(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-21
(45)【発行日】2023-06-29
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
H01H 47/00 20060101AFI20230622BHJP
H01H 47/22 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
H01H47/00 Z
H01H47/22 C
(21)【出願番号】P 2022534411
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2022007615
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】395023613
【氏名又は名称】株式会社システムデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100074169
【氏名又は名称】広瀬 文彦
(72)【発明者】
【氏名】飯田 光浩
(72)【発明者】
【氏名】福城 茂生
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0358722(US,A1)
【文献】中国実用新案第207381324(CN,U)
【文献】特開平07-326278(JP,A)
【文献】特開平09-205734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 45/00 - 47/36
50/00 - 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石(110)を有する電磁部(100)と、前記電磁石への通電に伴い可動接点(210)と固定接点(220)とを接触または離間する接点部(200)と、を備える電磁継電器(1)において、
前記電磁継電器(1)は、外部からの信号(S)を受信するとともに、該受信した信号を解析した上で、解析結果を基に電磁部(100)への通電の可否を判断する制御部(300)と、
前記制御部(300)に対して、前記電磁部(100)への電力または前記接点部(200)への電力の何れかを選択し、または切り替えて、電力を供給する電源切替部(400)と、
を備え、
前記制御部(300)は、外部装置(500)から信号を受信するための受信部(310)を備え、前記外部装置(500)からの通電許可信号を前記受信部(310)が受信・解析することにより、電磁部(100)への通電の可否を判断した上で、前記電磁部(100)に通電を行い、
電源切替部(400)は、電磁部(100)側の端子と、接点部(200)側の端子との両方に接続される構成からなり、前記制御部(300)の電源を確保するため、電磁部(100)側の端子間が非通電の時には、接点部(200)側の端子から電力を取得して制御部(300)に制御機能を発揮するための電力を供給し、電磁部(100)側の端子間が通電している時には、電磁部(100)側の端子から電力を取得して制御部(300)に制御機能を発揮するための電力を供給することを特徴とする電磁継電器。
【請求項2】
電磁石(110)を有する電磁部(100)と、前記電磁石への通電に伴い可動接点(210)と固定接点(220)とを接触または離間する接点部(200)と、を備える電磁継電器(1)において、
前記電磁継電器(1)は、外部からの信号(S)を受信するとともに、該受信した信号を解析した上で、解析結果を基に電磁部(100)への通電の可否を判断する制御部(300)と、
前記制御部(300)に対して、前記電磁部(100)への電力または前記接点部(200)への電力の何れかを選択し、または切り替えて、電力を供給する電源切替部(400)と、
を備え、
前記電磁部(100)は、セットコイル(120)と、リセットコイル(130)とからなるラッチング構造を備え、前記セットコイル(120)への通電により、前記電磁部(100)の通電を確保して接点部(200)を接触させ、前記リセットコイル(130)への通電により、電磁部(100)の通電を解除し、接点部(200)を離間させる事を特徴とする電磁継電器。
【請求項3】
電磁石(110)を有する電磁部(100)と、前記電磁石への通電に伴い可動接点(210)と固定接点(220)とを接触または離間する接点部(200)と、を備える電磁継電器(1)において、
前記電磁継電器(1)は、外部からの信号(S)を受信するとともに、該受信した信号を解析した上で、解析結果を基に電磁部(100)への通電の可否を判断する制御部(300)と、
前記制御部(300)に対して、前記電磁部(100)への電力または前記接点部(200)への電力の何れかを選択し、または切り替えて、電力を供給する電源切替部(400)と、
を備え、
前記電磁部(100)は、極性を反転させることにより、前記電磁部(100)の通電/非通電を行って接点部(200)の接触/離間を制御する制御するラッチング構造を備える事を特徴とする電磁継電器。
【請求項4】
