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特許7300658非水電解質二次電池用正極活物質、及び非水電解質二次電池
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  • 特許-非水電解質二次電池用正極活物質、及び非水電解質二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用正極活物質、及び非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20230623BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230623BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230623BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 D
H01M4/505
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021501584
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2019046736
(87)【国際公開番号】W WO2020174794
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】P 2019035172
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】堂上 和範
(72)【発明者】
【氏名】平塚 秀和
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/208703(WO,A1)
【文献】特開2015-018803(JP,A)
【文献】国際公開第2010/029745(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ni含有リチウム複合酸化物A及びNi含有リチウム複合酸化物Bを含む非水電解質二次電池用正極活物質であって、
前記Ni含有リチウム複合酸化物Aは、Liを除く金属元素の総モル数に対して55モル%以上のNiを含有し、
前記Ni含有リチウム複合酸化物Bは、TiとNiとMnとCoとを含有し、
前記Ni含有リチウム複合酸化物BにおけるNiの含有量は、Ti及びLiを除く金属元素の総モル数に対して55モル%以上であり、
前記Ni含有リチウム複合酸化物BにおけるTiの含有量は、Ni、Co、及びMnの総モル数に対して、0.1モル%~1モル%であり、
前記Ni含有リチウム複合酸化物Aは、平均一次粒子径が1μm以上で、平均二次粒子径が2μm~6μmであり、
前記Ni含有リチウム複合酸化物Bの平均一次粒子径は、0.05μm以上であり、且つ前記Ni含有リチウム複合酸化物Aの平均一次粒子径よりも小さく、
前記Ni含有リチウム複合酸化物Bの平均二次粒子径は、10μm~20μmであり、
前記Ni含有リチウム複合酸化物Aと前記Ni含有リチウム複合酸化物Bとの割合が、質量比で、5:95~55:45である、非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項2】
請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極活物質を含む正極と、負極と、非水電解質とを備えた、非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池用正極活物質、及び非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非水電解質二次電池の高容量化に大きく寄与する非水電解質二次電池用正極活物質として、Niの含有量が多いNi含有リチウム複合酸化物が注目されている。また、平均二次粒子径が異なる二種類の非水電解質二次電池用正極活物質の使用により正極合材層の充填密度を上げることで正極活物質の比表面積を大きくして、非水電解質二次電池の高容量化を図る方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-113825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、正極活物質の比表面積が大きくなると、正極活物質に含まれるNiの溶出量が大きくなる恐れがある。正極活物質からのNiの溶出は、非水電解質二次電池の抵抗上昇や、内部短絡を引き起こす場合がある。
【0005】
