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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】熱成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/26 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
B29C51/26
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022100354
(22)【出願日】2022-06-22
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000156123
【氏名又は名称】株式会社脇坂エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 正治
(72)【発明者】
【氏名】藤原 孝
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-225123(JP,A)
【文献】特開昭57-138344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートに成形品を熱成形する成形部と、昇降可能に配された切断型を有し、この切断型の下降移動に伴って樹脂シートに熱成形された成形品を打ち抜くトリミング部と、打ち抜き後の成形品を集積する集積部とを備え、前記成形部及び前記トリミング部に樹脂シートがその長さ方向に間欠的に搬送され、前記トリミング部が樹脂シートの搬送方向に移動可能に設けられた熱成形装置において、
前記集積部を、樹脂シートの幅方向外側に配置し、
前記トリミング部に、打ち抜き後の成形品を保持した切断型を樹脂シートの幅方向に移動させる切断型移動機構を設け、
打ち抜き後の成形品が、当該成形品を保持した状態で前記集積部に向けて樹脂シートの幅方向に移動する前記切断型を介して、前記集積部に搬送され
前記集積部は、前記トリミング部と一体的に樹脂シートの搬送方向に移動可能に設けられていることを特徴とする熱成形装置。
【請求項2】
前記集積部は、前記集積部に向けて移動した前記切断型の移動端で前記切断型による保持状態が解除されることにより落下した成形品を受け取り、当該成形品を樹脂シートの搬送方向に沿って搬送する成形品搬送機構を有する請求項1に記載の熱成形装置。
【請求項3】
前記トリミング部よりも樹脂シートの搬送方向前方側に、成形品が熱成形された樹脂シートを所定長さに切断するシート切断部が設けられている請求項1に記載の熱成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、電子部品、日用品、医薬品等を収容する容器やトレー、あるいは当該容器の蓋材等としては、樹脂シートに熱成形された成形品を樹脂シートからトリミングする(打ち抜く)ことで得られたものが広く使用されている。上記の「熱成形」とは、成形適温に加熱軟化させた樹脂シートを真空引き又は圧空供給、もしくはその双方を利用して成形型に密着させることにより、樹脂シートに成形型の凹凸形状に対応した凹凸形状を有する成形品を得る技術手段であり、いわゆる真空成形、圧空成形及び真空圧空成形などを含む概念である。
【0003】
例えば下記の特許文献1には、帯状の樹脂シートをその長さ方向に間欠的に搬送するシート搬送部と、樹脂シート(のうち成形適温に加熱軟化させられた部分)に成形品を熱成形する成形部と、成形品を打ち抜くための切断型を有するトリミング部と、打ち抜き後の成形品を集積する集積部と、を備え、成形部、トリミング部及び集積部が樹脂シートの長さ方向(樹脂シートの搬送方向であり、以下、「シート搬送方向」とも言う。)に沿って順に配置された熱成形装置において、トリミング部と集積部との間に打ち抜き後の成形品を集積部に向けて搬送する成形品搬送部(例えば、搬送コンベア)を設けると共に、打ち抜き後の成形品が切断型によって成形品搬送部に搬送される熱成形装置が開示されている。係る構成の熱成形装置では、打ち抜き後の成形品が、切断型及び成形品搬送部を介して集積部に搬送される。
