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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/705 20230101AFI20230623BHJP
   H04N 25/707 20230101ALI20230623BHJP
【FI】
H04N25/705
H04N25/707
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021543657
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2020029234
(87)【国際公開番号】W WO2021044770
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2019163235
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】山田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】春日 繁孝
(72)【発明者】
【氏名】石井 基範
(72)【発明者】
【氏名】井上 暁登
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 裕
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-017218(JP,A)
【文献】特開2018-160667(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216400(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/066143(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/00-25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素セルが行列状に配置された固体撮像素子と、
前記固体撮像素子を制御する制御部と、を備え、
前記画素セルは、
アバランシェフォトダイオードと、
電荷を蓄積するフローティングディフュージョン部と、
前記アバランシェフォトダイオードのカソードと前記フローティングディフュージョン部とを接続する転送トランジスタと、
前記フローティングディフュージョン部に蓄電された電荷をリセットするためのリセットトランジスタと、を備え、
前記制御部は、前記リセットトランジスタを制御して、前記アバランシェフォトダイオードのカソードから前記転送トランジスタを介して前記フローティングディフュージョン部に蓄電される電荷のうち所定の電荷量を超える電荷を排出させる、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記制御部は、
前記転送トランジスタを制御して、前記アバランシェフォトダイオードのカソードに蓄電された電荷を前記フローティングディフュージョン部に蓄積させる転送制御を行った後、
前記リセットトランジスタを制御して、前記フローティングディフュージョン部に蓄電された電荷のうち前記所定の電荷量を超える電荷を排出させる、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記制御部は、
前記転送トランジスタを制御して、記アバランシェフォトダイオードのカソードに蓄電された電荷を前記フローティングディフュージョン部に蓄積させる転送制御を行う間に、
前記リセットトランジスタを制御して、前記アバランシェフォトダイオードのカソードから前記転送トランジスタを介して前記フローティングディフュージョン部に蓄電される電荷のうち前記所定の電荷量を超える電荷を排出させる、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記制御部は、
前記アバランシェフォトダイオードのカソードに電荷を蓄電させる間に、
前記転送トランジスタを制御して、前記アバランシェフォトダイオードのカソードから前記フローティングディフュージョン部に電荷を蓄積させ、さらに、
前記リセットトランジスタを制御して、前記フローティングディフュージョン部に蓄電される電荷のうち前記所定の電荷量を超える電荷を排出させる、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の撮像装置において、
前記制御部は、前記リセットトランジスタのポテンシャル障壁を前記所定の電荷量に対応する高さに設定することにより、前記フローティングディフュージョン部に蓄電される電荷のうち所定の電荷量を超える電荷を排出させる、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項5に記載の撮像装置において、
前記制御部は、前記アバランシェフォトダイオードにおいて飽和電荷量の電荷が生じた場合に前記フローティングディフュージョン部に蓄積される標準的な電荷量に応じた基準蓄積電位以上の電位に、前記ポテンシャル障壁の高さを設定する、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
請求項6に記載の撮像装置において、
前記制御部は、前記基準蓄積電位に前記ポテンシャル障壁の高さを設定する、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
請求項6に記載の撮像装置において、
前記制御部は、前記基準蓄積電位に対してばらつきだけ高い電位に、前記ポテンシャル障壁の高さを設定する、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
請求項6ないし8の何れか一項に記載の撮像装置において、
前記制御部は、前記基準蓄積電位の変動要因となり得る所定の指標を監視し、前記指標に基づいて、前記ポテンシャル障壁の高さを再設定する、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか一項に記載の撮像装置において、
電荷を蓄積するメモリ部と、
前記フローティングディフュージョン部と前記メモリ部とを接続するカウントトランジスタと、をさらに備える、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項11】
請求項1ないし10の何れか一項に記載の撮像装置において、
前記フローティングディフュージョン部に蓄電された電荷の電荷量を電圧に変換するための増幅トランジスタを備える、
ことを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子を用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体撮像素子を用いた撮像装置が、医療や放射線計測等の種々の分野で用いられている。最近では、目標領域に光を投射し、その反射光の有無に基づいて、目標領域における物体の有無を検出する物体検出装置にも、撮像装置が用いられている。この場合、目標領域に対する光の投射タイミングと反射光の受光タイミングとの時間差に基づいて、物体までの距離が測定される。固体撮像素子の画素ごとに、反射光の有無が検出され、物体までの距離が測定される。測定された距離を各画素位置にマッピングすることにより、目標領域に対する距離画像を生成できる。
【0003】
微弱な光の検出が必要な機器では、アバランシェフォトダイオード(以下、「APD」という)がアレイ状に配置された固体撮像素子が用いられ得る。たとえば、上記物体検出装置では、反射光の強度が物体までの距離の2乗に反比例するため、測距範囲が長くなると、固体撮像素子で受光される反射光の強度は、かなり減衰する。このような場合に、APDがアレイ状に配置された固体撮像素子が用いられると有利である。APDは、フォトンの衝突により発生する電子(電荷)をアバランシェ増倍により増幅させる。これにより、微弱な光を検出可能である。この種の固体撮像素子では、画素セルごとに、APDと、その処理回路が配置されている。
