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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】粉体供給装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 65/46 20060101AFI20230623BHJP
   B65G 33/18 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
B65G65/46 B
B65G33/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019089847
(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公開番号】P2020186074
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】末次 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宍田 佳謙
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 佳幾
(72)【発明者】
【氏名】畑中 基
(72)【発明者】
【氏名】平松 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】福田 一人
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-181614(JP,A)
【文献】実開昭63-041015(JP,U)
【文献】特開平10-045233(JP,A)
【文献】実開昭61-075847(JP,U)
【文献】特開昭55-111329(JP,A)
【文献】特開平08-119404(JP,A)
【文献】米国特許第6050456(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 65/46
B65G 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体を連続的に生成する加圧成形機構に粉体材料を供給する粉体供給装置であって、
前記粉体材料が供給される導入口と、前記粉体材料が排出される排出口とを有する筐体と、
前記筐体の内部に配置され、回転駆動されることにより、前記排出口に前記粉体材料を搬送する第1スクリューと、
前記筐体の内部に前記第1スクリューと並列に配置され、前記第1スクリューと反対方向に回転駆動されることにより、前記排出口に前記粉体材料を搬送する第2スクリューと、
前記第1スクリューと同じ方向に回転駆動されることにより、前記排出口に前記粉体材料を搬送する第3スクリューと、
前記第2スクリューと同じ方向に回転駆動されることにより、前記排出口に前記粉体材料を搬送する第4スクリューと、
前記筐体の外部に配置され、前記第1スクリューを回転駆動する第1モータ、および前記第2スクリューを回転駆動する第2モータと、
を備え、
前記筐体の内部の、前記粉体材料の搬送方向から見たときに中央より一方側に前記第1スクリューが配置され、前記搬送方向から見たときに中央より他方側に前記第2スクリューが配置され、前記一方側において、前記第1スクリューの内側に前記第3スクリューが配置され、前記他方側において、前記第2スクリューの内側に前記第4スクリューが配置され
粉体供給装置。
【請求項2】
前記第1スクリューは、前記搬送方向から見たときに時計回りに回転駆動され、
前記第2スクリューは、前記搬送方向から見たときに反時計回りに回転駆動される
請求項1に記載の粉体供給装置。
【請求項3】
前記第1スクリューは、第1スクリューシャフトと、前記第1スクリューシャフトの外周に右ねじの螺旋状に形成された第1フライトと、を有し、
前記第2スクリューは、第2スクリューシャフトと、前記第2スクリューシャフトの外周に左ねじの螺旋状に形成された第2フライトと、を有する
請求項2に記載の粉体供給装置。
【請求項4】
前記第3スクリューは、第1スクリューシャフトと、前記第1スクリューシャフトの外周に右ねじの螺旋状に形成された第1フライトと、を有し、
前記第4スクリューは、第2スクリューシャフトと、前記第2スクリューシャフトの外周に左ねじの螺旋状に形成された第2フライトと、を有する
請求項2または3に記載の粉体供給装置。
【請求項5】
さらに、
前記第3スクリューを回転駆動する第3モータと、
前記第4スクリューを回転駆動する第4モータと、
を備え、
前記第3モータおよび前記第4モータの回転数は、前記第1モータおよび前記第2モータの回転数よりも小さい
