(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】薬剤送達装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/24 20060101AFI20230622BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20230622BHJP
A61J 1/06 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
A61M5/24 530
A61M5/315 550R
A61J1/06 E
(21)【出願番号】P 2020555768
(86)(22)【出願日】2019-04-10
(86)【国際出願番号】 EP2019059150
(87)【国際公開番号】W WO2019197493
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-10-29
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510199605
【氏名又は名称】メドミクス スウィッツァランド アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハッカー ゲルト
(72)【発明者】
【氏名】カイテル ヨアヒム
【審査官】石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-080371(JP,A)
【文献】国際公開第2018/018166(WO,A1)
【文献】特開2016-221348(JP,A)
【文献】特開2007-190387(JP,A)
【文献】特表2010-523183(JP,A)
【文献】国際公開第2017/143461(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/24
A61M 5/178
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位部分及び近位部分を有する、マルチチャンバーカートリッジ(35)内で混合される薬剤(39)を送達する薬剤送達装置(1)であって、
前記遠位部分は、ハウジング(4)、及び用量送達中にハウジング(4)の長手軸(45)に沿って軸方向に移動可能なピストンロッド(11)を有する用量設定機構(2)を有し、
前記近位部分は、ねじ式スリーブ(16)と、マルチチャンバーカートリッジ(35)を収容するように構成されたカートリッジホルダ(50)を有し、当該ねじ式スリーブ(16)は前記遠位部分に取り付けるように構成されており、前記カートリッジホルダ(50)に対する当該ねじ式スリーブ(16)の回転が前記マルチチャンバーカートリッジ(35)内での混合工程を実行
し、
前記カートリッジホルダ(50)は、好ましくは遠位端部に及び/又は近位端部に、切り欠き又はスナップ窓(30,31)を有し、
前記切り欠き又はスナップ窓(30,31)が、前記ねじ式スリーブ(16)の外側に位置する可撓性又はスナップアーム(32)と相互作用するように構成されており、
前記ねじ式スリーブ(16)が開始位置にある時、前記スナップアーム(32)は前記スナップ窓(30)と解除可能に係合している、薬剤送達装置(1)。
【請求項2】
前記ねじ式スリーブ(16)は、前記ねじ式スリーブ(16)が前記カートリッジホルダ(50)から遠位に延びる開始位置を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項3】
前記ねじ式スリーブ(16)は、前記ねじ式スリーブ(16)が前記カートリッジホルダ(50)まで近位に引き込まれる終端位置を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項4】
前記ねじ式スリーブ(16)は外側面に位置するスナップアーム(32)をさらに有する、ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項5】
前記カートリッジホルダ(50)、前記マルチチャンバーカートリッジ(35)及び前記ねじ式スリーブ(16)のアセンブリが使い捨て可能に構成されており、
前記スナップアーム(32)上の突起部(33)がスナップ窓(31)と解除不能及び永続的な態様で係合するように構成され、それにより前記ねじ式スリーブ(16)は前記カートリッジホルダ(50)に対して回転できない、ことを特徴とする請求項4に記載の薬剤送達装置。
【請求項6】
前記カートリッジホルダ(50)は、前記スナップアーム(32)と相互作用して係合するように構成された複数のスナップ窓(30,31)をさらに有する、ことを特徴とする請求項4に記載の薬剤送達装置。
【請求項7】
前記ねじ式スリーブ(16)が開始位置にあるとき、前記スナップアーム(32)は前記カートリッジホルダ(50)の第1スナップ窓(30)と解除可能に係合しており、及び/又は薬剤混合工程が完了したとき、前記ねじ式スリーブ(16)は前記カートリッジホルダ(50)の内側に完全に位置決めされ、前記スナップアーム(32)は前記カートリッジホルダ(50)の第2スナップ窓(31)と係合する、ことを特徴とする請求項4に記載の薬剤送達装置。
【請求項8】
薬剤送達装置が完全に使い捨て可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項9】
前記ねじ式スリーブ(16)上の前記スナップアーム(32)は、前記切り欠き又はスナップ窓(30)と係合するように設計された半径方向外側に延在する突起部(33)を有する、ことを特徴とする請求項
1に記載の薬剤送達装置。
【請求項10】
還元工程が完了すると、前記ねじ式スリーブ(16)は前記カートリッジホルダ(50)の内側に完全に位置決めされ、前記スナップアーム(32)は前記スナップ窓(31)と係合する、ことを特徴とする請求項
1に記載の薬剤送達装置。
【請求項11】
前記
スナップアーム(32)上の突起部
(33)と前記スナップ窓(31)の係合は解除不能、すなわち永続的であり、それで前記ねじ式スリーブ(16)は前記カートリッジホルダ(50)に対して回転できない、ことを特徴とする請求項
10に記載の薬剤送達装置。
【請求項12】
還元工程後に装置がすぐに使用できる状態にあるとき前記用量設定機構(2)に対する前記カートリッジホルダ(50)の半径方向位置を明瞭に定める働きをする半径方向ストッパ(9a)又はスナップ嵌めが設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項13】
薬剤送達装置は、前記カートリッジ(35)がカートリッジコンテナーにスナップ係合し、前記ねじ式スリーブ(16)が
前記ねじ式スリーブ(16)の外側面に位置するスナップアーム(32)と
前記カートリッジホルダ(50)に形成されたスナップ窓(30)の係合を介して前記カートリッジホルダ(50)にスナップ係合した状態で、エンドユーザに提供される、ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項14】
薬剤送達装置は、薬剤送達装置の遠位部分及び近位部分を互いに永続的に接続するよう協働する複数の留め具を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項15】
前記留め具は協働して不可逆なスナップ嵌めを形成する、ことを特徴とする請求項
14に記載の薬剤送達装置。
【請求項16】
一旦前記カートリッジホルダ(50)が前記用量設定機構(2)に完全に取り付けられると、接続は固定され、永続的且つ不可逆となり、したがってユーザが装置を物理的に破壊又は破損せずに前記カートリッジホルダ(50)を前記用量設定機構(2)から分解することが防止される、ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項17】
前記カートリッジは(35)、前記カートリッジ(35)の半径方向に突出したバイパスセクションを収容するスナップインノッチを介して前記カートリッジホルダ(50)に適所に保持される、ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項18】
前記ピストンロッド(11)は近位方向の軸方向力を第2ストッパ(25)に加え、それを前記カートリッジ(35)の内壁に対して近位に移動させる、ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項19】
第2チャンバー(18)内の液体溶剤は非圧縮性であるので、前記第2ストッパ(25)への力は直接第1ストッパ(26)に伝えられ、それで両ストッパ(25,26)とそれらの間に位置する溶剤がそれぞれ軸方向前方に前記カートリッジ(35)のバイパス(21)のセクションに向かって移動する、ことを特徴とする請求項
18に記載の薬剤送達装置。
【請求項20】
前記第1ストッパ(26)が移動して前記バイパス(21)と整列すると、溶剤が前記第2チャンバー(18)から前記第1ストッパ(26)の周りに流れ、第1チャンバー(19)に注いで空になり、そこで溶剤は凍結乾燥された薬に接触して還元が始まる、ことを特徴とする請求項
