(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】ロールプレス装置及び圧密化済み帯状電極板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20230623BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20230623BHJP
B30B 3/00 20060101ALI20230623BHJP
B21D 53/00 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
H01M4/04 A
H01M4/139
B30B3/00 B
B21D53/00 E
(21)【出願番号】P 2021040504
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000149619
【氏名又は名称】大野ロール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 健吾
(72)【発明者】
【氏名】蛭川 智史
(72)【発明者】
【氏名】中村 洸太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 知哉
(72)【発明者】
【氏名】内藤 秀次
(72)【発明者】
【氏名】榎本 吉秀
(72)【発明者】
【氏名】箭内 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】森 茂
【審査官】式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-063860(JP,A)
【文献】特開2014-032876(JP,A)
【文献】特開2013-069637(JP,A)
【文献】特表2019-537230(JP,A)
【文献】国際公開第2020/170543(WO,A1)
【文献】特開2017-208283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/04
H01M 4/139
B30B 3/00
B21D 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の集電箔及び上記集電箔上に上記集電箔の長手方向に延びる帯状の活物質層を備え、
上記長手方向に延びる帯状で、上記集電箔の厚み方向に上記活物質層を有する活物質部と、
上記長手方向に延びる帯状で、上記活物質部と上記集電箔の幅方向に並び、上記厚み方向に上記活物質層を有せず、上記活物質部よりも厚みの薄い非活物質部と、を有する
帯状電極板を、上記長手方向に搬送しつつロールプレスして上記活物質層を圧密化し、圧密化済み活物質層を備える圧密化済み帯状電極板を形成する
ロールプレス装置であって、
ロール間隙を空けて平行に配置された一対のプレスロールと、
上記帯状電極板の上記非活物質部のうち、上記一対のプレスロールに非圧縮で挟まれたロール間非活物質部について、上流側に向けて掛かる上流向き非活物質部張力τuと、下流側に向けて掛かる下流向き非活物質部張力τdとの張力比τd/τuを調整する張力比調整機構と、を備える
ロールプレス装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロールプレス装置であって、
前記張力比調整機構は、
前記帯状電極板の前記非活物質部のうち、ロールプレス前のプレス前非活物質部を、前記一対のプレスロールのいずれか一方に押し付けつつ上流側に向けて引っ張って、前記ロール間非活物質部に掛かる前記上流向き非活物質部張力τuを増加させる上流方向引張ロールを有する
ロールプレス装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のロールプレス装置であって、
前記張力比調整機構は、
ロールプレス後の前記圧密化済み帯状電極板のプレス後活物質部を、前記一対のプレスロールのいずれか一方に押し付けつつ上流側に向けて引っ張って、前記ロール間非活物質部に掛かる前記下流向き非活物質部張力τdを減少させる上流方向引張ロールを有する
ロールプレス装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のロールプレス装置であって、
前記張力比調整機構は、
ロールプレス後の前記圧密化済み帯状電極板のプレス後活物質部を、前記一対のプレスロールのいずれか一方に押し付けつつ下流側に向けて引っ張って、前記ロール間非活物質部に掛かる前記下流向き非活物質部張力τdを減少させる下流方向引張ロールを有する
ロールプレス装置。
【請求項5】
帯状の集電箔及び上記集電箔の厚み方向に圧密化された圧密化済み活物質層を備える圧密化済み帯状電極板の製造方法であって、
上記集電箔及び上記集電箔上に上記集電箔の長手方向に延びる帯状の活物質層を備え、
上記長手方向に延びる帯状で、上記厚み方向に上記活物質層を有する活物質部と、
上記長手方向に延びる帯状で、上記活物質部と上記集電箔の幅方向に並び、上記厚み方向に上記活物質層を有せず、上記活物質部よりも厚みの薄い非活物質部と、を有する
帯状電極板を形成する電極板形成工程と、
上記帯状電極板を上記長手方向に搬送しつつ、ロール間隙を空けて平行に配置された一対のプレスロールでロールプレスして、上記圧密化済み活物質層を備える上記圧密化済み帯状電極板を形成するプレス工程と、を備え、
上記プレス工程は、
上記帯状電極板の上記非活物質部のうち、上記一対のプレスロールに非圧縮で挟まれたロール間非活物質部について、上流側に向けて掛かる上流向き非活物質部張力τuと、下流側に向けて掛かる下流向き非活物質部張力τdとの張力比τd/τuを、上記非活物質部における皺の発生を抑制する大きさに調整しつつ行う
圧密化済み帯状電極板の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の圧密化済み帯状電極板の製造方法であって、
前記張力比τd/τuを、τd/τu≦2.0とする
圧密化済み帯状電極板の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の圧密化済み帯状電極板の製造方法であって、
前記張力比τd/τuを、τd/τu≧0.3とする
圧密化済み帯状電極板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状電極板をロールプレスして圧密化済み帯状電極板を形成するロールプレス装置、及び、帯状電極板をロールプレスして圧密化済み帯状電極板を製造する圧密化済み帯状電極板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などに用いられる電極板として、帯状の集電箔上に、厚み方向にプレスされ圧密化された圧密化済み活物質層を有する圧密化済み帯状電極板が知られている。更に、このような電極板の中には、
図17に示すように、幅方向FHの中央部を、厚み方向GHに圧密化済み活物質層905,906を有する帯状のプレス後活物質部911とし、幅方向FHの両側部を、それぞれ厚み方向GHに圧密化済み活物質層905,906を有しない帯状のプレス後非活物質部912とした圧密化済み帯状電極板901がある。
【0003】
