IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティーの特許一覧

特許7300719成体多能性幹細胞の調製、拡大および使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】成体多能性幹細胞の調製、拡大および使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20230623BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20230623BHJP
   C12N 5/074 20100101ALI20230623BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20230623BHJP
   C12N 5/0797 20100101ALI20230623BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230623BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230623BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230623BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20230623BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N5/0735
C12N5/074
C12N5/0775
C12N5/0797
C12N5/10
A61P25/28
A61P43/00 105
A61P43/00 101
A61K35/545
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019554507
(86)(22)【出願日】2018-04-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 US2018025846
(87)【国際公開番号】W WO2018187298
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-17
(31)【優先権主張番号】62/481,554
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515158308
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ、シャオウェイ
(72)【発明者】
【氏名】フ、ミン
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツ、ハーマン ピーター
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】Experimental Hematology,2007年,Vol.35,pp.1872-1883
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00-28
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1000個の細胞を含む組成物であって、
前記細胞の少なくとも50%は、直径が5μm未満であるCD45細胞であり、
前記CD45細胞は、CD45、CD90、CD44、CD34,Oct 4、SS
EA1、およびNanogを発現し、ABCG2およびE-カドヘリンを発現しない、
組成物。
【請求項2】
前記CD45細胞が、Sca1が陽性であるとさらに特徴付けられる、請求項1に記
載の組成物。
【請求項3】
前記細胞の少なくとも75%がCD45細胞である、請求項1または2に記載の組成
物。
【請求項4】
前記細胞の少なくとも95%がCD45細胞である、請求項1または2に記載の組成
物。
【請求項5】
少なくとも10000個の細胞を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物
【請求項6】
前記細胞の20%未満が赤血球である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物
【請求項7】
前記CD45+細胞の直径が3μm未満である、請求項1から6のいずれか一項に記載
の組成物。
【請求項8】
前記CD45+細胞の直径が約2μm~約3μmである、請求項1から6のいずれか一
項に記載の組成物。
【請求項9】
前記CD45細胞が、Linが陰性であるとさらに特徴付けられる、請求項1から8
のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記CD45細胞が、少なくとも約20:1、または少なくとも約15:1、または
少なくとも約10:1、または少なくとも約5:1の比で小RNAおよびリボソームRN
Aを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記CD45細胞が、少なくとも約9:1、または少なくとも約8:1、または少な
くとも約7:1、または少なくとも約6:1、または少なくとも約5:1である核対細胞
質比(v/v)を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記CD45細胞が、CD150、c-kit、Thy1.1(CD90.1)、V
asa、CD133およびCD105からなる群から選択される1つまたは複数のマーカ
ーをさらに発現する、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記CD45細胞が、CD41、Lin、およびCD184からなる群から選択され
る1つまたは複数のマーカーを発現しない、請求項1から12のいずれか一項に記載の組
成物。
【請求項14】
前記CD45細胞が、1つまたは複数の因子を含む培地によって活性化され得、活性
化された前記細胞がABCG2を発現する、請求項1から13のいずれか一項に記載の組
成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容全体が参照により本開示に組み込まれる、2017年4月4日に提出された米国仮出願シリアル番号62/481554の米国特許法第119条(e)の下での利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞の同定および特徴付けは、再生医療の主要な焦点である。幹細胞は、組織恒常性を維持するために必要な分裂終了細胞を生存させ、製造する能力を保証する特性である自己複製が可能である。幹細胞は、自己複製能力に加えて、特定の組織、器官系または生物全体の恒常性を維持するために必要な細胞型のいくつかまたは全てに分化する能力を有する。
【0003】
幹細胞が単離される発達段階は、通常、それがどの細胞型に分化することができるかを決定する。例えば、胚盤胞の内部細胞塊から単離された胚性幹(ES)細胞は多能性であり、3つの胚葉(内胚葉、中胚葉および外胚葉)のいずれかに分化することができる。しかしながら、種々の成体組織(例えば、骨髄、脂肪組織、血液等)に見られる成体または体性幹細胞は、典型的には、分化に関してより制限されているため、多能性、寡能性(oligopotent)または単能性とみなされる。成体幹細胞には、造血幹細胞(HSC)、間葉系幹細胞(MSC)、内皮幹細胞(ESC)、乳腺幹細胞(MaSC)、腸幹細胞(ISC)、神経幹細胞(NSC)、成体嗅覚幹細胞(OSC)、神経堤幹細胞(NCSC)および精巣幹細胞(TSC)などのいくつかの種類が含まれる。人工多能性幹細胞(iPS細胞またはiPSCとしても知られている)は、特定の多能性関連遺伝子セットまたは「リプログラミング因子」を導入することによって体細胞から直接生成することができる多能性幹細胞の一種である。他の種類の幹細胞も報告されており、その存在についてはまだ議論の余地がある。
【0004】
30年以上にわたり、白血病およびリンパ腫などの状態のがん患者を処置するために骨髄が使用されてきた。これは、広く実施されている幹細胞療法の唯一の形態である。胚性幹細胞に関して、ヒト胚性幹細胞(hESC)の研究は、ヒト胚の破壊、または少なくとも操作を伴うため、倫理的および政治的に議論の余地がある。hESCの腫瘍形成能もまた、hESCを使用する細胞療法の臨床的ハードルである。さらに、患者に適合した胚性幹細胞株を作成することは今まで実行可能ではなかった。iPSCに関しては、体細胞をリプログラミングしてiPSCを製造することにより、hESC研究に特有の倫理的課題が回避される。しかしながら、iPSCの製造には遺伝子改変/修飾が必要であり、これは何らかの形でがんとも関連している。例えば、組換えタンパク質を使用したiPSCの非遺伝的製造方法は、一般に効率が低い。よって、iPSC技術は、治療的移植が安全であるとみなされている段階にまだ進んでいない。成体幹細胞に関しては、研究および治療でのそれらの使用は議論の余地があると考えられていない。しかしながら、多能性幹細胞とは異なり、成体幹細胞は一定の種類または「系統」に制限されている。その結果、成体幹細胞療法には、必要とされる特定の系統の幹細胞源が必要であり、要求される数までそれらを収集および/または培養することが課題である。
【0005】
したがって、遺伝子操作を必要としない成体組織からの多能性幹細胞の同定、およびそれらをインビトロで培養するためのプロトコルの確立は、組織修復および再生の実用的な細胞療法への道を開くだろう。成体組織から単離されたこのような多能性幹細胞はまた、慢性および加齢関連疾患において未だ満たされていない医療ニーズのための新たな治療法も提供する。
【0006】
細胞培養系は、幹細胞の調査および開発のための強力な資産となるだろう。この分野での最大の課題の1つは、インビトロでの幹細胞の迅速な拡大および効率的かつ正確な分化を可能にするモデルを確立することである。このようなモデルは、一定の培養条件下で標的化され制御可能な分化を受けることができる大量の均質な細胞を提供する能力を有さなければならない。現在、治療要件を満たす多能性幹細胞の一般的に受け入れられている持続可能な細胞培養モデルはない。さらに、現在の多能性幹細胞は、臨床応用および治療用途での現在の多能性幹細胞の使用を妨げる、単離、インビトロ拡大および/または分化誘導などの方法に様々な課題および欠点を有する。
【0007】
したがって、遺伝子操作なしで成体組織からインビトロで迅速に拡大することができ、分化効率が高く、非腫瘍原性である多能性幹細胞を同定する必要がある。また、細胞療法のためのインビトロで多能性幹細胞を培養するためのプロトコルの確立も必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
成体組織からの拡大可能な多能性幹細胞の同定、およびそれらをインビトロで培養するためのプロトコルの確立は、組織修復および再生の実用的な細胞療法への道を開くだろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、少なくとも1000個の細胞を含む組成物を提供し、細胞の少なくとも50%は、CD45を発現し、直径が5μm未満であるCD45細胞である。いくつかの態様では、CD45細胞が、CD34が陽性であり、ABCG2が陰性であるとさらに特徴付けられる。いくつかの態様では、細胞の20%未満が赤血球である。いくつかの態様では、CD45細胞が、Linが陰性であるとさらに特徴付けられる。いくつかの態様では、CD45細胞が、CD44、CD150、Sca1、c-kit、Thy1.1(CD90.1)、Oct 4、SSEA1、Nanog、Vasa、CD133およびCD105からなる群から選択される1つまたは複数のマーカーをさらに発現する。いくつかの態様では、CD45細胞が、CD41、Lin、E-カドヘリンおよびCD184(CXCR4)からなる群から選択される1つまたは複数のマーカーを発現しない。いくつかの態様では、CD45細胞が、1つまたは複数の因子を含む培地によって活性化され得、活性化細胞がABCG2を発現する。
【0010】
本明細書に開示される組成物を調製する方法であって、(1)血液試料から赤血球の少なくとも一部を除去することと、(2)試料から血小板の少なくとも一部を除去することと、(3)試料を400xg~3000xgで遠心分離することと、(4)本明細書に開示される組成物を含むペレットを得ることとを含む方法も提供される。いくつかの態様では、ステップ(3)で、試料を少なくとも3000xgの速度で遠心分離する。
【0011】
初代肝細胞、ヒト肝芽腫(HepG2)細胞、肝細胞細胞株およびマウス胚線維芽細胞(MEF)細胞株からなる群から選択される少なくとも1つと接触している、またはこれによって馴化された培地で複数の哺乳動物細胞を培養することを含む、細胞を培養する方法も提供される。いくつかの態様では、肝細胞細胞株が、AML12、HepaRGまたはこれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、哺乳動物細胞が、(a)直径が5μm未満であり、(b)CD45を発現する。いくつかの態様では、細胞が、CD34が陽性であり、ABCG2が陰性であるとさらに特徴付けられる。いくつかの態様では、哺乳動物細胞が1つまたは複数の種類の幹細胞を含む。
【0012】
本開示はさらに、CD34およびABCG2を発現し、CD45を発現しない単離哺乳動物細胞を提供する。いくつかの態様では、哺乳動物細胞が、Oct4、Nanogおよび/またはケラチン上皮が陽性であり、Linが陰性であるとさらに特徴付けられる。いくつかの態様では、哺乳動物細胞が、CD117、CD29、CD44、CD73、CD90、CD105、Sca1、CD31、CD184、ネスチンおよびオステオカルシンからなる群から選択される1つまたは複数のマーカーをさらに発現する。いくつかの態様では、哺乳動物細胞が、CD3、CD4、CD8a、CD11b、CD13、CD140a、E-カドヘリンおよびLinからなる群から選択される1つまたは複数のマーカーを発現しない。本明細書に開示される細胞の集団も提供される。
【0013】
また、(a)直径が5μm未満であり、(b)CD45を発現し、(c)ABCG2を発現しない細胞から誘導される幹細胞であって、ABCG2を発現し、(a)CD34/CD45、(b)CD34/CD45、(c)CD34/CD45または(d)CD34/CD45とさらに特徴付けられる幹細胞も提供される。本開示の実施形態はまた、本明細書に開示される幹細胞から分化した細胞も提供する。
【0014】
薬学的に許容される担体または賦形剤中に本明細書に開示される幹細胞を含む組成物も提供される。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体または賦形剤中に本明細書に開示される分化細胞を含む組成物も提供される。それを必要とする対象の疾患または状態を処置する方法であって、有効量の本明細書に開示される組成物を対象に投与することを含む方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】血液から単離された休眠小細胞の電子顕微鏡画像を示す図である。
【0016】
図2】インビトロで最大7日間の休眠小細胞およびそれから誘導された活性化幹細胞の核染色、ならびに7日目の細胞におけるGFP発現を示す図である。
【0017】
図3A】休眠小細胞およびそれから誘導された活性化幹細胞におけるABCG2発現を示す図である。
【0018】
図3B】休眠小細胞として単離され、特徴付けられたCD34およびCD45を発現する細胞集団を示す図である。
【0019】
図4】対照としての肝細胞細胞系と比較した、休眠小細胞およびそれから誘導された活性化幹細胞におけるsRNAとrRNAの比を示す図である。
【0020】
図5】活性化/発達系における休眠小細胞の成長および拡大、ならびに幹細胞コロニーの形成を示す図である。
【0021】
図6】幹細胞コロニーからのCD34/CD45幹細胞の精製集団のインビトロ細胞培養物を示す図である。
【0022】
図7】精製幹細胞集団がCD34マーカーを発現するが、CD45を発現しないことを示す図である。
【0023】
図8】精製CD34/CD45細胞集団が分化し、神経細胞特異的マーカーを発現することができることを示す図である。
【0024】
図9】精製CD34/CD45細胞集団が上皮マーカーを発現することができることを示す図である。
【0025】
図10】精製CD34/CD45細胞集団が分化し、骨組織特異的染色を発現することができることを示す図である。
【0026】
図11】精製CD34/CD45細胞集団が分化し、心筋細胞特異的マーカーを発現することができることを示す図である。
【0027】
図12】精製CD34/CD45細胞集団が分化し、肝細胞および胆管上皮特異的マーカーを発現することができることを示す図である。
【0028】
図13】精製CD34/CD45細胞集団で処置した場合の野生型マウスにおける皮膚創傷のより速い治癒率を示す図である。
【0029】
図14】対照マウスの瘢痕組織と比較した、処置マウスの新たな機能的皮膚の成長を示す図である。
【0030】
図15】精製CD34/CD45細胞集団で処置した場合の糖尿病マウスにおける皮膚創傷のより速い治癒率を示す図である。
【0031】