19に記載の薬剤送達装置。
【請求項21】
前記カートリッジホルダ(50)は前記ねじ式スリーブ(16)に対して回転し、移動し続けるので、前記カートリッジ(35)は固定の前記ピストンロッド(11)に対して移動し続け、したがって、全ての溶剤が前記第2チャンバー(18)から押し出されて前記第1チャンバー(19)に入るまで第2ストッパ(25)を前記カートリッジ(35)内で近位方向に軸方向に押す、ことを特徴とする請求項
20に記載の薬剤送達装置。
【請求項22】
前記遠位部分は用量設定ノブ(5)及び/又は注射ボタン(6)を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬剤送達装置、特に物質を注射、投与、注入、投薬又は送達・放出するための装置に関し、またこのような装置を作る及び使用する方法に関する。より具体的には、それは、マルチチャンバーカートリッジ又はアンプル、例えば2チャンバーカートリッジ、マルチチャンバーコンテナー又は容器、マルチチャンバーアンプルなどから、液剤、例えば薬用又は治療用の物質又は製品を投与する送達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動的に、半自動的に又は手動で薬剤の用量を送達することができる多数の薬剤送達装置が市場にある。送達装置の公知のタイプのうち、「ペン型」注射器が人気を得ており、再利用可能及び使い捨て可能な設計の両方で利用できる。このような装置は、用量を設定する、用量をキャンセルする及び設定した用量を最終的に送達するなどの所望の機能を得るために種々の相互作用する機械的な構成部品を含む用量設定機構により構成される。このような装置は一般的に、医療訓練をしていない個人が薬剤を自己投与することができるように設計されている。
【0003】
幾つかの場合、これら薬剤送達装置のユーザは、注射の前に溶剤や希釈剤で溶かなければならない薬剤を注射する必要がある。その目的のために、注射装置は、2以上のチャンバーを有する複数のカートリッジを収容できなければならず、例えば1つのチャンバーは凍結乾燥された薬製品を保持し、別なチャンバーは溶かし溶剤を保持する。注射を行う前に、2つのチャンバーの中身は混合されなければならない。
【0004】
凍結乾燥を受ける一般的な医薬品の幾つかは、バルク医薬/生物医薬成分(現実に発見される化合物又は生物製剤)、タンパク質、コラーゲン、ペプチド、オリゴヌクレオチド、化学API、酵素及びmAbsを含む。一般的に、バルク薬成分が液体形状又は凍結形状で安定的でないときに、凍結乾燥は必要である。これは、化学反応、分解、凝集、生物学的成長、感熱性などのためである。凍結乾燥はしばしば、2~5年のより長い保管寿命を可能にし、製品を輸送することを非常に容易化する。加えて、製品は室温で貯蔵できる。1つのこのような例は、液体中で溶かされると長時間貯蔵できない成長ホルモンである。しかしながら、成長ホルモンの問題に対する成功的処置を提供するために、一般的に、このような剤を液体形状で患者の体組織に導入する必要がある。
【0005】
マルチチャンバーカートリッジにおける別個のチャンバーは通常、移動可能又はスライド可能なストッパ(すなわち、ピストン)によって互いに分けられている。第1又は前チャンバーは通常、突き刺し可能な薄膜(例えば、隔壁)によってシールされたカートリッジの出口、内側カートリッジ壁及び第1ストッパの近位端面(基部端面)を有する。第2又は後チャンバーは通常、第1チャンバーから遠位に(末端に)位置し、第1ストッパの遠位端面(末端端面)、内側カートリッジ壁及び第2ストッパによって形成される。カートリッジの長手軸に沿って、従ってストッパが押される・滑動される軸に沿って、バイパス(側路)がカートリッジ壁に設置され、それは溶剤又は溶解液が第1ストッパの周りを及び第1チャンバーに流れるための流体バイパスとして使用できる。薬を溶解液に混合するために、圧力がカートリッジ内の第2ストッパに印加され、この圧力は非圧縮性溶解液によって第1ストッパに伝達される。一旦カニューレが突き刺し可能な薄膜を通してカートリッジに導入されると、2つのストッパはその時カートリッジの内壁に対してカートリッジの長手軸に沿って押され又は動かされる。
【0006】
第1ストッパが移動してそれがバイパスの領域に隣接するとすぐに、溶解液はバイパスを通って第2チャンバーから出て行き、薬を収容した第1チャンバーに流入する。第2チャンバーは内壁に対して及び第1ストッパに向かって押され、その後それは第1ストッパに隣接し、好ましくは接触する。この時点で全ての溶剤は第1チャンバーに移されており、第2チャンバーはもはや存在しない。この時点で、カニューレ、例えば両頭ペンニードルがカートリッジホルダに取り付けられ、それによりカニューレは薄膜を突き刺して第1チャンバーと流体接続を確立する。さて、第2ストッパが、用量設定機構に作動的に関連するピストンロッドを介して再び押されると、第1ストッパはまた移動される。2つのストッパの近位方向の移動によって結局、第1チャンバー内で溶かされた(還元された、再構成された)液体薬はカニューレを介して投薬される。薬剤を溶解液に混ぜるとき、薬剤が溶解液の過度の流れに晒されないことを保証することに注意しなければならない。液体形状の剤を患者の組織に投与する前の混合の間泡立ちは避けた方が良く、第1チャンバーと流体連通しているカニューレをベントすることが一般的である。
【0007】
溶剤を薬に混ぜることができる従来の装置が知られているが、多数の送達装置の設計は、泡立ちを回避し又は薬へのダメージを防止するために薬をゆっくり混ぜることを可能にしない。さらに、これらのタイプの装置のユーザは、いつ混合プロセスが完了したか分かりにくく、ゆえにいつ薬が所望の濃度で溶解液に完全に溶かされたか分かりにくい。これは、単一のカートリッジから複数の注射が必要とされるときに特に重要であろう。さらに、公知の装置設計は、他のペン注射器のそれよりも顕著に長い、ペン注射器とカートリッジコンテナーの間のねじ式接続部の使用を含む。このような状況において、このような長いねじを配達装置ペン注射器に製造することは困難である。さらに、幾つかの設計では、注射器は回転リングの形態のピストンロッド戻し特徴を有する。このピストンロッド戻しリングは、ピストンロッドを用量設定機構内の最も近い近位位置にまでリセットする又は運ぶためにユーザにより操作される。このような長いねじが必要とされる時、ピストンロッド戻しリングはもはや利用しやすくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既存の装置にまつわる前述した問題から、医療訓練をしていないユーザが装置を簡単に操作して、薬剤の設定用量の送達の直前に液体薬剤形成をもたらす還元工程(再構成工程)を実行することができる、マルチチャンバーカートリッジの薬剤送達装置を提供する必要がある。以下に呈する開示は、堅牢で比較的容易に使用できる還元送達装置(再構成送達装置)を提供することで前述の目標を達成する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、マルチチャンバーカートリッジを収容する薬送達装置に関する。これらの装置はときどき、還元薬送達装置とも呼ばれる。このような装置は、カートリッジ内の全ての薬剤が押し出されるまでユーザが多数の及び様々な単一用量を設定できるように設計され得る。それに代えて、用量設定機構は、単に1又は複数の固定の(ユーザが設定不能な)用量を送達するように設計されてもよい。幾つかの構成では、これらの装置はペン型注射器として知られている。
【0010】
本開示の1つの可能な実施形態では、マルチチャンバーカートリッジ内で混合される薬剤を送達するための遠位部分及び近位部分を有する薬剤送達装置又はより具体的にはツーピースのペン型注射器を記載しており、遠位部分は、ハウジング、用量設定ノブ、注射ボタン、用量送達中にハウジングの長手軸に沿って軸方向に移動可能なピストンロッド及びピストンロッドを開始位置にリセットするように構成された戻しリングを有する用量設定機構を有する。遠位部分は、マルチチャンバーカートリッジを収容するように構成されたカートリッジホルダを有し、当該カートリッジホルダは遠位部分に取り付けるように構成されたねじ式スリーブ(ねじ回しスリーブ)を有し、当該ねじ式スリーブの回転がマルチチャンバーカートリッジ内で薬剤混合工程を実行する。
【0011】
以下により詳細に説明するように、ねじ式スリーブはねじ山を切られ、遠位部分のねじ部と協働するように構成されてもよい。ねじ式スリーブはさらに、ねじ式スリーブがカートリッジホルダの遠位部から遠位に延びる開始位置と、ねじ式スリーブがカートリッジホルダの遠位部まで近位に引き込まれる終端位置を有してもよい。さらには、ねじ式スリーブはまた外側面に位置するスナップアームを有してもよい。
【0012】
