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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】合成樹脂管用継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/091 20060101AFI20230623BHJP
   F16L 47/08 20060101ALI20230623BHJP
   F16L 21/08 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
F16L37/091
F16L47/08
F16L21/08 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019117612
(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公開番号】P2021004623
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大内 亮二
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】実公昭48-018579(JP,Y1)
【文献】独国特許出願公開第102015118546(DE,A1)
【文献】特開2007-113737(JP,A)
【文献】特開2004-044619(JP,A)
【文献】特開2019-168051(JP,A)
【文献】特開2020-051590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/091
F16L 47/08
F16L 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の本体部と、前記本体部の一端部に形成されたフランジ部と、前記フランジ部側から前記本体部に挿入された合成樹脂管を係止するために前記フランジ部に取り付けられた複数の係止部材と、前記係止部材を係止状態と解除状態に切替えるために前記フランジ部に前記本体部の軸心と同軸状に取り付けられた操作部材を備えた合成樹脂管用継手において、
前記操作部材は円筒壁部と中央が開口された底壁部と、前記円筒壁部の前記底壁部と反対側の端部から前記軸心に平行に延びる係合部を有し、
複数の前記係止部材は、前記操作部材の前記軸心周りの回動操作に応じて前記本体部の径方向に移動することによって前記係止状態と前記解除状態が切替えられ、
前記本体部の外周部には、前記操作部材の前記係止状態を解除する方向の回動を規制するために前記本体部の径方向外方に突出した2つの係合突起を有する規制部が形成され
前記係合部は、前記規制部と協働して前記係止状態を解除する方向の回動を規制するために、2つの前記係合突起のうちの一方に対して径方向に係合する径方向係合部と、他方に対して前記係止状態を解除する回動方向に係合する周方向係合部を備えたことを特徴とする合成樹脂管用継手。
【請求項2】
前記径方向係合部は、係合するとき及び係合を解除するときに前記係合部の径方向の弾性変形を利用し、
前記周方向係合部は、係合するとき及び係合を解除するときに前記係合部の前記軸心の方向の弾性変形を利用することを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂管用継手
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯システム等に使用される合成樹脂配管を接続するための継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、給湯システムに使用される湯水配管は、水圧に応じて高圧箇所には金属管が使用され、低圧箇所には合成樹脂管が使用されている。給湯システムの構成機器に接続する合成樹脂管は施工現場で長さが調整され、この合成樹脂管を接続するための合成樹脂管用継手は、施工現場で容易に接続できるように構成されている。
【0003】
合成樹脂管用継手は、挿入された合成樹脂管を係止部材によって係止状態にして、合成樹脂管が抜けないようにする。例えば特許文献1のように、螺合させた押圧体によって係止部材であるロックリングが固定された継手が知られている。
【0004】
また、例えば特許文献2のように、ロックリングを固定するためのロックリングホルダーを継手に外嵌させて抜けないようにするために、継手の外周部に複数の係合突起を有し、これら係合突起に係合させる溝をロックリングホルダーに備えた継手が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】登録実用新案第3057910号公報
【文献】特許第4352434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の押圧体は、螺合を解除する方向の回転が規制されていない。また、特許文献2のロックリングホルダーは、係合突起との係合を解除する方向の回転が規制されていない。それ故、人や物の接触、振動等によって偶発的に押圧体やロックリングホルダーが解除方向に回転する虞があり、漏水の発生や合成樹脂管が抜ける虞がある。
