(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】ウィンチ装置、とりわけ建設装置アセンブリ用のウィンチ装置
(51)【国際特許分類】
B66D 1/30 20060101AFI20230622BHJP
B66D 1/08 20060101ALI20230622BHJP
B66D 1/12 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
B66D1/30 A
B66D1/08
B66D1/12
(21)【出願番号】P 2022063216
(22)【出願日】2022-04-06
【審査請求日】2022-04-06
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502407107
【氏名又は名称】バウアー マシーネン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペイエル アンドレアス
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-226143(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03425123(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00- 5/34
B65H 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設装置アセンブリ用の
ウィンチ装置であって、
中空ハブ領域を備えるウィンチドラムと、
ロータリマウントを介し回動軸周りで回動させうるようその上に前記ウィンチドラムが実装されている支持器と、
前記ウィンチドラムを回転駆動しうる
2個のロータリドライブと、
を備えるウィンチ装置であって、
前記2個のロータリドライブが前記ウィンチドラム
の前記中空ハブ領域内に前記回転軸を挟んで互いに逆側に装着されており、それらロータリドライブ及びウィンチドラムが前記回動軸周りで可回動なウィンチ装置。
【請求項2】
請求項1に
記載のウィンチ装置であって、
静止している前記支持器から前記ウィンチドラム上の前記
2個のロータリドライブへと動力を伝達させうる動力伝達装置が、設けられたウィンチ装置。
【請求項3】
請求項1に
記載のウィンチ装置であって、
前記
2個のロータリドライブが流体圧モータ又は電動モータであるウィンチ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のウィンチ装置であって、
前記ウィンチドラムが、流体、信号及び/又は電流を伝えるための少なくとも1本のライン又はライン束が備わるケーブルドラムとして設計されており、
少なくとも1個の接続部が、前記少なくとも1本のライン又はライン束を接続すべく前記
中空ハブ領域内に形成されているウィンチ装置。
【請求項5】
請求項4に
記載のウィンチ装置であって、
少なくとも一種類の流体及び/又は少なくとも一通りの信号線及び/又は電流用のロータリフィードスルーが前記ロータリマウント上に配列されており、そのロータリフィードスルーが、前記支持器に
非可動回転連結されたステータと、そのステータに対し可回動であり前記ウィンチドラムに堅固連結されているロータと、を備え、
前記支持器と前記ケーブルドラム上の前記ラインとの間の流体連結部、信号接続部及び/又は電力接続部が前記ロータリフィードスルーにより形成されているウィンチ装置。
【請求項6】
請求項1に
記載のウィンチ装置であって、
前記
2個のロータリドライブが、駆動ピニオンが備わる駆動シャフトを備え、
前記駆動ピニオンが、前記支持器上で前記回動軸に対し同心配列された環状の歯付き鍔に噛合連結されているウィンチ装置。
【請求項7】
請求項1に
記載のウィンチ装置であって、
前記
2個のロータリドライブが前記ウィンチドラム上に偏心配列されているウィンチ装置。
【請求項8】
少なくとも1個の請求項1に
記載のウィンチ装置
と、少なくとも1個の建設装置を備える建設装置アセンブリ。
【請求項9】
請求項8に係る建設装置アセンブリであって、
前記建設装置が、地中連続壁を形成するためのコンクリート注入孔を掘削するカッタが設けられた
