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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】端末処理装置および端末処理方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/04 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
B29C63/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019188121
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021062532
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390020477
【氏名又は名称】トライエンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003373
【氏名又は名称】弁理士法人石黒国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100124752
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 真司
(72)【発明者】
【氏名】岡 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】東 和也
(72)【発明者】
【氏名】永野 武臣
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-024928(JP,U)
【文献】特開2015-085485(JP,A)
【文献】実開昭63-007518(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00-63/48
B29C 65/00-65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の芯材の表面を覆った表皮材の端末を処理する端末処理装置において、
前記芯材の周縁に沿って前記端末の貼り付け範囲が設定されており、
所定のロボットに装着されて前記貼り付け範囲に沿って移動するように制御されるエンドエフェクタとして、
前記端末を前記貼り付け範囲に圧接させながら移動するように制御される圧接体と、前記圧接体に先行して前記圧接体とともに移動するように制御され、前記端末を前記貼り付け範囲に近付けるように折り曲げながら移動する先行体とを備え、
前記圧接体は、前記先行体により折り曲げられた前記端末を前記貼り付け範囲に圧接させながら移動するように制御され、
さらに、前記圧接体と前記先行体とは、前記貼り付け範囲において、前記圧接体による前記端末の圧接と、圧接されている部位よりも先行する部位における前記先行体による前記端末の折り曲げとが同時に進行するように制御されることを特徴とする端末処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の端末処理装置において、
前記圧接体の圧接力を調節する圧接調節部を備えることを特徴とする端末処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の端末処理装置において、
前記先行体の折り曲げ力を調節する折り曲げ調節部を備えることを特徴とする端末処理
装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の内のいずれか1つに記載の端末処理装置において、
前記ロボットに設置され、前記ロボットの動作に応じて3次元的に位置を変える別のロボットを備え、
この別のロボットは、前記エンドエフェクタとは別のエンドエフェクタとして、
前記端末または前記貼り付け範囲の少なくとも一方に接着剤を塗布しながら移動する接着剤噴射器を有することを特徴とする端末処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3の内のいずれか1つに記載の端末処理装置において、
前記ロボットに設置され、前記ロボットの動作に応じて3次元的に位置を変える別のロボットを備え、