この圧密化済み帯状電極板901は、例えば以下の手法により製造する。即ち、まず帯状の集電箔3のうち幅方向FHの中央部に、帯状に未乾燥活物質層905X,906Xを形成し、その後、未乾燥活物質層905X,906Xを加熱乾燥させて、帯状の活物質層905Z,906Zを形成する。次に、この帯状電極板901Zを長手方向EHに搬送しつつロールプレスして、活物質層905Z,906Zを厚み方向GHに圧密化し、圧密化済み活物質層905,906を形成する。かくして、圧密化済み帯状電極板901が出来る。なお、関連する従来技術として、例えば特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の帯状電極板901Zをロールプレスする際、非活物質部912Zのうち、特に活物質部911Zとの境界近傍に、幅方向FHの内側かつ上流側EUHから、幅方向FHの外側かつ下流側EDHに向かって、斜めに延びる斜線状の皺SWが繰り返し生じることがある。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、帯状電極板の非活物質部に掛かる張力バランスを調整しつつ、帯状電極板をロールプレスできるロールプレス装置、及び、帯状電極板の非活物質部に掛かる張力バランスを調整して、非活物質部に皺が生じるのを抑制できる圧密化済み帯状電極板の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、帯状の集電箔及び上記集電箔上に上記集電箔の長手方向に延びる帯状の活物質層を備え、上記長手方向に延びる帯状で、上記集電箔の厚み方向に上記活物質層を有する活物質部と、上記長手方向に延びる帯状で、上記活物質部と上記集電箔の幅方向に並び、上記厚み方向に上記活物質層を有せず、上記活物質部よりも厚みの薄い非活物質部と、を有する帯状電極板を、上記長手方向に搬送しつつロールプレスして上記活物質層を圧密化し、圧密化済み活物質層を備える圧密化済み帯状電極板を形成するロールプレス装置であって、ロール間隙を空けて平行に配置された一対のプレスロールと、上記帯状電極板の上記非活物質部のうち、上記一対のプレスロールに非圧縮で挟まれたロール間非活物質部について、上流側に向けて掛かる上流向き非活物質部張力τuと、下流側に向けて掛かる下流向き非活物質部張力τdとの張力比τd/τuを調整する張力比調整機構と、を備えるロールプレス装置である。
【0008】
本発明者が鋭意検討した結果、帯状電極板をロールプレスする際、非活物質部のうち、一対のプレスロールに非圧縮で挟まれたロール間非活物質部に掛かる上流向き非活物質部張力τuと下流向き非活物質部張力τdとの張力比τd/τuの大きさによって、非活物質部(プレス後非活物質部)に皺が生じ易くなったり生じ難くなったりすることが判ってきた。即ち、従来のロールプレス装置でロールプレスする際には、プレス前の帯状電極板全体に上流側に向けて掛ける上流向き全体張力Tuと、プレス後の圧密化済み帯状電極板全体に下流側に向けて掛ける下流向き全体張力Tdとを等しくする(Tu=Td)場合が多い。
【0009】
このようにした場合、ロールプレス前の帯状電極板に掛かる上流向き全体張力Tuは、幅方向の全体にわたって概ね均等に掛かるため、非活物質部のうちロール間非活物質部に掛かる上流向き非活物質部張力τuは小さい。一方、ロールプレス後の圧密化済み帯状電極板のうち、プレス後活物質部は、プレスにより長手方向に延ばされているのに対し、プレス後非活物質部は、殆ど延ばされていない。このため、圧密化済み帯状電極板に掛かる下流向き全体張力Tdの殆どは、プレス後活物質部には掛からずプレス後非活物質部のみに掛かるため、ロール間非活物質部に掛かる下流向き非活物質部張力τdは、上流向き非活物質部張力τuよりも大きくなる(τd>τu)。即ち、非活物質部のうちロール間非活物質部に掛かる上流向き非活物質部張力τuと下流向き非活物質部張力τdとの間にアンバランスが生じ、張力比τd/τuが大きくなっている。前述の皺SW(
図17参照)は、この張力比τd/τuが大きすぎると生じ易いことが判ってきた。
【0010】
これに対し、上述のロールプレス装置は、上述の張力比調整機構を備える。これにより、帯状電極板をロールプレスする際、非活物質部のうちロール間非活物質部に掛かる張力バランスを調整しつつ、具体的には、ロール間非活物質部に掛かる上流向き非活物質部張力τuと下流向き非活物質部張力τdとの張力比τd/τuを調整しつつ、帯状電極板をロールプレスして圧密化済み帯状電極板を作製できる。
【0011】
なお、「帯状電極板」としては、例えば、前述のように、幅方向の中央に帯状の活物質部が位置し、この活物質部の幅方向の両側にそれぞれ帯状の非活物質部が並んだ形態の帯状電極板が挙げられる。或いは、複数条の帯状の活物質部と複数条の帯状の非活物質部とが交互に幅方向に並んだ形態の帯状電極板も挙げられる。
また、「非活物質部」としては、例えば、集電箔のみからなる非活物質部のほか、集電箔上に、活物質層よりも厚みの薄い保護層が形成された非活物質部などが挙げられる。
更に、上述のロールプレス装置は、張力比τd/τuを調整する張力比調整機構を備える装置であり、この装置の適用範囲は、上流向き全体張力Tuと下流向き全体張力Tdとが等しい(Tu=Td)場合に限定されない。
【0012】
更に、上記のロールプレス装置であって、前記張力比調整機構は、前記帯状電極板の前記非活物質部のうち、ロールプレス前のプレス前非活物質部を、前記一対のプレスロールのいずれか一方に押し付けつつ上流側に向けて引っ張って、前記ロール間非活物質部に掛かる前記上流向き非活物質部張力τuを増加させる上流方向引張ロールを有するロールプレス装置とすると良い。
【0013】
上述のロールプレス装置は、上述の上流方向引張ロールを有するので、非活物質部のうちロール間非活物質部に掛かる上流向き非活物質部張力τuを増加させることができる。これにより、上流方向引張ロールを設けるだけの簡単な構成で、張力比τd/τuを小さくし、張力τu,τd間のアンバランスを小さくできる。
【0014】
更に、上記のいずれかに記載のロールプレス装置であって、前記張力比調整機構は、ロールプレス後の前記圧密化済み帯状電極板のプレス後活物質部を、前記一対のプレスロールのいずれか一方に押し付けつつ上流側に向けて引っ張って、前記ロール間非活物質部に掛かる前記下流向き非活物質部張力τdを減少させる上流方向引張ロールを有するロールプレス装置とすると良い。
【0015】
上述のロールプレス装置は、上述の上流方向引張ロールを有するので、非活物質部のうちロール間非活物質部に掛かる下流向き非活物質部張力τdを減少させることができる。これにより、上流方向引張ロールを設けるだけの簡単な構成で、張力比τd/τuを小さくし、張力τu,τd間のアンバランスを小さくできる。
【0016】
更に、前記のいずれかに記載のロールプレス装置であって、前記張力比調整機構は、ロールプレス後の前記圧密化済み帯状電極板のプレス後活物質部を、前記一対のプレスロールのいずれか一方に押し付けつつ下流側に向けて引っ張って、前記ロール間非活物質部に掛かる前記下流向き非活物質部張力τdを減少させる下流方向引張ロールを有するロールプレス装置とすると良い。
【0017】
上述のロールプレス装置は、上述の下流方向引張ロールを有するので、非活物質部のうちロール間非活物質部に掛かる下流向き非活物質部張力τdを減少させることができる。これにより、下流方向引張ロールを設けるだけの簡単な構成で、張力比τd/τuを小さくし、張力τu,τd間のアンバランスを小さくできる。
【0018】
