように設計された表面を有するセラミック体と、その研削面に隣接する極性有機金属コーティングとを含む。セラミック体は、少なくとも7.5のモース硬度及び/又は少なくとも1300kg/mm2のビッカース硬さを有することができる。極性有機金属コーティングは、研削面上の任意の加工特徴部に又は研削面上の任意のコーティングされた加工特徴部に適合した、適合性コーティングとすることができる。極性有機金属コーティングは、少なくとも1種の金属と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを有する化合物を含んでもよい。少なくとも1種の金属は、Si、Ti、Zr及びAlのうちの少なくとも1種であってもよい。極性有機金属コーティングは、有機金属化合物を含んでもよい。研磨物品は、セラミック体の研削面と極性有機金属コーティングとの間に配置された金属酸化物コーティングを更に含んでもよい。金属酸化物コーティングは、極性有機金属コーティングの、研磨物品のセラミック体への接着を促進し得る。金属酸化物コーティングはまた、親水性であってもよく、研磨物品の最終研削面(コーティング後の研削面)の親水性の性質に寄与し得る。金属酸化物コーティングはまた、例えばプラズマコーティングと比較して、親水性コーティングの耐久性及び貯蔵寿命を増加させることができ、研磨物品が、より長い期間にわたってその防汚特性を維持することを可能にする。金属酸化物は、研削面上の任意の加工特徴部に又は研削面上の任意のコーティングされた加工特徴部に適合した、適合性コーティングであってもよい。研磨物品は、セラミック体の研削面と極性有機金属コーティングとの間に配置された、任意選択のダイヤモンドコーティングを備えてもよい。研磨物品は、研磨物品のセラミック体の研削面と金属酸化物コーティングとの間に配置された、任意選択のダイヤモンドコーティングを含んでもよい。ダイヤモンドコーティングは、研磨物品のセラミック体の研削面の、耐薬品性、耐摩耗性及び/又は強度を向上させることができ、研磨物品の、より長い研削寿命を促進することができる。ダイヤモンドコーティングは、研削面上の加工特徴部(例えば、複数の加工特徴部)に又は研削面上のコーティングされた加工特徴部に適合した、適合性コーティングとすることができる。ダイヤモンドコーティングの表面は、極性有機金属コーティング又は金属酸化物コーティングへの接着を促進させるために酸化されてもよい。ダイヤモンドコーティングの表面が酸化されている場合、その酸化表面は、本明細書では金属酸化物コーティングと見なすことができるが、そうであっても、従来、酸化炭素は金属酸化物コーティングと見なされない。酸化ダイヤモンド表面を含むことを除き、用語「金属酸化物」は、本明細書では、当該技術分野におけるその従来の意味を有する。
【0017】
本開示の研磨物品は、研削面及び反対側の第2の面を有するセラミック体を備え、その研削面は、複数の加工特徴部を含む。加工特徴部は、基部及び基部の反対側の遠位端を有するものとして定義され得る。研磨物品は、少なくとも1つの適合性極性有機金属コーティングを含み、その極性有機金属コーティングは、少なくとも1種の金属と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを有する化合物を含んでもよい。少なくとも1種の金属は、Si、Ti、Zr及びAlのうちの少なくとも1種であってもよい。極性有機金属コーティングは、セラミック体の研削面に隣接している。研磨物品は、セラミック体の研削面と少なくとも1つの適合性極性有機金属コーティングとの間に配置された、金属酸化物コーティング、例えば適合性金属酸化物コーティングを、更に含んでもよい。研磨物品は、任意選択のダイヤモンドコーティング、例えば適合性ダイヤモンドコーティングを更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、ダイヤモンドコーティングは、セラミック体の研削面と少なくとも1つの適合性極性有機金属コーティングとの間に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、ダイヤモンドコーティングは、セラミック体の研削面と金属酸化物コーティングとの間に配置されてもよい。3種全てのコーティングを含む組み合わせもまた使用され得る。いくつかの実施形態では、ダイヤモンドコーティングの表面は、酸化されてもよく、酸素を含んでもよい。
【0018】
適合性極性有機金属コーティングは、少なくとも1種の金属と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを有する化合物を含んでもよい。有機部分の少なくとも1つの極性官能基としては、ヒドロキシル、酸(例えばカルボン酸)、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ケトン、カチオン性及びアニオン性官能基のうちの少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの極性官能基は、カチオン性官能基及びアニオン性官能基のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの極性官能基は、少なくとも1つのカチオン性官能基及び1つのアニオン性官能基、例えば双性イオンを含む。いくつかの実施形態では、適合性極性有機金属コーティングは、少なくとも1種の金属と、少なくとも2つの極性官能基を有する有機部分とを有する化合物を含んでもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの極性官能基は、同じ官能基であってもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの極性官能基は、異なる官能基であってもよい。いくつかの実施形態では、適合性極性有機金属コーティングは、オルガノクロロシラン、オルガノシラノール及びアルコキシシランのうちの少なくとも1種が挙げられるがこれらに限定されないオルガノシランであってもよく、すなわち、少なくとも1種の金属と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを有する化合物は、オルガノクロロシラン、オルガノシラノール及びアルコキシシランのうちの少なくとも1種が挙げられるがこれらに限定されないオルガノシランであってもよい。有用なオルガノシランとしては、n-トリメトキシシリルプロピル-n,n,n-トリメチルアンモニウムクロリド、n-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミントリアセテート三ナトリウム塩、カルボキシエチルシラントリオール二ナトリウム塩、3-(トリヒドロキシシリル)-1-プロパンスルホン酸及びn-(3-トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミドのうちの少なくとも1種が挙げられるが、これらに限定されない。適合性極性有機金属コーティングは、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムのうちの少なくとも1種を更に含んでもよい。
【0019】
特に有用な適合性極性有機金属コーティングは、双性イオン性シランを含んでもよい。双性イオン性シランは、http://goldbook.iupac.org/Z06752.html.に記載のように、分子内に対向する標識の電荷を有する中性化合物である。このような化合物は、すぐ洗浄できる性能を、コーティングに提供する。
【0020】
好適な双性イオン性シランとしては、双性イオン性スルホン酸官能性シラン、双性イオン性カルボン酸官能性シラン、双性イオン性リン酸官能性シラン、双性イオン性ホスホン酸官能性シラン、双性イオン性ホスホネート官能性シラン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、双性イオン性シランは、双性イオン性スルホネート官能性シランである。
【0021】
特定の実施形態では、本開示で使用される双性イオン性シラン化合物は、下式(I):
(R1O)p-Si(Q1)q-W-N+(R2)(R3)-(CH2)m-Zt-
(I)
(式中、
各R1は、独立に、水素、メチル基又はエチル基であり、
各Q1は、独立に、ヒドロキシル、1~4個の炭素原子を含有するアルキル基、及び1~4個の炭素原子を含有するアルコキシ基から選択され、
各R2及びR3は、独立に、飽和又は不飽和の、直鎖、分枝鎖又は環状の有機基(好ましくは20以下の炭素数を有する)であり、これらは、任意選択でW基の原子と一緒に結合されて環を形成してもよく、
Wは、有機連結基であり、
Zt-は、-SO3
-、-CO2
-、-OPO3
2-、-PO3
2-、-OP(=O)(R)O-、又はこれらの組み合わせであり、式中、tは、1又は2であり、Rは、脂肪族、芳香族、分枝鎖、直鎖、環状又は複素環式基であり(好ましくは20個以下の炭素を有し、より好ましくはRは、20個以下の炭素を有する脂肪族であり、更により好ましくはRは、メチル、エチル、プロピル、又はブチルである)、