【0004】
また、特許文献1の熱成形装置において、トリミング部は、シート搬送方向にスライド移動可能とされており、成形型の変更に伴って1ショットで熱成形する成形品のサイズ(特にシート搬送方向における長さ)が変更された場合には、これに対応してシート搬送方向におけるトリミング部の配設位置、つまり成形部とトリミング部の間隔が調整される。このような構成により、特許文献1の熱成形装置は、大小様々なサイズの成形品を精度良く生産することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-225123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の熱成形装置では、トリミング部がシート搬送方向に移動可能とされていることにより、シート搬送方向における成形部とトリミング部の間隔が容易に調整可能である一方、成形部と成形品搬送部の間隔は基本的に一定である。そのため、例えば、成形部で熱成形される成形品のサイズが小さく、トリミング部が成形部に近い位置に配置される場合には、打ち抜き後の成形品を成形品搬送部に搬送する切断型の往復移動距離が長くなる分、切断型のサイクルタイム、ひいては成形品を成形するためのサイクルタイムが長くなり、成形品の生産性(生産効率)が低下する。
【0007】
係る実情に鑑み、本発明の主な目的は、大小様々なサイズの成形品を効率良く生産することができる熱成形装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために創案された本発明は、
樹脂シートに成形品を熱成形する成形部と、昇降可能に配された切断型を有し、切断型の下降移動に伴って樹脂シートに熱成形された成形品を打ち抜くトリミング部と、打ち抜き後の成形品を集積する集積部とを備え、成形部及びトリミング部に樹脂シートがその長さ方向に間欠的に搬送され、トリミング部が樹脂シートの搬送方向に移動可能に設けられた熱成形装置において、
集積部を、樹脂シートの幅方向外側に配置し、
トリミング部に、打ち抜き後の成形品を保持した切断型を樹脂シートの幅方向に沿って移動させる切断型移動機構を設け、
打ち抜き後の成形品が、当該成形品を保持した状態で集積部に向けて樹脂シートの幅方向に移動する切断型を介して、集積部に搬送されることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る熱成形装置では、切断型の下降移動に伴って樹脂シートに熱成形された成形品が打ち抜かれると、打ち抜き後の成形品が、特許文献1の熱成形装置と同様に、切断型に保持された状態で集積部に向けて搬送される。但し、本発明に係る熱成形装置では、樹脂シートの幅方向の外側に打ち抜き後の成形品を集積する集積部が配置され、トリミング部に、打ち抜き後の成形品を保持した切断型を集積部に向けて樹脂シートの幅方向に移動させ得る切断型移動機構が設けられていることにより、樹脂シートの長さ方向(搬送方向)に移動可能なトリミング部がシート搬送方向のいかなる位置に配置されていた場合でも、打ち抜き後の成形品を保持した切断型を樹脂シートの幅方向に所定距離移動させれば、成形品を樹脂シートの外側に移動させて集積部に搬送することができる。要するに、本発明に係る熱成形装置では、成形部で熱成形される成形品のサイズに関わらず、打ち抜き後の成形品を集積部に向けて搬送する際の切断型の移動距離を一定にかつ短縮することができるので、切断型のサイクルタイム、ひいては成形品を成形するためのサイクルタイムを短縮することができる。
【0010】
また、特許文献1に記載されている従来の熱成形装置では、成形部、トリミング部、成形品搬送部及び集積部がシート搬送方向に沿って順に(直列に)配置されるため、装置の全長が長大化し易い。これに対し、本発明に係る熱成形装置では、集積部が樹脂シートの幅方向外側に配置されているため、集積部をトリミング部の側方にトリミング部と並列に配置することができる。このため、全長が短縮されたコンパクトな熱成形装置を実現することもできる。
