(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】液体霧化システム
(51)【国際特許分類】
B05B 17/06 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
B05B17/06
(21)【出願番号】P 2022511821
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2021010661
(87)【国際公開番号】W WO2021200124
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2020064780
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪井 淳
(72)【発明者】
【氏名】植村 真利子
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-5606(JP,A)
【文献】特開2011-121050(JP,A)
【文献】特開2008-73570(JP,A)
【文献】特開2008-104974(JP,A)
【文献】特開2012-143726(JP,A)
【文献】特開2010-253347(JP,A)
【文献】特開平10-193592(JP,A)
【文献】特開2005-257408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00-17/08
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面及び裏面を有する圧電性基板と、前記圧電性基板の前記表面上に設けられており、前記圧電性基板に表面弾性波を発生させるIDT電極と、を含むSAWデバイスと、
前記圧電性基板の厚さ方向から見て前記表面弾性波の伝搬方向において前記IDT電極に並んでおり、前記圧電性基板の前記表面上に配置されている多孔性金属シートと、を備え、
前記圧電性基板の前記表面上に位置し前記多孔性金属シートに保持された対象液体を前記表面弾性波によって霧化し、
前記対象液体は、少なくとも霧化される部位の厚みが前記多孔性金属シートによって制御される、
液体霧化システム。
【請求項2】
前記多孔性金属シートの一部に前記対象液体を供給する液体供給部を更に備える、
請求項1に記載の液体霧化システム。
【請求項3】
前記圧電性基板は、前記厚さ方向に貫通する貫通孔を有し、
前記液体供給部は、前記圧電性基板の前記裏面側から前記貫通孔を通して前記多孔性金属シートに前記対象液体を供給する、
請求項2に記載の液体霧化システム。
【請求項4】
前記液体供給部は、前記多孔性金属シートの表面又は側面から前記多孔性金属シートに前記対象液体を供給する、
請求項2に記載の液体霧化システム。
【請求項5】
前記液体供給部は、前記多孔性金属シートの表面に交差する方向に沿って前記対象液体を輸送する多孔性材料部を更に備える、
請求項2~4のいずれか一項に記載の液体霧化システム。
【請求項6】
前記多孔性材料部の材料が前記多孔性金属シートの材料と同じであり、
前記多孔性材料部は、第1端及び第2端を有し、
前記多孔性材料部の前記第1端が前記液体供給部の有する液体タンク内の前記対象液体に浸漬され、
前記多孔性材料部の前記第2端が前記多孔性金属シートにつながっている、
請求項5に記載の液体霧化システム。
【請求項7】
前記液体供給部は、複数種の液体から前記対象液体を調合する調合部を更に備え、
前記液体供給部は、前記調合部で調合した前記対象液体を前記多孔性金属シートへ供給する、
請求項2~4のいずれか一項に記載の液体霧化システム。
【請求項8】
前記多孔性金属シートを前記圧電性基板の前記表面との間に挟む部材を更に備える、
請求項1~7のいずれか一項に記載の液体霧化システム。
【請求項9】
前記部材は、前記厚さ方向から見て、前記多孔性金属シートにおける前記IDT電極側の端部を露出させるように前記多孔性金属シートを前記圧電性基板の前記表面との間に挟んでいる、
請求項8に記載の液体霧化システム。
【請求項10】
前記部材は、
前記厚さ方向において前記多孔性金属シートに重なる第1部分と、
前記厚さ方向において前記多孔性金属シートに重ならない第2部分と、を有し、
前記第2部分と前記圧電性基板の前記表面との距離が、前記第1部分と前記圧電性基板の前記表面との距離よりも短い、
請求項8又は9に記載の液体霧化システム。
【請求項11】
前記部材の前記第2部分と前記圧電性基板の前記表面との間に介在し、前記対象液体をはじく性質を有する中間部材を更に備える、
請求項10に記載の液体霧化システム。
【請求項12】
前記多孔性金属シートは、複数の繊維状金属を含む多孔質金属である、
請求項1~11のいずれか一項に記載の液体霧化システム。
【請求項13】
前記多孔性金属シートは、複数の開気孔を有し、
前記複数の開気孔は、前記多孔性金属シートにおいて前記IDT電極に対向する第1面及び前記第1面とは異なる第2面で開放されている、
請求項1~12のいずれか一項に記載の液体霧化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、液体霧化システムに関し、より詳細には、対象液体を霧化する液体霧化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、SAWデバイスを備え、SAWデバイスの表面に供給された液体を弾性表面波によって霧化させる液体霧化装置が記載されている。特許文献1に開示された液体霧化装置におけるSAWデバイスは、圧電セラミック材料よりなる基板の表面に一組の櫛形電極が形成されている。
【0003】
特許文献1に開示された液体霧化装置では、SAWデバイスの一組の櫛形電極の近傍位置であって、弾性表面波の伝搬領域には、一組の櫛形電極の重なり幅(交差幅)の範囲内に、表面と裏面とを貫通する複数の液体供給孔(貫通孔)が弾性表面波の伝搬方向に対して横切るように列設されている。
【0004】
特許文献1に開示された液体霧化装置では、SAWデバイスの表面に供給された液体の厚みが不安定となり、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子を安定して発生させることが難しかった。ここにおいて、「ナノメートルサイズ」とは、1nm~999nmである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
本開示の目的は、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子を、より安定して発生させることが可能な液体霧化システムを提供することにある。
【0007】
本開示に係る一態様の液体霧化システムは、SAWデバイスと、多孔性金属シートと、を備える。前記SAWデバイスは、圧電性基板と、IDT電極と、を含む。前記圧電性基板は、表面及び裏面を有する。前記IDT電極は、前記圧電性基板の前記表面上に設けられている。前記IDT電極は、前記圧電性基板に表面弾性波を発生させる。前記多孔性金属シートは、前記圧電性基板の厚さ方向から見て前記表面弾性波の伝搬方向において前記IDT電極に並んでいる。前記多孔性金属シートは、前記圧電性基板の前記表面上に配置されている。前記液体霧化システムは、前記圧電性基板の前記表面上に位置し前記多孔性金属シートに保持された対象液体を前記表面弾性波によって霧化する。前記対象液体は、少なくとも霧化される部位の厚みが前記多孔性金属シートによって制御される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る液体霧化システムの平面図である。
