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特許7300470音響光学画像化方法および音響光学画像化システム
<図1>
  • 特許-音響光学画像化方法および音響光学画像化システム 図1
  • 特許-音響光学画像化方法および音響光学画像化システム 図2
  • 特許-音響光学画像化方法および音響光学画像化システム 図3
  • 特許-音響光学画像化方法および音響光学画像化システム 図4
  • 特許-音響光学画像化方法および音響光学画像化システム 図5A
  • 特許-音響光学画像化方法および音響光学画像化システム 図5B
  • 特許-音響光学画像化方法および音響光学画像化システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】音響光学画像化方法および音響光学画像化システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20230622BHJP
   G01N 29/24 20060101ALI20230622BHJP
   G01N 29/06 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
G01N21/17 610
G01N29/24
G01N29/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020570644
(86)(22)【出願日】2019-03-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2019055990
(87)【国際公開番号】W WO2019170907
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】1852081
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】515185843
【氏名又は名称】エコール・シュペリュール・ドゥ・フィシック・エ・ドゥ・シミー・アンデュストリエル・ドゥ・ラ・ヴィル・ドゥ・パリ
(73)【特許権者】
【識別番号】518170446
【氏名又は名称】ソルボンヌ ウニベルシテ
(73)【特許権者】
【識別番号】520348370
【氏名又は名称】ユニベルシテ パリ 13 パリ-ノール ヴィルタヌーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ラマーズ、フランソア
(72)【発明者】
【氏名】ジェニスン、ジャン-リュック
(72)【発明者】
【氏名】ロドロー、ジャン-バプティスト
(72)【発明者】
【氏名】デュプイ、クレメント
(72)【発明者】
【氏名】チュール、ジャン-ミシェル
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/193554(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0099815(US,A1)
【文献】特開昭60-088918(JP,A)
【文献】特開2010-088498(JP,A)
【文献】特開2007-195780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/61
G01N 29/00 - G01N 29/52
A61B 5/00 - A61B 5/22
A61B 8/00 - A61B 8/15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体(2)の観測領域(3)を画像化するための音響光学画像化方法であって、
・測定ステップ(100)と、
・空間復調ステップと、
・処理ステップ(200)と、を備え、
前記測定ステップ(100)において、
光学手段を用いて、複数の方向mにそれぞれ伝播するフォーカスされていない音波に関連した複数の測定信号Smj(t)が取得され、
前記フォーカスされていない音波はそれぞれ、超音波トランスデューサ(T)のアレイ(4)により、観測領域(3)内で放射され、
空間変調されたフォーカスされていない音波を形成するために、前記フォーカスされていない音波はそれぞれ、J個の周期的空間強度変調jとともに、続けてJ回、各伝播方向mに放射され、
前記周期的空間強度変調jは、少なくとも1つの空間周期性に関する方向(X)に同一の空間周期を持ち、所定の数P個のトランスデューサに相当し、
前記周期的空間強度変調jは、互いに空間的に位相シフトされ、
前記測定ステップは、各周期的空間強度変調jに関し、複数の連続する測定操作(150)を含み、
前記測定操作(150)は、以下のサブステップ、すなわち、
○音響放射サブステップと、
○光放射サブステップと、
○取得サブステップと、を備え、
前記音響放射サブステップにおいて、空間変調されたフォーカスされていない音波が、前記周期的空間強度変調jを用いて放射され、伝播方向mに伝播し、
前記光放射サブステップにおいて、空間変調されたタグ付けされた光波を生成するために、入射光波が、前記観測領域(3)内で、前記空間変調されたフォーカスされていない音波と同時に放射され、
