(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】遊星変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 1/28 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
F16H1/28
(21)【出願番号】P 2022563965
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2021060277
(87)【国際公開番号】W WO2021214085
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-01-25
(31)【優先権主張番号】102020111001.4
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020111004.9
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522152061
【氏名又は名称】ホーン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】ホーン べルント ロバート
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第202009018547(DE,U1)
【文献】スイス国特許発明第00257825(CH,A)
【文献】独国特許出願公開第102011114656(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010018528(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊星変速機(2)であって、
ハウジング(4)と、
第1の軸(X1)を中心として前記ハウジング(4)内に回転可能に支持され
た太陽歯車(8)を有する第1の軸
部(6)と、
前記第1の軸
部(6)と同軸に設けられ、前記ハウジング(4)内で回転不能な第1のリング歯車(12)と、
前記ハウジングに前記第1の軸(X1)を中心として回転可能に支持された第2のリング歯車(16)と、
前記第1の軸
部(6)と前記
第1及び第2のリング歯車(12、16)との間に径方向に設けられ、前記太陽歯車(8)および前記第1のリング歯車(12)と噛み合う第1の歯車装置領域(26)と、前記第2のリング歯車(16)と噛み合う第2の歯車装置領域(28)とを有する段付き遊星歯車を
含むか、或いは、前記第1の軸
部(6)と前記第1のリング歯車(12)との間に径方向に設けられ、前記太陽歯車(8)および前記第1のリング歯車(12)と噛み合う第1の歯車装置領域を有する第1の遊星歯車と、前記第1の軸
部(6)と前記第2のリング歯車(16)との間に径方向に設けられ、前記第1の遊星歯車に耐トルク方式で同軸に接続されてともに回転し、前記第2のリング歯車(16)と噛み合う第2の歯車装置領域(28)を有する第2の遊星歯車と
を含むかの何れかである遊星歯車部と、
前記第1の軸
部(6)には、前記第1の軸
部(6)と同軸に設けられ
、前記遊星歯車
部が径方向に支持される円筒状支持領域(32)が設けられ、
前記第2の歯車装置領域(28)は、はすば歯車であり、
前記遊星歯車
部は、前記第2の歯車装置領域(28)の外周面が前記第2の歯車装置領域(28)の歯先円上に位置するように前記支持領域(32)上で支持される、ことを特徴とする、遊星変速機。
【請求項2】
円筒状支持領域(32)の外径が、前記太陽歯車(8)と第1の歯車装置領域(26)との間の歯車装置における太陽歯車(8)の動作ピッチ円直径と一致する、
請求項1に記載の遊星変速機。
【請求項3】
第2の歯車装置領域(28)の面接触比(εβ)が1以上である、
請求項1または2に記載の遊星変速機。
【請求項4】
前記第2の歯車装置領域(28)
の面接触比(εβ)が、ピッチ(p)から前記第2の歯車装置領域(28)の前記歯先幅(b1)を引いたものと前記第2の歯車装置領域(28)の前記ピッチ(p)との比以上である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の遊星変速機。
【請求項5】
前記遊星歯車
部に作用する傾斜モーメントが、前記遊星歯車部
の軸方向で支持されている
請求項1から4のいずれか一項に記載の遊星変速機。
【請求項6】
前
記遊星歯車
部の前記第1の歯車装置領域(26)の
側に設けられた第1の支持ディスク(36)であって、前
記遊星歯車
部を軸方向に支持するために、前記第1の軸(X1)と同軸に設けられ、前記第1の軸(X1)を中心に回転可能である、第1の支持ディスク、および/または
前
記遊星歯車の前記第2の歯車装置領域(2
8)の
側に設けられた第2の支持ディスク(40)であって、前記第1の軸(X1)と同軸に設けられ、それを中心に回転可能であり、
前記遊星歯車
部を軸方向に支持するための第2の支持ディスク、をさらに含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の遊星変速機。
【請求項7】
前記第1の支持ディスク(36)と前
記遊星歯車
部との間
に、遊星回転軸(X2)と同軸に第1のスラスト軸受(38)が設けられ
るか、または、前
記遊星歯車
部が、前記第1の支持ディスク(36)上に直接摺動可能に軸方向に支持され、
および/または、
前記第2の支持ディスク(40)と前
記遊星歯車
部との間
に、前記遊星回転軸(X2)と同軸に第2のスラスト軸受(42)が設けられ
るか、または、前
記遊星歯車
部が、前記第2の支持ディスク(40)上に直接摺動可能に軸方向に支持される、
請求項6に記載の遊星変速機。
【請求項8】
前記第1の支持ディスク(36)と前記ハウジング(4)との間に、前記第1の軸(X1)と同軸に第3のスラスト軸受(44)が設けられ、または前記第1の支持ディスク(36 )が、前記ハウジング(4)上に摺動可能に軸方向に支持される、
請求項6または7に記載の遊星変速機。
【請求項9】
前記遊星回転軸(X2)が、前記少なくとも1つの支持ディスク(36、40)が前
記遊星歯車
部とともに前記第1の軸(X1)を中心に公転するように、前記支持ディスク(36、40)のうちの少なくとも1つと結合される、
請求項
7又は、請求項7に従属する請求項8のいずれか一項に記載の遊星変速機。
【請求項10】
前記第2のリング歯車(16)に耐トルク方式で接続され、前記第1の軸(X1)を中心として前記第2のリング歯車とともに回転する第2の軸
部(22)を含み、
前記第2のリング歯車(16)が、前記第2のリング歯車(16)の径方向延長領域(20)を介して前記第2の軸
部(22)とともに回転するように耐トルク方式で前記第2の軸
部に接続されるか、または前記第2のリング歯車(16)から前記第2の軸
部(22)まで径方向に延在する接続領域が設けられる、
請求項1から6のいずれか一項に記載の遊星変速機(2)。
【請求項11】
前記第2の支持ディスク(40)が、前
記遊星歯車
部と、前記第2のリング歯車(16)の径方向延長領域(20)または前記第2のリング歯車(16)から前記第2の軸
部(22)まで径方向に延在する接続領域との間に設けられ、
前記第2の支持ディスク(40)と前記第2のリング歯車(16)の前記径方向延長領域(20)または前記径方向に延在する接続領域との間に、第4のスラスト軸受(48)が前記第1の軸(X1)と同軸に設けられるか、または前記第2の支持ディスク(40)が前記第2のリング歯車(16)の前記径方向延長領域(20)または前記径方向に延在する接続領域上に摺動可能に軸方向に支持される、
請求項6に従属する請求項10に記載の遊星変速機。
【請求項12】
前記第2のリング歯車(16)が、前記第2のリング歯車(16)の前記径方向延長領域(20)または前記第2のリング歯車(16)から前記第2の軸
部(22)まで径方向に延在する前記接続領域と前記ハウジング(4)との間に設けられ、前記第1の軸(X1)と同軸の第5のスラスト軸受(52)によって軸方向に支持される、
請求項10または11に記載の遊星変速機。
【請求項13】
前記第2の軸
部(22)が、中空状に構成された前記第2の軸
部(22)の軸方向に延在する内周面、または前記第2のリング歯車(16)から前記第2の軸
部(22)までの軸方向の接続領域と、前記第1の軸
部(6)との間に設けられたラジアル軸受(54)によって径方向に支持される、
請求項10から12のいずれか一項に記載の遊星変速機。
【請求項14】
前記第1の支持ディスク(36)と前記遊星歯車部との間に、遊星回転軸(X2)と同軸に第1のスラスト軸受(38)が設けられ、
および/または、
前記第2の支持ディスク(40)と前記遊星歯車部との間に、遊星回転軸(X2)と同軸に第2のスラスト軸受(42)が設けられ、
および/または、
前記第1の支持ディスク(36)と前記ハウジング(4)との間に、前記第1の軸(X1)と同軸に第3のスラスト軸受(44)が設けられ、
および/または、
前記第2の支持ディスク(40)と前記第2のリング歯車(16)の径方向延長領域(20)または径方向に延在する接続領域との間に、第4のスラスト軸受(48)が前記第1の軸(X1)と同軸に設けられ、
および/または、
前記第2のリング歯車(16)に耐トルク方式で接続され、前記第1の軸(X1)を中心として前記第2のリング歯車とともに回転する第2の軸部(22)を含み、
前記第2のリング歯車(16)の径方向延長領域(20)または前記第2のリング歯車(16)から前記第2の軸部(22)まで径方向に延在する接続領域と前記ハウジング(4)との間に、前記第1の軸(X1)と同軸の第5のスラスト軸受(52)が設けられ、
前記第1から第5のスラスト軸受の少なくとも1つ
は、ニードルローラ軸受またはローラ軸受である、請求項
6に記載の遊星変速機。
【請求項15】
前記第2のリング歯車(16)に耐トルク方式で接続され、前記第1の軸(X1)を中心として前記第2のリング歯車とともに回転する第2の軸
部(22)を含み、
前記遊星歯車
部を前記第1または第2の軸
部(6,22)上で径方向に支持する遊星キャリアが設けられていない、
請求項1から14のいずれか一項に記載の遊星変速機。
【請求項16】
前記
第1の軸(X1)の周りに前
記遊星歯車
部を複数備える
請求項1から15のいずれか一項に記載の遊星変速機。
【請求項17】
前記段付き遊星歯車(24)の前記第1の歯車装置領域(26)および前記第2の歯車装置領域(28)が、連続した歯車装置から形成される、
請求項1から16のいずれか一項に記載の遊星変速機。
【請求項18】
前記第1の支持ディスク(36)と前記遊星歯車部との間に、遊星回転軸(X2)と同軸に第1のスラスト軸受(38)が設けられ、
および/または、
前記第2の支持ディスク(40)と前記遊星歯車部との間に、遊星回転軸(X2)と同軸に第2のスラスト軸受(42)が設けられ、
および/または、
前記第1の支持ディスク(36)と前記ハウジング(4)との間に、前記第1の軸(X1)と同軸に第3のスラスト軸受(44)が設けられ、
および/または、