【
図2】
図2は、同上の液体霧化システムを示し、
図1のA-A線断面図である。
【
図3】
図3は、同上の液体霧化システムを示し、
図1のB-B線断面図である。
【
図4】
図4Aは、同上の液体霧化システムの動作説明図である。
図4Bは、同上の液体霧化システムにおける霧化ポイントの説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る液体霧化システム及び比較例に係る液体霧化システムの投入電力-温度特性図である。
【
図6】
図6は、実施形態1の変形例に係る液体霧化システムの断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態2に係る液体霧化システムの平面図である。
【
図8】
図8は、同上の液体霧化システムの断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態2の変形例に係る液体霧化システムの断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態3に係る液体霧化システムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
下記の実施形態1~3等において説明する
図1~10は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0010】
(実施形態1)
以下では、実施形態1に係る液体霧化システム1について
図1~4Bに基づいて説明する。
【0011】
(1)概要
実施形態1に係る液体霧化システム1は、SAW(Surface Acoustic Wave)デバイス5を備え、SAWデバイス5で発生させる表面弾性波のエネルギを対象液体100(
図2、4A及び4B参照)に与えて対象液体100を霧化する。液体霧化システム1では、対象液体100を霧化することによって液滴粒子103(
図4A参照)を発生させる。SAWデバイス5は、圧電性基板2と、IDT(Interdigital Transducer)電極3と、を備える。圧電性基板2は、圧電性を有する。IDT電極3は、圧電性基板2に表面弾性波を発生させる。液体霧化システム1では、圧電性基板2上に配置されている多孔性金属シート6を備える。液体霧化システム1では、対象液体100のうち霧化される部位の厚みが、多孔性金属シート6によって制御される。対象液体100は、例えば、アロマオイルであるが、これに限らず、水、美容用の液体、医療用の液体等であってもよい。液体霧化システム1は、例えば、ミストディフューザに適用することができる。
【0012】
(2)液体霧化システムの詳細
液体霧化システム1は、
図1~4Aに示すように、SAWデバイス5と、多孔性金属シート6と、を備える。SAWデバイス5は、圧電性基板2と、IDT電極3と、を備える。
【0013】
圧電性基板2は、表面21及び裏面22を有する。表面21及び裏面22は、圧電性基板2の厚さ方向D0において離れており、圧電性基板2の厚さ方向D0に交差する。圧電性基板2の表面21及び裏面22は、例えば、圧電性基板2の厚さ方向D0に直交している。圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、圧電性基板2の外周形状(外縁)は、例えば、長方形状である。
【0014】
圧電性基板2は、上述のように圧電性を有する。圧電性基板2は、圧電基板であり、一例として、128°YカットLiNbO3単結晶基板である。圧電性基板2の材料は、LiNbO3に限らず、例えば、LiTaO3等でもよい。圧電性基板2のカット角は、128°に限らず、128°以外のカット角であってもよい。圧電性基板2の厚さは、例えば、0.5mmであるが、これに限らない。
【0015】
IDT電極3は、圧電性基板2の表面21上に設けられており、圧電性基板2に表面弾性波を発生させる。ここで、IDT電極3は、圧電性基板2の表面21上に直接設けられている。
【0016】
IDT電極3は、一対の櫛形電極として、第1櫛形電極31と、第2櫛形電極32と、を有する。第1櫛形電極31及び第2櫛形電極32の各々は、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、櫛形状である。第1櫛形電極31は、複数の第1電極指311を含む。第1櫛形電極31は、複数の第1電極指311がつながっている第1導電部312を更に含む。第2櫛形電極32は、複数の第2電極指321を含む。第2櫛形電極32は、複数の第2電極指321がつながっている第2導電部322を更に含む。
【0017】
IDT電極3の材料は、例えば、アルミニウムであるが、これに限らず、他の金属又は合金等であってもよい。また、IDT電極3は、単層構造に限らず積層構造を有していてもよい。
【0018】
以下では、説明の便宜上、圧電性基板2の厚さ方向D0を第1方向D1とし、第1櫛形電極31の第1電極指311の並んでいる方向を第2方向D2とし、第1方向D1と第2方向D2とに直交する方向を第3方向D3として説明することもある。
【0019】
IDT電極3では、複数の第1電極指311と複数の第2電極指321とが、第2方向D2において1つずつ交互に並んでいる。第2方向D2において隣り合う第1電極指311と第2電極指321とは互いに離れている。図示例では、
図1、2及び4A等はあくまで模式図であり、IDT電極3における第1電極指311及び第2電極指321の数を実際の数よりも少なく描いてある。
【0020】
IDT電極3では、第1導電部312と第2導電部322とが第3方向D3において互いに対向している。複数の第1電極指311は、第1導電部312につながっており、第2導電部322側に延びている。第3方向D3において、複数の第1電極指311の長さは、互いに同じである。ここにおいて、「同じ」とは、厳密に同じである場合のみに限定されず、略同じ(例えば、複数の第1電極指311の長さの平均値±5%の範囲内で同じ)でもよい。複数の第1電極指311の先端は、第3方向D3において第2導電部322から離れている。第3方向D3において、複数の第2電極指321の長さは、互いに同じである。ここにおいて、「同じ」とは、厳密に同じである場合のみに限定されず、略同じ(例えば、複数の第2電極指321の長さの平均値±5%の範囲内で同じ)でもよい。複数の第2電極指321の先端は、第3方向D3において第1導電部312から離れている。
【0021】
IDT電極3は、複数の第1電極指311と複数の第2電極指321とで決まる交差領域33を有する。交差領域33は、複数の第1電極指311の先端の第1包絡線と複数の第2電極指321の先端の第2包絡線との間の領域である。交差領域33の外周線は、第1包絡線及び第2包絡線を含む。見方を変えれば、交差領域33は、第2方向D2から見て、複数の第1電極指311と複数の第2電極指321とが重なる領域である。なお、
図1では、交差領域33を見やすくするために、交差領域33の外周線を、複数の第1電極指311の先端及び複数の第2電極指321の先端から僅かに離してある。同様に、
図1では、交差領域33を見やすくするために、交差領域33の外周線を、
図1における左端の第1電極指311及び右端の第2電極指321から僅かに離してある。
【0022】