p及びmは、1~10(又は1~4、若しくは1~3)の整数であり、
qは、0又は1であり、
p+q=3である)
を有する。
【0022】
特定の実施形態では、式(I)の有機連結基Wは、飽和又は不飽和の、直鎖、分枝鎖又は環状の有機基から選択され得る。連結基Wは、好ましくは、カルボニル基、ウレタン基、尿素基と、酸素、窒素、及び硫黄などのヘテロ原子と、これらの組み合わせを含み得るアルキレン基である。好適な連結基Wの例としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルキル置換シクロアルキレン基、ヒドロキシ置換アルキレン基、ヒドロキシ置換モノ-オキサアルキレン基、モノ-オキサ骨格置換を有する二価炭化水素基、モノ-チアの主鎖置換を有する二価炭化水素基、モノオキソ-チアの主鎖置換を有する二価炭化水素基、ジオキソ-チアの主鎖置換を有する二価炭化水素基、アリーレン基、アリールアルキレン基、アルキルアリーレン基及び置換アルキルアリーレン基が挙げられる。
【0023】
式(I)の双性イオン性化合物の好適な例は、米国特許第5,936,703号(Miyazaki et al.)及び国際公開WO2007/146680及びWO2009/119690に記載されており、かつ以下の双性イオン性官能基(-W-N
+(R
3)(R
4)-(CH
2)
m-SO
3
-)を含む。
【化1】
【0024】
特定の実施形態では、本開示で使用される双性イオン性スルホネート官能性シラン化合物は、下式(II):
(R1O)p-Si(Q1)q-CH2CH2CH2-N+(CH3)2-(CH2)m-SO3
-
(II)
(式中、
各R1は、独立に、水素、メチル基又はエチル基であり、
各Q1は、独立に、ヒドロキシル、1~4個の炭素原子を含有するアルキル基、及び1~4個の炭素原子を含有するアルコキシ基から選択され、
p及びmは、1~4の整数であり、
qは、0又は1であり、
p+q=3である)
を有する。
【0025】
式(II)の双性イオン性スルホネート官能性化合物の好適な例は、米国特許第5,936,703号(Miyazaki et al.)に記載されており、例えば、
(CH3O)3Si-CH2CH2CH2-N+(CH3)2-CH2CH2CH2-SO3
-、及び
(CH3CH2O)2Si(CH3)-CH2CH2CH2-N+(CH3)2-CH2CH2CH2-SO3
-を含む。
【0026】
標準的な技術を用いて作製され得る好適な双性イオン性スルホネート官能性化合物の他の例としては、以下が挙げられる:
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0027】
本開示での使用に好適な双性イオン性スルホネート官能性シラン化合物の好ましい例は、実験の項に記載されている。特に好ましい双性イオン性スルホネート官能性シランは、以下である:
【化11】
【0028】
双性イオン性カルボン酸官能性シラン化合物の例としては、以下が挙げられる:
【化12】
式中、各Rは、独立に、OH又はアルコキシであり、nは1~10である。
【0029】
双性イオン性リン酸官能性シラン化合物の例としては、以下が挙げられる:
【化13】
(N,N-ジメチル,N-(2-エチルリン酸エチル)-アミノプロピル-トリメチルオキシシラン(DMPAMS))。
【0030】
双性イオン性ホスホネート官能性シラン化合物の例としては、以下が挙げられる:
【化14】
【0031】
いくつかの実施形態において、本開示の適合性極性有機金属コーティングは、双性イオン性シラン化合物を、すぐ使える組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.0001重量パーセント(wt-%)、又は少なくとも0.001wt-%、又は少なくとも0.01wt-%、又は少なくとも0.05wt-%の量で含む。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、双性イオン性シラン化合物を、すぐ使える組成物の総重量に基づいて、最大10wt-%、又は最大5wt-%、又は最大2wt-%の量で含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、本開示の適合性極性有機金属コーティングは、双性イオン性シラン化合物を、濃縮組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.0001重量%(wt-%)、又は少なくとも0.001wt-%、又は少なくとも0.01wt-%、又は少なくとも0.1wt-%、又は少なくとも0.5wt-%の量で含む。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、双性イオン性シラン化合物を、濃縮組成物の総重量に基づいて、最大20wt-%、又は最大15wt-%、又は最大10wt-%の量で含む。
【0033】
適合性金属酸化物コーティングの金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及び半導体金属のうちの少なくとも1種が挙げられる。半導体金属としては、Si、Gaなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、金属酸化物の金属としては、Al、Ti、Cr、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、W、Zn、Zr、Ga及びSiのうちの少なくとも1種が挙げられる。組み合わせを使用してもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、研磨物品は、複数の三次元特徴部、例えば複数の加工特徴部に隣接し、かつそれに適合した、第1の面を含む適合性金属酸化物コーティングと、適合性金属酸化物コーティングの第1の面に接触している適合性極性有機金属コーティングとを含む。適合性極性有機金属コーティングは、少なくとも1種の金属と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを有する化合物を含む。適合性金属酸化物コーティングは、研磨物品のセラミック体の複数の三次元特徴部と接触していてもよい。いくつかの実施形態では、研磨物品の適合性極性有機金属コーティング上の水の接触角は、30°未満、20°未満、10°未満、5°未満、又は更には2°未満である。いくつかの実施形態では、研磨物品の適合性極性有機金属コーティング上の水の接触角は、0~30°、0~20°、0~10°、0~5°、又は更には0~1.5°である。少なくとも1種の金属と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを有する化合物は、オルガノシランであってもよく、適合性極性有機金属コーティングは、オルガノシランと、適合性金属酸化物コーティングの金属酸化物との反応生成物を含んでもよい。いくつかの実施形態では、金属酸化物の金属はSiを含んでもよく、適合性極性有機金属コーティングのオルガノシランは、アルコキシシランを含んでもよく、適合性極性有機金属コーティングの少なくとも1つの極性官能基は、カチオン性官能基及びアニオン性官能基のうちの少なくとも1つを含んでもよい。研磨物品は、研磨物品のセラミック体の研削面と適合性金属酸化物コーティングとの間に配置された、任意選択の適合性ダイヤモンドコーティングを含んでもよい。
【0035】
研磨物品のセラミック体は、少なくとも7.5、少なくとも8、又は更には少なくとも9のモース硬度、及び/又は少なくとも1300kg/mm2、少なくとも1500kg/mm2、少なくとも2000kg/mm2、又は更には少なくとも3000kg/mm2のビッカース硬さを有してもよい。いくつかの実施形態では、セラミック体は、7.5~10、8~10、又は更には9~10のモース硬度、及び/又は1300kg/mm2~10000kg/mm2、1300kg/mm2~4000kg/mm2、1300kg/mm2~3000kg/mm2、1500kg/mm2~10000kg/mm2、1500kg/mm2~4000kg/mm2、又は更には1300kg/mm2~3000kg/mm2のビッカース硬さを有する。一般的に、高いモース硬度(少なくとも約7.5)及び/又はビッカース硬さ(少なくとも約1300kg/mm2)を有する研磨物品は、特定の有用性を有し、その理由は、研削プロセス中に生じる、及び/又は、例えばCMP用途において見出される多くの場合に苛酷な化学環境中に生じる、研削作用に耐えることができるためである。
【0036】