請求項1から4のいずれか1項に記載の粉体供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックスまたは金属等の粉体材料を加圧成形した粉末成形体を、その粉末の融点以下の温度で焼結することにより、粉体間に結合を生じさせて焼結体を得ることができる。粉末成形体の製法にはさまざまな方法がある。たとえば、特許文献1に示すように、スクリューフィーダ出口に、フィーダスクリューとともに回転する分散羽根を配置し、出口に滞留した材料を分散羽根で削り出すように排出する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-63849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量の均一性については、未だ改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の粉体供給装置は、
成形体を連続的に生成する加圧成形機構に粉体材料を供給する粉体供給装置であって、
前記粉体材料が供給される導入口と、前記粉体材料が排出される排出口とを有する筐体と、
前記筐体の内部に配置され、回転駆動されることにより、回転軸方向に前記粉体材料を搬送する第1スクリューと、
前記筐体の内部に前記第1スクリューと並列に配置され、前記第1スクリューと反対方向に回転駆動されることにより、回転軸方向に前記粉体材料を搬送する第2スクリューと、
前記筐体の外部に配置され、前記第1スクリューを回転駆動する第1モータ、および前記第2スクリューを回転駆動する第2モータと、
を備え、
前記筐体の内部において、前記粉体材料の搬送方向から見たときに中央より一方側に前記第1スクリューが配置され、前記搬送方向から見たときに中央より他方側に前記第2スクリューが配置される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量の均一性を向上させた粉体供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の粉体供給装置を上から見た模式図である。
図2図1の粉体供給装置のA-A’断面図である。
図3】2本のスクリューが同じ方向に回転する場合の、筐体内部を排出口側から見たときの図である。
図4】2本のスクリューが異なる方向に回転する場合の、筐体内部を排出口側から見たときの図である。
図5】実施例1のスクリューの構成および配置を示す図である。
図6図5の粉体供給装置の筐体の内部を排出口側から見たときの図である。
図7】実施例2のスクリューの構成および配置を示す図である。
図8図7の粉体供給装置の筐体の内部を排出口側から見たときの図である。
図9】実施例1および比較例1~2の、粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量割合の分布を示すグラフである。
図10】実施例1および比較例1~2の、幅方向における成形体密度の分布を示すグラフである。
図11】実施例2および実施例3の、粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量割合の分布を示すグラフである。
図12】実施例2および実施例3の、幅方向における成形体密度の分布を示すグラフである。
図13】実施例1~3、および比較例1~2の粉体材料の測定結果を集計した表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示に至った経緯)
セラミックスや金属の粉体材料を加圧成形した粉末成形体を、その粉末の融点以下の温度で焼結することにより、粉体間に結合が生じて焼結体を得ることができる。これは、窯業製品、セラミックス、粉末冶金、またはサーメット等を製造する主要な方法である。
【0009】
焼結方法として、常圧焼結法、ガス圧焼結法、ホットプレス法、熱間静水圧(HIP)法、通電加圧法、ミリ波法等があり、成形体を加圧状態で加熱することが有効である。ただし、これらの焼結方法は、バッチ処理のため生産性が低いという点で課題がある。そこで、生産性を高める焼結方法として、連続的に処理できるロールタイプによる焼結方法が広く知られている。ロールタイプにおいては、一対のロールの隙間に加圧対象物を挿通することで、加圧処理と、加圧処理後に取り出す工程とを連続して行うことが可能であり、高い生産性を得ることができる。
【0010】
また、焼結処理を施す成形体の製法にもいくつかの方法がある。焼結方法と同様に、生産性を高めるためにバッチ処理ではなく連続処理が求められる。連続処理による成形体の製法には、たとえば、粉体材料を、ホッパーからベルトコンベア上に一様にのせた後、曲面を持つ押し型により、粉体材料を加圧しながらベルトコンベアを動作させることによって、連続的に圧縮成形する方法がある。
