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特許7300522カチオン性ゲルマニウム(II)化合物の存在下でのシロキサンの調製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】カチオン性ゲルマニウム(II)化合物の存在下でのシロキサンの調製
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/30 20060101AFI20230622BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20230622BHJP
   C07F 5/02 20060101ALI20230622BHJP
   C08G 77/08 20060101ALI20230622BHJP
   C07F 7/08 20060101ALN20230622BHJP
【FI】
C07F7/30 A
B01J31/22 Z
C07F5/02 A
C08G77/08
C07F7/08 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021566509
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2019062023
(87)【国際公開番号】W WO2020228923
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】エルケ、フリッツ-ラングハルス
(72)【発明者】
【氏名】リヒャルト、バイドナー
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/068357(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/072378(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/058841(WO,A2)
【文献】特開2014-218449(JP,A)
【文献】Chem. Ber.,1980年,Vol.113,pp.757-769
【文献】Organometallics,1986年,Vol.5,pp.1944-1948
【文献】Organometallics,2008年,Vol.27,pp.4847-4853
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/00-7/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(a1)一般式(I)の化合物、および/または
(a2)一般式(I’)の化合物
から選択される少なくとも1つの化合物Aと、
(b)(b1)一般式(II)の化合物、および/または
(b2)一般式(II’)の化合物
から選択される少なくとも1つの化合物Bと、
(c)一般式(III)のカチオン性ゲルマニウム(II)化合物から選択される少なくとも1つの化合物Cと
を含有する混合物M。
123Si-H (I)
[式(I)中、基R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)ハロゲン、(iii)非置換または置換のC1~C20炭化水素基、および(iv)非置換または置換のC1~C20ヒドロカルボノキシ基からなる群から選択され、ここで前記基R1、R2およびR3のうちの2つは、互いに、単環式または多環式の、非置換または置換のC2~C20炭化水素基を形成していてもよく、ここで置換とは、それぞれの場合において、前記炭化水素基または前記ヒドロカルボノキシ基がそれぞれ独立して以下の置換のうちの少なくとも1つを有することを意味する:水素原子は、ハロゲン、-C≡N、-ORz、-SRz、-NRz 2、-PRz 2、-O-CO-Rz、-NH-CO-Rz、-O-CO-ORzまたは-COORzで置換されることができ、CH2基は、-O-、-S-または-NRz-で置換されることができ、炭素原子は、Si原子で置換されることができ、ここでRzは、それぞれの場合において、水素、C1~C6アルキル基、C6~C14アリール基およびC2~C6アルケニル基からなる群から独立して選択される。]
【化1】
[式(I’)中、
基Rxは、それぞれ独立して、(i)ハロゲン、(ii)非置換または置換のC1~C20炭化水素基、および(iii)非置換または置換のC1~C20ヒドロカルボノキシ基からなる群から選択され、ここで置換とは、それぞれの場合において、前記炭化水素基または前記ヒドロカルボノキシ基がそれぞれ独立して以下の置換のうちの少なくとも1つを有することを意味する:水素原子は、ハロゲンで置換されることができ、CH2基は、-O-または-NRz-で置換されることができ、ここでRzは、それぞれの場合において、水素、C1~C6アルキル基、C6~C14アリール基およびC2~C6アルケニル基からなる群から独立して選択され;
添え字a、b、b’、c、c’、c”、d、d’、d”、d’’’は、前記化合物中のそれぞれのシロキサン単位の数を示し、それぞれ独立して、0~100,000の範囲の整数であり、ただし、a、b、b’、c、c’、c”、d、d’、d”、d’’’の合計は少なくとも2の値を有し、添え字b’、c’、c”、d’、d”またはd’’’の少なくとも1つは0ではない。]
456Si-O-R7 (II)
[式(II)中、
基R4、R5およびR6は、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)ハロゲン、(iii)非置換または置換のC1~C20炭化水素基、(iv)非置換または置換の、O結合またはC結合したC1~C20ヒドロカルボノキシ基、(v)1~100,000個のSi原子を有する有機ケイ素基からなる群から選択され、ここで前記基R4、R5およびR6のうちの2つは、互いに、単環式または多環式の、非置換または置換のC2~C20炭化水素基を形成していてもよく、ここで置換とは、それぞれの場合において、前記炭化水素基または前記ヒドロカルボノキシ基がそれぞれ独立して以下の置換のうちの少なくとも1つを有することを意味する:水素原子は、ハロゲン、-C≡N、-ORz、-SRz、-NRz 2、-PRz 2、-O-CO-Rz、-NH-CO-Rz、-O-CO-ORzまたは-COORzで置換されることができ、CH2基は、-O-、-S-または-NRz-で置換されることができ、炭素原子は、Si原子で置換されることができ、ここでRzは、それぞれの場合において、水素、C1~C6アルキル基、C6~C14アリール基およびC2~C6アルケニル基からなる群から独立して選択され;