この別のロボットは、前記エンドエフェクタとは別のエンドエフェクタとして、
前記端末または前記貼り付け範囲の少なくとも一方を溶融しながら移動する加熱部を有することを特徴とする端末処理装置。
【請求項6】
所定の芯材の表面を覆った表皮材の端末を処理する端末処理方法において、
前記芯材の周縁に沿って前記端末の貼り付け範囲が設定されており、
前記貼り付け範囲に沿って移動するように制御される圧接体により、前記端末を前記貼り付け範囲に沿って圧接させていく圧接工程を備え、
この圧接工程では、前記圧接体に先行して前記圧接体とともに前記貼り付け範囲に沿って移動するように制御される先行体により、前記端末を前記貼り付け範囲に近付けるように折り曲げ、
前記圧接体は、前記先行体により折り曲げられた前記端末を前記貼り付け範囲に圧接させながら移動し、
さらに、前記貼り付け範囲において、前記圧接体による前記端末の圧接と、圧接されている部位よりも先行する部位における前記先行体による前記端末の折り曲げとが同時に進行することを特徴とする端末処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、所定の芯材の表面を覆った表皮材の端末を処理する端末処理装置および端末処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、自動車の内装品の製造には、上記のような端末処理装置が利用されている。ここで、自動車の内装品は、例えば、樹脂製の芯材の表面をビニル樹脂や織布等の柔軟な表皮材で覆ったものであり、表皮材で覆った面が車室内に露出するように組み付けられる。
【0003】
ところで、従来の端末処理装置は、芯材の一面(表面)を表皮材で覆い、芯材の周縁にて表皮材の端末を折り返して反対側の面(裏面)に接着または溶着等している。
しかし、柔軟な表皮材の端末を折り返して、更に、接着または溶着等する作業は煩雑であり、表皮材の端末の折り返しには、芯材の周縁と略同一の長さを有する長大な巻き込み体を準備する必要がある(例えば、特許文献1~3参照。)。このため、特許文献1~3の装置はコストが高く、また、汎用性も低い。
【0004】
なお、長大な巻き込み体を用いることなく、ヘミング加工により、表皮材の端末を芯材の裏面に接着する装置も公知となっている(例えば、特許文献4参照。)。
しかし、特許文献4の装置は、芯材が薄く、芯材の周縁を表皮材とともに折り曲げる場合にのみ適用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-068348号公報
【文献】特開2016-068349号公報
【文献】特開2016-068723号公報
【文献】特開2010-280107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、所定の芯材の表面を覆った表皮材の端末を処理する端末処理装置において、長大な巻き込み体を不要としてコストダウンすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の端末処理装置は、所定の芯材の表面を覆った表皮材の端末を処理するものである。また、芯材の周縁に沿って端末の貼り付け範囲が設定されている。さらに、所定のロボットに装着されて貼り付け範囲に沿って移動するように制御されるエンドエフェクタとして、次の圧接体および先行体を備える。すなわち、圧接体は、端末を貼り付け範囲に圧接させながら移動ように制御され、先行体は、圧接体に先行して圧接体とともに移動するように制御され、端末を貼り付け範囲に近付けるように折り曲げながら移動する。そして、圧接体は、先行体により折り曲げられた端末を貼り付け範囲に圧接させながら移動するように制御されるさらに、圧接体と先行体とは、貼り付け範囲において、圧接体による端末の圧接と、圧接されている部位よりも先行する部位における先行体による端末の折り曲げとが同時に進行するように制御される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】端末処理装置の斜視図である(実施例)。
図2】端末処理装置の全体構成図である(実施例)。
図3】端末処理装置の要部構成図である(実施例)。
図4】端末が未処理の状態の被加工体を示す斜視図である(実施例)。
図5】端末の内、一部が処理されている状態の被加工体を示す斜視図である(実施例)。
図6】端末が処理されている状態の被加工体を示す斜視図である(実施例)。