前記電磁部(100)と前記接点部(200)とは、電気的に絶縁(アイソレーション)されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関し、特に、外部からのリレー通電許可指示を受けることにより通電することを可能とするセキュリティ機能を備えた電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な工夫が施された電磁継電器が数多く使用されており、機能が異なる多種多様な構造を備えた電磁継電器が開発されて使用されている。電磁継電器は、機器の一部の端子に対する通電をトリガーとして、他の端子側の通電を制御する装置であり、例えば、大電流を流す際の安全性を確保したり、操作の確実性を確保するために用いられる装置である。
【0003】
電磁継電器に係る技術として、例えば、特開2017-79107号公報が存在する。ここでは、異常時に接点装置を開閉することのできる電磁継電器として、可動接点および固定接点を備えた接点装置と、コイルと可動接点が設けられた可動子を備えた電磁石装置と、電力供給部と、スイッチ部と、制御部とを備えた電磁継電器であって、電力供給部が、主電源からの電力供給により充電されるとともに、スイッチ部が、電力供給部からコイルへの電力供給路に挿入されて、電力供給路を開閉する構造が開示されている。
【0004】
この技術によれば、確かに異常時であっても、スイッチ部による動作により電力供給部からの電力を用いてスイッチの開閉を行うことが可能になるが、不正に接点装置を開閉するような異常事態には全く対応することが出来ず、セキュリティの観点から十分な技術とは言えないものであった。
【0005】
継電器の異常時対応(セキュリティ機能)は、通電を遮断して不正利用を根本的に排除することを可能とするための機能であり、例えば、自動車の施錠・解錠、エンジンの始動をはじめとする継電器を利用する機器を、不正な操作から保護する防犯上の観点からも有効な機能であると考えられる。そこで、外部からのリレー通電許可指示を受けることによりはじめて通電することが可能となるセキュリティ機能を備えた電磁継電器の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題を解決するために、電磁継電器であって、特に、リモートキーなどによる外部からのリレー通電許可指示を受けることにより通電することを可能とするセキュリティ機能を備えた電磁継電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明に係る電磁継電器は、電磁石を有する電磁部と、前記電磁石への通電に伴い可動接点と固定接点とを接触または離間する接点部と、を備える電磁継電器であって、前記電磁継電器は、外部からの信号を受信するとともに、該受信した信号を解析した上で、解析結果を基に電磁部への通電の可否を判断する制御部と、前記制御部に対して、前記電磁部への電力または前記接点部への電力の何れかを選択し、または切り替えて、電力を供給する電源切替部と、を備え、前記制御部は、外部装置から信号を受信するための受信部を備え、前記外部装置からの通電許可信号を前記受信部が受信・解析することにより、電磁部への通電の可否を判断した上で、前記電磁部に通電を行い、電源切替部は、電磁部側の端子と、接点部側の端子との両方に接続される構成からなり、前記制御部の電源を確保するため、電磁部側の端子間が非通電の時には、接点部側の端子から電力を取得して制御部に制御機能を発揮するための電力を供給し、電磁部側の端子間が通電している時には、電磁部側の端子から電力を取得して制御部に制御機能を発揮するための電力を供給する構成である。
【0010】
また、本発明に係る電磁継電器は、電磁石を有する電磁部と、前記電磁石への通電に伴い可動接点と固定接点とを接触または離間する接点部と、を備える電磁継電器であって、前記電磁継電器は、外部からの信号を受信するとともに、該受信した信号を解析した上で、解析結果を基に電磁部への通電の可否を判断する制御部と、前記制御部に対して、前記電磁部への電力または前記接点部への電力の何れかを選択し、または切り替えて、電力を供給する電源切替部と、を備え、前記電磁部は、セットコイルと、リセットコイルとからなるラッチング構造を備え、前記セットコイルへの通電により、前記電磁部の通電を確保して接点部を接触させ、前記リセットコイルへの通電により、電磁部の通電を解除し、接点部を離間させる構成である。
【0011】
また、本発明に係る電磁継電器は、電磁石を有する電磁部と、前記電磁石への通電に伴い可動接点と固定接点とを接触または離間する接点部と、を備える電磁継電器であって、前記電磁継電器は、外部からの信号を受信するとともに、該受信した信号を解析した上で、解析結果を基に電磁部への通電の可否を判断する制御部と、前記制御部に対して、前記電磁部への電力または前記接点部への電力の何れかを選択し、または切り替えて、電力を供給する電源切替部と、を備え、前記電磁部は、極性を反転させることにより、前記電磁部の通電/非通電を行って接点部の接触/離間を制御する制御するラッチング構造を備える構成でもある。更に、前記電磁部と前記接点部とは、電気的に絶縁(アイソレーション)されている構成である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記詳述した通りの構成であるので、以下のような効果がある。