前記空間変調されたタグ付けされた光波は、前記空間変調されたフォーカスされていない音波によって周波数シフトされた、少なくとも1つの音響光学成分を備え、
前記取得サブステップにおいて、
前記空間変調されたタグ付けされた光波が取得され、
前記周期的空間強度変調jと、方向mに伝播するフォーカスされていない音波と、に相当する測定信号Smj(t)が取得され、
前記空間復調ステップにおいて、
伝播方向mに特化した復調信号S(t)を取得するために、前記J個の周期的空間強度変調に相当する複数の測定信号Smj(t)が、同一の伝播方向mに関して結合され、
前記処理ステップ(200)において、
前記複数の測定信号Smj(t)を用いて、前記観測領域(3)の少なくとも部分的な画像が決定されることを特徴とする音響光学画像化方法。
【請求項2】
前記超音波トランスデューサ(T のアレイ(4)は、リニアアレイであり、前記空間周期性に関する方向(X)に延びることを特徴とする請求項1に記載の音響光学画像化方法。
【請求項3】
前記周期的空間強度変調jは、所定の周期的空間強度変調jに関して、所定の超音波トランスデューサ(T)のみが起動されるような2値関数であることを特徴とする請求項1または2に記載の音響光学画像化方法。
【請求項4】
前記Jは4であり、
前記空間周期は、4の倍数であるトランスデューサの数Pに相当し、
前記周期的空間強度変調jは、前記空間周期の四分の一に相当する位相により、互いに空間的に位相シフトされることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の音響光学画像化方法。
【請求項5】
前記空間復調ステップにおいて、
前記復調信号S(t)は、信号v(ν)を逆フーリエ変換することにより計算され、
【数16】
であり、
ここで、
【数12】
【数13】
【数14】
であり、
前記 v (ν)は、前記測定信号Smj(t)の時間領域フーリエ変換であり、
前記jは、0以上3以下の整数であり、
前記νは、時間領域周波数であることを特徴とする請求項4に記載の音響光学画像化方法。
【請求項6】
前記フォーカスされていない音波は、平面音波または発散音波であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の音響光学画像化方法。
【請求項7】
前記フォーカスされていない音波の伝播方向mは、30度以上50度以下の角度範囲の扇形をカバーすることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の音響光学画像化方法。
【請求項8】
前記フォーカスされていない音波の伝播方向mは、0.5度以上2度以下の角度刻みで分割されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の音響光学画像化方法。
【請求項9】
各測定操作(150)は、
L回繰り返され、
フォーカスされていない音波の各伝播方向mと、各周期的空間強度変調jと、に関連するL個の生の測定信号Sijl(t)を取得し、
前記空間復調ステップで使われる前記測定信号Smj(t)を決定するために、前記L個の生の測定信号Smjl(t)は、互いに平均化されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の音響光学画像化方法。
【請求項10】
媒体(2)の観測領域(3)を画像化するための音響光学画像化システム(1)であって、
・空間的に規則的に配置された超音波トランスデューサ(T)のアレイ(4)と、
・光放射デバイス(8)と、
・光検出器(9)と、
・前記光検出器(9)を介して、それぞれ異なる伝播方向mに伝播する空間変調されたフォーカスされていない音波に関連した複数の測定信号Smj(t)を取得するように構成された制御デバイスと、を備え、
前記制御デバイスは、
・前記観測領域(3)内で、前記空間変調されたフォーカスされていない音波をそれぞれ、J個の周期的空間強度変調jとともに、続けてJ回放射させ、
・空間変調されたタグ付けされた光波を生成するために、光放射デバイス(8)を用いて、入射光波を、前記観測領域(3)内で、前記空間変調されたフォーカスされていない音波と同時に放射させ、
・前記空間変調されたタグ付けされた光波の各々に関し、前記超音波トランスデューサ(T のアレイ(4)を用いて、前記周期的空間強度変調jと、方向mに伝播するフォーカスされていない音波と、に相当する測定信号Smj(t)を取得し、
・伝播方向mに特化した復調信号S(t)を取得するために、前記J個の周期的空間強度変調に相当する複数の測定信号Smj(t)を、同一の伝播方向mに関して結合することにより、空間復調を実行し、
・前記複数の測定信号Smj(t)を用いて、前記観測領域(3)の少なくとも部分的な画像を決定し、
前記周期的空間強度変調jは、少なくとも1つの空間周期性に関する方向(X)に同一の空間周期を持ち、所定の数P個のトランスデューサに相当し、
前記周期的空間強度変調jは、互いに空間的に位相シフトされ、
前記空間変調されたタグ付けされた各光波は、前記空間変調されたフォーカスされていない音波によって周波数シフトされた、少なくとも1つの音響光学成分を備えることを特徴とする音響光学画像化システム。
【請求項11】