図7図9図18の断面を側面から特定するための説明図である(実施例)。
図8図9図18の断面を正面から特定するための説明図である(実施例)。
図9図7のIX-IX断面図である(実施例)。
図10図7のX-X断面図である(実施例)。
図11図7のXI-XI断面図である(実施例)。
図12図7のXII-XII断面図である(実施例)。
図13図7のXIII-XIII断面図である(実施例)。
図14図7のXIV-XIV断面図である(実施例)。
図15図7のXV-XV断面図である(実施例)。
図16図7のXVI-XVI断面図である(実施例)。
図17図7のXVII-XVII断面図である(実施例)。
図18図7のXVIII-XVIII断面図である(実施例)。
図19】加熱部を示す斜視図である(実施例)。
図20】端末処理装置による処理を示すフローチャートである(実施例)。
図21】端末処理装置の要部構成図である(変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態の端末処理装置を、以下の実施例に基づき説明する。
【実施例
【0010】
〔実施例の構成〕
実施例の端末処理装置1の構成を、図1図19を用いて説明する。
端末処理装置1は、所定の芯材2の表面を覆った表皮材3の端末3aを処理するものであり、例えば、自動車の内装品の製造に利用される。ここで、自動車の内装品は、例えば、樹脂製の芯材2の表面2Aをビニル樹脂や織布等の柔軟な表皮材3で覆ったものであり(図4図6参照。)、表皮材3で覆った側が車室内に露出するように組み付けられる。
以下の説明では、芯材2の表面2Aを表皮材3で覆ったものを被加工体4と呼ぶことがある。
【0011】
より具体的には、端末処理装置1は、芯材2の周縁にて表皮材3の端末3aを折り返して、表面2Aとは反対側の裏面2Bに、表皮材3を溶着することで貼り付ける。つまり、被加工体4では、芯材2の周縁に沿って、芯材2の裏面2Bに端末3aの貼り付け範囲5が設定されており、端末処理装置1は、貼り付け範囲5に端末3aを溶着にて貼り付ける。
【0012】
以下、端末処理装置1の構成を、主に図1および図2を用いて説明する。
端末処理装置1は、第1、第2エンドエフェクタ7、8をそれぞれ有する第1、第2ロボット9、10、および、制御部11を備える(図1図2参照。)。ここで、第1エンドエフェクタ7は、後記する圧接体13および先行体14等であり、第2エンドエフェクタ8は、後記する加熱部15等である。また、制御部11は、各種信号の入力装置や出力装置、マイクロコンピュータ、および、記憶装置等を有する周知構造である。
【0013】
第1、第2ロボット9、10は、両方とも6つの関節を有する周知の多関節ロボットである。
まず、第1ロボット9は、例えば、水平面に対し第1軸9aが垂直となるように設置されている(図2参照。)。また、第1ロボット9の先端には、第1エンドエフェクタ7および第2ロボット10が設置される設置プレート17が取り付けられている。
次に、第2ロボット10は、設置プレート17に設けられた設置面17aに対し第1軸10aが垂直となるように設置されている。さらに、第2ロボット10の先端には、第2エンドエフェクタ8が設置されている。
【0014】
そして、制御部11は、第1ロボット9の動作を制御することにより、第1エンドエフェクタ7および第2ロボット10を移動させるとともに、第2ロボット10の動作を制御することにより、第2エンドエフェクタ8を第1エンドエフェクタ7に対して相対的に移動させる。
なお、第2ロボット10、第1、第2エンドエフェクタ7、8および設置プレート17の質量の合計は、第1ロボット9の可搬重量を超えないように設定されている。
【0015】
以下、第1エンドエフェクタ7としての圧接体13および先行体14、第2エンドエフェクタ8としての加熱部15について説明する(図3図18参照。)。
まず、圧接体13は、端末3aの貼付面3bを貼り付け範囲5に圧接させながら移動するものであり、先行体14は、圧接体13に先行して圧接体13とともに移動するものである。また、先行体14は、端末3aを貼り付け範囲5に近付けるように折り曲げながら移動し、圧接体13は、先行体14により折り曲げられた端末3aを貼り付け範囲5に圧接させながら移動する。
【0016】
