(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】粉体を用いる処理システム及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
B30B 11/08 20060101AFI20230623BHJP
B65G 65/48 20060101ALI20230623BHJP
B01J 2/22 20060101ALI20230623BHJP
B01J 4/02 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
B30B11/08 C
B30B11/08 A
B30B11/08 Z
B65G65/48 D
B01J2/22
B01J4/02 E
(21)【出願番号】P 2019069620
(22)【出願日】2019-04-01
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000141543
【氏名又は名称】株式会社菊水製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】北村 直成
(72)【発明者】
【氏名】伏見 伸介
(72)【発明者】
【氏名】西村 英之
(72)【発明者】
【氏名】河合 祐也
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-177137(JP,A)
【文献】特開2016-048218(JP,A)
【文献】特開2018-154431(JP,A)
【文献】特開2017-001081(JP,A)
【文献】特開2015-225018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 11/08
B30B 11/00
B65G 65/48
B65G 65/40
B01J 2/22
B01J 4/02
A61J 3/10
G01G 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留している粉体を吐出するフィーダを備える粉体供給装置と、粉体供給装置のフィーダが吐出する粉体の供給を受ける充填装置を備え同充填装置が充填する粉体を用いた後工程の処理を実施する機器とを具備する処理システムであって、
前記充填装置による粉体の充填及び前記後工程の処理の動作を停止している前記機器を起動するにあたり、その動作を停止したままの状態で前記粉体供給装置のフィーダから充填装置に所定量の粉体を予め補給し、しかる後に機器を起動して充填装置による粉体の充填及び後工程の処理の動作を開始するものであり、
停止している前記機器の起動前に前記粉体供給装置のフィーダから前記充填装置に所定量の粉体を補給する際に、フィーダのモータに与える制御入力で
あるモータの回転数、モータの出力トルク、モータに対する印加電流または印加電圧と
、フィーダが吐出する粉体の流量との関係を計測
する処理システム。
【請求項2】
停止している前記機器の起動前に前記粉体供給装置のフィーダから前記充填装置に所定量の粉体を複数回に分けて補給する請求項1記載の処理システム。
【請求項3】
前記粉体供給装置が、複数のフィーダを備え、それら各フィーダが吐出する粉体を所定の比率で混合した上で前記機器の充填装置に供給するものであり、
停止している前記機器の起動前に前記粉体供給装置の複数のフィーダから吐出する粉体を所定の比率で混合してなる所定量の粉体を前記充填装置に補給し、その際に各フィーダ毎に当該フィーダのモータに与える制御入力と当該フィーダが吐出する粉体の流量との関係を計測
する請求項1又は2記載の処理システム。
【請求項4】
停止している前記機器の起動前に前記粉体供給装置のフィーダから前記充填装置に所定量の粉体を補給する際に、フィーダのモータを第一の回転数に制御する入力を与えている期間中の同フィーダによる粉体の吐出量を計測し、次いでフィーダのモータを第一の回転数とは異なる第二の回転数に制御する入力を与えている期間中の同フィーダによる粉体の吐出量を計測
する請求項1、2又は3記載の処理システム。
【請求項5】
前記機器が、上下に貫通した臼孔が設けられているテーブル、テーブルの臼孔に面するとともにテーブルに対して相対的に変位しつつ自身の直下を通過する臼孔に粉体を充填する前記充填装置、並びに臼孔に充填された粉体を圧縮することで成形品を成形する上杵及び下杵を備える粉体圧縮成形機であり、
前記粉体供給装置が、前記粉体圧縮成形機の起動前及び起動後の稼働中に同粉体圧縮成形機の充填装置に粉体を供給する請求項1、2、3又は4記載の処理システム。
【請求項6】
前記粉体供給装置が、主薬の粉体を蓄えてこれを吐出するフィーダと、主薬に添加する添加剤の粉体を蓄えてこれを吐出するフィーダとを個別に備え、それら主薬及び添加剤を所定の比率で混合した上で前記粉体圧縮成形機の充填装置に供給するものであり、
停止している前記粉体圧縮成形機の起動前に前記粉体供給装置の複数のフィーダから吐出する主薬及び添加剤を所定の比率で混合してなる所定量の粉体を前記充填装置に補給する請求項5記載の処理システム。
【請求項7】
貯留している粉体を吐出するフィーダを備える粉体供給装置と、粉体供給装置のフィーダが吐出する粉体の供給を受ける充填装置を備え同充填装置が充填する粉体を用いた後工程の処理を実施する機器とを具備する処理システムを制御する方法であって、
前記充填装置による粉体の充填及び前記後工程の処理の動作を停止している前記機器を起動するにあたり、その動作を停止したままの状態で前記粉体供給装置のフィーダから充填装置に所定量の粉体を予め補給し、しかる後に機器を起動して充填装置による粉体の充填及び後工程の処理の動作を開始するものであり、
停止している前記機器の起動前に前記粉体供給装置のフィーダから前記充填装置に所定量の粉体を補給する際に、フィーダのモータに与える制御入力
あるモータの回転数、モータの出力トルク、モータに対する印加電流または印加電圧と
、フィーダが吐出する粉体の流量との関係を計測
する処理システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留している粉体を吐出するフィーダを備える粉体供給装置と、当該粉体供給装置から粉体の供給を受ける充填装置を備え同充填装置が充填する粉体を用いた後工程の処理を実施する機器とを具備する処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
回転盤のテーブルに臼孔を設けるとともに、各臼孔の上下に上杵及び下杵をそれぞれ摺動可能に保持させておき、臼孔及び杵をともに水平回転させて、上杵及び下杵の対が上ロール及び下ロールの間を通過するときに臼孔内に充填した粉体を圧縮成形又は打錠する回転式の粉体圧縮成形機が公知である。この種の成形機は、医薬品の錠剤、食品、電子部品等の成形品を成形する用途に供されている。
【0003】
医薬品の錠剤等の生産においては、従来、その構成材料となる粉体について、造粒工程、乾燥工程、整粒工程、混合工程といった工程毎に中間製品を作り、最後に成形機による圧縮(打錠)工程を経るバッチ式の手順を踏むことが一般的であった。
【0004】
だが、このようなバッチ方式では、研究開発スケールの小型の成形機から、商用スケールの大型の成形機へと移行するために、何回かのスケールアップの過程が生じる。そして、各段階のスケールアップを検証する実験を行う必要があり、原料粉体を使用する機会が多くなり、膨大なコストがかかる。また、バッチ式は、各工程間で待ち時間が発生する。例えば、成形機による圧縮工程を実施するには、それに先んじて粉体を混合する混合工程を実施し、混合工程により完成した粉体を成形機に供給する作業が必須となる。その間、成形機は、稼働を停止したまま待つことになる。換言すれば、タイムリーな中間製品の供給が困難である。しかも、工程毎に設備設計が必要となり、広いスペースを占有するという不利もある。より具体的には、工程毎に一部屋を使用し、作業者が中間製品を次の工程の部屋まで運ぶ必要がある。
【0005】
そこで、粉体の混合工程と圧縮工程とを連続して行うことができる、即ち混合度が高い高品位の粉体を成形機に直接供給するシステムが開発されることとなった(下記特許文献1及び2を参照)。このシステムによれば、成形機による粉体の圧縮打錠処理を続行したまま、適時に粉体を粉体供給装置から成形機に供給することができる。
【0006】
粉体の混合行程を実施する粉体供給装置は、それぞれが粉体を貯留しかつその貯留している粉体を吐出する複数台のフィーダを備え、各フィーダが吐出した粉体を混合した上で成形機その他の後工程の処理を実施する機器に供給する。フィーダの典型例として、所定時間あたり一定量の粉体を継続的に吐出する定量供給フィーダ(下記特許文献3を参照)が挙げられる。定量供給フィーダは、粉体を貯留しているホッパから落下する粉体をスクリューフィーダやテーブルフィーダ、サークルフィーダ(登録商標)、ロータリフィーダ等により送り出すもので、当該定量供給フィーダが吐出する粉体の単位時間あたりの吐出流量を計測器、例えばロードセルを介して計測し、その吐出流量が目標流量に収束するように、スクリューフィーダ等の駆動源であるモータをフィードバック制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-001081号公報
【文献】特開2017-177137号公報
【文献】特開2018-154431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
粉体供給装置が備えるフィーダは、その運用に先んじて、モータに与える制御入力(又は、操作量)即ちモータの回転数又はモータのコイルへの印加電流若しくは印加電圧と、当該フィーダの制御出力(又は、制御量)即ち同モータによりスクリュー羽根等の移送部材を駆動することで当該フィーダから吐出される粉体の流量との関係を計測するチューニングを実行しておくことが求められる。
【0009】
何故ならば、ホッパに貯留している粉体の流動性、かさ密度、水分量、粒度分布等といった特性や、移送部材の形状、寸法その他の仕様、モータと移送部材との間に介在する減速機の減速比により、フィーダの入出力特性が変動するからである。チューニングは、後工程の処理を実施する機器の稼働中に粉体供給装置から同機器に対して所望の量の粉体を継続的に供給し続けるために重要である。
【0010】
従来、チューニングを実行する際には、対象のフィーダを一旦粉体供給装置から取り外し、その状態でモータに所定の制御入力を与え、結果吐出される粉体の量を計測していた。そして、チューニングが完了したならば、対象のフィーダを再度、粉体供給装置内の元の位置に組み付ける。
【0011】
つまり、チューニングのためにフィーダを付け外しする作業が必要であり、その手間及び工数がかかっていた。しかも、チューニング時にフィーダから吐出された粉体は、使用することなく全量を無為に廃棄しており、無駄となっていた。
【0012】
本発明は、以上の問題に初めて着目してなされたものであって、粉体供給装置が備えるフィーダのチューニングに伴う手間及び工数を削減すること、並びにチューニングにより廃棄され無駄となる粉体の量を減らすことを所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、貯留している粉体を吐出するフィーダを備える粉体供給装置と、粉体供給装置のフィーダが吐出する粉体の供給を受ける充填装置を備え同充填装置が充填する粉体を用いた後工程の処理を実施する機器とを具備する処理システムであって、前記充填装置による粉体の充填及び前記後工程の処理の動作を停止している前記機器を起動するにあたり、その動作を停止したままの状態で前記粉体供給装置のフィーダから充填装置に所定量の粉体を予め補給し、しかる後に機器を起動して充填装置による粉体の充填及び後工程の処理の動作を開始するものであり、停止している前記機器の起動前に前記粉体供給装置のフィーダから前記充填装置に所定量の粉体を補給する際に、フィーダのモータに与える制御入力であるモータの回転数、モータの出力トルク、モータに対する印加電流または印加電圧と、フィーダが吐出する粉体の流量との関係を計測する処理システムを構成した。
【0014】
ここで、粉体とは、微小個体の集合体であり、いわゆる顆粒などの粒体の集合体と、粒体より小なる形状の粉末の集合体とを包含する概念である。粉体の具体例としては、主薬(主剤、有効成分)を含む粉体の他、成形品の嵩及び重量を適当な大きさに増すための賦形剤、粉体が臼孔や杵に付着することを防止するための滑沢剤、粉体同士を結合させる結合剤、水分を吸収することで成形品を崩れやすくする崩壊剤としての澱粉、結晶セルロースや炭酸塩等、品質を安定させる安定剤、保存期間を延長する保存剤等の添加剤を挙げることができる。二種類以上の粉体を混合した粉体も本発明にいう粉体の一種であり、粉体である主薬に粉体である添加剤を混交したものもまた粉体に該当する。
【0015】
本発明によれば、粉体供給装置からフィーダを取り外すことなしに、当該フィーダのチューニングを実行することができる。しかも、チューニング時にフィーダから吐出された粉体を、そのまま後工程の処理を実施する機器に供給することから、その粉体の全量が廃棄されて無駄となるようなことがない。
【0016】
さらに、本発明の副効用として、後工程の処理を実施する機器の停止中に当該機器が備える充填装置に所定量の粉体を予め補給しておくことができ、これにより当該機器が起動した直後の時期から必要十分な性能を発揮することができるようになる。
【0017】
停止している前記機器の起動前に前記粉体供給装置のフィーダから前記充填装置に所定量の粉体を複数回に分けて補給し、しかる後に当該機器を起動することとすれば、当該機器の起動直後の時期の作動不良をより確実に回避することができる。加えて、フィーダのチューニングのための計測を行う機会が増加し、チューニングの精度の向上に資する。
【0018】
前記粉体供給装置が、複数のフィーダを備え、それら各フィーダが吐出する粉体を所定の比率で混合した上で前記機器の充填装置に供給するものであり、停止している前記機器の起動前に前記粉体供給装置の複数のフィーダから吐出する粉体を所定の比率で混合してなる所定量の粉体を前記充填装置に補給し、その際に各フィーダ毎に当該フィーダのモータに与える制御入力と当該フィーダが吐出する粉体の流量との関係を計測するものとすれば、複数のフィーダの各々のチューニングを同時並行して実行することができ、効率的であるのみならず、複数の粉体を適切に混合した混合粉体を停止している機器に補給することができる。
