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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】サックバックバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 23/00 20060101AFI20230623BHJP
   F16K 31/122 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
F16K23/00
F16K31/122
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019089538
(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公開番号】P2020186742
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】591257111
【氏名又は名称】サーパス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】井上 淳史
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-217843(JP,A)
【文献】特開2009-068568(JP,A)
【文献】特開2005-090639(JP,A)
【文献】特開2011-247378(JP,A)
【文献】実開昭60-058979(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 23/00
F16K 31/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流入する流入流路と弁室と前記弁室から導かれる液体を外部へ流出させる流出流路と前記流入流路から前記弁室へ液体を導く弁孔とが内部に形成されたハウジング部と、
前記弁孔の周囲に配置される弁座部に接触または離間することにより前記弁孔を閉状態または開状態とする弁体部と、
前記ハウジング部に取り付けられるとともに前記弁室と該弁室に隣接する隣接空間とを隔離するダイヤフラム部と、
前記弁体部と前記弁座部とを接触または離間させて前記閉状態と前記開状態を切り替える開閉機構と、
前記弁体部が前記弁座部に接触した前記閉状態を維持したまま前記ダイヤフラム部を前記弁座部から離間する方向に移動させて前記弁室の容積を増加させるサックバック機構と、を備え、
前記弁体部と前記ダイヤフラム部とが一体に成形されており、
前記開閉機構が前記隣接空間に配置されており、
前記弁体部と前記開閉機構とが前記隣接空間において連結されており、
前記弁体部は、前記開閉機構により軸線に沿って移動するとともに前記軸線に直交する平面上に配置される円環状の弁体面を有し、
前記弁座部は、前記軸線に直交する平面上に配置されるとともに前記弁体面よりも前記軸線に直交する径方向の幅が長い円環状の弁座面を有し、
前記閉状態において前記弁体面と前記弁座面とが接触して円環状のシール領域を形成するサックバックバルブ。
【請求項2】
液体が流入する流入流路と弁室と前記弁室から導かれる液体を外部へ流出させる流出流路と前記流入流路から前記弁室へ液体を導く弁孔とが内部に形成されたハウジング部と、
前記弁孔の周囲に配置される弁座部に接触または離間することにより前記弁孔を閉状態または開状態とする弁体部と、
前記ハウジング部に取り付けられるとともに前記弁室と該弁室に隣接する隣接空間とを隔離するダイヤフラム部と、
前記弁体部と前記弁座部とを接触または離間させて前記閉状態と前記開状態を切り替える開閉機構と、
前記弁体部が前記弁座部に接触した前記閉状態を維持したまま前記ダイヤフラム部を前記弁座部から離間する方向に移動させて前記弁室の容積を増加させるサックバック機構と、を備え、
前記弁体部と前記ダイヤフラム部とが一体に成形されており、
前記開閉機構が前記隣接空間に配置されており、
前記弁体部と前記開閉機構とが前記隣接空間において連結されており、
前記ダイヤフラム部は、
前記サックバック機構に連結される基部と、
前記基部と前記弁体部とを連結するとともに山部に隣接して谷部が形成されたベローズ部と、を有し、
前記弁体部は、前記開閉機構により軸線に沿って移動するとともに前記軸線に沿って延びる円筒状に形成されており、
前記ベローズ部の下端は、前記弁体部の外周面と前記軸線に直交する径方向の位置が一致する接続位置で該弁体部に接続されるサックバックバルブ。
【請求項3】
前記ベローズ部は、単一の前記山部に隣接して一対の前記谷部を形成したものである請求項に記載のサックバックバルブ。
【請求項4】
前記開閉機構は、
前記軸線に沿って移動可能に前記ハウジング部に収容されるとともに一端が前記弁体部に連結され、外部から導入される流体の圧力により前記弁体部を前記弁座部から離間させる方向の付勢力を受ける軸状部材と、
前記弁体部を前記弁座部に近接させる方向の付勢力を前記軸状部材に伝達する第1付勢力発生部と、を有する請求項1から請求項のいずれか一項に記載のサックバックバルブ。
【請求項5】
前記サックバック機構は、
前記軸線に沿って移動可能に前記ハウジング部に収容されるとともに一端が前記ダイヤフラム部に連結され、外部から導入される流体の圧力により前記ダイヤフラム部を前記弁座部に近接させる方向の付勢力を受ける筒状部材と、
