(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】プレート式熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 9/02 20060101AFI20230622BHJP
F28F 3/08 20060101ALI20230622BHJP
F28D 1/03 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
F28F9/02 Z
F28F3/08 311
F28D1/03
(21)【出願番号】P 2021515349
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(86)【国際出願番号】 JP2019017200
(87)【国際公開番号】W WO2020217308
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000152480
【氏名又は名称】株式会社日阪製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田中 信雄
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-020694(JP,A)
【文献】特開平10-288479(JP,A)
【文献】特表平08-511863(JP,A)
【文献】特開2015-137844(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2142997(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02
F28F 3/08
F28D 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に貫通した貫通孔を互いに対応した位置に有する複数の伝熱プレートであって、前記所定方向に重ね合わされることで第一流体を流通させる第一流路と第二流体を流通させる第二流路とを前記複数の伝熱プレートのそれぞれを境に前記所定方向に交互に形成する複数の伝熱プレートと、
前記複数の伝熱プレートの各貫通孔と対応する位置において前記所定方向に延びる流路形成部材群と、を備え、
前記流路形成部材群は、
前記伝熱プレートとは別部材であり且つ前記所定方向に連なる複数の流路形成部材によって構成され、
前記複数の流路形成部材のそれぞれは、前記所定方向に第一面と該第一面と反対側の第二面とを有するプレート状の本体部と、前記本体部の前記第一面及び前記第二面の少なくとも何れか一方の面に接続された嵌合部と、を有し、
前記嵌合部は、前記伝熱プレートの前記貫通孔と嵌合し、
前記複数の流路形成部材のうちの少なくとも二つの流路形成部材は、該流路形成部材を前記所定方向に貫通する貫通孔を有し、
前記少なくとも二つの流路形成部材の貫通孔は、互いに連通することによって前記第一流体を前記第一流路に供給する第一流体供給路を構成し、
前記第一流体供給路は、
前記所定方向に延び且つ前記第一流体が外部から導入される導入部と、
前記所定方向に並ぶ前記複数の伝熱プレートの中間部に配置され且つ前記導入部に導入された前記第一流体を前記所定方向の一方側と他方側とに分岐する第一分岐部と、
前記第一分岐部の前記一方側又は前記他方側と直接的又は間接的に連通する開放部であって、前記所定方向の複数箇所で対応する第一流路に向かって開放した複数の開放部と、を含む、ことを特徴とするプレート式熱交換器。
【請求項2】
前記複数の流路形成部材のそれぞれは、前記複数の伝熱プレートのうちの二つの伝熱プレートの前記貫通孔の周囲に挟まれている、請求項1に記載のプレート式熱交換器。
【請求項3】
前記第一流体供給路は、前記第一分岐部と該第一分岐部の前記一方側に連通する前記複数の開放部との間、及び、前記第一分岐部と該第一分岐部の前記他方側に連通する前記複数の開放部との間に、前記第一流体を前記所定方向の一方側と他方側とに分岐する少なくとも一つの第二分岐部をそれぞれ有する、請求項2に記載のプレート式熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発器や凝縮器として用いられるプレート式熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、プレート式熱交換器は、流体を蒸発させる蒸発器や、流体を凝縮させる凝縮器として多用されている(日本国特開平11-287572号公報参照)。
【0003】
プレート式熱交換器は、
図17乃至
図19に示す如く、複数の伝熱プレート101を備える。このプレート式熱交換器100では、複数の伝熱プレート101がX軸方向に重ね合わされることによって、蒸発又は凝縮の対象となる第一流体Aを流通させる第一流路Raと、第一流体Aを蒸発又は凝縮させる第二流体B(第一流体Aとの熱交換の対象となる第二流体B)を流通させる第二流路Rbと、が形成される。また、複数の伝熱プレート101がX軸方向に重ね合わされることによって、第一流路Raのみに連通し且つ第一流路Raに第一流体Aを流入させる第一流体供給路Ra1と、第一流路Raのみに連通し且つ第一流路Raから第一流体Aを流出させる第一流体排出路Ra2と、第二流路Rbのみに連通し且つ第二流路Rbに第二流体Bを流入させる第二流体供給路Rb1と、第二流路Rbのみに連通し且つ第二流路Rbから第二流体Bを流出させる第二流体排出路Rb2とが形成される。
【0004】
より具体的に説明すると、複数の伝熱プレート101のそれぞれは、X軸方向に第一面と該第一面の反対側の第二面とを有する。伝熱プレート101の第一面及び第二面のそれぞれには、複数の凹条及び凸条(採番しない)が形成されている。
【0005】
複数の伝熱プレート101のそれぞれは、異なる位置に、X軸方向に貫通した第一孔102と、X軸方向に貫通した第二孔103と、X軸方向に貫通した第三孔104と、X軸方向に貫通した第四孔105と、を有する。第一孔102は、伝熱プレート101におけるX軸方向と直交するY軸方向の一端側の領域のうち、X軸方向及びY軸方向と直交するZ軸方向の一端部に配置される。第二孔103は、伝熱プレート101におけるY軸方向の他端側の領域のうちのZ軸方向の一端部に配置される。第三孔104は、伝熱プレート101におけるY軸方向の他端側の領域のうちのZ軸方向の他端部に配置される。第四孔105は、伝熱プレート101におけるY軸方向の一端側の領域のうちのZ軸方向の他端部に配置される(
図17参照)。
【0006】
これに伴い、複数の伝熱プレート101が重ね合わされることで、隣り合う伝熱プレート101の凸条同士が交差衝合し、これにより、隣り合う伝熱プレート101間に第一流路Ra又は第二流路Rbが形成される。このプレート式熱交換器100において、第一流路Ra及び第二流路Rbは、伝熱プレート101を境にして交互に形成される。
【0007】