1.電磁継電器に制御部を設けたため、電磁部に対する通電の可否を制御してセキュリティを確保することが可能となる。また、電源切替部を設けたため、制御部の電源を電磁部側と接点部側との間で切り替えることが可能となり、確実に制御部の電源を確保することが可能となる。
2.制御部に通信部を設けたため、外部装置からの通電許可信号を受信した上で制御部による通電制御を行うことが可能となり、認証された外部装置からの信号がないと通電が出来ないようにセキュリティを確保することが可能となる。
【0013】
3.電磁部に、セットコイルと、リセットコイルを設ける構成としたため、ラッチングを行うことが可能となり、常に電磁部への通電を行う必要がなくなる。
4.電磁部の極性を反転させることで接点部への接触/離間を制御する構成としたため、ラッチングを行うことが可能となり、常に電磁部への通電を行う必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る電磁継電器を、図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る電磁継電器の概念図であり、
図2は、電源切替動作の仕組みを示す回路図である。
図3は、ラッチング構造を用いた電磁継電器の回路図である。
【0015】
本発明の電磁継電器1は、
図1に示すように、電磁部100と、接点部200と、制御部300と、電源切替部400と、外部装置500と、からなり、外部からの信号Sを基に、電磁部100への通電を制御することで、接点部200側の通電/非通電を切り替える事を可能とした、セキュリティ機能を有する電磁継電器である。
【0016】
電磁部100は、接点部200側の通電/非通電を切り替えるための部材であり、
図1に示すように、本実施例では、コイルを有する電磁石110を備える。電磁部100側の端子(端子Aおよび端子B)間の通電により、端子間に設けられた電磁石110が磁力を発生する。
【0017】
接点部200は、電子機器への電力の供給を行うための部材であり、本実施例では、
図1に示すように、可動接点210と固定接点220とを備える。電磁部100の電磁石110への通電により発生した磁力によって、可動接点210が固定接点220に接する事により、接点部200側の端子(端子Cおよび端子D)間が通電し、電子機器に電力が供給される。また、電磁部100への通電が遮断された際に、可動接点210と固定接点220との接触が解除され、端子C-D間の通電が遮断され、電子機器への電力の供給が停止する構成である。
【0018】
電磁継電器1は、
図1に示すように、制御部300を備える構成である。制御部300は、電磁部100側の端子(端子Aおよび端子B)間の通電を制御するための部材である。本実施例では、制御部300が外部から信号Sを受信した上で、該信号Sを解析する。制御部300は、受信した信号Sが認証可能な信号であるか否かを解析した上で、認証可能である場合に、電磁部100側の端子(端子Aおよび端子B)間の通電を開始する。これにより、可動接点210が固定接点220に接し、接点部200側の端子(端子Cおよび端子D)間が通電し、電子機器を起動することが可能となる。すなわち、電磁継電器1を備える電子機器は、信号Sの認証がないと、起動することが出来ない構成であり、これによりセキュリティを保つことが可能となる。
【0019】
電磁継電器1は、更に、
図1に示すように、電源切替部400を備える構成である。電源切替部400は、制御部300の電源を確保するための部材であり、本実施例では、制御部300に対する電力として、電磁部100への電力(電磁部100側の端子間に付与される電力)、または、接点部200への電力(接点部200側の端子間に付与される電力)の何れかを選択し、または切り替えて、制御部300の電源として電力を供給する構成である。
【0020】
本実施例では、
図1および
図2に示すように、電源切替部400は、電磁部100側の端子(端子Aおよび端子B)、および、接点部200側の端子(端子Cおよび端子D)の両方に接続されている。電磁部100側の端子(端子Aおよび端子B)間が非通電の時には、電源切替部400は、接点部200側の端子から電力を取得して制御部300に制御機能を発揮するための電力を供給する。この電力は、微弱であるため、電磁継電器1を用いる電子機器には大きな影響を与えない。
【0021】
電磁部100側の端子(端子Aおよび端子B)間が通電している場合には、接点部200側の端子から電力を取得することが出来なくなる。そこで、電源切替部400は、電磁部100側の端子から電力を取得することで、制御部300に制御機能を発揮するための電力を供給する。
【0022】
以上の構成とすることにより、制御部300の電源を電磁部100側と接点部200側との間で選択し、或いは、切り替えることが可能となり、確実に制御部300の電源を確保することが可能となった。
【0023】
制御部300は、
