(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】車両のステップ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 3/02 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
B60R3/02
(21)【出願番号】P 2019196862
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591038587
【氏名又は名称】株式会社アンセイ
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼増 信哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聡
(72)【発明者】
【氏名】中田 吉紀
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0355137(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0294196(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0035568(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0039346(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0077697(US,A1)
【文献】米国特許第10384614(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降用ステップと、
車体に固定された車体固定部材と、
一端部に前記乗降用ステップが支持され車幅方向に延びるステップ支持部材と、
一端部が前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第1リンクアームと、
一端部が前記第1リンクアームと前記車幅方向に離間して前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第2リンクアームと、
前記第1リンクアームを回転駆動するアクチュエータと、を有し、
前記アクチュエータにより前記第1リンクアームを回転駆動することで、前記乗降用ステップを前記車体より外方に位置する展開位置と前記車体の下部に位置する格納位置との間で前記車幅方向に移動させる車両のステップ装置であって、
前記第1リンクアームに備えられ、
弾性体によって形成されており、前記乗降用ステップの格納位置において前記ステップ支持部材の上方への移動を規制する一方、前記乗降用ステップの展開位置において前記乗降用ステップの下方への移動を規制する第1のストッパ
と、
前記ステップ支持部材と前記車体固定部材または前記車体との間に、前記ステップ支持部材の上方への移動を規制する第2のストッパと、を備え、
前記第2のストッパは、前記第1のストッパが前記第2リンクアームに当接した後に、更に前記ステップ支持部材が上方に所定距離以上移動した際に、前記第2リンクアームの上方への移動を規制することを特徴とする車両のステップ装置。
【請求項2】
前記第1のストッパは、前記乗降用ステップの格納位置において前記第2リンクアームに当接し、前記第1リンクアームと前記第2リンクアームとが互いに近づく方向に移動することを規制することで、前記ステップ支持部材の上方への移動を規制することを特徴とする請求項1に記載の車両のステップ装置。
【請求項3】
前記乗降用ステップの格納位置において、前記ステップ支持部材の最下端が、前記車体固定部材、前記第1リンクアーム、前記第2リンクアーム及び前記乗降用ステップより下方に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両のステップ装置。
【請求項4】
前記乗降用ステップの格納位置において、前記第1のストッパと前記第2のストッパは車幅方向に互いに離間して配置されていることを特徴とする
請求項1に記載の車両のステップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に備えられたステップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フロア位置の高い自動車等の車両において、乗員の乗降性を向上させるためにステップ装置が備えられたものがある。例えば、特許文献1には、車両のサイドドアの下部に備えられた可動式のサイドステップ装置が開示されている。特許文献1に記載されたサイドステップ装置は、車体の下部に平行リンクを介して乗降用ステップ(サイドステップ)が連結されており、車体に対して縦方向(上下方向及び車幅方向)に乗降用ステップが移動可能な構造になっている。当該サイドステップ装置は、アクチュエータを作動させることで、車体下部に格納される格納位置と、車体より側方に突出した展開位置との間を、乗降用ステップが移動可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のように車体の下部に乗降用ステップを格納する車両においては、乗降用ステップを格納位置にして車両を走行し、例えば車両が段差等を乗り越えた際に、乗降用ステップが段差等に干渉して突き上げ荷重を受ける可能性がある。