前記ダイヤフラム部を前記弁座部から離間させる方向の付勢力を前記筒状部材に伝達する第2付勢力発生部と、を有し、
前記筒状部材は、前記軸状部材を前記軸線に沿って移動可能に内周面に沿って収容する請求項に記載のサックバックバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サックバックバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薬液等の液体が流通する配管に設置される開閉弁において、全閉操作時に生じる液だれを防止するサックバック動作を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に開示されるサックバックバルブは、弁体を全閉位置まで移動させる閉弁動作段階と、サックバック室の空間容積を増すサックバック動作段階との二段階動作を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-68568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるサックバックバルブは、バルブ本体に設けられたシート部に密着して流体流路を全閉状態とする弁体と、弁体をサックバック室から分離するダイヤフラムの基部とが、バルブ本体の内部空間において螺合により連結されている。バルブ本体の内部空間は液体が流通する空間であるため、弁体とダイヤフラムの基部との連結部に存在するパーティクルが液体に流入してしまう可能性がある。ここで、パーティクルとは、例えば、製造時に発生した原材料の粒子や過去に流通した液体に含まれる不純物等の微小な粒子をいう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、流入流路から流入して流出流路から排出される液体に不純物等のパーティクルが流入する不具合を抑制することが可能なサックバックバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の一態様にかかるサックバックバルブは、液体が流入する流入流路と弁室と前記弁室から導かれる液体を外部へ流出させる流出流路と前記流入流路から前記弁室へ液体を導く弁孔とが内部に形成されたハウジング部と、前記弁孔の周囲に配置される弁座部に接触または離間することにより前記弁孔を閉状態または開状態とする弁体部と、前記ハウジング部に取り付けられるとともに前記弁室と該弁室に隣接する隣接空間とを隔離するダイヤフラム部と、前記弁体部と前記弁座部とを接触または離間させて前記閉状態と前記開状態を切り替える開閉機構と、前記弁体部が前記弁座部に接触した前記閉状態を維持したまま前記ダイヤフラム部を前記弁座部から離間する方向に移動させて前記弁室の容積を増加させるサックバック機構と、を備え、前記弁体部と前記ダイヤフラム部とが一体に成形されており、前記開閉機構が前記隣接空間に配置されており、前記弁体部と前記開閉機構とが前記隣接空間において連結されている。
【0007】
本発明の一態様にかかるサックバックバルブによれば、開閉機構により、弁体部と弁座部とが離間した状態を弁体部と弁座部とが接触した状態に切り替えることにより、流入流路から弁室へ液体を導く弁孔が開状態から閉状態に切り替わる。その後、サックバック機構が閉状態を維持したままダイヤフラム部を弁座部から離間する方向に移動させることにより、弁室の容積が増加する。弁室の容積の増加によって流出流路の液体が吸引されるサックバック動作が行われるため、全閉操作時に生じる液だれを防止することができる。
【0008】
そして、本発明の一態様にかかるサックバックバルブによれば、弁体部とダイヤフラム部とが一体に成形されているため、これらを連結する部分を液体が流通する領域に配置する場合に比べ、液体に不純物等のパーティクルが流入する不具合を抑制することができる。また、開閉機構が隣接空間に配置されており、弁体部と開閉機構が隣接空間において連結されている。そのため、弁体部と開閉機構を液体が流通する領域で連結する場合に比べ、液体に不純物等のパーティクルが流入する不具合を抑制することができる。
【0009】
また、本発明の一態様にかかるサックバックバルブによれば、弁体部が配置される弁室がサックバック動作のために容積を増加させる空間として利用される。そのため、弁室とは別にサックバック動作のための空間を設ける場合に比べ、液体を収容する空間の容積が減少し、液体の置換性が向上する。液体の置換性の向上により、サックバックバルブ内に液体の一部が置換されずに滞留する不具合を抑制することができる。
【0010】
本発明の一態様に係るサックバックバルブにおいて、前記弁体部は、前記開閉機構により軸線に沿って移動するとともに前記軸線に直交する平面上に配置される円環状の弁体面を有し、前記弁座部は、前記軸線に直交する平面上に配置されるとともに前記弁体面よりも前記軸線に直交する径方向の幅が長い円環状の弁座面を有し、前記閉状態において前記弁体面と前記弁座面とが接触して円環状のシール領域を形成するのが好ましい。
【0011】