圧電性基板2とIDT電極3とを含むSAWデバイス5は、IDT電極3により表面弾性波を発生させる。より詳細には、SAWデバイス5は、第1櫛形電極31と第2櫛形電極32との間に例えば高周波電源から高周波電圧が印加されることにより、表面弾性波を発生させる。高周波電圧の周波数は、例えば、数MHz~数百MHzであり、一例として40MHzであるが、これに限らない。液滴粒子103(
図4A参照)の粒径を小さくする観点からは、高周波電圧の周波数が高いほうが好ましい。
【0023】
SAWデバイス5では、IDT電極3は、交差領域33において、圧電性基板2に表面弾性波を励振させる。表面弾性波は、圧電性基板2において少なくとも伝搬領域23を伝搬する。ここで、伝搬領域23は、交差領域33を第2方向D2に延長した延長領域に圧電性基板2の厚さ方向D0で重複する領域である。
【0024】
伝搬領域23の幅L1(以下、伝搬幅L1ともいう)は、第3方向D3における交差領域33の幅(以下、交差幅L0ともいう)と同じである。伝搬幅L1は、例えば、0.5mm~10mmである。
【0025】
SAWデバイス5は、反射器4を更に含んでいる。反射器4は、圧電性基板2の表面21上に設けられている。反射器4は、第2方向D2においてIDT電極3と並んでいる。SAWデバイス5では、反射器4、IDT電極3及び伝搬領域23が、反射器4、IDT電極3及び伝搬領域23の順に並んでいる。したがって、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、伝搬領域23は、IDT電極3を基準として反射器4側とは反対側にある。反射器4は、IDT電極3により発生され第2方向D2において伝搬領域23側とは反対側へ伝搬する表面弾性波を反射する。
【0026】
反射器4は、第1電極41と、第2電極42と、を有している。第1電極41及び第2電極42の各々は、圧電性基板2の厚さ方向D0から見てIDT電極3と同様に櫛形状である。反射器4の材料は、例えば、アルミニウムであるが、これに限らず、他の金属又は合金等であってもよい。
【0027】
反射器4は、第1電極41及び第2電極42を有する形状に限らず、例えば、短絡グレーティング、開放グレーティングであってもよい。
【0028】
ナノメートルサイズの液滴粒子103を得るためには、圧電性基板2の表面21上の対象液体100の液膜厚は、薄いほうが好ましい。ここにおいて、「ナノメートルサイズ」とは、1nm~999nmである。
【0029】
多孔性金属シート6は、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て表面弾性波の伝搬方向D4(
図1及び4A参照)においてIDT電極3に並んでいる。ここでいう表面弾性波の伝搬方向D4は、全ての表面弾性波の伝搬方向ではなく、第2方向D2に沿った方向(第2方向D2に平行な方向)である。多孔性金属シート6は、圧電性基板2の表面21上に配置されている。ここにおいて、多孔性金属シート6は、圧電性基板2の表面21上に直接配置されている。したがって、多孔性金属シート6は、圧電性基板2の表面21に接している。
【0030】
液体霧化システム1は、圧電性基板2の表面21上に位置し多孔性金属シート6に保持された対象液体100を表面弾性波によって霧化する。液体霧化システム1では、対象液体100は、少なくとも霧化される部位の厚み(液膜厚)が多孔性金属シート6によって制御される。言い換えれば、多孔性金属シート6は、対象液体100のうち圧電性基板2の表面21上において霧化される部位の厚みを制御する。
【0031】
多孔性金属シート6は、例えば、
図4Aに示すように、複数の繊維状金属601を含む多孔質金属である。ここでいう多孔質金属の形状は、例えば、3次元ネットワーク状である。多孔性金属シート6は、対象液体100に対する耐食性を有する。多孔性金属シート6の材料は、オーステナイト系ステンレス鋼(例えば、SUS316)であるが、これに限らず、例えば、チタンであってもよい。ナノメートルサイズの液滴粒子103を得るためには、多孔性金属シート6の厚さは、例えば、0.5mm以下であるのが好ましく、例えば、0.1mm以上0.3mm以下であるのが好ましい。
【0032】
多孔性金属シート6は、複数の開気孔を有する。これにより、液体霧化システム1では、多孔性金属シート6に、対象液体100を含浸させることができる。言い換えれば、液体霧化システム1は、複数の開気孔内に対象液体100を保持することができる。複数の開気孔は、多孔性金属シート6においてIDT電極3に対向する第1面6A及び第1面6Aとは異なる第2面6Bで開放されている。圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、多孔性金属シート6の外周形状は、正方形状であるが、これに限らず、例えば、長方形状であってもよい。多孔性金属シート6は、表面61と、裏面62と、第1側面63と、第2側面64と、第3側面65と、第4側面66と、を有している。第1側面63、第2側面64、第3側面65及び第4側面66は、多孔性金属シート6の外周に沿う方向において、第1側面63、第2側面64、第3側面65及び第4側面66の順に並んでいる。多孔性金属シート6は、多孔性金属シート6の表面61と裏面62とのうち裏面62が圧電性基板2の表面21側となり、第1側面63がIDT電極3に対向するように、圧電性基板2の表面21上に直接配置されている。
【0033】
多孔性金属シート6では、第1面6Aが、多孔性金属シート6の第1側面63を含む。また、多孔性金属シート6では、第2面6Bが、多孔性金属シート6の表面61、裏面62、第2側面64、第3側面65及び第4側面66を含んでいる。
【0034】
多孔性金属シート6の第1面6AをIDT電極3側から見たときの複数の開気孔の開口幅は、例えば、10μm以上200μm以下である。ここで、開口幅は、SEM(Scanning Electron Microscope)像において、開気孔の縁の任意の2点間を結ぶ直線の群のうち最長の直線の長さである。また、多孔性金属シート6の第2面6Bを第2面6Bに直交する方向から見たときの複数の開気孔の開口幅は、例えば、10μm以上200μm以下である。複数の開気孔の各々は、複数の空隙(孔)がつながって形成されている。多孔性金属シート6において対象液体100を輸送する観点から、複数の空隙のサイズは、10μm以上であるのが好ましい。また、多孔性金属シート6において対象液体100を輸送する観点から、複数の空隙のサイズは、200μm以下であるのが好ましい。
【0035】
実施形態1に係る液体霧化システム1は、部材8を更に備える。部材8は、多孔性金属シート6を圧電性基板2の表面21との間に挟んでいる。部材8の材料は、例えば、剛性の観点から、金属系材料であるのが好ましい。ここにおいて、金属系材料は、オーステナイト系ステンレス鋼(例えば、SUS316)であるが、これに限らず、例えば、アルミニウム又はチタンであってもよい。部材8の熱伝導率は、圧電性基板2の熱伝導率よりも高い。要するに、部材8の熱伝導性は、圧電性基板2の熱伝導性よりも高い。部材8の材料は、対象液体100に対する耐食性と、対象液体100に対する撥液性と、を有していれば、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン等に限らない。
【0036】
部材8は、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、多孔性金属シート6におけるIDT電極3側の端部611の少なくとも一部を露出させるように多孔性金属シート6を圧電性基板2の表面21との間に挟んでいる。部材8は、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、U字状であるが、これに限らない。多孔性金属シート6は、第2方向D2においてIDT電極3側の端部611(以下、第1端部611ともいう)と、IDT電極3とは反対側の端部612(以下、第2端部612ともいう)と、を有する。
