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特許7300681材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート及びそのリサイクル方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート及びそのリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20230623BHJP
   C04B 14/48 20060101ALI20230623BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20230623BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
C04B28/02 ZAB
C04B14/48 A
C04B14/48 B
C04B14/48 C
B09B3/40
B09B5/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021019707
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2021187731
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2020092875
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年7月26日、読売新聞(鹿児島)にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年3月1日、Bulletin of Bachelor’s Thesisの刊行物の第35頁にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年2月19日、令和元年度環境・社会理工学院 土木・環境工学系 卒業論文・学士特定課題研究発表会にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年11月21日の「Tokyo Tech Research Festival2019のウェブサイト」、令和1年12月5日「Tokyo Tech Research Festival 2019」にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年5月29日、令和1年6月11日、東京工業大学の「ウェブサイト」にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年8月15日、令和1年8月20日~8月21日、National Institutes of Natural Sciencesサイトビジット2019にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】昇 悟志
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正聡
(72)【発明者】
【氏名】千々和 伸浩
(72)【発明者】
【氏名】オ ミンホ
(72)【発明者】
【氏名】矢部 拓海
(72)【発明者】
【氏名】井上 京香
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-036052(JP,A)
【文献】特開2016-132579(JP,A)
【文献】特開平03-194054(JP,A)
【文献】特開昭53-064663(JP,A)
【文献】特開2009-280465(JP,A)
【文献】特開2014-024691(JP,A)
【文献】特表2004-525845(JP,A)
【文献】特開昭50-024523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
B09B 3/40
B09B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、混和材料、水の一部又はすべてからなる結合剤に、細骨材、粗骨材、混和材料といった材料の一部或いは全部を添加して構成した配合物の硬化体に、繊維補強材を混入してなる繊維補強コンクリートであって、
前記繊維補強材は、アルミニウムを主材料として含む合金或いはアルミニウム単体金属からなる金属繊維であることを特徴とする材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート。
【請求項2】
セメント、混和材料、水の一部又はすべてからなる結合剤に、細骨材、粗骨材、混和材料といった材料の一部或いは全部を添加して構成した配合物の硬化体に、繊維補強材を混入してなる繊維補強コンクリートであって、
前記繊維補強材は、錫を主材料として含む合金或いは錫単体金属からなる金属繊維であることを特徴とする材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート。
【請求項3】
請求項1又は2記載の材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリートであって、
記繊維補強材は、楕円環状の形状であることを特徴とする材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート。