本開示の目的は、高容量化を図りつつ、抵抗上昇及び内部短絡の発生を抑制した非水電解質二次電池を実現可能な正極活物質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様である非水電解質二次電池用正極活物質は、Ni含有リチウム複合酸化物A及びNi含有リチウム複合酸化物Bを含む非水電解質二次電池用正極活物質であって、Ni含有リチウム複合酸化物Aは、Liを除く金属元素の総モル数に対して55モル%以上のNiを含有し、Ni含有リチウム複合酸化物Bは、TiとNiとを含有し、Ni含有リチウム複合酸化物BにおけるNiの含有量は、Ti及びLiを除く金属元素の総モル数に対して55モル%以上であり、Ni含有リチウム複合酸化物Aは、平均一次粒子径が1μm以上で、平均二次粒子径が2μm~6μmであり、Ni含有リチウム複合酸化物Bの平均一次粒子径は、0.05μm以上であり、且つNi含有リチウム複合酸化物Aの平均一次粒子径よりも小さく、Ni含有リチウム複合酸化物Bの平均二次粒子径は、10μm~20μmであり、Ni含有リチウム複合酸化物AとNi含有リチウム複合酸化物Bとの割合が、質量比で、5:95~55:45であることを特徴とする。
【0007】
本開示の一態様である非水電解質二次電池は、上記正極活物質を含む正極と、負極と、非水電解質とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様である非水電解質二次電池用正極活物質によれば、高容量化を図りつつ、抵抗上昇及び内部短絡の発生を抑制した非水電解質二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の一例である非水電解質二次電池の断面図である。
図2】実施形態の一例であるNi含有リチウム複合酸化物Aを模式的に示す図である。
図3】実施形態の一例であるNi含有リチウム複合酸化物Bを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述のように、平均二次粒子径が異なる二種類の非水電解質二次電池用正極活物質(以下、正極活物質という場合がある)の使用により正極合材層の充填密度を上げることで正極活物質の比表面積を大きくすると、非水電解質二次電池を高容量化することはできるが、正極活物質に含まれるNiの溶出量が大きくなる恐れがある。正極活物質から溶出するNiの量が多いと、電池の抵抗が上昇することで電池特性が悪化し、また、溶出したNiを起点としてLiデンドライトが形成されることによって内部短絡のリスクが高まるという課題が生じる。本発明者は、かかる課題について鋭意検討した結果、一定の条件を満たす二種類の正極活物質を使用し、且つ一方の正極活物質に比べて平均一次粒子径が小さく平均二次粒子径が大きい他方の正極活物質にTiを含有させることで、かかる課題を解決できることを見出した。すなわち、Niの含有量を多くすることで正極活物質の比表面積を大きくして電池の高容量化を図りつつ、電池容量がほとんど変わらない程度にMnの一部をTiに置換することで高容量を維持しながらもNiの溶出を抑制することができる。
【0011】
以下、本開示に係る非水電解質二次電池の実施形態の一例について詳細に説明する。以下では、巻回型の電極体が円筒形の電池ケースに収容された円筒形電池を例示するが、電極体は、巻回型に限定されず、複数の正極と複数の負極がセパレータを介して交互に1枚ずつ積層されてなる積層型であってもよい。また、電池ケースは円筒形に限定されず、例えば角形、コイン形等であってもよく、金属層及び樹脂層を含むラミネートシートで構成された電池ケースであってもよい。
【0012】
図1は、実施形態の一例である非水電解質二次電池10の断面図である。図1に例示するように、非水電解質二次電池10は、電極体14と、非水電解質(図示せず)と、電極体14及び非水電解質を収容する電池ケース15とを備える。電極体14は、正極11と負極12とがセパレータ13を介して巻回された巻回構造を有する。電池ケース15は、有底円筒形状の外装缶16と、外装缶16の開口部を塞ぐ封口体17とで構成されている。
【0013】
電極体14は、長尺状の正極11と、長尺状の負極12と、長尺状の2枚のセパレータ13と、正極11に接合された正極タブ20と、負極12に接合された負極タブ21とで構成される。負極12は、リチウムの析出を防止するために、正極11よりも一回り大きな寸法で形成される。即ち、負極12は、正極11より長手方向及び幅方向(短手方向)に長く形成される。2枚のセパレータ13は、少なくとも正極11よりも一回り大きな寸法で形成され、例えば正極11を挟むように配置される。
【0014】
非水電解質二次電池10は、電極体14の上下にそれぞれ配置された絶縁板18,19を備える。図1に示す例では、正極11に取り付けられた正極タブ20が絶縁板18の貫通孔を通って封口体17側に延び、負極12に取り付けられた負極タブ21が絶縁板19の外側を通って外装缶16の底部側に延びている。正極タブ20は封口体17の底板23の下面に溶接等で接続され、底板23と電気的に接続された封口体17のキャップ27が正極端子となる。負極タブ21は外装缶16の底部内面に溶接等で接続され、外装缶16が負極端子となる。