セラミック体は、99重量%の炭化物セラミックを含む炭化物セラミック体であってもよく、任意選択で、炭化物セラミック体は、99重量%の炭化ケイ素セラミックを含んでもよい。セラミック体は、モノリシックセラミック体であってもよい。モノリシックセラミック体は、セラミックから本質的になる本体であり、それは、全体にわたる連続的なセラミック構造、例えば連続的なセラミック形態で構成され、それを有する。セラミック形態は、単相であってもよい。モノリシックセラミックは、一般的に、非常にゆっくりと浸食するように、好ましくは全く浸食しないように、かつモノリシックセラミックから放出され得る研磨粒子を含まないように、設計される。モノリシックセラミックは、研磨剤の分野で使用されることの多い研磨複合体ではない。研磨複合体は、結合剤、例えばポリマー結合剤、及び結合剤内に分散された複数の研磨粒子を含む。研磨複合体は、少なくとも2つの相形態、連続結合剤又はマトリックス相、及び不連続な研磨粒子相を有する。結合剤は、「結合剤マトリックス」又は「マトリックス」と称され得る。モノリシックセラミックとは対照的に、研磨複合体、特に複数の三次元構造、例えば加工特徴部を有するものは、摩耗した研磨粒子が複合体から放出される間に新しい研磨粒子の露出がもたらされる、結合剤の浸食によって機能する。
【0037】
一実施形態では、本開示は、研磨物品であって、
研削面及び反対側の第2の面を有するセラミック体であって、セラミック体の研削面が、それぞれが基部及び基部の反対側の遠位端を有する複数の加工特徴部を含み、かつ少なくとも7.5のモース硬度及び/又は少なくとも1300kg/mm2のビッカース硬さを有する、セラミック体と、
複数の加工特徴部に隣接し、かつそれに適合した適合性金属酸化物コーティングであって、第1の面を含む、適合性金属酸化物コーティングと、
適合性金属酸化物コーティングの第1の面に接触している適合性極性有機金属コーティングであって、少なくとも1種の金属と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを有する化合物を含む適合性極性有機金属コーティングと
を備える研磨物品を提供する。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の金属は、Si、Ti、Zr及びAlのうちの少なくとも1種である。
【0038】
図1Aは、本開示の例示的な一実施形態による例示的な研磨物品の少なくとも一部の概略上面図であり、
図1Bは、本開示の例示的な一実施形態による
図1Aの例示的な研磨物品の、1B線を通った概略断面図である。
図1A及び
図1Bは、研削面10a及び反対側の第2の面10bを有するセラミック体10を備えた研磨物品100の少なくとも一部を示し、セラミック体の研削面10aは、それぞれが基部20b及び基部の反対側の遠位端20aを有する複数の加工特徴部20を備える。
図1Aに示すように、研磨物品100の少なくとも一部は、研磨物品100の外周を画定する大円の面積に等しい投影表面積を有する。研磨物品100は、複数の加工特徴部20に隣接し、かつそれに適合した、適合性金属酸化物コーティング30であって、適合性金属酸化物コーティング30は、第1の面30aと、適合性金属酸化物コーティング30の第1の面30aと接触している適合性極性有機金属コーティング40とを備える、適合性金属酸化物コーティング30を更に含む。適合性極性有機金属コーティング40は、少なくとも1種の金属、例えば、Si、Ti、Zr及びAlのうちの少なくとも1種と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを有する化合物を含んでもよい。研磨物品100は、任意選択で、セラミック体10の研削面10aと適合性金属酸化物コーティング40との間に配置された適合性ダイヤモンドコーティング50を含んでもよい。ダイヤモンドコーティングは、使用される場合、セラミック体10の研削面10aと接触していてもよい。いくつかの実施形態では、金属酸化物コーティング30は、セラミック体10の研削面10aに隣接し、かつそれと接触している。いくつかの実施形態では、金属酸化物コーティング30は、適合性ダイヤモンドコーティング50に隣接し、かつそれと接触している。この例示的な実施形態では、複数の加工特徴部20は四角錐形状を有し、複数の加工特徴部20の遠位端20aに対応する四角錐の先端と、複数の三次元特徴部の基部20bに対応する四角錐の基部とを有する。加工特徴部は、それぞれ、長さL、幅W、及び高さHを有する。個々の加工特徴部が、異なる長さ、幅及び高さを有する場合、長さ、幅、及び高さの平均値を用いて、複数の加工特徴部を特徴付けることができる。加工特徴部の基部が円形の断面積を有する場合、円の半径が、加工特徴部を画定するために使用されてもよい。
【0039】
研磨物品のセラミック体は、研削面を備える。研削面は、複数の加工特徴部を含む。
【0040】
複数の加工特徴部の面密度は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、複数の加工特徴部の面密度は、0.5/cm2~1×107/cm2、0.5/cm2~1×106/cm2、0.5/cm2~1×105/cm2、0.5/cm2~1×104/cm2、0.5/cm2~1×103/cm2、1/cm2~1×107/cm2、1/cm2~1×106/cm2、1/cm2~1×105/cm2、1/cm2~1×104/cm2、1/cm2~1×103/cm2、10/cm2~1×107/cm2、10/cm2~1×106/cm2、10/cm2~1×105/cm2、10/cm2~1×104/cm2、又は更には10/cm2~1×103/cm2であってもよい。いくつかの実施形態では、個々の加工特徴部のうちのそれぞれの寸法、例えば長さ、幅、高さ、直径のうちの少なくとも1つは、1ミクロン~2000ミクロン、1ミクロン~1000ミクロン、1ミクロン~750ミクロン、1ミクロン~500ミクロン、10ミクロン~2000ミクロン、10ミクロン~1000ミクロン、10ミクロン~750ミクロン、10ミクロン~500ミクロン、25ミクロン~2000ミクロン、25ミクロン~1000ミクロン、25ミクロン~750ミクロン、又は更には25ミクロン~500ミクロンであってもよい。
【0041】
セラミック体及びその対応する複数の加工特徴部は、機械加工、微細機械加工、高精細、成形、押出成形、射出成形、セラミックプレスなどのうちの少なくとも1種によって形成することができ、その結果、複数の加工特徴部が製造され、かつこれらは、部品から部品へ再生可能であり、かつ部品内で再生可能であり、設計を複製する能力を反映する。複数の加工特徴は、従来の機械加工、例えば、鋸加工、穴あけ(boring)、穴あけ(drilling)、転向など;レーザー切断;ウォータージェット切断などが挙げられるがこれらに限定されない機械技術によって形成され得る。複数の加工特徴部は、当該技術分野において既知のように、高精細技術によって形成され得る。
【0042】
複数の加工特徴部の形状は、特に限定されず、円筒形;楕円筒形;多角柱、例えば、五角柱、六角柱及び八角柱;角錐形及び切頂角錐形(錐体形状は、例えば3~12の側壁を含み得る);立方体、例えば四角立方体又は矩形立方体;円錐形及び切頂円錐形;環状などが挙げられるが、これらに限定されない。2種以上の異なる形状の組み合わせが使用されてもよい。複数の加工特徴部は、ランダムであってもよく、又はパターン、例えば正方形アレイ、六角形アレイなどであってもよい。加工特徴部の更なる形状及びパターンは、米国特許出願公開第2017/0008143号(Minami,et al.)に見出すことができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
成形又はエンボス加工が複数の加工特徴部を形成するために使用されるとき、成形型又はエンボス加工工具は、その表面上に少なくとも1つの指定された形状の所定の配列又はパターンを有し、セラミック体の加工特徴部の所定の配列又はパターン及び指定された形状(複数可)の逆である。成形型は、金属、セラミック、サーメット、複合材料又はポリマー材料で形成されてもよい。一実施形態では、成形型はポリプロピレンなどのポリマー材料である。別の実施形態では、成形型はニッケルである。金属製の成形型は、彫刻、微細機械加工、又はダイヤモンド旋削若しくは電鋳によるなどの他の機械的手段によって製造することができる。好ましい1つの方法は、電鋳である。成形型は、研磨要素の加工特徴部の所定の配列及び指定された形状を有する、正のマスターを調製することによって形成することができる。次いで、成形型は、正のマスターの逆である表面トポグラフィを有するように作製される。正のマスターは、米国特許第5,152,917号(Pieper,et al.)及び同第6,076,248号(Hoopman,et al.)に開示のダイヤモンド旋削などの直接機械加工技術(direct machining techniques)によって作製されてもよく、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。これらの技術は、米国特許第6,021,559号(Smith)に更に記載されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。例えば、熱可塑性材料を含む成形型は、金属マスター工具を複製することによって作製することができる。熱可塑性シート材料は、任意選択で金属マスターと共に加熱することができ、その結果、熱可塑性材料は、2つの表面を一緒に押圧することにより、金属マスターが提示する表面パターンでエンボス加工される。熱可塑性材料はまた、金属マスター上に押出成形され又は鋳造され、次いでプレスされてもよい。製品を製造するツーリング及び金属マスターを製造する他の好適な方法は、米国特許第5,435,816号(Spurgeon et al.)に記載されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0044】