図16】対照マウスのかろうじて閉鎖した創傷と比較した、糖尿病マウスにおける16日間の処置後の新たな皮膚の成長を示す図である。
【0032】
図17】精製CD34/CD45細胞集団から誘導された骨組織の成長を示す図である。
【0033】
図18】精製CD34/CD45細胞集団の移植後にCClによって引き起こされた肝損傷の修復を示す図である。
【0034】
図19】活性化/発達系との共培養において血液から単離された休眠小細胞の代替細胞培養物を示す図である。
【0035】
図20】活性化/発達系と共培養された幹細胞における肝細胞特異的マーカーの発現を示す図である。
【0036】
図21】共培養系から得られた幹細胞を使用した肝損傷の処置を示す図である。
【0037】
図22】活性化幹細胞の増殖マーカー、成長因子およびサイトカインの発現を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本開示を通して、種々の刊行物、特許、および公開特許明細書が本明細書で参照される。これらの刊行物、特許および公開特許明細書の開示は、全体が参照により本開示に組み込まれる。
【0039】
組成物および方法を記載する前に、これらは変化し得るので、本発明は記載される特定の方法論、プロトコル、細胞株、アッセイおよび試薬に限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、本発明の特定の実施形態を説明することを意図しており、添付の特許請求の範囲に示される本発明の範囲を限定することを決して意図しないことも理解されたい。
【0040】
本発明の実施は、特に指示しない限り、組織培養、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学および組換えDNAの従来技術を使用し、これらは当業者の技能の範囲内である。例えば、SambrookおよびRussell編(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、シリーズAusubelら編(2007)Current Protocols in Molecular Biology、シリーズMethods in Enzymology(Academic Press,Inc.、N.Y.)、MacPhersonら(1991)PCR 1:A Practical Approach(IRL Press at Oxford University Press)、MacPhersonら(1995)PCR 2:A Practical Approach、HarlowおよびLane編(1999)Antibodies,A Laboratory Manual、Freshney(2005)Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique、第5版、Gait編(1984)Oligonucleotide Synthesis、米国特許第4683195号明細書、HamesおよびHiggins編(1984)Nucleic Acid Hybridization、Anderson(1999)Nucleic Acid Hybridization、HamesおよびHiggins編(1984)Transcription and Translation、Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press(1986))、Perbal(1984)A Practical Guide to Molecular Cloning、MillerおよびCalos編(1987)Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(Cold Spring Harbor Laboratory)、Makrides編(2003)Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells、MayerおよびWalker編(1987)Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(Academic Press、ロンドン)、Herzenbergら編(1996)Weir's Handbook of Experimental Immunology、Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual、第3版(Cold Spring Harbor Laboratory Press(2002))、Current Protocols In Molecular Biology(F.M.Ausubelら編(1987))、シリーズMethods in Enzymology(Academic Press,Inc.):PCR 2:A Practical Approach(M.J.MacPherson、B.D.HamesおよびG.R.Taylor編(1995))、HarlowおよびLane編(1988)Antibodies,A Laboratory Manual、HarlowおよびLane編(1999)Using Antibodies,A Laboratory Manual、Animal Cell Culture(R.I.Freshney編(1987))、Zigova、SanbergおよびSanchez-Ramos編(2002)Neural Stem Cellsを参照されたい。
【0041】
範囲を含む、全ての数値指定、例えば、pH、温度、時間、濃度および分子量は、適切な場合は0.1または1単位で(+)または(-)変化する近似値である。全ての数値指定の前に「約」という用語が付いていることが常に明示的に述べられているわけではないが、理解されるべきである。「約」という用語には、適切な場合は「X+0.1もしくは1」または「X-0.1もしくは1」などの「X」のわずかな増加に加えて、正確な値「X」も含まれる。本明細書に記載される試薬は単に例示であり、その等価物は当技術分野で知られていることも常に明示的に述べられているわけではないが、理解されるべきである。
【0042】
1.定義
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、以下の用語は以下の意味を有する。
【0043】
明細書および特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「細胞(a cell)」への言及は、それらの混合物を含む複数の細胞を含む。
【0044】
本明細書で使用される場合、「含んでいる(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、組成物および方法が列挙された要素を含むが、他の要素を除外しないことを意味することを意図している。「~から本質的になる(consisting essentially of)」は、組成物および方法を定義するために使用される場合、述べられた目的のために、組み合わせにとって本質的に重要な他の要素を除外することを意味する。したがって、本明細書に定義される要素から本質的になる組成物は、主張される1つまたは複数の基本的および新規な特性に実質的に影響を及ぼさない他の材料またはステップを除外しない。「~からなる(consisting of)」は、他の成分の微量元素および実質的な方法ステップ以上を除外することを意味するものとする。これらの遷移用語の各々によって定義される実施形態は、本開示の範囲内にある。
【0045】
本明細書で使用される場合、「単離」という用語は、細胞、組織、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体または1つもしくは複数のその断片が通常天然で会合している構成成分、細胞などから分離されることを意味する。例えば、単離ポリヌクレオチドは、通常その天然または自然環境、例えば染色体上で会合している3'および5'連続ヌクレオチドから分離される。当業者に明らかであるように、非天然ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体または1つもしくは複数のその断片は、天然に存在する対応物と区別するために「単離」を必要としない。単離細胞は、異なる表現型または遺伝子型の組織または細胞から分離された細胞である。
【0046】
本明細書で使用される場合、「幹細胞」は、培養中に無期限に分裂し、特殊化細胞を生じさせる能力を有する細胞を定義する。幹細胞の種類の非限定的な例としては、体性(成体)幹細胞、胚性幹細胞、単為生殖幹細胞(Cibelliら(2002)Science295(5556)、819、米国特許出願公開第20100069251号明細書および同第20080299091号明細書参照)および/または人工多能性幹細胞(iPS細胞もしくはiPSC)が挙げられる。体性幹細胞は、分化組織に見られる未分化細胞であり、自身を再生し(クローナル)、(一定の制限付きで)分化して、起源を持つ組織の全ての特殊化細胞型を生成することができる。胚性幹細胞は、多種多様な特殊化細胞型になる可能性を有する胚由来の原始(未分化)細胞である。胚性幹細胞の非限定的な例としては、シンガポールのESIから入手可能なHES2(ES02としても知られる)細胞株、およびウィスコンシン州マディソンのWiCellから入手可能なH1またはH9(WA01としても知られる)細胞株が挙げられる。追加の行はNIHレビュー申請中である。例えば、grants.nih.gov/stem_cells/registry/current.htm(最終アクセス日は2017年3月13日)を参照されたい。多能性胚性幹細胞は、それだけに限らないが、Oct-4、アルカリホスファターゼ、CD30、TDGF-1、GCTM-2、Genesis、生殖細胞核因子、SSEA1、SSEA3およびSSEA4を含むマーカーを使用することによって、他の種類の細胞と区別することができる。人工多能性幹細胞(iPSC)は、1つまたは複数の幹細胞特異的遺伝子の発現を誘導することによって製造される、非多能性細胞、典型的には成体体細胞から人工的に誘導される幹細胞である。iPSCは、それだけに限らないが、オクタマー転写因子のファミリー、例えばOct-3/4、Sox遺伝子のファミリー、例えばSox1、Sox2、Sox3、Sox15およびSox18、Klf遺伝子のファミリー、例えばKlf1、Klf2、Klf4およびKlf5、Myc遺伝子のファミリー、例えばc-mycおよびL-myc、Nanog遺伝子のファミリー、例えば、オクタマー-4(OCT4)、NANOGおよびREX1、またはLIN28を含む特定の遺伝子を発現する。iPSCの例は、Takahashiら(2007)Cell advance online publication 2007年11月20日、Takahashi&Yamanaka(2006)Cell 126 663~76、Okitaら(2007)Nature 448 260~262、Yuら(2007)Science advance online publication 2007年11月20日およびNakagawaら(2007)Nat.Biotechnol.Advance online publication 2007年11月30日に記載されている。
【0047】
本明細書で使用される場合、「伝播する」という用語は、細胞または細胞集団の表現型を成長または変化させることを意味する。「成長する」または「拡大する」という用語は、支持培地、栄養素、成長因子、支持細胞、または所望の数の細胞もしくは細胞型を得るために必要な任意の化学化合物もしくは生物学的化合物の存在下での細胞の増殖を指す。一実施形態では、細胞の成長/拡大が組織の再生をもたらす。
【0048】
本明細書で使用される場合、「培養」という用語は、種々の種類の培地上または培地内での細胞または生物のインビトロ伝播を指す。培養で成長した細胞の子孫は、親細胞と完全に同一ではない場合がある(すなわち、形態学的、遺伝的または表現型的に)ことが理解される。「拡大」とは、細胞の増殖または分裂を意味する。
【0049】
本明細書で使用される場合および以下により詳細に示されるように、「馴化培地」は、サイトカイン、成長因子、ホルモン、細胞外マトリックス、ならびに細胞成長、発達および分化を促進するいくつかの材料などの細胞因子を培地に提供する成熟細胞を用いて培養された培地である。
【0050】
本明細書で使用される場合、「分化」という用語は、非特殊化細胞が皮膚、心臓、肝臓または筋肉細胞などの特殊化細胞の特徴を獲得する過程を記載するものである。「分化誘導」とは、特定の細胞型への分化を誘導するための幹細胞培養条件の操作を指す。「脱分化」とは、細胞の系統内であまり拘束されていない位置に戻る細胞を定義する。本明細書で使用される場合、「分化するまたは分化した」という用語は、細胞の系統内のより拘束された(「分化した」)位置をとる細胞を定義する。
【0051】
本明細書で使用される場合、細胞の「系統」は、細胞の遺伝、すなわち、その先祖および子孫を定義する。細胞の系統は、細胞を発達および分化の遺伝的スキーム内に配置する。本明細書で使用される場合、「中胚葉(または外胚葉または内胚葉)系統に分化する細胞」は、それぞれ特定の中胚葉(または外胚葉または内胚葉)系統に拘束される細胞を定義する。中胚葉系統に分化する、または特定の中胚葉細胞を生じさせる細胞の例としては、それだけに限らないが、脂肪生成細胞、平滑筋原性細胞、軟骨形成細胞、心原性細胞、皮膚原性細胞、造血細胞、血液新生細胞、筋原性細胞、腎原性細胞、尿生殖原性細胞、骨原性細胞、心膜原性細胞または間質細胞が挙げられる。外胚葉系統に分化する細胞の例としては、それだけに限らないが、表皮細胞、神経原性細胞および神経膠原性細胞が挙げられる。内胚葉系統に分化する細胞の例としては、それだけに限らないが、膵臓、肝臓、肺、胃、腸および甲状腺を生じさせる細胞が挙げられる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「多能性幹細胞」という用語は、(i)未分化状態でインビトロで無期限に増殖可能であり、(ii)長期間の培養を通して正常な核型を維持し、(iii)長期間の培養後でさえも、3つ全ての胚性胚葉(内胚葉、中胚葉および外胚葉)の誘導体に分化する可能性を維持する細胞を指す。現在利用可能な多能性幹細胞の非限定的な例としては、胚性幹細胞およびiPSCが挙げられる。本明細書で使用される場合、「胚様」幹細胞という用語は、胚性幹細胞の多能性特性を有する、組織、器官または血液から誘導される細胞を指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、「多系統幹細胞」または「多能性幹細胞」という用語は、それ自体および別個の発達系統からの少なくとも2つのさらなる分化した子孫細胞を再生する幹細胞を指す。系統は、同じ胚葉(すなわち、中胚葉、外胚葉または内胚葉)から、または異なる胚葉からのものであり得る。多系統幹細胞の分化からの異なる発達系統を有する2つの子孫細胞の例は、筋原性細胞および脂肪生成細胞である(共に中胚葉起源であるが、異なる組織を生じる)。別の例は、神経原性細胞(外胚葉起源)および脂肪生成細胞(中胚葉起源)である。
【0054】
本明細書で使用される場合、「自己複製可能」という用語は、細胞特性の実質的な変化なしに、いくつかの継代にわたって自己複製することができる細胞を指す。一態様では、継代数が、少なくとも約5、あるいは少なくとも10、あるいは少なくとも約15、20、30、50または100である。
【0055】
本明細書で使用される場合、「実質的に均質な」という用語は、細胞の約50%超、あるいは約60%超、あるいは70%超、あるいは75%超、あるいは80%超、あるいは85%超、あるいは90%超、あるいは95%超、あるいは99%超が同じまたは類似の表現型である細胞の集団を記載するものである。表現型は、事前に選択された細胞表面マーカーまたは他のマーカーによって決定することができる。
【0056】
本明細書で使用される場合、目的の細胞の「精製集団」という用語は、その天然の環境に存在する実質的に全ての他の細胞から単離された細胞集団を指すが、細胞の混合物中の目的の細胞の割合がその天然の環境で見られるよりも大きい。例えば、他の細胞および細胞型も濃縮集団に存在する場合でも、精製細胞集団は、目的の細胞の濃縮集団を表す。いくつかの実施形態では、精製細胞集団が、混合細胞集団の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または約100%を表し、但し、目的の細胞が精製前の集団よりも大きな「精製」集団の総細胞集団の割合を構成する。
【0057】
本明細書で使用される場合、「細胞集団」という用語は、表現型および/または遺伝子型が同一(クローナル)または非同一である2つ以上の細胞の集合を指す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「細胞コロニー」または「コロニー」という用語は、細胞成長の結果として形成される密接に関連する細胞のグループ化を指す。これらの用語は、コロニーを構成する細胞の数とは無関係に使用される。
【0059】
本明細書で使用される場合、「休眠細胞」という用語は、成長または分化を受けることができるより前に活性化される必要がある休眠状態または静止状態にある細胞を包含することを意図している。
【0060】
本明細書で使用される場合、「休眠小細胞」という用語は、成長および/または分化を受けることができるより前に活性化される必要がある休眠状態または静止状態にある細胞を包含することを意図している。休眠小細胞は、典型的には直径が5μm未満である。