さらに、複数の伝熱プレート101の第一孔102がX軸方向に連なって第一流体供給路Ra1が形成される。また、複数の伝熱プレート101の第二孔103がX軸方向に連なって第一流体排出路Ra2が形成される。また、複数の伝熱プレート101の第三孔104がX軸方向に連なって第二流体供給路Rb1が形成される。また、複数の伝熱プレート101の第四孔105がX軸方向に連なって第二流体排出路Rb2が形成される。
【0008】
これに伴い、プレート式熱交換器100において、第一流体供給路Ra1に供給された第一流体Aは、第一流路Raを通って第一流体排出路Ra2に流出する。また、第二流体供給路Rb1に供給された第二流体Bは、第二流路Rbを通って第二流体排出路Rb2に流出する。これにより、第一流路Raと第二流路Rbとを仕切る伝熱プレート101を介して第一流体Aと第二流体Bとが熱交換する。
【0009】
ところで、プレート式熱交換器100では、重ね合わされる伝熱プレート101の数が多くなると、熱交換に寄与する伝熱面積が広くなるため、熱交換性能が高くなるとされている。
【0010】
しかしながら、伝熱プレート101の数が多くなると、第一流体供給路Ra1、第一流体排出路Ra2、第二流体供給路Rb1、及び第二流体排出路Rb2のそれぞれのX軸方向の長さが、重ね合わされる伝熱プレート101の数に応じて長くなる。
【0011】
すなわち、複数の伝熱プレート101の第一孔102が連なることによって第一流体供給路Ra1が形成される。また、複数の伝熱プレート101の第二孔103が連なることによって第一流体排出路Ra2が形成される。また、複数の伝熱プレート101の第三孔104が連なることによって第二流体供給路Rb1が形成される。また、複数の伝熱プレート101の第四孔105が連なることによって第二流体排出路Rb2が形成される。このため、第一流体供給路Ra1、第一流体排出路Ra2、第二流体供給路Rb1、及び第二流体排出路Rb2のそれぞれの流路長は、重ね合わされる伝熱プレート101の数が多くなれば、その数に応じて長くなる。
【0012】
その結果、重ね合わされる伝熱プレート101…の数が多くなると、第一流路Raに第一流体Aを流入させる第一流体供給路Ra1での第一流体Aの流通抵抗が大きくなるため、第一流体供給路Ra1において第一流体Aが流通し難くなる。従って、プレート式熱交換器100では、第一流体供給路Ra1の入口側における第一流路Raへの第一流体Aの流入量と、第一流体供給路Ra1の奥側における第一流路Raへの第一流体Aの流入量とが不均一になる。
【0013】
すなわち、プレート式熱交換器100では、X軸方向に並ぶ複数の第一流路Raに対する第一流体Aの分配ムラが生じる。その結果、プレート式熱交換器100では、伝熱プレート101の数を多くしても(第一流路Raの数を多くしても)、熱交換性能(蒸発性能或いは凝縮性能)を高めるのに限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明は、複数の第一流路に対する第一流体の分配ムラを抑えることのできるプレート式熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るプレート式熱交換器は、
所定方向に貫通した貫通孔を互いに対応した位置に有する複数の伝熱プレートであって、前記所定方向に重ね合わされることで第一流体を流通させる第一流路と第二流体を流通させる第二流路とを前記複数の伝熱プレートのそれぞれを境に前記所定方向に交互に形成する複数の伝熱プレートと、
前記複数の伝熱プレートの各貫通孔と対応する位置において前記所定方向に延びる流路形成部材群と、を備え、
前記流路形成部材群は、前記所定方向に連なる複数の流路形成部材によって構成され、
前記複数の流路形成部材のうちの少なくとも二つの流路形成部材は、該流路形成部材を前記所定方向に貫通する貫通孔を有し、
前記少なくとも二つの流路形成部材の貫通孔は、互いに連通することによって前記第一流体を前記第一流路に供給する第一流体供給路を構成し、
前記第一流体供給路は、
前記所定方向に延び且つ前記第一流体が外部から導入される導入部と、
前記所定方向に並ぶ前記複数の伝熱プレートの中間部に配置され且つ前記導入部に導入された前記第一流体を前記所定方向の一方側と他方側とに分岐する第一分岐部と、
前記第一分岐部の前記一方側又は前記他方側と直接的又は間接的に連通する開放部であって、前記所定方向の複数箇所で対応する第一流路に向かって開放した複数の開放部と、を含む。
【0017】
前記プレート式熱交換器では、
前記複数の流路形成部材のそれぞれは、前記複数の伝熱プレートのうちの二つの伝熱プレートの前記貫通孔の周囲に挟まれていてもよい。
【0018】
また、前記プレート式熱交換器では、
前記第一流体供給路は、前記第一分岐部と該第一分岐部の前記一方側に連通する前記複数の開放部との間、及び、前記第一分岐部と該第一分岐部の前記他方側に連通する前記複数の開放部との間に、前記第一流体を前記所定方向の一方側と他方側とに分岐する少なくとも一つの第二分岐部をそれぞれ有してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るプレート式熱交換器の全体斜視図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係るプレート式熱交換器の概略分解斜視図である。
【
図3】
図3は、同実施形態に係るプレート式熱交換器の二種類の伝熱プレートのうちの一方の伝熱プレートを第一面側から見た概略図である。
【
図4】
図4は、同実施形態に係るプレート式熱交換器の二種類の伝熱プレートのうちの一方の伝熱プレートを第二面側から見た概略図である。
【
図5】
図5は、同実施形態に係るプレート式熱交換器の二種類の伝熱プレートのうちの他方の伝熱プレートを第二面側から見た概略図である。
【
図6】
図6は、同実施形態に係るプレート式熱交換器の二種類の伝熱プレートのうちの他方の伝熱プレートを第一面側から見た概略図である。
【
図7】
図7は、同実施形態に係るプレート式熱交換器が備える複数の流路形成部材をX軸方向に配列した状態の斜視図である。
【
図8】
図8は、同実施形態に係るプレート式熱交換器が備える複数の流路形成部材の共通構成のみを図示した外観正面図である。
【
図9】
図9は、同実施形態に係るプレート式熱交換器が備える複数の流路形成部材の共通構成のみを図示した外観側面図である。
【
図10】
図10は、
図1のX-X断面図であって、第一流体の流れを付加した図である。
【
図11】
図11は、
図1のXI-XI断面図であって、第二流体の流れを付加した図である。
【
図12】
図12は、同実施形態に係るプレート式熱交換器が備える複数の流路形成部材をX軸方向に配列した状態の斜視図であって、第一流体の流れを付加した図である。
【
図13】
図13は、本発明の他実施形態に係るプレート式熱交換器が備える複数の流路形成部材をX軸方向に配列した状態の斜視図である。
【
図14】
図14は、他実施形態に係るプレート式熱交換器が備える複数の流路形成部材の共通構成のみを図示した外観正面図である。
【
図15】