【0019】
停止している前記機器の起動前に前記粉体供給装置のフィーダから前記充填装置に所定量の粉体を補給する際には、フィーダのモータを第一の回転数に制御する入力を与えている期間中の同フィーダによる粉体の吐出量を計測し、次いでフィーダのモータを第一の回転数とは異なる第二の回転数に制御する入力を与えている期間中の同フィーダによる粉体の吐出量を計測するチューニングを実行することが好適である。
【0020】
前記機器は、例えば、上下に貫通した臼孔が設けられているテーブル、テーブルの臼孔に面するとともにテーブルに対して相対的に変位しつつ自身の直下を通過する臼孔に粉体を充填する前記充填装置、並びに臼孔に充填された粉体を圧縮することで成形品を成形する上杵及び下杵を備える粉体圧縮成形機である。この場合において、前記粉体供給装置は、前記粉体圧縮成形機の起動前及び起動後の稼働中に同粉体圧縮成形機の充填装置に粉体を供給する。これにより、粉体圧縮成形機の起動直後の時期に発生しやすい成形品の不良を回避ないし抑制することができる。
【0021】
前記粉体供給装置が、主薬の粉体を蓄えてこれを吐出するフィーダと、主薬に添加する添加剤の粉体を蓄えてこれを吐出するフィーダとを個別に備え、それら主薬及び添加剤を所定の比率で混合した上で前記粉体圧縮成形機の充填装置に供給するものであり、停止している前記粉体圧縮成形機の起動前に前記粉体供給装置の複数のフィーダから吐出する主薬及び添加剤を所定の比率で混合してなる所定量の粉体を前記充填装置に補給するならば、粉体圧縮成形機の起動直後の時期から、主薬と添加剤との含有比率が適正な医薬等の成形品を効率的に製造することができる。
【0022】
本発明に係る処理システムの制御方法は、貯留している粉体を吐出するフィーダを備える粉体供給装置と、粉体供給装置のフィーダが吐出する粉体の供給を受ける充填装置を備え同充填装置が充填する粉体を用いた後工程の処理を実施する機器とを具備する処理システムを制御する方法であって、前記充填装置による粉体の充填及び前記後工程の処理の動作を停止している前記機器を起動するにあたり、その動作を停止したままの状態で前記粉体供給装置のフィーダから充填装置に所定量の粉体を予め補給し、しかる後に機器を起動して充填装置による粉体の充填及び後工程の処理の動作を開始するものであり、停止している前記機器の起動前に前記粉体供給装置のフィーダから前記充填装置に所定量の粉体を補給する際に、フィーダのモータに与える制御入力あるモータの回転数、モータの出力トルク、モータに対する印加電流または印加電圧と、フィーダが吐出する粉体の流量との関係を計測する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、粉体供給装置が備えるフィーダのチューニングに伴う手間及び工数を削減し、併せてチューニングにより廃棄され無駄となる粉体の量を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態の回転式粉体圧縮成形機の側断面図。
【
図2】同実施形態の回転式粉体圧縮成形機の要部平面図。
【
図3】同実施形態の回転式粉体圧縮成形機の円筒図。
【
図6】同実施形態の粉体供給装置の要素である垂直混合装置の側断面図。
【
図7】同実施形態の垂直混合装置の要部を拡大した側断面図。
【
図9】同実施形態の粉体供給装置の要素である水平混合装置の攪拌軸及び攪拌羽根(第二混合部材)の斜視図。
【
図10】同実施形態の粉体供給装置の要部の側面図。
【
図11】同実施形態の粉体供給装置の要部の斜視図。
【
図12】同実施形態の粉体混合度測定装置の要部の斜視図。
【
図13】同実施形態の粉体混合度測定装置の要部の平面図。
【
図14】同実施形態の粉体混合度測定装置のケースの斜視図。
【
図15】同実施形態の粉体混合度測定装置の駆動体の斜視図。
【
図16】同実施形態のシステムの制御系のブロック図。
【
図17】同実施形態の回転式粉体圧縮成形機のロータリエンコーダの取付位置を示す要部の平面図。
【
図18】同実施形態の回転式粉体圧縮成形機のロール及びロードセルの構成を示す図。
【
図19】同実施形態の回転式粉体圧縮成形機の噴射装置の要部拡大平面図。
【
図20】同実施形態の回転式粉体圧縮成形機の噴射装置の要部側断面図。
【
図21】同実施形態の粉体供給装置が備えるフィーダの側面図。
【
図22】同実施形態の回転式粉体圧縮成形機の起動前に実行する粉体の補給処理の手順例を示すフロー図。
【
図23】同実施形態の回転式粉体圧縮成形機の起動時に実行するフィーダのチューニング処理を示すタイミング図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。はじめに、本実施形態における回転式粉体圧縮成形機(以下「成形機」という)の全体概要を述べる。
図1に示すように、成形機のフレーム1内には、回転軸となる立シャフト2が設立され、その立シャフト2の上部に接続部21を介して回転盤3が取り付けられる。立シャフト2の下端側には、ウォームホイール7が取り付けられる。ウォームホイール7には、ウォームギア10が噛合する。ウォームギア10は、モータ8により駆動されるギア軸9に固定している。モータ8が出力する駆動力は、ベルト11によってギア軸9に伝わり、ウォームギア10、ウォームホイール7を介して立シャフト2を回転させる。そして、立シャフト2が回転することにより、回転盤3及び杵5、6が回転する。
【0026】
回転盤3は、立シャフト2の軸回りに水平回転、即ち自転する。回転盤3は、テーブル(臼ディスク)31と、上杵保持部32と、下杵保持部33とからなる。
図2に示すように、テーブル31は略円板状をなしており、その外周部に回転方向に沿って所定間隔で複数の臼孔4を有する。臼孔4は、テーブル31を上下方向に貫通している。なお、テーブル31は、複数のプレートに分割するものでもよい。また、テーブル31自体に直接臼孔4を有するものでなく、臼孔4を備える臼をテーブル31に装着するものであってもよい。
【0027】
各臼孔4の上下には、上杵5及び下杵6を、それぞれが個別に臼孔4に対して上下方向に摺動可能であり、上杵胴部52を上杵保持部32で、下杵胴部62を下杵保持部33で保持する。上杵5の杵先53は、臼孔4に対して出入りする。下杵6の杵先63は、常時臼孔4に挿入してある。上杵5及び下杵6は、回転盤3とともに立シャフト2の軸回りに水平回転、即ち公転する。
【0028】
図17に示すように、ギア軸9の端部には、ギア軸9ひいては回転盤3(のテーブル31、臼孔4及び杵5、6)の回転角度及び回転速度を検出するロータリエンコーダ23を、減速装置24を介して接続してある。ロータリエンコーダ23は、ギア軸9が所定角度回転する都度パルス信号を出力する。そのパルス列を受信することで、本システムの制御装置Cが、回転盤3の回転角度及び回転速度を検出、つまりはテーブル31上のどの臼孔4が現在どの位置にあるのかを知得することができる。
図16に示す制御装置Cは、プロセッサ、メモリ、補助記憶デバイスや入出力インタフェースを備えたマイクロコンピュータシステムであったり、プログラマブルコントローラであったり、汎用のパーソナルコンピュータ又はワークステーションであったりする。減速装置24は、ギア軸9の回転速度をロータリエンコーダ23の入力速度に適するように減速してロータリエンコーダ23に伝達する。
【0029】
回転盤3の臼孔4に対して粉体を充填するためには、充填装置であるフィードシューXを用いる。フィードシューXは、単純に粉体を臼孔4内に落とし入れるオープンフィードシューであってもよく、内蔵した攪拌羽根を回転させて粉体を攪拌しながら臼孔4内に落とし込む攪拌フィードシューであってもよいが、本実施形態では攪拌フィードシューを想定している。フィードシューXは、回転するテーブル31の外周部、特に臼孔4の回転軌道の直上に位置している。テーブル31が回転盤3とともに回転することで、フィードシューXはテーブル31及び臼孔3に対して相対的に変位することとなる。
【0030】
フィードシューXへの粉体の供給は、粉体混合度測定装置Mの排出部M6である粉体供給管191(
図10及び
図11に示す)から行われる。粉体混合度測定装置Mの供給部M5への粉体の供給には、バッファタンクZ3bを用いる。
【0031】
噴射装置Yは、臼孔4の内周面及び下杵6の杵先63の上端面、さらには上杵5の杵先53の下端面に向けて、外部滑沢剤を吹き付ける。滑沢剤は、一部の粉体が臼孔4の内周に固着するバインディングや、一部の粉体が杵5、6の杵先53、63に固着するスティッキング(何れも、製品に傷や荒れ、欠けをもたらす)を予防するためのものである。滑沢剤は、例えば、ステアリン酸金属塩(特に、ステアリン酸マグネシウム)その他のワックス、タルク等である。
【0032】
図19に示すように、噴射装置Yは、外部の滑沢剤供給装置(図示せず)から供給される滑沢剤を導き臼孔4及び下杵6の杵先63の上端面に向けて噴射する下向噴射ノズルY1、滑沢剤供給装置から供給される滑沢剤を導き上杵5の杵先53の下端面に向けて噴射する上向噴射ノズルY2、臼孔4や杵5、6の杵先53、63に付着しなかった余剰の滑沢剤等を吸引して外部に排出する(滑沢剤供給装置に還流させてもよい)パージ用の吸引ダクトY3、並びに、これら下向噴射ノズルY1、上向噴射ノズルY2及び吸引ダクトY3を保持するケースY4を要素とする。
【0033】
図20に示すように、下向噴射ノズルY1は、フッ素樹脂(特に、ポリテトラフルオロエチレン)製のブロック内に略水平に延伸する流通管Y11を穿ち、その流通管Y11の終端を下方に湾曲させてブロックの下面に開口した噴射口Y12を形成したものである。流通管Y11及び噴射口Y12の内面は、フッ素樹脂の平滑面となり、滑沢剤の流通及び噴出を円滑化させる。この下向噴射ノズルY1には、静電気発生電極Y13を埋設している。静電気発生電極Y13の先端は針状又はテーパ状をなし、噴射口Y12近傍の箇所に突出している。静電気発生電極Y13には、例えば-20kV程度の直流高電圧が印加され、先端に集中した電界により噴射直前の滑沢剤を強制的に静電帯電させる。
【0034】
上向噴射ノズルY2は、ちょうど
図20に示した下向噴射ノズルY1を上下反転させたような構造を有する。即ち、上向噴射ノズルY2は、フッ素樹脂製のブロック内に略水平に延伸する流通管を穿ち、その流通管の終端を上方に湾曲させてブロックの上面に開口した噴射口Y22を形成したものである。上向噴射ノズルY2にも、やはり静電気発生電極を埋設している。静電気発生電極の先端は針状又はテーパ状をなし、噴射口Y22近傍の箇所に突出している。
【0035】
吸引ダクトY3は、上杵5の杵先53の側方に臨む高さ位置にある。吸引ダクトY3の開口部は、ケースY4に固定しており、ケースY4の内部空間と連通している。
【0036】
ケースY4は、滑沢剤の無秩序な放散を防止するべく下向噴射ノズルY1及び上向噴射ノズルY2を概ね覆うフッ素樹脂製の箱体である。ケースY4は、回転盤3及び噴射ノズルY1、Y2から電気的に絶縁している。ケースY4には、圧縮空気を吸引ダクトY3の開口に向けて略水平に吹き出させるエアカーテンY41を設けている。エアカーテンY41は、上杵5の杵先53付近に空気の流れを作りだし、上向噴射ノズルY2から上杵5の杵先53に向けて噴射された滑沢剤の上方への飛散を阻む。
【0037】
外部の滑沢剤供給装置は、細溝充填方式の充填ロールを介して滑沢剤を少量ずつ精確に安定して取り出し、これを加圧空気に乗せて圧送するμRフィーダ(日清エンジニアリング株式会社製)を備えた既知のものである。
【0038】
滑沢剤供給装置から供給された滑沢剤は、下向噴射ノズルY1及び上向噴射ノズルY2に分流して各ノズルY1、Y2内の流通管を流通し、噴射口Y12、Y22から噴射される。その噴射の際、滑沢剤は強制的に静電帯電する。一方で、臼孔4及び杵5、6は回転盤3の地絡を通じて地絡されており、静電帯電した滑沢剤は金属面である臼孔4の内周面、下杵6の杵先63の上端面及び上杵5の杵先53の下端面に強力に吸着する。吸着した滑沢剤は、杵5、6の上下運動の振動や回転盤3の高速回転による風圧程度では剥離せず、杵5、6による粉体の圧縮成形と同時に強く粉体に押し付けられ、臼孔4及び杵5、6の杵先53、63から錠剤へと転位付着する。
【0039】
図3に示すように、上杵5、下杵6の立シャフト2の軸回りの公転軌道上には、上杵5、下杵6を挟むようにして上下に対をなす予圧上ロール12及び予圧下ロール13、本圧上ロール14及び本圧下ロール15がある。予圧上ロール12及び本圧上ロール14は、上杵5の頭部51を押圧し、予圧下ロール13及び本圧下ロール15は、下杵6の頭部61を押圧する。そして、予圧上ロール12及び予圧下ロール13並びに本圧上ロール14及び本圧下ロール15は、臼孔4内に充填された粉体を杵先53、63の先端面で上下から圧縮するべく、上杵5及び下杵6を互いに接近させる方向に付勢する。
【0040】
上杵5、下杵6はそれぞれ、ロール12、13、14、15によって押圧される頭部51、61と、この頭部51、61よりも細径な胴部52、62とを有する。回転盤3の上杵保持部32は、上杵5の胴部52を上下に摺動可能に保持し、下杵保持部33は、下杵6の胴部62を上下に摺動可能に保持する。胴部52、62の先端部位53、63は、臼孔4内に挿入可能であるように、それ以外の部位と比べて一層細く、臼孔4の内径に略等しい直径である。杵5、6の公転により、ロール12、13、14、15は杵5、6の頭部51、61に接近し、頭部51、61に乗り上げるようにして接触する。さらに、ロール12、13、14、15は上杵5を下方に押し下げ、下杵6を上方に押し上げる。ロール12、13、14、15が杵5、6上の平坦面に接している期間は、杵5、6が臼孔4内の粉体に対して所要の圧力を加え続ける。
【0041】
図18に示すように、成形機の上ロール12、14には、ロール12、13、14、15が杵5、6を介して臼孔4内の粉体を圧縮する際の圧力を検出するためのロードセル25を付設してある。制御装置Cは、ロール12、13、14、15に付帯するロードセル25が出力する信号を受信することで、予圧ロール12、13が粉体を圧縮する圧力(予圧圧力)の大きさや、本圧ロール14、15が粉体を圧縮する圧力(本圧圧力)の大きさを知得することができる。また、ロードセル25からもたらされる信号は、一組の杵5、6が一つの臼孔4の粉体を圧縮する圧力が最大となる時点でピークを迎えるようなパルス信号列の形をとる。故に、制御装置Cは、そのパルス列の数を計数することを通じて、成形機における単位時間あたりの成形品の製造数量を知得することができる。