【0061】
本明細書で使用される場合、休眠細胞の「活性化」という用語は、細胞の休眠状態における測定可能な形態学的、表現型および/または機能的変化を指す。このような活性化は、典型的には、活性化細胞の特定のマーカーの発現と同時に起こる。一実施形態では、活性化が細胞成長および/または発達の変化と同時に起こる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「活性化幹細胞」という用語は、活性化状態にあり、特定の条件下で成長および/または分化を受けることができる幹細胞を包含することを意図している。
【0063】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、活性剤と別の担体、例えば化合物または組成物、不活性剤(例えば検出可能な薬剤もしくは標識)または活性剤、例えばアジュバント、希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝剤、塩、親油性溶媒、保存剤、アジュバントなどの組み合わせを包含することを意図している。担体には、薬学的賦形剤および添加剤タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、および炭水化物(例えば、単糖、二糖、三糖、四糖およびオリゴ糖を含む糖類、アルジトール、アルドン酸、エステル化糖などの誘導体化糖など、ならびに多糖類または糖ポリマー)も含まれ、これらは単独でまたは組み合わせて存在することができ、単独でまたは組み合わせて1~99.99重量または体積%を構成する。例示的なタンパク質賦形剤には、ヒト血清アルブミン(HSA)、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼインなどの血清アルブミンが含まれる。代表的なアミノ酸/抗体成分は、緩衝能で機能することもでき、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リジン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテームなどを含む。炭水化物賦形剤も本発明の範囲内にあることが意図されており、その例としては、それだけに限らないが、単糖類、例えばフルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボースなど、二糖類、例えばラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなど、多糖類、例えばラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなど、およびアルジトール、例えばマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビトール(グルシトール)およびミオイノシトールが挙げられる。一定の実施形態では、組成物が、細胞集団または細胞の混合物を含む。一定の実施形態では、組成物が、フィルム、ゲル、パッチ、3-D構造または液体溶液として製剤化される。
【0064】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、示される材料が、処置される疾患または状態およびそれぞれの投与経路を考慮に入れて、合理的に賢明な医師に患者への材料の投与を回避させるような特性を有さないことを示す。例えば、このような材料は本質的に無菌であることが一般的に要求される。
【0065】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体(または媒体)」という用語は、「生物学的に適合性の担体(または媒体)」という用語と互換的に使用され得、治療的に投与される細胞および他の薬剤と適合性であるだけでなく、健全な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー反応または他の合併症なしでヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適してもいる、試薬、細胞、化合物、材料、組成物および/または剤形を指す。本発明で使用するのに適した薬学的に許容される担体には、液体、半固体(例えば、ゲル)および固体材料(例えば、細胞足場およびマトリックス、チューブシートおよび当技術分野で知られており、本明細書により詳細に記載される他のこのような材料)が含まれる。これらの半固体および固体材料は、体内での分解に耐えるように設計することも(非生分解性)、体内で分解するように設計することも(生分解性、生体侵食性)できる。生分解性材料は、さらに生体吸収性(bioresorbable)または生体吸収性(bioabsorbable)であり得る、すなわち、体液に溶解し、吸収され(水溶性インプラントが一例である)、分解され、最終的には、他の材料への変換または分解および自然な経路を通した排除によって、体内から排除され得る。局所使用の場合、薬学的に許容される担体は、クリーム、軟膏、ゼリー、ゲル、溶液、懸濁液等の製造に適している。このような担体は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)を用いた局所投与について、当技術分野で慣用的である。これらの製剤は、場合により希釈剤、安定剤および/またはアジュバントなどの追加の薬学的に許容される成分を含んでもよい。
【0066】
本明細書で使用される場合、「溶液」という用語は、当技術分野で周知の溶液、懸濁液、乳濁液、ドロップ、軟膏、液体洗浄剤、スプレーおよびリポソームを指す。いくつかの実施形態では、液体溶液が、少量の酸または塩基を添加した場合にpHの変化に抵抗する水性pH緩衝剤を含有する。
【0067】
本明細書で使用される場合、「pH緩衝剤」という用語は、少量の酸または塩基を添加した場合にpHの変化に抵抗する水性緩衝液を指す。pH緩衝液は、典型的には弱酸とその共役塩基の混合物またはその逆を含む。例えば、pH緩衝液には、リン酸塩、例えばリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム二水和物、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素ナトリウム十二水和物、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウムおよびリン酸水素二カリウム、ホウ酸およびホウ酸塩、例えばホウ酸ナトリウムおよびホウ酸カリウム、クエン酸およびクエン酸塩、例えばクエン酸ナトリウムおよびクエン酸二ナトリウム、酢酸塩、例えば酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウム、炭酸塩、例えば炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウム等が含まれ得る。pH調整剤には、例えば、塩酸、乳酸、クエン酸、リン酸および酢酸などの酸、ならびに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ塩基が含まれ得る。いくつかの実施形態では、pH緩衝剤が、リン酸緩衝食塩水(PBS)溶液(すなわち、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、およびいくつかの製剤では、塩化カリウムおよびリン酸カリウムを含有する)である。
【0068】
本明細書で使用される場合、「製剤化された」または「製剤化」という用語は、1つまたは複数の医薬有効成分を含む異なる物質を組み合わせて剤形を製造する過程を指す。一定の実施形態では、2つ以上の医薬有効成分を単一剤形もしくは組合せ投与単位に共製剤化することができる、または別々に製剤化し、その後組合せ投与単位に組み合わせることができる。徐放性製剤は、長期間にわたって体内で治療剤をゆっくり放出するよう設計された製剤である一方、即時放出製剤は、短期間にわたって体内で治療剤を迅速に放出するよう設計された製剤である。
【0069】
本明細書で使用される場合、「処置する」という用語は、損傷または介入の前、間および/または後に、疾患または障害の1つまたは複数の臨床症状を予防、治癒、逆転、減弱、緩和、最小化、阻害、抑制および/または停止することを指す。
【0070】
本明細書で使用される場合、「患者」または「対象」という用語は、本明細書に記載される医薬組成物でまたは方法によって処置されるマウス、イヌ、ウマ、ウシ、サルまたはヒトなどの哺乳動物を含む動物を指す。
【0071】
本明細書で使用される場合、「送達」という用語は、その所望の治療効果を安全に達成するために必要に応じて体内に医薬組成物を輸送するための経路、アプローチ、製剤、技術および系を指す。送達経路は、それだけに限らないが、血管内経路、静脈内経路、動脈内経路、筋肉内経路、皮膚経路、皮下経路、経皮経路、皮内経路および表皮内経路を含む任意の適切な経路であり得る。いくつかの実施形態では、有効量の組成物が、患者の皮膚に施用する、または皮膚に送達するために製剤化される。いくつかの実施形態では、有効量の組成物が、患者の血流に送達するために製剤化される。
【0072】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、インビトロまたはインビボでの細胞成長および/または分化を含む意図した結果をもたらすため、あるいはそれを必要とする患者の疾患、障害または状態を処置するために有効な、本明細書に記載される組成物、細胞集団または他の薬剤などの組成物または試薬の濃度または量を指す。投与される細胞の数は、医薬生物学者および/または処置する医師によく知られている数ある因子の中でも、それだけに限らないが、処置されるサイズまたは総体積/表面積を含む処置される障害の詳細、ならびに処置される領域の位置に対する投与部位の近接性に応じて変化することが理解されるだろう。
【0073】
本明細書で使用される場合、「有効な期間(または時間)」および「有効な条件」という用語は、意図した結果、例えば予め決定された細胞型への細胞の分化を達成するために薬剤または組成物に必要なまたは好ましい期間または他の制御可能な条件(例えば、インビトロ方法の温度、湿度)を指す。
【0074】
本明細書で使用される場合、「対照」または「対照群」という用語は、比較目的で実験で使用される代替の対象または試料を指す。対照は「陽性」または「陰性」であり得る。
【0075】
本明細書で使用される場合、「同時に」という用語は、同時(すなわち、併せた)投与を指す。一実施形態では、投与が、その任意の固体形態を含む2つ以上の医薬有効成分が一度に一緒に送達されるような共投与である。
【0076】
本明細書で使用される場合、「連続的に」という用語は、別個の(すなわち、異なる時間での)投与を指す。一実施形態では、投与が、その任意の固体形態を含む2つ以上の医薬有効成分が異なる時間に別々に送達されるようにずらされる。
【0077】
本明細書で使用される場合、「標的組織」または「標的器官」という用語は、対象への投与後の、本明細書に開示される幹細胞および/または本明細書に開示される幹細胞から誘導される分化細胞の蓄積を意図した部位を指す。例えば、本明細書に開示される方法は、いくつかの実施形態では、(例えば虚血または他の損傷により)損傷を受けた標的組織または標的器官を伴う。
【0078】
本明細書で使用される場合、「自家移植(autologous transfer)」、「自家移植(autologous transplantation)」、「自家移植(autograft)」などの用語は、細胞ドナーが細胞置換療法のレシピエントでもある処置を指す。「同種移植(allogeneic transfer)」、「同種移植(allogeneic transplantation)」、「同種移植(allograft)」などの用語は、細胞ドナーが細胞置換療法のレシピエントと同じ種のものであるが、同じ個体ではない処置を指す。ドナーの細胞がレシピエントと組織適合性で一致している細胞移植は、時々、同系移植と呼ばれる。異種移植(xenogeneic transfer)、異種移植(xenogeneic transplantation)、異種移植(xenograft)などの用語は、細胞ドナーが細胞置換療法のレシピエントとは異なる種のものである処置を指す。
【0079】
本明細書で使用される場合、「ABCG2」または「ATP結合カセット(ABC)輸送体G2」という用語は、ABCG/ホワイトサブファミリーに属するABCGファミリーの半輸送体を指し、遺伝子記号ABCG2を有する。ABCG2は、MXR(ミトキサントロン耐性タンパク質、Miyakeら、1999)、BCRP(乳がん耐性タンパク質、Doyleら、1998)、またはABCP(胎盤特異的ABC輸送体、Allikmetsら、1998)としても知られている。GENBANK(登録商標)データベースは、ヒト(例えば、AAG52982)、マウス(NM_011920.3)、ラット(BAC76396.1)、ネコ(XP_019684813.1)、イヌ(NP_001041486.1)、ブタ(NP_999175.1)、ウシ(NP_001032555.2)などのABCG2のアミノ酸および核酸配列を開示している。
【0080】
本明細書で使用される場合、「CD34」という用語は、一定の造血幹細胞および非造血幹細胞に見られ、遺伝子記号CD34を有する細胞表面マーカーを指す。GENBANK(登録商標)データベースは、ヒト(例えば、AAB25223)、マウス(NP_598415)、ラット(XP_223083)、ネコ(NP_001009318)、ブタ(MP_999251)、ウシ(NP_776434)などのCD34のアミノ酸および核酸配列を開示している。
【0081】
本明細書で使用される場合、「CD45」という用語は、白血球共通抗原(LCA)としても知られ、遺伝子記号PTPRCを有するチロシンホスファターゼを指す。この遺伝子は、GENBANK(登録商標)寄託番号NP_002829(ヒト)、NP_035340(マウス)、NP_612516(ラット)、XP_002829(イヌ)、XP_599431(ウシ)およびAAR16420(ブタ)に対応している。いくつかの魚種およびいくつかの非ヒト霊長類のものを含む、追加のCD45ホモログのアミノ酸配列もGENBANK(登録商標)データベースに存在する。
【0082】
本明細書で使用される場合、「系統マーカー」または「Lin」という用語は、細胞系統に特徴的な分子、例えば細胞表面マーカー、mRNAまたは内部タンパク質を指す。系統陽性(Lin+)細胞は、成熟細胞系統マーカーを発現する細胞の混合物を指す。系統陰性(Lin)細胞には、幹細胞および前駆細胞が含まれるが、これらは分化した成熟細胞ではない。一態様では、「Lin」がマーカーのパネルを指す。本明細書で使用されるマウス系統パネルは、Tリンパ球、Bリンパ球、単球/マクロファージ、顆粒球、NK細胞および赤血球などの主要な造血細胞系統からの細胞と反応することができる。本明細書で使用される場合、FITC抗マウス系統抗体カクテルは、マウス骨髄中の造血前駆細胞のフローサイトメトリー同定用に設計されている。カクテルの成分には、抗マウスCD3e、クローン145-2C11、抗マウスLy-6G/Ly-6C、クローンRB6-8C5、抗マウスCD11b、クローンM1/70、抗マウスCD45R/B220、クローンRA3-6B2、抗マウスTER-119/赤血球細胞、クローンTer-119が含まれる。FITC抗マウス系統アイソタイプ対照カクテルは、等価な濃度のアイソタイプが一致した陰性対照免疫グロブリンを含有する。
【0083】
本明細書で使用される場合、「ケラチン上皮マーカー」という用語は、CK5、CK6、CK8を含むマーカーのパネルを指す。
【0084】
2.休眠小細胞の単離
哺乳動物対象の末梢血の一定の比較的小さな細胞を活性化すると多能性幹細胞になることができることが、本発明者らの驚くべき、期待される発見である。多能性は、3つの胚葉全てに分化する細胞の能力で示されている。さらに、本明細書で開発された新たな活性化および発達系により、多能性幹細胞を、インビトロで迅速かつ有効に拡大することができる。さらに、血液から誘導される多能性幹細胞は、倫理的および政治的に議論の余地があると考えられておらず、遺伝子操作を必要としない。本技術のさらに別の利点は、多能性幹細胞が非腫瘍原性であることが示されている。したがって、本開示技術は、組織修復および再生の実用的な細胞療法への道を開き、慢性および加齢関連疾患において未だ満たされていない医療ニーズのための新たな治療法も提供する。
【0085】
一実施形態では、本開示は、CD45を発現し、直径が5μm未満である細胞が濃縮された細胞集団を提供する。このような細胞は、本明細書で「CD45細胞」または「休眠小細胞」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、組成物または細胞集団が、合計で少なくとも100個の細胞、1000個の細胞、10000個の細胞または100000個の細胞を含み、これらの少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または99.5%が休眠小細胞である。いくつかの実施形態では、休眠小細胞の全てが、哺乳動物対象の血液試料から得られる。いくつかの実施形態では、組成物が、赤血球および白血球などの血球を比較的低い割合でさらに含む(例えば、約30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.2%または0.1%未満)。