前記第2の支持ディスク(40)と前記第2のリング歯車(16)の径方向延長領域(20)または径方向に延在する接続領域との間に、第4のスラスト軸受(48)が前記第1の軸(X1)と同軸に設けられ、
および/または、
前記第2のリング歯車(16)に耐トルク方式で接続され、前記第1の軸(X1)を中心として前記第2のリング歯車とともに回転する第2の軸部(22)を含み、
前記第2のリング歯車(16)の径方向延長領域(20)または前記第2のリング歯車(16)から前記第2の軸部(22)まで径方向に延在する接続領域と前記ハウジング(4)との間に、前記第1の軸(X1)と同軸の第5のスラスト軸受(52)が設けられ、
前記第1から第5のスラスト軸受の少なくとも1つ
は、転動体軸受として構成される、
請求項
6に記載の遊星変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遊星変速機に関する。特に、様々な歯の係合部におけるトルク伝達中に生じる力およびトルクが有利に支持される遊星変速機が提供される。特に、Wolfrom遊星変速機が提供される。
【背景技術】
【0002】
Wolfrom遊星変速機は、同時に歯の係合がほとんどない高変速比の実現を可能にする。これにより、同様の変速比を有する他の変速機設計と比較して、コンパクトな設計で使用される構成要素の数が低減されることができる。同時に、伝達バックラッシュが小さく、高効率である。
【0003】
従来のWolfrom遊星変速機は、以下のように設計されている:入力軸上に設けられた太陽歯車は、ハウジング固定式に設けられた第1のリング歯車と同軸に半径方向距離を置いて配置される。太陽歯車と第1のリング歯車との間には、太陽歯車および第1のリング歯車と噛み合う1つ以上の第1の遊星歯車が設けられ、太陽歯車の回転中に、それら自体の軸を中心とした回転に加えて、入力軸または太陽歯車の回転軸を中心として公転する。さらに、1つ以上の第2の遊星歯車が、1つ以上の第1の遊星歯車のうちの1つにそれぞれ堅固に接続されて設けられ、1つ以上の第2の遊星歯車は、さらなるリング歯車によって取り囲まれており、リング歯車と噛み合っている。これに代えて、軸方向に(回転軸に沿って)または前後にオフセットして配置され、異なるリング歯車と係合するように構成された2つの歯車装置領域を有する段付き遊星歯車が使用される。さらなるリング歯車は、出力部として機能し、例えば出力軸に接続されることができる。遊星歯車(段付き遊星歯車)は、典型的には、入力軸もしくは出力軸上またはハウジング内に支持されることができる共通の遊星キャリア上に支持される。
本特許出願の国際予備調査中に、独国実用新案第202009018547(U1)号、スイス特許第257825(A)号、独国特許第102011114656(A1)号、独国特許第102010018528(A1)号の文献が発見された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動力伝達中、遊星歯車の歯の係合部を介して力(特に、2つのリング歯車の反作用する周方向力)が作用し、この力は、とりわけ、遊星歯車の回転軸に垂直な傾斜モーメントをもたらす。したがって、遊星歯車をそれらの回転軸に対して垂直に(傾斜モーメントに対して)支持する必要がある。この目的のために、入力軸または太陽歯車の回転軸の周りに回転可能に支持され、遊星歯車を支持するための突出軸受ジャーナルを含む遊星キャリアが従来から提供されている。
【0005】
本発明の根底にある目的は、構成要素の数が少ないコンパクトな設計において、高効率でバックラッシがほとんどない改良された遊星変速機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載の遊星変速機によって達成される。有利なさらなる発展は、従属請求項に明記されている。
【0007】
互いに接続された遊星歯車または段付き遊星歯車に作用する力は、2つのリング歯車のそれぞれの遊星歯車(互いに接続された遊星歯車、または段付き遊星歯車)との歯の係合の半径方向力でもある。それらは、Wolfrom歯車セットの中心点上で同じ方向に作用する。さらにまた、太陽-遊星歯車の歯の係合から半径方向力も生じる。この径方向力は、第2のリング歯車の2つの外側遊星歯車歯係合部(第1のリング歯車および遊星歯車)の径方向力に対抗して作用するが、はるかに弱い。それは、例えば、Herbert W.Muller,Die Umlaufradergetriebe,second edition 1998,Springer VerlagによるWolfromギヤセットのトルクの計算から得られる。ここで、従来の変速機において遊星キャリアによって支持される、結果として生じる半径方向力は、好ましくは少なくとも部分的に、さらにより好ましくは完全に、第2の歯車装置領域の外周面を介して支持領域上に支持される。
【0008】
したがって、互いに接続された遊星歯車、または段付き遊星歯車は、一方では、第1のリング歯車と太陽歯車との間で半径方向に支持されるが、滑らかな走行歯車装置に必要な一定量のバックラッシュで支持される。好ましくは設けられる円筒状支持領域上の第2の歯車装置領域の支持は、互いに接続された段付き遊星歯車または遊星歯車の第2の半径方向支持を形成し、これは第1の半径方向支持と比較してほとんどバックラッシュを有しない(または本質的にバックラッシュがない)ことができる。したがって、互いに接続された遊星歯車、または段付き遊星歯車は、それらの遊星回転軸に沿って4点で半径方向に支持されることが好ましい。特に、支持領域上での支持により、遊星回転軸に垂直に作用するトルクを、互いに接続された遊星歯車または段付き遊星歯車上で良好に支持することができることが保証されることができる。特に、太陽歯車の回転軸(第1の軸)に対する接続された遊星歯車または段付き遊星歯車の遊星回転軸(第2の軸)のねじれまたは位置ずれがそれによって回避または低減されることができ、それによって効率が向上する。
【0009】
特許請求される全ての特徴を含まない1つの代替的な設計では、支持は、例えば、第2の歯車装置領域の伝動部の一部に配置される、例えば押し付けられる円筒状スリーブとして構成される円筒状外周面によって達成され、それによって上述した有利な半径方向支持を可能にする。この場合、第2の歯車装置領域は、螺旋状または直線状の歯を有することができる。スリーブの代わりに、支持面上に支持された円筒状外周面が、互いに接続された段付き遊星歯車または遊星歯車上に直接形成されることもできる。そのような実施形態では、外周が閉じられていることが好ましい。回転軸に垂直な外周面の断面は円形であることが好ましい。
【0010】
請求項1によれば、第2の歯車装置領域の歯の輪郭は、螺旋状に歯が形成され、好ましくは、歯先円にある個々の歯の外周面が、第2の歯車装置領域の回転位置とは無関係に、支持領域上に直接支持されるように構成される。さらにまた、第2の歯車装置領域は、好ましくは、変速機の回転中に、少なくとも点接触部、好ましくは線接触部が支持領域と第2の歯車装置領域との間に連続的に存在するように構成される。第2のリング歯車の内側歯車装置もまた、第2の歯車装置領域に対応して螺旋状に歯が付けられている。そのような実施形態では、好ましくは、上述したような円筒状外周面またはスリーブは設けられない。
【0011】
第1の歯車装置領域は、直線歯状または螺旋状に歯付きで形成されることができる。太陽歯車および第1のリング歯車の歯車装置は、対応して構成される。
【0012】
一般に、第2の歯車装置領域の歯先円は、第2の歯車装置領域の外周円である。特に、第2の歯車装置領域が支持領域に直接支持される実施形態では、平坦な歯ヘッドを有する歯形(ブラント歯車装置)が好ましく用いられる。これは、第2の歯車装置領域と支持領域との間に線接触(点接触ではない)を存在させることができることに寄与する。追加の要因は、ヘッド幅、ピッチ、ねじれ角であり、これらは互いに調整される。
【0013】
ハウジングは、一体的に形成されてもよく、または複数の構成要素から形成されてもよい。ハウジングは、別のハウジングもしくは構成要素または別の装置の一部とすることができる。第1の軸(例えば、入力軸)は、ワンピースまたはマルチピース方式で形成されることができる。太陽歯車は、第1の軸と一体に形成されることができ、または第1の軸に着脱自在もしくは着脱不能に取り付けられることができる。第1のリング歯車は、ハウジング内に一体的に形成されることができ、またはハウジングに着脱可能もしくは着脱不能に取り付けまたは固定されることができる。第2のリング歯車は、径方向外側でハウジングに支持されてもよく、径方向内側で第1の軸に支持されてもよい。第2のリング歯車は、耐トルク方式で第2の軸に接続されてそれとともに回転することができ、またはそれ自体を出力構成要素として直接設けられることができる。第2のリング歯車は、第2の軸と一体に形成されることができ、または少なくとも部分的に径方向に延在する領域を介して第2の軸に接続されることができる。第2の軸自体が支持されることができ、第2のリング歯車が第2の軸によって支持されることができ、その逆も可能である。第2の軸は、第1の軸とは反対側に形成されていることが好ましい。あるいは、双方の軸が同じ側に形成されることができる。双方の場合において、第2の軸は、好ましくは、少なくとも部分的に中空軸として形成され、第1の軸が案内され、好ましくは支持される。
【0014】
遊星変速機(Wolfrom遊星変速機)は、好ましくは、段付き遊星歯車または2つの遊星歯車がともに回転するように耐トルク方式でともに接続されて構成される。遊星歯車は、互いに着脱可能または着脱不能に接続されることができる。段付き遊星歯車または接続された遊星歯車は、各構成要素の製造方法のみが異なることが好ましい。遊星変速機の動作に差異は生じない。段付き遊星歯車は、例えば機械加工によって、または歯車装置領域を着脱不能もしくは着脱可能に取り付けることによって、異なる歯車装置領域が軸方向に前後に設けられた構成要素から一体的に形成されることができる。あるいは、各歯車装置領域は、それぞれ1つの遊星歯車によって形成される。第1の歯車装置領域は、第2の歯車装置領域から軸方向にオフセットして形成される。歯車装置領域は、共通の遊星軸を中心に回転する。遊星軸は、遊星歯車または段付き遊星歯車の回転に伴って第1の軸を中心に公転する。
【0015】
円筒状支持領域は、第1の軸に一体的に、または着脱可能に、または着脱不能に、好ましくは堅固に接続されて形成されることができる。円筒状支持領域またはその表面は、より大きな焼き戻しおよび/または硬度を有することができる。円筒状支持領域は、第1の軸とともに回転することができ、または少なくともその上に支持されることができる。あるいは、円筒状支持領域は、第1の軸を中心に回転可能に第1の軸上に支持されてもよい。第1の軸の回転軸に垂直な外周面の断面形状は、円形であることが好ましい。
【0016】
第1の軸は、好ましくは入力軸であり、これを介してトルクが変速機に導入される。第1の軸は、好ましくは出力軸である第2の軸の中または上に支持することができ、またはその逆も可能である。あるいは、第1の軸は、ハウジング内でのみ支持されることもできる。
【0017】