前記超音波トランスデューサ(T のアレイ(4)は、リニアアレイであり、前記空間周期性に関する方向(X)に延びることを特徴とする請求項10に記載の音響光学画像化システム。
【請求項12】
前記周期的空間強度変調jは、所定の周期的空間強度変調jに関して、所定の超音波トランスデューサ(T)のみが起動されるような2値関数であることを特徴とする請求項10または11に記載の音響光学画像化システム。
【請求項13】
前記Jは4であり、
前記空間周期は、4の倍数であるトランスデューサの数Pに相当し、
前記周期的空間強度変調jは、前記空間周期の四分の一に相当する位相により、互いに空間的に位相シフトされることを特徴とする請求項10から12のいずれかに記載の音響光学画像化システム。
【請求項14】
前記制御デバイスは、
信号v(ν)を逆フーリエ変換することにより、復調信号S(t)を計算するように構成され、
【数16】
であり、
ここで、
【数12】
【数13】
【数14】
であり、
前記 v (ν)は、前記測定信号Smj(t)の時間領域フーリエ変換であり、
前記jは、0以上3以下の整数であり、
前記νは、時間領域周波数であることを特徴とする請求項13に記載の音響光学画像化システム。
【請求項15】
前記制御デバイスは、 フォーカスされていない音波の各伝播方向mと、各周期的空間強度変調jと、に関連するL個の生の測定信号Sijl(t)を取得するように構成され、
前記空間復調で使われる前記測定信号Smj(t)を決定するために、前記L個の生の測定信号Smjl(t)は、互いに平均化されることを特徴とする請求項10から14のいずれかに記載の音響光学画像化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響光学画像化方法および音響光学画像化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
より具体的には、本発明は、特に媒体の観測領域を画像化するための音響光学画像化方法に関する。このような方法は、媒体(例えば生体組織)内のある深さに位置する観測領域の光学的特性に関する情報を、非侵襲的に取得することを目的とする。光学的特性は、観測領域内における生体組織構造の、色、吸収などであってよい。観測領域は、例えば、対象(人体、組織など)において数ミリメートルまたは数センチメートルの深さにあってよい。
【0003】
[先行技術]
このような方法は、媒体の観測領域内で超音波が生成され、観測領域の焦点にフォーカスされ、同時にこの領域内で光波が放射されるものが知られている。その後、媒体内の光波と音響振動との間の結合に結び付けられた信号を検出することにより、情報が得られる。これは、超音波が音響周波数faで散乱媒体(例えば、生体その他の組織)内を通過すると、散乱中心の周期的な変位および媒体の屈折率の周期的な変化が発生することによる。入射周波数fiの入射光(特にレーザ光)が媒体によって散乱されると、散乱中心の動きおよび媒体の屈折率の変化は、タグ付けされた光波を生成する。すなわちこの光波は、一方で入射周波数fiのキャリア成分を持ち、他方で音響サイドバンドの一方または他方に向けて散乱される周波数がfao=fa±n*fiの音響光学成分を持つ。
【0004】
このような方法は、特に以下に開示されている。
"Ultrasound-mediated optical tomography: a review of current methods" Daniel S. Elson, Rui Li, Christopher Dunsby, Robert Eckersley and Meng-Xing Tang, published in Interface Focus (2011) vol. 1, pages 632-648
【0005】
これらの既知の方法は、連続したフォーカスされた超音波を用いて、観測領域をスキャンする必要があるので遅い。すなわち画像を生成するためには、約200,000個のフォーカスされた超音波を放射する必要がある。
【0006】
こうした既知の方法は、国際特許出願公開WO2016193554に記載された発明により、かなりの改良がされた。この発明のアイデアは、フォーカスされた超音波に代えて、連続したフォーカスされていない(異なる伝搬方向を持つ)超音波を観測領域に放射するところにある。この方法によれば、画像を形成するのに必要な超音波のバーストの数を、前述の方法に比べて大幅に限定することができる。実際、画像を形成するための超音波のバーストの数は、最大50にまで分割される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特に、装置をこれ以上に複雑化せず、かつ処理速度を落とさず、方位分解能(特に、超音波トランスデューサのアレイに平行な方向の)を改善するためには、既知の音響光学画像化方法および装置をさらに改良する必要があることが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、媒体の観測領域を画像化するための音響光学画像化方法が与えられる。この方法は、
・測定ステップと、
・空間復調ステップと、
・処理ステップと、を備える。
測定ステップにおいて、光学手段を用いて、複数の方向mにそれぞれ伝播するフォーカスされていない音波に関連した複数の測定信号Smj(t)が取得される。