【0004】
以下の特許文献1には、画素セルごとに、APDとその処理回路が配置された固体撮像素子が記載されている。この処理回路では、露光によりフォトンがAPDに入射すると、アバランシェ増倍により増幅された電荷が、APDのカソードに集電される。APDのカソードに集電された電荷は、転送トランジスタを介してフローティングディフュージョン部に分配される。その後、電荷は、カウントトランジスタを介してメモリ部(キャパシタ)に再分配される。こうして、各シーケンスにおいてAPDにフォトンが入射するごとに、メモリ部に電荷が積算される。そして、所定回数のシーケンスが行われた後、メモリ部に積算された電荷が電圧に変換されて、垂直信号線に出力される。
【0005】
特許文献1の構成では、アバランシェ増倍による飽和電荷量を超えて電荷がAPDのカソードに蓄電されることが起こり得る。このような過剰な電荷の蓄積を防ぐために、特許文献1の構成では、APDのカソードとリセットドレイン電源との間に介在するリセットトランジスタのポテンシャル障壁が、転送トランジスタのポテンシャル障壁よりも低く設定されている。これにより、露光の際に過剰な電荷がAPDのカソードに生じた場合に、電荷の過剰分がリセットドレイン電源へと導かれる。この動作により、APDのカソードに蓄電される電荷量が略一定に維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2018/216400号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように、APDにおいて過剰に生じた電荷をリセットドレインへと導く構成においても、APDのカソードからフローティングディフュージョン部に分配された電荷は、必ずしも一定量になるとは限らない。たとえば、APDのカソードからフローティングディフュージョン部に電荷が分配される間に、さらにアバランシェ増倍により電荷が増加すると、分配後にフローティングディフュージョン部に蓄電される電荷量にばらつきが生じ得る。このばらつきは、たとえば、各画素セルからの信号に基づいて距離画像を生成する場合に、ばらつき(測距誤差)となり得る。
【0008】
かかる課題に鑑み、本発明は、フローティングディフュージョン部に蓄電される電荷量のばらつきを低減することが可能な撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の主たる態様に係る撮像装置は、複数の画素セルが行列状に配置された固体撮像素子と、前記固体撮像素子を制御する制御部と、を備える。ここで、前記画素セルは、アバランシェフォトダイオードと、電荷を蓄積するフローティングディフュージョン部と、前記アバランシェフォトダイオードのカソードと前記フローティングディフュージョン部とを接続する転送トランジスタと、前記フローティングディフュージョン部に蓄電された電荷をリセットするためのリセットトランジスタと、を備える。また、前記制御部は、前記リセットトランジスタを制御して、前記アバランシェフォトダイオードのカソードから前記転送トランジスタを介して前記フローティングディフュージョン部に蓄電される電荷のうち所定の電荷量を超える電荷を排出させる。以下、これを「摺り切る」と記載する。
【0010】
本態様に係る撮像装置によれば、リセットトランジスタが制御されることにより、アバランシェフォトダイオードのカソードから転送トランジスタを介してフローティングディフュージョン部に蓄電される電荷のうち所定の電荷量を超える電荷が排出される。よって、フローティングディフュージョン部に蓄積される電荷量のばらつきを低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のとおり、本発明によれば、フローティングディフュージョン部に蓄電される電荷量のばらつきを低減することが可能な撮像装置を提供することができる。
【0012】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態1に係る、距離測定装置の構成を示す図である。
図2図2は、実施形態1に係る、画素セルの構成を示す図である。
図3図3(a)~(d)は、それぞれ、実施形態1に係る、画素セルの動作シーケンスを説明する図である。
図4図4(a)は、実施形態1に係る、画素セルの動作シーケンスを説明する図である。図4(b)は、実施形態1に係る、フローティングディフュージョン部に蓄積される電荷量を所定レベルに調整するための摺り切りレベルの他の設定方法を説明する図である。図4(c)は、実施形態1に係る、画素セルの動作シーケンスを実行するためのフローチャートである。
図5図5(a)、(b)は、それぞれ、実施形態1の変更例1に係る、画素セルの動作シーケンスを説明する図である。図5(c)は、実施形態1の変更例1に係る、画素セルの動作シーケンスを実行するためのフローチャートである。
図6図6(a)、(b)は、それぞれ、実施形態1の変更例2に係る、画素セルの動作シーケンスを説明する図である。図6(c)は、実施形態1の変更例2に係る、画素セルの動作シーケンスを実行するためのフローチャートである。
図7図7は、実施形態2に係る、画素セルの構成を示す図である。
図8図8(a)~(d)は、それぞれ、実施形態2に係る、画素セルの動作シーケンスを説明する図である。
図9図9(a)~(d)は、それぞれ、実施形態2に係る、画素セルの動作シーケンスを説明する図である。
図10図10(a)は、実施形態2に係る、画素セルの動作シーケンスを実行するためのフローチャートである。図10(b)は、実施形態2に係る、フォトンのカウント数と、メモリ部に蓄積された電荷を電圧に変換した場合の出力電圧との関係を実験により検証した検証結果を示すグラフである。
図11図11(a)は、実施形態3に係る、距離測定装置の構成を示す図である。図11(b)は、実施形態3に係る、摺り切りレベルを再設定するための処理を示すフローチャートである。
【0014】
ただし、図面はもっぱら説明のためのものであって、この発明の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。本実施形態では、撮像装置が、物体までの距離を測定するための距離測定装置に搭載される場合の構成例が示されている。
【0016】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係る、距離測定装置1の構成を示す図である。
【0017】
距離測定装置1は、投光装置10と、撮像装置20とを備える。投光装置10は、目標領域に光を投射する。撮像装置20は、投光装置10から出射された光が目標領域中の物体で反射された反射光を受光する。
【0018】
投光装置10は、光源11と、投射光学系12と、発光制御部13とを備える。光源11は、レーザ光源やLED(Light Emitting Diode)等により構成され、所定波長の光を出射する。投射光学系12は、光源11から出射された光を所定の広がり角で目標領域に投射する。投射光学系12は、単一または複数のレンズで構成される。投射光学系12が、凹面ミラー等を含んでいてもよい。発光制御部13は、信号処理部25からの制御により、光源11をパルス発光させる。
【0019】
撮像装置20は、受光光学系21と、フィルタ22と、固体撮像素子23と、撮像制御部24と、信号処理部25と、を備える。受光光学系21は、投光装置10から出射された光が目標領域中の物体で反射された反射光を、固体撮像素子23の受光面に結像させる。受光光学系21は、単一または複数のレンズで構成される。受光光学系21が、凹面ミラー等を含んでいてもよい。フィルタ22は、光源11から出射された光を透過し、その他の波長の光を除去する。
【0020】
