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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230623BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20230623BHJP
   H05K 3/26 20060101ALN20230623BHJP
【FI】
H01L21/304 645C
H05H1/46 A
H01L21/304 648A
H05K3/26 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019162278
(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公開番号】P2021040106
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】是永 哲雄
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-012045(JP,A)
【文献】特開2006-228773(JP,A)
【文献】特開2015-103692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H05H 1/46
H05K 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に搬送されてきた処理対象物を電極体上に載置して、プラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、
前記電極体を備えるベース部と、
前記ベース部に対して昇降可能に配置され、下降時に前記ベース部に当接して、密閉空間を形成する蓋部材と、
前記第1方向に延在するとともに前記ベース部に対して昇降可能に配置され、前記処理対象物を前記第1方向に交わる第2方向における端部で支持するガイド部材と、を備え、
前記ガイド部材は、上昇位置にあるとき、前記処理対象物と前記電極体との距離が第1距離になるように前記処理対象物を支持し、下降位置にあるとき、前記処理対象物と前記電極体との距離が前記第1距離より小さい第2距離になるように前記処理対象物を支持し、
前記ベース部は、前記電極体上であって、下降位置にある前記ガイド部材が支持する前記処理対象物と重複しない位置に配置された突出部を備え、
前記突出部の高さは、前記第1距離未満であり、前記第2距離を越える、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記処理対象物の側面をガイドする側面ガイド部と、前記処理対象物の前記電極体側の面を支持する下受け部と、を備える、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記処理対象物の前記電極体とは反対側の面をガイドする上面ガイド部をさらに備える、請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記ガイド部材は、前記電極体を囲むように配置される枠状のガイド保持体に保持されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記ガイド保持体と前記ベース部との間に、前記ガイド保持体を昇降可能にする付勢手段を備える、請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記蓋部材は、前記ガイド部材を上昇位置から下降位置に押し下げる連動手段を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ照射することにより処理対象物のクリーニングやエッチングを行うプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置は、一般に、天井部および天井部の周囲から延出する側壁を有する蓋と、電極体および電極体を支持する基体を有するベース部と、を備える。プラズマ処理の対象物(処理対象物)を電極体に対向するように配置した後、側壁の端面と基体の周縁とを密着させることにより、密閉空間が形成される。形成された密閉空間内を減圧して、プロセスガスを供給するとともに、電極体に高周波電力を印加することにより、密閉空間にプラズマが発生する。これにより、処理対象物はプラズマ処理される。