【0086】
いくつかの実施形態では、組成物中の休眠小細胞が、無傷のものと壊れたものの両方を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団中の無傷の休眠小細胞の数と壊れた休眠小細胞の数の比が1:1未満、少なくとも約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1または15:1である。
【0087】
いくつかの実施形態では、休眠小細胞が、直径が約2μm、あるいは約2.5μm、あるいは約3μm、あるいは約3.5μm、あるいは約4μm、あるいは約4.5μm、あるいは約5μm、あるいは約2~3μmの間、あるいは約2~4μmの間、あるいは約2~5μmの間、あるいは5μm未満、あるいは4μm未満、あるいは3μm未満である。いくつかの実施形態では、単離休眠小細胞が、非常に高い核-細胞質比(v/v、N:C比またはN/Cとも呼ばれる)を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される休眠小細胞の核-細胞質比が、少なくとも9:1、あるいは少なくとも8:1、あるいは少なくとも7:1、あるいは少なくとも6:1、あるいは少なくとも5:1であり得る。インビトロで通常の細胞培養培地(例えば、20%FBSを含むα-MEM)に播種した場合、いくつかの実施形態では、休眠小細胞が増殖せず、数日で老化する。いくつかの実施形態では、休眠小細胞の単離集団が、マーカーCD34とCD45の両方を発現し、マーカーABCG2を発現しない。いくつかの実施形態では、休眠小細胞が、Linであるとさらに特徴付けられる。
【0088】
いくつかの実施形態では、休眠小細胞が、リボソームRNA(rRNA)に対して高い比の小RNA(マイクロRNAを含むsRNA)を有し得る。いくつかの実施形態では、小RNAとリボソームRNAの比が、少なくとも22:1、あるいは少なくとも20:1、あるいは少なくとも18:1、あるいは少なくとも15:1、あるいは少なくとも12:1、あるいは少なくとも10:1、あるいは少なくとも9:1、あるいは少なくとも8:1、あるいは少なくとも7:1、あるいは少なくとも6:1、あるいは少なくとも5:1である。ミトコンドリアマーカー(例えば、COX IV)、小胞体(ER)マーカー(例えば、カルネキシン)およびリボソームマーカー(例えば、RPS3)の低レベルまたは最小限の発現はまた、いくつかの態様では、幹細胞の単離集団が休眠中/静止状態であることを示し得る。
【0089】
休眠小細胞を、細胞表面マーカーおよび細胞内マーカー、例えば以下の表1に示されるものを使用して分析することができる。
【表1】
【0090】
いくつかの実施形態では、単離休眠小細胞が、1つまたは複数の初期幹細胞マーカー(例えば、Oct4、Nanog、SSEA1、Vasa)を発現する。いくつかの実施形態では、休眠小細胞が、造血マーカー(例えば、CD34、CD45、CD133、CD150)およびMSCマーカー(例えば、CD44、CD105、Sca1、CD90.1)の群の1つまたは複数のマーカーを発現する。いくつかの実施形態では、休眠小細胞の単離集団が、表1で同定されるマーカーのうち1つまたは複数を発現する。一態様では、表1で同定されるマーカーのうち2つ、あるいは3つ、あるいは4つ、あるいは5つが存在し、全てのマーカーが存在するまで増加する。いくつかの実施形態では、休眠小細胞が、E-カドヘリン、CD184および/またはCD41を発現しない。
【0091】
いくつかの実施形態では、血液試料から本明細書に開示される休眠小細胞を単離する方法が提供される。休眠小細胞は、細胞の単離を可能にする任意の手段によって末梢血から単離することができる。例えば、本明細書に開示される方法は、血液試料から血液細胞および血小板の少なくとも一部を除去することと、試料を遠心分離して休眠小細胞を含むペレットを得ることとを含み得る。他の態様では、本方法は、1つまたは複数の同定マーカーに基づく細胞選別および細胞単離方法を含み得る。例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)または磁気活性化細胞選別(MACS)を使用して、休眠小細胞を選別および単離することができる。いくつかの実施形態では、他の方法を使用して本明細書に開示される休眠小細胞を単離することができる。いくつかの単離手順の例を、以下の実施例1で提供する。
【0092】
一態様では、休眠小細胞の単離方法が、(1)血液試料から赤血球の少なくとも一部を除去することと、(2)試料から血小板の少なくとも一部を除去することと、(3)試料を400xg~3000xgで遠心分離することと、(4)本明細書に開示される休眠小細胞を含むペレットを得ることとを含む。いくつかの態様では、ステップ(3)の試料が、約400xg、あるいは約500xg、あるいは約800xg、あるいは約1000xg、あるいは約1200xg、あるいは約1500xg、あるいは約1800xg、あるいは約2000xg、あるいは約2200xg、あるいは約2500xg、あるいは約2800xg、あるいは約3000xg、あるいは約3500xg、あるいは約4000xg、あるいは約4500xg、あるいは約5000xg、あるいは約5500xg、あるいは約6000xg、あるいは約6500xg、あるいは約7000xg、あるいは約7500xg、あるいは約8000xg、あるいは約9000xg、あるいは約10000xg、あるいは10000xg超で遠心分離され得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、幹細胞の1つまたは複数の特定のマーカーに基づいて幹細胞の特定の濃縮集団を単離する方法が提供される。例えば、本方法を使用して、(例えば、FACSまたはMACSによって)CD34/CD45/ABCG2/Lin細胞が濃縮された細胞集団を単離することができる。別の例では、本方法を使用して、CD34/ABCG2細胞が濃縮された細胞集団を単離することができる。他の実施形態では、本方法を使用して、特定のマーカー(例えば、本明細書に開示される休眠小細胞を同定するためのマーカー)の一定の組み合わせを有する細胞が濃縮された細胞集団を単離することができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、組織が本明細書に開示される生存可能な休眠小細胞を含有する限り、休眠小細胞を他の供給源/組織から単離してもよい。いくつかの実施形態では、休眠小細胞が、任意の年齢の対象から単離され得る。いくつかの実施形態では、休眠小細胞がいつでも対象から単離され得る。いくつかの実施形態では、休眠小細胞を、それだけに限らないが、ウマ、イヌ、ブタ、ウシ、マウス、サルおよびヒトなどの動物から単離することができる。
【0095】
3.活性化および発達
休眠小細胞の単離集団をインビトロで活性化および培養するために、活性化/発達系が確立されている。いくつかの実施形態では、活性化/発達系が、初代肝細胞、ヒト肝芽腫(HepG2)細胞、肝細胞細胞株およびマウス胚線維芽細胞(MEF)細胞株から選択される1つまたは複数の細胞型/細胞株を含む。肝細胞細胞株の非限定的な例としては、AML12およびHepaRGが挙げられる。いくつかの実施形態では、活性化/発達系が、他の種類の肝芽腫細胞および/または他の種類の胚線維芽細胞細胞株を含み得る。いくつかの実施形態では、活性化/発達系が、他の種類の細胞および/または細胞株を含み得る。いくつかの態様では、活性化/発達系が、上記の細胞/細胞株のうち少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つ、あるいは少なくとも4つを含み得る。
【0096】
一態様では、活性化/発達系が、少なくとも初代肝細胞、HepG2細胞、肝細胞細胞株およびMEF細胞株の細胞混合物を含む。別の態様では、活性化/発達系が、少なくとも初代肝細胞、HepG2細胞および肝細胞細胞株の細胞混合物を含む。別の態様では、活性化/発達系が、少なくとも初代肝細胞、HepG2細胞およびMEF細胞株の細胞混合物を含む。別の態様では、活性化/発達系が、少なくとも初代肝細胞、肝細胞細胞株およびMEF細胞株の細胞混合物を含む。別の態様では、活性化/発達系が、少なくともHepG2細胞、肝細胞細胞株およびMEF細胞株の細胞混合物を含む。別の態様では、活性化/発達系が、少なくとも初代肝細胞およびHepG2細胞の細胞混合物を含む。別の態様では、活性化/発達系が、少なくとも初代肝細胞および肝細胞細胞株の細胞混合物を含む。別の態様では、活性化/発達系が、少なくとも初代肝細胞およびMEF細胞株の細胞混合物を含む。別の態様では、活性化/発達系が、少なくともHepG2細胞および肝細胞細胞株の細胞混合物を含む。別の態様では、活性化/発達系が、少なくともHepG2細胞およびMEF細胞株の細胞混合物を含む。別の態様では、活性化/発達系が、少なくとも肝細胞細胞株およびMEF細胞株の細胞混合物を含む。別の態様では、活性化/発達系が、少なくとも初代肝細胞を含む。別の態様では、活性化/発達系が、少なくともHepG2細胞を含む。別の態様では、活性化/発達系が、少なくとも肝細胞細胞株を含む。別の態様では、活性化/発達系が、少なくともMEF細胞株を含む。
【0097】
一実施形態では、インビトロで休眠小細胞を活性化および培養する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、休眠小細胞を、Transwellプレートを使用して、本明細書に開示される細胞または細胞混合物と共培養することができる。例えば、細胞または上記の細胞/細胞株の細胞混合物を調製し、マイトマイシンCで処置して、細胞を有糸分裂的に不活性化することができる。次いで、細胞/細胞混合物を共培養培地の細胞培養プレートの底に播種することができる。休眠小細胞の単離集団をTranswell膜に播種して、細胞/細胞混合物と共培養することができる。共培養培地は、5~50%のFBS(ウシ胎児血清)を含むα-MEM培地を含み得る。例えば、共培養培地は、約5%、あるいは約10%、あるいは約15%、あるいは約20%、あるいは約25%、あるいは約30%、あるいは約35%、あるいは約40%、あるいは約45%、あるいは約50%のFBSを含むα-MEM培地を含み得る。いくつかの実施形態では、他の培養培地を本明細書に開示される方法で使用してもよい。場合により、他の試薬および因子を共培養培地に添加してもよい。
【0098】
別の態様では、馴化培地を使用して休眠小細胞を活性化および培養する方法が本明細書で提供される。いくつかの態様では、培養培地を、活性化/発達系で使用する前に、上記の細胞または細胞/細胞株の混合物で馴化してもよい。例えば、上記の細胞/細胞混合物を細胞培養培地に懸濁し、次いで、細胞培養皿/プレートに播種することができる。細胞/細胞混合物を培養するための細胞培養培地は、5~50%のFBSを含むDMEMを含み得る。例えば、培地は、約5%、あるいは約10%、あるいは約15%、あるいは約20%、あるいは約25%、あるいは約30%、あるいは約35%、あるいは約40%、あるいは約45%、あるいは約50%のFBSを含むDMEMを含み得る。いくつかの実施形態では、他の培養培地を本明細書に開示される方法で使用してもよい。場合により、他の試薬および因子を培地に添加してもよい。馴化培地は、細胞培養皿/プレートから回収することができ、培地中の残りの細胞を除去した後(例えば、遠心分離および/または濾過により)、培地を使用して単離休眠小細胞を培養することができる。回収した馴化培地を、休眠小細胞を培養するために、上記の共培養培地と混合してもよい。例えば、培地混合物の総体積に基づいて、本明細書に開示される馴化培地は、約5%(v/v)、あるいは約10%、あるいは約15%、あるいは約20%、あるいは約25%、あるいは約30%、あるいは約35%、あるいは約40%、あるいは約45%、あるいは約50%、あるいは約55%、あるいは約60%、あるいは約65%、あるいは約70%、あるいは約75%、あるいは約80%、あるいは約85%、あるいは約90%、あるいは約95%であり得る。場合により、他の試薬および因子を培地の混合物に添加してもよい。
【0099】
本開示の実施形態はまた、本明細書に開示される休眠小細胞から誘導される活性化幹細胞の集団も提供する。活性化幹細胞は、上記の活性化/発達系で休眠小細胞を有効な期間培養することによって得ることができる。いくつかの態様では、休眠小細胞を活性化するのに有効な培養時間には、それだけに限らないが、少なくとも1時間、あるいは少なくとも2時間、あるいは少なくとも4時間、あるいは少なくとも12時間、あるいは少なくとも1日間、あるいは少なくとも2日間、あるいは少なくとも3日間、あるいは少なくとも4日間、あるいは少なくとも5日間、あるいは少なくとも8日間、あるいは少なくとも10日間、あるいは少なくとも12日間、あるいは少なくとも15日間、あるいは少なくとも18日間、あるいは少なくとも20日間が含まれ得る。細胞培養培地は、1日毎、あるいは2日毎、あるいは3日毎、あるいは4日毎、あるいは5日以上毎に交換してもよい。いくつかの実施形態では、活性化幹細胞が、休眠小細胞を他の培養系、培養培地、または条件で有効な期間培養することによって得られ得る。いくつかの実施形態では、活性化幹細胞が、異なるマーカーセットによって特徴付けられる細胞の種々の亜集団を含む高度に不均一な細胞混合物として特徴付けられる。
【0100】
いくつかの実施形態では、他の細胞培養培地および/または細胞培養条件を使用して、本明細書に開示される幹細胞を活性化および/または培養することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される活性化/発達系で使用される細胞培養培地および/または細胞培養条件を使用して、他の種類の細胞および/または他の種類の幹細胞を培養することができる。例えば、活性化/発達系で使用される細胞培養培地および/または細胞培養条件を使用して、胚性幹(ES)細胞、造血幹細胞(HSC)、間葉系幹細胞(MSC)、内皮幹細胞(ESC)、乳腺幹細胞(MaSC)、腸幹細胞(ISC)、神経幹細胞(NSC)、成体嗅覚幹細胞(OSC)、神経堤幹細胞(NCSC)、および精巣幹細胞(TSC)、および人工多能性幹細胞(iPSC)からなる群から選択される細胞のうち1つまたは複数を培養することができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、活性化幹細胞が、休眠小細胞では発現されないABCG2を発現する。いくつかの態様では、核酸染色(例えば、Hoechst 33342)が、活性化/発達系で培養された活性化幹細胞の外側に徐々に拡散するが、休眠小細胞の核酸染色は本明細書に開示される通常の培養培地では拡散しない。いくつかの実施形態では、休眠小細胞で高い、リボソームRNAに対する低分子RNAの比が、幹細胞の活性化後に有意に減少する。いくつかの実施形態では、活性化幹細胞が、1:4未満、あるいは1:5未満、あるいは1:6未満、あるいは1:7未満、あるいは1:8、あるいは1:9未満、あるいは1:10未満の小RNAとリボソームRNAの比を有し得る。いくつかの実施形態では、活性化幹細胞が、休眠小細胞と比較して、COX IV、RPS3およびカルネキシンのレベルが実質的に増加し得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、CD34/CD45、CD34/CD45、CD34/CD45および/またはCD34/CD45であるいくつかの亜集団にさらに特徴付けることができる、ABCG2である活性化幹細胞の集団も本明細書で提供される。一実施形態では、活性化幹細胞の集団の少なくとも約50%、あるいは少なくとも約55%、あるいは少なくとも約60%、あるいは少なくとも約66%、あるいは少なくとも約70%、あるいは少なくとも約75%、あるいは少なくとも約80%、あるいは少なくとも約85%、あるいは少なくとも約90%、あるいは少なくとも約95%、あるいは少なくとも約99%がCD34/CD45である。一態様では、活性化幹細胞の50%未満、あるいは45%未満、あるいは40%未満、あるいは35%未満、あるいは30%未満、あるいは25%未満、あるいは20%未満、あるいは15%未満、あるいは10%未満、あるいは5%未満、あるいは2%未満、あるいは1%未満、あるいは0.5%未満がCD34/CD45、CD34/CD45、CD34/CD45またはこれらの任意の組み合わせである。
【0103】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される活性化幹細胞の亜集団のうち1つまたは複数が、インビトロで活性化/発達系で迅速に拡大することができる。いくつかの実施形態では、活性化幹細胞の亜集団の倍加時間が変化し得る。いくつかの実施形態では、活性化/発達系における活性化幹細胞の亜集団のうち1つまたは複数の倍加時間が、50時間超、あるいは50時間未満、あるいは45時間未満、あるいは40時間未満、あるいは35時間未満、あるいは30時間未満、あるいは25時間未満、あるいは約20~約50時間の間、あるいは約20~約40時間の間、あるいは約20~約30時間の間であり得る。いくつかの実施形態では、活性化幹細胞の亜集団のうち1つまたは複数が、インビトロで他の細胞培養系および/または他の培養条件下で拡大することができる。
【0104】