固体撮像素子23は、複数の画素セルが行列状に配置された構成である。すなわち、複数の画素セルが、行方向および列方向に、それぞれ直線状に隣接して並ぶように、固体撮像素子23に配置されている。固体撮像素子23には、画素セルごとに、APDと、その処理回路が実装されている。
【0021】
撮像制御部24は、信号処理部25からの制御により、各画素セルを駆動する。信号処理部25は、発光制御部13および撮像制御部24を制御して、目標領域に存在する物体までの距離を測定する。すなわち、信号処理部25は、発光制御部13を介して光源11をパルス発光させ、このパルス発光に基づく反射光を、撮像制御部24を介して、固体撮像素子23に受光させる。そして、信号処理部25は、パルス発光のタイミングと各画素セルにおける反射光の受光タイミングとの時間差に基づいて、各画素セルに対応する目標領域上の位置に存在する物体までの距離を測定する。
【0022】
なお、図1の構成では、信号処理部25が撮像装置20側に含まれているが、信号処理部25が投光装置10側に含まれていてもよく、あるいは、信号処理部25が、投光装置10および撮像装置20とは別の装置に含まれていてもよい。
【0023】
図1の構成において、固体撮像素子23は、画素セルごとに反射光の検出信号を撮像制御部24に出力する。各画素セルは、反射光を受光した場合に、アバランシェ増倍に基づく電圧レベルの検出信号を撮像制御部24に出力する。各画素セルに入射する反射光の光量は、物体までの距離の2乗に反比例して減衰する。また、各画素セルに入射する反射光の光量は、物体の反射率によっても変化する。各画素セルは、このように反射光の光量が変化しても、アバランシェ増倍による所定電圧レベルの検出信号を撮像制御部24に出力する。
【0024】
具体的には、各画素セルに配置されたAPDにフォトンが入射すると、APDは、フォトンの衝突により発生する電子(電荷)をアバランシェ増倍により飽和電荷量まで増幅させる。各セルは、飽和電荷量を電圧に変換し、変換した電圧を検出信号として出力する。これにより、各セルから出力される検出信号は、飽和電荷量に応じた電圧に揃うことなる。こうして、各画素セルは、受光した反射光の光量に拘わらず、一定電圧レベルの検出信号を撮像制御部24に出力する。
【0025】
しかしながら、各画素セルでは、種々の要因により、アバランシェ増倍による通常の飽和電荷量とは異なる電荷が生じることが起こり得る。このため、各画素セルから出力される検出信号は、飽和電荷量に応じた電圧に対してばらつきが生じ得る。このように、画素セルごとに検出信号がばらつくと、撮像制御部24以降の回路部の処理が不安定になることが起こり得る。各画素セルの検出信号は、なるべくばらつきが抑制されることが好ましい。
【0026】
そこで、本実施形態1では、各画素セルの検出信号のばらつきを抑制するための構成が用いられる。以下、この構成について説明する。
【0027】
まず、図2を参照して、画素セル100の構成を説明する。
【0028】
画素セル100は、APD101と、APDリセットトランジスタ102と、転送トランジスタ103と、FDリセットトランジスタ104と、増幅トランジスタ105と、選択トランジスタ106とを備える。
【0029】
APD101は、フォトンの衝突により発生する電子(電荷)をアバランシェ増倍により飽和電荷量まで増幅させるアバランシェフォトダイオードである。APD101は、ガイガー増幅モードで使用される。APD101のアノードには、ガイガー増幅モードに応じた逆バイアス電圧VSUB(たとえば25V)が印加される。APD101にフォトンが入射すると、APD101のカソードに電子(電荷)が蓄積される。
【0030】
APDリセットトランジスタ102は、APD101のカソードに蓄積された電荷をリセットするためのトランジスタである。APDリセットトランジスタ102のゲートにリセット信号OVFを印加することにより、APD101のカソードに蓄積された電荷が、APDリセットトランジスタ102を介して、リセットドレイン電源PIXRSDに排出される。これにより、APD101のカソードに蓄積された電荷がリセットされる。
【0031】
転送トランジスタ103は、APD101のカソードに蓄積された電荷をフローティングディフュージョン部110に転送するためのトランジスタである。転送トランジスタ103のゲートに転送信号TRNを印加することにより、APD101のカソードに蓄積された電荷が、転送トランジスタ103を介して、フローティングディフュージョン部110に転送される。
【0032】
FDリセットトランジスタ104は、フローティングディフュージョン部110に蓄積された電荷をリセットするためのトランジスタである。FDリセットトランジスタ104のゲートにリセット信号RSTを印加することにより、フローティングディフュージョン部110に蓄積された電荷が、FDリセットトランジスタ104を介して、リセットドレイン電源RSDに排出される。これにより、フローティングディフュージョン部110に蓄積された電荷がリセットされる。
【0033】
増幅トランジスタ105は、ドレインに印加される一定電圧VDDに基づいて、フローティングディフュージョン部110に蓄積された電荷の電荷量を電圧に変換するためのトランジスタである。選択トランジスタ106は、増幅トランジスタ105により変換された電圧を、垂直信号線Vsigに出力するためのトランジスタである。選択トランジスタ106のゲートに選択信号SELを印加することにより、増幅トランジスタ105により変換された電圧が、垂直信号線Vsigに出力される。垂直信号線Vsigに出力された電圧は、当該画素セル100の検出信号として、図1の撮像制御部24に出力される。
【0034】
本実施形態1では、フローティングディフュージョン部110の容量が、APD101のカソードの電荷蓄積領域の容量の半分程度に設定される。但し、フローティングディフュージョン部110の容量の設定方法は、これに限られるものではなく、種々の設定方法が適用され得る。
【0035】
図3(a)~(d)は、画素セル100の動作シーケンスを説明する図である。
【0036】
図3(a)~(d)には、図2のリセットドレイン電源PIXRSDから、APDリセットトランジスタ102、転送トランジスタ103、フローティングディフュージョン部110およびFDリセットトランジスタ104を介して、リセットドレイン電源RSDへと続く回路部分のポテンシャル図が示されている。縦軸は、矢印の方向が低電位の方向である。
【0037】
図3(a)~(d)において、“PIXRSD”は、リセットドレイン電源PIXRSDの電位を示し、“APD”は、APD101のカソードの電位を示し、“FD”は、フローティングディフュージョン部110の電位を示し、“RSD”は、リセットドレイン電源RSDの電位を示している。また、“OVF”は、APDリセットトランジスタ102の電位を示し、“TRN”は、転送トランジスタ103の電位を示し、“RST”は、FDリセットトランジスタ104の電位を示している。
【0038】
図3(a)の初期状態は、APD101のカソードとフローティングディフュージョン部110がリセットされた後の状態を示している。初期状態では、PIXRSDおよびRSDが電位Vrsdに設定される。
【0039】
また、この初期状態において、撮像制御部24は、APDリセットトランジスタ102を低電圧で駆動し、これにより、OVFにポテンシャル障壁を生じさせる。さらに、撮像制御部24は、転送トランジスタ103およびFDリセットトランジスタ104をオフに設定し、これにより、TRNとRSTに電位0Vの高さのポテンシャル障壁を生じさせる。
【0040】
この状態から、撮像制御部24は、光源11のパルス発光に応じて、所定時間、各画素セル100に対する露光を行う。これにより、APD101に反射光が入射すると、APD101のカソードに電荷(電子)が蓄積され、図3(b)に示すように、APDの電位が変化する。図3(b)では、電荷の蓄積が、ハッチングで示されている。アバランシェ増倍により通常の飽和電荷量の電荷が生じた場合、APDの電位は、電位Vq(以下、「クエンチング電位Vq」という)となる。