【0011】
上記の構成において、集積部には、集積部に向けて移動した切断型の移動端で切断型による保持状態が解除されることにより落下した成形品を受け取り、この成形品を樹脂シートの搬送方向に沿って搬送する成形品搬送機構を設けることができる。
【0012】
上記のとおり、本発明に係る熱成形装置では、集積部が樹脂シートの幅方向外側に配置されるため、従来の熱成形装置で集積部が設置されていたトリミング部よりも下流側のエリアを空きスペースにすることができるが、上記エリアには、例えば、成形品が熱成形された樹脂シートを所定長さに切断する(樹脂シートをその幅方向に沿って切断する)シート切断部を設けることもできる。このようなシート切断部を設置しておけば、本発明に係る熱成形装置の汎用性を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のことから、本発明によれば、大小様々なサイズの成形品を効率良く生産することができる熱成形装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)図は、本発明の一実施形態に係る熱成形装置を構成する部材・部位の配置を説明するための概略平面図、(b)図は、熱成形装置の概略側面図である。
図2】成形部の概略断面図である。
図3】トリミング部の概略断面図である。
図4】熱成形装置の部分概略平面図である。
図5】集積部を図4の矢印Z2方向から見た側面図であり、(a)図は、成形品の集積段階を示す図、(b)図は、成形品を多段に積み重ねた集積品の搬送段階を示す図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る熱成形装置を構成する部材・部位の配置を説明するための概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面(図1図6)に基づいて説明する。
【0016】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る熱成形装置1を構成する部材・部位の配置を説明するための概略平面図であり、図1(b)は、熱成形装置1の概略側面図[図1(a)のZ1-Z1線矢視図]である。図1(a)(b)に示す熱成形装置1は、食品、電子部品、日用品、医薬品等を収容する容器やトレー、あるいは容器の蓋材等として使用される成形品を量産するために使用されるものであり、帯状をなした長尺の樹脂シートSをその長さ方向に間欠的に搬送するシート搬送部2と、樹脂シートS(の長さ方向の一部領域)を成形適温に加熱軟化させ、この軟化した部分に所定形状の成形品Saを成形(熱成形)する成形部3と、樹脂シートSから成形品Saを完全に打ち抜くトリミング部4と、打ち抜き後の成形品Saを集積する集積部5とを備える。成形部3及びトリミング部4は、図1(a)(b)中に矢印Aで示す樹脂シートSの長さ方向(樹脂シートSの搬送方向と同じであり、以下「シート搬送方向A」ともいう。)に沿って順に(直列に)配置されている。以下、方向性を説明する上での便宜から「下流側」及び「上流側」との語句を使用する場合があるが、「下流側」とは、シート搬送方向Aの前方側(図1の紙面右側)であり、「上流側」とは、シート搬送方向Aの後方側(図1の紙面左側)である。
【0017】
図1(a)(b)に示すように、シート搬送部2は、シートロールSRを回転可能に支持した架台21と、シートロールSRから繰り出された帯状の樹脂シートSを水平姿勢(略水平姿勢)で搬送する水平搬送部22と、トリミング部4で成形品Saが打ち抜かれた穴開きの樹脂シートS(スクラップシートS’)をロール状に巻き取るスクラップワインダ23とを備える。水平搬送部22は、成形部3の上流側端部からトリミング部4の下流側端部に至るまで連続して配置され、スクラップワインダ23は、トリミング部4よりも下流側に配置される。
【0018】