図15は、他実施形態に係るプレート式熱交換器の断面図であって、第一流体の流れを付加した図である。
【
図16】
図16は、本発明の別の実施形態に係るプレート式熱交換器の断面図であって、第一流体の流れを付加した図である。
【
図17】
図17は、従来のプレート式熱交換器の概略分解斜視図である。
【
図18】
図18は、従来のプレート式熱交換器の断面図であって、第一流体の流れを付加した図である。
【
図19】
図19は、従来のプレート式熱交換器の断面図であって、第二流体の流れを付加した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0021】
本実施形態に係るプレート式熱交換器は、
図1及び
図2に示す如く、所定の方向であるX軸方向(第一方向)に重ね合わされた複数の伝熱プレート2,3を備える。本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、
図2に示す如く、複数の伝熱プレート2,3に加え、隣り合う伝熱プレート2,3間に配置される複数の流路形成部材4を備える。また、プレート式熱交換器1は、X軸方向に重ね合わされた複数の伝熱プレート2,3を挟む一対のエンドプレート5,6を備える。
【0022】
複数の伝熱プレート2,3のそれぞれは、
図3乃至
図6に示す如く、X軸方向に第一面Saと該第一面Saの反対側の第二面Sbとを有するプレート本体部20,30を有する。本実施形態において、伝熱プレート2,3は、プレート本体部20,30の外周に接続され且つプレート本体部20,30に対して面交差する方向に延出した環状嵌合部21,31を備える。尚、本実施形態の伝熱プレート2,3のプレート本体部20,30において、第一面Saと第二面Sbとは、反対側を向いている。すなわち、複数の伝熱プレート2,3がX軸方向に重ね合わされた状態では、プレート本体部20の第一面Saとプレート本体部30の第一面Saとが対向し、プレート本体部20の第二面Sbとプレート本体部30の第二面Sbとが対向する。
【0023】
プレート本体部20,30の第一面Sa及び第二面Sbのそれぞれには、複数の凹条200,300及び凸条201,301が形成されている。なお、
図3乃至
図6において、凹条200,300を破線で表現し、凸条201,301を破線間にある直線で表現している。
【0024】
複数の凹条200,300及び凸条201,301のそれぞれは、X軸方向と直交するY軸方向(第二方向)に延びる仮想線(図示しない)に対して傾斜する方向に延びている。複数の凹条200,300及び凸条201,301は、自身の延びる方向と直交する方向に交互に配置されている。伝熱プレート2,3は、金属プレートをプレス成型したものである。第一面Saの凹条200,300は、第二面Sbの凸条201,301と表裏の関係にある。第一面Saの凸条201,301は、第二面Sbの凹条200,300と表裏の関係にある。
【0025】
伝熱プレート2,3のそれぞれのプレート本体部20,30は、X軸方向から見て矩形状に形成される。各プレート本体部20,30は、四隅のそれぞれに貫通孔202,203,204,205,302,303,304,305を有する。
【0026】
より具体的には、プレート本体部20,30は、貫通孔として、第一孔202,302と、第二孔203,303と、第三孔204,304と、第四孔205,305と、を有する。第一孔202,302は、プレート本体部20,30におけるY軸方向の一端側の領域のうち、X軸方向及びY軸方向と直交するZ軸方向(第三方向)の一端部に配置される。第二孔203,303は、プレート本体部20,30におけるY軸方向の他端側の領域のうちのZ軸方向の一端部に配置される。第三孔204,304は、プレート本体部20,30におけるY軸方向の他端側の領域のうちのZ軸方向の他端部に配置される。第四孔205,305は、プレート本体部20,30におけるY軸方向の一端側の領域のうちのZ軸方向の他端部に配置される。
【0027】
本実施形態において、第一孔202,302、第二孔203,303、第三孔204,304、及び第四孔205,305のそれぞれは、丸孔である。本実施形態において、第二孔203,303、第三孔204,304、及び第四孔205,305の孔径は、同径である。これに対し、第一孔202,302の孔径は、第二孔203,303、第三孔204,304、及び第四孔205,305の孔径よりも大径である。
【0028】
本実施形態において、第一孔202,302の周囲、及び第二孔203,303の周囲は、第二面Sb側に膨出している。すなわち、第一孔202,302の周囲、及び第二孔203,303の周囲は、第一面Sa側で窪んでいる。これに対し、第三孔204,304の周囲及び第四孔205,305の周囲は、第一面Sa側に膨出している。すなわち、第三孔204,304の周囲及び第四孔205,305の周囲は、第二面Sb側で窪んでいる。
【0029】
本実施形態において、複数の伝熱プレート2,3には、二種類の伝熱プレート2,3が含まれる。二種類の伝熱プレート2,3は、プレート本体部20,30の凹条200,300及び凸条201,301の傾斜方向を異にするとともに、環状嵌合部21,31の延出する方向を異にし、それ以外の構成(プレート本体部20,30のX軸方向から見た輪郭の形状及びサイズ、X軸方向から見た第一孔202,302、第二孔203,303、第三孔204,304、及び第四孔205,305の配置及びサイズ)は共通している。
【0030】
具体的には、二種類の伝熱プレート2,3のうちの一方の伝熱プレート2において、凹条200及び凸条201は、Z軸方向の中間からZ軸方向の両端に向けて先下りに傾斜する。また、環状嵌合部21がプレート本体部20の第二面Sb側に延出している(
図3及び
図4参照)。これに対し、二種類の伝熱プレート2,3のうちの他方の伝熱プレート3において、凹条300及び凸条301は、Z軸方向の両端からZ軸方向の中間に向けて先下りに傾斜するとともに、環状嵌合部31がプレート本体部30の第一面Sa側に延出している(
図5及び
図6参照)。
【0031】
これにより、本実施形態に係るプレート式熱交換器1において、隣り合う伝熱プレート2,3が第一面Sa同士を対向させるとともに第二面Sb同士を対向させるように、二種類の伝熱プレート2,3がX軸方向において交互に配置されることで、隣り合う伝熱プレート2,3の環状嵌合部21,31同士が嵌合する。これに併せ、隣り合う伝熱プレート2,3の第一面Saの凸条201,301同士が交差衝合するとともに、隣り合う伝熱プレート2,3の第二面Sbの凸条201,301同士が交差衝合する。
【0032】
図7に示す如く、複数の流路形成部材4のうちのいくつかの流路形成部材4は、X軸方向に貫通した少なくとも一つの貫通孔42を有する。
【0033】
複数の流路形成部材4のそれぞれの外形(X軸方向から見た輪郭及びX軸方向と直交する方向から見た輪郭)は共通している。すなわち、複数の流路形成部材4において、貫通孔の数、配置以外の構成は共通している。
【0034】
より具体的に説明する。複数の流路形成部材4のそれぞれは、