また、他の態様は、帯状の集電箔及び上記集電箔の厚み方向に圧密化された圧密化済み活物質層を備える圧密化済み帯状電極板の製造方法であって、上記集電箔及び上記集電箔上に上記集電箔の長手方向に延びる帯状の活物質層を備え、上記長手方向に延びる帯状で、上記厚み方向に上記活物質層を有する活物質部と、上記長手方向に延びる帯状で、上記活物質部と上記集電箔の幅方向に並び、上記厚み方向に上記活物質層を有せず、上記活物質部よりも厚みの薄い非活物質部と、を有する帯状電極板を形成する電極板形成工程と、上記帯状電極板を上記長手方向に搬送しつつ、ロール間隙を空けて平行に配置された一対のプレスロールでロールプレスして、上記圧密化済み活物質層を備える上記圧密化済み帯状電極板を形成するプレス工程と、を備え、上記プレス工程は、上記帯状電極板の上記非活物質部のうち、上記一対のプレスロールに非圧縮で挟まれたロール間非活物質部について、上流側に向けて掛かる上流向き非活物質部張力τuと、下流側に向けて掛かる下流向き非活物質部張力τdとの張力比τd/τuを、上記非活物質部における皺の発生を抑制する大きさに調整しつつ行う圧密化済み帯状電極板の製造方法である。
【0019】
上述の圧密化済み帯状電極板の製造方法では、上述のプレス工程を備える。これにより、帯状電極板の非活物質部のうちロール間非活物質部に掛かる張力バランスを調整して、具体的には、ロール間非活物質部に掛かる上流向き非活物質部張力τuと下流向き非活物質部張力τdとの張力比τd/τuを調整して、非活物質部(プレス後非活物質部)に皺が生じるのを抑制しつつ圧密化済み帯状電極板を製造できる。
【0020】
更に、上記の圧密化済み帯状電極板の製造方法であって、前記張力比τd/τuを、τd/τu≦2.0とする圧密化済み帯状電極板の製造方法とすると良い。
【0021】
上述の圧密化済み帯状電極板の製造方法では、張力比τd/τuをτd/τu≦2.0としつつ前述のプレス工程を行う。これにより、帯状電極板をロールプレスする際に、非活物質部(プレス後非活物質部)に皺が生じるのをより適切に抑制できる。
【0022】
更に、上記の圧密化済み帯状電極板の製造方法であって、前記張力比τd/τuを、τd/τu≧0.3とする圧密化済み帯状電極板の製造方法とするのが良い。
【0023】
上述の圧密化済み帯状電極板の製造方法では、張力比τd/τuをτd/τu≧0.3としつつ前述のプレス工程を行う。このように、下流向き非活物質部張力τdをある程度大きくし、τd/τu≧0.3とすることで、圧密化済み帯状電極板の生産性を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態1~5に係る圧密化済み帯状電極板の斜視図である。
【
図2】実施形態1~5に係る圧密化済み帯状電極板の製造方法のフローチャートである。
【
図3】実施形態1に係り、帯状電極板、圧密化済み帯状電極板及びロールプレス装置を側方から見た説明図である。
【
図4】実施形態1に係り、帯状電極板、第1プレスロール及び上流方向引張ロールを上流側から見た説明図である。
【
図5】実施形態1,2に係り、ロールプレス前後の帯状電極板及び圧密化済み帯状電極板に掛かる張力を説明する説明図である。
【
図6】実施形態2に係り、帯状電極板、圧密化済み帯状電極板及びロールプレス装置を側方から見た説明図である。
【
図7】実施形態2に係り、帯状電極板、第1プレスロール及び上流方向引張ロールを上流側から見た説明図である。
【
図8】実施形態3に係り、帯状電極板、圧密化済み帯状電極板及びロールプレス装置を側方から見た説明図である。
【
図9】実施形態3に係り、圧密化済み帯状電極板、第1プレスロール及び上流方向引張ロールを下流側から見た説明図である。
【
図10】実施形態3,4に係り、ロールプレス前後の帯状電極板及び圧密化済み帯状電極板に掛かる張力を説明する説明図である。
【
図11】実施形態4に係り、帯状電極板、圧密化済み帯状電極板及びロールプレス装置を側方から見た説明図である。
【
図12】実施形態4に係り、圧密化済み帯状電極板、第1プレスロール及び上流方向引張ロールを下流側から見た説明図である。
【
図13】実施形態5に係り、帯状電極板、圧密化済み帯状電極板及びロールプレス装置を側方から見た説明図である。
【
図14】実施形態5に係り、圧密化済み帯状電極板、第1プレスロール及び下流側駆動ロールを下流側から見た説明図である。
【
図15】実施形態5に係り、ロールプレス前後の帯状電極板及び圧密化済み帯状電極板に掛かる張力を説明する説明図である。
【
図16】ロール間非活物質部に掛かる張力τu,τdの張力比τd/τuと、非活物質部に生じた皺の深さSFとの関係を示すグラフである。
【
図17】従来技術に係る圧密化済み帯状電極板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施形態1)
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1に本実施形態1に係る圧密化済み帯状電極板1の斜視図を示す。この圧密化済み帯状電極板1は、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両などに搭載される角型で密閉型のリチウムイオン二次電池を製造するのに用いられる。具体的には、圧密化済み帯状電極板1は、電池を構成する扁平状捲回型或いは積層型の電極体を製造するのに用いられる帯状正極板である。なお、以下では、圧密化済み帯状電極板1の長手方向EH、幅方向FH及び厚み方向GHを、
図1に示す方向と定めて説明する。
【0026】
圧密化済み帯状電極板1は、長手方向EHに延びる帯状で厚み約13μmのアルミニウム箔からなる集電箔3を有する。この集電箔3の第1主面3aのうち、幅方向FHの中央で長手方向EHに延びる領域上には、厚み方向GHにプレスされ圧密化された厚み約60μmの第1圧密化済み活物質層5(以下、単に「圧密化済み活物質層5」ともいう)が、長手方向EHに帯状に形成されている。また、集電箔3の反対側の第2主面3bのうち、幅方向FHの中央で長手方向EHに延びる領域上にも、厚み方向GHにプレスされ圧密化された厚み約60μmの第2圧密化済み活物質層6(以下、単に「圧密化済み活物質層6」ともいう)が、長手方向EHに帯状に形成されている。一方、集電箔3のうち、幅方向FHの両側部で長手方向EHに延びる部位は、それぞれ、圧密化済み活物質層5,6が存在せず、集電箔3が厚み方向GHに露出している。
【0027】
圧密化済み活物質層5,6は、それぞれ活物質粒子、導電粒子及び結着剤から構成されている。本実施形態1では、活物質粒子は、リチウム遷移金属複合酸化物粒子、具体的にはリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物粒子である。また、導電粒子はアセチレンブラック(AB)粒子であり、結着剤はポリフッ化ビニリデン(PVDF)である。
この圧密化済み帯状電極板1は、上述のように、集電箔3と、この集電箔3上に形成された帯状の圧密化済み活物質層5,6とからなる。圧密化済み帯状電極板1のうち、幅方向FHの中央部は、厚み方向GHに圧密化済み活物質層5,6を有する帯状のプレス後活物質部11である。一方、圧密化済み帯状電極板1のうち、幅方向FHの両側部(プレス後活物質部11の幅方向FHの両側に並ぶ部位)は、それぞれ厚み方向GHに圧密化済み活物質層5,6を有せず、プレス後活物質部11よりも厚みの薄いプレス後非活物質部12である。
【0028】
次いで、圧密化済み帯状電極板1の製造方法について説明する(
図2~
図5参照)。まず「電極板形成工程S1」(
図2参照)において、プレス未済の帯状電極板1Zを形成する。電極板形成工程S1は、「第1未乾燥層形成工程S11」、「第1乾燥工程S12」、「第2未乾燥層形成工程S13」及び「第2乾燥工程S14」をこの順に有する。