基R7は、(i)非置換または置換のC1~C20炭化水素基、および(ii)非置換または置換の、C結合したC1~C20ヒドロカルボノキシ基からなる群から選択され、ここで置換とは、それぞれの場合において、前記炭化水素基または前記ヒドロカルボノキシ基がそれぞれ独立して以下の置換のうちの少なくとも1つを有することを意味する:水素原子は、ハロゲン、-C≡N、-ORz、-SRz、-NRz 2、-PRz 2、-O-CO-Rz、-NH-CO-Rz、-O-CO-ORzまたは-COORzで置換されることができ、CH2基は、-O-、-S-または-NRz-で置換されることができ、炭素原子は、Si原子で置換されることができ、ここでRzは、それぞれの場合において、水素、C1~C6アルキル基、C6~C14アリール基およびC2~C6アルケニル基からなる群から独立して選択される。]
【化2】
[式(II’)中、
基Rxは、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)ハロゲン、(iii)-O-R7、(iv)非置換または置換のC1~C20炭化水素基、および(v)非置換または置換の、C結合したC1~C20ヒドロカルボノキシ基からなる群から選択され;
基R7は、それぞれの場合において、(i)非置換または置換のC1~C20炭化水素基、および(ii)非置換または置換の、C結合したC1~C20ヒドロカルボノキシ基からなる群から独立して選択され、ここで置換とは、それぞれの場合において、前記炭化水素基または前記ヒドロカルボノキシ基がそれぞれ独立して以下の置換のうちの少なくとも1つを有することを意味する:水素原子は、ハロゲン、-C≡N、-ORz、-SRz、-NRz 2、-PRz 2、-O-CO-Rz、-NH-CO-Rz、-O-CO-ORzまたは-COORzで置換されることができ、CH2基は、-O-、-S-または-NRz-で置換されることができ、炭素原子は、Si原子で置換されることができ、ここでRzは、それぞれの場合において、水素、C1~C6アルキル基、C6~C14アリール基およびC2~C6アルケニル基からなる群から独立して選択され;
mおよびnは、それぞれ独立して、0~100,000の範囲の整数であり、ただし、少なくとも1つの基-O-R7が前記化合物中に存在する。]
([Ge(II)Cp]+aa- (III)
[式(III)中、Cpは、一般式(IIIa)のπ結合したシクロペンタジエニル基である。
【化3】
[式(IIIa)中、
基Ryは、それぞれ独立して、(i)式-SiRb 3のトリオルガノシリル基(ここで基Rbは、それぞれ独立して、C1~C20炭化水素基である)、(ii)水素、(iii)非置換または置換のC1~C20炭化水素基、および(iv)非置換または置換のC1~C20ヒドロカルボノキシ基からなる群から選択され、それぞれの場合において、2つの基Ryは、互いに、単環式または多環式のC2~C20炭化水素基を形成していてもよく、ここで置換とは、それぞれの場合において、前記炭化水素基または前記ヒドロカルボノキシ基において少なくとも1つの炭素原子がSi原子で置換されることができることを意味する。]
前記X - が、式[B(R a 4 - の化合物であり、ここで基R a は、それぞれの場合において、芳香族C 6 ~C 14 炭化水素基から独立して選択され、ここで少なくとも1つの水素原子が、(i)フッ素、(ii)パーフルオロ化C 1 ~C 6 アルキル基、および(iii)式-SiR b 3 のトリオルガノシリル基(ここで基R b は、それぞれ独立して、C 1 ~C 20 アルキル基である)からなる群から選択される基によって相互に独立して置換されており
aは、1、2または3の値を有することができる。]
【請求項2】
式(I)において、前記基R1、R2およびR3が、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)塩素、(iii)非置換または置換のC1~C12炭化水素基、および(iv)非置換または置換のC1~C12ヒドロカルボノキシ基からなる群から選択され、ここで置換は、前記と同じ定義を有し;式(I’)において、前記基Rxが、それぞれ独立して、塩素、C1~C6アルキル基、C2~C6アルケニル基、フェニルおよびC1~C6アルコキシ基からなる群から選択され、前記添え字a、b、b’、c、c’、c”、d、d’、d”、d’’’が、それぞれ独立して、0~1000の範囲の整数から選択される、請求項1に記載の混合物M。
【請求項3】
式(I)において、前記基R1、R2およびR3が、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)塩素、(iii)C1~C6アルキル基、(iv)C2~C6アルケニル基、(v)非置換または置換フェニル基、および(vi)C1~C6アルコキシ基からなる群から選択され;式(I’)において、前記基Rxが、それぞれ独立して、塩素、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ、n-プロピル、n-プロポキシおよびフェニルからなる群から選択され、前記添え字a、b、b’、c、c’、c”、d、d’、d”、d’’’が、それぞれ独立して、0~1000までの範囲の整数から選択される、請求項2に記載の混合物M。
【請求項4】
式(I)における前記基R1、R2およびR3、ならびに式(I’)における前記基Rxが、それぞれ独立して、水素、塩素、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ、n-プロピル、n-プロポキシおよびフェニルからなる群から選択され、前記添え字a、b、b’、c、c’、c”、d、d’、d”、d’’’が、それぞれ独立して、0~1000の範囲の整数から選択される、請求項3に記載の混合物M。
【請求項5】
式(II)において、前記基R4、R5およびR6が、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)塩素、(iii)非置換または置換のC1~C14炭化水素基、および(iv)非置換または置換の、O結合またはC結合したC1~C14ヒドロカルボノキシ基からなる群から選択され、前記基R7が、(i)非置換または置換のC1~C6炭化水素基、および(ii)非置換または置換の、C結合したC1~C6ヒドロカルボノキシ基からなる群から選択され;式(II’)において、前記基Rxが、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)塩素、(iii)-O-R7、(iv)非置換または置換のC1~C14炭化水素基、および(v)非置換または置換の、C結合したC1~C14ヒドロカルボノキシ基からなる群から選択され、前記基R7が、それぞれの場合において、(i)非置換または置換のC1~C6炭化水素基、および(ii)非置換または置換の、C結合したC1~C6ヒドロカルボノキシ基からなる群から独立して選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の混合物M。
【請求項6】
