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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】トランスミッション構造及び作業車輌
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/10 20060101AFI20230623BHJP
   F16H 61/04 20060101ALI20230623BHJP
   B60K 17/06 20060101ALI20230623BHJP
   F16H 47/04 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
B60K17/10 C
F16H61/04
B60K17/06 C
F16H47/04 C
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2019125483
(22)【出願日】2019-07-04
(65)【公開番号】P2020152364
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2018197738
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018218789
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018221546
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018231234
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019049886
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】岩木 浩二
(72)【発明者】
【氏名】小和田 七洋
(72)【発明者】
【氏名】笹原 謙悟
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-189144(JP,A)
【文献】特開2007-91139(JP,A)
【文献】特開2012-62925(JP,A)
【文献】特開2000-335265(JP,A)
【文献】特開2000-205391(JP,A)
【文献】特開2007-230554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/10
F16H 61/04
B60K 17/06
F16H 47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からポンプ軸に作動的に入力される回転動力を出力調整部材の作動位置に応じて少なくとも第1HST速から第2HST速の間の回転動力に無段変速してモータ軸から出力するHSTと、
第1~第3要素を有し、前記第3要素がHST出力の入力部として作用する遊星歯車機構と、
変速出力軸と、
前記駆動源の回転動力を入力側第1変速比で前記第1要素に作動伝達可能な入力側第1伝動機構と、
前記駆動源の回転動力を入力側第2変速比で前記第2要素に作動伝達可能な入力側第2伝動機構と、
前記入力側第1伝動機構及び前記入力側第2伝動機構の動力伝達をそれぞれ係脱させる入力側第1クラッチ機構及び入力側第2クラッチ機構と、
前記第2要素の回転動力を出力側第1変速比で前記変速出力軸に作動伝達可能な出力側第1伝動機構と、
前記第1要素の回転動力を出力側第2変速比で前記変速出力軸に作動伝達可能な出力側第2伝動機構と、
前記出力側第1伝動機構及び前記出力側第2伝動機構の動力伝達をそれぞれ係脱させる出力側第1クラッチ機構及び出力側第2クラッチ機構と、
変速操作部材と、
前記HSTの変速状態を直接又は間接的に検出するHSTセンサと、
前記変速出力軸の回転速度を直接又は間接的に検出する出力センサと、
前記出力調整部材、前記入力側第1及び第2クラッチ機構、並びに、前記出力側第1及び第2クラッチ機構の作動制御を司る制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記HSTセンサ及び前記出力センサの検出信号に基づき、前記変速出力軸の回転速度が所定の切替速未満の低速状態においては、前記入力側及び出力側第1クラッチ機構を係合状態とし且つ前記入力側及び出力側第2クラッチ機構を遮断状態とすることで前記第1要素を前記駆動源から作動的に伝達される基準動力の入力部として作用させ且つ前記第2要素を合成回転動力の出力部として作用させる第1伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第1HST速から第2HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させる一方で、前記変速出力軸の回転速度が切替速以上の高速状態においては、前記入力側及び出力側第1クラッチ機構を遮断状態とし且つ前記入力側及び出力側第2クラッチ機構を係合状態とすることで前記第1要素を出力部として作用させ且つ前記第2要素を基準動力の入力部として作用させる第2伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第2HST速から第1HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、
前記入力側第1及び第2変速比は、第1伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第2要素の回転速と第2伝動状態の際に前記入力側第2伝動機構を介して伝達される回転動力による前記第2要素の回転速とが同一となり、且つ、第2伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第1要素の回転速と第1伝動状態の際に前記入力側第1伝動機構を介して伝達される回転動力による前記第1要素の回転速とが同一となるように設定されており、
前記出力側第1及び第2変速比は、HST出力が第2HST速とされた際に前記変速出力軸に現出される回転速が第1及び第2伝動状態において同一となるように設定されていることを特徴とするトランスミッション構造。
【請求項2】
駆動源からポンプ軸に作動的に入力される回転動力を出力調整部材の作動位置に応じて少なくとも第1HST速から第2HST速の間の回転動力に無段変速してモータ軸から出力するHSTと、
第1~第3要素を有し、前記第3要素がHST出力の入力部として作用する遊星歯車機構と、
変速出力軸と、
前記駆動源の回転動力を入力側第1変速比で前記第1要素に作動伝達可能な入力側第1伝動機構と、
前記駆動源の回転動力を入力側第2変速比で前記第2要素に作動伝達可能な入力側第2伝動機構と、
前記入力側第1伝動機構及び前記入力側第2伝動機構の動力伝達をそれぞれ係脱させる入力側第1クラッチ機構及び入力側第2クラッチ機構と、
前記第2要素及び前記第1要素から前記変速出力軸への動力伝達をそれぞれ係脱させる出力側第1及び第2クラッチ機構と、
変速操作部材と、
前記HSTの変速状態を直接又は間接的に検出するHSTセンサと、
前記変速出力軸の回転速度を直接又は間接的に検出する出力センサと、
前記出力調整部材、前記入力側第1及び第2クラッチ機構、並びに、前記出力側第1及び第2クラッチ機構の作動制御を司る制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記HSTセンサ及び前記出力センサの検出信号に基づき、前記変速出力軸の回転速度が所定の切替速未満の低速状態においては、前記入力側及び出力側第1クラッチ機構を係合状態とし且つ前記入力側及び出力側第2クラッチ機構を遮断状態とすることで前記第1要素を前記駆動源から作動的に伝達される基準動力の入力部として作用させ且つ前記第2要素を合成回転動力の出力部として作用させる第1伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第1HST速から第2HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させる一方で、前記変速出力軸の回転速度が切替速以上の高速状態においては、前記入力側及び出力側第1クラッチ機構を遮断状態とし且つ前記入力側及び出力側第2クラッチ機構を係合状態とすることで前記第1要素を出力部として作用させ且つ前記第2要素を基準動力の入力部として作用させる第2伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第2HST速から第1HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、
前記入力側第1及び第2変速比は、第1伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第2要素の回転速と第2伝動状態の際に前記入力側第2伝動機構を介して伝達される回転動力による前記第2要素の回転速とが同一となり、且つ、第2伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第1要素の回転速と第1伝動状態の際に前記入力側第1伝動機構を介して伝達される回転動力による前記第1要素の回転速とが同一となるように設定されていることを特徴とするトランスミッション構造。
【請求項3】
前記制御装置は、第1伝動状態及び第2伝動状態の間の切替時には、切替後の伝動状態において前記変速出力軸に現出される回転速が切替前の伝動状態において前記変速出力軸に現出されている回転速に一致又は近接するように、前記出力調整部材を作動させることを特徴とする請求項2に記載のトランスミッション構造。
【請求項4】
前記第1及び第2伝動状態の切替過渡期では、前記入力側第1及び第2クラッチ機構の双方が係合状態とされ且つ前記出力側第1及び第2クラッチ機構の双方が係合状態とされた二重伝動状態が現出されることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のトランスミッション構造。
【請求項5】
前記入力側第1及び第2クラッチ機構によって形成される入力側クラッチユニット並びに前記出力側第1及び第2クラッチ機構によって形成される出力側クラッチユニットの少なくとも一方はドグクラッチ式とされており、
ドグクラッチ式のクラッチユニットは、対応する回転軸に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持され、軸線方向一方側及び他方側にそれぞれ第1及び第2凹凸係合部を有するスライダを有し、
前記スライダは、軸線方向一方側の第1位置に位置されると前記第2凹凸係合部が対応する凹凸係合部に対して非係合とされつつ前記第1凹凸係合部が対応する凹凸係合部に係合されることで第1クラッチ機構だけを係合状態とし、軸線方向他方側の第2位置に位置されると前記第1凹凸係合部が対応する凹凸係合部に対して非係合とされつつ前記第1凹凸係合部が対応する凹凸係合部に対して係合されることによって第2クラッチ機構だけを係合状態とし、且つ、前記スライダが軸線方向に関し第1及び第2位置の間の中間位置に位置されている際には前記第1及び第2凹凸係合部の双方が対応する凹凸係合部に係合されることによって第1及び第2クラッチ機構の双方を係合状態とすることを特徴とする請求項4に記載のトランスミッション構造。
【請求項6】
前記入力側第1伝動機構は、前記駆動源に作動連結された主駆動軸に相対回転自在に支持された入力側第1駆動ギヤと、前記入力側第1駆動ギヤに作動連結され、前記第1要素に相対回転不能とされた入力側第1従動ギヤとを有し、
前記入力側第2伝動機構は、前記主駆動軸に相対回転自在に支持された入力側第2駆動ギヤと、前記入力側第2駆動ギヤに作動連結され、前記第2要素に相対回転不能とされた入力側第1従動ギヤとを有し、
前記入力側クラッチユニットはドグクラッチ式とされ、前記スライダとして入力側スライダを有しており、
前記入力側スライダは、前記入力側第1及び第2駆動ギヤの間において前記主駆動軸に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持されており、第1位置に位置されると前記第2凹凸係合部が前記第入力側第2駆動ギヤの凹凸係合部に対して非係合とされつつ前記第1凹凸係合部が前記入力側第1駆動ギヤの凹凸係合部に係合されることで前記入力側第1クラッチ機構だけを係合状態とし、第2位置に位置されると前記第1凹凸係合部が前記入力側第1駆動ギヤの凹凸部係合部に対して非係合とされつつ前記第2凹凸係合部が前記入力側第2駆動ギヤの凹凸係合部に係合されることで前記入力側第2クラッチ機構だけを係合状態とし、且つ、中間位置に位置されると前記第1及び第2凹凸係合部が前記入力側第1及び第2駆動ギヤの凹凸係合部にそれぞれ係合されることで第1及び第2クラッチ機構の双方を係合状態とさせることを特徴とする請求項5に記載のトランスミッション構造。
【請求項7】
前記第2要素に軸線回り相対回転不能に連結された変速中間軸を備え、
前記第1要素は前記変速中間軸に相対回転自在に支持されており、
前記出力側第1伝動機構は、前記変速中間軸に相対回転不能に支持された出力側第1駆動ギヤと、前記出力側第1駆動ギヤに作動連結され、前記変速出力軸に相対回転自在に支持された出力側第1従動ギヤとを有し、
前記出力側第2伝動機構は、前記第1要素に相対回転不能に連結された出力側第2駆動ギヤと、前記出力側第2駆動ギヤに作動連結され、前記変速出力軸に相対回転自在に支持された出力側第2従動ギヤとを有し、
前記出力側第1及び第2クラッチ機構は、前記出力側第1及び第2従動ギヤに設けられた凹凸係合部と、前記出力側第1及び第2従動ギヤの間において前記変速出力軸に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持され、軸線方向一方側及び他方側に第1及び第2凹凸係合部がそれぞれ設けられた出力側スライダとを有し、
前記出力側スライダは、軸線方向一方側の第1位置に位置されると前記第2凹凸係合部が前記出力側第2従動ギヤの凹凸係合部に対して非係合とされつつ前記第1凹凸係合部が前記出力側第1従動ギヤの凹凸係合部に係合されることで前記出力側第1クラッチ機構だけを係合状態とし、軸線方向他方側の第2位置に位置されると前記第1凹凸係合部が前記出力側第1従動ギヤの凹凸係合部に対して非係合とされつつ前記第2凹凸係合部が前記出力側第2従動ギヤの凹凸係合部に係合されることで前記出力側第2クラッチ機構だけを係合状態とし、且つ、軸線方向に関し第1位置及び第2位置の間の中間位置に位置されると前記第1及び第2凹凸係合部が前記出力側第1及び第2駆動ギヤの凹凸係合部にそれぞれに係合されることで前記出力側第1及び第2クラッチ機構の双方を係合状態とさせることを特徴とする請求項1に記載のトランスミッション構造。
【請求項8】
前記入力側第1及び第2クラッチ機構によって形成される入力側クラッチユニット並びに前記出力側第1及び第2クラッチ機構によって形成される出力側クラッチユニットの少なくとも一方は、圧油供給を受けてクラッチ係合状態を現出させる油圧作動型の摩擦板式とされており、
前記トランスミッション構造には、油圧源から圧油の供給を受ける圧油供給ラインと、油圧作動型の摩擦板式クラッチユニットにおける第1及び第2クラッチ機構に対してそれぞれ圧油を給排する第1及び第2給排ラインと、前記第1及び第2給排ラインにそれぞれ介挿された第1及び第2電磁弁であって、対応する給排ラインをドレンさせる排出位置及び対応する給排ラインを前記圧油供給ラインに流体接続させる供給位置を取り得る第1及び第2電磁弁と、前記摩擦板式クラッチユニットにおける第1及び第2クラッチ機構の係合状態を検知するクラッチ係合検知手段とが備えられ、
前記制御装置は、前記変速出力軸の回転速度が切替速未満の低速状態においては前記第1電磁弁を供給位置に位置させ且つ前記第2電磁弁を排出位置に位置させて前記第1伝動状態を現出させ、前記変速出力軸の回転速度が切替速以上の高速状態においては前記第1電磁弁を排出位置に位置させ且つ前記第2電磁弁を供給位置に位置させて前記第2伝動状態を現出させつつ、前記第1及び第2伝動状態の切替時には、切替前の時点で供給位置に位置されていた電磁弁を供給位置に維持したままで、切替前の時点で排出位置に位置されていた電磁弁を排出位置から供給位置へ移動させ、排出位置から供給位置へ位置移動された電磁弁を介して圧油供給されたクラッチ機構が係合状態となったことを前記クラッチ係合検知手段からの信号に基づき認識した時点から所定時間経過後に、切替前の時点で供給位置に位置されていた電磁弁を供給位置から排出位置へ移動させることを特徴とする請求項4に記載のトランスミッション構造。
【請求項9】
前記第1及び第2電磁弁は、対応する給排ラインの油圧をパイロット圧として受けることで、前記制御装置から供給位置への位置信号を入力した状態において対応する給排ラインの油圧を係合油圧に維持するように構成された比例電磁弁とされていることを特徴とする請求項8に記載のトランスミッション構造。
【請求項10】
前記入力側第1及び第2クラッチ機構は、圧油供給を受けてクラッチ係合状態を現出させる油圧作動型の摩擦板式とされており、
前記トランスミッション構造には、油圧源から圧油の供給を受ける圧油供給ラインと、前記入力側第1及び第2クラッチ機構に対してそれぞれ圧油を給排する入力側第1及び第2給排ラインと、前記入力側第1及び第2給排ラインにそれぞれ介挿され、対応する給排ラインをドレンさせる排出位置及び対応する給排ラインを前記圧油供給ラインに流体接続させる供給位置を取り得る入力側第1及び第2電磁弁と、前記入力側第1及び第2クラッチ機構の係合状態を検知するクラッチ係合検知手段とが備えられ、
前記制御装置は、前記変速出力軸の回転速度が切替速未満の低速状態においては前記入力側第1電磁弁を供給位置に位置させ且つ前記入力側第2電磁弁を排出位置に位置させ、前記変速出力軸の回転速度が切替速以上の高速状態においては前記入力側第1電磁弁を排出位置に位置させ且つ前記入力側第2電磁弁を供給位置に位置させつつ、前記第1及び第2伝動状態の切替時には、切替前の時点で供給位置に位置されていた電磁弁を供給位置に維持したままで、切替前の時点で排出位置に位置されていた電磁弁を排出位置から供給位置へ移動させ、排出位置から供給位置へ位置移動された電磁弁を介して圧油供給されたクラッチ機構が滑り係合状態となったことを前記クラッチ係合検知手段からの信号に基づき認識した時点で、切替前の時点で供給位置に位置されていた電磁弁を供給位置から排出位置へ移動させることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のトランスミッション構造。
【請求項11】
前記出力側第1及び第2クラッチ機構は、圧油供給を受けてクラッチ係合状態を現出させる油圧作動型の摩擦板式とされており、
前記トランスミッション構造には、油圧源から圧油の供給を受ける圧油供給ラインと、前記出力側第1及び第2クラッチ機構に対してそれぞれ圧油を給排する出力側第1及び第2給排ラインと、前記出力側第1及び第2給排ラインにそれぞれ介挿され、対応する給排ラインをドレンさせる排出位置及び対応する給排ラインを前記圧油供給ラインに流体接続させる供給位置を取り得る出力側第1及び第2電磁弁と、前記出力側第1及び第2クラッチ機構の係合状態を検知するクラッチ係合検知手段とが備えられ、
前記制御装置は、前記変速出力軸の回転速度が切替速未満の低速状態においては前記出力側第1電磁弁を供給位置に位置させ且つ前記出力側第2電磁弁を排出位置に位置させ、前記変速出力軸の回転速度が切替速以上の高速状態においては前記出力側第1電磁弁を排出位置に位置させ且つ前記出力側第2電磁弁を供給位置に位置させつつ、低速状態及び高速状態の切替時には、切替前の時点で供給位置に位置されていた電磁弁を供給位置に維持したままで、切替前の時点で排出位置に位置されていた電磁弁を排出位置から供給位置へ移動させ、排出位置から供給位置へ位置移動された電磁弁を介して圧油供給されたクラッチ機構が滑り係合状態となったことを前記クラッチ係合検知手段からの信号に基づき認識した時点で、切替前の時点で供給位置に位置されていた電磁弁を供給位置から排出位置へ移動させることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のトランスミッション構造。
【請求項12】
前記入力側第2クラッチ機構及び前記出力側第2クラッチ機構は摩擦板式クラッチ機構とされていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のトランスミッション構造。
【請求項13】
前記入力側第1クラッチ機構及び前記出力側第1クラッチ機構は摩擦板式クラッチ機構とされていることを特徴とする請求項12に記載のトランスミッション構造。
【請求項14】
上流側が油圧源に流体接続される圧油供給ラインと、
ドレンラインと、
前記入力側及び出力側第1クラッチ機構に対して圧油を給排する第1給排ラインと、
前記入力側及び出力側第2クラッチ機構に対して圧油を給排する第2給排ラインと、
前記制御装置によって位置制御される切替弁とを備え、
前記切替弁は、前記圧油給排ラインを前記第1給排ラインに流体接続させ且つ前記第2給排ラインを前記ドレンラインに流体接続させる第1位置と、前記第1給排ラインを前記ドレンラインに流体接続させ且つ前記圧油給排ラインを前記第2給排ラインに流体接続させる第2位置とを取り得るように構成され、
前記入力側第1及び第2クラッチ機構並びに前記出力側第1及び第2クラッチ機構は、圧油供給を受けて対応する伝動機構の動力伝達を係合させる油圧作動型とされていることを特徴とする請求項12又は13に記載のトランスミッション構造。
【請求項15】
作業車輌の走行系伝動経路に介挿されるトランスミッション構造であって、
駆動源からポンプ軸に作動的に入力される回転動力を出力調整部材の作動位置に応じて少なくとも第1HST速から第2HST速の間の回転動力に無段変速してモータ軸から出力するHSTと、
第1~第3要素を有し、前記第3要素がHST出力の入力部として作用する遊星歯車機構と、
変速出力軸と、
前記駆動源の回転動力を前記第1及び第2要素にそれぞれ作動伝達可能な入力側第1伝動機構及び入力側第2伝動機構と、
前記入力側第1伝動機構及び前記入力側第2伝動機構の動力伝達をそれぞれ係脱させる入力側第1クラッチ機構及び入力側第2クラッチ機構と、
前記第2要素及び前記第1要素から前記変速出力軸への動力伝達をそれぞれ係脱させる出力側第1及び第2クラッチ機構と、
変速操作部材と、
前記HSTの変速状態を直接又は間接的に検出するHSTセンサと、
前記変速出力軸の回転速度を直接又は間接的に検出する出力センサと、
前記出力調整部材、前記入力側第1及び第2クラッチ機構、並びに、前記出力側第1及び第2クラッチ機構の作動制御を司る制御装置とを備え、
前記入力側第1及び第2クラッチ機構によって形成される入力側クラッチユニット並びに前記出力側第1及び第2クラッチ機構によって形成される出力側クラッチユニットの少なくとも一方は、圧油供給を受けてクラッチ係合状態を現出させる油圧作動型の摩擦板式とされており、
前記トランスミッション構造は、さらに、油圧源から圧油の供給を受ける圧油供給ラインと、
油圧作動型の摩擦板式クラッチユニットにおける第1及び第2クラッチ機構に対してそれぞれ圧油を給排する第1及び第2給排ラインと、
前記第1及び第2給排ラインにそれぞれ介挿された第1及び第2電磁弁であって、対応する給排ラインをドレンさせる排出位置及び対応する給排ラインを前記圧油供給ラインに流体接続させる供給位置を取り得る第1及び第2電磁弁と、
油圧作動型の摩擦板式クラッチユニットにおける前記第1及び第2クラッチ機構の係合状態を検知するクラッチ係合検知手段とを備え、
前記制御装置は、前記HSTセンサ及び前記出力センサの検出信号に基づき、前記変速出力軸の回転速度が所定の切替速未満の低速状態においては前記入力側及び出力側第1クラッチ機構を係合状態とし且つ前記入力側及び出力側第2クラッチ機構を遮断状態とすることで前記第1要素を前記駆動源から作動的に伝達される基準動力の入力部として作用させ且つ前記第2要素を合成回転動力の出力部として作用させる第1伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第1HST速から第2HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させる一方で、前記変速出力軸の回転速度が切替速以上の高速状態においては、前記入力側及び出力側第1クラッチ機構を遮断状態とし且つ前記入力側及び出力側第2クラッチ機構を係合状態とすることで前記第1要素を出力部として作用させ且つ前記第2要素を基準動力の入力部として作用させる第2伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第2HST速から第1HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、さらに、前記第1及び第2伝動状態の切替時には、切替前の時点で供給位置に位置されていた前記第1及び第2電磁弁の一方を供給位置に維持したままで、切替前の時点で排出位置に位置されていた前記第1及び第2電磁弁の他方を排出位置から供給位置へ移動させ、当該他方の電磁弁を介して圧油供給されたクラッチ機構が滑り係合状態となったことを前記クラッチ係合検知手段からの信号に基づき認識した時点で、前記一方の電磁弁を供給位置から排出位置へ移動させることで摩擦板式クラッチユニットにおける第1及び第2クラッチ機構の係脱を切り替えることを特徴とするトランスミッション構造。
【請求項16】
駆動源からポンプ軸に作動的に入力される回転動力を出力調整部材の作動位置に応じて少なくとも第1HST速から第2HST速の間の回転動力に無段変速してモータ軸から出力するHSTと、
第1~第3要素を有し、前記第3要素がHST出力の入力部として作用する遊星歯車機構と、
変速出力軸と、
前記駆動源の回転動力を前記第1要素及び前記第2要素にそれぞれ作動伝達可能な入力側第1及び第2伝動機構と、
前記入力側第1及び第2伝動機構の動力伝達をそれぞれ係脱させる入力側第1及び第2クラッチ機構と、
前記第2要素及び前記第1要素の回転動力を正転状態で前記変速出力軸にそれぞれ作動伝達可能な前進第1伝動機構及び前進第2伝動機構と、
前記第2要素の回転動力を逆転状態で前記変速出力軸に作動伝達可能な後進伝動機構と、
前記前進第1伝動機構、前記前進第2伝動機構及び後進伝動機構の動力伝達をそれぞれ係脱させる前進第1クラッチ機構、前進第2クラッチ機構及び後進クラッチ機構と、
変速操作部材と、
前記HSTの変速状態を直接又は間接的に検出するHSTセンサと、
前記変速出力軸の回転速度を直接又は間接的に検出する出力センサと、
前記出力調整部材、前記入力側第1クラッチ機構、前記入力側第2クラッチ機構、前記前進第1クラッチ機構、前記前進第2クラッチ機構及び前記後進クラッチ機構の作動制御を司る制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記HSTセンサ及び前記出力センサの検出信号に基づき、前記変速出力軸の回転速度が前進方向においてゼロ速から切替速未満までの低速状態においては、前記入力側第1クラッチ機構及び前記前進第1クラッチ機構を係合状態とする前進第1伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の前進側増速操作に応じてHST出力が第1HST速から第2HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、前記変速出力軸の回転速度が前進方向において切替速以上の高速状態においては、前記入力側第2クラッチ機構及び前記前進第2クラッチ機構を係合状態とする前進第2伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の前進側増速操作に応じてHST出力が第1HST速から第2HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、前記変速出力軸の回転速度がゼロ速から後進側へ変化する後進伝動状態においては、前記入力側第1クラッチ機構及び前記後進クラッチ機構を係合状態とする後進伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の後進側増速操作に応じてHST出力が第1HST速から第2HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させることを特徴とするトランスミッション構造。
【請求項17】
前記入力側第1伝動機構は、駆動源の回転動力を入力側第1変速比で前記第1要素に作動伝達し、前記入力側第2伝動機構は、駆動源の回転動力を入力側第2変速比で前記第2要素に作動伝達し、
前記入力側第1及び第2変速比は、前進第1伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第2要素の回転速と前進第2伝動状態の際に前記入力側第2伝動機構を介して伝達される回転動力による前記第2要素の回転速とが同一となり、且つ、前進第2伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第1要素の回転速と前進第1伝動状態の際に前記入力側第1伝動機構を介して伝達される回転動力による前記第1要素の回転速とが同一となるように設定されていることを特徴とする請求項16に記載のトランスミッション構造。
【請求項18】
前記前進第1伝動機構は、前記第2要素の回転動力を前進第1変速比で前記変速出力軸に作動伝達し、前記前進第2伝動機構は、前記第1要素男回転動力を前進第2変速比で前記変速出力軸に作動伝達し、
前記前進第1及び第2変速比は、HST出力が第2HST速とされた際に前記変速出力軸に現出される回転速が第1及び第2伝動状態において同一となるように設定されていることを特徴とする請求項16又は17に記載のトランスミッション構造。
【請求項19】
前記入力側第1クラッチ機構の係合状態においてHST出力が第1HST速とされた際に、前記第2要素の回転速度がゼロ速となるように、前記HST及び前記遊星歯車機構が設定されていることを特徴とする請求項16から18の何れかに記載のトランスミッション構造。
【請求項20】
駆動源からポンプ軸に作動的に入力される回転動力を出力調整部材の作動位置に応じて少なくとも第1HST速から第2HST速の間の回転動力に無段変速してモータ軸から出力するHSTと、
第1~第3要素を有し、前記第3要素がHST出力の入力部として作用する遊星歯車機構と、
変速出力軸と、
前記駆動源の回転動力を入力側第1変速比で前記第1要素に作動伝達可能な入力側第1伝動機構と、
前記駆動源の回転動力を入力側第2変速比で前記第2要素に作動伝達可能な入力側第2伝動機構と、
前記入力側第1伝動機構及び前記入力側第2伝動機構の動力伝達をそれぞれ係脱させる入力側第1クラッチ機構及び入力側第2クラッチ機構と、
前記第2要素の回転動力を出力側第1変速比で前記変速出力軸に作動伝達可能な出力側第1伝動機構と、
前記第1要素の回転動力を出力側第2変速比で前記変速出力軸に作動伝達可能な出力側第2伝動機構と、
前記第1要素の回転動力を出力側第2変速比よりも前記変速出力軸を高速回転させる出力側第3変速比で前記変速出力軸に作動伝達可能な出力側第3伝動機構と、
前記出力側第1~第3伝動機構の動力伝達をそれぞれ係脱させる出力側第1~第3クラッチ機構と、
変速操作部材と、
前記HSTの変速状態を直接又は間接的に検出するHSTセンサと、
前記変速出力軸の回転速度を直接又は間接的に検出する出力センサと、