【0041】
飽和電荷量には、APD101ごとにばらつきが生じ得る。このため、クエンチング電位Vqにも、APD101ごとに分散±σの範囲でばらつきが生じ得る。図3(b)には、このばらつきにより、典型的な飽和電荷量に対してやや多い電荷量で電荷が生じた場合が図示されている。また、図3(b)には、典型的なクエンチング電位がVqとして示されている。以下、「クエンチング電位Vq」の記載は、特に言及がない限り、典型的なクエンチング電位を意味する。
【0042】
OVFの電位を超える電荷量で電荷が生じた場合、超過分の電荷がOVFのポテンシャル障壁を越えてPIXRSDに移動し、リセットドレイン電源PIXRSDに排出される。
【0043】
こうして、APD101のカソードに対する電荷の蓄積が終了すると、撮像制御部24は、転送トランジスタ103をオンに設定する。これにより、図3(c)に示すように、TRNのポテンシャル障壁が降下し、APD101のカソードに蓄積された電荷が、転送トランジスタ103を介して、フローティングディフュージョン部110に分配される。
【0044】
図3(c)において、電位Vq’は、図3(b)の蓄積工程において、APD101のカソードに通常の飽和電荷量の電荷(クエンチング電位Vqに対応する電荷)が蓄積された場合に、フローティングディフュージョン部110に分配される電荷の電位である。以下、この電位Vq’のことを基準蓄積電位と称する。ここでは、図3(b)の工程において、APD101のカソードに典型的な飽和電荷量を超える電荷量で電荷が蓄積されているため、フローティングディフュージョン部110に分配される電荷量も、図3(c)に示すように、基準蓄積電位Vq’をやや超えた電荷量となっている。飽和電荷量のばらつきに応じて、図3(c)の工程で蓄積される電荷量に応じた電圧も、典型的な基準蓄積電位Vq’に対して分散±σ’の範囲でばらつく。以下、「基準蓄積電位Vq’」の記載は、特に言及がない限り、典型的なクエンチング電位Vqに対応する基準蓄積電位を意味する。
【0045】
その後、撮像制御部24は、転送トランジスタ103をオフに切り替え、さらに、FDリセットトランジスタ104をハーフオンに設定する。これにより、図3(d)に示すように、TRNのポテンシャル障壁が上昇し、RSTのポテンシャル障壁が降下する。
【0046】
ここで、撮像制御部24は、RSTのポテンシャル障壁が基準蓄積電位Vq’となるように、FDリセットトランジスタ104のゲートに印加する電圧を設定する。これにより、図3(d)に示すように、フローティングディフュージョン部110に分配された電荷のうち、基準蓄積電位Vq’を超える部分の電荷が、RSTのポテンシャル障壁を超えてRSDに移動する。すなわち、基準蓄積電位Vq’を超える部分の電荷が、FDリセットトランジスタ104を介して、リセットドレイン電源RSDに排出される。これにより、フローティングディフュージョン部110に蓄積される電荷が一定量(基準蓄積電位Vq’に応じた量)に固定される。
【0047】
その後、撮像制御部24は、FDリセットトランジスタ104をオフに設定する。これにより、RSTのポテンシャル障壁が上昇し、フローティングディフュージョン部110に蓄積される電荷量が所定の電荷量(ここでは、基準蓄積電位Vq’に対応する電荷量)に確定する。そして、撮像制御部24は、選択トランジスタ106をオンに設定し、フローティングディフュージョン部110に蓄積された電荷量に対応する電圧信号を、垂直信号線Vsigに出力する。これにより、画素セル100における検出信号の出力が完了する。
【0048】
こうして、検出信号を出力した後、撮像制御部24は、APD101のカソードとフローティングディフュージョン部110にそれぞれ蓄積されている電荷をリセットする初期化処理を行う。すなわち、撮像制御部24は、APDリセットトランジスタ102とFDリセットトランジスタ104をオンに設定する。
【0049】
これにより、図4(a)に示すように、OVFおよびRSTのポテンシャル障壁が降下し、APD101のカソードとフローティングディフュージョン部110にそれぞれ蓄積されている電荷が、APDリセットトランジスタ102およびFDリセットトランジスタ104を介して、リセットドレイン電源PIXRSDおよびリセットドレイン電源RSDに排出される。その後、撮像制御部24は、図3(a)~(d)および図4(a)の処理を繰り返し実行して、画素セル100における検出信号の出力を継続する。
【0050】
なお、図3(d)の摺り切り工程では、FDリセットトランジスタ104がハーフオンに設定された場合のポテンシャル障壁の高さが基準蓄積電位Vq’と同電位に設定されたが、ハーフオン時のポテンシャル障壁の高さは、これに限られるものではない。たとえば、図4(b)に示すように、フローティングディフュージョン部110に分配される電荷の電位が基準蓄積電位Vq’に対してばらつき得る範囲は、分散をσとしたとき、Vq’±σで表現できる。この分散を含めた最大値、すなわち、基準蓄積電位Vq’に対して+σだけ高い電位に、ハーフオン時のポテンシャル障壁の高さが設定されてもよい。
【0051】
この場合、摺り切り工程後にフローティングディフュージョン部110に残る電荷の量は、図3(d)の場合に比べて減少するもの、摺り切り工程後にフローティングディフュージョン部110に残る電荷の量をより確実に一定量に固定することができる。この他、FDリセットトランジスタ104がハーフオンの場合のポテンシャル障壁の高さが、基準蓄積電位Vq’にばらつきを加算した電位よりもやや高く設定されてもよく、あるいは、ばらつきの範囲内の他の電位に設定されてもよい。
【0052】
但し、摺り切り工程後にフローティングディフュージョン部110に残る電荷の量をより確実に一定量に固定するためには、FDリセットトランジスタ104がハーフオンの場合のポテンシャル障壁の高さを、基準蓄積電位Vq’以上に設定することが好ましく、基準蓄積電位Vq’にばらつきを加算した電位以上に設定することがさらに好ましい。
【0053】
図4(c)は、上記処理を実行するためのフローチャートである。
【0054】
まず、撮像制御部24は、画素セル100に対する初期化を実行する(S11)。これにより、各部の電位が図4(a)の状態に設定され、APD101のカソードおよびフローティングディフュージョン部110の電荷がリセットされる。次に、撮像制御部24は、各部の電位を図3(a)の初期状態に設定した後、露光を行って、APD101のカソードに電荷を蓄積させる(S12)。なお、この工程において反射光がAPD101に入射しない場合は、APD101のカソードに電荷が蓄積されない。
【0055】
その後、撮像制御部24は、転送トランジスタ103をオンに設定する(S13)。これにより、図3(c)に示すように、APD101のカソードに蓄積された電荷がフローティングディフュージョン部110に分配される。そして、撮像制御部24は、転送トランジスタ103をオフに設定し(S14)、さらに、FDリセットトランジスタ104をハーフオンに設定する(S15)。これにより、図3(d)に示すように、余剰な電荷が、フローティングディフュージョン部110から、APDリセットトランジスタ102を介して、リセットドレイン電源PIXRSDに排出される。
【0056】
その後、撮像制御部24は、FDリセットトランジスタ104をオフに設定し(S16)、さらに、選択トランジスタ106をオンに設定する(S17)。これにより、フローティングディフュージョン部110に蓄積された電荷量に応じた電圧が、検出信号として、垂直信号線Vsigに出力される。こうして、画素セル100に対する1シーケンスが終了する。
【0057】