円筒状支持領域の外径および支持領域上に直接支持された螺旋状に歯が形成された第2の歯車装置領域の歯先円の直径が、それぞれ、第1の歯車装置領域と太陽歯車との間の歯車装置の動作ピッチ円直径と一致するとき、螺旋状に歯が形成された第2の歯車装置領域は、好ましくは摩擦なしに支持領域上を転動することができる。したがって、第2の歯車装置領域と支持領域との間の支持点に摺動がないことが好ましい。これにより、この半径方向の支持は、本質的に損失なく機能する。
【0018】
支持領域上に直接支持された螺旋状に歯が形成された第2の歯車装置領域の面接触比εβは、好ましくは1に等しいか、または好ましくは1よりも大きいため、第2の歯車装置領域の回転位置とは無関係に、歯先円上に位置する歯ヘッドの部分が常に支持面と点接触または線接触することが保証される。したがって、支持領域は、歯ヘッド間の窪みに入ることができない。したがって、軸受アセンブリの衝撃が排除され、これは、直線歯車装置としての歯車装置の設計に必然的に当てはまる。
【0019】
少なくとも1つの遊星歯車の、支持領域上に直接支持された螺旋状に歯が形成された第2の歯車装置領域の面接触比εβが、ピッチpから第2の歯車装置領域の歯ヘッド幅を引いたものと第2の歯車装置領域のピッチpとの比よりも小さいが、それ以上である場合、第2の歯車装置領域の回転位置とは無関係に、歯先円上に位置する歯ヘッドの部分が常に支持面と点接触または線接触していることが保証されることもできる。第2の歯車装置領域の面接触比εβが上記比よりも大きい(等しくない)と、線接触が必ず発生するため好ましい。この場合、支持領域も歯ヘッド間の窪みに入ることができない。したがって、衝撃が排除される。
【0020】
特許請求される全ての特徴を含まない1つの代替的な設計では、第2の歯車装置領域はそれ自体支持領域上に支持されていない。むしろ、それを使用して支持領域上の軸受または支持が行われる外周面領域が、互いに接続された段付き遊星歯車または複数の遊星歯車上に形成されるかまたは設けられる。これは、互いに接続された段付き遊星歯車または遊星歯車に直接形成されることができ、あるいはその上に設けられた別の構成要素、好ましくはスリーブ構成要素の外周面によって形成されることができる。外周面または外周面領域は、好ましくは、互いに接続された段付き遊星歯車または遊星歯車の回転位置とは無関係に、支持領域上の半径方向支持が連続的に確保されるように構成される。スリーブ構成要素は、第2の歯車装置領域に軸方向に押し付けられるように、好ましくは押し付けられるように形成されることができる。あるいは、スリーブ構成要素は、任意の他の方法で、段付き遊星歯車または遊星歯車上の別の点に取り付けられることができ、これらは互いに接続されている。
【0021】
互いに接続された段付き遊星歯車または複数の遊星歯車のスリーブ構成要素または円筒状外周面領域の外径、および入力軸上の支持領域の直径が、それぞれ、第1の歯車装置領域と太陽歯車との間の歯車装置の動作ピッチ円直径と一致する場合、互いに接続された段付き遊星歯車または複数の遊星歯車は、好ましくは摩擦なしに支持領域上を転動することができる。したがって、支持点で摺動がないことが好ましい。この場合、この半径方向支持は本質的に損失なく機能する。
【0022】
遊星歯車の軸方向の支持は、好ましくはスラスト軸受、好ましくはローラおよび/またはニードルローラ軸受によって行われる。軸方向支持のために、排他的にスラスト軸受、好ましくは排他的にローラおよび/またはニードルローラ軸受を設けることができることが好ましい。あるいは、軸方向支持は、滑り軸受によって部分的または完全に達成されることができる。遊星歯車の半径方向における本質的にバックラッシュのない支持は、好ましくは、第2の歯車装置領域を支持領域上に支持することによってのみ達成される。支持領域上に支持され、円周の周りに分布する少なくとも3つの遊星歯車を設けることによって、遊星歯車およびそれらと噛み合う構成要素の有利な支持がもたらされる。
【0023】
入力軸は、出力軸に支持されることができる。入力軸はまた、遊星歯車または段付き遊星歯車の歯車装置内に支持されることができる。この場合、均一な荷重分布がもたらされることができる。出力軸は、ハウジング内で半径方向に支持されることが好ましい。
【0024】
第1の支持ディスクを好適に設けることにより、互いに接続された遊星歯車、または段付き遊星歯車は、ハウジングに対して第1の歯車装置領域の側で軸方向に支持されることができる。互いに接続された遊星歯車、または段付き遊星歯車は、支持ディスク上で摺動しながら直接支持されることができる。この場合、互いに接続された遊星歯車、または段付き遊星歯車と支持ディスクとによって滑り軸受が形成される。この場合、互いに接続された遊星歯車、または段付き遊星歯車、および/または支持ディスク、少なくとも互いに摺動する部分は、好ましくは、例えばテフロン(登録商標)などの摺動材料から少なくとも部分的に製造される。
【0025】
より大きな力を支持するために、互いに接続された遊星歯車、または段付き遊星歯車と支持ディスクとの間に第1のスラスト軸受が設けられることが好ましい。第1のスラスト軸受は、好ましくはボール、さらにより好ましくは、第2の軸(遊星歯車の軸)の周りを回転するローラまたはニードルローラ軸受として構成される。
【0026】
第1のスラスト軸受は、互いに接続された遊星歯車、または段付き遊星歯車の一端の一方側と、第1の支持ディスクの他方側とに支持される。互いに接続された遊星歯車、または段付き遊星歯車の移動に伴って、第1のスラスト軸受は、第2の軸(それぞれの遊星歯車の回転軸)を中心として回転し、第2の軸は、第1の軸(入力および出力軸の回転軸)を中心として公転する。半径方向に案内するために、第1のスラスト軸受は、例えば、互いに接続された遊星歯車または段付き遊星歯車(図示せず)の肩部に半径方向に保持されることができる。
【0027】
軸方向において、第1の支持ディスクは、好ましくは、第3のスラスト軸受によってハウジング上に第1の軸を中心に自由に回転可能に直接軸方向に支持される。あるいは、第1の支持ディスクはまた、ハウジングに対してまたはハウジング上に直接摺動可能に支持されることができ、すなわち、第3のスラスト軸受は、支持ディスクおよびハウジングの対応する表面によって形成される滑り軸受とすることができる。第1の支持ディスクは、例えば滑り軸受または転動体軸受によって、第1の軸上に半径方向に支持されることができる。あるいは、半径方向の支持は、例えば、第3のスラスト軸受によって、任意選択的にそのために設けられた軸受溝または凹部によって行われる。第3のスラスト軸受の回転軸が第1の支持ディスクの回転軸と一致するため、低摩擦で耐摩耗性の支持を確保することができる。第1の支持ディスクは、好ましくは第1の回転軸を中心に自由に回転可能であり、特に第1の軸を中心に自由に回転可能である(ハウジングに対する支持は低摩擦である)ため、支持ディスクは、第1のスラスト軸受が第1の回転軸を中心に公転するのに伴って第1の回転軸を中心として移動されることができる。ここで、支持ディスクは、好ましくは、互いに接続された遊星歯車または段付き遊星歯車の回転速度に対応するか、またはそれより僅かに低い回転速度を有する。後者は、第1のスラスト軸受の側の軸受面の変化による支持ディスクの摩耗が少ないことを意味することができる。
【0028】
あるいは、互いに接続された遊星歯車、または段付き遊星は、それらが第1の軸を中心に一緒に回転または公転するように、第1の支持ディスクと結合されることができる。例えば、第1の支持ディスクに向かって突出する軸端部であって、第2の軸と同軸になるように構成された軸端部がこの目的のために設けられることができ、それを使用して、互いに接続された遊星歯車、または段付き遊星歯車は、第1の軸を中心とした回転運動に対して第1の支持ディスクにしっかりと接続される。好ましくは、軸端部は、例えば、第2の回転軸と同軸に延在し、互いに接続された遊星歯車または段付き遊星歯車が支持される遊星軸の端部セグメントである。端部セグメントは、好ましくは、第1の支持ディスクの孔内に回転可能に保持されることができる。遊星軸は、好ましくは、第1の支持ディスク、または互いに接続された遊星歯車、または段付き遊星歯車のいずれかに堅固に接続され、いずれの場合も、それぞれの他方の上または中に自由に回転可能に支持される。遊星軸を設ける代わりに、互いに接続された遊星歯車または段付き遊星歯車に適切な軸受ジャーナルのみが設けられることもできる。あるいは、軸受ジャーナルが第1の支持ディスク上に設けられることもでき、軸受ジャーナルは、互いに接続された遊星歯車または段付き遊星歯車の対応する孔内に突出する。
【0029】
互いに接続された遊星歯車、または支持領域内の段付き遊星の半径方向支持により、好ましくは、互いに接続された遊星歯車から、または段付き遊星から支持ディスクに、またはその逆に、全くまたは僅かな半径方向力(支持ディスクの共回転に必要な力のみ)しか伝達されない。互いに接続された遊星歯車、または遊星軸によって支持ディスク上の段付き遊星の半径方向支持が過剰に決定されることを回避するために、互いに接続された遊星歯車、または段付き遊星上の支持ディスクの支持は、隙間嵌めを有することができる。
【0030】
したがって、この例では、第1の支持ディスクは、互いに接続された遊星歯車または段付き遊星歯車の第1の回転軸を中心とした公転とともに回転する。第3のスラスト軸受の軸受軸が第1の支持ディスクの回転軸と一致するため、低摩擦で耐摩耗性の支持を提供することができる。さらに、第1のスラスト軸受は、第1の支持ディスク上の転動面に対して固定された軸受軸を中心に回転する。これにより、低摩擦または無摩擦の支持が保証される。第1のスラスト軸受によって支持ディスクに円周方向の力は伝達されない。
【0031】
第2の支持ディスクの可能な設計および可能な配置は、好ましくは、第1の支持ディスクの設計および可能な配置に対応するが、ただし、支持は、好ましくは、ハウジングに対して直接行われるのではなく、第2のリング歯車の半径方向に延在する領域に対して行われる。第2のリング歯車の出力トルクが、例えば第2のリング歯車の半径方向外側に直接タップされる代替の実施形態では、第2の支持ディスクの軸方向支持は、ハウジングに対して直接行うこともできる。様々な構成および設計は互いに組み合わせられることができ、すなわち、第1の支持ディスク上の支持は、第2の支持ディスク上の支持と同じ方法で行われる必要はない。第2の支持ディスクは、第1の支持ディスクと同様に、第1の軸を中心に回転することが好ましい。第2のリング歯車の半径方向に延在する領域も第1の軸を中心に回転するため、第1の軸を中心に公転する第4の軸受は、低摩耗および低摩擦で動作することができる。
【0032】
また、第1の支持ディスクと同様に、第2の支持ディスクは、互いに接続された遊星歯車または段付き遊星歯車から独立して第1の軸を中心に回転可能に設けられることができる。あるいは、第1の支持ディスクと同様に、第2の支持ディスクは、互いに接続された遊星歯車または段付き遊星歯車の第2の軸と適切な結合(突出端部、軸受ジャーナル、遊星軸)によって結合されることができ、その結果、互いに接続された遊星歯車または段付き遊星歯車は、実際には第2の軸を中心に自由に回転することができるが、第1の軸を中心に第2の支持ディスクとともに公転することができる。
【0033】
