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特許7300560シリーズハイブリッド車両の駆動ユニット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】シリーズハイブリッド車両の駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/40 20071001AFI20230622BHJP
   B60K 6/405 20071001ALI20230622BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20230622BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20230622BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20230622BHJP
   H02K 5/20 20060101ALI20230622BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
B60K6/40
B60K6/405
B60K6/46
B60L9/18 P ZHV
B60L50/61
H02K5/20
H02K9/19 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022523734
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(86)【国際出願番号】 IB2020000504
(87)【国際公開番号】W WO2021234425
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚越 勇樹
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-087908(JP,A)
【文献】特開2004-327283(JP,A)
【文献】特開2020-078215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/40
B60K 6/405
B60K 6/46
B60L 9/18
B60L 50/61
H02K 5/20
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用の第1電動モータと、発電用の第2電動モータと、を含んで構成されるシリーズハイブリッド車両の駆動ユニットであって、
前記第1電動モータのステータの外周に設けられた円筒形状の第1インナーハウジングと、前記第2電動モータのステータの外周に設けられた円筒形状の第2インナーハウジングは、それぞれの外周面に前記ステータをらせん状に取り囲むように形成せれたらせん冷却通路を備え、
前記第1電動モータと前記第2電動モータとが、アウターハウジングにそれぞれのロータ軸が平行になるように収容され、
前記第1電動モータの前記らせん冷却通路と、前記第2電動モータの前記らせん冷却通路とが連結通路を介して直列に連結され、かつ、前記連結通路の一端が接続される上流側のらせん冷却通路の冷却液排出口と、前記連結通路の他端が接続される下流側のらせん冷却通路の冷却液導入口とが、ロータ軸方向で同一方向側の端部に配置されている、駆動ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動ユニットにおいて、
前記第1インナーハウジングと前記第2インナーハウジングは、前記アウターハウジング内にそれぞれの前記らせん冷却通路が異なる位相となるように収容される、駆動ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の駆動ユニットにおいて、
前記上流側のらせん冷却通路の冷却液排出口と前記下流側のらせん冷却通路の冷却液導入口との間の距離が、前記下流側のらせん冷却通路の冷却液排出口と前記上流側のらせん冷却通路の冷却液導入口との間の距離より短い、駆動ユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の駆動ユニットにおいて、
インバータが前記アウターハウジングの上部に配置され、
前記上流側のらせん冷却通路の冷却液排出口が上流側の電動モータのロータ軸より下方に配置され、
前記下流側のらせん冷却通路の冷却液導入口が下流側の電動モータのロータ軸より下方に配置される、駆動ユニット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の駆動ユニットにおいて、