【0003】
特許文献1には、処理対象物をガイドする複数のガイド部材を用いることが教示されている。処理対象物は、プラズマ処理装置の外部に配置された外部レールにより搬送された後、電極体上を横断するガイド部材に受け渡される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-12045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
処理対象物は、ガイド部材によって、ガイド部材の延在方向に交わる方向の移動が規制される。一方、処理対象物は、ガイド部材の延在方向に沿って、電極体の端部、さらには電極体からはみ出した位置にまで移動する場合がある。この場合、処理対象物の端部近傍では、プラズマ処理が不十分になり易い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面は、第1方向に搬送されてきた処理対象物を電極体上に載置して、プラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、前記電極体を備えるベース部と、前記ベース部に対して昇降可能に配置され、下降時に前記ベース部に当接して、密閉空間を形成する蓋部材と、前記第1方向に延在するとともに前記ベース部に対して昇降可能に配置され、前記処理対象物を前記第1方向に交わる第2方向における端部で支持するガイド部材と、を備え、前記ガイド部材は、上昇位置にあるとき、前記処理対象物と前記電極体との距離が第1距離になるように前記処理対象物を支持し、下降位置にあるとき、前記処理対象物と前記電極体との距離が前記第1距離より小さい第2距離になるように前記処理対象物を支持し、前記ベース部は、前記電極体上であって、下降位置にある前記ガイド部材が支持する前記処理対象物と重複しない位置に配置された突出部を備え、前記突出部の高さは、前記第1距離未満であり、前記第2距離を越える、プラズマ処理装置に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プラズマ処理装置内における処理対象物の移動が規制されるため、均一なプラズマ処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置の外観を模式的に示す斜視図である。
図2】同プラズマ処理装置のベース部を模式的に示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る昇降ユニットを模式的に示す斜視図である。
図4A】本発明の一実施形態に係るガイド部材を模式的に示す斜視図である。
図4B】本発明の他の実施形態に係るガイド部材を模式的に示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係るベース部と昇降ユニットとを模式的に示す斜視図である。
図6A】上昇位置にある処理対象物およびベース部の要部を模式的に示す断面図である。
図6B】下降位置にある処理対象物およびベース部の要部を模式的に示す断面図である。
図7A】チャンバを開放した状態のプラズマ処理装置を、図1のA-A線で切断した断面図である。
図7B】チャンバを閉じた状態のプラズマ処理装置を、図1のA-A線で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係るプラズマ処理装置は、天井部および天井部の周囲から延出する側壁を有する箱型の蓋部材と、電極体を有するベース部と、を備える。蓋部材を下降させて、側壁の端面とベース部の周縁とを密着させることにより、密閉空間(以下、チャンバと称す)が形成される。チャンバ内を減圧し、プロセスガスを供給するとともに、電極体に高周波電力を印加することにより、チャンバ内部にプラズマが発生し、電極体に載置された処理対象物がプラズマ処理される。
【0010】
プラズマ処理装置は、ガイド部材を備える。ガイド部材は、第1方向に延在しており、処理対象物を第1方向に交わる第2方向における端部で支持する。これにより、処理対象物の第2方向への移動が規制される。ガイド部材は、処理対象物を電極体上の所定の位置に搬送する搬送レールとしても機能する。
【0011】