図8及び
図9に示す如く、X軸方向に第一面(採番しない)と該第一面の反対側の第二面(採番しない)とを有するプレート状の本体部40と、本体部40の第一面及び第二面の少なくとも何れか一方の面に接続された嵌合部41と、を有する。
【0035】
本体部40のX軸方向における厚みT1は、隣り合う伝熱プレート2,3の間隔と対応している(
図9参照)。
図8に示す如く、本実施形態の本体部40における外周400は、円弧部400aと、円弧部400aの両端を繋ぐ直線部400bとを含む。円弧部400aの半径r1は、第一孔202,302の半径より大きい。本実施形態の本体部40では、円弧部400aの中心CP1から直線部400bまでの最短の直線距離L1は、第一孔202,302の半径より短い。
【0036】
これに伴い、本実施形態のプレート式熱交換器1では、第一孔202,302の孔中心と本体部40の円弧部400aの中心CP1とを一致させた状態で、本体部40の第一面及び第二面のそれぞれの周縁部(円弧部400aに沿った部分)が、X軸方向から見て伝熱プレート2,3の第一孔202,302の周囲と重なっている。
【0037】
嵌合部41は、伝熱プレート2,3の第一孔202,302に嵌合可能である。より具体的に説明すると、本実施形態において、嵌合部41の外周は、円弧部410aと、円弧部410aの両端を繋ぐ直線部410bとを含む。嵌合部41の円弧部410aの中心CP2は、本体部40の円弧部410aの中心CP1と一致している。すなわち、本体部40と嵌合部41とは、同心である。
【0038】
嵌合部41の円弧部410aの半径r2は、第一孔202,302の半径と同一又は第一孔202,302の半径より僅かに小さい。嵌合部41において、円弧部410aの中心CP2から直線部410bまでの最短の直線距離L2は、第一孔202,302の半径より短い。本実施形態において、嵌合部41の円弧部410aの中心CP2から直線部410bまでの最短の直線距離L2は、本体部40の円弧部400aの中心CP1から該本体部40の直線部400bまでの最短の直線距離L1と同一である。すなわち、本体部40の直線部400bと嵌合部41の直線部410bとは、X軸方向において連続している。
【0039】
本実施形態の流路形成部材4において、
図9に示す如く、嵌合部41は、本体部40の第一面のみに接続されている。これに伴い、嵌合部41のX軸方向の厚みT2は、伝熱プレート2,3を構成する金属プレート(プレス成型される金属プレート)の二枚の合計厚み(X軸方向に重なる伝熱プレート2,3の第一孔202,302の周囲の合計厚み)と一致又は略一致している。
【0040】
複数の流路形成部材4の共通構成は、以上の通りである。これら複数の流路形成部材4は、
図7に示す如く、X軸方向に整列した状態で配置される。これを前提に、複数の流路形成部材4のうちのいくつかの流路形成部材4は、自身の配置位置に応じ、X軸方向に貫通した少なくとも一つ貫通孔42を有する。本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、X軸方向に整列した複数の流路形成部材4のX軸方向の一方の端にある流路形成部材4側から他方の端にある流路形成部材4側に向けて第一流体Aを供給することを前提としている。本実施形態において、複数の流路形成部材4には、X軸方向の他方の端側に配置される流路形成部材4として、貫通孔を有していない流路形成部材4が含まれる。
【0041】
ここで具体的に説明すると、複数の流路形成部材4は、X軸方向に重ね合わされた伝熱プレート2,3の第一孔202,302の配置に対応するように、X軸方向に連なって配置される(
図2参照)ことで、流路形成部材群4A(
図7参照)を構成する。すなわち、流路形成部材群4Aは、プレート式熱交換器1の内部(詳しくは、複数の伝熱プレート2,3の各第一孔202,302と対応する位置)において、X軸方向に延びている。そして、流路形成部材群4Aは、複数の流路形成部材4がプレート式熱交換器1の内部においてX軸方向に整列して配置されることにより構成される。
【0042】
これを前提に、X軸方向に整列する複数の流路形成部材4が配置される部材配置領域Sのうち、X軸方向の一方側の半分又は略半分の領域S1に配置される複数の流路形成部材4のそれぞれは、貫通孔42として、互いに対応した位置に配置された第一貫通孔420を有する。すなわち、部材配置領域SのX軸方向の中間又は略中間を境界E1とした第一領域S1及び第二領域S2のうち、X軸方向の一方の端を含む第一領域S1内にある複数の流路形成部材4のそれぞれには、第一貫通孔420が設けられる。本実施形態において、第一貫通孔420の中心は、本体部40の円弧部400a及び嵌合部41の円弧部410aの中心CP1,CP2と一致している。
【0043】
複数の流路形成部材4のうち、第一領域S1と第二領域S2との境界E1上にある流路形成部材4は、貫通孔42として、第一貫通孔420に対してX軸方向と直交する方向にずれた位置においてX軸方向に貫通した第二貫通孔421と、X軸方向に貫通した第三貫通孔422であって、第一貫通孔420と第二貫通孔421とを連通させた第三貫通孔422と、を有する。すなわち、複数の伝熱プレート2,3のX軸方向の中間部にある単一の流路形成部材(以下、上流側基準部材という)4は、貫通孔42として、第一貫通孔420、第二貫通孔421及び第三貫通孔422を有する。
【0044】
上流側基準部材4に対してX軸方向の両側のそれぞれにある少なくとも一つの流路形成部材4は、上流側基準部材4の第二貫通孔421と対応した位置においてX軸方向に貫通した第四貫通孔423を有する。
【0045】
本実施形態において、第一領域S1及び第二領域S2のそれぞれにある複数の流路形成部材4のうち、上流側基準部材4と隣り合う流路形成部材4を含む複数の流路形成部材4であって、境界E1から第一領域S1のX軸方向の中間部にまで並ぶ複数の流路形成部材4、及び、境界E1から第二領域S2のX軸方向の中間部にまで並ぶ複数の流路形成部材4のそれぞれが、第四貫通孔423を有する。
【0046】
すなわち、第一領域S1及び第二領域S2のそれぞれにおいて、当該領域S1,S2のX軸方向の中間を境界E2とした第三領域S3及び第四領域S4のうち、部材配置領域Sの境界E1と隣接する第三領域S3にある複数の流路形成部材4…が第四貫通孔423を有する。
【0047】
そして、第一領域S1及び第二領域S2のそれぞれにおいて、境界E2に位置する流路形成部材4は、貫通孔42として、第一貫通孔420及び第四貫通孔423のそれぞれに対してX軸方向と直交する方向にずれた位置においてX軸方向に貫通した第五貫通孔424と、X軸方向に貫通した長穴状の第六貫通孔425であって、第四貫通孔423と第五貫通孔424とを連通させた第六貫通孔425と、を有する。
【0048】
すなわち、第一領域S1及び第二領域S2のそれぞれの境界E2にある単一の流路形成部材(以下、下流側基準部材という)4は、貫通孔42として、第四貫通孔423、第五貫通孔424及び第六貫通孔425を有する。なお、第一領域S1及び第二領域S2のうちの一方の領域(本実施形態の例では、第一領域S1)にある下流側基準部材4は、貫通孔42として、第四貫通孔423、第五貫通孔424及び第六貫通孔425の他に、第一貫通孔420も有する。