前記出力調整部材、前記入力側第1及び第2クラッチ機構、並びに、前記出力側第1~第3クラッチ機構の作動制御を司る制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記HSTセンサ及び前記出力センサの検出信号に基づき、前記変速出力軸の回転速度が第1切替速未満の低速状態においては、前記入力側第1クラッチ機構を係合状態とし且つ前記入力側第2クラッチ機構を遮断としつつ、前記第1出力側第1クラッチ機構を係合状態とし且つ他の出力側クラッチ機構を遮断状態とすることで、前記第1要素を前記駆動源から作動的に伝達される基準動力の入力部として作用させ且つ前記第2要素を合成回転動力の出力部として作用させる第1伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第1HST速から第2HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、前記変速出力軸の回転速度が第1切替速以上且つ第2切替速未満の中間速状態においては、前記入力側第1クラッチ機構を遮断状態とし且つ前記入力側第2クラッチ機構を係合状態としつつ、前記出力側第2クラッチ機構を係合状態とし且つ他の出力側クラッチ機構を遮断状態とすることで、前記第2要素を基準動力の入力部として作用させ且つ前記第1要素の回転動力を出力側第2変速比で前記変速出力軸に作動伝達させる第2伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第2HST速から第1HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、前記変速出力軸の回転速度が第2切替速以上の高速状態においては、前記入力側第1クラッチ機構を遮断状態とし且つ前記入力側第2クラッチ機構を係合状態としつつ、前記出力側第3クラッチ機構を係合状態とし且つ他の出力側クラッチ機構を遮断状態とすることで、前記第2要素を基準動力の入力部として作用させ且つ前記第1要素の回転動力を出力側第3変速比で前記変速出力軸に作動伝達させる第3伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第2HST速の側から第1HST速の側へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させる一方で、第2及び第3伝動状態間の切替時には切替後の伝動状態において前記変速出力軸に現出される回転速が切替前の伝動状態において前記変速出力軸に現出されている回転速に一致又は近接するように、前記出力調整部材を作動させ、
前記入力側第1及び第2変速比は、第1伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第2要素の回転速と第2伝動状態の際に前記入力側第2伝動機構を介して伝達される回転動力による前記第2要素の回転速とが同一となり、且つ、第2伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第1要素の回転速と第1伝動状態の際に前記入力側第1伝動機構を介して伝達される回転動力による前記第1要素の回転速とが同一となるように設定されていることを特徴とするトランスミッション構造。
【請求項21】
前記第2要素に軸線回り相対回転不能に連結された変速中間軸と、
前記変速中間軸に相対回転自在に外挿され且つ前記第1要素に相対回転不能に連結された変速伝動軸とを備え、
前記入力側第1伝動機構は、前記駆動源に作動連結された主駆動軸に相対回転自在に支持された入力側第1駆動ギヤと、前記入力側第1駆動ギヤに作動連結され且つ前記変速伝動軸に相対回転不能とされた入力側第1従動ギヤとを有し、
前記入力側第2伝動機構は、前記主駆動軸に相対回転自在に支持された入力側第2駆動ギヤと、前記入力側第2駆動ギヤに作動連結され且つ前記第2要素に相対回転不能とされた入力側第2従動ギヤとを有し、
前記出力側第1伝動機構は、前記変速中間軸に相対回転不能に支持された出力側第1駆動ギヤと、前記出力側第1駆動ギヤに作動連結され且つ前記変速出力軸に相対回転自在に支持された出力側第1従動ギヤとを有し、
前記出力側第2伝動機構は、前記変速伝動軸に相対回転不能に支持された出力側第2駆動ギヤと、前記出力側第2駆動ギヤに作動連結され且つ前記変速出力軸に相対回転自在に支持された出力側第2従動ギヤとを有し、
前記出力側第3伝動機構は、前記変速伝動軸に相対回転不能に支持された出力側第3駆動ギヤと、前記出力側第3駆動ギヤに作動連結され且つ前記変速出力軸に相対回転自在に支持された出力側第3従動ギヤとを有していることを特徴とする請求項20に記載のトランスミッション構造。
【請求項22】
前記変速出力軸より伝動方向下流側に配置された走行伝動軸と、前記変速出力軸及び前記走行伝動軸の間で駆動力の回転方向を前進方向及び後進方向に切替可能とされた前後進切換機構とを備えていることを特徴とする請求項1から21の何れかに記載のトランスミッション構造。
【請求項23】
駆動源からポンプ軸に作動的に入力される回転動力を出力調整部材の作動位置に応じて少なくとも第1HST速から第2HST速の間の回転動力に無段変速してモータ軸から出力するHSTと、
第1~第3要素を有し、前記第3要素がHST出力の入力部として作用する遊星歯車機構と、
前記駆動源の回転動力を入力側第1変速比で前記第1要素に作動伝達可能な入力側第1伝動機構と、
前記駆動源の回転動力を入力側第2変速比で前記第2要素に作動伝達可能な入力側第2伝動機構と、
前記入力側第1伝動機構及び前記入力側第2伝動機構の動力伝達をそれぞれ係脱させる入力側第1クラッチ機構及び入力側第2クラッチ機構と、
変速出力軸と、
前記変速出力軸より伝動方向下流側に配置された走行伝動軸と、
前記変速出力軸から前記走行伝動軸への伝動経路に介挿され、前記走行伝動軸を前進方向に回転させる前進伝動状態及び後進方向に回転させる後進伝動状態の間で切換可能とされた前後進切換機構と、
前記第2要素の回転動力を出力側第1変速比で前記変速出力軸に作動伝達可能な出力側第1伝動機構と、
前記第1要素の回転動力を出力側第2変速比で前記変速出力軸に作動伝達可能な出力側第2伝動機構と、
前記第1要素の回転動力を前記走行伝動軸に前進方向の駆動力として作動伝達可能な出力側第3伝動機構であって、前記出力側第2伝動機構及び前進伝動状態の前記前後進切換機構を介して前記第1要素の回転動力が前記走行伝動軸に作動伝達される際の当該走行伝動軸の回転速よりも、前記出力側第3伝動機構を介して前記第1要素の回転動力が前記走行伝動軸に作動伝達される際の当該走行伝動軸の回転速が高速となるように、変速比が設定された出力側第3伝動機構と、
前記出力側第1~第3伝動機構の動力伝達をそれぞれ係脱させる出力側第1~第3クラッチ機構と、
変速操作部材と、
前記HSTの変速状態を直接又は間接的に検出するHSTセンサと、
前記出力調整部材、前記入力側第1及び第2クラッチ機構、並びに、前記出力側第1~第3クラッチ機構の作動制御を司る制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記変速操作部材のゼロ速位置への操作に応じて、HST出力が合成回転動力をゼロとさせる第1HST速となるように前記出力調整部材を作動させ、
前記変速操作部材がゼロ速位置から前進側第1切替速位置までの間の前進側低速範囲で操作されている際には、前記入力側第1クラッチ機構を係合状態とし且つ前記入力側第2クラッチ機構を遮断としつつ、前記第1出力側第1クラッチ機構を係合状態とし且つ他の出力側クラッチ機構を遮断状態とすることで、前記第1要素を前記駆動源から作動的に伝達される基準動力の入力部として作用させ且つ前記第2要素を合成回転動力の出力部として作用させる第1伝動状態を現出させつつ、前記前後進切換機構を前進伝動状態とさせ、且つ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第1HST速の側から第2HST速の側へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、
前記変速操作部材が前進側第1切替速位置から前進側第2切替速位置までの間の前進側中間速範囲で操作されている際には、前記入力側第1クラッチ機構を遮断状態とし且つ前記入力側第2クラッチ機構を係合状態としつつ、前記出力側第2クラッチ機構を係合状態とし且つ他の出力側クラッチ機構を遮断状態とすることで、前記第2要素を基準動力の入力部として作用させ且つ前記第1要素の回転動力を出力側第2変速比で前記変速出力軸に作動伝達させる第2伝動状態を現出させつつ、前記前後進切換機構を前進伝動状態とさせ、且つ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第2HST速の側から第1HST速の側へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、
前記変速操作部材が前進側第2切替速位置を越える前進側高速範囲で操作されている際には、前記入力側第1クラッチ機構を遮断状態とし且つ前記入力側第2クラッチ機構を係合状態としつつ、前記出力側第3クラッチ機構を係合状態とし且つ他の出力側クラッチ機構を遮断状態とすることで、前記第2要素を基準動力の入力部として作用させ且つ前記第1要素の回転動力を前記出力側第3伝動機構を介して前記走行伝動軸に前進方向の駆動力として作動伝達させる第3伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第2HST速の側から第1HST速の側へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、
前記変速操作部材が、前進側中速範囲及び前進側高速範囲の間の前進側第2切替速位置を通過する際には、通過直後に現出される伝動状態での前記走行伝動軸の回転速が通過直前に現出されている伝動状態での前記走行出力軸の回転速に一致又は近接するように、前記出力調整部材を作動させ、
前記変速操作部材がゼロ速位置から後進側第1切替速位置までの間の後進側低速範囲で操作されている際には、前記第1伝動状態を現出させつつ、前記前後進切換機構を後進伝動状態とさせ、且つ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第1HST速の側から第2HST速の側へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、
前記変速操作部材が後進側第1切替速位置を越える後進側高速範囲で操作されている際には、前記第2伝動状態を現出させつつ、前記前後進切換機構を後進伝動状態とさせ、且つ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第2HST速の側から第1HST速の側へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、
前記入力側第1及び第2変速比は、第1伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第2要素の回転速と第2伝動状態の際に前記入力側第2伝動機構を介して伝達される回転動力による前記第2要素の回転速とが同一となり、且つ、第2伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第1要素の回転速と第1伝動状態の際に前記入力側第1伝動機構を介して伝達される回転動力による前記第1要素の回転速とが同一となるように設定されていることを特徴とするトランスミッション構造。
【請求項24】
前記第2要素に軸線回り相対回転不能に連結された変速中間軸を備え、
前記入力側第1伝動機構は、前記駆動源に作動連結された主駆動軸に相対回転自在に支持された入力側第1駆動ギヤと、前記変速中間軸に相対回転自在に支持された状態で、前記入力側第1駆動ギヤ及び前記第1要素に作動連結された入力側第1従動ギヤとを有し、
前記入力側第2伝動機構は、前記主駆動軸に相対回転自在に支持された入力側第2駆動ギヤと、前記変速中間軸に相対回転不能に支持された状態で前記入力側第2駆動ギヤに作動連結された入力側第2従動ギヤとを有し、
前記出力側第1伝動機構は、前記変速出力軸に相対回転自在に支持された状態で前記入力側第2従動ギヤに作動連結された出力側第1従動ギヤを有し、
前記出力側第2伝動機構は、前記変速出力軸に相対回転自在に支持された状態で前記入力側第1従動ギヤに作動連結された出力側第2従動ギヤを有し、
前記出力側第3伝動機構は、前記走行伝動軸に相対回転自在に支持された状態で前記出力側第1及び第2従動ギヤの一方に作動連結された出力側第3従動ギヤを有し、
前記入力側第1及び第2クラッチ機構は、それぞれ、前記入力側第1及び第2駆動ギヤを前記主駆動軸に係脱させるように前記主駆動軸に支持され、
前記出力側第1及び第2クラッチ機構は、それぞれ、前記出力側第1及び第2従動ギヤを前記変速出力軸に係脱させるように前記変速出力軸に支持され、
前記出力側第3クラッチ機構は、前記出力側第3従動ギヤを前記走行伝動軸に係脱させるように前記走行伝動軸に支持されていることを特徴とする請求項23に記載のトランスミッション構造。
【請求項25】
中空のハウジング本体と、
前記ハウジング本体に着脱可能に連結された第1軸受板と、
前記第1軸受板から前記ハウジング本体の長手方向に離間された位置で当該ハウジング本体に着脱可能に連結された第2軸受板とを備え、
前記主駆動軸、前記変速中間軸、前記変速出力軸及び前記走行伝動軸は、互いに対して平行状態で前記第1及び第2軸受板に支持され、
前記入力側第1及び第2駆動ギヤ並びに前記入力側第1及び第2クラッチ機構は、前記主駆動軸の軸線方向に関し前記入力側第1及び第2駆動ギヤの間に前記入力側第1及び第2クラッチ機構が位置された状態で、前記主駆動軸のうち前記第1及び第2軸受板によって挟まれた区画空間内に位置する部分に支持され、
前記入力側第1及び第2従動ギヤは、それぞれ、軸線方向に関し前記入力側第1及び第2駆動ギヤと同一位置に位置された状態で、前記変速中間軸のうち前記区画空間内に位置する部分に支持され、
前記出力側第1及び第2従動ギヤ並びに前記出力側第1及び第2クラッチ機構は、前記出力側第1及び第2従動ギヤが、それぞれ、軸線方向に関し前記入力側第2及び第1従動ギヤと同一位置に位置され且つ前記出力側第1及び第2クラッチ機構が軸線方向に関し前記入力側第1及び第2従動ギヤの間に位置された状態で、前記変速出力軸のうち前記区画空間内に位置する部分に支持され、
前記出力側第3従動ギヤ及び前記出力側第3クラッチ機構は、前記出力側第3従動ギヤが前記出力側第1及び第2従動ギヤの一方と軸線方向同一位置に位置され且つ前記出力側第3クラッチ機構が軸線方向に関し前記出力側第1及び第2従動ギヤの一方を基準にして前記出力側第1及び第2クラッチ機構とは反対側に位置された状態で、前記走行伝動軸のうち前記区画空間内に位置する部分に支持され、
前記前後進切換機構は、前記変速出力軸及び前記走行伝動軸のうち前記区画空間外に位置する部分に支持されていることを特徴とする請求項24に記載のトランスミッション構造。
【請求項26】
前記ハウジング本体は、着脱可能に直列連結されるフロントハウジング本体及びリヤハウジング本体を有し、
前記第1軸受板は、前記フロントハウジング本体の後方開口近傍において前記フロントハウジング本体の内表面に設けられたボス部に着脱可能に連結され、
前記第2軸受板は、前記リヤハウジング本体の前方開口近傍において前記リヤハウジング本体の内表面に設けられたボス部に着脱可能に連結されていることを特徴とする請求項25に記載のトランスミッション構造。
【請求項27】
前記出力側第1及び第2変速比は、HST出力が第2HST速とされた際に前記変速出力軸に現出される回転速が第1及び第2伝動状態において同一となるように設定されていることを特徴とする請求項20から26の何れかに記載のトランスミッション構造。
【請求項28】
前記制御装置は、第1伝動状態及び第2伝動状態の間の切替時には、切替後の伝動状態において前記変速出力軸に現出される回転速が切替前の伝動状態において前記変速出力軸に現出されている回転速に一致又は近接するように、前記出力調整部材を作動させることを特徴とする請求項20から26の何れかに記載のトランスミッション構造。
【請求項29】
前記ポンプ軸に入力される回転動力の回転方向を正転方向とした場合に、前記HSTは、第1HST速のHST出力として正逆方向一方側の回転動力を出力し且つ第2HST速のHST出力として正逆方向他方側の回転動力を出力することを特徴とする請求項1から28の何れかに記載のトランスミッション構造。
【請求項30】
前記遊星歯車機構のインターナルギヤ、キャリヤ及びサンギヤが、それぞれ、前記第1、第2及び第3要素を形成していることを特徴とする請求項1から29の何れかに記載のトランスミッション構造。
【請求項31】
駆動源と、
駆動輪と、
前記駆動源から前記駆動輪へ至る走行系伝動経路に介挿された請求項1から30の何れかに記載のトランスミッション構造とを備え、
前記変速出力軸の切替速は作業速範囲よりも高速に設定されていることを特徴とする作業車輌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静油圧式無段変速機構(HST)及び遊星歯車機構を有する静油圧・機械式無段変速構造(HMT構造)を含むトランスミッション構造並びに前記トランスミッション構造を備えた作業車輌に関する。
【背景技術】
【0002】
HST及び遊星歯車機構を組み合わせてなるHMT構造は、例えば、コンバインやトラクタ等の作業車輌の走行系伝動経路に好適に利用されており、さらに、HMT構造を備えた作業車輌における車速可変範囲を拡げる為の構成も種々提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、走行系伝動経路にHMT構造と低速段、中速段及び高速段の3段の変速段を有する多段変速構造とを直列配置することで車速可変範囲を拡げたコンバインが開示されている。
しかしながら、前記特許文献1に記載の構成は、前記多段変速構造の変速操作を車輌走行開始前に予め行っておくことを予定したものであり、車輌走行中に前記多段変速構造の変速操作を行うと以下の不都合が生じるものである。
【0004】
この点について、前記多段変速構造を低速段に係合させた状態で前記HMT構造を操作して走行車速を上げていき、走行車速が所定車速に達した時点で前記多段変速構造を低速段から中速段に変速する場合を例に説明する。
【0005】
この場合、前記多段変速構造の低速段係合状態で前記HMT構造の出力が最高速又は最高速近傍に達した段階で、前記HMT構造の出力が最高速又は最高速近傍に維持されたままで前記多段変速構造が低速段から中速段へ変速されることになり、変速時に大きな車速変化が生じ、乗り心地が悪くなると共に、走行系伝動経路に過度の負荷が掛かることになる。
【0006】
この点に関し、下記特許文献2には、走行系伝動経路にHMT構造及び多段変速構造が直列配置されている作業車輌用トランスミッションであって、車輌走行中に前記多段変速構造の変速を行っても、車速変化を抑えて走行系伝動経路に過度の負荷が掛かることを防止し得る作業車輌用トランスミッションが提案されている。
【0007】
詳しくは、前記特許文献2に記載のトランスミッションは、HST及び遊星歯車機構を有するHMT構造と、前記HMT構造の出力を多段変速する多段変速構造と、ロックアップ機構とを備えている。
【0008】
前記HSTは、駆動源から回転動力を入力するポンプと、前記ポンプによって流体的に駆動されるモータと、前記ポンプ及び前記モータの少なくとも一方(例えばポンプ)の容積を変更する出力調整部材とを有しており、前記出力調整部材は人為操作される変速操作部材の操作量に応じて作動し、これに応じて前記モータの回転速度が無段変速するようになっている。
【0009】
前記遊星歯車機構は、サンギヤに入力された前記HSTからの回転動力及びキャリヤに入力された駆動源からの回転動力を合成して、インターナルギヤから前記多段変速構造へ向けて出力するように構成されている。
前記ロックアップ機構は、前記多段変速構造の変速期間のみ前記キャリヤ及び前記インターナルギヤを同期回転させるように構成されている。
【0010】
前記特許文献2に記載のトランスミッションの変速動作を、前記多段変速構造が第1速段から第2速段へ増速される場合を例に説明する。
【0011】
前記変速操作部材が第1速段操作範囲内で増速方向へ操作されると、前記出力調整部材はHST出力が第1HST速(例えば、逆転側最高速)から第2HST速(例えば、正転側最高速)へ変速する方向へ移動される。
【0012】
そして、前記変速操作部材が第1速段操作範囲と第2速段操作範囲との境界位置まで操作された時点で、前記出力調整部材は第2HST速位置(例えば、正転側最大傾転位置)まで作動されて、HST出力は第2HST速(例えば、正転側最高速)の状態となる。
この状態が、前記多段変速構造の第1速段係合状態での前記HMT構造の最高速出力状態である。
【0013】
前記変速操作部材が第1速段操作範囲及び第2速段操作範囲の境界位置を越えて第2速段操作範囲内へ操作されると、これに応じて、前記多段変速構造は第1速段から第2速段へ増速される。
【0014】
この前記多段変速構造の変速期間においては、前述の通り、前記インターナルギヤ及び前記キャリヤが前記ロック機構によって連結されて同期回転される。
これにより、前記インターナルギヤから回転動力を入力する前記多段変速構造には、前記キャリヤに入力される前記駆動源からの回転動力と同期した回転動力が伝達される。
【0015】
一方、この前記多段変速構造の変速期間においては、前記出力調整部材は前記変速操作部材との連係が解除されたフリー状態とされる。
従って、互いに対して作動連結されている前記モータ軸及び前記サンギヤは、前記ロック機構によって連結され、前記駆動源からの回転動力で同期回転される前記インターナルギヤ及び前記キャリヤの回転速度によって画される回転速度(以下、変速期間回転速度という)で回転される。
【0016】
これにより、前記出力調整部材は、第2HST速位置(例えば、正転側最大傾転位置)から、前記サンギヤの変速期間回転速度に対応したHST出力を現出させる位置(以下、変速期間基準位置という)まで第1HST速位置の方向へ戻される。
【0017】
その後、前記変速操作部材が第2速段操作範囲内で増速方向へ操作されると、前記出力調整部材は、変速期間基準位置から第2HST速位置へ向けて作動され、前記モータ軸の回転速度が増速される。
これにより、前記モータ軸からのHST出力によって回転駆動される前記サンギヤの回転速度が増速されて、前記インターナルギヤの回転速度が増速される。
【0018】
このように、前記特許文献2に記載のトランスミッションにおいては、前記多段変速構造の変速動作の際に、前記サンギヤに入力される回転動力は、第2HST速(例えば、正転側最高速)から、変速期間回転速度まで減速されることになる。
【0019】
斯かる構成の前記特許文献2に記載のトランスミッションは、前記特許文献1に記載の構成に比して、前記多段変速構造の変速時における走行車速の変化幅を抑えることができる点において有用ではあるが、依然として、前記多段変速構造の変速時に走行車速にある程度の大きな速度変化は残るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】特許第5822761号公報
【文献】特許第4162328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、HST及び遊星歯車機構と前記遊星歯車機構の出力部によって作動的に駆動される変速出力軸とを有するトランスミッション構造であって、前記変速出力軸に急激な回転速度変化を生じさせることなく前記変速出力軸の変速幅を拡大させることができるトランスミッション構造の提供を一の目的とする。
また、本発明は、前記トランスミッション構造を備えた作業車輌の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記一の目的を達成する為に、本発明の第1態様は、駆動源からポンプ軸に作動的に入力される回転動力を出力調整部材の作動位置に応じて少なくとも第1HST速から第2HST速の間の回転動力に無段変速してモータ軸から出力するHSTと、第1~第3要素を有し、前記第3要素がHST出力の入力部として作用する遊星歯車機構と、変速出力軸と、前記駆動源の回転動力を入力側第1変速比で前記第1要素に作動伝達可能な入力側第1伝動機構と、前記駆動源の回転動力を入力側第2変速比で前記第2要素に作動伝達可能な入力側第2伝動機構と、前記入力側第1伝動機構及び前記入力側第2伝動機構の動力伝達をそれぞれ係脱させる入力側第1クラッチ機構及び入力側第2クラッチ機構と、前記第2要素の回転動力を出力側第1変速比で前記変速出力軸に作動伝達可能な出力側第1伝動機構と、前記第1要素の回転動力を出力側第2変速比で前記変速出力軸に作動伝達可能な出力側第2伝動機構と、前記出力側第1伝動機構及び前記出力側第2伝動機構の動力伝達をそれぞれ係脱させる出力側第1クラッチ機構及び出力側第2クラッチ機構と、変速操作部材と、前記HSTの変速状態を直接又は間接的に検出するHSTセンサと、前記変速出力軸の回転速度を直接又は間接的に検出する出力センサと、前記出力調整部材、前記入力側第1及び第2クラッチ機構、並びに、前記出力側第1及び第2クラッチ機構の作動制御を司る制御装置とを備え、前記制御装置は、前記HSTセンサ及び前記出力センサの検出信号に基づき、前記変速出力軸の回転速度が所定の切替速未満の低速状態においては、前記入力側及び出力側第1クラッチ機構を係合状態とし且つ前記入力側及び出力側第2クラッチ機構を遮断状態とすることで前記第1要素を前記駆動源から作動的に伝達される基準動力の入力部として作用させ且つ前記第2要素を合成回転動力の出力部として作用させる第1伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第1HST速から第2HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させる一方で、前記変速出力軸の回転速度が切替速以上の高速状態においては、前記入力側及び出力側第1クラッチ機構を遮断状態とし且つ前記入力側及び出力側第2クラッチ機構を係合状態とすることで前記第1要素を出力部として作用させ且つ前記第2要素を基準動力の入力部として作用させる第2伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第2HST速から第1HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、前記入力側第1及び第2変速比は、第1伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第2要素の回転速と第2伝動状態の際に前記入力側第2伝動機構を介して伝達される回転動力による前記第2要素の回転速とが同一となり、且つ、第2伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第1要素の回転速と第1伝動状態の際に前記入力側第1伝動機構を介して伝達される回転動力による前記第1要素の回転速とが同一となるように設定されており、前記出力側第1及び第2変速比は、HST出力が第2HST速とされた際に前記変速出力軸に現出される回転速が第1及び第2伝動状態において同一となるように設定されているトランスミッション構造を提供する。
【0023】
また、前記一の目的を達成する為に、本発明の第2態様は、駆動源からポンプ軸に作動的に入力される回転動力を出力調整部材の作動位置に応じて少なくとも第1HST速から第2HST速の間の回転動力に無段変速してモータ軸から出力するHSTと、第1~第3要素を有し、前記第3要素がHST出力の入力部として作用する遊星歯車機構と、変速出力軸と、前記駆動源の回転動力を入力側第1変速比で前記第1要素に作動伝達可能な入力側第1伝動機構と、前記駆動源の回転動力を入力側第2変速比で前記第2要素に作動伝達可能な入力側第2伝動機構と、前記入力側第1伝動機構及び前記入力側第2伝動機構の動力伝達をそれぞれ係脱させる入力側第1クラッチ機構及び入力側第2クラッチ機構と、前記第2要素及び前記第1要素から前記変速出力軸への動力伝達をそれぞれ係脱させる出力側第1及び第2クラッチ機構と、変速操作部材と、前記HSTの変速状態を直接又は間接的に検出するHSTセンサと、前記変速出力軸の回転速度を直接又は間接的に検出する出力センサと、前記出力調整部材、前記入力側第1及び第2クラッチ機構、並びに、前記出力側第1及び第2クラッチ機構の作動制御を司る制御装置とを備え、前記制御装置は、前記HSTセンサ及び前記出力センサの検出信号に基づき、前記変速出力軸の回転速度が所定の切替速未満の低速状態においては、前記入力側及び出力側第1クラッチ機構を係合状態とし且つ前記入力側及び出力側第2クラッチ機構を遮断状態とすることで前記第1要素を前記駆動源から作動的に伝達される基準動力の入力部として作用させ且つ前記第2要素を合成回転動力の出力部として作用させる第1伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第1HST速から第2HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させる一方で、前記変速出力軸の回転速度が切替速以上の高速状態においては、前記入力側及び出力側第1クラッチ機構を遮断状態とし且つ前記入力側及び出力側第2クラッチ機構を係合状態とすることで前記第1要素を出力部として作用させ且つ前記第2要素を基準動力の入力部として作用させる第2伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第2HST速から第1HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、前記入力側第1及び第2変速比は、第1伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第2要素の回転速と第2伝動状態の際に前記入力側第2伝動機構を介して伝達される回転動力による前記第2要素の回転速とが同一となり、且つ、第2伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第1要素の回転速と第1伝動状態の際に前記入力側第1伝動機構を介して伝達される回転動力による前記第1要素の回転速とが同一となるように設定されているトランスミッション構造を提供する。
【0024】
本発明の第2態様において、好ましくは、前記制御装置は、第1伝動状態及び第2伝動状態の間の切替時には、切替後の伝動状態において前記変速出力軸に現出される回転速が切替前の伝動状態において前記変速出力軸に現出されている回転速に一致又は近接するように、前記出力調整部材を作動させる。
【0025】
本発明の第1及び第2態様の種々の構成において、好ましくは、前記第1及び第2伝動状態の切替過渡期では、前記入力側第1及び第2クラッチ機構の双方が係合状態とされ且つ前記出力側第1及び第2クラッチ機構の双方が係合状態とされた二重伝動状態が現出されるように構成される。
【0026】
前記二重伝動状態を現出させる一形態においては、前記入力側第1及び第2クラッチ機構によって形成される入力側クラッチユニット並びに前記出力側第1及び第2クラッチ機構によって形成される出力側クラッチユニットの少なくとも一方はドグクラッチ式とされる。
【0027】
前記ドグクラッチ式のクラッチユニットは、対応する回転軸に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持され、軸線方向一方側及び他方側にそれぞれ第1及び第2凹凸係合部を有するスライダを有するものとされる。
【0028】
前記スライダは、軸線方向一方側の第1位置に位置されると前記第2凹凸係合部が対応する凹凸係合部に対して非係合とされつつ前記第1凹凸係合部が対応する凹凸係合部に係合されることで第1クラッチ機構だけを係合状態とし、軸線方向他方側の第2位置に位置されると前記第1凹凸係合部が対応する凹凸係合部に対して非係合とされつつ前記第1凹凸係合部が対応する凹凸係合部に対して係合されることによって第2クラッチ機構だけを係合状態とし、且つ、前記スライダが軸線方向に関し第1及び第2位置の間の中間位置に位置されている際には前記第1及び第2凹凸係合部の双方が対応する凹凸係合部に係合されることによって第1及び第2クラッチ機構の双方を係合状態とするように構成される。