インバータが前記アウターハウジングの上部に配置され、
前記インバータの気密用シールの外部に前記インバータの冷却液排出口が設けられ、
前記インバータの冷却液排出口と前記上流側のらせん冷却通路の冷却液導入口とが接続されている、駆動ユニット。
【請求項6】
請求項4または5に記載の駆動ユニットにおいて、
前記上流側のらせん冷却通路の冷却液導入口が、前記ロータ軸の軸方向から見た場合に、上流側の電動モータのロータ軸に対して下流側の電動モータから遠い側に配置されている、駆動ユニット。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の駆動ユニットにおいて、
前記アウターハウジングは、前記第1電動モータが収容される第1円筒部と前記第2電動モータが収容される第2円筒部とが隣り合う形状を有し、前記第1円筒部と前記第2円筒部の間の下方側の谷部には前記第1円筒部と前記第2円筒部とをつなぐリブを少なくとも一つ有し、
前記リブの一つは、前記リブの下端面から前記第1円筒部の内部まで貫通する第1貫通孔と、前記リブの下端面から前記第2円筒部の内部まで貫通する第2貫通孔と、前記リブの下端面に設けられた溝であって前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とを接続する接続溝と、前記接続溝を塞ぐ蓋部材と、により構成される水路を有する、駆動ユニット。
【請求項8】
請求項2に記載の駆動ユニットにおいて、
前記第1インナーハウジング及び前記第2インナーハウジングは、これらの外周部に周方向に等間隔で設けられた複数の締結部により前記アウターハウジングに固定され、
前記締結部の数が偶数の場合には、前記第1インナーハウジングと前記第2インナーハウジングとの位相差が、360度を各インナーハウジングの前記締結部の数で除した角度の倍数になっており、
前記締結部の数が奇数の場合には、前記第1インナーハウジングと前記第2インナーハウジングとの位相差が、360度を各インナーハウジングの前記締結部の数で除した角度の倍数に、当該角度の半分の角度を加えた角度になっている、駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリーズハイブリッド車両の駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
WO2015/098328A1に、ステータを固定するハウジングの内部にらせん状の冷却通路が形成され、冷却通路の一端に設けられた冷却液導入口と、他端に設けられた冷却液排出口とがハウジングの外周部に開口する水冷式の電動モータが開示されている。
【発明の概要】
【0003】
発電用と駆動用の2つの電動モータを備えるシリーズハイブリッド車両においては、2つの電動モータを含む駆動ユニットをよりコンパクトな構成とするために、2つの電動モータを各回転軸が平行となるようにして、近接配置することとなる。このようなシリーズハイブリッド車両用の2つの電動モータに、上記文献のように冷却液導入口と冷却液排出口とが決まっている冷却通路を適用する場合、一方の冷却通路と他方の冷却通路とを直列に連結することとなる。つまり、一方の電動モータの冷却液排出口と他方の電動モータの冷却液導入口とを接続することとなる。しかし、上記の通り2つの電動モータを各回転軸が平行になるよう配置すると、一方の電動モータの冷却液排出口と他方の電動モータの冷却液導入口とが軸方向に離れるので、これらを連結するための接続通路が長くなり、駆動ユニットの大型化を招来する。また、冷却液の通路が長くなることで、圧力損失も大きくなる。
【0004】
そこで本発明は、コンパクトかつ冷却通路の圧力損失を抑制し得る駆動ユニットを提供することを目的とする。
【0005】
本発明のある態様によれば、駆動用の第1電動モータと、発電用の第2電動モータと、を含んで構成されるシリーズハイブリッド車両の駆動ユニットが提供される。この駆動ユニットにおいて、第1電動モータのステータの外周に設けられた円筒形状の第1インナーハウジングと、第2電動モータのステータの外周に設けられた円筒形状の第2インナーハウジングは、それぞれの外周にステータをらせん状に取り囲むように形成せれたらせん冷却通路を備える。第1電動モータと第2電動モータは、アウターハウジングに互いのロータ軸が平行になるように収容され、第1電動モータのらせん冷却通路と、第2電動モータのらせん冷却通路とが連結通路を介して直列に連結され、かつ、連結通路の一端が接続される上流側のらせん冷却通路の冷却液排出口と、連結通路の他端が接続される下流側のらせん冷却通路の冷却液導入口とが、ロータ軸方向で同一方向側の端部に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本実施形態に係る駆動ユニットの外観図である。
