(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/24 20060101AFI20230623BHJP
H02K 3/18 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
H02K3/24 C
H02K3/18 P
H02K3/24 P
(21)【出願番号】P 2020530911
(86)(22)【出願日】2019-05-20
(86)【国際出願番号】 JP2019019821
(87)【国際公開番号】W WO2020017143
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2018134639
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】宇賀治 元
(72)【発明者】
【氏名】玉村 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】河村 清美
(72)【発明者】
【氏名】額田 慶一郎
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-304244(JP,A)
【文献】実開昭60-171048(JP,U)
【文献】実開昭57-017238(JP,U)
【文献】特開2010-279226(JP,A)
【文献】特開2016-116421(JP,A)
【文献】特開2017-216832(JP,A)
【文献】国際公開第2021/250790(WO,A1)
【文献】特許第7186927(JP,B2)
【文献】実公昭35-13720(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/24
H02K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、複数のステータコアシートを積層する積層体を含むステータコアと、前記ステータコアに具備するティースを磁心の一部とするステータコイルを含むステータと、前記ステータコアの前記ティースの先端と空隙を介して回転自在に支承されるロータとを含むモータであって、
前記ステータコイルは、
予め定められたターン数の環状体を含む螺旋状コイルを構成し、前記環状体に導線部を含み、前記導線部は導体部と前記導体部を被覆する絶縁性の被膜を有し且つ前記導体部の断面形状が実質的に四角形であり、
前記ティースの積層面側の各々に位置する前記環状体の一部をコイル線路部と定義し、前記環状体の一部であり且つ一対を成す前記コイル線路部の同方向端部の間に位置する部分をコイルエンド部と定義し、
前記コイル線路部の一方端から前記コイルエンド部の一方端へと移行する箇所をコイルコーナー部と定義し、
前記螺旋状コイルにおいて、前記コイルエンド部の外周部と、前記コイル線路部の外周部と、前記コイルコーナー部の外周部とを含む仮想包絡面に対して凹む凹部を少なくとも一つ具備し、
前記環状体の内周端から外周端までの幅をステータコイル幅とするとき、前記凹部における前記ステータコイル幅は、前記凹部に隣接するターンである前記環状体のステータコイル幅よりも狭い幅であるモータ。
【請求項2】
前記凹部を複数具備し、
前記複数の凹部は、前記螺旋状コイルにおけるコイルエンド側に位置し、
前記複数の凹部のうち少なくとも一つには、前記凹部の底部に、1ターンの前記環状体のコイルエンド部の外周部及びコイルコーナー部の外周部が位置し、
且つ、前記複数の凹部のうち少なくとも別の一つには、前記凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの前記環状体のコイルエンド部の外周部及びコイルコーナー部の外周部が位置する
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記凹部を複数具備し、
前記複数の凹部は、前記螺旋状コイルにおける前記コイル線路部の側に位置し、
前記複数の凹部のうち少なくとも一つは、前記凹部の底部に、1ターンの前記環状体のコイル線路部の外周部及びコイルコーナー部の外周部が位置し、
且つ、前記複数の凹部のうち少なくとも別の一つは、前記凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの前記環状体のコイル線路部の外周部及びコイルコーナー部の外周部が位置する
請求項1に記載のモータ。
【請求項4】
前記凹部を複数具備し、
前記複数の凹部は、前記螺旋状コイルにおける前記コイル線路部の側に位置し、
前記複数の凹部の各々には、前記凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの前記環状体のコイル線路部の外周部及びコイルコーナー部の外周部が位置する
請求項1に記載のモータ。
【請求項5】
前記凹部を複数具備し、
前記複数の凹部は、前記螺旋状コイルにおける前記コイル線路部の側に位置し、
前記複数の凹部の各々には、前記凹部の底部に、前記環状体各々のうちの1ターンにおけるコイル線路部の外周部及びコイルコーナー部の外周部が位置する
請求項1に記載のモータ。
【請求項6】
前記凹部を複数具備し、
前記複数の凹部は前記螺旋状コイルにおける外周面に亘って位置し、
前記複数の凹部のうち少なくとも一つには、前記凹部の底部に、1ターンの前記環状体の外周部が位置し、
且つ、前記複数の凹部のうち少なくとも別の一つには、前記凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの前記環状体の外周部が位置する
請求項1に記載のモータ。
【請求項7】
前記凹部を複数具備し、
前記複数の凹部は前記螺旋状コイルにおける外周面に亘って位置し、
前記複数の凹部の各々には、前記凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの前記環状体の外周部が位置する
請求項1に記載のモータ。
【請求項8】
前記凹部を複数具備し、
前記複数の凹部は前記螺旋状コイルにおける外周面に亘って位置し、
前記複数の凹部の各々には、前記凹部の底部に、1ターンの前記環状体の外周部が位置する
請求項1に記載のモータ。
【請求項9】
前記凹部を複数具備し、
前記複数の凹部は前記螺旋状コイルにおける外周面に亘って位置し、
前記複数の凹部のうち少なくとも一つには、前記凹部の底部に、1ターンの前記環状体の外周部が位置し、
且つ、前記複数の凹部のうち少なくとも一つには、前記凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの前記環状体の外周部が位置し、
更に、前記複数の凹部のうち少なくとも別の一つには、前記予め定められたターン数の内の開始ターンから終始ターンに亘って連通する溝状の凹部であり、前記複数の凹部のうちで異なる凹部同士間において、凹部の溝状形状の長手方向が互いに交差する
請求項1に記載のモータ。
【請求項10】
少なくとも、複数のステータコアシートを積層する積層体を含むステータコアと、前記ステータコアに具備するティースを磁心の一部とするステータコイルを含むステータと、前記ステータコアの前記ティースの先端と空隙を介して回転自在に支承されるロータとを含むモータであって、
前記ステータコイルは、
予め定められたターン数の環状体を含む螺旋状コイルを構成し、前記環状体に導線部を含み、前記導線部は導体部と前記導体部を被覆する絶縁性の被膜を有し且つ前記導体部の断面形状が実質的に四角形であり、
前記ティースの積層面側の各々に位置する前記環状体の一部をコイル線路部と定義し、前記環状体の一部であり且つ一対を成す前記コイル線路部の同方向端部の間に位置する部分をコイルエンド部と定義し、
前記コイル線路部の一方端から前記コイルエンド部の一方端へと移行する箇所をコイルコーナー部と定義するとき、
前記螺旋状コイルにおいて、前記コイルエンド部の外周部と、前記コイル線路部の外周部と、前記コイルコーナー部の外周部とを含む仮想包絡面において、
前記予め定められたターン数の内の開始ターンから終始ターンに亘って、前記コイルエンド部の中央部を稜線として、前記稜線から各々のコイルコーナー部へ下る斜面を具備し、
前記環状体の内周端から外周端までの幅をステータコイル幅とするとき、前記斜面は前記中央部より幅が狭く、前記斜面は前記稜線から各々の前記コイルコーナー部へ下るに従って幅が狭くなっている
モータ。
【請求項11】
更に、
前記仮想包絡面に対して凹む凹部を一箇所又は複数の前記凹部を具備し、
前記複数の凹部は、前記螺旋状コイルにおける前記コイルエンド部側に位置し、
前記複数の凹部のうち少なくとも一つには、前記凹部の底部に、1ターンの前記環状体の前記コイルエンド部の外周部及び前記コイルコーナー部の外周部が位置し、
且つ、
前記複数の凹部のうち少なくとも別の一つには、前記凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの前記環状体のコイルエンド部の外周部及びコイルコーナー部の外周部が位置する請求項10に記載のモータ。
【請求項12】
更に、
前記仮想包絡面に対して凹む凹部を一箇所又は複数の前記凹部を具備し、
前記複数の凹部は、前記螺旋状コイルにおけるコイル線路部側に位置し、
前記複数の凹部のうち少なくとも一つには、前記凹部の底部に、1ターンの前記環状体のコイル線路部の外周部及びコイルコーナー部の外周部が位置し、
且つ、
前記複数の凹部のうち少なくとも別の一つには、前記凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの前記環状体のコイル線路部の外周部及びコイルコーナー部の外周部が位置する請求項10に記載のモータ。
【請求項13】
複数の凹部は前記螺旋状コイルにおける外周面に亘って位置し、
前記複数の凹部のうち少なくとも一つには、前記凹部の底部に、1ターンの前記環状体の外周部が位置し、
且つ、
前記複数の凹部のうち少なくとも別の一つには、前記凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの前記環状体の外周部が位置する請求項10に記載のモータ。
【請求項14】
更に、前記環状体のいずれかの内周端部と前記磁心との間に空隙を有する
請求項1に記載のモータ。
【請求項15】
更に、前記環状体のうち前記ティースの前記先端側に位置する複数の環状体の内周端部と前記磁心との間に空隙を有する
請求項1に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。本発明は、特にモータのステータコイルの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業、車載用途で、モータの需要は高まっている。その中で、モータの効率向上、低コスト化が要望されている。