【0049】
そして、第三領域S3及び第四領域S4のそれぞれにおいて、下流側基準部材4に対してX軸方向の両側のそれぞれにある少なくとも一つの流路形成部材4は、下流側基準部材4の第五貫通孔424と対応した位置においてX軸方向に貫通した第七貫通孔426を有する。
【0050】
本実施形態において、下流側基準部材4と隣り合う流路形成部材4を含む複数の流路形成部材4、詳しくは、下流側基準部材4(境界E2)から該下流側基準部材4を挟む第三領域S3及び第四領域S4のX軸方向の中間部にまで並ぶ複数の流路形成部材4のそれぞれは、第七貫通孔426を有する。
【0051】
そして、第三領域S3及び第四領域S4のX軸方向の中間部に位置する流路形成部材4は、貫通孔42として、X軸方向に貫通した第八貫通孔427であって、第七貫通孔426と連通するとともに当該流路形成部材4の外周上で開放した第八貫通孔427を有する。本実施形態において、第八貫通孔427は、本体部40及び嵌合部41の外周400,410を構成する直線部400b,410bにおいて開放している。
【0052】
図2に戻り、一対のエンドプレート5,6のそれぞれは、伝熱プレート2,3のプレート本体部20,30と重なるプレート状のエンドプレート本体50,60と、エンドプレート本体50,60の外周全周から延出した環状嵌合部51,61と、を有する。この環状嵌合部51,61は、伝熱プレート2,3の環状嵌合部21,31と嵌合可能である。
【0053】
一対のエンドプレート5,6のうちの一方のエンドプレート5のエンドプレート本体50は、伝熱プレート2,3の第二孔203,303、第三孔204,304、第四孔205,305)と対応する貫通孔(図示しない)を有する。
【0054】
また、このエンドプレート本体50は、第一孔202,302と対応して配置される流路形成部材4の第一貫通孔420の内孔と対応する貫通孔(図示しない)を有する。これに伴い、一方のエンドプレート5は、エンドプレート本体50の各貫通孔に対応して設けられた四つのノズル52,53,54,55を有する。これら四つのノズル52,53,54,55は、内孔を有し且つ該内孔を対応する貫通孔に連通させた状態で該エンドプレート本体50に接続された筒状である。
【0055】
本実施形態に係るプレート式熱交換器1では、
図10に示す如く、複数の伝熱プレート2,3がX軸方向に重ね合わされる。これに併せ、複数の流路形成部材4のそれぞれの配列が守られた状態で、各流路形成部材4の本体部40が隣り合う伝熱プレート2,3の第一面Sa,Sa間にそれぞれ配置されるとともに、各流路形成部材4の嵌合部41が第一孔202,302にそれぞれ嵌合される。
【0056】
この状態において、複数の流路形成部材4のそれぞれは、自身の嵌合部41を隣り合う流路形成部材4に密接させる。なお、本実施形態の複数の流路形成部材4のそれぞれは、本体部40及び嵌合部41の外周400,410に含まれる直線部400b,410bが伝熱プレート2,3の内側(Y軸方向における中間側)に向くように配置される。そして、一対のエンドプレート5,6が複数の伝熱プレート2,3を挟んだ状態で配置され、各部材2,3,4の密接する部分が液密に接合される。
【0057】
本実施形態においては、隣り合う伝熱プレート2,3の凸条201,301の交差衝合した交差点、互いに嵌合した環状嵌合部21,31同士、第一孔202,302の周囲同士、第二孔203,303の周囲同士、第三孔204,304の周囲同士、第四孔205,305の周囲同士等がロウ付けされる。また、隣り合う流路形成部材4同士がロウ付けされるとともに、流路形成部材4の本体部40の外周縁部と第一孔202,302の周囲とがロウ付けされる。
【0058】
これにより、本実施形態に係るプレート式熱交換器1において、
図10及び
図11に示す如く、第一流体AをY軸方向に流通させる第一流路Raと、第二流体BをY軸方向に流通させる第二流路Rbとが、伝熱プレート2,3を境にしてX軸方向において交互に形成される。
【0059】
また、複数の伝熱プレート2,3の第二孔203,303がX軸方向に連なることで、第一流路Raのみに連通し且つ第一流路Raから第一流体Aを流出させる第一流体排出路Ra2が形成される(
図10参照)。さらに、複数の伝熱プレート2,3の第三孔204,304がX軸方向に連なることで、第二流路Rbのみに連通し且つ第二流路Rbに第二流体Bを流入させる第二流体供給路Rb1が形成される。さらに、複数の伝熱プレート2,3の第四孔205,305がX軸方向に連なることで、第二流路Rbのみに連通し且つ第二流路Rbから第二流体Bを流出させる第二流体排出路Rb2が形成される(
図11参照)。
【0060】
本実施形態のプレート式熱交換器1では、
図10及び
図12に示す如く、複数の流路形成部材4の貫通孔(第一貫通孔420、第二貫通孔421、第三貫通孔422、第四貫通孔423、第五貫通孔424、第六貫通孔425、第七貫通孔426、第八貫通孔427)が連通することで、第一流路Raのみに連通した第一流体供給路Ra1が形成される。この第一流体供給路Ra1は、各第一流路Raに対して第一流体Aを流入させる。
【0061】
本実施形態において、各流路形成部材4の貫通孔(第一貫通孔420、第二貫通孔421、第三貫通孔422、第四貫通孔423、第五貫通孔424、第六貫通孔425、第七貫通孔426、第八貫通孔427)の配置及び数は、複数の流路形成部材4の配置に対応して異なる。第一流体供給路Ra1は、下流側に向かうほど第一流体AをX軸方向に分配する経路となる。
【0062】
具体的には、第一流体供給路Ra1は、第一流体Aの供給源に直接的又は間接的に接続される上流系統USと、上流系統USと流体的に接続される下流系統DSと、を含む。
【0063】
上流系統USは、導入部US1と、導入部US1と連通する分岐部(第一分岐部)US2と、分岐部US2に連通する一対の分岐流路US3と、を含む。導入部US1は、X軸方向に延び且つ第一流体Aの供給源に繋がる配管(図示しない)に直接的又は間接的に連通する。分岐部US2は、複数の伝熱プレート2,3のうちのX軸方向の中間部に配置され且つ導入部US1に導入された第一流体AをX軸方向の一方側と他方側とに分岐する。本実施形態の分岐部US2は、複数の伝熱プレート2,3のうちのX軸方向の中間部にある伝熱プレート2,3間と対応した位置に配置され且つX軸方向と直交する方向における導入部US1と異なる位置においてX軸方向に貫通する。一対の分岐流路US3は、分岐部US2と連通する基端と該基端の反対側の先端とを有する。この一対の分岐流路US3は、X軸方向における分岐部US2を境にした一方側の領域(第一領域)S1及び他方側の領域(第二領域)S2のそれぞれにおいてX軸方向に延びる。
【0064】