【0011】
成形体中に含まれる気体により焼結後に空隙が発生するのを抑制するため、または焼結時の熱や荷重の伝達にかかわる粉体材料同士の接触面積を増加させるため、成形体の密度は高いことが望ましい。しかし、この方法の場合、粉体材料の逃げのために与えられる荷重が小さく、成形体の密度が低くなってしまうという課題がある。
【0012】
また、slip casting法のように、粉体材料に適当な分散剤(たとえば、アルギン酸アンモン)を加えて泥漿を作り、石膏の型に流し込み、泥漿中の水分を石膏型に吸収させて残った成形体を取り出す方法もある。この方法は、金型やプレスを用いないため設備費を抑制することができるが、成形体の密度の低下や、分散剤の残留による成形体の純度の低下が課題となる。
【0013】
密度の高い成形体を連続的に得る方法としては、一対のロールの隙間に粉体材料を押し入れて、連続して圧縮成形する方法が挙げられる。このような方法として、ロールを水平に配置し、このロールの上部にホッパーを配置し、重力を用いてロール間に粉体材料を供給する方法がある。しかし、より成形体の密度を高くするには、重力のみで材料を供給するのでは荷重不足となる場合がある。また、このような配置では、成形体が垂直に排出されるため、成形体の回収に工夫が必要となる。したがって、ロールを上下に配置して、上下のロールの間にスクリューフィーダにより連続して材料を高圧力で供給し、ロールから出てくる成形体をコンベア等で回収する方法が望ましいと考えられる。
【0014】
上述したような用途で用いられるスクリューフィーダには、ロールに対して均一に材料を供給することが求められている。このため、特許文献1に示す方法が考案されている。
【0015】
しかしながら、特許文献1に示す方法では、粉体材料を供給する際、スクリューフィーダの筐体壁との摩擦のため、筐体壁近傍を流れる粉体材料は、筐体壁から離れた中央部を流れる粉体材料に比べて流速が低下する。また、スクリューフィーダ出口に分散羽根を配置すると、ロール間に材料を供給する際の圧力損失が生じることがあり、成形体の密度を低下させる要因となる。このように、特許文献1に示す方法において、単位時間あたりの材料供給量の均一性を向上することは可能であるが、ロールの幅方向の材料供給量の均一性が考慮されていないため、幅方向の材料供給量のばらつきが課題となっている。
【0016】
そこで、本発明者らは、粉体材料供給時の大きな圧力損失を生じさせることなく、ロールの幅方向の材料供給量の均一性を向上させための粉体供給装置を検討し、以下の構成を考案した。
【0017】
本開示の一態様にかかる粉体供給装置は、
成形体を連続的に生成する加圧成形機構に粉体材料を供給する粉体供給装置であって、
前記粉体材料が供給される導入口と、前記粉体材料が排出される排出口とを有する筐体と、
前記筐体の内部に配置され、回転駆動されることにより、前記排出口に前記粉体材料を搬送する第1スクリューと、
前記筐体の内部に前記第1スクリューと並列に配置され、前記第1スクリューと反対方向に回転駆動されることにより、前記排出口に前記粉体材料を搬送する第2スクリューと、
前記筐体の外部に配置され、前記第1スクリューを回転駆動する第1モータ、および前記第2スクリューを回転駆動する第2モータと、
を備え、
前記筐体の内部において、前記粉体材料の搬送方向から見たときに中央より一方側に前記第1スクリューが配置され、前記搬送方向から見たときに中央より他方側に前記第2スクリューが配置される。
【0018】
このような構成により、粉体供給装置の幅方向において粉体材料の供給量の均一性を向上することができる。また、粉体材料の供給量の均一性が向上することで、成形体の密度の均一性を向上することができる。
【0019】
前記第1スクリューは、前記搬送方向から見たときに時計回りに回転駆動され、
前記第2スクリューは、前記搬送方向から見たときに反時計回りに回転駆動されていてもよい。
【0020】
このような構成により、筐体内の粉体材料の密度を均一にすることができ、粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量の均一性を向上することができる。
【0021】
前記第1スクリューは、第1スクリューシャフトと前記第1スクリューシャフトの外周に右ねじの螺旋状に形成された第1フライトとを有し、
前記第2スクリューは、第2スクリューシャフトと前記第2スクリューシャフトの外周に左ねじの螺旋状に形成された第2フライトとを有していてもよい。
【0022】