カートリッジホルダは、マルチチャンバーカートリッジを収容するように構成、設計されている。幾つかのケースでは、異なる薬剤又は薬剤の強度を強調し又は区別するためにカートリッジホルダを色分けするのが望ましい。カートリッジホルダは、ユーザが還元工程中のスライド可能なストッパの移動を含むカートリッジの中身を見ることができる多数の切り欠き又は窓を有してもよい。2チャンバーカートリッジがカートリッジホルダ内で位置決めされるとき、第1切り欠きはカートリッジの第2チャンバーを見るために使用でき、第2切り欠き又は窓はカートリッジの第1チャンバー又は最も近位のチャンバーを見るために使用できる。この第2窓はさらに、カートリッジをスナップインノッチに適所に保持するためにカートリッジのバイパスを収容する細い又は狭窄セクションを有してもよい。カートリッジホルダはさらに、カートリッジを永続的に収容するように、すなわち一旦カートリッジがカートリッジホルダに挿入されると、カートリッジホルダが壊れたりさもなければ破壊されたりしなければそれが取り外せないように設計、構成されてもよい。それに代えて、カートリッジホルダは、カートリッジを解除可能に収容し、それによりユーザが空のカートリッジを取り外してそれを新品のフルカートリッジに交換できるように設計、構成されてもよい。この設計では、カートリッジホルダはカートリッジを適所に固定するためにスナップ嵌めノッチを必要としない。
【0013】
カートリッジの第1チャンバーは一般的に、フリーズドライ製法の又は凍結乾燥された薬を含有し、第2チャンバーは液剤を含有する。カートリッジバイパス特徴は好ましくは、第2窓を介して視認できる。凍結乾燥の推移、すなわち還元工程は、両方の窓で見ることができる。本開示の1つの実施形態では、カートリッジホルダが用量設定機構の近位端部にねじ込まれるとき、ユーザは第1窓を介して戻しリングの移動を見ることができる。全ての実施形態で、第2窓は還元工程中の第1及び/又は第2ストッパの視認を可能にする。
【0014】
開示する装置の1つの実施形態では、ねじ式スリーブは再利用可能部品又は使い捨て可能部品として設計されてもよい。両方の場合で、スリーブは、それがカートリッジホルダの遠位部の遠位端部から遠位に延在する第1又は開始位置を有する。ねじ式スリーブが使い捨て可能に設計されるとき、カートリッジホルダ及びカートリッジもまた使い捨て可能であり、よって、そのアセンブリは、一旦新品のカートリッジホルダ、スリーブ及びカートリッジアセンブリを用いて再利用される用量設定機構から取り外されるとユニットとして捨てられる。それに代えて、空のカートリッジだけが取り外され捨てられて、新たな満タンカートリッジがカートリッジホルダに挿入され、スリーブが用量設定機構に再び取り付けられるように、カートリッジホルダ及びねじ式スリーブは設計、構成されてもよい。第3の可能な実施形態では、スリーブは再利用可能であり、カートリッジホルダから取り外せ、そのためカートリッジ及びカートリッジホルダは使用後に捨てられる。新たなカートリッジ及びカートリッジホルダが再利用可能なスリーブに取り付けられる。各々の可能なスリーブ設計では、カートリッジホルダの遠位部は2つの切り欠き又はスナップ窓を有し、1つは遠位端部にあり、1つは近位端部にある。これらスナップ窓は、ねじ式スリーブの近位端部の外側に位置する可撓性又はスナップアームと相互作用するように構成されている。
【0015】
ねじ式スリーブ上のスナップアームは、スナップ窓の各々と係合するように設計された半径方向外側に延在する突起部を有してもよい。ねじ式スリーブが第1位置にある時、スナップアームは遠位スナップ窓と解除可能に係合しており、還元工程が完了すると、ねじ式スリーブはカートリッジホルダの遠位部の内側に完全に位置決めされ、スナップアームは近位スナップ窓と係合する。カートリッジホルダ、カートリッジ及びスリーブのアセンブリが全て使い捨て可能な設計においては、突起部と近位スナップ窓の係合は解除不能、すなわち永続的であり、それでスリーブはカートリッジホルダの遠位部に対して回転できない。スリーブが再利用可能な場合、突起部及び近位スナップ窓は解除可能な係合を形成し、それで加えられる回転トルクが突起部を近位スナップ窓から外し、スリーブをカートリッジホルダに対して回転させる。ねじ式スリーブがカートリッジホルダ内で軸方向に移動し、スナップ窓と整列すると、突起部が近位スナップ窓にフィットするように、スナップアームは設計される。ねじ式スリーブはカートリッジホルダの内面に対して移動するので、突起部及びスナップアームは半径方向内側に付勢される。突起部がスナップ窓と整列したとき、スナップアームは自由に半径方向外側に曲がることができ、それで突起部は窓に係合又はスナップフィットする。
【0016】
ねじ式スリーブの外側表面は、カートリッジホルダの遠位部の内側に位置する同様のねじ山と係合、協働する螺旋状又は外側ねじを有してもよい。外側ねじは、雄ねじ又は雌ねじである。後者の場合、カートリッジホルダの遠位部の内側は、フルセットの雄ねじを有することとは対照的に雌ねじと係合する1又は複数のニブを有してもよい。ねじ式スリーブの内側遠位端部には、用量設定機構における同様の留め具と協働する留め具がある。これらの留め具の協働によって、薬剤送達装置の遠位部分及び近位部分が互いに解除可能に又は永続的に接続できる。永続的接続が望まれる場合、それら留め具は協働して不可逆なスナップ嵌めを形成する。それに代えて、用量設定機構とねじ式スリーブの間の永続的接続をもたらすために、留め具によって形成される永続的なジョイント又は接続部が溶接又は接着されてもよく、それでこれら部分を分離するためには送達装置は物理的に壊されなければならなくなる。
【0017】
別な実施形態では、本開示の装置は、カートリッジホルダ/カートリッジアセンブリが用量設定機構に接続されると、還元工程が、ピストンロッドを軸方向に近位方向に移動させるようにピストンロッド戻しリングが回転することを必要とするよう、構成されている。注射装置が再利用可能である場合、アセンブリが用量設定機構に取り付けられる前に、ピストンロッドは、用量設定機構に対してピストンロッド戻しリングを反時計回りに回転させることで最も近い位置又は開始位置まで引っ込められねばならない。完全に使い捨て可能な装置の場合、ピストンロッドを引っ込める必要はなく、ゆえに当該装置はピストンロッド戻しリングを有する必要がない。戻しリングはピストンロッドと回転可能に固定されているので、戻しリングの回転はピストンロッドを回転させる。ピストンロッドと用量設定機構内の内部固定ナットのねじ接続は、ピストンロッドを軸方向に遠位に移動させ又は用量設定機構内に引き込ませる。同様に、ピストンロッド戻しリングが用量設定機構に対して時計回りに回転すると、ピストンロッドは軸方向に近位方向に移動し、すなわち、用量設定機構から外に及び離れて延びる。カートリッジホルダが習慣的な通常の工程において用量設定機構に対してそれを時計回りに回転させることで用量設定機構にねじ込まれるので、この回転がまた戻しリングを同じ時計回りに回転させるように、本装置は構成されている。カートリッジホルダが用量設定機構に取り付けられると、これは、互いに対して軸方向に移動するピストンロッド及びカートリッジ内の最遠位ストッパをもたらす。用量設定機構に対する戻しリングとカートリッジホルダの同時の回転は、戻しリングを回転させるカートリッジホルダの結果としてのピストンロッドとカートリッジホルダの反対方向の同時の軸方向移動のために、ペン型注射器上のねじ山の長さを従来の還元注射装置よりも非常に少なくする。
【0018】
好ましくは、カートリッジホルダの遠位端部の内側部分が、用量設定機構の外側ねじ近位端部と適合する及び協働するねじ山にねじ込まれる。カートリッジホルダの内側遠位部はさらに、近位部分(すなわち、カートリッジホルダ)と遠位部分(すなわち、用量設定機構)が共にねじ込まれる直前にその2つの部分が互いに軸方向に整列したときに戻しリングと回転係合する1又は複数のガイド要素を有してもよい。カートリッジホルダが用量設定機構にねじ込まれるとき、ガイド要素と戻しリングの係合によって、戻しリングは回転される。好ましくは、ガイド要素と戻しリングの外側表面の間のスプライン係合が使用される。このような係合は、ガイド要素と戻しリングの間の相対的な軸方向移動を考慮しなければならない。好ましい構成では、2以上のガイド要素が、好ましくはカートリッジホルダの内側表面の周りに等間隔をおいて、使用される。カートリッジホルダは、再利用可能部分又は使い捨て可能部分として設計されてもよい。カートリッジホルダが使い捨て可能に構成されるとき、よってカートリッジも使い捨て可能であり、よって、一旦新たなカートリッジホルダとカートリッジアセンブリを用いて再利用される用量設定機構から取り外されると、アセンブリがユニットとして捨てられる。それに代えて、空のカートリッジだけが取り外され、捨てられ、また新たなフルカートリッジがカートリッジホルダに挿入され、アセンブリが再び用量設定機構に取り付けられるように、カートリッジホルダは設計、構成されてもよい。
【0019】