式(II)において、前記基R4、R5およびR6が、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)塩素、(iii)C1~C6アルキル基、(iv)C1~C6アルケニル基、(v)フェニル基および(vi)C1~C6アルコキシ基からなる群から選択され、前記基R7が、(i)非置換または置換のC1~C6炭化水素基、および(ii)非置換または置換の、C結合したC1~C6ヒドロカルボノキシ基からなる群から選択され;式(II’)において、前記基Rxが、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)塩素、(iii)C1~C6アルキル基、(iv)C1~C6アルケニル基、(v)フェニル基、(vi)-O-R7からなる群から選択され、前記基R7が、それぞれの場合において、(i)非置換または置換のC1~C6炭化水素基、および(ii)非置換または置換の、C結合したC1~C6ヒドロカルボノキシ基からなる群から独立して選択される、請求項5に記載の混合物M。
【請求項7】
式(III)において、前記基Ryが、それぞれ独立して、(i)C1~C3アルキル基、および(ii)式-SiRb 3のトリオルガノシリル基(ここで基Rbは、それぞれ独立して、C1~C20アルキル基である)からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の混合物M。
【請求項8】
式(III)において、全ての基Ryがメチルであり、前記アニオンX-が前記式[B(Ra4-の化合物からなる群から選択され、ここで基Raは、それぞれ独立して、芳香族C6~C14炭化水素基から選択され、ここで全ての水素原子が(i)フッ素、および(ii)式-SiRb 3のトリオルガノシリル基(ここで基Rbは、それぞれ独立して、C1~C20アルキル基である)からなる群から選択される基によって相互に独立して置換されている、請求項に記載の混合物M。
【請求項9】
前記化合物Cが、Cp*Ge+ B(C654 -;Cp*Ge+ B[C64(4-TBS)]4 -(ここでTBS=SiMe2tert-ブチル);Cp*Ge+ B(2-NaphF)4 -(ここで2-NaphF=パーフルオロ化2-ナフチル基);およびCp*Ge+ B[(C653(2-NaphF)]-(ここで2-NaphF=パーフルオロ化2-ナフチル基)からなる群から選択される、請求項に記載の混合物M。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の混合物MのPiers-Rubinsztajn反応によってシロキサンを調製する方法であって、少なくとも1つの化合物Aを、少なくとも1つの化合物Cの存在下、かつ酸素の存在下で、少なくとも1つの化合物Bと反応させる、前記方法。
【請求項11】
温度が+40℃~+200℃の範囲にあり、圧力が0.01bar~100barの範囲にある、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記酸素が、0.1~100体積%の酸素含有量を有する酸素含有ガス混合物に由来する、請求項10または11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記反応を、空気、リーンエアまたは酸素雰囲気下で行う、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物A中に存在するSi-H部位に対するカチオン性ゲルマニウム(II)化合物のモル割合が、0.001mol%~10mol%の範囲にある、請求項1013のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
Piers-Rubinsztajn反応の触媒としての、請求項1、7、8または9に記載の前記一般式(III)のカチオン性ゲルマニウム(II)化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性ゲルマニウム(II)化合物の存在下、ヒドロシリコン化合物とアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物との混合物からシロキサンを調製する方法、および該混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
シロキサン部位の調製する様々な方法が知られている。特に一般的なのは、Si-OH+HO-Si→Si-O-Si+H2Oのスキームによる縮合であるが、2つの異なるシラノールを使用すると、ヘテロおよびホモ縮合生成物の混合物が得られる。この場合、均一な生成物を製造することはできない。選択的な結合は、Si-H含有シランまたはシロキサンとシラノールとの貴金属触媒による脱水素縮合(Si-H+OH-Si→Si-O-Si+H2)により達成されるが、シラノールは一般的に貯蔵安定性がない。経済的に不利な点は、高価な貴金属触媒を使用することである。米国特許出願公開第2004/012668号明細書に記載されている別の可能性は、触媒としてトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの存在下に、H-シランまたはH-シロキサンとアルコキシシランとの、炭化水素の除去を伴う反応(Si-H+RO-Si→Si-O-Si+R-H)であり、Piers-Rubinsztajn反応として知られている(MA Brook、Chem.Eur.J.2018、24、8458)。B(C653を使用する場合の不利な点は、触媒的に不活性な化合物、特にジメチル(ペンタフルオロフェニル)シランの生成に伴い、反応中に触媒が消費されることである。その結果、反応が遅くなり、反応が早期に停止する危険性がある。その場合、触媒を再び添加しなければならない。これにより、プロセス制御がかなり複雑になり、反応の再現性が低下する。反応開始時に比較的多量の触媒を使用することは、非常に速い初期段階(これは、上記反応の発熱的特性のために、技術的に制御することが難しく、かなりの安全リスクをもたらす)を伴う好ましくないプロセスの経過となることから、この問題の解決策にはならない。さらに、触媒の使用量の増加および不活性化によるその消費により、プロセスがかなり高価になる。
【0003】
国際公開第2019/068357号(CO11720)によれば、カチオン性シリコン(II)化合物が非常に効率的に上記反応を触媒し、B(C653を使用するときに観察される不利な点を有しないことが知られている。しかしながら、この場合、空気および水分に対する感度が高く、技術的な複雑さが増すという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、目的は、上述した不利な点を有しない、シロキサンの調製方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、酸素の存在下でカチオン性ゲルマニウム(II)化合物を使用することによって達成され、これは、Piers-Rubinsztajn反応を非常に効率的に触媒する高活性触媒系を形成する。
