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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/284 20210101AFI20230622BHJP
   A61M 60/113 20210101ALI20230622BHJP
   A61M 60/37 20210101ALI20230622BHJP
   A61M 60/443 20210101ALI20230622BHJP
   A61M 60/835 20210101ALI20230622BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20230622BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
A61M60/284
A61M60/113
A61M60/37
A61M60/443
A61M60/835
A61M1/36 100
A61M1/16 110
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020539465
(86)(22)【出願日】2019-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2019033423
(87)【国際公開番号】W WO2020045384
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2018158106
(32)【優先日】2018-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 喬剛
(72)【発明者】
【氏名】藤原 真人
(72)【発明者】
【氏名】二村 寛
【審査官】中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】特許第5934581(JP,B2)
【文献】特開2007-296134(JP,A)
【文献】特開2016-187591(JP,A)
【文献】特開2016-125413(JP,A)
【文献】特開2015-021458(JP,A)
【文献】特開2008-178444(JP,A)
【文献】特開2016-220958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00- 1/38
A61M 60/00-60/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有するポンプチューブを保持するチューブ受板と、
前記ポンプチューブを介して前記チューブ受板と対向するよう配置され、前記チューブ受板に対してチューブ押圧体を移動させるチューブ押圧体駆動部と、
前記チューブ押圧体駆動部を前記チューブ受板に向かって進退させて、前記チューブ押圧体と前記チューブ受板との間に配置された前記ポンプチューブの閉止と開放とを行うポンプチューブ開閉機構と、を備えること、
を特徴とする血液浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の血液浄化装置であって、
前記ポンプチューブ開閉機構は、前記チューブ押圧体駆動部を前記チューブ受板に向かって進出させるカムと、前記チューブ押圧体駆動部を前記チューブ受板から退出させる引き戻し機構とを有すること、
を特徴とする血液浄化装置。
【請求項3】
請求項2に記載の血液浄化装置であって、
前記チューブ受板は複数の前記ポンプチューブを保持し、
前記チューブ押圧体駆動部を複数備え、
前記ポンプチューブ開閉機構は、複数の前記チューブ押圧体駆動部を前記チューブ受板に向かって進出させる複数の前記カムと、複数の前記カムを回転駆動する共通のカム駆動部と、複数の前記チューブ押圧体駆動部を前記チューブ受板から退出させる複数の引き戻し機構とを有し、
前記カム駆動部で複数の前記カムを駆動して複数の前記チューブ押圧体駆動部を前記チューブ受板に向かって進退させて、複数の前記チューブ押圧体駆動部の複数の前記チューブ押圧体と前記チューブ受板との間に配置された複数の前記ポンプチューブの閉止と開放とを行うこと、
を特徴とする血液浄化装置。
【請求項4】
請求項3に記載の血液浄化装置であって、
複数の前記カムは、複数の前記ポンプチューブの開閉状態の組み合わせに応じた形状となっていること、
を特徴とする血液浄化装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の血液浄化装置であって、
前記チューブ押圧体駆動部と前記ポンプチューブ開閉機構とが内部に配置される装置本体を含み、
前記チューブ受板は前記装置本体に対向する板であること、
を特徴とする血液浄化装置。
【請求項6】
請求項5に記載の血液浄化装置であって、
前記装置本体に着脱自在に取り付けられるカセットを含み、
前記カセットは、
ダイアライザと透析液再生カラムと除水容器とを収容するケーシングと、を含み、
前記チューブ受板は前記ケーシングの前記装置本体に対向する板であること、
を特徴とする血液浄化装置。
【請求項7】
弾性を有するポンプチューブを保持するチューブ受板と、
前記ポンプチューブを介して前記チューブ受板と対向するよう配置され、前記チューブ受板に対してチューブ押圧体を移動させるチューブ押圧体駆動部と、
前記チューブ受板を前記チューブ押圧体駆動部に向かって進退させて、前記チューブ押圧体と前記チューブ受板との間に配置された前記ポンプチューブの閉止と開放とを行うポンプチューブ開閉機構と、を備え、
前記ポンプチューブ開閉機構は、前記チューブ受板を前記チューブ押圧体駆動部に向かって進出させるカムと、前記チューブ受板を前記チューブ押圧体駆動部から退出させる引き戻し機構とを有し、
前記チューブ受板は複数の前記ポンプチューブを保持し、
前記チューブ押圧体駆動部を複数備え、
前記ポンプチューブ開閉機構の前記カムは、前記チューブ受板を複数の前記チューブ押圧体駆動部に向かって進出させて、複数の前記チューブ押圧体駆動部の複数の前記チューブ押圧体と前記チューブ受板との間に配置された複数の前記ポンプチューブの閉止と開放とを行うこと、
を特徴とする血液浄化装置。
【請求項8】
請求項2から4のいずれか1項または請求項7に記載に血液浄化装置であって、
前記引き戻し機構は、引き戻しばねであること、
を特徴とする血液浄化装置。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項に記載の血液浄化装置であって、
前記チューブ押圧体が複数のフィンガで構成されていること、
を特徴とする血液浄化装置。
【請求項10】
請求項1に記載の血液浄化装置であって、
前記ポンプチューブ開閉機構は、前記チューブ押圧体駆動部に弾性体を介して取付けられたカムフォロワを介して前記チューブ押圧体駆動部を前記チューブ受板に向かって進出させるカムと、
前記チューブ押圧体駆動部を前記チューブ受板から退出させる引き戻し機構と、を有すること、
を特徴とする血液浄化装置。
【請求項11】
請求項2又は10に記載の血液浄化装置であって、
前記チューブ押圧体駆動部と前記ポンプチューブ開閉機構とが内部に配置される装置本体と、
前記装置本体に対向して取付けられた蓋と、を含み、
前記チューブ受板は、前記蓋に他の弾性体を介して取付けられていること、
を特徴とする血液浄化装置。
【請求項12】
請求項7に記載の血液浄化装置であって、
前記ポンプチューブ開閉機構は、
前記チューブ受板に接続されたカムアームと、
前記カムアームに弾性部材を介して取付けられたカムフォロワと、を含み、
前記カムは、前記カムフォロワを介して前記カムアームに接続された前記チューブ受板を前記チューブ押圧体駆動部に向かって進出させること、
を特徴とする血液浄化装置。
【請求項13】
請求項12に記載の血液浄化装置であって、
前記チューブ受板と、前記カムアームとは、他の弾性部材を介して接続されていること、
を特徴とする血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
血液浄化装置において、液体回路の一部を構成するポンプチューブをチューブ受で保持し、ポンプチューブをローラで押圧してポンプチューブ内の液体を送液するローラポンプにおいて、チューブ受をローラに押し付けてポンプチューブの閉塞と解除を行う方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、血液浄化装置において、複数のローラポンプが用いられる場合が多い。この場合、各ローラポンプをそれぞれの制御装置によって駆動制御することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5934581号公報
【文献】特開2000-107281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、血液浄化装置では、液体回路のプライミング及び血液透析を行う動作の他に、例えば、ポンプの吐出流量の較正等を行うことがある。この場合には、液体回路を一部閉塞したり、液体回路の一部をバイパスさせたりして特殊動作のための液体回路を構成することが必要となる。従来から、バルブを用いて手動で液体回路を開閉して動作に必要な液体回路を構成することが多く行われている。
【0006】