【0042】
本圧上ロール14及び本圧下ロール15による加圧位置から、回転盤3、上杵5及び下杵6の回転方向に沿って先に進んだ下流位置には、成形品回収部を構成する。この成形品回収部は、臼孔4から押し出された成形品を案内するダンパ17を備える。ダンパ17は、成形品回収位置18を基端とし、その先端が臼4の回転の軌跡よりもテーブル31の中心側にあるように延びている。下杵6により臼孔4から押し出された成形品は、このダンパ17に接触して、成形品回収位置18に向かって移動することとなる。
【0043】
上杵5及び下杵6の上下運動は、カムレールR1、R2、R3、R4、R5、R6によって惹起される。レールR1、R2、R3、R4、R5、R6は、杵5、6の回転(公転)方向に沿って拡張し、杵5、6の頭部51、61と係合して、杵5、6を案内しながら上下動させる。
【0044】
図3に示しているように、上杵5の頭部51の回転軌道上には、ダンパ17の上流側で上杵5を持ち上げてその杵先53を臼孔4から抜出させる上昇レール(上昇カム)R1と、ロール12、14の上流側で上杵5を押し下げてその杵先53を臼孔4内に挿入し後の粉体の圧縮に備えさせる降下レール(降下カム)R5とを設けている。
【0045】
他方、下杵6の頭部61の回転軌道上には、ダンパ17の上流側で下杵6を持ち上げてその杵先63をテーブル31の上面と略同等の高さにする押上レールR4と、フィードシューXの上流側又は近傍で下杵6を引き下げて杵先63上にある臼孔4の容積を成形品の構成材料となる粉体の量に対応した大きさとする低下器R2と、フィードシューXの下流側で下杵6を幾分持ち上げて臼孔4に充填される粉体の量の微調整を図る分量レールR3とを設けている。分量レールR3の後半部では、量を調整した後の臼穴4内の粉体が向心力等により臼孔4からこぼれないよう、下杵6を若干引き下げる構造となっている。
【0046】
成形品の製造工程を概説すると、まず、
図3に示すように、下杵6が降下し、下杵6の杵先63が挿入されている臼孔4の内周面、下杵6の杵先63の上端面、及び上杵5の杵先53の下端面に、噴射装置Yから滑沢剤が噴射される(外部滑沢剤噴射工程)。次いで、下杵6の杵先63が挿入されている臼孔4内に、フィードシューXから粉体(混合粉体)が充填され(充填工程)、臼孔4内の粉体が必要量となるように下杵6が上昇して、臼孔4から溢れた粉体が擦り切られる。
【0047】
そして、上杵5が下降し、予圧上ロール12及び予圧下ロール13が上杵5の頭部51及び下杵6の頭部61を押圧し、それら杵5、6の杵先53、63で臼孔4内の粉体を圧縮する予圧縮が行われる。続いて、本圧上ロール14及び本圧下ロール15が上杵5の頭部51及び下杵6の頭部61を押圧し、杵5、6の杵先53、63で臼孔4内の粉体を圧縮する本圧縮を行う(圧縮成形工程)。
【0048】
その後、下杵6の杵先63の上端面が臼孔4の上端つまりはテーブル31の上面と略同じ高さとなるまで下杵6が上昇して、臼孔4内にある成形品を臼孔4から盤面上に押し出す。臼孔4を出た成形品は、回転盤3の回転によりダンパ17に接触し、ダンパ17に沿って成形品回収位置18まで移動する。
【0049】
なお、本成形機の成形品回収部には、特定の成形品、例えばサンプリング品や不良品を、成形品回収位置18に回収する成形品群から選り分けるための成形品排除機構Wを設けている。具体的には、ダンパ17の内部に、加圧空気を流通させる空気通路16を形成し、その空気通路16の先端を回転盤3の径方向に沿って外側方に向けて開口させた空気噴射ノズル16aとしている。加圧空気を供給するポンプ等の空気供給源(図示せず)と空気通路16とを接続する流路20上には、当該流路20を開閉する制御バルブ22を設置してある。制御バルブ22は、例えば、制御装置Cから与えられる制御信号により開弁する電磁ソレノイドである。
【0050】
臼孔4から押し出された特定の成形品がダンパ17に接触する前、空気噴射ノズル16aの近傍を通過するときに、制御バルブ22を開弁すると、空気供給源から供給される加圧空気が、流路20及びダンパ17内の空気通路16を経由して空気噴射ノズル16aから噴出する。この噴出した空気は、特定の成形品をテーブル31の外側方に吹き飛ばす。吹き飛ばされた当該成形品は、ダンパ17に沿った先にある成形品回収位置18に到着することはない。このように、本成形機にあっては、空気供給源から供給される空気の流通路16、20、噴射ノズル16a及び制御バルブ22が、成形品排除機構Wを構成する。
【0051】
因みに、上記の成形品排除機構Wは、打錠した成形品のサンプリングに利用することもできる。
【0052】
以降、バッファタンクZ3bに粉体を供給する装置、換言すればフィードシューXに直結する供給管191に向けて粉体を送出する装置である粉体供給装置(粉体混合供給装置)Zについて述べる。
図4及び
図5に示すように、本実施形態における粉体供給装置Zでは、計量フィーダZ1を複数台(Z1a、Z1b、Z1c)使用する。フィーダZ1の台数や配置は、混合する粉体の種類数によって変化し得るため、一意に限定されない。図示例において、垂直混合装置Z3aよりも上流に位置するフィーダZ1a、Z1b、即ち当該フィーダZ1a、Z1bから吐出される粉体が垂直混合装置Z3aの手前で合流し同垂直混合装置Z3aにより混合されるようなフィーダZ1a、Z1bの数は二台である。だが、三台以上のフィーダZ1を垂直混合装置Z3aの上流に配置してもよいし、フィーダZ1を一台だけ垂直混合装置Z3aの上流に配置してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、第一計量フィーダZ1a、第二計量フィーダZ1b、第三計量フィーダZ1cではそれぞれ別種の粉体を計量供給するが、同種の粉体を計量供給するものであってもよい。本実施形態においては、例えば、第一計量フィーダZ1aは主薬、第二計量フィーダZ1bは乳糖等の賦形剤等の粉体、第三計量フィーダZ1cは滑沢剤をそれぞれ計量供給する。
【0054】
図4及び
図5に示しているように、粉体供給装置Zは、第一計量フィーダZ1aと、第二計量フィーダZ1bと、垂直混合装置(第一混合装置)Z3と、計量フィーダZ1(Z1a、Z1b)と垂直混合装置Z3aとを接続する第一接続管Z2aと、水平混合装置(第二混合装置)Z4と、垂直混合装置Z3aと水平混合装置Z4とを接続する第二接続管Z2bと、第三計量フィーダZ1cと水平混合装置Z4とを接続する第三接続管Z2cと、水平混合装置Z4とバッファタンクZ3bとを接続する第四接続管Z2dとから構成される。
図4は成形機に粉体供給装置Zを取り付けた状態を示す斜視図、
図5は粉体供給装置Zの側面図である。
【0055】
第一計量フィーダZ1a及び第二計量フィーダZ1bの各々では、粉体即ち主薬及び賦形剤等を計量しながら第一接続管Z2aに供給する。第三計量フィーダZ1cでは、粉体即ち滑沢剤を計量しながら第三接続管Z2cに供給する(計量供給工程)。これら計量フィーダZ1は、例えばロスインウェイト方式(減量積算値方式)の既知の定量供給フィーダである。
【0056】
定量供給フィーダZ1に関して補足説明する。
図21に示すように、各フィーダZ1a、Z1b、Z1cはそれぞれ、粉体を貯留するホッパZ11と、ホッパZ11からもたらされる粉体を吐出せしめるべく送り出す移送機構Z12と、ホッパZ11に対して適時粉体を補給する補給機構Z13と、移送機構Z12が送り出すことにより吐出する粉体の単位時間あたりの吐出流量を計測するための計測器Z14と、粉体の吐出流量が所要の目標流量となるように移送機構Z12を制御する制御部Z15とを具備する。
【0057】
移送機構Z12は、ホッパZ11から落下する粉体と接触してこれを送り出すための移送部材Z121と、移送部材Z121を回転駆動するモータZ122とを備える。移送機構Z12としては、例えば既知のスクリューフィーダやテーブルフィーダ、サークルフィーダ、ディスクフィーダ、ロータリフィーダ等を採用することが可能である。スクリューフィーダZ12における移送部材Z121は、軸心回りに回転する軸に螺旋状の羽根を取り付けたスクリュー羽根であり、その羽根と羽根との間に捉えた粉体を軸心方向に沿って移送する。テーブルフィーダ、サークルフィーダ、ディスクフィーダ、ロータリフィーダにおける移送部材はそれぞれ、回転するテーブル、フラットバー(回転羽根)、ディスク、(ロータリバルブに内蔵の)ロータである。本実施形態では、移送機構Z12としてスクリューフィーダを想定している。尤も、これ以外の態様のフィーダを採用することを妨げるものではない。
【0058】
移送部材Z121を駆動するモータZ122の回転数は、移送機構Z12が送り出す粉体の単位時間あたりの流量に影響を及ぼす。原則として、モータZ122の回転数が高くなるほど、送り出す単位時間あたりの粉体の流量が増加する。モータZ122(及び、下記補給機構Z13のモータZ132)は、例えばDC(直流)モータ、特にブラシレスDCモータである。DCモータの基本特性は、
VM=IaRa+Ea
Ea=KeN
T=KtIa=-(KtKeN)/Ra+(KtVM)/Ra
である。ここで、VMはDCモータのコイルに印加する電源電圧、IaはDCモータのコイルを流れる電流、Raは電機子抵抗、Eaは逆起電力の電圧、TはDCモータが発生させるトルク、Ktはトルク定数、Keは逆起電力定数、NはDCモータの回転数である。
【0059】
補給機構Z13は、例えば既知のロータリフィーダ等であり、ホッパZ11の上方に存在し、ホッパZ11に対して補給するべき粉体を多量に貯蔵している。ホッパZ11に臨む補給機構Z13の下部には、ロータリバルブZ131を設置している。この補給機構Z13は、ホッパZ11内の粉体の量が所定の下限量まで減少すると、ロータリバルブZ131を開弁して貯蔵している粉体をホッパZ11に投入する。そして、ホッパZ11内の粉体の量が所定の上限量まで回復すると、ロータリバルブZ131を閉弁してそれ以上粉体がホッパZ11に投入されないようにする。
【0060】
計測器Z14は、ホッパZ11及び同ホッパZ11に貯留している粉体の現在の重量を反復的に検出するものである。その重量の減算値が、フィーダZ1の粉体の吐出量となる。計測器Z14は、例えば、ストレインゲージ式センサであるロードセルであったり、音叉式力センサであったり、フォースバランス式センサであったりする。なお、補給機構Z13とホッパZ11とは、例えばジャバラ継手Z133を介して接続しており、補給機構Z13の自重及び補給機構Z13が貯蔵している(ホッパZ11に補給される前の)粉体の重量がホッパZ11に加重されないようにしている。即ち、計測器Z14は、補給機構Z13及び補給機構Z13に貯蔵された粉体の重量を検出しない。
【0061】
制御部Z15は、計測器Z14の出力信号を受信して現在ホッパZ11が貯留している粉体の重量を知得するとともに、移送機構Z12における移送部材(即ち、スクリューフィーダのスクリュー羽根)Z121を駆動するモータZ122や、補給機構Z13におけるロータリバルブZ131のロータを駆動するモータZ132を制御する。制御部Z15は、モータZ122、Z132の作動のON/OFFの切り替えやモータZ122、Z132の回転数又は出力トルク(モータZ122、Z132のコイルに印加する電流及び/又は電圧の大きさ)の制御を司る既知のモータドライバと、モータドライバに対して実現するべきモータZ122、Z132の回転数又は出力トルクを指令するマイクロコンピュータ、プログラマブルコントローラ、パーソナルコンピュータ若しくはワークステーション等と要素に含む。モータドライバは、モータZ122、Z132が有する各相のコイルに順次電流を印加することでモータZ122、Z132を回転させるとともに、当該モータZ122、Z132のコイルを流れる電流の大きさをPWM(Pulse Width Modulation)制御により増減させてモータZ122、Z132の回転数及び出力トルクを制御する。
【0062】
本実施形態の定量供給フィーダZ1の制御部Z15は、原則として、当該フィーダZ1が吐出する粉体の単位時間あたりの吐出流量をフィードバック制御する。具体的には、移送機構Z12により送り出されることでホッパZ11から失われた粉体の重量を計測器Z14により常時計測し、その重量の減少の推移が予め設定された目標吐出流量と合致しているかどうかを比較して、両者の偏差を縮小する方向にモータZ122の回転数又は出力トルクを増減させ、ひいては当該フィーダZ1による粉体の吐出流量を増減させる。目標吐出流量は、本システムの制御装置Cから与えられるか、ユーザの手によって直接に制御部Z15に入力される。このように、供給するべき各粉体を計量しながら接続管Z2a、Z2cに供給することで、成形品における主薬等の含有量が安定する。
【0063】
加えて、制御部Z15は、既に述べた通り、ホッパZ11内の粉体の量が所定の下限量まで減少したときに、補給機構Z13のロータリバルブZ131のロータを駆動するモータZ132を作動させ、補給機構Z13に貯蔵している粉体をホッパZ11に投入する。そして、ホッパZ11内の粉体の量が所定の上限量まで回復したならば、当該モータZ132の作動を停止してそれ以上粉体がホッパZ11に投入されないようにする。
【0064】
第一接続管Z2aは、第一計量フィーダZ1a及び第二計量フィーダZ1bと垂直混合装置Z3aとを接続する管であり、第一計量フィーダZ1aから排出される主薬及び第二計量フィーダZ1bから排出される賦形剤等を垂直混合装置Z3aに供給する。第二接続管Z2bは、垂直混合装置Z3aと水平混合装置Z4とを接続する管であり、垂直混合装置Z3aから排出される主薬と賦形剤との混合粉体を水平混合装置Z4に供給する。第三接続管Z2cは、第三計量フィーダZ1cと水平混合装置Z4とを接続する管であり、第三計量フィーダZ1cから排出される滑沢剤を水平混合装置Z4に供給する。並びに、第四接続管Z2dは、水平混合装置Z4とバッファタンクZ3bとを接続する管であり、水平混合装置Z4から排出される主薬、賦形剤及び滑沢剤の混合粉体をバッファタンクZ3bに供給する。
【0065】
より詳しく記すと、第一接続管Z2aは、第一計量フィーダZ1aと接続する第一枝管Z2a1と、第二計量フィーダZ1bと接続する第二枝管Z2a2と、第一枝管Z2a1及び第二枝管Z2a2とそれぞれ接続する主管Z2a3とから構成される。主管Z2a3の下部は、垂直混合装置Z3aと接続される。これにより、第一計量フィーダZ1a及び第二計量フィーダZ1bから計量供給された粉体は垂直混合装置Z3aで混合される(第一混合工程)。
【0066】