詳細な図示は省略しているが、水平搬送部22としては、例えば、樹脂シートSをその厚さ方向に挟持する複数のクランプが所定間隔で取り付けられた無端チェーンと、外周に掛け回された上記無端チェーンを水平面内で周回移動させるように垂直軸回りに回転駆動する回転駆動部22aとを樹脂シートSの幅方向両側にそれぞれ配置したものが採用される。このような構成を有する水平搬送部22では、各無端チェーンに取り付けられた複数のクランプで樹脂シートSの幅方向一方側及び他方側の端部を掴みつつ、両回転駆動部22aを同期して互いに反対方向に回転駆動させると、両無端チェーンが互いに反対方向に同速度で周回移動することで樹脂シートSがその長さ方向Aに搬送される。この水平搬送部22とスクラップワインダ23は同期して間欠駆動される。これにより、シート搬送部2は、樹脂シートSをその長さ方向Aに間欠的に搬送する。
【0019】
シート搬送部2により間欠的に搬送される樹脂シートSの送りピッチは、成形部3の1回の成形動作で成形される成形品Saのシート搬送方向Aの長さ分とする。そのため、成形部3での成形型の交換に伴って樹脂シートSに熱成形される成形品Saのサイズ(特にシート搬送方向Aの長さ)が変更されると、これに応じて樹脂シートSの送りピッチも変更(調整)される。水平搬送部22で搬送される樹脂シートSは、その長さ方向A及び幅方向Bの双方で緊張した状態にある。つまり、本実施形態の熱成形装置1において、成形部3とトリミング部4の間に樹脂シートSを弛ませた領域は存在しない。
【0020】
図1(a)(b)に示すように、成形部3は、樹脂シートS(のうちシート搬送方向Aの一部領域)を成形適温に加熱軟化させる加熱装置3Aと、樹脂シートSの加熱軟化した部分に成形品Saを成形する成形装置3Bとを備える。加熱装置3A及び成形装置3Bは、シート搬送方向Aの上流側から下流側に向けて順に配置されている。
【0021】
加熱装置3Aは、水平搬送部22で搬送される樹脂シートSの上方及び下方にそれぞれ配置された上側ヒータ31及び下側ヒータ32を備え、上側ヒータ31及び下側ヒータ32は、それぞれ、昇降可能な上側保持部材33及び下側保持部材34に取り付けられている。熱成形装置1の通常運転中、上側保持部材33及び下側保持部材34は、それぞれ下死点及び上死点に位置して相手側の保持部材と当接し、樹脂シートSの長手方向一部領域(両ヒータ31,32と対向する被加熱領域)を密封している。これにより、樹脂シートSの被加熱領域を効率良く加熱軟化させることができる。
【0022】
成形装置3Bは、樹脂シートSの上方及び下方にそれぞれ配置された上型35及び下型36を有する成形型と、上型35及び下型36を昇降させる昇降機構とを備える。図2に概念的に示すように、本実施形態の上型35は、樹脂シートSに成形される成形品Saの形状に対応した凹部35aが設けられた雌型とされ、下型36は、型締め時に凹部35a内に樹脂シートSを押し込むための凸部36aが設けられた雄型とされる。上型35には一端が凹部35aに開口した無数の通気孔35bが設けられ、この通気孔35bの他端はエアホース等を介してエアポンプ等のエア源(図示省略)に接続される。
【0023】
以上の構成により、上型35を下降移動させると共に下型36を上昇移動させることにより成形型を型締めした後、上型35に設けた通気孔35bを介して両型35,36間に介在する樹脂シートSに対して吸引力が付与されると、樹脂シートSが凹部35aに倣って変形し、所定形状の成形品Saが樹脂シートSに成形される(真空成形)。なお、成形品Saは、真空引きを利用した上記の真空成形の他、圧空供給を利用した圧空成形、真空引き及び圧空供給を併用した真空圧空成形によって成形される場合もある。また、成形品Saの形状等によっては、図示例とは逆に、上型35が雄型、下型36が雌型となる場合もある。
【0024】
図1(b)に示すように、トリミング部4は、樹脂シートSの上方に配置された切断型41と、樹脂シートSの下方に配置された受け部材42と、プレス装置43とを備える。
【0025】