一方、血液浄化装置では、特許文献2に記載されているように、数台のポンプを用いることが多く、液体回路の開閉の回数も多くなってくることから、手動ではなく、血液浄化装置によって自動的に動作に必要な液体回路を構成することが求められている。
【0007】
この方法としては、例えば、特許文献1に記載されたようにローラポンプのチューブ受をローラに押し付けてポンプチューブを開閉する方法も考えられるが、ポンプの数や液体回路の数が多くなると、ポンプ毎にポンプチューブの開閉制御機構を設ける必要があり、装置が複雑になってしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、血液浄化装置において簡便な構成で液体回路の開閉を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の血液浄化装置は、弾性を有するポンプチューブを保持するチューブ受板と、前記ポンプチューブを介して前記チューブ受板と対向するよう配置され、前記チューブ受板に対してチューブ押圧体を移動させるチューブ押圧体駆動部と、前記チューブ押圧体駆動部前記チューブ受板に向かって進退させて、前記チューブ押圧体と前記チューブ受板との間に配置された前記ポンプチューブの閉止と開放とを行うポンプチューブ開閉機構と、を備えること、を特徴とする。
【0010】
このように、ポンプチューブ開閉機構でチューブ押圧体駆動部をチューブ受板に向かって相対的に進退させてポンプチューブの開閉を行うので、簡便な構成で液体回路の開閉を行うことができる。
【0011】
本発明の血液浄化装置において、前記ポンプチューブ開閉機構は、前記チューブ押圧体駆動部を前記チューブ受板に向かって進出させるカムと、前記チューブ押圧体駆動部を前記チューブ受板から退出させる引き戻し機構とを有すること、としてもよい。
【0012】
これにより、カムと引き戻し機構という簡便な構成で液体回路の開閉を行うことができる。
【0013】
本発明の血液浄化装置において、前記チューブ受板は複数の前記ポンプチューブを保持し、前記チューブ押圧体駆動部を複数備え、前記ポンプチューブ開閉機構は、複数の前記チューブ押圧体駆動部を前記チューブ受板に向かって進出させる複数の前記カムと、複数の前記カムを回転駆動する共通のカム駆動部と、複数の前記チューブ押圧体駆動部を前記チューブ受板から退出させる複数の引き戻し機構とを有し、前記カム駆動部で複数の前記カムを駆動して複数の前記チューブ押圧体駆動部を前記チューブ受板に向かって進退させて、複数の前記チューブ押圧体駆動部の複数の前記チューブ押圧体と前記チューブ受板との間に配置された複数の前記ポンプチューブの閉止と開放とを行うこと、としてもよい。
【0014】
共通のカム駆動部で複数のカムを駆動することにより複数のポンプチューブの閉止と開放を行うことができるので、簡便な構成で多数の液体回路の開閉を行うことができる。
【0015】
本発明の血液浄化装置において、複数の前記カムは、複数の前記ポンプチューブの開閉状態の組み合わせに応じた形状となっていることとしてもよい。
【0016】
これにより、多種類のカムを組み合わせて様々な液体回路を構成でき、血液浄化装置を様々な動作パターンで動作させることができる。
【0017】
本発明の血液浄化装置において、前記チューブ押圧体駆動部と前記ポンプチューブ開閉機構とが内部に配置される装置本体を含み、前記チューブ受板は前記装置本体に対向する板であること、としてもよいし、前記装置本体に着脱自在に取り付けられるカセットを含み、前記カセットは、ダイアライザと透析液再生カラムと除水容器とを収容するケーシングと、を含み、前記チューブ受板は前記ケーシングの前記装置本体に対向する板であること、としてもよい。
【0018】
接液部を一体としたカセットと装置本体とを備える血液浄化装置において、非接液部であるチューブ押圧体駆動部とポンプチューブ開閉機構を使い捨てではない装置本体に配置してポンプチューブの開閉を行い、接液部を一体にしたカセットを使い捨てにすることで、血液浄化装置の取り扱いの簡便化を図ることができると共に、簡便な構成で液体回路の開閉を行うことができる。
【0019】
本発明の血液浄化装置は、弾性を有するポンプチューブを保持するチューブ受板と、前記ポンプチューブを介して前記チューブ受板と対向するよう配置され、前記チューブ受板に対してチューブ押圧体を移動させるチューブ押圧体駆動部と、前記チューブ受板を前記チューブ押圧体駆動部に向かって進退させて、前記チューブ押圧体と前記チューブ受板との間に配置された前記ポンプチューブの閉止と開放とを行うポンプチューブ開閉機構と、を備え、前記ポンプチューブ開閉機構は、前記チューブ受板を前記チューブ押圧体駆動部に向かって進出させるカムと、前記チューブ受板を前記チューブ押圧体駆動部から退出させる引き戻し機構とを有し、前記チューブ受板は複数の前記ポンプチューブを保持し、前記チューブ押圧体駆動部を複数備え、前記ポンプチューブ開閉機構の前記カムは、前記チューブ受板を複数の前記チューブ押圧体駆動部に向かって進出させて、複数の前記チューブ押圧体駆動部の複数の前記チューブ押圧体と前記チューブ受板との間に配置された複数の前記ポンプチューブの閉止と開放とを行うこと、を特徴とする。
【0020】
本発明の血液浄化装置において、前記引き戻し機構は、引き戻しばねとしてもよいし、前記チューブ押圧体が複数のフィンガで構成されていてもよい。
【0021】
本発明の血液浄化装置において、前記ポンプチューブ開閉機構は、前記チューブ押圧体駆動部に弾性体を介して取付けられたカムフォロワを介して前記チューブ押圧体駆動部を前記チューブ受板に向かって進出させるカムと、前記チューブ押圧体駆動部を前記チューブ受板から退出させる引き戻し機構と、を有してもよい。
【0022】
このように、チューブ押圧体駆動部に弾性体を介してカムフォロワを取付け、このカムフォロワを介してチューブ押圧体駆動部をチューブ受板に向かって進出させる構成とすることにより、チューブ押圧体駆動部の進出距離を精度よく調整しなくても、ポンプチューブの閉止と開放とを確実に行うことができる。
【0023】
本発明において、前記チューブ受板は複数の前記ポンプチューブを保持し、前記チューブ押圧体駆動部を複数備え、前記ポンプチューブ開閉機構は、複数の前記チューブ押圧体駆動部にそれぞれ弾性体を介して取付けられた各カムフォロワに当接して各前記チューブ押圧体駆動部を前記チューブ受板に向かって進出させる複数の前記カムと、複数の前記カムを回転駆動する共通のカム駆動部と、複数の前記チューブ押圧体駆動部を前記チューブ受板から退出させる複数の引き戻し機構とを有し、前記カム駆動部で複数の前記カムを駆動して複数の前記チューブ押圧体駆動部を前記チューブ受板に向かって進退させて、複数の前記チューブ押圧体駆動部の複数の前記チューブ押圧体と前記チューブ受板との間に配置された複数の前記ポンプチューブの閉止と開放とを行ってもよい。また、複数の前記カムは、複数の前記ポンプチューブの開閉状態の組み合わせに応じた形状でもよい。また、本発明の血液浄化装置において、前記ポンプチューブ開閉機構が前記ポンプチューブを閉止した際に、前記チューブ押圧体駆動部の先端が前記チューブ受板の表面に当接してもよい。
【0024】
共通のカム駆動部で複数のカムを駆動することにより複数のポンプチューブの閉止と開放を行うことができるので、簡便な構成で多数の液体回路の開閉を行うことができる。また、多種類のカムを組み合わせて様々な液体回路を構成でき、血液浄化装置を様々な動作パターンで動作させることができる。
【0025】
本発明の血液浄化装置において、前記チューブ押圧体駆動部と前記ポンプチューブ開閉機構とが内部に配置される装置本体と、前記装置本体に対向して取付けられた蓋と、を含み、前記チューブ受板は、前記蓋に他の弾性体を介して取付けられてもよい。
【0026】
本構成によれば、チューブ押圧体駆動部の進出距離を精度よく調整しなくても、ポンプチューブの閉止と開放とを確実に行うことができる。
【0027】
本発明の血液浄化装置において、前記チューブ押圧体駆動部を複数備え、前記蓋は、各前記チューブ押圧体駆動部の各前記チューブ押圧体に対向する位置に複数の凹部を備え、各前記凹部の中に弾性体を介して各前記チューブ受板がそれぞれ取付けられ、各前記チューブ受板はそれぞれ前記ポンプチューブを保持し、前記ポンプチューブ開閉機構は、各前記チューブ押圧体駆動部を各前記チューブ受板に向かって進出させる複数の前記カムと、複数の前記カムを回転駆動する共通のカム駆動部と、各前記チューブ押圧体駆動部を各前記チューブ受板から退出させる複数の引き戻し機構と、を有し、前記カム駆動部で複数の前記カムを駆動して各前記チューブ押圧体駆動部を各前記チューブ受板に向かって進退させて、各前記チューブ押圧体駆動部の各前記チューブ押圧体と各前記チューブ受板との間にそれぞれ配置された前記ポンプチューブの閉止と開放とを行ってもよい。また、複数の前記カムは、複数の前記ポンプチューブの開閉状態の組み合わせに応じた形状でもよい。また、本発明の血液浄化装置において、前記弾性体、他の弾性体はばねで構成してもよい。
【0028】
共通のカム駆動部で複数のカムを駆動することにより複数のポンプチューブの閉止と開放を行うことができるので、簡便な構成で多数の液体回路の開閉を行うことができる。また、多種類のカムを組み合わせて様々な液体回路を構成でき、血液浄化装置を様々な動作パターンで動作させることができる。
【0029】