【0015】
外装缶16は、例えば有底円筒形状の金属製容器である。外装缶16と封口体17との間にはガスケット28が設けられ、電池ケース15の内部空間が密閉される。外装缶16は、例えば側面部を外部からプレスして形成された、封口体17を支持する溝入部22を有する。溝入部22は、外装缶16の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面で封口体17を支持する。
【0016】
封口体17は、電極体14側から順に、底板23、下弁体24、絶縁部材25、上弁体26、及びキャップ27が積層された構造を有する。封口体17を構成する各部材は、例えば円板形状又はリング形状を有し、絶縁部材25を除く各部材は互いに電気的に接続されている。下弁体24と上弁体26は各々の中央部で互いに接続され、各々の周縁部の間には絶縁部材25が介在している。異常発熱で電池の内圧が上昇すると、下弁体24が上弁体26をキャップ27側に押し上げるように変形して破断し、下弁体24と上弁体26の間の電流経路が遮断される。さらに内圧が上昇すると、上弁体26が破断し、キャップ27の開口部からガスが排出される。
【0017】
以下、非水電解質二次電池10を構成する正極11、負極12、セパレータ13及び非水電解質について、特に正極11を構成する正極合材層31に含まれる正極活物質について詳説する。
【0018】
[正極]
正極11は、正極集電体30と、正極集電体30の両面に形成された正極合材層31とを有する。正極集電体30には、アルミニウム、アルミニウム合金など、正極11の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合材層31は、正極活物質、導電材、及び結着材を含む。正極合材層31の厚みは、例えば正極集電体30の片側で10μm~150μmである。正極11は、正極集電体30の表面に正極活物質、導電材、及び結着材等を含む正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して正極合材層31を正極集電体30の両面に形成することにより作製できる。
【0019】
正極合材層31に含まれる導電材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料が例示できる。正極合材層31に含まれる結着材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィンなどが例示できる。これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、ポリエチレンオキシド(PEO)などが併用されてもよい。
【0020】
正極合材層31に含まれる正極活物質は、Ni含有リチウム複合酸化物A,Bを含む。換言すれば、平均一次粒子径及び平均二次粒子が互いに異なる二種類のNi含有リチウム複合酸化物A,Bを含む。Ni含有リチウム複合酸化物Aは、Li及びNiを含む複合酸化物である。また、Ni含有リチウム複合酸化物Bは、Li、Ni、及びTiを含む複合酸化物である。なお、正極合材層31には、本開示の目的を損なわない範囲でNi含有リチウム複合酸化物A,B以外の正極活物質が含まれていてもよいが、本実施形態では、正極活物質としてNi含有リチウム複合酸化物A,Bのみが含まれるものとする。
【0021】
図2はNi含有リチウム複合酸化物Aを模式的に示す図であり、図3はNi含有リチウム複合酸化物Bを模式的に示す図である。図2及び図3に示すように、Ni含有リチウム複合酸化物A,Bは、それぞれ一次粒子32,33が凝集してなる二次粒子である。Ni含有リチウム複合酸化物A(二次粒子)は、Ni含有リチウム複合酸化物B(二次粒子)よりも粒径が小さい。一方、Ni含有リチウム複合酸化物Aを構成する一次粒子32は、Ni含有リチウム複合酸化物Bを構成する一次粒子33よりも大きい。Ni含有リチウム複合酸化物A,Bを併用することで、正極合材層31における正極活物質の充填密度を上げて電池の高容量化を図ることができる。
【0022】