一方、展開位置の乗降用ステップに乗員が搭乗した際に乗降用ステップが移動しないように、この下向きの荷重を支持する必要がある。
【0005】
更に、特許文献1では、乗降用ステップが車体に対して縦方向に移動可能であって、乗降用ステップが上下方向に受けた荷重をアクチュエータで支持する構造である。したがって、格納位置での突き上げ荷重及び展開位置での下向きの荷重をアクチュエータが受けることから、アクチュエータを耐荷重の高い仕様にする必要があり、アクチュエータの大型化、延いてはステップ装置の大型化及び重量増加を招くといった問題点がある。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、簡単な構造で、格納位置と展開位置の両方において、アクチュエータが受ける荷重を抑制する縦リンク式の車両のステップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の車両のステップ装置は、乗降用ステップと、車体に固定された車体固定部材と、一端部に前記乗降用ステップが支持され車幅方向に延びるステップ支持部材と、一端部が前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第1リンクアームと、一端部が前記第1リンクアームと前記車幅方向に離間して前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第2リンクアームと、前記第1リンクアームを回転駆動するアクチュエータと、を有し、前記アクチュエータにより前記第1リンクアームを回転駆動することで、前記乗降用ステップを前記車体より外方に位置する展開位置と前記車体の下部に位置する格納位置との間で前記車幅方向に移動させる車両のステップ装置であって、前記第1リンクアームに備えられ、弾性体によって形成されており、前記乗降用ステップの格納位置において前記ステップ支持部材の上方への移動を規制する一方、前記乗降用ステップの展開位置において前記乗降用ステップの下方への移動を規制する第1のストッパと、前記ステップ支持部材と前記車体固定部材または前記車体との間に、前記ステップ支持部材の上方への移動を規制する第2のストッパと、を備え、前記第2のストッパは、前記第1のストッパが前記第2リンクアームに当接した後に、更に前記ステップ支持部材が上方に所定距離以上移動した際に、前記第2リンクアームの上方への移動を規制することを特徴とする。
【0008】
これにより、第1のストッパにより乗降用ステップの格納位置においてステップ支持部材の上方への移動が規制されるので、例えば車両走行中において、ステップ支持部材に段差等が衝突して突き上げ荷重を受けた際に、第1のストッパによって荷重を受けることができる。
また、第1のストッパにより、乗降用ステップの展開位置において乗降用ステップの下方の移動が規制されるので、例えば展開位置の乗降用ステップに搭乗して乗降用ステップが受けた荷重を第1のストッパが受けることができる。
また、第1のストッパが弾性体によって形成されているので、乗降用ステップの格納位置においてステップ支持部材に上向きに突き上げ荷重を受けた場合に、第1のストッパによってステップ支持部材を弾性支持することができ、突き上げ荷重を抑えて車体への衝撃を緩和することができる。
また、乗降用ステップの格納位置においてステップ支持部材に突き上げ荷重を受けた際に、比較的小さな突き上げ荷重は弾性体の第1のストッパで吸収し、第1のストッパで吸収しきれない突き上げ荷重を第2のストッパで受けることができる。
【0009】
好ましくは、前記第1のストッパは、前記乗降用ステップの格納位置において前記第2リンクアームに当接し、前記第1リンクアームと前記第2リンクアームとが互いに近づく方向に移動することを規制することで、前記ステップ支持部材の上方への移動を規制するとよい。
これにより、格納位置においてステップ支持部材に受けた上向きの荷重によって第1リンクアームに作用する回転荷重を第1リンクアームと第2リンクアームとで分散して受け、第1リンクアームからアクチュエータに作用する荷重を低減させることができる。
【0010】
好ましくは、前記乗降用ステップの格納位置において、前記ステップ支持部材の最下端が、前記車体固定部材、前記第1リンクアーム、前記第2リンクアーム及び前記乗降用ステップより下方に位置するとよい。