これにより、簡便な構成で、チューブ押圧体駆動部の進出距離を精度よく調整しなくても、ポンプチューブの閉止と開放とを確実に行うことができる。
【0030】
本発明の血液浄化装置において、前記ポンプチューブ開閉機構は、前記チューブ受板に接続されたカムアームと、前記カムアームに弾性部材を介して取付けられたカムフォロワと、を含み、前記カムは、前記カムフォロワを介して前記カムアームに接続された前記チューブ受板を前記チューブ押圧体駆動部に向かって進出させてもよいし、前記チューブ受板と、前記カムアームとは、他の弾性部材を介して接続されてもよい。また、弾性部材、他の弾性部材は、ばねで構成してもよい。
【0031】
これにより、簡便な構成で、チューブ押圧体駆動部の進出距離を精度よく調整しなくても、ポンプチューブの閉止と開放とを確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、血液浄化装置において簡便な構成で液体回路の開閉を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施形態の血液浄化装置の斜視図である。
図2】実施形態の血液浄化装置の立断面図である。
図3図2のA-A断面を示す平断面図である。
図4図2のB-B断面を示す平断面図である。
図5図2のC-C断面を示す立断面図である。
図6】血液浄化装置が停止中の配置(a)と回転カムの位置(b)とを示す説明図である。
図7】血液浄化装置が透析動作中の液体の流れ(a)と回転カムの位置(b)とを示す説明図である。
図8】血液浄化装置のプライミング動作中の液体の流れ(a)と回転カムの位置(b)とを示す説明図である。
図9】血液ポンプの較正動作中の液体の流れ(a)と回転カムの位置(b)とを示す説明図である。
図10】回転カムの種類を示す説明図である。
図11】他の実施形態の血液浄化装置の平断面図であり、血液浄化装置が停止中のカムの位置を示す図である。
図12】他の実施形態の血液浄化装置の平断面図であり、血液浄化装置が透析動作中のカムの位置を示す図である。
図13】他の実施形態の血液浄化装置の平断面図であり、血液浄化装置がプライミング中或いは血液ポンプの較正動作中のカムの位置を示す平断面図である。
図14】他の実施形態の血液浄化装置の平断面図であり、血液浄化装置が停止中、透析動作中、プライミング動作中或いは血液ポンプの較正動作中のカムと装置本体とを示す平断面図である。
図15】他の実施形態の血液浄化装置の斜視図である。
図16】他の実施形態の血液浄化装置の分解斜視図である。
図17】他の実施形態の血液浄化装置のカムとカムフォロワとを示す説明図である。
図18】他の実施形態の血液浄化装置の平断面図である。
図19】他の実施形態の血液浄化装置の立断面図である。
図20図19に示す血液浄化装置の平断面図である。
図21図19に示すC部の拡大断面図である。
図22図19に示す血液浄化装置のポンプチューブの閉止動作における初期状態を示す模式図である。
図23図19に示す血液浄化装置のポンプチューブの閉止動作において、ポンプチューブが潰れた状態を示す模式図である。
図24図19に示す血液浄化装置のポンプチューブの閉止動作において、調整ばねが縮んだ状態を示す模式図である。
図25図19に示す血液浄化装置の変形例において、調整ばねが縮んだ状態を示す模式図である。
図26】他の実施形態の血液浄化装置の平断面図である。
図27】他の実施形態の血液浄化装置の立断面図である。
図28図27に示す血液浄化装置の平断面図である。
図29図27に示す血液浄化装置のポンプチューブの閉止動作における初期状態を示す模式図である。
図30図27に示す血液浄化装置のポンプチューブの閉止動作において、ポンプチューブが潰れた状態を示す模式図である。
図31図27に示す血液浄化装置のポンプチューブの閉止動作において、調整ばねが縮んだ状態を示す模式図である。
図32図27に示す血液浄化装置の変形例において、調整ばねが縮んだ状態を示す模式図である。
図33】他の実施形態の血液浄化装置の平断面図である。
図34図33に示すF-Fの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら、実施形態の血液浄化装置100について説明する。血液浄化装置100は、装置本体10と、装置本体10に開閉自在に取り付けられる蓋30とで構成される。以下の説明では、装置本体10と蓋30との並び方向を前後方向、水平面で前後方向と直角方向を幅方向、垂直方向を上下方向として説明する。
【0035】
図1図2に示すように、装置本体10は、筐体11と、筐体11の内部に収容された複数のチューブ押圧体駆動部であるフィンガ駆動部20と、共通のポンプチューブ開閉機構50と、共通の制御部65とを含んでいる。
【0036】
<フィンガ駆動部の構成>
図2図3に示すように、フィンガ駆動部20(20a~20c)は、フィンガケーシング14(14a~14c)と、駆動モータ17(17a~17c)とで構成される。フィンガケーシング14(14a~14c)は、フィンガ支持部分21(21a~21c)と、を有している。フィンガ支持部分21(21a~21c)は、フィンガケーシング14(14a~14c)の前方の部分で、装置本体10の筐体11の内部に収容された状態で、上下方向に複数段に配置されたチューブ押圧体であるフィンガ15(15a~15c)を装置本体10の前後方向に移動可能に支持する。フィンガケーシング14(14a~14c)前側の面には、上下方向に延びるV字状のチューブ受溝24(24a~24c)が設けられている。なお、チューブ受溝24は設けられていなくともよい。また、V字状の溝に代わって後述するポンプチューブ41a~41cが撚れないように上下方向に伸びる板状のガイドを設けるようにしてもよい。
【0037】
駆動モータ17(17a~17c)は、チューブ押圧体であるフィンガ15(15a~15c)を装置本体10の前後方向に駆動する。駆動モータ17は、制御部65に接続されて制御部65の指令によって動作する。
【0038】
<筐体の構成>
図1図2に示すように、筐体11は、ベース12と、ベース12の後端側に立設する後板11aと、ベース12の幅方向両側に立接する側板11bと、ベース12の前端側に立設する幅板13bと、装置本体10の前側の上方を覆う前板13cと、天井板13dとを含んでいる。図5に示すように、ベース12の上面には、前後方向に延びる複数のリブ13aが設けられている。
【0039】
<ポンプチューブ開閉機構の構成>
図2から図5に示すように、ポンプチューブ開閉機構50は、フィンガケーシング14(14a~14c)を前後方向にスライド可能に支持するケーシングガイド51と、フィンガ駆動部20(20a~20c)を蓋30に向かって進出させる回転カム53(53a~53c)と、フィンガ駆動部20(20a~20c)を蓋30から退出させる引き戻し機構を構成する引き戻しばねであるコイルスプリング52と、回転カム53(53a~53c)を回転駆動するモータ60と、を含んでいる。
【0040】
ケーシングガイド51は、複数の支持板51aと、ガイドバー51bと、接続部材51cとを含んでいる。図3図5に示すように、支持板51aは、ベース12の上面に設けられた複数のリブ13aの上端に取り付けられてフィンガケーシング14(14a~14c)の下角部の底面を支持する長手方向に延びる板部材である。また、ガイドバー51bは、各支持板51aの上面に立設して長手方向に延びて、フィンガケーシング14(14a~14c)の下角部の側面を前後方向にガイドする板部材である。接続部材51cは、支持板51aの間を幅方向に接続する板部材である。図5に示すように、幅方向両端の支持板51aは、一つのフィンガケーシング14(14aまたは14c)の下角部の底面を支持し、幅方向両端の支持板51aの上面から立設したガイドバー51bは一つのフィンガケーシング14(14aまたは14c)の側面を前後方向にガイドする。また、中央の2つの支持板51aは、隣接する二つのフィンガケーシング14(14a~14c)の下角部の底面を支持し、中央の2つの支持板51aの上面から立設したガイドバー51bは隣接する二つのフィンガケーシング14(14a~14c)の側面を前後方向にガイドする。なお、ケーシングガイド51は、フィンガケーシング14(14a~14c)を前後方向にガイドする部材であればよく、上記の構成に限定されない。
【0041】
図2図3に示すように、フィンガケーシング14(14a~14c)の後面の下側の幅方向両側部には、コイルスプリング52の一端が取付けられるピン52aが取付けられており、装置本体10の後板11aのピン52aに対向する位置には、ピン52bが取付けられている。そして、ピン52aとピン52bとの間にコイルスプリング52が取付けられている。なお、ピン52a、52bを介さずにフィンガケーシング14(14a~14c)と後板11aとを直接コイルスプリング52で接続するように構成してもよい。
【0042】
図2図4に示すように、装置本体10の後板11aの幅方向両側には、回転カム53(53a~53c)が取り付けられたシャフト61を回転自在に支持するブラケット55が取り付けられている。シャフト61の一端には、プーリ56が取り付けられ、他端にはカラー63が取り付けられている。また、ブラケット55の上方の後板11aには、ブラケット58が取り付けられ、ブラケット58にはモータ60が固定されている。モータ60のシャフト62にはプーリ59が取り付けられている。モータ60のシャフト62に取り付けられたプーリ59と回転カム53(53a~53c)が取り付けられたシャフト61に取付けられたプーリ56とはベルト57で接続されている。モータ60は、制御部65に接続されて制御部65の指令によって動作する。モータ60と、プーリ59、56とベルト57と、シャフト61とは、複数の回転カム53(53a~53c)を駆動する共通のカム駆動部を構成する。