用量設定機構の近位端部の外側表面は、カートリッジホルダの遠位部の内側に位置する同様のねじ表面と係合、協働する螺旋状又は又は外側ねじ山を有してもよい。もちろん、ねじ表面が逆であっても、すなわちカートリッジホルダの外側表面にねじ山があり、用量設定機構の内側に協働ねじ山があるように、装置は製造されてもよい。用量設定機構における外側ねじ山は雄ねじであっても、雌ねじであってもよい。後者の場合、カートリッジホルダの遠位部の内側は、フルセットの雄ねじを有することは対照的に雌ねじと係合する1又は複数のニブを有してもよい。カートリッジホルダと用量設定機構の間で永続的接続が望まれる場合、遠位部分と近位部分がしっかり共にねじ込まれたときに係合する解除不能なスナップロック嵌めが含まれてもよい。このような不可逆ロックは、ユーザがこれら部品を分離するために、送達装置の1又は複数の構成部品を物理的に破壊せずにこれら部品を分解することを防止する。
【0020】
開示したそれぞれの実施形態に対して、送達装置は再利用可能な又は半再利用可能な装置として設計、構成されてもよい。その装置では、(1)一旦薬剤が押し出されると、カートリッジ、カートリッジホルダ及びスリーブのアセンブリが交換でき、用量設定機構が再利用され、(2)スリーブと用量設定機構が再利用され、カートリッジホルダとカートリッジが捨てられ、又は(3)カートリッジホルダ、スリーブ及び用量設定機構が再利用可能であり、空のカートリッジだけが取り外され、捨てられ、及び(4)カートリッジ内の薬剤が押し出された後に還元装置全体が捨てられる。用量設定機構が再利用可能である設計では、ねじ式スリーブ上の留め具と用量設定機構における協働留め具も再利用可能であり、すなわち解除可能に協働し、例えばねじ、ルーアーローク嵌め、差し込みフィッティング又はこれらの確実なタイプのコネクタの組み合わせである。このような解除可能な接続によって、ユーザは用量設定機構を損傷せずにスリーブを用量設定機構から分離することができる。用量設定機構を再利用するために、ピストンロッドは用量設定機構に引き戻されなければならない。これはリセット操作と呼ばれる。
【0021】
送達装置が使い捨て可能な装置、再利用可能な又は半再利用可能な装置として設計、構成される別な実施形態では、(1)一旦薬剤が押し出されると、カートリッジ及びカートリッジホルダが交換でき、用量設定機構が再利用され、(2)カートリッジホルダと用量設定機構が再利用可能であり、空のカートリッジだけが取り外され、捨てられ、及び(3)カートリッジ内の薬剤が押し出された後に還元装置全体が捨てられる。完全に使い捨て可能なこの装置設計では、カートリッジ内の薬剤が押し出された後にピストンロッドを引き込む必要は無い、というのも装置全体が廃棄されるからである。しかしながら、最初にカートリッジホルダ/カートリッジアセンブリが用量設定機構に取り付けられるとき、それが用量設定機構にねじ込まれる際のカートリッジホルダの回転は、ピストンロッド戻しリングとは対照的にピストンロッドガイドを回転させる。完全に使い捨て可能な装置におけるピストンロッドガイドの機能はピストンロッド戻しリングと同様であり、それはハウジングに軸方向に固定され、時計回りの回転が還元工程を実行するためにピストンロッドを近位に移動させる。一旦カートリッジホルダが用量設定機構に完全に取り付けられると、接続は固定され、永続的且つ不可逆となり、したがってユーザが装置を物理的に破壊又は破損せずにカートリッジホルダを用量設定機構から分解することが防止される。
【0022】
用量設定機構が再利用可能である設計では、カートリッジホルダの留め具又はねじ接続部と、用量設定機構の協働留め具又はねじ山も再利用可能である。このような解除可能な接続により、ユーザは用量設定機構を損傷させずにカートリッジホルダを用量設定機構から分離することができる。用量設定機構を再利用するために、ピストンロッドは、上述した戻しリングを用いて戻しリングを反時計回りに回すことにより用量設定機構内に引き戻されなければならない。やはり、前述のように、ピストンロッドの開始位置へのこの引き戻しはリセット操作と呼ばれる。
【0023】
還元送達装置の1つの可能な実施形態では、以下の工程が続けられてもよい。カートリッジホルダ内に位置するカートリッジによって、ねじ式スリーブの雌ねじは用量設定機構の近位端部に位置するねじ山とねじ込みにより係合する。スリーブの末端遠位端面が用量設定機構のハウジング上の末端近位端面と当接、接触して、スリーブがもはやハウジングに対して回転できなくなるまで、ねじ式スリーブは回される。前述したように、カートリッジは、カートリッジの半径方向に突出したバイパスセクションを収容するスナップインノッチを介してカートリッジホルダの近位部に適所に保持される。好ましくは、還元装置は、カートリッジがカートリッジコンテナーにスナップ係合し、ねじ式スリーブがスナップアームと第1スナップ窓の係合を介してカートリッジホルダの遠位部にスナップ係合した状態で、エンドユーザに提供される。溶剤は第1観察窓を介して検査でき、凍結乾燥物は第2観察窓を介して検査できる。
【0024】
2つの末端端面が当接しているとき、ピストンロッドの近位端部もまたカートリッジ内の第2ストッパの遠位端面に当接する。ねじ式スリーブに対するカートリッジホルダの回転によって、スナップアームは第1又は遠位スナップ窓から外され、スリーブはカートリッジホルダの遠位部にねじ込まれる。スナップアームの突起部がカートリッジホルダの第1スナップ窓に係合するので、カートリッジホルダがスリーブに対して回転する前に或るトルクが加えられねばならない。一旦この初期トルクが加えられると、カートリッジコンテナーをスリーブに対して回転させるトルクは、スリーブとカートリッジホルダの内側の間のねじ連結部の大きなピッチのために小さい。スリーブが用量設定機構のハウジングに完全にねじ込まれたときのみ、カートリッジホルダはスリーブに対して回転を開始でき、それはカートリッジホルダを用量設定機構に向かって連れていき、そのため還元工程を開始する。こうして、スリーブ上のスナップアームの第1の目的は、スリーブが用量設定機構に完全に取り付けられたときにカートリッジホルダがスリーブに対して回転を開始することを保証する。スナップアームの第2の目的は、スリーブが使い捨て可能である設計において明らかになる。ここで、スナップアームと近位スナップ窓の永続的係合が、還元工程が完了したときにユーザがアセンブリを分解できないことを保証する。よって、カートリッジホルダの反時計回りの回転は、スリーブを用量設定機構の近位端部から回して外し、よってカートリッジホルダ、カートリッジ及びスリーブのアセンブリは単一のユニットとして捨てられる。
【0025】
一旦、スリーブの遠位端部が用量設定機構のハウジングに締め付けられると、カニューレが薄膜を突き刺すために使用でき、カートリッジ内の第1チャンバーとの流体連通を形成する。この流体連通は、第1チャンバーの圧力逃がし又はベントを作動させることで還元工程を続けるために必要である。適所にあるカニューレによって、カートリッジホルダはスリーブと取り付けられた用量設定機構の両方に対して回転でき、カートリッジホルダ及びカートリッジはピストンロッドの固定近位端部に向かって一緒に移動される。これにより、ピストンロッドは近位方向の軸方向力を第2ストッパに加え、それをカートリッジの内壁に対して近位に移動させる。第2チャンバー内の液体溶剤は圧縮できないので、第2ストッパへの力は直接第1ストッパに伝えられ、それで両ストッパとそれらの間に位置する溶剤がそれぞれ軸方向前方に(近位に)カートリッジのバイパスセクションに向かって移動する。ピストンロッドからのこの伝達力の結果として第1チャンバー内の過度の圧力はカニューレを介して抜かれる。第1ストッパが移動してバイパスと整列すると、溶剤が第2チャンバーから第1ストッパの周りに流れ、第1チャンバーに注いで空になり、そこで溶剤は凍結乾燥された薬に接触して還元が始まる。液体溶剤はバイパスを通って流れるので、移動する第2ストッパからの溶剤の圧力は減少する。
【0026】
カートリッジホルダはねじ式スリーブに対して回転し、移動し続けるので、カートリッジは固定のピストンロッドに対して移動し続け、したがって、全ての溶剤が第2チャンバーから押し出されて第1チャンバーに入るまで第2ストッパをカートリッジ内で近位方向に軸方向に押す。2つのストッパは結局互いに当接、接触し、カートリッジの内壁に対して近位に一緒に移動し続ける。それらストッパが当接すると、第2チャンバーは存在しなくなる。カートリッジホルダがねじ式スリーブに完全にねじ込まれると、スナップアームは近位スナップ窓と整列し、突起部はスナップ窓に係合し、ねじ式スリーブを軸方向に適所に固定する。前述したように、スナップアームの近位スナップ窓とのこの係合は永続的であってもよく、したがってスリーブをカートリッジホルダに不可逆にロックし、又は再利用可能なスリーブの場合この係合は解除可能であってもよい。どちらの場合でも、還元工程が完了してしまえば、第2ストッパの近位端面は第1ストッパの遠位端面に当接しており、本質的に単一のストッパとして作用、機能し、以下に説明するように設定用量を投薬することができる。
【0027】
ユーザは、第2観察窓を介して還元された製品を見て、検査し、評価することができる。ユーザは次に、カニューレ又は注射針がカートリッジ内の密封薄膜を突き刺して、第1チャンバーとの流体連通を確立するように、針アセンブリをカートリッジホルダの近位部の近位端部に取り付ける。この時点で、還元送達装置は注入(充填)でき、1又は複数の用量が設定でき、ユーザに送達され得る。
【0028】