第二接続管Z2b、第三接続管Z2c及び第四接続管Z2dについては、後述する。
【0067】
図5、
図6、
図7及び
図8に示すように、垂直混合装置Z3aは、粉体が供給される供給口Z361を備える蓋部Z36と、蓋部Z36の下方に位置する漏斗状の第一ケースZ31と、第一ケースZ31の略中央部に配置され自転する攪拌軸Z33と、攪拌軸Z33に取り付けられた攪拌羽根Z34(第一混合部材)と、攪拌軸Z33を回転(自転)させるモータZ37と、第一ケースZ31の下部に配置され、複数の孔Z321を備える粉体通過部材Z32と、粉体が粉体通過部材Z32の孔Z321を通過するように促す補助羽根Z35(第一混合部材)と、粉体通過部材Z32を覆う第二ケースZ38とから構成される。ここで、攪拌羽根Z34及び補助羽根Z35は、いずれも第一混合部材である。本実施形態では、攪拌羽根Z34及び補助羽根Z35の両方を備える構成としているが、いずれか一方だけを備えるようにしてもよい。
【0068】
垂直混合装置Z3aでは、必ずしも攪拌軸Z33が垂直に配置されている必要はなく、斜めに傾いていてもよい。垂直混合装置Z3aは、供給口Z361から供給された粉体が下方に流れ、その間に粉体を攪拌混合することができるものであればよい。
【0069】
垂直混合装置Z3aの供給口Z361に供給された粉体は、攪拌羽根Z34の回転により混合される(第一混合工程)。無論、補助羽根Z35の回転により混合されるものであってもよい。
【0070】
蓋部Z36は、供給口Z361と、攪拌軸Z33を通すための軸口Z362とを備え、第一ケースZ31の上部開口部を覆う形状である。蓋部Z36は、粉体が第一ケースZ31からこぼれたり飛散したりしないように第一ケースZ31に取り付けられている。蓋部Z36の供給口Z361は、第一接続管Z2aと接続されている。供給口Z361から第一ケースZ31内に供給された粉体は、攪拌羽根Z34及び/又は補助羽根Z35の回転によって攪拌混合される。貯留部Z30の粉体通過部材Z32は複数の孔Z321を有し、混合された粉体が粉体通過部材Z32の孔Z321を通過する。
【0071】
なお、供給口Z361からの粉体の供給量を調節したり、補助羽根Z35の回転数を増加したりすることにより、孔Z321を通過する粉体量より供給口Z361から供給される粉体量を多くなるようにすることができる。そのため、粉体はある程度貯留部Z30内に留まる。つまり、垂直混合装置Z3a内で、第一計量フィーダZ1a及び第二計量フィーダZ1bから計量供給された粉体の少なくとも一部が貯留部Z30に留まり(貯留工程)、補助羽根Z35によって攪拌されることにより粉体の混合度が向上する。供給口Z361は、複数設けられていてもよい。
【0072】
第一ケースZ31は、その上部が開口しており、その下部には粉体通過部材Z32が設けられている。本実施形態における第一ケースZ31の形状は略漏斗状のものであるが、このような形状に限定されず、粉体通過部材Z32に粉体を供給することができるような構成であればどのような形状であってもよい。
【0073】
攪拌軸Z33は、第一ケースZ31の平面視中央部に設けられ、モータZ37の駆動によって回転(自転)する。攪拌軸Z33の軸方向の上部及び中央部には攪拌羽根Z34が取付けられており、下部には補助羽根Z35が取付けられている。攪拌軸Z33が回転することにより攪拌羽根Z34及び補助羽根Z35が回転する。
【0074】
攪拌羽根Z34(第一混合部材)は、第一ケースZ31内に供給口Z361から供給された粉体を攪拌混合する。攪拌羽根Z34の形状はどのようなものであってもよい。
図5及び
図6では、攪拌羽根Z34はその先端が矩形した形状であり、攪拌軸Z33上の二ヶ所配置されている。一方、
図8に示した垂直混合装置Z3aは、
図5及び
図6に示している垂直混合装置Z3aとは構造が一部異なる。
図8に示す垂直混合装置Z3aでは、攪拌羽根Z34が攪拌軸Z33上に一ヶ所配置され、
図5及び
図6の攪拌羽根Z34とは異なる形状である。なお、
図5、
図6及び
図8は、攪拌羽根Z34の形状や配置位置を限定するものではない。
【0075】
図7に示すように、貯留部Z30における粉体通過部材Z32は、第一ケースZ31の下部に設けられており、複数の孔Z321を備えている。また、粉体通過部材Z32は、第二ケースZ38に覆われている。粉体通過部材Z32の孔Z321を通過した粉体は、第二ケースZ38の下部に設けられている排出口Z381から排出される。孔Z321の数、径の大きさは任意である。このような構成により、粉体通過部材Z32に粉体が留まり、粉体の混合度が向上する。第一垂直混合装置Z3aaにおいて、粉体通過部材Z32の孔Z321を通過した粉体は、第二接続管Z2bを経由して水平混合装置Z4に供給される。
【0076】
なお、補助羽根Z35は、貯留部Z30内の粉体を攪拌する。補助羽根Z35は、貯留部Z30の平面視中央部に設けられており、攪拌軸Z33の下部に設けられている。本実施形態においては、補助羽根Z35の形状は、粉体通過部材Z32の内部形状に合わせた構造となっており、粉体が孔Z321を通過するのを促す。なお、補助羽根Z35も攪拌羽根の一種である。
【0077】
また、本実施形態の垂直混合装置Z3aは攪拌羽根Z34を備えるものであるが、垂直混合装置Z3aが、第二ケースZ38と、粉体通過部材Z32と、補助羽根Z35とから構成されていてもよい。第二ケースZ38は、粉体通過部材Z32を覆い、略漏斗状の形状であり、下部に排出口Z381を備える。第二ケースZ38は、粉体通過部材Z32の孔Z321を通過した粉体を排出口Z381に導く。
【0078】
第二接続管Z2bは、垂直混合装置Z3aと後述する水平混合装置Z4とを接続する管である。第二接続管Z2bは、垂直混合装置Z3aの下部及び水平混合装置Z4の上部にそれぞれ接続され、垂直混合装置Z3aにおける排出口Z381を通過した粉体を水平混合装置Z4に供給する。
【0079】
第二混合装置である水平混合装置Z4は、
図5に示すように、筒状のケースZ41と、ケースZ41の略中央部に配置された自転する攪拌軸Z42と、攪拌軸Z42を回転(自転)させるモータZ43と、その攪拌軸Z42に取り付けられ、回転により略水平方向に粉体を移動させる攪拌羽根Z44とから構成される。この水平混合装置Z4により、供給された粉体、即ち主薬及び賦形剤等と滑沢剤とを混合する(第二混合工程)。本実施形態では、ケースZ41は回転(自転)しないが、ケースZ41が回転するような構成でもよい。さすれば、粉体の混合度はさらに向上する。
【0080】
ケースZ41は、上部にケースZ41内に粉体を供給するための複数の供給口と、ケースZ41から混合粉体を排出する排出口Z413とを備える。本実施形態では、二ヶ所の供給口(第一供給口Z411、第二供給口Z412)を使用し、第二接続管Z2bは水平混合装置Z4のケースZ41における第一供給口Z411に接続されている。第一供給口Z411は、ケースZ41内に主薬と賦形剤等とを混合した粉体を供給する供給口である。ケースZ41内に供給された混合粉体は、攪拌羽根Z44の回転により、ケースZ41の排出口Z413に向かって移動する。第二供給口Z412は、第三接続管Z2cからもたらされる滑沢剤を供給する供給口である。ケースZ41内に供給された滑沢剤は、攪拌軸Z42及び攪拌羽根Z44の回転により、ケースZ41の排出口Z413に向かって移動する。なお、使用しない供給口は蓋で閉塞する。
【0081】
排出口Z413は、ケースZ41の下部に配置されている。排出口Z413には、後述する第四接続管Z2dが接続されている。そして、ケースZ41内の混合粉体は、攪拌羽根Z44の回転により、排出口Z413から排出され、第四接続管Z2dに移動する。
【0082】
攪拌軸Z42は、ケースZ41の長手方向に延び、断面視略中央部に配置されている。攪拌軸Z42はモータZ43の駆動により回転(自転)する。
図9に示すように、攪拌軸Z42には攪拌羽根Z44が取付けられている。攪拌軸Z42が回転することにより攪拌羽根Z44が回転し、粉体が混合されながら排出口Z413側に移動する。
【0083】
攪拌羽根Z44は、ケースZ41内に供給口(Z411、Z412)から供給された粉体を攪拌混合するためのものである。攪拌羽根Z44の形状はどのようなものであってもよいが、粉体を混合しながら排出口Z413側に流すような構成が好ましい。
図9に示すように、本実施形態では攪拌羽根Z34の両端が広がった形状となっており、攪拌軸Z42に対する攪拌羽根Z44の角度は自由に調節することができる。
【0084】
第三計量フィーダZ1cは、滑沢剤を水平混合装置Z4に計量供給するためのものである。第三計量フィーダZ1cの下部には、第三接続管Z2cが接続されている。第三計量フィーダZ1c内の滑沢剤は、第三接続管Z2cを通じて水平混合装置Z4に供給される(滑沢剤供給工程)。なお、μRフィーダによって滑沢剤を水平混合装置Z4に供給してもよい。また、滑沢剤を水平混合装置Z4に供給するために、噴霧装置又は噴射装置を用いてもよい。
【0085】
第三接続管Z2cは、枝管Z2c1と主管Z2c2とを備える。枝管Z2c1の一端は第三計量フィーダZ1cの下部に接続されており、他端は主管Z2c2に接続されている。主管Z2c2の下部は、水平混合装置Z4の第二供給口Z412に接続されている。
【0086】
第四接続管Z2dは、上端が水平混合装置Z4の排出口Z413と接続され、下端はバッファタンクZ3bの供給口Z361と接続されている。水平混合装置Z4により混合粉体が排出口Z413から第四接続管Z2dを通過してバッファタンクZ3bに供給される。
【0087】
バッファタンクZ3bの下部は、成形機に接続されている。バッファタンクZ3bを通過した混合粉体は、成形機内のフィードシューXに供給され、最終的に臼孔4内で圧縮成形される。バッファタンクZ3bは、成形機のフィードシューXに供給管191を介して直結する単なる粉体貯留用のタンクであってもよいが、当該バッファタンクZ3b内で粉体を混合する混合装置を兼ねていてもよい。例えば、バッファタンクZ3bを、垂直混合装置Z3aと同様の構成を有するものとし、成形機のフィードシューXに供給するべき粉体、即ち主薬及び賦形剤等と滑沢剤とを、バッファタンクZ3b内でさらに攪拌して混合する(第三混合工程)ことが考えられる。
【0088】
粉体供給装置ZのバッファタンクZ3bから成形機に向けて排出される混合粉体は、粉体混合度測定装置Mによりその混合度が測定される。混合度が所定範囲外であれば、その混合粉体の排出、警告音の鳴動、装置の停止等を行う。つまり、粉体供給装置Zにより、混合された粉体の混合度をリアルタイムで測定し対応している。
【0089】
混合粉体の混合度を測定する方法としては、ラマン分光分析、赤外分光、X線回折、X線透過測定、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等、様々なものが挙げられるが、混合粉体の混合度をリアルタイムで測定することができるものであればどのような方法であってもかまわない。本実施形態では、主に近赤外分光分析(NIR、又は近赤外吸収スペクトル法)を用いている。即ち、粉体供給装置Zから成形機のフィードシューXに向けて移動する混合粉体における主薬の占める量又は割合(比率)、換言すれば混合粉体の均一性(偏析が生じていないかどうか)を評価するべく、移動する混合粉体に対して近赤外分光を照射し、光の吸収及び散乱を計測し、スペクトルを用いて主薬の濃度その他の定性・定量分析を行うことを、所定周期で繰り返す。測定波長としては、賦形剤や滑沢剤のピークがなく主薬の特異的な吸収ピークである波長帯を利用する。また、近赤外分光分析によれば、混合粉体の粒径を測定することもできる。
【0090】
本実施形態では、粉体の混合度等を測定するPAT(Process Analytical Technology)センサとして、近赤外線センサを用いる。
図10、
図11に示すように、本実施形態ではまず、バッファタンクZ3bに混合粉体が貯留される前に、近赤外線センサである第一センサS1を用いて混合粉体の混合度を測定する。
【0091】
粉体供給装置Zによって混合された粉体は、第一センサS1によりその混合度を測定した後、貯留装置であるバッファタンクZ3bによって一時的に貯留される。バッファタンクZ3bに貯留された粉体は、再度近赤外線センサS2を用いてその混合度を測定した後に、粉体混合度測定装置Mに供給される。なお、既に述べた通り、バッファタンクZ3b内で混合粉体をさらに攪拌混合するような構成であってもよい。
【0092】
図12及び
図13に示すように、粉体混合度測定装置Mは、ケースM1と、ケースM1内の移動部材である回転体M2と、回転体M2を駆動させる駆動装置であるモータM3と、粉体の混合度を測定するセンサである近赤外線センサS2、S3と、不良の混合粉体を排除するための粉体排除部M4と、バッファタンクZ3bからもたらされる混合粉体をケースM1内に導入するための供給部M5と、成形機の充填装置である攪拌フィードシューXに混合粉体を排出する排出部M6とからなる。
【0093】
図14に示すように、ケースM1の底面には、近赤外線センサS3を設置するための取付孔M11と、粉体を排除する排除孔M12(粉体排除部M4)と、粉体を粉体供給管191に排出するための排出孔M13(排出部M6)とが設けられている。ケースM1の上面には、ケースM1内に粉体を供給する供給部M5が設けられている。混合粉体は、バッファタンクZ3b及び供給部M5を経由してケースM1内に至る。供給部M5には、当該供給部M5を通過する混合粉体の混合度を測定するための近赤外線センサである第二センサS2が設置される。
【0094】
回転体M2は、複数の移動部M21を備える。移動部M21には供給部M5から混合粉体が供給される。回転体M2は、回転体M2の上方に位置するモータM3によって回転駆動する。
【0095】
近赤外線センサである第三センサS3は、ケースM1の取付孔M11に取付けられており、移動部M21に供給された粉体の混合度を測定するのに用いる。
【0096】
粉体排除部M4は、ケースと、駆動体M41と、駆動体M41を駆動させる駆動装置M42とからなる。粉体排除部M4のケースは、ケースM1と一体となっている。駆動体M41は、本実施形態では円盤状であり、中央に駆動装置M42と係合する突起M411と、一部に切り欠き部M412とを備える。駆動装置M42は、
図13に示すY軸方向に対して前後駆動する先端部M421を備え、その先端側には駆動体M41の突起M411と係合する係合孔M422を備える。
【0097】
駆動装置M42の先端部M421が、