フォーカスされていない音波はそれぞれ、超音波トランスデューサのアレイにより、観測領域内で放射される。
空間変調されたフォーカスされていない音波を形成するために、フォーカスされていない音波はそれぞれ、J個の周期的空間強度変調jとともに、続けてJ回、各伝播方向mに放射される。
周期的空間強度変調jは、少なくとも1つの空間周期性に関する方向に同一の空間周期を持ち、所定の数P個のトランスデューサに相当する。
周期的空間強度変調jは、互いに空間的に位相シフトされる。
測定ステップは、各周期的空間強度変調jに関し、複数の連続する測定操作を含む。
測定操作は、以下のサブステップ、すなわち、
○音響放射サブステップと、
○光放射サブステップと、
○取得サブステップと、を備える。
音響放射サブステップにおいて、空間変調されたフォーカスされていない音波が、周期的空間強度変調jを用いて放射され、伝播方向mに伝播する。
光放射サブステップにおいて、空間変調されたタグ付けされた光波を生成するために、入射光波が、観測領域内で、空間変調されたフォーカスされていない音波と同時に放射される。
空間変調されたタグ付けされた光波は、空間変調されたフォーカスされていない音波によって周波数シフトされた、少なくとも1つの音響光学成分を備える。
取得サブステップにおいて、空間変調されたタグ付けされた光波が取得され、周期的空間強度変調jと、方向mに伝播するフォーカスされていない音波と、に相当する測定信号Smj(t)が取得される。
空間復調ステップにおいて、伝播方向mに特化した復調信号S(t)を取得するために、J個の周期的空間強度変調に相当する複数の測定信号Smj(t)が、同一の伝播方向mに関して結合される。
処理ステップにおいて、複数の測定信号Smj(t)を用いて、観測領域の少なくとも部分的な画像が決定される。
【0009】
これらの構成のおかげで、超音波の空間変調を用いて、音響光学信号を介して、より高い空間周波数の情報が得られ、画像の横方向の解像度が改善される。
【0010】
音響光学画像化方法はさらに、以下の特徴の1つまたはいくつかを含んでよい。
・トランスデューサのアレイは、リニアアレイであり、空間周期性に関する方向に延びる。
・周期的空間強度変調jは、所定の周期的空間強度変調jに関して、所定の超音波トランスデューサのみが起動されるような2値関数である。従って、超音波トランスデューサは、周期Pの周期的パターンjおよび空間周期の部分によって互いに空間的にオフセットされた周期的空間強度変調jに従って起動される。
・Jは4であり、空間周期は4の倍数であるトランスデューサの数Pに相当する。周期的空間強度変調jは、空間周期の四分の一に相当する位相により、互いに空間的に位相シフトされる。
・空間復調ステップにおいて、信号v(ν)を逆フーリエ変換することにより、復調信号S(t)が計算される。
【数16】
である。
ここで、
【数12】
【数13】
【数14】
である。
v(ν)の項は、測定信号Smj(t)の時間領域フーリエ変換である。
jは、0以上3以下の整数である。
νは、時間領域周波数である。
・フォーカスされていない音波は、平面音波または発散音波である。
・フォーカスされていない音波の伝播方向mは、30度以上50度以下の角度範囲の扇形をカバーする。
・フォーカスされていない音波の伝播方向mは、0.5度以上2度以下の角度刻みで分割される。
・各測定操作は、L回繰り返される。これにより各測定操作は、フォーカスされていない音波の各伝播方向mと、各周期的空間強度変調jと、に関連するL個の生の測定信号Sijl(t)を取得する。空間復調ステップで使われる測定信号Smj(t)を決定するために、L個の生の測定信号Smjl(t)は、互いに平均化される。
・各測定信号Smj(t)は、2メガヘルツより高い、好ましくは10メガヘルツより高い周波数でサンプリングされる。
・処理ステップは、逆ラドン変換を実行するステップを含む。
・処理ステップは、チャネル生成アルゴリズムを実行するステップを含む。
・処理ステップは、逆投影アルゴリズムまたはフィルタされた逆投影アルゴリズムを実行するステップを含む。
・処理ステップは、以下のステップを含む。
○少なくとも1つの測定信号に関連する複数のプロファイルスライスを決定するステップ。各プロファイルスライスは、関連する測定信号の1次元フーリエ変換の関数である。
○複数のプロファイルスライスを用いて、2次元スペクトルを決定するステップ。
○観測領域内の光の強度を表す少なくとも1つの値を決定するステップ。この値は、2次元スペクトルの2次元逆フーリエ変換の関数である。
○複数のプロファイルスライスをフーリエ空間内に再位置付けすることにより(好ましくは、各プロファイルスライスを、プロファイルスライスに関する測定信号に関連する、フォーカスされていない音波の伝播方向の関数として再位置付けすることにより)、2次元スペクトルを決定するステップ。
【0011】
媒体の観測領域を画像化するための音響光学画像化システムもまた与えられる。このシステムは、
・空間的に規則的に配置された超音波トランスデューサのアレイと、
・光放射デバイスと、
・光検出器と、
・光検出器を介して、それぞれ異なる伝播方向mに伝播する空間変調されたフォーカスされていない音波に関連した複数の測定信号Smj(t)を取得するように構成された制御デバイスと、を備える。
