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▶ パークウィンド ナームローゼ フェンノートシャップの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】風力タービン用作業プラットホーム
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/50 20160101AFI20230622BHJP
   F03D 1/00 20060101ALI20230622BHJP
   E02B 17/00 20060101ALI20230622BHJP
   E04H 12/00 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
F03D80/50
F03D1/00
E02B17/00 Z
E04H12/00 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020544118
(86)(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 EP2018080256
(87)【国際公開番号】W WO2019096620
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】17201571.1
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520165917
【氏名又は名称】パークウィンド ナームローゼ フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデン オート セドリック
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-101914(JP,A)
【文献】特開2013-123936(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0316024(US,A1)
【文献】特表2014-534115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
E02B 17/00
E04H 12/00
B63B 35/00;35/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上風力タービン(200)上に設置可能な作業プラットホーム(100)であって、前記作業プラットホームは、
‐設置時に前記作業プラットホームの頂側部(124)を形成する不浸透性頂部プレート(120)と、
‐設置時に前記作業プラットホームの底側部(123)を形成する不浸透性底部プレート(121)と、
‐1枚または2枚以上の不浸透性側部プレート(130,131,132)とを有し、前記不浸透性頂部プレート(120)、前記不浸透性底部プレート(121)および前記不浸透性側部プレート(130,131,132)は、防水性の密閉空間を形成するよう互いに配置されている、作業プラットホーム(100)。
【請求項2】
前記不浸透性頂部プレート(120)、前記不浸透性底部プレート(121)および前記不浸透性側部プレート(130,131,132)はさらに、自立形構造体を形成するよう互いに配置されている、請求項1記載の作業プラットホーム(100)。
【請求項3】
前記1枚または2枚以上の不浸透性側部プレート(130,131,132)はさらに、設置時に垂直撓み抵抗に寄与する、請求項1または2記載の作業プラットホーム(100)。
【請求項4】
前記1枚または2枚以上の不浸透性側部プレート(130,131,132)の高さは、設置時に垂直撓みが所定の最大垂直撓み未満であるよう定められている、請求項3記載の作業プラットホーム(100)。
【請求項5】
前記1枚または2枚以上の不浸透性側部プレート(130,131,132)は、内側部プレート(132)および外側部プレート(130,131)から成り、前記内側部プレート(132)および前記外側部プレート(130,131)は、前記密閉空間が前記内側部プレートによって貫通穴(125)を包囲し、前記貫通穴から前記外側部プレートまで外方に延びるよう配置され、前記貫通穴は、前記洋上風力タービン(200)の管状断面(201)に嵌まるためである、請求項1~4のうちいずれか一に記載の作業プラットホーム(100)。
【請求項6】
前記密閉空間内に設けられた1つまたは2つ以上の内側ビーム(161~167,141~144,151~154)をさらに有し、前記1つまたは2つ以上の内側ビームは、前記不浸透性頂部プレートおよび/または前記不浸透性底部プレートが支持されるようにかつ使用時に前記1つまたは2つ以上の内側ビームが垂直撓み抵抗にさらに寄与するよう前記不浸透性頂部プレート(120)および/または前記不浸透性底部プレート(121)に連結されている、請求項1~5のうちいずれか一に記載の作業プラットホーム(100)。