図13に示すようにY軸の正方向に移動した状態のとき、駆動体M41の切り欠き部M412がケースM1の排除孔M12の中央位置に位置する。逆に、先端部M421がY軸の負の方向に移動した状態のとき、切り欠き部M412はケースM1の排除孔M12から外れる。
【0098】
つまり、駆動装置M42の駆動により、先端部M421がY軸方向に対して負の方向に移動すると、連動して駆動体M41が時計周りに駆動し、切り欠き部M412が排除孔M12に重なり合わない。この場合は回転体M2の移動部M21の粉体は排除されない。翻って、駆動装置M42の駆動により、先端部M421がY軸方向に対して正方向に移動すると、連動して駆動体M41が反時計周りに駆動し、切り欠き部M412が排除孔M12に重なり合う。この場合は回転体M2の移動部M21の粉体が排除される。
【0099】
なお、本実施形態では、駆動体M41は時計周り及び反時計周りに駆動して回転体M2の移動部M21の粉体を排除しているが、駆動体M41が一方向にだけ回転して移動部M21の粉体を排除するようにしてもよい。
【0100】
第一センサS1、第二センサS2及び/又は第三センサS3を介して測定した粉体の混合度、即ち混合粉体における主薬の占める量又は割合(比率)が所定範囲外であることが分かると、移動部M21内にあるその混合粉体が粉体排除部M4によって排除される。なお、第一センサS1、第二センサS2、第三センサS3によるすべての混合度の測定値が所定範囲外の場合に移動部M21内の混合粉体を排除することとしてもよく、いずれかのセンサSによる測定値が所定範囲外の場合に移動部M21内の混合粉体を排除することとしてもよい。
【0101】
因みに、粉体排除部M4は、混合粉体のサンプリングに利用することもできる。
【0102】
粉体排除部M4で排除されなかった混合粉体は、排出孔M13を通過して粉体供給管191に移動する。つまり、その混合粉体は排出部M6に移動する。
【0103】
粉体供給管191に移動した混合粉体は、成形機の充填装置である攪拌フィードシューX内に導かれる前に、近赤外線センサである第四センサS4によりその混合度を測定する。さらに、本実施形態では、成形機の攪拌フィードシューX内でも、近赤外線センサである第五センサS5を用いて混合粉体の混合度を測定する。
【0104】
第四センサS4及び/又は第五センサS5を介して測定した粉体の混合度が所定範囲外である場合には、その混合粉体を一旦フィードシューXから成形機のテーブル31の臼孔4に充填し、これを上杵5及び下杵6により圧縮成形して成形品の形にする。その上で、当該成形品を、成形品回収位置18に到達する前に、成形品排除機構Wにより排除する。即ち、成形機において、不良の混合粉体が充填され成形品が打錠された臼孔4が空気噴射ノズル16aの近傍を通過するときに制御バルブ22を開弁し、空気噴射ノズル16aから空気を噴射して当該成形品をテーブル31外に吹き飛ばす。
【0105】
総じて言えば、第一センサS1、第二センサS2及び/又は第三センサS3により混合粉体の混合度が所定範囲外であることが判明したならば、その混合粉体は粉体排除部M4で排除され、第四センサS4及び/又は第五センサS5により混合粉体の混合度が所定範囲外であることが判明したならば、当該混合粉体が圧縮成形された後に成形品排除機構Wにより排除される。
【0106】
なお、成形機に実装されたロードセル25により、臼孔4内で粉体を圧縮する際の圧縮圧力が所定範囲外であることが判明した場合にも、当該臼孔4内で圧縮成形された成形品が成形品排除機構Wにより排除される。
【0107】
本実施形態のシステムにより実施される、連続式の圧縮成形品の製造の流れをおさらいする。まず、第一計量フィーダZ1aにより主薬を計量しながら供給し、第二計量フィーダZ1bにより賦形剤等を計量しながら供給する(計量供給工程)。次に、第一混合装置である垂直混合装置Z3aにそれら主薬及び賦形剤等の粉体が供給されて混合される(第一混合工程)。垂直混合装置Z3aは、略上下方向の軸である攪拌軸Z33を中心として攪拌羽根Z34が回転し、主薬及び賦形剤等の粉体を混合する。
【0108】
第一混合工程を経た主薬及び賦形剤等の混合粉体は、第二混合装置である水平混合装置Z4に供給されて再度混合される(第二混合工程)。水平混合装置Z4は、略水平方向の軸である攪拌軸Z42を中心として攪拌羽根Z44が回転し、主薬及び賦形剤等の粉体を混合する。このような工程を経ることにより、少なくとも二種類の粉体(主薬及び賦形剤等)の混合度が向上し、主薬の偏析も生じにくくなる。なお、既に述べた通り、水平混合装置Z4による第二混合工程の後に、さらなる垂直混合装置Z3bに粉体が供給されてこれが混合されてもよい(第三混合工程)。さすれば、より一層粉体の混合度が向上する。
【0109】
前記第一混合工程においては、前記粉体の少なくとも一部を貯留する貯留工程を備えるものが好ましい。つまり、複数の孔Z321を備える粉体通過部材Z32において、粉体は孔Z321を通過するが、孔Z321を通過する粉体の量より第一垂直混合装置Z3aaに供給される粉体の量のほうが多くしたり、補助羽根Z35の回転数を増加したりすることにより、粉体は貯留部Z30に貯留する。そして補助羽根Z35による攪拌により粉体は混合されつつ孔Z321を通過する。
【0110】
以上に加えて、第三計量フィーダZ1cにより滑沢剤を計量しながら供給する(滑沢剤供給工程)。本実施形態では、滑沢剤を水平混合装置Z4に供給しているが、滑沢剤の供給場所は水平混合装置Z4に限定されず、例えば第二垂直混合装置Z3ab又はフィードシューXに滑沢剤を供給してもよい。
【0111】
主薬、賦形剤等及び滑沢剤を混合して製造した混合粉体は、成形機に至るバッファタンクZ3bに供給される。バッファタンクZ3bに供給された混合粉体は、その後に混合度をセンサS2、S3により測定する(測定工程)。無論、混合粉体がバッファタンクZ3bに供給される前に、センサS1により混合粉体の混合度を測定してもよい。
【0112】
測定した混合粉体の混合度が所定範囲外の場合には、その混合粉体を排除する(排除工程)。続いて、混合粉体は、充填装置であるフィードシューXに供給される。なお、フィードシューX内でセンサS5により混合粉体の混合度を測定してもよいし、混合粉体がフィードシューXに供給される直前にセンサS4により混合粉体の混合度を測定してもよい。
【0113】
フィードシューXに供給された混合粉体は、成形機の回転盤3のテーブル31に設けている臼孔4に充填される(充填工程)。なお、既に述べた通り、粉体の充填工程に先んじて、臼孔4の内周面、下杵6の上端面及び上杵5の下端面に滑沢剤を噴射することがある(外部滑沢剤噴射工程)。臼孔4内に充填された混合粉体は、上杵5及び下杵6により圧縮成形される(圧縮成形工程)。圧縮成形された混合粉体は、成形品としてダンパ17によって成形品回収位置18に回収される。但し、本システムの制御装置Cは、粉体供給装置ZによりフィードシューXに供給され臼孔4に充填される混合粉体の混合度を、第四センサS4及び/又は第五センサS5を介して反復的に測定しており、その測定した混合粉体の混合度が所定範囲外である場合には、当該混合粉体が充填された臼孔4において圧縮成形された不良の成形品を、成形機が備える成形品排除機構Wによって排除する(成形品排除工程)。
【0114】
さらに、制御装置Cは、各臼孔4内で杵5、6により粉体を圧縮して成形品を成形する際の圧縮圧力をロードセル25を介して測定し、圧縮圧力が所定範囲外の大きさとなった場合には、圧縮圧力が所定範囲外であった臼孔4において圧縮成形された不良の成形品を成形品排除機構Wによって排除する(成形品排除工程)。臼孔4に適正量よりも多量の粉体が充填されると、ロードセル25により計測される圧縮圧力が所定範囲よりも大きくなり、臼孔4に適正量よりも少量の粉体が充填されると、ロードセル25により計測される圧縮圧力が所定範囲よりも小さくなる。何れにせよ、当該臼孔4内で圧縮成形される成形品の重量、密度及び硬度が所望の値から逸脱することとなり、不良の成形品となる。
【0115】
混合度が所定範囲外の不良の混合粉体が充填されたと推測される臼孔4や圧縮圧力が所定範囲外であった臼孔4、換言すれば不良の可能性がある成形品が、空気噴射ノズル16aの近傍を通過するタイミングは、ロータリエンコーダ23の出力信号を参照して知得することができる。
【0116】
元来、主薬の単位時間あたりの供給重量(流量)は第一計量フィーダZ1aによりフィードバック制御され、賦形剤等の単位時間あたりの供給重量は第二計量フィーダZ1bによりフィードバック制御され、かつ滑沢剤の単位時間あたりの供給重量は第三計量フィーダZ1cによりフィードバック制御されており、それらの混合比率は所望の比率となっているはずである。にもかかわらず、何らかの理由により、計量フィーダZ1から吐出され混合装置Z3a、Z4に供給される粉体の量が、その本来の目標量から乖離することがあり得る。現に、計量フィーダZ1から混合装置Z3a、Z4に供給される粉体の量が目標量よりも少ないことは間々あり、その結果として、混合粉体における主薬の占める量が所望の比率に満たず、あるいは逆に過剰となる場合がある。そのような混合粉体を圧縮成形して得た成形品は、期待される薬効を発揮することができない不良品となる。
【0117】
そうでなくとも、混合装置Z3a、Z4における粉体の混合が不十分で、成形機のフィードシューXに供給される混合粉体に含まれる主薬又は賦形剤等に偏析が生じると、個々の成形品毎に含有成分の量がばらつき、やはり不良品が発生してしまう。
【0118】
そこで、本システムの制御装置Cは、第一センサS1、第二センサS2、第三センサS3、第四センサS4及び/又は第五センサS5による混合粉体の混合度の測定値に基づいて、各計量フィーダZ1a、Z1b、Z1cによるそれぞれの粉体の供給量、垂直混合装置Z3aの攪拌軸Z33、攪拌羽根Z34及び補助羽根Z35の回転速度、水平混合装置Z4の攪拌軸Z42及び攪拌羽根Z44、垂直混合装置たるバッファタンクZ3bの攪拌軸、攪拌羽根及び補助羽根の回転速度を調節する。
【0119】
第一センサS1、第二センサS2、第三センサS3、第四センサS4及び/又は第五センサS5により反復的に測定している、混合粉体中に含まれる主薬の量又は割合と、その目標値との偏差の絶対値が所定の閾値を上回っている(つまり、主薬の占める割合が不当に小さいか不当に大きい)状態が一定時間以上続いている場合には、第一計量フィーダZ1a、第二計量フィーダZ1b及び第三計量フィーダZ1cのうちのいずれか少なくとも一つによる粉体の供給量が適正でないと考えられる。この場合、制御装置Cは、計量フィーダZ1自身による重量フィードバック制御を一時中断させる割り込みを行い、第一センサS1、第二センサS2、第三センサS3、第四センサS4及び/又は第五センサS5で測定される混合粉体中の主薬の量又は割合が目標値近傍に収束するよう、各計量フィーダZ1の駆動モータの回転速度を調節する。例えば、測定された混合粉体中の主薬の量又は割合が目標値を下回っているのであれば、第一計量フィーダZ1aによる主薬の吐出量を増加させ、及び/又は、第二計量フィーダZ1bによる賦形剤等の吐出量や第三計量フィーダZ1cによる滑沢剤の吐出量を減少させる。逆に、測定された混合粉体中の主薬の量又は割合が目標値を上回っているのであれば、第一計量フィーダZ1aによる主薬の吐出量を減少させ、及び/又は、第二計量フィーダZ1bによる賦形剤等の吐出量や第三計量フィーダZ1cによる滑沢剤の吐出量を増加させる。
【0120】
あるいは、混合粉体中に含まれる主薬の量又は割合とその目標値との偏差の絶対値が閾値を上回っている状態が一定時間以上続いている場合において、その供給量を適正化するべく、制御装置Cから各Z1a、Z1b、Z1cに指令している粉体の吐出量の目標値を変更するようにしても構わない。例えば、測定された混合粉体中の主薬の量又は割合が目標値を下回っているのであれば、第一計量フィーダZ1aに与える主薬の吐出量の目標値をそれ以前の値よりも引き上げ、及び/又は、第二計量フィーダZ1bに与える賦形剤等の吐出量の目標値や第三計量フィーダZ1cに与える滑沢剤の吐出量の目標値をそれ以前の値よりも引き下げる。逆に、測定された混合粉体中の主薬の量又は割合が目標値を上回っているのであれば、第一計量フィーダZ1aに与える主薬の吐出量の目標値をそれ以前の値よりも引き下げ、及び/又は、第二計量フィーダZ1bに与える滑沢剤等の吐出量の目標値や第三計量フィーダZ1cに与える滑沢剤の吐出量の目標値をそれ以前の値よりも引き上げる。
【0121】
第一センサS1、第二センサS2、第三センサS3、第四センサS4及び/又は第五センサS5により反復的に測定している、混合粉体中に含まれる主薬の量又は割合と、その目標値との偏差の絶対値が閾値を上回っている状態が一定時間以上続いているわけではないものの、瞬時的に又は短時間だけ偏差の絶対値が閾値を上回る場合には、成形機のフィードシューXに向けて移動する混合粉体(の主薬、賦形剤等又は滑沢剤)に偏析が生じている、即ち局所的に主薬の濃度の高い部分と低い部分とができていると考えられる。この場合、制御装置Cは、垂直混合装置Z3aの攪拌軸Z33ひいては攪拌羽根Z34、Z35の回転速度をそれまでの速度から変化させる(加減する)、水平混合装置Z4の攪拌軸Z42ひいては攪拌羽根Z44の回転速度をそれまでの速度から変化させる(加減する)、及び、垂直混合装置たるバッファタンクZ3bの攪拌軸ひいては攪拌羽根の回転速度をそれまでの速度から変化させる(加減する)ことのうちの何れか少なくとも一を実行する。これにより、粉体の混合度をより一層高める。
【0122】
なお、混合粉体中に含まれる主薬の量又は割合とその目標値との偏差の絶対値が閾値を上回っている状態が一定時間以上続いている場合においても、垂直混合装置Z3aの攪拌羽根Z34、Z35の回転速度をそれまでの速度から変化させ、水平混合装置Z4の攪拌羽根Z44の回転速度をそれまでの速度から変化させ、及び/又は、垂直混合装置Z3bの攪拌羽根の回転速度をそれまでの速度から変化させる制御を実施してかまわない。
【0123】
成形機を使用した成形品の圧縮成形では、時として、バインディングやステッィキング、キャッピング即ち成形品が割れるといった深刻な打錠障害が起こり得る。また、成形品の硬度が不十分になることもある。
【0124】
また、臼孔4内で圧縮された成形品と臼孔4の内周との摩擦が大きいと、下杵6により成形品を臼孔から押し出す際に下杵6に加わる圧力が過大化する。それにより、下杵6の頭部61とカムレールである押上レールR4とが強く摩擦して軋み、下杵6の頭部61又は押上レールR4が摩耗したり破損したりするおそれが生じる。