図2図2は、比較例に係る駆動ユニットの外観図である。
図3図3は、本実施形態に係る駆動ユニットの分解図である。
図4図4は、駆動ユニットをロータ軸方向から見た図である。
図5図5は、インナーハウジングの外観図である。
図6図6は、2つのインナーハウジングの配置例を示す上面図である。
図7図7は、図6をロータ軸方向から見た図である。
図8図8は、駆動ユニットをロータ軸方向から見た概略構成図である。
図9図9は、アウターハウジングの連結部付近の拡大図である。図10は連結部49の断面図である。
図10図10は、連結部の断面図である。
図11図11は、アウターハウジングをロータ軸方向から見た図である。
図12図12は、アウターハウジングを下方から見た図である。
図13図13は、本実施形態の冷却順序を説明する第1の図である。
図14図14は、本実施形態の冷却順序を説明する第2の図である。
図15図15は、本実施形態の冷却順序を説明する第3の図である。
図16図16は、本実施形態の冷却順序を説明する第4の図である。
図17図17は、締結部が偶数の場合の締結部の配置を示す図である。
図18図18は、締結部が奇数の場合の締結部の配置を示す図である。
図19A図19Aは、締結部が偶数の場合の、位相差の第1例を示す図である。
図19B図19Bは、締結部が偶数の場合の、位相差の第2例を示す図である。
図19C図19Cは、締結部が偶数の場合の、位相差の第3例を示す図である。
図19D図19Dは、締結部が偶数の場合の、位相差の第4例を示す図である。
図19E図19Eは、締結部が偶数の場合の、位相差の第5例を示す図である。
図19F図19Fは、締結部が偶数の場合の、位相差の第6例を示す図である。
図20A図20Aは、締結部が奇数の場合の、位相差の第1例を示す図である。
図20B図20Bは、締結部が奇数の場合の、位相差の第2例を示す図である。
図20C図20Cは、締結部が奇数の場合の、位相差の第3例を示す図である。
図20D図20Dは、締結部が奇数の場合の、位相差の第4例を示す図である。
図20E図20Eは、締結部が奇数の場合の、位相差の第5例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0008】
[駆動ユニットの概略]
図1は、本実施形態に係る駆動ユニット100の外観図である。駆動ユニット100はシリーズハイブリッド車両を駆動するためのものであり、後述するように駆動モータ15、発電モータ17、インバータ13、減速機構18及び増速機構19が一体化されている。また、駆動モータ15及び発電モータ17は水冷式であり、駆動ユニット100は水冷式の冷却システムを備える。冷却システムは、ラジエータ1、ウォータポンプ2、外部冷却通路3~6及び内部冷却通路からなる。内部冷却通路は、インバータ13に一体形成されたインバータ冷却通路42と、駆動モータ15を冷却する駆動モータ冷却通路(図示せず)と、発電モータ17を冷却する発電モータ冷却通路(図示せず)と、からなり、これらは駆動ユニット100の筐体内で接続されている。これら内部冷却通路については後で詳述する。
【0009】
ラジエータ1で冷却された冷却液は、第1外部冷却通路3、ウォータポンプ2及び第2外部冷却通路4を介してインバータ冷却通路42に流入し、そこから駆動モータ冷却通路及び発電モータ冷却通路を通過して、第3外部冷却通路6を介してラジエータ1に戻る。このように、本実施形態の駆動ユニット100においては、インバータ13、駆動モータ15及び発電モータ17の冷却を、内部冷却通路を用いて行うので、外部冷却通路はラジエータ1から駆動ユニット100への経路(第1外部冷却通路3及び第2外部冷却通路4)と、駆動ユニット100からラジエータ1への経路(第3外部冷却通路6)の2つで済む。
【0010】
図2は、比較例としての駆動ユニット101を示す。比較例の駆動ユニット101は、インバータ13、駆動モータ15及び発電モータ17が一体化されている点は駆動ユニット100と同じであるが、これらを冷却する冷却通路が、外部冷却通路を介して接続されている。すなわち、図1の第1外部冷却通路3、第2外部冷却通路4及び第3外部冷却通路6の他に、インバータ用の冷却通路と駆動モータ用の冷却通路とを接続する外部冷却通路7及び駆動モータ用の冷却通路と発電モータ用の冷却通路とを接続する外部冷却通路8が必要となる。