弁孔を閉状態とする場合、弁体部が有する円環状の弁体面と弁座部が有する円環状の弁座面とが接触し、円環状のシール領域が形成される。互いに接触する弁体面と弁座面のそれぞれが軸線に直交する平面上に配置される面であり、鋭利な角部を接触させるものではないため、接触と離間が繰り返されても接触部分が削れることがなく、パーティクルが発生することが防止される。
【0012】
本発明の一態様に係るサックバックバルブにおいて、前記ダイヤフラム部は、前記サックバック機構に連結される基部と、前記基部と前記弁体部とを連結するとともに山部に隣接して谷部が形成されたベローズ部と、を有し、前記弁体部は、前記軸線に沿って延びる円筒状に形成されており、前記ベローズ部の下端部は、前記弁体部の外周面と一致する接続位置で該弁体部に接続されるのが好ましい。
【0013】
弁体部が軸線に沿って延びる円筒状に形成されており、ベローズ部の下端部が弁体部の外周面と一致する接続位置で弁体部に接続されている。そのため、ベローズ部の谷部から山部に至る全ての領域が、弁孔から弁室に流入して円筒状の弁体部の外周面に沿って流れる液体の進行方向に存在することとなる。よって、ベローズ部の谷部の近傍に液体が滞留して不純物等のパーティクルが蓄積される不具合を抑制することができる。
【0014】
本発明の一態様にかかるサックバックバルブにおいて、前記ベローズ部は、単一の前記山部に隣接して一対の前記谷部を形成したものであるのが好ましい。
ベローズ部が単一の山部のみを有するため、一対の山部に挟まれた谷部に大きな滞留領域が形成されることがない。そのため、ベローズ部の谷部の近傍に液体が滞留して不純物等のパーティクルが蓄積される不具合を更に抑制することができる。
【0015】
本発明の一態様にかかるサックバックバルブにおいて、前記開閉機構は、前記軸線に沿って移動可能に前記ハウジング部に収容されるとともに一端が前記弁体部に連結され、外部から導入される流体の圧力により前記弁体部を前記弁座部から離間させる方向の付勢力を受ける軸状部材と、前記弁体部を前記弁座部に近接させる方向の付勢力を前記軸状部材に伝達する第1付勢力発生部と、を有する構成が好ましい。
【0016】
開閉機構が有する軸状部材には、外部から導入される流体の圧力によって弁体部を弁座部から離間させる方向の付勢力が作用し、第1付勢力発生部によって弁体部を弁座部に近接させる方向の付勢力が作用する。弁体部を弁座部から離間させる方向の付勢力が、弁体部を弁座部に近接させる方向の付勢力を上回ると、弁孔が閉状態から開状態に切り替わる。このようなサックバックバルブによれば、外部から導入する流体による圧力を調整することにより、ダイヤフラム部の動作とは独立して弁体部を動作させ、弁体部が弁座部に接触した閉状態と弁体部が弁座部から離間した開状態とを切り替えることができる。
【0017】
上記構成のサックバックバルブにおいて、前記サックバック機構は、前記軸線に沿って移動可能に前記ハウジング部に収容されるとともに一端が前記ダイヤフラム部に連結され、外部から導入される流体の圧力により前記ダイヤフラム部を前記弁座部に近接させる方向の付勢力を受ける筒状部材と、前記ダイヤフラム部を前記弁座部から離間させる方向の付勢力を前記筒状部材に伝達する第2付勢力発生部と、を有し、前記筒状部材は、前記軸状部材を前記軸線に沿って移動可能に内周面に沿って収容するのが好ましい。
【0018】
サックバック機構が有する筒状部材には、外部から導入される流体による圧力によってダイヤフラム部を弁座部に近接させる方向の付勢力が作用し、第2付勢力発生部によってダイヤフラム部を弁座部から離間させる方向の付勢力が作用する。ダイヤフラム部を弁座部から離間させる方向の付勢力が、ダイヤフラム部を弁座部に近接させる方向の付勢力を上回ると、弁室の容積が増加する。このようなサックバックバルブによれば、外部から導入する流体による圧力を調整することにより、弁体部の動作とは独立してダイヤフラム部を動作させて弁室の容積を増加させ、流出流路の液体を弁室に吸引するサックバック動作を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、流入流路から流入して流出流路から排出される液体に不純物等のパーティクルが流入する不具合を抑制することが可能なサックバックバルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るサックバックバルブの閉状態を示す縦断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るサックバックバルブの開状態を示す縦断面図である。
図3図2のA部分の部分拡大図である。
図4図3のB部分の部分拡大図である。
図5図3に示す弁孔を軸線に沿って上方からみた平面図である。
図6図1に示すサックバックバルブのサックバック動作が完了した状態を示す縦断面図である。
図7】第1変形例に係るサックバックバルブの閉状態を示す部分拡大図である。
図8】第2変形例に係るサックバックバルブの弁座部の部分拡大図である。
図9】第3変形例に係るサックバックバルブの弁座部の部分拡大図である。
図10】第4変形例に係るサックバックバルブの閉状態を示す縦断面図である。
図11】第5変形例に係るサックバックバルブの閉状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の一実施形態に係るサックバックバルブについて、図面を参照して説明する。図1はサックバックバルブ100の全閉状態を示す縦断面図であり、図2はサックバックバルブ100の全開状態を示す縦断面図である。図3は、図2のA部分を示す部分拡大図である。図4は、図3に示すB部分の部分拡大図である。図5は、図3に示す弁孔13を軸線Xに沿って上方からみた平面図である。図6は、サックバックバルブ100のサックバック動作が完了した状態を示す縦断面図である。