遊星軸は、好ましくは、支持ディスクのうちの1つのレセプタクルに押し込まれ(堅固に保持される)、支持ディスクのそれぞれの他方において、支持ディスクは、支持ディスクが互いに対して軸方向に移動可能であるように、第2の軸を中心に自由に回転可能であるように保持される。そのような設計では、互いに接続された段付き遊星歯車または遊星歯車は、遊星軸の周りで自由に回転可能である。
【0034】
互いに接続された遊星歯車、または段付き遊星歯車は、第2の支持ディスク上に直接軸方向に摺動するように支持されることができ、または第2のスラスト軸受がそれらの間に軸方向に設けられることができる。
【0035】
第1の支持ディスクと同様に、第2のスラスト軸受は、第2の軸を中心に回転することができる。第2のスラスト軸受は、互いに接続された遊星歯車の肩部または凹部、または段付き遊星歯車、または突出端部、軸受ジャーナル、または遊星軸に半径方向に保持されることができる。
【0036】
第2のリング歯車(またはハウジング)に対する第2の支持ディスクの軸方向支持は、(上記のように)摺動式に(追加の軸受なしで)、または第4のスラスト軸受によって行うことができる。第2の支持ディスクと第2のリング歯車(またはハウジング)との間に軸方向に配置された第4のスラスト軸受は、第2のリング歯車(またはハウジング)および/または第2の支持ディスクの溝または窪みによって定位置に保持されることができる。
【0037】
ハウジングに対する第2のリング歯車の好ましく設けられた軸方向支持は、摺動式に直接(滑り軸受)または第5のスラスト軸受によって行うことができる。第5のスラスト軸受は、第1の軸の周りを回転し、その周りで第2のリング歯車の半径方向接続領域または半径方向延長領域も回転する。したがって、低摩擦で低摩耗の支持がもたらされる。
【0038】
遊星変速機は、好ましくは、互いに接続された遊星歯車または段付き遊星歯車が通常は半径方向に支持される遊星キャリアなしで形成される。
【0039】
遊星回転軸(第2の軸)に垂直な軸を中心とする様々な傾斜モーメントの支持は、一方では周方向力、半径方向力、および場合によっては(はすば歯車装置の場合)歯車装置に作用する軸方向力によって、他方では結果として生じる支持領域上の半径方向力によって引き起こされ、支持ディスク上に支持される軸方向力によってもたらされる。特に、歯の係合部に生じる周方向の力から生じる、歯の係合部に作用する半径方向力の方向に平行な軸の周りの第1の傾斜モーメントは、軸方向力によって支持される。さらにまた、歯の係合部に生じる径方向力、支持領域の支持力、および歯の係合部に生じる軸方向の力に起因する、歯の係合部に作用する周方向の力の方向に平行な軸を中心とした傾斜モーメントが、軸方向力によって支持される。
【0040】
支持ディスクの一方または双方を設ける代わりに、軸方向力はまた、滑り軸受アセンブリまたはボール軸受アセンブリによってリング歯車のハウジングまたは半径方向の壁セグメントに直接伝達されることもできる。支持ディスクを省略する場合、ローラ軸受は使用されることができないことに留意しなければならない。
【0041】
変速機技術に関して、より大きな効率が、好適に選択された歯の係合角度および歯の数によって既に達成されているが、遊星上の軸力による傾斜モーメントの異なる支持によってさらに増加させることができることが理解されている。また、遊星歯車の傾斜モーメントを支持しなければならないラジアル軸受が設けられる必要がないため、支持ディスクによる段付き遊星歯車の追加の横方向案内は、段付き遊星歯車をあまり広く具現化する必要がないことを可能にする。これにより、遊星変速機全体が軸方向に短く設計されることができる。さらにまた、支持はラジアル軸受なしで行われるため、ラジアル軸受による軸受損失はない。
【0042】
太陽歯車の外周(歯先円)は、支持領域の外径よりも大きいことが好ましい。
【0043】
好ましくは、互いに接続された少なくとも2組、好ましくは3組、さらに好ましくは4組または5組の遊星歯車、または円周の周りに均一に分布した段付き遊星歯車が設けられる。
【0044】
第1および第2のリング歯車は、好ましくは異なる歯数を有する。第1のリング歯車の第1の歯車装置領域への歯車段、および/または第2のリング歯車の第2の歯車装置領域への歯車段の歯数の差は、遊星の数またはその倍数に対応することが好ましい。
【0045】
遊星の第1の歯車装置領域の歯の数は、第2の歯車装置領域の歯の数に等しいことが好ましい。段付き遊星歯車は、好ましくは、単一の、好ましくは連続的な歯車形状で構成される。したがって、各歯は、好ましくは、段付き遊星歯車の2つの歯車装置領域の全幅にわたって連続的に延在する。基本的に同一の歯車形状の場合、第1のリング歯車と噛み合う第1の歯車装置領域の歯先円は、第2のリング歯車と噛み合う第2の歯車装置領域の歯先円とは異なる(好ましくはより大きい)ことが好ましい。例えば、段付き遊星歯車の第2の歯車装置領域の歯は、より鈍い/平坦であり、第2のリング歯車の歯の数は、好ましくは、第1のリング歯車の歯の数よりも遊星の数(またはその倍数)だけ多い。
【0046】
第1の軸は、第2の軸内に支持されることができる。この支持を省略すれば、第1の軸は、太陽-遊星歯車の歯係合によって支持されることができる。これにより、均一な歯係合力(これは特に3つの遊星歯車に適用される)が達成されることができる。第1の軸は、遊星歯車がそれによってセンタリングされるため、第2の軸および/またはハウジング内に支持されることが好ましい。この場合、遊星歯車は、支持領域上の支持によって、および2つのリング歯車の歯車装置との係合によって半径方向に案内および/または支持される。
【0047】
段付き遊星歯車は、第1の歯車装置領域、すなわち第1の歯車装置と、第2の歯車装置領域、すなわち第2の歯車装置とを含む。互いに接続された遊星歯車の場合、第1の遊星歯車は、第1の歯車装置領域、すなわち第1の歯車装置を含み、第2の遊星歯車は、第2の歯車装置領域、すなわち第2の歯車装置を含む。上述したように、第1の歯車装置領域(すなわち、第1の歯車装置)および第2の歯車装置領域(すなわち、第2の歯車装置)は、同じ歯車形状を有し、歯先円においてのみ異なることができる。段付き遊星歯車の場合、好ましくは連続的な歯車幾何学的形状で製造されることができ、その後、1つの歯車装置領域の歯先円は変更されることができる。互いに接続された遊星歯車の場合、2つの同一の遊星歯車が最初に製造されることができ、そのうちの1つが次に歯先円を変更するように処理される。
【0048】
全ての歯車およびさらなる構成要素は、好ましくは、従来の材料から形成された本質的に剛性の構成要素である。潤滑のために、油溜めまたは別の油供給などが設けられることができる。
【0049】
上述したように、第1のスラスト軸受は、好ましくは、互いに支持される構成要素の対応する表面上に直接滑り軸受として(一体形成)、または別個のスラスト軸受として(別個の軸受構成要素として)形成される。別個のスラスト軸受の場合、第1のスラスト軸受は、好ましくは、互いに支持される構成要素とは別個に設けられた少なくとも1つの摺動ディスクとして、または適切な転動体(ボール、ローラ、ニードルローラ、バレルなど)および必要に応じて軸受ケージなどを備えた転動体軸受(例えば、ボールまたはローラ軸受(サブグループとして針状ローラ軸受も含む))として構成される。以上から明らかなように、本開示では、転動体軸受は「回転スラスト軸受」とも称される。そのような回転スラスト軸受(転動体軸受)またはその転動体は、軸受と同軸の軸受軸を中心に公転する。言及された残りのスラスト軸受(第2、第3、第4、および/または第5のスラスト軸受)は、第1のスラスト軸受と同様に構成される。したがって、残りのスラスト軸受のそれぞれは、互いに支持される構成要素の対応する表面上に直接滑り軸受として、または別個のスラスト軸受(別個の軸受構成要素)として形成される。別個のスラスト軸受としての構成の場合、残りのスラスト軸受のそれぞれ1つは、好ましくは、互いに支持される構成要素とは別個に設けられた少なくとも1つの摺動ディスクとして、または適切な転動体および必要に応じて軸受ケージなどを備えた転動体軸受(例えば、ニードルローラ軸受を含むボール軸受またはローラ軸受)として形成される。スラスト軸受は、互いに異なるように形成されることができ、すなわち、各スラスト軸受は、他のスラスト軸受とは独立して、互いに支持される構成要素の対応する表面上に直接滑り軸受として、または別個のスラスト軸受(別個の軸受構成要素)として形成されることができる。さらにまた、各スラスト軸受の別個のスラスト軸受(滑り軸受または転動体軸受)としての設計はまた、互いに独立していてもよい。第1および第2のスラスト軸受は、好ましくは、双方とも転動体軸受として構成される。
【0050】
転動体軸受(そのような軸受に典型的である)は、バックラッシュのない方法で使用されることが好ましい。したがって、支持される構成要素は、好ましくは互いに予荷重される。本開示では、バックラッシュのない設定/予荷重は、好ましくは、各軸受に対して別々に、または対で、または変速機アセンブリまたはハウジング全体にわたって行われる。したがって、少なくとも第1および/または第2のスラスト軸受は、好ましくは、第1の支持ディスクおよび段付き遊星歯車またはそれぞれの遊星歯車と、第2の支持ディスクおよび段付き遊星歯車またはそれぞれの遊星歯車との間にバックラッシュなしで設定/予荷重される。これは、例えば、遊星軸を介して、またはさらなるスラスト軸受を介して外側から張力をかけることによって行うことができる。同様に、特に転動体軸受として構成される場合、他の軸受にバックラッシュのない設定を設けることが好ましい。
【0051】
滑り軸受の場合(軸受構成要素および一体的に形成された軸受の双方として)、互いに支持される構成要素間に少なくとも僅かなクリアランスが設けられることが好ましく(そのような軸受に典型的である)、そうでなければ摩擦が高くなるためである。バックラッシュのない設定と同様に、バックラッシュを伴う設定は、好ましくは、各軸受に対して別々に、または対で、または変速機アセンブリ全体にわたって行われる。
【0052】
上述したように、滑り軸受および転動体軸受の双方がスラスト軸受として使用されることもできる。滑り軸受は、ガタ付きが好ましく、転動体軸受は、ガタ付きがなくてもよい。
【0053】
全てが独立請求項に該当するわけではない本開示のさらなる態様は、以下のとおりである:
1.遊星変速機(2)であって、
ハウジング(4)と、
第1の軸(X1)を中心としてハウジング(4)内に回転可能に支持された外歯太陽歯車(8)を有する第1の軸(6)と、
第1の軸(6)と同軸のハウジング(4)に回転不能に設けられた第1のリング歯車(12)と、
ハウジングに第1の軸(X1)を中心として回転可能に支持された第2のリング歯車(16)と、
第1の軸(6)とリング歯車(12、16)との間に径方向に設けられ、太陽歯車(8)および第1のリング歯車(12)と噛み合う第1の歯車装置領域(26)と、第2のリング歯車(16)と噛み合う第2の歯車装置領域(28)とを有する段付き遊星歯車(24)、または、第1の軸(6)と第1のリング歯車(12)との間に径方向に設けられ、太陽歯車(8)および第1のリング歯車(12)と噛み合う第1の歯車装置領域を有する第1の遊星歯車と、第1の軸(6)と第2のリング歯車(16)との間に径方向に設けられ、第1の遊星歯車に耐トルク方式で同軸に接続されてともに回転し、第2のリング歯車(16)と噛み合う第2の歯車装置領域(28)を有する第2の遊星歯車とを含み、