【0011】
上記の通り、本実施形態の駆動ユニット100及び冷却システムは比較例の駆動ユニット101及び冷却システムに比べて、外部冷却通路の数が少ない。すなわち、本実施形態の駆動ユニット100及び冷却システムは、比較例の構成に比べてコンパクトな構成となり、車両に搭載する際のレイアウトの自由度が高い。
【0012】
図3は、本実施形態の駆動ユニット100の分解図である。
【0013】
駆動ユニット100の筐体は、アウターハウジング10と、アウターハウジング10の一方の端部に取り付けられるギヤカバー11と、アウターハウジング10の他方の端部n取り付けられるリヤカバー12とで構成される。
【0014】
アウターハウジング10は2つの筒状部が平行に並ぶ形状を有する。一方の筒状部には、駆動モータ15及びこれを収容する第1インナーハウジング14が収容され、他方の筒状部には発電モータ17及びこれを収容する第2インナーハウジング16が収容される。駆動モータ15は、インナーハウジング14の内部に固定されるステータ15Bと、リヤカバー12に固定されるロータ15Aとで構成される。発電モータ17も同様に、インナーハウジング16の内部に固定されるステータ17Bと、リヤカバー12に固定されるロータ17Aとで構成される。
【0015】
また、アウターハウジング10の上部には、インバータ13が載置される。ここでいう上部とは、駆動モータ15の回転軸と発電モータ17の回転軸とを含む平面より上方の部分である。なお、駆動ユニット100は、図4に示すように二つのモータ15、17の回転軸を含む平面が水平方向に対して傾いた状態で車載されることがあるが、本実施形態では、当該平面より鉛直方向で高い方を上方、低い方を下方という。
【0016】
ギヤカバー11には、駆動モータ15に連結される減速機構18と、発電モータ17に連結される増速機構19と、メカニカルポンプ20と、が収容される。
【0017】
リヤカバー12には、駆動モータ15の回転速度を検出するセンサ21と、発電モータ17の回転速度を検出するセンサ22と、これらを覆うセンサカバー23とが取り付けられる。
【0018】
また、アウターハウジング10には、後述する遮蔽版24が取り付けられる。
【0019】
[インナーハウジング]
次に、インナーハウジング14、16について説明する。なお、第1インナーハウジング14と第2インナーハウジング16は同じ構造なので、特に区別する必要がない場合はインナーハウジングIHSGと称する。
【0020】
図5は、インナーハウジングIHSGの外観図である。
【0021】
インナーハウジングIHSGの内周30には、各モータ15、17のステータが固定される。インナーハウジングIHSGの外周面31には、一端から他端までらせん状の溝32が形成されている。そして、インナーハウジングIHSGがアウターハウジング10に収容されると、溝32の上部開口部がアウターハウジング10の内周面により塞がれて、らせん状の冷却通路(以下、らせん冷却通路32と称する)が形成される。ただし、らせん冷却通路32の両端の上部開口部は、アウターハウジング10に収容されても塞がれず、らせん冷却通路32に冷却液を導入する導入口または冷却液を排出する排出口として機能する。本実施形態では、らせん冷却通路32のフランジ33と反対側の端部を第1開口部35、フランジ側の端部を第2開口部36と称する。インナーハウジングIHSGの一端から他端までらせん冷却通路32を設けるのは、インナーハウジングIHSGの内周30に接する各モータ15、17の外周の、軸方向の一端から他端までを冷却通路32で覆うことで冷却効果をより高めるためである。
【0022】
らせん冷却通路32は、第1開口部35と第2開口部36が、後述する図7に示す通り、ロータ軸方向から見たときに中心軸に対して所定の角度をなす位置になるよう形成される。らせん冷却通路32は上記の通り冷却効果の観点からインナーハウジングIHSGの一端から他端まで設けられているので、第1開口部35の位置が決まれば第2開口部36の位置も決まる。つまり、第1開口部35の位置と第2開口部36の位置をそれぞれ独立して設定することはできない。
【0023】
また、インナーハウジングIHSGの一端にはリヤカバー12にボルト等を用いて固定するための複数の締結部34を有するフランジ33が形成されている。リヤカバー12はアウターハウジング10に固定されるので、結果的に、インナーハウジングIHSGはリヤカバー12を介してアウターハウジング10に固定されることとなる。なお、インナーハウジングIHSGをアウターハウジング10に直接固定する構成にしても構わない。
【0024】