制御デバイスは、
・観測領域内で、空間変調されたフォーカスされていない音波をそれぞれ、J個の周期的空間強度変調jとともに、続けてJ回放射させ、
・空間変調されたタグ付けされた光波を生成するために、光放射デバイスを用いて、入射光波を、観測領域内で、空間変調されたフォーカスされていない音波と同時に放射させ、
・空間変調されたタグ付けされた光波の各々に関し、トランスデューサのアレイを用いて、周期的空間強度変調jと、方向mに伝播するフォーカスされていない音波と、に相当する測定信号Smj(t)を取得し、
・伝播方向mに特化した復調信号S(t)を取得するために、J個の周期的空間強度変調に相当する複数の測定信号Smj(t)を、同一の伝播方向mに関して結合することにより、空間復調を実行し、
・複数の測定信号Smj(t)を用いて、観測領域の少なくとも部分的な画像を決定する。
周期的空間強度変調jは、少なくとも1つの空間周期性に関する方向に同一の空間周期を持ち、所定の数P個のトランスデューサに相当する。
周期的空間強度変調jは、互いに空間的に位相シフトされる。
空間変調されたタグ付けされた各光波は、空間変調されたフォーカスされていない音波によって周波数シフトされた、少なくとも1つの音響光学成分を備える。
音響光学画像化システムはさらに、以下の特徴の1つまたはいくつかを含んでよい。
・トランスデューサのアレイは、リニアアレイであり、空間周期性に関する方向に延びる。
・周期的空間強度変調jは、所定の周期的空間強度変調jに関して、所定の超音波トランスデューサのみが起動されるような2値関数である。
・Jは4であり、空間周期は、4の倍数であるトランスデューサの数Pに相当する。周期的空間強度変調jは、空間周期の四分の一に相当する位相により、互いに空間的に位相シフトされる。
・制御デバイスは、測定信号Smj(t)の時間領域フーリエ変換vmj(ν)計算し、時間領域フーリエ変換vmj(ν)の線形結合によって信号v(ν)を決定し、信号v(ν)を逆フーリエ変換することにより、復調信号S(t)を決定するように構成される。νは時間領域周波数である。
・制御デバイスは、信号v(ν)を逆フーリエ変換することにより、復調信号S(t)を計算するように構成される。
【数16】
である。
ここで、
【数12】
【数13】
【数14】
である。
v(ν)の項は、測定信号Smj(t)の時間領域フーリエ変換である。
jは、0以上3以下の整数である。
νは、時間領域周波数である。
・制御デバイスは、フォーカスされていない音波の各伝播方向mと、各周期的空間強度変調jと、に関連するL個の生の測定信号Sijl(t)を取得するように構成される。空間復調で使われる測定信号Smj(t)を決定するために、L個の生の測定信号Smjl(t)は、互いに平均化される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明のその他の特徴および利点は、非限定的な実例を用いて示される以下の実施の形態の説明を、添付の図面を参照して読むことにより明らかになるだろう。
【0013】
図1】前述の音響光学画像化システムの一例の模式図である。
図2】本システムを実行するための音響光学画像化方法の模式的なフロー図である。
図3】空間変調を得るために、図2の方法により起動された超音波トランスデューサによって形成されたパターンの例を示す図である。
図4】超音波トランスデューサの起動により一連の周期的パターンに導入された空間変調およびその後の復調を示す図である。
図5A図2の方法の処理ステップの一例の詳細を示す図である。
図5B図2の方法の処理ステップの一例の詳細を示す図である。
図6】音響光学画像化によって得られた同一媒体の画像を示す図である。a)はフォーカスされた音波、b)は空間変調されていない平面波、c)は前述の方法で空間変調された平面波をそれぞれ表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
いくつかの図面において、同一または類似の要素には同一の符号を付す。
【0015】
図1に、本発明のある実施の形態に係る音響光学画像化システム1を模式的に示す。
【0016】
媒体2(例えば、対象または生体組織)は画像化されるべき対象物であり、観測領域3を含む。観測領域3は、媒体2の表面上にあってもよいが、媒体2の内部の所定の深さ(例えば、深さ数センチメートル)にあってもよい。
【0017】
媒体2は、散乱媒体である。特に「散乱媒体」とは、特徴的な厚さl*(例えば、生体媒体内における数ミリメートルの厚さ)であって、l*より厚い当該媒体内を光が通過すると、その光が持つ情報が完全にスクランブルされ、何らかの処理なしには解読できないような厚さl*を持つ媒体を意味すると理解されてよい。従ってこれは、通常の光学画像化ができない深さを意味する。この現象は、光の多重散乱とも呼ばれる。
【0018】
超音波トランスデューサのアレイ4が、媒体2と、直接的または間接的に音響接触する。例えばアレイ4は、結合素子(例えば、水で満たされた容器や水で満たされたクッション)を介して媒体2と音響結合する。
【0019】