【0029】
まず第1未乾燥層形成工程S11において、集電箔3の第1主面3a上に帯状に第1未乾燥活物質層5Xを形成する。具体的には、活物質粒子(本実施形態1ではリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物粒子)、導電粒子(本実施形態1ではAB粒子)、結着剤(本実施形態1ではPVDF)及び分散媒(本実施形態1ではN-メチルピロリドン(NMP))を混合して、活物質ペーストを予め得ておく。この第1未乾燥層形成工程S11では、集電箔3を長手方向EHに搬送しながら、塗工ダイ(不図示)により、活物質ペーストを集電箔3の第1主面3aのうち幅方向FHの中央部に吐出して、集電箔3の第1主面3a上に帯状に第1未乾燥活物質層5Xを連続して形成する。
続いて、第1乾燥工程S12において、第1未乾燥層形成工程S11で得た帯状電極板を、乾燥装置(不図示)内に搬送し、第1未乾燥活物質層5Xに熱風を吹き付けて加熱乾燥させて、プレス未済の第1活物質層5Z(以下、単に「活物質層5Z」ともいう)を形成する。
【0030】
次に、第2未乾燥層形成工程S13において、第1未乾燥層形成工程S11と同様にして、集電箔3の反対側の第2主面3bのうち幅方向FHの中央部にも、帯状に第2未乾燥活物質層6Xを形成する。
続いて、第2乾燥工程S14において、第1乾燥工程S12と同様にして、第2未乾燥層形成工程S13で得た帯状電極板のうち、第2未乾燥活物質層6Xに熱風を吹き付けて加熱乾燥させて、プレス未済の第2活物質層6Z(以下、単に「活物質層6Z」ともいう)を形成する。その後、この帯状電極板1Zを巻取装置(不図示)を用いてロール状に巻き取る。
この帯状電極板1Zは、集電箔3と活物質層5Z,6Zとからなり、帯状電極板1Zのうち、幅方向FHの中央部は、厚み方向GHに活物質層5Z,6Zを有する帯状のプレス未済の活物質部11Z、活物質部11Zの幅方向FHの両側に並ぶ両側部は、それぞれ厚み方向GHに活物質層5Z,6Zを有しない帯状のプレス未済の非活物質部12Zとなっている。
【0031】
次に、「プレス工程S2」(
図2参照)において、ロールプレス装置100(
図3及び
図4参照)を用いて、電極板形成工程S1で形成した帯状電極板1Zを、長手方向EHに搬送しつつロールプレスして、活物質層5Z,6Zをそれぞれ厚み方向GHに圧密化し、圧密化済み活物質層5,6を備える圧密化済み帯状電極板1を形成する(
図5も参照)。
まずロールプレス装置100について説明する。このロールプレス装置100は、ロール間隙KAを空けて平行に配置された第1プレスロール110及び第2プレスロール120と、これら第1プレスロール110と第2プレスロール120のロール間隙KAよりも上流側EUH(
図3中、左方)で、ロール間隙KAの近傍に配置された上流方向引張ロール130を含む張力比調整機構140とを備える。
【0032】
更に、ロールプレス装置100は、ロール状に巻き取られたプレス前の帯状電極板1Zを巻き出して長手方向EHに搬送する巻出装置(不図示)と、プレス後の圧密化済み帯状電極板1をロール状に巻き取る巻取装置(不図示)とを備える。また、ロールプレス装置100は、巻出装置(不図示)と上流方向引張ロール130との間に、搬送中の帯状電極板1Zの幅方向FH全体に上流側EUHに向けて上流向き全体張力Tu(本実施形態1ではTu=30.0N)を掛ける上流側張力付与部(不図示)を備える。また、ロールプレス装置100は、第1プレスロール110と第2プレスロール120のロール間隙KAと巻取装置(不図示)との間で、搬送中の圧密化済み帯状電極板1の幅方向FH全体に下流側EDHに向けて下流向き全体張力Td(本実施形態1では、Tuと等しく、Td=Tu=30.0N)を掛ける下流側張力付与部(不図示)を備える。
【0033】
第1プレスロール110及び第2プレスロール120は、いずれもロール表面110m,120mがステンレスからなる。第1プレスロール110及び第2プレスロール120には、それぞれモータ(不図示)が連結されており、第1プレスロール110は
図3中、時計回りに、第2プレスロール120は
図3中、反時計回りに回転可能に構成されている。本実施形態1では、巻取装置(不図示)から巻き出した帯状電極板1Zを、第1活物質層5Zを
図3及び
図4中、上方に向け、第2活物質層6Zを
図3及び
図4中、下方に向けて長手方向EHに搬送する。このため、
図3中、上方に位置する第2プレスロール120は、帯状電極板1Zの第1活物質層5Zに接触し、
図3中、下方に位置する第1プレスロール110は、帯状電極板1Zの第2活物質層6Zに接触する。
【0034】
なお、以下では、帯状電極板1Zの活物質部11Zを、ロール間隙KAにおいて第1プレスロール110と第2プレスロール120とに挟圧された部位(ロール間活物質部11Zb,
図5において斜線ハッチングを付した部位)と、このロール間活物質部11Zbよりも上流側EUHの部位、即ち、ロールプレス前の部位(プレス前活物質部11Za)とに分けて説明する(
図5参照)。また、帯状電極板1Zの非活物質部12Zを、第1プレスロール110と第2プレスロール120との間に挟まれているが非圧縮の部位(ロール間非活物質部12Zb)と、このロール間非活物質部12Zbよりも上流側EUHの部位、即ち、ロールプレス前の部位(プレス前非活物質部12Za)とに分けて説明する。
【0035】
一方、張力比調整機構140は、上述のロール間非活物質部12Zbに対し、上流側EUHに向けて掛かる上流向き非活物質部張力τuと、下流側EDHに向けて掛かる下流向き非活物質部張力τdとの張力比τd/τuを調整する。本実施形態1の張力比調整機構140は、具体的には、前述のように上流方向引張ロール130を有しており、上流方向引張ロール130により非活物質部12Zを第1プレスロール110に押し付けて、ロール間非活物質部12Zbに掛かる上流向き非活物質部張力τuを増加変更可能に構成されている。
【0036】
具体的には、上流方向引張ロール130は、幅方向FHの中央に位置するロール中央部131と、ロール中央部131の幅方向FHの両側にそれぞれ位置し、ロール中央部131よりも径大でロール表面132mがゴムからなる弾性変形可能なロール両側部132とを有する弾性ロールであり、かつ、帯状電極板1Zの搬送に伴って回転する従動ロールである。このうち、ロール両側部132に比して径小なロール中央部131は、帯状電極板1Zの活物質部11Zのプレス前活物質部11Zaに隙間を空けて対向する。一方、ロール両側部132のロール表面132mは、それぞれ帯状電極板1Zの非活物質部12Zのプレス前非活物質部12Zaのうち、引張ロール押圧部12Zap(
図5において斜線ハッチングを付した部位)に圧接し、この引張ロール押圧部12Zapをそれぞれ第1プレスロール110に押し付けている。
【0037】
即ち、上流方向引張ロール130のロール両側部132は、プレス前非活物質部12Zaのうち引張ロール押圧部12Zap(集電箔3)を第1プレスロール110に押し付けて、プレス前非活物質部12Zaをロール両側部132と第1プレスロール110との間で挟圧する。上述のように、上流方向引張ロール130は、ロール表面132mがゴムからなる弾性ロールでかつ従動ロールである。このため、上流方向引張ロール130(ロール両側部132)の引張ロール押圧部12Zap及び第1プレスロール110への圧接力の大きさに応じて、上流方向引張ロール130の回転抵抗の大きさが変化する。即ち、この回転抵抗を大きくすると、上流方向引張ロール130に圧接している引張ロール押圧部12Zap及びこれより下流側EDHのプレス前非活物質部12Zaに掛かる上流側EUHに向かう張力Tpを高めることができる。