蓋部材が上昇位置にあるとき、処理対象物は電極体の上方に配置されている。ところが、蓋部材が下降し密閉空間が形成された後、チャンバ内において処理対象物が動いて、一部が電極体からはみ出す場合がある。電極体の周囲は、下降した蓋部材と密着するための部材(基体)に囲まれている。電極体と基体との間には、通常、わずかな隙間がある。そのため、処理対象物がチャンバ内で第1方向に移動して、その一部が電極体と基体との隙間の上に配置されると、隙間近傍で異常放電が発生することがある。また、電極体には高周波電圧が印加される一方、基体は接地されている。そのため、処理対象物が電極体と基体との間を跨ぐように配置された状態でプラズマ処理が行われると、処理対象物によって内部短絡が発生することがある。異常放電あるいは内部短絡が生じると、処理対象物が焦げ付くことがある。
【0012】
本実施形態に係るプラズマ処理装置において、電極体は、下降位置にあるガイド部材が支持する処理対象物と重複しない位置に、突出部を備えている。この突出部により、プラズマ処理中における処理対象物の第1方向および第2方向の移動が、ともに規制される。
【0013】
ところで、本実施形態に係るプラズマ処理装置におけるガイド部材は、ベース部に対して昇降可能である。そして、ガイド部材は、上昇位置にあるとき、処理対象物と電極体との距離が第1距離になるように処理対象物を支持する。上昇位置にあるガイド部材は外部レールと連結可能となって、ともに処理対象物の搬送路を形成する。一方、下降位置にあるとき、ガイド部材は、処理対象物と電極体との距離が第1距離より小さい第2距離になるように処理対象物を支持する。
【0014】
処理対象物は、例えば、プラズマ処理装置の外部に配置された外部レールにより搬送された後、上昇位置にあるガイド部材に受け渡されて、電極体上の所定の位置にまで第1方向に搬送される。その後、ガイド部材は下降し、処理対象物を電極体に接近させる。この状態で、処理対象物はプラズマ処理される。処理対象物を搬出する際、再びガイド部材を上昇させて搬送路を形成する。そして、処理対象物を第1方向に搬送し、外部レールに受け渡す。
【0015】
そこで、このガイド部材の搬送レールとしての機能を妨げないように、突出部の高さを、第1距離未満であって、かつ、第2距離より大きくする。つまり、ガイド部材の上昇時、突出部を処理対象物の下方に位置させて、搬送路を封鎖しないようにする。一方、ガイド部材の下降時には、突出部によって搬送路を封鎖させる。
【0016】
これにより、処理対象物の全体が電極体に載置された状態でプラズマ処理が行われて、処理対象物へのプラズマ処理は均一に行われるとともに、異常放電の発生も抑制される。一方で、処理対象物のプラズマ処理装置への搬出入は妨げられない。
【0017】
突出部の高さは、電極体の表面から突出部の電極体の表面から最も離れた部分までの最短の距離である。第1距離は、ガイド部材が上昇位置にあるときの、電極体の表面から、処理対象物の電極体側の表面における電極体に最も近い部分までの最短の距離である。第2距離は、ガイド部材が下降位置にあるときの、電極体の表面から、処理対象物の電極体側の表面における電極体に最も近い部分までの最短の距離である。電極体の表面は、処理対象物が載置される面である。
【0018】
(突出部)
突出部は、プラズマ処理中における処理対象物の移動を規制する。
突出部は、下降位置にあるガイド部材が支持する処理対象物と重複しない位置に配置されていればよい。突出部は、例えば、電極体の第1方向における端部に配置されていてよい。この場合、電極体は、様々な形状あるいは大きさの処理対象物に適応できる。あるいは、突出部は、処理対象物の形状あるいは大きさに応じて配置されてもよい。この場合、プラズマ処理中における処理対象物の移動はさらに抑制され易くなる。
【0019】
突出部は、1つの処理対象物当たり少なくとも1つ配置されていればよい。なかでも、2つの突出部を、1つの処理対象物を跨ぐように対向させて配置することが好ましい。これにより、処理対象物の第1方向の移動が効果的に規制される。
【0020】
突出部の形状は特に限定されない。突出部は、例えば、立方体、板状、錐状、球体であってよい。
【0021】
突出部は、プラズマ処理中の処理対象物の端面に接触してもよいし、非接触であってもよい。ただし、突出部は処理対象物の処理面に接触しない。そのため、処理対象物の損傷や反り等が抑制され易くなる。さらに、プラズマは、突出部によって遮られることなく処理対象物の処理面に照射されるため、得られる処理対象物の全体を有効に利用できる。