【請求項4】
請求項1又は2記載の材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリートであって、
記繊維補強材は、撚線状の形状であることを特徴とする材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート。
【請求項5】
請求項記載の材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリートであって、
前記金属繊維の表面に酸化被膜を有することを特徴とする材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート。
【請求項6】
アルミニウムを主材料として含む合金或いはアルミニウム単体金属からなる金属繊維である繊維補強材を混入した繊維補強コンクリートからなるコンクリート構造物の供用済み後のリサイクル方法であって、
まず、前記供用済みコンクリート構造物の繊維補強コンクリートを解体し、
次に、前記解体した繊維補強コンクリートを低温で加熱処理して前記繊維補強材を溶融し、
次に、前記低温で加熱処理した繊維補強コンクリートを破砕した後でセメント硬化体の原料となる再生用のコンクリート材と再生用の金属とにそれぞれ分離して回収し、
次に、前記回収された再生用のコンクリート材からなる再生セメントに前記再生用の金属からなる再生繊維補強材を混入して繊維補強コンクリートを再度製造することを特徴とする材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリートのリサイクル方法。
【請求項7】
錫を主材料として含む合金或いは錫単体金属からなる金属繊維である繊維補強材を混入した繊維補強コンクリートからなるコンクリート構造物の供用済み後のリサイクル方法であって、
まず、前記供用済みコンクリート構造物の繊維補強コンクリートを解体し、
次に、前記解体した繊維補強コンクリートを低温で加熱処理して前記繊維補強材を溶融し、
次に、前記低温で加熱処理した繊維補強コンクリートを破砕した後でセメント硬化体の原料となる再生用のコンクリート材と再生用の金属とにそれぞれ分離して回収し、
次に、前記回収された再生用のコンクリート材からなる再生セメントに前記再生用の金属からなる再生繊維補強材を混入して繊維補強コンクリートを再度製造することを特徴とする材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリートのリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート及びそのリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維補強材を混入した繊維補強コンクリートとして、特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1に開示された繊維補強コンクリートは、セメント、ポゾラン質微粉末、骨材、水、及び減衰剤を含む配合物の硬化体に、更にステンレス鋼繊維及び/又はアモルファス金属繊維を混入したコンクリートである。
【0003】
このステンレス鋼繊維を混入した繊維補強コンクリートは、引張力に弱いというコンクリートの特性を鋼繊維の繊維架橋効果によって補完することで、コンクリートの構造性能を高めることができる材料である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-253745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の繊維補強コンクリートでは、その優れた特性ゆえに、鋼繊維とセメント硬化体の分離が極めて難しく、供用済み後の繊維補強コンクリートは、最終処分場へ運搬し、埋立処分するしかないのが現状である。また、セメント(モルタル)の原料となる石灰石の資源には限りがあるため、繊維補強材を混入した繊維補強コンクリートのリサイクル技術の開発が所望されている。
【0006】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、供用中は建材として必要な材料特性を発揮しつつ、供用済み後は分離再生ができる材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート及びそのリサイクル方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリートは、セメント、混和材料、水の一部又はすべてからなる結合剤に、細骨材、粗骨材、混和材料といった材料の一部或いは全部を添加して構成した配合物の硬化体に、更に融点の低い金属製の繊維補強材を混入したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリートのリサイクル方法は、融点の低い金属製の繊維補強材を混入した繊維補強コンクリートからなるコンクリート構造物の供用済み後のリサイクル方法であって、まず、前記供用済みコンクリート構造物の繊維補強コンクリートを解体し、次に、前記解体した繊維補強コンクリートを低温で加熱処理して前記融点の低い金属製の繊維補強材を溶融し、次に、前記低温で加熱処理した繊維補強コンクリートを破砕した後でセメント硬化体の原料となる再生用のコンクリート材と再生用の金属とにそれぞれ分離して回収し、次に、前記回収された再生用のコンクリート材からなる再生セメントに前記再生用の金属からなる再生繊維補強材を混入して繊維補強コンクリートを再度製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、供用中は建材として必要な材料特性を発揮しつつ、供用済み後は分離再生ができる材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート及びそのリサイクル方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態の材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリートを示す概略斜視図である。