還元送達装置の別な可能な実施形態では、以下の工程が続けられる。カートリッジホルダ内に位置するカートリッジによって、カニューレが薄膜を突き刺すために使用でき、カートリッジ内の第1チャンバーとの流体連通を形成する。この流体連通は、カートリッジの第1チャンバーの圧力逃がし又はベントを作動させることで還元工程を続けるために必要である。カートリッジホルダ、カートリッジ及びカニューレのこのアセンブリは、開始位置に納められたピストンロッドを有する用量設定機構と軸方向に整列する。カートリッジホルダ上のガイド要素が戻しリングと係合して、回転可能に固定されるがスライド可能な接続を形成するまで、このアセンブリは用量設定機構に向かって軸方向に移動される。2つの部分上のねじ山が係合し、それら部分が一緒にねじ込まれるまで、当該アセンブリ及び用量設定機構は一緒に移動する。この時点で、好ましくはピストンロッドの末端近位端部は第2ストッパの遠位端面に当接している。さらなる回転が還元工程を開始させる、というのもカートリッジホルダの回転が戻しリングの回転を生じさせ、それが今度はピストンロッドを近位方向に軸方向に移動させ、以下でさらに説明するように最遠位ピストンに係合させるからである。
【0029】
ピストンロッドの軸方向近位移動によって、ピストンロッドは近位方向の軸方向力を第2(最遠位)ストッパに加え、それをカートリッジの内壁に対して近位に移動させる。第2チャンバー内の液体溶剤は圧縮できないので、第2ストッパにかかる力は直接第1ストッパに伝えられ、それで両ストッパとそれらの間に位置する溶剤がそれぞれ軸方向前方に(近位に)カートリッジのバイパスセクションに向かって移動する。ピストンロッドからのこの伝達力の結果として第1チャンバー内の過度の圧力はカニューレを介して抜かれる。第1(最近位)ストッパが移動してバイパスと整列すると、溶剤が第2チャンバーから第1ストッパの周りに流れ、第1チャンバーに注いで空になり、そこで溶剤は凍結乾燥された薬に接触して薬を溶解し始める。液体溶剤はバイパスを通って流れるので、移動する第2ストッパからの溶剤の圧力は減少する。
【0030】
カートリッジホルダはさらに回転され、用量設定機構に対して軸方向に移動するので、カートリッジとピストンロッドは互いに対して移動し続け、したがって、ピストンロッドは、全ての溶剤が第2チャンバーから押し出されて第1チャンバーに入るまで第2ストッパをカートリッジ内で近位方向に軸方向に押し続ける。2つのストッパは結局互いに当接、接触し、カートリッジの内壁に対して近位に一緒に移動し続ける。それらストッパが当接すると、第2チャンバーは存在しなくなる。これは、カートリッジホルダが用量設定部材に完全にねじ込まれ、2つの部分が互いに当接したときに生じる。還元工程が完了してしまえば、第2ストッパの近位端面は第1ストッパの遠位端面に当接しており、本質的に単一のストッパとして作用、機能し、以下に説明するように設定用量を投薬することができる。
【0031】
先に指摘したように、ユーザは、第2観察窓を介して還元された製品を見て、検査し、評価することができる。この時点で、還元送達装置は注入(充填)でき、1又は複数の用量が設定でき、ユーザに送達され得る。
【0032】
2つの部分が使用中に互いから容易に回して外されないように、不可逆なスナップ嵌めがカートリッジホルダと用量設定機構の間のねじ接続部の末端端部に含まれてもよい。ユーザが、スナップ嵌めを解除して、カートリッジホルダ/カートリッジアセンブリを用量設定機構から取り外されるまで反時計回りに回転させるために、或る量の回転トルクを供給しなければならないように、不可逆なスナップは設計されてもよい。
【0033】
前述したように、カートリッジは、カートリッジの半径方向に突出したバイパスセクションを収容するスナップインノッチを介してカートリッジホルダの近位部に適所に保持される。好ましくは、還元装置は、カートリッジがカートリッジホルダにスナップ係合した状態でエンドユーザに提供され、それにより溶剤は第1観察窓を介して検査でき、凍結乾燥物は第2観察窓を介して検査できる。
【0034】
本開示のこれらの観点及び他の観点、及び本開示に伴う利点は、本開示の以下の詳細な説明から及び付属の図面から明らかとなろう。
【0035】
本開示の以下の詳細な説明では、付属の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本開示の完成した還元薬剤送達装置の1つの実施形態の遠位セクションを形成する1つの可能な用量設定機構の図である。
【
図2】
図1の装置の可能な近位セクションの2つの図を示す。
【
図3】
図1及び2の近位セクション及び遠位セクションが接続され、送達装置が第1構成又は開始構成にある、完成した送達装置の幾つかの図を示す。
【
図4】
図3の装置のねじ式スリーブ及び同スリーブの断面を示す図である。
【
図5】
図3の装置で使用できる2チャンバーカートリッジの複数の図を示す。
【
図6】第2又はすぐに注射できる構成にある還元後の完全な送達装置の複数の図を示す。
【
図7】カートリッジホルダ及びねじ式スリーブアセンブリが再利用可能である、本開示の装置の別な可能な実施形態を示す図である。
【
図8】再利用可能なねじ式スリーブの複数の図を示す。
【
図9】再利用可能なカートリッジホルダの複数の図を示す。
【
図10】ユーザが薬剤の用量を設定し、次に送達するときの、可能な用量設定機構の変化する構成を示す図である。
【
図11】本開示の完全な還元薬剤送達装置の1つの実施形態の遠位セクションを形成する1つの可能な用量設定機構の図である。
【
図13】
図11の用量設定機構に接続するように構成された本開示のカートリッジホルダの1つの可能な設計の3つの図を示す。
【
図14】アセンブリの3つの異なるステージにおける本発明の薬剤送達装置の複数の図を示す。
【
図15】第2又はすぐに注射できる構成にある還元後の完全な送達装置の2つの図を示す。
【
図16】
図13のカートリッジホルダで使用できる2チャンバーカートリッジの複数の図を示す。
【
図17】
図11の用量設定機構のための一連の可能な用量設定機構を示す図である。
【
図18】使い捨て可能な用量設定機構に接続するように構成された本開示のカートリッジホルダの別な完全に使い捨て可能な設計の複数の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本願において、用語「遠位部分/遠位端部」は、装置の使用に応じて患者の送達/注射位置から最も離れて位置する、装置の部分/端部又はその構成部品若しくは部材の部分/端部を言う。対応的に、用語「近位部分/近位端部」は、装置の使用に応じて患者の送達/注射位置に最も近くに位置する、装置の部分/端部又はその部材の部分/端部を言う。
【0038】
図1及び
図2は、共に接続した(
図3参照)ときに本開示の1つの可能な完全な還元薬剤送達装置を形成する半使い捨て可能な装置1の2つのセクションを示す。「半使い捨て可能」によって、用量設定機構が再利用可能であり、薬剤が押し出された後にカートリッジホルダ及び/又はねじ式スリーブが空のカートリッジと共に捨てられるように設計、構成されていることを意味する。「完全に使い捨て可能な」装置は、スリーブが用量設定ハウジングに永続的に接続されており、還元工程の後でスリーブはカートリッジホルダにも永続的に取り付けられ、それで薬剤の押し出し後に装置全体が捨てられる装置である。
【0039】
装置1の近位セクション2は用量設定機構を含む。遠位セクション3は、カートリッジホルダ50とねじ式スリーブ16を含み、カートリッジホルダは遠位部17及び近位部40を含む。用量設定機構2は、ハウジング4、ピストンロッド11、ピストン戻しリング12(すなわち、ピストンロッドリセット特徴の一部)、用量ノブ5、ボタン6及び用量設定8を見るための窓7を有する。ハウジング4の近位端部には、第1ねじ山9があり、すぐに使用できる状態でカートリッジホルダの半径方向位置を明瞭に定める働きをする半径方向ストッパ10を含んでもよい。半径方向ストッパ10は、ねじ式スリーブ16がカートリッジホルダに完全に引き込まれ、スナップアーム32が近位スナップ窓31に係合したときに、カートリッジホルダの遠位部17の末端遠位端部における協働ストッパ51と相互作用し、接するように設計されている。
【0040】
カートリッジホルダ50は、好ましくは第2観察窓22(
図2参照)に位置するノッチ20とバイパス21のスナップ嵌め接続を介して、カートリッジ35を収容し、固定して保持する。バイパス21はカートリッジ35の一部であり、溶剤が凍結乾燥された薬38を溶解する還元工程の間に溶剤37(
図5参照)を第2又は遠位チャンバー18から第1又は近位チャンバー19に流入させることができる。凍結乾燥された薬は一般的に、一般には3つの段階;凍結、一次乾燥及び二次乾燥を含む凍結乾燥工程において調製される。凍結は凍結乾燥機で行われるが、しかしながら、従来の冷凍庫も代わりになり得る。凍結温度は約-40℃であり、乾燥段階の前に解凍はない。凍結製品は凍結状態から減圧下での昇華の工程を介してドライパウダーに移行し、凍った水を固相から気相に直接昇華させ、ドライパウダーを残す。凍結乾燥された薬に水を加えて元に戻す(再水和する)ために使用される溶剤は一般的に水であり、又は凍結乾燥された薬を溶解し、注入可能材料として生体適合性がある任意の液体であってもよい。