【請求項7】
前記1つまたは2つ以上の内側ビーム(141~144,151~154)は、格子パターンに従って配列されている、請求項6記載の作業プラットホーム(100)。
【請求項8】
前記1つまたは2つ以上の内側ビームは、スロットを有し、前記格子パターンに従って互いに横断する前記内側ビームは、前記スロットによって互いに嵌め込まれている、請求項7記載の作業プラットホーム(100)。
【請求項9】
前記不浸透性頂部プレート(120)、前記不浸透性底部プレート(121)および前記不浸透性側部プレート(130,131,132)は、雨水の入らない防水性の前記密閉空間を形成するよう金属で作られかつ互いに溶接されている、請求項1~8のうちいずれか一に記載の作業プラットホーム(100)。
【請求項10】
前記1つまたは2つ以上の内側ビームは、金属で作られかつ前記不浸透性頂部プレートおよび/または前記不浸透性底部プレートに溶接されている、請求項6~8のうちいずれか一に記載の作業プラットホーム(100)。
【請求項11】
洋上風力タービン(200)であって、請求項1~10のうちいずれか一に記載の前記作業プラットホーム(100)を有する、洋上風力タービン(200)。
【請求項12】
請求項7に従属することを条件として請求項1~10のうちいずれか一に記載の前記作業プラットホーム(100)を製造する方法であって、
‐第1のプレート(320)を用意するステップと、
‐前記1つまたは2つ以上の内側ビーム(341~343,351~353)を前記第1のプレートに固定するステップと、
‐1枚または2枚以上のプレート(321a,321b)を前記1つまたは2つ以上の内側ビームに固定し、それにより第2のプレートを形成するステップと、
‐前記1枚または2枚以上の不浸透性側部プレートを前記第1のプレートおよび前記第2のプレートの側部に固定するステップとを含み、
前記第1のプレート(320)および前記第2のプレート(321)は、前記不浸透性底部プレートおよび前記不浸透性頂部プレートにそれぞれ対応し、または、前記第1のプレートおよび前記第2のプレートは、それぞれ、前記不浸透性頂部プレートおよび前記不浸透性底部プレートに対応している、方法。
【請求項13】
‐前記1つまたは2つ以上の内側ビームの第1のサブセット(341~343)を前記第1のプレートに固定するステップと、
‐前記1つまたは2つ以上の内側ビームの第2のサブセット(351~353)を前記第1のプレートに固定して前記第1のサブセットおよび前記第2のサブセットが格子パターンを形成するようにするステップとをさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
‐前記1つまたは2つ以上の内側ビーム(341~343,351~353)を前記第1のプレートに溶接するステップと、
‐前記1枚または2枚以上のプレート(321a,321b)を前記1つまたは2つ以上の内側ビームに溶接するステップとをさらに含む、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
前記1つまたは2つ以上の内側ビーム(341~343,351~353)を溶接する前記ステップは、千鳥溶接によって実施される、請求項14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、洋上風力タービン上に設置可能な作業プラットホーム、かかる作業プラットホームを製造する方法、かかる作業プラットホームを有する洋上風力タービン、およびかかる作業プラットホームを備えた洋上風力タービンを設置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洋上風力タービンは、主要な再生可能エネルギー源のうちの1つになった。風が海上においてほぼ一定に存在することにより、生成される電力とアップタイム(使用可能時間)の両面において高い効率が保証される。さらに、風力タービンのサイズは、工学上の制約によってしか制限されず、他方、陸上風力タービンは、他の要因、例えば、騒音、美観、影、航空交通などによって極めて大きな制約を受ける。
【0003】
作業プラットホーム、すなわち風力タービンの外部から遠ざかって延びる水平のプラットホームが必要不可欠な要素である。作業プラットホームは、多くの機能、例えば、建造中および建造後における作業領域として、風力タービンの内部への入口として、下に設けられた乗船ラダーのための入口箇所として、一時的または永続的なクレーンのための支持プラットホームとして、航路標識、例えば灯や霧笛のための支持体として、船舶からの直接のアクセスをもたらす動作補償ゲートウェイの支持体としての機能を果たす。
【0004】