【0037】
部材8は、
図3に示すように、第1部分81と、第2部分82と、を有する。第1部分81は、圧電性基板2の厚さ方向D0において多孔性金属シート6に重なる。第2部分82は、圧電性基板2の厚さ方向D0において多孔性金属シート6に重ならない。実施形態1に係る液体霧化システム1では、第2部分82と圧電性基板2の表面21との距離が、第1部分81と圧電性基板2の表面21との距離よりも短い。部材8では、第2部分82の厚さが第1部分81の厚さよりも厚い。第2部分82と圧電性基板2の表面21との距離は、多孔性金属シート6の厚さよりも小さい。第2部分82は、少なくとも第3方向D3に沿った方向において多孔性金属シート6を挟んでいる。部材8では、第2部分82における圧電性基板2側とは反対側の表面821と、第1部分81における圧電性基板2側とは反対側の表面811と、が面一となっているが、これに限らない。また、部材8は、第2部分82における圧電性基板2側の面が、第1部分81における圧電性基板2側の面と面一になっていてもよい。つまり、第2部分82の厚さが第1部分81の厚さと同じであってもよい。
【0038】
また、実施形態1に係る液体霧化システム1は、中間部材9(
図3参照)を更に備える。中間部材9は、部材8の第2部分82と圧電性基板2の表面21との間に介在する。中間部材9は、対象液体100をはじく性質(撥液性)を有する。ここにおいて、対象液体100がアロマオイルの場合、対象液体100をはじく性質は、撥油性である。また、対象液体100が水の場合、対象液体100をはじく性質は、撥水性である。中間部材9の材料は、例えば、部材8及び圧電性基板2それぞれとの密着性を高めるとともに熱伝導性を高める観点で、柔らかい熱伝導性樹脂材料を採用しているが、これに限らず、金属系材料であってもよい。熱伝導性樹脂材料は、例えば、樹脂と金属材料粉末又は炭素系粉末との複合材料である。このような複合材料を用いた中間部材9は、圧力が加えられたときに収縮するので、部材8及び圧電性基板2それぞれとの密着性を高めることが可能となる。中間部材9の熱伝導率は、圧電性基板2の熱伝導率よりも高い。要するに、中間部材9の熱伝導性は、圧電性基板2の熱伝導性よりも高い。
【0039】
液体霧化システム1では、
図1に示すように、第3方向D3における多孔性金属シート6の幅H6が、伝搬幅L1よりも長い。圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、伝搬領域23は、第3方向D3において多孔性金属シート6の両端よりも内側に位置している。言い換えれば、厚さ方向D0から見て、多孔性金属シート6は、表面弾性波の伝搬方向D4に直交する方向において少なくとも交差領域33の両端にわたって形成されている。液体霧化システム1では、例えば、交差幅L0が2mmの場合、第3方向D3における多孔性金属シート6の幅H6が3mmである。これらの数値は、あくまで一例であり、これらの数値に限定されない。圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、多孔性金属シート6では、伝搬領域23の中心線231(
図4B参照)と第2側面64との距離と、伝搬領域23の中心線231と第4側面66との距離とが、同じであるのが好ましいが、必ずしも同じである必要はない。第3方向D3における多孔性金属シート6の幅H6は、第3方向D3における伝搬領域23の伝搬幅L1よりも長い場合のみに限らず、第3方向D3における伝搬領域23の伝搬幅L1以上であればよい。つまり、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、第3方向D3において伝搬領域23は多孔性金属シート6と同じ範囲であってもよい。部材8において多孔性金属シート6におけるIDT電極3側の端部611を露出させている切欠の幅をH3とすると、伝搬幅L1≦幅H3であるのがより好ましい。
【0040】
実施形態1に係る液体霧化システム1では、
図1に示すように、第3方向D3における部材8の幅H8が、第3方向D3における圧電性基板2の幅H2よりも長い。実施形態1に係る液体霧化システム1では、部材8は、例えば、SAWデバイス5を支持しているベースに対してねじにより固定されてもよい。第3方向D3における部材8の幅H8は、第3方向D3における圧電性基板2の幅H2よりも長い場合に限らず、圧電性基板2の幅H2以下であってもよい。
【0041】
実施形態1に係る液体霧化システム1は、液体供給部7(
図2参照)を更に備える。液体供給部7は、多孔性金属シート6の一部に対象液体100を供給する。
【0042】
液体供給部7は、例えば、対象液体100を多孔性金属シート6へ供給するための供給管70と、供給管70内の対象液体100を多孔性金属シート6へ送り出すためのポンプと、を有する。
【0043】
液体供給部7は、例えば、多孔性金属シート6の表面61から多孔性金属シート6に対象液体100を供給する。液体供給部7は、多孔性金属シート6の表面61から多孔性金属シート6に対象液体100を供給する場合に限らず、例えば、多孔性金属シート6の第3側面65から多孔性金属シート6に対象液体100を供給してもよい。
【0044】
(3)液体霧化システムの動作
液体霧化システム1では、液体供給部7から多孔性金属シート6に対象液体100が供給される。これにより、液体霧化システム1では、
図4A及び4Bに示すように、多孔性金属シート6に対象液体100の少なくとも一部が保持される。
【0045】
また、液体霧化システム1では、SAWデバイス5が駆動される(IDT電極3の第1櫛形電極31と第2櫛形電極32との間に例えば高周波電源から高周波電圧が印加される)ことにより、表面弾性波を発生させる。液体霧化システム1は、多孔性金属シート6に対象液体100の少なくとも一部が保持された状態でSAWデバイス5が駆動されると、表面弾性波によって対象液体100を霧化することにより、ナノメートルサイズの液滴粒子103を含むミストM1(
図4A参照)を発生させる。
図4A及び4Bでは、対象液体100にドットのハッチングを付してある。また、
図4Aでは、表面弾性波を波線矢印で模式的に示してある。
【0046】
液体霧化システム1では、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、対象液体100のうち多孔性金属シート6におけるIDT電極3側の端部611に位置する部分を表面弾性波によって霧化することによって、液滴粒子103が発生する。多孔性金属シート6におけるIDT電極3側の端部611は、霧化ポイント620(
図4B参照)を含む。霧化ポイント620は、多孔性金属シート6の端部611のうち対象液体100から液滴粒子103が発生する領域である。要するに、液体霧化システム1では、対象液体100のうち少なくとも多孔性金属シート6の霧化ポイント620に位置する部分を表面弾性波によって霧化させることによって、液滴粒子103が発生する。霧化ポイント620は、IDT電極3の交差領域33の第3方向D3における中央部に対して、第2方向D2において対向する。霧化ポイント620は、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、伝搬領域23の第2方向D2に沿った中心線231上に位置する。第3方向D3における霧化ポイント620の幅は、伝搬幅L0以下である。