これにより、乗降用ステップの格納位置において車両走行中に、例えば段差を乗り越えた際に段差が車体固定部材、第1リンクアーム、第2リンクアーム及び乗降用ステップに接触する前に、ステップ支持部材に接触する。したがって、ステップ支持部材に対する段差等の接触による衝撃を第1のストッパによって受けて、車体が直接に衝撃を受けることを回避することが可能となる。
【0012】
好ましくは、乗降用ステップの格納位置において、前記第1のストッパと前記第2のス
トッパは車幅方向に互いに離間して配置されていることを特徴とする。
【0013】
これにより、乗降用ステップの格納位置においてステップ支持部材に対して突き上げ荷重を受ける車幅方向位置や方向が異なる場合でも、第1のストッパ及び第2のストッパによってステップ支持部材を十分に支持することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両のステップ装置は、第1のストッパによって、乗降用ステップの格納位置においてステップ支持部材が受けた突き上げ荷重を受けることができるとともに、乗降用ステップの展開位置において乗降用ステップへの搭乗時に乗降用ステップの下方の移動が規制される。したがって、第1のストッパによって、乗降用ステップの格納位置及び展開位置の両方において、乗降用ステップあるいはステップ支持部材に対する荷重を受ける機能を兼用することができ、ステップ装置を簡単な構造でコンパクトに構成することができる。更に、第2のストッパによって、第1のストッパで吸収しきれない突き上げ荷重を受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態のステップ装置を備えた車両の外形図である。
【
図2】格納状態におけるリヤリンク機構の概略構成図である。
【
図3】展開状態におけるリヤリンク機構の概略構成図である。
【
図4】ステップ装置におけるステッププレートの移動経路を示す説明図である。
【
図5】展開状態におけるリヤリンク機構の詳細構成図である。
【
図6】格納状態におけるリヤリンク機構の詳細構成図である。
【
図7】格納状態におけるリヤリンク機構の縦断面図である。
【
図8】格納状態におけるリヤリンク機構の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した車両のステップ装置の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態のステップ装置1を備えた車両2の外形図である。なお、
図1では、車両2の左側(助手席側)のフロントドア及びリヤドアの図示を省略しており、ステップ装置1は展開状態である。
図2は、格納状態におけるリヤリンク機構5の概略構成図である。
図3は、展開状態におけるリヤリンク機構5の概略構成図である。
図4は、ステップ装置1におけるステッププレート3(乗降用ステップ)の作動経路を示す説明図である。なお、
図2~4は、リヤリンク機構5及びその周辺部を車両後方から視た図である。
【0017】
図1に示すように、本発明の一実施形態のステップ装置1は、例えば1BOX型の車両2の助手席側の下部に備えられた可動式のステップ装置である。
ステップ装置1は、ステッププレート3と、ステッププレート3を縦方向(車幅方向及び上下方向)に移動可能に支持する2個のリンク機構4、5を備えている。
ステッププレート3は、車両2の助手席側のフロントドアの開口部6及びスライド式のリヤドアの開口部7の下方を車両前後方向に延び、乗員の足を載せることが可能な車幅方向長さに設定されている。
【0018】
ステッププレート3は、2個のリンク機構4、5を介して、車体の下部、詳しくは車両2の助手席側のサイドシル8の下部に支持されている。2個のリンク機構4、5は、車両前後方向に互いに間隔をおいて配置されている。
ステップ装置1は、ステッププレート3が、車両2の下部に格納される格納位置と、サイドシル8より車幅方向外側に突出した展開位置との間で、車幅方向に移動可能に構成されている。
【0019】
2個のリンク機構4、5のうち、車両後方側のリヤリンク機構5は、リンク(後述するドライブリンク12)を駆動させる駆動モータ10(アクチュエータ)を備えている。車両前方側のフロントリンク機構4は、駆動モータを備えておらず、ステッププレート3の移動に追従して作動する。
駆動モータ10は、車両2の助手席側のフロントドア及びリヤドアの開閉に伴って自動的に作動するよう制御される。例えば、フロントドア及びリヤドアが閉状態では、ステッププレート3が格納位置に位置し、フロントドア及びリヤドアの少なく一方が開操作された場合に、ステッププレート3が展開位置に移動するように駆動モータ10が作動制御される。
【0020】