本実施形態の上流系統USにおいては、複数の流路形成部材4の第一貫通孔420が連なって導入部US1が形成される。また、複数の流路形成部材4の第四貫通孔423が連なって分岐流路US3が形成される。これに伴い、X軸方向の中間部にある流路形成部材(上流側基準部材)4の第二貫通孔421が分岐部US2を構成する。また、上流側基準部材4の第三貫通孔422が、導入部US1と分岐部US2とを連通させる連通部US4を構成する。
【0065】
下流系統DSは、分岐部US2のX軸方向における一方側又は他方側と直接的又は間接的に連通する複数の開放部DS1を含む。これら複数の開放部DS1は、上流系統USの分岐流路US3の先端と直接的又は間接的に連通し、X軸方向の複数箇所で対応する第一流路Raに向かって開放する。本実施形態の下流系統DSは、上流系統USの分岐流路US3の先端と直接的又は間接的に連通する最下流分岐部(第二分岐部)DS2を含む。また、この下流系統DSは、X軸方向における最下流分岐部DS2を境にした一方側の領域(第三領域)S3及び他方側の領域(第四領域)S4のそれぞれにおいてX軸方向に延びる一対の最下流分岐流路DS3も含む。最下流分岐部DS2は、Y軸方向において、導入部US1及び分岐流路US3と異なる位置においてX軸方向に流路形成部材4を貫通する。一対の最下流分岐流路DS3のそれぞれは、最下流分岐部DS2と連通する基端と、該基端の反対側の先端であって、開放部DS1と連通する先端とを有する。
【0066】
本実施形態の下流系統DSにおいては、下流側基準部材4の第五貫通孔424が最下流分岐部DS2を構成する。これに伴い、下流側基準部材4の第六貫通孔425が、分岐流路US3と最下流分岐部DS2とを連通させる連通部DS4を構成する。
【0067】
そして、X軸方向における最下流分岐部DS2を境にした一方側の領域(第三領域)S3及び他方側の領域(第四領域)S4のそれぞれにある流路形成部材4の第七貫通孔426が連なり、最下流分岐部DS2と連通した最下流分岐流路DS3が形成される。また、第三領域S3及び第四領域S4のそれぞれのX軸方向の中間部にある流路形成部材4の第八貫通孔427が、第一流路Raに向けて開放した開放部DS1を構成する。
【0068】
本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、以上の通りである。このプレート式熱交換器1において、ノズル52に接続された配管(図示しない)から第一流体供給路Ra1に第一流体Aが供給されると、第一流体Aは、導入部US1をX軸方向に流通する。そして、第一流体Aは、部材配置領域SのX軸方向の中間部(略中間)に到達すると、連通部US4を通って分岐部US2に到達する。分岐部US2には、X軸方向において、当該分岐部US2の両側に延びる一対の分岐流路US3が連通している。このため、第一流体Aは、分岐部US2から一対の分岐流路US3を流通する。すなわち、第一流体Aは、分岐部US2を起点にしてX軸方向の両側に分配される。そして、第一流体Aは、分岐流路US3を流通し、第一領域S1及び第二領域S2のそれぞれの中間部に到達すると、その中間部にある流路形成部材(下流側基準部材)4の連通部DS4を通って最下流分岐部DS2に到達する。
【0069】
最下流分岐部DS2には、X軸方向において、当該最下流分岐部DS2の両側に延びる一対の最下流分岐流路DS3が連通している。このため、第一流体Aは、最下流分岐部DS2から一対の最下流分岐流路DS3を流通する。すなわち、第一流体Aは、最下流分岐部DS2を起点にしてX軸方向の両側に分配される。
【0070】
そして、第一流体Aは、最下流分岐流路DS3を流通し、下流側基準部材4を境界とする一方側の領域及び他方側の領域のX軸方向の中間部に到達すると、その中間部にある流路形成部材4の開放部DS1から第一流路Raに向けて流出する。
【0071】
本実施形態の流路形成部材4において、本体部40及び嵌合部41のそれぞれの外周400,410は、直線部400b,410bを有する。また、該外周400,410に含まれる円弧部400a,410aの中心CP1,CP2から直線部400b,410bまでの最短の直線距離L1,L2は、第一孔202,302の半径よりも短い。このため、複数箇所にある開放部DS1のそれぞれから流出した第一流体Aは、X軸方向に連なった第一孔202,302と流路形成部材4の直線部400b,410bとの間の空間をX軸方向に広がりつつ、直近にある少なくとも一つ(本実施形態においては複数)の第一流路Raに流入する。すなわち、供給された第一流体Aは、同一距離又は略同一距離の経路を通ってX軸方向における複数箇所に均等又は略均等に分配され、複数の第一流路Raのそれぞれ(分配された箇所に近い第一流路Ra)に流れ込む。
【0072】
そして、第一流体Aは、第一流路RaをY軸方向に流通した上で、第一流体排出路Ra2及びこれに繋がるノズル53を通って外部に流出する。
【0073】
これに対し、
図11に示す如く、ノズル54に接続された配管(図示しない)から第二流体供給路Rb1に第二流体Bが供給されると、第二流体Bは、第二流体供給路Rb1を通って複数の第二流路Rbに流入する。そして、第二流体Bは、第二流路RbをY軸方向に流通した上で、第二流体排出路Rb2及びこれに繋がるノズル55を通って外部に流出する。
【0074】
このように、第一流体Aが第一流路Raを流通するのに併せ、第二流体Bが第二流路Rbを流通することにより、第一流体A及び第二流体Bは、第一流路Raと第二流路Rbとを区画する伝熱プレート2,3を介して熱交換を行う。
【0075】
以上のように、プレート式熱交換器1は、X軸方向(所定方向)に貫通した第一孔(貫通孔)202,302を互いに対応した位置に有する複数の伝熱プレート2,3であって、X軸方向に重ね合わされることで第一流体Aを流通させる第一流路Raと第二流体Bを流通させる第二流路Rbとを複数の伝熱プレート2,3のそれぞれを境にX軸方向に交互に形成する複数の伝熱プレート2,3と、複数の伝熱プレート2,3の各第一孔(各貫通孔)202,302と対応する位置においてX軸方向に延びる流路形成部材群4Aと、を備える。流路形成部材群4Aは、X軸方向に連なる複数の流路形成部材4によって構成される。複数の流路形成部材4のうちの少なくとも二つの流路形成部材4は、該流路形成部材4をX軸方向に貫通する貫通孔42(第一貫通孔420、第二貫通孔421、第三貫通孔422、第四貫通孔423、第五貫通孔424、第六貫通孔425、第七貫通孔426、第八貫通孔427)を有し、前記少なくとも二つの流路形成部材4は、互いに連通することによって第一流体Aを第一流路Raに供給する第一流体供給路Ra1を構成する。第一流体供給路Ra1は、X軸方向に延び且つ第一流体Aが外部から導入される導入部US1と、X軸方向に並ぶ複数の伝熱プレート2,3の中間部に配置され且つ導入部US1に導入された第一流体AをX軸方向の一方側と他方側とに分岐する分岐部(第一分岐部)US2と、分岐部US2のX軸方向の一方側又は他方側と直接的又は間接的に連通する開放部DS1であって、X軸方向の複数箇所で対応する第一流路Raに向かって開放した複数の開放部DS1と、を含む。
【0076】