Ni含有リチウム複合酸化物Aは、高容量化の観点から、Liを除く金属元素の総モル数に対するNiの割合が55モル%以上であればよいが、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましい。Ni含有リチウム複合酸化物Aは、Ni以外の、例えば、Mn、Co、Mg、Zr、Mo、W、Cr、V、Ce、Ti、Fe、Si、K、Ga、In、Ca、Naから選択される少なくとも1種の元素等を含有することができる。これらの元素の内、Tiについては、Ni含有リチウム複合酸化物AにおけるNi、Co、及びMnの総モル数に対する含有量が0.01モル%以下であることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。また、Ni含有リチウム複合酸化物Aは、少なくともMn又はCoを含有することが好ましく、さらに、Mg、Zr、Mo、W、Cr、V、Ce、Ti、Fe、K、Ga、Inから選択される少なくとも1種の金属元素を含有することがより好ましい。Ni含有リチウム複合酸化物Aは、Niが多すぎると結晶構造が不安定になるので、適量のMn又はCo、より好ましくはMnを含有させることで結晶構造を安定化させることができる。Ni含有リチウム複合酸化物Aにおいて、Liを除く金属元素の総モル数に対するMnの含有量は、例えば、5モル%~35モル%とすることができる。また、Ni含有リチウム複合酸化物Aにおいて、Liを除く金属元素の総モル数に対するCoの含有量は、例えば、5モル%~35モル%とすることができる。混合物Aにおける遷移金属の総モル数に対するLiの含有量は、100モル%~115モル%が好ましく、105モル%~107モル%がより好ましい。
【0023】
Ni含有リチウム複合酸化物Aの好適な一例は、一般式LiαNiCoMn(1―x-y-z)(式中、1.00≦α≦1.15、0.55≦x≦0.9、0.05≦y≦0.35、0.05≦z≦0.35、0.1≦y+z≦0.45であり、MはLi、Ni、Co、及びMn以外の元素)で表される複合酸化物である。式中のMは、例えばMg、Zr、Mo、W、Cr、V、Ce、Ti、Fe、K、Ga、Inから選択される少なくとも1種の元素である。
【0024】
Ni含有リチウム複合酸化物Bは、高容量化の観点から、Li及びTiを除く金属元素の総モル数に対するNiの割合が55モル%以上であればよいが、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましい。
【0025】
Ni含有リチウム複合酸化物Bは、さらにTiを含有する。Ni含有リチウム複合酸化物BにTiが固溶することでTiがMnを置換して、Ni含有リチウム複合酸化物Bの結晶構造が安定化し、Ni含有リチウム複合酸化物Bに含まれるNiの溶出を抑制することができる。したがって、Ni含有リチウム複合酸化物BがTiを含有することでNiの溶出を抑制し、電池の抵抗上昇及び内部短絡の発生を抑制することができる。Ni含有リチウム複合酸化物Bにおいて、Ni、Co、及びMnの総モル数に対するTiの含有量は、例えば、0.1モル%~1モル%であり、好ましくは0.4モル%~0.6モル%である。Tiの含有量が0.1モル%以上であれば、Ni含有リチウム複合酸化物Bの結晶構造を安定化させて、Ni含有リチウム複合酸化物Bに含まれるNiの溶出を抑制することができる。また、Tiの含有量が1モル%以下であれば、Mnを置換するTiの量を必要最小限とすることができるので、電池を高容量にすることができる。
【0026】
Ni含有リチウム複合酸化物Bは、Mnを含有することができる。Ni含有リチウム複合酸化物Bは、Niの含有量が多過ぎると結晶構造が不安定になるので、Niに加えて適量のMnを含有させることで結晶構造を安定化させることができる。Ni含有リチウム複合酸化物Bにおいて、Li及びTiを除く金属元素の総モル数に対するMnの含有量は、例えば、5モル%以上35モル%以下とすることができる。Tiは、NiだけでなくMnの溶出も抑制する効果を有するので、電池の抵抗上昇及び内部短絡の発生を抑制する本実施形態の効果が顕著となる。また、Ni含有リチウム複合酸化物Bは、Coを含有することができる。Ni含有リチウム複合酸化物Bにおいて、Li及びTiを除く金属元素の総モル数に対するCoの含有量は、例えば、5モル%以上35モル%以下とすることができる。Ni及びMnに加えて適量のCoを含有させることで結晶構造をさらに安定化させることができる。なお、TiはCoの溶出を抑制する効果も有する。
【0027】
Ni含有リチウム複合酸化物Bは、上述のNi、Ti、Mn、及びCo以外の元素を含んでいてもよく、例えば、Mg、Zr、Mo、W、Cr、V、Ce、Fe、Si、K、Ga、In、Ca、Naから選択される少なくとも1種の元素等が挙げられる。これらの元素の中では、Ni含有リチウム複合酸化物Bは、Mg、Zr、Mo、W、Cr、V、Ce、Fe、K、Ga、Inから選択される少なくとも1種の金属元素を含有することが好ましい。
【0028】
混合物BにおけるTiを除く遷移金属(例えば、Ni、Mn、及びCo)の総モル数に対するLiの含有量は、100モル%~115モル%が好ましく、105モル%~107モル%がより好ましい。
【0029】