第1の軸(6)には、第1の軸(6)と同軸に設けられた円筒状支持領域(32)が設けられ、円筒状支持領域上に、互いに接続された段付き遊星歯車(24)または遊星歯車が径方向に支持される、遊星変速機。
【0054】
2.円筒状支持領域(32)の外径が、太陽歯車(8)と第1の歯車装置領域(26)との間の歯車装置における太陽歯車(8)の動作ピッチ円直径と一致する、
態様1に記載の遊星変速機。
【0055】
3.第2の歯車装置領域(28)が、はすば歯車であり、
互いに接続された段付き遊星歯車(24)または遊星歯車が、第2の歯車装置領域(28)が第2の歯車装置領域(28)の歯先円上に位置する第2の歯車装置領域(28)の外周面によって支持領域(32)に支持される、
態様1または2に記載の遊星変速機。
【0056】
4.第2の歯車装置領域(28)の面接触比(εβ)が1以上である、
態様3に記載の遊星変速機。
【0057】
5.第2の歯車装置領域(28)の面接触比が、ピッチ(p)から第2の歯車装置領域(28)の歯先幅(b1)を引いたものと第2の歯車装置領域(28)のピッチ(p)との比以上である、
態様2または3のいずれか一項に記載の遊星変速機。
【0058】
6.互いに接続された段付き遊星歯車(24)または遊星歯車にスリーブ構成要素(62)であって、遊星回転軸(X2)と同軸の円筒状外周面を有し、互いに接続された段付き遊星歯車(24)または遊星歯車が支持領域(32)上で径方向に支持される、スリーブ構成要素が設けられ、または
互いに接続された段付き遊星歯車(24)または遊星歯車が、遊星回転軸(X2)と同軸の円筒状の外周領域を有し、互いに接続された段付き遊星歯車(24)または遊星歯車が、支持領域(32)に径方向に支持される、
態様1または2に記載の遊星変速機。
【0059】
7.トルク伝達によって作動中に互いに接続された段付き遊星歯車または遊星歯車に作用する、互いに接続された段付き遊星歯車または複数の遊星歯車の回転軸に垂直な傾斜モーメントが、互いに接続された段付き遊星歯車または複数の遊星歯車の軸方向支持によって支持される、
態様1から6のいずれか一項に記載の遊星変速機。
【0060】
8.段付き遊星歯車(24)の第1の歯車装置領域(26)の側または第1の遊星歯車の側に設けられた第1の支持ディスク(36)であって、互いに接続された段付き遊星歯車(24)または遊星歯車を軸方向に支持するために、第1の軸(X1)と同軸に設けられ、第1の軸(X1)を中心に回転可能である、第1の支持ディスク、および/または
段付き遊星歯車(24)の第2の歯車装置領域(26)の側または第2の遊星歯車の側に設けられた第2の支持ディスク(40)であって、第1の軸(X1)と同軸に設けられ、それを中心に回転可能であり、互いに接続された段付き遊星歯車(24)または遊星歯車を軸方向に支持するための第2の支持ディスク、をさらに含む、
態様1から7のいずれか一項に記載の遊星変速機。
【0061】
9.第1の支持ディスク(36)と段付き遊星歯車(24)または第1の遊星歯車との間には、遊星回転軸(X2)と同軸に第1のスラスト軸受(38)が設けられており、または、段付き遊星歯車(24)もしくは第1の遊星歯車が、第1の支持ディスク(36)上に直接摺動可能に軸方向に支持され、および/または、
第2の支持ディスク(40)と段付き遊星歯車(24)または第2の遊星歯車との間には、遊星回転軸(X2)と同軸に第2のスラスト軸受(42)が設けられており、または、段付き遊星歯車(24)または第2の遊星歯車が、第2の支持ディスク(40)上に直接摺動可能に軸方向に支持される、
態様8に記載の遊星変速機。
【0062】
10.第1の支持ディスク(36)とハウジング(4)との間に、第1の軸(X1)と同軸に第3のスラスト軸受(44)が設けられ、または第1の支持ディスク(36)が、ハウジング(4)上に摺動可能に軸方向に支持される、
態様8または9に記載の遊星変速機。
【0063】
11.遊星回転軸(X2)が、少なくとも1つの支持ディスク(36、40)が段付き遊星歯車(24)または第1および第2の遊星歯車とともに第1の軸(X1)を中心に公転するように、支持ディスク(36、40)のうちの少なくとも1つと結合される、
態様8から10のいずれか一項に記載の遊星変速機。
【0064】
12.第2のリング歯車(16)に耐トルク方式で接続され、第1の軸(X1)を中心として第2のリング歯車とともに回転する第2の軸(22)を含み、
第2のリング歯車(20)が、第2のリング歯車(16)の径方向延長領域(20)を介して第2の軸(22)とともに回転するように耐トルク方式で第2の軸に接続されるか、または第2のリング歯車(16)から第2の軸(22)まで径方向に延在する接続領域が設けられる、
先行する態様のいずれか一項に記載の遊星変速機(2)。
【0065】
13.第2の支持ディスク(40)が、段付き遊星歯車(24)または第2の遊星歯車と、第2のリング歯車(16)の径方向延長領域(20)または第2のリング歯車(16)から第2の軸(22)まで径方向に延在する接続領域との間に設けられ、
第2の支持ディスク(40)と第2のリング歯車(16)の径方向延長領域(20)または径方向に延在する接続領域との間に、第4のスラスト軸受(48)が第1の軸(X1)と同軸に設けられるか、または第2の支持ディスク(4)が第2のリング歯車(16)の径方向延長領域(20)または径方向に延在する接続領域上に摺動可能に軸方向に支持される、
態様12に記載の遊星変速機。
【0066】
14.第2のリング歯車(16)が、第2のリング歯車(16)の径方向延長領域(20)または第2のリング歯車(16)から第2の軸(22)まで径方向に延在する接続領域とハウジング(4)との間に設けられ、第1の軸(X1)と同軸の第5のスラスト軸受(52)によって軸方向に支持される、
態様12または13に記載の遊星変速機。
【0067】
15.第2の軸(22)が、中空状に構成された第2の軸(22)の軸方向に延在する内周面、または第2のリング歯車(16)から第2の軸(22)までの軸方向の接続領域と、第1の軸(6)との間に設けられたラジアル軸受によって径方向に支持される、
態様12から14のいずれか一項に記載の遊星変速機。
【0068】
16.スラスト軸受の少なくとも1つ、好ましくは全てが、ニードルローラ軸受またはローラ軸受である、態様8に従属する場合の、先行する態様のいずれか一項に記載の遊星変速機。
【0069】
17.互いに接続された段付き遊星歯車(24)または遊星歯車を第1または第2の軸上で径方向に支持する遊星キャリアが設けられていない、
先行する態様のいずれか一項に記載の遊星変速機。
【0070】
18.互いに接続された複数の段付き遊星歯車(24)または複数の遊星歯車が設けられる、
先行する態様のいずれか一項に記載の遊星変速機。
【0071】
19.段付き遊星歯車(24)の第1の歯車装置領域(26)および第2の歯車装置領域(28)が、連続した歯車装置から形成される、
先行する態様のいずれか一項に記載の遊星変速機。
【0072】
20.スラスト軸受の少なくとも1つ、好ましくは全てが、転動体軸受、好ましくはボール軸受として形成される、先行する態様のいずれか一項に記載の遊星変速機。
【0073】
21.遊星変速機(2)であって、
ハウジング(4)と、
ハウジング(4)に第1の軸(X1)を中心として回転可能に支持された第1の軸(6)と、
第1の軸(6)と同軸に設けられ、ハウジング(4)内で回転不能な第1のリング歯車(12)と、
ハウジングに第1の軸(X1)を中心として回転可能に支持された第2のリング歯車(16)と、
段付き遊星歯車(24)として、または共通の遊星軸(X2)を中心に回転する第1の遊星歯車および第2の遊星歯車から形成される遊星サブアセンブリとして構成される遊星回転軸(X2)を有する遊星であって、第1の軸(6)の回転中に遊星回転軸(X2)が第1の軸(X1)を中心として公転するように、第1のリング歯車(12)と噛み合う第1の歯車装置領域(26)と、第2のリング歯車(16)と噛み合う第2の歯車装置領域(28)とを含む、遊星と、
第1の軸(X1)と同軸の遊星の第1の歯車装置領域(26)の側に設けられ、第1の軸(X1)を中心として回転可能である、遊星を軸方向に支持するための第1の支持ディスク(36)、および第1の軸(X1)と同軸の遊星の第2の歯車装置領域(26)の側に設けられ、第1の軸(X1)を中心として回転可能である、遊星を軸方向に支持するための第2の支持ディスク(40)と、
好ましくは、第1の軸(6)に設けられた外歯太陽歯車(8)と、を含み、
遊星が、好ましくは、太陽歯車(8)と第1のリング歯車(14)との間に径方向に配置され、太陽歯車(8)および第1のリング歯車(14)と噛み合い、遊星回転軸(X2)は、太陽歯車と第1のリング歯車との間に径方向に位置し、
好ましくは、第1の支持ディスク(36)と遊星との間に、軸方向支持のために、遊星回転軸(X2)と同軸に第1の、好ましくは回転式のスラスト軸受(38)が設けられ、または遊星が第1の支持ディスク(36)上に直接軸方向に摺動支持され、および/または
好ましくは、第2の支持ディスク(40)と遊星との間に、軸方向支持のために、第2の、好ましくは回転式のスラスト軸受(42)が、遊星回転軸(X2)と同軸に設けられるか、または遊星が、第2の支持ディスク(40)上に直接摺動可能に軸方向に支持される、ことを特徴とする、遊星変速機。
【0074】
22.少なくとも1つの支持ディスク(36、40)が第1の軸(X1)を中心に遊星とともに公転するように、遊星が支持ディスク(36、40)のうちの少なくとも1つと結合される、
態様21に記載の遊星変速機。
【0075】
23.第1の軸(6)上に、第1の軸(6)と同軸の円筒状支持領域(32)が設けられ、円筒状支持領域上に遊星が半径方向に支持される、態様21または22に記載の遊星変速機。
【0076】
24.円筒状支持領域(32)の外径が、太陽歯車(8)と第1の歯車装置領域(26)との間の歯車装置における太陽歯車(8)の動作ピッチ円直径と一致する、
態様23に記載の遊星変速機。
【0077】
25.第2の歯車装置領域(28)が螺旋状に歯が形成され、第2の歯車装置領域(28)の歯先円上に位置する第2の歯車装置領域(28)の外周面を有する遊星歯車が支持領域上に支持され、または
遊星歯車には、遊星回転軸(X2)と同軸の円筒状外周面を有するスリーブ構成要素(62)が設けられ、スリーブ構成要素(62)を使用して、遊星歯車が支持領域(32)上に半径方向に支持されるか、または遊星歯車が同軸の円筒状外周領域を含み、スリーブ構成要素を使用して、遊星歯車が支持領域(32)上に半径方向に支持される、
態様24に記載の遊星変速機。
【0078】
26.第1の支持ディスク(36)とハウジング(4)との間に、第1の軸(X1)と同軸に第3のスラスト軸受(44)が設けられるか、または第1の支持ディスク(36)がハウジング(4)上に摺動可能に軸方向に支持される、
態様21から25のいずれか一項に記載の遊星変速機。
【0079】
27.第2のリング歯車(16)に剛結合または一体形成され、第1の軸(X1)を中心として第2のリング歯車(16)とともに回転する第2の軸(22)を含み、