ここで、貼り付け範囲5は、芯材2の裏面2Bにおいて芯材2の周縁に沿って形成された段面19を跨ぐように設定されている。なお、裏面2Bが上側を向くように芯材2を配置したときに、段面19よりも上側かつ周縁側に存在する面を段上面20と呼び、段面19よりも下側かつ反周縁側に存在する面を段下面21と呼ぶ。
【0017】
また、圧接体13は、所定の回転軸13aの周囲に回転自在に設けられており、回転軸13aの方向の両端部の内、一方側の端部が他の部分よりも径大になっている。そして、径大側の外周面13bと径小側の外周面13cとの半径の差は、段面19の高さに等しい。また、先行体14には、端末3aとの接触面14aが設けられている。なお、圧接体13において外周面13b、13c間の面を段面13dと呼ぶ。
【0018】
また、圧接体13および先行体14による端末3aの圧接を行っているとき、先行体14、芯材2および端末3aの進行方向に垂直な断面を先端から後端に向かって順次図示すると、例えば、図9図18のようになる。
ここで、図9図18は、芯材2の周縁に端末3が近付きながら圧接されていく様子を、先行体14の進行方向に垂直な切断面において、経時的に図示したものである。
【0019】
図9図18によれば、先行体14の後端側が通過するときほど、段上面20の切断縁と接触面14aの切断縁との間に形成される角度が小さくなる。このため、先行体14の進行に伴い、端末3aの切断縁は、段上面20の周縁側の端を中心として連続的に回転するように段上面20に近付いていく。
【0020】
そして、段上面20の切断縁と接触面14aの切断縁が略一致し、端末3aの貼付面3bは、段上面20の周縁側の端から反周縁側の端まで、全範囲にわたり段上面20に接触する(図16参照。)。
また、先行体14の通過後、圧接体13の外周面13cが段上面20に端末3aを圧接させながら、端末3aを介して段上面20上を転がりつつ進行する(図17および図18参照。)。このとき、外周面13bは、段下面21に端末3aを圧接させながら、端末3aを介して段下面21上を転がりつつ進行し、段面13dは、段面19に端末3aを圧接させながら、端末3aを介して段面19上を回転摺接しつつ進行する。
【0021】
また、端末処理装置1は、圧接体13の圧接力、先行体14の折り曲げ力をそれぞれ調節する圧接調節部22、折り曲げ調節部23を個別に備えており(図3参照。)、圧接調節部22、折り曲げ調節部23は、両方とも、設置プレート17に設置され、圧接体13および先行体14とともに第1エンドエフェクタ7をなす。
【0022】
圧接調節部22、折り曲げ調節部23は、例えば、両方とも、コイルスプリングであり、圧接体13、先行体14それぞれから受ける反力に応じて伸縮することで圧接力、折り曲げ力を調節する。
なお、圧接体13および先行体14の移動は、つまり、第1エンドエフェクタ7の移動は、第1ロボット9の動作を制御することにより実行される。
【0023】
次に、加熱部15は、端末3aを部分的に溶融しながら移動するものであり、具体的には、空気を加熱するヒータ15aと、ヒータ15aで加熱された空気を吹き出すノズル15b等からなる(図19参照。)。
ヒータ15aは、例えば、抵抗体への通電に伴い発生するジュール熱により空気を加熱する構成であり、第2ロボット10の先端に設けられた設置プレート26に取り付けられている(図1図19参照。)。そして、ヒータ15aでは、制御部11からの指令に応じて通電量を操作されて発熱量が変更される。また、ヒータ15aの入口側には、屈曲自在の配管15cが接続され、配管15cを介して、空気の供給源としてのブロワ15dと接続されている。
【0024】
また、ノズル15bは、ヒータ15aの出口側に接続されている。さらに、ノズル15bには、吹き出される空気の温度を検出する温度センサ15eが装着され、温度センサ15eの信号は制御部11に出力される(図2参照。)。これにより、ブロワ15dから送り出された空気は、ヒータ15aにて、制御部11が指示する温度に加熱されてノズル15bから吹き出される。なお、制御部11が指示する温度は、例えば、端末3aの素材の融点以上の温度である。
【0025】
また、加熱部15は、端末3aが接触面14aの接触を受ける直前において、貼付面3bに加熱後の空気を吹き付けることができるように、圧接体13や先行体14に対する相対配置を制御される。
なお、加熱部15の圧接体13や先行体14に対する相対配置、つまり、第2エンドエフェクタ8の第1エンドエフェクタ7に対する相対配置は、第2ロボット10の動作を制御することにより実行される。