研磨物品のセラミック体は、連続セラミック相を含んでもよい。セラミック体は、焼結セラミック体であってもよい。セラミック体は、5重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、又は更には0重量%のポリマーを含有してもよい。セラミック体は、5重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、又は更には0重量%の有機材料を含有してもよい。セラミック体は、モノリシックなセラミック体であってもよい。セラミック体のセラミックは、セラミック体が少なくとも7.5のモース硬度及び/又は少なくとも1300kg/mm2のビッカース硬さを有するべきであることを除いて、特に限定されない。セラミックとしては、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、ジルコニア、炭化タングステンなどのうちの少なくとも1種が挙げられるが、これらに限定されない。これらのうち、炭化ケイ素及び窒化ケイ素、特定すると炭化ケイ素が、強度、硬度、耐摩耗性などの観点から有利に使用することができる。いくつかの実施形態では、セラミックは、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、又は更には少なくとも99重量%の炭化物セラミックを含有する、炭化物セラミックである。有用な炭化物セラミックスとしては、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化ジルコニウム、炭化チタン及び炭化タングステンのうちの少なくとも1種が挙げられるが、これらに限定されない。組み合わせを使用してもよい。研磨物品のセラミック体は、炭化物形成剤を使用せずに製造されてもよく、かつ酸化物焼結助剤を実質的に含まなくてもよい。一実施形態では、研磨物品のセラミック体は、約1重量%未満の酸化物焼結助剤を含む。
【0045】
セラミック体の製造は、予め形成されたセラミックの機械加工、又は成形技術、例えば高精細によって行われ得る。特に有用な1つの製造技術は、セラミックダイプレスである。この技術では、典型的には凝集体(これは、セラミック粒子、ポリマー結合剤、及び任意選択で1種以上の他の添加剤、例えば炭素源又は潤滑油を含む)で形成された、セラミック粉末前駆体は、所望の本体サイズ、及び所望の加工特徴部(それらの適切なサイズ、形状及びパターンを含む)の逆キャビティを有する表面を有する成形型中に配置される。成形型内で、セラミック粉末前駆体を高圧下で圧縮したら、粉末を高密度化し、粉末を成形型キャビティ内に押し込む。このプロセスの第1の工程は、型から取り外され得る成形グリーン体セラミックを製造する。次いで、グリーン体セラミックを昇温で焼結してポリマー結合剤を除去し、本体を更に高密度化し、それによってセラミック体、すなわち複数の加工特徴部を有する焼結セラミック体を形成する。一実施形態では、グリーン体セラミック要素は、300℃~900℃の温度範囲で酸素不良雰囲気中、結合剤及び炭素源(存在する場合)の熱分解工程中に加熱され、本体の研削面が複数の加工特徴部を含む、本明細書の研削面を有するセラミック体を形成する。一実施形態では、グリーン体セラミック要素は、1900℃~約2300℃の温度範囲で酸素不良雰囲気中、焼結され、研削面を有するセラミック体を形成し、ここで、セラミック体の研削面は、複数の加工特徴部を含む。セラミック粉末前駆体は、凝集体、例えば噴霧乾燥された凝集体であってもよい。セラミック乾燥プレス技術は、米国特許出願公開第2017/0008143号(Minami,et al.)に記載されており、参照によりその全体が本明細書に既に組み込まれている。セラミック体は、適合性コーティングのうちの1つ以上を適用する前に、従来技術によって洗浄され得る。
【0046】
研磨物品は、少なくとも1つの適合性コーティングを備える。少なくとも1つの適合性コーティングは、少なくとも1種の金属、例えば、Si、Ti、Zr及びAlのうちの少なくとも1種と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを有する化合物を含む、適合性極性有機金属コーティングを備える。研磨物品は、研磨物品のセラミック体の研削面と少なくとも1つの適合性極性有機金属コーティングとの間に配置された、適合性金属酸化物コーティングを更に備えてもよい。金属酸化物コーティングは、セラミック体の研削面に接触していてもよい。少なくとも1つの適合性極性有機金属コーティングは、適合性金属酸化物コーティング、すなわち金属酸化物コーティングの露出面に接触していてもよい。研磨物品は、任意選択の適合性ダイヤモンドコーティングを備えてもよい。ダイヤモンドコーティングは、研磨物品のセラミック体の研削面に接触していてもよい。適合性金属酸化物コーティングは、ダイヤモンドコーティング、すなわちダイヤモンドコーティングの露出面に接触していてもよい。適合性金属酸化物コーティングが存在しない場合、少なくとも1つの適合性極性有機金属コーティングは、適合性ダイヤモンドコーティング、すなわちダイヤモンドコーティングの露出面に接触していてもよい。適合性ダイヤモンドコーティングは、酸素を含有する酸化表面を備えてもよい。適合性極性有機金属コーティングの、適合性金属酸化物コーティング又は適合性ダイヤモンドコーティングとの組み合わせが、使用されてもよい。3種全てのコーティングの組み合わせ、すなわち適合性極性有機金属コーティングと、適合性金属酸化物コーティングと、適合性ダイヤモンドコーティングとの組み合わせが、使用されてもよい。例えば、一実施形態では、セラミック体の研削面は、最初に、適合性金属酸化物コーティング、例えばダイヤモンド様ガラス(diamond like glass、DLG)でコーティングされてもよい。金属酸化物コーティングは、セラミック体の研削面の複数の加工特徴部に隣接し、かつそれと接触している。DLGコーティングは、少なくとも1種の金属と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを含む化合物を含む適合性極性有機金属コーティング、例えば、適合性親水性コーティングでコーティングされ得る第1の露出面を有する。適合性極性有機金属コーティングは、金属酸化物コーティングの第1の面に隣接し、かつそれと接触している。いくつかの実施形態では、金属酸化物コーティングは、ダイヤモンドコーティングであって、その表面が酸化され、酸素を含有する、ダイヤモンドコーティングであってもよい。別の実施形態では、セラミック体の研削面は、最初に適合性ダイヤモンドコーティングでコーティングされてもよい。ダイヤモンドコーティングは、セラミック体の研削面の複数の加工特徴部に隣接し、かつそれと接触している。次いで、適合性金属酸化物コーティング、例えばダイヤモンド様ガラス(DLG)が、適合性ダイヤモンドコーティングの露出面上にコーティングされ得る。適合性金属酸化物コーティングは、適合性ダイヤモンドコーティングに隣接し、かつそれと接触している。次いで、少なくとも1種の金属と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを有する化合物を含む追加の適合性極性有機金属コーティング(例えば、適合性親水性コーティング)が、適合性金属酸化物コーティングの露出面上にコーティングされ得る。適合性極性有機金属コーティングは、適合性金属酸化物コーティングの露出面に接触している。
【0047】