このような構成により、粉体供給装置の幅方向において、粉体材料の供給量および成形体の密度の均一性をさらに向上することができる。
【0023】
さらに、
前記筐体の内部の前記一方側において、前記第1スクリューの内側に配置され、前記第1スクリューと同じ方向に回転駆動されることにより、前記排出口に前記粉体材料を搬送する第3スクリューと、
前記筐体の内部の前記他方側において、前記第2スクリューの内側に配置され、前記第2スクリューと同じ方向に回転駆動されることにより、前記排出口に前記粉体材料を搬送する第4スクリューと、
を備えていてもよい。
【0024】
このような構成により、粉体供給装置の幅方向において、粉体材料の供給量および成形体の密度の均一性をさらに向上することができる。
【0025】
さらに、
前記第3スクリューを回転駆動する第3モータと、
前記第4スクリューを回転駆動する第4モータと、
を備え、
前記第3モータおよび前記第4モータの回転数は、前記第1モータおよび前記第2モータの回転数よりも小さくてもよい。
【0026】
このような構成により、粉体供給装置の幅方向において、粉体材料の供給量および成形体の密度の均一性をさらに向上することができる。
【0027】
(実施の形態1)
[全体構成]
図1は、本開示の粉体供給装置を上から見た模式図である。図2は、図1の粉体供給装置のA-A’断面図である。なお、以下の説明において、各図におけるX方向を幅方向、Y方向を鉛直方向、Z方向を粉体材料供給方向と称することもある。
【0028】
粉体供給装置100は、図1および図2に示すように、成形体を連続的に生成する加圧成形機構11に、矢印2で示す粉体材料2を供給する。粉体供給装置100は、粉体材料2の導入口3と排出口4とを有する筐体1と、第1スクリュー5と、第2スクリュー6と、第1モータ7と、第2モータ8とを備える。第1スクリュー5および第2スクリュー6は、筐体1の内部に幅方向に並列に配置され、回転駆動されることにより回転軸方向(Z方向)に粉体材料2を搬送する。すなわち、粉体材料2は、第1スクリュー5および第2スクリュー6によりZ方向に搬送される。第1モータ7は筐体1の外部に配置され、第1スクリュー5を回転駆動する。同様に、第2モータ8は筐体1の外部に配置され、第2スクリュー6を回転駆動する。また、粉体供給装置100は、加圧成形機構11に隣接して配置される。加圧成形機構11は、鉛直方向に並べて配置された2本のロール12、13を有する。図2に示すように、2本のロール12、13の間に粉体供給装置100の排出口4から粉体材料2が供給され、成形体14が形成される。このように、粉体供給装置100から供給された粉体材料2は、加圧成形機構11によって成形体14に形作られる。
【0029】
<導入口>
導入口3は、図2に示すように、鉛直方向において筐体1の上側に設けられ、粉体材料2を筐体1の内部へ導入する。また、導入口3には、ホッパー3aが設けられており、ホッパー3aの開口部より粉体材料2が投入される。
【0030】
<排出口>
排出口4は、筐体1の加圧成形機構11側の端部に設けられる。排出口4から、加圧成形機構11のロール12、13の間に粉体材料2が水平方向に排出される。排出口4は、図2に示すように、ロール12、13の間に粉体材料2を供給する。また、筐体1は排出口4に向かって薄くなるように形成されている。
【0031】
<スクリュー>
図1に示すように、第1スクリュー5は、筐体1の内部に配置され、回転駆動されることにより、回転軸方向(Z方向)に粉体材料2を搬送する。また、第2スクリュー6は、筐体1の内部に第1スクリュー5と並列に配置され、第1スクリューと反対方向に回転駆動されることにより、回転軸方向(Z方向)に粉体材料2を搬送する。第1スクリュー5および第2スクリュー6はそれぞれ、回転軸が材料供給方向と平行になるよう配置されている。筐体1の内部において、粉体材料2の搬送方向から見たときに中央より一方側、すなわち、筐体1の内部の幅方向における中心線20より下側の部分に第1スクリュー5が配置されている。また、粉体材料2の搬送方向から見たときに中央より他方側、すなわち、筐体1の内部の中心線20より上側の部分に第2スクリュー6が配置されている。
【0032】
第1スクリュー5と第2スクリュー6は、それぞれ反対の方向に回転することにより、粉体材料2を材料供給方向に搬送する。たとえば、第1スクリュー5は、第1スクリューシャフト5aおよび第1フライト5bを有し、排出口4から材料供給方向に向かって見たときに、時計回りに回転駆動することにより、粉体材料2を材料供給方向に搬送する。第2スクリュー6は、第2スクリューシャフト6aおよび第2フライト6bを有し、排出口4から材料供給方向に向かって見たときに、反時計回り、すなわち第1スクリュー5と反対方向に回転駆動することにより、粉体材料2を材料供給方向に搬送する。