図2】上記繊維補強コンクリートと鉄筋コンクリート及び無筋コンクリートの特性を比較したグラフである。
図3】上記繊維補強コンクリート造りのコンクリート構造物の概略斜視図である。
図4】(a)は鉄筋コンクリート造りのコンクリート構造物の部分拡大斜視図、(b)は上記繊維補強コンクリート造りのコンクリート構造物の部分拡大斜視図である。
図5】上記繊維補強コンクリート造りのコンクリート構造物の供用済み後のリサイクル工程を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態の材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリートを示す概略斜視図である。
図7】本発明の第3実施形態の材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリートを示す概略斜視図である。
図8】本発明の第1、2、3実施形態の材料のリサイクルが可能な複数種類の繊維補強コンクリートの引張特性を比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は本発明の第1実施形態の材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリートを示す概略斜視図、図2は繊維補強コンクリートと鉄筋コンクリート及び無筋コンクリートの特性を比較したグラフ、図3は繊維補強コンクリートで構築されたコンクリート構造物の概略斜視図、図4(a)は鉄筋コンクリート造りのコンクリート構造物の部分拡大斜視図、図4(b)は繊維補強コンクリート造りのコンクリート構造物の部分拡大斜視図、図5は繊維補強コンクリート造りのコンクリート構造物の供用済み後のリサイクル工程を示すフローチャートである。
【0013】
図1に示すように、材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート1は、セメント、混和材料、水の一部又はすべてからなる結合剤に、砂(細骨材)、砂利(粗骨材)、混和材料といった材料の一部或いは全部を添加して構成した配合物の硬化体2に、融点の低い金属製の繊維補強材3を混入している。この融点の低い金属製の繊維補強材3としては、アルミニウム、ビスマス、セシウム、水銀、カリウム、リチウム、ナトリウム、鉛、ルビジウム、錫、亜鉛、インジウム、ガリウム、カドミウムや、これらの酸化物を主材料として含む合金或いは単体金属で作った金属繊維を用いている。
【0014】
図2に繊維補強コンクリート1と鉄筋コンクリート及び無筋コンクリートの各特性を示すように、繊維補強コンクリート1は、鉄筋コンクリートよりもピーク荷重が低いが、エネルギー吸収量(変形量)が高いことが判る。
【0015】
以上第1実施形態の材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート1によれば、コンクリート補強材としての繊維補強材3に鋼金属より融点の低いアルミニウム、ビスマス、セシウム、水銀、カリウム、リチウム、ナトリウム、鉛、ルビジウム、錫、亜鉛、インジウム、ガリウム、カドミウムやこれらの酸化物を主材料として含む合金或いは単体金属からなる金属繊維を用いることにより、常温環境下での供用時には、繊維架橋効果によって高い靭性を有するコンクリートとして機能させることができる。即ち、常温供用下では、有機繊維並みの繊維強化効果が得られる。
【0016】
また、材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート1は、一例として、図3に示す防潮堤(コンクリート構造物)10を構築する際に使用すると、従来の鉄筋コンクリート造りのものよりも好適である。
【0017】
詳述すると、沿岸部に設置される防潮堤には、塩害環境下で長期供用するための高い耐久性が求められると共に、想定外の波力を受けクリティカルな損傷を受けた後にも靭性を発揮し、原位置で海水を堰き止め続けるといった性能も求められる。このため、一般的には、図4(a)に示すように、コンクリート20中に鉄筋21を複数本配置すると共に、大きなかぶり厚(その厚さを図中符号Sで示す)をセットすることで、これらの要求を満足するように幅広(その幅を図中符号Hで示す)に設計されている。しかし、コンクリートには様々な要因でひび割れが生じるために、長期にわたって鉄筋21を腐食させず、それによって靭性を維持することは困難である。また、過大な厚さSのかぶり部は無筋コンクリートとしての挙動に近づくことから、部材厚Hに対して靭性が向上しないことも知られている。これらにより、通常の鉄筋コンクリート造りの防潮堤では、長期間安定なインフラとなり得ない可能性があり、鉄筋21を含めて全て新たな材料を用いて再構築する必要がある。