【0022】
本実施形態のサックバックバルブ100は、半導体製造装置に用いられる薬液等の液体を流す流路に設置され、全閉時の液だれを防止するサックバック機能を備えている。本実施形態のサックバックバルブ100は、ハウジング部10と、弁体部20と、ダイヤフラム部30と、開閉機構40と、サックバック機構50と、を備える。
【0023】
ハウジング部10は、弁体部20と、ダイヤフラム部30と、開閉機構40と、サックバック機構50とを内部に収容する筐体である。ハウジング部10は、第1ハウジング10aと、第2ハウジング10bと、第3ハウジング10cと、第4ハウジング10dとを備える。第3ハウジング10cは、フッ素樹脂材料(例えば、PTFE,変性PTFE,PFA)により形成されている。
【0024】
第1ハウジング10aと第2ハウジング10bとは、組み合わされた状態で開閉機構40およびサックバック機構50を内部に収容する収容空間(隣接空間)Sを形成する。収容空間Sは、後述する圧力室S1と連結空間S2とを含む。第3ハウジング10cは、ダイヤフラム部30が取り付けられた状態で、弁体部20を収容する弁室15を形成する。第1ハウジング10a、第2ハウジング10b、第3ハウジング10c、および第4ハウジング10dは、各ハウジングの貫通孔に締結ボルト(図示略)を挿入して締結ナットと締結することにより、連結された状態となる。
【0025】
第1ハウジング10aは、最も上方に配置される筐体である。第1ハウジング10aには、外部の圧縮空気供給源(図示略)から圧縮空気(流体)が導入される導入ポート10aAと、開閉機構40が移動可能に挿入される挿入孔10aBが形成されている。
【0026】
第2ハウジング10bは、第1ハウジング10aの下方に配置される筐体である。第2ハウジング10bには、サックバック機構50が移動可能に挿入される貫通孔10bAと、スプリング52が保持される保持孔10bBが形成されている。第1ハウジング10aと第2ハウジング10bとの間には、導入ポート10aAから導入される圧縮空気が導かれるとともに開閉機構40およびサックバック機構50が配置される空間である圧力室S1が形成される。
【0027】
圧力室S1は、後述する軸状部材41と筒状部材51とハウジング部10の内周面により画定される空間である。圧力室S1に導入された圧縮空気の圧力により、軸状部材41には軸線Xの上方に向けた付勢力が付与され、筒状部材51には軸線Xの下方に向けた付勢力が付与される。
【0028】
第3ハウジング10cは、第2ハウジング10bの下方に配置される筐体である。第3ハウジング10cには、流入流路11と、流出流路12と、弁孔13と、弁座部14と、弁室15とが内部に形成されている。流入流路11、流出流路12、弁孔13、弁座部14、弁室15の内周面は、切削加工あるいは成形により、平均粗さ0.6a以下に加工されている。
【0029】
流入流路11は、外部の配管(図示略)から液体が流入する流路である。流入流路11は、設置面Suと平行に外部の配管から液体を導く第1流入流路部11aと、設置面Suに直交する軸線Xに沿って延びる第2流入流路部11bとを連結した流路である。第1流入流路部11aに流入した液体は、ハウジング部10の軸線Xの位置で軸線Xに沿った方向に90度折れ曲がり、第2流入流路部11bから弁孔13に導かれる。
【0030】
流出流路12は、弁室15から導かれる液体を外部の配管(図示略)へ流出させる流路である。流出流路12は、弁室15の軸線X方向の上端近傍から下方へ向けて延びる第1流出流路部12aと、設置面Suに平行に外部の配管へ液体を導く第2流出流路部12bとを連結した流路である。弁室15から第1流出流路部12aへ流入した液体は、第2流出流路部12bから外部の配管へ導かれる。
【0031】
流出流路12は、弁室15の軸線X方向の上端に向けて開口するとともに第2流出流路部12bへ向けて下方に向けて傾斜した流路である。流出流路12が弁室15の上端へ向けて開口しているため、弁室15の液体が弁室15の上端近傍で滞留する不具合が抑制され、置換性が向上する。
【0032】
弁孔13は、流入流路11から弁室15へ液体を導くとともに軸線Xに沿って延びる貫通孔である。弁座部14は、弁孔13の周囲に配置されるとともに弁体部20が接触または離間することにより弁孔13を閉状態または開状態とするための部分である。
【0033】
弁室15は、弁孔13から流入する液体を収容する空間であり、軸線Xに直交する断面の断面形状が円形となっている。図3に示すように、弁座部14の近傍(軸線X方向の下端)における弁室15の内径D1よりも、ダイヤフラム部30近傍(軸線X方向の上端)における弁室15の内径D2が大きくなっている。弁室15の内周面は、軸線Xの下端から上端に向けて内径がD1からD2に漸次拡大するテーパ形状となっている。
【0034】
弁室15の軸線X方向の下端の直径を小さくしているのは、弁室15の容積を小さくして液体の置換性を向上させるためである。弁室15の軸線X方向の上端の直径を大きくしているのは、ダイヤフラム部30の薄膜部31cの外径を大きくすることにより軸線X方向の変位に対する弁室15の容積の変動を大きくし、それによりサックバック機構50による容積の変動を大きくするためである。