【0007】
本発明の目的は、合成樹脂管の偶発的な係止解除を防止することができ、作業者が容易に係止解除することができる合成樹脂管用継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明の合成樹脂管用継手は、円筒状の本体部と、前記本体部の一端部に形成されたフランジ部と、前記フランジ部側から前記本体部に挿入された合成樹脂管を係止するために前記フランジ部に取り付けられた複数の係止部材と、前記係止部材を係止状態と解除状態に切替えるために前記フランジ部に前記本体部の軸心と同軸状に取り付けられた操作部材を備えた合成樹脂管用継手において、前記操作部材は円筒壁部と中央が開口された底壁部と、前記円筒壁部の前記底壁部と反対側の端部から前記軸心に平行に延びる係合部を有し、複数の前記係止部材は、前記操作部材の前記軸心周りの回動操作に応じて前記本体部の径方向に移動することによって前記係止状態と前記解除状態が切替えられ、前記本体部の外周部には、前記操作部材の前記係止状態を解除する方向の回動を規制するために前記本体部の径方向外方に突出した2つの係合突起を有する規制部が形成され、前記係合部は、前記規制部と協働して前記係止状態を解除する方向の回動を規制するために、2つの前記係合突起のうちの一方に対して径方向に係合する径方向係合部と、他方に対して前記係止状態を解除する回動方向に係合する周方向係合部を備えたことを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、合成樹脂管用継手に合成樹脂管を挿入し、操作部材を回動操作して係止状態にする。係止状態では係合部と規制部が協働して、係合部の径方向係合部と周方向係合部が規制部の2つの係合突起に夫々係合することによって、この係止状態を解除する方向の操作部材の回動を規制するので、係止状態が偶発的に解除されることを防止することができる。
【0012】
請求項の発明の合成樹脂管用継手は、請求項の発明において、前記径方向係合部は、係合するとき及び係合を解除するときに前記係合部の径方向の弾性変形を利用し、前記周方向係合部は、係合するとき及び係合を解除するときに前記係合部の前記軸心の方向の弾性変形を利用することを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、係合を解除するときに径方向と軸心の方向に係合部を弾性変形させるので、係止状態の偶発的な解除を防止することができ、作業者の回動操作によって容易に係止状態を解除することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の合成樹脂管用継手によれば、合成樹脂管の偶発的な係止解除を防止することができ、作業者は容易に係止解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例に係る合成樹脂管用継手の斜視図である。
図2】合成樹脂管用継手の要部分解斜視図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4図3の合成樹脂管用継手に合成樹脂管を係止したときの断面図である。
図5】挿入検知部材の斜視図である。
図6】操作部材の内部を示す平面図である。
図7】環状係止部材をガイド部材側から見た平面図である。
図8】本体部の規制部を示す平面図である。
図9】操作部材の係合部を示す平面図である。
図10】規制部に係合部が係合した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例
【0017】
給湯システムを構成する機器に接続される合成樹脂管(例えばポリエチレン管、ポリブデン管)は、施工現場でその機器の内部配管の端部に配設されている合成樹脂管用継手1に接続される。図1図4に示すように、合成樹脂管用継手1は、例えば内部配管Uの端部に固定される円筒状の本体部2と、本体部2の一端部(内部配管Uと反対側の端部)に形成されたフランジ部3と、本体部2の軸心Cと同軸状に且つフランジ部3に外嵌するように取り付けられた操作部材10を備えている。合成樹脂管Tは、軸心Cに沿うように操作部材10を介してフランジ部3側から本体部2に挿入される。
【0018】
本体部2の合成樹脂管Tを挿入する部分は、フランジ部3側の内径が大きい大径部2aと、大径部2aよりも内径が小さい管挿入方向奥側の小径部2b(内奥部)を有する。この小径部2bの管挿入方向奥側で、小径部2bよりも内径が小さい連通路2cを介して内部配管Uの接続部2dに連通している。この本体部2の内部には、円筒状のインナー部材4が軸心Cと同軸状に組み込まれ、且つ合成樹脂管Tの挿入を検知するための環状の挿入検知部材5とシール部材6がインナー部材4に対して外嵌状に収容されている。フランジ部3にはガイド部材30と環状係止部材20と操作部材10が装着されている。
【0019】