【0006】
カチオン性ゲルマニウム(II)化合物が酸素の存在下でPiers-Rubinsztajn反応を触媒することが見出された。また、カチオン性ゲルマニウム(II)化合物は、空気中で数日間、固体として安定である。これは、対応するシリコン(II)化合物が空気中で非常に急速に分解することから、驚くべきことである。このことは、Piers-Rubinsztajn反応におけるゲルマニウム(II)化合物のもう一つの大きな技術的利点を示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、
(a)(a1)一般式(I)の化合物、および/または
(a2)一般式(I’)の化合物
から選択される少なくとも1つの化合物Aと、
(b)(b1)一般式(II)の化合物、および/または
(b2)一般式(II’)の化合物
から選択される少なくとも1つの化合物Bと、
(c)一般式(III)のカチオン性ゲルマニウム(II)化合物から選択される少なくとも1つの化合物Cと
を含有する混合物Mに関する。
【0008】
123Si-H (I)
[式(I)中、基R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)ハロゲン、(iii)非置換または置換のC1~C20炭化水素基、および(iv)非置換または置換のC1~C20ヒドロカルボノキシ基(hydrocarbonoxy radical)からなる群から選択され、ここで基R1、R2およびR3のうちの2つは、互いに、単環式または多環式の、非置換または置換のC2~C20炭化水素基を形成していてもよく、ここで置換とは、それぞれの場合において、炭化水素基またはヒドロカルボノキシ基がそれぞれ独立して以下の置換のうちの少なくとも1つを有することを意味する:水素原子は、ハロゲン、-C≡N、-ORz、-SRz、-NRz 2、-PRz 2、-O-CO-Rz、-NH-CO-Rz、-O-CO-ORzまたは-COORzで置換されることができ、CH2基は、-O-、-S-または-NRz-で置換されることができ、炭素原子は、Si原子で置換されることができ、ここでRzは、それぞれの場合において、水素、C1~C6アルキル基、C6~C14アリール基およびC2~C6アルケニル基からなる群から独立して選択される。]
【0009】
【化1】
【0010】
[式(I’)中、
基Rxは、それぞれ独立して、(i)ハロゲン、(ii)非置換または置換のC1~C20炭化水素基、および(iii)非置換または置換のC1~C20ヒドロカルボノキシ基からなる群から選択され、ここで置換とは、それぞれの場合において、炭化水素基またはヒドロカルボノキシ基がそれぞれ独立して以下の置換のうちの少なくとも1つを有することを意味する:水素原子は、ハロゲンで置換されることができ、CH2基は、-O-または-NRz-で置換されることができ、ここでRzは、それぞれの場合において、水素、C1~C6アルキル基、C6~C14アリール基およびC2~C6アルケニル基からなる群から独立して選択され;
添え字a、b、b’、c、c’、c”、d、d’、d”、d’’’は、化合物中のそれぞれのシロキサン単位の数を示し、それぞれ独立して、0~100,000の範囲の整数であり、ただし、a、b、b’、c、c’、c”、d、d’、d”、d’’’の合計は少なくとも2の値を有し、添え字b’、c’、c”、d’、d”またはd’’’の少なくとも1つは0ではない。]
【0011】
456Si-O-R7 (II)
[式(II)中、
基R4、R5およびR6は、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)ハロゲン、(iii)非置換または置換のC1~C20炭化水素基、(iv)非置換または置換の、O結合またはC結合したC1~C20ヒドロカルボノキシ基、(v)1~100,000個のSi原子を有する有機ケイ素基からなる群から選択され、ここで基R4、R5およびR6のうちの2つは、互いに、単環式または多環式の、非置換または置換のC2~C20炭化水素基を形成していてもよく、ここで置換とは、それぞれの場合において、炭化水素基またはヒドロカルボノキシ基がそれぞれ独立して以下の置換のうちの少なくとも1つを有することを意味する:水素原子は、ハロゲン、-C≡N、-ORz、-SRz、-NRz 2、-PRz 2、-O-CO-Rz、-NH-CO-Rz、-O-CO-ORzまたは-COORzで置換されることができ、CH2基は、-O-、-S-または-NRz-で置換されることができ、炭素原子は、Si原子で置換されることができ、ここでRzは、それぞれの場合において、水素、C1~C6アルキル基、C6~C14アリール基およびC2~C6アルケニル基からなる群から独立して選択され;
基R7は、(i)非置換または置換のC1~C20炭化水素基、および(ii)非置換または置換の、C結合したC1~C20ヒドロカルボノキシ基からなる群から選択され、ここで置換とは、それぞれの場合において、炭化水素基またはヒドロカルボノキシ基がそれぞれ独立して以下の置換のうちの少なくとも1つを有することを意味する:水素原子は、ハロゲン、-C≡N、-ORz、-SRz、-NRz 2、-PRz 2、-O-CO-Rz、-NH-CO-Rz、-O-CO-ORzまたは-COORzで置換されることができ、CH2基は、-O-、-S-または-NRz-で置換されることができ、炭素原子は、Si原子で置換されることができ、ここでRzは、それぞれの場合において、水素、C1~C6アルキル基、C6~C14アリール基およびC2~C6アルケニル基からなる群から独立して選択される。]
【0012】
【化2】
【0013】
[式(II’)中、
基Rxは、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)ハロゲン、(iii)-O-R7、(iv)非置換または置換のC1~C20炭化水素基、および(v)非置換または置換の、C結合したC1~C20ヒドロカルボノキシ基からなる群から選択され;
基R7は、それぞれの場合において、(i)非置換または置換のC1~C20炭化水素基、および(ii)非置換または置換の、C結合したC1~C20ヒドロカルボノキシ基からなる群から独立して選択され、ここで置換とは、それぞれの場合において、炭化水素基またはヒドロカルボノキシ基がそれぞれ独立して以下の置換のうちの少なくとも1つを有することを意味する:水素原子は、ハロゲン、-C≡N、-ORz、-SRz、-NRz 2、-PRz 2、-O-CO-Rz、-NH-CO-Rz、-O-CO-ORzまたは-COORzで置換されることができ、CH2基は、-O-、-S-または-NRz-で置換されることができ、炭素原子は、Si原子で置換されることができ、ここでRzは、それぞれの場合において、水素、C1~C6アルキル基、C6~C14アリール基およびC2~C6アルケニル基からなる群から独立して選択され;
mおよびnは、それぞれ独立して、0~100,000の範囲の整数であり、ただし、少なくとも1つの基-O-R7が化合物中に存在する。]