土木工学装置である建設装置アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の前提部分に係るウィンチ装置、とりわけ建設装置アセンブリ用のそれであり、ウィンチドラムと、ロータリマウントを介し回動軸周りで回動させうるようその上にそのウィンチドラムが実装されている支持器と、そのウィンチドラムを回転駆動しうる少なくとも1個のロータリドライブと、を備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
ウィンチ装置は、とりわけ、建設現場にある建設装置又は建設装置アセンブリ上にて様々なやり方で用いられている。この種のウィンチ装置を用いることでケーブル、特にラインを、コンパクトな要領で貯留すること及び必要に応じ供給することができ、とりわけ、土木工学的作業中の建設装置に送給することができる。解き出し及び巻き上げ動作のため、ウィンチには、そのウィンチドラムを回転駆動しうるロータリドライブが付設される。通常、ロータリドライブはウィンチドラムの側部領域内に配置される。
【0003】
ホースライン用の一般的なウィンチドラムが、例えば特許文献1により知られている。ロータリドライブがその側部に実装されている分、ウィンチ装置の幅が増しているため、結果として相当量の設置スペースが必要となる。これは望ましくなく、格別にコンパクトな用途に相応しくない。
【0004】
原理上は、既知の通り、ウィンチドラムにハブモータを付設し、そのウィンチドラムを、その静止ハブモータの周りで回動するよう実装及び駆動することができる。この種のウィンチ装置では、ウィンチドラムの直径がその分増すと同時に、そのウィンチドラム内のハブ領域がほぼ完全に占拠される。これは、例えばそのウィンチドラム上の1本又は複数本のホースラインに流体を供給するのにそのハブ領域が必要な場合に、ひときわ不都合たりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許出願公開第3425123号明細書(A1)
【文献】独国実用新案登録第29716078号明細書(U1)
【文献】独国特許出願公開第19842081号明細書(A1)
【文献】独国特許出願公開第19840831号明細書(A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、とりわけコンパクトにすることができ柔軟なデザインも可能なウィンチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的が請求項1の特徴を有するウィンチ装置により達成される。本発明の好適実施形態が従属形式請求項にて説明される。
【0008】
本発明に係るウィンチ装置の特徴は、前記少なくとも1個のロータリドライブが前記ウィンチドラムに装着されており、それらロータリドライブ及びウィンチドラムが前記回動軸周りで可回動なことにある。
【0009】
本発明の基本着想の一つは、ウィンチ装置内静止ロータリドライブから脱し、その代わりに、回動するウィンチドラムに対しロータリドライブを動かすことにある。結果として、設置スペースを、ウィンチドラムが支持及び実装される支持器上にて調達し、他目的で又はとりわけコンパクトなデザインにするためそれを用いることができる。この場合、前記少なくとも1個のロータリドライブを、そのウィンチドラムに対し、概ね何れの位置に装着することもできる。ひいては、ひときわ多種多様なデザインのウィンチ装置を得ることができる。そのウィンチ装置を、建設装置上に直に配列しても建設装置から離して配列してもよいのであり、どちらの場合も、本発明の意味内に収まる建設装置アセンブリが形成される。
【0010】
本発明の好適変形態様は、静止している支持器からウィンチドラム上の少なくとも1個のロータリドライブへと動力を伝達させうる動力伝達装置を、設けたものである。動力伝達用に、例えば加圧流体用のロータリフィードスルーや導電スリップコンタクトを設けることができる。
【0011】
本発明のある発展形態によれば、ひときわ好適なことに、その少なくとも1個のロータリドライブが流体圧モータ又は電動モータとされる。この場合、流体圧モータへの動力供給は流体力学的流体で以て行うこと、即ちその少なくとも1個のロータリドライブが備わるウィンチドラムへとその流体力学的流体を運びロータリフィードスルーを経て元のところに戻す態で行うことができる。電動モータ使用時には、スリップコンタクトリング、ブラシその他の好適な接続装置を用いて電力を伝えロータリドライブに給電すればよい。
【0012】
本発明のある好適実施形態によれば、そのウィンチドラムを中空ハブ領域が備わるものにし、少なくとも1個のロータリドライブをその中空ハブ領域内に配列することにより、ひときわコンパクトなデザインを達成することができる。この場合、ロータリドライブを回動軸に対し同心配列しても偏心配列してもよい。偏心配列時には、ウィンチドラムの中心に十分な設置スペースを調達し他の諸部材、例えばロータリフィードスルーに供することができる。