【0041】
カートリッジホルダ50は、2つの観察窓22,23を有する。窓23はカートリッジホルダの遠位部17における切り欠きであってもよい。この窓23によって、装置が開始構成にあるとき、ユーザがチャンバー18に最初に含有される溶剤37を観察することができる。還元工程が開始すると、スリーブがカートリッジホルダ50にねじ込まれ又は引き込まれるときに、窓23はスリーブ16の軸方向移動を示す。窓22はカートリッジホルダの近位部40に位置しており、やはり切り欠きであってもよい。窓22は、例えばスナップ嵌め接続を介してカートリッジ35のバイパス21と係合及び固定するように設計されたノッチ20を有してもよい。この窓によってさらに、ユーザは、還元工程前、中及び後に凍結乾燥された薬を見ることができる。
【0042】
例示の多区画カートリッジ35(
図5参照)は、第1又は近位チャンバー19と第2又は遠位チャンバー18から成る2チャンバーカートリッジとして示されている。これらチャンバーは、スライドピストン又はストッパ、すなわち第1ストッパ26によって区分されている。チャンバー19の近位端部は、クリンプされた金属キャップ36によって適所に固定された突き刺し可能な薄膜又は隔壁37によりシール(封緘)されている。カートリッジ35の近位端部は、第2スライドストッパ25によってシールされている。溶剤37はストッパ25,26の間に入れられている。薬を含む凍結乾燥物38が第1チャンバー19内にある。
図5は、送達装置が初期構成又は開始構成(
図3参照)から変形して、
図6における送達準備構成に推移するときの、還元工程中の移動及び変化するチャンバー構成を示す。第1ストッパ周りの溶剤の流れもまた矢印41で描かれている。
【0043】
ねじ式スリーブ16(
図4参照)は、内側近位表面上に位置する雌ねじ14を有する管状シリンダーである。スリーブ16の外側表面は、カートリッジホルダ(
図2参照)の遠位部17の内側に位置する協働ねじ山55と係合するように構成されたねじ山15を有する。幾つかの設計では、ねじ山15は、遠位部17の内側表面に位置するニブ・ダボに係合する雌ねじ、例えば螺旋状溝であってもよい。スリーブ16の近位端部は、装置1及びカートリッジ35の軸でもある長手軸45に対して半径方向外側に突出した突起部33を有する少なくとも1つの可撓性アーム又はスナップアーム32を有する。この突起部は、カートリッジホルダ50の近位部17における切り欠きとして構成された近位及び遠位スナップ窓
31,
30の両方にフィットするように設計されている。カートリッジホルダがねじ式スリーブ16に対して回転され、スリーブが還元工程中にカートリッジホルダに収納されるとき、可撓性スナップアーム32は半径方向内側に曲がるように設計されている。一旦カートリッジホルダがスリーブに完全にねじ込まれると、突起部33はスナップ窓31に整列し、スナップアームは半径方向外側に曲がり、それで突起部33が窓31にフィットし、係合する。カートリッジホルダ及びスリーブが使い捨て可能な設計では、この係合は永続的であり、よってユーザはカートリッジホルダをスリーブに対して回転させられない。この永続的なロック係合は、時々不可逆なスナップロックとも呼ばれる非対称形状の突起を使用することで達成されてもよい。
【0044】
図5は、還元工程が完了した後の、ストッパ25,26のバイパス21に対する位置を示す。図示のように、ストッパ25が近位に移動してストッパ26に当接したとき、チャンバー18は完全に包摂されている。この段階では、装置1は注入される(充填される)準備ができており、及び/又は一旦針が接続部24に取り付けられれば注射を実行する準備ができている。
【0045】
本開示は多数の注射装置設計に適用できる。
図1~6は、用量設定機構だけが再利用のために設計、構成されている半使い捨て可能な装置としての単に1つの可能なタイプのペン型注射設計を示す。このような装置では、還元工程が完了し、薬剤がカートリッジから押し出された後、ユーザは、空のカートリッジを含むカートリッジホルダ/ねじ式スリーブアセンブリを再利用可能な用量設定機構から取り外し、アセンブリを捨てる。新しいカートリッジを含む新品のアセンブリが、次に用量設定機構に接続でき、還元工程/薬剤送達シーケンスを繰り返すことができる。使用されたカートリッジホルダ/ねじ式スリーブアセンブリは、ねじ式スリーブがカートリッジホルダ内に完全に包摂され(すなわち、ねじ込まれ)、ユーザはその一部にも到達できないことを特徴とする。さらに、スナップアームは近位スナップ窓と永続的に連結しているので、たとえユーザがねじ式スリーブを回転させようとしても、その永続的連結がカートリッジホルダとねじ式スリーブの間の相対的な回転運動を抑止する。
【0046】
カートリッジホルダ又はねじ式スリーブ又はその両方が再利用できる装置設計のために、ねじ式スリーブをカートリッジホルダの内側から回して外す必要がある。その目的のために、ユーザ援助構成部品を設けることが有用である。
図7~9は、カートリッジホルダとねじ式スリーブが再利用できる装置設計を示す。ねじ式スリーブ60を再利用するため、カートリッジホルダ61がねじ山66に沿ってねじ式スリーブ60に対して回転できるように、スナップアーム63と近位スナップ窓の間の解除可能な又は非永続的な係合を有する必要がある。これにより、ねじ式スリーブ60がカートリッジホルダの内側から外側に延び、開始位置に戻ることができる。この解除可能な係合は、スナップアーム63上の対称的な突起部64を使用することで達成できる(
図8参照)。上で説明したように、一旦薬剤送達が完了すると、ユーザはカートリッジホルダを逆回転させ、それがまた、近位スナップ窓とスナップアーム上の突起部とのスナップ嵌めのためにねじ式スリーブを逆回転させる。一旦アセンブリが再利用可能な用量設定機構から分離されると、ユーザは、スナップアームが遠位スナップ窓と解除可能に係合する開始位置までスリーブをリセットするためにねじ式スリーブを逆回転させることができなければならない。ユーザをねじ式スリーブのこのリセットにおいて援助するための1つの可能な設計は、ねじ式スリーブの遠位端部に刻み付きリング62を有することである。この把持表面はてこの作用(レバレッジ)を与え、ユーザは突起部64と近位スナップ窓の間のスナップ嵌めを乗り越える必要なトルクを加えることができる。リング62はまた、用量設定機構からねじ山65を分離するためのユーザレバレッジを与えるために使用できる。カートリッジホルダ61はまた、空のカートリッジを取り外すことを可能とする及び新たな満タンカートリッジ35をカートリッジホルダ61に滑り込ませることができる縮小セクション68を備えた第2又は近位窓69を有してもよい(
図9参照)。
【0047】
装置1は、用量設定、用量補正及び用量送達中に長手方向に進む用量ダイヤルスリーブを有する。用量は、用量ダイヤルスリーブを遠位方向に直線的に移動させる用量ノブ5の回転によって設定される。用量は、用量ノブ5の端部にあるボタン6を反対方向又は近位方向に押すことで放出される。これは今度は、用量ダイヤルスリーブを用量設定機構2まで直線的に戻して(近位に)移動させる。可能な用量設定機構の1つの例示のシーケンスは
図10に示されており、ここでは用量設定機構が、ゼロ設定用量位置(目盛り8の「0」)、用量が設定されたとき、ボタン6が押された時の注射の開始、及びピストンロッドが薬剤の設定用量に比例する軸方向距離だけ近位に移動した注射の終了、にて示されている。
図10に示す用量設定機構は、目盛り8の「GO」により表示される固定の、単一の所定用量の設定のみ可能とするように設計、構成されている。
【0048】
今度は図面に示されるペン型注射器設計を、構成部品及びそれらの操作に関してより詳細に説明する。完全な注射装置1が、ハウジング4の窓7を介して0を示す目盛り8によって指示されるゼロ用量状態において示されている(
図7参照)。
図3は、近位端部に近位針コネクタ24を有するカートリッジホルダ50を露出するために保護キャップが取り外された装置1を示す。両頭ペンニードルが一般的に、スナップ嵌め、ねじ、ルーアーローク又は他の固定アタッチメントを介して針コネクタ24に取り付けられ、両頭ニードルカニューレはカートリッジホルダ50内に位置するカートリッジ35のチャンバー19内の還元される薬剤39との流体連通を達成できる。カートリッジ35は隔壁37によって近位端部でシールされている(
図5参照)。
【0049】
前述したように、用量設定機構は固定用量装置として設計、構成されてもよい。それに代えて、用量設定機構は、ハウジング4に対する用量ノブ5の回転を介して1又は複数のユーザ選択された用量の設定を可能にしてもよい。大抵のペン型注射器の用量設定機構の一部は、
図1,5及び10に示されるようなピストンロッド11である。このようなピストンロッドは通常、非円形断面を有し、またピストンロッドが回転するのを防止するがそれが近位方向に直線的に移動できるように設計された2つの平坦表面を有する。ピストンロッドが近位に移動すると、それはストッパ25,26を近位に押し、薬剤39を押し出す。ピストンロッド11は、用量設定及び用量送達中にハウジング4に対して回転不能状態で保持される、というのもそれがピストンロッドガイドの中央の穴を通る非円形通路内に配置されているからである。ピストンロッドガイドはハウジング4に回転方向と軸方向の両方に固定されている。この固定は、ピストンロッドガイドがハウジング4とは別個の構成部品であるときに達成され、又はピストンロッドガイドがハウジングと一体に作られてもよい。