本明細書に開示される休眠小細胞から誘導される活性化幹細胞の亜集団を精製する方法も本明細書で提供される。一態様では、本明細書に開示される休眠小細胞から誘導されるCD34/CD45活性化幹細胞の亜集団を精製する方法が提供される。一態様では、本明細書に開示される休眠小細胞から誘導されるCD34/CD45活性化幹細胞の亜集団を精製する方法が提供される。一態様では、本明細書に開示される休眠小細胞から誘導されるCD34/CD45活性化幹細胞の亜集団を精製する方法が提供される。一態様では、本明細書に開示される休眠小細胞から誘導されるCD34/CD45活性化幹細胞の亜集団を精製する方法が提供される。一態様では、本明細書に開示される休眠小細胞から誘導されるCD34活性化幹細胞の亜集団を精製する方法が提供される。一態様では、本明細書に開示される休眠小細胞から誘導されるCD34活性化幹細胞の亜集団を精製する方法が提供される。一態様では、本明細書に開示される休眠小細胞から誘導されるCD45活性化幹細胞の亜集団を精製する方法が提供される。一態様では、本明細書に開示される休眠小細胞から誘導されるCD45活性化幹細胞の亜集団を精製する方法が提供される。一態様では、本明細書に開示される休眠小細胞から誘導される一定のマーカーセットを有する活性化幹細胞の亜集団を精製する方法が提供される。
【0105】
一実施形態では、活性化/発達系で一定期間(例えば、10~20日間)培養した後、1つまたは複数の細胞コロニーが発達する。通常の培地(例えば、20%FBSを含むα-MEM培地)で培養された休眠小細胞は、いくつかの態様では成長も拡大もせず、細胞コロニーに発達しない。
【0106】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される休眠小細胞から誘導される細胞コロニーを単離する方法が本明細書で提供される。例えば、クローニングシリンダーを使用して細胞コロニーを拾い上げることができる。あるいは、細胞コロニーを、トリプシン処理し、細胞培養プレート/皿からコロニーを剥離することによって、単離することができる。他の方法を使用して細胞コロニーを単離することもできることを理解すべきである。単離幹細胞コロニー中の幹細胞の少なくとも60%、あるいは少なくとも70%、あるいは少なくとも80%、あるいは少なくとも95%、あるいは少なくとも99%がCD34/CD45であることが(例えば、FACSによって)同定されている。一態様では、単離幹細胞コロニー中の幹細胞の少なくとも90%がCD34/CD45である。
【0107】
本明細書に開示される単離コロニーから活性化幹細胞の集団を精製する方法も提供される。一態様では、単離幹細胞コロニー中の細胞の少なくとも約60%、あるいは少なくとも約70%、あるいは少なくとも約80%、あるいは少なくとも約90%、あるいは少なくとも約95%、あるいは少なくとも約99%、あるいは少なくとも約99.9%がCD34/CD45である。いくつかの実施形態では、コロニー中の細胞が、CD34/CD45細胞に加えて、CD34/CD45、CD34/CD45および/またはCD34/CD45であり得る細胞の亜集団を含み得る。一態様では、単離幹細胞コロニー中の細胞の約40%未満、あるいは約30%未満、あるいは約20%未満、あるいは約10%未満、あるいは約5%未満、あるいは約2%未満、あるいは約1%未満がCD34/CD45、CD34/CD45、CD34/CD45またはこれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、細胞の総数に基づいて、精製細胞集団の約40%未満、あるいは約30%未満、あるいは約20%未満、あるいは約10%未満、あるいは約5%未満、あるいは約2%未満、あるいは約1%未満、あるいは約0.1%未満がCD34/CD45ではない。いくつかの実施形態では、MACSまたはFACSなどの方法を使用して、活性化幹細胞から特定の集団または濃縮細胞集団を精製することができる。いくつかの実施形態では、他の方法を使用して、活性化幹細胞から特定の集団または濃縮細胞集団を精製することができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、活性化幹細胞の単一細胞希釈を行い、次いで、本明細書に開示される活性化/発達系で培養することができる。一定期間(例えば、約10~20日間)後に、単一細胞から誘導された1つまたは複数のコロニーを発達させることができる。単一細胞から誘導される細胞コロニーは、胚様体様(EB様)構造を有する(図6、D)。一態様では、単一細胞コロニー中の細胞の実質的に100%がCD34/CD45である。一態様では、単一細胞コロニー中の細胞の少なくとも約90%、あるいは少なくとも約95%、あるいは少なくとも約99%、あるいは少なくとも約99.9%がCD34/CD45である。
【0109】
本明細書に開示される単離細胞コロニーまたは単一細胞コロニーからCD34/CD45幹細胞集団を精製する方法も本明細書で提供される。一実施形態では、CD34/CD45幹細胞集団を、例えばMACSまたはFACSを使用して精製することができる。精製方法は、以下の実施例2で提供される。他の方法を使用して細胞コロニーからCD34/CD45幹細胞集団を精製することもできることを理解すべきである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法または他の方法を使用して、コロニーから他の細胞集団を精製することができる。
【0110】
精製CD34/CD45幹細胞は、直径が約20~30μmで、休眠小細胞よりも大きい。例えば、精製CD34/CD45幹細胞は、直径が20μm未満、あるいは約20μm、あるいは約22μm、あるいは約24μm、あるいは約26μm、あるいは約28μm、あるいは約30μm、あるいは30μm超であり得る。精製CD34/CD45幹細胞は、約5:1、あるいは約6:1、あるいは約7:1、あるいは約8:1、あるいは約9:1の比較的高い核-細胞質比でさらに特徴付けられる。一態様では、精製CD34/CD45幹細胞の核が、総細胞容積の少なくとも約50%、あるいは少なくとも約60%、あるいは少なくとも約70%、あるいは少なくとも約80%、あるいは少なくとも約90%である。精製CD34/CD45幹細胞は、通常の細胞培養培地(例えば、20%FBSを含むα-MEM)中、インビトロで迅速に(例えば、約26時間の倍加時間で)拡大することができる。他の態様では、精製CD34/CD45幹細胞の倍加時間が他の培養条件で変化し得る。いくつかの態様では、精製CD34/CD45幹細胞が、接着細胞培養物および/または懸濁細胞培養物としてインビトロで培養され得る。精製CD34/CD45幹細胞が細胞培養皿/プレートに接着し、コンフルエントに達すると、細胞配置は上皮細胞培養物に似ている(図6、AおよびB)。
【0111】
一態様では、精製CD34/CD45幹細胞を、以下の表2に列挙されるマーカーによってさらに分析する。いくつかの実施形態では、精製CD34/CD45幹細胞が、表2で同定されるマーカーのうち1つまたは複数を発現する。一態様では、表2で同定されるマーカーのうち2つ、あるいは3つ、あるいは4つ、あるいは5つが存在し、全てのマーカーが存在するまで増加する。他の確認抗原を表2に例示し、以下に記載する。
【表2】
【0112】
いくつかの態様では、精製CD34/CD45幹細胞が、初期マーカー(例えば、Oct4、Sox2、Nanog、Vasa、SSEA1)、造血マーカー(例えば、CD34、CD14、CD19、CD117)、MSCマーカー(例えば、CD44、CD73、Thy1.1(CD90.1)、CD105、CD106、Sca1)、上皮マーカー(例えば、ケラチン上皮、CK18、CK19)、神経幹細胞マーカー(例えば、ネスチン)、骨芽細胞マーカー(例、オステオカルシン)、内皮マーカー(例えば、CD31)、細胞遊走マーカー(例えば、CD184)、細胞インテグリンマーカー(例えば、CD29)、多型幹細胞(例えば、ニューロン、HSC、内皮)マーカー(例えば、CD133)の群の1つまたは複数のマーカーを発現し得る。
【0113】
いくつかの実施形態では、精製CD34/CD45幹細胞集団が、Oct4、Nanog、ABCG2、CD117、CD29、CD44、CD73、CD90.1、CD105、Sca1、CD31、CD184、ケラチン上皮、ネスチンおよびオステオカルシンの1つまたは複数のマーカーを発現する。一態様では、マーカーの2つ、あるいは3つ、あるいは4つ、あるいは5つ、ならびに全てのマーカーOct4、Nanog、ABCG2、CD117、CD29、CD44、CD73、CD90.1、CD105、Sca1、CD31、CD184、ケラチン上皮、ネスチンおよびオステオカルシンまで存在する。一態様では、精製CD34/CD45幹細胞が、少なくともABCG2、Oct4、Nanog、CD117、CD29、CD44、Sca1、CD31、CD184、CD133、ケラチン上皮、ネスチンおよびオステオカルシンを発現する。一態様では、精製CD34/CD45幹細胞が、少なくともABCG2、Oct4、Sox2、CD19、CD29、CD90、CD31、CD184、CK18、ネスチンおよびオステオカルシンを発現する。一態様では、精製CD34/CD45幹細胞が、少なくともABCG2、SSEA1、CD14、CD29、CD105、CD31、CD184、CK19、ネスチンおよびオステオカルシンを発現する。一態様では、精製CD34/CD45幹細胞が、少なくともABCG2、Nanog、CD117、CD29、CD90、CD31、CD184、ケラチン上皮、ネスチンおよびオステオカルシンを発現する。一態様では、精製CD34/CD45幹細胞が、少なくともABCG2、Nanog、CD117、CD90、CD31、CD133、ネスチンおよびオステオカルシンを発現する。
【0114】
いくつかの実施形態では、精製CD34/CD45幹細胞が、Linであるとさらに特徴付けられる。いくつかの実施形態では、精製CD34/CD45幹細胞が、CD3、CD4、CD8a、CD11b、CD13、CD45、LinおよびCD140aのうち1つまたは複数が陰性であると同定される。いくつかの実施形態では、精製CD34/CD45幹細胞が、CD3、CD4、CD8a、CD11b、CD13、CD45、LinおよびCD140aの少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つ、あるいは少なくとも4つ、あるいは少なくとも5つ、または全部までを発現しない。
【0115】
初期胚段階マーカー(例えば、Oct4、Sox2、Nanog、Vasa、SSEA1)の発現は、精製CD34/CD45幹細胞が初期段階にあることを示す。ケラチン上皮マーカーの発現も、精製CD34/CD45幹細胞で観察される。ケラチン上皮マーカーは、初期胚段階のエピブラスト細胞で発現されるが、成体血液細胞では発現されないことが知られている。
【0116】
4.活性化幹細胞の分化
精製CD34/CD45幹細胞集団を、その多能性、例えば適切な培養条件および培地を使用して3つ全ての胚葉(外胚葉、中胚葉および内胚葉)の細胞型に分化する能力によって同定することもできる。細胞の分化状態の確認は、当業者に知られている細胞型特異的マーカーの同定によって行うことができる。
【0117】
本開示は、精製CD34/CD45幹細胞集団の外胚葉系統への分化を誘導する方法を提供する。精製CD34/CD45幹細胞集団から誘導される外胚葉系統の分化細胞の組成物または集団も提供される。一態様では、精製CD34/CD45幹細胞が、外胚葉系統の細胞型の少なくとも1つに分化することができる。例えば、精製CD34/CD45幹細胞は、神経細胞および上皮細胞に分化することができる。別の態様では、精製CD34/CD45幹細胞が、外胚葉系統の細胞型の少なくとも2つ、少なくとも3つおよび全部までに分化することができる。外胚葉系統に分化する細胞の非限定的な例としては、それだけに限らないが、上皮細胞、神経原性細胞、および神経膠原性細胞が挙げられる。
【0118】
他の態様では、本明細書に開示される休眠小細胞から誘導される活性化幹細胞集団の外胚葉系統への分化を誘導する方法も提供される。本明細書に開示される休眠小細胞から誘導される活性化幹細胞集団から誘導される外胚葉系統の分化細胞の組成物または集団も提供される。他の態様では、本明細書に開示される休眠小細胞から誘導される活性化幹細胞集団の種々の亜集団の外胚葉系統への分化を誘導する方法も提供される。本明細書に開示される休眠小細胞から誘導される活性化幹細胞集団の種々の亜集団から誘導される外胚葉系統の分化細胞の組成物または集団も提供される。他の態様では、本明細書に開示される活性化幹細胞の亜集団の外胚葉系統への分化を誘導する方法も提供される。本明細書に開示される活性化幹細胞の亜集団から誘導される外胚葉系統の分化細胞の組成物または集団も提供される。
【0119】
本開示は、精製CD34/CD45幹細胞集団の中胚葉系統への分化を誘導する方法を提供する。精製CD34/CD45幹細胞集団から誘導される中胚葉系統の分化細胞の組成物または集団も提供される。別の態様では、精製CD34/CD45幹細胞が、中胚葉系統の細胞型の少なくとも1つに分化することができる。例えば、精製CD34/CD45幹細胞は、心筋細胞および骨芽細胞に分化することができる。別の態様では、精製CD34/CD45幹細胞が、中胚葉系統の細胞型の少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つ、あるいは少なくとも4つおよび全部までに分化することができる。中胚葉系統に分化する細胞の非限定的な例としては、それだけに限らないが、脂肪生成細胞、平滑筋原性細胞、軟骨形成細胞、心原性細胞、皮膚原性細胞、造血細胞、血液新生細胞、筋原性細胞、腎原性細胞、尿生殖原性細胞、骨原性細胞、心膜原性細胞または間質細胞が挙げられる。
【0120】
他の態様では、本明細書に開示される休眠小細胞から誘導される活性化幹細胞集団の中胚葉系統への分化を誘導する方法も提供される。本明細書に開示される休眠小細胞から誘導される活性化幹細胞集団から誘導される中胚葉系統の分化細胞の組成物または集団も提供される。他の態様では、本明細書に開示される休眠小細胞から誘導される活性化幹細胞集団の種々の亜集団の中胚葉系統への分化を誘導する方法も提供される。本明細書に開示される休眠小細胞から誘導される活性化幹細胞集団の種々の亜集団から誘導される中胚葉系統の分化細胞の組成物または集団も提供される。他の態様では、本明細書に開示される活性化幹細胞の亜集団の中胚葉系統への分化を誘導する方法も提供される。本明細書に開示される活性化幹細胞の亜集団から誘導される中胚葉系統の分化細胞の組成物または集団も提供される。
【0121】
本開示は、精製CD34/CD45幹細胞集団の内胚葉系統への分化を誘導する方法を提供する。精製CD34/CD45幹細胞集団から誘導される内胚葉系統の分化細胞の組成物または集団も提供される。一態様では、精製CD34/CD45幹細胞が、内胚葉系統の細胞型の少なくとも1つに分化することができる。例えば、精製CD34/CD45幹細胞は、肝細胞に分化することができる。別の態様では、精製CD34/CD45幹細胞が、内胚葉系統の細胞型の少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つ、あるいは少なくとも4つ、あるいは少なくとも5つおよび全部までに分化することができる。内胚葉系統に分化する細胞の非限定的な例としては、それだけに限らないが、膵臓、肝臓、肺、胃、腸および甲状腺の細胞が挙げられる。
【0122】
他の態様では、本明細書に開示される休眠小細胞から誘導される活性化幹細胞集団の内胚葉系統への分化を誘導する方法も提供される。本明細書に開示される休眠小細胞から誘導される活性化幹細胞集団から誘導される内胚葉系統の分化細胞の組成物または集団も提供される。他の態様では、本明細書に開示される休眠小細胞から誘導される活性化幹細胞集団の種々の亜集団の内胚葉系統への分化を誘導する方法も提供される。本明細書に開示される休眠小細胞から誘導される活性化幹細胞集団の種々の亜集団から誘導される内胚葉系統の分化細胞の組成物または集団も提供される。他の態様では、本明細書に開示される活性化幹細胞の亜集団の内胚葉系統への分化を誘導する方法も提供される。本明細書に開示される活性化幹細胞の亜集団から誘導される内胚葉系統の分化細胞の組成物または集団も提供される。
【0123】
5.使用方法
本開示は、本明細書に開示される活性化幹細胞を使用して、それを必要とする対象の疾患を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される活性化幹細胞から誘導される分化細胞を使用して、それを必要とする対象の疾患を処置する方法が提供される。再生医療には、損傷した細胞、組織または器官の修復、交換または再生を助けるよう設計された治療法が含まれる。本明細書に開示される方法は、生成医療における細胞療法に使用され得る。
【0124】