【0003】
モータの効率向上の一つの手法として、ステータのスロット内に配置されるステータコイルの占積率を向上させることが知られている。ステータコイルの占積率を向上させることで、モータの駆動時に、ステータコイルに流れる電流に起因する損失を抑制できる。
【0004】
ステータコイルの占積率を向上させる手法として、銅材を用いた鋳造コイルをスロット内に配置する構成が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
モータ効率を低下させる要因の一つに熱があり、モータ内部に冷媒を循環させて温度上昇を抑制することが知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
ステータコイルの占積率が向上すると、スロット内でのデッドスペースが小さくなる。しかし、デッドスペースは冷媒の流路の一部を構成しており、スロット内でのデッドスペースが小さくなることは、冷媒の流路が狭くなることと等しく、冷媒の流量を減少させてしまう。その結果、冷媒による冷却効果が有効に作用しないこととなる。更には、ステータコイル又はステータコイルの磁心を構成するティース自体の発熱による自己温度上昇は過剰なものとなり、モータの効率(efficiency)の低下を招く。なお、当業者であれば自明であるが、モータの効率(efficiency)とは、モータへの入力電力に対するモータからの機械出力の比を百分率(percentage、単位記号[%])で表すものである。また、当業者であれば自明であるが、占積率とは、スロット又はインシュレータ等の巻線収容部の収容断面積に対して、導線等の導体部分が占める割合である。導線等の断面が円形であれば、隣り合う円形の間には、デッドスペースを生じるため、占積率を高めることには限界がある。また、導線の絶縁被膜の厚み等も占積率を低下させる要因となる。ちなみに、導線の絶縁被膜の厚みが一定であると、導線の径寸法が小さい場合ほど、絶縁被膜の厚み又は絶縁被膜の占める面積の比率は高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第102012212637号明細書
【文献】特開2015-109733号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明は、ステータコイルの占積率を高めた構成を具備するモータにおいて、冷媒によるステータコイルの冷却効果をより高めて、高効率のモータを実現することを目的とする。
【0009】
目的を達成するために、本発明のモータは、ステータコアと、ステータコアから突出したティースを磁心とするステータコイルを含む。ステータコイルは、予め定められたnターン(nは自然数)の環状体を含む螺旋状の積層構造を有する螺旋状コイルである。なお、本発明のモータにおけるステータコイルの様態は、単層のソレノイドコイルとも表現される。
【0010】
螺旋状コイルであるステータコイルは、断面が多角形の導線部を含む環状体からなる。螺旋状コイルにおける複数のターンの環状体のうち、環状体におけるコイルトップ部及びコイルボトム部の少なくとも一部において、隣接の他のターンの環状体の形状よりも、その外周側において少なくとも部分的に小さい形状の態様を構成する。なお、コイルトップ部及びコイルボトム部は、いずれもコイルエンド部と呼称することもある。
【0011】
従来例として例示するステータコイルに比べて、本発明のモータにおけるステータコイルは、空気、冷媒、油などに対しての放熱面積を増す構造を有し、また、空気、冷媒、油などの循環通路を増す構造である。これにより、ステータコイルの冷却効果を効率良く高めることが可能である。したがって、高効率のモータを実現することも可能となる。
【0012】
また、螺旋状コイルであるステータコイルは、ステータコイルに含む複数のターンの環状体のうち、モータのステータのスロット内で隣り合う螺旋状コイル間において、一部のターンの環状体の導体の幅寸法が、当該環状体に隣接する環状体の導体の幅寸法よりも狭い幅寸法である態様を含む。
【0013】
この構成によっても、上述と同様に、従来例として例示するステータコイルに比べて、本発明のモータにおけるステータコイルは、空気、冷媒、油などに対しての放熱面積を増す構造となる。また、空気、冷媒、油などの循環通路を増す構造となる。これにより、ステータコイルの冷却効果を効率良く高めることが可能である。したがって、高効率のモータを実現することが可能となる。また、空気、冷媒、油などの流体は、流れの上流側からステータコイルの近傍の隙間(油路)を通過し、流れの下流へと通過し、更には循環が円滑となり、放熱効果を高めることが可能となる。以下にその詳細を述べる。
【0014】
目的を達成するために、本発明の一態様のモータは、少なくとも、複数のステータコアシートを積層する積層体を含むステータコアと、ステータコアに具備するティースを磁心の一部とするステータコイルを含むステータと、ステータコアのティースの先端と空隙を介して回転自在に支承されるロータとを含むモータであって、ステータコイルは、予め定められたターン数の環状体を含む螺旋状コイルを構成し、環状体に導線部を含み、導線部は導体部と導体部を被覆する絶縁性の被膜を有し且つ導体部の断面形状が実質的に四角形であり、ティースの積層面側の各々に位置する環状体の一部をコイル線路部と定義し、環状体の一部であり且つ一対を成すコイル線路部の同方向端部の間に位置する部分をコイルエンド部と定義し、コイル線路部の一方端からコイルエンド部の一方端へと移行する箇所をコイルコーナー部と定義し、螺旋状コイルにおいて、コイルエンド部の外周部と、コイル線路部の外周部と、コイルコーナー部の外周部とを含む仮想包絡面に対して凹む凹部を少なくとも一つ具備する。
【0015】
また、本発明の別の一態様のモータは、少なくとも、複数のステータコアシートを積層する積層体を含むステータコアと、ステータコアに具備するティースを磁心の一部とするステータコイルを含むステータと、ステータコアのティースの先端と空隙を介して回転自在に支承されるロータとを含むモータであって、ステータコイルは、予め定められたターン数の環状体を含む螺旋状コイルを構成し、環状体に導線部を含み、導線部は導体部と導体部を被覆する絶縁性の被膜を有し且つ導体部の断面形状が実質的に四角形であり、ティースの積層面側の各々に位置する環状体の一部をコイル線路部と定義し、環状体の一部であり且つ一対を成すコイル線路部の同方向端部の間に位置する部分をコイルエンド部と定義し、コイル線路部の一方端からコイルエンド部の一方端へと移行する箇所をコイルコーナー部と定義するとき、螺旋状コイルにおいて、コイルエンド部の外周部と、コイル線路部の外周部と、コイルコーナー部の外周部とを含む仮想包絡面に対して凹む複数の凹部を具備し、複数の凹部は、螺旋状コイルにおけるコイルエンド側に位置し、複数の凹部のうち少なくとも一つには、凹部の底部に、1ターンの環状体のコイルエンド部の外周部及びコイルコーナー部の外周部が位置し、且つ、複数の凹部のうち少なくとも別の一つには、凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの環状体のコイルエンド部の外周部及びコイルコーナー部の外周部が位置する。
【0016】
また、本発明のさらに別の一態様のモータは、少なくとも、複数のステータコアシートを積層する積層体を含むステータコアと、ステータコアに具備するティースを磁心の一部とするステータコイルを含むステータと、ステータコアのティースの先端と空隙を介して回転自在に支承されるロータとを含むモータであって、ステータコイルは、予め定められたターン数の環状体を含む螺旋状コイルを構成し、環状体に導線部を含み、導線部は導体部と導体部を被覆する絶縁性の被膜を有し且つ導体部の断面形状が実質的に四角形であり、ティースの積層面側の各々に位置する環状体の一部をコイル線路部と定義し、環状体の一部であり且つ一対を成すコイル線路部の同方向端部の間に位置する部分をコイルエンド部と定義し、コイル線路部の一方端からコイルエンド部の一方端へと移行する箇所をコイルコーナー部と定義するとき、螺旋状コイルにおいて、コイルエンド部の外周部と、コイル線路部の外周部と、コイルコーナー部の外周部とを含む仮想包絡面に対して凹む複数の凹部を具備し、複数の凹部は、螺旋状コイルにおけるコイル線路部の側に位置し、複数の凹部のうち少なくとも一つは、凹部の底部に、1ターンの環状体のコイル線路部の外周部及びコイルコーナー部の外周部が位置し、且つ、複数の凹部のうち少なくとも別の一つは、凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの環状体のコイル線路部の外周部及びコイルコーナー部の外周部が位置する。
【0017】
また、本発明のさらに別の一態様のモータは、少なくとも、複数のステータコアシートを積層する積層体を含むステータコアと、ステータコアに具備するティースを磁心の一部とするステータコイルを含むステータと、ステータコアのティースの先端と空隙を介して回転自在に支承されるロータとを含むモータであって、ステータコイルは、予め定められたターン数の環状体を含む螺旋状コイルを構成し、環状体に導線部を含み、導線部は導体部と導体部を被覆する絶縁性の被膜を有し且つ導体部の断面形状が実質的に四角形であり、ティースの積層面側の各々に位置する環状体の一部をコイル線路部と定義し、環状体の一部であり且つ一対を成すコイル線路部の同方向端部の間に位置する部分をコイルエンド部と定義し、コイル線路部の一方端からコイルエンド部の一方端へと移行する箇所をコイルコーナー部と定義するとき、螺旋状コイルにおいて、コイルエンド部の外周部と、コイル線路部の外周部と、コイルコーナー部の外周部とを含む仮想包絡面に対して凹む複数の凹部を具備し、複数の凹部は、螺旋状コイルにおけるコイル線路部の側に位置し、複数の凹部の各々には、凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの環状体のコイル線路部の外周部及びコイルコーナー部の外周部が位置する。
【0018】
また、本発明のさらに別の一態様のモータは、少なくとも、複数のステータコアシートを積層する積層体を含むステータコアと、ステータコアに具備するティースを磁心の一部とするステータコイルを含むステータと、ステータコアのティースの先端と空隙を介して回転自在に支承されるロータとを含むモータであって、ステータコイルは、予め定められたターン数の環状体を含む螺旋状コイルを構成し、環状体に導線部を含み、導線部は導体部と導体部を被覆する絶縁性の被膜を有し且つ導体部の断面形状が実質的に四角形であり、ティースの積層面側の各々に位置する環状体の一部をコイル線路部と定義し、環状体の一部であり且つ一対を成すコイル線路部の同方向端部の間に位置する部分をコイルエンド部と定義し、コイル線路部の一方端からコイルエンド部の一方端へと移行する箇所をコイルコーナー部と定義するとき、螺旋状コイルにおいて、コイルエンド部の外周部と、コイル線路部の外周部と、コイルコーナー部の外周部とを含む仮想包絡面に対して凹む複数の凹部を具備し、複数の凹部は、螺旋状コイルにおけるコイル線路部の側に位置し、複数の凹部の各々には、凹部の底部に、環状体各々のうちの1ターンにおけるコイル線路部の外周部及びコイルコーナー部の外周部が位置する。