【0018】
そこで、図3及び図4(b)に示すように、防潮堤10を材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート1で構築すると、繊維補強コンクリート1が耐食性の高い金属製の繊維補強材3で補強されていて材料自体が高い靭性を持つため、耐久性と靭性を両立させることができる。これによって、想定外の波力を受けても、海水を原位置で堰止め続けることが可能である。
【0019】
また、防潮堤10を材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート1で構築した場合、鉄筋コンクリートのかぶり部が不要になるため、繊維補強コンクリート1の幅Hを薄くすることができ、その分構築の際に低コスト化を図ることができる。さらに、繊維補強コンクリート1と雖も長期間経つとひび割れ等の破損が発生し、ひび割れ等によって止水性が低下するため、交換が必要になる。この際、後述するように、繊維補強コンクリート1は、加熱処理によって、コンクリートと金属繊維を分離・回収し、再生材料とすることができるようになっており、この特性を利用して破損した防潮堤を、再生した繊維補強コンクリートで再度構築して交換使用することが可能である。
【0020】
次に、材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート1で構築された防潮堤10の供用済み後のリサイクル工程を図5に示すフローチャートに沿って説明する。
【0021】
まず、供用済みコンクリート構造物10の繊維補強コンクリート1を解体して、セメントリサイクル工場まで運搬する(ステップS1)。
【0022】
次に、セメントリサイクル工場にて、解体した繊維補強コンクリート1を低温(例えば、錫繊維を包含する場合は200°位、アルミニウム繊維を包含する場合は600°位)で加熱処理して繊維の架橋効果を消失させ、融点の低い金属製の繊維補強材3を溶融して液化させる(ステップS2)。
【0023】
次に、低温で加熱処理した繊維補強コンクリート1を粒状或いは粉状に破砕する(ステップS3)。
【0024】
そして、この粉砕物から遠心分離等によりセメント硬化体の原料となる再生用のコンクリートガラ(コンクリート材)と再生用の液状の金属にそれぞれ分離して回収する(ステップS4)。
【0025】
次に、回収された再生用のコンクリートガラらなる再生セメントに、再生用の金属からなる再生繊維補強材を混入して繊維補強コンクリート1を再度製造する(ステップS5)。
【0026】
このように、コンクリート(モルタル)の原料には再生に適した骨材を用いているため、普通のコンクリートと同じように解体し、かつ遠心分離等によって、比較的少ないエネルギーの投入により再生用のコンクリートガラと再生用の金属にそれぞれ分離・回収することができ、また、この分離・回収したものをそのまま再生原料として利用することができる。
【0027】
尚、前記第1実施形態によれば、解体した繊維補強コンクリートを金属の融点以上の温度で加熱処理するようにしたが、融点未満の温度で加熱処理して金属製の繊維補強材の剛性が落ちたところで繊維補強コンクリートを解体し、その後、再度加熱処理して金属を液化させても良い。
【0028】
また、前記第1実施形態によれば、遠心分離等によって再生用のコンクリートガラと再生用の金属に分離したが、重力による自然分離やフィルタ等により分離しても良い。
【0029】
さらに、前記第1実施形態によれば、セメント硬化体の原料となる骨材を石灰石とすることで、コンクリート部分をそのまま再生資源としたが、石灰石を配合しなかったり、或いは、石灰石以外の粉体や骨材を用いて代替しても良い。
【0030】
さらに、前記第1実施形態によれば、材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート造りのコンクリート構造物として防潮堤について説明したが、コンクリート構造物は、防潮堤に限定されるものではなく、例えば、高層建築物等の外壁に使用されるプレキャストコンクリートカーテンウォール等の他のコンクリート構造物に適用できることは勿論である。
【0031】
図6は本発明の第2実施形態の材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリートを示す概略斜視図である。
【0032】
図6に示すように、この第2実施形態の材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート1は、セメント、混和材料、水の一部又はすべてからなる結合剤に、砂(細骨材)、砂利(粗骨材)、混和材料といった材料の一部或いは全部を添加して構成した配合物の硬化体2に、融点の低い金属製の繊維補強材としてアルミニウム製で楕円環状(所謂クリップ形状)の繊維補強材4を多数混入している点が、前記第1実施形態のものとは異なる。
【0033】
この第2実施形態の材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート1では、繊維補強材4をアルミニウム製で楕円環状の形状とすることで、低剛性・低強度である易融金属でも配合物の硬化体2中に確実に定着することが可能となる。この楕円環状の形状の場合、繊維補強材4同士が絡むことを抑制し、一様性を確保することもできる。また、アルカリ腐食等によって繊維界面に弱点が生じても、多数の繊維補強材4が配合物の硬化体2を抱き込むような形状となっているため、配合物の硬化体2から多数の繊維補強材4が容易に抜けることがない。さらに、前記第1実施形態と同様に、供用済み後の繊維補強コンクリート1は、低温の加熱処理等により、金属繊維とセメント硬化体の分離・再生が可能となり、リサイクルできる。