【0033】
第1スクリュー5は、第1スクリューシャフト5aに右ねじの螺旋状に形成された第1フライト5bを有し、第2スクリュー6は、第2スクリューシャフト6aに左ねじの螺旋状に形成された第2フライト6bを有する。より具体的には、第1フライト5bは、第1スクリューシャフト5aの周囲を先端5cに向かって時計回りに巻回するように設けられている。第2フライト6bは、第2スクリューシャフト6aの周囲を先端6cに向かって反時計回りに巻回するように設けられている。また、フライト5b、6bはそれぞれ、材料供給方向に略等間隔になるようにスクリューシャフト5a、6aに巻回されているとよい。
【0034】
このような構成により、第1スクリュー5は、左ねじの回転方向に回転させると粉体材料2を左ねじの進む方向に搬送し、第2スクリュー6は、右ねじの回転方向に回転させると粉体材料2を右ねじの進む方向に搬送する。本実施の形態において、第1スクリュー5の形状のスクリューの種類を左ねじ、第2スクリュー6の形状のスクリューの種類を右ねじと称する。
【0035】
なお、本実施の形態において、粉体供給装置100は、第1スクリュー5および第2スクリュー6の2つのスクリューを有するが、スクリューの数はこれに限らず、3つ以上であってもよい。
【0036】
<モータ>
第1モータ7は、第1スクリュー5を回転駆動させる。また、第2モータ8は、第2スクリュー6を回転駆動させる。第1モータ7および第2モータ8の回転数は、制御部10によりそれぞれ独立に制御することができる。
【0037】
ここで、図3および図4を参照して、並列に配置された2本のスクリューの回転方向による、幅方向における粉体材料供給量の分布の変化について説明する。図3は、2本のスクリューが同じ方向に回転する場合の、筐体内部を排出口側から見たときの図である。図4は、2本のスクリューが異なる方向に回転する場合の、筐体内部を排出口側から見たときの図である。
【0038】
筐体1の内壁15近傍を流れる粉体材料2は、内壁15との摩擦を受けるため、内壁15から離れた位置に比べて流速が低下する。また、重力Gの影響を受けるため、粉体材料2は、筐体1の内部において下層に比べ上層は密度が低い傾向にある。すなわち、図3および図4において、下層の粉体材料2cの密度に比べて、中層の粉体材料2bの密度は小さくなり、上層の粉体材料2aの密度はさらに小さくなる。
【0039】
図3では、排出口4側から見たときに、スクリュー51、52はそれぞれ、矢印51a、52aで示す時計回りに回転するよう配置されている。この場合、破線で囲まれた領域Bは、内壁15の近傍であるため、摩擦によって粉体材料2の流速は小さくなっており、スクリュー51によって下層の粉体材料2cが上方に押し上げられるため、粉体材料2の密度が高くなっている。一方、破線で囲まれた領域Cは、内壁15の近傍であるため、摩擦によって粉体材料2の流速は小さくなっており、スクリュー52によって上層の粉体材料2aが下方に押し下げられるため、粉体材料2の密度が小さくなっている。このように、筐体1の内部において粉体材料2の密度が均一とならないため、幅方向における粉体材料の供給量の均一性も低下する。
【0040】
一方、図4では、排出口4側から見たときに、スクリュー53は矢印53aで示す時計回りに回転し、スクリュー54は矢印54aで示す反時計回りに回転するよう配置されている。この場合、破線で囲まれた領域Dは、内壁15の近傍であるため、摩擦によって粉体材料2の流速は小さくなっており、スクリュー53によって下層の粉体材料2cが上方に押し上げられるため粉体材料2の密度が高くなっている。また、破線で囲まれた領域Eは、内壁15の近傍であるため、摩擦によって粉体材料2の流速は小さくなっており、スクリュー54によって下層の粉体材料2cが上方に押し上げられるため粉体材料2の密度が高くなっている。このように、スクリュー53、54の回転方向を調整することにより、筐体1の内部における粉体材料2の密度が均一になる。このため、幅方向における粉体材料の供給量の均一性を向上することができる。
【0041】
[スクリューの配置および形状による粉体材料の供給量分布の比較]
実施例1~3、および比較例1~2における、粉体供給装置100の幅方向における粉体材料の供給量分布、および粉体供給装置100の幅方向の成形体の密度分布を比較して検討する。
【0042】
実施例1~3および比較例1~2では、シリコン酸化物を主材料とする粉体材料を用いるものとする。なお、粉体供給装置100の構成、および粉体材料の構成は、一部を除き実施例1~3および比較例1~2において共通である。
【0043】
<粉体供給装置100の構成>