【0125】
このような成形品の異常又は成形機の構成部材6、R4の損耗を抑制するべく、本システムの制御装置Cは、成形品の異常の有無、成形品を臼孔4から押し出す際に下杵6に加わる圧力、臼孔4、上杵5若しくは下杵6の温度、粉体の温度、又は粉体の湿度に応じて、臼孔4に充填するべき粉体に予め混入しておく内部滑沢剤の量(粉体に占める滑沢剤の割合)、及び/又は、臼孔4の内周及び杵先53、63に塗布する外部滑沢剤の量を増減調整する。
【0126】
内部滑沢剤の量を増やすためには、粉体供給装置Zにおける第三計量フィーダZ1cによる滑沢剤の吐出量を増加させ、及び/又は、第一計量フィーダZ1aによる主薬の吐出量や第二計量フィーダZ1bによる賦形剤等の吐出量を減少させる。逆に、内部滑沢剤の量を減らすためには、第三計量フィーダZ1cによる滑沢剤の吐出量を減少させ、及び/又は、第一計量フィーダZ1aによる主薬の吐出量や第二計量フィーダZ1bによる賦形剤等の吐出量を増加させる。
【0127】
外部滑沢剤の塗布量を増やすためには、成形機における噴射装置Yの噴射ノズルY1、Y2から噴出する滑沢剤の流量を増加させ、若しくは噴射ノズルY1、Y2から滑沢剤が噴出する時間を延長し、又は噴出する滑沢剤を帯電させる静電気発生電極Y13に印加する電圧を高めて帯電する電荷量を増加させる。逆に、外部滑沢剤の塗布量を減らすためには、噴射装置Yの噴射ノズルY1、Y2から噴出する滑沢剤の流量を減少させ、若しくは噴射ノズルY1、Y2から滑沢剤が噴出する時間を短縮し、又は噴出する滑沢剤を帯電させる静電気発生電極Y13に印加する電圧を引き下げて帯電する電荷量を減少させる。
【0128】
成形品の異常の具体例としては、成形品の構成材料となる粉体が臼孔4の内周面に残留することで成形品の外周面に荒れや欠けが生じるバインディングや、粉体が上杵5の杵先53の下端面又は下杵6の杵先63の上端面に残留することで成形品の上面又は下面に荒れや欠けが生じるスティッキング、圧縮成形した成形品が割れるキャッピング、成形品の硬度の不足等を挙げることができる。バインディング及びスティッキングは、粉体に混入する内部滑沢剤の量を増やし、又は臼孔4や杵先53、63に塗布する外部滑沢剤の量を増やすことで抑制することができる。これに対し、キャッピングは、粉体に混入する内部滑沢剤の量を減らすことで抑制することができる。成形品の硬度もまた、内部滑沢剤の量を減らすことで改善(向上)することができる。
【0129】
制御装置Cは、バインディング又はスティッキングの発生を検知した場合、粉体に混入する内部滑沢剤の量を基本量(成形品の寸法、形状、重量、含有成分等に応じて定められた、当該成形品の生産の際のベースとなる量)よりも増量し、及び/又は、臼孔4や杵先53、63に塗布する外部滑沢剤の量を基本量よりも増量する。バインディング又はスティッキングの発生の有無は、例えば、圧縮成形された成形品を撮影するカメラセンサ(イメージセンサ)S7、又は臼孔4ないし杵先53、63を撮影するカメラセンサS7により得た画像を解析することで判定することができる。制御装置Cは、バインディング又はスティッキングの発生を検知したときに、これが再発しなくなるまで内部滑沢剤及び/又は外部滑沢剤の量を逓増させる。そして、バインディング又はスティッキングの発生を検知しなくなったならば、これが再発しない限りにおいて、内部滑沢剤及び/又は外部滑沢剤の量を基本量に近づけるように逓減させる。
【0130】
並びに、制御装置Cは、キャッピングの発生を検知した場合、又は成形品の硬度が閾値未満である場合に、粉体に混入する内部滑沢剤の量を基本量よりも減量する。キャッピングの発生の有無は、例えば、圧縮成形された成形品を撮影するカメラセンサS7により得た画像を解析することで判定することができる。成形品の硬度は、例えば、硬度計を用いた計測又は近赤外線センサS8を介した近赤外分光分析により知得することができる。あるいは、杵5、6が臼孔4内の粉体を圧縮する瞬間に生じる打錠音をサンプリングして音声解析することで、成形品の硬度が所望の閾値に達しているか否かを判定してもよい。制御装置Cは、キャッピングの発生を検知し、又は成形品の硬度が所望の閾値に満たないことを検知したときに、これが再発しなくなるまで内部滑沢剤の量を逓減させる。そして、キャッピングの発生や成形品の硬度不足を検知しなくなったならば、これが再発しない限りにおいて、内部滑沢剤の量を基本量に近づけるように逓増させる。成形品の硬度とその目標値との偏差を縮小するように、内部滑沢剤の量を増減させるフィードバック制御を実施しても構わない。
【0131】
加えて、制御装置Cが、キャッピングの発生を検知した場合や、成形品の硬度が閾値未満である場合に、そうでない場合と比較して、成形機のモータ8ひいては回転盤3及び杵5、6の回転速度を減速させ、杵5、6が臼孔4内の粉体に圧力を加える時間(ロール12、13、14、15が杵5、6を押圧する時間)をより長くすることもあり得る。
【0132】
さらに、制御装置Cは、成形機において成形品を臼孔4から押し出す際に下杵6に加わる圧力が閾値以上に大きいと判断した場合に、粉体に混入する内部滑沢剤の量を基本量よりも増量し、及び/又は、臼孔4や杵先53、63に塗布する外部滑沢剤の量を基本量よりも増量する。滑沢剤を増量すれば、成形品と臼孔4の内周面との間の摩擦が低減し、成形品を臼孔4から押し出す際に下杵6に加わる圧力が低下することを期待することができる。
【0133】
成形品を臼孔4から押し出す際に下杵6に加わる圧力、換言すれば下杵6の頭部61と押上レールR4との間で作用する力の大きさは、例えば、押上レールR4の変形若しくは変位を検出する変位センサ(測距センサ。非接触式変位センサであるレーザ変位センサや渦電流式磁気変位センサ、超音波式変位センサ、接触式の変位センサ(温度変化による変位量を測定するものであることがある)等)S9、下杵6の頭部61と押上レールR4との摩擦による熱を検出するする温度センサ(熱電対等)、押上レールR4のひずみを検出するひずみセンサ(歪みゲージ等)、押上レールR4が受ける衝撃を検出するショックセンサ等を用いた計測を通じて推定することができる。あるいは、下杵6の頭部61が押上レールR4に沿って摺動する瞬間に生じる騒音をサンプリングして音声解析することで、成形品を臼孔4から押し出す際に下杵6に加わる圧力の大きさが所定の閾値に達しているか否かを判定してもよい。制御装置Cは、成形品を臼孔4から押し出す際に下杵6に加わる圧力の大きさが所定の閾値以上であると判断したときに、その圧力が閾値を下回るまで内部滑沢剤及び/又は外部滑沢剤の量を逓増させる。そして、その圧力が閾値を下回ったと判断したならば、その圧力が再び閾値以上に増大しない限りにおいて、内部滑沢剤及び/又は外部滑沢剤の量を基本量に近づけるように逓減させる。成形品を臼孔4から押し出す際に下杵6に加わる圧力とその目標値との偏差を縮小するように、内部滑沢剤及び/又は外部滑沢剤の量を増減させるフィードバック制御を実施しても構わない。
【0134】
なお、制御装置Cが、所要のセンサを介して臼孔4、上杵5若しくは下杵6の温度、臼孔4に充填される粉体の温度、及び/又は、粉体の湿度を計測し、それらの温度及び/又は湿度が所定範囲外にある場合に、内部滑沢剤及び/又は外部滑沢剤の量を基本量から増減させるフィードフォワード制御を実施することも考えられる。上記の所定範囲とは、成形品の異常や下杵6の頭部61又は押上レールR4の損耗が生じるおそれのない、又はそのおそれが十分に小さいような臼孔4の温度、杵5、6の温度、粉体の温度、及び/又は、粉体の湿度の範囲をいう。つまり、それらの温度及び/又は湿度が所定範囲内にある場合には、原則として内部滑沢剤及び/又は外部滑沢剤の量を基本量に調整する。一方、それらの温度及び/又は湿度が所定範囲内にある場合には、バインディングやスティッキング、下杵6の頭部61又は押上レールR4の損耗が懸念される状況下では内部滑沢剤及び/又は外部滑沢剤の量を基本量よりも増量し、キャッピングや成形品の硬度不足が懸念される状況下では内部滑沢剤及び/又は外部滑沢剤の量を基本量よりも減量する。
【0135】
本実施形態の粉体圧縮成形処理システムの制御装置Cは、臼孔4に粉体を充填しその粉体を上杵5及び下杵6により圧縮することで成形品を成形する成形機、及び/又は、成形機に対して粉体を供給する粉体供給装置Zを制御するものであって、成形品の異常の有無、成形品を臼孔4から押し出す際に下杵6に加わる圧力、臼孔4、上杵5若しくは下杵6の温度、粉体の温度、又は粉体の湿度に応じて、粉体に混入する滑沢剤の量、及び/又は、臼孔4の内周及び杵先53、63に塗布する滑沢剤の量を増減調整する。これにより、成形機を使用した成形品の生産における成形品の異常や、成形機の構成部材である下杵6及びカムレールR4の損耗を抑制することができ、成形機及び粉体供給装置Zを停止させることなく長時間に亘り連続して稼働させることができる。従って、成形品の生産性がより一層向上する。
【0136】
なお、上記実施形態では、成形品の異常の有無、成形品を臼孔4から押し出す際に下杵6に加わる圧力、臼孔4、上杵5若しくは下杵6の温度、粉体の温度、又は粉体の湿度に応じて、滑沢剤の量を増減調整していた。だが、これに代えて、又はこれとともに、成形品の異常の有無、成形品を臼孔4から押し出す際に下杵6に加わる圧力、臼孔4、上杵5若しくは下杵6の温度、粉体の温度、又は粉体の湿度に応じて、(成形機に供給する前に予め)粉体に混合しておく内部滑沢剤と当該粉体との混合時間の長さを増減調整することも考えられる。
【0137】
臼孔4に充填するべき粉体と内部滑沢剤との混合時間が不当に短いと、粉体と滑沢剤との混合度が低下し、成形機においてバインディングやスティッキングといった打錠障害を将来する可能性が上昇する。一方で、混合時間が極端に長いと、滑沢剤が粉体の粒子をコーティングしてしまい、完成した成形品から主薬(主剤、有効成分)が溶出する速度が低下する等、成形品の品質に影響を及ぼし得る。
【0138】
バインディングやスティッキングを抑制し、又は成形品を臼孔4から押し出す際に下杵6に加わる圧力を低下させたいならば、粉体と内部滑沢剤との混合時間を延長することが有効である。従って、バインディング又はステッィキングが起こる場合や、成形品を臼孔から押し出す際に下杵に加わる圧力が閾値以上に大きくなる場合に、粉体に混入する滑沢剤と当該粉体との混合時間をより延長する。但し、混合時間が長くなりすぎることは成形品の品質上の問題を招くおそれがあるので、バインディングやスティッキングが起こらず、又は成形品を臼孔4から押し出す際に下杵6に加わる圧力が大きくならない限りにおいて、さらには成形品に成分の偏析が起こらない限りにおいて、混合時間を短縮することが好ましい。
【0139】
上記実施形態のように水平混合装置Z4を使用して粉体に内部滑沢剤を混交する場合、粉体がケースZ41内を当該ケースZ41及び攪拌棒Z42の延伸方向に沿って攪拌されながら移送され、その粉体に対して滑沢剤を投入又は添加する。これら粉体と滑沢剤との混合時間の長さは、滑沢剤をケースZ41及び攪拌棒Z42の延伸方向に沿ったどの位置から粉体に対して投入するか、換言すれば滑沢剤を投入する位置から水平混合装置Z4の排出口Z413までの距離の長さに応じて増減する。
図10に示しているように、水平混合装置Z4は、ケースZ41及び攪拌棒Z42の延伸方向に沿って複数の供給口Z412、Z412x、Z412yを備えている。排出口Z413により近い供給口Z412に第三接続管Z2c(の主管Z2c2)が接続される場合よりも、排出口Z413から遠い供給口Z412yに第三接続管Z2cが接続される場合の方が、粉体と滑沢剤との混合時間が長くなる。
【0140】
粉体と内部滑沢剤とを混合する混合装置において、人手によらずにその混合時間を操作できる(例えば、水平混合装置Z4において滑沢剤を粉体に対して投入する位置を変位させる機構、又は第三接続管Z2cが接続される供給口Z412、Z412x、Z412yを切り替える機構が実装されている)のであれば、制御装置Cが、バインディング又はスティッキングの発生を検知したとき、又は成形機において成形品を臼孔4から押し出す際に下杵6に加わる圧力が閾値以上に高くなったときに、粉体と滑沢剤との混合時間の長さをその基本量よりも延長する制御を自動的に実行することができる。そして、バインディング又はスティッキングの発生を検知しなくなり、又は成形品を臼孔4から押し出す際に下杵6に加わる圧力が閾値以下に低下したときには、粉体と滑沢剤との混合時間の長さをその基本量に近づけるべく徐々に短縮させてゆく制御を実行することができる。粉体と滑沢剤との混合時間の長さは、フィードバック制御してもよいし、フィードフォワード制御してもよい。
【0141】
本実施形態の粉体圧縮成形処理システムは、成形品を製造する成形機の稼働中、回転盤3のテーブル31及び杵保持部32、33の回転、フィードシューXから各臼孔4への粉体の充填、並びに上下の杵5、6による臼孔4内の粉体の圧縮成形の各動作を停止することなく、連続的又は断続的に粉体供給装置Zから粉体をフィードシューXに供給し続ける。
【0142】
成形機の稼働中に断続的に粉体供給装置ZからフィードシューXに粉体を供給する場合、粉体供給装置Zの要素である計量フィーダZ1a、Z1b、Z1c、混合装置Z3a、Z4、Z3b及び粉体混合度測定装置Mは、常時稼働せず断続的に稼働する、つまりは合間合間で一時的な稼働の停止が生じる。この場合の粉体供給装置Zにおける処理の流れは、
図22に示すフロー図から、停止していた成形機を起動するステップS6を除いたものに近いか、又はそれに等しい。より具体的には、粉体供給装置ZからフィードシューXに粉体を供給する際のバッチ即ち一回の供給量を、成形機において粉体が消費される速さに対応した適正量に定めておく。その上で、成形品の構成材料となる複数種類の粉体を、各計量フィーダZ1a、Z1b、Z1cから、各粉体が所要の比率となるように(特に、各計量フィーダZ1a、Z1b、Z1cによる各粉体の単位時間あたりの供給重量(流量)の比が所要の比率となるように調節する)、並びにそれら粉体の合計が一回分の供給量に等しくなるように吐出する。なおかつ、混合装置Z3a、Z4を起動し、各計量フィーダZ1a、Z1b、Z1cから吐出された粉体を混合しながらバッファタンクたる混合装置Z3bまで送る(ステップS1)。この混合粉体がバッファタンクZ3bに到達したら、一旦計量フィーダZ1a、Z1b、Z1c及び混合装置Z3a、Z4を停止し(ステップS2)、その状態で混合装置Z3b及び粉体混合度測定装置Mを起動して、一回分の供給量の粉体を供給管191ひいてはフィードシューXに向けて送り込む(ステップS3)。その後、混合装置Z3b及び粉体混合度測定装置Mを停止し(ステップS4)、再度計量フィーダZ1a、Z1b、Z1c及び混合装置Z3a、Z4を起動して、一回分の供給量の粉体を吐出し混合しながら混合装置Z3bまで送る(ステップS1)。次いで、計量フィーダZ1a、Z1b、Z1c及び混合装置Z3a、Z4を再停止し(ステップS2)、混合装置Z3b及び粉体混合度測定装置Mを再起動して、一回分の供給量の粉体を供給管191ひいてはフィードシューXに向けて送り込む(ステップS3)。上記の手順(ステップS1ないしS4)を反復する(ステップS5)ことで、断続的に粉体供給装置Zから粉体をフィードシューXに供給し続ける。