作業プラットホームに関する種々の厳格な要件により、作業プラットホームは、風力タービンの最もコスト高の要素となる。先ず第1に、プラットホームは、過酷な海洋環境に耐えることができなければならない。第2に、プラットホームが呈する場合のある最大撓みが存在する。第3に、作業プラットホームは、典型的には、陸上で建造され、移行部材に取り付けられ、次に洋上で風力タービンに組み付けられる。
【0005】
例えば、米国特許出願公開第2015/0292175号明細書に開示されている作業プラットホームの一具体化例は、鋼製の管状骨組を有し、プレート付き作業領域が骨組の頂部上に固定されている。鋼製骨組は、この場合、プラットホームにその必要な強度および剛性を与える。次に、腐食に対する別の保護措置がプラットホーム全体に被着された1つまたは2つ以上のコーティング層によって提供される場合がある。
【0006】
管状骨組を利用したプラットホームは、種々の厳格な要件に適合することが判明したが、この管状骨組には幾つかの欠点が依然として存在する。先ず最初に、鋼製管状骨組の製造プロセスは、極めて大きな労働力を必要とするが、その理由は、全ての部品が互いに溶接される必要があるからである。所要の耐腐食性を保証するため、完全溶け込み溶接が必要とされ、かかる完全溶け込み溶接は、達成するのに数回の溶接パスを必要とする場合がある。完全溶け込み溶接は、溶接変形が起こる場合があるという別のデメリットをもたらす。第2に、コーティングそれ自体は、管状骨組に特有の湾曲部および曲がり部の全てに起因して大きな労働力を必要とする。さらに、溶接に起因するでこぼこの全ては、腐食が始まる場合のあるコーティング中の潜在的に脆弱な箇所である。このデメリットはまた、保守費に悪影響を及ぼすが、その理由は、作業プラットホームが必要な場所はどこでもまたは必要なときにはいつでも点検して補修され、例えば、再コーティングされなければならないからである。複雑な構造のために、点検プロセスが長時間にわたり、かくしてコスト高であり、しかも最適とはいえないコーティングのために、修復が必要になる場合が多い。第3に、管状骨組中の露出部品の鋼厚さは、典型的には、強度の観点から大きめの寸法に定められており、その理由は、管状骨組が異常気象条件に耐えなければならないからである。これはさらに、高い材料費および設置費用を結果として招き、しかも溶接に関連した上述の問題をさらに悪化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2015/0292175号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の問題およびデメリットを軽減し、とりわけ変形しにくく、建造誤差またはでこぼこを生じさせる傾向が低く、コーティングするとともに保守するのが容易であり、しかも部品表内容が少ない作業プラットホームを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、第1の観点によれば、洋上風力タービン上に設置可能な作業プラットホームであって、作業プラットホームは、i)設置時に作業プラットホームの頂側部を形成する不浸透性頂部プレートと、ii)設置時に作業プラットホームの底側部を形成する不浸透性底部プレートと、iii)1枚または2枚以上の不浸透性側部プレートとを有する作業プラットホームによって達成される。不浸透性頂部プレート、不浸透性底部プレートおよび不浸透性側部プレートは、防水性の密閉空間を形成するよう互いに配置されている。
【0010】
換言すると、作業プラットホームは、頂部プレート、底部プレートおよび側部プレートによって構成され、かくして密閉空間を画定する箱状構造体を有する。不浸透性および防水性という表現は、作業プラットホームが設置されたとき、どのような気象条件下においても水、すなわち海水または雨水が密閉空間に入ることができないことを意味している。これは、密閉空間内に存在する全てのものが風雨にさらされることがなく、したがって、構造上の要件、例えば、剛性または撓みに応じてのみ設計すれば良いという作用効果を有する。したがって、非常に単純な露出外側構造体が得られ、その結果さらに、変形が少なく、材料が軽く、コーティングされる必要のあるでこぼこが少なく、しかも部品表内容が少ないということがメリットである。
【0011】
有利には、不浸透性頂部プレート、不浸透性底部プレートおよび不浸透性側部プレートはさらに、自立形構造体を形成するよう互いに配置される。換言すると、頂部プレートは、作業プラットホームの頂部上の垂直荷重のための支持機能を有し、設置時に実質的に垂直位置にある側部プレートは、頂部プレートのための一層の支持作用を提供する。同様に、1枚または2枚以上の不浸透性側部プレートは、設置時における垂直撓み抵抗にさらに寄与することができる。
【0012】