【0022】
突出部は絶縁材料により形成されることが望ましい。絶縁材料としては、例えば、樹脂、表面が絶縁加工(例えば、硬質アルマイト処理加工)されたアルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料、アルミナ、シリカなどの金属酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物、その他の絶縁性セラミックス材料等が挙げられる。
【0023】
(ガイド部材)
ガイド部材は、第1方向に延在しており、処理対象物を第1方向に交わる第2方向における端部で支持する。
【0024】
ガイド部材の形状は特に限定されない。ガイド部材は、シンプルな棒状であってもよい。ガイド部材は、処理対象物の端面をガイドする側面ガイド部と、処理対象物の電極体側の面を支持する下受け部とを備えてもよい。すなわち、ガイド部材の断面はL字型であってもよい。これにより、処理対象物をガイド部材とともに昇降させることが容易となる。ガイド部材は、処理対象物の電極体とは反対側の面をガイドする上面ガイド部をさらに備えてもよい。これにより、処理対象物の反りが抑制されて、所望のプラズマ処理が実行され易くなる。
【0025】
ガイド部材の数は特に限定されず、処理対象物の数に応じて適宜設定すればよい。ガイド部材は、複数であってよく、2本で1枚の処理対象物を支持してもよい。
【0026】
複数のガイド部材は、ガイド保持体により一体に保持されてもよい。これにより、ガイド部材のハンドリング性が向上し、昇降が容易となる。ガイド部材は、ガイド保持体を昇降させることにより昇降する。ガイド保持体は、例えば枠状であって、電極体を囲むように配置される。ガイド部材は、例えば、その長手方向の両端部において、ガイド保持体に固定される。
【0027】
ガイド保持体は、例えば、ガイド保持体とベース部との間に設けられた付勢手段によって昇降される。付勢手段の付勢力は、処理対象物を電極体に対して離間させる方向に作用する。すなわち、付勢手段は、無負荷状態において、ガイド保持体を上昇させる。付勢手段としては特に限定されないが、例えば、バネ等の弾性を利用して付勢する部材が挙げられる。付勢手段の数および配置は特に限定されない。ガイド保持体を安定した状態で昇降できる点で、等間隔に複数配置されることが好ましい。ガイド保持体が矩形の枠体である場合、少なくとも4つの角に、それぞれ付勢手段が配置されてよい。以下、ガイド部材、ガイド保持体および付勢手段を含むユニットを昇降ユニットと称す場合がある。
【0028】
昇降ユニットは、蓋部材およびベース部と絶縁されていることが望ましい。すなわち、プラズマ処理装置において、昇降ユニットは電気的に独立していることが望ましい。蓋部材およびベース部はともに接地されていればよい。
【0029】
ガイド部材およびガイド保持体は、プラズマ処理中にプラズマに晒されるため、通常、硬度の高い絶縁材料で形成される。絶縁材料としては、例えば、突出部の材料として例示したなかから適宜選択される。なかでも、表面が絶縁加工された金属材料、絶縁性のセラミックス材料が好ましい。
【0030】
(処理対象物)
処理対象物は特に限定されず、絶縁体であってもよいし、導体あるいは半導体を含んでいてもよい。例えば、導体あるいは半導体を含む回路基板等が挙げられる。処理対象物は、電極体上に1枚以上配置される。
【0031】
(蓋部材)
蓋部材の形状は特に限定されない。蓋部材は、例えば、天井部および天井部の周囲から延出する側壁を有する箱型である。蓋部材の側壁の端面とベース部の周縁(後述する基体)とが密着することにより、内部にチャンバが形成される。蓋部材は、電極体の対極としての機能を有している。
【0032】
蓋部材は、ガイド部材を上昇位置から下降位置に押し下げる連動手段を備えていてもよい。連動手段は、チャンバが閉じた状態になったときに、連動手段とガイド部材あるいはガイド保持体とが当接するような位置に設置する。これにより、蓋部材の昇降運動に連動して、ガイド部材を昇降させることができる。連動手段は、例えば、蓋部材の天井部あるいは側壁の内壁面に装着された突起部材である。突起部材の形状は特に限定されない。
【0033】
(ベース部)
ベース部は、蓋部材と対向する面に電極体を備えている。電極体は、例えば、箱形の基体に収容され支持される。電極体と基体とは絶縁している。基体の周縁には、シール部材が配置されていてもよい。これにより、チャンバ内の密閉性が高められる。