【0029】
前記入力側第1伝動機構は、前記駆動源に作動連結された主駆動軸に相対回転自在に支持された入力側第1駆動ギヤと、前記入力側第1駆動ギヤに作動連結され、前記第1要素に相対回転不能とされた入力側第1従動ギヤとを有し、前記入力側第2伝動機構は、前記主駆動軸に相対回転自在に支持された入力側第2駆動ギヤと、前記入力側第2駆動ギヤに作動連結され、前記第2要素に相対回転不能とされた入力側第1従動ギヤとを有するものとされる。
【0030】
この場合、前記入力側クラッチユニットは、前記スライダとして入力側スライダを有するドグクラッチ式とされる。
前記入力側スライダは、前記入力側第1及び第2駆動ギヤの間において前記主駆動軸に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持されており、第1位置に位置されると前記第2凹凸係合部が前記第入力側第2駆動ギヤの凹凸係合部に対して非係合とされつつ前記第1凹凸係合部が前記入力側第1駆動ギヤの凹凸係合部に係合されることで前記入力側第1クラッチ機構だけを係合状態とし、第2位置に位置されると前記第1凹凸係合部が前記入力側第1駆動ギヤの凹凸部係合部に対して非係合とされつつ前記第2凹凸係合部が前記入力側第2駆動ギヤの凹凸係合部に係合されることで前記入力側第2クラッチ機構だけを係合状態とし、且つ、中間位置に位置されると前記第1及び第2凹凸係合部が前記入力側第1及び第2駆動ギヤの凹凸係合部にそれぞれ係合されることで第1及び第2クラッチ機構の双方を係合状態とさせるように構成される。
【0031】
前記第1態様に係るトランスミッション構造においては、前記第2要素に軸線回り相対回転不能に連結された変速中間軸が備えられ、前記第1要素は前記変速中間軸に相対回転自在に支持され得る。
【0032】
この場合、前記出力側第1伝動機構は、前記変速中間軸に相対回転不能に支持された出力側第1駆動ギヤと、前記出力側第1駆動ギヤに作動連結され、前記変速出力軸に相対回転自在に支持された出力側第1従動ギヤとを有し、前記出力側第2伝動機構は、前記第1要素に相対回転不能に連結された出力側第2駆動ギヤと、前記出力側第2駆動ギヤに作動連結され、前記変速出力軸に相対回転自在に支持された出力側第2従動ギヤとを有するものとされ、前記出力側第1及び第2クラッチ機構は、前記出力側第1及び第2従動ギヤに設けられた凹凸係合部と、前記出力側第1及び第2従動ギヤの間において前記変速出力軸に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持され、軸線方向一方側及び他方側に第1及び第2凹凸係合部がそれぞれ設けられた出力側スライダとを有するものとされる。
【0033】
前記出力側スライダは、軸線方向一方側の第1位置に位置されると前記第2凹凸係合部が前記出力側第2従動ギヤの凹凸係合部に対して非係合とされつつ前記第1凹凸係合部が前記出力側第1従動ギヤの凹凸係合部に係合されることで前記出力側第1クラッチ機構だけを係合状態とし、軸線方向他方側の第2位置に位置されると前記第1凹凸係合部が前記出力側第1従動ギヤの凹凸係合部に対して非係合とされつつ前記第2凹凸係合部が前記出力側第2従動ギヤの凹凸係合部に係合されることで前記出力側第2クラッチ機構だけを係合状態とし、且つ、軸線方向に関し第1位置及び第2位置の間の中間位置に位置されると前記第1及び第2凹凸係合部が前記出力側第1及び第2駆動ギヤの凹凸係合部にそれぞれに係合されることで前記出力側第1及び第2クラッチ機構の双方を係合状態とさせるように構成される。
【0034】
前記二重伝動状態を現出させる他形態においては、前記入力側第1及び第2クラッチ機構によって形成される入力側クラッチユニット並びに前記出力側第1及び第2クラッチ機構によって形成される出力側クラッチユニットの少なくとも一方は、圧油供給を受けてクラッチ係合状態を現出させる油圧作動型の摩擦板式とされる。
【0035】
この場合、前記トランスミッション構造には、油圧源から圧油の供給を受ける圧油供給ラインと、油圧作動型の摩擦板式クラッチユニットにおける第1及び第2クラッチ機構に対してそれぞれ圧油を給排する第1及び第2給排ラインと、前記第1及び第2給排ラインにそれぞれ介挿された第1及び第2電磁弁であって、対応する給排ラインをドレンさせる排出位置及び対応する給排ラインを前記圧油供給ラインに流体接続させる供給位置を取り得る第1及び第2電磁弁と、前記摩擦板式クラッチユニットにおける第1及び第2クラッチ機構の係合状態を検知するクラッチ係合検知手段とが備えられる。
【0036】
前記制御装置は、前記変速出力軸の回転速度が切替速未満の低速状態においては前記第1電磁弁を供給位置に位置させ且つ前記第2電磁弁を排出位置に位置させ、前記変速出力軸の回転速度が切替速以上の高速状態においては前記第1電磁弁を排出位置に位置させ且つ前記第2電磁弁を供給位置に位置させつつ、低速状態及び高速状態の切替時には、切替前の時点で供給位置に位置されていた電磁弁を供給位置に維持したままで、切替前の時点で排出位置に位置されていた電磁弁を排出位置から供給位置へ移動させ、排出位置から供給位置へ位置移動された電磁弁を介して圧油供給されたクラッチ機構が係合状態となったことを前記クラッチ係合検知手段からの信号に基づき認識した時点から所定時間経過後に、切替前の時点で供給位置に位置されていた電磁弁を供給位置から排出位置へ移動させるように構成される。
【0037】
好ましくは、前記第1及び第2電磁弁は、対応する給排ラインの油圧をパイロット圧として受けることで、前記制御装置から供給位置への位置信号を入力した状態において対応する給排ラインの油圧を係合油圧に維持するように構成された比例電磁弁とされる。
【0038】
本発明の第1及び第2態様において、前記入力側第1及び第2クラッチ機構は、圧油供給を受けてクラッチ係合状態を現出させる油圧作動型の摩擦板式とされ得る。
この場合、前記トランスミッション構造には、油圧源から圧油の供給を受ける圧油供給ラインと、前記入力側第1及び第2クラッチ機構に対してそれぞれ圧油を給排する入力側第1及び第2給排ラインと、前記入力側第1及び第2給排ラインにそれぞれ介挿され、対応する給排ラインをドレンさせる排出位置及び対応する給排ラインを前記圧油供給ラインに流体接続させる供給位置を取り得る入力側第1及び第2電磁弁と、前記入力側第1及び第2クラッチ機構の係合状態を検知するクラッチ係合検知手段とが備えられる。
【0039】
好ましくは、前記制御装置は、前記変速出力軸の回転速度が切替速未満の低速状態においては前記入力側第1電磁弁を供給位置に位置させ且つ前記入力側第2電磁弁を排出位置に位置させ、前記変速出力軸の回転速度が切替速以上の高速状態においては前記入力側第1電磁弁を排出位置に位置させ且つ前記入力側第2電磁弁を供給位置に位置させつつ、前記第1及び第2伝動状態の切替時には、切替前の時点で供給位置に位置されていた電磁弁を供給位置に維持したままで、切替前の時点で排出位置に位置されていた電磁弁を排出位置から供給位置へ移動させ、排出位置から供給位置へ位置移動された電磁弁を介して圧油供給されたクラッチ機構が滑り係合状態となったことを前記クラッチ係合検知手段からの信号に基づき認識した時点で、切替前の時点で供給位置に位置されていた電磁弁を供給位置から排出位置へ移動させるように構成される。
【0040】
前記トランスミッション構造には、油圧源から圧油の供給を受ける圧油供給ラインと、前記出力側第1及び第2クラッチ機構に対してそれぞれ圧油を給排する出力側第1及び第2給排ラインと、前記出力側第1及び第2給排ラインにそれぞれ介挿され、対応する給排ラインをドレンさせる排出位置及び対応する給排ラインを前記圧油供給ラインに流体接続させる供給位置を取り得る出力側第1及び第2電磁弁と、前記出力側第1及び第2クラッチ機構の係合状態を検知するクラッチ係合検知手段とが備えられ得る。
【0041】
この場合、好ましくは、前記制御装置は、前記変速出力軸の回転速度が切替速未満の低速状態においては前記出力側第1電磁弁を供給位置に位置させ且つ前記出力側第2電磁弁を排出位置に位置させ、前記変速出力軸の回転速度が切替速以上の高速状態においては前記出力側第1電磁弁を排出位置に位置させ且つ前記出力側第2電磁弁を供給位置に位置させつつ、低速状態及び高速状態の切替時には、切替前の時点で供給位置に位置されていた電磁弁を供給位置に維持したままで、切替前の時点で排出位置に位置されていた電磁弁を排出位置から供給位置へ移動させ、排出位置から供給位置へ位置移動された電磁弁を介して圧油供給されたクラッチ機構が滑り係合状態となったことを前記クラッチ係合検知手段からの信号に基づき認識した時点で、切替前の時点で供給位置に位置されていた電磁弁を供給位置から排出位置へ移動させるように構成される。
【0042】
本発明の第1及び第2態様において、好ましくは、少なくとも前記入力側第2クラッチ機構及び前記出力側第2クラッチ機構は摩擦板式クラッチ機構とされる。
より好ましくは、前記入力側第1及び第2クラッチ機構並びに前記出力側第1及び第2クラッチ機構の全てが摩擦板式クラッチ機構とされる。
【0043】
本発明に係るトランスミッション構造は、上流側が油圧源に流体接続される圧油供給ラインと、ドレンラインと、前記入力側及び出力側第1クラッチ機構に対して圧油を給排する第1給排ラインと、前記入力側及び出力側第2クラッチ機構に対して圧油を給排する第2給排ラインと、前記制御装置によって位置制御される切替弁とを備え得る。
【0044】
前記切替弁は、前記圧油給排ラインを前記第1給排ラインに流体接続させ且つ前記第2給排ラインを前記ドレンラインに流体接続させる第1位置と、前記第1給排ラインを前記ドレンラインに流体接続させ且つ前記圧油給排ラインを前記第2給排ラインに流体接続させる第2位置とを取り得るように構成され、前記入力側第1及び第2クラッチ機構並びに前記出力側第1及び第2クラッチ機構は、圧油供給を受けて対応する伝動機構の動力伝達を係合させる油圧作動型とされる。
【0045】
また、前記一の目的を達成する為に、本発明の第3態様は、作業車輌の走行系伝動経路に介挿されるトランスミッション構造であって、駆動源からポンプ軸に作動的に入力される回転動力を出力調整部材の作動位置に応じて少なくとも第1HST速から第2HST速の間の回転動力に無段変速してモータ軸から出力するHSTと、第1~第3要素を有し、前記第3要素がHST出力の入力部として作用する遊星歯車機構と、変速出力軸と、前記駆動源の回転動力を前記第1及び第2要素にそれぞれ作動伝達可能な入力側第1伝動機構及び入力側第2伝動機構と、前記入力側第1伝動機構及び前記入力側第2伝動機構の動力伝達をそれぞれ係脱させる入力側第1クラッチ機構及び入力側第2クラッチ機構と、前記第2要素及び前記第1要素から前記変速出力軸への動力伝達をそれぞれ係脱させる出力側第1及び第2クラッチ機構と、変速操作部材と、前記HSTの変速状態を直接又は間接的に検出するHSTセンサと、前記変速出力軸の回転速度を直接又は間接的に検出する出力センサと、前記出力調整部材、前記入力側第1及び第2クラッチ機構、並びに、前記出力側第1及び第2クラッチ機構の作動制御を司る制御装置とを備え、前記入力側第1及び第2クラッチ機構によって形成される入力側クラッチユニット並びに前記出力側第1及び第2クラッチ機構によって形成される出力側クラッチユニットの少なくとも一方は、圧油供給を受けてクラッチ係合状態を現出させる油圧作動型の摩擦板式とされており、前記トランスミッション構造は、さらに、油圧源から圧油の供給を受ける圧油供給ラインと、油圧作動型の摩擦板式クラッチユニットにおける第1及び第2クラッチ機構に対してそれぞれ圧油を給排する第1及び第2給排ラインと、前記第1及び第2給排ラインにそれぞれ介挿された第1及び第2電磁弁であって、対応する給排ラインをドレンさせる排出位置及び対応する給排ラインを前記圧油供給ラインに流体接続させる供給位置を取り得る第1及び第2電磁弁と、油圧作動型の摩擦板式クラッチユニットにおける前記第1及び第2クラッチ機構の係合状態を検知するクラッチ係合検知手段とを備え、前記制御装置は、前記HSTセンサ及び前記出力センサの検出信号に基づき、前記変速出力軸の回転速度が所定の切替速未満の低速状態においては前記入力側及び出力側第1クラッチ機構を係合状態とし且つ前記入力側及び出力側第2クラッチ機構を遮断状態とすることで前記第1要素を前記駆動源から作動的に伝達される基準動力の入力部として作用させ且つ前記第2要素を合成回転動力の出力部として作用させる第1伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第1HST速から第2HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させる一方で、前記変速出力軸の回転速度が切替速以上の高速状態においては、前記入力側及び出力側第1クラッチ機構を遮断状態とし且つ前記入力側及び出力側第2クラッチ機構を係合状態とすることで前記第1要素を出力部として作用させ且つ前記第2要素を基準動力の入力部として作用させる第2伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第2HST速から第1HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、さらに、前記第1及び第2伝動状態の切替時には、切替前の時点で供給位置に位置されていた前記第1及び第2電磁弁の一方を供給位置に維持したままで、切替前の時点で排出位置に位置されていた前記第1及び第2電磁弁の他方を排出位置から供給位置へ移動させ、当該他方の電磁弁を介して圧油供給されたクラッチ機構が滑り係合状態となったことを前記クラッチ係合検知手段からの信号に基づき認識した時点で、前記一方の電磁弁を供給位置から排出位置へ移動させることで摩擦板式クラッチユニットにおける第1及び第2クラッチ機構の係脱を切り替えるように構成されているトランスミッション構造を提供する。
【0046】
また、前記一の目的を達成する為に、本発明の第4態様は、駆動源からポンプ軸に作動的に入力される回転動力を出力調整部材の作動位置に応じて少なくとも第1HST速から第2HST速の間の回転動力に無段変速してモータ軸から出力するHSTと、第1~第3要素を有し、前記第3要素がHST出力の入力部として作用する遊星歯車機構と、変速出力軸と、前記駆動源の回転動力を前記第1要素及び前記第2要素にそれぞれ作動伝達可能な入力側第1及び第2伝動機構と、前記入力側第1及び第2伝動機構の動力伝達をそれぞれ係脱させる入力側第1及び第2クラッチ機構と、前記第2要素及び前記第1要素の回転動力を正転状態で前記変速出力軸にそれぞれ作動伝達可能な前進第1伝動機構及び前進第2伝動機構と、前記第2要素の回転動力を逆転状態で前記変速出力軸に作動伝達可能な後進伝動機構と、前記前進第1伝動機構、前記前進第2伝動機構及び後進伝動機構の動力伝達をそれぞれ係脱させる前進第1クラッチ機構、前進第2クラッチ機構及び後進クラッチ機構と、変速操作部材と、前記HSTの変速状態を直接又は間接的に検出するHSTセンサと、前記変速出力軸の回転速度を直接又は間接的に検出する出力センサと、前記出力調整部材、前記入力側第1クラッチ機構、前記入力側第2クラッチ機構、前記前進第1クラッチ機構、前記前進第2クラッチ機構及び前記後進クラッチ機構の作動制御を司る制御装置とを備え、前記制御装置は、前記HSTセンサ及び前記出力センサの検出信号に基づき、前記変速出力軸の回転速度が前進方向においてゼロ速から切替速未満までの低速状態においては、前記入力側第1クラッチ機構及び前記前進第1クラッチ機構を係合状態とする前進第1伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の前進側増速操作に応じてHST出力が第1HST速から第2HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、前記変速出力軸の回転速度が前進方向において切替速以上の高速状態においては、前記入力側第2クラッチ機構及び前記前進第2クラッチ機構を係合状態とする前進第2伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の前進側増速操作に応じてHST出力が第1HST速から第2HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、前記変速出力軸の回転速度がゼロ速から後進側へ変化する後進伝動状態においては、前記入力側第1クラッチ機構及び前記後進クラッチ機構を係合状態とする後進伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の後進側増速操作に応じてHST出力が第1HST速から第2HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させるように構成されたトランスミッション構造を提供する。
【0047】
前記第4態様において、前記入力側第1伝動機構は、駆動源の回転動力を入力側第1変速比で前記第1要素に作動伝達し、前記入力側第2伝動機構は、駆動源の回転動力を入力側第2変速比で前記第2要素に作動伝達するものとされる。
この場合において、好ましくは、前記入力側第1及び第2変速比は、前進第1伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第2要素の回転速と前進第2伝動状態の際に前記入力側第2伝動機構を介して伝達される回転動力による前記第2要素の回転速とが同一となり、且つ、前進第2伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第1要素の回転速と前進第1伝動状態の際に前記入力側第1伝動機構を介して伝達される回転動力による前記第1要素の回転速とが同一となるように設定される。
【0048】
前記第4態様において、前記前進第1伝動機構は、前記第2要素の回転動力を前進第1変速比で前記変速出力軸に作動伝達し、前記前進第2伝動機構は、前記第1要素男回転動力を前進第2変速比で前記変速出力軸に作動伝達するものとされる。
この場合において、好ましくは、前記前進第1及び第2変速比は、HST出力が第2HST速とされた際に前記変速出力軸に現出される回転速が第1及び第2伝動状態において同一となるように設定される。
【0049】
前記第4態様において、好ましくは、前記入力側第1クラッチ機構の係合状態においてHST出力が第1HST速とされた際に、前記第2要素の回転速度がゼロ速となるように、前記HST及び前記遊星歯車機構が設定される。
【0050】
また、前記一の目的を達成する為に、本発明の第5態様は、駆動源からポンプ軸に作動的に入力される回転動力を出力調整部材の作動位置に応じて少なくとも第1HST速から第2HST速の間の回転動力に無段変速してモータ軸から出力するHSTと、第1~第3要素を有し、前記第3要素がHST出力の入力部として作用する遊星歯車機構と、変速出力軸と、前記駆動源の回転動力を入力側第1変速比で前記第1要素に作動伝達可能な入力側第1伝動機構と、前記駆動源の回転動力を入力側第2変速比で前記第2要素に作動伝達可能な入力側第2伝動機構と、前記入力側第1伝動機構及び前記入力側第2伝動機構の動力伝達をそれぞれ係脱させる入力側第1クラッチ機構及び入力側第2クラッチ機構と、前記第2要素の回転動力を出力側第1変速比で前記変速出力軸に作動伝達可能な出力側第1伝動機構と、前記第1要素の回転動力を出力側第2変速比で前記変速出力軸に作動伝達可能な出力側第2伝動機構と、前記第1要素の回転動力を出力側第2変速比よりも前記変速出力軸を高速回転させる出力側第3変速比で前記変速出力軸に作動伝達可能な出力側第3伝動機構と、前記出力側第1~第3伝動機構の動力伝達をそれぞれ係脱させる出力側第1~第3クラッチ機構と、変速操作部材と、前記HSTの変速状態を直接又は間接的に検出するHSTセンサと、前記変速出力軸の回転速度を直接又は間接的に検出する出力センサと、前記出力調整部材、前記入力側第1及び第2クラッチ機構、並びに、前記出力側第1~第3クラッチ機構の作動制御を司る制御装置とを備え、前記制御装置は、前記HSTセンサ及び前記出力センサの検出信号に基づき、前記変速出力軸の回転速度が第1切替速未満の低速状態においては、前記入力側第1クラッチ機構を係合状態とし且つ前記入力側第2クラッチ機構を遮断としつつ、前記第1出力側第1クラッチ機構を係合状態とし且つ他の出力側クラッチ機構を遮断状態とすることで、前記第1要素を前記駆動源から作動的に伝達される基準動力の入力部として作用させ且つ前記第2要素を合成回転動力の出力部として作用させる第1伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第1HST速から第2HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、前記変速出力軸の回転速度が第1切替速以上且つ第2切替速未満の中間速状態においては、前記入力側第1クラッチ機構を遮断状態とし且つ前記入力側第2クラッチ機構を係合状態としつつ、前記出力側第2クラッチ機構を係合状態とし且つ他の出力側クラッチ機構を遮断状態とすることで、前記第2要素を基準動力の入力部として作用させ且つ前記第1要素の回転動力を出力側第2変速比で前記変速出力軸に作動伝達させる第2伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第2HST速から第1HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、前記変速出力軸の回転速度が第2切替速以上の高速状態においては、前記入力側第1クラッチ機構を遮断状態とし且つ前記入力側第2クラッチ機構を係合状態としつつ、前記出力側第3クラッチ機構を係合状態とし且つ他の出力側クラッチ機構を遮断状態とすることで、前記第2要素を基準動力の入力部として作用させ且つ前記第1要素の回転動力を出力側第3変速比で前記変速出力軸に作動伝達させる第3伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第2HST速の側から第1HST速の側へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させる一方で、第2及び第3伝動状態間の切替時には切替後の伝動状態において前記変速出力軸に現出される回転速が切替前の伝動状態において前記変速出力軸に現出されている回転速に一致又は近接するように、前記出力調整部材を作動させ、前記入力側第1及び第2変速比は、第1伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第2要素の回転速と第2伝動状態の際に前記入力側第2伝動機構を介して伝達される回転動力による前記第2要素の回転速とが同一となり、且つ、第2伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第1要素の回転速と第1伝動状態の際に前記入力側第1伝動機構を介して伝達される回転動力による前記第1要素の回転速とが同一となるように設定されているトランスミッション構造を提供する。
【0051】
前記第5態様の種々の構成において、前記トランスミッション構造は、前記第2要素に軸線回り相対回転不能に連結された変速中間軸と、前記変速中間軸に相対回転自在に外挿され且つ前記第1要素に相対回転不能に連結された変速伝動軸とを備え得る。
【0052】
この場合、前記入力側第1伝動機構は、前記駆動源に作動連結された主駆動軸に相対回転自在に支持された入力側第1駆動ギヤと、前記入力側第1駆動ギヤに作動連結され且つ前記変速伝動軸に相対回転不能とされた入力側第1従動ギヤとを有し、前記入力側第2伝動機構は、前記主駆動軸に相対回転自在に支持された入力側第2駆動ギヤと、前記入力側第2駆動ギヤに作動連結され且つ前記第2要素に相対回転不能とされた入力側第1従動ギヤとを有し、前記出力側第1伝動機構は、前記変速中間軸に相対回転不能に支持された出力側第1駆動ギヤと、前記出力側第1駆動ギヤに作動連結され且つ前記変速出力軸に相対回転自在に支持された出力側第1従動ギヤとを有し、前記出力側第2伝動機構は、前記変速伝動軸に相対回転不能に支持された出力側第2駆動ギヤと、前記出力側第2駆動ギヤに作動連結され且つ前記変速出力軸に相対回転自在に支持された出力側第2従動ギヤとを有し、前記出力側第3伝動機構は、前記変速伝動軸に相対回転不能に支持された出力側第3駆動ギヤと、前記出力側第3駆動ギヤに作動連結され且つ前記変速出力軸に相対回転自在に支持された出力側第3従動ギヤとを有するものとされる。
【0053】
本発明に係るトランスミッション構造は、さらに、前記変速出力軸より伝動方向下流側に配置された走行伝動軸と、前記変速出力軸及び前記走行伝動軸の間で駆動力の回転方向を前進方向及び後進方向に切替可能とされた前後進切換機構とを備え得る。
【0054】
また、前記一の目的を達成する為に、本発明の第6態様は、駆動源からポンプ軸に作動的に入力される回転動力を出力調整部材の作動位置に応じて少なくとも第1HST速から第2HST速の間の回転動力に無段変速してモータ軸から出力するHSTと、第1~第3要素を有し、前記第3要素がHST出力の入力部として作用する遊星歯車機構と、前記駆動源の回転動力を入力側第1変速比で前記第1要素に作動伝達可能な入力側第1伝動機構と、前記駆動源の回転動力を入力側第2変速比で前記第2要素に作動伝達可能な入力側第2伝動機構と、前記入力側第1伝動機構及び前記入力側第2伝動機構の動力伝達をそれぞれ係脱させる入力側第1クラッチ機構及び入力側第2クラッチ機構と、変速出力軸と、前記変速出力軸より伝動方向下流側に配置された走行伝動軸と、前記変速出力軸から前記走行伝動軸への伝動経路に介挿され、前記走行伝動軸を前進方向に回転させる前進伝動状態及び後進方向に回転させる後進伝動状態の間で切換可能とされた前後進切換機構と、前記第2要素の回転動力を出力側第1変速比で前記変速出力軸に作動伝達可能な出力側第1伝動機構と、前記第1要素の回転動力を出力側第2変速比で前記変速出力軸に作動伝達可能な出力側第2伝動機構と、前記第1要素の回転動力を前記走行伝動軸に前進方向の駆動力として作動伝達可能な出力側第3伝動機構であって、前記出力側第2伝動機構及び前進伝動状態の前記前後進切換機構を介して前記第1要素の回転動力が前記走行伝動軸に作動伝達される際の当該走行伝動軸の回転速よりも、前記出力側第3伝動機構を介して前記第1要素の回転動力が前記走行伝動軸に作動伝達される際の当該走行伝動軸の回転速が高速となるように、変速比が設定された出力側第3伝動機構と、前記出力側第1~第3伝動機構の動力伝達をそれぞれ係脱させる出力側第1~第3クラッチ機構と、変速操作部材と、前記HSTの変速状態を直接又は間接的に検出するHSTセンサと、前記出力調整部材、前記入力側第1及び第2クラッチ機構、並びに、前記出力側第1~第3クラッチ機構の作動制御を司る制御装置とを備えたトランスミッション構造を提供する。
【0055】
前記第6態様において、前記制御装置は、
前記変速操作部材のゼロ速位置への操作に応じて、HST出力が合成回転動力をゼロとさせる第1HST速となるように前記出力調整部材を作動させ、前記変速操作部材がゼロ速位置から前進側第1切替速位置までの間の前進側低速範囲で操作されている際には、前記入力側第1クラッチ機構を係合状態とし且つ前記入力側第2クラッチ機構を遮断としつつ、前記第1出力側第1クラッチ機構を係合状態とし且つ他の出力側クラッチ機構を遮断状態とすることで、前記第1要素を前記駆動源から作動的に伝達される基準動力の入力部として作用させ且つ前記第2要素を合成回転動力の出力部として作用させる第1伝動状態を現出させつつ、前記前後進切換機構を前進伝動状態とさせ、且つ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第1HST速の側から第2HST速の側へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、
前記変速操作部材が前進側第1切替速位置から前進側第2切替速位置までの間の前進側中間速範囲で操作されている際には、前記入力側第1クラッチ機構を遮断状態とし且つ前記入力側第2クラッチ機構を係合状態としつつ、前記出力側第2クラッチ機構を係合状態とし且つ他の出力側クラッチ機構を遮断状態とすることで、前記第2要素を基準動力の入力部として作用させ且つ前記第1要素の回転動力を出力側第2変速比で前記変速出力軸に作動伝達させる第2伝動状態を現出させつつ、前記前後進切換機構を前進伝動状態とさせ、且つ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第2HST速の側から第1HST速の側へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、
前記変速操作部材が前進側第2切替速位置を越える前進側高速範囲で操作されている際には、前記入力側第1クラッチ機構を遮断状態とし且つ前記入力側第2クラッチ機構を係合状態としつつ、前記出力側第3クラッチ機構を係合状態とし且つ他の出力側クラッチ機構を遮断状態とすることで、前記第2要素を基準動力の入力部として作用させ且つ前記第1要素の回転動力を前記出力側第3伝動機構を介して前記走行伝動軸に前進方向の駆動力として作動伝達させる第3伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第2HST速の側から第1HST速の側へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、
前記変速操作部材が、前進側中速範囲及び前進側高速範囲の間の前進側第2切替速位置を通過する際には、通過直後に現出される伝動状態での前記走行伝動軸の回転速が通過直前に現出されている伝動状態での前記走行出力軸の回転速に一致又は近接するように、前記出力調整部材を作動させ、
前記変速操作部材がゼロ速位置から後進側第1切替速位置までの間の後進側低速範囲で操作されている際には、前記第1伝動状態を現出させつつ、前記前後進切換機構を後進伝動状態とさせ、且つ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第1HST速の側から第2HST速の側へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させ、
前記変速操作部材が後進側第1切替速位置を越える後進側高速範囲で操作されている際には、前記第2伝動状態を現出させつつ、前記前後進切換機構を後進伝動状態とさせ、且つ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力が第2HST速の側から第1HST速の側へ向けて変速するように前記出力調整部材を作動させる。
【0056】
前記第6態様において、前記入力側第1及び第2変速比は、第1伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第2要素の回転速と第2伝動状態の際に前記入力側第2伝動機構を介して伝達される回転動力による前記第2要素の回転速とが同一となり、且つ、第2伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第1要素の回転速と第1伝動状態の際に前記入力側第1伝動機構を介して伝達される回転動力による前記第1要素の回転速とが同一となるように設定されてる。
【0057】
前記第6態様に係るトランスミッション構造は、前記第2要素に軸線回り相対回転不能に連結された変速中間軸を備えることができる。