以下、駆動モータ10を備えたリヤリンク機構5について説明するが、フロントリンク機構4はリヤリンク機構5と駆動モータ10が備えられていない点が異なり、リンク機構4、5における各リンクの長さ、車両2における車幅方向位置及び上下位置等については、同一の構成になっている。
図2、3に示すように、リヤリンク機構5は、リンクブラケット11(車体固定部材)、ドライブリンク12(第1リンクアーム)、ドリブンリンク13(第2リンクアーム)、及びリンクアーム14(ステップ支持部材)を備えている。
【0021】
リンクブラケット11は、車両前後方向に間隔をおいて配置され車幅方向及び上下方向に延びる2枚の厚板状の縦板部材15を有し、下方が開口した箱型に形成されている。リンクブラケット11は、車体20の下部に前後左右4か所でボルトによって固定されている。
リンクアーム14は、車幅方向に延びるように配置されたアーム状の部材であり、車両前後方向に間隔をおいて配置された2枚の厚板状の縦板部材16を有し、当該縦板部材16が車幅方向外側の部位等で連結されて構成されている。リンクアーム14の車幅方向外側となる端部には、ステッププレート3が固定されている。リンクブラケット11とリンクアーム14とは、同一の車両前後位置に配置されている。詳しくは、リンクブラケット11の前側の縦板部材15とリンクアーム14の前側の縦板部材16、リンクブラケット11の後側の縦板部材15とリンクアーム14の後側の縦板部材16は、夫々同一の車両前後位置に配置されている。
【0022】
ドライブリンク12及びドリブンリンク13は、断面が箱型のアーム状の部材であって、夫々、一端がリンクブラケット11に他端がリンクアーム14に、車両前後方向に軸線が延びるように配置されたリンクピン21、22、23、24によって回動可能に支持されている。したがって、ドライブリンク12及びドリブンリンク13は、車体20に対して車幅方向に揺動可能に配置されている。
【0023】
ドライブリンク12は、ドリブンリンク13の車幅方向内側(車両右側)に配置されている。また、ドライブリンク12はドリブンリンク13よりも短く形成されている。
リンクブラケット11とドライブリンク12とを支持する第1リンクピン21は、駆動モータ10の駆動軸と一体に構成されている。駆動モータ10はリンクブラケット11に固定されている。
【0024】
リンクブラケット11とドリブンリンク13とを支持する第2リンクピン22は、第1リンクピン21に対して車幅方向外側に離間して配置されるとともに、第1リンクピン21よりも下方にオフセットして配置されている。
一方、車幅方向に延びるリンクアーム14において、リンクアーム14とドライブリンク12とを支持する第3リンクピン23は、リンクアーム14の車幅方向内側端部に配置されている。リンクアーム14とドリブンリンク13とを支持する第4リンクピン24は、リンクアーム14の車幅方向内側端部近傍に配置されるとともに、第3リンクピン23よりも車幅方向外側かつ下方に離間して配置されている。
【0025】
図2に示すように、ステッププレート3が格納位置に位置する格納状態では、ドライブリンク12及びドリブンリンク13は車幅方向内側に回転移動し、第3リンクピン23及び第4リンクピン24が、第1リンクピン21及び第2リンクピン22よりも車幅方向内側に位置する。
図3に示すように、ステッププレート3が展開位置に位置する展開状態では、ドライブリンク12及びドリブンリンク13は車幅方向外側に回転移動し、第3リンクピン23及び第4リンクピン24が、第1リンクピン21及び第2リンクピン22よりも車幅方向外側に位置する。
【0026】
図4に示すように、ステッププレート3の展開位置では、ステッププレート3の上面が略水平(車体20の水平面と平行)となっている。一方、ステッププレート3の格納位置では、ステッププレート3は展開位置よりも車幅方向内側に位置し、かつステッププレート3の上面が展開位置よりもわずかに上方に位置するとともに車幅方向外側に向けて下方にわずかに傾斜している。
【0027】
駆動モータ10を駆動して、ドライブリンク12を回転させることで、ステッププレート3が展開位置と格納位置との間を移動する。ステッププレート3が格納位置から展開位置に移動すると、ステッププレート3の最外側上端部の位置は、
図4中の2点鎖線Tlsで示すように、わずかに下方に移動しながら車幅方向外側に移動する。
図5は、展開状態におけるリヤリンク機構5の詳細な構成図である。なお、
図5は、
図3におけるリヤリンク機構5の拡大図である。
【0028】
図5に示すように、ドライブリンク12には、展開位置においてドライブリンク12の上方への回転を規制する弾性ストッパ30(第1のストッパ)が備えられている。
弾性ストッパ30は、硬質ゴム等の弾性体で形成され、第1リンクピン21と第3リンクピン23との間に、ドリブンリンク13側に向けて配置されている。
一方、ドリブンリンク13には、第2リンクピン22と第4リンクピン24との間に、展開位置において弾性ストッパ30が当接する受け部31が備えられている。
【0029】