いくつかの態様では、本明細書に開示される方法および組成物を使用して、変性疾患、増殖性障害、遺伝性疾患、損傷および/または臓器不全などの疾患または状態を処置することができる。疾患または状態の非限定的な例としては、神経変性障害、神経障害、例えば認知障害および気分障害、聴覚疾患、例えば難聴、骨粗鬆症、心血管疾患、糖尿病、代謝障害、呼吸器疾患、薬物感受性状態、眼疾患、例えば黄斑変性、免疫学的障害、血液疾患、腎臓病、増殖性障害、遺伝性障害、外傷、脳卒中、臓器不全または四肢の喪失が挙げられる。疾患の他の例としては、神経変性障害、神経障害、眼疾患、気分障害、呼吸器疾患、聴覚疾患、心血管疾患、免疫障害、血液疾患、代謝障害、腎臓病、増殖性障害、遺伝性障害、自己免疫疾患、薬物感受性状態、認知障害、うつ病、難聴、骨粗鬆症、糖尿病、黄斑変性、肥満、アレキサンダー病、アルパース病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病、カナバン病、コケイン症候群、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、HIV関連認知症、ケネディ病、クラッベ病、レビー小体型認知症、マシャド・ジョセフ病、多発性硬化症、多系統萎縮症、ナルコレプシー、神経ボレリア症、パーキンソン病、ペリツェウス・メルツバッヘル病、ピック病、原発性側索硬化症、プリオン病、レフサム病、サンドホフ病、シルダー病、悪性貧血に続発する脊髄の亜急性連合変性症、統合失調症、脊髄小脳失調症、脊髄性筋萎縮症(SMA)、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー病、脊髄癆、後天性免疫不全、白血病、リンパ腫、過敏症(アレルギー)、重度の複合免疫不全、急性播種性脳脊髄炎、アジソン病、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、水疱性類天疱瘡、セリアック病、真皮筋炎、1型糖尿病、2型糖尿病、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギランバレー症候群、橋本病、特発性血小板減少性紫斑病、紅斑性狼瘡、重症筋無力症、天疱瘡、悪性貧血、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ、シェーグレン症候群、側頭動脈炎(temporal arteritis)、血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、動脈瘤、狭心症、不整脈、アテローム性動脈硬化症、心筋症、石灰大動脈弁疾患(CAVD)、脳血管障害(脳卒中)、脳血管疾患、先天性心疾患、うっ血性心不全、心筋炎、弁疾患冠動脈、心筋症、拡張機能障害、心内膜炎、高血圧、肥大型心筋症、僧帽弁逸脱、心筋梗塞、静脈血栓塞栓症、酸性リパーゼ病、アミロイドーシス、バース症候群、ビオチニダーゼ欠損症、カミチンパルミトイルトランスフェラーゼ欠損症II型、橋中心髄鞘崩壊症、筋ジストロフィー、ファーバー病、グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠損症、ガングリオシドーシス、トリメチルアミン尿症、レッシュ・ナイハン症候群、脂質蓄積症、代謝性ミオパチー、メチルマロン酸尿症、ミトコンドリア筋症、ムコ多糖症、ムコリピドーシス、ムコリピドーシス、ムコ多糖症、多発性CoAカルボキシラーゼ欠損症、非ケトーシス型高グリシン血症、ポンペ病、プロピオン酸血症、糖原病I型、尿素サイクル異常症、高シュウ酸尿症、シュウ酸症、癌腫、肉腫、胚細胞腫瘍、芽球性腫瘍、前立腺がん、肺がん、結腸直腸がん、膀胱がん、皮膚黒色腫、乳がん、子宮内膜がんおよび卵巣がんが挙げられる。
【0125】
一態様では、本明細書に開示される活性化幹細胞またはそれから誘導される分化細胞を使用して、それを必要とする対象の皮膚創傷を処置する方法が提供される。一態様では、本明細書に開示される活性化幹細胞またはそれから誘導される分化細胞を使用して、それを必要とする対象の肝損傷を処置する方法が提供される。一態様では、本明細書に開示される活性化幹細胞またはそれから誘導される分化細胞を使用して、それを必要とする対象の骨損傷または状態(例えば、関節炎、骨粗鬆症等)を処置する方法が提供される。一態様では、本明細書に開示される活性化幹細胞またはそれから誘導される分化細胞を使用して、それを必要とする対象の神経損傷またはニューロン変性疾患を処置する方法が提供される。一態様では、本明細書に開示される活性化幹細胞またはそれから誘導される分化細胞を使用して、それを必要とする対象の心組織損傷または心不全を処置する方法が提供される。一態様では、本明細書に開示される活性化幹細胞またはそれから誘導される分化細胞を使用して、それを必要とする対象の慢性疾患、例えば糖尿病を処置する方法が提供される。
【0126】
一態様では、本明細書に開示される活性化または分化細胞の自家移植の方法が提供される。一態様では、本明細書に開示される活性化または分化細胞の同種移植の方法が提供される。一態様では、本明細書に開示される活性化または分化細胞の同系移植の方法が提供される。
【0127】
実施例
実施例1
血液からの休眠小細胞の単離
以下の方法を使用して、マウスの末梢血から本明細書に開示される休眠小細胞を単離した。末梢血を、4~10週齢で収集されたFVB-Tg(CAG-luc-eGFP)L2G85Chco/J(L2G)雄または雌マウス(The Jackson Laboratory、Sacramento、CA、http://www.jax.org)から回収した。luc-eGFP導入遺伝子を、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)を発現するCAGプロモーター(ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンハイブリッドプロモーターを備えたヒトサイトメガロウイルス最初期プロモーターエンハンサー)によって指示する。末梢血を回収するため、3%イソフルラン(Butler Schein Animal Health、Encinitas、CA)が供給されたチャンバーでマウスを麻酔し、次いで、眼窩後静脈を通して100μlの生理食塩水に希釈した4Uのヘパリンを注射した。5分後、血液を各マウスの眼窩後洞を通して回収し、100μlの生理食塩水中1Uのヘパリンを含有する1.5mlのマイクロ遠心管に入れた。各マウスから回収した血液は、常に約1ml~1.5mlであった。
【0128】
赤血球を溶解するために、1mlの回収血液を9mlの溶解バッファー(例えば、8.3g/LのNHCl、1g/LのKHCOおよび3.7g/LのEDTA)と混合した。次いで、懸濁液を3000xgで4℃で10分間遠心分離した。ペレットを洗浄し、3mlのPBSに再懸濁した。血小板を枯渇させるために、細胞懸濁液を、1:4.4希釈のPBSを含むOptiprep密度勾配培地(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)を含有するチューブに移して密度1.063にした。有核細胞懸濁液を回収し、350gで4℃で15分間遠心分離した。上清を除去し、ペレットをさらに分析するために10mlのPBSまたは培養培地(例えば、20%FBSを含むα-MEM)に再懸濁した。
【0129】
細胞計数を行うと、再懸濁ペレット中の細胞数は800000~1000000個/mlの間であった。壊れた幹細胞の割合は25%未満であった。単離幹細胞を電子顕微鏡(EM)で観察した。単離休眠小細胞の直径は5μm未満であった。例えば、単離休眠小細胞の直径は約2.5μmと測定された(図1)。単離幹細胞の核酸を、Hoechst 33342を使用して染色した。結果は、単離幹細胞が非常に高い核-細胞質比、例えば約9:1を有することを示した(図2)。通常の培地(例えば、20%FBSを含むα-MEM)で5~10日間培養した場合、単離休眠小細胞は成長せず、Hoechst 33342核酸染色は細胞膜の外側に拡散しなかった(図2)。免疫蛍光(IF)および蛍光活性化細胞選別(FACS)分析を使用して、CD34/CD45およびABCG2図3Aおよび図3B)として特徴付けられた、単離休眠小細胞によって発現される細胞マーカーを試験した。
【0130】
Trizol試薬法を使用して、単離休眠小細胞と対照細胞(野生型肝細胞)から全RNAを抽出し、次いで、RNaseフリーDNaseで処置して汚染されたDNAを除去した。Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Genomics)のマイクロフルイディクスベースのプラットフォームを使用して全RNAを分析して、sRNAおよびrRNAのレベルを検出および分析した。結果は、休眠小細胞の単離集団では、肝細胞細胞株(例えば、AML12)の約1:10の比と比較して、sRNAとrRNAの比が約22:1であることを示した(図4)。COX IV(ミトコンドリア内膜タンパク質)、カルネキシン(ER内在分子シャペロン)およびRPS3(リボソームマーカー)のレベルも試験した。結果は、単離休眠小細胞が非常に低レベルのCOX IVおよびカルネキシンを発現し、RPS3のレベルが最小であることを示した。結果は、単離幹細胞が休眠状態にあることを示した。
【0131】
休眠小細胞を、FACSを介して種々の幹細胞マーカーの発現についても試験した。結果は、休眠小細胞が、CD34およびCD45以外に、マーカーCD44、CD150、Sca1、c-kit、Thy1.1(CD90.1)、Oct 4、SSEA1、Nanog、Vasa、CD133およびCD105のいくつかまたは全てを発現していることを示した。休眠小細胞は、Linが陰性であるとさらに特徴付けられた。さらに、休眠小細胞は、CD41、CD184およびE-カドヘリンのいくつかまたは全部を発現しなかった。
【0132】
実施例2
休眠小細胞の活性化およびインビトロでの発達
以下の方法を使用して、上記の実施例1に記載される血液から得られた休眠小細胞を活性化および培養した。
【0133】
インビトロで休眠小細胞を活性化および培養するために、初代肝細胞、ヒト肝芽腫(HepG2)細胞、肝細胞細胞株(例えば、AML12、HepaRG等)およびマウス胚線維芽細胞(MEF)細胞株のうち1つまたは複数を含む材料を使用して、活性化/発達系を調製した。他の試薬および因子を活性化/発達系に添加してもよい。活性化/発達系は、Transwellsを使用した共培養系であってもよいし、以下に記載される馴化培地を使用してもよい。
【0134】
インビトロでの活性化
共培養系については、上記の細胞/細胞株のうち1つまたは複数を含む細胞または細胞混合物を調製した。例えば、細胞混合物は、細胞の総数に基づいて、約65~90%の上記の肝細胞細胞株および約35~10%の初代肝細胞を含んでいた。細胞混合物をマイトマイシンCで2時間処置して、細胞を有糸分裂的に不活性化した。次いで、細胞混合物を、10%FBSを含むDMEM/F12の6ウェルプレートに接種した。接種約16時間後に、細胞がウェルに接着し、約80%コンフルエントになった。次いで、単離休眠小細胞をTranswell(24mmインサート、Corning、Corning、ニューヨーク)の上部チャンバーに入れ、20%FBSを含むα-MEMの共培養培地中で上記の細胞混合物と共培養した。単離休眠小細胞を、Transwell膜(0.4μm孔径)によって不活性化細胞混合物から分離した。約10~20日間、上下両方のチャンバーで同じ培養培地を使用し、1日おきに交換した。
【0135】
あるいは、インビトロで単離休眠小細胞を培養するために使用することができる馴化培地を調製した。例えば、上記の細胞または細胞混合物を、10%FBSを含むDMEM培地に懸濁し、細胞培養皿に播種した。2日毎に培地を細胞培養皿から回収し、次いで、細胞が100%コンフルエンスに達するまで新しい培地を細胞培養皿に添加した。異なる時間に回収した培地を混合することができ、短期貯蔵の場合は-20°Cで、長期貯蔵の場合は-80°Cで貯蔵することができる。使用前に、馴化培地を3000xgで遠心分離して、培地中の残りの細胞をペレット化した。馴化培地を0.22μmフィルターで濾過して、残りの細胞を除去することもできる。次いで、馴化培地を通常の培養培地(例えば、20%FBSを含むα-MEM)と約1:3~約3:1の比(v/v)で混合した。単離休眠小細胞を、上記の培地混合物に穏やかに再懸濁し、次いで、培養皿またはプレートに播種した。培地を1日おきに交換してもよい。細胞培養物を、細胞成長および細胞コロニーの形成について、顕微鏡下で毎日観察した。
【0136】
活性化幹細胞を、上記の活性化/発達系で4~12時間培養した後、種々のマーカーの発現について試験した。未分化細胞のマーカーであり、休眠小細胞では発現されないABCG2が、活性化幹細胞で発現されることが観察された(図3A)。RNA分析により、活性化幹細胞における小RNAとリボソームRNAの比が約1:6であり、休眠小細胞における比よりも有意に低いことが示された(図4)。活性化幹細胞を活性化/発達系で15日間まで培養すると、活性化幹細胞のHoechst33342核酸染色が細胞膜の外側に徐々に拡散することが観察された(図2)。活性化幹細胞のサイズも、休眠小細胞よりも大きくなった。活性化幹細胞が、以下の表3に示されるように、高レベルのCOX IV、RPS3およびカルネキシンを発現することがさらに示された。ABCG2の発現は、活性化幹細胞が未分化幹細胞であることを示した。ミトコンドリアマーカーであるCOX IVの発現上昇は、休眠小細胞が覚醒したことを示した。リボソームRNA(rRNA)マーカーであるRPS3の高発現は、細胞の代謝が活発であることを示した。ERマーカーであるカルネキシンの発現は、活性化幹細胞の輸送系が忙しいことを示した。これらの結果は、以前は休眠状態であった幹細胞が活性化/発達系で活性化され、細胞機能および活動が再開したことを示した。
【表3】
【0137】
FACSを使用して上記の活性化幹細胞のマーカーを同定した。活性化/発達系の活性化幹細胞は、CD34/CD45、CD34/CD45、CD34/CD45および/またはCD34/CD45である亜集団に特徴付けられた。
【0138】
活性化幹細胞の亜集団の濃縮および特徴付け
以下の方法を使用して、CD34である活性化幹細胞が濃縮された亜集団を得た。上記の共培養系で単離休眠小細胞を共培養した2週間後、CD34細胞画分を、製造業者(Miltenyi Biotec Inc.San Diego、CA)によって推奨されるプロトコルに従ってMACSによって濃縮した。手短に言えば、トリプシン処理細胞を抗CD34(ラット)抗体と30分間インキュベートし、引き続いて抗ラットマイクロビーズと4℃で15分間インキュベートした。PBSで洗浄した後、細胞を500μlの分離バッファーに再懸濁し、MACSカラム(Miltenyi Biotec)にアプライした。濃縮および拡大された細胞を、FACSによってCD34陽性ならびに他の表面マーカー(例えば、CD45、CD44、CD29、CD38、CD3、Lin、Sca-1、Thy1.1、c-kit)について分析した。アイソタイプIgGを陰性対照として使用した。FlowJo(Tree Star、Ashland、オレゴン)を使用してデータを分析した。あるいは、FACSを使用して、1つまたは複数の特定のマーカーを有する細胞の亜集団を選別および単離することもできた。同様の方法を使用して、1つまたは複数の他のマーカーで特徴付けられた細胞の濃縮亜集団、例えばCD45細胞の亜集団、CD34/CD45細胞の亜集団、CD34/CD45細胞の亜集団、CD34/CD45細胞の亜集団、またはCD34/CD45細胞の亜集団を得ることができる。
【0139】
免疫蛍光染色
標準的な手順を使用して間接免疫蛍光染色を行った。手短に言えば、厚さ5μmの再水和パラフィンまたは固定凍結組織切片を1%BSA/PBSでブロッキングし(30分)、PBSで3回洗浄した。切片を特定の一次抗体および蛍光コンジュゲート二次抗体で染色した。試料を、シーラントを含有するDAPI(4,6-ジアミノ-2-フェニルインドール二塩酸塩、Vector Laboratories)でマウントした。マウスIgGおよびウサギIgG抗体を陰性対照として使用した。染色した切片をLeica DMRA顕微鏡で観察した。
【0140】
細胞コロニーの単離および精製
単離休眠小細胞を活性化/発達系で10~20日間培養し、顕微鏡下で1つまたは複数の細胞コロニーを観察した(図5)。次いで、クローニングシリンダーを使用して、またはコロニーをトリプシン処理および剥離することによって、細胞コロニーを単離した。FACS分析により、単離コロニーの幹細胞の少なくとも90%がCD34/CD45であることが示された(図7)。CD34/CD45細胞が濃縮された亜集団を、製造業者(Miltenyi Biotec Inc.San Diego、CA)によって推奨されるプロトコルに従って、MACSによって単離細胞コロニーから精製した。例えば、単離コロニーの細胞を抗CD45抗体と30分間インキュベートし、引き続いて抗ラットマイクロビーズと4℃で15分間インキュベートした。PBSで洗浄した後、細胞を500μlの分離バッファーに再懸濁し、MACSカラム(Miltenyi Biotec Inc.San Diego、CA)にアプライした。CD45枯渇細胞集団を回収し、抗CD34抗体と30分間さらにインキュベートし、引き続いて抗ラットマイクロビーズと4℃で15分間インキュベートした。PBSで洗浄した後、細胞を500μlの分離バッファーに再懸濁し、MACSカラムにアプライした。CD34細胞集団を回収し、これはCD34/CD45として特徴付けられた。あるいは、単離コロニーの細胞を、抗CD34および抗CD45抗体で標識した。次いで、蛍光活性化細胞選別(FACS)を行って、CD34/CD45細胞集団を選別および回収した。
【0141】
精製CD34/CD45幹細胞は、顕微鏡で観察すると、概ね紡錘形または卵形であり、核-細胞質比が高く(例えば、約5~8:1)(図6、AおよびB)、直径が約20~30μmであった。精製幹細胞はGFPを発現し(図6、A)、20%FBSを含むα-MEM中で迅速に(例えば、約26時間の倍加時間で)拡大することができた。精製幹細胞は、接着細胞培養物および/または懸濁細胞培養物でインビトロで培養され得る。細胞培養皿/プレートに接着した精製幹細胞がコンフルエントに達すると、細胞配置は上皮細胞培養物に似ていた(図6、B)。活性化幹細胞の単一細胞希釈を行った。上記の馴化培地で培養すると、単一細胞から生じたコロニーを得ることができ、これは胚様体様(EB様)構造を有していた(図6、CおよびD)。