この場合、前記入力側第1伝動機構は、前記駆動源に作動連結された主駆動軸に相対回転自在に支持された入力側第1駆動ギヤと、前記変速中間軸に相対回転自在に支持された状態で、前記入力側第1駆動ギヤ及び前記第1要素に作動連結された入力側第1従動ギヤとを有し、前記入力側第2伝動機構は、前記主駆動軸に相対回転自在に支持された入力側第2駆動ギヤと、前記変速中間軸に相対回転不能に支持された状態で前記入力側第2駆動ギヤに作動連結された入力側第2従動ギヤとを有し、前記出力側第1伝動機構は、前記変速出力軸に相対回転自在に支持された状態で前記入力側第2従動ギヤに作動連結された出力側第1従動ギヤを有し、前記出力側第2伝動機構は、前記変速出力軸に相対回転自在に支持された状態で前記入力側第1従動ギヤに作動連結された出力側第2従動ギヤを有し、前記出力側第3伝動機構は、前記走行伝動軸に相対回転自在に支持された状態で前記出力側第1及び第2従動ギヤの一方に作動連結された出力側第3従動ギヤを有するものとされ得る。
【0058】
前記入力側第1及び第2クラッチ機構は、それぞれ、前記入力側第1及び第2駆動ギヤを前記主駆動軸に係脱させるように前記主駆動軸に支持され、前記出力側第1及び第2クラッチ機構は、それぞれ、前記出力側第1及び第2従動ギヤを前記変速出力軸に係脱させるように前記変速出力軸に支持され、前記出力側第3クラッチ機構は、前記出力側第3従動ギヤを前記走行伝動軸に係脱させるように前記走行伝動軸に支持される。
【0059】
好ましくは、前記第6態様に係るトランスミッション構造は、さらに、中空のハウジング本体と、前記ハウジング本体に着脱可能に連結された第1軸受板と、前記第1軸受板から前記ハウジング本体の長手方向に離間された位置で当該ハウジング本体に着脱可能に連結された第2軸受板とを備え得る。
【0060】
この場合、前記主駆動軸、前記変速中間軸、前記変速出力軸及び前記走行伝動軸は、互いに対して平行状態で前記第1及び第2軸受板に支持され、前記入力側第1及び第2駆動ギヤ並びに前記入力側第1及び第2クラッチ機構は、前記主駆動軸の軸線方向に関し前記入力側第1及び第2駆動ギヤの間に前記入力側第1及び第2クラッチ機構が位置された状態で、前記主駆動軸のうち前記第1及び第2軸受板によって挟まれた区画空間内に位置する部分に支持され、前記入力側第1及び第2従動ギヤは、それぞれ、軸線方向に関し前記入力側第1及び第2駆動ギヤと同一位置に位置された状態で、前記変速中間軸のうち前記区画空間内に位置する部分に支持され、前記出力側第1及び第2従動ギヤ並びに前記出力側第1及び第2クラッチ機構は、前記出力側第1及び第2従動ギヤが、それぞれ、軸線方向に関し前記入力側第2及び第1従動ギヤと同一位置に位置され且つ前記出力側第1及び第2クラッチ機構が軸線方向に関し前記入力側第1及び第2従動ギヤの間に位置された状態で、前記変速出力軸のうち前記区画空間内に位置する部分に支持され、前記出力側第3従動ギヤ及び前記出力側第3クラッチ機構は、前記出力側第3従動ギヤが前記出力側第1及び第2従動ギヤの一方と軸線方向同一位置に位置され且つ前記出力側第3クラッチ機構が軸線方向に関し前記出力側第1及び第2従動ギヤの一方を基準にして前記出力側第1及び第2クラッチ機構とは反対側に位置された状態で、前記走行伝動軸のうち前記区画空間内に位置する部分に支持され、前記前後進切換機構は、前記変速出力軸及び前記走行伝動軸のうち前記区画空間外に位置する部分に支持され得る。
【0061】
例えば、前記ハウジング本体は、着脱可能に直列連結されるフロントハウジング本体及びリヤハウジング本体を有し得る。
この場合、前記第1軸受板は、前記フロントハウジング本体の後方開口近傍において前記フロントハウジング本体の内表面に設けられたボス部に着脱可能に連結され、前記第2軸受板は、前記リヤハウジング本体の前方開口近傍において前記リヤハウジング本体の内表面に設けられたボス部に着脱可能に連結され得る。
【0062】
前記第5態様及び前記第6態様において、前記出力側第1及び第2変速比は、HST出力が第2HST速とされた際に前記変速出力軸に現出される回転速が第1及び第2伝動状態において同一となるように設定され得る。
【0063】
これに代えて、前記制御装置は、第1伝動状態及び第2伝動状態の間の切替時には、切替後の伝動状態において前記変速出力軸に現出される回転速が切替前の伝動状態において前記変速出力軸に現出されている回転速に一致又は近接するように、前記出力調整部材を作動させるように構成され得る。
【0064】
本発明における前記種々の構成において、前記ポンプ軸に入力される回転動力の回転方向を正転方向とした場合に、前記HSTは、第1HST速のHST出力として正逆方向一方側の回転動力を出力し且つ第2HST速のHST出力として正逆方向他方側の回転動力を出力するように構成される。
【0065】
前記種々の構成において、例えば、前記遊星歯車機構のインターナルギヤ、キャリヤ及びサンギヤが、それぞれ、前記第1、第2及び第3要素を形成するものとされる。
【0066】
前記他の目的を達成する為に、本発明は、駆動源と、駆動輪と、前記駆動源から前記駆動輪へ至る走行系伝動経路に介挿された請求項1から7の何れかに記載のトランスミッション構造とを備え、前記変速出力軸の切替速は作業速範囲よりも高速に設定されている作業車輌を提供する。
【発明の効果】
【0067】
本発明の第1及び第2態様に係るトランスミッション構造によれば、HST出力が第1HST速から第2HST速へ変速されることに応じて変速出力軸の回転速度が切替速まで増速される第1伝動状態と、HST出力が第2HST速から第1HST速へ変速されることに応じて前記変速出力軸の回転速度が切替速から増速される第2伝動状態とを現出させることで前記変速出力軸の変速幅を拡大させることができ、さらに、前記第1及び第2伝動状態間の切替に際し前記変速出力軸に回転速度差が生じることを有効に防止乃至は低減することができる。
【0068】
また、本発明の第3態様に係るトランスミッション構造によれば、第1及び第2伝動状態の切替時に変速出力軸に回転速度差が生じないように入力側第1及び第2伝動機構の変速比設定、並びに、出力側第1及び第2伝動機構の変速比設定を厳格に行う必要がないので、設計の自由度が大となって、装置設計性の向上を図ることができる。さらに、クラッチ機構の係合時のショックを抑制でき、また、高負荷走行状況下でのクラッチ機構の係合切替の際に意に反した動力遮断や動力減速を抑制することができる。
【0069】
本発明の第4態様に係るトランスミッション構造によれば、HST出力が第1HST速から第2HST速へ変速されることに応じて変速出力軸の回転速度が前進側へ切替速まで増速される前進第1伝動状態と、HST出力が第2HST速から第1HST速へ変速されることに応じて前記変速出力軸の回転速度が前進側へ切替速から増速される前進第2伝動状態と、HST出力が第1HST速から第2HST速へ変速されることに応じて前記変速出力軸の回転速度が逆転側へ増速される後進伝動状態を現出させることで前記変速出力軸の変速幅を拡大させることができ、さらに、前進第1及び第2伝動状態の切替、並びに、前進第1伝動状態及び後進伝動状態の切替に際し、前記変速出力軸に回転速度差が生じることを有効に防止乃至は低減することができる。
【0070】
本発明の第5態様に係るトランスミッション構造によれば、HST出力が第1HST速から第2HST速へ変速されることに応じて変速出力軸の回転速度が第1切替速まで増速される第1伝動状態と、HST出力が第2HST速から第1HST速へ変速されることに応じて前記変速出力軸の回転速度が第1切替速から増速される第2伝動状態と、HST出力が第2HSTの側から第1HSTの側へ変速されることに応じて前記変速出力軸の回転速度が第2切替速から増速される第3伝動状態と現出させることで前記変速出力軸の変速幅を拡大させることができ、さらに、前記第1及び第2伝動状態間の切替並びに前記第2及び第3伝動状態間の切替に際し前記変速出力軸に回転速度差が生じることを有効に防止乃至は低減することができる。
【0071】
本発明の第6態様に係るトランスミッション構造によれば、変速操作部材がゼロ速位置に位置されると、HST出力をHMTの合成回転動力がゼロとなる第1HST速とさせ、前記変速操作部材がゼロ速位置から前進側第1切替速位置までの間の前進側低速範囲で操作されている際には、遊星歯車機構の第1要素に駆動源からの基準動力を入力し且つ第2要素から合成回転動力を出力する第1伝動状態を現出させ、前記合成回転動力を、前進伝動状態とした前後進切換機構を介して走行伝動軸へ作動伝達させつつ、変速操作部材の増速操作に応じてHST出力を第1HST速の側から第2HST速の側へ向けて変速させ、前記変速操作部材が前進側第1切替速位置から前進側第2切替速位置までの間の前進側中間速範囲で操作されている際には、前記第2要素に基準動力を入力し且つ前記第1要素から合成回転動力を出力する第2伝動状態を現出させ、前記合成回転動力を前進伝動状態とした前後進切換機構を介して走行伝動軸へ作動伝達させつつ、変速操作部材の増速操作に応じてHST出力を第2HST速の側から第1HST速の側へ向けて変速させ、前記変速操作部材が前進側第2切替速位置を越える前進側高速範囲で操作されている際には、前記第2要素に基準動力を入力し且つ前記第1要素から合成回転動力を出力させ、前記合成回転動力を出力側第3伝動機構を介して走行伝動軸に前進方向の駆動力として伝達する第3伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力を第2HST速の側から第1HST速の側へ向けて変速させ、前記変速操作部材が、前進側中速範囲及び前進側高速範囲の間の前進側第2切替速位置を通過する際には、通過直後に現出される伝動状態での前記走行伝動軸の回転速が通過直前に現出されている伝動状態での前記走行出力軸の回転速に一致又は近接するように、HST出力を変速させ、前記変速操作部材がゼロ速位置から後進側第1切替速位置までの間の後進側低速範囲で操作されている際には、前記第1伝動状態を現出させ、前記合成回転動力を、後進伝動状態とした前後進切換機構を介して走行伝動軸へ伝達しつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力を第1HST速の側から第2HST速の側へ向けて変速し、前記変速操作部材が後進側第1切替速位置を越える後進側高速範囲で操作されている際には、前記第2伝動状態を現出させ、前記合成回転動力を、後進伝動状態とした前後進切換機構を介して走行伝動軸へ伝達しつつ、前記変速操作部材の増速操作に応じてHST出力を第2HST速の側から第1HST速の側へ向けて変速するように構成されているので、前記第1及び第2伝動状態間の切替並びに前記第2及び第3伝動状態間の切替に際し前記走行伝動軸に回転速度差が生じることを有効に防止乃至は低減しつつ、使用頻度の高い前進走行側の変速幅を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係るトランスミッション構造が適用された作業車輌の伝動模式図である。
図2図2は、前記実施の形態1に係るトランスミッション構造の油圧回路図である。
図3図3(a)及び(b)は、前記実施の形態1に係るトランスミッション構造が適用された作業車輌における、走行車速とHST出力との関係を表すグラフであり、それぞれ、前記トランスミッション構造に備えられた副変速機構の低速段係合状態及び高速段係合状態のグラフである。
図4図4は、本発明の実施の形態2に係るトランスミッション構造の油圧回路図である。
図5図5(a)及び(b)は、前記実施の形態2に係るトランスミッション構造が適用された作業車輌における、走行車速とHST出力との関係を表すグラフであり、それぞれ、前記トランスミッション構造に備えられた副変速機構の低速段係合状態及び高速段係合状態のグラフである。
図6図6(a)及び(b)は、前記実施の形態2の変形例に係るトランスミッション構造が適用された作業車輌における、走行車速とHST出力との関係を表すグラフであり、それぞれ、前記トランスミッション構造に備えられた副変速機構の低速段係合状態及び高速段係合状態のグラフである。
図7図7は、本発明の実施の形態3に係るトランスミッション構造の油圧回路図である。
図8図8は、前記実施の形態3に係るトランスミッション構造における第1伝動状態から第2伝動状態への切替時の油圧波形図である。
図9図9は、本発明の実施の形態4に係るトランスミッション構造の油圧回路図である。
図10図10は、前記実施の形態4に係るトランスミッション構造における入力側クラッチユニット近傍の部分断面図であり、入力側スライダが第1位置に位置されることで入力側第1クラッチ機構が係合状態で且つ入力側第2クラッチ機構が遮断状態とされている状態を示している。
図11図11は、図10に示す前記入力側クラッチユニット近傍の部分断面図であり、入力側スライダが中間位置に位置されることで入力側第1及び第2クラッチ機構の双方が係合状態とされている状態を示している。
図12図12は、前記実施の形態4に係るトランスミッション構造における第1伝動状態から第2伝動状態への切替時の油圧波形図である。
図13図13は、前記実施の形態3及び4の変形例に係るトランスミッション構造の油圧回路図である。
図14図14は、前記変形例に係るトランスミッション構造における第1伝動状態から第2伝動状態への切替時の油圧波形図である。
図15図15は、本発明の実施の形態5に係るトランスミッション構造における第1伝動状態から第2伝動状態への切替時の油圧波形図である。
図16図16は、本発明の実施の形態6に係るトランスミッション構造の油圧回路図である。
図17図17は、本発明の実施の形態6に係るトランスミッション構造における第1伝動状態から第2伝動状態への切替時の油圧波形図である。
図18図18は、前記実施の形態5及び6の変形例に係るトランスミッション構造における第1伝動状態から第2伝動状態への切替時の油圧波形図である。
図19図19は、本発明の実施の形態7に係るトランスミッション構造が適用された作業車輌の伝動模式図である。
図20図20は、前記実施の形態7に係るトランスミッション構造の油圧回路図である。
図21図21(a)及び(b)は、前記実施の形態7に係るトランスミッション構造が適用された作業車輌における、走行車速とHST出力との関係を表すグラフであり、それぞれ、前記トランスミッション構造に備えられた副変速機構の低速段係合状態及び高速段係合状態のグラフである。
図22図22は、前記実施の形態7の変形例に係るトランスミッション構造の油圧回路図である。
図23図23は、本発明の実施の形態8に係るトランスミッション構造が適用された作業車輌の伝動模式図である。
図24図24は、図23に示す前記作業車輌の部分縦断側面図である。
図25図25は、図23に示す前記作業車輌における、走行車速とHST出力との関係を表すグラフである。
図26図26は、前記実施の形態8の変形例に係るトランスミッション構造が適用された作業車輌の伝動模式図である。
図27図27は、本発明の実施の形態9に係るトランスミッション構造が適用された作業車輌の伝動模式図である。
図28図28は、図27に示す前記作業車輌の部分縦断側面図である。
図29図29は、図27に示す前記作業車輌における、走行車速とHST出力との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0073】
実施の形態1
以下、本発明に係るトランスミッション構造の一実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施の形態に係るトランスミッション構造1が適用された作業車輌200の伝動模式図を示す。
また、図2に、前記トランスミッション構造1の油圧回路図を示す。
【0074】
図1及び図2に示すように、前記作業車輌200は、駆動源210と、駆動輪220と、前記駆動源210から前記駆動輪220へ至る走行系伝動経路に介挿された前記トランスミッション構造1とを備えている。なお、図1及び図2中の符号210aは前記駆動源210に含まれるフライホイールである。
【0075】
図1及び図2に示すように、前記トランスミッション構造1は、静油圧式無段変速機構(HST)10と、前記HST10と共働してHMT構造(静油圧・機械式無段変速構造)を形成する遊星歯車機構30と、変速出力軸45と、操作位置センサ92によって操作位置が検出可能な変速レバー等の変速操作部材90と、前記HST10の変速状態を直接又は間接的に検出するHSTセンサ95aと、前記変速出力軸45の回転速度を直接又は間接的に検出する出力センサ95bと、制御装置100とを備えている。
【0076】
図1及び図2に示すように、前記HST10は、前記駆動源210によって作動的に回転駆動されるポンプ軸12と、前記ポンプ軸12に相対回転不能に支持された油圧ポンプ14と、前記油圧ポンプ14に一対の作動油ライン15を介して流体接続されて前記油圧ポンプ14によって油圧的に回転駆動される油圧モータ18と、前記油圧モータ18を相対回転不能に支持するモータ軸16と、前記油圧ポンプ14及び前記油圧モータ18の少なくとも一方の容積を変更させる出力調整部材20とを有している。
【0077】
前記HST10は、前記出力調整部材20の作動位置に応じて、前記ポンプ軸12に入力される動力の回転速度に対する、前記モータ軸16から出力されるHST出力の回転速度の割合(即ち、HST10の変速比)を無段変化させ得るようになっている。
【0078】
即ち、前記駆動源210から前記ポンプ軸12に作動的に入力される回転動力の回転速度を基準入力速とした場合、前記HST10は、前記出力調整部材20の作動位置に応じて、前記基準入力速の回転動力を少なくとも第1HST速から第2HST速の間の回転動力に無段変速して、前記モータ軸16から出力する。
【0079】
なお、本実施の形態においては、図1に示すように、前記ポンプ軸12は、前記駆動源210に作動連結された主駆動軸212にギヤ列214を介して連結されている。
【0080】
本実施の形態においては、前記HST10は、HST出力の回転方向を正逆切替可能とされている。
即ち、前記HST10は、基準入力速の回転方向を正転方向とした場合に、前記出力調整部材20が第1作動位置に位置されると前記モータ軸16から回転方向が正逆方向一方側(例えば逆転方向)とされた第1HST速の回転動力を出力し、且つ、前記出力調整部材20が第2作動位置に位置されると前記モータ軸16から回転方向が正逆方向他方側(例えば正転方向)とされた第2HST速の回転動力を出力するように、構成されている。
【0081】
この場合、前記出力調整部材20が第1及び第2作動位置の間の中立位置に位置されると、HST出力の回転速度は中立速(ゼロ速)となる。
【0082】
本実施の形態においては、図1及び図2に示すように、前記HST10は、前記出力調整部材20として、揺動軸回りに揺動されることで前記油圧ポンプ14の容積を変更する可動斜板であって、前記油圧ポンプ14から吐出される吐出量をゼロとする中立位置を挟んで揺動軸回り一方側及び他方側へ揺動可能とされた可動斜板を有している。
【0083】
前記可動斜板が中立位置に位置されると、前記油圧ポンプ14からの圧油の吐出が無くなり、前記HST10は、前記油圧モータ18の出力がゼロの中立状態となる。
そして、前記可動斜板が中立位置から揺動軸回り一方側の正転側へ揺動されると、前記油圧ポンプ14から一対の作動油ライン15の一方に圧油が供給され、当該一方の作動油ライン15が高圧側となり、他方の作動ライン15が低圧側となる。
これにより、前記油圧モータ18が正転側へ回転駆動されて、前記HST10は正転出力状態となる。
【0084】
逆に、前記可動斜板が中立位置から揺動軸回り他方側の逆転側へ揺動されると、前記油圧ポンプ14から前記一対の作動油ライン15の他方に圧油が供給され、当該他方の作動油ライン15が高圧側となり、一方の作動油ライン15が低圧側となる。
これにより、前記油圧モータ18が逆転側へ回転駆動されて、前記HST10は逆転出力状態となる。
なお、前記HST10においては、前記油圧モータ18は固定斜板によって容積が固定されている。
【0085】
図2に示すように、前記出力調整部材20は、前記変速操作部材90の操作に基づき前記制御装置100によって作動制御される。
即ち、前記制御装置100は、前記変速操作部材90への操作に基づきアクチュエータ110を介して前記出力調整部材20を作動させる。
前記アクチュエータ110は、前記制御装置100によって作動制御される限り、電動モータや油圧サーボ機構等、種々の構成を取ることができる。
【0086】
前記遊星歯車機構30は、図1及び図2に示すように、サンギヤ32と、前記サンギヤ32と噛合する遊星ギヤ34と、前記遊星ギヤ34と噛合するインターナルギヤ36と、前記遊星ギヤ34を軸線回り回転自在に支持し且つ前記遊星ギヤ34の前記サンギヤ32回りの公転に連動して前記サンギヤ32の軸線回りに回転するキャリヤ38とを有しており、前記サンギヤ32、前記キャリヤ38及び前記インターナルギヤ36が遊星3要素を形成している。
【0087】
前記遊星3要素のうちの一つである第3要素が前記モータ軸16に作動連結されており、前記第3要素がHST出力を入力する可変動力入力部として作用している。
図1及び図2に示すように、本実施の形態においては、前記サンギヤ32が前記第3要素とされている。
なお、本実施の形態においては、前記サンギヤ32はギヤ列216を介して前記モータ軸16に作動連結されている。
【0088】
本実施の形態に係る前記トランスミッション構造1は、第1要素を前記駆動源210からの基準回転動力を入力する基準動力入力部として作用させ且つ第2要素を合成回転動力を出力する出力部として作用させる第1伝動状態と、第1要素を前記出力部として作用させ且つ前記第2要素を前記基準動力入力部として作用させる第2伝動状態とを切替可能とされている。
【0089】
具体的には、図1及び図2に示すように、前記トランスミッション構造1は、さらに、前記駆動源210の回転動力を第1要素及び第2要素にそれぞれ作動伝達可能な入力側第1伝動機構50(1)及び入力側第2伝動機構50(2)と、前記入力側第1伝動機構50(1)及び前記入力側第2伝動機構50(2)の動力伝達をそれぞれ係脱させる入力側第1クラッチ機構60(1)及び入力側第2クラッチ機構60(2)と、前記第2要素及び前記第1要素の回転動力を前記変速出力軸にそれぞれ作動伝達可能な出力側第1伝動機構70(1)及び出力側第2伝動機構70(2)と、前記出力側第1伝動機構70(1)及び前記出力側第2伝動機構70(2)の動力伝達をそれぞれ係脱させる出力側第1クラッチ機構80(1)及び出力側第2クラッチ機構80(2)とを有している。
【0090】
本実施の形態においては、前記インターナルギヤ36及び前記キャリヤ38がそれぞれ第1及び第2要素として作用している。
【0091】
前記入力側第1伝動機構50(1)は、前記駆動源210の回転動力を入力側第1変速比で第1要素(本実施の形態においては前記インターナルギヤ36)に伝達可能に構成されている。
【0092】
詳しくは、図1及び図2に示すように、前記入力側第1伝動機構50(1)は、前記主駆動軸212に相対回転自在に連結された入力側第1駆動ギヤ52(1)と、前記入力側第1駆動ギヤ52(1)に噛合され且つ第1要素に連結された入力側第1従動ギヤ54(1)とを有している。
【0093】
前記入力側第2伝動機構50(2)は、前記駆動源210の回転動力を入力側第2変速比で第2要素(本実施の形態においては前記キャリヤ38)に伝達可能に構成されている。
【0094】
詳しくは、図1及び図2に示すように、前記入力側第2伝動機構50(2)は、前記主駆動軸212に相対回転自在に支持された入力側第2駆動ギヤ52(2)と、前記入力側第2駆動ギヤ52(2)に噛合され且つ第2要素に連結された入力側第2従動ギヤ54(2)とを有している。
【0095】
本実施の形態においては、前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)は、摩擦板式クラッチ機構とされている。
【0096】
詳しくは、前記入力側第1クラッチ機構60(1)は、前記主駆動軸212に相対回転不能に支持された入力側クラッチハウジング62と、前記入力側クラッチハウジング62に相対回転不能に支持された第1駆動側摩擦板及び前記第1駆動側摩擦板に対向された状態で前記入力側第1駆動ギヤ52(1)に相対回転不能に支持された第1従動側摩擦板を含む入力側第1摩擦板群64(1)と、前記入力側第1摩擦板群64(1)を摩擦係合させる入力側第1ピストン(図示せず)とを有している。
【0097】
前記入力側第2クラッチ機構60(2)は、前記入力側クラッチハウジング62と、前記入力側クラッチハウジング62に相対回転不能に支持された第2駆動側摩擦板及び前記第2駆動側摩擦板に対向された状態で前記入力側第2駆動ギヤ52(2)に相対回転不能に支持された第2従動側摩擦板を含む入力側第2摩擦板群64(2)と、前記入力側第2摩擦板群64(2)を摩擦係合させる入力側第2ピストン(図示せず)とを有している。
【0098】
前記出力側第1伝動機構70(1)は、第2要素の回転動力を出力側第1変速比で前記変速出力軸45に伝達可能に構成されている。
【0099】
詳しくは、前記トランスミッション構造は、前記遊星歯車機構30と同軸上に配置され、第1及び第2要素の一方に軸線回り相対回転不能に連結された変速中間軸43を有している。
【0100】
本実施の形態においては、前記変速中間軸43は第2要素に相対回転不能に連結されている。
その上で、前記出力側第1伝動機構70(1)は、前記変速中間軸43に相対回転不能に支持された出力側第1駆動ギヤ72(1)と、前記出力側第1駆動ギヤ72(1)に噛合され且つ前記変速出力軸45に相対回転自在に支持された出力側第1従動ギヤ74(1)とを有している。
【0101】
前記出力側第2伝動機構70(2)は、第1要素の回転動力を出力側第2変速比で前記変速出力軸45に伝達可能に構成されている。
【0102】
詳しくは、前記出力側第2伝動機構70(2)は、第1要素に連結された出力側第2駆動ギヤ72(2)と、前記出力側第2駆動ギヤ72(2)に噛合され且つ前記変速出力軸45に相対回転自在に支持された出力側第2従動ギヤ74(2)とを有している。
本実施の形態においては、前記出力側第2駆動ギヤ72(2)は前記変速中間軸43に相対回転自在に支持されている。
【0103】
本実施の形態においては、前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)は、摩擦板式クラッチ機構とされている。
【0104】
詳しくは、前記出力側第1クラッチ機構80(1)は、前記変速出力軸45に相対回転不能に支持された出力側クラッチハウジング82と、前記出力側第1従動ギヤ74(1)に相対回転不能に支持された第1駆動側摩擦板及び前記第1駆動側摩擦板に対向された状態で前記出力側クラッチハウジング82に相対回転不能に支持された第1従動側摩擦板を含む出力側第1摩擦板群84(1)と、前記出力側第1摩擦板群を摩擦係合させる出力側第1ピストン(図示せず)とを有している。
【0105】
前記出力側第2クラッチ機構80(2)は、前記出力側クラッチハウジング82と、前記出力側第2従動ギヤ74(2)に相対回転不能に支持された第2駆動側摩擦板及び前記第2駆動側摩擦板に対向された状態で前記出力側クラッチハウジング82に相対回転不能に支持された第2従動側摩擦板を含む出力側第2摩擦板群84(2)と、前記出力側第2摩擦板群を摩擦係合させる出力側第2ピストン(図示せず)とを有している。
【0106】
本実施の形態に係るトランスミッション構造1においては、前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)並びに前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)は、圧油供給を受けて係合状態を現出させる油圧作動型とされている。
【0107】
詳しくは、図2に示すように、前記トランスミッション構造1は、さらに、上流側が油圧ポンプ等の油圧源150に流体接続される圧油供給ライン155と、ドレンライン157と、前記入力側及び出力側第1クラッチ機構60(1)、80(1)に対して圧油を給排する第1給排ライン160(1)と、前記入力側及び出力側第2クラッチ機構60(2)、80(2)に対して圧油を給排する第2給排ライン160(2)と、前記制御装置100によって位置制御される切替弁165とを備えている。
なお、図2中の符号156は前記圧油供給ライン155の油圧を設定するリリーフ弁である。
【0108】
前記切替弁165は、前記圧油給排ライン155を前記第1給排ライン160(1)に流体接続させ且つ前記第2給排ライン160(2)を前記ドレンライン157に流体接続させる第1位置と、前記第1給排ライン160(1)を前記ドレンライン157に流体接続させ且つ前記圧油給排ライン155を前記第2給排ライン160(2)に流体接続させる第2位置とを取り得るように構成されている。
【0109】
図1に示すように、本実施の形態に係る前記トランスミッション構造1は、さらに、前記変速出力軸45より伝動方向下流側に配置された走行伝動軸235と、前記変速出力軸45及び前記走行伝動軸235の間で駆動力の回転方向を前進方向及び後進方向に切替可能とされた前後進切換機構230とを備えている。
【0110】
前記前後進切替機構230は、例えば、前記変速操作部材90の前進側及び後進側への操作に応じて前記制御装置100によって前進方向及び後進方向の切替が行われるように構成される。
即ち、前記制御装置100は、前記変速操作部材90が前進側へ操作されたことを認識すると、前記前後進切替機構230を前進伝動状態とさせ、且つ、前記変速操作部材90が後進側へ操作されたことを認識すると、前記前後進切換機構230を後進伝動状態とさせる。
【0111】
図1に示すように、本実施の形態に係る前記トランスミッション構造1は、さらに、前記走行伝動軸235より伝動方向下流側に配置された第2走行伝動軸235と、前記走行伝動軸235及び第2走行伝動軸245の間で駆動力の回転速度を高速段及び低速段の2段階に多段変速可能な副変速機構240とを備えている。
前記副変速機構240は、例えば、副変速操作部材(図示せず)への人為操作に応じて、機械的リンク機構を介して、又は、前記制御装置によって、高速伝動状態及び低速伝動状態の切替が行われるように構成される。
【0112】
前記作業車輌200は、前記駆動輪220として、左右一対の主駆動輪を有している。
従って、前記作業車輌200は、図1に示すように、さらに、前記一対の主駆動輪をそれぞれ駆動する一対の主駆動車軸250と、前記第2走行伝動軸245の回転動力を前記一対の主駆動車軸250に差動伝達するディファレンシャル機構260とを有している。
【0113】
図1に示すように、前記作業車輌200は、さらに、前記主駆動車軸250に選択的に制動力を付加する走行ブレーキ機構255と、前記第2走行伝動軸245からの回転動力によって前記一対の主駆動車軸250を強制的に同期駆動するデフロック機構265と、前記第2走行伝動軸245から分岐された回転動力を副駆動輪へ向けて選択的に出力可能な副駆動輪用駆動力取出機構270とを有している。
【0114】
また、前記作業車輌200は、外部へ回転動力を出力するPTO軸280と、前記駆動源210からPTO軸280へ至るPTO伝動経路に介挿されたPTOクラッチ機構285及びPTO多段変速機構290とを有している。
【0115】
ここで、前記制御装置100による前記HST10、前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)、並びに、前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)の作動制御について説明する。
【0116】
図3に、前記作業車輌200における、走行車速とHST出力の回転速との関係を表すグラフを示す。
なお、図3(a)及び(b)は、それぞれ、前記副変速機構240が低速段及び高速段に係合している状態のグラフである。
【0117】
前記制御装置100は、前記変速操作部材90が切替速位置までの間で操作されている状態においては(即ち、前記出力センサ95bの検出信号に基づき前記変速出力軸45の回転速度が所定の切替速未満の低速状態においては)、前記入力側及び出力側第1クラッチ機構60(1)、80(1)を係合状態とし且つ前記入力側及び出力側第2クラッチ機構60(2)、80(2)を遮断状態とすることで、前記第1要素(本実施の形態においては前記インターナルギヤ36)を前記駆動源210から作動的に伝達される基準動力の入力部として作用させ且つ前記第2要素(本実施の形態においては前記キャリヤ38)を合成回転動力の出力部として作用させる第1伝動状態を現出させる。