【0034】
電極体の上面には、ガイド部材が下降位置にあるとき、ガイド部材を収容する溝が形成されていてもよい。溝の深さは特に限定されず、ガイド部材の少なくとも一部が収容できればよい。
【0035】
(その他)
プラズマ処理装置は、その他、電極体に高周波電力を印加する電源部、チャンバ内を減圧する吸引手段、プラズマ原料となるプロセスガスをチャンバ内に導入するガス供給手段、蓋部材を昇降させる駆動源等を備える。プロセスガスの存在下で、電源部から電極体に高周波電力を印加することにより、チャンバ内にプラズマが発生する。
【0036】
電源部は、例えば、高周波電源と、自動整合器とで構成されている。自動整合器は、電極体と蓋部材との間に印加される高周波の反射波による干渉を防止する作用を有する。
【0037】
吸引手段は、例えば、真空ポンプ、排気配管、圧力調整バルブなどで構成されている。
【0038】
ガス供給手段は、アルゴン、酸素、窒素などのプロセスガスを供給するガスボンベ、チャンバ内にプロセスガスを導入する配管などで構成されている。ガス供給手段は、ベース部の内部に配置されてもよい。
【0039】
以下、昇降ユニットを備えるプラズマ処理装置を用いて、処理対象物にプラズマ処理を施す方法について説明する。
【0040】
まず、蓋部材を上昇位置に配置して、チャンバを開放する。このとき、ガイド保持体は、付勢手段からの付勢力によって押し上げられており、上昇位置にある。そのため、ガイド部材と外部レールとは連結されている。処理対象物が外部レールにより搬送されてくると、そのままガイド部材に受け渡される。処理対象物は、ガイド部材に支持されながら、電極体と対向する位置まで搬送される。
【0041】
次に、蓋部材を下降させてチャンバを閉じる。このとき、蓋部材に設けられた連動手段の先端がガイド保持体に当接し、蓋部材の下降に連動して、ガイド保持体を下方に押し下げる。これにより、ガイド保持体は、下降位置に配置される。これに伴い、ガイド部材および処理対象物も下方に押し下げられる。これにより、処理対象物は、電極体に近接するか、あるいは接触する。
【0042】
続いて、密閉状態のチャンバ内の空気を吸引手段により排気し、所定の減圧状態に至った時点で、ガス供給手段からチャンバ内にアルゴンなどのプロセスガスを導入する。
【0043】
チャンバ内が所定の圧力に達した時点で、電源部により、電極体と蓋部材との間に高周波電力が印加される。これにより、チャンバ内のプロセスガスがプラズマ化される。その結果、処理対象物の表面はプラズマに暴露され、処理対象物の表面がエッチングあるいはクリーニングされる。
【0044】
処理対象物のプラズマ処理が終了すると、チャンバ内が大気に開放され、減圧状態が解除される。続いて、蓋部材を上昇させると、連動手段によるガイド保持体への付勢力が解除され、処理対象物を支持したガイド部材がガイド保持体とともに上昇する。これにより、ガイド部材と外部レールとが再び連結され、処理対象物が外部レールに受け渡されて搬出される。
【0045】
上記では、昇降ユニットを備えるプラズマ処理装置を用いて処理対象物をプラズマ処理する場合を説明したが、本実施形態はこれに限定されない。
【0046】
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係るプラズマ処理装置について、具体的に説明する。本実施形態において、プラズマ処理装置は昇降ユニットを備えるが、ガイド部材の昇降手段は、これに限定されるものではない。
【0047】
図1は、プラズマ処理装置の外観を模式的に示す斜視図である。図2は、ベース部を模式的に示す斜視図である。
【0048】
プラズマ処理装置100は、ベース部110と蓋部材120とを備える。
蓋部材120は、天井部および天井部の周囲から延出する側壁を有する箱型である。蓋部材120は、図示しない駆動源によって、ベース部に対して昇降可能である。処理対象物の搬出入の際には、蓋部材120を上昇させて、ベース部110から離間させる。処理対象物をプラズマ処理する際には、蓋部材120を下降させて、蓋部材120の側壁の端面とベース部110の基体111の周縁とを密着させる。これにより、例えば箱型のチャンバが形成される。
【0049】
基体111の周縁と蓋部材120の側壁の端面との間にはシール部材(図7A図7B参照)が設けられている。蓋部材120の内壁には、連動手段(同図参照)が設けられている。