【0038】
これにより、ロール間非活物質部12Zbに掛かる上流向き非活物質部張力τuを増加させることができる。本実施形態1では、引張ロール押圧部12Zap及びこれより下流側EDHのプレス前非活物質部12Zaが、それぞれ上流側EUHに向けて張力Tp=9.2Nで引っ張られるように、上流方向引張ロール130を調整してある。このため、ロール間非活物質部12Zbに掛かる上流向き非活物質部張力τuも、上流方向引張ロール130を設けない場合に比して、それぞれ概ね張力Tp=9.2N増加する。
【0039】
プレス工程S2では、巻出装置(不図示)から巻き出され、長手方向EHに搬送された帯状電極板1Zは、第1プレスロール110と第2プレスロール120とによってロールプレスされ、活物質層5Z,6Zが厚み方向GHに圧密化されて、圧密化済み活物質層5,6を備える圧密化済み帯状電極板1が連続して作製される。その後、この圧密化済み帯状電極板1は、巻取装置(不図示)によってロール状に巻き取られる。
本実施形態1では、プレス前の帯状電極板1Zには、上流側張力付与部(不図示)によって、上流側EUHに向かう上流向き全体張力Tu=30.0Nが掛けられる。この上流向き全体張力Tuは、帯状電極板1Zの幅方向FHの全体にわたって概ね均等に掛かる。このため、非活物質部12Zに掛かる上流側EUH向きの張力Tu2は、非活物質部12Zの幅W2の大きさに応じた小さな値になる。本実施形態1では、帯状電極板1Z全体の幅WはW=216mm、活物質部11Zの幅W1はW1=150mm、各非活物質部12Zの幅W2はW2=33mmである(W=W1+2×W2)。このため、上流向き全体張力Tu=30.0Nによって、一対の非活物質部12Zに掛かる上流側EUH向きの張力Tu2は、それぞれ概ねTu2=Tu×(W2/W)=30×(33/216)=4.6Nである。
【0040】
更に本実施形態1では、前述のように上流方向引張ロール130のロール両側部132で引張ロール押圧部12Zapを第1プレスロール110に押し付けている。これにより、引張ロール押圧部12Zap及びこれより下流側EDHの範囲のプレス前非活物質部12Zaは、元々の張力Tu2に前述の張力Tpを加えた張力Tu2’で上流側EUHに向けて引っ張られる。このため、非活物質部12Zのロール間非活物質部12Zbに掛かる上流向き非活物質部張力τuは、それぞれ張力比調整機構140を設けない場合よりも張力Tp分増加する。本実施形態1では、上流向き非活物質部張力τuは概ね、τu=Tu2+Tp=Tu2’=4.6+9.2=13.8Nとなる。
【0041】
一方、ロールプレス後の圧密化済み帯状電極板1全体には、下流側張力付与部(不図示)により、下流側EDHに向けて下流向き全体張力Td(本実施形態1では、例えばTd=30.0N)が掛けられている。但し、ロールプレス後の圧密化済み帯状電極板1のうち、プレス後活物質部11は長手方向EHに延ばされているのに対し、プレス後非活物質部12は、厚みが薄く殆どプレスされないため、殆ど延ばされていない。このため、下流向き全体張力Tdは、プレス後活物質部11には殆んど掛からず(プレス後活物質部11に掛かる張力Td1≒0)、2つのプレス後非活物質部12に掛かる(
図5参照)。従って、プレス後非活物質部12に掛かる下流側EDH向きの張力Td2の大きさは、概ね下流向き全体張力Tdの半分(Td2=Td/2)である。また、ロール間非活物質部12Zbに掛かる下流向き非活物質部張力τdは、プレス後非活物質部12に掛かる下流側EDH向きの張力Td2に概ね等しい(τd=Td2)。なお本実施形態1では、下流向き全体張力TdもTd=30.0Nであり、下流側EDH向きの張力Td2及び下流向き非活物質部張力τdは、それぞれ概ねTd2=τd=15.0Nとなる。
【0042】
従って、張力比調整機構140を設けることにより、張力比調整機構140を設けない場合に比して、各ロール間非活物質部12Zbに掛かる上流向き非活物質部張力τuと下流向き非活物質部張力τdとの張力比τd/τuを小さくできる。本実施形態1において、張力比調整機構140を設けないとした場合には、張力比τd/τu=τd/Tu2=15.0/4.6=3.26である。これに対し、張力比調整機構140を設けた本実施形態1では、張力比をτd/τu=15.0/13.8=1.09に調整できる。このように張力比τd/τuを小さくし、張力τu,τd間のアンバランスを小さくできるため、ロールプレスの際に非活物質部12Z(プレス後非活物質部12)に皺が生じるのを抑制できる。
【0043】
なお付言するに、
図5に示すように、活物質部11Zのうち、ロール間隙KAにおいて第1プレスロール110と第2プレスロール120との間に挟まれたロール間活物質部11Zbに掛かる張力も、上流側EUH向きと下流側EDH向きとで、アンバランスを生じている。即ち、ロール間活物質部11Zbには、上流側EUHに向かう張力Tu1が掛かる。本実施形態1では、具体的には、Tu1=Tu×(W1/W)=30×(150/216)=20.8Nの張力Tu1が掛かる。しかし、ロール間活物質部11Zbには、下流側EDHに向かう張力Td1はほとんど掛からない(張力Td1≒0)。前述のように、プレス後活物質部11は長手方向EHに延ばされているのに対し、プレス後非活物質部12は殆ど延ばされていないため、下流向き全体張力Tdがプレス後活物質部11には殆んど掛からないからである。
但し、この張力Tu1と張力Td1の大きさのアンバランスによる問題は生じない。ロール間活物質部11Zbは、第1プレスロール110と第2プレスロール120とで強く挟圧され拘束されているので、上流側EUHの張力Tu1と下流側EDHの張力Td1とは、相互に影響しないからである。
【0044】
(実施形態2)
次いで、第2の実施形態について説明する。実施形態1のロールプレス装置100では、弾性ロールかつ従動ロールである上流方向引張ロール130を含む張力比調整機構140を設けた例を示した(
図3及び
図4参照)。これに対し、本実施形態2のロールプレス装置200は、金属ロールかつ駆動ロールである上流方向引張ロール230を含む張力比調整機構240を備える点が異なる(
図6及び
図7参照)。
【0045】
本実施形態2に係る張力比調整機構240は、ロール間隙KAよりも上流側EUHでロール間隙KAの近傍に配置された上流方向引張ロール230を有する。この上流方向引張ロール230は、幅方向FHの中央に位置するロール中央部231と、ロール中央部231の幅方向FHの両側にそれぞれ位置し、ロール中央部231よりも径大でロール表面232mがステンレスからなるロール両側部232とを有する金属ロールであり、かつ、モータ(不図示)により、
図6中、反時計回りに回転駆動される駆動ロールである。径小なロール中央部231は、帯状電極板1Zの活物質部11Zのプレス前活物質部11Zaに隙間を空けて対向する。一方、径大なロール両側部232のロール表面232mは、それぞれ帯状電極板1Zの非活物質部12Zのプレス前非活物質部12Zaに圧接する。
【0046】
但し、上流方向引張ロール230は、第1プレスロール110の周速V1よりもロール両側部232の周速Vuの方が若干遅くなる回転速度で反時計回りに回転している(Vu<V1)。このため、プレス前非活物質部12Za(集電箔3)のうち、引張ロール押圧部12Zaq(
図5において斜線ハッチングを付した部位)には、第1プレスロール110及び上流方向引張ロール230のロール両側部232に圧接しつつ、ロール両側部232から受ける摩擦力により上流側EUH向きの張力Tqを生じる(