【0013】
本発明のひときわ上首尾な構成は、流体、信号及び/又は電流を伝えるための少なくとも1本のライン又はライン束が備わるケーブルドラムとして、そのウィンチドラムを設計し、そのライン又はライン束を接続すべくそのケーブルドラム上、とりわけハブ領域内に少なくとも1個の接続部を形成したものである。そのラインは流体を導くホースライン、とりわけ液体、気体及び/又は懸濁液(サスペンション)を導くホースラインとして、形成することができる。具体的には、そのラインの自由端を建設装置に連結し、ウィンチ装置の働きによりその建設装置へと必要に応じ送給することができる。ラインの他端はそのケーブルドラム上の連結部に連結される。その連結部を、とりわけ、ウィンチドラムのハブ領域外に配列することができる。とりわけ、この場合に、ウィンチドラムのハブを介し支持器によりホース連結部に流体を供給することができる。
【0014】
そのラインを、データ及び/又は電流を伝えるためのケーブルとしてもよい。そのライン束をホース及びケーブルで組成することも同様に有益である。そのライン束を、とりわけ、いわゆるコンダクションバンドたる帯状のものにしてもよい。
【0015】
本発明のある発展形態によれば、ひときわ上首尾なことに、そのロータリマウント上に少なくとも一種類の流体用のロータリフィードスルーが配列され、そのロータリフィードスルーが、支持器にトルクプルーフ装着されたステータ並びにそのステータに対し可回動でありウィンチドラムに堅固連結されているロータを備えるものとされ、その支持器とホースドラムのホースラインとの間にそのロータリフィードスルーを通じ流体連結部が形成される。ここに、そのロータリフィードスルーは原理的に既知な部材であり、それによって、静止部材から回動部材へと液体を運ぶことができる。本発明との関連では、そのロータリフィードスルーを用いることで、そのホースラインに係る流体を運ぶだけでなく、ウィンチドラム上のロータリドライブへと及びそこから、とりわけ流体力学的動力等といった動力を伝えることができる。
【0016】
好ましくは、そのロータリフィードスルーをウィンチドラムの回動軸に対し同軸配列する。この場合、そのウィンチドラム上のロータリフィードスルーのロータがそのウィンチドラムのホース連結部に対するライン連結部の態となり、そこにそのウィンチドラム上のホースラインが装着される。これにより、それら部材全てがそのウィンチドラムに装着されるため、ホースラインがロータリフィードスルーのロータ及びロータリドライブに対し相対的に静止することとなる。従って、それらの部品の動作時衝突が防止される。
【0017】
本発明のある発展形態によれば、少なくとも1個のロータリドライブを、駆動ピニオンが備わる駆動シャフトを備えるものとし、その駆動ピニオンを、支持器上で回動軸に対し同心配列された環状の歯付き鍔(カラー)に噛合連結させることにより、ひときわ良好な力伝達を達成することができる。その歯付き鍔が支持器に堅固連結されているので、その歯付きの駆動ピニオンが遊星ドライブと同様にしてその歯付き鍔に沿い転がること、ひいてはウィンチドラムが回転運動に持ち込まれることとなる。この場合、その歯付き鍔は、径方向を向く内若しくは外歯又はスパーギア(平歯車)歯を備えるものとされうる。
【0018】
本発明のある発展形態、とりわけ本アセンブリのそれによれば、ひときわ得策なことに、少なくとも1個のロータリドライブがウィンチドラム上に偏心配列される。このプロセスにおいては、そのロータリドライブが回動軸周りで軌道運動を実行する。
【0019】
2個のロータリドライブをウィンチドラムのハブ領域内に配列することでも、ひときわ大量の力を伝達可能となる。この場合、それら2個のロータリドライブを、径方向に沿い回動軸を挟み互いに逆側に配置するとよい。結果として、そのウィンチドラム上でのアンバランスを、とりわけ、それらロータリドライブの偏心配列により補償することもできる。原理上は、3個、4個又はより多くのロータリドライブを、その回動軸の周りに散在するようそのウィンチドラム上に設けることもできる。従って、総じて、相対的にコンパクトでコスト効果的なロータリドライブを設置することができる。
【0020】
本発明に係るウィンチ装置は広範な用途にて用いることができる。本発明の好適な構成によれば、本ウィンチ装置のひときわ得策な用法は、少なくとも1個の建設装置とりわけ土木工学装置を備える建設装置アセンブリ上に、配列することである。この場合、本ウィンチ装置を、鋼製ケーブル、電流線、データライン又は流体ライン向けに提供することができる。