【0014】
([Ge(II)Cp]+aa- (III)
[式(III)中、Cpは、一般式(IIIa)のπ結合したシクロペンタジエニル基である。
【0015】
【化3】
【0016】
[式(IIIa)中、
基Ryは、それぞれ独立して、(i)式-SiRb 3のトリオルガノシリル基(ここで基Rbは、それぞれ独立して、C1~C20炭化水素基である)、(ii)水素、(iii)非置換または置換のC1~C20炭化水素基、および(iv)非置換または置換のC1~C20ヒドロカルボノキシ基からなる群から選択され、それぞれの場合において、2つの基Ryは、互いに、単環式または多環式のC2~C20炭化水素基を形成していてもよく、ここで置換とは、それぞれの場合において、炭化水素基またはヒドロカルボノキシ基において少なくとも1つの炭素原子がSi原子で置換されることができることを意味する。]
a-は、a価のアニオンであり;
aは、1、2または3の値を有することができる。]
【0017】
化合物A
少なくとも1つの化合物Aが、混合物M中に存在し、それは、一般式(I)の化合物の混合物および/または一般式(I’)の化合物の混合物も包含する。
【0018】
式(I)において、基R1、R2およびR3は、好ましくは、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)塩素、(iii)非置換または置換のC1~C14炭化水素基、および(iv)非置換または置換のC1~C14ヒドロカルボノキシ基からなる群から選択され、ここで置換は、それぞれの場合において、上記と同じ定義を有し;式(I’)において、基Rxは、好ましくは、それぞれ独立して、塩素、C1~C6アルキル基、C2~C6アルケニル基、フェニルおよびC1~C6アルコキシ基からなる群から選択され、添え字a、b、b’、c、c’、c”、d、d’、d”、d’’’は、それぞれ独立して、0~1000の範囲の整数から選択される。
【0019】
式(I)において、基R1、R2およびR3は、特に好ましくは、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)塩素、(iii)C1~C6アルキル基、(iv)C2~C6アルケニル基、(v)非置換または置換のC6~C14アリール基、(vi)非置換または置換のC6~C14アラルキル基および(vii)C1~C6アルコキシ基からなる群から選択され、ここで置換は、それぞれの場合において、上記と同じ定義を有し;式(I’)において、基Rxは、特に好ましくは、それぞれ独立して、塩素、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ、n-プロピル、n-プロポキシおよびフェニルからなる群から選択され、添え字a、b、b’、c、c’、c”、d、d’、d”、d’’’は、それぞれ独立して、0~1000の範囲の整数から選択される。
【0020】
式(I’)の化合物の混合物が、特にポリシロキサンの場合には、存在する。しかしながら、簡単のために、混合物の個々の化合物は、ポリシロキサンの場合は特定しないが、式(I’)と同様の平均式(I’a)が以下のとおり与えられる。
【0021】
【化4】
【0022】
式(I’a)中、基Rxは、式(I’)中のものと同じ定義を有するが、添え字a、b、b’、c、c’、c”、d、d’、d”、d’’’は、それぞれ独立して、0~100,000の範囲の数であり、混合物中のそれぞれのシロキサン単位の平均含有量を示す。添え字a、b、b’、c、c’、c”、d、d’、d”、d’’’がそれぞれ独立して0~20000の範囲の数から選択される平均式(I’a)の混合物が好ましい。
【0023】
一般式(I)の化合物Aの例は、以下のシラン(Ph=フェニル、Me=メチル、Et=エチル)である:Me3SiH、Et3SiH、Me2PhSiH、MePh2SiH、Me2ClSiH、Et2ClSiH、MeCl2SiH、Cl3SiH、HMe2Si-Ph-SiMe2H、Me2(MeO)SiH、Me(MeO)2SiH、(MeO)3SiH、Me2(EtO)SiH、Me(EtO)2SiH、(EtO)3SiH;一般式(I’)の化合物Aの例は、以下のシロキサンおよびポリシロキサンである:HSiMe2-O-SiMe2H、Me3Si-O-SiHMe2、Me3Si-O-SiHMe-O-SiMe3、H-SiMe2-(O-SiMe2m-O-SiMe2-H(ここでmは、1~20,000の範囲の数である)、Me3Si-O-(SiMe2-O)n(SiHMe-O)o-SiMe3(ここでnおよびoは、それぞれ独立して、1~20,000の範囲の数である)。
【0024】
化合物B
少なくとも1つの化合物Bが、混合物M中に存在し、それは、一般式(II)の化合物の混合物および/または一般式(II’)の化合物の混合物も包含する。
【0025】
式(II)において、基R4、R5およびR6は、好ましくは、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)塩素、(iii)非置換または置換のC1~C14炭化水素基、および(iv)非置換または置換の、O結合またはC結合したC1~C14ヒドロカルボノキシ基からなる群から選択され、基R7は、(i)非置換または置換のC1~C6炭化水素基、および(ii)非置換または置換の、C結合したC1~C6ヒドロカルボノキシ基からなる群から選択され;式(II’)において、基Rxは、好ましくは、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)塩素、(iii)-O-R7、(iv)非置換または置換のC1~C14炭化水素基、および(v)非置換または置換の、C結合したC1~C14ヒドロカルボノキシ基からなる群から選択され、基R7は、それぞれの場合において、(i)非置換または置換のC1~C6炭化水素基、および(ii)非置換または置換の、C結合したC1~C6ヒドロカルボノキシ基からなる群から独立して選択される。
【0026】
式(II)において、基R4、R5およびR6は、特に好ましくは、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)塩素、(iii)C1~C6アルキル基、(iv)C1~C6アルケニル基、(v)フェニル基および(vi)C1~C6アルコキシ基からなる群から選択され、基R7は、(i)非置換または置換のC1~C6炭化水素基、および(ii)非置換または置換の、C結合したC1~C6ヒドロカルボノキシ基からなる群から選択され;式(II’)において、基Rxは、特に好ましくは、それぞれ独立して、(i)水素、(ii)塩素、(iii)C1~C6アルキル基、(iv)C1~C6アルケニル基、(v)フェニル基、(vi)-O-R7からなる群から選択され、基R7は、それぞれの場合において、(i)非置換または置換のC1~C6炭化水素基、および(ii)非置換または置換の、C結合したC1~C6ヒドロカルボノキシ基からなる群から独立して選択される。
【0027】