【0019】
また、本発明のさらに別の一態様のモータは、少なくとも、複数のステータコアシートを積層する積層体を含むステータコアと、ステータコアに具備するティースを磁心の一部とするステータコイルを含むステータと、ステータコアのティースの先端と空隙を介して回転自在に支承されるロータとを含むモータであって、ステータコイルは、予め定められたターン数の環状体を含む螺旋状コイルを構成し、環状体に導線部を含み、導線部は導体部と導体部を被覆する絶縁性の被膜を有し且つ導体部の断面形状が実質的に四角形であり、ティースの積層面側の各々に位置する環状体の一部をコイル線路部と定義し、環状体の一部であり且つ一対を成すコイル線路部の同方向端部の間に位置する部分をコイルエンド部と定義し、コイル線路部の一方端からコイルエンド部の一方端へと移行する箇所をコイルコーナー部と定義するとき、螺旋状コイルにおいて、コイルエンド部の外周部と、コイル線路部の外周部と、コイルコーナー部の外周部とを含む仮想包絡面に対して凹む複数の凹部を具備し、複数の凹部は螺旋状コイルにおける外周面に亘って位置し、複数の凹部のうち少なくとも一つには、凹部の底部に、1ターンの環状体の外周部が位置し、且つ、複数の凹部のうち少なくとも別の一つには、凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの環状体の外周部が位置する。
【0020】
また、本発明のさらに別の一態様のモータは、少なくとも、複数のステータコアシートを積層する積層体を含むステータコアと、ステータコアに具備するティースを磁心の一部とするステータコイルを含むステータと、ステータコアのティースの先端と空隙を介して回転自在に支承されるロータとを含むモータであって、ステータコイルは、予め定められたターン数の環状体を含む螺旋状コイルを構成し、環状体に導線部を含み、導線部は導体部と導体部を被覆する絶縁性の被膜を有し且つ導体部の断面形状が実質的に四角形であり、ティースの積層面側の各々に位置する環状体の一部をコイル線路部と定義し、環状体の一部であり且つ一対を成すコイル線路部の同方向端部の間に位置する部分をコイルエンド部と定義し、コイル線路部の一方端からコイルエンド部の一方端へと移行する箇所をコイルコーナー部と定義するとき、螺旋状コイルにおいて、コイルエンド部の外周部と、コイル線路部の外周部と、コイルコーナー部の外周部とを含む仮想包絡面に対して凹む複数の凹部を具備し、複数の凹部は螺旋状コイルにおける外周面に亘って位置し、複数の凹部の各々には、凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの環状体の外周部が位置する。
【0021】
また、本発明のさらに別の一態様のモータは、少なくとも、複数のステータコアシートを積層する積層体を含むステータコアと、ステータコアに具備するティースを磁心の一部とするステータコイルを含むステータと、ステータコアのティースの先端と空隙を介して回転自在に支承されるロータとを含むモータであって、ステータコイルは、予め定められたターン数の環状体を含む螺旋状コイルを構成し、環状体に導線部を含み、導線部は導体部と導体部を被覆する絶縁性の被膜を有し且つ導体部の断面形状が実質的に四角形であり、ティースの積層面側の各々に位置する環状体の一部をコイル線路部と定義し、環状体の一部であり且つ一対を成すコイル線路部の同方向端部の間に位置する部分をコイルエンド部と定義し、コイル線路部の一方端からコイルエンド部の一方端へと移行する箇所をコイルコーナー部と定義するとき、螺旋状コイルにおいて、コイルエンド部の外周部と、コイル線路部の外周部と、コイルコーナー部の外周部とを含む仮想包絡面に対して凹む複数の凹部を具備し、複数の凹部は螺旋状コイルにおける外周面に亘って位置し、複数の凹部の各々には、凹部の底部に、1ターンの環状体の外周部が位置する。
【0022】
また、本発明のさらに別の一態様のモータは、少なくとも、複数のステータコアシートを積層する積層体を含むステータコアと、ステータコアに具備するティースを磁心の一部とするステータコイルを含むステータと、ステータコアのティースの先端と空隙を介して回転自在に支承されるロータとを含むモータであって、ステータコイルは、予め定められたターン数の環状体を含む螺旋状コイルを構成し、環状体に導線部を含み、導線部は導体部と導体部を被覆する絶縁性の被膜を有し且つ導体部の断面形状が実質的に四角形であり、ティースの積層面側の各々に位置する環状体の一部をコイル線路部と定義し、環状体の一部であり且つ一対を成すコイル線路部の同方向端部の間に位置する部分をコイルエンド部と定義し、コイル線路部の一方端からコイルエンド部の一方端へと移行する箇所をコイルコーナー部と定義するとき、螺旋状コイルにおいて、コイルエンド部の外周部と、コイル線路部の外周部と、コイルコーナー部の外周部とを含む仮想包絡面に対して凹む凹部を一箇所又は複数の凹部を具備し、複数の凹部は螺旋状コイルにおける外周面に亘って位置し、複数の凹部のうち少なくとも一つには、凹部の底部に、1ターンの環状体の外周部が位置し、且つ、複数の凹部のうち少なくとも別の一つには、凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの環状体の外周部が位置し、更に、複数の凹部のうち少なくともさらに別の一つには、予め定められたターン数の内の開始ターンから終始ターンに亘って連通する溝状の凹部であり、複数の凹部のうちで異なる凹部同士間において、凹部の溝状形状の長手方向が互いに交差する。
【0023】
また、本発明のさらに別の一態様のモータは、少なくとも、複数のステータコアシートを積層する積層体を含むステータコアと、ステータコアに具備するティースを磁心の一部とするステータコイルを含むステータと、ステータコアのティースの先端と空隙を介して回転自在に支承されるロータとを含むモータであって、ステータコイルは、予め定められたターン数の環状体を含む螺旋状コイルを構成し、環状体に導線部を含み、導線部は導体部と導体部を被覆する絶縁性の被膜を有し且つ導体部の断面形状が実質的に四角形であり、ティースの積層面側の各々に位置する環状体の一部をコイル線路部と定義し、環状体の一部であり且つ一対を成すコイル線路部の同方向端部の間に位置する部分をコイルエンド部と定義し、コイル線路部の一方端からコイルエンド部の一方端へと移行する箇所をコイルコーナー部と定義するとき、螺旋状コイルにおいて、コイルエンド部の外周部と、コイル線路部の外周部と、コイルコーナー部の外周部とを含む仮想包絡面において、予め定められたターン数の内の開始ターンから終始ターンに亘って、コイルエンド部の中央部を稜線として、稜線から各々のコイルコーナー部へ下る斜面を具備する。
【0024】
また、本発明のさらに別の一態様のモータは、更に、仮想包絡面に対して凹む凹部を一箇所又は複数の凹部を具備し、複数の凹部は、螺旋状コイルにおけるコイルエンド部側に位置し、複数の凹部のうち少なくとも一つには、凹部の底部に、1ターンの環状体のコイルエンド部の外周部及びコイルコーナー部の外周部が位置し、且つ、複数の凹部のうち少なくとも一つには、凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの環状体のコイルエンド部の外周部及びコイルコーナー部の外周部が位置する。
【0025】
また、本発明のさらに別の一態様のモータは、更に、仮想包絡面に対して凹む凹部を一箇所又は複数の凹部を具備し、複数の凹部は、螺旋状コイルにおけるコイル線路部側に位置し、複数の凹部のうち少なくとも一つには、凹部の底部に、1ターンの環状体のコイル線路部の外周部及びコイルコーナー部の外周部が位置する、且つ、複数の凹部のうち少なくとも一つには、凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの環状体のコイル線路部の外周部及びコイルコーナー部の外周部が位置する。
【0026】
また、本発明のさらに別の一態様のモータは、複数の凹部は螺旋状コイルにおける外周面に亘って位置し、複数の凹部のうち少なくとも一つには、凹部の底部に、1ターンの環状体の外周部が位置し、且つ、複数の凹部のうち少なくとも一つには、凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの環状体の外周部が位置する。
【0027】
また、本発明のさらに別の一態様のモータは、少なくとも、複数のステータコアシートを積層する積層体の態様を含むステータコアと、ステータコアに具備するティースを磁心の一部とするステータコイルを含むステータと、ステータコアのティースの先端と空隙を介して回転自在に支承されるロータとを含むモータであって、ステータコイルは、予め定められたターン数の環状体を含む螺旋状コイルを構成し、環状体に導線部を含み、導線部は導体部と導体部を被覆する絶縁性の被膜を有し且つ導体部の断面形状が実質的に四角形であり、ティースの積層面側の各々に位置する環状体の一部をコイル線路部と定義し、環状体の一部であり且つ一対を成すコイル線路部の同方向端部の間に位置する部分をコイルエンド部と定義し、コイル線路部の一方端からコイルエンド部の一方端へと移行する箇所をコイルコーナー部と定義し、螺旋状コイルにおいて、コイルエンド部の外周部と、コイル線路部の外周部と、コイルコーナー部の外周部とを含む仮想包絡面に対して凹む凹部を少なくとも一つ具備し、更に、環状体のいずれかの内周端部と磁心との間に空隙を有する。
【0028】
また、本発明のさらに別の一態様のモータは、少なくとも、複数のステータコアシートを積層する積層体を含むステータコアと、ステータコアに具備するティースを磁心の一部とするステータコイルを含むステータと、ステータコアのティースの先端と空隙を介して回転自在に支承されるロータとを含むモータであって、ステータコイルは、予め定められたターン数の環状体を含む螺旋状コイルを構成し、環状体に導線部を含み、導線部は導体部と導体部を被覆する絶縁性の被膜を有し且つ導体部の断面形状が実質的に四角形であり、ティースの積層面側の各々に位置する環状体の一部をコイル線路部と定義し、環状体の一部であり且つ一対を成すコイル線路部の同方向端部の間に位置する部分をコイルエンド部と定義し、コイル線路部の一方端からコイルエンド部の一方端へと移行する箇所をコイルコーナー部と定義し、螺旋状コイルにおいて、コイルエンド部の外周部と、コイル線路部の外周部と、コイルコーナー部の外周部とを含む仮想包絡面に対して凹む凹部を少なくとも一つ具備し、更に、環状体の各々におけるティース先端側に位置する複数の環状体の内周端部と磁心との間に空隙を有する。