垂直撓みを制限するため、1枚または2枚以上の不浸透性側部プレートの高さは、設置時における垂直撓みが所定の最大垂直撓み未満であるようなものである。換言すると、荷重下にあるプラットホームの曲がりは、側部プレートの高さによって定められる。
【0013】
実施形態によれば、1枚または2枚以上の不浸透性側プレートは、内側部プレートおよび外側部プレートから成り、内側部プレートおよび外側部プレートは、密閉空間が内側部プレートによって貫通穴を包囲し、貫通穴から外側部プレートまで外方に延びるよう配置され、貫通穴は、洋上風力タービンの管状断面に嵌まるためである。
【0014】
換言すると、密閉空間は、設置時における風力タービンの杭を包囲し、その結果、風力タービンの輪郭全体が作業プラットホームによって接近可能である。
【0015】
実施形態によれば、作業プラットホームは、密閉空間内に設けられた1つまたは2つ以上の内側ビームをさらに有し、1つまたは2つ以上の内側ビームは、頂部プレートおよび/または底部プレートが支持されるようにかつ使用時に1つまたは2つ以上の内側ビームが垂直撓み抵抗にさらに寄与するように頂部プレートおよび/または底部プレートに連結されている。
【0016】
換言すると、内側ビームは、作業プラットホームの別の構造要素である。内側ビームの高さは、側部プレートの高さに一致しているが、その理由は、側部プレートもまた、頂部プレートから底部プレートまで延びているからである。この結果、剛性のさらに高い作業プラットホームが得られる。内側ビームは、露出されていないので、これらの寸法決めは、プラットホームの積分剛性要件によって実施できる。このことは、プラットホームの全体的撓み抵抗が主としてビームの高さによって定められるので内側ビームの厚さを減少させることができるということを意味している。
【0017】
有利には、1つまたは2つ以上の内側ビームは、格子パターンに従って配列される。このことは、内側ビームのうちの少なくとも2つが互いに交差し、それにより設置時に2つの水平方向に構造剛性を提供することを意味している。
【0018】
より有利には、内側ビームの交差を容易にするため、内側ビームは、スロットを有し、格子パターンに従って互いに交差する内側ビームは、スロットによって互いに嵌め込まれる。これは、内側ビームが互いにインターロックし、スロットがあるにもかかわらず、しかもそれどころか交差している内側ビーム相互間にどのような永続的接続部もないにもかかわらず、内側ビームがこれらの高さ全体にわたって撓み抵抗をもたらすようになっているという別のメリットを有する。
【0019】
好ましくは、不浸透性頂部プレート、不浸透性底部プレートおよび不浸透性側部プレートは、雨水の入らない密閉空間を形成するよう金属で作られかつ互いに溶接される。同様に、内側ビームもまた金属で作られかつ頂部プレートおよび/または底部プレートに溶接されるのが良い。頂部プレート、底部プレートおよび側部プレートだけが耐腐食性によって定められた厚さを有し、内側ビームの厚さが構造要件によってのみ定められるということがメリットである。さらに、頂部プレート、底部プレートおよび側部プレート相互間の接続部だけが完全溶け込み溶接を必要とし、他方、他の全ての接続部を極めて簡単な溶接、例えば、ワンパス千鳥溶接によって作ることができる。
【0020】
変形例として、プレートおよびビームについて他の材料、例えば、アルミニウム、ガラス繊維または繊維強化プラスチックもまた使用できる。
【0021】
第2の観点によれば、本発明は、特許請求の範囲において先行する請求項のうちのどれか1つに記載された作業プラットホームを有する洋上風力タービンに関する。
【0022】
第3の観点によれば、本発明はまた、第1の観点にかかる作業プラットホームを製造する方法に関する。この方法は、
‐第1のプレートを用意するステップと、
‐1つまたは2つ以上の内側ビームを第1のプレートに固定するステップと、
‐1枚または2枚以上のプレートを1つまたは2つ以上の内側ビームに固定し、それにより第2のプレートを形成するステップと、
‐1枚または2枚以上の側部プレートを第1のプレートおよび第2のプレートの側部に固定するステップとを含み、
第1のプレートおよび第2のプレートは、底部プレートおよび頂部プレートにそれぞれ対応し、または変形例として、第1のプレートおよび第2のプレートは、それぞれ、頂部プレートおよび底部プレートに対応する。
【0023】
実施形態によれば、この方法は、
‐1つまたは2つ以上の内側ビームの第1のサブセットを第1のプレートに固定するステップと、
‐1つまたは2つ以上の内側ビームの第2のサブセットを第1のプレートに固定して第1のサブセットおよび第2のサブセットが格子パターンを形成するようにするステップとをさらに含む。
【0024】
実施形態によれば、この方法は、
‐1つまたは2つ以上の内側ビームを第1のプレートに溶接するステップと、
‐1枚または2枚以上のプレートを1つまたは2つ以上の内側ビームに溶接するステップとをさらに含む。