【0118】
前記出力センサ95bは、前記変速出力軸45の回転速度を直接又は間接的に認識し得る限り、前記変速出力軸45の回転速度を検出するセンサ、前記駆動輪20又は前記駆動車軸250の回転速度を検出するセンサ等、種々の形態をとり得る。
【0119】
前記変速出力軸45の回転速度が所定の切替速未満の低速状態とは、走行車速を基準にすると、前記副変速機構240が低速段に係合している際(図3(a)参照)には-a(L)~+a(L)の範囲内にあることを意味し、前記副変速機構240が高速段に係合している際(図3(b)参照)には-a(H)~+a(H)の範囲内にあることを意味する。
なお、走行車速の「+」及び「-」は、それぞれ、前記作業車輌200の走行方向が前進方向及び後進方向であることを意味する。
【0120】
第1伝動状態においては、前記制御装置100は、前記変速操作部材90の増速操作に応じてHSTセンサに基づきHST出力が第1HST速(本実施の形態においては逆転側所定速)から第2HST速(本実施の形態においては正転側所定速)へ向けて変速するように前記出力調整部材20を作動させる。
【0121】
前記HSTセンサは、前記HST10の出力状態を検出し得る限り、前記モータ軸16の回転速度を検出するセンサ、前記出力調整部材20の作動位置を検出するセンサ等、種々の形態をとり得る。
【0122】
即ち、前記制御装置100は、前記変速操作部材90が切替速位置までの間に位置されている際には第1伝動状態を現出させ、その上で、
(1)前記変速操作部材90がゼロ速位置(車輌停止位置)に位置されている際には、HST出力を第1HST速とさせる第1HST速位置(本実施の形態においては、逆転側所定速位置)に前記出力調整部材20を位置させ、
(2)前記変速操作部材90が切替速位置に達するまでは(即ち、前記変速出力軸45の回転速度がゼロ速から切替速に達するまでは(本実施の形態の作業車輌200における走行車速を基準にすると、前記副変速機構240が低速段係合状態の際(図3(a))には、ゼロ速から車速-a(L)(後進時)に達するまで、及び、ゼロ速から車速+a(L)(前進時)に達するまでに相当する。また、前記副変速機構240が高速段係合状態の際(図3(b))には、ゼロ速から車速-a(H)(後進時)に達するまで、及び、ゼロ速から車速+a(H)(前進時)に達するまでに相当する。))、前記変速操作部材90の増速操作に応じてHST出力が第1HST速の側から第2HST速の側へ変速するように前記出力調整部材20を作動させ(本実施の形態においては、前記出力調整部材20を逆転側所定速位置の側から正転側所定速位置の側へ移動させ)、
(3)前記変速操作部材90が切替速位置に位置された時点で(即ち、前記変速出力軸45の回転速度が切替速に達した時点で(本実施の形態の作業車輌200における走行車速を基準にすると、前記副変速機構240が低速段係合状態の際(図3(a))には、車速-a(L)(後進時)に達した時点、及び、車速+a(L)(前進時)に達した時点に相当する。また、前記副変速機構240が高速段係合状態の際(図3(b))には、-a(H)(後進時)に達した時点、及び、車速+a(H)(前進時)に達した時点に相当する。)、HST出力を第2HST速とさせる第2HST速位置(本実施の形態においては、正転側所定速位置)に前記出力調整部材20を位置させる。
【0123】
さらに、前記制御装置100は、前記変速操作部材90が切替速位置を越えて高速側へ操作されたことを認識すると(即ち、前記出力センサ95bの検出信号に基づき、前記変速出力軸45の回転速度が所定の切替速以上の高速状態になったことを認識すると)、前記入力側及び出力側第1クラッチ機構60(1)、80(1)を遮断状態とし且つ前記入力側及び出力側第2クラッチ機構60(2)、80(2)を係合状態とすることで前記第1要素を出力部として作用させ且つ前記第2要素を基準動力の入力部として作用させる第2伝動状態を現出させる。
【0124】
前記変速出力軸45の回転速度が所定の切替速以上の高速状態とは、走行車速を基準にすると、前記副変速機構240が低速段に係合している際(図3(a)参照)には-a(L)(後進時)以上又は+a(L)(前進時)以上の状態であることを意味し、前記副変速機構240が高速段に係合している際(図3(b)参照)には走行車速が-a(H)(後進時)以上又は+a(H)(前進時)以上の状態であることを意味する。
【0125】
第2伝動状態においては、前記制御装置100は、前記変速操作部材90の増速操作に応じてHSTセンサに基づきHST出力が第2HST速(本実施の形態においては正転側所定速)から第1HST速(本実施の形態においては逆転側所定速)へ向けて変速するように前記出力調整部材20を作動させる。
【0126】
即ち、前記制御装置100は、前記変速操作部材90が切替速位置より前進高速側へ操作されると第2伝動状態を現出させ、その上で、
(1)前記変速操作部材90が切替速位置に位置されている際には、HST出力を第2HST速とさせる第2HST速位置(本実施の形態においては、正転側所定速位置)に前記出力調整部材20を位置させ、
(2)前記変速操作部材90が切替速位置から前進最高速位置までの間に位置されている際には(即ち、前記変速出力軸45の回転速度が切替速から最高速に達するまでは(本実施の形態の作業車輌200における走行車速を基準にすると、前記副変速機構240が低速段係合状態の際(図3(a))には、車速-a(L)から車速-b(L)に達するまで(後進時)、及び、前記車速+a(L)から車速+b(L)に達するまで(前進時)に相当する。また、前記副変速機構240が高速段係合状態の際(図3(b))には、車速-a(H)から-b(H)に達するまで(後進時)、及び、車速+a(H)から+b(H)に達するまで(前進時)に相当する。))、前記変速操作部材90の増速操作に応じてHST出力が第2HST速の側から第1HST速の側へ変速するように前記出力調整部材20を作動させ(本実施の形態においては、前記出力調整部材20を正転側所定速位置から逆転側所定速位置へ移動させ)、
(3)前記変速操作部材90が前進最高速位置へ操作された時点で(即ち、前記変速出力軸45の回転速度が最高速に達した時点で(本実施の形態の作業車輌200における走行車速を基準にすると、前記副変速機構240が低速段係合状態の際(図3(a))には、車速-b(L)(後進時)に達した時点、及び、車速+b(L)(前進時)に達した時点に相当する。また、前記副変速機構240が高速段係合状態の際(図3(b))には、-b(H)(後進時)に達した時点、及び、車速+b(H)(前進時)に達した時点に相当する。))、HST出力を第1HST速とさせる第1HST速位置(本実施の形態においては、逆転側所定速位置)に前記出力調整部材20を位置させる。
【0127】
ここで、本実施の形態においては、前記第2要素の回転速度が、当該第2要素が出力部として作用する第1伝動状態下でHST出力が第2HST速とされている際と、当該第2要素が前記入力側第2伝動機構50(2)を介して作動伝達される前記駆動源210からの基準動力の入力部として作用する第2伝動状態の際とで同一となり、且つ、前記第1要素の回転速度が、当該第1要素が出力部として作用する第2伝動状態下でHST出力が第2HST速とされている際と、当該第1要素が前記入力側第1伝動機構50(1)を介して作動伝達される前記駆動源からの基準動力の入力部として作用する第1伝動状態の際とで同一となるように、前記入力側第1及び第2変速比が設定されている。
【0128】
即ち、本実施の形態においては、前記第1要素を基準動力入力部として作用させ且つ前記第2要素を出力部として作用させる第1伝動状態と前記第1要素を出力部として作用させ且つ前記第2要素を基準動力入力部として作用させる第2伝動状態との間の切替タイミングにおいて、前記第2要素及び前記第3要素に回転速度差が生じないように、前記入力側第1及び第2変速比が設定されている。
【0129】
さらに、本実施の形態においては、HST出力が第2HST速とされた際に前記変速出力軸45に現出される回転速が第1及び第2伝動状態において同一となるように、前記出力側第1及び第2変速比が設定されている。
【0130】
即ち、本実施の形態においては、第1及び第2伝動状態の間の切替タイミングにおいて、前記変速出力軸45、即ち、走行車速に変化が生じないように、前記出力側第1及び第2変速比が設定されている。
【0131】
斯かる構成を備えた前記トランスミッション構造1によれば、図3に示すように、HST出力を第1HST速から第2HST速へ変速させることによって前記変速出力軸45が増速される変速範囲(走行車速を基準した場合における0~-a及び0~+aの変速範囲、以下、低速側変速範囲という)と、HST出力を第2HST速から第1HST速へ変速させることによって前記変速出力軸45が増速される変速範囲(走行車速を基準にした場合における-a~-b及び+a~+bの変速範囲、以下、高速側変速範囲という)とに亘る変速範囲で無段変速することができる。
【0132】
さらに、前記低速側変速範囲(第1伝動状態)及び前記高速側変速範囲(第2伝動状態)の間の切替に際し、前記HST10の前記出力調整部材20の作動位置の変更を要することなく、且つ、走行車速の変化を生じさせることもない。
従って、前記トランスミッション構造1が介挿された走行系伝動経路の構成部材に負荷を掛けることなく、且つ、円滑に前記切替を実行することができる。
【0133】
また、前記トランスミッション構造1は、前記遊星歯車機構30を複数個備えることなく、前記低速側変速範囲(第1伝動状態)及び前記高速側変速範囲(第2伝動状態)の間の速度差を生じさせない切替を可能としており、これにより、良好な伝動効率の実現を可能としている。
【0134】
即ち、遊星歯車機構を2個以上備えれば、HSTの出力調整部材の作動位置の変更を要することなく、且つ、走行車速の変化を生じさせることもなく、低速側変速範囲の伝動状態及び高速側変速範囲の伝動状態の切替を行うことが可能となる。
しかしながら、遊星歯車機構は伝動効率が悪い為、この遊星歯車機構を2個以上備える構成では良好な伝動効率を得ることはできない。
【0135】
これに対し、前記トランスミッション構造1は、前述の通り、単一の前記遊星歯車機構30を備えるだけで、前記効果を得ることができる。
【0136】
また、本実施の形態に係る前記トランスミッション構造1においては、前述の通り、前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)並びに前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)は摩擦板式クラッチ機構とされている。
斯かる構成によれば、前記低速側変速範囲(第1伝動状態)及び前記高速側変速範囲(第2伝動状態)の間の切替をより円滑に行うことができる。
【0137】
好ましくは、第1及び第2伝動状態の間の切替タイミングとなる、前記変速出力軸45の切替速を、前記作業車輌200において設定される作業速範囲よりも高速に設定することができる。
【0138】
即ち、トラクタやコンバイン等の作業車輌は、低速走行をしながら耕耘作業、耕起作業鎮圧作業、及び、刈取作業等の重負荷作業を行う場合が多い。
一般的に、前記作業車輌においては、このような重負荷作業を行う際の走行車速が作業速範囲として設定されており、通常、0~8Km/h、仕様によっては0~10Km/hが作業速範囲として設定されている。
【0139】
従って、前記変速出力軸45の切替速が、走行車速を基準にした際に作業速範囲よりも高速となるように設定することで、重負荷作業を行っている状態で第1及び第2伝動状態の間の切替が行われることを有効に防止することができる。
【0140】
実施の形態2
以下、本発明に係るトランスミッション構造の他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図4に、本実施の形態に係るトランスミッション構造2の油圧回路図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1におけると同一部材は同一符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0141】
本実施の形態に係るトランスミッション構造2は、前記出力側第1及び第2伝動機構70(1)、70(2)が削除されている点において、前記実施の形態1に係るトランスミッション構造1と相違する。
【0142】
本実施の形態においては、前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)は、それぞれ、前記第2要素(本実施の形態においては前記キャリヤ38)及び前記第1要素(本実施の形態においては前記インターナルギヤ36)から前記変速出力軸45への動力伝達を係脱させるように備えられる。
【0143】
図5に、前記トランスミッション構造2が適用された作業車輌における、走行車速とHST出力の回転速との関係を表すグラフを示す。
なお、図5(a)及び(b)は、それぞれ、前記副変速機構240が低速段及び高速段に係合している状態のグラフである。
【0144】
図5(a)及び(b)に示すように、本実施の形態においては、前記制御装置100は、
前記変速操作部材90がゼロ速位置から第1切替速位置へ操作されると(即ち、前記出力センサ95bの検出信号に基づき第1伝動状態において前記変速出力軸45が所定の第1切替速(走行車速を基準にすると、低速段係合時においては-a(L)(1)(後進時)又は+a(L)(1)(前進時)、高速段係合時においては-a(H)(1)(後進時)又は+a(H)(1)(前進時))に到達したことを認識すると、第1伝動状態から第2伝動状態への切替を行うように構成されている。
【0145】
ここで、第1伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際に、前記変速出力軸45に第1切替速の回転速度が現出される。
【0146】
即ち、第1要素(本実施の形態においては前記インターナルギヤ36)に前記駆動源210からの基準動力が作動的に入力され、第3要素(本実施の形態においては前記サンギヤ32)に第2HST速のHST出力が作動的に入力され、第2要素(本実施の形態においては前記キャリヤ38)から合成回転動力が出力される際に、第2要素から作動的に伝達される合成回転動力によって前記変速出力軸45が第1切替速で回転する。
【0147】
この際、走行車速は、前記副変速機構240の低速段係合時においては-a(L)(1)(後進時)又は+a(L)(1)(前進時)(図5(a))となり、前記副変速機構240の高速段係合時においては-a(H)(1)(後進時)又は+a(H)(1)(前進時)(図5(b))となる。
【0148】
前記変速操作部材90が第1切替速位置まで操作されると(即ち、第1伝動状態においてHST出力が第2HST速とされて前記変速出力軸45の回転速度が第1切替速に到達したことにより、第1伝動状態から第2伝動状態への切替が行われると)、第2要素(本実施の形態においては前記キャリヤ38)に前記駆動源210からの基準動力が作動的に入力され、第3要素(本実施の形態においては前記サンギヤ32)に第2HST速のHST出力が作動的に入力され、第1要素(本実施の形態においては前記インターナルギヤ38)から合成回転動力が出力される状態となり、前記変速出力軸45は、第1要素から作動的に伝達される合成回転動力によって回転される。
【0149】
この際、前述の通り、本実施の形態に係る前記トランスミッション構造2は、前記出力側第1及び第2伝動機構70(1)、70(2)を有していない為、前記変速出力軸45の回転速度は、第1切替速から第2切替速に変化する。
【0150】
前記変速出力軸45の回転速度が第2切替速の際の走行車速は、前記副変速機構240の低速段係合時においては-a(L)(2)(後進時)又は+a(L)(2)(前進時)(図5(a))となり、前記副変速機構240の高速段係合時においては-a(H)(2)(後進時)又は+a(H)(2)(前進時)(図5(b))となる。
【0151】
即ち、本実施の形態に係る前記トランスミッション構造2においては、第1及び第2伝動状態の切替時に前記変速出力軸45に回転速度差が生じ、走行車速が変化する。
【0152】
しかしながら、前記回転速度差はそれ程大きいものではない為、走行系伝動経路を形成する部材によって吸収することができる。
特に、本実施の形態においては、前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)並びに前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)が摩擦板式クラッチ機構とされており、当該摩擦板式クラッチ機構によって前記回転速度差を有効に吸収することができる。
【0153】
これに代えて、前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)のうち、第2伝動状態の際に係合状態とされる入力側第2クラッチ機構60(2)、並びに、前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)のうち、第2伝動状態の際に係合状態とされる出力側第2クラッチ機構80(2)を摩擦板式クラッチ機構とし、残余のクラッチ機構60(1)、80(1)をドグクラッチ機構等の他の形式とすることも可能である。
【0154】
斯かる構成の前記トランスミッション構造2によれば、第1及び第2伝動状態の切替時に若干の走行速度差は生じるものの、前記実施の形態1に比して、前記出力側第1及び第2伝動機構70(1)、70(2)の削除による構造簡略化を図ることができる。
【0155】
図6に、本実施の形態の変形例における、走行車速とHST出力の回転速との関係を表すグラフを示す。
なお、図6(a)及び(b)は、それぞれ、前記副変速機構240が低速段及び高速段に係合している状態のグラフである。
【0156】
前記変形例においては、前記制御装置100は、第1伝動状態及び第2伝動状態の間の切替時には、切替後の伝動状態における切替速が、切替前の伝動状態の切替速に一致又は近接するように、前記出力調整部材20を作動させる。
【0157】
即ち、第1伝動状態から第2伝動状態への切替を行う場合を例にすると、前記制御装置100は、切替後の伝動状態である第2伝動状態における切替速(第2切替速)が、切替前の伝動状態である第1伝動状態における切替速(第1切替速)に一致又は近接するように、前記出力調整部材20を作動させるように構成されている。
【0158】
斯かる変形例によれば、第1及び第2伝動状態の切替時に前記変速出力軸45に回転速度差が生じること、即ち、走行速度差が生じることを有効に防止乃至は低減することができる。
【0159】
実施の形態3
以下、本発明に係るトランスミッション構造のさらに他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図7に、本実施の形態に係るトランスミッション構造3の油圧回路図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1及び2におけると同一部材は同一符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0160】
本実施の形態に係るトランスミッション構造3は、第1及び第2伝動状態の切替過渡期においては前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)の双方が係合状態とされ且つ前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)の双方が係合状態とされた二重伝動状態が現出される点において、前記実施の形態1に係るトランスミッション構造1と相違している。
【0161】
具体的には、前記トランスミッション構造3は、前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)並びに前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)に対する圧油給排構成が前記実施の形態1に係るトランスミッション1と相違している。
【0162】
即ち、図7に示すように、前記トランスミッション構造3は、前記圧油供給ライン155と、前記入力側第1クラッチ機構60(1)、前記入力側第2クラッチ機構60(2)、前記出力側第1クラッチ機構80(1)及び前記出力側第2クラッチ機構80(2)に対してそれぞれ圧油を給排する入力側第1給排ライン360(1)、入力側第2給排ライン360(2)、出力側第1給排ライン362(1)及び出力側第2給排ライン362(2)と、前記圧油供給ライン155と前記入力側第1給排ライン360(1)、入力側第2給排ライン360(2)、出力側第1給排ライン362(1)及び出力側第2給排ライン362(2)のそれぞれとの間に介挿された入力側第1電磁弁365(1)、入力側第2電磁弁365(2)、出力側第1電磁弁367(1)及び出力側第2電磁弁367(2)と、前記入力側第1給排ライン360(1)、入力側第2給排ライン360(2)、出力側第1給排ライン362(1)及び出力側第2給排ライン362(2)にそれぞれ介挿された入力側第1圧力センサ370(1)、入力側第2圧力センサ370(2)、出力側第1圧力センサ372(1)及び出力側第2圧力センサ372(2)とを備えている。
【0163】
前記電磁弁365(1)、365(2)、367(1)、367(2)は、対応する給排ライン360(1)、360(2)、362(1)、362(2)をドレンさせる排出位置及び対応する給排ライン360(1)、360(2)、362(1)、362(2)を前記圧油供給ライン155に流体接続させる供給位置を取り得るように構成されている。
本実施の形態においては、前記電磁弁365(1)、365(2)、367(1)、367(2)は、付勢部材によって排出位置へ向けて付勢されており、前記制御装置100からの制御信号が入力されると前記付勢部材の付勢力に抗して供給位置に位置される。
【0164】
本実施の形態においては、図7に示すように、前記電磁弁365(1)、365(2)、367(1)、367(2)は、対応する給排ライン360(1)、360(2)、362(1)、362(2)の油圧をパイロット圧として受けることで、前記制御装置100から供給位置への位置信号を入力した状態において対応する給排ライン360(1)、360(2)、362(1)、362(2)の油圧を係合油圧に維持するように構成された比例電磁弁とされている。
【0165】
前記制御装置100による前記電磁弁365(1)、365(2)、367(1)、367(2)の位置制御について、第1伝動状態から第2伝動状態へ切り替えられる場合を例に説明する。
【0166】
図8に、第1伝動状態から第2伝動状態への切替時における前記給排ライン360(1)、360(2)、362(1)、362(2)の油圧波形図を示す。
【0167】
前記制御装置100は、前記変速操作部材90がゼロ速位置から切替速位置までの間に位置されている状態においては(即ち、前記変速出力軸45の回転速度が切替速未満の低速状態においては)、前記入力側第1電磁弁365(1)及び前記出力側第1電磁弁367(1)を供給位置に位置させ且つ前記入力側第2電磁弁365(2)及び前記出力側第2電磁弁367(2)を排出位置に位置させる。
【0168】
この状態においては、前記入力側第2給排ライン360(2)及び前記出力側第2給排ライン362(2)の油圧は解放されて前記入力側第2クラッチ機構60(2)及び前記出力側第2クラッチ機構80(2)は遮断状態とされつつ、前記入力側第1給排ライン360(1)及び前記出力側第1給排ライン362(1)は、対応する前記電磁弁365(1)、367(1)のパイロット圧によって設定される係合油圧に維持されて前記入力側第1クラッチ機構60(1)及び前記出力側第1クラッチ機構80(1)は係合状態とされる。
これにより、前記トランスミッション構造3は第1伝動状態となる。
【0169】
一方、前記変速操作部材90が切替速位置を越えて操作されている状態においては(即ち、前記変速出力軸45の回転速度が切替速以上の高速状態においては)、前記制御装置100は、前記入力側第1電磁弁365(1)及び前記出力側第1電磁弁367(1)を排出位置に位置させ且つ前記入力側第2電磁弁365(2)及び前記出力側第2電磁弁367(2)を供給位置に位置させる。
【0170】
この状態においては、前記入力側第1給排ライン360(1)及び前記出力側第1給排ライン362(1)の油圧は解放されて前記入力側第1クラッチ機構60(1)及び前記出力側第1クラッチ機構80(1)は遮断状態とされつつ、前記前記入力側第2給排ライン360(2)及び前記出力側第2給排ライン362(2)は、対応する前記電磁弁365(2)、367(2)のパイロット圧によって設定される係合油圧に維持されて前記入力側第2クラッチ機構60(2)及び前記出力側第2クラッチ機構80(2)は係合状態とされる。
これにより、前記トランスミッション構造3は前記第2伝動状態となる。
【0171】
ここで、時間Ta(図8参照)において前記変速操作部材90が切替速位置まで操作されたことを認識すると(即ち、前記出力センサ95bからの信号に基づき前記変速出力軸45の回転速度が切替速未満の状態から切替速に到達したことを認識すると)、前記制御装置100は、伝動状態切替前の時点(この例においては第1伝動状態の時点)で供給位置に位置されていた前記入力側第1電磁弁365(1)及び前記出力側第1電磁弁367(1)を供給位置に維持したままで、切替前の時点で排出位置に位置されていた前記入力側第2電磁弁365(2)及び前記出力側第2電磁弁367(2)を排出位置から供給位置へ移動させる。
【0172】
これにより、前記入力側第1給排ライン360(1)及び前記出力側第1給排ライン362(1)が係合油圧に維持されたままで、時間Tbにおいて前記入力側第2給排ライン360(2)及び前記出力側第2給排ライン362(2)が係合油圧まで上昇し、前記二重伝動状態が現出される。
【0173】
その後、前記制御装置100は、供給位置へ位置移動された前記入力側第2電磁弁365(2)及び前記出力側第2電磁弁367(2)を介して圧油供給された前記入力側第2給排ライン360(2)及び前記出力側第2給排ライン362(2)の油圧が係合油圧に達したことを対応する圧力センサ370(2)、372(2)からの信号に基づき認識した時点(時間Tb)から所定時間経過した時点(時間Tc)において、切替前の時点で供給位置に位置されていた前記入力側第1電磁弁365(1)及び前記出力側第1電磁弁367(1)を供給位置から排出位置へ移動させる。
【0174】
これにより、前記入力側第2クラッチ機構60(2)及び前記出力側第2クラッチ機構80(2)が係合状態とされつつ、前記入力側第1クラッチ機構60(1)及び前記出力側第1クラッチ機構80(1)が遮断状態とされる前記第2伝動状態が現出される。
【0175】
斯かる構成の本実施の形態に係るトランスミッション構造3によれば、第1及び第2伝動状態の切替の際に駆動輪220に走行駆動力が伝達されない状態が発生することを有効に防止することができる。
これは、作業走行時に第1及び第2伝動状態の切替が発生する際に特に有効である。
【0176】
なお、本実施の形態においては、前記圧力センサ370(1)、370(2)、372(1)、372(2)によって対応する摩擦板式クラッチ機構の係合状態を検知するように構成されているが、これに代えて、前記比例電磁弁365(1)、365(2)、367(1)、367(2)への供給電流値や供給電流時間等を検出する他のクラッチ係合検知手段によって対応する摩擦板式クラッチ機構の係合状態を検知するように構成することも可能である。
【0177】
実施の形態4
以下、本発明に係るトランスミッション構造のさらに他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図9に、本実施の形態に係るトランスミッション構造4の油圧回路図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1~3におけると同一部材は同一符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0178】
本実施の形態に係るトランスミッション構造4は、前記実施の形態1に係るトランスミッション構造1に比して、摩擦板式の前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)並びに前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)に代えて、ドグクラッチ式の入力側クラッチユニット410及び出力側クラッチユニット430を有している。
【0179】
図10に、前記入力側クラッチユニット410の部分断面図を示す。
図10に示すように、前記入力側クラッチユニット410は、対応する主駆動軸212に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持された入力側スライダ412を有している。
【0180】
前記入力側スライダ412は、前記入力側第1及び第2駆動ギヤ52(1)、52(2)の間に配置されており、前記入力側第1駆動ギヤ52(19に近接する軸線方向一方側に第1凹凸係合部412(1)を有し、且つ、前記入力側第2駆動ギヤ52(2)に近接する軸線方向他方側に第2凹凸係合部412(2)を有している。
【0181】
前記入力側クラッチユニット410は、さらに、前記入力側第1及び第2駆動ギヤ52(1)、52(2)にそれぞれ形成された凹凸係合部414(1)、414(2)を有している。
【0182】
即ち、前記入力側スライダ412は、図10に示す軸線方向一方側の第1位置に位置されると前記第2凹凸係合部412(2)が前記入力側第2駆動ギヤ52(2)の凹凸係合部414(2)に対して非係合とされつつ前記第1凹凸係合部412(1)が前記入力側第1駆動ギヤ52(1)の凹凸係合部414(1)に係合されることで前記入力側第1駆動ギヤ52(1)を前記主駆動軸212に連結させて、前記第1凹凸部412(1)及び前記凹凸部414(1)によって形成される入力側第1クラッチ機構だけを係合状態とする。
【0183】
また、前記入力側スライダ412は、軸線方向他方側の第2位置に位置されると前記第1凹凸係合部412(1)が前記入力側第1駆動ギヤ52(1)の凹凸部係合部414(1)に対して非係合とされつつ前記第2凹凸係合部412(2)が前記入力側第2駆動ギヤ52(2)の凹凸係合部414(2)に係合されることで前記入力側第2駆動ギヤ52(2)を前記主駆動軸212に連結させて、前記第2凹凸部412(2)及び前記凹凸部414(2)によって形成される入力側第2クラッチ機構だけを係合状態とする。
【0184】
さらに、前記入力側スライダ412は、図11に示すように、軸線方向に関し第1及び第2位置の間の中間位置に位置されると前記第1及び第2凹凸係合部412(1)、412(2)が前記入力側第1及び第2駆動ギヤ52(1)、52(2)の凹凸係合部414(1)、414(2)にそれぞれ係合されることで前記入力側第1及び第2駆動ギヤ52(1)、52(2)の双方を前記主駆動軸212に連結させて、前記入力側第1及び第2クラッチ機構の双方を係合状態とする。
【0185】
即ち、前記入力側スライダ412は、第1伝動状態を現出させる第1位置と第2伝動状態を現出させる第2位置との間を移動する際には、必ず、前記入力側第1及び第2クラッチ機構の双方を係合状態とさせる中間位置を通過する。
【0186】
斯かる構成の本実施の形態に係るトランスミッション構造4においても、第1及び第2伝動状態の切替の際に駆動輪に走行駆動力が伝達されない状態が発生することを有効に防止することができる。