次に、第1インナーハウジング14及び第2インナーハウジング16の、アウターハウジング10へ収容された状態について説明する。図6は収容された状態における第1インナーハウジング14と第2インナーハウジング16の上面図である。図7図6の第1インナーハウジング14と第2インナーハウジング16をフランジ33側から見た図である。
【0025】
第1インナーハウジング14と第2インナーハウジング16は、それぞれの中心軸が平行に、かつそれぞれのフランジ33が隣り合うように並ぶ。また、第1インナーハウジング14と第2インナーハウジング16は、アウターハウジング10内にそれぞれのらせん冷却通路32が異なる位相となるように収容される。ここでいう位相とは、アウターハウジング10に対する取り付け角度のことをいう。つまり、例えば図7に示すように、第1インナーハウジング14の第1開口部35と第2開口部36とを結ぶ直線と、第2インナーハウジング16の第1開口部35と第2開口部36とを結ぶ直線とが、アウターハウジング10の上下方向(図中の矢印方向)に対して異なる角度となる。
【0026】
本実施形態では、図6に示す通り、各インナーハウジングIHSGは第1開口部35が隣り合うインナーハウジングIHSGに近く、第2開口部36が隣り合うインナーハウジングIHSGから遠くなる位相でアウターハウジング10に収容される。これにより、第1インナーハウジング14の第1開口部35から第2インナーハウジング16の第1開口部35までの距離L1が、第1インナーハウジング14の第2開口部36から第2インナーハウジング16の第2開口部36までの距離L2より短くなる。
【0027】
[冷却通路]
駆動ユニット100内の冷却通路について図8から図12を参照して説明する。
【0028】
図8は、駆動ユニット100を図7と同方向から見た概略図である。
【0029】
インバータ13は、インバータ回路を構成する第1パワーモジュール40及び第2パワーモジュール41と、これらを冷却するインバータ冷却通路42とを備える。インバータ冷却通路42は、ウォータポンプ2から導入された冷却液が第1パワーモジュール40を冷却し、次いで第2パワーモジュール41を冷却するよう構成される。
【0030】
インバータ13とアウターハウジング10との間には、気密性を確保するための液体シール47が介装される。なお、インバータ冷却通路42と後述するアウターハウジング導入通路43との接続部には水密性を確保するためのOリング48が配置されるが、これについては後述する。
【0031】
第2パワーモジュール41を通過した後のインバータ冷却通路42は、アウターハウジング10に設けられたアウターハウジング導入通路43に接続される。アウターハウジング導入通路43は第1インナーハウジング14の第2開口部36に連結される。すなわち、第1インナーハウジング14の第2開口部36は、冷却液導入口として機能する。一方、第1インナーハウジング14の第1開口部35は、冷却液排出口として機能する。
【0032】
第1インナーハウジング14の第1開口部35には、第1縦通路45A、横通路45B、第2縦通路45C及びカバー46で構成される連結水路45の第1縦通路45Aが連結される。連結通路45については後述する。
【0033】
連結通路45の第2縦通路45Cは、第2インナーハウジング16の第1開口部35に連結される。つまり、第2インナーハウジング16の第1開口部35は冷却液導入口として機能する。一方、第2インナーハウジング16の第2開口部36は冷却液排出口として機能する。第2インナーハウジング16の第2開口部36には、アウターハウジング排出通路44が連結される。
【0034】
次に、インバータ冷却通路42とアウターハウジング導入通路43との連結部49について図9図10を参照して説明する。
【0035】
図9は、アウターハウジング10の連結部49付近の拡大図である。図10は連結部49の断面図である。
【0036】
インバータ回路配置エリア52は液体シール配置面51で囲まれている。そしてアウターハウジング導入通路43はインバータ回路配置エリア52の外側に位置する。
【0037】
液体シール配置面51と連結部49との間にはトラップ溝50が設けられている。なお、図10に示す通り、インバータ13にもトラップ溝50と対向する位置に溝を設けてもよい。トラップ溝50を設けることにより、インバータ13をアウターハウジング10に締結することで押し潰された液体シール47が液体シール配置面51からはみ出したとしても、はみ出した液体シール47はトラップ溝50に収まる。したがって、連結部49のOリング48による水密性が、はみ出した液体シール47によって低下することを防止できる。
【0038】