Ni含有リチウム複合酸化物Aの好適な一例は、一般式LiαNiCoMnTiβ(1―x-y-z)(式中、1.00≦α≦1.15、0.55≦x≦0.9、0.05≦y≦0.35、0.05≦z≦0.35、0.1≦y+z≦0.45、0.001≦(β/x+y+z)≦0.01であり、MはLi、Ni、Co、及びMn以外の元素)で表される複合酸化物である。式中のMは、例えばMg、Zr、Mo、W、Cr、V、Ce、Fe、K、Ga、Inから選択される少なくとも1種の元素である。
【0030】
図2及び図3に示すように、Ni含有リチウム複合酸化物Bの一次粒子33は、Ni含有リチウム複合酸化物Aの一次粒子32に比べて小さく、また二次粒子はNi含有リチウム複合酸化物Bの方がNi含有リチウム複合酸化物Aよりも大きいので、Ni含有リチウム複合酸化物Bの比表面積はNi含有リチウム複合酸化物Aの比表面積よりも大きく、Ni含有リチウム複合酸化物BにTiを含有させるとNi及びMnの溶出を抑制する効果が大きい。また、Ni含有リチウム複合酸化物Bだけでなく、Ni含有リチウム複合酸化物AにもTiを含有させてもよい。
【0031】
Ni含有リチウム複合酸化物Aは、平均一次粒子径(以下、「平均一次粒子径A」という場合がある)が1μm以上で、平均二次粒子径(以下、「平均二次粒子径A」という場合がある)が2μm~6μmである。また、Ni含有リチウム複合酸化物Bの平均一次粒子径(以下、「平均一次粒子径B」という場合がある)は、0.05μm以上であり、且つ平均一次粒子径Aよりも小さく、Ni含有リチウム複合酸化物Bの平均二次粒子径(以下、「平均二次粒子径B」という場合がある)は、10μm~20μmである。これにより、電池の高容量化が可能となる。
【0032】
電池の高容量化、及びNi及びMnの溶出抑制の観点から、Ni含有リチウム複合酸化物Aの平均一次粒子径Aは、1μm~5μmが好ましく、1μm~4μmがより好ましく、また、Ni含有リチウム複合酸化物Bの平均一次粒子径Bは、0.05μm~3μmが好ましく、0.05μm~2μmがより好ましい。
【0033】
平均一次粒子径A,Bは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察される断面SEM画像を解析することにより求められる。例えば、正極11を樹脂中に埋め込み、クロスセクションポリッシャ(CP)加工などにより正極合材層31の断面を作製し、この断面をSEMにより撮影する。或いは、Ni含有リチウム複合酸化物A,Bの粉末を樹脂中に埋め込み、CP加工などにより複合酸化物の粒子断面を作製し、この断面をSEMにより撮影する。そして、この断面SEM画像から、ランダムに30個の一次粒子を選択する。選択した30個の一次粒子の粒界を観察し、一次粒子の外形を特定した上で、30個の一次粒子それぞれの長径(最長径)を求め、それらの平均値を平均一次粒子径A,Bとする。
【0034】
平均二次粒子径A,Bについても、上記断面SEM画像から求められる。具体的には、上記断面SEM画像から、ランダムに30個の二次粒子(Ni含有リチウム複合酸化物A,B)を選択し、選択した30個の二次粒子の粒界を観察し、二次粒子の外形を特定した上で、30個の二次粒子それぞれの長径(最長径)を求め、それらの平均値を平均二次粒子径A,Bとする。
【0035】
Ni含有リチウム複合酸化物AとNi含有リチウム複合酸化物Bとの割合は、充填量の向上による電池の高容量化を図る等の点で、質量比で、5:95~55:45であればよいが、好ましくは10:90~50:50、又は25:75~45:55である。
【0036】
以下、Ni含有リチウム複合酸化物A,Bの製造方法の一例について詳説する。
【0037】
Ni含有リチウム複合酸化物Aは、リチウム化合物と、55モル%以上のNiを含有する遷移金属化合物とを含む混合物Aを焼成して合成される。混合物Aに含まれるリチウム化合物としては、例えば、LiCO、LiOH、Li、LiO、LiNO、LiNO、LiSO、LiOH・HO、LiH、LiF等が挙げられる。
【0038】
混合物Aに含まれる遷移金属化合物の中心粒子径(D50)は、例えば1μm~6μmが好ましく、3μm~4μmがより好ましい。ここで、中心粒子径とは、レーザー回折散乱法で測定される粒度分布において体積積算値が50%となる中心粒子径(D50)を意味する。混合物Aの焼成温度は、850℃~960℃が好ましく、880℃~930℃がより好ましい。焼成時間は、例えば3時間~10時間である。
【0039】
Ni含有リチウム複合酸化物Bは、リチウム化合物と、55モル%以上のNiを含有する遷移金属化合物と、Ti含有化合物とを含む混合物Bを焼成して合成される。混合物Bに含有されるリチウム化合物は、混合物Aに含有されているリチウム化合物と同じであっても異なっていてもよい。また、混合物Bに含有されるTi含有化合物としては、例えば、酸化チタン(TiO)、チタン酸リチウム等が挙げられる。
【0040】