【0029】
本発明によれば、冷媒・油・空気等が効率良くモータのステータコイル全体を円滑に循環することが可能となり、冷却効果を高めることも可能である。したがって、高効率のモータを実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】実施の形態1に係るステータコイルを示す斜視図
【
図3】実施の形態2に係るステータコイルを示す斜視図
【
図4】実施の形態3に係るステータコイルを示す斜視図
【
図5】実施の形態4に係るステータコイルを示す斜視図
【
図6】実施の形態5に係るステータコイルを示す斜視図
【
図7】実施の形態6に係るステータコイルを示す斜視図
【
図8】実施の形態7に係るステータコイルを示す斜視図
【
図9】実施の形態8に係るステータコイルを示す斜視図
【
図10A】実施の形態9に係るステータコイルを示す断面図
【
図10B】実施の形態9に係る別のステータコイルを示す断面図
【
図10C】実施の形態9に係る別のステータコイルを示す断面図
【
図10D】実施の形態9に係る別のステータコイルを示す断面図
【
図10E】実施の形態9に係る別のステータコイルを示す断面図
【
図10F】実施の形態9に係る別のステータコイルを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明のモータを図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施の形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物又はその用途を制限することを意図するものではない。
【0032】
(実施の形態1)
[モータの構造について]
図1Aは、実施の形態1に係るモータ1を示す上面図である。
図1Bは、実施の形態1に係るモータ1を示す側面図である。
図1Cは、
図1Bにおける1C-1C線における断面図である。ただし、いずれの図においても、カバーケース、インシュレータなどの絶縁物等は図示していない。モータ1は、カバーケース(図示せず)の内部に、シャフト2と、ロータ3と、ステータ4と、インシュレータ(図示せず)と、ステータコイルU11、U22、U32、U41、V12、V21、V31、V42、W11、W22、W32、W41と、バスバー51~54と、を備える。
【0033】
シャフト2の長手方向(
図1A紙面に対して垂直な方向)をZ軸方向と呼称し、これに直交する方向(
図1A紙面に対して平行な方向)をX軸方向、Y軸方向と呼称する。X軸方向とY軸方向は直交する。
【0034】
「一体」あるいは「一体化」とは、複数の部品が、ボルト締め、又は、かしめ等の機械的に接続されているだけでなく、共有結合、イオン結合、金属結合などの材料結合によって、部品が電気的に接続された1つの物体、又は部品全体が溶融などによって材料結合され電気的に接続された1つの物体の状態をいう。
【0035】
ロータ3は、シャフト2の外周に接して設けられており、ステータ4に対向してN極、S極がシャフト2の外周方向に沿って交互に配置された磁石31を含んでいる。本実施の形態で、磁石31としてネオジム磁石を使用しているが、その材料又は形状や材質については、モータの出力等に応じて適宜変更可能である。
【0036】
ステータ4は、実質的に円環状のステータコア41と、その内周に沿って等間隔に設けられた複数のティース42と、ティース42間にそれぞれ設けられたスロット43とを有している。ステータ4は、Z軸方向から見て、ロータ3の外側に、ロータ3と一定の間隔を持って離間して配置されている。
【0037】
ステータコア41は、複数のコアセグメントの集合体として構成される。本実施の形態におけるコアセグメントの態様は、ヨーク44と、複数のティース42とから構成される態様である。なお、コアセグメントの態様は、本実施の形態に例示する他に適宜好適な態様を選択し得る。例えば、本実施の形態のヨーク44は、一つの円環状の形状であるが、複数の扇型形状のコアセグメントを構成し、この複数の扇型形状のコアセグメントを円環状に配置する態様でも良い。また、ステータコア41及び各コアセグメントは、例えば珪素等を含有した電磁鋼板を、予め定めた形状に打ち抜き加工して構成したコアシート(ステータコアシート41a)を複数積層して一体化して構成した積層体である。
【0038】
なお、本実施の形態において、ロータ3の磁極数は、ステータ4に対向するN極が5個であり、S極が5個の計10極であり、スロット43の数は12個である。しかし、特にこれに限定されるものではなく、その他の磁極数とスロット数との組合せについても適用可能である。
【0039】
また、ステータ4は12個のステータコイルU11、U22、U32、U41、V12、V21、V31、V42、W11、W22、W32、W41を有している。これらのステータコイルは各ティース42に対して装着されて、Z軸方向から見て、各々のスロット43内に配置されている。つまり、ステータコイルU11、U22、U32、U41、V12、V21、V31、V42、W11、W22、W32、W41はティース42に対して集中巻になっている。さらに、ステータコイルU11、U22、U32、U41がバスバー51と、ステータコイルV12、V21、V31、V42はバスバー52と、ステータコイルW11、W22、W32、W41はバスバー53とそれぞれ一体化されて配置されている。バスバーは構成されていてもいなくてもよく、結線基板やリード線などによる接続であっても良い。
【0040】
ここで、ステータコイルを表わす符号UXY、VXY、WXYのうち、最初の文字はモータ1の各相(本実施の形態の場合は、U相、V相、W相)を表わす。2番目の文字は同相内のステータコイルの配列順を表わす。3番目の文字はステータコイルである螺旋状コイルの周回方向を表わし、本実施の形態では、1は時計回り方向、2は反時計回り方向である。従って、ステータコイルU11は、U相の配列順が1番目のステータコイルで、周回方向が時計回り方向であることを表わす。ステータコイルV42は、V相の配列順が4番目のステータコイルで、周回方向が反時計回り方向であることを表わす。なお、時計回りとは、モータ1の中心から見て右回りをいい、「反時計回り」とはモータ1の中心から見て左回りをいう。
【0041】
また、厳密には、ステータコイルU11,U41はU相のステータコイルであり、ステータコイルU22,U32はUバー相(U相ステータコイルと発生する磁界の向きが逆)のステータコイルである。しかし、以降の説明では、特に断らない限り、U相のステータコイルと総称する。ステータコイルV12、V21、V31、V42及びステータコイルW11、W22、W32、W41についても同様に、V相のステータコイル、W相のステータコイルとそれぞれ総称する。
【0042】
[ステータコイルの構造について]
図2は、実施の形態1に係るステータコイル5を示す斜視図である。ステータコイル5は、
図1Cに示すモータ1のティース42に装着されたステータコイルU11、U22、U32、U41、V12、V21、V31、V42、W11、W22、W32、W41に適用される。ステータコイル5は、予め定められたターン数の環状体5mを含む螺旋状の構造を有する。環状体5mは、積層構造を有する螺旋状コイルを構成する態様である。環状体5mの各ターンの態様は、
図2に示すとおり、平面視で実質的に矩形状である。環状体5mの平面視における短形状のうちの長辺側は、ティースの積層面側の各々に位置し、コイル線路部5qと呼称する。環状体5mの平面視における短形状のうちの短辺側は、一対の長辺側であるコイル線路部5qの同方向端部の間に位置し、コイルエンド部5rと呼称する。また、コイル線路部5qの一方端からコイルエンド部5rの一方端へと移行する箇所をコイルコーナー部5sと呼称する。
【0043】
螺旋状コイルであるステータコイル5は、導線部5aと、導線部5aの表面に設けられた絶縁性被膜5bと、ステータコイル5の第1ターン及び第10ターンからそれぞれ引出された引出し部5cと引出し部5dとを有している。ステータコイル5の第2ターンから第10ターンである環状体5mは、平面視で実質的に矩形状の環状の態様である。ステータコイル5の第2ターンから第10ターンである環状体5mの各々は、2つの短辺と、2つの長辺と、4つコイルコーナー部5sとを有する。なお、
図2においては、第1ターンから第9ターンまでの環状体5mの各々は、環状の形状にて1周する態様である。第10ターンは、環状の形状が1周に満たず、環状体5mにおける短辺が一つ分足らない態様である。この態様を別の表現で示すとすれば、第10ターンは、環状の形状が、4分の1周程度満たない、実質的には4分の3周(3/4周)する態様である。この第10ターンが、4分の1周程度満たないこととなる理由は、引出し部5c及び引出し部5dの配置の態様に起因する。引出し部5c及び引出し部5dの配置次第で、第10ターンが、1周を満たす場合もあれば、1周よりも僅かに多く周回する場合も考察し得る。同様に、第1ターンが、1周に満たない場合もあれば、1周よりも僅かに多く周回する場合もあり得る。
【0044】
導線部5aは、断面が四角形状の導体と導体を被覆する絶縁性被膜5bを有する。導線部5aは環状体構造を螺旋状に積層する構造体である。螺旋状に積層する態様は、モータにおける径方向の内外方向に積層する構造であり、予め定められたターン数の環状体5mを含む。例えば、予め定められたターン数は、第1ターンから第nターン(nは2以上の整数)からなる。なお、この第1ターンから第nターンを、ターン列と呼称する。
【0045】
導線部5aは断面が実質的に四角形状の導電部材からなる線材であり、螺旋状に単層で10ターンの環状体5mを積層するターン列を構成している。導線部5aは、例えば、銅、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、真鍮、鉄、SUS(Steel Use Stainless)等によって形成されている。導線部5aは単層のコイルで記載しているが、単層のコイルのみならず、多層のコイルにおいても適用可能である。
【0046】
なお、以降の説明において、引出し部5cの先端から引出し部5dが設けられた位置の下方まで巻回された部分を第1ターンとし、以降の1周ずつ巻回された部分を順に第2ターン、第3ターン・・・第10ターンと順じ呼称することとする。各ターンの始点は任意に定めることができる。ステータコイル5の第1ターンが設けられた側を「外」、第10ターンが設けられた側を「内」と呼称する。これは、モータ構造の径方向に対し、モータの外側を「外」とし、モータの中心側を「内」としているためである。