超音波トランスデューサのアレイ4は、例えば数100個(例えば100から300)のトランスデューサ5を備えるリニアアレイである。トランスデューサ5は、例えば、X軸に沿って並列している。いくつかの実施の形態では、トランスデューサ5は、曲線に沿って配置されてもよく、2次元のマトリックスを形成するように配置されてもよい。ある特定の実施の形態では、超音波トランスデューサのアレイ4は、192個のトランスデューサからなるリニアアレイである。
【0020】
超音波トランスデューサのアレイ4は、例えば電子機器ラック6および電子機器ラック6を制御するマイクロコンピュータ7を備える制御手段によって制御される。
【0021】
超音波トランスデューサのアレイ4は、観測領域3の内部で所定の方向に伝播する、フォーカスされていない音波を生成することができる。伝播方向は、観測領域3の内部で様々な方向に伝播する、フォーカスされていない音波を生成するように制御されてもよい。
【0022】
限定されないが、超音波トランスデューサのアレイ4は、例えば数メガヘルツのオーダの(例えば6MHzの)中央周波数を持つ超音波を、観測領域3の内部で生成することができる。超音波トランスデューサのアレイ4は、例えば30度より大きい角度(例えば40度)を持つ扇型の中から選択した伝播方向を持つ複数の超音波を、観測領域3の内部で生成することができる。
【0023】
ある実施の形態では、フォーカスされていない音波は平面波である。別の実施の形態では、フォーカスされていない音波は発散波(例えば球面波)である。
【0024】
フォーカスされていない音波は、所定の時間領域における半値幅(典型的には数マイクロ秒から数10マイクロ秒)のパルスであることが実用的には好ましい。
【0025】
システム1はまた、光放射デバイス8を備える。光放射デバイス8は、観測領域3の内部で少なくとも1つの入射光波を放射するように設計される。特に光放射デバイス8は、この光波を、超音波トランスデューサのアレイ4による超音波放射と同時に放射するように設計される。光放射デバイス8は、例えばレーザであり、一般的には入射光波のスペクトルを制御することのできる光放射デバイスである。
【0026】
より広義には「光波」は、媒体2の内部を伝播することのできる電磁輻射を意味すると理解してよい。特にこれは、赤外、可視または紫外スペクトルに属する電磁輻射であると考えてよい。
【0027】
非限定的には、光放射デバイス8は、パワー2ワットで波長780ナノメートル(これは、入射周波数fiに相当する)の増幅単一周波数半導体レーザである。入射波の偏光は、制御されてもよい。ある実施の形態では、光波は、時間的および空間的に変調されてもよく、あるいは媒体2の内部に侵入する前にフィルタリングされてもよい。
【0028】
システム1は、タグ付けされた光波を表す測定信号を取得するように設計された検出器9をさらに備える。すなわち検出器9は、タグ付けされた光波の波長に相当する1つ以上の電磁波長に敏感な光検出器である。従って検出器9は、例えば、観測領域内を伝播する入射光波と超音波との相互作用によって生成された音響光学成分に敏感である。検出器9は、キャリア成分、すなわちタグ付けされた光波の入射周波数fiにおける成分に敏感であってもよい。
【0029】
検出器9は、例えばフォトダイオードである。
【0030】
システム1は、信号10を前処理または後処理する部品を備えてもよい。こうした部品は、潜在的には検出器9に統合される。信号10を前処理または後処理する部品は、例えば、ハイパスフィルタ10a、広帯域増幅器10b(例えば、Thorlabs、DHPVA)およびアナログ‐デジタル変換器10cを備えてもよい。
【0031】
特に測定信号は、数メガヘルツより高い周波数(好ましくは10メガヘルツより高い周波数、例えばサンプリン周波数40MHz)で、アナログ‐デジタル変換器10cによってサンプリングされてよい。
【0032】
このようにして、特に各測定信号は、フォーカスされていない超音波によって周波数シフトされた、タグ付けされた光波の音響光学成分の光強度の、時間的に連続する値を含んでよい。
【0033】
トランスデューサのアレイ4、光放射デバイス8および検出器9は、本発明に係るシステム1の取得デバイス11を形成してもよい。特にこのような取得デバイス11は、複数のフォーカスされていない超音波に関連する複数の測定信号を取得するように設計される。これについては後で詳述する。
【0034】
媒体の観測領域の音響光学画像化方法は、特に図2に詳しく示されるように、例えばシステム1を用いて以下のように実行されてよい。
【0035】
(a)測定ステップ
測定ステップ100(MES)において、複数の音波(超音波)に関連する複数の測定信号が取得されてよい。
【0036】
測定ステップ100は、複数の測定操作150を備える。
【0037】
各測定操作150において、以下のサブステップが実行される。
【0038】
(a1)音響放射
トランスデューサのアレイ4を用いて、観測領域3の内部でフォーカスされていない音波(例えば、パルス)が生成される。この音波は、画像平面内で、X軸に直行するY軸とのなす角度がθである方向に伝播する(平面波の場合は、これは、X軸と等位相線とがなす角度でもある)。音波は、複数の伝播方向に放射される。これらの伝播の各方向は、符号mで示され、Y軸とθの角度をなす。伝播方向mは、30度以上50度以下(例えば、40度)の角度範囲の扇形をカバーしてよい。フォーカスされていない音波の伝播方向mは、0.5度以上2度以下(例えば、1度)の角度刻みで分割されてもよい。角度範囲が40度で角度刻みが1度の場合、伝搬方向を示す数MはM=41である。