図6は、格納状態におけるリヤリンク機構5の詳細構成図である。なお、
図6は、
図2に示すリヤリンク機構5の拡大図である。
図7、8は、格納状態におけるリヤリンク機構5の縦断面図である。
図7は、第2リンクピン22の軸線を含む、
図6に記載されたA-A部の断面図である。
図8は、第4リンクピン24近傍の、
図6に記載されたB-B部の断面図である。
【0030】
図6に示すように、ステッププレート3が格納位置に位置する格納状態では、ドライブリンク12及びドリブンリンク13が車幅方向内側(
図6において左回り)に回転移動することで、ステッププレート3は車幅方向内側かつ上方に移動する。
ステッププレート3の格納位置において、リンクアーム14の縦板部材16の上端面と、リンクブラケット11の縦板部材15の下端面とが略一致するように、リンクアーム14及びリンクブラケット11の形状が設定されている。
【0031】
また、ドリブンリンク13には、ステッププレート3の格納位置において上方を向き弾性ストッパ30が当接する受け部32が備えられている。
ステッププレート3を格納位置に位置すべく、駆動モータ10によってドライブリンク12を回転駆動した際に、リンクアーム14の縦板部材16の上端面とリンクブラケット11の縦板部材15の下端面とが当接する前に、受け部32と弾性ストッパ30とが当接するように設定されている。
【0032】
また、リンクアーム14及びリンクブラケット11には、格納位置においてリンクアーム14が上方に突き上げ荷重を受けて、受け部31と弾性ストッパ30とが当接してから弾性ストッパ30の弾性に抗してリンクアーム14が上方に所定距離移動した後に、互いに当接するストッパ34(第2のストッパ)及び受け部35を備えている。例えばストッパ34はリンクブラケット11の縦板部材15の下端部に設けられ、受け部35はリンクアーム14の縦板部材16の上端部に設けられている。
【0033】
更に、リンクアーム14において、受け部32と受け部35とは、車幅方向に離間して配置されている。即ちステッププレート3の格納位置において、弾性ストッパ30とストッパ34とは車幅方向に互いに離間して配置されている。
図9は、駆動モータ10の制御系のブロック図である。
図9に示すように、駆動モータ10には、当該駆動モータ10の駆動軸の回転開度を検出する回転角センサ50が備えられている。回転角センサ50は、少なくとも、ステッププレート3の格納位置及び展開位置での駆動モータ10の駆動軸の回転角を夫々検出する機能を有していればよい。駆動モータ10は、車両に搭載したステップ作動コントロールユニット51によって作動制御される。
【0034】
ステップ作動コントロールユニット51は、駆動モータ10の作動制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)及びタイマ等を含んで構成されている。ステップ作動コントロールユニット51は、例えば車両コントロールユニット52から、車両走行停止状態で車両の左フロントドアまたは左リヤドアの開操作情報あるいは開状態情報を入力した場合に、回転角センサ50によって駆動モータ10の駆動軸の回転角が、ステッププレート3の展開位置に対応する回転角であることを検出するまで駆動モータ10を作動させる。一方、車両走行状態、あるいは車両の左フロントドア及び左リヤドアが閉状態になった場合に、回転角センサ50によってモータの駆動軸の回転角が、ステッププレート3の格納位置に対応する回転角であることを検出するまで駆動モータ10を作動させる。
【0035】
更に、ステッププレート3の格納位置において駆動モータ10が駆動軸の回転角に基づいて自動停止した状態では、弾性ストッパ30と受け部32とが当接し、ストッパ34と受け部35とが当接しないように設定されている。一方、ステッププレート3の展開位置において駆動モータ10が駆動軸の回転角に基づいて自動停止した状態では、弾性ストッパ30と受け部31とが当接するように設定されている。
【0036】
以上のように、本実施形態のステップ装置1では、展開位置において、例えばステッププレート3に乗員が搭乗して下向きに荷重を受けると、リンクアーム14は第4リンクピン24を回転中心として、第3リンクピン23が上方かつ車幅方向外側(
図3、5において左回り)に回動しようとする。これにより、ドライブリンク12は、第3リンクピン23を介して荷重を受けて、第1リンクピン21を回転中心に、第3リンクピン23が上方かつ車幅方向外側(
図3、5において右回り)に回動しようとする。しかしながら、展開位置では、弾性ストッパ30がドリブンリンク13の受け部31に当接して、ドライブリンク12が更にドリブンリンク13に近づく車幅方向外側に回転することが規制される。したがって、展開位置において、ステッププレート3に乗員が搭乗した際に、ステッププレート3が下方に移動することが規制され、ステッププレート3の上面が略水平状態に維持される。