【0047】
絶縁性被膜5bは、ステータコイル5と外部の部材(図示せず)を絶縁するように、導線部5aの表面全体に設けられている。例えば、
図1A、
図1B及び
図1Cに示すモータ1において、絶縁性被膜5b及び図示しない絶縁部材、例えば絶縁紙等によって、ステータコイル5とステータコア41及びティース42との間が絶縁される。ステータコイル5における隣接するターン間は絶縁性被膜5bによって絶縁されている。絶縁性被膜5bは、例えば、ポリイミド、ナイロン、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、アクリル、アミドイミド、エステルイミド、エナメル、耐熱樹脂等によって形成されている。絶縁性被膜5bの厚みは、数十μm程度、例えば、5μmから50μmの間である。
【0048】
引出し部5cと引出し部5dは、いずれも導線部5aの一部である。引出し部5cと引出し部5dは、外部からの電流供給を受けるため、あるいは外部に電流を供給するために、ステータコイル5の側面、言いかえると、導線部5aのターン列と交差する平面から外側に延在している。外部の部材、例えば、バスバー51、バスバー52、バスバー53、バスバー54のいずれかと接続するために、引出し部5cと引出し部5dにおいて、絶縁性被膜5bが除去されている。絶縁性被膜5bは、引出し部5cと引出し部5dの全領域で除去されている必要はなく、例えば、バスバー51、バスバー52、バスバー53、バスバー54との接続に必要な部分のみ絶縁性被膜5bが除去されていれば良い。
【0049】
本実施の形態に係るステータコイルの形状の特徴について図面を用いて説明する。
【0050】
図11Aは、従来例のステータコイルを示す斜視図である。
図11Bは、従来例のステータコイルを示す断面図である。ここで、ステータコイルがきれいに整列されており、銅材の断面積が大きく確保可能なため、銅損は低減可能である。しかし、空気、冷媒、又は油などでの外部からの冷却においては、ステータコイル間の隙間又は冷却物が接する面積が小さいため、効果が限定的であるという問題があった。
【0051】
一方、
図2に示すように、本実施の形態は、螺旋状コイルであるステータコイル5において、コイルエンド部5rの外周部の各々と、コイル線路部5qの外周部の各々と、コイルコーナー部5sの外周部の各々とを含む仮想包絡面に対して凹む複数の凹部を具備する態様である。複数の凹部の各々を配置する位置は、螺旋状コイルであるステータコイル5において、ステータコイル5の短辺側であるコイルエンド部5rの側である。
【0052】
複数の凹部のうちの一つである、凹部5eの底部には、1ターンの環状体のコイルエンド部5rの外周部及びコイルコーナー部5sの外周部が位置する。
【0053】
複数の凹部のうちの別の一つである、凹部5fの底部には、互いに隣接する複数ターンの環状体のコイルエンド部5rの外周部及びコイルコーナー部5sの外周部が位置する。
【0054】
また、凹部5e及び凹部5fの態様を、上述とは別の表現で以下に記す。
図2に示す環状体5mにおいて、コイルエンド部5r又はコイル線路部5qにおける環状体の内周端から外周端までの幅をステータコイル幅とするとき、凹部5e及び凹部5fにおけるステータコイル幅は、凹部5e及び凹部5fに隣接するターンである環状体のステータコイル幅よりも狭い幅である。具体的には、凹部5e及び凹部5fにおけるステータコイル幅は、凹部5e及び凹部5fに隣接するターンである環状体のステータコイル幅よりも約1/5から1/2程度の狭い幅を有する。また、このステータコイル幅を狭める態様に応じて、凹部5e及び凹部5fにおけるコイルコーナー部5sの態様は、空気や冷媒の流れを妨げない好適な形状を採用する。
【0055】
なお、凹部5e及び凹部5fにおけるステータコイル幅は、凹部5e及び凹部5fに隣接するターンである環状体のステータコイル幅よりも約1/5から1/2程度の狭い幅を有する態様に限定するものではない。ステータコイルの剛性低減と、ステータコイル導体部内の抵抗増によるジュール熱の増加等の事項を勘案し、好適なステータコイル幅を選択可能である。
【0056】
図2の形状ではステータコイル5のコイルエンドである上部およびコイルエンドである下部の各々に、凹部5eと凹部5fとを配置する態様であるが、この態様に限らず、1ターンおきに、凹部5e又は凹部5fを配置する態様でも良い。1ターンおきに凹部を配置する態様の方が、ステータコイルの表面積を増す効果が大きい場合もあり、空気や冷媒などの流路が確保できるため、冷却効果が高まる場合もあり得る。
【0057】
図2に示すコイルコーナー部5sの形状は、ステータコイル5における環状体5m自体の加工精度による所が大きく影響する。このため、コイルコーナー部5sの外周部にはR面取り、又はC面取り等を配置しても良い。R面取り又はC面取り等を配置するなどによって、環状体5mの外周部の形状は、平面視にて多角形の形状や四隅にR部を有する形状を構成しても良い。
【0058】
図2に示すコイルコーナー部5sの内周部についても、ステータコイル5における環状体5m自体の加工における加工容易性の観点で、微細な逃げ溝を配置する態様を採用しても良い。
【0059】
本実施の形態では、ステータコイル5のターン数を10とした。しかし、特にこれに限定されず、他の値であっても良い。
【0060】
以上のように、本実施の形態のモータ1は、少なくとも、複数のステータコアシート41aを積層する積層体を含むステータコア41と、ステータコア41に具備するティース42を磁心の一部とするステータコイル5を含むステータ4と、ステータコア41のティース42の先端と空隙を介して回転自在に支承されるロータ3とを含む。ステータコイル5は、予め定められたターン数の環状体5mを含む螺旋状コイルを構成し、環状体5mに導線部5aを含み、導線部5aは導体部と導体部を被覆する絶縁性被膜5bを有し且つ導体部の断面形状が実質的に四角形であり、ティース42の積層面側の各々に位置する環状体5mの一部をコイル線路部5qと定義し、環状体5mの一部であり且つ一対を成すコイル線路部5qの同方向端部の間に位置する部分をコイルエンド部5rと定義し、コイル線路部5qの一方端からコイルエンド部5rの一方端へと移行する箇所をコイルコーナー部5sと定義し、螺旋状コイルにおいて、コイルエンド部5rの外周部と、コイル線路部5qの外周部と、コイルコーナー部5sの外周部とを含む仮想包絡面に対して凹む凹部5e、5fを少なくとも一つ具備する。
【0061】
本実施の形態によれば、従来例として例示するステータコイルに比べて、本発明のモータにおけるステータコイルは、空気、冷媒、油などに対しての放熱面積を増す構造となる。また、空気、冷媒、油などの循環通路を増す構造となる。これにより、ステータコイルの冷却効果を効率良く高めることが可能である。したがって、高効率のモータを実現することが可能となる。
【0062】
(実施の形態2)
図3は、実施の形態2に係るステータコイル5を示す斜視図である。実施の形態2におけるモータの構成については、実施の形態1と同様の内容であり、重複する内容については、その記述は省略する。
【0063】
図3に示すように、本実施の形態は、螺旋状コイルであるステータコイル5において、コイルエンド部5rの外周部と、コイル線路部5qの外周部と、コイルコーナー部5sの外周部とを含む仮想包絡面に対して凹む複数の凹部5g及び凹部5hを具備する。この複数の凹部の各々を配置する位置は、螺旋状コイルであるステータコイル5において、ステータコイル5の長辺側であるコイル線路部5qの側である。
【0064】
複数の凹部のうちの一つである、凹部5gの底部に、1ターンの環状体のコイル線路部5qの外周部及びコイルコーナー部5sの外周部が位置する態様を含む。
【0065】
複数の凹部のうちの別の一つである、凹部5hの底部に、互いに隣接する複数ターンの環状体のコイル線路部5qの外周部及びコイルコーナー部5sの外周部が位置する態様である。
【0066】
凹部5g及び凹部5hの態様を、上述とは別の表現で以下に記す。即ち、
図3に示す環状体5mにおいて、コイルエンド部5r又はコイル線路部5qにおける環状体の内周端から外周端までの幅をステータコイル幅とするとき、凹部5g及び凹部5hにおけるステータコイル幅は、凹部5g及び凹部5hに隣接するターンである環状体のステータコイル幅よりも狭い幅である。具体的には、凹部5g及び凹部5hにおけるステータコイル幅は、凹部5g及び凹部5hに隣接するターンである環状体のステータコイル幅よりも約1/5から1/2程度の狭い幅を有する。ステータコイル幅を狭める態様に応じて、凹部5g及び凹部5hにおけるコイルコーナー部5sの態様は、空気又は冷媒の流れを妨げない好適な形状を採用する。
【0067】
凹部5g及び凹部5hにおけるステータコイル幅は、凹部5g及び凹部5hに隣接するターンである環状体のステータコイル幅よりも約1/5から1/2程度の狭い幅を有する態様に限定するものではない。ステータコイルの剛性低減と、ステータコイル導体部内の抵抗増によるジュール熱の増加等の事項を勘案し、好適なステータコイル幅を選択可能である。
【0068】
図3の形状ではステータコイル5の長辺側にあるコイル線路部5qの各々に、凹部5gと凹部5hとを配置する態様である。しかし、この態様に限らず、1ターンおきに、凹部5g又は凹部5hを配置する態様でも良い。1ターンおきに凹部を配置する態様の方が、ステータコイルの表面積を増す効果が大きい場合もある。これにより、空気又は冷媒などの流路が確保できる。このため、冷却効果が高まる場合もあり得る。
【0069】
本実施の形態において、
図10Aに示すように、複数の凹部の各々について、当該凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの環状体が具備するコイル線路部5qの外周部及びコイルコーナー部5sの外周部が位置する態様でも良い。
【0070】
本実施の形態において、
図10B及び
図10Cに示すように、複数の凹部の各々について、当該凹部の底部に、1ターンの環状体が具備するコイル線路部5qの外周部及びコイルコーナー部5sの外周部が位置する態様でも良い。
【0071】
【0072】
図3に示すコイルコーナー部5sの形状は、ステータコイル5における環状体5m自体の加工精度による所が大きく影響するため、コイルコーナー部5sの外周部にはR面取り、又はC面取り等を配置しても良い。R面取り又はC面取り等を配置するなどによって、環状体5mの外周部の形状は、平面視にて多角形の形状又は四隅にR部を有する形状を構成しても良い。
【0073】
図3に示すコイルコーナー部5sの内周部についても、ステータコイル5における環状体5m自体の加工における加工容易性の観点で、微細な逃げ溝を配置する態様を採用しても良い。
【0074】