図5は、実施例1のスクリューの構成および配置を示す図である。図6は、図5の粉体供給装置の筐体の内部を排出口側から見たときの図である。図6に示すように、筐体1の内部の鉛直方向の高さh1が50mmであり、筐体1の内部の幅方向の大きさw1が100mmである。また、図5に示すように、筐体1の内部には、第1スクリュー5および第2スクリュー6が幅方向に並んで配置されている。第1スクリュー5および第2スクリュー6のスクリューシャフト5a、6aの直径φ1が20mmであり、粉体材料を搬送するためのフライト5b、6bのスクリューシャフト5a、6aからの高さh2が10mmである。第1スクリュー5および第2スクリュー6は、図5に示すように、スクリューシャフト5a、6aの軸線23、24の間の距離d1が50mmになるよう配置されている。また、図6に示すように、筐体1の内壁15からフライト5b、6bまでの距離d2が5mm、フライト5b、6b間の距離h3が10mmになるよう配置されている。第1スクリュー5および第2スクリュー6の先端5c、6cから加圧成形機構11に設けられた2つのロール12、13の最小ギャップライン18までの距離d3が200mmである。2つのロール12、13の半径r1はそれぞれ150mmである。図示されていない2つのロール12、13の最小ギャップの間隔は4mmである。
【0044】
<粉体材料>
粉体材料は、シリコン酸化物を主材料とするものを用いる。また、粉体材料は篩を使用して、0.1mm以上2.0mm未満に分級し、かさ密度は0.8g/ccである。
【0045】
上述の構成の粉体供給装置100および粉体材料により、粉体供給装置100から加圧成形機構11に供給される直前の、すなわち排出口4から排出される、粉体供給装置100の幅方向における粉体材料の供給量の分布と、粉体供給装置100の幅方向における加圧成形機構11を通過した後の成形体14の密度の分布を測定した。
【0046】
<実施例1>
図6に示すように、実施例1では、矢印50のように排出口4から材料供給方向に見たときに、時計回りの方向に回転駆動する第1スクリュー5と、矢印60のように排出口4から材料供給方向に見たときに反時計回りの方向に回転する第2スクリュー6との2本のスクリューが幅方向に並列に配置されている。第1スクリュー5の種類は左ねじであり、第2スクリュー6の種類は右ねじである。また、第1モータ7は、排出口4から供給される粉体材料の量が、1800g/分となるように第1スクリュー5の回転数を調整する。同様に、第2モータ8は、排出口4から供給される粉体材料の量が、1800g/分となるように第2スクリュー6の回転数を調整する。すなわち、第1モータ7および第2モータ8の回転数は、それぞれ480rpmに設定されている。なお、粉体供給装置100の幅方向における粉体材料の供給量割合の分布は、全供給量に対する幅方向25mm毎の供給量割合を測定した。また、粉体供給装置100の幅方向における成形体14の密度の分布は、幅方向10mm毎に成形体の密度を測定した。
【0047】
<比較例1>
比較例1では、材料供給方向に向かって反時計回りに回転する2本のスクリューが並列に配置され、実施例1と同様の評価を行った。比較例1のスクリューの種類はどちらも左ねじである。粉体供給装置におけるその他の寸法、配置およびモータの回転数は、実施例1と同様である。
【0048】
<比較例2>
比較例2では、材料供給方向に向かって時計回りに回転する2本のスクリューが並列に配置され、実施例1と同様の評価を行った。比較例2のスクリューの種類はどちらも右ねじである。粉体供給装置におけるその他の寸法、配置およびモータの回転数は、実施例1と同様である。
【0049】
<実施例2>
図7は、実施例2のスクリューの構成および配置を示す図である。図8は、図7の粉体供給装置の筐体の内部を排出口側から見たときの図である。図7および図8に示すように、実施例2では、筐体1の内部の幅w2が200mmに拡大され、さらに、第3スクリュー25および第4スクリュー26を有する。第3スクリュー25は、筐体1の内部において、粉体材料2の搬送方向から見たときに中央より一方側において、第1スクリュー5の内側に配置され、第1スクリュー5と同じ方向に回転駆動されることにより、導入口3から排出口4に向かう方向に粉体材料を搬送する。また、第4スクリュー26は、筐体1の内部において、粉体材料2の搬送方向から見たときに中央より他方側において、第2スクリュー6の内側に配置され、第2スクリュー6と同じ方向に回転駆動されることにより、導入口3から排出口4に向かう方向に粉体材料を搬送する。第3スクリュー25は第1スクリュー5と同様の形状であり、第4スクリュー26は第2スクリュー6と同様の形状である。第1スクリュー5および第3スクリュー25の種類は左ねじであり、第2スクリュー6および第4スクリュー26の種類は右ねじである。