【0035】
第4ハウジング10dは、第3ハウジング10cの下方に配置されるとともに最も下方に配置される筐体である。第4ハウジング10dは、締結ボルト(図示略)により設置面Suに取り付けられている。
【0036】
弁体部20は、開閉機構40により軸線Xに沿って移動し、弁孔13の周囲に配置される弁座部14に接触または離間することにより弁孔13を開状態または閉状態とする部材である。図1から図3に示すように、弁体部20は、第3ハウジング10cに形成される弁室15に収容されている。図3に示すように、弁体部20は、軸線Xに沿って延びる円筒状に形成されている。
【0037】
弁体部20は、下端の外周端に軸線X回りに環状に形成される弁体面20aを、軸線Xに直交する平面上に配置される弁座部14の弁座面14aに接触させて円環状のシール領域SAを形成することにより、弁孔13を閉状態とする。弁体面20aと弁座面14aは、切削加工、研磨加工、あるいは成形により平均粗さ0.1a以下に加工されている。
【0038】
図4は、図3のB部分の部分拡大図である。図4に実線で示す弁体部20は、弁体面20aが弁座面14aから離間した開状態を示す。図4に破線で示す弁体部20は、弁体面20aが弁座面14aに接触した閉状態を示す。図5は、図3に示す弁孔13を軸線Xに沿って上方からみた平面図である。
【0039】
図4および図5に示すように、弁体部20は、軸線Xに直交する平面PL1上に配置される円環状の弁体面20aを有する。弁座部14は、軸線Xに直交する平面PL2上に配置される円環状の弁座面14aを有する。弁座面14aは、弁室15の底面15aから軸線X方向に沿って高さH1だけ高い位置に配置される。弁体面20aの軸線Xに直交する径方向の幅はW1であり、弁座面14aの軸線Xに直交する径方向の幅はW2である。図4および図5に示すように、弁座面14aの径方向の幅W2は、弁体面20aの径方向の幅W1よりも長い。
【0040】
図4の破線に示すように、弁体面20aが弁座面14aに接触した閉状態となると、弁体面20aの全領域が弁座面14aに接触した状態となる。図5に示すシール領域SAは、弁座面14aに接触した弁体面20aの全領域を示す。シール領域SAは、弁孔13を取り囲む全周に形成され、弁孔13から弁室15へ液体が流入することを遮断する。
【0041】
ダイヤフラム部30は、第2ハウジング10bと第3ハウジング10cとに挟まれた状態でハウジング部10に取り付けられる部材である。ダイヤフラム部30は、弁室15と弁室15に隣接する収容空間Sとを隔離する。前述したように、収容空間Sは、ハウジング部10の内側の空間であり、開閉機構40およびサックバック機構50を収容する空間である。
【0042】
図3に示すように、ダイヤフラム部30は、サックバック機構50の筒状部材51に連結される基部31と、弁体部20に連結されるベローズ部32とを有する。ダイヤフラム部30は、フッ素樹脂材料(例えば、PTFE)により弁体部20と一体に成形される部材である。ダイヤフラム部30の液体と接触する部分は、切削加工あるいは成形により、平均粗さ0.6a以下に加工されている。
【0043】
図3に示すように、基部31は、第2ハウジング10bと第3ハウジング10cに挟まれた状態で保持される円環状の外周部31aと、サックバック機構50の筒状部材51の外周面に連結される円環状の内周部31bと、外周部31aの内周端と内周部31bの外周端とを接続する薄膜状の薄膜部31cとを有する。
【0044】
図3に示すように、ベローズ部32は、軸線Xを中心として外周側へ突出する単一の山部32aと山部32aに隣接した上部および下部に配置される一対の谷部32bとが形成され、軸線Xに沿って伸縮可能な部材である。ベローズ部32の下端は、弁体部20の外周面と径方向の位置が一致する接続位置CPで弁体部20に接続されている。ベローズ部32の谷部32bは、軸線Xに直交する径方向において、接続位置CPと同じ位置に配置されている。
【0045】
開閉機構40は、弁体部20と弁座部14とを接触または離間させて閉状態と開状態を切り替える機構である。開閉機構40は、軸線Xに沿って軸状に形成される軸状部材41と、弁体部20を弁座部14に近接させる方向の付勢力を軸状部材41に伝達するスプリング(第1付勢力発生部)42と、を有する。
【0046】
軸状部材41は、軸線Xに沿って移動可能にハウジング部10に収容される部材である。図3に示すように、軸状部材41の下端の外周面には、雄ねじ41aが形成されている。雄ねじ41aは、弁体部20の内周面に形成される雌ねじ20bに締結される。軸状部材41の下端は、雄ねじ41aを雌ねじ20bに締結することにより、弁体部20に連結される。
【0047】
図3に示すように、開閉機構40の軸状部材41と弁体部20とを連結する雄ねじ41aと雌ねじ20bからなる連結部分は、連結空間S2に配置されている。連結空間S2は、前述した収容空間Sに含まれる空間であり、液体が流通する弁室15から隔離された空間である。雄ねじ41aと雌ねじ20bからなる連結部分は、製造時に発生した原材料の粒子等のパーティクルが存在するため、液体が流入するとパーティクルが液体に混入してしまう。本実施形態では、連結部分が弁室15等の液体が流通する領域ではなく液体が流通しない連結空間S2に配置されている。そのため、製造時に発生した原材料の粒子等のパーティクルが液体に混入することはない。