第2の支持ディスク(40)が、遊星の第2の歯車装置領域(26)の側にある端部側と、第2のリング歯車(16)の径方向延長領域(20)または第2のリング歯車(16)から第2の軸(22)まで径方向に延在する接続領域との間に設けられ、
第2の支持ディスク(40)と第2のリング歯車(16)の径方向延長領域(20)または径方向に延在する接続領域との間に、第4のスラスト軸受(48)が第1の軸(X1)と同軸に設けられるか、または第2の支持ディスク(40)が第2のリング歯車(16)の径方向延長領域(20)または径方向に延在する接続領域上に摺動可能に軸方向に支持される、
態様21から26のいずれか一態様に記載の遊星変速機(2)。
【0080】
28.第2のリング歯車(16)が、第2のリング歯車(16)の径方向延長領域(20)または第2のリング歯車(16)から第2の軸(22)まで径方向に延在する接続領域とハウジング(4)との間に設けられ、第1の軸(X1)と同軸の第5のスラスト軸受(52)によって軸方向に支持される、
態様27に記載の遊星変速機。
【0081】
29.スラスト軸受の少なくとも1つ、好ましくは全てが、転動体軸受、好ましくはボール軸受、ニードルローラ軸受、またはローラ軸受である、態様21から28のいずれか一項に記載の遊星変速機。
【図面の簡単な説明】
【0082】
好ましい実施形態を、図面を参照して以下に説明する:
【
図1】第1の実施形態にかかる遊星変速機の概略部分断面図を示している。
【
図2】第1の実施形態にかかる遊星変速機の入力軸の概略部分断面図を示している。
【
図3A】衝突力を含む、第1の実施形態にかかる遊星変速機の段付き遊星歯車の異なる概略部分断面図を示している。
【
図3B】衝突力を含む、第1の実施形態にかかる遊星変速機の段付き遊星歯車の異なる概略部分断面図を示している。
【
図4】第1の実施形態にかかる遊星変速機の部品または構成要素の概略側面図を示している。
【
図5】第1の実施形態にかかる遊星変速機の段付き遊星歯車の第1のリング歯車と第1の歯車装置領域との間の歯車装置の概略側面図を示している。
【
図6】第1の実施形態にかかる遊星変速機の段付き遊星歯車の第1の歯車装置領域と太陽歯車との間の歯車装置の概略側面図を示している。
【
図7】第1の実施形態の遊星変速機の第2のリング歯車と段付き遊星歯車の第2の歯車装置領域との間の歯車装置の概略側面図を示している。
【
図8】第1の実施形態にかかる、遊星歯車変速機の入力軸の支持領域上での段付き遊星歯車の第2の歯車装置領域の支持の概略側面図を示している。
【
図9】第1の実施形態にかかる段付き遊星歯車の様々な回転位置における段付き遊星歯車の第2の歯車装置領域と入力軸の支持領域との間の接触領域の概略図を示している。
【
図10】さらなる実施形態にかかる、段付き遊星歯車の様々な回転位置における、段付き遊星歯車の第2の歯車装置領域と入力軸の支持領域との間の接触領域の概略図を示している。
【
図11】特許請求される全ての特徴を有しないさらなる遊星変速機の概略部分断面図を示している。
【
図12】
図11の遊星変速機の段付き遊星歯車の概略部分断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0083】
実施形態は、図面を参照して以下に説明される。同一または類似の特徴は、全ての図で同じ参照符号によって示されており、明確にするために、全ての図において全ての参照符号が使用されているわけではない。
【0084】
図1に示す遊星変速機2は、例えば駆動機械またはそのハウジングに堅固に接続されたハウジング4を含む。この駆動機械は、例えば、電気モータまたは内燃機関とすることができる。遊星変速機2は、好ましくは遊星変速機2の入力軸または駆動軸である第1の軸6を含む。遊星歯車変速機2の動作時、第1の軸6は、第1の軸X1を中心に回転する。
図1では、ハウジング4、第1の軸6、および後述するさらなる構成要素は、回転対称構成要素として軸X1の下方にも形成されているが、第1の軸X1の上方にのみ示されている。
【0085】
第1の軸6は、
図1の左側から駆動可能である。
図2からも明らかなように、第1の軸6には、第1の軸X1を中心として第1の軸6とともに回転可能な外歯太陽歯車8が設けられている。本実施形態では、太陽歯車8は、第1の軸の
図1中左端から軸6に押し付けられている。太陽歯車8は、好ましくは、第1の軸6に堅固に取り付けられる。外歯太陽歯車8は、直線状または螺旋状の歯付き歯車装置領域10を有することができる。
【0086】
さらにまた、第1の軸6と同軸のハウジング4内に堅固に設けられ、好ましくは取り付けられたリング歯車12が設けられる。例えば、第1のリング歯車12は、ハウジング4に圧入されたり、ハウジング4に螺合されたりする。第1のリング歯車12は、内側歯車装置14を有する。第1のリング歯車12は、内側歯車装置14が太陽歯車8の歯車装置領域10と径方向に間隔をあけて太陽歯車8の径方向外側に配置される(半径方向に見て、好ましくは重なり合う)ように構成されている。
【0087】
図1の右側には、第1のリング歯車
12に隣接して、第1の軸X1と同軸に設けられ、第1の軸X1を中心に回転可能な第2のリング歯車16が設けられている。第2のリング歯車16は、内側歯車装置18を有する。第2のリング歯車16は、内側歯車装置18(または内歯領域)を第2の軸22に径方向に接続する径方向延長領域20を含む。第2の軸22は、第1の軸X1と同軸に設けられ、第2のリング歯車16に堅固に接続され、またはここではそれと一体的に形成され、第1の軸X1を中心として第2のリング歯車16によって回転可能である。
【0088】
さらにまた、段付き遊星歯車24が設けられている。段付き遊星歯車24はまた、
図3Aおよび
図3Bにさらに詳細に概略的に示されている。
図1および
図3Aおよび
図3Bから明らかなように、段付き遊星歯車24は、その左側領域に第1の外歯歯車装置領域26を含み、その右側領域に第2の外歯歯車装置領域28を含む。両歯車装置領域26、28は、段付き遊星歯車24の基体30に設けられるか、またはそれと一体に形成される。一体形成において、歯車装置領域26、28は、例えば、基体30からフライス削りされる。あるいは、歯車装置領域26、28は、基体30に取り付けられる(例えば、ここには示されていないが、押圧されている)。
【0089】
図1および
図2に示すように、第1の軸6は、右側(ここでは、離間している)に、太陽歯車8の歯車装置領域10に隣接する支持領域32を含む。支持領域32は、第1の軸6と同軸上に形成された(円筒状の)外周面34を有する。支持領域は、第1の軸6に固定的に接続されたスリーブとして構成されることもできる。
【0090】
上記の部品および/または構成要素は、その第1の歯車装置領域26を有する段付き遊星歯車24が太陽歯車8の内側で噛み合うと同時に、外側で第1のリング歯車12の内側歯車装置14と噛み合うように構成および配置される。同時に、その第2の歯車装置領域28を有する段付き遊星歯車24は、第2のリング歯車16の内側歯車装置18と外側で噛み合う。したがって、内側において、第2の歯車装置領域28の歯先円は、支持領域32の外周面34と接触している。
【0091】
したがって、段付き遊星歯車24は、軸方向の異なる点、すなわち、第1のリング歯車12と太陽歯車10との間の一方側、および、第2のリング歯車16と支持領域32との間の他方側で半径方向に支持される(および/または、トルク伝達からの力が歯車装置に作用する)。
【0092】
さらにまた、第2の歯車装置領域28および支持領域32は、第2の歯車装置領域28の歯先円(直径)が、段付き遊星歯車24の第1の歯車装置領域26と太陽歯車8の歯車装置領域10との間の歯車装置の動作ピッチ円(直径)と一致するように構成される。
【0093】
動作中、すなわち第1の軸6の回転中、第1の軸6の回転は、太陽歯車8を介して段付き遊星歯車24に伝達される。第1のリング歯車12のハウジング固定支持により、段付き遊星歯車24は、それ自体の回転軸(以下、第2の軸X2と称する)を中心とした回転とともに第1の軸X1を中心として公転する。これらの重ね合わされた動き、すなわち、それ自体の回転軸を中心とした回転(第1の軸X1を中心として公転する第2の軸X2を中心とした回転(これは、ミュラーによる遊星回転速度に対応する))および第1の軸X1を中心とした同時公転(これは、ミュラーによる遊星キャリア回転速度に対応する)は、第2の歯車装置領域28と第2のリング歯車16との歯係合を介して、第1の軸X1を中心とした第2のリング歯車16の回転運動に伝達される。これは、最終的に第2の軸22上のドライブとして出力される。
【0094】
第2の歯車装置領域28は、太陽歯車8の歯車装置の動作ピッチ円および第1の歯車装置領域26の歯車装置の動作ピッチ円と同一である支持領域32の外周上でその歯先円を伴って転動するため、第2の歯車装置領域28およびそれに接触する支持領域32の外周面34は、同一の周速度で回転し、その結果、転動運動において摺動は生じない。以下に説明するように、第2の歯車装置領域28のはすば歯車装置により、歯先円内の支持が段付き遊星歯車24の回転位置とは無関係に行われること、すなわち、衝撃が発生し得ないことが保証される。
【0095】
さらにまた、この実施形態では、段付き遊星歯車24は、有利には、特に少なくともスラスト軸受38および42によって軸方向にさらに支持される。
図1において左側を支持するために、段付き遊星歯車24に隣接する左側に第1の支持ディスク36が設けられている。
【0096】
第1の支持ディスク36と段付き遊星歯車24との間の軸方向には、本実施形態ではローラ軸受として構成され、第1の支持ディスク36に対して段付き遊星歯車24を軸支する第1のスラスト軸受38が設けられている。第1の支持ディスク36は、環状に構成され、第1の軸X1と同軸に配置される。リング外径およびリング内径は、両者の差が第1のスラスト軸受38の外径よりも大きくなるように構成されることが好ましい。さらにまた、ここでのリング内径は、太陽歯車8の歯先円よりも大きいことが好ましい。第1のスラスト軸受38は、段付き遊星歯車24の回転時に第2の軸X2(段付き遊星歯車24の回転軸)を中心として公転するように、すなわち、第2の軸X2と同軸に第1のスラスト軸受38が配置されるように構成および配置される。さらにまた、第1のスラスト軸受38は、一方側(
図1の右側)では基体30上を転動し、他方側では第1の支持ディスク36上を転動するように構成されている。
図4は、とりわけ、その相対的な配置が明らかである第1のスラスト軸受38および第1の支持ディスク36の設計を示す概略側面図を示している。追加の段付き遊星歯車用の追加の第1のスラスト軸受は示されていない。
【0097】
図1の右側を支持するために、段付き遊星歯車24に隣接する右側に第2の支持ディスク40が設けられている。第2の支持ディスク40は、好ましくは、第1の支持ディスク36と同一または同様に環状に構成され、第1の軸X1と同軸に配置される。リング外径およびリング内径は、支持ディスク36について説明したように構成される
。
【0098】
第2の支持ディスク40と段付き遊星歯車24との間の軸方向には、本実施形態ではローラ軸受として構成され、段付き遊星歯車24を第2の支持ディスク40に支持する第2のスラスト軸受42が設けられている。第2のスラスト軸受42は、段付き遊星歯車24の回転時に第2の軸X2(段付き遊星歯車24の回転軸)を中心に