その後、撮像制御部24は、処理をステップS11に戻して、同様の処理を繰り返す。各シーケンスにおいて反射光がAPD101に入射する場合に、基準蓄積電位Vq’に対応する電圧が、検出信号として、画素セル100から撮像制御部24に出力される。反射光がAPD101に入射しない場合、図3(c)の転送工程において、APD101のカソードからフローティングディフュージョン部110に電荷が転送されない。この場合、ノイズ等による電荷がAPD101のカソードに蓄積されていても、転送工程において設定された転送トランジスタ103のポテンシャル障壁により、この電荷がフローティングディフュージョン部110に分配されることが防止される。
【0058】
撮像制御部24は、各画素セル100から順次入力される検出信号を信号処理部25に送信する。信号処理部25は、検出信号を受信したタイミングと、光源11に発光パルスを出射させたタイミングとの時間差に基づいて、各画素セル100に対応する位置に存在する物体までの距離を測定する。こうして、目標領域に存在する物体までの距離が測定される。
【0059】
<実施形態1の効果>
実施形態1によれば、以下の効果が奏され得る。
【0060】
図3(d)に示したように、FDリセットトランジスタ104が制御されることにより、APD101のカソードから転送トランジスタ103を介してフローティングディフュージョン部110に蓄電される電荷のうち所定の電荷量を超える電荷が排出される。これにより、フローティングディフュージョン部110に蓄積される電荷量のばらつきを低減することができる。より詳細には、ランダムノイズや固定パタンノイズをすべて、摺り切り工程におけるリセットトランジスタのポテンシャル障壁のばらつき程度に集約でき、フローティングディフュージョン部110に蓄積される電荷量のばらつきを低減できる。
【0061】
また、図3(a)~(d)および図4(c)に示したように、撮像制御部24は、転送トランジスタ103を制御して、APD101のカソードに蓄電された電荷をフローティングディフュージョン部110に蓄積させる転送制御を行った後、FDリセットトランジスタ104を制御して、フローティングディフュージョン部110に蓄電された電荷のうち所定の電荷量を超える電荷を排出させる。このように、APD101のカソードからフローティングディフュージョン部110に分配される電荷を確定させた後、フローティングディフュージョン部110から余剰な電荷を排除する制御(摺り切り)を行うことにより、フローティングディフュージョン部110に残存する電荷のばらつきを低減することができる。
【0062】
また、図3(a)~(d)に示したように、撮像制御部24は、FDリセットトランジスタ104のポテンシャル障壁を所定の電荷量に対応する高さに設定することにより、フローティングディフュージョン部110に蓄電された電荷のうち所定の電荷量を超える電荷を排出させる。
【0063】
ここで、撮像制御部24は、基準蓄積電位Vq’以上の電位に、FDリセットトランジスタ104のポテンシャル障壁を設定する。これにより、フローティングディフュージョン部110に蓄積される電荷のばらつきを確実に低減することができる。
【0064】
このとき、撮像制御部24は、図3(d)に示すように、基準蓄積電位Vq’にFDリセットトランジスタ104のポテンシャル障壁の高さを設定する。これにより、摺り切り後にフローティングディフュージョン部110に残存する電荷の量を、基準蓄積電位Vq’に対応する電荷量に確定できる。よって、フローティングディフュージョン部110に蓄積される電荷のばらつきを確実に低減することができる。
【0065】
あるいは、撮像制御部24は、図4(b)に示すように、基準蓄積電位Vq’に対してばらつきだけ高い電位に、FDリセットトランジスタ104のポテンシャル障壁の高さを設定する。これにより、摺り切り後にフローティングディフュージョン部110に残存する電荷の量を、基準蓄積電位Vq’よりも+σだけ高い電位に対応する電荷量に確定できる。よって、フローティングディフュージョン部110に蓄積される電荷のばらつきをより一層確実に低減することができる。
【0066】
<変更例1>
上記実施形態1では、APD101のカソードに蓄積された電荷をフローティングディフュージョン部110に分配する転送工程の後、フローティングディフュージョン部110に分配された電荷の電荷量を所定量に摺り切る摺り切り工程が行われた。これに対し、変更例1では、APD101のカソードに蓄積された電荷をフローティングディフュージョン部110に分配する転送工程において、電荷量を所定量に摺り切る摺り切り工程が同時に行われる。
【0067】
図5(a)、(b)は、変更例1における画素セル100の動作シーケンスを説明する図である。図5(c)は、変更例1の動作シーケンスを実行するためのフローチャートである。
【0068】
図5(a)、(b)は、図4(a)、(b)と同様、各部のポテンシャルを示している。変更例1では、図3(c)の転送工程が、図5(a)、(b)の工程に置き換えられ、図3(d)の摺り切り工程が省略される。
【0069】
図5(c)を参照して、撮像制御部24は、初期化工程(S21)と蓄積工程(S22)を順次実行する。初期化工程(S21)および蓄積工程(S22)は、それぞれ、図4(c)のステップS11、S12と同様である。これにより、図3(b)と同様、反射光の受光に応じて、APD101のカソードに電荷が蓄積される。
【0070】
次に、撮像制御部24は、FDリセットトランジスタ104をハーフオンに設定する(S23)。これにより、図5(a)に示すように、RSTのポテンシャル障壁が基準蓄積電位Vq’に降下する。図4(b)を参照して説明したように、RSTのポテンシャル障壁の降下レベルは、基準蓄積電位Vq’でなくてもよく、基準蓄積電位Vq’に対してばらつきだけ高い電位等、他の電位であってもよい。
【0071】
その後、撮像制御部24は、転送トランジスタ103をオン状態に設定する(S24)。これにより、APD101のカソードに蓄積された電荷がフローティングディフュージョン部110に分配される。ここでは、既に、RSTのポテンシャル障壁が降下しているため、図5(b)に示すように、電荷の分配時に、RSTのポテンシャル障壁を超える部分の電荷が、RSDに移動して、リセットドレイン電源RSDに排出される。
【0072】
こうして、電荷の転送と摺り切りが同時に行われた後、撮像制御部24は、まず、転送トランジスタ103をオフに設定してTRNのポテンシャル障壁を上昇させ(S25)、次に、FDリセットトランジスタ104をオフに設定してRSTのポテンシャル障壁を上昇させる(S26)。これにより、フローティングディフュージョン部110に蓄積される電荷量が、基準蓄積電位Vq’に対応する電荷量に確定される。
【0073】
その後、撮像制御部24は、選択トランジスタ106をオンに設定する(S27)。これにより、フローティングディフュージョン部110に蓄積された電荷量に応じた電圧が、検出信号として、垂直信号線Vsigに出力される。こうして、画素セル100に対する1シーケンスが終了する。その後、撮像制御部24は、処理をステップS21に戻して、同様の処理を繰り返す。
【0074】
変更例1によれば、APD101のカソードに蓄電された電荷をフローティングディフュージョン部110に蓄積させる転送制御を行う間に、FDリセットトランジスタ104を制御して、APD101のカソードから転送トランジスタ103を介してフローティングディフュージョン部110に蓄電される電荷のうち所定の電荷量(たとえば、基準蓄積電位Vq’に対応する電荷量)を超える電荷が排出される。すなわち、電荷の転送と摺り切りが同時に行われる。このため、上記実施形態1に比べて、画素セル100に対する制御を簡易化することができる。
【0075】
なお、図5(c)のフローチャートにおいて、ステップS23とステップS24とが互いに入れ替えられてもよい。これによっても、転送工程において、同時に、フローティングディフュージョン部110に蓄積される電荷が所定の電荷量(たとえば、基準蓄積電位Vq’に対応する電荷量)に摺り切られ得る。
【0076】
<変更例2>