【0043】
図2図4に示すように、フィンガケーシング14(14a~14c)の後面の上下方向の中央の幅方向両側部には、2つのポスト54pが取り付けられている。2つのポスト54pの間には、回転カム53(53a~53c)が当接する板状のカムフォロワ54a~54cが取り付けられている。なお、ポスト54p、カムフォロワ54a~54cを設けずに、回転カム53がフィンガケーシング14(14a~14c)の後面に接するように構成してもよい。
【0044】
<蓋の構成>
図1図2に示すように、蓋30は、平板部材であり、装置本体10の側(後側)の平らな表面30aには、ポンプチューブ41a~41cが取り付けられている。ポンプチューブ41a~41cの両端は、図6(a)に示す血液回路91、透析液回路92に接続されている。ポンプチューブ41a~41cの蓋30の側の面は、蓋30の平らな表面30aに沿って配置されている。このように、蓋30は、ポンプチューブ41(41a~41c)を保持するチューブ受板を構成する。なお、図6(a)、図7(a)、図8(a)、図9(a)では、透析液回路92に設けられている透析液再生カラム38の図示は省略する。透析液再生カラム38は、透析液回路92の中のいずれの位置に設けられていてもよい。
【0045】
蓋30を閉めると、図2から図4に示すように、ポンプチューブ41(41a~41c)は、フィンガケーシング14(14a~14c)のチューブ受溝24(24a~24c)に収容され、フィンガ駆動部20(20a~20c)は、ポンプチューブ41(41a~41c)を介して蓋30と対向するよう配置される。なお、蓋30は、フィンガ15a~15cと協働してポンプチューブ41(41a~41c)を潰せるような硬度があれば、平板部材でなくてもよい。
【0046】
ポンプチューブ開閉機構50のモータ60を回転させると、プーリ59、56、ベルト57を介して回転カム53(53a~53c)が回転する。回転カム53(53a~53c)が回転してフィンガケーシング14(14a14c)に取付けられたカムフォロワ54a~54cに接すると、カムフォロワ54a~54cを蓋30に向かって前方に押し出す。カムフォロワ54a~54cが前方に押し出されると、フィンガケーシング14(14a~14c)は、ケーシングガイド51のガイドバー51bにガイドされて蓋30に向かって移動する。フィンガケーシング14(14a14c)が蓋30に向かって移動するとフィンガ15(15a~15c)が蓋30に向かって移動し、フィンガ15(15a~15c)と蓋30との間にポンプチューブ41(41a~41c)を挟み込み、ポンプチューブ41(41a~41c)を蓋30の表面30aに押圧し、ポンプチューブ41(41a~41c)を閉止する。この際、コイルスプリング52は前後方向に引き伸ばされる。
【0047】
この状態で、フィンガ駆動部20(20a~20c)の駆動モータ17(17a~17c)を回転させると、上下方向に複数段に配置されたフィンガ15(15a~15c)は、蓋30に接離する方向に順次移動し、ポンプチューブ41(41a~41c)の内部の液体を送液する。
【0048】
また、回転カム53がカムフォロワ54a~54cから離れると、コイルスプリング52がピン52aを筐体11の後板11aに向かって引き戻す。これにより、フィンガケーシング14(14a~14c)は、ケーシングガイド51のガイドバー51bにガイドされて蓋30から離れるように装置本体10の後方に向かって移動する。フィンガケーシング14(14a14c)が後方に向かって移動するとフィンガ15(15a~15c)が蓋30から離れる方向に移動し、フィンガ15(15a~15c)がポンプチューブ41(41a~41c)の表面から離れ、ポンプチューブ41(41a~41c)を開放する。
【0049】
<回転カムの構成>
図6(b)にシャフト61に取り付けられている回転カム53a~53cを示す。図6(b)において、一点鎖線は、シャフト61、回転カム53a~53cの反時計周りの回転角度を示す。図6(b)に示す状態は、シャフト61及び回転カム53a~53cの初期位置である。
【0050】
図6(b)に示すように、回転カム53a、53bは回転角度が0°位置では半径が小さく、カムフォロワ54a,54bは後方の開放位置となり、回転角度が90°位置と180°位置では半径が大きく、図7(b)に示すように、カムフォロワ54a,54bは前方の閉止位置となる。また、回転カム53cは、回転角度が90°位置で半径が大きく、図7(b)に示すようにカムフォロワ54cは前方の閉止位置となり、回転角度が0°位置、180°位置では、図6(b)、図8(b)、図9(b)に示すように、カムフォロワ54cは後方の開放位置となっている。このように、回転カム53a~53cは、各ポンプチューブ41a~41cの開閉状態の組み合わせに応じた形状となっている。
【0051】
<血液浄化装置の動作>
血液浄化装置100が停止状態においては、シャフト61は初期位置で、図6(b)に示すように0°位置がカムフォロワ54a~54cに対向する位置となっており、各カムフォロワ54a~54cは全て後方の開放位置となっている。この状態では、図3図4に一点鎖線で示すように、透析液出口ポンプDPO、血液ポンプBP、透析液入口ポンプDPIの各フィンガ15a~15cは、各ポンプチューブ41a~41cから離れている。
【0052】
図7(a)に示すように、透析動作では、透析液出口ポンプDPO、透析液入口ポンプDPIを駆動して、透析液回路92のダイアライザ36、除水容器37に透析液を循環させ、血液ポンプBPを駆動して、人体からの血液を血液回路入口91aから、血液回路91のダイアライザ36、ドリップチャンバ39に送液し、血液回路出口91bから人体に戻す。このように、透析動作においては、透析液出口ポンプDPO、透析液入口ポンプDPI、血液ポンプBPの3つのポンプに送液動作を行わせる。
【0053】
そこで、制御部65は、透析動作を行う場合には、ポンプチューブ開閉機構50のモータ60を駆動してシャフト61を初期位置から90°回転させて、図7(b)に示す位置とする。図7(b)に示すように、シャフト61を初期位置から90°回転させると各回転カム53a~53cも初期位置から90°回転し、全ての回転カム53a~53cはカムフォロワ54a~54cを前側に押し出して前側の閉止位置とする。これにより、各フィンガケーシング14a~14cが前方に向かって移動する。すると、上下方向に複数段に配置されている複数のフィンガ15aの中の少なくとも1つのフィンガ15aがポンプチューブ41aを蓋30の表面30aに押し付けてポンプチューブ41aを閉止する。同様に複数のフィンガ15b,15cの中の少なくとも1つのフィンガ15b,15cがポンプチューブ41b,41cを蓋30の表面30aに押し付けてポンプチューブ41b,41cを閉止する。これにより、各ポンプチューブ41a,41b,41cが閉止状態となり、透析液出口ポンプDPO、血液ポンプBP、透析液入口ポンプDPIは、送液可能な状態となる。
【0054】
次に、制御部65は各フィンガ駆動部20a~20cの各駆動モータ17a~17cを所定の回転速度で回転させる。これにより、各フィンガ15a~15cが蓋30に接離する方向に順次移動し、透析液出口ポンプDPO、血液ポンプBP、透析液入口ポンプDPIから所定量の液体が送液される。そして、図7(a)に示すように、透析液出口ポンプDPO、透析液入口ポンプDPIは、透析液回路92のダイアライザ36、除水容器37に透析液を循環させ、血液ポンプBPは、人体からの血液を血液回路入口91aから、血液回路91のダイアライザ36、ドリップチャンバ39に血液を送液し、血液回路出口91bから人体に戻す。
【0055】
また、血液浄化装置100においては、透析動作前に、透析液回路92、血液回路91に、例えば、生理食塩水を循環させてプライミングを行う。透析液回路92のプライミングは、図8(a)に示すように、透析液入口ポンプDPIのポンプチューブ41cを開放し、透析液出口ポンプDPOを用いて透析液回路92にプライミング液を循環させる。
【0056】
そこで、制御部65は、プライミングを行う場合には、ポンプチューブ開閉機構50のモータ60を駆動してシャフト61を初期位置から180°回転させて、図8(b)に示す位置とする。図8(b)に示す状態では、回転カム53a、53bはカムフォロワ54a,54bを前側に押し出して閉止位置とするが、回転カム53cはカムフォロワ54cを前側に押し出さず、回転カム53cに当接するカムフォロワ54cは後側の開放位置となっている。これにより、各フィンガケーシング14a、14bが前方に向かって移動し、各フィンガ15a,15bは各ポンプチューブ41a、41bを蓋30に押圧し、透析液出口ポンプDPO、血液ポンプBPが送液可能な状態となる。また、フィンガケーシング14cは前方に向かって移動せず、フィンガ15cがポンプチューブ41cから離れた状態で、透析液入口ポンプDPIのポンプチューブ41cは開放された状態となっている。
【0057】