図1に示すように、本実施例では、受信部310を備える構成である。受信部310は、スマートフォンやスマートキーなどからなる外部装置500が発する信号を受信するための部材である。外部装置500からの通電許可信号を、受信部310が受信・解析することにより、電磁部100への通電の可否を判断する。外部装置500からの通電許可信号が認証されると、電磁部100に通電を行うよう制御部300が制御を行う構成である。
【0024】
本実施例では、制御部300と外部装置500との通信は、Bluetooth(登録商標)暗号化通信を用いており、ペアリングによって、制御部300と外部装置500との認証・通信を行う構成であるが、この構成に限定されることはなく、Wi-Fiなどの他の通信規格を利用することはもちろん可能である。
【0025】
上記構成とすることにより、例えば、自動車のキーの解錠・施錠、エンジン始動の際に、認証されたスマートキーまたは認証されたスマートフォンを保有していないと、自動車と通信ができないため、自動車内の通電が開始されず、自動車を全く動かすことが出来ない構成とすることが可能となり、自動車の盗難回避など、セキュリティの確保が容易に可能となる。なお、制御部300が必要とする電力は僅かであるため、バッテリーの消耗についても、大きく心配する必要はないこととなる。
【0026】
また、外部装置500としてのスマートキーなどから電磁継電器1を常時監視し、必要に応じてスマートフォンなどからのスマートキーに対して、電磁継電器1に対する通電許可信号を発するよう指示し、電磁継電器1が動作できるようにする構成とすることも可能である。更に、外部装置500としてのスマートフォンから、電磁継電器1に対して、直接電磁継電器1に対する通電許可信号を発するよう指示し、電磁継電器1が動作できるようにする構成とすることも可能である。何れの場合においても、強固なセキュリティが実現可能となり、認証された外部装置500からの信号がないと通電が出来ないセキュリティを確保することが可能となった。
【0027】
本発明に係る電磁継電器1は、上記自動車に用いるほか、工作機械、家電、建物の施錠・解錠など、あらゆる機器に用いることが可能となり、既存の電磁継電器と置き換えるだけで、容易にセキュリティ機能を追加することが可能となった。
【0028】
電磁部100は、
図3に示すように、本実施例では、セットコイル120と、リセットコイル130を用いたラッチング構造を備える構成とすることが可能である。セットコイル120への通電により、電磁部100の通電を確保して接点部200を接触させ、リセットコイル130への通電により、電磁部100の通電を解除し、接点部200を離間させる構成とすることが可能となる。
【0029】
この構成の場合、本実施例では、電磁継電器1の駆動電源は、接点部200側から取得する構成であり、セットコイル120およびリセットコイル130への通電制御は、制御部300が行う。
【0030】
本実施例では、電磁部100側に通電することで接点部200側がショートされ、接続された各部材が動作している場合には、接点部200側から駆動電源を取得することができない。この場合、
図3に示すように、ラッチング構造を利用して、接点部200側から駆動電源が取得できない場合でも、電源を取得して制御部300による制御など、電磁継電器1の動作電源を確保することが可能となる。
【0031】
また、他の実施例として、電磁部100は、極性を反転させることにより、電磁部100の通電/非通電を行って接点部200への接触/離間を制御するラッチング構造を備える構成とすることも可能である。以上の構成とすることにより、電磁部100側に常に電力を供給する必要がなくなり、電磁部100側の電力消失による電子機器の不正な電源喪失や、電磁部100側の電力使用による電力不足などを回避することが可能となり、特に自動車に用いるうえで、利便性の高い電磁継電器1を提供することが可能となった。
【0032】
なお、ラッチング構造を用いることにより、電源喪失によって接点部200を離間させることが不能となった場合には、制御部300の動作によって、接点部200の離間等の制御が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【符号の説明】
【0034】
100 電磁部
110 電磁石
120 セットコイル
130 リセットコイル
200 接点部
210 可動接点
220 固定接点
300 制御部
310 受信部
400 電源切替部
500 外部装置
S 信号
【要約】
【課題】
リモートキーなどによる外部からのリレー通電許可指示を受けることにより通電することを可能とするセキュリティ機能を備えた電磁継電器を提供する。
【解決手段】
電磁石を有する電磁部と、前記電磁石への通電に伴い可動接点と固定接点とを接触または離間する接点部と、を備える電磁継電器であって、前記電磁継電器は、外部からの信号を受信するとともに、該受信した信号を解析した上で、解析結果を基に電磁部への通電の可否を判断する制御部と、前記制御部に対して、前記電磁部への電力または前記接点部への電力の何れかを選択し、または切り替えて、電力を供給する電源切替部と、を備えた構成である。
【選択図】
図1