【0047】
また、液体霧化システム1では、対象液体100のはみ出し部102(
図4A及び4B参照)を表面弾性によって霧化させることによっても液滴粒子103が発生する。はみ出し部102は、対象液体100のうち多孔性金属シート6からIDT電極3側で圧電性基板2の表面21上にはみ出した部分である。ナノメートルサイズの液滴粒子103を発生させる観点から、対象液体100のうちはみ出し部102を霧化するときには、はみ出し部102の液膜厚は、薄いほうが好ましい。これにより、対象液体100のはみ出し部102を霧化することによって形成される液滴粒子103の粒径をナノメートルサイズとすることができる。
【0048】
実施形態1に係る液体霧化システム1では、液滴粒子103の粒径がナノメートルサイズである。
【0049】
対象液体100を霧化することによって形成された液滴粒子103の粒径は、例えば、レーザ回折法により測定した値である。より詳細には、液滴粒子103の粒径は、レーザ回折式の粒度分布測定装置を用いて測定した値である。レーザ回折式の粒度分布測定装置は、例えば、Malvern Panalytical社のスプレーテック(商品名)である。スプレーテックは、例えば、レーザ光が、スプレーを通過するときに散乱した光のパターンから粒度分布を測定し、その後、散乱パターンを解析し、液滴径を計算することができる装置である。対象液体100を霧化することによって形成された液滴粒子103の粒径は、個数分布におけるメディアン径(d50)である。
【0050】
(4)効果
実施形態1に係る液体霧化システム1では、SAWデバイス5と、多孔性金属シート6と、を備える。SAWデバイス5は、圧電性基板2と、IDT電極3と、を含む。圧電性基板2は、表面21及び裏面22を有する。IDT電極3は、圧電性基板2の表面21上に設けられている。IDT電極3は、圧電性基板2に表面弾性波を発生させる。多孔性金属シート6は、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て表面弾性波の伝搬方向D4においてIDT電極3に並んでいる。多孔性金属シート6は、圧電性基板2の表面21上に配置されている。液体霧化システム1は、圧電性基板2の表面21上に位置し多孔性金属シート6に保持された対象液体100を表面弾性波によって霧化する。対象液体100は、少なくとも霧化される部位の厚みが多孔性金属シート6によって制御される。対象液体100において霧化される部位は、圧電性基板2の表面21上で多孔性金属シート6に保持されている部位を含む。対象液体100において霧化される部位のうち多孔性金属シート6の霧化ポイント620に位置する部位の厚みは、多孔性金属シート6の厚みと略同じである。また、対象液体100において霧化される部位のうちはみ出し部102の厚みは、多孔性金属シート6の厚み以下である。
【0051】
実施形態1に係る液体霧化システム1では、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子103を、より安定して発生させることが可能となる。
【0052】
実施形態1に係る液体霧化システム1では、多孔性シートとして多孔性金属シート6を用いているので、多孔性シートとして樹脂製多孔質シート及びガラスファイバろ紙のいずれを用いる場合と比べても、多孔性シートの機械強度及び耐久性を高めることが可能となる。実施形態1に係る液体霧化システム1では、対象液体100を霧化するときに発生する圧力(噴射圧力)によって多孔性シートの霧化ポイント620が圧電性基板2の表面21から離れる向きに膨らむように変形することを抑制することが可能となる。機械強度は、例えば、引っ張り強度である。また、実施形態1に係る液体霧化システム1では、多孔性金属シート6を洗浄して再利用することも可能である。
【0053】
また、実施形態1に係る液体霧化システム1は、多孔性金属シート6を用いているので、多孔性金属シート6の代わりにガラスファイバろ紙を用いた比較例の液体霧化システムと比べて、対象液体100を霧化しているときの温度上昇を抑制することができる。言い換えれば、実施形態1に係る液体霧化システム1は、比較例の液体霧化システムと比べて放熱性を向上させることができる。
【0054】
図5は、実施形態1に係る液体霧化システム1及び比較例に係る液体霧化システムの投入電力-温度特性図の一例を示している。
図5の横軸は、IDT電極3への投入電力である。また、
図5の縦軸は、多孔性金属シート6の霧化ポイント620及びガラスファイバろ紙の霧化ポイントの温度である。ここにおいて、ガラスファイバろ紙は、Glass Fiber Filter(商品名)である。
【0055】
図5中の「A1」は、実施形態1に係る液体霧化システム1において多孔性金属シート6に対象液体100を供給していない状態での霧化ポイント620の温度である。
図5中の「A2」は、実施形態1に係る液体霧化システム1において対象液体100を霧化しているときの霧化ポイント620の温度である。
図5中の「B1」は、比較例に係る液体霧化システムにおいてガラスファイバろ紙に対象液体100を供給していない状態での霧化ポイントの温度である。
図5中の「B2」は、比較例に係る液体霧化システムにおいて対象液体100を霧化しているときの霧化ポイントの温度である。
【0056】
(5)変形例
以下では、実施形態1の変形例に係る液体霧化システム1aについて、
図6に基づいて説明する。変形例に係る液体霧化システム1aに関し、実施形態1に係る液体霧化システム1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
変形例に係る液体霧化システム1aでは、液体供給部7が、多孔性材料部73を更に備える。多孔性材料部73は、多孔質構造を有し、多孔性金属シート6の表面61に交差する方向に沿って対象液体100を輸送する。ここにおいて、多孔性材料部73は、対象液体100を浸透させる。多孔性金属シート6の表面61に交差する方向は、圧電性基板2の厚さ方向D0に沿った方向である。
【0058】
液体霧化システム1aでは、多孔性材料部73の材料が多孔性金属シート6の材料と同じである。多孔性材料部73は、第1端731及び第2端732を有する。多孔性材料部73の第1端731は、液体供給部7の有する液体タンク71内の対象液体100に浸漬される。多孔性材料部73の第2端732は、多孔性金属シート6につながっている。多孔性材料部73は、多孔性金属シート6と一体であってもよいし多孔性金属シート6に結合されて一体化されていてもよい。多孔性材料部73は、多孔性金属シート6と一体の場合、例えば、多孔性金属シート6と多孔性材料部73とを含む構造体として形成されてもよいし、多孔性金属シート6と多孔性材料部73とのもとになる多孔性金属シート部材を折り曲げて形成されてもよい。
【0059】
液体霧化システム1aでは、多孔性材料部73は、圧電性基板2の側方に配置されている。ここにおいて、多孔性材料部73は、圧電性基板2の厚さ方向D0に沿って配置されており、圧電性基板2の厚さ方向D0に沿って対象液体100を輸送する。多孔性材料部73の第2端732は、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、多孔性金属シート6における第1端部611とは反対側の第2端部612に重なっている。多孔性材料部73の第2端732は、多孔性金属シート6の第2端部612とつながっている。
【0060】