図5参照)。このため、引張ロール押圧部12Zaq及びこれより下流側EDHの範囲のプレス前非活物質部12Zaは、元々の張力Tu2に張力Tqを加えた張力Tu2’(=Tu2+Tq)で上流側EUHに向けて引っ張られる。
【0047】
なお本実施形態2では、実施形態1の張力Tpと同じ大きさの張力Tq=9.2Nを受けるように上流方向引張ロール230の回転速度を調整した。このため、ロール間非活物質部12Zbに掛かる上流向き非活物質部張力τuも、それぞれ上流方向引張ロール230を設けない場合に比して張力Tq=9.2N分増加している。なお、下流向き非活物質部張力τdについては、実施形態1と同様である(τd=15.0N)。
【0048】
従って、各ロール間非活物質部12Zbに掛かる上流向き非活物質部張力τuと下流向き非活物質部張力τdとの張力比τd/τuは、張力比調整機構240を設けない場合にはτd/τu=3.26になるのに対し、本実施形態2のロールプレス装置200を用いてプレス工程S2を行う場合にも、張力比をτd/τu=1.09に調整できる。このように本実施形態2でも、張力比τd/τuを小さくし、張力τu,τd間のアンバランスを小さくすることができ、ロールプレスの際に非活物質部12Z(プレス後非活物質部12)に皺が生じるのを抑制できる。
【0049】
(実施形態3)
次いで、第3の実施形態について説明する。実施形態1,2のロールプレス装置100,200では、ロール間非活物質部12Zbに掛かる上流向き非活物質部張力τuを増加させる上流方向引張ロール130,230を含む張力比調整機構140,240を、ロール間隙KAよりも上流側EUHに設けた例を示した(
図3~
図7参照)。これに対し、本実施形態3のロールプレス装置300は、ロール間非活物質部12Zbに掛かる下流向き非活物質部張力τdを減少させる上流方向引張ロール330を含む張力比調整機構340を、ロール間隙KAよりも下流側EDHに備える点が異なる(
図8~
図10参照)。
【0050】
なお実施形態1において説明したように、本実施形態3及び次述する実施形態4においても、ロールプレス後の圧密化済み帯状電極板1全体には、下流側張力付与部(不図示)により、下流側EDHに向けて下流向き全体張力Td(本実施形態3でも、例えばTd=30.0N)が掛けられている。但し、ロールプレスにより圧密化済み帯状電極板1のうちプレス後活物質部11は長手方向EHに延ばされている一方、プレス後非活物質部12は殆ど延ばされていないため、下流向き全体張力Tdは、プレス後活物質部11には殆んど掛からず(張力Td1≒0)、2つのプレス後非活物質部12に掛かる(
図10参照)。従って、プレス後非活物質部12に掛かる下流側EDH向きの張力Td2の大きさは、概ね下流向き全体張力Tdの半分(Td2=Td/2)である。なお本実施形態3,4でも、下流向き全体張力Td=30.0Nであるので、下流側EDH向きの張力Td2は、それぞれ概ねTd2=15.0Nとなる。
【0051】
本実施形態3に係る張力比調整機構340は、ロール間隙KAよりも下流側EDHでロール間隙KAの近傍に配置された上流方向引張ロール330を有する。この上流方向引張ロール330は、ロール中央部331のロール表面331mがゴムからなる弾性変形可能な弾性ロールであり、かつ、圧密化済み帯状電極板1の搬送に伴って回転する従動ロールである。この上流方向引張ロール330は、圧密化済み帯状電極板1のプレス後活物質部11のうち、引張ロール押圧部11r(
図10において斜線ハッチングを付した部位)に圧接し、この引張ロール押圧部11rを第1プレスロール110に押し付けつつ、上流側EUHに向けて引っ張ることにより、ロール間非活物質部12Zbに掛かる下流向き非活物質部張力τdを減少させる。
【0052】
本実施形態3の上流方向引張ロール330は、幅方向FHの中央に位置するロール中央部331と、ロール中央部331の幅方向FHの両側にそれぞれ位置し、ロール中央部331よりも径小なロール両側部332とを有する。なお、各ロール両側部332をロール中央部331と同径としてもよい。ロール中央部331のロール表面331mは、圧密化済み帯状電極板1のプレス後活物質部11のうち引張ロール押圧部11rに圧接する。一方、ロール両側部332は、それぞれ圧密化済み帯状電極板1のプレス後非活物質部12に隙間を空けて対向する。
【0053】
即ち、上流方向引張330のロール中央部331は、プレス後活物質部11の引張ロール押圧部11rを第1プレスロール110に押し付けて、この引張ロール押圧部11rをロール中央部331と第1プレスロール110との間で挟圧する。上述のように、上流方向引張ロール330は、ロール表面331mが弾性変形可能な弾性ロールでかつ従動ロールである。このため、上流方向引張ロール330の回転抵抗により、上流方向引張ロール330のロール中央部331に圧接している引張ロール押圧部11rに上流側EUH向きの張力Trが生じる。なお、上流方向引張ロール330(ロール中央部331)の引張ロール押圧部11r及び第1プレスロール110への圧接力の大きさに応じて、上流方向引張ロール330の回転抵抗の大きさが変化する。そして、この回転抵抗を大きくすると、上流方向引張ロール330に圧接している引張ロール押圧部11r及びこれより下流側EDHのプレス後活物質部11に掛かる上流側EUH向きの張力Trを高めることができる。
【0054】
図10に示すように、引張ロール押圧部11rに掛かる上流側EUH向きの張力Trは、プレス後活物質圧密化済み帯状電極板1の幅方向FH全体に掛けられている下流向き全体張力Tdと逆向きであるので、圧密化済み帯状電極板1のうちロール間隙KAから引張ロール押圧部11rまでの範囲において、この圧密化済み帯状電極板1に掛かる下流向き全体張力Tdを減殺することができる。するとこの範囲で、各プレス後非活物質部12に下流側EDH向きに掛かる張力Td2’を、張力Td2よりも小さくできる(Tr2’=(Td-Tr)/2<Td2=Td/2)。このため、各ロール間非活物質部12Zbにおいて下流側EDH向きに掛かる下流向き非活物質部張力τdも、発生させる張力Trの大きさに応じて小さくできる。
【0055】
本実施形態3では、例えば張力TrがTr=18.0Nになるように、上流方向引張ロール330の圧接力の大きさを調整している。このため、本実施形態3では、張力Td2’及び下流向き非活物質部張力τdを、Td2’=τd=(Td-Tr)/2=(30.0-18.0)/2=6.0Nとし、元々の張力Td2=15.0Nに比して小さくすることができる。
【0056】
従って、本実施形態3でも、ロール間非活物質部12Zbに掛かる上流向き非活物質部張力τuと下流向き非活物質部張力τdとの張力比τd/τuを小さくできる。例えば本実施形態3では、張力比調整機構340を設けない場合には、τd/τu=15/4.6=3.26であったのに対し、本実施形態3のロールプレス装置300を用いてプレス工程S2を行った場合、張力比τd/τu=6.0/4.6=1.30に調整できる。このようにして張力比τd/τuを小さくし、張力τu,τd間のアンバランスを小さくすることでも、ロールプレスの際に非活物質部12Z(プレス後非活物質部12)に皺が生じるのを抑制できる。
【0057】
(実施形態4)
次いで、第4の実施形態について説明する。実施形態3のロールプレス装置300では、弾性ロールでかつ従動ロールである上流方向引張ロール330を含む張力比調整機構340を設けた例を示した(
図8~
図10参照)。これに対し、本実施形態4のロールプレス装置400は、金属ロールでかつ駆動ロールである上流方向引張ロール430を含む張力比調整機構440を備える点が異なる(