本実施の形態では、ステータコイル5のターン数を10とした。しかし、特にこれに限定されず、他の値であっても良い。なお、図面に示すステータコイル5のターン数は、正確に記すと、ターン数は10を僅かに下回る値である。図面に示すステータコイル5は、第1ターンから第9ターンまでは、各々の環状体5mが、環状の形状にて1周する態様である。一方、第10ターンについては、環状の形状が1周に満たず、環状体5mにおける短辺が一つ分程足らない態様である。この態様を別の表現で示すとすれば、第10ターンは、環状の形状が、4分の1周程度ほど満たない、実質的に4分の3周(3/4周)する態様である。この第10ターンが、4分の1周程度ほど満たないこととなる理由は、引出し部5c及び引出し部5dの配置の態様に起因する。引出し部5c及び引出し部5dの配置の位置次第で、第10ターンが、1周を満たす場合もあれば、1周よりも僅かに多く周回する場合も考察し得る。同様に、第1ターンが、1周に満たない場合もあれば、1周よりも僅かに多く周回する場合も考察し得る。
【0075】
以上のように、本実施の形態のモータ1は、少なくとも、複数のステータコアシート41aを積層する積層体を含むステータコア41と、ステータコア41に具備するティース42を磁心の一部とするステータコイル5を含むステータ4と、ステータコア41のティース42の先端と空隙を介して回転自在に支承されるロータとを含む。ステータコイル5は、予め定められたターン数の環状体5mを含む螺旋状コイルを構成し、環状体に導線部5aを含み、導線部5aは導体部と導体部を被覆する絶縁性被膜5bを有し且つ導体部の断面形状が実質的に四角形であり、ティース42の積層面側の各々に位置する環状体5mの一部をコイル線路部5qと定義し、環状体5mの一部であり且つ一対を成すコイル線路部5qの同方向端部の間に位置する部分をコイルエンド部5rと定義し、コイル線路部5qの一方端からコイルエンド部5rの一方端へと移行する箇所をコイルコーナー部5sと定義するとき、螺旋状コイルにおいて、コイルエンド部5rの外周部と、コイル線路部5qの外周部と、コイルコーナー部5sの外周部とを含む仮想包絡面に対して凹む複数の凹部5g、5hを具備する。複数の凹部5g、5hは、螺旋状コイルにおけるコイル線路部5qの側に位置し、複数の凹部5g、5hのうち少なくとも一つは、凹部の底部に、1ターンの環状体のコイル線路部5qの外周部及びコイルコーナー部5sの外周部が位置する。且つ、複数の凹部5g、5hのうち少なくとも別の一つは、凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの環状体5mのコイル線路部5qの外周部及びコイルコーナー部5sの外周部が位置する。
【0076】
以上のとおり、本実施の形態によれば、従来例として例示するステータコイルに比べて、本発明のモータにおけるステータコイルは、空気、冷媒、油などに対しての放熱面積を増す構造となる。また、空気、冷媒、油などの循環通路を増す構造となる。これにより、ステータコイルの冷却効果を効率良く高めることが可能である。したがって、高効率のモータを実現することが可能となる。また、空気、冷媒、油などの流体は、流れの上流側からステータコイルの近傍の隙間(油路)を通過し、流れの下流へと通過し、更には循環が円滑となり、放熱効果を高めることが可能となる。
【0077】
(実施の形態3)
図4は、実施の形態3に係るステータコイル5を示す斜視図。実施の形態3におけるモータの構成については、実施の形態1と同様の内容であり、重複する内容については、その記述は省略する。
【0078】
図4に示すように、本実施の形態は、螺旋状コイルであるステータコイル5において、コイルエンド部5rの外周部と、コイル線路部5qの外周部と、コイルコーナー部5sの外周部とを含む仮想包絡面に対して凹む複数の凹部を具備する態様である。即ち、この複数の凹部の各々を配置する位置は、螺旋状コイルであるステータコイル5において、ステータコイル5の外周面の一周に亘っている。
【0079】
複数の凹部のうちの一つである、凹部5iの底部に、1ターンの環状体のコイル線路部5qの外周部、コイルエンド部5rの外周部及びコイルコーナー部5sの外周部が位置する。
【0080】
複数の凹部のうちの別の一つである、凹部5jの底部に、互いに隣接する複数ターンの環状体のコイル線路部5qの外周部、コイルエンド部5rの外周部及びコイルコーナー部5sの外周部が位置する。
【0081】
凹部5i及び凹部5jの態様を、上述とは別の表現で以下に記す。即ち、
図4に示す環状体5mにおいて、コイルエンド部5r又はコイル線路部5qにおける環状体の内周端から外周端までの幅をステータコイル幅とするとき、凹部5i及び凹部5jにおけるステータコイル幅は、凹部5i及び凹部5jに隣接するターンである環状体のステータコイル幅よりも狭い幅である。具体的には、凹部5i及び凹部5jにおけるステータコイル幅は、凹部5i及び凹部5jに隣接するターンである環状体のステータコイル幅よりも約1/5から1/2程度の狭い幅を有する。また、このステータコイル幅を狭める態様に応じて、凹部5i及び凹部5jにおけるコイルコーナー部5sの態様は、空気又は冷媒の流れを妨げない好適な形状を採用する。
【0082】
なお、凹部5i及び凹部5jにおけるステータコイル幅は、凹部5i及び凹部5jに隣接するターンである環状体のステータコイル幅よりも約1/5から1/2程度の狭い幅を有する態様に限定するものではない。ステータコイルの剛性低減と、ステータコイル導体部内の抵抗増によるジュール熱の増加等の事項を勘案し、好適なステータコイル幅を選択可能である。
【0083】
また、
図4の形状ではステータコイル5の一周に亘って、凹部5iと凹部5jとを配置する態様である。しかし、この態様に限らず、1ターンおきに、凹部5i又は凹部5jを配置する態様でも良い。1ターンおきに凹部を配置する態様の方が、ステータコイルの表面積を増す効果が大きい場合もある。これにより、空気や冷媒などの流路が確保できる。したがって、冷却効果が高まる場合もあり得る。
【0084】
本実施の形態において、
図10Aに示すように、複数の凹部の各々について、当該凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの環状体が具備するコイル線路部5qの外周部及びコイルコーナー部5sの外周部が位置する態様でも良い。
【0085】
本実施の形態において、
図10B及び
図10Cに示すように、複数の凹部の各々について、当該凹部の底部に、1ターンの環状体が具備するコイル線路部5qの外周部及びコイルコーナー部5sの外周部が位置する態様でも良い。
【0086】
図4に示すコイルコーナー部5sの形状は、ステータコイル5における環状体5m自体の加工精度による所が大きく影響するため、コイルコーナー部5sの外周部にはR面取り、又はC面取り等を配置しても良い。R面取り又はC面取り等を配置するなどによって、環状体5mの外周部の形状は、平面視にて多角形の形状又は四隅にR部を有する形状を構成しても良い。
【0087】
図4に示すコイルコーナー部5sの内周部についても、ステータコイル5における環状体5m自体の加工における加工容易性の観点で、微細な逃げ溝を配置する態様を採用しても良い。
【0088】
本実施の形態では、ステータコイル5のターン数を10とした。しかし、特にこれに限定されず、他の値であっても良い。なお、図面に示すステータコイル5のターン数は、正確に記すと、ターン数は10を僅かに下回る値である。図面に示すステータコイル5は、第1ターンから第9ターンまでは、各々の環状体5mが、環状の形状にて1周する態様である。一方、第10ターンについては、環状の形状が1周に満たず、環状体5mにおける短辺が一つ分程足らない態様である。この態様を別の表現で示すとすれば、第10ターンは、環状の形状が、4分の1周程度ほど満たない、実質的に4分の3周(3/4周)する態様である。この第10ターンが、4分の1周程度ほど満たないこととなる理由は、引出し部5c及び引出し部5dの配置の態様に起因する。引出し部5c及び引出し部5dの配置の位置次第で、第10ターンが、1周を満たす場合もあれば、1周よりも僅かに多く周回する場合も考察し得る。同様に、第1ターンが、1周に満たない場合もあれば、1周よりも僅かに多く周回する場合も考察し得る。
【0089】
以上のとおり、本実施の形態によれば、従来例として例示するステータコイルに比べて、本発明のモータにおけるステータコイルは、空気、冷媒、油などに対しての放熱面積を増す構造となる。また、空気、冷媒、油などの循環通路を増す構造となる。これにより、ステータコイルの冷却効果を効率良く高めることが可能である。したがって、高効率のモータを実現することが可能となる。また、空気、冷媒、油などの流体は、流れの上流側からステータコイルの近傍の隙間(油路)を通過し、流れの下流へと通過し、更には循環が円滑となる。よって、放熱効果を高めることが可能となる。
【0090】
(実施の形態4)
図5は、実施の形態4に係るステータコイル5を示す斜視図である。実施の形態4におけるモータの構成については、実施の形態1と同様の内容であり、重複する内容については、その記述は省略する。
【0091】
図5に示すように、本実施の形態は、螺旋状コイルであるステータコイル5において、コイルエンド部5rの外周部と、コイル線路部5qの外周部と、コイルコーナー部5sの外周部とを含む仮想包絡面に対して凹む複数の凹部を具備する態様である。即ち、この複数の凹部の各々を配置する位置は、螺旋状コイルであるステータコイル5において、ステータコイル5の外周面の一周に亘っている。
【0092】
複数の凹部のうちの一つである、凹部5iの底部に、1ターンの環状体のコイル線路部5qの外周部、コイルエンド部5rの外周部及びコイルコーナー部5sの外周部が位置する。
【0093】
複数の凹部のうちの別の一つである、凹部5jの底部に、互いに隣接する複数ターンの環状体のコイル線路部5qの外周部、コイルエンド部5rの外周部及びコイルコーナー部5sの外周部が位置する。
【0094】
凹部5i及び凹部5jの態様を、上述とは別の表現で以下に記す。即ち、
図5に示す環状体5mにおいて、コイルエンド部5r又はコイル線路部5qにおける環状体の内周端から外周端までの幅をステータコイル幅とするとき、凹部5i及び凹部5jにおけるステータコイル幅は、凹部5i及び凹部5jに隣接するターンである環状体のステータコイル幅よりも狭い幅である。具体的には、凹部5i及び凹部5jにおけるステータコイル幅は、凹部5i及び凹部5jに隣接するターンである環状体のステータコイル幅よりも約1/5から1/2程度の狭い幅を有する。このステータコイル幅を狭める態様に応じて、凹部5i及び凹部5jにおけるコイルコーナー部5sの態様は、空気又は冷媒の流れを妨げない好適な形状を採用する。
【0095】