液体霧化システム1aでは、実施形態1に係る液体霧化システム1と同様、圧電性基板2の表面21上に位置し多孔性金属シート6に保持された対象液体100を表面弾性波によって霧化する。対象液体100は、少なくとも霧化される部位の厚みが多孔性金属シート6によって制御される。よって、液体霧化システム1aでは、実施形態1に係る液体霧化システム1と同様、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子103を、より安定して発生させることが可能となる。
【0061】
(実施形態2)
以下では、実施形態2に係る液体霧化システム1bについて
図7及び8に基づいて説明する。実施形態2に係る液体霧化システム1bに関し、実施形態1に係る液体霧化システム1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
実施形態2に係る液体霧化システム1bでは、圧電性基板2は、厚さ方向D0に貫通する貫通孔25を有する。液体供給部7は、圧電性基板2の裏面22側から貫通孔25を通して多孔性金属シート6に対象液体100を供給する。
【0063】
貫通孔25は、圧電性基板2を圧電性基板2の厚さ方向D0に貫通している。貫通孔25は、圧電性基板2の裏面22側から表面21側の多孔性金属シート6へ対象液体100を供給するための孔である。貫通孔25は、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、表面弾性波の伝搬方向D4においてIDT電極3に並んでいる。ここで、貫通孔25とIDT電極3とは第2方向D2において並んでいる。貫通孔25とIDT電極3とは、第2方向D2において離れている。
【0064】
圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、貫通孔25は、例えば、円形状である。圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、貫通孔25の開口形状は、円形状であるが、これに限らず、例えば、多角形状であってもよい。
【0065】
液体霧化システム1bでは、液体供給部7が、多孔性材料部73を更に備える。多孔性材料部73は、少なくとも一部が貫通孔25内に配置される。貫通孔25の開口形状が円形状の場合、多孔性材料部73は、例えば、丸棒状であるが、これに限らない。また、貫通孔25の開口形状は、円形状に限らず、例えば、多角形状であってもよい。また、多孔性材料部73がシート状の場合には、貫通孔25が、スリット状であってもよい。多孔性材料部73は、多孔質構造を有し、多孔性金属シート6の表面61に交差する方向に沿って対象液体100を輸送する。ここにおいて、多孔性材料部73は、対象液体100を浸透させる。多孔性金属シート6の表面61に交差する方向は、圧電性基板2の厚さ方向D0に沿った方向である。
【0066】
液体霧化システム1bでは、多孔性材料部73の材料は、例えば、多孔性金属シート6の材料とは異なる。多孔性材料部73は、対象液体100に対して耐食性を有する材料であればよい。多孔性材料部73の材料は、例えば、ガラス、セラミック、ポリマーである。多孔性材料部73の材料は、多孔性金属シート6の材料と異なる場合に限らず、多孔性金属シート6の材料と同じであってもよい。
【0067】
多孔性材料部73は、第1端731及び第2端732を有する。多孔性材料部73の第1端731は、液体供給部7の有する液体タンク71内の対象液体100に浸漬される。多孔性材料部73の第2端732は、多孔性金属シート6につながっている。液体タンク71は、例えば、圧電性基板2の表面21と裏面22とのうち裏面22側において裏面22から離れて配置される。
【0068】
多孔性材料部73の少なくとも第2端732を含む一部は、圧電性基板2の貫通孔25内に配置されている。多孔性材料部73は、圧電性基板2の厚さ方向D0に沿って配置されており、圧電性基板2の厚さ方向D0に沿って対象液体100を輸送する。液体霧化システム1bでは、多孔性材料部73は、圧電性基板2の貫通孔25の内周面から離れて配置されているが、これに限らず、圧電性基板2の貫通孔25の内周面と接触していてもよい。
【0069】
多孔性金属シート6は、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て貫通孔25を覆うように圧電性基板2の表面21上に直接配置されている。
【0070】
圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、多孔性金属シート6とIDT電極3との距離は、貫通孔25とIDT電極3との距離よりも短い。要するに、多孔性金属シート6におけるIDT電極3側の端部611と、IDT電極3との距離は、貫通孔25とIDT電極3との距離よりも短い。多孔性材料部73を浸透した対象液体100は、少なくとも多孔性金属シート6の端部611に輸送される。
【0071】
実施形態2に係る液体霧化システム1bでは、実施形態1に係る液体霧化システム1と同様、圧電性基板2の表面21上に位置し多孔性金属シート6に保持された対象液体100を表面弾性波によって霧化する。対象液体100は、少なくとも霧化される部位の厚みが多孔性金属シート6によって制御される。よって、実施形態2に係る液体霧化システム1bでは、実施形態1に係る液体霧化システム1と同様、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子103を、より安定して発生させることが可能となる。
【0072】
以下では、実施形態2の変形例に係る液体霧化システム1cについて、
図9に基づいて説明する。変形例に係る液体霧化システム1cに関し、実施形態2に係る液体霧化システム1bと同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
変形例に係る液体霧化システム1cでは、多孔性材料部73の材料が多孔性金属シート6の材料と同じである。多孔性材料部73は、第1端731及び第2端732を有する。多孔性材料部73の第1端731は、液体供給部7の有する液体タンク71内の対象液体100に浸漬される。多孔性材料部73の第2端732は、多孔性金属シート6につながっている。
【0074】
多孔性材料部73の第2端732は、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、多孔性金属シート6における第1端部611とは反対側の第2端部612と重なっている。多孔性材料部73の第2端732は、多孔性金属シート6の第2端部612とつながっている。変形例に係る液体霧化システム1cでは、多孔性金属シート6の第2端部612は、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、圧電性基板2の貫通孔25に重なっている。
【0075】
実施形態2の変形例に係る液体霧化システム1cでは、実施形態2に係る液体霧化システム1bと同様、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子103を、より安定して発生させることが可能となる。
【0076】
(実施形態3)
以下では、実施形態3に係る液体霧化システム1dについて
図10に基づいて説明する。実施形態3に係る液体霧化システム1dに関し、実施形態2に係る液体霧化システム1bと同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0077】