回転するように構成されており、すなわち、第2のスラスト軸受42は、第2の軸X2と同軸に配置されている。さらに、一方側(
図1の左側)では、それは基体30上を転動し、他方側では、それは第2の支持ディスク40上を転動するように構成されている。第1の支持ディスク36に関する
図4は、同様に適用されるべきである。
【0099】
さらにまた、第1の支持ディスク36を軸方向(段付き遊星歯車24とは反対側)に支持するために、第1の支持ディスク36とハウジング4との間には、軸方向に第3のスラスト軸受44が設けられている。したがって、第3のスラスト軸受44は、第1の支持ディスク36の
図1の左側に設けられ、ハウジング44の第1の径方向に延在するハウジング壁セグメント46に対して支持される。第3のスラスト軸受44は、第1の軸X1を中心として
回転し、例えば、第1の径方向に延在するハウジング壁セグメント46または第1の支持ディスク36内の図示されていない軸受溝によって径方向に案内される。
図4に示す概略側面図は、第1の支持ディスク36に対する第3のスラスト軸受44の設計および相対配置を示す。
【0100】
他方では、第2の支持ディスク40の軸方向支持のために、第2の支持ディスク40と第2のリング歯車16の径方向延長領域20との間に第4のスラスト軸受48が軸方向に設けられる。したがって、第4のスラスト軸受48は、第2の支持ディスク40の
図1における右側に設けられ、第2のリング歯車16の径方向延長領域20に支持される。第4のスラスト軸受48は、第1の軸X1を中心に
回転し、例えば、第1の支持ディスク36で説明したように、半径方向に案内される。
図4も同様に適用される。
【0101】
第2のリング歯車16をさらに軸方向に支持するために、遊星歯車とは反対側に、リング歯車16の径方向延長領域20とハウジング4の径方向に延在する第2のハウジング壁セグメント50との間に軸方向に第5のスラスト軸受52がさらに設けられる。第5のスラスト軸受52は、第1の軸X1を中心に回転し、例えばリング歯車16の径方向延長領域20の突起上を径方向に案内される。
【0102】
本実施形態では、第1のラジアル軸受54がさらに設けられ、これを使用して、第2のリング歯車16に接続され、中空軸として構成された第2の軸22が、第1の軸6の(
図1の右側)端部セグメント55の内側に支持される。
【0103】
第1の支持ディスク36および第2の支持ディスク40を半径方向に支持するために、この実施形態では、段付き遊星歯車24の中空構成の基体30の内側に軸キャリア体56が設けられている。軸キャリア体56には、遊星軸60が収容されており、この遊星軸を中心として段付き遊星歯車24が回転する。したがって、遊星軸60は、第2の軸X2と同軸に構成され、段付き遊星歯車24に対して第2の軸X2周りに回転自在となっている。遊星軸60は、軸方向端部において、第1および第2の支持ディスク36、40のそれぞれの受け入れ孔に受け入れられる、軸キャリア体56から軸方向に突出する軸端部を含む。ここでは、遊星軸60が支持ディスク36、40のうちの少なくとも一方に押し込まれ、他方のディスクが、第2の支持ディスク40 40に対する第1の支持ディスク36の自由な軸方向移動が可能であり、またはその逆も可能である隙間嵌めを有するように、受け入れが行われる。軸キャリア体56は、遊星軸60上で自由に回転することができる。本実施形態では、それは摺動可能に支持され、好ましくは、起こり得る過剰決定を回避するために隙間嵌めを有する。あるいは、別個の軸受構成要素が設けられることができる。さらなる代替例では、基体30は、ここでも、例えば軸受構成要素を介して、軸キャリア体56に対して自由に回転可能であるように構成されることができる。
【0104】
これにより、段付き遊星歯車24の回転軸は、第1の軸X1を中心としたその公転において、段付き遊星歯車24が第1の支持ディスク36および第2の支持ディスク40も回転させるように、第1の支持ディスク36および第2の支持ディスク40に結合される。
【0105】
上述したように、段付き遊星歯車24の回転軸と支持ディスク36および40の回転軸とが第1の軸X1を中心として同じ周速度を有し、したがってスラスト軸受38および42と支持ディスク36および40との間に滑りが発生しないため、段付き遊星歯車24と第1および第2の支持ディスク36および40との間に特に低摩擦の軸方向支持が確保される。
【0106】
全体として、例えば
図3Aおよび
図3Bに示されるように、記載された設計では、以下の有利な力およびトルク配置を得ることができる:動作中、すなわち、変速機によるトルクの伝達中、入力トルクは、太陽歯車8から段付き遊星歯車24に伝達される。ここで、太陽歯車8の歯車装置領域10と段付き遊星歯車24の第1の歯車装置領域26との間の係合には、円周方向の力F
uSが作用する。段付き遊星歯車24には、径方向の力F
rSと(はすば歯車装置による)軸方向力F
axSとが作用する。第1のリング歯車12上の第1の歯車装置領域26の転動および支持により、同じ周方向力F
uH1、径方向力F
rH1、および(はすば歯車による)軸方向力F
axH1の間の係合において、段付き遊星歯車24に作用する。さらにまた、段付き遊星歯車24の第2の歯車装置領域28と第2のリング歯車16との噛み合いにおいて、段付き遊星歯車24には、周方向の力F
uH2、径方向の力F
rH2、および、斜歯歯車によって軸方向の力F
axH2が作用する。
【0107】
歯車装置に作用する上述した半径方向力は、部分的に釣り合い、結果として生じる半径方向の支持力FAをもたらし、これは、支持領域32から出発して段付き遊星歯車24に作用する(半径方向力の平衡)。
【0108】
歯車装置に作用する上述した軸力は、はすば歯車装置の向きに応じて部分的に釣り合うか、または増加し、軸方向に支持されなければならない。
【0109】
さらにまた、歯車に作用する半径方向力、軸方向力、および周方向力、ならびに歯車に作用する半径方向支持力および軸方向力から、段付き遊星歯車24が回転する第2の軸X2に垂直な2つの異なる傾斜モーメントが生じる。特に、第1の傾斜モーメントは、
図3Aおよび
図3Bに示すy軸の周りに生じ、第2の傾斜モーメントは、
図3Aおよび
図3Bに示すz軸の周りに生じる。
【0110】
傾斜モーメントおよび作用する軸力の支持は、好ましくは、支持ディスク36、40と段付き遊星歯車24との間に配置されたスラスト軸受38、42(またはこれらが存在しない場合、支持ディスク
36,40上の直接支持を介して)を介して軸方向(
図3A、
図3Bのx軸に対応する第2の軸X2に向かって)に行われる。必要な軸方向支持力は、力とトルクの平衡から生じる。特に、上記周方向力に起因する傾斜モーメントは、軸力F
ax1,F
ax2によってy軸周りに支持される。歯車装置の半径方向力、支持力F
A、および軸力から生じるz軸周りの傾斜モーメントは、軸力F
ax3およびF
ax4によって支持される。歯車装置または軸受のバックラッシュに応じて、力は、マークポイントまたは表面領域上でのみ作用する。
【0111】
力は、従来の手段(シミュレーションなど)によって計算されることができ、構成要素はそれに応じて設計される。軸力からの摩擦力(図示せず)は、移動方向に対して作用し、支持ディスク36および40に反作用トルクを発生させる。一方の支持ディスク36、40に押し込まれた遊星軸60は、支持ディスク36、40の同期走行を保証する。
【0112】
変速機技術に関して、より大きな効率が、好適に選択された歯の係合角度および歯の数によって既に達成されていることが理解されている。支持ディスクによる段付き遊星歯車の追加の横方向案内はまた、段付き遊星歯車をより広く具現化する必要性を低減することを可能にし、これは、傾斜モーメントを半径方向支持によって支持する必要がなくなり(従来の変速機に通常存在するラジアル軸受を交換せずに省略することができる)、それによって遊星変速機全体が軸方向に短く設計されることができるためである。
【0113】
図1および
図2からわかるように、この実施形態では、軸6は、支持領域32と太陽歯車8との間に、太陽歯車8の歯元円よりも小さい外径を有する同軸に配置された、好ましくは円筒形の凹状セグメント58を有する。これにより、段付き遊星歯車24の第1の歯車装置領域26が太陽歯車8の歯車装置領域10と接触し得ないことが保証される。
【0114】
図5は、第1のリング歯車12の内側歯車装置14と段付き遊星歯車24の第1の歯車装置領域26との間の歯車対または係合を示している。d
P1は、段付き遊星歯車24の第1の歯車装置領域26の標準ピッチ円であり、d
bPは基本円である。d
H1は標準ピッチ円であり、d
bH1は、第1のリング歯車12の内側歯車装置14の基本円である。d
wP-H1は、ピッチ点Cを通って延在する第1の歯車装置領域26と第1のリング歯車12の内側歯車装置14との間の係合の動作ピッチ円である。図からわかるように、段付き遊星歯車24の第1の歯車装置領域26が、大きな動作圧力角を有するインボリュートの端部(最小トップランドの前)においてのみ、第1のリング歯車12の内側歯車装置14と噛み合うように、歯車装置が構成されており、同時に、ピッチ点Cは接触AEの経路のほぼ中心にある。したがって、損失が最も低いいわゆる低損失歯車装置が実現される。接触AEの経路は、2つの基本円d
bH1およびd
bPに対する接線から生じる接触線の一部である。
【0115】
図6は、段付き遊星歯車24の第1の歯車装置領域26と太陽歯車8の歯車装置領域10との間の歯車対または係合を示す。上述したように、d
P1は、段付き遊星歯車24の第1の歯車装置領域26の標準ピッチ円であり、d
bPは、段付き遊星歯車の基本円である。d
Sは、標準ピッチ円であり、d
bSは、太陽歯車8の歯車装置領域10の基本円である。d
wP-Sは、ピッチ点Cを通って延在する、第1の歯車装置領域26と太陽歯車8の歯車装置領域10との間の係合の動作ピッチ円である。ここでも明らかなように、歯車は、ピッチ点Cが接触AEの経路のほぼ中心に入るように構成されている。したがって、いわゆる低損失歯車装置もここで実現される。
【0116】
図7は、第2のリング歯車16の内側歯車装置18と段付き遊星歯車24の第2の歯車装置領域28との間の歯車対または係合を示している。d
P2は標準ピッチ円であり、d
bPは、段付き遊星歯車24の第2の歯車装置領域28の基本円である。同一の歯車形状に起因して、第2の歯車装置領域28の基本円は、第1の歯車装置領域26の基本円と等しいが、それぞれの標準ピッチ円は互いに異なる。D
H2は、標準ピッチ円であり、d
bH2は、第2のリング歯車16の内側歯車装置18の基本円である。d
wP-H2は、ピッチ点Cを通って延在する第2の歯車装置領域28と第2のリング歯車16の内側歯車装置18との間の係合の動作ピッチ円である。低損失歯車もここで実現される。すなわち、歯車は、ピッチ点が接触AEの経路のほぼ中心に入るように構成される。第1のリング歯車12の第1の歯車装置領域26と内側歯車装置14との間の係合とは対照的に、動作圧力角は非常に小さい。段付き遊星歯車24の第2の歯車装置領域28の歯ヘッドは非常に広く(鈍く)、歯元円は基本円db
1よりも僅かに大きいだけである。
【0117】