【0034】
尚、前記第2実施形態によれば、アルミニウム製で楕円環状のものを繊維補強材としているが、アルミニウム以外で、鉛、ルビジウム、錫、亜鉛等の融点の低い金属を楕円環状に形成したものを繊維補強材として用いても良い。
【0035】
図7は本発明の第3実施形態の材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリートを示す概略斜視図である。
【0036】
図7に示すように、この第3実施形態の材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート1は、セメント、混和材料、水の一部又はすべてからなる結合剤に、砂(細骨材)、砂利(粗骨材)、混和材料といった材料の一部或いは全部を添加して構成した配合物の硬化体2に、融点の低い金属製の繊維補強材としてアルミニウム製で撚線状(所謂ツイスト形状)の繊維補強材5を多数混入している点が、前記第1実施形態のものとは異なる。
【0037】
この第3実施形態の材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート1では、繊維補強材5をアルミニウム製で撚線状の形状とすることで、前記第2実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0038】
尚、前記第3実施形態によれば、アルミニウム製で撚線状のものを繊維補強材としているが、アルミニウム以外で、鉛、ルビジウム、錫、亜鉛等の融点の低い金属を撚線状に形成したものを繊維補強材として用いても良い。
【0039】
図8は本発明の第1、2、3実施形態の材料のリサイクルが可能な複数種類の繊維補強コンクリートの引張特性を比較して示すグラフである。このグラフでは、酸化被膜無しのアルミニウム製で直線状の繊維補強材のものと、第2実施形態のアルミニウム製・楕円環状の繊維補強材4で酸化被膜有り無しのものと、第3実施形態のアルミニウム製・撚線状の繊維補強材5で酸化被膜有り無しのものとを、配合物の硬化体2に混入して成る5種類の材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート1の引張特性を比較している。
【0040】
第1、2、3実施形態の材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート1において、アルミニウムを繊維補強材とする場合に生じるアルカリ腐食を抑制するために、スラッジ水(練り混ぜに用いたスコップやミキサー等を洗った際に排出される廃液である高アルカリ水)、または、廃液以外の別の高アルカリ水にアルミニウム製で楕円環状の繊維補強材4を事前に浸漬させ(アルミニウム製で撚線状の繊維補強材5の場合も同様)、その繊維表面に酸化被膜を予め形成しておくことで、配合物の硬化体2に多数の繊維補強材4を添加した後のアルカリ腐食反応を低コストで遅くすることができる。つまり、リサイクルが可能な繊維補強コンクリート1の養生中に、アルミニウム製で楕円環状の繊維補強材4と配合物の硬化体2が化学反応して水素が発生し、繊維補強材4と配合物の硬化体2との間に空隙(隙間)が生じて繊維補強材4の付着低下が起こるが、アルカリ腐食を事前に起こすことで、図8に示すように、酸化被膜無しのアルミニウム製で楕円環状の繊維補強材4を配合物の硬化体2に混入した場合と同様に、酸化被膜有りのアルミニウム製で楕円環状の繊維補強材4を配合物の硬化体2に混入した場合も、リサイクルが可能な繊維補強コンクリート1の養生中に繊維補強材4の付着低下を防ぐことができ、酸化被膜無しのアルミニウム製で直線状の繊維補強材を配合物の硬化体2に混入した場合よりも補強効果をより一段と高めることができる。
【0041】
また、アルミニウム製で撚線状の繊維補強材5の場合は、アルカリ腐食を事前に起こしておくことで、配合物の硬化体2と多数のアルミニウム製で撚線状の繊維補強材5の練り混ぜ時に繊維補強材5同士の絡み合いをより一段と抑制することができ、多数の繊維補強材5の一様な分散を期待することができる。これにより、図8に示すように、酸化被膜有りのアルミニウム製で撚線状の繊維補強材5を配合物の硬化体2に混入した場合の方が、酸化被膜無しのアルミニウム製で撚線状の繊維補強材5を配合物の硬化体2に混入した場合よりも、リサイクルが可能な繊維補強コンクリート1の養生中に繊維補強材5の付着低下を防ぐことができ、より一層補強効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 材料のリサイクルが可能な繊維補強コンクリート
2 セメント、混和材料、水の一部又はすべてからなる結合剤に、砂(細骨材)、砂利(粗骨材)、混和材料といった材料の一部或いは全部を添加して構成した配合物の硬化体
3 融点の低い金属製の繊維補強材
4 アルミニウム製で楕円環状の繊維補強材(融点の低い金属製で楕円環状の繊維補強材)
5 アルミニウム製で撚線状の繊維補強材(融点の低い金属製で撚線状の繊維補強材)
10 防潮堤(コンクリート構造物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8