上記構成によれば、複数の流路形成部材4、即ち、流路形成部材群4Aによって構成される第一流体供給路Ra1は、X軸方向に重ね合わされた複数の伝熱プレート2,3のうちのX軸方向の中間部にある伝熱プレート2,3と対応する位置を基準としたX軸方向の一方側の領域(第一領域)S1及び他方側の領域(第二領域)S2のそれぞれに第一流体Aを分岐(分配)する。
【0077】
これにより、第一流体供給路Ra1を流通する第一流体Aは、X軸方向の少なくとも二か所に分配された状態で第一流路Raに到達する。すなわち、分岐部US2から第一流路Raに到達するまでの第一流体Aの流通距離が同一又は略同一の状態で、第一流体AがX軸方向の異なる位置にある複数の開放部DS1…から流出する。
【0078】
従って、第一流体Aは、X軸方向の複数箇所に分配され、複数の第一流路Raのそれぞれに対して略等しい状態(流量)で流入する。よって、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、複数の第一流路Raに対して蒸発又は凝縮の対象となる第一流体Aを分配ムラが抑えられた状態で(略均等に)供給できる。これにより、熱交換性能を高めることができる。
【0079】
本実施形態において、複数の流路形成部材4のそれぞれは、複数の伝熱プレート2,3のうちの二つの伝熱プレート2,3の貫通孔(第一孔)202,302の周囲に挟まれている。詳しくは、複数の流路形成部材4のそれぞれは、第二流路Rbを挟んでX軸方向に並ぶ第一流路Raに対応して配置され、隣り合う伝熱プレート2,3の貫通孔(第一孔)202,302の周囲に挟まれている。このようにすれば、複数の流路形成部材4のそれぞれが、伝熱プレート2,3によって拘束される。従って、複数の流路形成部材4の位置ズレが防止され、その結果、複数の流路形成部材4の貫通孔によって形成される第一流体供給路Ra1の連通性が確実に確保される。
【0080】
本実施形態において、第一流体供給路Ra1は、分岐部(第一分岐部)US2と該分岐部US2のX軸方向の一方側に連通する複数の開放部DS1との間、及び、分岐部US2と該分岐部US2のX軸方向の他方側に連通する複数の開放部DS1との間に、第一流体AをX軸方向の一方側と他方側とに分岐する少なくとも一つの最下流分岐部(第二分岐部)DS2をそれぞれ有する。
【0081】
上記構成によれば、第一流体供給路Ra1は、部材配置領域Sにおける第一領域S1及び第二領域S2のそれぞれを更にX軸方向に細分化した二つの領域(最下流分岐部DS2を境にした一方側の領域(第三領域)S3及び他方側の領域(第四領域)S4)のそれぞれに第一流体Aを順々に分岐する。
【0082】
これにより、第一流体供給路Ra1を流通する第一流体Aは、上流系統USだけでなく、下流系統DSにおいてもX軸方向に順々に分岐されて第一流路Raに到達する。すなわち、第一流体Aは、X軸方向において異なる位置にある第一流路Raに流入するが、分岐部US2から第一流路Raに到達するまでの距離が同一又は略同一になる。
【0083】
従って、第一流体Aは、X軸方向の複数箇所に分配され、複数の第一流路Raのそれぞれに対して略等しい状態(流量)で流入する。よって、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、複数の第一流路Raに対して蒸発又は凝縮の対象となる第一流体Aを分配ムラが抑えられた状態で(略均等に)供給できる。これにより、熱交換性能を高めることができる。
【0084】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更を加え得ることは勿論である。
【0085】
上記実施形態において、第一流路Raに第一流体Aを供給する第一流体供給路Ra1が複数の流路形成部材4によって構成されたが、この構成に限定されない。例えば、第二流路Rbに対して第二流体Bが分配ムラを抑えられた状態で(略均等に)供給されるような場合には、第二流体供給路Rb1も、複数の流路形成部材によって構成されてもよい。この場合の複数の流路形成部材は、第一流体供給路Ra1を形成する流路形成部材4と同様に構成される。
【0086】
上記実施形態において、第一流体供給路Ra1の下流系統DSが最下流分岐部DS2及び一対の最下流分岐流路DS3を備えたが、この構成に限定されない。例えば、下流系統DSの開放部DS1が上流系統USの分岐流路US3のそれぞれの先端に接続され、第一流体供給路Ra1が一か所(分岐部US2)でX軸方向に分岐し、第一流体Aが二か所の開放部DS1から第一流路Raに向けて流出してもよい。
【0087】
また、第一流体供給路Ra1の下流系統DSが、上流系統USの分岐流路US3と最下流分岐部DS2とを流体的に接続する中間の分岐系統であって、第一流体AをX軸方向に分配する少なくとも一つの分岐系統(第二分岐部)をさらに備えてもよい。
【0088】
この場合、中間の分岐系統は、上流側の流路(例えば、上流系統USの分岐流路US3)に接続される中間分岐部と、中間分岐部と連通し且つ中間分岐部を境にしたX軸方向の一方側の領域及び他方の領域のそれぞれにおいてX軸方向に延びる一対の中間分岐流路と、を備えてもよい。この一対の中間分岐流路のそれぞれは、自身の延びる前記一方側の領域及び前記他方の領域のX軸方向の中間部に先端(終端)を有し、下流系統DS内の下流側の部位(例えば、開放部DS1)に該先端を接続される。なお、複数の流路形成部材4のそれぞれにおいて、分岐系統の数に応じた数の貫通孔が異なる位置に配置される。
【0089】
上記実施形態において、流路形成部材4の本体部40及び嵌合部41の外周400,410が円弧部400a,410a及び直線部400b,410bを含み、該外周400,410の円弧部400a,410aの中心CP1,CP2から直線部400b,410bまでの最短の直線距離L1,L2が第一孔202,302の半径より小さいことで、開放部DS1から流出した第一流体Aが、X軸方向に広がりつつ、該開放部DS1の直近にある複数の第一流路Raに流入する(第一流体供給路Ra1において分配された第一流体Aが複数の第一流路Raの全てに流入する)が、この構成に限定されない。
【0090】
例えば、
図13及び
図14に示す如く、複数の流路形成部材4は、本体部40の外周縁部が隣り合う伝熱プレート2,3に挟まれる構成でもよい。即ち、複数の流路形成部材4のそれぞれにおいて、本体部40の中心CP1から外周400までの直線距離(円形の場合には、半径)r1が全周の何れの箇所においても第一孔202,302の半径より長くてもよい。この場合において、複数の流路形成部材4の輪郭が第一孔202,302の孔形状と相似形状であることが好ましい。
【0091】
この場合、
図15に示す如く、X軸方向に連なる複数の流路形成部材4のうちのいくつかの流路形成部材4は、上記実施形態と同様に、貫通孔(第一貫通孔420、第二貫通孔421、第三貫通孔422、第四貫通孔423、第五貫通孔424、第六貫通孔425、第七貫通孔426、第八貫通孔427の少なくとも何れか一つ)を有することで、X軸方向に間隔をあけて配置される特定の流路形成部材4の開放部DS1のみが対応する単一の第一流路Raと連通する。