【0187】
なお、前記出力側クラッチユニット430は、前記入力側クラッチユニット410と実質的に同一構成を有している。
【0188】
即ち、前記出力側クラッチユニット430は、前記出力側第1及び第2従動ギヤ74(1)、74(2)にそれぞれ形成された凹凸係合部(図示せず)と、軸線方向に関し前記出力側第1及び第2従動ギヤ74(1)、74(2)の間において対応する変速出力軸45に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持された出力側スライダ432とを有している。
【0189】
前記出力側スライダ432は、前記出力側第1従動ギヤ74(1)に近接する軸線方向一方側に第1凹凸係合部(図示せず)を有し、且つ、前記出力側第2従動ギヤ74(2)に近接する軸線方向他方側に第2凹凸係合部(図示せず)を有している。
【0190】
前記出力側スライダ432は、軸線方向一方側の第1位置に位置されると前記第2凹凸係合部が前記出力側第2従動ギヤ74(2)の凹凸係合部に対して非係合とされつつ前記第1凹凸係合部が前記出力側第1従動ギヤの凹凸係合部に係合されることで前記出力側第1従動ギヤ74(1)を前記変速出力軸45に連結させて、前記第1凹凸係合部及び前記出力側第1従動ギヤ74(1)の凹凸係合部によって形成される出力側第1クラッチ機構だけを係合状態とする。
【0191】
また、前記出力側スライダ432は、軸線方向他方側の第2位置に位置されると前記第1凹凸係合部が前記出力側第1従動ギヤ74(1)の凹凸部係合部に対して非係合とされつつ前記第2凹凸係合部が前記出力側第2従動ギヤ74(2)の凹凸係合部に係合されることで前記出力側第2従動ギヤ74(2)を前記変速出力軸45に連結させて、前記第2凹凸係合部及び前記出力側第2従動ギヤ74(2)の凹凸部によって形成される出力側第2クラッチ機構だけを係合状態とする。
【0192】
さらに、前記入力側スライダ432は、軸線方向に関し第1及び第2位置の間の中間位置に位置されると前記第1及び第2凹凸係合部が前記出力側第1及び第2従動ギヤ74(1)、74(2)の凹凸係合部にそれぞれ係合されることで前記出力側第1及び第2従動ギヤ74(1)、74(2)の双方を前記変速出力軸45に連結させて、前記出力側第1及び第2クラッチ機構の双方を係合状態とする。
【0193】
本実施の形態に係るトランスミッション構造4は、前記入力側スライダ412及び前記出力側スライダ432の押動機構として油圧駆動機構を有している。
【0194】
前記油圧駆動機構は、前記圧油供給ライン155と、前記ドレンライン157と、供給される圧油によって前記入力側スライダ412を第1位置へ向けて押動する入力側第1油室450(1)と、供給される圧油によって前記入力側スライダ412を第2位置へ向けて押動する入力側第2油室450(2)と、供給される圧油によって前記出力側スライダ432を第1位置へ向けて押動する出力側第1油室452(1)と、供給される圧油によって前記出力側スライダ432を第2位置へ向けて押動する出力側第2油室452(2)と、前記入力側第1油室450(1)及び前記出力側第1油室452(1)に対して圧油を給排する第1給排ライン460(1)と、前記入力側第2油室450(2)及び前記出力側第2油室452(2)に対して圧油を給排する第2給排ライン460(2)と、前記制御装置100によって位置制御される電磁弁465とを備えている。
【0195】
なお、図中、符号414は、前記入力側スライダ412を軸線方向一方側(図示の例においては第1位値)に向けて付勢する付勢部材であり、符号434は、前記出力側スライダ432を軸線方向一方側(図示の例においては第1位置)に向けて付勢する付勢部材である。
【0196】
前記電磁弁465は、前記圧油給排ライン155を前記第1給排ライン460(1)に流体接続させ且つ前記第2給排ライン460(2)を前記ドレンライン157に流体接続させる第1位置と、前記第1給排ライン460(1)を前記ドレンライン157に流体接続させ且つ前記圧油給排ライン155を前記第2給排ライン460(2)に流体接続させる第2位置とを取り得るように構成されている。
【0197】
図12に、第1伝動状態から第2伝動状態への切替時における前記第1及び第2給排ライン460(1)、460(2)の油圧波形図を示す。
【0198】
前記制御装置100は、前記変速操作部材90がゼロ速位置から切替速位置までの間に位置されている状態においては(即ち、前記変速出力軸45の回転速度が切替速未満の低速状態においては)、前記電磁弁465を第1位置に位置させる。
【0199】
この状態においては、前記第2給排ライン460(2)の油圧は解放され、前記第1給排ライン460(1)に圧油が供給され、前記入力側スライダ412及び前記出力側スライダ432が第1位置に位置される。
【0200】
これにより、前記入力側第2クラッチ機構及び前記出力側第2クラッチ機構は遮断状態とされつつ、前記入力側第1クラッチ機構及び前記出力側第1クラッチ機構は係合状態とされて、前記トランスミッション構造4は第1伝動状態となる。
【0201】
前記制御装置100は、前記変速操作部材90が切替速位置を越えた状態においては(前記変速出力軸45の回転速度が切替速以上の高速状態においては)、前記電磁弁465を第2位置に位置させる。
【0202】
この状態においては、前記第1給排ライン460(1)の油圧は解放され、前記第2給排ライン460(2)に圧油が供給され、前記入力側スライダ412及び前記出力側スライダ432が第2位置に位置される。
【0203】
これにより、前記入力側第1クラッチ機構及び前記出力側第1クラッチ機構は遮断状態とされつつ、前記入力側第2クラッチ機構及び前記出力側第2クラッチ機構は係合状態とされて、前記トランスミッション構造は前記第2伝動状態となる。
【0204】
ここで、時間Ta(図12参照)において、前記変速操作部材90がゼロ速位置の側から切替速位置まで操作されたことを認識すると(即ち、前記出力センサ95bからの信号に基づき前記変速出力軸45の回転速度が切替速未満の状態から切替速に到達したことを認識すると)、前記制御装置100は、前記電磁弁465を第1位置から第2位置へ移動させる。
【0205】
これにより、前記入力側スライダ412及び前記出力側スライダ432が時間Taの時点で位置する第1位置から第2位置へ向けて移動されて、時間Tbにおいて第2位置に到達する。そして、この移動途中の中間位置において二重伝動状態を現出する。
【0206】
なお、前記実施の形態3においては前記入力側クラッチユニット及び前記出力側クラッチユニットの双方を摩擦板式とし、前記実施の形態4においては前記入力側クラッチユニット及び前記出力側クラッチユニットの双方をドグクラッチ式としたが、本発明は斯かる構成に限定されるものではない。
【0207】
即ち、前記入力側クラッチユニット及び前記出力側クラッチユニットの一方を摩擦板式とし、且つ、他方をドグクラッチ式とすることも可能である。
【0208】
図13に、前記入力側クラッチユニットをドグクラッチ式とし且つ前記出力側クラッチユニットを摩擦板式とした変形例に係るトランスミッション構造5の油圧回路図を示す。
また、図14に、第1伝動状態から前記第2伝動状態への切替時における前記トランスミッション構造5における油圧波形図を示す。
【0209】
また、当然ながら、前記実施の形態3及び4における二重伝動構造に関する構成を前記実施の形態2に適用することも可能である。
【0210】
実施の形態5
以下、本発明に係るトランスミッション構造のさらに他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0211】
本実施の形態に係るトランスミッション構造は、第1及び第2伝動状態の切替時における前記制御装置100による前記電磁弁365(1)、365(2)、367(1)、367(2)の位置制御タイミングが変更されている点においてのみ、前記実施の形態3に係るトランスミッション構造3と相違している。
【0212】
図15に、第1伝動状態から第2伝動状態への切替時における前記給排ライン360(1)、360(2)、362(1)、362(2)の油圧波形図を示す。
【0213】
前記変速操作部材90が切替速位置までの間に位置されている状態においては(即ち、前記変速出力軸45の回転速度が切替速未満の低速状態においては)、前記制御装置100は、前記電磁弁365(1)、365(2)、367(1)、367(2)に対して、前記実施の形態3におけると同様の位置制御を行う。
【0214】
即ち、前記制御装置100は、前記入力側第1電磁弁365(1)及び前記出力側第1電磁弁367(1)を供給位置に位置させ且つ前記入力側第2電磁弁365(2)及び前記出力側第2電磁弁367(2)を排出位置に位置させる。
【0215】
この状態においては、図15に示すように、前記入力側第2給排ライン360(2)及び前記出力側第2給排ライン362(2)の油圧は解放されて前記入力側第2クラッチ機構60(2)及び前記出力側第2クラッチ機構80(2)は遮断状態とされつつ、前記入力側第1給排ライン360(1)及び前記出力側第1給排ライン362(1)は、対応する前記電磁弁365(1)、367(1)のパイロット圧によって設定される係合油圧に維持されて前記入力側第1クラッチ機構60(1)及び前記出力側第1クラッチ機構80(1)は係合状態とされる。
これにより、前記トランスミッション構造は第1伝動状態となる。
【0216】
また、前記変速操作部材90が切替速位置を越えた状態においても(即ち、前記変速出力軸45の回転速度が切替速以上の高速状態においても)、前記制御装置100は、前記電磁弁365(1)、365(2)、367(1)、367(2)に対して、前記実施の形態3におけると同様の位置制御を行う。
【0217】
即ち、前記制御装置100は、前記入力側第1電磁弁365(1)及び前記出力側第1電磁弁367(1)を排出位置に位置させ且つ前記入力側第2電磁弁365(2)及び前記出力側第2電磁弁367(2)を供給位置に位置させる。
【0218】
この状態においては、図15に示すように、前記入力側第1給排ライン360(1)及び前記出力側第1給排ライン362(1)の油圧は解放されて前記入力側第1クラッチ機構60(1)及び前記出力側第1クラッチ機構80(1)は遮断状態とされつつ、前記前記入力側第2給排ライン360(2)及び前記出力側第2給排ライン362(2)は、対応する前記電磁弁365(2)、367(2)のパイロット圧によって設定される係合油圧に維持されて前記入力側第2クラッチ機構60(2)及び前記出力側第2クラッチ機構80(2)は係合状態とされる。
これにより、前記トランスミッション構造3は前記第2伝動状態となる。
【0219】
一方、第1及び第2伝動状態の切替時においては、前記制御装置100は、前記電磁弁365(1)、365(2)、367(1)、367(2)に対して、前記実施の形態3におけるとは異なる位置制御を行う。
【0220】
即ち、図15における時間Taにおいて、前記変速操作部材90がゼロ速位置の側から切替速位置へ操作されたことを認識すると(即ち、前記出力センサ95bからの信号に基づき前記変速出力軸45の回転速度が切替速未満の状態から切替速に到達したことを認識すると)、前記制御装置100は、伝動状態切替前の時点(この例においては第1伝動状態の時点)で供給位置に位置されていた前記入力側第1電磁弁365(1)及び前記出力側第1電磁弁367(1)を供給位置に維持したままで、切替前の時点で排出位置に位置されていた前記入力側第2電磁弁365(2)及び前記出力側第2電磁弁367(2)を排出位置から供給位置へ移動させる。
【0221】
これにより、前記入力側第1給排ライン360(1)及び前記出力側第1給排ライン362(1)が係合油圧に維持されたままで、前記入力側第2給排ライン360(2)及び前記出力側第2給排ライン362(2)の油圧が徐々に上昇し、時間Tbにおいて係合油圧に達する。
【0222】
ここで、前記制御装置100は、排出位置から供給位置へ位置移動された前記入力側第2電磁弁365(2)及び前記出力側第2電磁弁367(2)を介して圧油供給された前記入力側第2給排ライン360(2)及び前記出力側第2給排ライン362(2)の油圧が係合油圧より低い切替油圧Pに達したことを対応する圧力センサ370(2)、372(2)からの信号に基づき認識すると、切替前の時点で供給位置に位置されていた前記入力側第1電磁弁365(1)及び前記出力側第1電磁弁367(1)を供給位置から排出位置へ移動させる。
切替油圧Pは、対応するクラッチ機構の摩擦板群が滑りつつ動力伝達を行う滑り係合状態になる油圧とされる。
【0223】
斯かる構成の本実施の形態に係るトランスミッション構造によれば、第1及び第2伝動状態の切替の際に駆動輪220に走行駆動力が伝達されない状態が発生することを可及的に防止乃至は低減しつつ、さらに、第1及び第2伝動状態の切替時に生じ得る切替ショックを有効に防止乃至は低減することができる。
【0224】
即ち、前記入力側第1及び第2変速比は、第1伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第2要素の回転速と第2伝動状態の際に前記入力側第2伝動機構50(2)を介して伝達される回転動力による前記第2要素の回転速とが同一となり、且つ、第2伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第1要素の回転速と第1伝動状態の際に前記入力側第1伝動機構50(1)を介して伝達される回転動力による前記第1要素の回転速とが同一となるように設定されている。
【0225】
従って、理論上においては、第1及び第2伝動状態の切替時に前記第1要素及び/又は前記第2要素に回転速度差は生じない。
しかしながら、製造誤差等に起因して、第1及び第2伝動状態の切替時に前記第1要素及び/又は前記第2要素に回転速度差が生じ得る。
【0226】
この点に関し、本実施の形態においては、仮に第1及び第2伝動状態の切替時に前記第1要素及び/又は前記第2要素に回転速度差が生じたとしても、第1及び第2伝動状態の切替時に遮断位置から供給位置に位置移動された電磁弁(図15の例においては前記入力側第2電磁弁365(2))を介して圧油供給されたクラッチ機構(図15の例においては、前記入力側第2クラッチ機構60(2))の摩擦板群が滑りながら徐々に摩擦係合し、当該クラッチ機構の油圧が係合油圧に到達して当該クラッチ機構が完全係合状態となる直前に、第1及び第2伝動状態の切替前に係合状態とされていたクラッチ機構(図15の例においては、前記入力側第1クラッチ機構60(1))が係合油圧から解放される。
【0227】
従って、第1及び第2伝動状態の切替時に駆動輪220に走行駆動力が伝達されない状態が発生することを可及的に防止乃至は低減しつつ、さらに、第1及び第2伝動状態の切替時に生じ得る切替ショックや二重伝動状態による伝動系の損傷を有効に防止乃至は低減することができる。
【0228】
また、前記出力側第1及び第2変速比は、HST出力が第2HST速とされた際に前記変速出力軸45に現出される回転速が第1及び第2伝動状態において同一となるように設定されている。
【0229】
従って、理論上においては、第1及び第2伝動状態の切替時に前記変速出力軸45に回転速度差は生じない。
しかしながら、製造誤差等に起因して、第1及び第2伝動状態の切替時に前記変速出力軸45に回転速度差が生じる場合がある。
【0230】
この点に関し、本実施の形態においては、仮に第1及び第2伝動状態の切替時に前記変速出力軸45に回転速度差が生じたとしても、第1及び第2伝動状態の切替時に遮断位置から供給位置に位置移動された電磁弁(図15の例においては前記出力側第2電磁弁367(2))を介して圧油供給されたクラッチ機構(図15の例においては前記出力側第2クラッチ機構80(2))の摩擦板群が滑りながら徐々に摩擦係合され、当該クラッチ機構の油圧が係合油圧に到達して当該クラッチ機構が完全係合状態となる直前に、第1及び第2伝動状態の切替前に係合状態とされていたクラッチ機構(図15の例においては前記出力側第1クラッチ機構80(1))の油圧が係合油圧から解放される。
【0231】
従って、第1及び第2伝動状態の切替時に駆動輪220に走行駆動力が伝達されない状態が発生することを可及的に防止乃至は低減しつつ、さらに、第1及び第2伝動状態の切替時に生じ得る切替ショックや二重伝動状態による伝動系の損傷を有効に防止乃至は低減することができる。
【0232】
なお、第1及び第2伝動状態の切替時に、切替前の時点で供給位置に位置されていた電磁弁(図15の例においては前記入力側第1電磁弁365(1)及び前記出力側第1電磁弁367(1))を供給位置に維持したままで、切替前の時点で排出位置に位置されていた電磁弁(図15の例においては前記入力側第2電磁弁365(2)及び前記出力側第2電磁弁367(2))を排出位置から供給位置へ移動させ、排出位置から供給位置へ位置移動された電磁弁を介して圧油供給された給排ライン(図15の例においては前記入力側第2給排ライン360(2)及び前記出力側第2給排イラン362(2))の油圧が係合油圧に到達して当該クラッチ機構が完全係合状態となる直前に、切替前の時点で供給位置に位置されていた電磁弁(図15の例においては前記入力側第1電磁弁365(1)及び前記出力側第1電磁弁367(1))を供給位置から排出位置へ移動させる構成は、製造誤差等に起因して回転速度差が生じる可能性のある、前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)によって形成される入力側クラッチユニット、並びに、前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)によって形成される出力側クラッチユニットの一方にのみ適用し、他方にその可能性がない又は少ない場合には前述の図10に示したドグクラッチ式を採用して、低コスト化を図るようにすることも可能である。
【0233】
実施の形態6
以下、本発明に係るトランスミッション構造のさらに他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図16に、本実施の形態に係るトランスミッション構造6の油圧回路図を示す。
なお、図中、前記実施の形態におけると同一部材は同一符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0234】
前記実施の形態1に係るトランスミッション構造1においては、前記入力側第1伝動機構50(1)の入力側第1変速比及び前記入力側第2伝動機構50(2)の第2変速比は、第1伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第2要素の回転速と第2伝動状態の際に前記入力側第2伝動機構50(2)を介して伝達される回転動力による前記第2要素の回転速とが同一となり、且つ、第2伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第1要素の回転速と第1伝動状態の際に前記入力側第1伝動機構50(1)を介して伝達される回転動力による前記第1要素の回転速とが同一となるように設定されており、さらに、前記出力側第1伝動機構70(1)の出力側第1変速比及び前記出力側第2伝動機構70(2)の第2変速比は、HST出力が第2HST速とされた際に前記変速出力軸45に現出される回転速が第1及び第2伝動状態において同一となるように設定されている。
【0235】
前記実施の形態1に係るトランスミッション構造1によれば、理論上においては、第1及び第2伝動状態の切替時に、前記第1要素及び/又は前記第2要素並びに前記変速出力軸45に回転速度差は生じない。
【0236】
しかしながら、前記入力側第1及び第2伝動機構50(1)、50(2)を構成するギヤの歯数等の関係で、前記入力側第1及び第2変速比を前記理想的な設定値に設定できない場合がある。
このような場合には、第1及び第2伝動状態の切替時に、前記第1要素に回転速度差が生じ、及び/又は、前記第2要素に回転速度差が生じることになる。
【0237】
同様に、前記出力側第1及び第2伝動機構70(1)、70(2)を構成するギヤの歯数等の関係で、前記出力側第1及び第2変速比を前記理想的な設定値に設定できない場合がある。
このような場合には、第1及び第2伝動状態の切替時に前記変速出力軸45に回転速度差が生じることになる。
【0238】
この点に鑑み、本実施の形態に係るトランスミッション構造6は、第1及び第2伝動状態の切替時に、前記第1要素及び/又は前記第2要素、並びに、前記変速出力軸45に回転速度差が生じる場合において、この回転速度差に起因する切替ショックや二重伝動状態による伝動系の損傷を可及的に防止乃至は低減し得るように構成されている。
【0239】
具体的には、図16に示すように、本実施の形態に係るトランスミッション構造6は、前記実施の形態1に係るトランスミッション構造1に比して、前記入力側第1及び第2伝動機構50(1)、50(2)に代えて入力側第1及び第2伝動機構650(1)、650(2)を有し、且つ、前記出力側第1及び第2伝動機構70(1)、70(2)に代えて出力側第1及び第2伝動機構670(1)、670(2)を有している。
【0240】
図16に示すように、前記入力側第1伝動機構650(1)は、前記主駆動軸212に相対回転自在に連結された入力側第1駆動ギヤ652(1)と、前記入力側第1駆動ギヤ652(1)に噛合され且つ前記第1要素に連結された入力側第1従動ギヤ654(1)とを有している。
【0241】
前記入力側第2伝動機構650(2)は、前記主駆動軸212に相対回転自在に支持された入力側第2駆動ギヤ652(2)と、前記入力側第2駆動ギヤ652(2)に噛合され且つ前記第2要素に連結された入力側第2従動ギヤ654(2)とを有している。
【0242】
前記出力側第1伝動機構670(1)は、前記変速中間軸43に相対回転不能に支持された出力側第1駆動ギヤ672(1)と、前記出力側第1駆動ギヤ672(1)に噛合され且つ前記変速出力軸45に相対回転自在に支持された出力側第1従動ギヤ674(1)とを有している。
【0243】
前記出力側第2伝動機構670(2)は、前記第1要素に連結された出力側第2駆動ギヤ672(2)と、前記出力側第2駆動ギヤ672(2)に噛合され且つ前記変速出力軸45に相対回転自在に支持された出力側第2従動ギヤ674(2)とを有している。
【0244】
図17に、第1伝動状態から第2伝動状態への切替時における前記給排ライン360(1)、360(2)、362(1)、362(2)の油圧波形図を示す。
【0245】
本実施の形態においては、第1及び第2伝動状態の切替時において、前記制御装置100は、前記電磁弁365(1)、365(2)、367(1)、367(2)に対して、前記実施の形態5におけると同様の位置制御を行う。
【0246】
即ち、図17における時間Taにおいて前記出力センサ95bからの信号に基づき前記変速出力軸45の回転速度が切替速未満の状態から切替速に到達したことを認識すると、前記制御装置100は、伝動状態切替前の時点(この例においては第1伝動状態の時点)で供給位置に位置されていた前記入力側第1電磁弁365(1)及び前記出力側第1電磁弁367(1)を供給位置に維持したままで、切替前の時点で排出位置に位置されていた前記入力側第2電磁弁365(2)及び前記出力側第2電磁弁367(2)を排出位置から供給位置へ移動させる。
【0247】
これにより、図17に示すように、前記入力側第1給排ライン360(1)及び前記出力側第1給排ライン362(1)が係合油圧に維持されたままで、前記入力側第2給排ライン360(2)及び前記出力側第2給排ライン362(2)の油圧が徐々に上昇し、時間Tbにおいて係合油圧に達する。
【0248】
ここで、前記制御装置100は、排出位置から供給位置へ位置移動された前記入力側第2電磁弁365(2)及び前記出力側第2電磁弁367(2)を介して圧油供給された前記入力側第2給排ライン360(2)及び前記出力側第2給排ライン362(2)の油圧が係合油圧より低い切替油圧Pに達したことを対応する圧力センサ370(2)、372(2)からの信号に基づき認識すると、切替前の時点で供給位置に位置されていた前記入力側第1電磁弁365(1)及び前記出力側第1電磁弁367(1)を供給位置から排出位置へ移動させる。
【0249】
斯かる構成を備えた前記トランスミッション構造6によれば、仮に第1及び第2伝動状態の切替時に前記第1要素及び/又は前記第2要素並びに前記変速出力軸45に回転速度差が生じたとしても、第1及び第2伝動状態の切替時に遮断位置から供給位置に位置移動された電磁弁(図17の例においては前記入力側第2電磁弁365(2)及び前記出力側第2電磁弁367(2))を介して圧油供給されたクラッチ機構(図17の例においては、前記入力側第2クラッチ機構60(2)及び前記出力側第2クラッチ機構80(2))の摩擦板群が滑りながら徐々に摩擦係合し、当該クラッチ機構の油圧が係合油圧に到達して当該クラッチ機構が完全係合状態となる直前に、第1及び第2伝動状態の切替前に係合状態とされていたクラッチ機構(図17の例においては前記入力側第1クラッチ機構60(1)及び前記出力側第1クラッチ機構80(1))が係合油圧から解放される。
【0250】
従って、第1及び第2伝動状態の切替時に駆動輪220に走行駆動力が伝達されない状態が発生することを可及的に防止乃至は低減しつつ、さらに、第1及び第2伝動状態の切替時に生じ得る切替ショックや伝動系の損傷を有効に防止乃至は低減することができる。
【0251】
なお、本実施の形態においては、第1及び第2伝動状態の切替時において、切替前の時点で供給位置に位置されていた一方の電磁弁を供給位置に維持したままで、切替前の時点で排出位置に位置されていた他方の電磁弁を排出位置から供給位置へ移動させ、当該他方の電磁弁を介して圧油供給された給排ラインの油圧が係合油圧より低い切替油圧Pに達したことを対応する圧力センサからの信号に基づき認識した時点で、前記一方の電磁弁を供給位置から排出位置へ移動させる構成を、前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)によって形成される入力側クラッチユニット、並びに、前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)によって形成される出力側クラッチユニットの双方に適用しているが、当然ながら本発明は斯かる形態に限定されるものではなく、前記構成を、伝動機構を構成するギヤの歯数等の設定に起因して回転速度差が生じる側の、前記入力側クラッチユニット及び前記出力側クラッチユニットの一方にのみ適用し、他方にその可能性がない場合には前述の図10に示したドグクラッチ式を採用して低コスト化を図るようにすることも可能である。
【0252】
また、本実施の形態を前記実施の形態2に係るトランスミッション構造2に適用することも可能である。
【0253】
前記実施の形態5及び6においては、第1及び第2伝動状態の切替時に、切替前の時点で係合状態とされていたクラッチ機構(以下、切替前係合クラッチ機構という)の油圧を係合油圧から略一定の割合で下降させて解放させているが、これに代えて、図18に示すように、切替前の時点で遮断状態とされていたクラッチ機構(以下、切替前遮断クラッチ機構という)の油圧が切替油圧Pに達したことに応じて切替前係合クラッチ機構の油圧を略一定割合で下降させつつ、切替前遮断クラッチ機構の油圧が係合油圧に達した時点で、切替前係合クラッチ機構の油圧を一気に解放油圧まで下降させて不必要な滑り伝動状態の時間を削減して、摩擦板の耐久性向上を図ることも可能である。
【0254】
また、前記実施の形態5及び6においても、前記圧力センサ370(1)、370(2)、372(1)、372(2)によって対応する摩擦板式クラッチ機構の係合状態を検知する構成に代えて、前記比例電磁弁365(1)、365(2)、367(1)、367(2)への供給電流値や供給電流時間等を検出する他のクラッチ係合検知手段によって対応する摩擦板式クラッチ機構の係合状態を検知する構成を採用することも可能である。
【0255】
実施の形態7
以下、本発明に係るトランスミッション構造のさらに他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図19に、本実施の形態に係るトランスミッション構造7が適用された作業車輌202の伝動模式図を示す。
また、図20に、本実施の形態に係るトランスミッション構造7の油圧回路図を示す。
図中、前記実施の形態におけると同一部材は同一符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0256】
前記実施の形態1に係るトランスミッション構造1は、駆動力の正逆切替を、前記変速出力軸45より伝動方向下流側に配置された前記前後進切替機構230によって行うように構成されている。
【0257】
即ち、図1に示すように、前記実施の形態1に係るトランスミッション構造1は、前記変速出力軸45と前記変速出力軸45の回転動力によって作動的に回転駆動される前記走行伝動軸235との間に、駆動力の回転方向を前進方向及び後進方向に切り替える前記前後進切替機構230を有している。
【0258】
これに対し、本実施の形態に係るトランスミッション構造7は、前記変速出力軸45に伝達される駆動力の回転方向を正逆切替可能とされている。
【0259】
具体的には、図19に示すように、前記トランスミッション構造7は、前記HST10と、前記遊星歯車機構30と、前記入力側第1及び第2伝動機構50(1)、50(2)と、前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)と、前記第2要素の回転動力を正転状態で前記変速出力軸45に作動伝達可能な前記出力側第1伝動機構70(1)(前進第1伝動機構)と、前記第1要素の回転動力を正転状態で前記変速出力軸45に作動伝達可能な前記出力側第2伝動機構70(2)(前進第2伝動機構)と、前記第2要素の回転動力を逆転状態で前記変速出力軸45に作動伝達可能な後進伝動機構70(R)と、 前記出力側第1伝動機構70(1)(前記前進第1伝動機構)、前記出力側第2伝動機構70(2)(前記前進第2伝動機構)及び前記後進伝動機構70(R)の動力伝達をそれぞれ係脱させる前記出力側第1クラッチ機構80(1)(前進第1クラッチ機構)、前記出力側第2クラッチ機構80(2)及び後進クラッチ機構80(R)と、前記変速操作部材90と、前記HSTセンサ95aと、前記出力センサ95bと、前記制御装置100とを備えている。
【0260】
前記後進伝動機構70(R)は、前記変速中間軸43に相対回転不能に支持された後進駆動ギヤ72(R)と、前記変速出力軸45に相対回転自在に支持された後進従動ギヤ74(R)と、前記後進駆動ギヤ72(R)及び前記後進従動ギヤ74(R)に噛合された後進アイドルギヤ73(R)とを有している。
【0261】
前記後進クラッチ機構80(R)は、前記変速出力軸45に相対回転不能に支持された後進クラッチハウジング82(R)と、前記後進従動ギヤ74(R)に相対回転不能に支持された後進駆動側摩擦板及び前記後進駆動側摩擦板に対向された状態で前記後進クラッチハウジング82(R)に相対回転不能に支持された後進従動側摩擦板を含む後進摩擦板群84(R)と、前記後進摩擦板群84(R)を摩擦係合させる後進ピストン(図示せず)とを有している。
【0262】
なお、図19中の符号105は、前記入力側第1電磁弁365(1)等を含む電磁弁ユニットである。
また、図19中の符号242は、摩擦板式クラッチ機構を含む副変速機構であり、前記実施の形態1に係るトランスミッション構造1におけるドグクラッチ式クラッチ機構を含む前記副変速機構240に代えて、備えられている。
【0263】
前記制御装置100は、
・前記変速操作部材90がゼロ速位置から切替速位置までの間に位置されている状態においては(即ち、前記HSTセンサ95a及び前記出力センサ95bの検出信号に基づき前記変速出力軸45の回転速度が前進方向においてゼロ速から切替速未満までの低速状態においては)、前記入力側第1クラッチ機構60(1)及び前記出力側第1クラッチ機構80(1)を係合状態とする前進第1伝動状態を現出させ、