図3に拡大して示すように、切断型41は、支持部材45と、支持部材45に取り付けられた切断刃44とを備える。切断刃44は、トムソン刃と称される薄い帯状の刃を成形品Saの輪郭形状に対応する環状形態に形成したものであり、成形品Saのサイズ・形状等に対応したサイズ・形状等を有するものが使用される。
【0026】
受け部材42は、切断型41の下降移動に伴って切断刃44が樹脂シートSを貫通することにより樹脂シートSから成形品Saが打ち抜かれた時に切断刃44の刃先44aを受けるものであり、例えばポリプロピレン(PP)やポリアミド(PA)等の樹脂材料で作製された板材が使用される。これにより、成形品Saの打ち抜きに伴って切断刃44の刃先44aが早期に欠損等するのを可及的に防止することができる。
【0027】
切断型41は、昇降可能に設けられたプレス装置43の可動部材に取り付けられる。上記のとおり、切断刃44は、成形品Saのサイズ・形状等に応じたサイズ・形状等を有するものが使用されることから、切断刃44を装着してなる切断型41は、基本的に成形型の型交換に伴って交換される。成形型の型交換に伴って熱成形される成形品Saのサイズ(特にシート搬送方向Aの長さ)が変更されるときには樹脂シートSの送りピッチが変更されることから、このピッチ変更に応じてシート搬送方向Aにおける成形部3とトリミング部4の間隔を変更しなければ、樹脂シートSに熱成形された成形品Saを正確に打ち抜くことができなくなる。そこで、成形部3(の成形型)とトリミング部4(の切断型41)の間隔は、樹脂シートSの送りピッチの整数倍(2倍以上)となるように調整される。
【0028】
上記のように成形部3とトリミング部4の間隔を調整可能とするため、上記の切断型41、受け部材42及びプレス装置43等を備えたトリミング部4は、シート搬送方向Aにスライド移動可能とされている。本実施形態では、熱成形装置1の構造体(基枠)10に対して、トリミング部4(の構成部材)を支持した支持枠11をシート搬送方向Aにスライド移動可能に取り付けることにより、トリミング部4がシート搬送方向Aにスライド移動する。なお、トリミング部4(を支持した支持枠11)をシート搬送方向Aにスライド移動させる機構としては、例えば、サーボモータ等の回転駆動源と、回転駆動源の回転運動を直線運動に変換するボールねじ等の運動変換機構とを組み合わせたものを使用することができる。
【0029】
トリミング部4は、切断型41の下降移動に伴って切断刃44が打ち抜いた成形品Saを保持(吸着)及び分離させるための吸着機構46を備える。吸着機構46としては、例えば図3に示すように、一端が切断型41の内部空間41aに開口した複数の吸気孔41bと、各吸気孔41bの他端にエアホース等を介して接続されたエアポンプ等のエア源47とを備えたものが使用される。エア源47には、成形部3で成形品Saを真空成形する際に使用するエア源を活用することができる。この吸着機構46により、切断刃44により打ち抜かれた成形品Saは、切断型41に吸着保持され、切断型41の内部空間41aに収容される。
【0030】
トリミング部4は、打ち抜き後の成形品Saを吸着保持した切断型41を集積部5に向けて移動させる切断型移動機構48をさらに備える。切断型移動機構48は、図4に示すように、切断型41を、シート搬送方向Aと直交する水平方向である樹脂シートSの幅方向Bにスライド移動させるものであり、より詳細には、成形品Saの打ち抜き加工の実施位置と、集積部5(を構成する成形品搬送機構)に対して成形品Saを受け渡す受け渡し位置の二位置間で切断型41をスライド移動させる。この切断型移動機構48は、例えば、サーボモータ等の回転駆動源と、回転駆動源の回転運動を水平方向の直線運動に変換するボールねじ等の運動変換機構とを組み合わせた電動アクチュエータで構成することができる。なお、切断型移動機構48は、切断型41とともに昇降移動する。つまり、切断型移動機構48は、昇降可能なプレス装置43の可動部材に切断型41とともに支持されている。
【0031】