【0048】
軸状部材41は、導入ポート10aAから圧力室S1へ導入される圧縮空気の圧力から軸線Xの上方へ向けた上方付勢力を受ける。この上方付勢力は、弁体部20を弁座部14から離間させる方向の付勢力である。また、軸状部材41は、スプリング42から軸線Xの下方へ向けた下方付勢力を受ける。この下方付勢力は、弁体部20を弁座部14に近接させる方向の付勢力である。軸状部材41は、下方付勢力が上方付勢力を上回る場合に軸線Xに沿って下方へ移動し、上方付勢力が下方付勢力を上回る場合に軸線Xに沿って上方へ移動する。
【0049】
スプリング42は、軸状部材41の上端に設けられた凹所41bに収容されるとともに軸状部材41に軸線Xの下方へ向けた下方付勢力を伝達する弾性部材である。スプリング42が軸状部材41に伝達する下方付勢力は、弁孔13を閉状態とする動力として利用される。
【0050】
サックバック機構50は、弁体部20が弁座部14に接触した閉状態を維持したままダイヤフラム部30を弁座部14から離間する方向に移動させる機構である。サックバック機構50は、ダイヤフラム部30を弁座部14から離間する方向に移動させることにより、弁室15の容積を増加させ、流出流路12から弁室15へ液体を吸引する。
【0051】
サックバック機構50は、軸線Xに沿って筒状に形成される筒状部材51と、ダイヤフラム部30を弁座部14から離間させる方向の付勢力を筒状部材51に伝達するスプリング(第2付勢力発生部)52と、を有する。
【0052】
筒状部材51は、軸線Xに沿って移動可能にハウジング部10に収容される部材である。筒状部材51は、軸状部材41を軸線Xに沿って移動可能に収容する内周面を有する。軸状部材41は、筒状部材51の内周面に沿って軸線上を移動することができる。このように、軸状部材41が内側に配置され、筒状部材51が外側に配置されるため、軸状部材41と筒状部材51がそれぞれ独立に軸線Xに沿って移動可能である。
【0053】
図3に示すように、筒状部材51の下端の外周面には、径方向の外側に突出する突出部51aが形成されている。突出部51aは、ダイヤフラム部30の内周部31bの内周面に形成された溝部31dに挿入される。筒状部材51の下端は、突出部51aを溝部31dに挿入することにより、ダイヤフラム部30に連結される。
【0054】
筒状部材51は、導入ポート10aAから圧力室S1へ導入される圧縮空気の圧力から軸線Xの下方へ向けた下方付勢力を受ける。この下方付勢力は、ダイヤフラム部30を弁座部14に近接させる方向の付勢力である。また、筒状部材51は、スプリング52から軸線Xの上方へ向けた上方付勢力を受ける。この上方付勢力は、ダイヤフラム部30を弁座部14から離間させる方向の付勢力である。筒状部材51は、下方付勢力が上方付勢力を上回る場合に軸線Xに沿って下方へ移動し、上方付勢力が下方付勢力を上回る場合に軸線Xに沿って上方へ移動する。
【0055】
スプリング52は、第2ハウジング10bの保持孔10bBに保持されるとともに筒状部材51に軸線Xの上方へ向けた上方付勢力を伝達する弾性部材である。スプリング52が筒状部材51に伝達する上方付勢力は、弁孔13を閉状態とした後に弁室15の容積を増加させる動力として利用される。
【0056】
次に、本実施形態のサックバックバルブ100の動作について説明する。
まず始めに、サックバックバルブ100の閉状態について説明する。
圧力室S1から軸状部材41に与えられる上方付勢力よりもスプリング42から軸状部材41に伝達される下方付勢力が大きい場合、サックバックバルブ100は、図1に示す閉状態に維持される。図1に示す閉状態においては、スプリング42から軸状部材41に伝達される下方付勢力により弁体部20が弁座部14に接触し、弁孔13が閉じられた閉状態となる。
【0057】
次に、サックバックバルブ100の開状態について説明する。
圧力室S1から軸状部材41に与えられる上方付勢力がスプリング42から軸状部材41に伝達される下方付勢力を上回ると、サックバックバルブ100は、図2に示す開状態となる。図2に示す開状態においては、圧力室S1から軸状部材41に伝達される上方付勢力がスプリング42から軸状部材41に伝達される下方付勢力を上回り、弁体部20が弁座部14から離間して弁孔13が開かれた開状態となる。
【0058】
最後に、サックバックバルブ100のサックバック動作について説明する。
図2に示すサックバックバルブ100の開状態から圧力室S1の圧力を減少させると、圧力室S1から軸状部材41に伝達される上方付勢力よりもスプリング42から軸状部材41に伝達される下方付勢力が大きくなり、弁体部20が弁座部14に接触して弁孔13が閉じられた図1に示す状態となる。
【0059】
その後、圧力室S1の圧力を更に減少させると、圧力室S1から筒状部材51に与えられる下方付勢力よりもスプリング52から筒状部材51に伝達される上方付勢力が大きくなり、筒状部材51が上方へ移動する。筒状部材51が上方へ移動するのに伴ってダイヤフラム部30の基部31が弁座部14から離間する方向に移動する。
【0060】