【0050】
装置が装置組み立ての間に予め注入されない場合又は自動的又は強制注入特徴を有しない場合、ユーザは以下のように装置に手動で注入する必要がある。或る量の薬剤39がカートリッジ35から押し出されるように、用量ノブ5は回転される。本開示の注射装置1はまた、用量設定機構を使用する前に、すなわちユーザが用量を測量する前に、或る量の薬剤が押し出されるようにスライドロック又は他の機構が必ず活性化される必要がある、いわゆる強制又は自動的注入特徴を有してもよい。
【0051】
幾つかの例では、ユーザは注入工程をキャンセルし又は先に用量を設定する必要があってもよい。これは、用量取り消し工程によって達成される。用量取り消しは、用量を設定するのに使用される向きとは反対方向に用量ノブを回すことで実現される。用量取り消し中は、用量設定機構内の或る構成部品が回転し、用量設定工程と比べて反対又は近位方向に軸方向に進む。
【0052】
用量設定中、用量ノブ5はハウジング4の遠位端部の外に及び離れて進む。用量ダイヤルスリーブが遠位に回転し、進むとき、用量ダイヤルスリーブの印刷しるしが窓を通って移動するので、用量設定(又は用量取り消し)の進行が窓7にて観察される。所望の用量設定に達すると、その用量のためのしるし8が窓に現れる。この時点で、注射装置1は注入工程又は、既に注入されている場合薬剤の注射位置への送達の準備ができている。どちらの場合でも、ゼロ用量ハードストップに達し、ゼロ用量しるしが窓で観察されるまで、ユーザは用量ノブのボタン6を近位方向に押す。注入ステップ中、ユーザはペンニードルのカニューレから薬剤が押し出されたかどうかを観察する。薬剤が押し出されない場合、これは、ピストンロッドがスライドピストン又はストッパ25の遠位面に当接していないことを意味する。よって、薬剤がカニューレから出るのを観察されるまで、注入ステップは繰り返される。
【0053】
本開示の用量設定機構は、ユーザが最高の所定用量設定よりも多い用量を設定するのを防止する最大用量ハードストップを有してもよい。
【0054】
一旦用量が用量設定機構にて測量されると、ユーザは次にボタン6に近位方向の軸方向力を加え、用量送達工程を開始することができる。ユーザにより加えられる軸方向力は、付勢部材により加えられる遠位方向の力に打ち勝ち、ピストンロッド11を近位方向に軸方向に移動させる。ピストンロッドの軸方向移動はさらに、スライドストッパを固定カートリッジ35のチャンバー19の内壁に対して軸方向に移動させ、用量設定工程中にユーザにより設定された用量に等しい或る量の薬剤39をニードルカニューレ6から押し出す。
【0055】
本装置が使い捨て可能な注射装置として構成される場合、カートリッジホルダ50と用量設定機構2のハウジング4の間の接続が永久的であるので、カートリッジ35は交換可能でない。この接続の破壊又は変形によってのみ、カートリッジは注射装置から取り外される。このような使い捨て可能な装置は、一旦薬剤がカートリッジから押し出されると破棄されるように設計されている。
【0056】
別な実施形態では、
図11及び13が、一緒に接続されたとき(
図15参照)本開示の別な可能な完全な還元薬剤送達装置を形成する半使い捨て可能な装置1の2つのセクションを示す。上述したように、この実施形態は「半使い捨て可能な」又は「完全に使い捨て可能な」装置として設計され得る。
【0057】
装置1の遠位部分は用量設定機構を含む。近位部分3はカートリッジホルダ50を含み、カートリッジホルダ50は、遠位部50b及び近位部50aを含む。用量設定機構2は、ハウジング4、ピストンロッド11、ピストン戻しリング12(すなわち、ピストンロッドリセット特徴の一部)、用量ノブ5、ボタン6及び用量設定8を見るための窓7を有する。ハウジング4の近位端部には、ねじ山9があり、還元工程後に装置がすぐに使用できる状態にあるとき用量設定機構に対するカートリッジホルダの半径方向位置を明瞭に定める働きをする半径方向ストッパ9a又はスナップ嵌めを含んでもよい。半径方向ストッパ9aは、カートリッジホルダと用量設定機構が共にねじ込まれ、互いに当接したときに、カートリッジホルダの遠位部50bの末端遠位端部におけるスナップ嵌め特徴の協働ストッパと相互作用し、当接するように設計されている。
【0058】
図12は、明確性目的のために用量設定機構2から取り外し・分離された戻しリング12の詳細図を示す。戻しリングの外側表面12aは多数の長手方向スプライン12bを含んでもよい。これらスプラインは、ピストンロッドを用量設定機構に戻して開始位置にリセットする(引っ込める)必要があるときにユーザが(用量設定機構2に対して)反時計回りに戻しリングを把持して回転させるのを助長するための把持表面として機能する。これらスプライン12bはまた、1又は複数のガイド要素170のための係合面として機能する(
図13参照)。戻しリング12は、非円形であってもよい、ピストンロッドに合致する形状310を有する内面を有し、それで戻しリングとピストンロッドは互いに軸方向に固定される。
【0059】
ガイド要素170はカートリッジホルダ50の内側面50cに位置決めされ、スプライン12bと協働、係合するように設計された多数の長手方向スプライン170aで構成されてもよい。ガイド要素170はカートリッジホルダ50の内側面50cに回転可能に固定され、また内側面に固定的に取り付けられた別個の構成部品であってもよく、又はガイド要素は例えば鋳造工程によって内側面の一体部分として製作されてもよい。カートリッジホルダ及び用量設定機構が軸方向に互いに整列され、一緒にされると、スプライン170a及び12bは係合し、互いに対して軸方向にスライドして、回転可能に固定された係合を形成し、それで(用量設定機構に対する)カートリッジホルダの時計回り回転が戻しリング12の時計回り回転を生じさせる。この戻しリングの回転は、ピストンロッドの回転を生じさせ、これが今度はそれを近位方向に用量設定機構の外側に軸方向に進ませる。戻しリング12の遠位端部の内面12cは、例えば
図12に例示される非円形断面310を有することで、回転可能に固定された様式でピストンロッド11に係合するように構成されている。
【0060】
図18は、カートリッジホルダ100と用量設定機構(不図示)の間の上述した相互作用の別な設計を表しており、両方のアセンブリが完全に使い捨て可能である。この設計では、戻しリングは無い。その代わり、用量設定機構内で軸方向に固定されたピストンロッドガイド150があり、当該ガイドは、ピストンロッドの相対回転を防止する非円形内側部154を有するガイド153から近位に突出した2つの長手方向に延びるフィンガー152を有する。フィンガー152は、カートリッジホルダ100の内側面102に(軸方向に及び回転方向に)固定的に取り付けられた対応する半径方向突起部101をスライド可能に収容するよう構成されたスリット又は隙間151によって分離されている。カートリッジホルダ100が用量設定機構と整列したときに突起部101がフィンガー152の側面に隣接する隙間151内にフィットするように、隙間11及び/又は突起部101の寸法は選択される。カートリッジホルダが用量設定機構にねじ込まれると、回転突起部101がフィンガー152に係合し、ピストンロッドガイド150を係合、回転させる。ピストンロッドガイド150の回転はまた、ガイド153及び非円形部154を回転させ、ピストンロッドに係合、回転させる。これにより、ピストンロッドは近位方向に軸方向前方に進み、還元工程を開始する。カートリッジホルダ100が用量設定機構と完全に組み立てられると、ピストンロッドガイド150は用量設定機構に対して回転方向にロックされ、ゆえに用量設定及び用量送達中のピストンロッドの回転を防止する。
【0061】
カートリッジホルダ50は、好ましくは第2観察窓22(
図13参照)に又は近くに位置するノッチ又は他の固定コネクタとバイパス21のスナップ嵌め接続を介して、カートリッジ35を収容し、固定して保持する。バイパス21はカートリッジ35の一部であり、溶剤が凍結乾燥された薬38を溶解する還元工程の間に溶剤37(
図16参照)を第2又は遠位チャンバー18から第1又は近位チャンバー19に流入させることができる。凍結乾燥された薬は一般的に、一般には上述したように調製される。
【0062】
カートリッジホルダ50は、2つの観察窓22,23を有する(
図18参照)。窓23は、装置が開始構成にあるときにユーザがチャンバー18に最初に入れられる溶剤37を観察することを可能とする、カートリッジホルダにおける切り欠きであってもよい。還元工程が開始すると、窓23は近位方向における戻しリング12の軸方向移動を示す、というのもカートリッジホルダがねじ山9及び300の係合を介して用量設定機構にねじ込まれるからである。窓22はやはりカートリッジホルダ50内に位置しており、やはり切り欠きであってもよい。窓22は、例えばスナップ嵌め接続を介してカートリッジ35のバイパス21と係合及び固定するように設計されたノッチ20を有してもよい。この窓によってさらに、ユーザは、還元工程前、中及び後に凍結乾燥された薬を見ることができる。