集積部5は、図1(a)、図4及び図5(a)(b)に示すように、成形品搬送機構としての成形品搬送コンベア51と、集積台52とを備える。成形品搬送コンベア51は、切断型移動機構48により集積部5に向けて移動した切断型41の移動端の直下に配置された第1搬送コンベア51Aと、この第1搬送コンベア51Aと集積台52の間に配置された第2搬送コンベア51Bとを有する。第1搬送コンベア51A及び第2搬送コンベア51Bは、何れも、シート搬送方向Aに延びる搬送面を有している。第1搬送コンベア51Aは、その搬送面(上端面)が第2搬送コンベア51Bの搬送面と略同一平面上に位置するとき[図5(b)参照]を下降限として昇降可能に設けられており、高さ方向の任意の位置で停止可能となっている。
【0032】
以上の構成を有する集積部5は、図1(a)及び図4に示すように、シート搬送部2により間欠送りされる樹脂シートSの幅方向Bの外側であって、トリミング部4の側方に配置されている。本実施形態では、成形品搬送コンベア51を構成する第1搬送コンベア51Aがトリミング部4(を構成する成形型41及び受け部材42等)とシート搬送方向Aで略同一位置に位置するように、集積部5がトリミング部4の側方に配置されており、かつシート搬送方向Aにおけるトリミング部4と集積部5の相対位置は不変となっている。つまり、集積部5は、トリミング部4(をスライド移動可能に支持した支持枠11)と一体的にシート搬送方向Aに移動可能となっている。従って、成形部3での成形型の型交換に伴ってシート搬送方向Aにおけるトリミング部4の設置位置(成形部3とトリミング部4の間隔)が変更されるとき、集積部5のシート搬送方向Aにおける設置位置も変更される。
【0033】
以上の構成を有する熱成形装置1のトリミング部4及び集積部5の動作態様、すなわち、樹脂シートSに熱成形された成形品Saの打ち抜き作業~集積(装置外への搬出)作業の実施態様を以下説明する。
【0034】
まず、樹脂シートSに熱成形された成形品Saがトリミング部4に搬入(切断型41と受け部材42の間に配置)されると、プレス装置43が作動して切断型41を下降移動させる。これに伴って切断型41に取り付けられた切断刃44が樹脂シートSを貫通することにより、樹脂シートSから成形品Saが完全に打ち抜かれる。切断刃44によって成形品Saが打ち抜かれると、吸着機構46が作動し、打ち抜かれた成形品Saが切断型41に吸着保持される。成形品Saを吸着保持した切断型41が上昇移動すると、切断型移動機構48が作動する。これにより、成形品Saを吸着保持した切断型41等が集積部5(の第1搬送コンベア51A)に向けて樹脂シートSの幅方向Bに水平移動する。なお、成形品Saを吸着保持した切断型41が上昇移動すると、シート搬送部2が駆動して後続の成形品Saが切断型41と受け部材42の間に配置される。
【0035】
成形品Saを吸着保持した切断型41が集積部5側の移動端(第1搬送コンベア51Aの直上位置)まで移動すると、吸着機構46による成形品Saの吸着状態が解除される。これにより、成形品Saは、切断型41から分離されて落下し、第1搬送コンベア51Aに受け渡される。第1搬送コンベア51Aは、切断型41から成形品Saが分離されるとき、下降限よりも所定量上方に位置(待機)して成形品Saを受け取るように設定されており[図5(a)参照]、成形品Saの積み重ね個数が増加するほど待機位置が低位にシフトする。第1搬送コンベア51Aへの成形品Saの受け渡しが完了すると、切断型移動機構48が作動し、切断型41を成形品Saの打ち抜き加工の実施位置に向けて後退移動させる。
【0036】
以降、以上で説明した動作が繰り返し実行されることにより、第1搬送コンベア51の搬送面上に所定個数の成形品Saを積み重ねてなる集積品Sbが形成されると、図5(b)に示すように、第1搬送コンベア51Aが下降限まで下降移動する。その後、第1搬送コンベア51A及び第2搬送コンベア51Bが同期駆動されることにより、第1搬送コンベア51Aの搬送面上に載置された集積品Sbが、第2搬送コンベア51Bを介して集積台52まで搬送される(トリミング部4で打ち抜かれた打ち抜き後の成形品Saの搬送経路については、図4に示す黒塗り矢印を参照)。集積台52まで搬送された集積品Sbは、作業者の手作業により、あるいは図示しない搬出手段により、熱成形装置1の外側に搬出される。