図10~
図12参照)。
【0058】
本実施形態4に係る張力比調整機構440は、ロール間隙KAよりも下流側EDHで、ロール間隙KAの近傍に配置された上流方向引張ロール430を有する。この上流方向引張ロール430は、ロール中央部431のロール表面431mがステンレスからなる金属ロールであり、かつ、モータ(不図示)により、
図11中、反時計回りに回転駆動される駆動ロールである。この上流方向引張ロール430は、幅方向FHの中央に位置するロール中央部431と、ロール中央部441の幅方向FHの両側にそれぞれ位置し、ロール中央部431よりも径小なロール両側部432とを有する。なお、ロール両側部432をロール中央部431と同径としてもよい。ロール中央部431のロール表面431mは、圧密化済み帯状電極板1のプレス後活物質部11のうち、引張ロール押圧部11s(
図10において斜線ハッチングを付した部位)に圧接する。一方、ロール両側部432は、それぞれ、圧密化済み帯状電極板1のプレス後非活物質部12に隙間を空けて対向する。
【0059】
但し、上流方向引張ロール430は、第1プレスロール110の周速V1よりもロール中央部431の周速Vdの方が若干遅くなる回転速度で反時計回りに回転している(Vd<V1)。このため、プレス後活物質部11のうち、引張ロール押圧部11s(
図10において斜線ハッチングを付した部位)は、第1プレスロール110及びロール中央部431に圧接し、このロール中央部431から受ける摩擦力により上流側EUH向きの張力Tsを生じる(
図10参照)。
【0060】
本実施形態4でも実施形態3と同様、
図10に示すように、引張ロール押圧部11sに掛かる上流側EUH向きの張力Tsは、圧密化済み帯状電極板1の幅方向FH全体に掛けられている下流向き全体張力Tdと逆向きであるので、圧密化済み帯状電極板1のうちロール間隙KAから引張ロール押圧部11sまでの範囲において、この圧密化済み帯状電極板1に掛かる下流向き全体張力Tdを減殺することができる。このためこの範囲で、各プレス後非活物質部12に下流側EDH向きに向けて掛かる張力Td2’を、張力Td2よりも小さくできる(Tr2’=(Td-Ts)/2<Tu2=Td/2)。かくして、各ロール間非活物質部12Zbにおいて下流側EDH向きに掛かる下流向き非活物質部張力τdも、発生させる張力Tsの大きさに応じて小さくできる。
【0061】
なお本実施形態4でも、例えば張力TsがTr=18.0Nになるように、上流方向引張ロール430の回転速度の大きさを調整している。このため、本実施形態4でも、張力Td2’及び下流向き非活物質部張力τdを、Td2’=τd=(Td-Tr)/2=(30.0-18.0)/2=6.0Nとし、元々の張力Td2=15.0Nに比して小さくすることができる。
【0062】
従って、本実施形態4でも、ロール間非活物質部12Zbに掛かる上流向き非活物質部張力τuと下流向き非活物質部張力τdとの張力比τd/τuを小さくできる。例えば本実施形態4では、張力比調整機構440を設けない場合には、τd/τu=3.26であったのに対し、本実施形態2のロールプレス装置400を用いてプレス工程S2を行う場合も、実施形態3と同様に、張力比τd/τu=6.0/4.6=1.30に調整できる。このように張力比τd/τuを小さくし、張力τu,τd間のアンバランスを小さくすることでも、ロールプレスの際に非活物質部12Z(プレス後非活物質部12)に皺が生じるのを抑制できる。
【0063】
(実施形態5)
次いで、第5の実施形態について説明する。本実施形態5のロールプレス装置500は、ロールプレス後のプレス後活物質部11を第1プレスロール110に押し付けつつ下流側EDHに向けて引っ張る下流側駆動ロール(下流方向引張ロール)530を含む張力比調整機構540を備える(
図13~
図15参照)。この下流側駆動ロール530は、第1プレスロール110と第2プレスロール120とのロール間隙KAよりも下流側EDHで、ロール間隙KAの近傍に配置されている。下流側駆動ロール530は、ロール中央部531のロール表面531mがステンレスからなる金属ロールであり、かつ、モータ(不図示)により、
図13中、反時計回りに回転駆動される駆動ロールである。
【0064】
下流側駆動ロール530は、幅方向FHの中央に位置するロール中央部531と、ロール中央部541の幅方向FHの両側にそれぞれ位置し、ロール中央部531よりも径小なロール両側部532とを有する。なお、ロール両側部532をロール中央部531と同径としてもよい。ロール中央部531のロール表面531mは、圧密化済み帯状電極板1のプレス後活物質部11のうち、ロール押圧部11t(
図15において斜線ハッチングを付した部位)に圧接する。一方、ロール両側部532は、それぞれ、圧密化済み帯状電極板1のプレス後非活物質部12に隙間を空けて対向する。
【0065】
但し、下流側駆動ロール530は、第1プレスロール110の周速V1よりもロール中央部531の周速Vdの方が若干速くなる回転速度で、第1プレスロール110とは逆方向に回転している(Vd>V1)。前述のように、ロールプレス後の圧密化済み帯状電極板1のうち、プレス後活物質部11は、プレスにより長手方向EHに延ばされているのに対し、プレス後非活物質部12は、殆ど延ばされていないため、下流側駆動ロール530が存在しない場合には、プレス後活物質部11に弛みが生じる。
【0066】
これに対し、本実施形態5では、下流側駆動ロール530が、プレス後活物質部11を第1プレスロール110に押し付けつつ速い周速Vdで回転することにより、プレス後の弛んだプレス後活物質部11が次々と下流側EDHに送り出されるため、ロール間隙KAと下流側駆動ロール530との間において、プレス後活物質部11に弛みが生じなくなり、幅方向FHの全体にわたり圧密化済み帯状電極板1が張った状態となる。
【0067】
このため、下流側駆動ロール530が存在しない場合には、下流向き全体張力Td(=30.0N)は、プレス後活物質部11には殆んど掛からないため(ロール間活物質部11Zbに掛かる張力Td1≒0)、2つのロール間非活物質部12Zbに掛かる下流向き非活物質部張力τdが大きくなる(τd=Td/2=15.0N)(
図5参照)。
これに対し、本実施形態5では、下流向き全体張力Tdの一部が、プレス後活物質部11にも掛かるようになるため(ロール間活物質部11Zbにも張力Td1が掛かるため)、その分、2つのロール間非活物質部12Zbに掛かる下流向き非活物質部張力τdが小さくなる(
図15参照)。具体的には、下流側駆動ロール530を設ける位置や下流側駆動ロール530の周速Vdを調整して、各ロール間非活物質部12Zbに掛かる下流向き非活物質部張力τdをτd=6.0Nと小さくしている。
【0068】
従って、本実施形態5でも、ロール間非活物質部12Zbに掛かる上流向き非活物質部張力τuと下流向き非活物質部張力τdとの張力比τd/τuを小さくできる。例えば本実施形態5では、張力比調整機構540を設けない場合には、τd/τu=3.26であったのに対し、本実施形態5のロールプレス装置500を用いてプレス工程S2を行う場合も、実施形態3,4と同様に、張力比τd/τu=6.0/4.6=1.30に調整できる。このように張力比τd/τuを小さくし、張力τu,τd間のアンバランスを小さくすることでも、ロールプレスの際に非活物質部12Z(プレス後非活物質部12)に皺が生じるのを抑制できる。
【0069】
(実験結果)
次いで、プレス後非活物質部12をなす集電箔3に生じる皺と、張力比τd/τuの値との関係を検証するために行った実験結果について説明する(表1及び