次に、連結通路45について図11図12を参照して説明する。
【0039】
図11は、第1インナーハウジング14、駆動モータ15、第2インナーハウジング16及び発電モータ17を収容した状態のアウターハウジング10の、各モータ15、17のロータ軸方向から見た断面を模式的に示した図である。図12は、アウターハウジング10を下方から見た図である。
【0040】
前述した通り、アウターハウジング10は駆動モータ15を収容する筒部と、発電モータ17を収容する筒部とがつながった形状を有する。そして、2つの筒部に挟まれた谷部には、図12に示すように軸方向に所定の間隔をおいて複数のリブ53が形成されている。なお、図11に示すように、リブ53はアウターハウジング10の下面だけでなく、上面にも設けてもよい。
【0041】
複数のリブ53のうちの1つは、第1インナーハウジング14の第1開口部35及び第2インナーハウジング16の第1開口部35とロータ軸方向の位置が揃うよう設けられる。そして、このリブ53に上述した連結通路45が形成されている。
【0042】
第1縦通路45Aは、リブ53の下端面からアウターハウジング10の内部まで貫通する。第1縦通路45Aの、アウターハウジング10の内部側の端部は、第1インナーハウジング14の第1開口部35と対向する位置に開口する。
【0043】
第2縦通路45Cは、リブ53の下端面からアウターハウジング10の内部まで貫通する。第2縦通路45Cの、アウターハウジング10の内部側の端部は、第2インナーハウジング16の第1開口部35と対向する位置に開口する。
【0044】
横通路45Bは、第1縦通路45Aの開口部と第2縦通路45Cの開口部とを連通する、リブ53の下端面に設けられた溝である。この溝が下方からカバー46で塞がれることにより、第1縦通路45A、横通路45B及び第2縦通路45Cが、第1インナーハウジング14の第1開口部35と第2インナーハウジング16の第1開口部35とを連通する連結通路45となる。
【0045】
[冷却液の流れ]
本実施形態の駆動ユニット100における冷却液の流れについて図13図16を参照して説明する。
【0046】
図13は、駆動ユニット100の上面図である。図14は駆動ユニット100を駆動モータ15が収容される側、つまり駆動ユニット100を図13の紙面上方から見た図である。図15はリヤカバー12側から見た連結通路45付近の拡大図である。図16は駆動ユニット100を発電モータ17側から見た図である。
【0047】
ラジエータ1で冷却された冷却液は、図13に示す通り、インバータ冷却通路42に流入する。
【0048】
インバータ冷却通路42を通過しながら第1パワーモジュール40及び第2パワーモジュール41を冷却した冷却液は、図14に示す通り連結部49及びアウターハウジング導入通路43を介して第1インナーハウジング14のらせん冷却通路32に流入し、駆動モータ15を冷却する。
【0049】
駆動モータ15を冷却した冷却液は、図15に示す通り連結通路45を介して第2インナーハウジング16のらせん冷却通路32に流入し、図16に示す通り発電モータ17を冷却する。
【0050】
上記の通り、冷却液はインバータ13、駆動モータ15、発電モータ17の順番で冷却を行う。すなわち、本実施形態では、冷却液の流れる順番で見た場合に駆動モータ15が上流側モータで、発電モータ17が下流側モータということになる。
【0051】
[位相について]
位相の設定方法について図17から図20を参照して説明する。
【0052】
図17は、図8等と同様に6個の締結部34が周方向に等間隔で並ぶ場合について示している。
【0053】
駆動ユニット100をコンパクトな構成にするためには、第1インナーハウジング14と第2インナーハウジング16の軸間距離L3を短くする必要がある。換言すると、第1インナーハウジング14の外周と第2インナーハウジング16の外周とを接近させる必要がある。そのためには、図17に示すように、第1インナーハウジング14の6個の締結部34のうち、第2インナーハウジング16側の2つの締結部34と、第2インナーハウジング16の6個の締結部34のうち、第1インナーハウジング14側の2つの締結部34とが、それぞれ対向する位相にする必要がある。この条件を満たす位相差のパターンは、図19Aから図19Fに示す通りである。
【0054】
図19Aから図19Fは、第1インナーハウジング14と第2インナーハウジング16を同心状に重ねて、それぞれの基準となる締結部34と中心とを結ぶ基準線D1、D2により位相差を表した図である。図19A図17の状態、つまり位相差θがゼロの場合を示している。ここで、位相差θは360度を締結部34の数(6個)で除した値の倍数、つまり60度の倍数である。このようにすれば、いずれの位相差θにおいても、各締結部34の配置は図17と同じになる。