混合物Bに含まれる遷移金属化合物の中心粒子径(D50)は、例えば7μm~20μmが好ましく、10μm~18μmがより好ましい。混合物Bの焼成温度は、860℃~990℃が好ましく、880℃~960℃がより好ましい。焼成時間は、例えば3時間~10時間である。焼成は例えば酸素又は空気の気流下で行われる。遷移金属化合物の中心粒子径(D50)、混合物BにおけるLiの含有量及び焼成温度等が当該範囲内であると、Ni含有リチウム複合酸化物Aの平均一次粒子径及び平均二次粒子径、及び結晶子径を上記範囲に調整することが容易になる。
【0041】
[負極]
負極12は、負極集電体40と、負極集電体40の両面に形成された負極合材層41とを有する。負極集電体40には、銅、銅合金等の負極12の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルムなどを用いることができる。負極合材層41は、負極活物質、及び結着材を含む。負極合材層41の厚みは、例えば負極集電体40の片側で10μm~150μmである。負極12は、負極集電体40の表面に負極活物質、結着材等を含む負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延して負極合材層41を負極集電体40の両面に形成することにより作製できる。
【0042】
負極合材層41に含まれる負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば特に限定されず、一般的には黒鉛等の炭素材料が用いられる。黒鉛は、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛、塊状人造黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛のいずれであってもよい。また、負極活物質として、Si、Sn等のLiと合金化する金属、Si、Sn等を含む金属化合物、リチウムチタン複合酸化物などを用いてもよい。また、これらに炭素被膜を設けたものを用いてもよい。例えば、SiO(0.5≦x≦1.6)で表されるSi含有化合物、又はLi2ySiO(2+y)(0<y<2)で表されるリチウムシリケート相中にSiの微粒子が分散したSi含有化合物などが、黒鉛と併用されてもよい。
【0043】
負極合材層41に含まれる結着材には、正極11の場合と同様に、PTFE、PVdF等の含フッ素樹脂、PAN、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィンなどを用いてもよいが、好ましくはスチレン-ブタジエンゴム(SBR)が用いられる。また、負極合材層41には、CMC又はその塩、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、ポリビニルアルコール(PVA)などが含まれていてもよい。
【0044】
[セパレータ]
セパレータ13には、例えば、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、セルロースなどが好適である。セパレータ13は、単層構造であってもよく、積層構造を有していてもよい。また、セパレータ13の表面には、アラミド樹脂等の耐熱性の高い樹脂層、無機化合物のフィラーを含むフィラー層が設けられていてもよい。
【0045】
[非水電解質]
非水電解質は、例えば、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いることができる。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。ハロゲン置換体としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等のフッ素化環状炭酸エステル、フッ素化鎖状炭酸エステル、フルオロプロピオン酸メチル(FMP)等のフッ素化鎖状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0046】
上記エステル類の例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート等の環状炭酸エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等の鎖状炭酸エステル、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン(GVL)等の環状カルボン酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)等の鎖状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0047】