図16参照)。表1に示すように、実験例1~11に係る圧密化済み帯状電極板1を作製し、プレス後非活物質部12をなす集電箔3に生じた皺の深さSF(mm)について調査した。具体的には、電極板形成工程S1を行って、帯状電極板1Zを形成した。その後、前述のロールプレス装置100において張力比調整機構140を設けないロールプレス装置、つまり通常のロールプレス装置(不図示)を用いて、プレス工程S2を行い、圧密化済み帯状電極板1をそれぞれ作製した。但し、各実験例では、上流側張力付与部(不図示)によって、搬送中の帯状電極板1Zの幅方向FH全体に掛ける上流向き全体張力Tuの大きさ、及び、下流側張力付与部(不図示)によって、搬送中の圧密化済み帯状電極板1の幅方向FH全体に掛ける下流向き全体張力Tdの大きさを変化させて、各実験例の圧密化済み帯状電極板1を作製した。
【0070】
【0071】
その後、各実験例の圧密化済み帯状電極板1について、プレス後非活物質部12をなす集電箔3に生じた皺の深さSF(mm)をそれぞれ測定した。具体的には、各実検例の圧密化済み帯状電極板1からプレス後非活物質部12をなす集電箔3を長手方向EHに20mmにわたり切り出した。そして、この切り出した集電箔3を静電吸着ステージの上に載せて静電吸着させ、レーザ顕微鏡によって測定される、皺(凹み)がないフラットな部分を基準としたときの皺の深さを、皺の深さSFとした
【0072】
非活物質部12Zのロール間非活物質部12Zbに掛かる張力τu,τdの張力比τd/τuと、プレス後非活物質部12をなす集電箔3に生じた皺の深さSF(mm)との関係を、
図16のグラフに示す。
なお、本実験において、上流向き非活物質部張力τuは、τu=Tu×(W2/W)=Tu×(33/216)により、それぞれ算出した。一方、下流向き非活物質部張力τdは、τd=Td/2により、それぞれ算出した。
【0073】
図16から明らかなように、張力比τd/τuが大きすぎると、具体的には約2.5以上になると、深さ0.1mmを超える深い皺がプレス後非活物質部12に生じる。一方、張力比τd/τuを小さくし、張力τu,τd間のアンバランスを小さくすると、具体的には少なくともτd/τu≦2.0の範囲内とすれば、プレス後非活物質部12に殆ど皺が生じないことが判る。従って、実施形態1~5に示す張力比調整機構140~540を設けたロールプレス装置100~500を用い、張力比τd/τuを小さくして張力τu,τd間のアンバランスを小さくし、具体的にはτd/τu≦2.0となるように張力比τd/τuを調整して、プレス工程S2を行うのが好ましいことが理解できる。一方、下流向き非活物質部張力τdをある程度大きくし、張力比τd/τuをτd/τu≧0.3としつつプレス工程S2を行うことで、圧密化済み帯状電極板1の生産性を良好にできる。従って、τd/τu≦2.0とすると良く、さらには、0.3≦τd/τu≦2.0とするのがより好ましい。
【0074】
以上で説明したように、実施形態1~5のロールプレス装置100,200,300,400,500は、張力比調整機構140,240,340,440,540を備える。このロールプレス装置100等を用いることで、帯状電極板1Zをロールプレスする際、非活物質部12Zのうちロール間非活物質部12Zbに掛かる張力バランスを調整しつつ、具体的には、ロール間非活物質部12Zbに掛かる上流向き非活物質部張力τuと下流向き非活物質部張力τdとの張力比τd/τuを調整しつつ、帯状電極板1Zをロールプレスして圧密化済み帯状電極板1を作製できる。
【0075】
更に、実施形態1,2では、張力比調整機構140,240に上流方向引張ロール130,230を有するので、非活物質部12Zのうちロール間非活物質部12Zbに掛かる上流向き非活物質部張力τuを増加させることができる。このように、上流方向引張ロール130,230を設けるだけの簡単な構成で、張力比τd/τuを小さくし、張力τu,τd間のアンバランスを小さくできる。
【0076】
一方、実施形態3,4では、張力比調整機構340に上流方向引張ロール330,430を有するので、非活物質部12Zのうちロール間非活物質部12Zbに掛かる下流向き非活物質部張力τdを減少させることができる。このように、上流方向引張ロール330,430を設けるだけの簡単な構成で、張力比τd/τuを小さくし、張力τu,τd間のアンバランスを小さくできる。
【0077】
また、実施形態5では、張力比調整機構540に下流側駆動ロール530を有するので、非活物質部12Zのうちロール間非活物質部12Zbに掛かる下流向き非活物質部張力τdを減少させることができる。このように、下流側駆動ロール530を設けるだけの簡単な構成で、張力比τd/τuを小さくし、張力τu,τd間のアンバランスを小さくできる。
【0078】
また、実施形態1~5の圧密化済み帯状電極板1の製造方法では、プレス工程S2において、帯状電極板1Zの非活物質部12Zのうちロール間非活物質部12Zbに掛かる張力バランスを調整して、具体的には、ロール間非活物質部12Zbに掛かる上流向き非活物質部張力τuと下流向き非活物質部張力τdとの張力比τd/τuを調整して、非活物質部12Z(プレス後非活物質部12)に皺が生じるのを抑制しつつ圧密化済み帯状電極板1を製造するので、皺の発生が抑制された圧密化済み帯状電極板1を適切に得ることができる。特に、張力比τd/τuをτd/τu≦2.0とすることにより、非活物質部12Z(プレス後非活物質部12)に皺が生じるのをより適切に抑制して、皺の発生が抑制された圧密化済み帯状電極板1を適切に得ることができる。更に、張力比τd/τuをτd/τu≧0.3とすることにより、密化済み帯状電極板1の生産性を良好にできる。
【0079】
以上において、本発明を実施形態1~5に即して説明したが、本発明は実施形態1~5に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態1~5では、圧密化済み帯状電極板1が正極板である場合に本発明を適用したが、圧密化済み帯状電極板1が負極板である場合に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0080】
1 圧密化済み帯状電極板
1Z (プレス未済の)帯状電極板
3 集電箔
5 第1圧密化済み活物質層
5Z (プレス未済の)第1活物質層
6 第2圧密化済み活物質層
6Z (プレス未済の)第2活物質層
11 プレス後活物質部
11r,11s (プレス後活物質部のうち)引張ロール押圧部
11t ロール押圧部
11Z (プレス未済の)活物質部
11Za プレス前活物質部
11Zb ロール間活物質部
12 プレス後非活物質部
12Z (プレス未済の)非活物質部
12Za プレス前非活物質部
12Zap,12Zaq (プレス前非活物質部のうち)引張ロール押圧部
12Zb ロール間非活物質部
100,200,300,400,500 ロールプレス装置
110 第1プレスロール
120 第2プレスロール
130,230,330,430 上流方向引張ロール
530 下流側駆動ロール(下流方向引張ロール)
140,240,340,440,540 張力比調整機構
EH 長手方向
EUH 上流側
EDH 下流側
FH 幅方向
GH 厚み方向
KA ロール間隙
Tu 上流向き全体張力
Td 下流向き全体張力
Tu1,Tu2,Tu2’,Td1,Td2,Td2’,Tp,Tq,Tr,Ts 張力
τu 上流向き非活物質部張力
τd 下流向き非活物質部張力
S1 電極板形成工程
S2 プレス工程