【0050】
したがって、第1スクリュー5および第3スクリュー25は、矢印50および矢印250で示す材料供給方向に向かって時計回りの方向に回転駆動される。第2スクリュー6および第4スクリュー26は、矢印60および矢印260で示す材料供給方向に向かって時計回りの方向に回転駆動される。また、図示されていないが、粉体供給装置100は、第3スクリュー25を回転駆動する第3モータと、第4スクリュー26を回転駆動する第4モータとを備える。実施例2において、第1モータ7、第2モータ8、第3モータ、および第4モータは、それぞれ同じ回転数に設定されており、加圧成形機構11に供給される直前の粉体材料2の供給量が3600g/分となるように調整されている。すなわち、第1モータ7、第2モータ8、第3モータ、および第4モータの回転数は450rpmに設定されている。なお、粉体供給装置100の幅方向における粉体材料の供給量割合の分布は、全供給量に対する幅方向25mm毎の供給量割合を測定した。また、粉体供給装置100の幅方向における成形体14の密度の分布は、幅方向20mm毎に成形体の密度を測定した。
【0051】
<実施例3>
実施例3では、第3モータおよび第4モータの回転数を、第1モータ7および第2モータ8の回転数よりも5%小さい値に設定し、実施例2と同様の評価を行った。すなわち、第3モータおよび第4モータの回転数が428rpmに設定されている。粉体供給装置100におけるその他の寸法、配置およびモータの回転数は、実施例2と同様である。
【0052】
[実施例1~3および比較例1~2の比較]
図9および図10を参照して、実施例1および比較例1~2における粉体材料の供給量割合の分布、および成形体の密度の分布について検討する。図9は、実施例1および比較例1~2の、粉体供給装置の幅方向における粉体材料の供給量割合の分布を示すグラフである。なお、粉体材料の供給量割合の測定方法は、次のとおりである。粉体供給装置100を加圧成形機構11から離した状態で、排出口4から排出される粉体材料を受けられる位置に、開口部の幅が25mmである4つの容器を幅方向に隙間なく並べる。この状態で、一定時間粉体材料を排出する。排出された粉体材料はすべて4つの容器に回収されているので、粉体材料の全排出量および各容器内に回収された粉体材料の重量を測定することにより、粉体材料の供給量割合の分布を計算している。なお、図9において、横軸は中心線20を0としたときの幅方向における位置を表し、各容器の幅方向における中心位置に値をプロットしている。また、縦軸は粉体材料の供給量割合を単位wt%で表している。
【0053】
図10は、実施例1および比較例1~2の、幅方向における成形体密度の分布を示すグラフである。成形体密度の測定方法は、次のとおりである。成形体を材料供給方向に10mmの長さの短冊状に切り出し、さらにこの短冊状の成形体を幅方向における中心から両端に向かって10mm毎に切断する。これにより得られた10mm角の成形体の小片の密度を測定する。なお、両端部は幅が10mmに至らない場合があるが測定に影響はない。密度の測定にはアルキメデスの原理を用いる。具体的には、metra-toredo製の電子天秤および比重測定用キットを使用した。なお、他社製の同様の測定ツールを使用することもできる。また、置換液として流動パラフィンを用いて測定した。なお、図10において、横軸は中心線20を0としたときの幅方向の位置を表し、各小片の幅方向における中心位置に値をプロットしている。また、縦軸は成形体の密度を単位g/ccで表している。
【0054】
また、図11および図12を参照して、実施例2および実施例3における粉体材料の供給量割合の分布、および成形体の密度の分布について検討する。図11は、実施例2および実施例3の、粉体供給装置100の幅方向における粉体材料の供給量割合の分布を示すグラフである。粉体材料の供給量割合の測定用法は、実施例1および比較例1~2の場合と同様である。図11において、横軸は中心線20を0としたときの幅方向における位置を表し、各容器の幅方向における中心位置に値をプロットしている。また、縦軸は粉体材料の供給量割合を単位wt%で表している。
【0055】
図12は、実施例2および実施例3の、幅方向における成形体密度の分布を示すグラフである。成形体密度の測定方法は、実施例1および比較例1~2の場合と同様であるが、成形体の小片は、幅方向における中心から両端に向かって20mm毎に切断した。図12において、横軸は中心線20を0としたときの幅方向の位置を表し、各小片の幅方向における中心位置に値をプロットしている。また、縦軸は成形体の密度を単位g/ccで表している。
【0056】