なお、凹部5i及び凹部5jにおけるステータコイル幅は、凹部5i及び凹部5jに隣接するターンである環状体のステータコイル幅よりも約1/5から1/2程度の狭い幅を有する態様に限定するものではない。ステータコイルの剛性低減と、ステータコイル導体部内の抵抗増によるジュール熱の増加等の事項を勘案し、好適なステータコイル幅を選択可能である。
【0096】
図5の形状ではステータコイル5の一周に亘って、凹部5iと凹部5jとを配置する態様であるが、この態様に限らず、1ターンおきに、凹部5i又は凹部5jを配置する態様でも良い。1ターンおきに凹部を配置する態様の方が、ステータコイルの表面積を増す効果が大きい場合もある。これにより、空気又は冷媒などの流路が確保できる。したがって、冷却効果が高まる場合もあり得る。
【0097】
本実施の形態において、
図10Aに示すように、複数の凹部の各々について、複数の凹部の底部に、互いに隣接する複数ターンの環状体が具備するコイル線路部5qの外周部及びコイルコーナー部5sの外周部が位置する態様でも良い。
【0098】
本実施の形態において、
図10B及び
図10Cに示すように、複数の凹部の各々について、複数の凹部の底部に、1ターンの環状体が具備するコイル線路部5qの外周部及びコイルコーナー部5sの外周部が位置する態様でも良い。
【0099】
図5に示すコイルコーナー部5sの形状は、ステータコイル5における環状体5m自体の加工精度による所が大きく影響する。このため、コイルコーナー部5sの外周部にはR面取り、又はC面取り等を配置しても良い。R面取り又はC面取り等を配置するなどによって、環状体5mの外周部の形状は、平面視にて多角形の形状又は四隅にR部を有する形状を構成しても良い。
【0100】
また、
図5に示すコイルコーナー部5sの内周部についても、ステータコイル5における環状体5m自体の加工における加工容易性の観点で、微細な逃げ溝を配置する態様を採用しても良い。
【0101】
なお、本実施の形態では、ステータコイル5のターン数を10とした。しかし、特にこれに限定されず、他の値であっても良い。なお、図面に示すステータコイル5のターン数は、正確に記すと、ターン数は10を僅かに下回る値である。図面に示すステータコイル5は、第1ターンから第9ターンまでは、各々の環状体5mが、環状の形状にて1周する態様である。一方、第10ターンについては、環状の形状が1周に満たず、環状体5mにおける短辺が一つ分程足らない態様である。この態様を別の表現で示すとすれば、第10ターンは、環状の形状が、4分の1周程度ほど満たない、実質的に4分の3周(3/4周)する態様である。この第10ターンが、4分の1周程度ほど満たないこととなる理由は、引出し部5c及び引出し部5dの配置の態様に起因する。引出し部5c及び引出し部5dの配置の位置次第で、第10ターンが、1周を満たす場合もあれば、1周よりも僅かに多く周回する場合もあり得る。同様に、第1ターンが、1周に満たない場合もあれば、1周よりも僅かに多く周回する場合もあり得る。
【0102】
更に、本実施の形態では、予め定められたターン数の内の、開始ターンから終始ターンに亘って連通する溝状の凹部5k及び凹部5lを有する。複数の凹部のうちで異なる凹部同士間において、凹部の溝状形状の長手方向が互いに交差する態様を有する。即ち、凹部5k及び凹部5lにおける凹部の溝状形状の長手方向は、凹部5iと凹部5jにおける凹部の溝状形状の長手方向に対して、実質的に直交する配置である。
【0103】
連通する溝状の凹部5k及び凹部5lの断面形状は、実質的な形状として四角形を例示する。しかし、これに限らず溝の断面形状は、実質的な形状として三角形、実質的な形状として半円形又は実質的な形状として台形などどのような形状でもよい。設けられる箇所もステータコイルの包絡面の四面のうちいずれでも良く、好適な箇所を適宜選択する。
【0104】
以上のとおり、本実施の形態によれば、従来例として例示するステータコイルに比べて、本発明のモータにおけるステータコイルは、空気、冷媒、油などに対しての放熱面積を増す構造となる。また、空気、冷媒、油などの循環通路を増す構造となる。これにより、ステータコイルの冷却効果を効率良く高めることが可能である。したがって、高効率のモータを実現することが可能となる。空気、冷媒、油などの流体は、流れの上流側からステータコイルの近傍の隙間(油路)を通過し、流れの下流へと通過し、更には循環が円滑となり、放熱効果を高めることが可能となる。
【0105】
(実施の形態5)
図6は、実施の形態5に係るステータコイル5を示す斜視図である。実施の形態5におけるモータの構成については、実施の形態1と同様の内容であり、重複する内容については、その記述は省略する。
【0106】
図6に示す螺旋状コイルであるステータコイル5は、コイルエンド部5rの外周部と、コイル線路部5qの外周部と、コイルコーナー部5sの外周部とを含む仮想包絡面において、予め定められたターン数の内の開始ターンから終始ターンに亘って、コイルエンド部の中央部を稜線5nとして、稜線5nから各コイルコーナー部5sへ下る斜面5pを具備する。
【0107】
斜面5pは、平坦な面を図示している。しかし、斜面5pの態様は、これに限らず、凸状曲面、凹状曲面、異なる傾斜角を複数含む複合斜面又は何らかの関数曲面でも良く、特に限定しない。
【0108】
斜面5pは、螺旋状コイルであるステータコイル5の一方側のコイルエンド部5rの側にのみ配置する態様であるが、両方のコイルエンド部5rの各々に、斜面を配置する態様でも良く、特に限定しない。
【0109】
ステータコイル5のターン数を10とした。しかし、特にこれに限定されず、他の値であっても良い。なお、図面に示すステータコイル5のターン数は、正確に記すと、ターン数は10を僅かに下回る値である。
図6に示すステータコイル5は、第1ターンから第9ターンまでは、各々の環状体5mが、環状の形状にて1周する態様である。一方、第10ターンについては、環状の形状が1周に満たず、環状体5mにおける短辺が一つ分程足らない態様である。この態様を別の表現で示すとすれば、第10ターンは、環状の形状が、4分の1周程度ほど満たない、実質的に4分の3周(3/4周)する態様である。第10ターンが、4分の1周程度ほど満たないこととなる理由は、引出し部5c及び引出し部5dの配置の態様に起因する。引出し部5c及び引出し部5dの配置の位置次第で、第10ターンが、1周を満たす場合もあれば、1周よりも僅かに多く周回する場合もあり得る。同様に、第1ターンが、1周に満たない場合もあれば、1周よりも僅かに多く周回する場合もあり得る。
【0110】
以上のように、本実施の形態のモータ1は、少なくとも、複数のステータコアシート41aを積層する積層体を含むステータコア41と、ステータコア41に具備するティースを磁心の一部とするステータコイル5を含むステータ4と、ステータコア41のティース42の先端と空隙を介して回転自在に支承されるロータ3とを含む。ステータコイル5は、予め定められたターン数の環状体5mを含む螺旋状コイルを構成し、環状体5mに導線部5aを含み、導線部5aは導体部と導体部を被覆する絶縁性被膜5bを有し且つ導体部の断面形状が実質的に四角形であり、ティース42の積層面側の各々に位置する環状体5mの一部をコイル線路部5qと定義し、環状体5mの一部であり且つ一対を成すコイル線路部5mの同方向端部の間に位置する部分をコイルエンド部5rと定義し、コイル線路部5qの一方端からコイルエンド部5rの一方端へと移行する箇所をコイルコーナー部と定義するとき、螺旋状コイルにおいて、コイルエンド部5rの外周部と、コイル線路部5qの外周部と、コイルコーナー部5sの外周部とを含む仮想包絡面において、予め定められたターン数の内の開始ターンから終始ターンに亘って、コイルエンド部5rの中央部を稜線5nとして、稜線5nから各々のコイルコーナー部5sへ下る斜面を具備する。
【0111】
以上のとおり、本実施の形態によれば、従来例として例示するステータコイルに比べて、本発明のモータにおけるステータコイルは、空気、冷媒、油などに対しての放熱面積を増す構造となる。また、空気、冷媒、油などの循環通路を増す構造となる。これにより、ステータコイルの冷却効果を効率良く高めることが可能である。したがって、高効率のモータを実現することが可能となる。空気、冷媒、油などの流体は、流れの上流側からステータコイルの近傍の隙間(油路)を通過し、流れの下流へと通過し、更には循環が円滑となり、放熱効果を高めることが可能となる。
【0112】
(実施の形態6)
図7は、実施の形態6に係るステータコイル5を示す斜視図である。実施の形態6におけるモータの構成については、実施の形態1と同様の内容であり、重複する内容については、その記述は省略する。実施の形態6におけるステータコイル5の構成については、実施の形態1とほぼ同様の内容であり、重複する内容については、その記述は省略する。
【0113】
図7に示す螺旋状コイルであるステータコイル5は、コイルエンド部5rの外周部と、コイル線路部5qの外周部と、コイルコーナー部5sの外周部とを含む仮想包絡面において、予め定められたターン数の内の開始ターンから終始ターンに亘って、コイルエンド部の中央部を稜線5nとして、稜線5nから各々のコイルコーナー部5sへ下る斜面5pを具備する。
【0114】
斜面5pは、平坦な面を図示している。しかし、斜面5pの態様は、これに限らず、凸状曲面、凹状曲面、異なる傾斜角を複数含む複合斜面又は何らかの関数曲面でも良く、特に限定しない。
【0115】
斜面5pは、螺旋状コイルであるステータコイル5の一方側のコイルエンド部5rの側にのみ配置する態様であるが、両方のコイルエンド部5rの各々に、斜面5pを配置する態様でも良く、特に限定しない。
【0116】
本実施の形態によれば、従来例として例示するステータコイルに比べて、本発明のモータにおけるステータコイルは、空気、冷媒、油などに対しての放熱面積を増す構造となる。また、空気、冷媒、油などの循環通路を増す構造となる。これにより、ステータコイルの冷却効果を効率良く高めることが可能である。したがって、高効率のモータを実現することが可能となる。空気、冷媒、油などの流体は、流れの上流側からステータコイルの近傍の隙間(油路)を通過し、流れの下流へと通過し、更には循環が円滑となり、放熱効果を高めることが可能となる。
【0117】
(実施の形態7)
図8は、実施の形態7に係るステータコイル5を示す斜視図である。実施の形態7におけるモータの構成については、実施の形態1と同様の内容であり、重複する内容については、その記述は省略する。実施の形態7におけるステータコイル5の構成については、実施の形態1とほぼ同様の内容であり、重複する内容については、その記述は省略する。
【0118】