【0055】
図19Bから図19Fは、それぞれ位相差θが60度、120度、180度、240度、300度、360度の場合を示している。すなわち、締結部34が6個の場合、取り得る位相差θは60度×0、60度×1、60度×2・・・60度×6の6パターンである。締結部34が偶数の場合には、上記と同様の考え方を適用できる。具体的には、締結部34がa個で、360/a=bとした場合には、取り得る位相差θは、0×b、1×b、2×b、・・・a×bとなる。
【0056】
一方、締結部34が奇数個の場合も、駆動ユニット100をコンパクトな構成にするために、第1インナーハウジング14の外周と第2インナーハウジング16の外周とを接近させる必要があるのは、締結部34が偶数個の場合と同様である。例えば、締結部34が5個の場合は、図18に示す配置になる。図18において、第1インナーハウジング14と第2インナーハウジング16とには位相差がある。つまり、第1インナーハウジング14の基準線D3と第2インナーハウジング16の基準線D4とが平行になっておらず、位相差θは、360度÷5÷2=36度になっている。そして、締結部34が5個の場合に取り得る位相差θは、図20A図20Eに示す通りである。図20Aから図20Eは、図19Aから図19Fと同様に位相差θを示したものであり、図20A図18の状態を示している。図20Aから図20Eに示す位相差θは、それぞれ36度、108度、180度、252度、324度である。つまり、締結部34が奇数個の場合に取り得る位相差θは、締結部34がc個で、360/c=dとすると、0×d+d/2、1×d+d/2、2×d+d/2、・・・c×d+d/2となる。
【0057】
上述した取り得る位相差θの中から、使用する駆動ユニット100に応じていずれかの位相差θを採用する。
【0058】
[効果]
次に、上述した本実施形態の構成による効果について説明する。
【0059】
本実施形態に係る駆動ユニット100は、駆動モータ15(駆動用の第1電動モータ)と、発電モータ17(第2電動モータ)と、を含んで構成されるシリーズハイブリッド車両の駆動ユニットである。駆動モータ15のステータの外周に設けられた円筒形状の第1インナーハウジング14と、発電モータのステータの外周に設けられた円筒形状の第2インナーハウジング16は、それぞれの外周面にステータをらせん状に取り囲むように形成せれたらせん冷却通路32を備える。駆動モータ15と発電モータ17は、アウターハウジング10にそれぞれのロータ軸が平行になるように収容される。そして、駆動モータ15のらせん冷却通路32と、発電モータ17のらせん冷却通路32とが連結通路45を介して直列に連結され、かつ、連結通路45の一端が接続される上流側のらせん冷却通路32の第1開口部35(冷却液排出口)と、連結通路45の他端が接続される下流側のらせん冷却通路32の第1開口部35(冷却液導入口)とが、ロータ軸方向で同一方向側の端部に配置される。
【0060】
すなわち、上流側のらせん冷却通路32では第1開口部35が冷却液排出口となり、下流側の冷却通路32では第1開口部35が冷却液導入口となる。これにより、いずれのらせん冷却通路32においても第1開口部35を冷却液排出口、第2開口部36を冷却液導入口とする場合よりも、連結通路45の水路長を抑制できる。その結果、駆動ユニット100をコンパクトな構成にすることができる。
【0061】
本実施形態では、第1インナーハウジング14と第2インナーハウジング16は、アウターハウジング10内にそれぞれのらせん冷却通路32が異なる位相となるように収容される。すなわち、駆動モータ15を収容するインナーハウジング14と、発電モータ17を収容するインナーハウジング16とに、同じ部品を用いることができる。これにより、2種類のインナーハウジングIHSGを使用する場合に比べて、部品点数が削減されるので、駆動ユニット100の製造コストを抑制することができる。また、上記実施形態では駆動モータ15の径と発電モータ17の径が同一の場合について説明したが、これに限られるわけではない例えば、使用するモータを変更して駆動モータ15の径と発電モータ17の径が異なることになった場合には、2種類のインナーハウジングIHSGを使用することになる。ただし、この場合でも上流側のらせん冷却通路32のらせんのピッチと下流側のらせん冷却通路32のらせんのピッチとが一致していれば、流路を再設計する必要がない。なお、ここでいうらせんのピッチとは、インナーハウジングIHSGの谷から谷の間の軸方向距離のことをいう。