適合性ダイヤモンドコーティングとしては、適合性ナノ結晶ダイヤモンドコーティング、適合性微結晶ダイヤモンドコーティング、及び適合性ダイヤモンド様炭素(diamond-like carbon、DLC)コーティングのうちの少なくとも1種が挙げられる。適合性ダイヤモンドコーティングの厚さは、特に制限されない。いくつかの実施形態では、ダイヤモンドコーティングの厚さは、0.5ミクロン~30ミクロン、1ミクロン~30ミクロン、5ミクロン~30ミクロン、0.5ミクロン~20ミクロン、1ミクロン~20ミクロン、5ミクロン~20ミクロン、0.5ミクロン~15ミクロン、1ミクロン~15ミクロン、又は更には5ミクロン~15ミクロンである。適合性ダイヤモンドコーティングは、例えばダイヤモンド様炭素(DLC)コーティングであってもよい。いくつかの実施形態では、炭素原子は、DLCの総組成に基づいて、40原子%~95原子%、40原子%~98原子、40原子%~99原子%、50原子%~95原子%、50原子%~98原子、50原子%~99原子%、60原子%~95原子%、60原子%~98原子%、又は更には60原子%~99原子%の量で存在する。ダイヤモンドコーティングは、プラズマ強化化学蒸着(plasma enhanced chemical vapor deposition、PECVD)法、ホットワイヤ化学蒸着(hot wire chemical vapor deposition、HWCVD)法、イオンビーム、レーザーアブレーション、RFプラズマ、超音波、アーク放電、陰極アークプラズマ蒸着などの従来技術によって、メタンなどの気体炭素源、又はグラファイトなどの固体炭素源、及び必要に応じて水素を使用して、表面上に、例えばセラミック体の研削面上に堆積され得る。いくつかの実施形態では、高結晶化度を有するダイヤモンドコーティングは、HWCVDによって製造され得る。
【0048】
適合性金属酸化物コーティングは、少なくとも1種の金属酸化物、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン、酸化亜鉛及び酸化ケイ素などを含む。合金を含む金属酸化物の組み合わせが、使用されてもよい。適合性金属酸化物コーティングの金属は、遷移金属及び半導体金属のうちの少なくとも1種を含み得る。金属酸化物の金属としては、Al、Ti、Cr、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、W、Zn及びSiのうちの少なくとも1種が挙げられる。金属の組み合わせを使用してもよい。加えて、適合性金属酸化物コーティングは、酸素を含有する酸化表面を有するダイヤモンドコーティングであってもよい。適合性金属酸化物コーティングは、ダイヤモンド様ガラス(DLG)を含んでもよい。用語「ダイヤモンド様ガラス」(DLG)は、炭素、ケイ素及び酸素を含む、実質的に又は完全に非晶質のガラスを指し、かつ任意選択で、水素、窒素、フッ素、硫黄、チタン及び銅を含む群から選択される1種以上の追加成分を含む。他の要素が、特定の実施形態中に存在してもよい。いくつかの実施形態では、金属酸化物コーティングはフッ素を含まない。いくつかの実施形態では、DLGは、DLG組成のモル基準に基づいて、80%~100%、90%~100%、95%~100%、98%~100%、又は更には99%~100%の、炭素、ケイ素、酸素及び水素を含む。いくつかの実施形態では、DLGは、DLG組成のモル基準に基づいて、80%~100%、90%~100%、95%~100%、98%~100%、又は更には99%~100%の炭素、ケイ素及び酸素を含む。本開示の非晶質ダイヤモンド様ガラスコーティングは、原子のクラスタリングを含有して、それに近距離秩序を与えることができるが、180nm~800nmの波長を有する放射線を不利に散乱させ得るマイクロ結晶化度又はマクロ結晶化度へと至らせる中範囲及び長範囲のレンジの秩序を本質的に含まない。用語「非晶質」は、X線回折ピーク又は控え目なX線回折ピークを有さない実質的にランダムに秩序化された非結晶性材料を意味する。原子クラスタリングが存在するとき、それは、典型的には、化学線の波長と比較して小さい寸法で生じる。有用なダイヤモンド様ガラスコーティング及びその製造方法は、例えば、米国特許第6,696,157号(David et al.)に見出すことができ、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。金属酸化物コーティングは、物理蒸着、化学蒸着、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)、反応性イオンエッチング及び原子層堆積が挙げられるがこれらに限定されない従来技術によって形成され得る。適合性金属酸化物コーティングの厚さは、特に限定されない。いくつかの実施形態では、金属酸化物コーティングの厚さは、0.5ミクロン~30ミクロン、1ミクロン~30ミクロン、5ミクロン~30ミクロン、0.5ミクロン~20ミクロン、1ミクロン~20ミクロン、5ミクロン~20ミクロン、0.5ミクロン~15ミクロン、1ミクロン~15ミクロン、又は更には5ミクロン~15ミクロンである。
【0049】
金属酸化物コーティングは、セラミック体の研削面と、親水性コーティング、すなわち適合性極性有機金属コーティングとの間の接着性を改善する「結合層」として作用し得る。金属酸化物コーティングはまた、セラミック体の適合性ダイヤモンドコーティングと、適合性極性有機金属コーティングとの間の接着性を改善する「結合層」としても作用し得る。金属酸化物コーティングはまた、コーティング研磨物品の露出面の親水性の性質にも寄与し得る。
【0050】
本開示の研磨物品はまた、少なくとも1種の金属、例えばSi、Ti、Zr及びAlのうちの少なくとも1種と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを含む化合物を含む、適合性極性有機金属コーティングも備える。適合性極性有機金属コーティングは、親水性コーティングであってもよい。適合性極性有機金属コーティングは、カップリング剤、及び/又はカップリング剤の反応生成物を含んでもよく、かつ、例えば、金属酸化物コーティングの金属酸化物表面、すなわち、少なくとも1種の金属と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを有する化合物が、カップリング剤及び/又はカップリング剤の反応生成物、例えば金属酸化物コーティングの金属酸化物表面であってもよい。理論に束縛されるものではないが、カップリング剤、例えばアルコキシシランは、水分の存在下で加水分解されてシラノールを形成してもよく、シラノールのヒドロキシル基は、典型的にはヒドロキシル基自体を有する金属酸化物の表面と縮合機構を介して更に反応し得る。縮合反応により、M-O-Si(式中、Mは、金属酸化物表面の金属である)結合、及び水が形成される。当該技術分野において既知のカップリング剤を使用することができ、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ジルコン酸カップリング剤及びアルミン酸カップリング剤のうちの少なくとも1種が挙げられるが、これらに限定されない。カップリング剤の組み合わせを使用してもよい。混合物としては、同じ種類の異なるカップリング剤の混合物、例えば2種以上の異なるシランカップリング剤の混合物、又は2種以上の異なるカップリング剤の種類の混合物、例えばシランカップリング剤とチタネートカップリング剤との混合物が挙げられる。適合性極性有機金属コーティングは、オルガノシランを含んでもよく、それからの適合性極性有機金属コーティングは、オルガノシランと、適合性金属酸化物コーティングの金属酸化物との反応生成物を含んでもよく、すなわち、少なくとも1種の金属と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを有する化合物は、オルガノシランであってもよく、それからの適合性極性有機金属コーティングは、オルガノシランと、適合性金属酸化物コーティングの金属酸化物との反応生成物を含み得る。有用なオルガノシランとしては、オルガノクロロシラン、オルガノシラノール及びアルコキシシランのうちの少なくとも1種が挙げられるが、これらに限定されない。少なくとも1つの極性官能基としては、ヒドロキシル、酸(例えばカルボン酸)、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ケトン、カチオン性及びアニオン性官能基のうちの少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、又は更には少なくとも6つの極性官能基を含み得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分は、1~3つ、1~4つ、1~6つ、1~8つ、1~10、2~3つ、2~4つ、2~6つ、2~8つ、又は更には2~10の極性官能基を含み得る。いくつかの実施形態では、適合性極性有機金属コーティングは、少なくとも1種の金属、例えば、Si、Ti、Zr及びAlのうちの少なくとも1種と、少なくとも2つの極性官能基を有する有機部分とを含む化合物を含む。有機部分が少なくとも2つの極性官能基を含む場合、少なくとも2つの極性官能基は、同じ官能基、例えば全てがヒドロキシル基であってもよく、又は異なる官能基、例えば2つのヒドロキシル基と第一級アミン基との組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの極性官能基は、カチオン性官能基及びアニオン性官能基のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの極性官能基は、カチオン性官能基及びアニオン性官能基、すなわち前述の双性イオン性シランを含む。少なくとも1つの極性官能基は、強化された親水性を有する、関連する適合性コーティングを提供する。適合性極性有機金属コーティング、すなわち少なくとも1種の金属と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを有する化合物は、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ジルコン酸カップリング剤、及びアルミン酸カップリング剤、シランカップリング剤のうちの少なくとも1種を含んでもよく、例えば、オルガノシランは特定の有用性を有する。