【0037】
なお、本実施形態の熱成形装置1においては、シート搬送部2が停止している間に、成形部3に設けた加熱装置3Aによる樹脂シートSの加熱軟化と、成形部3に設けた成形装置3Bによる樹脂シートSへの成形品Saの熱成形と、トリミング部4に設けた切断型41による成形品Saの打ち抜きとが並行して実施され、シート搬送部2が作動している間に、スクラップワインダ23によるスクラップシートS’の巻き取りや、切断型移動機構48による切断型41の移動が並行して実施される。
【0038】
以上で説明した本実施形態の熱成形装置1では、シート搬送部2(の水平搬送部22)により間欠的に搬送される帯状の樹脂シートSの幅方向Bの外側に、打ち抜き後の成形品Saを集積する集積部5が配置され、トリミング部4に、打ち抜き後の成形品Saを保持(吸着保持)した切断型41を集積部5に向けて樹脂シートSの幅方向Bに移動させ得る切断型移動機構48が設けられている。これにより、シート搬送方向Aに移動可能なトリミング部4がシート搬送方向Aのいかなる位置に配置されていた場合でも、打ち抜き後の成形品Saを保持した切断型41を樹脂シートSの幅方向Bに所定距離移動させれば、成形品Saを樹脂シートSの外側(幅方向Bの外側)に移動させて集積部5に搬送することができる。要するに、本実施形態の熱成形装置1では、成形部3で熱成形される成形品Saのサイズに関わらず、打ち抜き後の成形品Saを集積部5に向けて搬送する際の切断型41の移動距離を一定にかつ短縮することができるので、成形品Saを成形するためのサイクルタイムを短縮することができる。
【0039】
また、従来の熱成形装置では、成形部、トリミング部、成形品搬送部及び集積部がシート搬送方向に沿って順に配置されるため、装置の全長が長大化し易い。これに対し、本実施形態の熱成形装置1では、集積部5が樹脂シートSの幅方向Bの外側に配置されるため、集積部5をトリミング部4の側方にトリミング部4と並列に配置することができる。このため、全長が短縮されたコンパクトな熱成形装置1を実現することもできる。
【0040】
また、切断型41の移動量を低減できるのであれば、切断型41を移動させるための切断型移動機構48をを小型化することができるので、切断型41及び切断型移動機構48を昇降可能に支持したプレス装置43、ひいてはトリミング部4を全体的に小型化することができる。これにより、熱成形装置1のさらなるコンパクト化を実現することもできる。
【0041】
以上、本発明の一実施形態に係る熱成形装置1について説明を行ったが、本発明の実施の形態はこれに限られない。図6に、本発明の他の実施形態に係る熱成形装置1の構成部材・部位を説明するための概略平面図を示す。
【0042】
図6に示す熱成形装置1が、図1等に示した熱成形装置1と異なる主な点は、トリミング部4よりもシート搬送方向Aの下流側に、成形品Saが熱成形された帯状の樹脂シートSを所定長さに切断する(樹脂シートSをその幅方向Bに沿って切断する)ためのシート切断部6を設けた点にある。シート切断部6は「シャー装置」などとも称される。シート切断部6を用いて樹脂シートSを所定長さに切断する場合、成形品Saを打ち抜くトリミング部4、及び打ち抜き後の成形品Saを集積する集積部5は作動(使用)しない。このため、成形品Saが打ち抜かれた穴開きの樹脂シートS(スクラップシートS’)を巻き取るスクラップワインダ23も使用しない。
【0043】
シート切断部6を設置可能となったのは、本発明に係る熱成形装置1では集積部5が樹脂シートSの幅方向Bの外側に配置されるため、従来の熱成形装置で集積部が設置されていたトリミング部よりも下流側のエリアが空きスペースになったことによる。シート切断部6は、必ずしも設置する必要はないが、熱成形装置1の汎用性等を高める上で有利となる。すなわち、シート切断部6を設けておけば、樹脂シートSに熱成形された成形品Saの打ち抜きを、前述した熱成形装置1のトリミング部4を用いて行うか、あるいは熱成形装置1とは別に設けた打ち抜き用のプレス装置(「ダイプレス」などとも称される)を用いて行うかを都度選択することができる。