【0039】
さらに、同じmの伝播方向に関し、音波はJ回放射される。この放射のたびに、アレイ4のトランスデューサ5に空間強度変調jが与えられる。空間強度変調jは、周期的である。その空間周期は、X方向に並んだP個のトランスデューサTである(トランスデューサTは、規則的に配置される。トランスデューサの数で表されたこの空間周期は、所定の距離xpと同等である)。空間強度変調jは、互いに、X方向に空間的にオフセットされる。
【0040】
前述の空間強度変調は、空間関数A(k)に相当する。A(k)は、+X方向に周期的である。このとき、各トランスデューサTから放射された信号emjk(t)は、A(k)・A0に等しい強度を持つ。ただしA0は所定の数である。
【0041】
図3に示される実施の形態では、空間強度変調A(k)は、トランスデューサTに応じて0または1の値を取る2値関数である。このとき、所定の周期的空間強度変調jに関し、所定の超音波トランスデューサのみが起動される。
【0042】
図3に示されるように、各放射でこのように起動されるトランスデューサ5は、周期的パターンに従って配置される。この周期的パターンは、前述のX方向に並んだP個のトランスデューサTの空間周期を持つ。
【0043】
各周期的空間強度変調jに関して起動されるトランスデューサTによって形成されるパターンは、様々な形を取ってもよい。図3の例では、4個のトランスデューサTのうち1個だけが起動される(例えば、192個のトランスデューサのアレイの場合、各周期的空間強度変調jに関して、48個のトランスデューサが起動される)。すなわち、
・j=0の場合:トランスデューサT1、T5等が起動される(図3の網掛け部分)。
・j=1の場合:トランスデューサT2、T6等が起動される。
・j=2の場合:トランスデューサT3、T7等が起動される。
・j=3の場合:トランスデューサT4、T8等が起動される
【0044】
図4に示されるように、周期的空間強度変調jは、超音波によって生成されたX方向の圧力Pmj(t)の周期的変化となる。この圧力曲線は、ある周期的空間強度変調jが別の周期的空間強度変調に変わると、X方向外側にP/4だけずれる。
【0045】
(a2)光放射
音響放射の間、フォーカスされていない音波によって周波数シフトされた少なくとも1つの音響光学成分を備える、タグ付けされた光波を生成するために、光放射デバイス8を用いて、観測領域3の内部で入射光波が放射される。
【0046】
(a3)取得
各伝播方向mおよび周期的空間強度変調jに関し、タグ付けされた光波を表す測定信号Smj(t)(tは時間を示す)が、検出器9を用いて取得される。
【0047】
測定ステップ100で、合計n=M*J個の信号Smj(t)が取得される。従って、M=41、J=4の場合、n=164個の信号Smj(t)が取得される。
【0048】
本発明のある実施の形態では、L個の測定信号Smjl(t)を取得するために、各測定操作はL回繰り返される。その後、次の処理で使うための信号Smj(t)を得るために、これらの測定信号は、値mおよびjに関して平均化される。Lは例えば、10より大きくてよい(例えば100回または1000回)。従って、M=41、J=4、L=1000の場合、媒体2の画像を得るために、164,000個の音波のバーストが実行される。
【0049】
(b)空間復調
図2および図4に示されるように、信号Smj(t)はその後、復調ステップ180(DEMOD)で空間的に復調される。より正確には、同じmの伝播方向の信号S(t)を得るために、様々な周期的空間強度変調jに相当する信号Smj(t)は、結合される。
【0050】
前述のJ=4でパターン間の空間オフセットがP/4の例では、Smj(t)は、以下で説明するように、位相復調4によって得られてもよい。
【0051】
各超音波mは、媒体2の内部を伝播する。平面波の場合、この波mの等位相線は、X方向に対し角度θ傾いた直線Dである(図5A参照)。直線Dは、時間t後にこの波が到達する点の位置に相当し、距離VUS・tに相当する。ここでVUSは超音波の速さである。入射波の傾きを生成するために、トランスデューサTの(X方向の)励起遅延が調整される。この目的のために、横座標xの各トランスデューサTは、例えば参照要素に対してx・sinθ/VUS遅延している。
【0052】
従って、時間t後にこの波が到達する点の位置は、以下で与えられる。
x・sinθ+y・cosθ=VUS・t (1)
【0053】
例えば、放射された超音波によって生成される圧力は、
1/2[1+cos(2πηx+φ)]
に比例するように、X方向に変調されてよい。ここで、
・η=1/xpは、空間強度変調の空間周波数である。
・φは、空間強度変調jの空間位相である(J=4、φがj・π/2に等しい場合、jは0以上3以下の整数である)。
【0054】
射影により、伝播方向mの波の有効空間周波数が、以下で与えられる。
η=η/cosθ (2)
【0055】
従って、等位相線(直線D)に沿って、以下の形の波によって生成された圧力の有効変調が与えられる。
[1+cos(2πη(x・cosθ-y・sinθ)+φ] (3)