【0143】
本実施形態の粉体圧縮成形処理システムは、既に成形機が稼働している状況下では、所望の品質を備えた成形品を安定的に量産することができる。しかしながら、停止していた成形機を起動、即ちテーブル31及び杵保持部32、33の回転、フィードシューXから各臼孔4への粉体の充填、並びに上下の杵5、6による臼孔4内の粉体の圧縮成形の各動作を開始した直後の時期において、成形される成形品の品質が不良となる問題を生起することがある。例えば、成形品が要求される硬度や密度を有していなかったり、成形品内部で含有成分の偏析が生じたり、バインディング、ステッィキング、キャッピング等が起こったりする。
【0144】
そこで、本実施形態では、制御装置Cが、停止していた成形機を起動するにあたり、テーブル31及び杵保持部32、33の回転、フィードシューXから各臼孔4への粉体の充填、並びに上下の杵5、6による臼孔4内の粉体の圧縮成形の各動作を停止したままの状態で、粉体供給装置Zから成形機のフィードシューXに所定量の粉体を補給し、しかる後に成形機を起動する処理を実行する。つまり、成形機の起動に先んじて、適切に混合した粉体を予めフィードシューXの容積の大半ないし略全域を埋める程度までフィードシューX内に供給しておき、必要であれば粉体をフィードシューXの直上に位置する供給管191内のある程度の高さまで蓄積しておき、その状態で停止していた成形機を起動、テーブル31及び杵保持部32、33の回転、フィードシューXから臼孔4への粉体の充填(攪拌フィードシューXの内蔵する攪拌羽根の回転を含む)、並びに杵5、6による臼孔4内の粉体の圧縮成形の各動作を開始する。これ加えて、成形機の起動前に、混合した粉体を、フィードシューXの上流にある粉体混合度測定装置M及び/又はバッファタンクZ3bに、ある程度以上の量蓄積しておいてもよい。この準備処理により、成形機の起動当初から、所要の品質が確保された成形品の製造を可能とする。
【0145】
成形機の起動に先んじて粉体供給装置ZからフィードシューXに粉体を補給する量は、例えば500ccないし2000ccの間とする。この所定量の粉体を、複数回に分けて粉体供給装置ZからフィードシューXに送出してもよいし、一時に粉体供給装置ZからフィードシューXに送出してもよい。
【0146】
所定量の混合粉体を複数回に分けて粉体供給装置ZからフィードシューXに送出する場合、成形機の起動前にフィードシューXに補給するべき粉体の所定量を二回ないし五回に分ける。所定量が500ccないし2000ccの間の値であるならば、バッチ即ち一回の量を例えば約150ccないし600ccの間の値に設定する。そして、
図22に示すように、成形品の構成材料となる複数種類の粉体を、各計量フィーダZ1a、Z1b、Z1cから、各粉体が所要の比率となるように(特に、各計量フィーダZ1a、Z1b、Z1cによる各粉体の単位時間あたりの供給重量(流量)の比が所要の比率となるように調節する)、並びにそれら粉体の合計がバッチ量である約150ccないし600ccの間の値となるように吐出する。なおかつ、混合装置Z3a、Z4を起動し、各計量フィーダZ1a、Z1b、Z1cから吐出された粉体を混合しながらバッファタンクたる混合装置Z3bまで送る(ステップS1)。バッチ量の粉体がバッファタンクZ3bに到達したら、一旦計量フィーダZ1a、Z1b、Z1c及び混合装置Z3a、Z4を停止し(ステップS2)、その状態で混合装置Z3b及び粉体混合度測定装置Mを起動して、バッチ量の粉体を供給管191ひいてはフィードシューXに向けて送り込む(ステップS3)。その後、混合装置Z3b及び粉体混合度測定装置Mを停止し(ステップS4)、再度計量フィーダZ1a、Z1b、Z1c及び混合装置Z3a、Z4を起動して、バッチ量の粉体を吐出し混合しながら混合装置Z3bまで送る(ステップS1)。続いて、計量フィーダZ1a、Z1b、Z1c及び混合装置Z3a、Z4を再停止し(ステップS2)、混合装置Z3b及び粉体混合度測定装置Mを再起動して、バッチ量の粉体を供給管191ひいてはフィードシューXに向けて送り込む(ステップS3)。上記の手順(ステップS1ないしS4)を必要な回数反復する(ステップS5)ことで、所定量の混合粉体を供給管191及びフィードシューXに補給する。
【0147】
なお、ステップS1及びS2において、全計量フィーダZ1a、Z1b、Z1cから一斉に合計約150ccないし600ccの粉体を吐出し、それら粉体を混合しながら一挙にバッファタンクZ3bまで送るとは限らない。例えば、計量フィーダZ1c、混合装置Z3a、Z4、Z3b及び粉体混合度測定装置Mを停止しておき、計量フィーダZ1a、Z1bを起動して、これら計量フィーダZ1a、Z1bから一回分のバッチに含めるべき粉体を吐出する。計量フィーダZ1a、Z1bが一回に吐出する粉体の量の合計は、バッチ量である約150ccないし600ccから計量フィーダZ1cが一回に吐出する粉体の量を減じた量に等しい。次に、計量フィーダZ1a、Z1bを停止し、それと相前後して混合装置Z3aを起動して、計量フィーダZ1a、Z1bから吐出された粉体が合流する当該混合装置Z3aにおいて粉体を混合する。並びに、計量フィーダZ1c及び混合装置Z4を起動して、計量フィーダZ1cから追加の粉体を吐出しつつ、全ての粉体を混合してなるバッチ量の粉体をバッファタンクたる混合装置Z3bまで送る(ステップS1)。当然ながら、計量フィーダZ1cが一回に吐出する粉体の量の合計は、約150ccないし600ccから計量フィーダZ1a及び計量フィーダZ1bが一回に吐出する粉体の量を減じた量に等しい。続いて、計量フィーダZ1c及び混合装置Z3a、Z4を停止し(ステップS2)、混合装置Z3b及び粉体混合度測定装置Mを起動して、バッチ量の粉体を供給管191ひいてはフィードシューXに向けて送り込む(ステップS3)。その後、混合装置Z3b及び粉体混合度測定装置Mを停止し(ステップS4)、計量フィーダZ1a、Z1bを再起動する。上記の手順(ステップS1ないしS4)を必要な回数反復する(ステップS5)ことで、所定量の混合粉体を供給管191及びフィードシューXに補給する。
【0148】
所定量の混合粉体を一時に粉体供給装置ZからフィードシューXに送出する場合には、成形品の構成材料となる複数種類の粉体を、それら粉体を貯留している各計量フィーダZ1a、Z1b、Z1cから、各粉体が所要の比率となるように、並びにそれら粉体の合計が所定量となるように吐出する。なおかつ、混合装置Z3a、Z4、Z3b及び粉体混合度測定装置Mを起動して、各計量フィーダZ1a、Z1b、Z1cから吐出された所定量の粉体を、混合しながら供給管191ひいてはフィードシューXに向けて送り込む。
【0149】
成形機を停止している間に粉体供給装置ZからフィードシューXに粉体を補給するとき、攪拌フィードシューXが内蔵する攪拌羽根は、停止させたままとしてもよいし、回転させてもよい。但し、攪拌羽根を回転させるのは、停止しているテーブル31の臼孔4に積極的に粉体を充填する意図ではなく、フィードシューX内の容積にできるだけ偏りなく粉体を詰め入れるためである。従って、成形機の停止中に攪拌羽根を回転させる際、その回転速度は回転するテーブル31の各臼孔4に順次粉体を充填する成形機の稼働中よりも低速でよいし、又は、成形機の稼働中よりも小さい限られた回転角度若しくは回転回数だけ攪拌羽根を回転させるようにしてもよい。なお、フィードシューXがオープンフィードシューであるならば、そもそも攪拌羽根を内蔵していない。
【0150】
成形機を停止したままの状態で、混合粉体がフィードシューXに直結する粉体供給管191内の所要の高さ位置まで蓄積されたならば、成形機を起動する。
図10及び
図11に示しているように、供給管191には予め、当該供給管191の内部における混合粉体の上面の高さを知得するためのセンサS6が設置されている。センサS6は、例えば、静電容量式のレベルスイッチである。レベルスイッチS6は、供給管191の内部における粉体の上面の高さが当該レベルスイッチS6よりも高いか低いかを検出するものである。制御装置Cは、当該レベルスイッチS6を介して、混合粉体が供給管191内の所要の高さ位置まで蓄積されたか否かを判定し、成形機を起動してよいかどうかを判断する。成形機を起動して成形品の成形を開始(ステップS6)した後は、平常通り、粉体供給装置ZからフィードシューXに向けて連続的又は断続的に混合粉体を供給する。
【0151】
粉体供給装置Zが備える各フィーダZ1a、Z1b、Z1cは、その運用に先んじて、移送部材Z121を駆動するモータZ122に与えるべき制御入力(又は、操作量)即ちモータZ122の回転数又は出力トルク(モータZ122のコイルへの印加電流及び/又は印加電圧)と、当該フィーダZ1a、Z1b、Z1cの制御出力(又は、制御量)即ち同モータZ122により移送部材Z121を駆動することで当該フィーダZ1a、Z1b、Z1cから吐出される粉体の流量との関係を計測するチューニングを実行しておくことが求められる。
【0152】
上述した通り、本実施形態では、稼働を停止した成形機を起動する前に、予め所定量の粉体を粉体供給装置Zの各フィーダZ1a、Z1b、Z1cから吐出して成形機の供給管191及びフィードシューXに補給する。そこで、この機を利用して各フィーダZ1a、Z1b、Z1cのチューニングを行う。チューニングでは、各フィーダZ1a、Z1b、Z1c毎に、当該フィーダZ1a、Z1b、Z1cのモータZ122に所定の制御入力、即ち所定のモータ回転数又は出力トルクを指令し、その結果生じる制御出力、即ち当該フィーダZ1a、Z1b、Z1cが吐出する粉体の量を計測する。チューニング時にフィーダZ1a、Z1b、Z1cが吐出した粉体は、成形機の起動前に供給管191及びフィードシューXに補給するべきバッチの粉体として利用することができる。
【0153】
図23に、チューニングの対象であるフィーダZ1a、Z1b、Z1cのうちの一台が一回(分のバッチ量の粉体)の吐出機会において吐出した粉体の総量(吐出量の積算値、吐出流量の時間積分)、並びに同フィーダZ1a、Z1b、Z1cの移送機構Z12のモータZ122の回転数又は出力トルクの推移を例示している。図中、フィーダZ1a、Z1b、Z1cが吐出した粉体の量を実線で表し、同フィーダZ1a、Z1b、Z1cのモータZ122の回転数又は出力トルクを破線で表している。
【0154】
チューニング対象のフィーダZ1a、Z1b、Z1cは、所定時間t4(例えば、120秒)内に、一回の吐出機会に吐出するべき目標量の粉体を吐出する。その目標量は、稼働を停止している成形機のフィードシューXに補給する混合粉体の一回分のバッチ量に、当該フィーダZ1a、Z1b、Z1cが吐出する種類の粉体に対応した比率を乗じた値となる。例えば、成形機のフィードシューXに補給する混合粉体のうちの主薬が占める比率が40%であり、賦形剤等が占める比率が58%である場合、一回のバッチ量が300gであるならば、主薬の粉体を吐出するフィーダZ1aが一回の吐出機会に吐出するべき目標量は120g、賦形剤等の粉体を吐出するフィーダZ1bが一回の吐出機会に吐出するべき目標量は174gということになる。精度のよいチューニングのために好適な目標量は、約150gないしその前後である。
【0155】
本システムの制御装置C又はフィーダZ1a、Z1b、Z1cの制御部Z15は、一回の吐出機会における粉体の吐出開始時点0から上記の所定時間が経過する時点t4までの間を複数の期間に分割し、その各期間毎にモータZ122の回転数又は出力トルクをそれぞれ一定に操作し、計測器Z14を介して各期間中の粉体の吐出量の計測を行う。図示例では、時点0から時点t1(例えば、粉体開始時点0から60秒後)までの前半の期間と、時点t1から時点t4までの後半の期間とに二分し、前半の期間においてモータZ122の回転数又は出力トルクを第一の回転数、例えば最大値の50%に制御する。そして、後半の期間において、モータZ122の回転数又は出力トルクをこれとは異なる大きさの第二の回転数、特に前半の期間と比べてより高い回転数又は出力トルク、例えば最大値の80%前後に制御する。ここに言う最大値又は前半の期間における制御入力値(第一の回転数、ここでは最大値の50%)は、モータZ122自体の回転数又は出力の定格値又は最大値に基づくものであってもよいし、対象のフィーダZ1a、Z1b、Z1cが吐出する粉体の種類及び特性、対象のフィーダZ1a、Z1b、Z1cで使用する移送部材Z121の形状、寸法その他の仕様、当該移送部材Z121とモータZ122の間に介在する減速機の減速比等に応じて事前に定めた値(過去に当該フィーダZ1a、Z1b、Z1cから同種の粉体を吐出したときの実験値又は実績値に応じて定めた値であることがある)であってもよい。
【0156】
のみならず、制御装置C又は制御部Z15は、前半の期間において、対象のフィーダZ1a、Z1b、Z1cから吐出した粉体の総量及び/又は吐出流量、換言すれば単位時間あたりの吐出量を計測する。これにより、前半の期間にモータZ122に指令していた制御入力値、即ち最大値の50%の回転数又は出力トルクの下での、対象のフィーダZ1a、Z1b、Z1cの制御出力値、即ち対象のフィーダZ1a、Z1b、Z1cによる粉体の吐出総量及び/又は吐出流量が得られる。制御装置C又は制御部Z15は、この制御入力値と制御出力値との組[モータ回転数又は出力トルク,期間中の吐出総量又は吐出流量]をメモリに記憶保持し、以後の移送機構Z12のモータZ122の制御に援用する。
【0157】
制御装置C又は制御部Z15が、前半の期間における計測の結果から、対象のフィーダZ1a、Z1b、Z1cを制御するための制御系又は制御ループの補償要素その他のパラメータを調節し、以後の制御に用いることもあり得る。典型的には、制御出力値である粉体の吐出流量のステップ応答、パルス応答又はランプ応答から制御対象のフィーダZ1a、Z1b、Z1cをモデル化(無駄時間と一次遅れ要素との組み合わせにより近似する等)し、PID制御系の比例ゲイン、積分ゲイン及び/又は微分ゲインを決定するようなことが考えられる。補償要素その他のパラメータもまた、制御装置C又は制御部Z15のメモリに記憶保持する。