【0062】
本実施形態では、上流側のらせん冷却通路32の第1開口部35(冷却液排出口)と下流側のらせん冷却通路32の第1開口部35(冷却液導入口)との間の距離が、下流側のらせん冷却通路32の第2開口部36(冷却液排出口)と上流側のらせん冷却通路32の第2開口部36(冷却液導入口)との間の距離より短い。
【0063】
これにより、連結通路45の水路長をさらに抑制できる。
【0064】
本実施形態では、インバータ13がアウターハウジング10の上部に配置され、上流側のらせん冷却通路32の第1開口部35(冷却液排出口)が駆動モータ15(上流側の電動モータ)のロータ軸より下方に配置され、下流側のらせん冷却通路32の第1開口部35(冷却液導入口)が発電モータ17(下流側の電動モータ)のロータ軸より下方に配置される。すなわち、インバータ13は、連結通路45と2つのらせん冷却通路32との接続部より高い位置に配置される。これにより、仮に当該接続部に不具合が生じて漏水した場合でも、インバータ回路への浸水を回避できる。
【0065】
本実施形態では、インバータ13がアウターハウジング10の上部に配置され、図9及び図10に示す通り、インバータ13の気密用シールの外部にインバータ冷却通路42の排出口が設けられる。そして、インバータ冷却通路42の排出口と上流側のらせん冷却通路32の冷却液導入口とがアウターハウジング導入通路43を介して接続されている。これにより、仮にインバータ冷却通路42とアウターハウジング導入通路43との接続部に不具合が生じて漏水した場合でも、インバータ回路への浸水を回避できる。
【0066】
本実施形態では、上流側のらせん冷却通路32の第1開口部35(冷却液導入口)が、ロータ軸の軸方向から見た場合に、駆動モータ15(上流側の電動モータ)のロータ軸に対して発電モータ17(下流側の電動モータ)から遠い側に配置されている。換言すると、上流側のらせん冷却通路32の冷却液導入口をアウターハウジング10の第1インナーハウジング14側の筐体外縁に近い側に配置する。そうすることで、図8に示す通り、上流側のらせん冷却通路32の冷却液排出口は下流側のらせん冷却通路32の近くに位置することとなり、連結通路45の水路長を抑制することができる。
【0067】
本実施形態では、アウターハウジング10は、駆動モータ15(第1電動モータ)が収容される第1円筒部10Aと発電モータ17(第2電動モータ)が収容される第2円筒部10Bとが隣り合う形状を有し、第1円筒部10Aと第2円筒部10Bの間の下方側の谷部には第1円筒部10Aと第2円筒部10Bとをつなぐリブ53を少なくとも一つ有する。リブ53の一つは、リブ53の下端面から第1円筒部10Aの内部まで貫通する第1縦通路45A(第1貫通孔)と、リブの下端面から第2円筒部10Bの内部まで貫通する第2縦通路45C(第2貫通孔)と、リブ53の下端面に設けられた溝であって第1縦通路45Aと第2縦通路45Cとを接続する横通路(接続溝)45Bと、横通路45Bを塞ぐカバー46(蓋部材)と、により構成される連結通路45(水路)を有する。
【0068】
これにより、アウターハウジング10の剛性を確保しつつ、上流側のらせん冷却通路32と下流側のらせん冷却通路32とを簡素な構成で接続することができる。
【0069】
本実施形態では、第1インナーハウジング14及び第2インナーハウジング16は、これらの外周部に周方向に等間隔で設けられた複数の締結部34を介してアウターハウジング10に固定される。締結部34の数が偶数の場合には、第1インナーハウジング14と第2インナーハウジング16との位相差が、360度を各インナーハウジングIHSGの締結部34の数で除した角度の倍数になっており、締結部34の数が奇数の場合には、当該位相差が、360度を各インナーハウジングIHSGの締結部34の数で除した角度の倍数に、当該角度の半分の角度を加えた角度になっている。
【0070】
より具体的には、第1開口部35及び第2開口部36の位置に応じて、上述した角度の中から、連結通路45の水路長がより短くなるものが選択されている。
【0071】
なお、本実施形態ではカバー46は横通路45Bを塞ぐ機能のみを有する板状の部材であるが、駆動モータ15等がオイルと冷却水を併用する油水冷式の場合には、カバー46にオイルクーラとしての機能を持たせてもよい。例えば、カバー46の内部にオイル通路が形成され、横通路45Bを流れる冷却液とオイルとで熱交換をする構成とする。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図19F
図20A
図20B
図20C
図20D
図20E