また、図13は、実施例1~3、および比較例1~2の粉体材料の測定結果を集計した表である。なお、図13における粉体材料の供給量割合のレンジとは、実施例1~3および比較例1~2における測定値の最大値と最小値との差である。同様に、成形体密度のレンジは、実施例1~3および比較例1~2における測定値の最大値と最小値との差である。
【0057】
図10および図11を参照すると、比較例1~2に比べて、実施例1では、幅方向における中心線20から離れた位置での粉体材料の供給量割合の低下、および成形体密度の低下が抑制されている。また、図14の表に示すように、粉体材料の供給量割合のレンジ、および成形体の密度のレンジはともに、比較例1~2と比べて実施例1では小さくなっている。このため、2本のスクリューが同方向に回転する比較例1~2に比べて、実施例1のように、2本のスクリューを逆方向に回転させると、幅方向における粉体材料の供給量割合の均一性が向上すると考えられる。
【0058】
また、図13に示すように、実施例1に比べて、実施例2では、粉体材料の供給量割合のレンジおよび成形体の密度のレンジがさらに小さくなっている。このことから、2本のスクリューが配置されている場合に比べ、4本のスクリューが配置されている方が、幅方向における粉体材料の供給量の均一性が向上すると考えられる。また、実施例1では、評価幅が80mmであるのに対し、実施例2では評価幅が180mmであることから、4本のスクリューが配置されている場合、高品質の成形体をより幅広に形成することができると考えられる。
【0059】
また、図11および図12を参照すると、実施例2に比べて、実施例3では、幅方向における中心線20付近ではピークにならず、また、幅方向における中心線20から離れた位置での粉体材料の供給量割合および成形体の密度の低下が抑制されている。したがって、4本のスクリューが配置されている場合、内側のスクリューの回転数を外側のスクリューの回転数よりも小さくすると、幅方向における粉体材料の供給量割合および成形体の密度の均一性が向上すると考えられる。すなわち、第1モータ7および第2モータ8の回転数が450rpmに設定され、第3モータおよび第4モータの回転数が450rpmよりも小さい428rpmに設定されているとよい。図13に示すように、粉体材料の供給量割合のレンジは実施例2よりも実施例3の方が小さいため、それぞれのスクリューの回転速度に差をつける制御方法によって、幅方向における粉体材料の供給量割合および成形体の密度の均一性がさらに向上すると考えられる。
【0060】
[効果]
上述した実施の形態によると、スクリューの回転方向を調整することにより、筐体1内における幅方向の粉体材料2の密度が均一になるため、幅方向における粉体材料2の供給量の均一性を向上することができる。
【0061】
また、第3モータおよび第4モータの回転数を第1モータ7および第2モータ8の回転数よりも小さい値に設定することにより、さらに、幅方向における粉体材料の供給量の均一性を向上することができる。
【0062】
なお、本実施の形態に示す装置の構成や寸法は一例であり、本実施の形態により限定されるものではない。たとえば、本実施の形態では、2本または4本のスクリューを用いた粉体供給装置を例に説明をしたが、5本以上の複数のスクリューが配置されていても、同様の効果を得ることができる。
【0063】
また、実施の形態1において、排出口4から材料供給方向に向かって見たときに、第1スクリューは反時計回りに回転駆動され、第2スクリューは時計回りに回転駆動されているが、スクリューの回転方向はこれに限らない。たとえば、第1スクリューが時計回りに回転駆動され、第2スクリューが反時計回りに回転駆動されていてもよい。すなわち、第1スクリューと第2スクリューとが反対方向に回転していればよい。
【0064】
このように、本開示の粉体供給装置および粉体供給方法を用いることにより、幅方向に均一な密度分布を持つ成形体を得ることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本開示の粉体供給装置は、粉体材料を加圧成形した後に、その粉末の融点以下の温度で熱処理をした焼結体を必要とする各種工業製品の高性能化に寄与する。特に、絶縁部品や電池材料の高性能化に有効である。
【符号の説明】
【0066】
1 筐体
2 粉体材料
3 導入口
4 排出口
5 第1スクリュー
5a 第1スクリューシャフト
5b 第1フライト
6 第2スクリュー
6a 第2スクリューシャフト
6b 第2フライト
7 第1モータ
8 第2モータ
10 制御部
11 加圧成形機構
25 第3スクリュー
26 第4スクリュー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13