式(II)において、基R4、R5およびR6は、特に好ましくは、メチル、エチル、プロピル、フェニルおよび塩素からなる群から選択され、R7は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルからなる群から選択され;式(II’)において、基Rxは、特に好ましくは、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、フェニル、塩素および-OR7からなる群から選択され、ここで基R7は、それぞれの場合において、メチル、エチル、プロピル、ブチルおよびペンチルからなる群から独立して選択される。
【0028】
式(II’)の化合物の例は、
【化5】
であり、ここでR7、Rx、mおよびnは、式(II’)中のものと同じ定義を有する。
【0029】
一般式(II)の化合物Bの例は、以下のシラン(Ph=フェニル、Me=メチル、Et=エチル)である:Me3SiOEt、Me3SiOMe、Et3SiOEt、Et3SiOMe、Me2PhSiOEt、Me2PhSiOMe、MePh2SiOEt、Me2Si(OMe)2、Me2Si(OEt)2、Ph2Si(OMe)2、Ph2Si(OEt)2、MeSi(OMe)3、MeSi(OEt)3、PhSi(OMe)3、Me2SiH(OMe)、Ph2SiH(OMe)、Me2SiH(OEt)、Ph2SiH(Et)、Si(OMe)4、Si(OEt)4、イソオクチルトリエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン。
【0030】
一般式(II’)の化合物の例は、以下のシロキサンおよびポリシロキサンである:Me3Si-O-SiMe2OMe、Me3Si-O-SiMe2OEt、EtOSiMe2-O-SiMe2OEt、(MeO)2SiMe-O-SiMe(OMe)2、(EtO)2SiMe-O-SiMe(OEt)2、(MeO)3Si-O-Si(OMe)3、(EtO)3Si-O-Si(OEt)3、Me3Si-O-SiMe(OMe)-O-SiMe3、Me3Si-O-SiMe(OEt)-O-SiMe3、MeO-SiMe2-(O-SiMe2m-O-SiMe2-OMeおよびEtO-SiMe2-(O-SiMe2m-O-SiMe2-OEt(ここでm=1~20,000)、Me3Si-O-(SiMe2-O)n(SiMe(OMe)-O)o-SiMe3およびMe3Si-O-(SiMe2-O)n(SiMe(OEt)-O)o-SiMe3(ここでn=1~20,000、o=1~20,000)。
【0031】
特定の実施形態において、化合物Aおよび化合物Bは、1つの分子中に存在する。そのような分子は、例えば、少なくとも1つの基R4、R5、R6が水素である一般式(II)の化合物、または少なくとも1つの基Rxが水素である一般式(II’)の化合物である。
そのような分子の例は、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジフェニルメトキシシラン、ジフェニルエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシランである。
【0032】
化合物C
式(III)中の基Ryの例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、sec-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基およびtert-ペンチル基;n-ヘキシル基等のヘキシル基;n-ヘプチル等のヘプチル基;n-オクチル基、および2,4,4-トリメチルペンチル基などのイソオクチル基などのオクチル基;n-ノニル基などのノニル基;n-デシル基などのデシル基;n-ドデシル基などのドデシル基;n-ヘキサデシル基などのヘキサデシル基;n-オクタデシル基などのオクタデシル基などのアルキル基;;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基;;フェニル基、ナフチル基、アントラセン基およびフェナントレン基などのアリール基;;o-、m-およびp-トリル基、キシリル基、メシチレニル基ならびにo-、m-およびp-エチルフェニル基などのアルカリール基;;ベンジル基、α-およびβ-フェニルエチル基などのアルカリール基;;ならびにトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルtert-ブチルシリル基およびジエチルメチルシリル基などのアルキルシリル基である。
【0033】
式(III)において、基Ryは、好ましくは、それぞれ独立して、(i)C1~C3アルキル基、(ii)水素、および(iii)式-SiRb 3のトリオルガノシリル基(ここで基Rbは、それぞれ独立して、C1~C20アルキル基である)からなる群から選択される。基Ryは、特に好ましくは、それぞれ独立して、メチル基およびトリメチルシリル基から選択される。全ての基Ryは、とりわけ好ましくは、メチル基である。
【0034】
式(III)中の添え字aは、X-が1価のアニオンとなるように、好ましくは1である。
【0035】
アニオンX-の例は、以下のとおりである:
ハロゲン化物;
塩素酸塩ClO4 -
テトラクロロメタレート[MCl4-(ここでM=Al、Ga);
テトラフルオロボレート[BF4-
トリクロロメタレート[MCl3-(ここでM=Sn、Ge);
ヘキサフルオロメタレート[MF6-(ここでM=As、Sb、Ir、Pt);
パーフルオロアンチモネート
[Sb211-、[Sb316-および[Sb421-
トリフレート(=トリフルオロメタンスルホネート)[OSO2CF3-
テトラキス(トリフルオロメチル)ボレート[B(CF34-
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)メタレート
[M(C654-(ここでM=Al、Ga);
テトラキス(ペンタクロロフェニル)ボレート[B(C6Cl54-
テトラキス[(2,4,6-トリフルオロメチル(フェニル))]ボレート
{B[C62(CF33]}-
[ビス[トリス(ペンタフルオロフェニル)]ヒドロキシド
{HO[B(C6532-
クロソ-カルボレート(closo-carborates)[CHB115Cl6-、[CHB115Br6-、[CHB11(CH35Br6-、[CHB1111-、[C(Et)B1111-、[CB11(CF312-およびB12Cl11N(CH33-
テトラ(パーフルオロアルコキシ)アルミネート[Al(ORPF4-(ここでRPF=それぞれ独立してパーフルオロ化C1~C14炭化水素基である);
トリス(パーフルオロアルコキシ)フルオロアルミネート[FAl(ORPF3-(ここでRPF=それぞれ独立してパーフルオロ化C1~C14炭化水素基である);
ヘキサキス(オキシペンタフルオロオキソテルラト(tellurato))アンチモネート
[Sb(OTeF56-