上記実施形態1では、APD101のカソードに蓄積された電荷をフローティングディフュージョン部110に分配する転送工程の後、フローティングディフュージョン部110に分配された電荷の電荷量を所定量に摺り切る摺り切り工程が行われた。これに対し、変更例2では、APD101のカソードに電荷を蓄積させる蓄積工程において、フローティングディフュージョン部110に対して電荷を分配する分配工程と、フローティングディフュージョン部110に蓄積される電荷量を所定量に摺り切る摺り切り工程とが同時に行われる。
【0077】
図6(a)、(b)は、変更例2における画素セル100の動作シーケンスを説明する図である。図6(c)は、変更例2の動作シーケンスを実行するためのフローチャートである。
【0078】
図6(a)、(b)は、図4(a)、(b)と同様、各部のポテンシャルを示している。変更例2では、図3(c)の蓄積工程が、図6(a)、(b)の工程に置き換えられ、図3(c)、(d)の転送工程および摺り切り工程が省略される。
【0079】
図6(c)を参照して、撮像制御部24は、まず、初期化工程(S31)を実行する。初期化工程(S31)は、図4(c)のステップS11と同様である。
【0080】
次に、撮像制御部24は、蓄積工程を実行する(S32)。このとき、撮像制御部24は、転送トランジスタ103をオンに設定し、さらに、FDリセットトランジスタ104をハーフオンに設定して、露光制御を行う。これにより、反射光の受光に応じて、APD101のカソードに電荷が蓄積されていく。
【0081】
このとき、図6(a)に示すように、転送トランジスタ103のオンにより、TRNのポテンシャル障壁が転送レベルに降下しているため、APD101のカソードに蓄積されて電荷は、そのまま、フローティングディフュージョン部110に分配される。また、図6(a)に示すように、FDリセットトランジスタ104のハーフオンにより、RSTのポテンシャル障壁が基準蓄積電位Vq’に降下しているため、フローティングディフュージョン部110に分配された電荷のうち、RSTのポテンシャル障壁を超える部分の電荷が、RSDに移動して、リセットドレイン電源RSDに排出される。
【0082】
なお、この場合も、RSTのポテンシャル障壁の降下レベルは、図4(b)を参照して説明したように、基準蓄積電位Vq’でなくてもよく、基準蓄積電位Vq’に対してばらつきだけ高い電位等、他の電位であってもよい。
【0083】
こうして、電荷の蓄積、転送および摺り切りが同時に行われた後、撮像制御部24は、まず、転送トランジスタ103をオフに設定してTRNのポテンシャル障壁を上昇させ(S33)、次に、FDリセットトランジスタ104をオフに設定してRSTのポテンシャル障壁を上昇させる(S34)。これにより、フローティングディフュージョン部110に蓄積される電荷量が、基準蓄積電位Vq’に対応する電荷量に確定される。
【0084】
その後、撮像制御部24は、選択トランジスタ106をオンに設定する(S35)。これにより、フローティングディフュージョン部110に蓄積された電荷量に応じた電圧が、検出信号として、垂直信号線Vsigに出力される。こうして、画素セル100に対する1シーケンスが終了する。その後、撮像制御部24は、処理をステップS31に戻して、同様の処理を繰り返す。
【0085】
変更例2によれば、APD101のカソードに蓄電させる蓄積制御の間に、転送トランジスタ103を制御して、APD101のカソードからフローティングディフュージョン部110に電荷が分配され、さらに、FDリセットトランジスタ104を制御して、フローティングディフュージョン部110に蓄電される電荷のうち所定の電荷量(たとえば、基準蓄積電位Vq’に対応する電荷量)を超える電荷が排出される。すなわち、電荷の蓄積、転送および摺り切りが同時に行われる。このため、上記実施形態1に比べて、画素セル100に対する制御を簡易化することができる。
【0086】
<実施形態2>
上記実施形態1では、1回の動作シーケンスによりフローティングディフュージョン部110に蓄積された電荷が、電圧に変換されて、垂直信号線Vsigに出力された。これに対し、実施形態2では、複数回の動作シーケンスによりフローティングディフュージョン部110に蓄積された電荷が、メモリ部に積算された後、メモリ部の電荷が、電圧に変換されて、垂直信号線Vsigに出力される。すなわち、実施形態2では、複数回の動作シーケンスにおいて、APD101に反射光(フォトン)が入射した回数が、メモリ部に蓄積された電荷量によって、カウントされる。メモリ部に蓄積される電荷量は、APD101に反射光(フォトン)が入射した回数に対応する電荷量となる。
【0087】
図7は、実施形態2に係る、画素セル100の構成を示す図である。
【0088】
実施形態2では、図2の構成に対して、カウントトランジスタ107と、メモリ部108とが追加されている。メモリ部108は、電荷を蓄積するキャパシタである。カウントトランジスタ107は、フローティングディフュージョン部110とメモリ部108とを接続する。カウントトランジスタ107のゲートにカウント信号CNTを印加することにより、フローティングディフュージョン部110に蓄積された電荷が、カウントトランジスタ107を介して、メモリ部108に転送される。
【0089】
メモリ部108の容量は、フローティングディフュージョン部110の容量に比べて大きい。たとえば、メモリ部108の容量は、フローティングディフュージョン部110の容量の5倍程度に設定される。但し、メモリ部108の容量の設定方法はこれに限られるものではなく、種々の設定方法が適用され得る。
【0090】
図8(a)~(d)および図9(a)~(d)は、画素セル100の動作シーケンスを説明する図である。
【0091】
図8(a)~(d)および図9(a)~(d)には、図7のリセットドレイン電源PIXRSDから、APDリセットトランジスタ102、転送トランジスタ103、フローティングディフュージョン部110、カウントトランジスタ107を介して、メモリ部108へと続く回路部分のポテンシャル図が示されている。縦軸は、矢印の方向が低電位の方向である。
【0092】
図8(a)~(d)および図9(a)~(d)において、“PIXRSD”、“APD”、“FD”は、図3(a)~(d)と同様、それぞれ、リセットドレイン電源PIXRSDの電位、APD101のカソードの電位、およびフローティングディフュージョン部110の電位を示している。また、“OVF”および“TRN”は、図3(a)~(d)と同様、それぞれ、APDリセットトランジスタ102の電位、および転送トランジスタ103の電位を示している。この他、“MEM”は、メモリ部108の電位を示し、CNTは、カウントトランジスタ107の電位を示している。
【0093】
実施形態2においても、各動作シーケンスにおいて、図4(a)の初期化工程が行われた後、図3(a)~(d)の工程が実行されて、フローティングディフュージョン部110に電荷が蓄積される。なお、図3(a)~(d)の工程に代えて、変更例1または変更例2の工程が行われて、フローティングディフュージョン部110に電荷が蓄積されてもよい。
【0094】
図8(a)は、図3(d)の摺り切り工程が行われた後、FDリセットトランジスタ104がオフに設定された状態を示している。このとき、カウントトランジスタ107はオフに設定され、CNTにポテンシャル障壁が生じている。
【0095】
その後、撮像制御部24は、カウントトランジスタ107をオンに設定する。これにより、図8(b)に示すように、CNTのポテンシャル障壁が消失し、フローティングディフュージョン部110に蓄積された電荷がメモリ部108に分配される。こうして、メモリ部108への電荷の分配(転送)を行った後、撮像制御部24は、カウントトランジスタ107をオフに設定する。これにより、図8(c)に示すように、CNTにポテンシャル障壁が生じ、メモリ部108に蓄積された電荷量が、1回のフォトン入射に対応する電荷量に確定する。
【0096】