【0051】
少なくとも1種の金属と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを有する化合物を含む適合性極性有機金属コーティングは、基材(例えば適合性金属酸化物コーティング)に適用することができるが、それは、揮発性溶媒、例えば揮発性有機溶媒を含むその溶液から適用されることが好ましい。このような溶液は、溶液の総重量に基づいて、0.25重量%~約80重量%、約0.25重量%~約10重量%、又は更には0.25重量%~3重量%の化合物を含有してもよく、その残部は、溶媒又は溶媒混合物から本質的になってもよい。一般的に好適な溶媒の例としては、水;アルコール、例えば、メタノール、エタノール及びプロパノール;ケトン、例えばアセトン及びメチルエチルケトン;炭化水素、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなど;エーテル、例えばジエチルエーテル及びテトロヒドロフラン、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。所望であれば、水が存在することができ、それは、例えば、1つ以上の加水分解性官能基を有する化合物を加水分解するためである。所望であれば、酢酸などの有機酸もまた存在することができ、それは、例えば、シラノールを含有する溶液を安定化させるためである。コーティング後、溶媒は溶液から除去され、基材上に、少なくとも1種の金属と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを有する化合物を含む、適合性極性有機金属コーティングを残す。いくつかの実施形態では、適合性極性有機金属は、コーティングの重量に基づいて、30重量%~100重量%、40重量%~100重量%、50重量%~100重量%、60重量%~100重量%、70重量%~100重量%、80重量%~100重量%、90重量%~100重量%、又は更には95重量%~100重量%の、少なくとも1種の金属と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを有する化合物を含有してもよい。適合性極性有機金属コーティングは、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムのうちの少なくとも1種を更に含み得る。シリケートは、コーティング中に、コーティングの重量に基づいて、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、又は更には1~30%で存在してもよい。
【0052】
一実施形態では、本開示の研磨物品は、以下のように製造することができる:
研削面及び反対側の第2の面を有するセラミック体であって、セラミック体の研削面は、それぞれが基部及び基部の反対側の遠位端を有する複数の加工特徴部を含み、かつセラミック体が、少なくとも7.5のモース硬度及び/又は少なくとも1300kg/mm2のビッカース硬さを有する、セラミック体を提供し、
第1の面を含む、適合性金属酸化物コーティングを、複数の加工特徴部に隣接させ、かつそれに適合させて配置し、
少なくとも1種の金属(例えば、Si、Ti、Zr及びAlのうちの少なくとも1種)と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを含む化合物を含む適合性極性有機金属コーティングを、適合性金属酸化物コーティングの第1の面に接触するように配置する。いくつかの実施形態では、適合性金属酸化物コーティングは、セラミック体の研削面に接触している。
【0053】
別の実施形態では、本開示の研磨物品は、以下のように製造される:
研削面及び反対側の第2の面を有するセラミック体であって、セラミック体の研削面が、それぞれが基部及び基部の反対側の遠位端とを有する複数の加工特徴部を含み、かつ少なくとも7.5のモース硬度及び/又は少なくとも1300kg/mm2のビッカース硬さを有する、セラミック体を提供し、
露出面を備える適合性ダイヤモンドコーティングを、複数の加工特徴部に隣接させ、かつそれに適合させて配置し、
第1の面を含む、適合性金属酸化物コーティングを、ダイヤモンドコーティングの露出面に隣接させ、かつそれと接触させて配置し、
適合性極性有機金属コーティングであって、少なくとも1種の金属(例えば、Si、Ti、Zr及びAlのうちの少なくとも1種)と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを有する化合物を含む、適合性極性有機金属コーティングを、適合性金属酸化物コーティングの第1の面に接触するように配置する。いくつかの実施形態では、適合性ダイヤモンドコーティングは、セラミック体の研削面に接触している。
【0054】
本開示の研磨物品は、例えば、CMP用途において使用されるパッドコンディショナーとして、特に有用性が見出され得る。研磨物品は、全面パッドコンディショナーとセグメント化パッドコンディショナーとの両方に有用であり得る。セグメント化パッドコンディショナーは、基材に取り付けられた少なくとも1つの研磨要素を含み、その基材は、一般的に、その要素よりも大きい投影表面積を有する。したがって、セグメント化パッドコンディショナー表面上に、研削面を含有する領域と研削面を含有しない領域とが存在する。いくつかの実施形態では、全面パッドコンディショナーは、本開示のいずれか1つに記載の研磨物品を含む。全面パッドコンディショナーの表面積は、50~100%、60~100%、70~100%、80~100%、又は更には90~100%の、本開示による研磨物品の研削面を備え得る。セグメント化パッドコンディショナーは、基材と少なくとも1つの研磨要素とを備え、この研磨要素は、本開示の研磨物品のうちのいずれか1種による研磨物品であってもよい。
図2は、本開示のセグメント化パッドコンディショナーの概略上面図を示す。セグメント化パッドコンディショナー200は、基材210と、研削面220aを有する研磨要素220とを備える。この例示的な実施形態では、セグメント化パッドコンディショナー200は、5つの研磨要素220を備える。研磨要素220は、本開示の研磨物品のうちのいずれか1種であってもよい。基材210は、特に限定されない。基材210は、硬質材料、例えば金属であってもよい。基板210は、ステンレス鋼、例えばステンレス鋼プレートであってもよい。いくつかの実施形態では、基材210は、少なくとも1GPa、少なくとも5GPa、又は更には少なくとも10GPaの弾性率を有する。研磨要素220は、当該技術分野において既知の任意の手段によって、例えば、機械的に(例えば、ねじ又はボルトを利用して)、又は接着剤によって(例えば、エポキシ接着剤層を利用して)基材210に取り付けられてもよい。研磨要素220の研削面220aが実質的に平面であることが望ましい場合がある。研削要素の平面研削面が実質的に平面であることを可能にする、研削要素を基材に取り付ける方法は、米国特許出願公開第2015/0224625号(LeHuu et al.)に開示されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0055】