式[B(Ra4-および式[Al(Ra4-のボレートおよびアルミネート(ここで基Raは、それぞれ独立して、芳香族C6~C14炭化水素基から選択され、ここで少なくとも1つの水素原子が、(i)フッ素、(ii)パーフルオロ化C1~C6アルキル基、および(iii)式-SiRb 3のトリオルガノシリル基(ここで基Rbは、それぞれ独立して、C1~C20アルキル基である)からなる群から選択される基によって相互に独立して置換されている。)
【0036】
式(III)において、アニオンX-は、好ましくは、式[B(Ra4-の化合物および[Al(Ra4-の化合物からなる群から選択され、ここで基Raは、それぞれの場合において、芳香族C6~C14炭化水素基から独立して選択され、ここで少なくとも1つの水素原子が、(i)フッ素、(ii)パーフルオロ化C1~C6アルキル基、および(iii)式-SiRb 3のトリオルガノシリル基(ここで基Rbは、それぞれ独立して、C1~C20アルキル基である)からなる群から選択される基によって相互に独立して置換されている。
【0037】
基Raの例は、m-ジフルオロフェニル基、2,2,4,4-テトラフルオロフェニル基、パーフルオロ化1-ナフチル基、パーフルオロ化2-ナフチル基、パーフルオロビフェニル基、-C65、-C63(m-CF32、-C64(p-CF3)、-C62(2,4,6-CF33、-C63(m-SiMe32、-C64(p-SiMe3)、-C64(p-SiMe2t-ブチル)である。
【0038】
式(III)において、アニオンX-は、特に好ましくは、式[B(Ra4-の化合物からなる群から選択され、ここで基Raは、それぞれ独立して、芳香族C6~C14炭化水素基から選択され、ここで全ての水素原子が、(i)フッ素および(ii)式-SiRb 3のトリオルガノシリル基(ここで基Rbは、それぞれ独立して、C1~C20アルキル基である)からなる群から選択される基によって相互に独立して置換されている。
【0039】
式(III)において、アニオンX-は、とりわけ好ましくは、式[B(Ra4-の化合物からなる群から選択され、ここで基Raは、それぞれ独立して、-C65、パーフルオロ化1-および2-ナフチル基、-C63(SiRb 32ならびに-C64(SiRb 3)からなる群から選択され、ここでRbは、それぞれの場合において、独立してC1~C20アルキル基である。
【0040】
式(III)において、アニオンX-は、最も好ましくは、[B(C654-、[B(C64(4-TBS)4-(ここでTBS=SiMe2tert-ブチル)、[B(2-NaphF)4-(ここで2-NaphF=パーフルオロ化2-ナフチル基)および[B(C653(2-NaphF)]-(ここで2-NaphF=パーフルオロ化2-ナフチル基)からなる群から選択される。
【0041】
式(III)の好ましい化合物は、全ての基Ryがメチルであり、アニオンX-が式[B(Ra4-の化合物からなる群から選択されるものであり、ここで基Raは、それぞれ独立して、芳香族C6~C14炭化水素基から選択され、ここで少なくとも1つの水素原子が、(i)フッ素、(ii)パーフルオロ化C1~C6アルキル基、および(iii)式-SiRb 3のトリオルガノシリル基(ここで基Rbは、それぞれ独立して、C1~C20アルキル基である)からなる群から選択される基によって相互に独立して置換されている。
【0042】
式(III)の化合物は、特に好ましくは、
Cp*Ge+ B(C654 -
Cp*Ge+ B[C64(4-TBS)]4 -
(ここでTBS=SiMe2tert-ブチル);
Cp*Ge+ B(2-NaphF)4 -
(ここで2-NaphF=パーフルオロ化2-ナフチル基);および
Cp*Ge+ B[(C653(2-NaphF)]-
(ここで2-NaphF=パーフルオロ化2-ナフチル基)
からなる群から選択される。
【0043】
本発明の混合物Mは、加工助剤、例えば乳化剤、充填剤、例えば高分散シリカもしくは石英、安定剤、例えばフリーラジカル抑制剤、顔料、例えば染料、または白色顔料、例えばチョークもしくは二酸化チタンなどの任意の追加の化合物を含有してもよい。さらなる化合物の量は、混合物Mの総重量を基準にして、それぞれの場合において、好ましくは0.1重量%~95重量%、特に好ましくは1重量%~80重量%、非常に特に好ましくは5重量%~30重量%である。
【0044】
本発明はさらに、本発明の混合物MのPiers-Rubinsztajn反応によってシロキサンを調製する方法に関し、ここで少なくとも1つの化合物Aを、少なくとも1つの化合物Cの存在下、かつ酸素の存在下で、少なくとも1つの化合物Bと反応させる。
【0045】
酸素の量は、Piers-Rubinsztajn反応において非常に重要というわけではなく;例えば、周囲の空気、リーンエア(lean air)などの、当業者に知られている任意の酸素含有ガス混合物を用いることができる。酸素は、0.1~100体積%の酸素含有量を有する酸素含有ガス混合物に由来することが好ましい。
【0046】
また、酸素をいつ、どのように加えるかは、非常に重要というわけではない。酸素含有ガスは、例えば、ガス空間に一度加えることができ、または連続的に導入することができ、またはその添加前に、カチオン性ゲルマニウム(II)化合物上を通過させることができ、またはカチオン性ゲルマニウム(II)化合物の溶液中に導入することができ、または当業者に知られている他の方法を介して反応混合物と接触させることができる。
【0047】
反応物は、任意の順序で互いに混合することができ、その混合は当業者に知られている方法で行われる。例えば、化合物A、BおよびCは、Piers-Rubinsztajn反応が酸素との接触によって開始されるように混合することができる。また、最初に、化合物Aと化合物B、または化合物Aと化合物C、または化合物Bと化合物Cを混合し、次いで、欠けている化合物を添加することも可能である。さらに、好ましい実施形態によれば、化合物AおよびBを含む1つの分子を用いることができる。これらは、例えば、少なくとも1つの水素原子を含み、上記でより詳細に規定されている、対応する好ましい化合物Bであってもよい。
【0048】
特定の実施形態において、本発明の混合物MのPiers-Rubinsztajn反応は、空気、リーンエアまたは酸素雰囲気下で行われる。
【0049】
さらなる特定の実施形態において、化合物Cの溶液を酸素と接触させ、後の時点で化合物Aおよび化合物Bと混合する。
【0050】
ケイ素に直接結合した有効水素原子とケイ素に直接結合したアルコキシ部位との間のモル比は、通常は1:100~100:1の範囲にあり、該モル比は好ましくは1:10~10:1の範囲にあり、特に好ましくは1:2~2:1の範囲にある。
【0051】
化合物A中に存在するSi-H部位に対するカチオン性ゲルマニウム(II)化合物Cのモル割合は、好ましくは0.0001mol%~10mol%の範囲、特に好ましくは0.001mol%~1mol%の範囲、非常に特に好ましくは0.01mol%~0.1mol%の範囲にある。
【0052】