【0025】
1つまたは2つ以上の内側ビームを溶接するステップは、千鳥溶接によって実施される。
【0026】
第4の観点によれば、本発明は、洋上風力タービンを設置する方法に関し、この方法は、
‐洋上風力タービンの管状区分を設置するステップと、
‐第1の観点にかかる作業プラットホームを管状区分に嵌めて管状区分が作業プラットホームの貫通穴に嵌まって動かなくなるようにするステップと、
‐作業プラットホームを管状区分に固定するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A】本発明の実施形態に係る作業プラットホームの断面の側面図である。
図1B】本発明の実施形態に係る作業プラットホームの平面図であり、この図の上半分が断面である図である。
図2】本発明の実施形態に係る洋上風力タービンを示す図である。
図3A】本発明の実施形態に係る作業プラットホームを製作する製造プロセスの互いに異なるステップを示す図である。
図3B】本発明の実施形態に係る作業プラットホームを製作する製造プロセスの互いに異なるステップを示す図である。
図3C】本発明の実施形態に係る作業プラットホームを製作する製造プロセスの互いに異なるステップを示す図である。
図3D】本発明の実施形態に係る作業プラットホームを製作する製造プロセスの互いに異なるステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1Aは、本実施形態に係る作業プラットホーム100の断面170の側面図である。図1Bは、同作業プラットホーム100の平面図であり、この図の上半分は、上から見たときに作業プラットホームの内側の図を示し、この図の下半分は、頂部124から見たときの作業プラットホームの外側の図を示している。図2は、洋上風力タービン200の管状構造体201に設置されたときの作業プラットホーム100を示している。作業プラットホーム100のコンポーネントの位置を示す相対的な用語、例えば、頂部124、底部123、側部、上側および下側、図2を見た状態で理解されなければならず、すなわち、高い(より高い)は、水面205から遠ざかる垂直方向270を意味し、低い(より低い)は、水面205に向かう逆の垂直方向271を意味し、水平と言った場合、例えば、側部は、方向270,271と直交した方向272を意味している。
【0029】
作業プラットホーム100は、洋上風力タービン200上に設置可能に構成されている。作業プラットホーム100は、風力タービン200に設置されたときに水平の作業領域を定める頂部プレート120を有する。頂部プレート120は、防水性(水に対し不浸透性/水を通さない)である。設置時に、作業プラットホーム上に付着した水は、頂部プレートを通って入り込むことはなく、重力によって頂部プレート120の側部に排出される。有利には、頂部プレート120は、方向271に対して傾けられており、その結果、全ての水は、作業プラットホームから迅速に排出され、プラットホーム上に、例えば、頂部プレート120のわずかなでこぼこ内に留まる残留水が存在しないようになっている。作業プラットホーム100は、頂部プレート120の境界領域のところに実質的に垂直に配置された側壁130,131,132をさらに有する。側壁130,131,132もまた、防水性である。作業プラットホーム100の底側部123上において、底部プレート121が側部プレート130,131,132の他方の側に配置されており、その結果、頂部プレート120と側部プレート130,131,132と底部プレート121の組み合わせがエンクロージャを構成するようになっている。底部プレート121もまた、雨水に対して不浸透性である。底部プレート、頂部プレートおよび側部プレートは、さらに、構成されたエンクロージャが設置時に雨水その他の水を通さない。好ましくは、エンクロージャは、完全に水を通さず、その結果、水は、風力タービン200上に設置されたときにどの側部からもエンクロージャに入り込むことができないようになっている。
【0030】
好ましい実施形態によれば、プレート120,121,130,131,132は、金属、好ましくは鋼で作られ、そして連続溶接部により互いに溶接され、それによりこれらプレート相互間のあらゆる移行部のところに不浸透性が得られる。より好ましくは、溶接部は、完全溶け込み溶接部である。作業プラットホーム100の鋼製プレートは、好ましくは、使用中における衝撃および荷重に耐えるとともに風力タービン200の寿命の間、耐腐食性を提供するために、少なくとも8mm、より好ましくは少なくとも15mmの厚さを有する。好ましくはエンクロージャの外部はまた、耐腐食性および耐衝撃性が得られるようコーティングされる。密閉エンクロージャに起因して、内側の防食措置が不要である場合がありまたはより少ない程度であって良い。
【0031】