【0026】
〔実施例の制御方法〕
実施例の端末処理装置1による制御方法の一例を、図20に示すフローチャートに基づき説明する。なお、実施例の制御方法は、圧接体13により端末3aを貼り付け範囲5に沿って圧接させていく圧接工程を含むものであり、後記するステップS4、S5が圧接工程に該当する。
【0027】
まず、ステップS1にて、第1エンドエフェクタ7、つまり、圧接体13および先行体14の被加工体4に対する初期位置の設定を開始する。また、ステップS2にて、第2エンドエフェクタ8の第1エンドエフェクタ7に対する相対配置、つまり、加熱部15の圧接体13および先行体14に対する相対配置の設定を開始する。
【0028】
初期位置の設定は、第1ロボット9の動作を制御することにより実行され、相対配置の設定は、第2ロボット10の動作を制御することにより実行される。そして、ステップS3にて、初期位置および相対配置の設定が完了する。
これにより、例えば、先行体14が端末3aの後端部に接触し、端末3aの後端部は、段上面20に対して略90°をなす状態になる(図9参照。)。また、ノズル15bの吹出し口が端末3aの後端部の貼付面3bに向かい合う。
【0029】
引き続き、ステップS4にて、第1、第2エンドエフェクタ7、8の動作を開始する。つまり、第1ロボット9の動作を制御することにより、圧接体13および先行体14を貼り付け範囲5に沿って移動させる。また、ブロワ15dを起動するとともにヒータ15aの発熱制御を開始する。
【0030】
これにより、貼付面3bには、貼り付け範囲5に沿うように、加熱された空気が連続的に吹き付けられて溶融されていく。また、溶融直後に、先行体14の接触面14aの接触が始まり、順次、図9図18に示す状態を経由して貼り付け範囲5に端末3aが近付いていき、最終的に、圧接体13により端末3aが貼り付け範囲5に圧接されて溶着される。
その後、ステップS5にて、第1エンドエフェクタ7が最終位置に到達すると、ステップS6にて、第1、第2エンドエフェクタ7、8の動作を終了する。
【0031】
〔実施例の効果〕
実施例の端末処理装置1は、第1ロボット9により貼り付け範囲5に沿って移動するように制御される第1エンドエフェクタ7として、次の圧接体13および先行体14を備える。すなわち、圧接体13は、端末3aを貼り付け範囲5に圧接させながら移動し、先行体14は、圧接体13に先行して圧接体13とともに移動し、端末3aを貼り付け範囲5に近付けるように折り曲げながら移動する。そして、圧接体13は、先行体14により折り曲げられた端末3aを貼り付け範囲5に圧接させながら移動する。
【0032】
これにより、第1ロボット9に対する制御によって圧接体13および先行体14を、貼り付け範囲5に沿って3次元的に移動させることで、端末3aを貼り付け範囲5に圧接していくことができる。また、先行体14を圧接体13に先行させることで、圧接体13による圧接の前に、端末3aを貼り付け範囲5に予め近付けておくことができる。このため、圧接体13による端末3aの圧接を安定させることができる。
以上により、従来のような長大な巻込み体を用いなくても、被加工体4に関し、図4図6に示すような状態を経由することで、端末3aの圧接を安定させることができる。このため、端末処理装置1をコストダウンすることができる。
【0033】
また、端末処理装置1は、圧接体13の圧接力を調節する圧接調節部22を備える。
これにより、表皮材3の端末3aの柔軟性や圧接の態様等に応じて、圧接力を調節することができる。このため、処理後の仕上がり品質を高めることができる。
【0034】
また、端末処理装置1は、先行体14の折り曲げ力を調節する折り曲げ調節部23を備える。
これにより、折り曲げ力を調節することで、端末3aを、圧接体13による圧接に好適な状態に調節することができる。このため、加工精度を高めることができる。
【0035】
また、端末処理装置1は、第1ロボット9とは別の第2ロボット10を備え、第2ロボット10は、第1ロボット9に設置され、第1ロボット9の動作に応じて3次元的に位置を変える。そして、第2ロボット10は、第1エンドエフェクタ7とは別の第2エンドエフェクタ8として、端末3aの貼付面3bを溶融しながら移動する加熱部15を有する。
これにより、圧接体13による圧接の直前に、必要箇所を溶着に好適な溶融状態にすることができる。このため、必要箇所を溶融する工程を簡略化できる。