【0050】
ベース部110は、蓋部材120と対向する面に、電極体112と電極体112上に配置された突出部118とを備えている。電極体112は、箱形の基体111に収容され支持されている。突出部118は立方体であり、電極体112の第1方向Aにおける両方の端部に配置されている。
【0051】
チャンバ内は、チャンバと連通する排気口117を介して、減圧雰囲気に維持可能である。排気口117は、図示しない吸引手段と連通している。また、図示しない配管がチャンバに連通している。配管からは、プロセスガスが供給される。
【0052】
電極体112は、プラズマ処理の際に処理対象物に面する上部電極体112aと、基体111に面する下部電極体112bとで構成されている。上部電極体112aおよび下部電極体112bは、いずれも導電性材料(導体)で形成されている。電極体112の上面は、ガイド部材が下降位置にあるときにガイド部材を収容する溝112gを有する。溝112gの深さは、ガイド部材が下降位置にあるとき、ガイド部材の上面が、上部電極体112aの上面と同程度になるように設計されている。
【0053】
図3は、本実施形態に係る昇降ユニットを模式的に示す斜視図である。図4Aは、本実施形態に係るガイド部材を模式的に示す斜視図である。図4Bは、他の実施形態に係るガイド部材を模式的に示す斜視図である。
【0054】
昇降ユニット130は、チャンバ内で処理対象物を支持する複数のガイド部材131と、複数のガイド部材131を一体に保持するガイド保持体132と、ガイド保持体132を昇降可能にするとともに、ガイド保持体132とベース部の基体との間に配置される付勢手段133と、を有する。1つの処理対象物は、第2方向Bにおいて一対のガイド部材131に支持された状態で、付勢手段133によって電極体112の上方で昇降する。
【0055】
ガイド部材131は、図4Aに示すように、処理対象物の端面をガイドする側面ガイド部1311と、処理対象物の電極体側の面を支持する下受け部1312と、処理対象物の電極体とは反対側の面をガイドする上面ガイド部1313と、を備える。ただし、ガイド部材131の形状はこれに限定されない。ガイド部材131は、図4Bに示すように、側面ガイド部1311と下受け部1312とのみを備えていてもよい。
【0056】
ガイド保持体132は枠状であって、電極体を囲むように配置される。ガイド部材131は、その長手方向(第1方向A)の両端部において、ガイド保持体132に固定されている。
【0057】
ガイド保持体132は、付勢手段133によって、蓋部材とベース部との間で電極体に対して昇降可能である。ガイド部材131に支持される処理対象物も、ガイド保持体132とともに昇降する。ガイド保持体132は、ガイド保持体132からベース部の基体に向かって立設するシャフト135に誘導されながら昇降する。そのため、処理対象物は、電極体に対向しながら昇降することができる。基体のシャフト135に対応する位置には、シャフト135に係合する開口(図示せず)が設けられている。
【0058】
付勢手段133はコイル状のバネである。バネの中空部には支柱134が挿入されている。支柱134は、その周面にネジが切られており、基体にねじ止めされる。付勢手段133は、ガイド保持体132の4つの角に、それぞれ配置されている。
【0059】
ガイド保持体132、支柱134および付勢手段133は、絶縁性であることが望ましい。これらの材料としては、例えば、表面が絶縁加工されたアルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料が挙げられる。
【0060】
図5は、ベース部と昇降ユニットとを模式的に示す斜視図である。図5において、昇降ユニットは、処理対象物を保持するとともに上昇位置にある。図6Aは、上昇位置にある処理対象物およびベース部の要部を模式的に示す断面図である。図6Bは、下降位置にある処理対象物およびベース部の要部を模式的に示す断面図である。
【0061】
付勢手段133は、無負荷状態において、ガイド保持体132を上昇させる。すなわち、付勢手段133の付勢力は、処理対象物300を電極体112に対して離間させる方向に作用する。
【0062】