例えば、軸心Cを鉛直に且つフランジ部3を上側にした姿勢の本体部2に、インナー部材4、挿入検知部材5、シール部材6の順に組み込む。挿入検知部材5とシール部材6を装着したインナー部材4を本体部2に組み込んでもよい。この本体部2のフランジ部3にガイド部材30を装着し、ガイド部材30に環状係止部材20を載置した状態で操作部材10をフランジ部3に装着する。このようにして組み立てられた合成樹脂管用継手1は、給湯機器製造工場又は施工現場で機器の内部配管Uに接続される。
【0020】
インナー部材4の管挿入方向奥側の端部には、インナーフランジ部4aが形成されている。インナーフランジ部4aは本体部2の小径部2bに外嵌されるように、且つ小径部2bの管挿入方向奥側壁部に当接させた状態で収容され、インナー部材4のインナーフランジ部4aと反対側の端部は、軸心Cの方向にフランジ部3よりも外側まで延びている。
【0021】
シール部材6は、インナー部材4に対して離隔して外嵌するように、且つ本体部2の大径部2aに外嵌されるように収容される。このシール部材6は、大径部2aの軸心Cの方向の長さに合せて、複数のバックアップリング6aと複数のシールリング6bが交互に並べられ、バックアップリング6aによってシールリング6bを挟持するように形成されている。
【0022】
挿入検知部材5は、インナーフランジ部4aとシール部材6の間の小径部2bに収容されている。この挿入検知部材5は、図2図5に示すように、リング部5aと、リング部5aから管挿入方向奥側に向かって延び且つ先端部が鉤状になった複数の爪部5bを有している。爪部5bの先端部は径方向外側に向かって突出し、この突出した部分は管挿入方向奥側ほど突出量が少なくなるように傾斜させている、又は丸められている。尚、本実施例では、先端部が径方向外方に向かって突出して鉤状になった3つの爪部5bを備えているが、爪部の数はこれに限られず、先端部の突出方向もこれに限られるものではない。
【0023】
図3に示すように、爪部5bの先端側の部分は、リング部5aがシール部材6に当接又は近接した状態で、爪部5bに対応するようにインナーフランジ部4aに設けられた挿入孔4bに挿入され、挿入検知部材5の周方向の回転が規制されている。挿入孔4bには、爪部5bの先端部が突出する側に段差部4cが形成され、爪部5bの先端部の奥側への進入を規制している。ここでは、段差部4cは、管挿入方向奥側ほど軸心Cに近づくように傾斜し、その奥側端部が急激に軸心Cから遠ざかるように形成されているが、これに限られるものではない。
【0024】
図2図6に示すように、操作部材10は、円筒壁部11と底壁部12を有する有底円筒状に形成され、円筒壁部11の外周に複数の滑り止めの溝が設けられている。底壁部12の中央には、合成樹脂管Tを挿通するための開口13が設けられている。円筒壁部11の底壁部12と反対側の端部内壁には、フランジ部3に係合させるための1対の係合爪14が対向するように形成されている。底壁部12は、軸心C周りの回動操作時の応力に十分耐え得る強度を確保するためのリブを備えているが、底壁部12を厚く形成してもよい。
【0025】
図2図4図7に示すように、操作部材10の開口13を介してフランジ部3側から本体部2に挿入された合成樹脂管Tを係止するために、軸心Cと同軸状に配設された環状係止部材20がフランジ部3と操作部材10の底壁部12の間に配設されている。この環状係止部材20は、例えば周方向の長さが等しい2つの係止部材21を並べて環状に構成されている。尚、3つ以上の係止部材によって環状係止部材20が構成されていてもよい。
【0026】
係止部材21は、挿入された合成樹脂管Tに臨む内周部に合成樹脂管Tに食い込むように形成された複数の係合歯を備えた金属製の薄板部材22と、薄板部材22を支持する例えば合成樹脂製の支持部材23によって構成されている。複数の係止部材21を径方向に互いに接近、離隔するように移動させることによって、挿通された合成樹脂管Tを抜けないように係止する係止状態と、合成樹脂管Tを係止しない解除状態を切替える。
【0027】
合成樹脂管用継手1は、操作部材10の底壁部12の内壁又は底壁部12に対向する複数の係止部材21の対向面部の何れか一方に設けられた突起部を他方に設けられた円孔溝に係合させたカム機構を有している。例えば、2つの係止部材21は、底壁部12に対向する対向面部の外周側周方向中央位置に、底壁部12側に突出した円柱状の突起部24を夫々備えている。そして、図6に示すように、それらの突起部24に対応するように操作部材10の底壁部12の内壁に係止部材21と同数の2つの弓状の円孔溝15が形成されている。
【0028】
円孔溝15は、係止部材21側から見て時計回り方向に進むにつれて軸心Cからの距離(軸心Cが通る底壁部12の中心からの距離)が小さくなるように、突起部24が進入可能な幅で係止状態と解除状態を切替える回動操作に対応する操作部材10の回動角(例えば70度)に応じた長さに夫々形成されている。
【0029】