【0142】
免疫蛍光(IF)染色を使用して、CD34/CD45細胞集団を幹細胞マーカーについてさらに試験した。結果は、精製細胞集団がまた、1つまたは複数の初期マーカー(例えば、Oct4、Sox2、Nanog、Vasa、SSEA1)、造血マーカー(例えば、CD34、CD14、CD19、CD117)、MSCマーカー(例えば、CD44、CD73、Thy1.1(CD90.1)、CD105、CD106、Sca1)、上皮マーカー(例えば、ケラチン上皮、CK18、CK19)、神経幹細胞マーカー(例えば、ネスチン)、骨芽細胞マーカー(例、オステオカルシン)、内皮マーカー(例えば、CD31)、細胞遊走マーカー(例えば、CD184)、細胞インテグリンマーカー(例えば、CD29)、多型幹細胞(例えば、ニューロン、HSC、内皮)マーカー(例えば、CD133)を発現することも示した。精製細胞集団は、CD3、CD4、CD8a、CD11b、CD13およびCD140aのうち1つまたは複数が陰性であるとさらに特徴付けられた。
【0143】
実施例3
活性化幹細胞の分化の誘導
以下の方法を使用して、実施例2で論じられる活性化幹細胞の分化を誘導した。コロニーからの精製CD34/CD45幹細胞集団の多能性分化能を試験した。
【0144】
外胚葉
ニューロン誘導体(例、ニューロン、オリゴデンドロサイト、グリア細胞)への分化の可能性を試験するために、精製CD34/CD45幹細胞(24ウェルプレートで3000個/ウェル)を細胞培養皿/プレートに播種し、10ng/ml rhEGF、20ng/ml FGF-2および20ng/ml NGF(全ての成長因子がR&D Systems、Minneapolis、MN、米国製)を補足したNeuroCult Basal Medium(Stem Cell Technologies、Vancouver、BC、カナダ)でインキュベートした。ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を陰性対照群で使用した。培地を2日毎に交換した。ニューロン塊およびニューロスフェアが、約2週間後に形成された(図8、AおよびE~G)。神経細胞特異的マーカーネスチンおよびβ3-チューブリンの発現が分化細胞で観察された(図8、B~D)。ネスチンおよびβ3-チューブリンが陽性である神経細胞を含む神経細胞の束の形成も観察された(図8、H)。結果は、精製CD34/CD45幹細胞が外胚葉層由来の神経細胞に分化することができることを示した。
【0145】
皮膚も外胚葉層に由来する。IF染色を使用して、活性化幹細胞の表皮マーカーを試験した。精製CD34/CD45幹細胞は、ケラチン上皮マーカー、CK18およびCK19を発現すると特徴付けられた(図9)。パンケラチン(pan-keratin)の発現(抗パンサイトケラチン抗体、マウスモノクローナルC-11を使用)も精製CD34/CD45幹細胞で観察され、CD34染色と重複していた(図9)。EpCam、上皮細胞接着分子も、精製CD34/CD45幹細胞で発現しており、GFPシグナルと重複していた。よって、結果は、精製CD34/CD45幹細胞が上皮細胞マーカーを発現し、皮膚細胞に分化する可能性を有していることを示した。
【0146】
中胚葉
骨芽細胞(中胚葉)への分化の可能性を試験するために、精製CD34/CD45幹細胞(1皿当たり1000個、3000個および5000個)を細胞培養皿に播種し、骨芽細胞分化培地(ODM)で2週間インキュベートした。ODMは、10%FBS、1Xペニシリン-ストレプトマイシン、0.1μMデキサメタゾン、10mM β-グリセロールリン酸、50μMアスコルビン酸を含有するα-MEMを含み得る。5000個の精製CD34/CD45幹細胞を、陰性対照群の10%FBSを含有するα-DMEMに播種した。培地を2日毎に交換した。2週間後、皿を洗浄し、10%ホルマリンで固定し、次いで、骨組織特異的染料であるアリザリンレッドで染色した。結果は、ODMで培養したCD34/CD45幹細胞の皿に骨化中心様構造の形成およびアリザリンレッドの陽性染色を示した(図10、AおよびB)。対照群ではこのような骨化構造は形成されず、アリザリンレッド染色は陰性であった(図10、AおよびB)。よって、結果は、精製CD34/CD45幹細胞が中胚葉層からの細胞である骨芽細胞に分化することができることを示した。
【0147】
中胚葉の別の細胞型である心筋細胞への分化の可能性をさらに試験するために、精製CD34/CD45幹細胞(約10000個)を細胞培養皿に播種し、心筋細胞分化培地(CDM)で2週間インキュベートした。20%FBSを含有するα-DMEMを陰性対照群で使用した。培地を2日毎に交換した。2週間後、細胞をCD34、デスミン(筋幹細胞マーカー)、コネキシン43(心筋細胞特異的マーカー)、およびトロポニンI(心筋細胞特異的マーカー)で染色した。マーカーデスミン、コネキシン43およびトロポニンIの全てが陽性であり、CD34と重複していた(図11)。よって、結果は、精製幹細胞が、中胚葉層からの細胞である心筋細胞に分化することができることを示した。
【0148】
内胚葉
肝細胞(内胚葉)への分化の可能性を試験するために、精製幹細胞を細胞培養皿に播種し、肝細胞分化培地(HDM)で2週間インキュベートした。20%FBSを含有するα-DMEMを陰性対照群で使用した。培地を2日毎に交換した。2週間後、細胞をアルブミンおよびCK18(特定の肝細胞マーカー)、およびCK19(胆管上皮マーカー)で染色した。マーカーアルブミン、CK18およびCK19の全てが陽性であった(図12)。さらなる試験により、アルブミン染色がCD34染色と重複することが示された。よって、結果は、精製CD34/CD45幹細胞が肝細胞様および胆道様上皮細胞に分化することができることを示した。
【0149】
実施例4
皮膚創傷の処置
実施例2で論じられる活性化幹細胞の集団を使用して、以下の方法を使用して皮膚創傷を処置した。
【0150】
フィブリンゲル足場および3-D構築物の調製
フィブリノーゲンおよびトロンビンのストック溶液を解凍し、1.5mlチューブ内で最終濃度12.5mg/mlのフィブリノーゲンおよび2.5U/mlのトロンビンとCaCl(最終濃度、45mM)を混合することによって、フィブリンゲルを製作した。200μlの混合物を24ウェルプレートに穏やかに分注した。フィブリノーゲン内容物に、37℃で2時間、フィブリンゲル足場を形成させた。活性化幹細胞(例えば、濃縮CD34細胞集団、またはコロニーから精製されたCD34/CD45細胞集団、または他の亜集団)を、24ウェルプレート上のフィブリンゲル足場の上部に1ウェル当たり5×10個で播種し、次いで、1ウェルあたり2mlの1%熱不活性化ウシ胎児血清(FCS、BioWest)および1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)を含有するα-MEMで一晩培養した。次いで、細胞/足場3-D構築物を移植に備えた。実験の前に、フローサイトメトリーも行って、細胞/足場3-D構築物の培養細胞を特徴付けた。
【0151】
全層皮膚創傷の処置
皮膚調製後、20匹の10週齢野生型FVB雄マウスに、イソフルラン麻酔下で6mmの生検パンチ(Acuerm Inc.、Fort Lauderdale、FL)を使用して、中央背部皮膚に直径6mmの全層切除創傷をつけた。
【0152】
創傷収縮を阻害するために、厚さ1.6mmのシリコンシート(Press-to-Seal Silicone Sheet JTR-S-2.0、Grace Bio-Labs、Bend、OR)から作られたドーナツ型スプリント(内径10mm、外径14mm)を創傷領域の周囲に配置し、6-0ナイロン縫合糸(6-0Ethilon Nylon Suture、Ethicon LLC.、Cornelia、GA)を使用して、8つの断続縫合で固定した。次いで、上記の細胞/足場3-D構築物(約500000個細胞/単位)を創傷床に移植した(n=5)。幹細胞を含まないフィブリンゲル(足場のみ)も対照として創傷床に移植した(n=5)。整形滅菌プラスチックカバースリップ(Fischer Scientific、Pittsburgh、PA)をスプリントの上に置き、半密封包帯((Tegaderm Film 9506W、3M Health Care、St.Paul、MN)を動物の体幹周りに一周施用した。
【0153】
皮膚創傷治癒分析
創傷を生成した後、固定距離からデジタルカメラ(Sony cyber-shot DSC-TX7、ニューヨーク、NY、米国)を使用して創傷の写真画像を毎日撮影した。創傷面積の大まかな評価を得るために、元の創傷面積に対する現在の創傷の割合を計算することによって、創傷面積を分析した。創傷面積がゼロにほぼ等しくなったら、創傷を完全に閉じているとみなした。
【0154】
マウスを処置後15日目(D15)およびD23にCOによって安楽死させた。皮膚創傷領域および隣接組織(約2.5cm)を収集し、10%(v/v)緩衝ホルムアルデヒド中4°Cで16時間超固定した、または液体窒素で瞬間凍結し、次いでパラフィン包埋または凍結切片処理した。標本を厚さ5μmの切片にスライスし、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色して、局所細胞変性および炎症を調べた。マッソン三色コラーゲン染色を行って、創傷領域の組織線維症を評価した。考慮した組織学的パラメータは、創傷閉鎖率、再上皮化、真皮再生、線維性沈着および炎症であった。皮膚付属器の再生を、創傷床の毛包または皮脂腺の数を計数することによって評価した。いくつかのパラフィン皮膚切片(5μm)を、免疫組織化学(IHC)または免疫蛍光(IF)のためにさらに処理した。
【0155】
糖尿病性皮膚創傷モデル
糖尿病マウス(FVB(Cg)-Tg(Ins2-CALM1)26Ove Tg(Cryaa-TAg)1Ove/PneJ、Jackson Labs)を使用して、上記の細胞/足場3-D構築物の創傷治癒効果を試験した。皮膚調製後、12月齢の6匹の糖尿病マウスに、イソフルラン麻酔下で外科用ハサミを使用して、背部皮膚上に1.5cmx1.5cm全層皮膚創傷をつけた。次いで、上記の細胞/足場3-D構築物(約500000個細胞/単位)を創傷床に移植した。幹細胞を含まないフィブリンゲル(足場のみ)も対照として創傷床に移植した。創傷を生成した後、固定距離からデジタルカメラ(Sony cyber-shot DSC-TX7、ニューヨーク、NY、米国)を使用して創傷の写真画像を50日間毎日撮影した。創傷面積の大まかな評価を得るために、元の創傷面積に対する現在の創傷の割合を計算することによって、創傷面積を分析した。創傷面積がゼロにほぼ等しくなったら、創傷を完全に閉じているとみなした。
【0156】
マウスを処置後55日目(D55)にCOによって安楽死させた。皮膚創傷領域および隣接組織(約2.5cm)を収集し、10%(v/v)緩衝ホルムアルデヒド中4°Cで16時間超固定した、または液体窒素で瞬間凍結し、次いでパラフィン包埋または凍結切片処理した。標本を厚さ5μmの切片にスライスし、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色して、局所細胞変性および炎症を調べた。マッソン三色染色を行って、創傷領域の組織線維症を評価した。考慮した組織学的パラメータは、創傷閉鎖率、再上皮化、真皮再生、線維性沈着および炎症であった。結果はまた、再生された表皮層が滑らかであり、コラーゲンの分布が正常な皮膚の分布に類似していることを示した。皮下組織(例えば、脂肪組織)の構造および分布は明確で、正常な皮膚の構造と類似であった。筋組織の新生も観察された。
【0157】
統計分析
Java(登録商標)ベースの画像処理プログラムである画像分析ソフトウェア(ImageJ、米国国立衛生研究所、Bethesda、MD)を使用して、画像を分析して創傷閉鎖率の割合、瘢痕面積の割合を計算した。コラーゲン沈着分析は、ImageJの測定設定でカラーチャネルを分割する方法により、赤色領域(細胞構造領域)÷青色領域(コラーゲン沈着)に基づいた。対応のある両側スチューデントt検定を使用して2つの群を比較して統計分析を行った。p<0.05の値を統計学的に有意とみなした。
【0158】
結果
創傷治癒における活性化幹細胞の治療可能性を決定するために、半固体フィブリンゲル足場上に活性化幹細胞を含む三次元(3-D)構築物を作製した。構築物を、L2Gマウスからのドナー細胞と同じ系統バックグラウンドを有するFVBマウス上に作成された全層切除皮膚創傷に施用した。移植前の24時間、既製のフィブリンゲルに播種したGFP幹細胞は、細胞がしっかりと成長し、フィブリンゲル上でコンフルエントになることを示した。
【0159】
処置群(細胞/足場3-D構築物を含む)は、閉鎖時間、瘢痕面積および線維組織沈着の有意な減少を示した(図13)。形態学的画像分析により、3-D構築物による処置が、早くも創傷後3日目に創傷閉鎖を有意に改善し、創傷後6日目でより自明になることが明らかになった(図13、A)。累積画像分析により、対照群と比較して、処置後3、5、7および9日目に創傷治癒の統計学的に有意な改善が明らかになった。3-D構築物で処置した全ての創傷が10日目に閉鎖していたが、対照群の創傷は15日目まで開いていた(図13、A)。
【0160】
組織学的評価により、屠殺最終日(23日目)で、対照群と比較して処置群の動物の創傷で再上皮化の増強が起こったことが明らかになった。6日目で、創傷表面積または瘢痕領域が対照群と比較して有意に小さかった(図13、B)。処置群の創傷ではより高い細胞活性も観察され、これらの再生領域での細胞再生の増強が示唆された。全ての処置動物の皮膚が、表皮および真皮のほぼ正常な組織学的構造を示した(図14)。点線は創傷領域の輪郭を示した。3-D構築物が創傷表面にくっついていた。三色染色により、3-D構築物の下に多くの新生付属器が存在し、皮脂腺および毛包構造が創傷床に成長し、処置マウスの創傷領域に存在することが示された(図14)。
【0161】
糖尿病皮膚創傷モデルにおいて、結果は、細胞/足場3-D構築物で処置された糖尿病マウスの皮膚創傷がD16~D19で完全に閉鎖したことを示した(図15)。対照群(足場のみ)の皮膚創傷はD50まで閉鎖しなかった。組織学的評価により、屠殺最終日(55日目)で、対照群と比較して処置群のマウスの創傷で再上皮化の増強が起こったことが明らかになった(図16)。処置マウスの皮膚は、表皮層、皮下組織および筋組織を伴う、皮膚の正常な組織構造に近いものを示した。比較すると、対照群の創傷は、皮下組織および筋組織のないケラチン化表皮層によってのみ閉鎖された(図16)。
【0162】
実施例5
人工骨モデル
以下の方法を使用して、精製幹細胞を使用して、インビトロで人工骨組織を発達させた。精製多能性幹細胞を骨基質に播種し、骨芽細胞分化培地(ODM)を添加し、2週間培養した。2週間の最後に、ミネラル沈着が観察された(図17、A)。3週目に、いくつかの分化骨芽細胞が互いに結合して骨化中心様構造を形成した(図17、B、矢印で示す)。4週間後、骨組織が成長し、一次骨基質からおよびそれを超えて広がった(図17、C、点線より上)。結果は、精製幹細胞が骨組織に成長し、マトリックス上に人工骨を形成することができることを示した。
【0163】
実施例6
肝損傷の処置
実施例3に記載される精製CD34/CD45細胞集団を使用して、以下の方法を使用して肝臓損傷を処置した。
【0164】
肝臓損傷モデルを確立するために、20匹の8週齢成体レシピエント野生型FVBマウスに、オリーブ油で1:1希釈したCClの1回腹膜注射(1.2ml/kg)を行った。CCl投与の1日後、実験マウスを無作為に選択し、後眼窩洞を通して150μlの生理食塩水に懸濁させた2.5x10個の精製CD34/CD45細胞を含む1回の静脈注射を受けさせた(n=10)。対照マウスを、同じ経路で150μlの生理食塩水で処置した(n=10)。全てのマウスを、精製CD34/CD45細胞の移植後7日目に屠殺した。マウスの内臓を収集し、10%緩衝ホルマリンで固定した。肝臓組織試料を、急速凍結およびパラフィン包埋のために分離した。
【0165】
結果は、中心小葉領域の肝細胞が、正常な肝臓と比較して、7日目に対照マウスの肝臓で、核濃縮、核崩壊および核溶解を伴う液胞、水腫および脂肪変性を示すことを示した(図18、AおよびB)。対照的に、精製CD34/CD45細胞で処置されたマウスは、中心静脈領域でほぼ正常な構造を持つ完全な再生を示した(図18、C)。これらの結果は、精製CD34/CD45細胞を使用した処置がCCl損傷を著しく減弱させ、肝臓再生を大いに促進することを示唆した。炎症細胞は、精製CD34/CD45細胞を使用した処置後、再生された肝臓領域および周囲の組織に浸潤せず、拒絶も免疫応答もほとんど生じないことを示唆した。
【0166】
蛍光顕微鏡検査により、CCl損傷の標的である中心静脈領域にかなりの数のGFP細胞が示された(図18、D、EおよびF)。移植されたGFP細胞は、アルブミンおよび増殖マーカーKi-67を発現していた。これらの結果は、移植された精製CD34/CD45細胞が宿主肝臓に受け入れられ、一過性ではないが、構造的にも機能的にも損傷領域を活発に増殖および再増殖させることを示唆した。肝臓組織のPCR分析により、移植された肝臓に少なくとも3か月間、GFP遺伝子が長期間存在することが示された。肝腫瘍形成の肉眼的証拠も組織学的証拠も、全ての時点で処置肝臓で発見されなかった。