透析液側のプライミング動作では血液回路出口91bをバルブ94で閉止して透析液回路92のみにプライミング液を循環させる。制御部65は、フィンガ駆動部20aの駆動モータ17aのみを所定の回転速度で回転させる。すると、先に説明したと同様、透析液出口ポンプDPOから所定量の液体が送液される。そして、図8(a)に示すように、透析液出口ポンプDPOは、透析液回路92のダイアライザ36、除水容器37、ポンプチューブ41cにプライミング液を循環させる。
【0058】
また、血液浄化装置100においては、血液ポンプBPの送液量の較正を行う場合がある。この場合には、図9(a)に示すように、血液回路91の血液回路入口91aに例えば、生理食塩水などの較正液用バッグ93を接続し、血液回路出口91bをバルブ94で閉止する。そして、透析液出口ポンプDPOのポンプチューブ41aを閉止し、透析液入口ポンプDPIのポンプチューブ41cを開放して血液ポンプBPを駆動して、較正液を較正液用バッグ93からダイアライザ36を通して透析液入口ポンプDPIのポンプチューブ41cから、除水容器37に送液し、除水容器37の重量検出部33で除水容器37の重量を検出して血液ポンプBPの送液量を測定する。そして、この測定に基づいて血液ポンプBPの送液流量の較正を行う。
【0059】
そこで、制御部65は、血液ポンプBPの送液量の較正を行う場合には、図9(b)に示すように、ポンプチューブ開閉機構50のモータ60を駆動してシャフト61を初期位置から180°回転させて、図9(b)に示す位置とする。これにより、先に図8(b)を参照して説明したと同様、透析液出口ポンプDPO、血液ポンプBPが送液可能な状態となり、透析液入口ポンプDPIのポンプチューブ41cは開放された状態となる。
【0060】
次に、制御部65は、フィンガ駆動部20bの駆動モータ17bを所定の回転速度で回転させると、先に説明したと同様、血液ポンプBPから所定量の液体が送液される。また、駆動モータ17aは停止しているので、透析液出口ポンプDPOのフィンガ15aは、ポンプチューブ41aを閉止した状態となる。そして、図9(a)に示すように、血液ポンプBPは、較正液を較正液用バッグ93からダイアライザ36を通して透析液入口ポンプDPIのポンプチューブ41cから、除水容器37に送液する。そして、血液ポンプBPへの駆動指令値と除水容器37の重量検出部33によって検出した送液重量とに基づいて血液ポンプBPの較正を行う。
【0061】
以上説明したように、本実施形態の血液浄化装置100では、回転カム53a~53cが、血液浄化装置100の様々な動作に必要な各ポンプチューブ41a~41cの開閉状態の組み合わせに応じた形状となっているので、ポンプチューブ開閉機構50の1つのモータ60を駆動することによって3つのフィンガケーシング14(14a14c)を蓋30に対して進退させて、ポンプチューブ41(41a~41c)の閉止、開放を行い、透析液回路92、血液回路91を様々なパターンで開放、閉止することができる。これにより、透析液出口ポンプDPO、透析液入口ポンプDPI、血液ポンプBPのような複数のポンプを含む血液浄化装置100において、簡便な方法で様々な動作を行わせることができる。
【0062】
また、血液浄化装置では、ポンプチューブ41a~41cをリユースする場合がある。ここで、リユースとは、血液浄化の1治療が終了した後に消耗品を廃棄せず、必要に応じて洗浄や消毒した後、次の治療に再び使用することをいう。ポンプチューブ41a~41cをリユースすると使用による劣化により送液量が変化する場合がある。
【0063】
本実施形態の血液浄化装置100は、図9(a)、(b)を参照して説明したように、ポンプチューブ開閉機構50のモータ60を駆動してポンプチューブ41a、41bを閉止し、ポンプチューブ41cを開放された状態として、血液ポンプBPから所定量の液体を送液して血液ポンプBPに較正を行うことができる。このため、リユースによりポンプチューブ41bが使用により劣化した場合でも簡便に血液ポンプBPの較正を行い、流量の補正を行うことができる。
【0064】
また、本実施形態の血液浄化装置100は、図6(a)、(b)を参照して説明したように、停止状態においては、各ポンプチューブ41a~41cを開放してポンプチューブ41a~41cに押圧力が加わらないようにすることができる。これにより、ポンプチューブ41a~41cの使用による劣化を抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態の血液浄化装置100では、装置本体10に収容したポンプチューブ開閉機構50で装置本体10に収容したフィンガ駆動部20(20a~20c)を蓋30に向かって進退させてポンプチューブ41(41a~41c)の開閉を行うので、ポンプチューブ41(41a~41c)の移動機構を取り付けることが困難な蓋30にポンプチューブ41(41a~41c)を配置した場合でも、簡便な構成で液体回路の開閉を行うことができる。
【0066】
以上、説明した実施形態では、回転カム53a~53cは、血液浄化装置100の停止、透析動作、プライミング動作、血液ポンプBPの較正動作に対応した各ポンプチューブ41a~41cの開閉状態を構成できるような形状として説明したが、これに限らず、他の動作に必要な各ポンプチューブ41a~41cの開閉状態の組み合わせに応じた形状としてもよい。例えば、先に説明した回転カム53a~53cと同様に回転角度を90°毎に割り振ると、回転カムは図10(a)から(f)に示すように6種類のパターンができる。図10(a)に示す回転カムは全ての角度位置でポンプチューブ41を開放するパターンを有している。図10(b)に示す回転カムは、先に説明した回転カム53cと同様、90°位置でポンプチューブ41を閉止し、0°、180°、270°の位置でポンプチューブ41を開放するパターンを有している。図10(c)に示す回転カムは、先に説明した回転カム53a、53bと同様、90°位置と180°位置とでポンプチューブ41を閉止し、0°位置と270°位置とでポンプチューブ41を開放するパターンを有している。図10(d)に示す回転カムは、90°位置と270°位置とでポンプチューブ41を閉止し、0°位置と180°位置とでポンプチューブ41を開放するパターンを有している。図10(e)に示す回転カムは、90°位置、180°位置、270°位置でポンプチューブ41を閉止し、0°位置でポンプチューブ41を開放するパターンを有している。図10(f)に示す回転カムは、全角度位置でポンプチューブ41を閉止するパターンを有している。
【0067】
そして、図10(a)から図10(f)に示す6種類のパターンの回転カムを組み合わせて、血液浄化装置100の様々な動作に必要な各ポンプチューブ41a~41cの開閉状態の組み合わせを実現することができる。これにより、ポンプチューブ開閉機構50の1つのモータ60を駆動することにより、血液浄化装置100を様々な動作パターンで動作させることができる。なお、割付角度は、90°に限らず、例えば、45°でもよいし60°でもよい。また、本実施形態では回転カムの短辺を開、長辺を閉としたが、逆に短辺を閉、長辺を開としてもよい。
【0068】
次に図11から図13を参照しながら他の実施形態の血液浄化装置200について説明する。先に図1から図9を参照して説明した血液浄化装置100と同様の部位には同様の符号を付して説明は省略する。
【0069】
図11に示すように、本実施形態の血液浄化装置200は、血液浄化装置100の3つの回転カム53a~53cに代えて、水平面内でシャフト79によって回転する1つの回転カム75によってフィンガケーシング14a~14cを蓋30に対して進退させるものである。また、各カムフォロワ54a~54cには、それぞれ回転カム75のカム面に接する突起部71a~71cが設けられている。突起部71a~71cはカムフォロワ54a~54c、ポスト54pを介してフィンガケーシング14a~41cに接続されている。
【0070】
回転カム75は、図11に示すように、各フィンガケーシング14a~41cに接続された各突起部71a~71cを後側の開放位置とする第1カム面76と、図12に示すように各突起部71a~71cを前側の閉止位置とする第2カム面77と、図13に示すように、突起部71a、71bを前側の閉止位置とし、突起部71cを後側の開放位置とする第3カム面78とを備えている。第1カム面76は、0°位置、第2カム面77は、90°位置、第3カム面78は180°位置となっており、シャフト79を回転させることにより、ポンプチューブ41a~41cを全て開放する状態と、ポンプチューブ41a~41cを全て閉止する状態と、ポンプチューブ41a、41bを閉止し、ポンプチューブ41cを開放する状態の3つの状態を構成することができる。
【0071】
本実施形態の血液浄化装置200は、先に説明した血液浄化装置100と同様の効果を奏する。
【0072】
次に図14を参照しながら他の実施形態の血液浄化装置300について説明する。先に図1から図13を参照して説明した血液浄化装置100、200と同様の部位には同様の符号を付して説明は省略する。なお、図14は、板カム80の第1~第3カム面81、82、83が筐体11の中央に位置している状態を連続して図示したものである。実際には、第1カム面81が筐体11の内部にしている場合には、第2カム面82、第3カム面83は筐体11の外部にあり、第2カム面82が筐体11の内部にしている場合には、第1カム面81、第3カム面83は筐体11の外部にあり、第3カム面83が筐体11の内部にしている場合には、第1カム面81、第2カム面82は筐体11の外部にある。