【0063】
例示の多区画カートリッジ35(
図16参照)が、第1又は近位チャンバー19と第2又は遠位チャンバー18から成る2チャンバーカートリッジとして示されている。これらチャンバーは、スライドピストン又はストッパ、すなわち第1ストッパ26によって区分されている。チャンバー19の近位端部は、クリンプされた金属キャップ36によって適所に固定された突き刺し可能な薄膜又は隔壁37によりシール(封緘)されている。カートリッジ35の近位端部は、第2スライドストッパ25によってシールされている。溶剤37はストッパ25,26の間に入れられている。薬を含む凍結乾燥物38が第1チャンバー19内にある。
図16は、送達装置が初期構成又は開始構成(
図14参照)から変形して、
図16における送達準備構成、右側の図に推移するときの、還元工程中の移動及び変化するチャンバー構成を示す。第1ストッパ周りの溶剤の流れもまた矢印41で描かれている。
【0064】
図11は、用量設定機構2の外側近位表面上に位置する雄ねじ9を有するねじ式管状シリンダーを示す。このねじ式外側表面は、カートリッジホルダ(
図13参照)の遠位部の内側に位置する協働ねじ山300と係合するように構成されている。幾つかの設計では、ねじ山300は、遠位部17の内側表面に位置するニブ・ダボに係合する雌ねじ、例えば螺旋状溝であってもよい。カートリッジホルダが用量設定機構に完全にねじ込まれたときに、ハードストップ又はスナップ特徴がカートリッジホルダの内側面の対応する特徴に係合し、ユーザに2つの部分が確実に接続されたという触感フィードバックを与えるように、半径方向ストップ又はスナップ特徴9aがねじ山300に含まれてもよい。送達装置が完全に使い捨て可能な設計では、この係合は永続的であり、よってユーザは用量設定スリーブに対してカートリッジホルダの回転を逆進させられない。この永続的なロック係合は、時々不可逆なスナップロックとも呼ばれる非対称形状の突起を使用することで達成されてもよい。
【0065】
図15は、還元工程が完了した後の、ストッパ25,26のバイパス21に対する位置を示す。図示のように、ストッパ25が近位に移動してストッパ26に当接したとき、チャンバー18は完全に包含されている。この段階では、装置1は注入される(充填される)準備ができており、及び/又は一旦針200が接続部24に取り付けられれば注射を実行する準備ができている。
【0066】
上述した実施形態のように、本実施形態は多数の注射装置設計に適用できる。
図11~16のペン型注射装置は、注射装置の単に1つの可能な設計であり、完全に再利用可能な装置又は半使い捨て可能な装置であり、還元工程が完了した後及び薬剤が1又は複数の注射を介してカートリッジから押し出された後、ユーザは、空のカートリッジを含むカートリッジホルダを再利用可能な用量設定機構から取り外し、アセンブリを捨てる。新しいカートリッジを含む新品のアセンブリが、次に用量設定機構に接続でき、還元工程/薬剤送達シーケンスを繰り返すことができる。それに代えて、装置は完全に再利用可能であってもよく、カートリッジホルダは再利用のためにも設計され、空の使用カートリッジは取り外され、満タンカートリッジと交換される。
【0067】
装置1は、用量設定、用量補正及び用量送達中に長手方向に進む用量ダイヤルスリーブを有する。用量は、用量ダイヤルスリーブを遠位方向に直線的に移動させる用量ノブ5の回転によって設定される。用量は、用量ノブ5の端部にあるボタン6を反対方向又は近位方向に押すことで放出される。これは今度は、用量ダイヤルスリーブを用量設定機構2まで直線的に戻して(近位に)移動させる。可能な用量設定機構の1つの例示のシーケンスが
図17に示されており、ここでは用量設定機構が、ゼロ設定用量位置(目盛り8の「0」)、用量が設定されたとき、ボタン6が押された時の注射の開始、及びピストンロッドが薬剤の設定用量に比例する軸方向距離だけ近位に移動した注射の終了、にて示されている。
図7に示す用量設定機構は、目盛り8の「GO」により表示される固定の所定用量の設定のみ可能とするように設計、構成されている。
【0068】
今度は
図11~18に示されるペン型注射器設計を、構成部品及びそれらの操作に関してより詳細に説明する。完全な注射装置1が、ハウジング4の窓7を介して0を示す目盛り8によって指示されるゼロ用量状態において示されている。
図15は、近位端部にて針コネクタ24に接続したペンニードル200を有するカートリッジホルダ50を露出するために保護キャップが取り外された装置1を示す。両頭ペンニードルが一般的に、ハブに設置されて使用され、スナップ嵌め、ねじ、ルーアーローク又は他の固定アタッチメントを介して針コネクタ24に取り付けられ、それで両頭ニードルカニューレはカートリッジホルダ50内に位置決めされたカートリッジ35のチャンバー19内の還元される薬剤39との流体連通を達成できる。カートリッジ35は隔壁37によって近位端部でシールされている(
図16参照)。
【0069】
前述したように、用量設定機構は固定用量装置として設計、構成されてもよい。それに代えて、用量設定機構は、ハウジング4に対する用量ノブ5の回転を介して1又は複数のユーザ選択された用量の設定を可能にしてもよい。大抵のペン型注射器の用量設定機構の一部は、幾つかのケースではピストンロッドが回転するのを防止するがそれが近位方向に直線的に移動できるように設計された2つの平坦表面を有する非円形断面を有するピストンロッド11である。ピストンロッドが近位に移動すると、それはストッパ25,26を近位に押し、薬剤39を押し出す。ピストンロッド11は、用量設定中及び用量送達中の両方でハウジング4に対して回転不能状態で保持される、というのも完全に使い捨て可能な装置の場合にはそれがピストンロッドガイドの中央の穴を通る非円形通路内に配置され又は装置が救助可能な装置として設計されているときはピストンロッド戻しリング内に配置されているからである。どちらの設計でも、用量設定中及び用量送達中、ピストンロッドガイド又は戻しリングはハウジング4に回転可能に及び軸方向に固定されている。この固定は、ピストンロッドガイドがハウジング4とは別個の構成部品であるときに達成される。カートリッジホルダが用量設定機構に完全に取り付けられると、戻しリングはハウジングに対して回転可能に固定される。
【0070】
上述した注入特徴は、
図11~18に示す実施形態に適用可能である。同じことが用量取り消し工程にも当てはまる。
【0071】
用量設定中、用量ノブ5はハウジング4の遠位端部の外に及び離れて進む。用量ダイヤルスリーブが回転し、遠位に進むとき、用量ダイヤルスリーブの印刷しるしが窓を通って移動するので、用量設定(又は用量取り消し)の進行が窓7にて観察される。所望の用量設定に達すると、その用量のためのしるし8が窓に現れる。この時点で、注射装置1は注入工程又は、既に注入されている場合薬剤の注射位置への送達の準備ができている。どちらの場合でも、ゼロ用量ハードストップに達し、ゼロ用量しるしが窓で観察されるまで、ユーザは用量ノブのボタン6を近位方向に押す。注入ステップ中、ユーザはペンニードルのカニューレから薬剤が押し出されたかどうかを観察する。薬剤が押し出されない場合、これは、ピストンロッドがスライドピストン又はストッパ25の遠位面に当接していないことを意味する。よって、薬剤がカニューレから出るのを観察されるまで、注入ステップは繰り返される。
【0072】
本開示の用量設定機構は、ユーザが最高の所定用量設定よりも多い用量を設定するのを防止する最大用量ハードストップを有してもよい。
【0073】
一旦用量が用量設定機構にて測量されると、ユーザは次にボタン6に近位方向の軸方向力を加え、用量送達工程を開始することができる。ユーザにより加えられる軸方向力は、付勢部材により加えられる遠位方向の力に打ち勝ち、ピストンロッド11を近位方向に軸方向に移動させる。ピストンロッドの軸方向移動はさらに、スライドストッパを固定カートリッジ35のチャンバー19の内壁に対して軸方向に移動させ、用量設定工程中にユーザにより設定された用量に等しい或る量の薬剤39をニードルカニューレ6から押し出す。
【0074】
本装置が使い捨て可能な注射装置として構成される場合、カートリッジホルダ50と用量設定機構2のハウジング4の間の接続が永久的であるので、カートリッジ35は交換可能でない。この接続の破壊又は変形によってのみ、カートリッジは注射装置から取り外される。このような使い捨て可能な装置は、一旦薬剤がカートリッジから押し出されると破棄されるように設計されている。
【0075】
図面に示し、前述した実施形態は、安全アセンブリの可能な設計の非限定的な例としてのみ考えるべきであり、このような設計は特許請求項の範囲内で多数の方法で変更されてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 装置
2 近位セクション/用量設定機構
3 遠位セクション
12 ピストン戻しリング
16 ねじ式スリーブ
18 第2又は遠位チャンバー
19 第1又は近位チャンバー
32 スナップアーム
35 カートリッジ
50 カートリッジホルダ