・前記変速操作部材90が切替速位置を越えて操作されている状態においては(即ち、前記変速出力軸45の回転速度が前進方向において切替速以上の高速状態においては)、前記入力側第2クラッチ機構60(2)及び前記出力側第2クラッチ機構80(2)を係合状態とする前進第2伝動状態を現出させ、且つ、
・前記変速操作部材90がゼロ速位置から後進側へ操作されている状態においては(即ち、前記変速出力軸45の回転速度がゼロ速から後進側へ変化する後進伝動状態においては)、前記入力側第1クラッチ機構60(1)及び前記後進クラッチ機構80(R)を係合状態とする後進伝動状態を現出させる。
【0264】
図21に、本実施の形態に係るトランスミッション構造7が適用された作業車輌202における、走行車速とHST出力との関係を表すグラフを示す。
なお、図21(a)及び(b)は、それぞれ、前記副変速機構242が低速段及び高速段に係合している状態のグラフである。
【0265】
図21に示すように、前記制御装置100は、前進第1伝動状態においては、前記変速操作部材90の前進側増速操作に応じてHST出力が第1HST速から第2HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材20を作動させる。
【0266】
即ち、前記制御装置100は、前記変速操作部材90がゼロ速位置から前進側切替速位置までの間で操作されている際には前進第1伝動状態を現出させた上で、前記変速操作部材90がゼロ速位置の側から前進切替速位置の側へ増速操作されるに従ってHST出力が第1HSTの側から第2HSTの側へ変速するように前記出力調整部材20を作動させる。
【0267】
前記制御装置100は、前進第2伝動状態においては、前記変速操作部材90の前進側増速操作に応じてHST出力が第2HST速から第1HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材20を作動させる。
【0268】
即ち、前記制御装置100は、前記変速操作部材90がゼロ速位置の側から前進側切替速位置まで操作されたことを認識すると、前進側第1伝動状態から前進第2伝動状態への切替を行い、前記変速操作部材90が前進側切替速位置より前進高速側に位置されている際には前進第2伝動状態を現出させた上で、前記変速操作部材90の前進側増速操作に応じてHST出力が第2HST速から第1HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材20を作動させる。
【0269】
前記制御装置100は、後進伝動状態においては、前記変速操作部材90の後進側増速操作に応じてHST出力が第1HST速から第2HST速へ向けて変速するように前記出力調整部材20を作動させる。
【0270】
即ち、前記制御装置100は、前記変速操作部材90がゼロ速位置から後進側へ操作されている際には後進伝動状態を現出させた上で、前記変速操作部材90が後進増速操作されるに従ってHST出力が第1HSTの側から第2HSTの側へ変速するように前記出力調整部材20を作動させる。
【0271】
図21に示すように、本実施の形態においても、前記実施の形態1におけると同様に、前進側第1及び第2伝動状態の切替時に走行速度(即ち、前記変速出力軸45)に速度差が生じないように構成されている。
【0272】
具体的には、前記入力側第1伝動機構50(1)の変速比(入力側第1変速比)及び前記入力側第2伝動機構50(2)の変速比(入力側第2変速比)は、前進第1伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第2要素の回転速と前進第2伝動状態の際に前記入力側第2伝動機構50(2)を介して伝達される回転動力による前記第2要素の回転速とが同一となり、且つ、前進第2伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第1要素の回転速と前進第1伝動状態の際に前記入力側第1伝動機構50(1)を介して伝達される回転動力による前記第1要素の回転速とが同一となるように設定されている。
【0273】
また、前記出力側第1伝動機構70(1)(前進第1伝動機構)の変速比(前進第1変速比)及び前記出力側第2伝動機構70(2)(前進第2伝動機構)の変速比(前進第2変速比)は、HST出力が第2HST速とされた際に前記変速出力軸45に現出される回転速が第1及び第2伝動状態において同一となるように設定されている。
【0274】
斯かる構成により、前進側第1及び第2伝動状態の切替時に前記変速出力軸45に回転速度差が生じること、即ち、走行速度差が生じることが有効に防止乃至は低減されている。
【0275】
また、前記入力側第1クラッチ機構60(1)の係合状態においてHST出力が第1HST速とされた際に、前記第2要素の回転速度がゼロ速となるように、前記HST10及び前記遊星歯車機構30が設定されている。
斯かる構成によれば、車輌の前後進切替を無理なく行うことができる。特に、この構成は、頻繁に前後進切替を要する作業を行う作業車輌の場合に有効である。
【0276】
次に、前記トランスミッション構造7の圧油給排構成について説明する。
図20に示すように、前記トランスミッション構造7は、前記圧油供給ライン155と、前記入力側第1給排ライン360(1)と、前記入力側第2給排ライン360(2)と、前記出力側第1給排ライン362(1)(前進側第1給排ライン)と、前記出力側第2給排ライン362(2)(前進側第2給排ライン)と、前記後進クラッチ機構80(R)に対して圧油を給排する後進給排ライン364と、前進時供給ライン310(F)と、後進時供給ライン310(R)と、前記入力側第1電磁弁365(1)、前記入力側第2電磁弁365(2)、前記出力側第1電磁弁367(1)及び前記出力側第2電磁弁367(2)と、前記入力側第1圧力センサ370(1)、前記入力側第2圧力センサ370(2)、前記出力側第1圧力センサ372(1)及び前記出力側第2圧力センサ372(2)と、前記入力側第1給排ライン360(1)に介挿されたチェック弁320と、後進時供給ライン310(R)に介挿されたパイロット弁330と、前記ドレンライン157と、前後進切替電磁弁300とを備えている。
【0277】
本実施の形態においては、前記入力側第1電磁弁365(1)、前記入力側第2電磁弁365(2)、前記出力側第1電磁弁367(1)及び前記出力側第2電磁弁367(2)は、前記前進時供給ライン310(F)と前記入力側第1給排ライン360(1)、前記入力側第2給排ライン360(2)、前記出力側第1給排ライン362(1)(前進側第1給排ライン)及び前記出力側第2給排ライン362(2)(前進側第2給排ライン)のそれぞれとの間に介挿されており、排出位置に位置されると対応する給排ライン360(1)、360(2)、362(1)、362(2)をドレンさせる一方で、供給位置に位置されると対応する給排ライン360(1)、360(2)、362(1)、362(2)を前記前進時供給ライン310(F)に流体接続させるようになっている。
【0278】
前記前後進切替電磁弁300は、前記制御装置100によって位置制御され、前記前進時供給ライン310(F)を前記圧油供給ライン155に流体接続させ且つ前記後進時供給ライン310(R)を前記ドレンライン157に流体接続させる前進位置Fと、前記後進時供給ライン310(R)を前記圧油供給ライン155に流体接続させ且つ前記前進時供給ライン310(F)を前記ドレンライン157に流体接続させる後進位置Rと、前記圧油供給ライン155、前記前進時供給ライン310(F)及び前記後進供給ライン310(R)を前記ドレンライン157に流体接続させる中立位置Nとを取り得るようになっている。
【0279】
前記チェック弁320は、前記入力側第1電磁弁365(1)を介して前記前進時供給ライン310(F)から供給される圧油が前記入力側第1クラッチ機構60(1)へ向けて圧油供給方向へ流れることを許容しつつ、逆向きの圧油排出方向への流れを防止するように、前記入力側第1給排ライン360(1)に介挿されている。
【0280】
前記後進時供給ライン310(R)は、前記油圧源150に近接する上流側が前記前後進切替電磁弁300の二次側に流体接続され、且つ、前記油圧源150とは反対側の下流側が前記チェック弁320より圧油供給方向下流側において前記入力側第1給排ライン360(1)に流体接続されている。
【0281】
前記パイロット弁330は、前記後進時供給ライン310(R)を連通させる連通位置と、前記後進時供給ライン310(R)の圧油が圧油供給方向へ流れることを許容しつつ、逆向きの流れを防止する逆止位置とを選択的に取り得るように構成されている。
【0282】
前記パイロット弁330は、付勢部材332によって連通位置に向けて付勢されつつ、前記前進時供給ライン310(F)の油圧をパイロット圧としており、前記前進時供給ライン310(F)に圧油が供給されると、前記付勢部材332の付勢力に抗して逆止位置に位置するように構成されている。
【0283】
前記後進給排ライン364は、上流側が前記パイロット弁330より圧油供給方向上流側において前記後進時供給ライン310(R)に流体接続され、且つ、下流側が前記後進クラッチ機構80(R)に流体接続されている。
【0284】
前記トランスミッション構造7の圧油給排構成は以下のように作動する。
前記変速操作部材90がゼロ速位置に位置されると、前記制御装置100は、前記前後進切替電磁弁300を中立位置に位置させる。
【0285】
この状態においては、前記入力側第1給排ライン360(1)、前記入力側第2給排ライン360(2)、前記出力側第1給排ライン362(1)、前記出力側第2給排ライン362(2)及び前記後進給排ライン364は全て開放され、前記全てのクラッチ機構60(1)、60(2)、80(1)、80(2)、80(R)が遮断状態となり、前記変速出力軸45へは動力が伝達されない。
【0286】
前記変速操作部材90が前進側へ操作されると、前記制御装置100は、前記HST10が第1HST速を出力するに先立って、前記前後進切替電磁弁300を前進位置Fに位置させる。
【0287】
これにより、前記後進時供給ライン310(R)は前記ドレンライン157に流体接続され、前記前進時供給ライン310(F)は前記圧油供給ライン155に流体接続される。
【0288】
なお、この際、前記パイロット弁330は、前記前進供給ライン310(F)の油圧によって、逆止位置に位置される。従って、前記入力側第1給排ライン360(1)は油圧が保持される状態とされる。
【0289】
前記変速操作部材90がゼロ速位置から前進側切替速位置までの間で操作されている際には、前記制御装置100は、前記入力側第1電磁弁365(1)及び前記出力側第1電磁弁367(1)を供給位置に位置させる。
【0290】
これにより、前記入力側第1給排ライン360(1)及び前記出力側第1給排ライン362(1)に前記前進時供給ライン310(F)から圧油が流れ込み、前記入力側第1クラッチ機構60(1)及び前記出力側第1クラッチ機構80(1)が係合状態とされる前進第1伝動状態が現出される。
【0291】
なお、この際、前記入力側第2給排ライン360(2)及び前記出力側第2給排ライン362(2)は、対応する前記電磁弁365(2)、367(2)によってドレンされ、前記後進給排ライン364は前記後進時供給供給ライン310(R)及び前記前後進切替電磁弁300を介してドレンされる。
【0292】
前記変速操作部材90が前進側切替速位置を越えて前進高速側へ操作されると、前記制御装置100は、前記HST10が第2HST速を出力するに先立って、前記入力側第1電磁弁365(1)及び前記出力側第1電磁弁367(1)を排出位置に位置させつつ、前記入力側第2電磁弁365(2)及び前記出力側第2電磁弁367(2)を供給位置に位置させる。
【0293】
これにより、前記入力側第2給排ライン360(2)及び前記出力側第2給排ライン362(2)に前記前進時供給ライン310(F)から圧油が流れ込み、前記入力側第2クラッチ機構60(2)及び前記出力側第2クラッチ機構80(2)が係合状態とされる前進第2伝動状態が現出される。
【0294】
なお、この際、前記入力側第1給排ライン36(1)及び前記出力側第1給排ライン362(1)は、対応する前記電磁弁365(1)、367(1)を介してドレンされ、前記後進給排ライン364は前記後進時供給供給ライン310(R)及び前記前後進切替電磁弁300を介してドレンされる。
【0295】
前記変速操作部材90が後進側へ操作されると、前記制御装置100は、前記HST10が第1HST速を出力するに先立って、前記前後進切替電磁弁300を後進位置Rに位置させる。
【0296】
これにより、前記前進時供給ライン310(F)は前記ドレンライン157に流体接続され、前記後進時供給ライン310(R)は前記圧油供給ライン155に流体接続される。
【0297】
この際、前記入力側第1電磁弁365(1)、前記入力側第2電磁弁365(2)、前記出力側第1電磁弁367(1)及び前記出力側第2電磁弁367(2)は全て排出位置に位置されている。
従って、前記入力側第2給排ライン360(2)、前記出力側第1給排ライン362(1)及び前記出力側第2給排ライン362(2)は、対応する電磁弁365(2)、367(1)、367(2)によって開放される。
【0298】
一方、前記入力側第1給排ライン360(1)は、前記チェック弁320より圧油供給方向下流側において前記後進時供給ライン310(R)に流体接続されている。
従って、前記入力側第1電磁弁365(1)は排出位置に位置されているものの、前記入力側第1給排ライン360(1)には前記後進時供給ライン310(R)を介して圧油が供給され、前記入力側第1クラッチ機構60(1)は係合状態となる。
【0299】
なお、この際、前記前進時供給ライン310(F)の油圧をパイロット圧とする前記パイロット弁330は、前記前進時供給ライン310(F)が開放されている為に、前記付勢部材332の付勢力によって連通位置に位置されている。
従って、前記入力側第1給排ライン360(1)には、前記後進時供給ライン310(R)を介して圧油が有効に供給される。
【0300】
また、前述の通り、前記後進給排ライン364は、前記パイロット弁300より圧油供給方向上流側において前記後進時供給ライン310(R)に流体接続されており、前記後進供給供給ライン310(R)から圧油の供給を受けている。
これにより、前記入力側第1クラッチ機構60(1)が係合状態とされつつ前記後進クラッチ機構80(R)が係合状態とされる後進伝動状態が現出される。
【0301】
なお、前進側第1及び第2伝動状態を切り替える際の前記入力側第1電磁弁365(1)及び前記入力側第2電磁弁365(2)の切替制御タイミング、並びに、前記出力側第1電磁弁367(1)及び前記出力側第2電磁弁367(2)の切替制御タイミングについては、前記実施の形態3、前記実施の形態5及び前記実施の形態6等の種々の前記実施の形態を適用することができる。
【0302】
図20に示すように、本実施の形態においては、前記入力側第1クラッチ機構60(1)、前記入力側第2クラッチ機構60(2)、前記出力側第1クラッチ機構80(1)、前記出力側第2クラッチ機構80(2)及び前記後進クラッチ機構80(R)は全て油圧作動型の摩擦板式とされている。
【0303】
これに代えて、前記入力側第1及び第2クラッチ機構によって形成される入力側クラッチユニット並びに前記出力側第1及び第2クラッチ機構によって形成される出力側クラッチユニットの少なくとも一方を、前記実施の形態4におけるドグクラッチ式とすることも可能である。
【0304】
図22に、本実施の形態の変形例に係るトランスミッション構造7Bの油圧回路図を示す。
なお、図中、前記各実施の形態におけると同一部材には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0305】
前記トランスミッション構造7Bは、本実施の形態に係るトランスミッション構造7に比して、摩擦板式の前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)に代えて、ドグクラッチ式の前記入力側クラッチユニット410を有している。
【0306】
当然ながら、前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)に代えて、ドグクラッチ式の前記出力側クラッチユニット430を備えることも可能であるし、前記後進クラッチ機構80(R)に代えて、ドグクラッチ式のクラッチ機構を備えることも可能である。
【0307】
実施の形態8
以下、本発明に係るトランスミッション構造のさらに他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図23に、本実施の形態に係るトランスミッション構造8が適用された作業車輌203の伝動模式図を示す。
また、図24に、前記作業車輌203の部分縦断側面図を示す。
なお、図中、前記実施の形態におけると同一部材は同一符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0308】
図23に示すように、本実施の形態に係る前記トランスミッション構造8は、前記実施の形態1に係るトランスミッション構造1に比して、さらに、出力側第3伝動機構70(3)と、出力側第3クラッチ機構80(3)とを備えている。
【0309】
即ち、前記トランスミッション構造8は、前記HST10と、前記遊星歯車機構30と、前記変速出力軸45と、前記入力側第1及び第2伝動機構50(1)、50(2)と、前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)と、前記出力側第1~第3伝動機構70(1)~70(3)と、前記出力側第1~第3クラッチ機構80(1)~80(3)と、前記変速操作部材90と、前記HSTセンサ95aと、前記出力センサ95bと、前記制御装置100とを備えている。
なお、本実施の形態においては、前記クラッチ機構60(1)、60(2)、80(1)~80(3)は油圧作動型の摩擦板式クラッチユニットとされている。
【0310】
前記出力側第3伝動機構70(3)は、前記第1要素(本実施の形態においては前記インターナルギヤ36)の回転動力を前記出力側第2伝動機構70(2)の出力側第2変速比よりも前記変速出力軸45を、高速回転させる出力側第3変速比で前記変速出力軸45に作動伝達可能とされている。
【0311】
前記出力側第3クラッチ機構80(3)は、前記出力側第3伝動機構70(3)の動力を係脱させるように構成されている。
【0312】
図25に、本実施の形態に係るトランスミッション構造8が適用された作業車輌203における、走行車速とHST出力との関係を表すグラフを示す。
【0313】
図25に示すように、本実施の形態においては、前記制御装置100は、
・前記変速操作部材90がゼロ速位置から第1切替速位置までの間に位置されている状態においては(即ち、前記HSTセンサ95a及び前記出力センサ95bの検出信号に基づき前記変速出力軸45の回転速度がゼロ速から第1切替速未満までの低速状態においては)、前記入力側第1クラッチ機構60(1)を係合状態として且つ前記入力側第2クラッチ機構60(2)を遮断状態としつつ、前記出力側第1クラッチ機構80(1)を係合状態とし且つ残りの前記出力側第2及び第3クラッチ機構80(2)、80(3)を遮断状態とする第1伝動状態を現出させ、
・前記変速操作部材90が第1切替速位置から第2切替速位置までの間に位置されている状態においては(即ち、前記HSTセンサ95a及び前記出力センサ95bの検出信号に基づき前記変速出力軸45の回転速度が第1切替速から第2切替速までの中間速状態においては)、前記入力側第1クラッチ機構60(1)を遮断状態として且つ前記入力側第2クラッチ機構60(2)を係合状態としつつ、前記出力側第2クラッチ機構80(2)を係合状態とし且つ残りの前記出力側第1及び第3クラッチ機構80(1)、80(3)を遮断状態とする第2動状態を現出させ、
・前記変速操作部材90が第2切替速位置を越えて操作されている状態においては(即ち、前記HSTセンサ95a及び前記出力センサ95bの検出信号に基づき前記変速出力軸45の回転速度が第2切替速を越える高速状態においては)、前記入力側第1クラッチ機構60(1)を遮断状態として且つ前記入力側第2クラッチ機構60(2)を係合状態としつつ、前記出力側第3クラッチ機構80(3)を係合状態とし且つ残りの前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)を遮断状態とする第3伝動状態を現出させる。
【0314】
なお、図23に示すように、前記トランスミッション構造8は、前記変速出力軸45及び前記走行伝動軸235の間に介挿された前記前後進切替機構230を有しており、前記前後進切替機構230の出力が走行伝動軸235へ作動伝達されるようになっている。
【0315】
そして、前記制御装置100は、前記変速操作部材90の前進側及び後進側への操作に応じて、前記前後進切替機構230をそれぞれ前進伝動状態及び後進伝動状態とさせる。
【0316】
即ち、前記作業車輌203においては、前記変速操作部材90がゼロ速位置から前進側第1切替速位置までの間で操作されている際には前進第1伝動状態が現出され、前記変速操作部材90が前進側第1切替速位置に位置された時点で前記走行伝動軸235は走行車速を+aとさせる回転速で回転する。
【0317】
前記変速操作部材90が前進側第1切替速位置から前進側第2切替速位置までの間で操作されている際には前進第2伝動状態が現出され、前記変速操作部材90が前進側第2切替速位置に位置された時点で前記走行伝動軸235は走行車速を+bとさせる回転速で回転する。
【0318】
そして、前記変速操作部材90が前進側第2切替速位置を越えて操作されている際には前進第3伝動状態が現出され、前記変速操作部材90が前進側最高速位置に位置された時点で前記走行伝動軸235は走行車速を+cとさせる回転速で回転する。
【0319】
同様に、前記変速操作部材90がゼロ速位置から後進側第1切替速位置までの間で操作されている際には後進第1伝動状態が現出され、前記変速操作部材90が後進側第1切替速位置に位置された時点で前記走行伝動軸235は走行車速を-aとさせる回転速で回転する。
【0320】
前記変速操作部材90が後進側第1切替速位置から後進側第2切替速位置までの間で操作されている際には後進第2伝動状態が現出され、前記変速操作部材90が後進側第2切替速位置に位置された時点で前記走行伝動軸235は走行車速を-bとさせる回転速で回転する。
【0321】
そして、前記変速操作部材90が後進側第2切替速位置を越えて操作されている際には後進第3伝動状態が現出され、前記変速操作部材90が後進側最高速位置に位置された時点で前記走行伝動軸235は走行車速を-cとさせる回転速で回転する。
【0322】
前記実施の形態1におけると同様に、前記入力側第1伝動機構50(1)の前記入力側第1変速比及び前記入力側第2伝動機構50(2)の前記入力側第2変速比は、第1伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第2要素(本実施の形態においては前記キャリヤ38)の回転速と第2伝動状態の際に前記入力側第2伝動機構50(2)を介して伝達される回転動力による前記第2要素の回転速とが同一となり、且つ、第2伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第1要素(本実施の形態においては前記インターナルギヤ36)の回転速と第1伝動状態の際に前記入力側第1伝動機構50(2)を介して伝達される回転動力による前記第1要素の回転速とが同一となるように設定されている。
【0323】
また、図25に示すように、前記出力側第1伝動機構70(1)の前記出力側第1変速比及び前記出力側第2伝動機構70(2)の前記出力側第2変速比は、HST出力が第2HST速とされた際に前記変速出力軸45に現出される回転速が第1及び第2伝動状態において同一となるように設定されている。
【0324】
さらに、図25に示すように、本実施の形態に係る前記トランスミッション構造8においては、前記制御装置100は、第2及び第3伝動状態間の切替時には切替後の伝動状態において前記変速出力軸45に現出される回転速が切替前の伝動状態において前記変速出力軸45に現出されている回転速に一致又は近接するように、前記出力調整部材20を作動させるように構成されている。
【0325】
即ち、第2伝動状態下で前記変速操作部材90が増速方向へ操作されて第2切替速位置に到達すると(前記変速出力軸45の回転速が第2切替速に到達すると)、前記制御装置100は、前記出力側第2クラッチ機構80(2)を係合状態から遮断状態へ移行させ且つ前記出力側第3クラッチ機構80(3)を遮断状態から係合状態へ移行させつつ、前記HST10の出力が、第2伝動状態下で前記変速出力軸45を第2切替速で回転させる回転速(第1HST速)から、第3伝動状態下で前記変速出力軸45を第2切替速又はその近傍速度で回転させる回転速(図25の第3HST速)に変速するように、前記出力調整部材20を作動させる。
【0326】
また、第3伝動状態下で前記変速操作部材90が減速方向へ操作されて第2切替速位置に到達すると(前記変速出力軸45の回転速が第2切替速に到達すると)、前記制御装置100は、前記出力側第3クラッチ機構80(3)を係合状態から遮断状態へ移行させ且つ前記出力側第2クラッチ機構80(2)を遮断状態から係合状態へ移行させつつ、前記HST10の出力が、第3伝動状態下で前記変速出力軸45を第2切替速で回転させる回転速(第3HST速)から、第2伝動状態下で前記変速出力軸45を第2切替速又はその近傍で回転させる回転速(第1HST速)に変速するように、前記出力調整部材20を作動させる。
【0327】
斯かる構成の前記トランスミッション構造8によれば、前記実施の形態1に係るトランスミッション構造と同様の効果を得つつ、変速可能範囲(変速域)を拡張することができる。
【0328】
なお、本実施の形態においては、前述の通り、HST出力が第2HST速とされた際に前記変速出力軸45に現出される回転速が第1及び第2伝動状態において同一となるように前記出力側第1及び第2変速比が設定されているが、これに代えて、第1及び第2伝動状態の間の切替時には、切替後の伝動状態において前記変速出力軸45に現出される回転速が切替前の伝動状態において前記変速出力軸45に現出されている回転速に一致又は近接するように、前記制御装置100が前記出力調整部材20を作動させるように構成することも可能である。
【0329】
図23及び図24に示すように、本実施の形態に係る前記トランスミッション構造8は、前記第2要素(本実施の形態においては前記キャリヤ38)に軸線回り相対回転不能に連結された前記変速中間軸43に、相対回転自在に外挿された変速伝動軸44を有している。
【0330】
前記変速伝動軸44は、前記第1要素(本実施の形態においては前記インターナルギヤ36)に軸線回り相対回転不能に連結されており、前記入力側第1伝動機構50(1)は、前記変速伝動軸44を介して前記主駆動軸212の回転動力を前記第1要素に作動伝達し、前記出力側第1及び第2伝動機構70(1)、70(2)は、前記変速伝動軸44を介して前記第1要素の回転動力を前記変速出力軸45に作動伝達するように構成されている。
【0331】
詳しくは、図23及び図24に示すように、本実施の形態においては、前記入力側第1伝動機構50(1)の前記入力側第1従動ギヤ54(1)は、前記主駆動軸212に相対回転自在に支持された前記入力側第1駆動ギヤ52(1)に作動連結された状態で、前記変速伝動軸44に相対回転不能に支持されている。
【0332】
また、前記出力側第2伝動機構70(2)の前記出力側第2駆動ギヤ72(2)は、前記出力側第2従動ギヤ74(2)に作動連結された状態で前記変速伝動軸44に相対回転不能に支持されている。
【0333】
前記出力側第3伝動機構70(3)は、前記変速伝動軸44に相対回転不能に支持された出力側第3駆動ギヤ72(3)と、前記出力側第3駆動ギヤ72(3)に作動連結され且つ前記変速出力軸45に相対回転自在に支持された出力側第3従動ギヤ74(3)とを有している。
【0334】
なお、前記入力側第2伝動機構50(2)は、前記実施の形態1におけると同様に、前記主駆動軸212に相対回転自在に支持された前記入力側第2駆動ギヤ52(2)と、前記入力側第2駆動ギヤ52(2)に作動連結され且つ前記第2要素に相対回転不能とされた前記入力側第1従動ギヤ54(2)とを有している。
【0335】
図24に示すように、前記トランスミッション構造8は、前記可変入力部として作用する前記第3要素(本実施の形態においては前記サンギヤ32)を軸線回り相対回転不能に支持する可変入力軸31を有しており、前記入力側第1従動ギヤ54(2)は前記可変入力軸31に相対回転自在に支持されている。
【0336】
なお、前記可変入力軸31には、前記モータ軸16の回転動力を前記第3要素(前記サンギヤ32)に作動連結する前記ギヤ列216の従動ギヤ216bが相対回転不能に支持されている。
【0337】
本実施の形態においては、前記出力側第3クラッチ機構80(3)は、前記変速出力軸45に相対回転不能に支持された出力側クラッチハウジング83と、前記出力側第3従動ギヤ74(3)に相対回転不能に支持された第3駆動側摩擦板及び前記第3駆動側摩擦板に対向された状態で前記出力側クラッチハウジング83に相対回転不能に支持された第3従動側摩擦板を含む出力側第3摩擦板群84(3)と、前記出力側第3摩擦板群84(3)を摩擦係合させる出力側第3ピストン(図示せず)とを有している。
【0338】
図24に示すように、本実施の形態に係るトランスミッション構造8は、前記作業車輌203におけるハウジング構造500に収容されている。
【0339】
前記ハウジング構造500は、直列連結されるフロントハウジング510及びリヤハウジング550を有している。
【0340】
前記フロントハウジング510は、中空のフロントハウジング本体512と、前記フロントハウジング本体512の前後方向中間位置において内表面から径方向内方へ延在されたフロント支持壁514及び第2支持壁518と、前記フロントハウジング本体512の後方開口近傍において内表面から径方向内方へ突出形成されたボス部に着脱可能に連結されたフロント軸受板516とを有している。
【0341】
前記リヤハウジング550は、前記フロントハウジング本体512に着脱可能に連結される中空のリヤハウジング本体552と、前記リヤハウジング本体552の前方開口近傍において内表面から径方向内方へ突出形成されたボス部に着脱可能に連結されたリヤ軸受板554と、前記リヤハウジング本体552の前後方向中間位置において内表面から径方向内方へ延在されたリヤ支持壁556とを有している。
【0342】
斯かる構成において、前記主駆動軸212は、前記フロント支持壁514、前記フロント軸受板516及び前記リヤ軸受板554によって軸線回り回転自在に支持されており、前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)は、前記フロントハウジング本体512内において前記主駆動軸212に支持されている。前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)に対する圧油給排用の受継筒部516aが前記主駆動軸212に外嵌される前記フロント軸受板516に一体形成されている。前記受継筒部516aには、前述した図16に示す前記入力側第1及び第2給排ライン360(1)、360(2)がパイプなどの手段を用いて接続される。
【0343】
前記可変入力軸31は、前記従動ギヤ216bの回転中心部に一体形成された中空軸とされており、前端側が前記フロント支持壁514に軸線回り回転自在に支持されている。
後端側において前記サンギヤ32を一体的に有するサンギヤ軸32aは、前端側が前記可変入力軸31の後端側に内挿されてスプライン連結され、且つ、中央部において前記入力側第2従動ギヤ54(2)を相対回転自在に支持している。