基部31が軸線Xに沿って上方へ更に移動すると、ベローズ部32が伸張するとともにダイヤフラム部30の薄膜部31cが上昇し、弁室15の容積が増大する。弁室15の容積が増すと、流出流路12から弁室15へ液体が吸引される。また、それに伴って、流出流路12に接続される配管(図示略)から液体が流出流路12側へ吸引される。これにより、流出流路12の下流側の配管において液だれが防止される。
【0061】
ここで、図1に示す符号M1は、弁体部20が弁座部14から離間した開状態から弁体部20が弁座部14に接触した閉状態となるまでの軸状部材41の軸線X方向の移動量である。また、図2に示す符号M2は、開状態から弁室15の容積が増大した図6に示すサックバック状態となるまでの筒状部材51の軸線X方向の移動量である。そして、移動量M2は移動量M1よりも大きい。そのため、開状態から閉状態となるまでの軸状部材41の軸線X方向の移動量よりも、開状態からサックバック状態となるまでの筒状部材51の軸線X方向の移動量が大きくなる。そのため、開状態から閉状態となった後に筒状部材51が軸線X方向の上方に向けてさらに移動し、閉状態を維持したまま弁室15の容積が増大する。
【0062】
以上説明した本実施形態のサックバックバルブ100が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態のサックバックバルブ100によれば、開閉機構40により、弁体部20と弁座部14とが離間した状態を弁体部20と弁座部14とが接触した状態に切り替えることにより、流入流路11から弁室15へ液体を導く弁孔13が開状態から閉状態に切り替わる。その後、サックバック機構50が閉状態を維持したままダイヤフラム部30を弁座部14から離間する方向に移動させることにより、弁室15の容積が増加する。弁室15の容積の増加によって流出流路12の液体が吸引されるサックバック動作が行われるため、全閉操作時に生じる液だれを防止することができる。
【0063】
そして、本実施形態のサックバックバルブ100によれば、弁体部20とダイヤフラム部30とが一体に成形されているため、これらを連結する部分を液体が流通する領域に配置する場合に比べ、液体に不純物等のパーティクルが流入する不具合を抑制することができる。また、開閉機構40が収容空間Sに配置されており、弁体部20と開閉機構40が収容空間Sに含まれる連結空間S2において連結されている。そのため、弁体部20と開閉機構40を液体が流通する領域で連結する場合に比べ、液体に不純物等のパーティクルが流入する不具合を抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態のサックバックバルブ100によれば、弁孔13を閉状態とする場合、弁体部20が有する円環状の弁体面20aと弁座部14が有する円環状の弁座面14aとが接触し、円環状のシール領域SAが形成される。互いに接触する弁体面20aと弁座面14aのそれぞれが軸線Xに直交する平面上に配置される面であり、鋭利な角部を接触させるものではないため、接触と離間が繰り返されても接触部分が削れることがなく、パーティクルが発生することが防止される。
【0065】
また、本実施形態のサックバックバルブ100によれば、弁体部20が軸線Xに沿って延びる円筒状に形成されており、ベローズ部32の下端部が弁体部20の外周面と一致する接続位置CPで弁体部20に接続されている。そのため、ベローズ部32の谷部32bから山部32aに至る全ての領域が、弁孔13から弁室15に流入して円筒状の弁体部20の外周面に沿って流れる液体の進行方向に存在することとなる。
【0066】
よって、ベローズ部32の谷部32bの近傍に液体が滞留して不純物等のパーティクルが蓄積される不具合を抑制することができる。また、ベローズ部32が単一の山部32aのみを有するため、一対の山部に挟まれた谷部に大きな滞留領域が形成されることがない。そのため、ベローズ部32の谷部32bの近傍に液体が滞留して不純物等のパーティクルが蓄積される不具合を更に抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態のサックバックバルブ100によれば、開閉機構40が有する軸状部材41には、外部から導入される圧縮空気の圧力によって弁体部20を弁座部14から離間させる方向の上方付勢力が作用し、スプリング42によって弁体部20を弁座部14に近接させる方向の下方付勢力が作用する。弁体部20を弁座部14から離間させる方向の上方付勢力が、弁体部20を弁座部14に近接させる方向の下方付勢力を上回ると、弁孔13が閉状態から開状態に切り替わる。
【0068】
このようなサックバックバルブ100によれば、外部から導入する圧縮空気による圧力を調整することにより、ダイヤフラム部30の動作とは独立して弁体部20を動作させ、弁体部20が弁座部14に接触した閉状態と弁体部20が弁座部14から離間した開状態とを切り替えることができる。
【0069】
また、本実施形態のサックバックバルブ100によれば、サックバック機構50が有する筒状部材51には、外部から導入される圧縮空気による圧力によってダイヤフラム部30を弁座部14に近接させる方向の下方付勢力が作用し、スプリング52によってダイヤフラム部30を弁座部14から離間させる方向の上方付勢力が作用する。ダイヤフラム部30を弁座部14から離間させる方向の上方付勢力が、ダイヤフラム部30を弁座部14に近接させる方向の下方付勢力を上回ると、弁室15の容積が増加する。
【0070】