側部プレート130,131,132の高さは、さらに、特に垂直方向における既定の最小剛性を得るよう、あるいは同様に、設置時にかつ静的および動的垂直荷重下において作業プラットホームの既定の最大垂直撓みを得るよう所定の構造健全性を達成するように選択される。例えば、オーバーハングが8mの鋼製プラットホームの場合、側壁は、少なくとも70cmの高さを有するのが良い。これは、結果的に1/200未満の撓みをもたらすとともに建造中、密閉空間への接近を可能にする。
【0032】
作業プラットホーム100は、内側ビーム161~167,141~144,151~154をさらに有するのが良い。ビームは、主として、ビームの軸線に対して横方向に加えられる荷重、すなわち下向きの垂直方向271における荷重に抵抗する構造要素である。底側部123では、ビームは、底部プレート121によって支持され、頂側部124では、ビームは、頂部プレート120によって支持される。したがって、ビームは、多数の支持箇所のために連続ビームと見なすことができる。ビームは、側壁130~132と実質的に同一の高さを有する。したがって、ビームが側壁と同種の材料、例えば、鋼で作られている場合、これらビームは、特にプラットホーム100の最大垂直撓みの面で、側壁とほぼ同じ構造的支持体となる。内側ビームは、これらビームが密閉空間内への水の侵入がないことに起因して腐食を生じにくいので、側壁よりも薄く製作できる。上述したのと同一の実施例の場合、側壁が15mmの厚さを有する場合、ビームは、12mmの厚さを有することができる。ビームは、直線断面、例えば、プレートの直線断面を有するのが良く、変形例として、ビームは、H字形断面、L字形断面、C字形断面、I字形断面またはL字形断面を有しても良い。さらに、ビームは、建造中における接近を容易にするとともに作業プラットホーム100の重量を減少させるために中間部に穴を有するのが良い。ビーム141~144,151~154のうちの幾つかは、さらに、格子パターンに従ってレイアウトされるのが良く、すなわち、ビームのうちの第1の組141~144は、ビームの別の組151~154と交差する。ビーム、例えば、ビーム141~144およびビーム151~154はさらに、互いに対して平行にレイアウトされても良く、あるいは、ビームは、互いに非平行状態に配置されても良い。これは、最も高い剛性を得るためにレイアウトされるビーム161~167の場合である。
【0033】
好ましい実施形態によれば、図1Aおよび図1Bに示されているように、作業プラットホーム100は、貫通穴125を包囲している。第1の実質的に円形の側部プレート132が貫通穴の周りに側壁として配置され、この側部プレートは、密閉空間の第1の側部境界としての役目を果たす。この場合、密閉空間はさらに、外方に、すなわち、頂部プレート120および底部プレート121によって側部プレート130,131まで側壁132から遠ざかる方向に延び、これら側部プレート130,131は、貫通穴から遠ざかる方向において密閉空間の第2の最も外側の側部境界としての役目を果たす。貫通穴125それ自体は、これが風力タービンの管状区分201の断面と一致するよう選択される。
【0034】
図2は、洋上風力タービン200の一部として設置された場合の作業プラットホーム100を示している。風力タービン200は、海水面250から垂直に延びる管状区分201,202を有する。最も低い管状区分201は、別々の要素、すなわち、海底中に穿孔された第1のモノパイル(単一杭)およびこのモノパイルの頂部に取り付けられかつ海水面の上方に延びる第2の移行部材として提供されるのが良い。作業プラットホームは、次に、移行部材に取り付けられる。モノパイルおよび移行部材は、単一の部材によって具体化されても良く、この単一の部材は、海底中に直接ハンマー打ちされるとともに海水面250の上方に延びる。風力タービンは、第3の管状区分またはタワー(塔体)202をさらに有するのが良く、この第3の管状区分またはタワーは、移行部材またはモノパイルに取り付けられる。それ自体ローターブレード204を備えたタービン203がタワーの頂部に取り付けられる。
【0035】
作業プラットホームは、さらに、他のコンポーネント、例えば、手すり101をさらに備えるのが良い。
【0036】
図3A図3Dは、本発明の実施形態に係る洋上風力タービンのための作業プラットホームを製作するためのステップを示している。これらステップは、例えば、上記作業プラットホーム100を製作するために実施されるのが良い。
【0037】
図1Aに示されている第1のステップでは、作業プラットホームのプレート320を用意する。好ましくは、このプレート320は、頂部プレート120に一致するが、変形例として、底部プレート121もまた、最初に設けられても良い。次に、図3Bに示されているように、例えば、内側ビーム141~144に対応した第1の組をなす内側ビーム341,342,343を用意する。第1の組をなす内側ビームは、ビームの境界部からビームの中間部まで延びる垂直スロット360を有する。スロットの幅は、好ましくは、少なくとも、ビーム自体の厚さである。