上記エーテル類の例としては、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、1,3,5-トリオキサン、フラン、2-メチルフラン、1,8-シネオール、クラウンエーテル等の環状エーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、o-ジメトキシベンゼン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,1-ジメトキシメタン、1,1-ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等の鎖状エーテルなどが挙げられる。
【0048】
電解質塩は、リチウム塩であることが好ましい。リチウム塩の例としては、LiBF、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiSCN、LiCFSO、LiCFCO、Li(P(C)F)、LiPF6-x(C2n+1(1<x<6,nは1又は2)、LiB10Cl10、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、Li、Li(B(C)F)等のホウ酸塩類、LiN(SOCF、LiN(C2l+1SO)(C2m+1SO){l,mは0以上の整数}等のイミド塩類などが挙げられる。リチウム塩は、これらを1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。これらのうち、イオン伝導性、電気化学的安定性等の観点から、LiPFを用いることが好ましい。リチウム塩の濃度は、例えば非水溶媒1L当り0.8モル~1.8モルである。また、さらにビニレンカーボネートやプロパンスルトン系添加剤を添加してもよい。
【実施例
【0049】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
<実施例1>
[Ni含有リチウム複合酸化物Aの合成]
Ni0.60Co0.20Mn0.20(OH)で表される遷移金属水酸化物(D50が3.7μm)とLiOHとを、Ni、Co及びMnの総量に対するLiのモル比が1.07となるように混合して混合物Aを得た。その後、当該混合物Aを925℃で10時間、酸素気流下で焼成して、Ni含有リチウム複合酸化物Aを得た。
【0051】
Ni含有リチウム複合酸化物Aの平均一次粒子径は4μm、平均二次粒子径は6μmであった。平均一次粒子径及び平均二次粒子径の測定方法は上述の通りである。
【0052】
[Ni含有リチウム複合酸化物Bの合成]
Ni0.60Co0.20Mn0.20(OH)で表される遷移金属水酸化物(D50が17.0μm)に、Ni、Co及びMnの総量に対するLiのモル比が1.07となるようにLiOHと、Ni、Co及びMnの総量に対するTiのモル比が0.005となるようにTiOとを混合して混合物Bを得た。その後、当該混合物Bを885℃で10時間、酸素気流下で焼成することによって、Ni含有リチウム複合酸化物Bを得た。
【0053】
Ni含有リチウム複合酸化物Bの平均一次粒子径はNi含有リチウム複合酸化物Aと比べて小さく、1μmであった。また、Ni含有リチウム複合酸化物Bの平均二次粒子径は、Ni含有リチウム複合酸化物Aよりも大きく、17μmであった。
【0054】
X線回折法により得たNi含有リチウム複合酸化物BのX線回折パターンを解析した結果、結晶子径は135nmであった。X線回折法の測定条件等は上述の通りである。
【0055】
[正極の作製]
正極活物質として、Ni含有リチウム複合酸化物A,Bを50:50の質量比で混合したものを用いた。正極活物質が97.5質量%、カーボンブラックが1質量%、ポリフッ化ビニリデンが1.5質量%となるように混合し、これをN-メチル-2-ピロリドン(NMP)と混合して正極合材スラリーを調製した。当該スラリーを厚み15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥した後、圧延ローラにより、塗膜を圧延して、正極集電体の両面に正極合材層が形成された正極を作製した。正極集電体の長手方向端部に正極合材層を形成しない部分を設け、当該部分に正極タブを取り付けた。正極合材層の厚みを約125μm、正極の厚みを約140μmとした。
【0056】
[負極の作製]
負極活物質として、96質量部の黒鉛と、及び炭素被膜を有する4質量部のSiO(x=0.94)とを用いた。当該負極活物質と、SBRのディスパージョンと、CMCのナトリウム塩とを、100:1:1の質量比で混合し、これを水と混合して負極合材スラリーを調製した。当該スラリーを銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥した後、圧延ローラにより塗膜を圧延して、負極集電体の両面に負極合材層が形成された負極を作製した。負極集電体の長手方向端部に負極合材層を形成しない部分を設け、当該部分に負極タブを取り付けた。