実施形態3に係る液体霧化システム1dでは、液体供給部7が、調合部74を更に備える。
【0078】
調合部74は、複数種の液体から対象液体100を調合する。液体供給部7は、調合部74で調合した対象液体100を多孔性金属シート6へ供給する。ここにおいて、液体供給部7は、調合部74で調合された対象液体100を圧電性基板2の貫通孔25を通して多孔性金属シート6へ供給する。圧電性基板2の厚さ方向D0(
図8参照)から見て、貫通孔25の開口形状は、円形状であるが、これに限らず、例えば、長方形状であってもよい。なお、液体供給部7は、実施形態2に係る液体霧化システム1bと同様に対象液体100を浸透させる多孔性材料部73(
図8参照)を備えていてもよい。
【0079】
実施形態3に係る液体霧化システム1dでは、調合部74を含む液体供給部7は、例えば、マイクロ流路形成基板701に形成されている。マイクロ流路形成基板701は、例えば、2枚のシリコン基板を利用して形成されている。より詳細には、マイクロ流路形成基板701は、2枚のシリコン基板のうち少なくとも一方のシリコン基板に、第1凹部と、第2凹部と、複数(例えば、3つ)の第3凹部と、を設けて2枚のシリコン基板を接合することによって形成されている。第1凹部は、液体供給部7のうち圧電性基板2の貫通孔25に重なる部分を含み当該部分から調合部74の出口までの部分を形成するための凹部である。第2凹部は、調合部74を形成するための凹部である。複数(例えば、3つ)の第3凹部は、調合部74に互いに異なる液体を供給する複数(例えば、3つ)のマイクロ流路75を形成するための凹部である。また、マイクロ流路形成基板701は、複数のマイクロ流路75に一対一につながっている複数の液体注入孔76を有する。複数の液体注入孔76は、複数種の液体に一対一に対応する。
【0080】
実施形態3に係る液体霧化システム1dでは、調合部74で調合された対象液体100を霧化させることによってナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子103(
図4A参照)を含むミストM1を発生させることが可能となる。液体霧化システム1dは、例えば、複数のマイクロ流路75に一対一に対応する複数のマイクロバルブを更に備えていてもよい。この場合、液体霧化システム1dでは、複数のマイクロ流路75のうち任意の1以上のマイクロ流路75を通して調合部74に1種類以上の液体を供給することが可能となる。これにより、液体霧化システム1dでは、例えば、対象液体100の成分を適宜のタイミングで変更することが可能となる。各マイクロバルブを制御する制御回路は、マイクロ流路形成基板701に形成されていてもよいし、マイクロ流路形成基板701とは別の基板に形成されていてもよい。
【0081】
実施形態3に係る液体霧化システム1dでは、実施形態2に係る液体霧化システム1bと同様、圧電性基板2の表面21上に位置し多孔性金属シート6に保持された対象液体100を表面弾性波によって霧化する。対象液体100は、少なくとも霧化される部位の厚みが多孔性金属シート6によって制御される。よって、実施形態3に係る液体霧化システム1dでは、実施形態2に係る液体霧化システム1bと同様、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子103を、より安定して発生させることが可能となる。
【0082】
上記の実施形態1~3等は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記の実施形態1~3等は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0083】
例えば、液体霧化システム1~1dは、部材8の第2部分82と圧電性基板2の表面21との間に中間部材9を必ずしも備えていなくてもよい。この場合、液体霧化システム1~1dは、部材8の第2部分82と圧電性基板2の表面21とが接していてもよい。
【0084】
また、多孔性金属シート6の第2側面64の側方及び第4側面66の側方への対象液体100の漏れを抑制する観点において、液体霧化システム1~1dは、多孔性金属シート6の第2側面64に近接するように圧電性基板2の表面21から突出した第1凸部と、多孔性金属シート6の第4側面66に近接するように圧電性基板2の表面21から突出した第2凸部と、を備えていてもよい。
【0085】
また、液体霧化システム1~1dでは、圧電性基板2の表面21において部材8の第2部分82に対向する部位に対象液体100をはじく性質を有するコーティング部が設けられていてもよい。
【0086】
また、部材8は、例えば、圧電性基板2の表面21との間に多孔性金属シート6を挟んで多孔性金属シート6を圧電性基板2の表面21に密着させているのが好ましい。ここにおいて、部材8は、SAWデバイス5を支持しているベースに対してねじにより固定される場合に限らず、例えば、弾性体(例えば、ばね)によって圧電性基板2又はベース側に押されていてもよい。
【0087】
また、液体霧化システム1~1dにおいて、部材8及び中間部材9は、いずれも必須の構成要素ではない。
【0088】
また、圧電性基板2の中央部上にIDT電極3を設けて、反射器4を無くすことで、IDT電極3の両側に伝搬領域23を設けて、2つの伝搬領域23に一対一に対応する2つの多孔性金属シート6を設けてもよい。
【0089】
また、圧電性基板2は、圧電性を有していればよく、圧電基板に限らず、例えば、支持基板上に圧電体層(LiNbO3単結晶基板)が設けられた構成でもよい。
【0090】
また、液体霧化システム1において多孔性金属シート6に供給される対象液体100の供給量は、対象液体100の供給量を制御する制御部によって制御されるのが好ましい。制御部は、例えば、マイクロポンプ、マイクロバルブ、毛細管等であるが、これらに限らない。
【0091】
(態様)
以上説明した実施形態等から本明細書には以下の態様が開示されている。
【0092】
第1の態様に係る液体霧化システム(1;1a;1b;1c;1d)は、SAWデバイス(5)と、多孔性金属シート(6)と、を備える。SAWデバイス(5)は、圧電性基板(2)と、IDT電極(3)と、を含む。圧電性基板(2)は、表面(21)及び裏面(22)を有する。IDT電極(3)は、圧電性基板(2)の表面(21)上に設けられている。IDT電極(3)は、圧電性基板(2)に表面弾性波を発生させる。多孔性金属シート(6)は、圧電性基板(2)の厚さ方向(D0)から見て表面弾性波の伝搬方向(D4)においてIDT電極(3)に並んでいる。多孔性金属シート(6)は、圧電性基板(2)の表面(21)上に配置されている。液体霧化システム(1;1a;1b;1c;1d)は、圧電性基板(2)の表面(21)上に位置し多孔性金属シート(6)に保持された対象液体(100)を表面弾性波によって霧化する。対象液体(100)は、少なくとも霧化される部位の厚みが多孔性金属シート(6)によって制御される。
【0093】
第1の態様に係る液体霧化システム(1;1a;1b;1c;1d)では、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子(103)を、より安定して発生させることが可能となる。
【0094】
第2の態様に係る液体霧化システム(1;1a;1b;1c;1d)は、第1の態様において、液体供給部(7)を更に備える。液体供給部(7)は、多孔性金属シート(6)の一部に対象液体(100)を供給する。
【0095】