Piers-Rubinsztajn反応は、無溶媒で、または1つ以上の溶媒を加えて行うことができる。化合物Aに対する溶媒または溶媒混合物の割合は、好ましくは少なくとも0.01重量%、多くても1000倍重量、特に好ましくは少なくとも1重量%、多くても100倍重量、とりわけ好ましくは少なくとも10重量%、多くても10倍重量である。
【0053】
使用される溶媒は、好ましくは非プロトン性溶媒でもよく、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンもしくはトルエンなどの炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンもしくは1,2-ジクロロエタンなどの塩素化炭化水素、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフランもしくはジオキサンなどのエーテル、または例えばアセトニトリルもしくはプロピオニトリルなどのニトリルである。
【0054】
0.1MPaで120℃以下の沸点または沸点範囲を有する、溶媒または溶媒混合物が好ましい。好ましい溶媒は、芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素である。
【0055】
Piers-Rubinsztajn反応における圧力は、当業者が自由に選択することができ;それは、周囲圧力下、または減圧もしくは昇圧下で行うことが可能である。圧力は、好ましくは0.01bar~100barの範囲、特に好ましくは0.1bar~10barの範囲であり、Piers-Rubinsztajn反応は非常に特に好ましくは周囲圧力で行われる。しかしながら、反応温度においてガス状で存在する化合物がPiers-Rubinsztajn反応に含まれる場合、反応は好ましくは昇圧下で、特に好ましくは系全体の蒸気圧で行われる。
【0056】
Piers-Rubinsztajn反応の温度は、当業者が自由に選択することができる。それは、好ましくは+40℃~+200℃の範囲の温度、特に好ましくは+50℃~+150℃の範囲の温度、非常に特に好ましくは+60℃~+120℃の範囲の温度で行われる。
【0057】
さらなる実施形態において、1つ超のSi-H部位を含む化合物A、および1つ超のケイ素-アルコキシ部位を含む化合物Bが使用される。好ましい実施形態によれば、化合物A(Si-H部位)および化合物B(Si-アルコキシ部位)の両方を含む1つの分子を使用することも可能である。このようにして、コポリマーを得ることができる。
【0058】
本発明の方法は、例えば、生成物中に不安定な不純物として存在し、したがってしばしば用途において問題を起こし、また他の方法、例えば加水分解縮合反応によって生成していた少量のSi-アルコキシ部位を、これらを化合物Cおよび酸素の存在下で化合物Aと反応させることによって除去するために用いることができる。
【0059】
ここで、不安定なSi-アルコキシ部位は、不活性なSi-O-Si部位に変換される。類似の方法で、例えばヒドロシリル化反応から、望ましくないSi-H部位を依然として含む生成物は、化合物Bを化合物Cおよび酸素の存在下で反応させることによっても反応させることができる。
【0060】
本発明はまた、Piers-Rubinsztajn反応のための触媒としての式(III)のカチオン性ゲルマニウム(II)化合物の使用にも関する。
【0061】
特に好ましくは、Piers-Rubinsztajn反応のための触媒としての式(IV)のカチオン性ゲルマニウム(II)化合物の使用である。
【実施例
【0062】
Cp*Ge + B(C 6 5 4 - の調製
アルゴン雰囲気下、701mg(2.04mmol)のデカメチルゲルマノセン(Cp*2Ge、Cp*=ペンタメチルシクロペンタジエニル)を5mlのジクロロメタンに溶解させ、5mlのジクロロメタンに溶解させた1.70g(1.83mmol)の(C653+ B(C654 -の溶液を振動させながら室温でゆっくり加えた。その後、生成物の沈殿が起こらなくなるまで、沈殿剤として充分な量のヘプタンを加えた。上澄み液をデカンテーションし、沈殿物をジクロロメタンに再溶解させ、ヘプタンを用いて再び沈殿させた。沈殿した生成物を吸引濾過し、乾燥させ、最後に高真空下で乾燥させた。収量:1.63g(97%)、淡いピンク色の固体。
【0063】
1H-NMR(CD2Cl2):δ=2.23(メチル基)。
13C-NMR(CD2Cl2):δ=8.82(メチル基)、δ=123.1(Cp*環炭素)、δ=124(ブロード)、δ=135.3(m)、δ=137.3(m)、δ=139.2(m)、δ=147.2(m)、δ=149.1(m):芳香族C-F。
11B-NMR(CD2Cl2):δ= -16.66(s)。
19F-NMR(CD2Cl2):δ= -167.4(mc、8 ortho-F)、δ= -163.5(mc、4 para-F)、δ= -132.9(m、ブロード、8 meta-F)。
【0064】
例1
475mgのジクロロメタンに溶解させた0.30mg(0.45μmol)の(π-Me55)Ge+ B(C654 -の溶液に、3時間酸素を通じた。次いで、この溶液に178mg(0.650mmol)のジエトキシジフェニルシランと101mg(0.752mmol)の1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンとを加え、混合物を60℃に8時間加熱した。次いで、高真空下で溶媒を除去した。残渣は無色の高粘性油であった。
GPC:Mw=20,700、Mn=6800、Mw/Mn=3.00。
【0065】
例2
160mg(0.587mmol)のジエトキシジフェニルシランと101mg(0.660mmol)の1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼンとを、800mgのジクロロメタンに溶解させた0.30mg(0.45μmol)の(π-Me55)Ge+ B(C654 -の溶液に加え、注射器で3×3mlの空気を注入し、混合物を70℃に4時間加熱した。次いで、高真空下で溶媒を除去した。残渣は無色の高粘性油であった。
GPC:Mw=14,600、Mn=5700、Mw/Mn=2.57。
【0066】
例3
341mg(1.25mmol)のジエトキシジフェニルシランと361mg(2.43mmol)のペンタメチルジシロキサンとを、1020mgのジクロロメタンに溶解させた0.4mg(0.5μmol)の(π-Me55)Ge+ B(C654 -の溶液に加え、注射器で3×3mlの空気を注入し、混合物を50℃に2時間加熱した。上記反応の主生成物は、1,1,1,3,3,7,7,9,9,9-デカメチル-5,5-ジフェニルペンタシロキサンである。29Si-NMR(CD2Cl2):δ= -48.2(SiPh2)、-20.2(2 TMS-SiMe2)、7.74(2 Me3Si)。GC-MS:m/z=508(1%、M+)、493(15%、M+-CH3)。