【0056】
従って、時空間圧力が以下のように書ける。
【数1】
ここで、
νUSは、超音波の時間領域周波数である。
f(t)は、各トランスデューサ5に与えられた超音波励起の時間的応答を示す。
【0057】
従って、得られたタグ付けされた光子の信号Smj(t)は、以下のように書ける。
【数2】
ここで、
IN(x,y)は、再構成されるべき画像の信号(XY平面内の光信号の局所的強度)を示す。
【0058】
その後、この信号の時間領域フーリエ変換が以下を与える(中央断面)。
【数3】
ここで、
νは、時間領域周波数を示す。
F(ν)は、関数f(t)の時間領域フーリエ変換を示す。
空間構造を発展させると、以下のようになる。
【数4】
【0059】
この積分は、5つの項の和となる。
【数5】
ここで、
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【数10】
【0060】
【数11】
の各項は、信号の空間周波数ベクトルへの射影に相当する。
【0061】
各伝播方向mに関し、例えば位相φの4つの値に関する信号が記録される。これは、媒体2の内部の圧力構造の空間オフセットに相当する。
【0062】
関連する項(p=0、1、-1)が、以下のように抽出されてよい。
【数12】
【数13】
【数14】
【0063】
実際には、p=0に相当する項
【数15】
は、空間的に変調されていない平面波で得られた情報を含む。p=1およびp=-1に相当する項(1次高調波)は、空間周波数空間でのさらなる情報を与える。これにより、改善されるべき信号の再構成の品質が実現される。再構成信号の品質を最適化するためには、p=2およびp=-2に相当する項(2次高調波)は除去されることが望ましい。
【0064】
各傾きmに関し信号v(ν)を得るために、前述の3つの信号は足し合わされる。
【数16】
その後逆フーリエ変換v(ν)により得られた復調信号S(t)が、これから減算される。
【0065】
(c)処理
この方法は、前述に続く処理ステップ200を備える。ステップ200では、観測領域3の画像が決定される。この画像のピクセルは、復調信号S(t)を用いて、観測領域3の内部の光の強度を表す。
【0066】
この処理は、前述の国際特許出願公開WO2016193554に記載された手法により実行されてよい。
【0067】
非限定的な例示として、この処理ステップ200は、好ましくは、図5Aおよび図5Bに示されるラドン変換を実行するステップを備える。この処理ステップは、2重フーリエ変換を含んでもよい(先ず時間領域、次に空間領域)。
【0068】
概略的には、処理ステップ200(TRTMT)は、以下の操作を備えてよい。
・複数の復調信号S(t)に関連する複数のプロファイルスライスを決定(210 プロファイルスライスを決定)する(図5A)。
・複数のプロファイルプロセスを用いて、2次元プロファイルを決定(220 2Dプロファイルを決定)する(図5B)。
・2次元プロファイルを用いて、観測領域内の光強度を表す少なくとも1つの値を決定(230 光強度を決定)する(図5B)。
【0069】
より正確には、各復調信号S(t)に関して、プロファイルスライスTを決定することから開始する。
【0070】
この目的のために、復調信号S(t)の1次元フーリエ変換が実行される。これにより、図5Aに示される、関連するプロファイルスライスTが与えられる。
【0071】
その後、複数の復調信号S(t)に関連する複数のプロファイルスライスTを用いて、2次元プロファイルPが決定される。図5Bに示されるように、2次元プロファイルPは、複数のプロファイルスライスをフーリエ空間内に再位置付けすることにより、決定される。このように、各プロファイルスライスTは、フォーカスされていない音波の伝播方向mの関数としてフーリエ空間内に再位置付けされる。この音波は、プロファイルスライスTに関連する復調信号S(t)に関連付けられている。
【0072】
このようにして、例えば、フォーカスされていない波の伝播方向によって形成された扇形を埋めるように、プロファイルスライスTを再位置付けすることができる。
【0073】
一旦2次元プロファイルPが得られると、その後、2次元プロファイルPrの2次元逆フーリエ変換を用いて、光の強度IN(x、y)を表す1つ以上の値を、観測領域3の内部で決定することができる。これもまた図5Bに示される。
【0074】
本発明のいくつかの実施の形態では、2次元プロファイルPrを決定するように、プロファイルスライスTが完成されてもよい。
【0075】
図6cは、前述の方法の典型的な一例(M=41、J=4、L=1000)を実行することにより得られた、2つのインクルージョンを持つ媒体の画像を示す。図6aおよび図6bは、同じ媒体の画像である。図6aは、フォーカスされた音波の音響光学画像化で得られたものである。図6bは、前述の国際特許出願公開WO2016193554に記載された手法で得られたものである。
【0076】
図6bの画像では、横方向の解像度が改善されていることは明らかである。図6aの画像に関して、図6cの画像は解像度は同等であるが、図6aの画像より約10倍高速に取得することができる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6