【0036】
〔変形例〕
実施例は具体的な一例を開示するものであり、本発明は、実施例に限定されない。
例えば、実施例の端末処理装置1によれば、加熱部15は、端末3aの貼付面3bを溶融することにより端末3aを貼り付け範囲5に溶着していたが、芯材2の側の貼り付け範囲5に加熱後の空気を吹き付けて貼り付け範囲5を溶融することで溶着を実行してもよい。
【0037】
さらに、第2エンドエフェクタ8として、加熱部15に替えて、接着剤噴射器を具備させてもよい。すなわち、接着剤噴射器を、端末3aの貼付面3bまたは貼り付け範囲5の少なくとも一方に接着剤を塗布させながら移動させることにより、端末3aの貼付面3bと貼り付け範囲5とを接着させてもよい。
この場合、圧接体13による圧接の直前に、接着剤を必要箇所に塗布することができるので、必要箇所に接着剤を塗布する工程を簡略化できる。
【0038】
また、実施例の端末処理装置1によれば、圧接体13は、回転軸13aの周囲に回転自在に設けられており、圧接体13の外周面13b、13cはそれぞれ段下面21、段上面20に端末3aを圧接させながら、端末3a上を転がりつつ進行していたが、圧接体13の態様は、このような態様に限定されない。
例えば、圧接体13を回転不能とし、端末3aを貼り付け範囲5に圧接させつつ、端末3aに摺接させながら進行させてもよい。また、圧接体13を回転自在に設ける場合、例えば、電動モータの出力により回転をアシストしてもよい。
【0039】
また、実施例の端末処理装置1によれば、圧接調節部22、折り曲げ調節部23は、それぞれ、コイルスプリングであったが、圧接調節部22、折り曲げ調節部23の態様は、このような態様に限定されない。
例えば、圧接調節部22、折り曲げ調節部23として、エアシリンダやソレノイドを採用し、制御部11に、圧接力や折り曲げ力を制御させてもよい。
【0040】
また、実施例の端末処理装置1は、圧接体13の一方の進行側にのみ先行体14を有していたが、反対側にも先行体14を配置してもよい(図21参照。)。
この場合、先行体14が存在する両側、いずれの側に圧接体13を進行させても、圧接を安定させることができるので、第1エンドエフェクタ7の制御に対する自由度を高めることができる。
【0041】
また、実施例の端末処理装置1は、第1エンドエフェクタ7として、圧接体13および先行体14の組み合わせを、1組、有していたが、圧接体13および先行体14の組み合わせを、2組以上、具備させてもよい。また、第1エンドエフェクタ7として、圧接体13および先行体14の組み合わせ以外に、巻き込み体を具備させ、端末3aの一部を巻き込み体により貼り付け範囲5に圧接するようにしてもよい。
【0042】
また、実施例の端末処理装置1によれば、貼り付け範囲5は、芯材2の裏面2Bにおいて、段面19を跨ぐように、つまり、段面19、段上面20および段下面21を含むように設定されていたが、貼り付け範囲5は、このような態様に限定されない。例えば、貼り付け範囲5を、段面19および段上面20に設定し、段下面21を含まないようにしてもよく、段上面20に設定し、段面19および段下面21を含まないようにしてもよい。
【0043】
また、裏面2Bの周縁に段面19が形成されておらず、裏面2Bの周縁が平坦な面である場合に、平坦な裏面2Bの周縁に貼り付け範囲5を設定してもよい。また、裏面2Bではなく、平坦な表面2Aの周縁に貼り付け範囲5を設定してもよく、芯材2の周端面、つまり、側面に貼り付け範囲5を設定してもよい。そして、平坦な面に端末3aを圧接する場合には、圧接体13の外周面を、回転軸13aを軸とする単一の円筒面とし、単一の円筒面により、端末3aを貼り付け範囲5に圧接してもよい。
さらに、実施例の端末処理装置1は、自動車の内装品の製造に利用されていたが、自動車以外の車両や航空機、船舶の内装品の製造に利用してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 端末処理装置 2 芯材 2A 表面 3 表皮材 3a 端末 5 貼り付け範囲 7 第1エンドエフェクタ(エンドエフェクタ) 9 第1ロボット(ロボット) 13 圧接体 14 先行体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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