【0158】
さらに、制御装置C又は制御部Z15は、前半の期間における計測の結果に基づき、後半の期間においてモータZ122に指令する制御入力値、即ちモータ回転数又は出力トルクを増減調整し、所定時間t4の数秒前の時点t3で対象のフィーダZ1a、Z1b、Z1cが目標量の粉体を吐出し終えるように制御する。前半の期間中の粉体の総吐出量又は吐出流量が少ないほど、後半の期間にモータZ122に与える回転数又は出力トルクは高くなり、前半の期間中の粉体の総吐出量又は吐出流量が多いほど、後半の期間にモータZ122に与える回転数又は出力トルクは低くなる。
【0159】
所定時間が経過する時点t4よりも数秒早い時点t3で目標量の粉体の吐出を完了し、時点t3から時点t4までの間粉体の吐出を止めるのは、時点t3から時点t4までの間粉体の総吐出量の増加が起こらないようにし、計測器Z14を介した粉体の吐出量の計測を安定させ計測結果の精度を一層高める意図である。因みに、粉体の総吐出量が目標量に到達する時点t3の数秒前の時点t2から、モータZ122の回転数又は出力トルクの微調整(特に、微減)が生じる。
【0160】
しかして、制御装置C又は制御部Z15は、後半の期間においても、対象のフィーダZ1a、Z1b、Z1cから吐出した粉体の総量及び/又は吐出流量を計測する。これにより、後半の期間にモータZ122に指令していた回転数又は出力トルクの下での、対象のフィーダZ1a、Z1b、Z1cによる粉体の吐出総量及び/又は吐出流量が得られる。制御装置C又は制御部Z15は、この制御入力値と制御出力値との組[モータ回転数又は出力トルク,期間中の吐出総量又は吐出流量]をメモリに記憶保持し、以後の移送機構Z12のモータZ122の制御に援用する。
【0161】
制御装置C又は制御部Z15が、後半の期間における計測の結果から、対象のフィーダZ1a、Z1b、Z1cを制御するための制御系又は制御ループの補償要素その他のパラメータを調節し、以後の制御に用いることもあり得る。
【0162】
制御装置C又は制御部Z15が、複数の期間及び/又は複数回の計測を通じて獲得した複数の制御入力値と制御出力値との組に対して、回帰分析や内挿等を通じた直線当てはめ又は曲線当てはめを行い、制御入力であるモータZ122の回転数又は出力トルクと制御出力である対象のフィーダZ1a、Z1b、Z1cの粉体の吐出総量又は吐出流量との関係式(いわば、検量線)を求めることもできる。その場合、以後の制御において、当該関係式から、所望の吐出総量又は吐出流量を実現するために必要なモータ回転数又は出力トルクを算定することができる。
【0163】
なお、チューニングにおける粉体の吐出開始時点0から所定時間が経過する時点t4までの間を、二分ではなく三以上の期間に分割しても構わない。また、各期間中のモータZ122の回転数又は出力トルクの具体的な値は、上記例には限定されない。よって、例えば、前半の期間にモータZ122の回転数又は出力トルクを最大値の30%に制御し、後半の期間にモータZ122の回転数又は出力トルクを最大値の70%前後に制御することも許される。あるいは、前半の期間にモータZ122の回転数又は出力トルクを最大値の70%に制御し、後半の期間にモータZ122の回転数又は出力トルクを最大値の30%前後に制御するというように、後半の期間におけるモータ回転数又は出力トルクを前半の期間のそれと比べてより低くすることもできる。
【0164】
粉体供給装置Zが備えている複数のフィーダZ1a、Z1b、Z1cの各々のチューニングは、個別に実行してもよいが、それら複数のフィーダZ1a、Z1b、Z1cのチューニングを同時期に並行して実行してもよい。フィーダZ1aのチューニングとフィーダZ1bのチューニングを並列に行えば、フィーダZ1aの吐出する主薬の粉体とフィーダZ1bの吐出する賦形剤等の粉体とが同時に垂直混合装置Z3aの貯留部Z30に投入されることになり、垂直混合装置Z3aにおいてそれらの粉体を偏析なく適切に混合することができる。また、このとき、あるフィーダZ1aが目標量の粉体を吐出するのに要する時間(所定時間t4)と、他のフィーダZ1bが目標量(フィーダZ1aにおける目標量と同量ではないことが多い)の粉体を吐出するのに要する時間とが、同等または近い長さであることが好ましい。さすれば、チューニングの中途で吐出流量が変動することがあるとはいえ、垂直混合装置Z3aの貯留部Z30の下部から上部まで略一定の比率で粉体が溜まることになり、各フィーダZ1a、Z1bを順次個別にチューニングする場合のように別種の粉体が貯留部Z30内で積層されず、供給管191及びフィードシューXに補給するべき粉体の混合度が良好となる。
【0165】
停止した成形機を起動する前に粉体供給装置Zから複数回に分けて成形機の供給管191及びフィードシューXに粉体を補給する場合、その各回にフィーダZ1a、Z1b、Z1cのチューニングを実行することができる、つまりは成形機の起動前に各フィーダZ1a、Z1b、Z1cのチューニングを複数回実行することができる。これにより、フィーダZ1a、Z1b、Z1cの入出力特性が安定化するとともに、フィーダZ1a、Z1b、Z1cによる粉体の吐出量の制御の精度が向上する。
【0166】
成形機の起動前に粉体供給装置Zから供給管191及びフィードシューXに粉体を補給する回数と、成形機の起動前にフィーダZ1a、Z1b、Z1cのチューニングを実行する回数とは、必ずしも一致しない。成形機の起動前に粉体供給装置Zから五回に分けて供給管191及びフィードシューXにバッチの粉体を補給するケースでは、各フィーダZ1a、Z1b、Z1cがバッチの粉体を五回に分けて断続的に吐出するが、そのうちの後半の三回のみ吐出量の計測を伴うチューニングを実行し、前半の二回はチューニングに利用しない、というように、チューニング回数が補給を目的とした粉体の吐出及び送出回数を下回ることがある。
【0167】
二回目以降のチューニングを、一回目のチューニングと同様にしてもよいが、前回までの計測により得られたモータ回転数又は出力トルクと粉体の吐出総量又は吐出流量との関係から、所定時間t4中に目標量の粉体が吐出されるであろうと予測されるモータ回転数又は出力トルクを制御入力の初期値としてモータZ122に与え、途中で制御入力の補正が必要であればこれを補正し、その補正後のモータ回転数又は出力トルクと粉体の吐出総量又は吐出流量との関係をも計測して制御装置C又は制御部Z15のメモリに記憶保持することもできる。
【0168】
成形機の起動前に複数回チューニングを実行する場合、その各回毎に、モータZ122に制御入力として与える回転数又は出力トルクを変更することができる。
【0169】
成形機が稼働を停止している状態でフィーダZ1a、Z1b、Z1cのチューニングを実行し、その実行時にフィーダZ1a、Z1b、Z1cが吐出した粉体は、バッチとして成形機のフィードシューX及びその直上の供給管191に補給される。供給管191の所要の高さ位置まで粉体が蓄積された後、成形機を起動してその稼働を開始することにより、チューニングの実行時にフィーダZ1a、Z1b、Z1cが吐出した粉体が、成形機において試運転(圧縮成形条件を決定する)としての成形品の打錠に使用される。従って、チューニング時にフィーダZ1a、Z1b、Z1cが吐出した粉体が無駄とならない。そして、成形機が製造した成形品のうち、不良の又は不完全な成形品のみが排除されて廃棄される。
【0170】
成形機を起動した後の稼働中、各フィーダZ1a、Z1b、Z1cによる粉体の吐出量を制御するに際しては、複数回のチューニングにより得た計測結果の平均値や中央値等を用いてもよいが、補給機構Z13及び/又はホッパZ11内での粉体の挙動の経時変化(例えば、堆積した粉体が圧を受けて締まり、かさ密度も増す)を勘案すると、最終回即ち最新回のチューニングの結果のみを制御に用いることもあり得よう。
【0171】
本実施形態では、上下に貫通した臼孔4が設けられているテーブル31、テーブル31の臼孔4に面するとともにテーブル31に対して相対的に変位しつつ自身の直下を通過する臼孔4に粉体を充填する充填装置X、並びに臼孔4に充填された粉体を圧縮することで成形品を成形する上杵5及び下杵6を備える粉体圧縮成形機と、当該成形機の稼働中に同成形機の充填装置Xに向けて粉体を供給する粉体供給装置Zとを具備する粉体圧縮成形処理システムであって、前記テーブル31に対する前記充填装置Xの相対変位及び粉体の臼孔4への充填、並びに前記上杵5及び前記下杵6による臼孔4に充填された粉体の圧縮成形処理の動作を停止している前記成形機を起動するにあたり、それら充填装置Xの相対変位並びに上杵5及び下杵6の圧縮動作を停止したままの状態で前記粉体供給装置ZのフィーダZ1a、Z1b、Z1cから充填装置Xに所定量の粉体を予め補給し、しかる後に成形機を起動して充填装置Xによる粉体の充填並びに上杵5及び下杵6による粉体の圧縮成形処理の動作を開始する粉体圧縮成形処理システムを構成した。本実施形態のシステムによれば、成形機の起動直後の時期から、要求される品質を有した成形品を製造することができる。
【0172】
その上で、本実施形態では、停止している成形機の起動前に前記粉体供給装置ZのフィーダZ1a、Z1b、Z1cから前記充填装置Xに所定量の粉体を補給する際に、フィーダZ1a、Z1b、Z1cのモータZ122に与える制御入力とフィーダZ1a、Z1b、Z1cが吐出する粉体の流量との関係を計測するチューニングを実行する。フィーダZ1a、Z1b、Z1cを敢えて粉体供給装置Zから取り外さずとも、フィーダZ1a、Z1b、Z1cをチューニングすることができるので、チューニングに伴う手間及び工数が削減される。しかも、チューニングの実行時にフィーダZ1a、Z1b、Z1cが吐出した粉体は、成形機において試運転としての成形機の打錠に使用されるので、無駄とならない。
【0173】
停止している前記成形機を起動するにあたり、前記粉体供給装置ZのフィーダZ1a、Z1b、Z1cから前記充填装置Xに所定量の粉体を複数回に分けて補給し、しかる後に成形機を起動するものとすれば、成形機の起動前に充填装置Xに補給される粉体が必要十分に攪拌又は混合され、成形機の起動直後の時期の成形品の不良をより確実に回避することができる。また、成形機の起動前のフィーダZ1a、Z1b、Z1cのチューニングの実行回数を増やすことができる。
【0174】
前記粉体供給装置Zが、前記成形機の稼働中、前記充填装置Xの相対変位及び粉体の充填並びに前記上杵5及び前記下杵6による粉体の圧縮成形処理の動作を停止することなく連続的又は断続的に複数種類の粉体を混合してなる粉体を前記充填装置Xに供給するものであり、停止している前記成形機を起動するにあたり、前記粉体供給装置ZのフィーダZ1a、Z1b、Z1cから前記充填装置Xに前記複数種類の粉体を混合してなる所定量の粉体を補給し、しかる後に成形機を起動するシステムとしているため、成形機の起動直後の時期から、複数種類の粉体の混合物を構成材料とし要求される品質を有した成形品を製造することができる。
【0175】
さらには、停止している成形機の起動前に複数のフィーダZ1a、Z1b、Z1cから吐出する粉体を所定の比率で混合してなる所定量の粉体を前記充填装置Xに補給する際に、各フィーダZ1a、Z1b、Z1c毎に、当該フィーダZ1a、Z1b、Z1cのモータZ122に与える制御入力と当該フィーダZ1a、Z1b、Z1cが吐出する粉体の流量との関係を計測するチューニングを実行することができる。
【0176】
本実施形態では、停止している成形機の起動前に前記粉体供給装置ZのフィーダZ1a、Z1b、Z1cから前記充填装置Xに所定量の粉体を補給する際に、フィーダZ1a、Z1b、Z1cのモータZ122を第一の回転数に制御する入力を与えている期間中の同フィーダZ1a、Z1b、Z1cによる粉体の吐出量を計測し、次いでフィーダZ1a、Z1b、Z1cのモータZ122を第一の回転数とは異なる第二の回転数に制御する入力を与えている期間中の同フィーダZ1a、Z1b、Z1cによる粉体の吐出量を計測するチューニングを実行するようにしており、チューニングの精度ひいてはフィーダZ1a、Z1b、Z1cによる粉体の吐出量の制御がより一層向上する。
【0177】
前記粉体供給装置Zが、主薬の粉体を蓄えてこれを吐出する計量フィーダZ1aと、主薬に添加する主薬以外の添加剤を蓄えてこれを吐出する計量フィーダZ1b、Z1cとを個別に備え、それら主薬及び添加剤を所定の比率で混合した上で前記充填装置Xに向けて供給するものであり、停止している前記成形機を起動するにあたり、前記粉体供給装置Zから前記充填装置Xに前記主薬及び前記添加剤を所定の比率で混合してなる所定量の粉体を補給し、しかる後に成形機を起動するシステムとしており、主薬と添加剤との含有比率が適正な医薬等の成形品を効率的に製造することができる。主薬を吐出する計量フィーダZ1aと、賦形剤を吐出する計量フィーダZ1bとは左右に並立し、それら計量フィーダZ1a、Z1bから所定の比率で主薬及び賦形剤を吐出し、これらの粉体が合流して縦方向に落下しながら、混合装置Z3aにおいて適切に混合される。
【0178】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、粉体供給装置Zの接続先、即ちフィーダZ1a、Z1b、Z1cが吐出する粉体の供給を受けて後処理の工程を実施する機器が回転式の粉体圧縮成形機であったが、粉体を用いた後処理の工程を実施する機器は粉体圧縮成形機には限定されない。例えば、充填装置からカプセルに粉体を充填してカプセル錠を製造するような機器に、本発明に係る粉体供給装置Zを接続し、同粉体供給装置ZのフィーダZ1a、Z1b、Z1cが吐出する粉体を当該機器の充填装置に供給する処理システムを構築することも可能である。この場合、稼働を停止している当該機器の起動前に、フィーダZ1a、Z1b、Z1cのチューニングを実行し、その際にフィーダZ1a、Z1b、Z1cが吐出する粉体を停止している当該機器の充填装置に補給することは言うまでもない。
【0179】
その他、各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変形することができる。
【符号の説明】
【0180】
3…回転盤
31…テーブル
4…臼孔
5…上杵
6…下杵
C…制御装置
X…充填装置
Z…粉体供給装置
Z1、Z1a、Z1b、Z1c…フィーダ
Z121…移送部材
Z122…モータ
Z14…計測器
Z15…制御部
Z3a、Z4…混合装置
Z3b…バッファタンク(混合装置)