【0073】
本実施形態の血液浄化装置300は、図11から図13を参照して説明した血液浄化装置200の回転カム75を直線状に延びる板カム80としたものである。図14に示すように、板カム80は、ギヤ面84に噛み合う駆動ギヤ85が回転することで左右に移動するものである。
【0074】
図14に示すように、板カム80は、各突起部71a~71cを後側の開放位置とする第1カム面81と、図12に示すように各突起部71a~71cを前側の閉止位置とする第2カム面82と、図13に示すように、突起部71a、71bを前側の閉止位置とし、突起部71cを後側の開放位置とする第3カム面83とを備えている。そして、駆動ギヤ85を回転させて板カム80を幅方向に移動させることにより、ポンプチューブ41a~41cを全て開放する状態と、ポンプチューブ41a~41cを全て閉止する状態と、ポンプチューブ41a、41bを閉止し、ポンプチューブ41cを開放する状態の3つの状態を構成することができる。
【0075】
本実施形態の血液浄化装置300は、先に説明した血液浄化装置100、200と同様の効果を奏する。
【0076】
次に図15図16を参照して他の実施形態の血液浄化装置400について説明する。本実施形態の血液浄化装置400は、図1から図9を参照して説明した血液浄化装置100の蓋30に代えて後板32を含むカセット130を着脱自在に取付けるように構成したものである。先に、図1から図9を参照して説明した血液浄化装置100と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。
【0077】
図15に示すように、血液浄化装置400は、装置本体10と、装置本体10に着脱自在に取り付けられるカセット130とで構成される。カセット130は下部を装置本体10のカセット受座96にはめ込み、上部の爪部35を装置本体10の金具95で締めることによって装置本体10に取り付けられる。透析に使用する際には、カセット130の血液回路入口91aと血液回路出口91bとをそれぞれ人体の血管に接続して透析を行う。以下の説明では、装置本体10とカセット130との並び方向を前後方向、水平面で前後方向と直角方向を幅方向、垂直方向を上下方向として説明する。
【0078】
図16に示すように、カセット130のケーシング31には、ダイアライザ36と透析液再生カラム38と除水容器37が収容されており、ケーシング31の装置本体10に対向する平板である後板32の表面32aには弾性を有する複数のポンプチューブ41(41a~41c)が取り付けられている。従って、本実施形態のカセット130の後板32は、先に説明した蓋30と同様、ポンプチューブ41(41a~41c)を保持するチューブ受板を構成する。装置本体10は、筐体11と、筐体11の内部に収容されたフィンガ駆動部20と、ポンプチューブ開閉機構50と、制御部65とを含んでいる。フィンガ駆動部20と、ポンプチューブ開閉機構50と、制御部65は、先に説明した血液浄化装置100と同一である。
【0079】
筐体11のベース12は、前側に延びており、延長部分にカセット受座96が取付けられている。カセット受座96は、底板96aの周りにカセット130がはめ込まれるフランジ96bがコの字形に立設したものである。カセット130をカセット受座96の中にはめ込むと、カセット130の底板34はカセット受座96の底板96aによって支持され、カセット130のケーシング31の下部は、カセット受座96のフランジ96bの内側にはまり込む。カセット130が装置本体10に取り付けられて、カセット130の後板32の装置本体10の側の表面32aが装置本体10の前板13cの前側の面に接すると、図3図4を参照して説明したと同様、ポンプチューブ41(41a~41c)は、フィンガケーシング14(14a~14c)前側の面に設けられて上下方向に延びるV字状のチューブ受溝24(24a~24c)に収容される。そして、フィンガ駆動部20a~20cとポンプチューブ41a~41cは、それぞれ、透析液出口ポンプDPO、血液ポンプBP、透析液入口ポンプDPIを構成する。
【0080】
本実施形態の血液浄化装置400の動作は先に説明した血液浄化装置100と同様である。また、本実施形態の血液浄化装置400は、血液回路91、透析液回路92を構成するダイアライザ36、除水容器37、透析液再生カラム38、各ポンプチューブ41a~41c及び各機器を接続する接続管をカセット130に一体に収容して装置本体10に着脱可能としている。このため本実施形態の血液浄化装置400は、血液浄化装置100の効果に加え、接液部分を一体にしたカセット130を使い捨てにすることができ、血液浄化装置400の取り扱いを簡便にすることができるという効果を奏する。
【0081】
次に図17を参照しながら他の実施形態の血液浄化装置500について説明する。本実施形態の血液浄化装置500は、回転カム53a~53cの前側に配置されたカムフォロワ54a~54cに加えて後側にもカムフォロワ54d~54fを配置し、カムフォロワ54a~54c、54d~54fの間を接続部材54gで接続して一体としたものである。回転カム53a~53c、カムフォロワ54a~54cの構成は、先に、図1から図9を参照して説明した血液浄化装置100と同一である。なお、血液浄化装置500は、コイルスプリング52を備えていない。回転カム53a~53c、カムフォロワ54a~54c,54d~54f、接続部材54gは引き戻し機構を構成する。
【0082】
図17(a)に示すように、シャフト61を初期位置から90°回転させると回転カム53a~53cは前側のカムフォロワ54a~54cを前側に押し出して前側の閉止位置とする。これにより、各フィンガケーシング14a~14cが前方に向かって移動し、各フィンガ15a~15cは各ポンプチューブ41a~41cを蓋30に押圧し、透析液出口ポンプDPO、血液ポンプBP、透析液入口ポンプDPIは、送液可能な状態となる。
【0083】
図17(b)に示すように、シャフト61を図17(a)に示す状態から180°回転させると、回転カム53a~53cは後側のカムフォロワ54d~54fを後方に押し出して後ろ側の開放位置とする。これにより、各フィンガケーシング14a~14cが後方に向かって距離Lだけ移動し、透析液出口ポンプDPO、血液ポンプBP、透析液入口ポンプDPIの各フィンガ15a~15cは、各ポンプチューブ41a~41cから離れた状態となる。
【0084】
このように、本実施形態の血液浄化装置500は、コイルスプリング52を用いずに前後二つのカムフォロワ54a~54c,54d~54fと回転カム53a~53bとを係合させることにより、各フィンガケーシング14a~14bを前後方向に移動させる。本実施形態の血液浄化装置500は、先に説明した血液浄化装置100と同様の効果を奏する。
【0085】
次に、図18を参照しながら他の実施形態の血液浄化装置600について説明する。本実施形態の血液浄化装置600は、蓋30とポンプチューブ41(41a~41c)との間に平板状のチューブ受板140を配置し、シャフト61に取り付けた回転カム53dを回転させることによりチューブ受板140をフィンガ駆動部20(20a~20c)に向かって進出させ、コイルスプリング152でチューブ受板140を蓋30に向かって引き戻し、フィンガ駆動部20(20a~20c)から退出させるように構成したものである。血液浄化装置600では、フィンガ駆動部20(20a~20c)は装置本体10に固定されており、前後方向に移動しない。
【0086】
図18に示すように、チューブ受板140は、蓋30とポンプチューブ41(41a~41c)との間に配置された平板状部材でフィンガ15a~15cと協働してポンプチューブ41(41a~41c)を潰せるような硬度を有するものである。上下方向の長さはフィンガ15a~15cの上下方向長さと同様である。チューブ受板140はポンプチューブ41(41a~41c)と共に蓋30に保持されている。
【0087】
チューブ受板140の幅方向両端には後方に向かって立ち上がるフランジ141が設けられている。フランジ141の後方側端部には、蓋30を閉めた際に筐体11に取り付けられているカムアーム143と係合する接続機構142が取り付けられている。フランジ141の側面にはリブ145が張り出しており、リブ145と蓋30との間には、コイルスプリング152が取り付けられている。
【0088】
装置本体10の後板11aには、シャフト61を回転自在に支持するブラケット55が取り付けられている。シャフト61の両端には回転カム53dが取り付けられている。また、筐体11の内部の両側には、前後方向にスライド可能に支持されたカムアーム143が取り付けられている。カムアーム143の後端には回転カム53dと係合するカムフォロワ154が取り付けられている。回転カム53dは、少なくとも1つの凸部を有するもので、例えば、図6(b)に示す回転カム53aあるいは回転カム53cと同様の形状でもよい。
【0089】
蓋30を閉めると接続機構142によってチューブ受板140のフランジ141とカムアーム143とが接続される。図示しないモータ60によってシャフト61を回転させると、回転カム53dの凸部がカムフォロワ154に係合してカムフォロワ154を後方に移動させる。これにより、チューブ受板140が後方に移動し、各ポンプチューブ41a~41cがフィンガ15a~15cに押圧され、透析液出口ポンプDPO、血液ポンプBP、透析液入口ポンプDPIは、送液可能な状態となる。