図3は、本開示のいくつかの実施形態による研磨物品を利用するためのポリッシングシステム300の一例を、概略的に図示している。図示しているように、ポリッシングシステム300は、ポリッシング面350aを有するポリッシングパッド350と、研削面を有するパッドコンディショナー310とを備え得る。パッドコンディショナーは、本開示の研磨物品のうちのいずれか1種による少なくとも1つの研磨物品を含み、ここで、パッドコンディショナーの研削面は、少なくとも1つの研磨物品の適合性極性有機金属コーティングを含む。このシステムは、研削液360、圧盤340、及びパッドコンディショナーキャリアアセンブリ330、洗浄液(図示せず)のうちの1つ以上を更に含んでもよい。接着層370は、ポリッシングパッド350を圧盤340に取り付けるために使用されてもよく、かつポリッシングシステムの一部であってもよい。ポリッシングパッド350上のポリッシングされている基材(図示せず)はまた、ポリッシングシステム300の一部であってもよい。研削液360は、ポリッシングパッド350のポリッシング面350a上に配置された溶液の層であってもよい。ポリッシングパッド350は、当該技術分野で既知の任意のポリッシングパッドであってもよい。ポリッシングパッド350は、材料を含み、すなわち、それは材料から製造される。ポリッシングパッドの材料は、ポリマー、例えば、熱硬化性ポリマー及び熱可塑性ポリマーのうちの少なくとも1種を含んでもよい。熱硬化性ポリマー及び熱可塑性ポリマーは、ポリウレタンであってもよく、すなわち、ポリッシングパッドの材料はポリウレタンであってもよい。研削液は、典型的には、ポリッシングパッドの表面上に配置される。研削液はまた、パッドコンディショナー310とポリッシングパッド350との間の境界面にも存在してよい。ポリッシングシステム300の作動中、駆動アセンブリ345が圧盤340を回転させ(矢印A)、ポリッシングパッド350を動かし、ポリッシング動作を実行できる。ポリッシングパッド350とポリッシング溶液360とは、別々に又は組み合わせて、機械的に及び/又は化学的に、ポリッシングされる基材の主面から材料を除去するか、又はこれをポリッシングする、ポリッシング環境を規定することができる。研削するために、すなわち、ポリッシング面350aをパッドコンディショナー310でコンディショニングするために、キャリアアセンブリ330は、ポリッシング溶液360の存在下、パッドコンディショナー310をポリッシングパッド350のポリッシング面350aに対して付勢することができる。次いで、圧盤340(及びそのため、ポリッシングパッド350)及び/又はパッドコンディショナーキャリヤアセンブリ330が、互いに対して移動し、ポリッシングパッド350のポリッシング面350aにわたって、パッドコンディショナー310を並進運動させる。キャリアアセンブリ330は、回転することができ(矢印B)、任意選択で水平方向に横断することができる(矢印C)。その結果、パッドコンディショナー310の研削層は、ポリッシングパッド350のポリッシング面350aから材料を取り除く。
図3の研磨のシステム300は、本開示の研磨物品との関連で用いられてもよいポリッシングシステムの一例にすぎず、他の従来のポリッシングシステムが、本開示の範囲を逸脱することなく用いられ得ることが認められるべきである。
【0056】
本開示の選択した実施形態としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
第1の実施形態では、本開示は、研磨物品であって、
研削面及び反対側の第2の面を有するセラミック体であって、セラミック体の研削面が、それぞれが基部及び基部の反対側の遠位端を有する複数の加工特徴部を含み、かつセラミック体が、少なくとも7.5のモース硬度を有する、セラミック体と、
複数の加工特徴部に隣接し、かつそれに適合した適合性金属酸化物コーティングであって、第1の面を含む、適合性金属酸化物コーティングと、
適合性金属酸化物コーティングの第1の面に接触している適合性極性有機金属コーティングであって、少なくとも1種の金属と、少なくとも1つの極性官能基を有する有機部分とを有する化合物を含む、適合性極性有機金属コーティングと
を備える、研磨物品
を提供する。
【0057】
第2の実施形態では、本開示は、適合性極性有機金属コーティングの少なくとも1種の金属が、Si、Ti、Zr及びAlのうちの少なくとも1種である、第1の実施形態に記載の研磨物品を提供する。
【0058】
第3の実施形態では、本開示は、少なくとも1つの極性官能基が、ヒドロキシル、酸、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ケトン、カチオン性及びアニオン性官能基のうちの少なくとも1つを含む、第1又は第2の実施形態に記載の研磨物品を提供する。
【0059】
第4の実施形態では、本開示は、少なくとも1つの極性官能基が、カチオン性官能基及びアニオン性官能基のうちの少なくとも1つを含む、第1~3の実施形態のいずれか1つに記載の研磨物品を提供する。
【0060】
第5の実施形態では、本開示は、少なくとも1つの極性官能基が、少なくとも1つのカチオン性官能基及び1つのアニオン性官能基を含む、第1~4の実施形態のいずれか1つに記載の研磨物品を提供する。
【0061】
第6の実施形態では、本開示は、化合物が、オルガノシランであり、適合性極性有機金属コーティングが、オルガノシランと、適合性金属酸化物コーティングの金属酸化物との反応生成物を含む、第1~5の実施形態のいずれか1つに記載の研磨物品を提供する。
【0062】
第7の実施形態では、本開示は、オルガノシランが、オルガノクロロシラン、オルガノシラノール及びアルコキシシランのうちの少なくとも1種を含む、第6の実施形態に記載の研磨物品を提供する。
【0063】
第8の実施形態では、本開示は、オルガノシランが、アルコキシシランを含む、第1~7の実施形態のいずれか1つに記載の研磨物品を提供する。
【0064】
第9の実施形態では、本開示は、オルガノシランが、n-トリメトキシシリルプロピル-n,n,n-トリメチルアンモニウムクロリド、n-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミントリアセテート三ナトリウム塩、カルボキシエチルシラントリオール二ナトリウム塩、3-(トリヒドロキシシリル)-1-プロパンスルホン酸及びn-(3-トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミドのうちの少なくとも1種を含む、第1~7の実施形態のいずれか1つに記載の研磨物品を提供する。
【0065】
第10の実施形態では、本開示は、適合性極性有機金属コーティングが、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムのうちの少なくとも1種を更に含む、第1~9の実施形態のいずれか1つに記載の研磨物品を提供する。
【0066】
第11の実施形態では、本開示は、金属酸化物の金属が、Al、Ti、Cr、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、W、Zn、Zr、Ga及びSiのうちの少なくとも1種を含む、第1~10の実施形態のいずれか1つに記載の研磨物品を提供する。
【0067】
第12の実施形態では、本開示は、金属酸化物の金属が、Siを含み、オルガノシランが、アルコキシシランを含む、第5の実施形態に記載の研磨物品を提供する。
【0068】
第13の実施形態では、本開示は、適合性極性有機金属コーティング上の水の接触角が、30°未満である、第1~12の実施形態のいずれか1つに記載の研磨物品を提供する。
【0069】
第14の実施形態では、本開示は、適合性極性有機金属上の水の接触角が、0°~20°である、第1~13の実施形態のいずれか1つに記載の研磨物品を提供する。
【0070】
第15の実施形態では、本開示は、セラミック体の研削面と適合性金属酸化物コーティングとの間に配置された適合性ダイヤモンドコーティングを更に備える、第1~14の実施形態のいずれか1つに記載の研磨物品を提供する。
【0071】
第16の実施形態では、本開示は、セラミック体が、炭化物セラミック体であり、かつ99重量%の炭化物セラミックを含む、第1~15の実施形態のいずれか1つに記載の研磨物品を提供する。
【0072】
第17の実施形態では、本開示は、炭化物セラミック体が、99重量%の炭化ケイ素セラミックを含む、第16の実施形態に記載の研磨物品を提供する。
【0073】
第18の実施形態では、本開示は、セラミック体が、モノリシックセラミック体である、第16又は第17の実施形態に記載の研磨物品を提供する。
【0074】
第19の実施形態では、本開示は、複数の加工特徴部が、精密に成形された特徴部である、第1~18の実施形態のいずれか1つに記載の研磨物品を提供する。
【0075】
第20の実施形態では、本開示は、
材料を含むポリッシングパッドと、
研削面を有するパッドコンディショナーと
を備えるポリッシングシステムであって、パッドコンディショナーは、第1~19の実施形態のいずれか1つに記載の少なくとも1つの研磨物品を含み、パッドコンディショナーの研削面は、少なくとも1つの研磨物品の適合性極性有機金属コーティングを含む、ポリッシングシステムを提供する。
【0076】
第21の実施形態では、本開示は、ポリッシングパッドの材料が、ポリウレタンを含む、第20の実施形態に記載のポリッシングシステムを提供する。
【0077】
第22の実施形態では、本開示は、研削液が、水性研削液である、第20又は第21の実施形態に記載のポリッシングシステムを提供する。
【0078】
第23の実施形態では、本開示は、洗浄液を更に備える、第20~22の実施形態のいずれか1つに記載のポリッシングシステムを提供する。
【0079】
第24の実施形態では、本開示は、洗浄液が、水性洗浄液である、第23の実施形態に記載のポリッシングシステムを提供する。
【実施例】
【0080】
【0081】
分取コーティング溶液
分取溶液A:
分取溶液Aを、脱イオン水中Zwit silane/LSS-75(30/70 w/w)の5重量%溶液として調製した。
【0082】
分取溶液B:
分取溶液Bを、脱イオン水中Zwit silaneの1.5重量%溶液として調製した。
【0083】
分取溶液C:
分取溶液Cを、脱イオン水中LSS-75の3.5重量%溶液として調製した。
【0084】
分取溶液D:
分取溶液Dを、脱イオン水中SIT8378.3の6.6重量%溶液として調製した。3-(トリヒドロキシシリル)-1-プロパンスルホン酸の総濃度は2%であった。
【0085】
分取溶液E:
分取溶液Eを、脱イオン水中SIC2263の1.9重量%溶液として調製した。カルボキシエチルシラントリオールニナトリウム塩の総濃度は0.5%であった。
【0086】
分取溶液F:
分取溶液Fを、脱イオン水中SIT8402の6.1重量%溶液として調製した。N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミントリアセテート三ナトリウムの総濃度は2%であった。
【0087】
分取溶液G:
分取溶液Gを、脱イオン水中SIT8189の4.2重量%溶液として調製した。N-(3-トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミドの総濃度は2%であった。
【0088】
分取溶液H:
分取溶液Hを、脱イオン水中SIT8415の4重量%溶液として調製した。N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリドの総濃度は2%であった。
【0089】
製造技術
シリカ様プラズマ堆積方法:
シリカ様(適合性金属酸化物コーティング)プラズマ堆積を、パッドコンディショナー(B5又はB6-M2990)を載置することによって行い、これは、プラズマチャンバ内に、複数の加工特徴部を有するセラミック研削要素を備える。機械的ポンプによってチャンバから空気を排気し、チャンバは、プラズマを点火する前に100mTorr未満のベース圧に到達した。3つの工程を用いて、パッドコンディショナーのセラミック要素の表面上にシリカ様層を堆積させた。まず、酸素ガス50sccmを用いて試料を洗浄し、rf電力300Wで1分間洗浄した。次いで、要素の表面を、rf電力300Wにて1分間、HMDSO/O2 50sccm/25sccmの混合物に曝露することによって、堆積を行った。最後に、シリカ様層の表面を、酸素ガス50sccmを用いて酸化し、rf電力300Wで30秒間酸化した。
【0090】
プラズマ誘導酸化方法:
プラズマ誘導酸化を、パッドコンディショナー(B5又はB6-M2990パッドコンディショナー)を載置することによって行い、これは、カスタム構築したプラズマチャンバ内に複数の加工特徴部を有するセラミック研削要素を備え、空気を排気して100mTorr未満のベース圧に到達させることを含む。チャンバを、50sccmの流量で酸素ガスに曝露し、続いてプラズマを点火した(RF電力300W、1分間)。
【0091】
溶液コーティング方法:
上記のプラズマプロセスの直後に、分取溶液(分取溶液A~H)のうちの1種を、表面が溶液によって完全に覆われるまで、パッドコンディショナーのプラズマ処理セラミック研削要素の表面上に滴下した。試料を、室温で24時間乾燥させ、又は120℃で30分間加熱した(別途記載のない限り)。各パッドコンディショナーが5つのセラミック研磨要素を備え、それぞれが、異なる分取溶液でコーティングされて、パッドコンディショナー毎に最大5つの異なる実施例を製造することができることに留意されたい。
【0092】
試験方法
コンディショニング試験方法:
直径9インチ(23cm)の圧盤を有するCETR-CP4(Bruker Companyから入手可能)を用いて、コンディショニングを行った。直径9インチ(23cm)のIC1000パッド(Dow Chemicalから入手可能)を圧盤上に取り付け、実施例のパッドコンディショナー又は比較例のパッドコンディショナーを、CETR-CP4の回転スピンドル上に取り付けた。コンディショニングを、それぞれ、93rpmの圧盤速度、及び87rpmのスピンドル速度にて行った。コンディショナー上の下向きの力は6lbs(27N)であり、IC1000パッドをパッドコンディショナーにより研削した。コンディショニングの間、脱イオン水は、100mL/分の流量で圧盤へ流れる。
【0093】
コンディショニング後の視覚分析方法:
30分間コンディショニングした後(別段の指定のない限り)、セラミック研削要素の表面を、光学顕微鏡によって検査して、パッドデブリの蓄積を特定し、1=完全にデブリを含まない、及び5=ひどくデブリで汚れている、というデブリのレーティング尺度でスコアリングし、それらの間で増加して蓄積されるデブリの勾配を、2、3及び4の値で指定した。
【0094】
コンディショニング後の画像分析方法:
パッドコンディショナーのセラミック研削要素の表面の画像を、同一の照明下で全ての要素のデジタル写真を撮って得た。続く画像分析を、ImageJ software version 1.46r(Rasband,W.S.,ImageJ,U.S.National Institutes of Health,Bethesda,Md.,USA、http://imagej.nih.gov/ij/、1997-2012)を用いて行った。以下の閾値を設定し、各画像に適用した:色相0~255、彩度0~255、明度はパッドデブリをより明瞭にするような可変範囲とした。次いで、ヒストグラム関数を利用して、表面上のデブリの量に直接関連した要素の等価領域上の白色画素の数をカウントした。次いで、「ホワイトカウント%」を決定し、より高い値が、表面デブリのより高い量に相関している。次いで、様々な表面改質を有するパッドコンディショナーセラミック研削要素同士の間で定量的比較を行うことができた。
【0095】
接触角の分析方法:
以下の実施例及び比較例に記載の通り調製した、コーティングした基材試料を、圧縮空気により洗浄して不純物粒子を除去し、その後、水(H2O)接触角を測定した(湿潤液として水を使用して)。静的水接触角測定は、落下形状アナライザ(Kruss,Hamburg,Germanyから製品番号DSA 100で入手可能)上、濾過システムを通して濾過した脱イオン水を使用して行った。報告した値は、要素上で測定した2つの液滴の測定値の平均とした。液滴の体積は3マイクロリットルであった。
【0096】
実施例2~3及び比較例1
実施例2~3を、上記のシリカ様プラズマ堆積方法及び溶液コーティング方法を用いて、B5パッドコンディショナーを使用して調製し、続いて下表に記載の分取溶液を使用してコーティングした。比較例1は、供給された通りに使用したB5パッドコンディショナーとした。実施例2~3及び比較例1を、コンディショニング試験方法で、表1に記載の時間の間、試験した。実施例2~3及び比較例1を、コンディショニング後の視覚分析方法及び接触角の分析方法を用いて評価した。結果を表1に示す。
【表2】
【0097】
実施例4~9及び比較例1
実施例4~9では、B5パッドコンディショナーを、血漿誘導酸化方法に供し、その後、分取溶液でコーティングした。溶液コーティング方法及び使用した特定の分取溶液に従ったコーティングを、下表2に記載する。比較例1は、供給したB5パッドコンディショナーとした。実施例4~9及び比較例1を、コンディショニング試験方法で試験した。30分のコンディショニング後、パッドコンディショナーのセラミック研削要素の表面を、コンディショニング後の視覚分析方法を用いて検査し、パッドデブリを特定した。加えて、光学画像を、コンディショニング後の画像分析方法を用いて分析した。結果を表2に示す。
【表3】
【0098】
実施例10~14
実施例10~14は、シリカ様プラズマ堆積方法及び溶液コーティング方法を用いて、B5パッドコンディショナーを使用して調製した。使用した特定の調製溶液を、下表3に記載する。実施例10~14を、上記のコンディショニング試験方法で試験した。30分のコンディショニング後、パッドコンディショナーのセラミック研削要素の表面を、コンディショニング後の視覚分析方法を用いて検査してパッドのデブリを特定した。加えて、光学画像を、コンディショニング後の画像分析方法を用いて分析した。結果を表3に示す。
【表4】
【0099】
実施例16及び比較例15
実施例16は、B6-2990パッドコンディショナーを、分取溶液Aを使用するシリカ様プラズマ堆積方法及び溶液コーティング方法に供することによって調製した。比較例15は、供給されているB6-2990パッドコンディショナーとした。試料を、上記のコンディショニング試験方法で試験した。下表4に記載のコンディショニング時間の後、パッドコンディショナーのセラミック研磨要素の表面を、コンディショニング後の視覚分析方法を用いて検査してパッドのデブリを特定した。実施例16を、3つの異なるコンディショニング時間(1時間、2時間及び6時間)について試験した。この試験を、同じパッドコンディショナー上で累積的に実行した。結果を表4に示す。
【表5】