こうして、メモリ部108に電荷を蓄積するための1シーケンスが終了すると、撮像制御部24は、次のシーケンスを実行する。これにより、図3(a)~(d)の動作が実行される。このとき、APD101に反射光(フォトン)が入射すると、図8(d)に示すように、フローティングディフュージョン部110に、基準蓄積電位Vq’に対応する電荷量が蓄積される。
【0097】
上記と同様、撮像制御部24は、カウントトランジスタ107をオンに設定する。これにより、図9(a)に示すように、CNTのポテンシャル障壁が消失し、フローティングディフュージョン部110に蓄積された電荷がメモリ部108に分配される。これにより、メモリ部108に蓄積される電荷量が、1回のフォトンカウントに応じた電荷量だけ増加する。その後、撮像制御部24は、カウントトランジスタ107をオフに設定する。これにより、図9(b)に示すように、CNTにポテンシャル障壁が生じ、メモリ部108に蓄積された電荷量が、2回のフォトン入射に対応する電荷量に確定する。
【0098】
撮像制御部24は、予め決められた回数だけ、同様のシーケンスを繰り返す。これにより、各シーケンスにおいて、反射光(フォトン)がAPD101に入射するごとに、1回のフォトンカウントに応じた電荷量の電荷が、メモリ部108に積算されていく。こうして、予め決められた回数のシーケンスが終了すると、たとえば、図9(c)に示す電荷量の電荷がメモリ部108に蓄積される。
【0099】
その後、撮像制御部24は、カウントトランジスタ107をオンに設定する。これにより、図9(d)に示すように、CNTのポテンシャル障壁が消失し、メモリ部108に蓄積された電荷がフローティングディフュージョン部110に分配される。そして、撮像制御部24は、選択トランジスタ106をオンに設定する。これにより、メモリ部108に蓄積された電荷に応じた電圧が、検出信号として、垂直信号線Vsigに出力される。この検出信号は、反射光(フォトン)がAPD101に入射した回数に応じた大きさとなる。
【0100】
図10(a)は、上記処理を実行するためのフローチャートである。
【0101】
撮像制御部24は、画素セル100に対して、初期化から摺り切りまでの工程を行う(S41)。この工程において、APD101に反射光(フォトン)が入射すると、図8(a)に示すように、フローティングディフュージョン部110に1回のフォトンカウントに応じた電荷量の電荷が蓄積される。
【0102】
次に、撮像制御部24は、カウントトランジスタ107をオンに設定する(S42)。これにより、図8(b)に示すように、フローティングディフュージョン部110に蓄積された電荷がメモリ部108に分配される。そして、撮像制御部24は、カウントトランジスタ107をオフに設定する(S43)。これにより、図8(c)に示すように、メモリ部108に分配された電荷が確定する。
【0103】
その後、撮像制御部24は、予め決められた回数だけステップS41~S43のシーケンスを繰り返す(S44)。当該回数のシーケンスが終了すると(S44:YES)、撮像制御部24は、カウントトランジスタ107をオンに設定する(S45)。これにより、メモリ部108に積算された電荷がフローティングディフュージョン部110に分配される。そして、撮像制御部24は、選択トランジスタ106を所定時間オンに設定して、フローティングディフュージョン部110の電荷量に応じた電圧を垂直信号線Vsigに出力させる(S46)。
【0104】
こうして、フォトンのカウント数に応じた電圧値の検出信号を垂直信号線Vsigに出力させた後、撮像制御部24は、FDリセットトランジスタ104をオンに設定して、フローティングディフュージョン部110およびメモリ部108に蓄積された電荷をリセットドレイン電源RSDに排出させる(S47)。これにより、フォトンカウンティングのための1シーケンスが終了する。その後、撮像制御部24は、処理をステップS41に戻して、同様の処理を繰り返す。
【0105】
なお、実施形態2の構成は、たとえば、撮像装置20が、目標領域に光を照射して目標領域の反射率を測定する測定装置に搭載される場合に好適である。この場合、目標領域に存在する物体の反射率が低いと、たとえば、10回のパルス発光のうち数回しか反射光(フォトン)がAPD101に入射しない。すなわち、各画素セル100において取得されるフォトンのカウント数(メモリ部108に蓄積される電荷量に応じた電圧)は、物体の反射率に対応し得る。したがって、測定装置は、撮像装置20から入力される各画素セル100の検出信号、すなわち、フォトンのカウント数に応じた電圧(メモリ部108に蓄積された電荷量に応じた電圧)に基づいて、各画素セル100に対応する目標領域上の位置の反射率を測定できる。これにより、測定装置は、目標領域上の各画素セル100に対応する位置に反射率をマッピングした画像を生成できる。
【0106】
また、さらには、実施形態2の構成は、たとえば、撮像装置20が、距離画像撮像装置に搭載される場合にも好適ある。この場合、ある目標距離領域に対して光を照射し、さらに光が目標距離領域で反射して戻ってくる時間だけ、転送トランジスタ103のゲートを開いておき、フローティングディフュージョン部110に電荷を蓄積する。目標距離領域に物体がある場合は、反射光(フォトン)がAPD101に入射するため、アバランシェ増倍が起こり、電荷が蓄積され、最終的に画素信号として現れる。逆に、目標距離領域に物体がない場合は、反射光(フォトン)がAPD101に入射しないため、電荷が蓄積されず、最終的に画素信号として現れ得ない。このとき、目標距離領域に存在する物体の反射率が低いと、反射光(フォトン)がAPD101に戻ってこないため、電荷が蓄積されず、最終的に画素信号として現れ得ない場合がある。したがって、低反射率の物体でも検知できるよう、複数回のパルス発光を実施する必要がある。このような動作を、複数の目標距離領域に対して実施し、各目標距離領域で得られた反射光(フォトン)画像を組み合わせることによって、距離画像を生成できる。
【0107】
<実施形態2の効果>
実施形態2においても、図3(a)~(d)の動作によってフローティングディフュージョン部110に蓄積される電荷が所定の電荷量に固定される。そして、固定された電荷量の電荷がメモリ部108に積算されて、フォトンのカウント数に応じた電荷量の電荷がメモリ部108に蓄積される。よって、メモリ部108に蓄積される電荷量を、より正確に、フォトンのカウント数に対応させることができる。
【0108】
図10(b)は、フォトンのカウント数と、メモリ部108に蓄積された電荷を電圧に変換した場合の出力電圧との関係を実験により検証した検証結果を示すグラフである。
【0109】
APD101にフォトンを入射させる回数を変化させ、回数ごとに出力電圧を測定した。比較例として、図3(d)の摺り切り工程を行わない場合について、同様の測定を行った。
【0110】
図10(b)において、黒丸のプロットは、実施形態2の工程を実行した場合の測定結果であり、白四角のプロットは、比較例の工程を実行した場合の測定結果である。ここでは、各カウント数(フォトンの入射回数)について出力電圧を測定する実験を複数回行い、各実験で測定された出力電圧の平均値が、黒丸または白三角のプロットとして示されている。各プロットには、実験結果のばらつきの範囲を示すバーが付記されている。
【0111】
図10(b)に示すように、実施形態2の工程では、フローティングディフュージョン部110に蓄積された電荷が摺り切られたため、比較例の工程に比べて、各カウント回数の出力電圧が、比較例の出力電圧に比べて低下した。しかしながら、実施形態2の工程では、この摺り切りによりフローティングディフュージョン部110に蓄積される電荷量が一定に固定されるため、比較例の工程に比べて、各カウント回数の出力電圧のばらつきが顕著に抑制された。このように、上記実験によって、メモリ部108に蓄積される電荷量を、より正確に、フォトンのカウント数に対応させることができ、より正確な出力電圧(検出信号)が得られ得ることが確認できた。
【0112】