【0057】
[非水電解質の調製]
FECと、EP(Ethylpropionate)と、EMCと、DMCとを、25:30:15:30の体積比で混合した混合溶媒に、LiPFを1.0モル/Lの濃度になるように、また、LiBFを0.05モル/Lの濃度となるように添加し、さらに、0.3質量%(溶媒比)のビニレンカーボネート及び、0.5質量%(溶媒比)のプロパンスルトン系添加剤を添加して非水電解質を調製した。
【0058】
[非水電解質二次電池の作製]
セパレータを介して上記正極及び上記負極を積層し、積層型の電極体を作製した。セパレータには、単層のポリプロピレン製セパレータを用いた。当該電極体をアルミニウムラミネートシートで構成される外装体に挿入して、上記非水電解質を注入し、外装体の開口部を封止して試験セル(ラミネートセル)を作製した。
【0059】
[電池容量の評価]
上記非水電解質二次電池について、25℃の環境下、セル電池容量に対して、0.1Itの定電流で1時間充電した後、60℃で10時間のエージングを行った。その後、0.3Itの定電流で電池電圧が4.3Vとなるまで定電流充電を行い、更に4.3Vの電圧で電流値が30mAとなるまで定電圧充電を行った後、0.3Itの定電流で電圧が2.5Vとなるまで放電し、15分間の休止を挟んだ後、更に0.1Itの定電流で電圧が2.5Vとなるまで放電して、電池容量(放電容量)を求めた。
【0060】
[Ni及びMnの溶出量の評価]
上記非水電解質二次電池を、満充電した後、60℃恒温槽にて14日間保存した。そして、14日間経過後の非水電解質二次電池をグローブボックス内で解体し、負極を取り出した。取り出した負極を100℃の0.2規定塩酸水溶液100mlに10分間浸漬することで、負極に析出したMn及びNiを溶解させた。さらに負極をろ過により除去した後、メスフラスコにてメスアップし、サンプルを得た。当該サンプルのMn及びNi量をInductively Coupled Plasma- Atomic Emission Spectrometry(ICP-AES)にて定量し、以下の式により、Mn、Niの溶出量を算出した。Mn、Niの溶出量が低いほど、上記保存過程にて正極活物質から溶出するMn、Niの溶出が抑えられたことを意味する。
MnまたはNiの溶出量=MnまたはNi質量/負極質量
【0061】
<比較例1>
Ni含有リチウム複合酸化物Bの合成において、TiOを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製し、実施例1と同様に性能評価を行った。
【0062】
比較例1のNi含有リチウム複合酸化物Bの平均一次粒子径と平均二次粒子径は、実施例1と同じく、それぞれ1μmと17μmであった。また、Ni含有リチウム複合酸化物B結晶子径も実施例と同じく135nmであった。
【0063】
<比較例2>
Ni含有リチウム複合酸化物Bの合成において、正極活物質としてNi含有リチウム複合酸化物Aを含有させずにNi含有リチウム複合酸化物Bのみを用いたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製し、実施例1と同様に性能評価を行った。
【0064】
実施例1及び比較例1~2の評価結果を表1に示す。比較例1~2の電池容量、並びにNi及びMnの溶出量は、実施例1の値を100とした時の相対値である。
【0065】
【表1】
【0066】
比較例2の電池容量は、実施例1及び比較例1の電池容量に比べて小さくなっており、平均一次粒子径及び平均二次粒子径が異なる二種類のNi含有リチウム複合酸化物を混合した正極活物質を用いた方が、一種類のNi含有リチウム複合酸化物からなる正極活物質を用いるよりも電池容量が大きくなった。また、実施例1の電池は、比較例1~2の電池に比べてNi及びMnの溶出量が少なかった。すなわち、平均一次粒子径及び平均二次粒子径が異なる二種類のNi含有リチウム複合酸化物を混合した正極活物質を用いつつ、平均一次粒子径が小さく且つ平均二次粒子径が大きいNi含有リチウム複合酸化物にTiを含有させることで、高容量化を図りつつ抵抗上昇及び内部短絡の発生の原因となるNi及びMn等の溶出を抑制することができた。なお、Coの溶出量については測定しなかったが、Coについても溶出が抑制されたと推察される。
【符号の説明】
【0067】
10 非水電解質二次電池、11 正極、12 負極、13 セパレータ、14 電極体、15 電池ケース、16 外装缶、17 封口体、18,19 絶縁板、20 正極タブ、21 負極タブ、22 溝入部、23 底板、24 下弁体、25 絶縁部材、26 上弁体、27 キャップ、28 ガスケット、30 正極集電体、31 正極合材層、32,33 一次粒子、40 負極集電体、41 負極合材層。




図1
図2
図3