【0344】
前記変速中間軸43は、前記可変入力軸31及び前記サンギヤ軸32aと同軸上に配置されている。前記変速中間軸43は前端側において前記キャリヤ38を一体的に有しており、前記キャリヤ38はボルトを介して前記入力側第2従動ギヤ54(2)に連結されている。これにより、前記変速中間軸43の前端側は前記サンギヤ軸32a及び前記変速入力軸31を介して前記フロント軸受板516に軸線回り回転自在に支持されている、前記変速中間軸43の後端側は前記リヤ軸受板554に軸線回り回転自在に支持されている。
【0345】
前記変速中間軸43に相対回転自在に外挿された中空の前記変速伝動軸44は、前端部に前記インターナルギア36を一体的に有しており、前端側は前記変速中間軸43を介して前記フロント支持壁514に支持され、後端側は前記フロント軸受板516に支持されている。そして、前記変速伝動軸44のうち、前記インターナルギア36から前記フロント軸受板516に至る中間部分の外周上に、前記出力側第3駆動ギヤ72(3)、入力側第1従動ギヤ54(1)、出力側第2駆動ギヤ72(2)がスプライン嵌合されている。
【0346】
前記変速出力軸45は、前記第2支持壁518、前記リヤ軸受板554及び前記リヤ支持壁556によって軸線回り回転自在に支持されている。前記第1走行伝動軸235は前記リヤ軸受板554及び前記リヤ支持壁556によって軸線回り回転自在に支持されている。
【0347】
前記変速出力軸45は、前端側において前記出力側第3クラッチ機構80(3)を、中間部において前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)を、後端側において前記前後進切替機構230のクラッチ機構を、それぞれ、支持している。前記前後進切替機構230のクラッチ機構にも油圧作動型の摩擦板式クラッチユニットを用いている。前記変速出力軸45上に配列されたこれら5個のクラッチ機構に対して圧油給排するための受継筒部556aが前記リヤ支持壁556に装着され前記変速出力軸45の後端部に被嵌されている。
【0348】
前記リヤハウジング550の、図示しない後半部には前記ディファレンシャル機構260、前記PTOクラッチ機構285及び前記PTO多段変速機構290が収容されている。
【0349】
なお、本実施の形態においては、前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)、並びに、前記出力側第1~第3クラッチ機構80(1)~80(3)の全てが摩擦板式とされているが、これらのうちの一部又は全部をドグクラッチ式とすることも可能である。
【0350】
図26に、摩擦板式の前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)に代えて、ドグクラッチ式の前記入力側クラッチユニット410を備えた本実施の形態の変形例に係るトランスミッション構造8Bが適用された作業車輌203の伝動模式図を示す。
【0351】
実施の形態9
以下、本発明に係るトランスミッション構造のさらに他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図27に、本実施の形態に係るトランスミッション構造9が適用された作業車輌205の伝動模式図を示す。
また、図28に、前記作業車輌205の部分縦断側面図を示す。
なお、図中、前記実施の形態におけると同一部材は同一符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0352】
本実施の形態に係るトランスミッション構造9は、前記出力側第1~第3クラッチ機構80(1)~80(3)を備えている点においては、前記実施の形態8に係るトランスミッション構造8と共通している。
【0353】
その一方で、前記トランスミッション構造9は、下記点において前記実施の形態8に係るトランスミッション構造8と相違している。
【0354】
即ち、前記実施の形態8に係るトランスミッション構造8は、前記出力側第1~第3クラッチ機構80(1)~80(3)のそれぞれの係合状態によって現出される第1~第3伝動状態の全てにおいて、前記前後進切換機構230を介して回転動力を前記走行伝動軸235へ伝達するように構成されている。
【0355】
これに対し、本実施の形態に係るトランスミッション構造9は、前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)のそれぞれの係合状態によって現出される第1及び第2伝動状態においては、前記前後進切換機構230を介して回転動力を前記走行伝動軸へ伝達する一方で、前記出力側第3クラッチ機構80(3)の係合状態において現出される第3伝動状態においては、前記前後進切換機構230を介さずに前進方向の回転動力を前記走行伝動軸235へ伝達するように構成されている。
【0356】
詳しくは、図27に示すように、前記トランスミッション構造9は、前記HST10と、前記遊星歯車機構30と、前記駆動源210の回転動力を、入力側第1変速比で前記第1要素(本実施の形態においては前記インターナルギヤ36)に作動伝達可能な入力側第1伝動機構750(1)及び入力側第2変速比で前記第2要素(本実施の形態においては前記キャリヤ38)に作動伝達可能な入力側第2伝動機構750(2)と、前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)と、前記変速出力軸45及び前記走行伝動軸235と、前記前後進切換機構230と、前記第2要素の回転動力を出力側第1変速比で前記変速出力軸45に作動伝達可能な出力側第1伝動機構770(1)と、前記第1要素の回転動力を出力側第2変速比で前記変速出力軸45に作動伝達可能な出力側第2伝動機構770(2)と、前記第1要素の回転動力を前記走行伝動軸235に前進方向の駆動力として作動伝達可能な出力側第3伝動機構770(3)と、前記出力側第1~第3クラッチ機構80(1)~80(3)と、前記変速操作部材90と、前記HSTセンサ95aと、前記制御装置100とを備えている。
【0357】
図27及び図28に示すように、前記トランスミッション構造9は、さらに、前記第2要素(本実施の形態においては前記キャリヤ38)に軸線回り相対回転不能連結された前記変速中間軸43を有している。
また、前記トランスミッション構造9は、前記走行伝動軸235の回転速度を直接又は間接的に検出する出力センサ95bを有している。
【0358】
前記入力側第1伝動機構750(1)は、前記駆動源210に作動連結された主駆動軸212に相対回転自在に支持された入力側第1駆動ギヤ752(1)と、前記変速中間軸43に相対回転自在に支持された状態で、前記入力側第1駆動ギヤ752(1)及び前記第1要素(本実施の形態においては前記インターナルギヤ36)に作動連結された入力側第1従動ギヤ754(1)とを有している。
【0359】
前記入力側第2伝動機構750(2)は、前記主駆動軸212に相対回転自在に支持された入力側第2駆動ギヤ752(2)と、前記変速中間軸43に相対回転不能に支持された状態で前記入力側第2駆動ギヤ752(2)に作動連結された入力側第2従動ギヤ754(2)とを有しており、前記主駆動軸212の回転動力を前記変速中間軸43を介して前記第2要素(本実施の形態においては前記キャリヤ38)に作動伝達している。
【0360】
この場合、図27及び図28に示すように、前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)は、それぞれ、前記入力側第1及び第2駆動ギヤ752(1)、752(2)を前記主駆動軸212に係脱させるように前記主駆動軸212に支持される。
【0361】
即ち、本実施の形態においては、前記入力側第1クラッチ機構60(1)は、前記主駆動軸212に相対回転不能に支持された前記入力側クラッチハウジング62と、前記入力側クラッチハウジング62に相対回転不能に支持された第1駆動側摩擦板及び前記第1駆動側摩擦板に対向された状態で前記入力側第1駆動ギヤ752(1)に相対回転不能に支持された第1従動側摩擦板を含む入力側第1摩擦板群64(1)と、前記入力側第1摩擦板群64(1)を摩擦係合させる入力側第1ピストン(図示せず)とを有するように構成される。
【0362】
前記入力側第2クラッチ機構60(2)は、前記入力側クラッチハウジング62と、前記入力側クラッチハウジング62に相対回転不能に支持された第2駆動側摩擦板及び前記第2駆動側摩擦板に対向された状態で前記入力側第2駆動ギヤ752(2)に相対回転不能に支持された第2従動側摩擦板を含む入力側第2摩擦板群64(2)と、前記入力側第2摩擦板群64(2)を摩擦係合させる入力側第2ピストン(図示せず)とを有するように構成される。
【0363】
本実施の形態においては、前記出力側第1伝動機構770(1)は、前記入力側第2伝動機構750(2)における前記入力側第2従動ギヤ754(2)を利用して、前記第2要素の回転動力を前記変速出力軸45に作動伝達し得るように構成されている。
【0364】
詳しくは、図27及び図28に示すように、前記出力側第1伝動機構770(1)は、前記変速出力軸45に相対回転自在に支持された状態で前記入力側第2従動ギヤ754(2)に作動連結された出力側第1従動ギヤ774(1)を有している。
【0365】
前記出力側第2伝動機構770(2)は、前記入力側第1伝動機構750(1)における前記入力側第1従動ギヤ754(1)を利用して、前記第1要素の回転動力を前記変速出力軸45に作動伝達し得るように構成されている。
【0366】
詳しくは、図27及び図28に示すように、前記出力側第2伝動機構770(2)は、前記変速出力軸45に相対回転自在に支持された状態で前記入力側第1従動ギヤ754(1)に作動連結された出力側第2従動ギヤ774(2)を有している。
【0367】
この場合、図27及び図28に示すように、前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)は、それぞれ、前記出力側第1及び第2従動ギヤ774(1)、774(2)を前記変速出力軸45に係脱させるように前記変速出力軸45に支持される。
【0368】
即ち、本実施の形態においては、前記出力側第1クラッチ機構80(1)は、前記変速出力軸45に相対回転不能に支持された出力側クラッチハウジング82と、前記出力側第1従動ギヤ774(1)に相対回転不能に支持された第1駆動側摩擦板及び前記第1駆動側摩擦板に対向された状態で前記出力側クラッチハウジング82に相対回転不能に支持された第1従動側摩擦板を含む出力側第1摩擦板群84(1)と、前記出力側第1摩擦板群を摩擦係合させる出力側第1ピストン(図示せず)とを有するように構成される。
【0369】
前記出力側第2クラッチ機構80(2)は、前記出力側クラッチハウジング82と、前記出力側第2従動ギヤ774(2)に相対回転不能に支持された第2駆動側摩擦板及び前記第2駆動側摩擦板に対向された状態で前記出力側クラッチハウジング82に相対回転不能に支持された第2従動側摩擦板を含む出力側第2摩擦板群84(2)と、前記出力側第2摩擦板群を摩擦係合させる出力側第2ピストン(図示せず)とを有するように構成される。
【0370】
前記出力側第3伝動機構770(3)は、前記出力側第2伝動機構770(2)及び前進伝動状態の前記前後進切換機構230を介して前記第1要素の回転動力が前記走行伝動軸235に作動伝達される際の当該走行伝動軸235の回転速よりも、前記出力側第3伝動機構770(3)を介して前記第1要素の回転動力が前記走行伝動軸235に作動伝達される際の当該走行伝動軸235の回転速が高速となるように、変速比が設定されている。
【0371】
本実施の形態においては、前記出力側第3伝動機構770(3)は、前記出力側第2伝動機構770(2)における前記出力側第2従動ギヤ774(2)を利用して、前記第1要素の回転動力を前記走行伝動軸235に作動伝達し得るように構成されている。
【0372】
詳しくは、図27及び図28に示すように、前記出力側第3伝動機構770(3)は、前記走行伝動軸235に相対回転自在に支持された状態で前記出力側第2従動ギヤ774(2)に作動連結された出力側第3従動ギヤ774(3)を有している。
【0373】
この場合、図27及び図28に示すように、前記出力側第3クラッチ機構80(3)は、前記出力側第3従動ギヤ774(3)を前記走行伝動軸235に係脱させるように前記走行伝動軸235に支持される。
【0374】
即ち、本実施の形態においては、前記出力側第3クラッチ機構80(3)は、前記走行伝動軸235に相対回転不能に支持された前記出力側クラッチハウジング83と、前記出力側第3従動ギヤ774(3)に相対回転不能に支持された第3駆動側摩擦板及び前記第3駆動側摩擦板に対向された状態で前記出力側クラッチハウジング83に相対回転不能に支持された第3従動側摩擦板を含む出力側第3摩擦板群84(3)と、前記出力側第3摩擦板群84(3)を摩擦係合させる出力側第3ピストン(図示せず)とを有するように構成されている。
【0375】
なお、前記出力側第3従動ギヤ774(3)を、前記出力側第2従動ギヤ774(2)に代えて前記出力側第1従動ギヤ774(1)に作動連結させることも可能である。
【0376】
即ち、前記出力側第1伝動機構770(1)における前記出力側第1従動ギヤ774(1)を利用して、前記第1要素の回転動力を前記走行伝動軸235に作動伝達するように、前記出力側第3伝動機構770(3)を変形することも可能である。
【0377】
図29に、本実施の形態に係るトランスミッション構造9が適用された作業車輌205における、走行車速とHST出力との関係を表すグラフを示す。
【0378】
図29に示すように、本実施の形態においては、前記制御装置100は、
・前記変速操作部材90のゼロ速位置への操作に応じて、HST出力が前記遊星歯車機構30の合成回転動力をゼロとさせる第1HST速となるように、前記出力調整部材20を作動させ、
・前記変速操作部材90がゼロ速位置から前進側第1切替速位置までの間の前進側低速範囲で操作されている際には、前記入力側第1クラッチ機構60(1)を係合状態とし且つ前記入力側第2クラッチ機構60(2)を遮断としつつ、前記第1出力側第1クラッチ機構80(1)を係合状態とし且つ他の出力側クラッチ機構80(2)、80(3)を遮断状態とすることで、前記第1要素を前記駆動源210から作動的に伝達される基準動力の入力部として作用させ且つ前記第2要素を合成回転動力の出力部として作用させ、前記第2要素から出力される合成回転動力を前記変速出力軸45に作動伝達させる第1伝動状態を現出させつつ、前記前後進切換機構230を前進伝動状態とさせ、且つ、前記変速操作部材90の増速操作に応じてHST出力が第1HST速の側から第2HST速の側へ向けて変速するように前記出力調整部材20を作動させ、
・前記変速操作部材90が前進側第1切替速位置から前進側第2切替速位置までの間の前進側中間速範囲で操作されている際には、前記入力側第1クラッチ機構60(1)を遮断状態とし且つ前記入力側第2クラッチ機構60(2)を係合状態としつつ、前記出力側第2クラッチ機構80(2)を係合状態とし且つ他の出力側クラッチ機構80(1)、80(3)を遮断状態とすることで、前記第2要素を基準動力の入力部として作用させ且つ前記第1要素を合成回転動力の出力部として作用させ、前記第1要素から出力される合成回転動力を前記変速出力軸45に作動伝達させる第2伝動状態を現出させつつ、前記前後進切換機構230を前進伝動状態とさせ、且つ、前記変速操作部材90の増速操作に応じてHST出力が第2HST速の側から第1HST速の側へ向けて変速するように前記出力調整部材20を作動させ、
・前記変速操作部材90が前進側第2切替速位置を越える前進側高速範囲で操作されている際には、前記入力側第1クラッチ機構60(1)を遮断状態とし且つ前記入力側第2クラッチ機構60(2)を係合状態としつつ、前記出力側第3クラッチ機構80(3)を係合状態とし且つ他の出力側クラッチ機構80(1)、80(2)を遮断状態とすることで、前記第2要素を基準動力の入力部として作用させ且つ前記第1要素を合成回転動力の出力部として作用させ、前記第1要素から出力される合成回転動力を、前記出力側第3伝動機構770(3)を介して前記走行伝動軸235に前進方向の駆動力として作動伝達させる第3伝動状態を現出させつつ、前記変速操作部材90の増速操作に応じてHST出力が第2HST速の側から第1HST速の側へ向けて変速するように前記出力調整部材20を作動させ、
・前記変速操作部材90が、前進側中間速範囲及び前進側高速範囲の間の前進側第2切替速位置を通過する際には、通過直後に現出される伝動状態での前記走行伝動軸235の回転速が通過直前に現出されている伝動状態での前記走行出力軸235の回転速に一致又は近接するように、前記出力調整部材20を作動させ、
・前記変速操作部材90がゼロ速位置から後進側第1切替速位置までの間の後進側低速範囲で操作されている際には、前記第1伝動状態を現出させつつ、前記前後進切換機構230を後進伝動状態とさせ、且つ、前記変速操作部材90の増速操作に応じてHST出力が第1HST速の側から第2HST速の側へ向けて変速するように前記出力調整部材20を作動させ、
・前記変速操作部材90が後進側第1切替速位置を越える後進側高速範囲で操作されている際には、前記第2伝動状態を現出させつつ、前記前後進切換機構230を後進伝動状態とさせ、且つ、前記変速操作部材90の増速操作に応じてHST出力が第2HST速の側から第1HST速の側へ向けて変速するように前記出力調整部材20を作動させる。
【0379】
前記実施の形態1におけると同様に、前記入力側第1伝動機構750(1)の前記入力側第1変速比及び前記入力側第2伝動機構750(2)の第2変速比は、第1伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第2要素(本実施の形態においては前記キャリヤ38)の回転速と第2伝動状態の際に前記入力側第2伝動機構750(2)を介して伝達される回転動力による前記第2要素の回転速とが同一となり、且つ、第2伝動状態でHST出力が第2HST速とされた際の前記第1要素(本実施の形態においては前記インターナルギヤ36)の回転速と第1伝動状態の際に前記入力側第1伝動機構750(1)を介して伝達される回転動力による前記第1要素の回転速とが同一となるように設定されている。
【0380】
また、図29に示すように、前記出力側第1伝動機構770(1)の出力側第1変速比及び前記出力側第2伝動機構770(2)の出力側第2変速比は、HST出力が第2HST速とされた際に前記変速出力軸45に現出される回転速が第1及び第2伝動状態において同一となるように設定されている。
【0381】
そして、前述の通り、前記制御装置100は、前記変速操作部材90が、前進側中速範囲及び前進側高速範囲の間の前進側第2切替速位置を通過する際には、通過直後に現出される伝動状態での前記走行伝動軸235の回転速が通過直前に現出されている伝動状態での前記走行出力軸235の回転速に一致又は近接するように、前記出力調整部材20を作動させる。
【0382】
即ち、前進側中間速範囲(第2伝動状態)において前記変速操作部材90が増速方向へ操作されて前進側第2切替速位置を通過して前進側高速範囲へ突入される際には、前記制御装置100は、前記出力側第2クラッチ機構80(2)を係合状態から遮断状態へ移行させ且つ前記出力側第3クラッチ機構80(3)を遮断状態から係合状態へ移行させて前記第2伝動状態から前記第3伝動状態への切り換えを行いつつ、前記HST10の出力が、第2伝動状態下で走行車速を+bとさせる回転速(第1HST速)から、第3伝動状態下で走行車速を+b又はその近傍速度とさせる回転速(第3HST速)に変速するように、前記出力調整部材20を作動させる。
【0383】
また、前進側高速範囲(第3伝動状態)において前記変速操作部材90が減速方向へ操作されて前進側第2切替速位置を通過して前進側中間速範囲へ突入される際には、前記制御装置100は、前記出力側第3クラッチ機構80(3)を係合状態から遮断状態へ移行させ且つ前記出力側第2クラッチ機構80(2)を遮断状態から係合状態へ移行させて前記第3伝動状態から前記第2伝動状態への切り換えを行いつつ、前記HST10の出力が、第3伝動状態下で走行車速を+bとさせる回転速(第3HST速)から、第2伝動状態下で走行車速を+b又はその近傍速度とさせる回転速(第1HST速)に変速するように、前記出力調整部材20を作動させる。
【0384】
斯かる構成の前記トランスミッション構造9によれば、前記実施の形態1に係るトランスミッション構造1と同様の効果を得つつ、前進側の変速可能範囲(変速域)をより大きく拡張することができる。
【0385】
なお、本実施の形態においては、前述の通り、HST出力が第2HST速とされた際の走行車速が第1及び第2伝動状態において同一となるように前記出力側第1及び第2変速比が設定されているが、これに代えて、第1及び第2伝動状態の間の切替時には、切替後の伝動状態での走行車速が切替前の伝動状態での走行車速に一致又は近接するように、前記制御装置100が前記出力調整部材20を作動させるように構成することも可能である。
【0386】
本実施の形態に係るトランスミッション構造9は、前記作業車輌205におけるハウジング構造500Bに収容されている。
【0387】
図28に示すように、前記ハウジング構造500Bは、中空のハウジング本体505Bと、前記ハウジング本体505Bに着脱可能に連結された第1軸受板516Bと、前記第1軸受板516Bから前記ハウジング本体505Bの長手方向に離間された位置で当該ハウジング本体505Bに着脱可能に連結され、前記第1軸受板516Bとの間に区画空間Sを形成する第2軸受板554Bとを備えている。
【0388】
本実施の形態においては、前記ハウジング本体505Bは、着脱可能に直列連結されるフロントハウジング本体510B及びリヤハウジング本体550Bを有している。
【0389】
そして、前記第1軸受板516Bは、前記フロントハウジング本体510Bの後方開口近傍において前記フロントハウジング本体510Bの内表面に設けられたボス部511に着脱可能に連結されており、前記第2軸受板554Bは、前記リヤハウジング本体550Bの前方開口近傍において前記リヤハウジング本体550Bの内表面に設けられたボス部551に着脱可能に連結されている。
【0390】
図28に示すように、前記主駆動軸212、前記変速中間軸43、前記変速出力軸45及び前記走行伝動軸235は、互いに対して平行で且つ前記ハウジング本体505Bの長手方向に沿った状態で前記第1及び第2軸受板516B、554Bに支持されている。
【0391】
前記入力側第1及び第2駆動ギヤ752(1)、752(2)並びに前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)は、前記主駆動軸212の軸線方向に関し前記入力側第1及び第2駆動ギヤ752(1)、752(2)の間に前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)が位置された状態で、前記主駆動軸212のうち前記区画空間S内に位置する部分に支持されている。
【0392】
前記入力側第1及び第2従動ギヤ754(1)、754(2)は、それぞれ、軸線方向に関し前記入力側第1及び第2駆動ギヤ752(1)、752(2)と同一位置に位置された状態で、前記変速中間軸43のうち前記区画空間S内に位置する部分に支持されている。
【0393】
前記出力側第1及び第2従動ギヤ774(1)、774(2)並びに前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)は、前記出力側第1及び第2従動ギヤ774(1)、774(2)が、それぞれ、軸線方向に関し前記入力側第2及び第1従動ギヤ754(2)、754(1)と同一位置に位置され且つ前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)が軸線方向に関し前記入力側第1及び第2従動ギヤ774(1)、774(2)の間に位置された状態で、前記変速出力軸45のうち前記区画空間S内に位置する部分に支持されている。
【0394】
前記出力側第3従動ギヤ774(3)及び前記出力側第3クラッチ機構80(3)は、前記出力側第3従動ギヤ774(3)が前記出力側第2従動ギヤ774(2)と軸線方向同一位置に位置され且つ前記出力側第3クラッチ機構80(3)が軸線方向に関し前記出力側第2従動ギヤ774(2)を基準にして前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)とは反対側に位置された状態で、前記走行伝動軸235のうち前記区画空間S内に位置する部分に支持されている。
【0395】
前記前後進切換機構230は、前記変速出力軸45及び前記走行伝動軸235のうち前記区画空間S外に位置する部分に支持されている。
【0396】
詳しくは、図27及び図28に示すように、前記前後進切換機構230は、前記変速出力軸44に支持された前進側駆動ギヤ711F及び前記走行伝動軸235に支持され、前記前進側駆動ギヤ711Fに噛合された前進側従動ギヤ712Fを含む前進側ギヤ列710Fと、前記変速出力軸45に支持された後進側駆動ギヤ231R及び前記走行伝動軸235に支持され、アイドルギヤ713(図27参照)を介して前記後進側駆動ギヤ711Rに噛合された後進側従動ギヤ712Rを含む後進側ギヤ列710Rと、前進側ギヤ列710Fを介した前記変速出力軸45から前記走行伝動軸235への前進方向の動力伝達を係脱する前進側クラッチ機構720Fと、後進側ギヤ列710Rを介した前記変速出力軸45から前記走行伝動軸235への後進方向の動力伝達を係脱する後進側クラッチ機構720Rとを有している。
【0397】
図28に示すように、本実施の形態においては、前記前進側駆動ギヤ711Fは、前記変速出力軸45のうち前記第2軸受板554Bより後方側へ延在された後方部分に相対回転不能に支持され、前記後進側駆動ギヤ711Rは、前記前進側駆動ギヤ711Fから軸線方向に離間された位置で前記変速出力軸45の後方部分に相対回転不能に支持されている。
【0398】
本実施の形態においては、前記変速出力軸45は、前方側に位置する第1変速出力軸45aと、後方側に位置し、前記第1変速出力軸45aと同軸上において軸線回り相対回転不能に連結される第2変速出力軸45bとを有しており、前記第2変速出力軸45bが前記変速出力軸45の後方部分を形成している。
【0399】
前記前進側従動ギヤ712Fは、軸線方向に関し前記前進側駆動ギヤ711Fと同一位置において、前記走行伝動軸235のうち前記第2軸受板554Bより後方側へ延在された後方部分に、相対回転自在に支持されている。
前記後進側従動ギヤ712Rは、軸線方向に関し前記後進側駆動ギヤ711Rと同一位置において、前記走行伝動軸235の後方部分に、相対回転自在に支持されている。
【0400】
そして、前記前進側及び後進側クラッチ機構720F、720Rは、軸線方向に関し前記前進側従動ギヤ712F及び前記後進側従動ギヤ712Rの間に位置された状態で、前記走行伝動軸235の後方部分に支持されている。
【0401】
本実施の形態においては、前記走行伝動軸235は、前方側に位置する第1走行伝動軸235aと、後方側に位置し、前記第1走行伝動軸235aと同軸上において軸線回り相対回転不能に連結される第2走行伝動軸235bとを有しており、前記第2走行伝動軸235bが前記走行伝動軸の後方部分を形成している。
【0402】
このような収容構造を備えることによって、本実施の形態に係るトランスミッション構造9は、使用ギヤの削減及び小型化を有効に図ることができる。
【0403】
前述の通り、本実施の形態においては、前記出力側第3従動ギヤ774(3)は、軸線方向に関し前記出力側第2従動ギヤ774(2)と同一位置に位置されて、前記出力側第2従動ギヤ774(2)に噛合されている。
【0404】
これに代えて、前記出力側第3従動ギヤ774(3)を、軸線方向に関し前記出力側第1従動ギヤ774(1)と同一位置に位置させて、前記出力側第1従動ギヤ774(1)に噛合させることも可能であり、この場合には、前記出力側第3クラッチ機構80(3)は軸線方向に関し前記出力側第1従動ギヤ774(1)を基準にして前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)とは反対側に位置された状態で、前記走行伝動軸235のうち前記区画空間S内に位置する部分に支持される。
【0405】
なお、図28に示すように、本実施の形態においては、前記主駆動軸212及び前記第2軸受板554Bにおける前記主駆動軸212の軸受部分に、前記入力側第1及び第2クラッチ機構60(1)、60(2)に対して作動油を給排する為のロータリージョイント68が設けられている。
【0406】
また、前記変速出力軸及び前記第1軸受板516Bにおける前記変速出力軸の軸受部分には、前記出力側第1及び第2クラッチ機構80(1)、80(2)に対して作動油を給排する為のロータリージョイント88が設けられている。
【0407】
さらに、前記走行伝動軸及び前記第2軸受板に装着された受継筒部555には、前記出力側第3クラッチ機構80(3)、前記前進側クラッチ機構720F及び前記後進側クラッチ機構720Rに対して作動油を給排する為のロータリージョイント238が設けられている。
【符号の説明】
【0408】
1~9 トランスミッション構造
10 HST
12 ポンプ軸
16 モータ軸
20 出力調整部材
30 遊星歯車機構
32 サンギヤ
36 インターナルギヤ
38 キャリヤ
43 変速中間軸
44 変速伝動軸
45 変速出力軸
50(1)、750(1) 入力側第1伝動機構
50(2)、750(2) 入力側第2伝動機構
52(1)、752(1) 入力側第1駆動ギヤ
52(2)、752(2) 入力側第2駆動ギヤ
54(1)、754(1) 入力側第1従動ギヤ
54(2)、754(2) 入力側第2従動ギヤ
60(1) 入力側第1クラッチ機構
60(2) 入力側第2クラッチ機構
70(1)、770(1) 出力側第1伝動機構(前進第1伝動機構)
70(2)、770(2) 出力側第2伝動機構(前進第2伝動機構)
70(3)、770(3) 出力側第3伝動機構
70(R) 後進伝動機構
72(1) 出力側第1駆動ギヤ
72(2) 出力側第2駆動ギヤ
72(3) 出力側第3駆動ギヤ
74(1)、774(1) 出力側第1従動ギヤ
74(2)、774(2) 出力側第2従動ギヤ
74(3)、774(3) 出力側第3従動ギヤ
80(1) 出力側第1クラッチ機構(前進第1クラッチ機構)
80(2) 出力側第2クラッチ機構(前進第2クラッチ機構)
80(3) 出力側第3クラッチ機構
80(R) 後進クラッチ機構
90 変速操作部材
95a HSTセンサ
95b 出力センサ
100 制御装置
150 油圧源
155 圧油供給ライン
157 ドレンライン
160(1) 第1給排ライン
160(2) 第2給排ライン
165 切替弁
200 作業車輌
210 駆動源
212 主駆動軸
220 駆動輪
230 前後進切替機構
240 副変速機構
360(1) 入力側第1給排ライン
360(2) 入力側第2給排ライン
362(1) 出力側第1給排ライン
362(2) 出力側第2給排ライン
365(1) 入力側第1電磁弁
365(2) 入力側第2電磁弁
367(1) 出力側第1電磁弁
367(2) 出力側第2電磁弁
370(1) 入力側第1圧力センサ
370(2) 入力側第2圧力センサ
372(1) 出力側第1圧力センサ
372(2) 出力側第2圧力センサ
412 入力側スライダ
412(1) 第1凹凸係合部
412(2) 第2凹凸係合部
432 出力側スライダ
505B ハウジング本体
510、510B フロントハウジング本体
511 ボス部
550、550B リヤハウジング本体
551 ボス部
516、516B 第1軸受板
554、554B 第2軸受板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29