突出部118の高さHは、上昇位置にある処理対象物300と上部電極体112aの表面との間の距離(第1距離L1)未満である。そのため、上昇位置にあるガイド部材131は、プラズマ処理装置の外部に配置される外部レール(図示せず)と連結することができる。上昇位置にあるガイド部材131は、外部レールとともに処理対象物300を搬送する搬送路を形成する。すなわち、処理対象物300は、外部レールからガイド部材131に受け渡されることによりチャンバ内に搬入され、プラズマ処理された後、ガイド部材131から外部レールに受け渡されることによりチャンバ外に搬出される。
【0063】
一方、突出部118の高さHは、下降位置にある処理対象物300と上部電極体112aの表面との間の距離(第2距離L2=0)を越えている。そのため、処理対象物300の第1方向Aへの移動が規制される。下降位置にある処理対象物300は、電極体112に接触している。処理対象物300と電極体112とは、接触せずに、接近していてもよい。
【0064】
以下、本実施形態に係るプラズマ処理装置について、さらに具体的に説明する。図7Aは、チャンバを開放した状態の同プラズマ処理装置を、図1のA-A線で切断した断面図である。図7Bは、チャンバを閉じた状態の同プラズマ処理装置を、図1のA-A線で切断した断面図である。
【0065】
電極体112は、第1絶縁部材114を介して、基体111に支持されている。下部電極体112bは、第1絶縁部材114を介して基体111に面している。電極体112の外縁部には、上部電極体112aと下部電極体112bとの間に挟持されるように、枠状の第2絶縁部材115が装着されている。これにより、電極体112の外縁部の側面は、その全周に亘って第2絶縁部材115で覆われる。枠状のガイド保持体132は、電極体112と第2絶縁部材115で絶縁されている。
【0066】
蓋部材120は、箱形の蓋本体121と連動手段122とを備える。連動手段122は、蓋本体121の内壁面に装着された突起部材である。連動手段122は、チャンバが閉じた状態になったときに、ガイド保持体132に当接するような位置に設置されており、付勢手段133は連動手段122からの負荷を受ける。これにより、蓋部材120の昇降運動に連動して、昇降ユニット130を昇降させることができる。基体111、蓋本体121および連動手段122は、耐プラズマ性および絶縁性の観点から、通常、表面が絶縁加工されたアルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料で形成される。
【0067】
プラズマ処理装置100は、電極体112に高周波電力を印加する電源部400を備える。電極体112は電源部400と接続している一方、基体111とは絶縁している。電源部400は、例えば高周波電源401と、自動整合器402とで構成されている。自動整合器402は、電極体112と蓋部材120との間に印加される高周波の反射波による干渉を防止する。ガス供給手段からプロセスガスをチャンバ内に導入し、電源部400から電極体112に高周波電力を印加することにより、チャンバ内にプラズマが発生する。
【0068】
なお、図示例では、処理対象物を電極体に接触するように載置する場合を示したが、これに限定されない。処理対象物と電極体とは、接触せずに、接近していてもよい。連動手段を取り付ける位置(高さ)を可変にしたり、サイズの異なる複数種の連動手段から任意の連動手段を選択して蓋本体に取り付け可能にしたりすることで、処理対象物と電極体との距離を変えることができる。処理対象物と電極体との距離に応じて、突出部の高さを変えればよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係るプラズマ処理装置によれば、均一なプラズマ処理が行われるため、様々な対象物のプラズマ処理に用いられる。
【符号の説明】
【0070】
100:プラズマ処理装置
110:ベース部
111:基体
112:電極体
112a:上部電極体
112b:下部電極体
112g:溝
114:第1絶縁部材
115:第2絶縁部材
116:シール部材
117:排気口
118:突出部
120:蓋部材
121:蓋本体
122:連動手段
130:昇降ユニット
131:ガイド部材
1311:側面ガイド部
1312:下受け部
1313:上面ガイド部
132:ガイド保持体
133:付勢手段
134:支柱
135:シャフト
300:処理対象物
400:電源部
401:高周波電源
402:自動整合器
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B