【0090】
また、モータ60によってシャフト61を回転させて回転カム53dの凸部とカムフォロワ154との係合が外れると、チューブ受板140は、コイルスプリング152によって蓋30に向かって引き戻され、透析液出口ポンプDPO、血液ポンプBP、透析液入口ポンプDPIの各フィンガ15a~15cは、各ポンプチューブ41a~41cから離れた状態となる。
【0091】
以上、説明した各実施形態の血液浄化装置100、200、300、400、500、600では、チューブ駆動体はフィンガ15(15a~15c)であるとして説明したが、これに限らず、ポンプチューブ41(41a~41c)をしごくローラとしてもよい。ローラの場合、蓋30の装置本体10の側の表面30a、チューブ受板140の装置本体10の側の面は、それぞれローラの外面に沿った曲面となる。
【0092】
次に、図19図24を参照しながら他の実施形態の血液浄化装置110について説明する。先に図1図9を参照して説明した血液浄化装置100と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。
【0093】
図19図20に示すように、血液浄化装置110は、フィンガ駆動部20(20a~20c)のフィンガケーシング14(14a~14c)に弾性体である調整ばね54sを介してカムフォロワ54a~54cを取付けたものである。その他の構成は、先に図1から図9を参照して説明した血液浄化装置100と同一の構成となっている。
【0094】
図21に示すように、カムフォロワ54aの前側には、ポスト54pが固定されており、フィンガケーシング14aの背板22には、ポスト54pの先端が入り込む凹部23が設けられている。また、背板22の凹部23の周縁には内径がポスト54pの直径と略同一のワッシャ54qが固定されている。ワッシャ54qとカムフォロワ54aとの間のポスト54pの外周には調整ばね54sが取付けられている。血液浄化装置110では、調整ばね54sはコイルスプリングであるが、これに限らず、板バネでもよいし、ゴム部材で構成してもよい。なお、ワッシャ54qを設けなくともよい。
【0095】
回転カム53aが回転してカムフォロワ54aをフィンガ駆動部20aに向かって進出させ、調整ばね54sが縮むとポスト54pの先端は、背板22の凹部23の中に進入する。
【0096】
調整ばね54sのばね定数は、ポンプチューブ41(41a~41c)を押しつぶす方向のばね定数よりも大きく、反力でポンプチューブ41(41a~41c)を閉め切ることができるばね定数以上であり、調整ばね54sが圧縮された場合でもその反力によりポンプチューブ41(41a~41c)を損傷させない程度のばね定数となっている。
【0097】
図22図24を参照しながら血液浄化装置110の回転カム53aが回転してフィンガ駆動部20aを蓋30に向かって進出させてポンプチューブ41aを閉止する閉止動作について説明する。なお、図22図24は、閉止動作を説明するための模式図であり、各部を簡略化して記載してある。また、フィンガ駆動部20b,20cの動作はフィンガ駆動部20aの動作と同様である。
【0098】
図22に示すように、初期状態では、調整ばね54sは基準長さL1であり、ポンプチューブ41aの外形はd1となっている。
【0099】
図23に示すように、回転カム53aを回転させるとカムフォロワ54aが蓋30に向かって進出していく。先に説明したように、調整ばね54sのばね定数は、ポンプチューブ41aを押しつぶす方向のばね定数よりも大きいので、カムフォロワ54aが蓋30に向かって進出すると、フィンガ15aと蓋30に挟まれてポンプチューブ41aが潰れていく。回転カム53aが回転し、ポンプチューブ41aが潰れて閉止状態になるとポンプチューブ41aの厚さはd2となる。この際、カムフォロワ54aは(d1-d2)+(L1-L2)だけ進出し、調整ばね54sは基準長さL1よりもわずかに縮んだL2となる。
【0100】
そして、図24に示すように、更に回転カム53aが回転してカムフォロワ54aが蓋30に向かって進出していくと、ポンプチューブ41aの厚さはd2のままで、調整ばね54sが長さL2から縮み始める。この際、ポスト54pの先端は、図21に示す背板22の凹部23の中に進出していく。そして、更に回転カム53aが回転してカムフォロワ54aが(d1-d2)+(L1-L3)だけ進出すると、調整ばね54sは長さL3まで縮む。この際、フィンガ駆動部20aと蓋30の表面30aとの間には隙間があいている。この際の調整ばね54sの反力は、ポンプチューブ41aを損傷させない程度の力である。
【0101】
このように、血液浄化装置110では、調整ばね54sは、フィンガ15aがポンプチューブ41aを閉止してから長さ(L2-L3)だけ縮んでカムフォロワ54aの進出距離を吸収する。このため、フィンガ駆動部20aの蓋30に対する進出距離を精度よく調整しなくても、ポンプチューブ41aの閉止と開放とを確実に行うことができる。また、長さL3まで縮んだ際の調整ばね54sの反力は、ポンプチューブ41aを損傷させない程度の力なのでポンプチューブ41aを過度に押圧することを抑制でき、ポンプチューブ41aの損傷を抑制することができる。
【0102】
以上の説明では、フィンガケーシング14aの背板22にポスト54pの先端が入り込む凹部23が設けられていることとして説明したが、調整ばね54sが縮んだ際にポスト54pの先端がフィンガケーシング14aの背板22と干渉しないような構造であれば、凹部23を設けなくてもよい。例えば、ワッシャ54qの厚さを調整ばね54sの縮み分よりも厚くし、調整ばね54sが縮んだ際にポスト54pの先端がワッシャ54qの中に進出するように構成してもよい。また、背板22の調整ばね54sが当たる部分を凸状としてもよい。
【0103】
次に、図25を参照しながら血液浄化装置110の変形例の血液浄化装置112について説明する。図25に示すように、血液浄化装置112は、フィンガ15aが最も前側に移動した状態において、フィンガ15aの前側の先端がフィンガ駆動部20aの前側の先端25aから距離d2だけ後側となるように構成したものである。また、フィンガ駆動部20b,20cの構成はフィンガ駆動部20aと同一の構成である。この他の構成は、先に図19図24を参照して説明した血液浄化装置110と同一である。
【0104】
この構成により、図25に示すように、フィンガ15aがポンプチューブ41aを閉止してポンプチューブ41aの厚さがd2となった際に、フィンガ駆動部20aの前側の先端25aが蓋30の表面30aに当接し、それ以上、フィンガ15aがポンプチューブ41aを押圧しない。これにより、ポンプチューブ41aに過剰な押圧力がかかることを抑制でき、より効果的にポンプチューブ41aの損傷を抑制することができる。
【0105】
次に、図26を参照しながら、血液浄化装置110の変形例の血液浄化装置115について説明する。図26に示すように、血液浄化装置115では、ポスト54pがフィンガケーシング14aの背板22に固定されており、カムフォロワ54aにポスト54pが貫通する貫通孔54Haが設けられている。ポスト54pの周囲の背板22とカムフォロワ54aとの間には、調整ばね54sが取付けられている。回転カム53がカムフォロワ54aを前側に押し出して調整ばね54sが縮むと、ポスト54pの後端は、カムフォロワ54aの貫通孔54Haを通って後側に進出する。なお、フィンガケーシング14b,14cの背板22と各カムフォロワ54b,54c、ポスト54pの構成は上記の構成と同一である。
【0106】
血液浄化装置115の動作は、先に説明した血液浄化装置110と同様で、同様の効果を奏する。
【0107】
次に図27図31を参照しながら、他の実施形態の血液浄化装置120について説明する。先に図1図9を参照して説明した血液浄化装置100と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。
【0108】
図27図28に示すように、血液浄化装置120は、蓋30のフィンガ駆動部20a~20cの各フィンガ15a~15cに対向する部分に凹部30Aa~30Acを設け、各凹部30Aa~30Acの中に調整ばね30Sa~30Scを介してチューブ受板であるチューブ支持板30Ba~30Bcを取付けたものである。ポンプチューブ開閉機構50は、回転カム53a~53cを回転させて各フィンガ駆動部20a~20cを各チューブ支持板30Ba~30Bcに向かって進退させて、各フィンガ駆動部20a~20cの各フィンガ15a~15cと各チューブ支持板30Ba~30Bcとの間にそれぞれ配置されたポンプチューブ41a~41cの閉止と開放とを行う。その他の構成は、先に図1から図9を参照して説明した血液浄化装置100と同一の構成となっている。なお、各チューブ支持板30Ba~30Bcが調整ばね30Sa~30Scを介して蓋30に取付けられていれば、凹部30Aa~30Acを設けない構成としてもよい。また、調整ばね30Sa~30Scが当たる蓋30の部分を凸状の構成としてもよい。
【0109】
先に説明した血液浄化装置110と同様、調整ばね30Sa~30Scのばね定数は、ポンプチューブ41(41a~41c)を押しつぶす方向のばね定数よりも大きく、反力でポンプチューブ41(41a~41c)を閉め切ることができるばね定数以上であり、調整ばね30Sa~30Scが圧縮された場合でもその反力によりポンプチューブ41(41a~41c)を損傷させない程度のばね定数となっている。