【0167】
実施例7
幹細胞を培養する代替方法および肝損傷の処置
代替方法を使用して、血液から単離された休眠小細胞を活性化および培養し、活性化幹細胞を肝損傷の処置に使用した。
【0168】
幹細胞の単離および共培養
FVB-Tg(CAG-luc-eGFP)L2G85Chco/J(L2G)雄マウスを8週齢で収集した(The Jackson Laboratory、Sacramento、CA)。luc-eGFP導入遺伝子を、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)を発現するCAGプロモーター(ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンハイブリッドプロモーターを備えたヒトサイトメガロウイルス最初期プロモーターエンハンサー)によって指示する。3%イソフルラン(Butler Schein Animal Health、Encinitas、CA)が供給されたチャンバーでマウスを完全に麻酔し、次いで、100μlの生理食塩水に希釈した3Uのヘパリンを注射した。ヘパリン化毛細管を使用して、各マウスから後眼窩洞を通して血液を回収した。50mlチューブ中で溶解バッファー(8.3g/l NHCl、1g/l KHCO、3.7g/l EDTA10:1)を全血に添加し、引き続いて3000gで4℃で10分間高速遠心分離することによって、赤血球を枯渇させた。ペレットを3mlのリン酸緩衝食塩水(PBS)に再懸濁した。血小板を枯渇させるために、細胞懸濁液を、1:4.4希釈のPBSを含むOptiprep密度勾配培地を含有するチューブに移して密度1.063にした。有核細胞懸濁液を回収し、350gで4℃で15分間遠心分離した。ペレットを、さらなる蛍光活性化細胞選別(FACS)分析のためにPBSに再懸濁した、またはインビトロ試験のために培養培地(20%FBS、13mgの抗生物質-抗真菌薬、20mgのゲンタマイシンを含むa-MEM)に再懸濁した。AML12肝細胞(ATCC、Manassas、VA)を30mg/lのマイトマイシンCで2時間前処置した。次いで、有糸分裂的に不活性化したAML12肝細胞を、10%FBSを含むDMEM中6ウェルプレートに接種した。接種約16時間後に、AML12細胞が培養ウェルの底部チャンバーに接着し、約80%コンフルエントになった。0.5mlの血液から誘導された有核細胞懸濁液をTranswell(24mmインサート、0.4mm孔径、Corning、Corning、NY)の上部チャンバーに入れた。培養培地を一日おきに交換した。
【0169】
磁気活性化細胞選別(MACS)およびFACS分析
マイトマイシンC処置AML12細胞との3週間の共培養後、拡大細胞を磁気活性化細胞選別(MACS)で精製して、CD34陽性細胞を濃縮した(Miltenyi Biotec Inc.、San Diego、CA)。手短に言えば、培養細胞をトリプシン処理し、抗CD34ラット抗体と30分間インキュベートし、PBSで洗浄し、4℃で30分間抗ラットマイクロビーズとインキュベートした。PBSで洗浄した後、細胞を500μlの分離バッファーに再懸濁し、MACSカラムにアプライした。元の画分、陰性画分および陽性画分の細胞を計数し、上記のTranswell膜上に播種した。拡大細胞を、FACSによってCD34陽性ならびにCD45、Sca-1、Thy1.1、c-kitおよびCD41を含む様々な表面マーカーについて分析した。核を49,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)またはHoechst33342で染色した。FlowJo(Tree Star、Ashland、OR)を使用してデータを分析した。
【0170】
肝損傷モデルおよび細胞移植
20匹の8週齢成体レシピエント野生型FVBマウスに、オリーブ油で1:1希釈したCClの1回腹膜注射(1.2ml/kg)を行った。CCl投与の1日後、実験マウスを無作為に選択し、後眼窩洞を通して150μlの生理食塩水に懸濁させた、共培養肝細胞から精製した2.5x10個のCD34細胞集団細胞を含む1回の静脈注射を受けさせた(n=10)。対照マウスを、同じ経路で150μlの生理食塩水で処置した(n=10)。全てのマウスを、精製CD34細胞集団の移植後7日目に屠殺した。実験室での測定のために血液を回収した。マウスの内臓を収集し、10%緩衝ホルマリンで固定した。肝臓組織試料を、急速凍結およびパラフィン包埋のために分離した。細胞分化転換の機構を試験するために、mT/mGマウス(The Jackson Laboratory、Bar Harbor、ME)をアルブミン-Creトランスジェニックマウス(Karl Sylvester博士、Stanford、CAの提供)と交配した。
【0171】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)およびRNA分析
DNAを、GENJET Genomic DNA精製キット(ThermoScientific、Vilnius、リトアニア)を使用して、共培養幹細胞、eGFPマウス、または移植マウス肝臓の新鮮または凍結肝臓組織から抽出した。Trizol試薬法を使用して、3週間目でMACS選別、Hoechst33342陽性、新鮮もしくは培養幹細胞または対照細胞(いかなる処置もしていない培養AML12細胞)から総RNAを抽出し、次いで、RNaseフリーDNaseで処置して汚染DNAを除去した。SuperScript II逆転写酵素(Life Technologies、Carlsbad、CA)を使用して、反応体積100μl当たり4μgの全RNAから一本鎖cDNAを得た。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および逆転写PCRを、標準プロトコルおよび1000ngの鋳型DNAまたはcDNA、10mMの各プライマー、およびPCR Master Mix(Promega、Madison、WI)を使用して、20μlの反応体積で行った。18S rRNAを内部対照遺伝子として使用した。
【0172】
ウエスタンブロット分析
共培養細胞およびAML12細胞をPBSで3回洗浄し、次いで、RIPAバッファーで溶解し、氷上で15分間インキュベートした。溶解物を遠心分離し、上清をタンパク質定量後のウエスタンブロット分析に使用した。細胞溶解物を電気泳動によりニトロセルロース膜に移した。洗浄後、タンパク質をローディングした膜を粉乳とインキュベートして、非特異的結合をブロッキングした。一次抗体のインキュベーションでは、内部量を制御するために、ウサギ抗アルブミン抗体およびβ-アクチン抗体を4℃で一晩使用した。洗浄後、膜をHRPコンジュゲートヤギ抗ウサギ二次抗体とインキュベートし、化学発光増強によって可視化した(GE Healthcare、Little Chalfont、Buckinghamshire、英国)。使用した抗体は、A6、a-フェトプロテイン(AFP)、アルブミン、β-アクチン、CD117(c-kit)、CD34、CD41、CD45、CK8、CK18、CK19、CD29(インテグリンβ1)、Ki-67、増殖細胞核抗原(PCNA)、Sca-1、Thy1.1(CD90.1)およびDNA抗体を標的化した。
【0173】
組織学的および免疫学的染色
パラフィン包埋組織標本をスライドガラス上で厚さ5μmに切断し、脱パラフィンし、再水和した。新たに単離した細胞、共培養幹細胞および培養AML12細胞を、スライドガラス上にサイトスピンした、またはTranswell膜で直接試験した。組織または細胞スライドおよびTranswell膜を、ヘマトキシリンおよびエオシンまたは過ヨウ素酸シッフ(PAS)で染色した。IHCおよびIF染色について以下の通り簡単に説明する。スライドに、0.01Mクエン酸バッファー、pH6.0で電子レンジで5分間の抗原回収を受けさせ、引き続いて0.03%Hと30分間インキュベートして内因性ペルオキシダーゼをブロッキングした。スライドおよび膜を1%ウマ血清と30分間インキュベートして非特異的結合をブロッキングし、一次抗体と4℃で一晩インキュベートした。PBSで洗浄した後、スライドをIHCのビオチン化二次抗体またはIFの蛍光色素コンジュゲート抗体で処置した。Alexa Fluor抗マウス、抗ウサギまたは抗ラットIgG1抗体(1mg/ml)を抗体対照として使用した。IF染色スライドをDAPIでマウントし、共焦点顕微鏡によって分析した。IHC試料をABC複合体とインキュベートし、次いで、DABで展開した。二重染色を、DAB(茶色染色)およびニッケル/DAB(濃青色または灰色染色)で展開した。抗体の特異性を確認するために、各試験について陽性対照、陰性対照およびブランク対照を含む多様な対照群を設定した。画像を、Leica DMRA顕微鏡(ライカ、Heerbrugg、スイス)で観察した。
【0174】
肝臓でのGFP発現の原位置イメージング
肝臓標本を冷生理食塩水(4°C、10ml)で洗い流し、アルデヒド架橋によって引き起こされる自己蛍光を回避するために、固定せずにCryo-OCT Compound(Sakura Finetek、東京、日本)に直接包埋した。肝組織におけるGFPシグナルの蛍光を、蛍光顕微鏡法によって測定した。
【0175】
統計分析
対応のある両側スチューデントt検定を使用して2つの群を比較して統計分析を行った。Java(登録商標)ベースの画像処理プログラムであるImageJ(NIH、Bethesda、MD)を使用して、画像分析を行った。p<0.05の場合、差を有意とみなした。
【0176】
結果
L2Gまたは野生型FVBマウスの末梢血から新たに単離された有核細胞のFACS分析により、赤血球溶解および血小板枯渇後の高度に不均一な細胞混合物が示された。CD34陽性細胞のごく一部がCD45を共発現する(2つのプールされたマウス画分で0.04%)。L2G(GFP)マウスの末梢血からの有核(DAPI)細胞混合物は、AML12肝細胞との共培養中に迅速に拡大した(図19)。しかしながら、AML12細胞との共培養なしの細胞混合物は増殖せず、老化し、共培養細胞と比較すると5日目までにGFP発現が喪失した(図19)。
【0177】
MACSによって濃縮した後、CD34細胞優勢群(>90%)は、経時的に肝臓環境でより迅速に拡大した。FACS分析により、拡大細胞がCD34を発現するだけでなく、CD45、c-kit、Sca-1およびThy1.1も発現するが、血小板の分子マーカーであるCD41は発現しないことが示された。ブロモデオキシウリジン標識は、CD34/CD45細胞の倍加時間が約48時間であることを示した。
【0178】
経時的なAML12共培養中の拡大細胞の顕著な形態学的変化が観察された。共培養細胞は、4週間の共培養後、核-細胞質比が減少し、細長い平らな多角形になる。共培養細胞は、a-フェトプロテイン(AFP)、CK8、CK19およびCK18などの肝細胞のマーカーの多様なパネルを発現した。肝内幹細胞の特異的マーカーであるA6は、増殖細胞核抗原(PCNA)およびCK19と共発現された。同じ共培養細胞における肝上皮マーカーCK8またはCK18とCD34の共発現は、肝上皮分化が起こっていることを示唆した。いくつかの共培養細胞は、PCNAとA6の共局在を示し、原始肝細胞様細胞の活発な増殖を示唆した。Transwell膜上で原位置で成長している共培養細胞のCD45陽性は、その造血起源を示した。肝核因子1a(HNF1a)、CYP3A16およびCYP1B1などの肝特異的転写因子および肝代謝機能関連チトクロムP450(CYP)遺伝子は、AML12肝細胞と比較して共培養細胞で活性化された。
【0179】
肝環境の誘導下で、造血細胞から肝上皮化アルブミン発現細胞への共培養細胞の分化転換プロセスが観察された。予想どおり、mT/mGマウスから新たに単離された有核細胞は全てTomato赤色導入遺伝子を発現した(図20、A)。AML12細胞との共培養中、アルブミン/Cre導入遺伝子が7日目までに発現したので、いくつかの細胞は緑色蛍光に変換された(図20、BおよびC)。ほとんどの細胞は徐々に緑色に変わり、経時的にGFPを発現した。肝機能分化の重要な調節因子であるCD29は、GFP細胞で発現された(図20、D)。陽性PAS染色は、アルブミン発現(図20、F)に加えて、グリコーゲンを合成および貯蔵する細胞の機能的活性を示唆した(図20、E)。精製CD34細胞の成長状態を、細胞増殖マーカーであるKi-67を使用して調査した。いくつかの細胞は、アルブミン発現を伴う増殖活性(Ki-67)を示した(図20、G)。免疫ブロット法は、共培養細胞で経時的なアルブミン発現増加を示した(図20、H)。
【0180】
急性肝損傷マウスモデルを、高用量CCl注射によって作成した。CClの注射後1日目から、各マウスは毎日1~2gの体重(BW)を失った。共培養細胞(対照として生理食塩水で処置)を使用した処置なしのマウスのBWは、マウスが7日目に屠殺されるまで減少し続け、肝損傷の悪化と一致した(図21、A)。2匹のマウス(死亡率20%)が、CCl注射後2日目および3日目に死亡した。対照マウスはまた、急性肝損傷に特徴的な炎症性肝腫大のために、BWに対する肝臓重量の比が高かった(図21、B)。対照的に、共培養細胞で処置された全てのマウスは生存し、顕著な回復パターンを示した。BWは1日または2日間減少し、引き続いて安定したまたはベースラインまでBWが増加した。失われたBWは、CCl注射後5日目(または共培養細胞での処置後4日目)までに、全ての処置マウスで回復されていた。CCl投与後1日目で全てのマウスの血清アラニントランスアミナーゼ(ALT)レベルの正常の350倍を超える増加が観察され(図21、C)、重度の肝細胞損傷を示していた。屠殺日(7日目)に、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)レベル、AST/ALTの比、および尿素レベルは、処置マウスと比較して対照マウスで有意に高かった(図21、DおよびE)。局所壊死の分析により、処置マウス肝臓と対照マウス肝臓の間の壊死細胞数に基づいて処置マウスに有意差が示された(p<0.001、図21、F)。
【0181】
一貫して、組織学的分析により、対照マウス肝臓におけるCCl肝毒性に特徴的な小葉中心壊死が示された。中心小葉領域の肝細胞は、正常な肝臓と比較して、7日目に対照マウスの肝臓で、核濃縮、核崩壊および核溶解を伴う液胞、水腫および脂肪変性を示した。対照的に、共培養細胞で処置されたマウスは、中心静脈領域でほぼ正常な構造を持つ完全な再生を示した。これらの結果は、共培養細胞を使用した処置がCCl損傷を著しく減弱させ、肝臓再生を大いに促進することを示唆した。炎症細胞は、共培養細胞を使用した処置後、再生された肝臓領域および周囲の組織に浸潤せず、拒絶も免疫応答もほとんど生じないことを示唆した。
【0182】
蛍光顕微鏡検査により、CCl損傷の標的である中心静脈領域にかなりの数のGFP細胞が示された。移植されたGFP細胞は、アルブミンおよび増殖マーカーKi-67を発現していた。これらの結果は、移植された共培養細胞が宿主肝臓に受け入れられ、一過性ではないが、構造的にも機能的にも損傷領域を活発に増殖および再増殖させることを示唆した。肝臓組織のPCR分析により、移植された肝臓に少なくとも3か月間、GFP遺伝子が長期間存在することが示された。肝腫瘍形成の肉眼的証拠も組織学的証拠も、全ての時点で処置肝臓で発見されなかった。
【0183】
実施例8
増殖マーカー、成長因子およびサイトカインの発現
以下の方法を使用して、活性化幹細胞の増殖マーカー、成長因子およびサイトカインの発現レベルを評価した。RT-PCRを行って、サイクリンD-1(増殖マーカー)、インスリン様成長因子1(IGF-1、成長ホルモンの効果を媒介するホルモン)、インスリン様成長因子1受容体(IGF-1R、IGF-1の受容体)および成長因子ならびにサイトカイン、例えばトランスフォーミング成長因子アルファ(TGF-α)、血管内皮成長因子(VEGF)およびNotch-1の発現レベルを検出した。18S rRNAを内部対照として使用した。成長因子およびサイトカインのレベルを、IFおよび他の方法によっても評価した。
【0184】
結果を図22に示した。サイクリンD-1の高い発現レベルが示され、活性化幹細胞が急速に増殖していることを示した。IGF-1とその受容体IGF-1Rの両方の発現は、活性化幹細胞の増殖が自己分泌機構によって調節され得ることを示した。活性化幹細胞がTGF-α、VEGFおよびNotch-1を発現することも示された。IF結果はまた、活性化幹細胞における肝細胞成長因子(HGF)および線維芽細胞成長因子9(FGF9)の発現も示した。
【0185】
実施例9
腫瘍形成能試験
以下の方法を使用して活性化幹細胞の腫瘍形成能を評価した。5匹の10週齢ヌードマウスに、100万個の活性化幹細胞を皮下注射した。5匹の10週齢ヌードマウスに、100万個の活性化幹細胞を含む腎被膜注射を行った。注射後1日目(D1)に、ルシフェラーゼアッセイを行って、活性化幹細胞を原位置で追跡した。注射後3か月間、継続的な観察を行った。3か月の最後に、ヌードマウスを屠殺して、腫瘍形成効果を評価し、注射された活性化幹細胞を原位置で位置を確認した。病理学的方法を使用して、ヌードマウスの全身の組織および器官を調べた。結果は、活性化幹細胞が全身で非腫瘍原性であることを示した。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18
図19
図20
図21
図22