このようなサックバックバルブ100によれば、外部から導入する圧縮空気による圧力を調整することにより、弁体部20の動作とは独立してダイヤフラム部30を動作させて弁室15の容積を増加させ、流出流路12の液体を弁室15に吸引するサックバック動作を行うことができる。
【0071】
〔他の実施形態〕
以上の説明において、ベローズ部32は、単一の山部32aに隣接して一対の谷部32bを形成したものであったが、他の態様であってもよい。例えば、図7の第1変形例に示すように、ベローズ部32は、複数の山部32aとそれらに隣接する複数の谷部32bを形成したものであってもよい。図7は、山部32aを2つ備える例であるが、山部32aを3つ以上備えるものとしてもよい。
【0072】
山部32aを多くすることで、1つの山部32aの軸線X方向の変形量を抑えられるため、ダイヤフラム部30が過大に変形することによって破断にいたる不具合を抑制することができる。一方、図3に示す単一の山部32aを有するベローズ部32は、複数の山部32aを備える場合に比べ、一対の山部32aの間に設けられる谷部32bにパーティクルが蓄積する不具合を抑制できる点で有利である。
【0073】
また、以上の説明において、弁座部14の弁座面14aは、弁室15の底面15aから軸線Xに沿って高さH1だけ高い位置に配置されるものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、図8の第2変形例に示すように、弁座部14の弁座面14aを弁室15の底面15aと軸線X方向の同一の位置に配置してもよい。また、例えば、図9の第3変形例に示すように、弁座部14の弁座面14aを弁室15の底面15aよりも軸線Xに沿って高さH2だけ低い位置に配置してもよい。
【0074】
また、以上の説明において、開閉機構40は軸状部材41に軸線Xに沿った下方に向けた下方付勢力を発生するスプリング42を備えるものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、図10の第3変形例に示すように、第1ハウジング10aに外部の圧縮空気供給源(図示略)から圧縮空気が導入される導入ポート10aCを形成し、軸状部材41に下方付勢力を伝達する圧力室S3へ圧縮空気を導入するようにしてもよい。
【0075】
図10に示すように、圧力室S3は、導入ポート10aCから圧縮空気が導入される空間であり、導入された圧縮空気の圧力により軸状部材41を下方へ向けて付勢する。導入ポート10aCから圧力室S3に圧縮空気が導入される場合に弁体部20が弁座部14に接触して閉状態となり、導入ポート10aCから圧力室S3に圧縮空気が導入されず、導入ポート10aAから圧力室S1に圧縮空気が導入される場合に、弁体部20が弁座部14から離間して開状態となる。このようにすることで、圧縮空気を導入ポート10aCから導入することにより、サックバックバルブ100の弁孔13を確実に閉状態とすることができる。
【0076】
また、以上の説明において、サックバック機構50は筒状部材51に軸線Xに沿った上方に向けた上方付勢力を発生するスプリング52を備えるものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、図11の第4変形例に示すように、第2ハウジング10bに外部の圧縮空気供給源(図示略)から圧縮空気が導入される導入ポート10bCを形成し、筒状部材51に上方付勢力を伝達する圧力室S4へ圧縮空気を導入するようにしてもよい。
【0077】
図11に示すように、圧力室S4は、導入ポート10bCから圧縮空気が導入される空間であり、導入された圧縮空気の圧力により筒状部材51を上方へ向けて付勢する。導入ポート10bCから圧力室S4に圧縮空気が導入される場合にダイヤフラム部30が弁座部14から離間して弁室15の容積が増加し、導入ポート10bCから圧力室S4に圧縮空気が導入されず、導入ポート10aAから圧力室S1に圧縮空気が導入される場合に、ダイヤフラム部30が弁座部14に近接して弁室15の容積が減少する。
【0078】
なお、図10に示す第3変形例において、スプリング52に替えて導入ポート10bCと導入ポート10bCから圧縮空気が導入される圧力室S4を設けるようにしてもよい。この場合、サックバックバルブ100は、スプリング42およびスプリング52の双方を備えないものとなる。また、この場合、軸状部材41に対する付勢力は、圧力室S1からの圧力と圧力室S3からの圧力の差によって調整される。また、筒状部材51に対する付勢力は、圧力室S1からの圧力と圧力室S4からの圧力の差によって調整される。
【符号の説明】
【0079】
10 ハウジング部
11 流入流路
12 流出流路
13 弁孔
14 弁座部
14a 弁座面
15 弁室
20 弁体部
20a 弁体面
30 ダイヤフラム部
31 基部
32 ベローズ部
32a 山部
32b 谷部
40 開閉機構
41 軸状部材
42 スプリング(第1付勢力発生部)
50 サックバック機構
51 筒状部材
52 スプリング(第2付勢力発生部)
100 サックバックバルブ
CP 接続位置
PL1,PL2 平面
Su 設置面
S 収容空間(隣接空間)
S1,S3,S4 圧力室
S2 連結空間
SA シール領域
X 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11