【0092】
この場合、他の第一流路Ra(開放部DS1を有していない流路形成部材4と対応する複数の第一流路Ra)は、伝熱プレート2,3に設けられた貫通孔(採番しない)であって、第一孔202,302からY軸方向において離れた位置でX軸方向に貫通した貫通孔を介して互いに連通される。そして、その貫通孔によって連通する複数の第一流路Raによって構成される流路が少なくとも二回ターンし、最下流にある第一流路Raが第一流体排出路Ra2に接続されればよい。
【0093】
このようにしても、第一流体供給路Ra1において、第一流体AがX軸方向に少なくとも一回分岐(分配)された上で、複数の開放部DS1から第一流路Raに向け流出する。このため、第一流体Aの流通距離は、均一又は略均一となる。従って、この構成においても、上記実施形態と同様の作用及び効果を奏する。
【0094】
上記実施形態において、部材配置領域SのX軸方向の中間部にある流路形成部材(上流側基準部材)4が単一の第二貫通孔421を有するとともに、上流側基準部材4の両側にある流路形成部材4が単一の第二貫通孔421と対応する位置に第四貫通孔423を有したが、この構成に限定されない。
【0095】
例えば、
図16に示す如く、部材配置領域SのX軸方向の中間部にある流路形成部材(上流側基準部材)4が、異なる位置に二つの第二貫通孔421を有する。そして、上流側基準部材4のX軸方向の一方側の領域(第一領域)S1にある流路形成部材4が二つの第二貫通孔421のうちの一方の第二貫通孔421と対応する位置に第四貫通孔423を有するとともに、上流側基準部材4のX軸方向の他方側の領域(第二領域)S2にある流路形成部材4が二つの第二貫通孔421のうちの他方の第二貫通孔421と対応する位置に第四貫通孔423を有してもよい。
【0096】
すなわち、上流系統USは、単一の第二貫通孔421によって構成される分岐部US2に対して一対の分岐流路US3が接続された態様に限定されるものではない。例えば、分岐部US2が二つの第二貫通孔421によって構成され、該分岐部US2の異なる位置に一対の分岐流路US3のそれぞれが接続されてもよい。
【0097】
また、上流側基準部材4が偶数個の第二貫通孔421(分岐部US2)有する。そして、上流側基準部材4のX軸方向の一方側の領域(第一領域)S1にある流路形成部材4が上流側基準部材4の有する偶数個の第二貫通孔421のうちの半分の数の第二貫通孔421のそれぞれと対応する位置に第四貫通孔423を有するとともに、上流側基準部材4のX軸方向の他方側の領域(第二領域)S2にある流路形成部材4が、上流側基準部材4の有する偶数個の第二貫通孔421のうちの半分の数の第二貫通孔421であって、一方側の領域(第一領域S1)の流路形成部材4の第四貫通孔423と対応しない位置にある第二貫通孔421と対応する位置に第四貫通孔423を有してもよい。すなわち、上流系統USにおいて、複数対の分岐流路US3が設けられてもよい。
【0098】
この場合、各対の分岐流路US3のX軸方向の長さ(先端の位置)が異なっていてもよいし、同じであってもよい。この点、下流系統DSの最下流分岐部DS2及び最下流分岐流路DS3も同様である。
【0099】
上記実施形態の流路形成部材4において、本体部40の第一面のみに嵌合部41が接続されたが、この構成に限定されない。例えば、本体部40の第一面及び第二面のそれぞれに嵌合部41が接続されてもよい。この場合、X軸方向における嵌合部41の厚みは、一つの伝熱プレート2,3の厚みに対応していればよい。
【0100】
上記実施形態において、流路形成部材4(本体部40)の外周縁部が隣り合う伝熱プレート2,3の貫通孔(第一孔202,302)の周囲に挟まれたが、この構成に限定されない。例えば、複数の流路形成部材4…のそれぞれの外径が、伝熱プレート2,3の貫通孔(第一孔)202,302の孔径よりも小さく、X軸方向に連なった複数の流路形成部材4、即ち、流路形成部材群4Aが、X軸方向に連なる複数の伝熱プレート2,3の貫通孔(第一孔)202,302内に挿入されてもよい。
【0101】
この場合、X軸方向において隣り合う流路形成部材4同士が機械的に接続されることが好ましい。例えば、隣り合う流路形成部材4同士が凹凸嵌合によって接続されてもよい。
【0102】
また、X軸方向に連なった複数の流路形成部材4(一体化した複数の流路形成部材4:流路形成部材群4A)のうちの両端にある流路形成部材4は、最も端にある伝熱プレート2,3或いはエンドプレート5,6に支持されてもよい。但し、導入部US1のみに第一流体Aが供給されるように、最も端にある流路形成部材4は、最も端にある伝熱プレート2或いはエンドプレート5と液密に接続され、これらの貫通孔は、導入部US1と対応したサイズに設定されることは勿論である。
【0103】
上記実施形態において、複数の流路形成部材4のそれぞれは、第二流路Rbを挟んでX軸方向に並ぶ第一流路Raと対応するように配置されたが、これに限定されない。すなわち、単一の流路形成部材4と、単一の第一流路Raとが一対一の関係にあったが、これに限定されない。例えば、複数の流路形成部材4のそれぞれ、或いは、複数の流路形成部材4の少なくとも何れか一つが、二つ以上の第一流路Raと対応するように配置(形成)されてもよい。すなわち、流路形成部材4は、少なくとも二つの第一流路Raに跨るように配置されてもよい。但し、複数の流路形成部材4の貫通孔は、上記実施形態と同様に、第一流体AをX軸方向に分配する第一流体供給路Ra1を形成可能に配置される。
【符号の説明】
【0104】
1…プレート式熱交換器、2,3…伝熱プレート、4…流路形成部材、4A…流路形成部材群、5,6…エンドプレート、20,30…プレート本体部、21,31…環状嵌合部、40…本体部、41…嵌合部、42…貫通孔、50,60…エンドプレート本体、51,61…環状嵌合部、52,53,54,55…ノズル、200,300…凹条、201,301…凸条、202,302…第一孔(貫通孔)、203,303…第二孔(貫通孔)、204,304…第三孔(貫通孔)、205,305…第四孔(貫通孔)、400,410…外周、400a,410a…円弧部、400b,410b…直線部、420…第一貫通孔(貫通孔)、421…第二貫通孔(貫通孔)、422…第三貫通孔(貫通孔)、423…第四貫通孔(貫通孔)、424…第五貫通孔(貫通孔)、425…第六貫通孔(貫通孔)、426…第七貫通孔(貫通孔)、427…第八貫通孔(貫通孔)、A…第一流体、B…第二流体、CP1,CP2…中心、DS…下流系統、DS1…開放部、DS2…最下流分岐部、DS3…最下流分岐流路、DS4…連通部、E1…境界、E2…境界、L1,L2…直線距離、r1…半径、r2…半径、Ra…第一流路、Ra1…第一流体供給路、Ra2…第一流体排出路、Rb…第二流路、Rb1…第二流体供給路、Rb2…第二流体排出路、S…部材配置領域、S1…第一領域、S2…第二領域、S3…第三領域、S4…第四領域、Sa…第一面、Sb…第二面、US…上流系統、US1…導入部、US2…分岐部、US3…分岐流路、US4…連通部