【0110】
図29図31を参照しながら血液浄化装置120の回転カム53aが回転してフィンガ駆動部20aを蓋30に向かって進出させてポンプチューブ41aを閉止する閉止動作について説明する。なお、図29図31は、閉止動作を説明するための模式図であり、各部を簡略化して記載してある。また、フィンガ駆動部20b,20cの動作はフィンガ駆動部20aの動作と同様である。
【0111】
図29に示すように、初期状態では、調整ばね30Saは基準長さL4であり、ポンプチューブ41aの外形はd1となっている。
【0112】
図30に示すように、回転カム53aを回転させるとカムフォロワ54aが蓋30に向かって進出していく。先に説明したと同様、調整ばね30Saのばね定数は、ポンプチューブ41aを押しつぶす方向のばね定数よりも大きいので、カムフォロワ54aが蓋30に向かって進出すると、フィンガ15aとチューブ支持板30Baとの間に挟まれてポンプチューブ41aが潰れていく。回転カム53aが回転し、ポンプチューブ41aが潰れて閉止状態になるとポンプチューブ41aの厚さはd2となる。この際、カムフォロワ54aは(d1-d2)+(L4-L5)だけ進出し、調整ばね30Saは基準長さL4よりもわずかに縮んだL5となる。
【0113】
そして、図31に示すように、更に回転カム53aが回転してカムフォロワ54aが蓋30に向かって進出していくと、ポンプチューブ41aの厚さはd2のままで、調整ばね30Saが長さL4から縮み始める。この際、チューブ支持板30Baは、蓋30の凹部30Aaの中に入っていく。そして、更に回転カム53aが回転してカムフォロワ54aが(d1-d2)+(L4-L6)だけ進出すると、調整ばね30Saは長さL6まで縮む。この際、フィンガ駆動部20aとチューブ支持板30Baの表面30Caとの間には隙間があいている。この際の調整ばね30Saの反力は、ポンプチューブ41aを損傷させない程度の力である。
【0114】
このように、血液浄化装置120では、調整ばね30Saは、ポンプチューブ41aを閉止してから長さ(L5-L6)だけ縮んでカムフォロワ54aの進出距離を吸収する。このため、フィンガ駆動部20aの蓋30に対する進出距離を精度よく調整しなくても、ポンプチューブ41aの閉止と開放とを確実に行うことができる。また、長さL6まで縮んだ際の調整ばね30Saの反力は、ポンプチューブ41aを損傷させない程度の力なのでポンプチューブ41aを過度に押圧することを抑制でき、ポンプチューブ41aの損傷を抑制することができる。なお、血液浄化装置120では、調整ばね30Saはコイルスプリングであるが、これに限らず、板バネでもよいし、ゴム部材で構成してもよい。
【0115】
次に、図32を参照しながら血液浄化装置120の変形例の血液浄化装置122について説明する。図32に示すように、血液浄化装置122は、フィンガ15aが最も前側に移動した状態において、フィンガ15aの前側の先端がフィンガ駆動部20aの前側の先端25aから距離d2だけ後側となるように構成したものである。なお、フィンガ駆動部20b,20cの構成はフィンガ駆動部20aと同一の構成である。この他の構成は、先に図27図31を参照して説明した血液浄化装置120と同一である。
【0116】
この構成により、図32に示すように、フィンガ15aがポンプチューブ41aを閉止してポンプチューブ41aの厚さがd2となった際に、フィンガ駆動部20aの前側の先端25aがチューブ支持板30Baの表面30Caに当接し、それ以上、フィンガ15aがポンプチューブ41aを押圧しない。また、この際、フィンガ駆動部20の先端25aと蓋30の表面30aとの間には、隙間eがあくように調整ばね30Saのばね定数が調整されている。これにより、ポンプチューブ41aに過剰な押圧力がかかることを抑制でき、より効果的のポンプチューブ41aの損傷を抑制することができる。
【0117】
以上、説明した血液浄化装置110,112では、フィンガ駆動部20a~20cとカムフォロワ54a~54cとの間にそれぞれ調整ばね54sを配置し、血液浄化装置120、122では、フィンガ駆動部20a~20cと蓋30との間に調整ばね30Sa~30Scを配置することとして説明したがこれに限定されない。例えば、フィンガ駆動部20a~20cとカムフォロワ54a~54cとの間にそれぞれ調整ばね54sを配置し、且つ、フィンガ駆動部20a~20cと蓋30との間に調整ばね30Sa~30Scを配置するように構成してもよい。また、フィンガ駆動部20a~20cの一部ではカムフォロワ54a~54cとの間にそれぞれ調整ばね54sを配置し、他の一部では、蓋30との間に調整ばね30Saを配置するように構成してもよい。
【0118】
次に図33,34を参照しながら他の実施形態の血液浄化装置610について説明する。血液浄化装置610は、カムアーム143の先端をL字型として回転カム53dと対向する先端部143Aとし、先端部143Aと回転カム53dとの間に弾性部材である調整ばね154sを介してカムフォロワ155を配置すると共に、カムアーム143と接続機構142との間に調整ばね143sを配置したものである。その他の構成は、図18を参照して説明した血液浄化装置600と同一である。
【0119】
図34に示すように、カムフォロワ155の後側には、ポスト154pが固定されており、先端部143Aには、ポスト154pの先端が入り込む凹部143Bが設けられている。また、先端部143Aの凹部143Bの周縁には内径がポスト154pの直径と略同一のワッシャ154qが固定されている。ワッシャ154qとカムフォロワ155との間のポスト154pの外周には調整ばね154sが取付けられている。血液浄化装置610では、調整ばね154sはコイルスプリングであるが、これに限らず、板バネでもよいし、ゴム部材で構成してもよい。
【0120】
回転カム53dが回転してカムフォロワ154aを先端部143Aに向かって進出させ、調整ばね154sが縮むとポスト154pの先端は、先端部143Aの凹部143Bの中に進入する。
【0121】
先に図19図32を参照して説明した血液浄化装置110,120と同様、血液浄化装置610は、ポンプチューブ41a~41cの閉止動作において、調整ばね154s,143sが縮んでカムフォロワ155の進出距離を吸収するので、カムアーム143の進出距離を精度よく調整しなくても、ポンプチューブ41a~41cの閉止と開放とを確実に行うことができると同時にポンプチューブ41a~41cの損傷を抑制することができる。
【0122】
以上説明した血液浄化装置610では、カムアーム143の先端部143Aと回転カム53dとの間とカムアーム143と接続機構142との間にそれぞれ調整ばね154s,143sを配置することとして説明したが、これに限らず、いずれか一方のみに調整ばねを配置するように構成してもよい。また、先に図26を参照して説明した血液浄化装置115と同様、凹部143Bを設けずに先端部143Aにポスト154pを取付け、カムフォロワ155にポスト154pが貫通する貫通孔を設けるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0123】
10 装置本体、11 筐体、11a 後板、11b 側板、12 ベース、13a リブ、13b 幅板、13c 前板、13d 天井板、14,14a~14c フィンガケーシング、15,15a~15c フィンガ、17,17a~17c 駆動モータ、56,59 プーリ、57 ベルト、20,20a~20c フィンガ駆動部、21,21a~21c フィンガ支持部分、22 背板、23 凹部、24,24a~24c チューブ受溝、25a 先端、30 蓋、30a,32a,30Ca 表面、30Aa~30Ac,143B 凹部、30Ba~30Bc チューブ支持板、30Sa~30Sc,54s,154s 調整ばね、31 ケーシング、32 後板、33 重量検出部、34,96a 底板、35 爪部、36 ダイアライザ、37 除水容器、38 透析液再生カラム、39 ドリップチャンバ、41,41a~41c ポンプチューブ、50 ポンプチューブ開閉機構、51 ケーシングガイド、51a 支持板、51b ガイドバー、51c,54g 接続部材、52,152 コイルスプリング、52a,52b ピン、53,53a~53d,75 回転カム、54Ha 貫通孔、54q,154q ワッシャ、54a~54f,154,155 カムフォロワ、54p,154p ポスト、55,58 ブラケット、60 モータ、61,62,79 シャフト、63 カラー、65 制御部、71a~71c 突起部、76,81 第1カム面、77,82 第2カム面、78,83 第3カム面、80 板カム、84 ギヤ面、85 駆動ギヤ、91 血液回路、91a 血液回路入口、91b 血液回路出口、92 透析液回路、93 較正液用バッグ、94 バルブ、95 金具、96 カセット受座、96b フランジ、100,110,112,115,120,122,200,300,400,500,600,610 血液浄化装置、130 カセット、140 チューブ受板、141 フランジ、142 接続機構、143 カムアーム、143A 先端部、145 リブ、BP 血液ポンプ、DPI 透析液入口ポンプ、DPO 透析液出口ポンプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34