第2の態様に係る液体システム(1;1a;1b;1c;1d)では、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子(103)を、より安定的に形成することが可能となる。
【0096】
第3の態様に係る液体霧化システム(1;1a)では、第2の態様において、液体供給部(7)は、多孔性金属シート(6)の表面(61)又は側面(第2側面64又は第3側面65又は第4側面66)から多孔性金属シート(6)に対象液体(100)を供給する。
【0097】
第3の態様に係る液体霧化システム(1;1a)では、多孔性金属シート(6)と液体供給部(7)との相対的な位置合わせが容易になる。
【0098】
第4の態様に係る液体霧化システム(1b;1c;1d)では、第2の態様において、圧電性基板(2)は、厚さ方向(D0)に貫通する貫通孔(25)を有する。液体供給部(7)は、圧電性基板(2)の裏面(22)側から貫通孔(25)を通して多孔性金属シート(6)に対象液体(100)を供給する。
【0099】
第4の態様に係る液体霧化システム(1b;1c;1d)では、多孔性金属シート(6)において対象液体(100)が供給される位置の自由度が高くなる。ここにおいて、第4の態様に係る液体霧化システム(1b;1c;1d)は、多孔性金属シート(6)における霧化ポイント(620)と多孔性金属シート(6)における液体供給ポイントとをずらすことができる。
【0100】
第5の態様に係る液体霧化システム(1a;1b;1c)では、第2~4の態様のいずれか一つにおいて、液体供給部(7)は、多孔性材料部(73)を更に備える。多孔性材料部(73)は、多孔性金属シート(6)の表面(61)に交差する方向に沿って対象液体(100)を輸送する。
【0101】
第5の態様に係る液体霧化システム(1a;1b;1c)では、多孔性材料部(73)の形状、材質等によって対象液体(100)の輸送量を制御することが可能となる。
【0102】
第6の態様に係る液体霧化システム(1a;1c)では、第5の態様において、多孔性材料部(73)の材料が多孔性金属シート(6)の材料と同じである。多孔性材料部(73)は、第1端(731)及び第2端(732)を有する。多孔性材料部(73)の第1端(731)は、液体供給部(7)の有する液体タンク(71)内の対象液体(100)に浸漬される。多孔性材料部(73)の第2端(732)は、多孔性金属シート(6)につながっている。
【0103】
第6の態様に係る液体霧化システム(1a;1c)では、多孔性材料部(73)の機械強度を向上させることが可能となる。また、第6の態様に係る液体霧化システム(1a;1c)では、多孔性材料部(73)での対象液体(100)の浸透速度と多孔性金属シート(6)での対象液体(100)の浸透速度との差を小さくすることが可能となる。
【0104】
第7の態様に係る液体霧化システム(1d)では、第2~4の態様のいずれか一つにおいて、液体供給部(7)は、調合部(74)を更に備える。調合部(74)は、複数種の液体から対象液体(100)を調合する。液体供給部(7)は、調合部(74)で調合した対象液体(100)を多孔性金属シート(6)へ供給する。
【0105】
第7の態様に係る液体霧化システム(1d)では、成分の異なる複数の対象液体(100)に対応可能となる。
【0106】
第8の態様に係る液体霧化システム(1;1a;1b;1c;1d)は、第1~7の態様のいずれか一つにおいて、部材(8)を更に備える。部材(8)は、多孔性金属シート(6)を圧電性基板(2)の表面(21)との間に挟む。
【0107】
第8の態様に係る液体霧化システム(1;1a;1b;1c;1d)では、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子(103)を、更に安定して発生させることが可能となる。
【0108】
第9の態様に係る液体霧化システム(1;1a;1b;1c;1d)では、第8の態様において、部材(8)は、厚さ方向(D0)から見て、多孔性金属シート(6)におけるIDT電極(3)側の端部(611)を露出させるように多孔性金属シート(6)を圧電性基板(2)の表面(21)との間に挟んでいる。
【0109】
第9の態様に係る液体霧化システム(1;1a;1b;1c;1d)では、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子(103)を、より安定して発生させることが可能となるとともに、霧化量を増やすことが可能となる。
【0110】
第10の態様に係る液体霧化システム(1;1a;1b;1c;1d)では、第8又は9の態様において、部材(8)は、第1部分(81)と、第2部分(82)と、を有する。第1部分(81)は、厚さ方向(D0)において多孔性金属シート(6)に重なる。第2部分(82)は、厚さ方向(D0)において多孔性金属シート(6)に重ならない。第2部分(82)と圧電性基板(2)の表面(21)との距離が、第1部分(81)と圧電性基板(2)の表面(21)との距離よりも短い。
【0111】
第10の態様に係る液体霧化システム(1;1a;1b;1c;1d)では、多孔性金属シート(6)の位置ずれを抑制することが可能となる。
【0112】
第11の態様に係る液体霧化システム(1;1a;1b;1c;1d)は、第10の態様において、中間部材(9)を更に備える。中間部材(9)は、部材(8)の第2部分(82)と圧電性基板(2)の表面(21)との間に介在する。中間部材(9)は、対象液体(100)をはじく性質を有する。
【0113】
第11の態様に係る液体霧化システム(1;1a;1b;1c;1d)では、対象液体(100)が多孔性金属シート(6)よりも広い範囲に広がるのを抑制することが可能となる。
【0114】
第12の態様に係る液体霧化システム(1;1a;1b;1c;1d)では、第1~11の態様のいずれか一つにおいて、多孔性金属シート(6)は、複数の繊維状金属(601)を含む多孔質金属である。
【0115】
第12の態様に係る液体霧化システム(1;1a;1b;1c;1d)では、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子(103)を、より安定した噴霧量で発生させることが可能となる。
【0116】
第13の態様に係る液体霧化システム(1;1a;1b;1c;1d)では、第1~12の態様のいずれか一つにおいて、多孔性金属シート(6)は、複数の開気孔を有する。複数の開気孔は、多孔性金属シート(6)においてIDT電極(3)に対向する第1面(6A)及び第1面(6A)とは異なる第2面(6B)で開放されている。
【0117】
第13の態様に係る液体霧化システム(1;1a;1b;1c;1d)では、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子(103)を、より安定した噴霧量で発生させることが可能となる。
【符号の説明】
【0118】
1、1a、1b、1c、1d 液体霧化システム
2 圧電性基板
21 表面
22 裏面
23 伝搬領域
25 貫通孔
3 IDT電極
31 第1櫛形電極
311 第1電極指
32 第2櫛形電極
321 第2電極指
5 SAWデバイス
6 多孔性金属シート
6A 第1面
6B 第2面
61 表面
62 裏面
63 第1側面
64 第2側面
65 第3側面
66 第4側面
601 繊維状金属
611 端部(第1端部)
620 霧化ポイント
7 液体供給部
71 液体タンク
73 多孔性材料部
731 第1端
732 第2端
74 調合部
8 部材
81 第1部分
82 第2部分
9 中間部材
100 対象液体
D0 厚さ方向
D4 伝搬方向