【0038】
次に、図3Cに示されているような次のステップでは、第2の組をなす内側ビーム351,352,353を頂部プレート320上に用意する。第2の組をなすビームは、ビーム341~343とほぼ同じスロット360を有し、この第2の組をなすビームは、この第2の組のスロットが第1の組のスロット中に嵌まるよう配置されている。スロットが少なくともビームの中間部まで延びているので、ビーム351~353は、第1の組をなすビーム中に滑り込み、ついには、これらビームは、プレート320に接触する。ビーム341~343およびビーム351~353をさらにプレート320に永続的に固定する。ビームが金属で作られている場合、ビームを、例えば、溶接によって固定するのが良い。ビームが全て作業プラットホーム100のエンクロージャ内に位置しているので、溶接は、一回パスで実施できる。さらに、溶接は、非連続溶接、例えば、千鳥溶接であるのが良く、それにより連続完全溶け込み溶接と比較して溶接のための時間が節約される。好ましくは、ビーム341~343を例えば、溶接によってスロット320の配置場所のところでビーム351~353に固定する。
【0039】
次に、図3Dに示されている次のステップでは、プレート321a,321bをビーム341~343およびビーム351~353の頂部上に用意する。プレートを例えば、溶接によって下に位置するビームに固定する。さらに、プレート321a,321bもまた、互いに固定し、それにより単一のプレート、好ましくは作業プラットホームの底部プレートを形成する。プレート321a,321bが設置時に露出されるので、プレートを好ましくは完全溶け込み溶接部によって互いに固定する。ビーム341~343およびビーム351~353へのプレートの固定を容易にするため、ビームは、例えば、L字形断面を備えたビームを提供することによってフランジ361をさらに有するのが良い。
【0040】
底部プレート321a,321b、頂部プレート320および内側ビームを互いに固定すると、作業プラットホームに側部プレートをさらに設けて完成させるのが良く、その目的は、防水性の関連密閉空間(図示せず)を得ることにある。このように、図1Aおよび図1Bに示されているような作業プラットホーム100を得ることができる。
【0041】
上記実施例の変形例として、プラットホーム100のプレートは、鋼以外の材料、例えば、アルミニウム、ガラス繊維または繊維強化プラスチックで作られても良い。溶接に代えて、この場合、プレートの永続的かつ不浸透性固定をプレート相互間の接着剤による結合によって達成しても良い。
【0042】
特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、当業者には明らかなように、本発明は、上記の例示の実施形態の細部には限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更および改造を本発明に施した状態で本発明を具体化できる。したがって、本実施形態は、あらゆる点において開示されるべきであって本発明を限定するものと解されるべきではなく、本発明の範囲は、上記説明によってではなく特許請求の範囲の記載によって定められ、したがって、特許請求の範囲の意味および均等範囲内に収まる全ての変更は、本発明の範囲に含まれるものである。換言すると、根底をなしている基本的な原理の範囲内に属する任意かつ全ての改造例、変形例または均等例を含むことが想定され、これらの本質的な属性は、本願においてクレーム請求されている。さらに、本願の読者によって理解されるように、原文明細書の用語“comprising”(訳文では、「~を有する」としている場合が多い)または“comprise”は、他の要素またはステップを排除せず、用語“a”または“an”は、複数を排除せず、単一の要素、例えば、コンピュータシステム、プロセッサ、または別の一体形ユニットは、特許請求の範囲に記載された数個の手段の機能を実行することができる。特許請求の範囲に記載された参照符号は、関連のそれぞれの請求項に記載された本発明を限定するものと解されてはならない。「第1」、「第2」、「第3」、“a”、“b”、“c”などの用語は、明細書または特許請求の範囲に用いられた場合、類似した要素またはステップを区別するために用いられており、必ずしも、連続した順序または時間的な順序を説明するものではない。このように用いられている用語は、適切な環境下においては互換性があり、本発明の実施形態は、他の順序、または上記において説明しまたは図示した向きとは異なる向きで本発明に従って作用することができるということは理解されるべきである。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D