【0021】
本発明に係る建設装置アセンブリのひときわ得策な構成は、土木工学的地下装置、とりわけダイアフラム壁(地中連続壁)カッタを提供するものである。原理的には、ホースドラムを、流体を供給し及び/又は放出させることが得策なその他の土木工学装置上で用いること、例えば削孔装置における削孔液やダイアフラム壁カッタ又はダイアフラム壁グラバにおける支援懸濁液に関し用いることもできる。
【0022】
以下の図面中で模式的に示されている好適実施形態をもとに、以下、本発明について詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係るウィンチ装置の後方からの斜視図である。
【
図2】
図1のウィンチ装置及びその細部の前方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1~
図3に示す通り、本発明に係るウィンチ装置10はベアリングブロック状の支持器12を備えており、そこに円盤状の連結プレート14がしっかりと装着されている。その連結プレート14上には環状のロータリマウント16が配列されており、そのマウントの働きで、ウィンチドラム20が自己支持的要領にて且つ回動軸17周りで可回動となるよう実装されている。
【0025】
ウィンチドラム20はドラム状の本体22を備えており、その軸端側にて円盤壁24が径方向外方に張り出しており、それにより形成される受入領域内に、ライン30からなる巻線、ここではライン束として示されているそれが受け入れられている。切抜き25を
図3に示す如くそれら側壁24に設けるとよい。そのライン束は複数本のホースライン、信号線又は電力線で組成することができる。円盤状のハブ26がロータリマウント16に連結されており、ドラム状の本体22の側部領域上に形成されている。
【0026】
2個の内部ロータリドライブ40が、ドラム状の本体22により囲まれた中空ハブ領域28において、回動軸17に対し偏心的となるようウィンチドラム20のハブ26に締結されている。この目的で締結フランジ27がハブ26上に形成されている。
【0027】
図2中に模式的に示されている通り、各ロータリドライブ40は駆動軸44を有しており、その周りで外歯付きの駆動ピニオン42が回転駆動されている。この駆動軸44は回動軸17に対し平行である。駆動ピニオン42は、対応する内歯が備わる歯付き鍔18と噛合っており、その歯付き鍔18が、支持器12の連結プレート14に締結されている。駆動ピニオン42のこの噛合係合の働きにより、駆動ピニオン42が歯付き鍔18に沿い遊星的要領にて回動軸17周りを軌道周回し、ウィンチドラム20が回動軸17を巡る相応な回転運動に持ち込まれることとなる。
【0028】
シャフト状のロータリフィードスルー50が回動軸17に対し同心配列されている。この場合のロータリフィードスルー50は模式的に示すステータ52を備えており、それが連結プレート14、ひいては支持器12に非可回動連結されている。ライン30に一種類又は複数種類の流体を供給し及び/又はそこから放出させるためのサプライライン32が、そのステータ52に連結されている。
【0029】
ロータリフィードスルー50は、更に、自ロータリフィードスルー50のステータ52に対し可回動なロータ54を備えている。ロータ54は、ウィンチドラム20のハブ26に堅固連結されていてそれと一緒に回動する。ウィンチドラム20上のライン30を、ロータ54の相応な連結部56に、ライン連結部31を介し連結することができる。この構成によれば、流体をサプライライン32からロータリフィードスルー50を介しウィンチドラム20上のライン30へと運ぶことができる。
【0030】
ライン束により一種類又は複数種類の流体、電力又は信号を運ぶのに加え、模式的に示す動力源46によりロータリフィードスルー50経由でロータリドライブ40へと動力を運ぶこともできる。動力としては、流体力学的流体又は電流を、とりわけ、外部からロータリフィードスルー50を経て軌道周回中のロータリドライブ40へと、運ぶことができる。
【0031】
本発明に係る配列によれば、ウィンチドラム20上のライン30なる形態を採るホースライン又は電力線を、単純な要領でロータリフィードスルー50のロータ54につなぐこと、ひいては外部からロータリフィードスルー50経由でそのライン束へと流体以外も運ぶことができる。ウィンチドラム20上の内部ロータリドライブ40により、ひときわコンパクトなデザインのウィンチ装置10を実現することができる。