【0037】
一方、格納位置においては、ドライブリンク12は、第1リンクピン21回りに例えば略水平になるまで車幅方向内側(
図2、6において左回り)に回転移動される。このとき、弾性ストッパ30と受け部32が当接して、ドリブンリンク13とドライブリンク12とが更に近づく方向に移動することが抑制される。
ここで、例えば車両走行時に段差等を乗り越えた際に、段差がリンクアーム14に接触して、リンクアーム14が突き上げ荷重を受けた場合には、リンクアーム14は第4リンクピン24を回転中心として、第3リンクピン23が下方かつ車幅方向内側(
図2、6において右回り)に回動しようとする。しかしながら、弾性ストッパ30と受け部32が当接することで、リンクアーム14は上方に向けて荷重を受ける。したがって、格納位置において突き上げ荷重を受けたリンクアーム14から第3リンクピン23を介してドライブリンク12に作用した荷重は、ドライブリンク12とドリブンリンク13とで分散して受けることになる。これにより、ドライブリンク12から第1リンクピン21を介して駆動モータ10に作用する荷重を低減させ、第1リンクピン21及び駆動モータ10の保護を図ることができる。
【0038】
また、格納位置において、リンクアーム14が突き上げ荷重を受けて上方に移動しようとしたときに、弾性ストッパ30と受け部32とが当接してリンクアーム14が所定距離以上上方に移動してからストッパ34と受け部35とが当接するように設定されているので、リンクアーム14が上方に向けて突き上げ荷重を受けた場合に、この突き上げ荷重の一部を弾性ストッパ30が吸収する。したがって、ドライブリンク12が受ける荷重(トルク)を抑制し、ドライブリンク12に駆動軸が固定されている(一体になっている)駆動モータ10の保護を図ることができる。また、リンクアーム14に突き上げ荷重を受けた際に、弾性ストッパ30によって荷重を吸収するので、車体20への衝撃の伝達を緩和して、車体20の保護を図るとともに、乗員に与える衝撃を緩和して不快感を低減させることができる。
【0039】
また、リンクアーム14が更なる上向き荷重を受けて弾性ストッパ30の弾性力に抗してリンクアーム14が更に上方に移動しても、ストッパ34と受け部35とが当接して、リンクアーム14に受けた上向きの荷重をリンクブラケット11によって支持する。これにより、リンクアーム14に更なる大きな突き上げ荷重を受けたとしても、弾性ストッパ30とストッパ34の2つのストッパで分散して上向き荷重を受けるので、ドライブリンク12が受ける荷重(トルク)を確実に抑制することができる。また、弾性ストッパ30とストッパ34は、格納位置において車幅方向に離間するように配置されているので、リンクアーム14に対して突き上げ荷重を受ける車幅方向位置や方向が異なる場合であっても、弾性ストッパ30及びストッパ34によってリンクアーム14を十分に支持することができる。
【0040】
また、本実施形態のステップ装置1では、展開位置においてステッププレート3に受ける下向きの荷重と、格納位置においてリンクアーム14に上向きに受ける荷重のいずれも、ドライブリンク12に設けた弾性ストッパ30によって支持するので、ストッパの設置個数を抑制することができる。また、この弾性ストッパ30がドライブリンク12に設けられることで、リヤリンク機構5を簡単な構造でコンパクトに構成することができる。
【0041】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定するものではない。
例えば、上記実施形態では、ドライブリンク12に弾性ストッパ30を備え、ドリブンリンク13に受け部31、32を備えているが、ドライブリンク12に受け部を備え、ドリブンリンク13に弾性ストッパを備えてもよい。また、格納位置において受け部31と弾性ストッパ30とが当接した後に当接するストッパ34についても、弾性体で形成してもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、ドライブリンク12とドリブンリンク13のうち車幅方向内側に配置されたドライブリンク12を駆動モータ10によって回転駆動する構造であるが、車幅方向外側にドライブリンク12を配置して駆動モータ10によって回転駆動する構造のステップ装置であってもよい。
また、駆動モータ10の代わりにシリンダ等の他のアクチュエータによってドライブリンクを駆動させる構造であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 ステップ装置
3 ステッププレート(乗降用ステップ)
5 リヤリンク機構
10 駆動モータ(アクチュエータ)
11 リンクブラケット(車体固定部材)
12 ドライブリンク(第1リンクアーム)
13 ドリブンリンク(第2リンクアーム)
14 リンクアーム(ステップ支持部材)
30 弾性ストッパ(第1のストッパ)
34 ストッパ(第2のストッパ)