突起部24と円孔溝15の係合により構成されたカム機構は、操作部材10の回動操作によって突起部24が円孔溝15に沿って摺動して係止部材21が径方向に移動するように、操作部材10の回動を係止部材21の径方向の移動に変換する。合成樹脂管Tを挿入する側から見て、軸心Cを中心とした操作部材10の時計回りの回動操作が係止状態にする係止操作であり、反時計回りの回動操作が解除状態にする解除操作である。
【0030】
フランジ部3と複数の係止部材21の間には、フランジ部3と係止部材21の何れか一方に設けられたガイド突起を他方に設けられた径方向に延びるガイド溝に係合させたガイド機構が夫々設けられている。このガイド機構は、ガイド溝に係合させたガイド突起をガイド溝に沿って摺動させて係止部材21の径方向の移動を案内し、係止部材21の径方向以外の移動を規制する。
【0031】
例えば、図2に示すように、係止部材21の支持部材23には、フランジ部3側に突出した径方向に延びるガイド突起23aが形成され、フランジ部3の係止部材21側には、複数の係止部材21と同数の径方向に延びるガイド溝30aが形成されたガイド部材30(ガイド部)が装着されている。ガイド部材30には、ガイド溝30aに平行に延び、且つガイド溝30aよりも短い複数の規制溝30bが形成されている。これら規制溝30bは、1つのガイド溝30a毎にガイド溝30aを挟んで対を成すように、ガイド溝30aが延びる径方向に直交する方向に離隔して形成されている。図7に示すように、これら規制溝30bに対応するように、1対の円柱状の規制突起23b,23bが支持部材23に形成されている。
【0032】
規制溝30bと規制突起23bの係合は、係止部材21の径方向の移動範囲を定めて径方向の移動を規制すると共に、ガイド溝30aとガイド突起23aの間の隙間によって生じる係止部材21の揺動を抑える。この揺動を抑えるために、規制溝30bと規制突起23bは、ガイド溝30aとガイド突起23aから夫々離隔させて設けることが好ましい。
【0033】
図示を省略するが、ガイド部材30を省略してガイド溝等をフランジ部3に形成することにより、ガイド機構を構成してもよい。また、これも図示を省略するが、ガイド溝等を各係止部材21に形成し、ガイド溝等に対応するガイド突起等をフランジ部3に又はフランジ部3に装着するガイド部材30に形成してガイド機構を構成してもよい。
【0034】
図2図7に示すように環状係止部材20は1対の切欠き部20bを、フランジ部3は1対の切欠き部3bを、ガイド部材30は1対の切欠き部30cを夫々外周部に有している。操作部材10をフランジ部3に取り付ける際に1対の係合爪14に干渉しないように、これらの切欠き部20b,3b,30cの周方向位置を一致させて操作部材10が取り付けられる。尚、操作部材10を弾性変形させてフランジ部3に取り付け可能な場合にはこれらの切欠き部を省略してもよい。
【0035】
図2図8に示すように、本体部2の外周部には、係止状態を維持するために操作部材10の回動を規制する規制部7として、径方向外方に突出した係合突起7aと係合突起7bが近接して設けられている。係合突起7aは、軸心Cの方向に略一定の幅を有し、周方向中央部分が最も突出し、その両側が裾を引くように傾斜している。係合突起7bは、係合突起7aよりも大きく突出し、軸心Cを含んで係合突起7aの中央を通る面に平行又は略平行な平行面部7cと、この平行面部7cに近いほどフランジ部3側に近くなるように傾斜したフランジ部3側の斜面部7dを有する。
【0036】
図2図9に示すように、操作部材10は、円筒壁部11の底壁部12と反対側の端部から軸心Cに平行な方向に延びる係合部17を備えている。係合部17の内周側には、軸心Cに平行な方向に延びるように形成された係合溝17a(径方向係合部)を備えている。操作部材10をフランジ部3に取り付けた状態で、係合部17の径方向の弾性変形を利用することによって、係合溝17aが係合突起7aに係合可能である。
【0037】
係合部17は、その先端部17bと円筒壁部11の間に、解除操作の回動方向側が切り欠かれた切欠き部17cを有し、先端部17bと切欠き部17cの間に軸心Cに平行な係合端部17d(周方向係合部)を有する。係合部17の先端部17bは、係合端部17dから遠ざかるほど円筒壁部11(係合部17の基端部)に近づくように傾斜している。操作部材10をフランジ部3に取り付けた状態で、係合部17の係合端部17dと係合突起7bの平行面部7cが係合可能である。
【0038】
係止状態にするために操作部材10を回動させたときに、係合突起7bの斜面部7dに係合部17の先端部17bが当接し、係合部17は円筒壁部11(係合部17の基端部)に向かう方向に力を受ける。この力によって、切欠き部17cが狭くなるように係合部17が軸心Cの方向に弾性変形することを利用して、係合部17が係合突起7bを越えるまで回動させる。係合部17が係合突起7bを越えると弾性変形が解消されて、図10に示すように、係合端部17dと係合突起7bの平行面部7cが対向するように周方向(係止状態を解除する回動方向)に係合する。このとき、係合溝17aも係合突起7aに係合する。
【0039】