図8は、支持領域32の外周面34上での段付き遊星歯車24の第2の歯車装置領域28の支持を示している。外周面34の直径は、太陽歯車8の第1の歯車装置領域26と歯車装置領域10との間の係合の動作ピッチ円d
wP-Sの直径に対応する。
【0118】
図9および
図10は、第2の歯車装置領域28の図を示しており、そこでは、段付き遊星歯車24の回転位置に応じて支持領域32の外周面34と接触する歯車装置領域28の領域をそれぞれ示す様々な可能な接触線b
Lが示されている。
【0119】
段付き遊星歯車24の回転軸と支持領域32の回転軸との軸方向距離が、同時支持による回転中に一定のままである、外周面34上の第2の歯車装置領域28の連続的な支持のために、段付き遊星歯車24の回転位置とは無関係に、第2の歯車装置領域28の歯の、第2の歯車装置領域28の歯先円上にある部分が、支持領域32の外周面34と接触していることが保証されなければならない。これは、第2の歯車装置領域28が所定の幾何学的形状で螺旋状に歯が付けられていることによってのみ保証されることができる。
図9および
図10に示す以下の特性値も設計に関連する:
b
Pl 回転軸方向における第2の歯車装置領域28の歯車の幅
b
1 第2の歯車装置領域28の歯の先端幅
p 第2の歯車装置領域28の歯車装置のピッチ
b
eff 第2の歯車装置領域28と支持領域32の外周面34との間の有効(実際の)支持幅(
図9および
図10中の太線)
β 第2の歯車装置領域28の歯車装置のねじれ角
ε
β ε
β=(b
Pl×tan β)/pから得られる面接触比。
【0120】
図9は、歯車装置が面接触比ε
β=1で構成される実施形態を示している。この場合、有効支持幅b
effは、式b
eff=(b
1/p)×b
Pl
から決定されることができる。ε
β=1の場合、それは一定であり、すなわち、段付き遊星歯車24の回転位置とは無関係である。
図9は、例として、様々な有効支持幅b
L1、b
L2、b
L3を示している。明らかにわかるように、それらは、上記の式から生じる同一の長さを有する。
【0121】
図10は、歯車装置が面接触
比ε
β<1で構成される実施形態を示している。
図10は、例として、この場合の有効支持幅b
L5、b
L6、b
L7を示している。明らかにわかるように、この場合の有効支持幅は、段付き遊星歯車24の回転位置に応じて大きく異なる。特に、2つの極値がある。したがって、有効支持幅b
L5は、歯車装置の幅b
Plに対応し、有効支持幅b
L6は、2点のみに対応する。衝撃が回避されるだけである。
【0122】
したがって、εβ<1の場合、衝撃は発生せず、軸方向距離は一定のままである。したがって、εβ<1の場合、以下の式がさらに満たされなければならない:εβ≧(p-b1)/p
【0123】
変速機の構成において、予想される軸力および半径方向力は、伝達されるトルクおよび所望の変速比から開始して計算される。例えば、歯車装置における力を計算するための従来のプログラムがここで使用されることができる。これに基づいて、歯車ステップ、特に支持領域32上の第2の歯車装置領域28の支持の設計が行われる。ここで、第2の歯車装置領域28と支持領域32との間の線状または点状の接触領域における最大許容ヘルツ接触応力を考慮して、設計において有効支持幅が考慮される。
【0124】
支持領域32の外径が太陽歯車8と第1の歯車装置領域26との間の歯車装置の動作ピッチ円直径と一致する場合、転動体軸受の値は許容ヘルツ応力であると仮定されることができる。支持領域32の外径が太陽歯車8と第1の歯車装置領域26との間の歯車装置の動作ピッチ円直径と一致しない場合、摺動が発生し、損失がかなり高くなるため、ヘルツ応力の許容値はより低く、歯車の値を向くべきである。
【0125】
具体的な設計に応じて、遊星変速機の組み立ては様々な方法で行うことができる。ハウジングは、好ましくは、変速機が容易に修理可能且つ保守可能であるように構成される。
【0126】
この変速機は、低バックラッシュで高変速比が要求される分野において使用されることができる。例えば、変速機は、ロボット工学セクタにおいて使用されることができる。
【0127】
別の遊星変速機2を
図11に示す。
図11の遊星変速機は、以下の特徴を除いて、第1の実施形態にかかる
図1に示すものに対応する:段付き遊星歯車24の第1の歯車装置領域26および第2の歯車装置領域28が直線状の歯を有する。太陽歯車8ならびに第1のリング歯車12および第2のリング歯車16の歯車装置は、これに対応して直線歯状に構成されている。第2の歯車装置領域26は、軸方向右側に長くなるように構成されている。スリーブ構成要素62は、第2の歯車装置領域28の右端に押し付けられる。この実施形態では、スリーブ構成要素62は、第2の歯車装置領域28の歯車装置と相補的な締まり嵌めで内側に構成されている。スリーブ構成要素62は、外周側において円筒状に構成されている。第2の軸X2に垂直な断面視において、外周面は円形である。スリーブ構成要素62の外周面は、第1の軸6に設けられた支持領域32に径方向に支持される。スリーブ構成要素62の外周面は、太陽歯車8と第1の歯車装置領域26との間の歯車装置の動作ピッチ円直径に対応する外径を有する。したがって、変速機の動作において、スリーブ構成要素62の外周面は、摺動することなく支持領域32上を転動する。スリーブ構成要素62が係合していない第2の歯車装置領域28の歯車の部分は、第2のリング歯車16の内側歯車装置と噛み合う。第1の軸6は、第2の歯車装置領域28の噛み合い領域内で第2の歯車装置領域28に対して径方向に離間している。
【0128】
図12は、スリーブ構成要素62が圧入された
図11の段付き遊星歯車24の断面図を示している。
【0129】
図11からの段付き遊星歯車24に作用する力は、直線歯車のみが使用されているため、歯車に作用する軸力は省略されている点で、第1の実施形態とは異なる。したがって、y軸およびz軸を中心とする傾斜モーメントは、支持ディスク36、40内で軸方向にのみ支持される。
【0130】
別の図示されていない実施形態では、第1の歯車装置領域は、直線歯状に構成されることができ、第2の歯車装置領域は、螺旋歯状に構成されることができる。あるいは、双方の歯車装置領域は、螺旋歯状に構成されてもよい。
【0131】
請求項1に記載されていない例では、第2の歯車装置領域は、直線歯を有することができ、第1の歯車装置領域は、直線歯または螺旋歯を有することができる。
【0132】
本開示の核心を逸脱することなく、特定の実施形態が様々な方法で変更または変形されることができることは自明である。例えば、段付き遊星歯車は、さらなる調整を必要とせずに、ともに回転するように耐トルク方式で互いに接続された2つの遊星歯車に置き換えることができる。この目的のために、互いに接続された遊星歯車は、支持ディスクの孔内に順に保持された共通の遊星軸上に支持される。
【0133】
支持ディスクに接続するための遊星軸の代わりに、軸方向に突出し、第2の軸と同軸に配置された軸受ジャーナルが、互いに接続された段付き遊星歯車または遊星歯車に設けられることができる。
【0134】
遊星軸または軸受ジャーナルによる段付き遊星歯車および支持ディスクの結合の代わりに、支持ディスクの径方向支持は、第1または第2のスラスト軸受のために支持ディスクに設けられた凹状軸受レースによって達成されることができる。
【0135】
特に好ましい実施形態では、上述したように、段付き遊星歯車は、連続歯車装置によって構成される。この目的のために、第1のステップでは、段付き遊星歯車全体が、後に第1の歯車装置領域の歯車装置に対応する単一の連続したはすば歯車装置によって構成される。続いて、第2の歯車装置領域の歯車装置は、ピッチまたは歯間距離が同じままである追加のプロセスステップ(旋盤加工など)によって小型化される。特に、このとき形成される第2の歯車装置領域の歯車装置の歯先円は、第1の歯車装置領域の歯車装置の歯先円よりも小さい。逆に、このとき形成される第2の歯車装置領域の歯車装置のヘッド幅は、第1の歯車装置領域の歯車装置のヘッド幅よりも大きい。第2のリング歯車は、それに適合された対応する歯車装置を含む。
図5から
図8は、記載された相違点を示す。しかしながら、上述した「追加の処理ステップ」は、歯切りの前に行うこともでき、すなわち、ブランクは除去された外径を有し、その場合にのみ歯切りとなる。結果は
図3に示されるものと同じである。
【0136】
明細書および/または特許請求の範囲に開示された特徴の全ては、当初開示の目的のために、ならびに実施形態および/または特許請求の範囲における特徴の組み合わせとは無関係に、特許請求される発明を限定する目的のために、互いに別個且つ独立であると見なされるべきであることが明確に強調される。当初開示の目的のために、および特許請求される発明を限定する目的のために、特に範囲仕様の限界としても、全ての範囲仕様または単位のグループの仕様が可能な全ての中間値または単位のサブグループを開示することが明示的に述べられている。
【符号の説明】
【0137】
2 遊星変速機
4 ハウジング
6 第1の軸
8 太陽歯車
10 太陽歯車の歯車装置領域
12 第1のリング歯車
14 第1のリング歯車の内側歯車装置
16 第2のリング歯車
18 第2のリング歯車の内側歯車装置
20 第2のリング歯車の径方向延長領域
22 第2の軸
24 段付き遊星歯車
26 段付き遊星歯車の第1の歯車装置領域
28 段付き遊星歯車の第2の歯車装置領域
30 段付き遊星歯車の基体
32 支持領域
34 支持領域の外周面
36 第1の支持ディスク
38 第1のスラスト軸受
40 第2の支持ディスク
42 第2のスラスト軸受
44 第3スラスト軸受
46 第1の径方向に延在するハウジング壁セグメント
48 第4のスラスト軸受
50 第2の径方向に延在するハウジング壁セグメント
52 第5のスラスト軸受
54 第1のラジアル軸受
55 第1の軸の端部セグメント
56 軸キャリア体
58 第1の軸の凹状セグメント
60 遊星軸
62 スリーブ構成要素
X1 第1の軸
X2 第2の軸
bPl 第2の歯車装置領域の歯車装置の幅
b1 第2の歯車装置領域の歯のヘッド幅
p 第2の歯車装置領域の歯車装置のピッチ
beff 第2の歯車装置領域と支持領域の外周面との間の有効(実際の)支持幅
β 第2の歯車装置領域の歯車装置のねじれ角
FrH1 第1の歯車装置領域の歯車装置から第1のリング歯車の径方向力
FrH2 第2の歯車装置領域の歯車装置から第2のリング歯車の径方向力
FrS 太陽歯車の歯車装置から第1の歯車装置領域の径方向力
FuH1 第1の歯車装置領域の歯車装置から第1のリング歯車の周方向力
FuH2 第2の歯車装置領域の歯車装置から第2のリング歯車の周方向力
FuS 太陽歯車の歯車装置から第1の歯車装置領域の周方向力
FaxS 太陽歯車の歯車装置から第1の歯車装置領域の軸力
FaxH1 第1の歯車装置領域の歯車装置から第1のリング歯車の軸力
FaxH2 第2の歯車装置領域の歯車装置から第2のリング歯車の軸力
Fax1 y軸を中心とした傾斜モーメントを支持するための第1の軸力
Fax2 y軸を中心とした傾斜モーメントを支持するための第2の軸力
Fax3 z軸を中心とした傾斜モーメントを支持するための第1の軸力
Fax4 z軸を中心とした傾斜モーメントを支持するための第2の軸力
FA 支持点34の径方向力