【0044】
ここで、トリミング部4で成形品Saを打ち抜くようにすれば、打ち抜き後の成形品Saの集積作業まで人手を介さずに全自動で実施することが可能となるため、例えば同一の成形品Saを大量に生産する必要がある場合(生産ロットが大きい場合)には、成形品Saを効率良く得ることができて好都合である。但し、トリミング部4を実使用する際には、成形品Saの形状や大きさに対応した切断刃44を有する切断型41であって、成形品Saの吸着機能を有する比較的高価な切断型41を準備・交換する、トリミング部4(切断型41)の設置位置を調整する、などの対応が必要になることから、例えば成形品Saの生産ロットが小さい場合には、トリミング部4を使用することが成形品Saの生産効率(装置稼働率)の低下や、成形品Saの生産コストの増大を招く可能性がある。従って、成形品Saの生産ロットが小さい場合には、成形品Saが成形された樹脂シートSをシート切断部6で所定長さに切断した後、熱成形装置1とは別に設けたプレス装置(ダイプレス)で成形品Saを打ち抜く方が、成形品Saの生産効率向上及び生産コスト低減を図る上で有利である。
【0045】
図6においては、スクラップワインダ23の図示を省略しているが、樹脂シートSに熱成形された成形品Saをトリミング部4で打ち抜き、打ち抜き後の成形品Saを集積部5で集積するという運転モードと、トリミング部4及び集積部5を作動させず(使用せず)、樹脂シートSをシート切断部6で所定長さに切断するという運転モードとを迅速に切り替え可能とするため、スクラップワインダ23は常設しておくのが好ましい。図示は省略するが、図6に示すようにトリミング部4の下流側にシート切断部6が隣接配置される場合、スクラップワインダ23はシート切断部6の下流側に配置する。
【0046】
以上、本発明の実施形態に係る熱成形装置1について説明を行ったが、熱成形装置1には本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更を施すことが可能である。
【0047】
例えば、成形部3において樹脂シートSを成形適温に加熱軟化させる加熱装置3Aは、上側ヒータ31及び下側ヒータ32を備えるものに替えて、上側ヒータ31又は下側ヒータ32の何れか一方を備えるものとしても良い。
【0048】
また、集積部5に設ける成形品搬送機構としての成形品搬送コンベア51は、図示例のようにシート搬送方向Aに直列に配置した2台(第1及び第2)の搬送コンベア51A,51Bで構成する他、1台の搬送コンベア、あるいはシート搬送方向Aに直列に配置した3台以上の搬送コンベアで構成することも可能である。集積部5は、成形品搬送コンベア51が省略され、実質的に集積台52のみで構成されたものであっても構わない。
【符号の説明】
【0049】
1 熱成形装置
2 シート搬送部
3 成形部
3A 加熱装置
3B 成形装置
4 トリミング部
5 集積部
6 シート切断部
22 水平搬送部
41 切断型
48 切断型移動機構
51 成形品搬送コンベア(成形品搬送機構)
52 集積台
A 樹脂シートの長さ方向(シート搬送方向)
B 樹脂シートの幅方向
S 樹脂シート
Sa 成形品
Sb 集積品
【要約】
【課題】熱成形装置のサイクルタイムを短縮する。
【解決手段】樹脂シートSの上方に昇降可能に配された切断型41を有し、この切断型41の下降移動に伴って樹脂シートSに熱成形された成形品Saを打ち抜くトリミング部4と、打ち抜き後の成形品Saを集積する集積部5とを備え、樹脂シートSがその長さ方向Aに間欠的に搬送され、トリミング部4が樹脂シートSの長さ方向(搬送方向)Aに移動可能に設けられた熱成形装置1において、集積部5を、樹脂シートSの幅方向Bの外側に配置し、トリミング部4に、切断型41を樹脂シートSの幅方向Bに移動させる切断型移動機構48を設ける。打ち抜き後の成形品Saは、これを保持した状態で集積部5に向けて樹脂シートSの幅方向Bに移動する切断型41を介して集積部5に搬送される。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6