規制部7の係合突起7a,7bと係合部17の係合によって、操作部材10が係止状態から解除操作の回動方向に回動し難くなるので、人や物の接触、振動等によるこの方向の偶発的な回動を規制して係止状態を維持する。一方、作業者が、係合部17を弾性変形させて係合を解除しながら解除操作をする、又は係止状態からある程度強い力で解除操作をすると、係合部17の弾性変形や規制部7と係合部17の間の滑りによって周方向及び径方向の係合が解除されるので、容易に解除状態にすることが可能である。
【0040】
次に、合成樹脂管Tの接続作業について説明する。
挿入検知部材5は、合成樹脂管Tが挿入される前の解除状態では、図3に示すように、本体部2の内部の管挿入方向奥側の小径部2b(内奥部)に収容されている。挿入検知部材5のリング部5aはシール部材6(バックアップリング6a)に当接又は近接し、爪部5bの先端側部分は、内奥部において管挿入方向奥側に延びるように形成された挿入孔4bに挿入されている。
【0041】
図4に示すように、合成樹脂管Tは、操作部材10の開口部から合成樹脂管用継手1の内部に挿入され、インナー部材4の外周部とシール部材6の内周部の間に合成樹脂管Tが進入する。この合成樹脂管Tの挿入に伴い、合成樹脂管Tの先端が挿入検知部材5のリング部5aに当接して管挿入方向奥側に押圧し、挿入検知部材5が管挿入方向奥側に移動する。
【0042】
このとき、爪部5bの先端部が、挿入孔4bに設けられた段差部4cの傾斜に沿って管挿入方向奥側に進むと爪部5bが弾性変形し、段差部4cを乗り越えると爪部5bの弾性変形が解消されて、爪部5bの先端部が段差部4cの奥側の挿入孔4bの壁部に衝突する。この衝突による衝撃が、合成樹脂管Tや合成樹脂管用継手1から作業者に伝わって、合成樹脂管Tが予め適切な位置に設定された挿入位置に挿入されたことを知らせる。衝突時に発生する音によっても、合成樹脂管Tがその適切な挿入位置に挿入されたことを知らせる。
【0043】
爪部5bが段差部4cを乗り越えた位置が、予め適切な位置に設定された挿入位置である。この位置又はこの位置よりも管挿入方向奥側でリング部5aが管挿入方向奥側のインナーフランジ部4aに当接する位置まで合成樹脂管Tを挿入した状態で、係止状態にするために作業者は操作部材10の係止操作を行う。この係止操作によって、複数の係止部材21が互いに近づくように径方向に移動して合成樹脂管Tを係止し、図10に示すように規制部7に係合部17を係合させて合成樹脂管Tの接続状態を維持する。
【0044】
作業者は、係止操作を行って、規制部7の係合突起7a,7bに係合部17が夫々係合する際に発生する音や振動によって係止状態を認識する。また、作業者は、係合突起7a,7bと係合部17が係合した状態を見て係止状態を認識する。
【0045】
実施例に係る合成樹脂管用継手1の作用、効果について説明する。
合成樹脂管用継手1に合成樹脂管Tを挿入し、操作部材10を回動操作して係止状態にする。規制部7は、この係止状態を解除する方向の操作部材10の回動を規制する。
【0046】
このとき、操作部材10の係合部17は、係止状態で本体部2の径方向外方に突出した係合突起7aに径方向に係合すると共に、係合突起7bに周方向に係合する。即ち、係止状態では係合部17と規制部7が協働して、この2方向の係合によって係止状態を解除する方向の操作部材の回動を規制する。従って、人や物の接触、振動等によって係止状態の偶発的な解除を防止することができる。
【0047】
係合部17の係合溝17a(径方向係合部)は、係合するとき及び係合を解除するときに係合部17の径方向の弾性変形を利用し、係合部17の係合端部17d(周方向係合部)は、係合するとき及び係合を解除するときに係合部17の軸心Cの方向の弾性変形を利用する。従って、係合を解除するときに径方向と軸心方向に係合部を弾性変形させるので、人や物の接触、振動等によって係止状態の偶発的な解除を防止することができる。また、作業者による回動操作によって、容易に係止状態を解除することができる。
【0048】
その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はその種の変更形態をも包含するものである。
【符号の説明】
【0049】
1 :合成樹脂管用継手
2 :本体部
2a :大径部
2b :小径部(内奥部)
3 :フランジ部
4 :インナー部材
4a :インナーフランジ部
4b :挿入孔
4c :段差部
5 :挿入検知部材
5a :リング部
5b :爪部
6 :シール部材
7 :規制部
7a,7b :係合突起
7c :平行面部
7d :斜面部
10 :操作部材
11 :円筒壁部
12 :底壁部
13 :開口
15 :円孔溝
17 :係合部
17a :係合溝(径方向係合部)
17b :先端部
17c :切欠き部
17d :係合端部(周方向係合部)
20 :環状係止部材
21 :係止部材
22 :薄板部材
23 :支持部材
23a :ガイド突起
23b :規制突起
24 :突起部
30 :ガイド部材
30a :ガイド溝
30b :規制溝
C :軸心
T :合成樹脂管
U :内部配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10