図8に示す螺旋状コイルであるステータコイル5は、コイルエンド部5rの外周部と、コイル線路部5qの外周部と、コイルコーナー部5sの外周部とを含む仮想包絡面において、予め定められたターン数の内の開始ターンから終始ターンに亘って、コイルエンド部の中央部を稜線5nとして、稜線5nから各々のコイルコーナー部5sへ下る斜面5pを具備する。
【0119】
斜面5pは、平坦な面を図示している。しかし、斜面5pの態様は、これに限らず、凸状曲面、凹状曲面、異なる傾斜角を複数含む複合斜面又は何らかの関数曲面でも良く、特に限定しない。
【0120】
斜面5pは、螺旋状コイルであるステータコイル5の一方側のコイルエンド部5rの側にのみ配置する態様であるが、両方のコイルエンド部5rの各々に、斜面5pを配置する態様でも良く、特に限定しない。
【0121】
ステータコイル5のターン数を10とした。しかし、特にこれに限定されず、他の値であっても良い。なお、図面に示すステータコイル5のターン数は、正確に記すと、ターン数は10を僅かに下回る値である。
図8に示すステータコイル5は、第1ターンから第9ターンまでは、各々の環状体5mが、環状の形状にて1周する態様である。一方、第10ターンについては、環状の形状が1周に満たず、環状体5mにおける短辺が一つ分程足らない態様である。この態様を別の表現で示すとすれば、第10ターンは、環状の形状が、4分の1周程度ほど満たない、実質的に4分の3周(3/4周)する態様である。第10ターンが、4分の1周程度ほど満たないこととなる理由は、引出し部5c及び引出し部5dの配置の態様に起因する。引出し部5c及び引出し部5dの配置の位置次第で、第10ターンが、1周を満たす場合もあれば、1周よりも僅かに多く周回する場合もあり得る。同様に、第1ターンが、1周に満たない場合もあれば、1周よりも僅かに多く周回する場合もあり得る。
【0122】
以上のとおり、本実施の形態によれば、従来例として例示するステータコイルに比べて、本発明のモータにおけるステータコイルは、空気、冷媒、油などに対しての放熱面積を増す構造となる。また、空気、冷媒、油などの循環通路を増す構造となる。これにより、ステータコイルの冷却効果を効率良く高めることが可能である。したがって、高効率のモータを実現することが可能となる。空気、冷媒、油などの流体は、流れの上流側からステータコイルの近傍の隙間(油路)を通過し、流れの下流へと通過し、更には循環が円滑となり、放熱効果を高めることが可能となる。
【0123】
(実施の形態8)
図9は、実施の形態8に係るステータコイル5を示す斜視図である。実施の形態8におけるモータの構成については、実施の形態1と同様の内容であり、重複する内容については、その記述は省略する。実施の形態8におけるステータコイル5の構成については、実施の形態3とほぼ同様の内容であり、重複する内容については、その記述は省略する。
【0124】
図9に示す螺旋状コイルであるステータコイル5は、コイルエンド部5rの外周部と、コイル線路部5qの外周部と、コイルコーナー部5sの外周部とを含む仮想包絡面において、予め定められたターン数の内の開始ターンから終始ターンに亘って、コイルエンド部の中央部を稜線5nとして、稜線5nから各々のコイルコーナー部5sへ下る斜面5pを具備する。
【0125】
斜面5pは、螺旋状コイルであるステータコイル5の一方側のコイルエンド部5rの側にのみ配置する態様であるが、両方のコイルエンド部5rの各々に、斜面5pを配置する態様でも良く、特に限定しない。
【0126】
斜面5pは、平坦な面を図示している。しかし、斜面5pの態様は、これに限らず、凸状曲面、凹状曲面、異なる傾斜角を複数含む複合斜面又は何らかの関数曲面でも良く、特に限定しない。
【0127】
ステータコイル5のターン数を10とした。しかし、特にこれに限定されず、他の値であっても良い。なお、図面に示すステータコイル5のターン数は、正確に記すと、ターン数は10を僅かに下回る値である。
図8に示すステータコイル5は、第1ターンから第9ターンまでは、各々の環状体5mが、環状の形状にて1周する態様である。一方、第10ターンについては、環状の形状が1周に満たず、環状体5mにおける短辺が一つ分程足らない態様である。この態様を別の表現で示すとすれば、第10ターンは、環状の形状が、4分の1周程度ほど満たない、実質的に4分の3周(3/4周)する態様である。第10ターンが、4分の1周程度ほど満たないこととなる理由は、引出し部5c及び引出し部5dの配置の態様に起因する。引出し部5c及び引出し部5dの配置の位置次第で、第10ターンが、1周を満たす場合もあれば、1周よりも僅かに多く周回する場合もあり得る。同様に、第1ターンが、1周に満たない場合もあれば、1周よりも僅かに多く周回する場合もあり得る。
【0128】
以上のとおり、本実施の形態によれば、従来例として例示するステータコイルに比べて、本発明のモータにおけるステータコイルは、空気、冷媒、油などに対しての放熱面積を増す構造となる。また、空気、冷媒、油などの循環通路を増す構造となる。これにより、ステータコイルの冷却効果を効率良く高めることが可能である。したがって、高効率のモータを実現することが可能となる。空気、冷媒、油などの流体は、流れの上流側からステータコイルの近傍の隙間(油路)を通過し、流れの下流へと通過し、更には循環が円滑となり、放熱効果を高めることが可能となる。
【0129】
(実施の形態9)
図10Aは、実施の形態9に係るステータコイル5を示す断面図である。
図10Bは、実施の形態9に係る別のステータコイル5を示す断面図である。
図10Cは、実施の形態9に係る別のステータコイル5を示す断面図である。
図10Dは、実施の形態9に係る別のステータコイル5を示す断面図である。
図10Eは、実施の形態9に係る別のステータコイル5を示す断面図である。
図10Fは、実施の形態9に係る別のステータコイル5を示す断面図である。実施の形態9にて示すステータコイル5の態様は、実施の形態2、実施の形態3、実施の形態4、実施の形態7及び実施の形態8においても、適用可能な態様を示すものである。
【0130】
実施の形態9におけるモータの構成については、実施の形態1と同様の内容であり、重複する内容については、その記述は省略する。また、実施の形態9におけるステータコイル5の構成については、実施の形態2、実施の形態3、実施の形態4、実施の形態7及び実施の形態8とほぼ同様の内容であり、重複する内容については、その記述は省略する。
【0131】
図10Aに示すステータコイル5の総ターン数は、実質的に10である。
図10Aに示すステータコイル5においては、第2ターン、第3ターン、第7ターン及び第8ターンを、隣接のターンよりも導体の幅寸法を狭めた態様である。この態様によって油路45を構成する。
【0132】
図10Bに示すステータコイル5の総ターン数は、実質的に10である。
図10Bに示すステータコイル5においては、第2ターン、第5ターン及び第9ターンを、隣接のターンよりも導体の幅寸法を狭めた態様である。
図10Aに示すステータコイル5の態様よりも、
図10Bに示すステータコイル5の態様の方が、ステータコイル5の表面積は大きくすることが可能であると考察され、ステータコイル5の放熱効果が高められるものと考察される。
【0133】
図10Cに示すステータコイル5の総ターン数は、実質的に10である。
図10Cに示すステータコイル5においては、ティース先端側に位置するステータコイルのターンを前後のターンよりも導体の幅寸法を狭めた態様である。この態様によって油路45を構成する。一従来例として例示する
図11Bのステータコイル5においては、ティース42の先端側に位置するステータコイルのターンにおける渦電流損失が他のターンよりも大きくなる傾向が把握されている。そのため、ティース先端側に位置するステータコイルのターンの導体の幅寸法を、他のターンよりも導体の幅寸法を狭めた態様であり、ティース42の先端側に、前後のターンのステータコイル幅よりも小さくする箇所を集中配置する態様である。この態様によって、渦電流による損失や発熱を抑制可能となる。
【0134】
図10D及び
図10Eに示すステータコイル5は、ステータのスロット内で隣接するステータコイルの全体形状がお互いに異なる態様である。この態様によって油路45を構成する。ステータコイルの表面積を大きくすること、また液体の流路を構成することは重要であり、隣接するステータコイルの形状が同一である必要は無い。
図10D及び
図10Eに示すように隣接するステータコイルの全体形状を互いに異なわせることで、液体の流路を構成する。この構成により、導体の断面積を許容可能な範囲で特定して、導体のジュール損失を低減しつつ、流路を確保する。これにより、発熱の抑制、冷却効果を高めることが可能となる。
【0135】
図10Fに示すステータコイル5は、ティース42の側先端側で且つティース42と接するステータコイル5の内周側に空隙46を配置する態様である。この態様によって、ステータコイルにおける渦電流に起因する発熱を効果的に低減することが可能である。したがって、モータの性能向上に資するものである。
【0136】
本実施の形態によれば、従来例として例示するステータコイルに比べて、本発明のモータにおけるステータコイルは、空気、冷媒、油などに対しての放熱面積を増す構造である。また、空気、冷媒、油などの循環通路を増す構造である。これにより、ステータコイルの冷却効果を効率良く高めることが可能である。よって、高効率のモータを実現することが可能となる。空気、冷媒、油などの流体は、流れの上流側からステータコイルの近傍の隙間(油路45)を通過し、流れの下流へと通過する。更には流体の循環が円滑となる。よって、放熱効果を高めることが可能となる。
【0137】
本発明におけるステータコイル5は、鋳造により形成可能である。この方法によれば、断面積の大きい導線を容易に螺旋状のステータコイルを成形可能である。なお、上記の鋳造に限らず、他の方法で形成しても良い。例えば、銅、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、鉄、SUS(Steel Use Stainless)、真鍮などの固体物から切削加工等によって形成しても良い。また、個々に成形された部品同士を溶接又は接合による部材一体化により形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明のモータにおけるステータコイルは、冷却性能を高めることができ、モータ又は電力機器に適用する上で有用である。
【符号の説明】
【0139】
1 モータ
3 ロータ
4 ステータ
5 ステータコイル
5a 導線部
5b 絶縁性被膜
5c 引出し部
5d 引出し部
5e 凹部
5f 凹部
5g 凹部
5h 凹部
5i 凹部
5j 凹部
5k 凹部
5l 凹部
5m 環状体
5n 稜線
5p 斜面
5q コイル線路部
5r コイルエンド部
5s コイルコーナー部
41 ステータコア
41a ステータコアシート
42 ティース
43 スロット
44 ヨーク
45 油路
46 空隙