なお、実施形態2の工程においても、カウント回数の増加に伴い、出力電圧のばらつきが広がった。このばらつきは、図3(d)の摺り切り工程において、RSTのポテンシャル障壁の高さが僅かに変動したためであると考えられる。しかし、このばらつきは小さいため、出力電圧とカウント回数を略一対一に対応付けることができ、特に、カウント数が15回程度までの範囲においては、出力電圧からフォトンのカウント数を適正に取得できることが確認できた。
【0113】
また、図10(b)に示すように、本摺り切り工程を行った結果、フォトンカウントの線形性を改善するイコライザーとしての効果も果たしていることが分かる。以下、その理由を説明する。
【0114】
摺り切り工程を行っていない比較例の場合、フォトンカウント数に対する出力電圧は白四角のプロットのように、フローティングディフュージョン部110とメモリ部108との容量分配で決まる曲線で描かれる。すなわち、メモリ部108内の電荷がないもしくは少数カウント分しか電荷が貯まっていないときほど、出力電圧の差分は大きくなり、逆に多数カウント分電荷が貯まっているときほど、出力電圧の差分は小さくなってしまう。
【0115】
一方で、本摺り切り工程を行う場合、画素セル100毎の蓄積電荷のばらつきを略一定とするため、摺り切りによってカウント一回あたりの蓄積電荷の一部を捨てることになる。その結果、フォトンカウント数に対する出力電圧は黒丸のプロットのように、メモリ部108内の電荷がないもしくは少数カウント分しか電荷が貯まっていないときは、カウント一回あたりに増加する出力電圧差は小さくなってしまうが、逆に、多数カウント分電荷が貯まっているときでも、出力電圧の差分は比較例に対して大きく維持できている。したがって、出力電圧に対するフォトンカウントの線形性を改善するイコライザーとしての効果を果たし、多数のカウントまで精度よく実施できるようになる。
【0116】
<実施形態3>
上記実施形態1、2では、フローティングディフュージョン部110に蓄積される電荷を摺り切るためのレベル(ハーフオン時のRSDのポテンシャル障壁の高さ)が一定であった。しかしながら、基準蓄積電位Vq’は、環境温度や経時変化等、種々の要因により変動し得る。このため、電荷の摺り切りレベルも、基準蓄積電位Vq’の変動に応じて再設定されることが好ましい。
【0117】
そこで、実施形態3では、撮像制御部24が、基準蓄積電位Vq’の変動要因となり得る所定の指標を監視し、この指標に基づいて、ハーフオン時のRSDのポテンシャル障壁の高さを再設定する。
【0118】
図11(a)は、実施形態3に係る、距離測定装置1の構成を示す図である。ここでは、基準蓄積電位Vq’の変動要因となり得る所定の指標として、環境温度が用いられる。
【0119】
図11(a)に示すように、撮像装置20は、さらに、温度センサ26を備える。温度センサ26は、固体撮像素子23またはその周辺の温度を検出する。撮像制御部24は、温度センサ26から入力される温度情報に基づいて、フローティングディフュージョン部110に蓄積される電荷を摺り切るための摺り切りレベル(ハーフオン時のRSDのポテンシャル障壁の高さ)を再設定する。
【0120】
撮像制御部24は、予め、温度と摺り切りレベルとを対応づけた設定テーブルを保持している。APD101の温度が変化すると、APD101で生じる飽和電荷量が変化する。このため、APD101の温度変化に伴い、基準蓄積電位Vq’が変動する。設定テーブルには、このような現象に対応するように、温度と摺り切りレベルとが対応付けられている。
【0121】
摺り切りレベルは、たとえば、各温度における基準蓄積電位Vq’と同じに設定される。あるいは、各温度における基準蓄積電位Vq’以上の他の値、たとえば、基準蓄積電位Vq’に対してばらつきだけ大きい値に摺り切りレベルが設定されてもよい。設定テーブルは、所定の温度幅と摺り切りレベルとが対応付けられていてもよい。摺り切りレベルとして、当該摺り切りレベルを実現するためにFDリセットトランジスタ104に印加される電圧の値が、設定テーブルに記述されていてもよい。
【0122】
図11(b)は、摺り切りレベルを再設定するための処理を示すフローチャートである。
【0123】
撮像制御部24は、所定の時間間隔ごとに、温度センサ26から入力される温度情報を参照する(S51)。そして、撮像制御部24は、参照した温度情報の温度に対応する摺り切りレベルを設定テーブルから取得し(S52)、取得した摺り切りレベルを、ハーフオン時に適用される摺り切りレベルに再設定する(S53)。その後、撮像制御部24は、処理をステップS51に戻して、同様の処理を繰り返す。
【0124】
<実施形態3の効果>
実施形態3の構成によれば、基準蓄積電位Vq’の変動に応じて摺り切りレベルが再設定されるため、フローティングディフュージョン部110に蓄積される電荷を、より適切な摺り切りレベルで摺り切ることができる。これにより、より確実に、フローティングディフュージョン部110に蓄積される電荷量を一定に確定することができる。
【0125】
なお、図11(b)では、設定テーブルを用いて各温度の摺り切りレベルが取得されたが、所定の算出式に基づいて各温度の摺り切りレベルが演算により算出されてもよい。また、ここでは、基準蓄積電位Vq’の変動要因となり得る所定の指標として、環境温度が用いられたが、撮像制御部24の使用積算時間や使用積算回数等、基準蓄積電位Vq’の変動要因となり得る他の指標を用いて、摺り切りレベルが再設定されてもよい。
【0126】
<変更例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態1~3に限定されるものではなく、また、本発明の実施形態も、上記実施形態1~3以外に種々の変更が可能である。
【0127】
たとえば、図3(a)~(d)、図4(a)、(b)、図5(a)、(b)、図6(a)、(b)、図8(a)~(d)および図9(a)、(b)に示した各部の電位や容量は、一例であって、他の電位や容量に適宜変更され得る。
【0128】
また、撮像装置20の構成は、図1および図11に示した構成に限られるものではなく、種々の変更が可能である。たとえば、所定波長の光のみを受光する必要がない場合は、フィルタ22が省略され得る。
【0129】
また、撮像制御部24は、さらにチップ外部からの制御信号によって、より高い自由度で制御することも可能である。
【0130】
また、固体撮像装置1に含まれる各処理部は、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。また、集積回路化は、LSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0131】
また、上記実施形態1~3に係る、固体撮像装置、およびそれらの変形例の機能のうち少なくとも一部を組み合わせてもよい。
【0132】
また、上記で用いた数字は、全て本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、上記説明では、MOSトランジスタを用いた例を示したが、他のトランジスタを用いてもよい。
【0133】
また、上記実施形態1~3には、撮像装置20が距離測定装置1に搭載される例が示されたが、撮像装置20の適用形態はこれに限られるものではない。たとえば、医療や放射線計測等の分野で用いられる撮像装置に、本発明が適用されてもよい。
【0134】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0135】
20 … 撮像装置
24 … 撮像制御部(制御部)
100 … 画素セル
101 … アバランシェフォトダイオード
103 … 転送トランジスタ
104 … FDリセットトランジスタ(リセットトランジスタ)
106 … 増幅トランジスタ
107 … カウントトランジスタ
108 … メモリ部
110 … フローティングディフュージョン部
Vq’ … 基準蓄積電位
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