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特許7300791成型品の加工方法、成型品の加工システム、及び加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】成型品の加工方法、成型品の加工システム、及び加工装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 69/00 20060101AFI20230623BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
B29C69/00
B29C33/42
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023059747
(22)【出願日】2023-04-03
【審査請求日】2023-04-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599043585
【氏名又は名称】日本省力機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 章夫
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-047523(JP,A)
【文献】特開2008-097025(JP,A)
【文献】特開2010-260337(JP,A)
【文献】特開平06-226883(JP,A)
【文献】特開平09-101125(JP,A)
【文献】特開2005-205801(JP,A)
【文献】特開2000-225434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 - 33/76
B29C 39/00 - 39/44
B29C 43/00 - 43/58
B29C 45/00 - 45/84
B29C 69/00 - 69/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成型品に削除予定部の位置を示す輪郭を一体に成型する成型工程と、
前記成型品の前記輪郭に沿って加工して前記削除予定部を削除する加工工程と、を含み、
前記成型工程は、
前記成型品の表面に輪郭を凹状又は凸状の形態で成型し、
前記加工工程は、
測定機器により前記輪郭を測定して集まったデータ群である測定データ群を取得し、前記測定データ群から、前記削除予定部から見て前記輪郭の外側の座標群を取得し、前記座標群ごとに座標変換することで、前記輪郭の外側の情報を取得して、前記輪郭の外側に沿って加工する、
成型品の加工方法。
【請求項2】
成型品に削除予定部の位置を示す輪郭を一体に成型する成型工程と、
前記成型品の前記輪郭に沿って加工して前記削除予定部を削除する加工工程と、を含み、
前記成型工程は、
前記成型品の表面に面取り予定部を含んで前記輪郭を凹状の形態で成型し、
前記加工工程は、
測定機器により前記輪郭を測定して集まったデータ群である測定データ群を取得し、前記測定データ群から、前記削除予定部から見て前記輪郭の内側の座標群を取得し、前記座標群ごとに座標変換することで、前記輪郭の内側の情報を取得して、前記面取り予定部を残して、前記輪郭の内側に沿って加工する、
成型品の加工方法。
【請求項3】
成型品に削除予定部の位置を示す輪郭を一体に成型する金型と、
前記成型品の前記輪郭に沿って加工して前記削除予定部を削除する加工装置と、を備え、
前記金型は、
前記成型品の表面に前記輪郭を凹状又は凸状の形態で成型し、
前記加工装置は、
測定機器により前記輪郭を測定して集まったデータ群である測定データ群を取得し、前記測定データ群から、前記削除予定部から見て前記輪郭の外側の座標群を取得し、前記座標群ごとに座標変換することで、前記輪郭の外側の情報を取得して、前記輪郭の外側に沿って加工する、
成型品の加工システム。
【請求項4】
成型品に削除予定部の位置を示す輪郭を一体に成型する金型と、
前記成型品の前記輪郭に沿って加工して前記削除予定部を削除する加工装置と、を含み、
前記金型は、
前記成型品の表面に面取り予定部を含んで前記輪郭を凹状の形態で成型し、
前記加工装置は、
測定機器により前記輪郭を測定して集まったデータ群である測定データ群を取得し、前記測定データ群から、前記削除予定部から見て前記輪郭の内側の座標群を取得し、前記座標群ごとに座標変換することで、前記輪郭の内側の情報を取得して、前記面取り予定部を残して、前記輪郭の内側に沿って加工する、
成型品の加工システム。
【請求項5】
成型品を二次加工する加工工具をアーム先端部に備える多関節ロボットと、
金型での成型時に削除予定部の位置を示す輪郭が一体に成型された成型品を前記輪郭に沿って加工して前記削除予定部を削除する指令を前記多関節ロボットに与える制御部と、
PCと、を備え、
前記成型品の表面に前記輪郭を凹状又は凸状の形態で成型し、
前記PCは、測定機器により前記輪郭を測定して集まったデータ群である測定データ群を取得し、前記測定データ群から、前記削除予定部から見て前記輪郭の外側の座標群を取得し、前記座標群ごとに座標変換することで、前記輪郭の外側の情報を取得し、
前記制御部は、前記PCが取得した前記輪郭の外側の情報に基づいて前記輪郭の外側に沿って加工する、
加工装置。
【請求項6】
成型品を二次加工する加工工具をアーム先端部に備える多関節ロボットと、
金型での成型時に削除予定部の位置を示す輪郭が一体に成型された成型品を前記輪郭に沿って加工して前記削除予定部を削除する指令を前記多関節ロボットに与える制御部と、
PCと、を備え、
前記成型品の表面に面取り予定部を含んで前記輪郭を凹状の形態で成型し、
前記PCは、測定機器により前記輪郭を測定して集まったデータ群である測定データ群を取得し、前記測定データ群から、前記削除予定部から見て前記輪郭の内側の座標群を取得し、前記座標群ごとに座標変換することで、前記輪郭の内側の情報を取得し、
前記制御部は、前記PCが取得した前記輪郭の内側の情報に基づいて、前記面取り予定部を残して、前記輪郭の内側に沿って加工する、
加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型品の加工方法、成型品の加工システム、及び加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、浴槽に、ジェットバスを作動させる運転スイッチ等の機能部品などを取り付ける貫通穴をドリルで追加工する技術を開示している。特許文献1では、ドリルの刃先位置を決める凸形状のドリルガイドが金型上で形成され、このドリルガイドが上記貫通穴を穿孔する際のガイドとなる。
【0003】
一般に、成型品には、平板状や湾曲面状等の様々な形態がある。成型品に、円形や矩形や台形などの開口等を備えている場合、これら開口等は金型を用いて成型品を成型する段階で同時に成型される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-005748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記開口部を金型により同時成形する場合、金型の構造が複雑化するうえ、成型時に開口を境として樹脂の流路がぶつかり合うことになるため、成型品の開口部にウェルドラインの発生等種々の成型不良などの欠陥を引き起こしやすいという課題がある。
近年、環境問題対策意識の高まりから、石油由来の樹脂から、植物由来の樹脂に切り替えるニーズが高まりつつあるが、植物由来の樹脂は一般的に熱変性温度が低く、流動性が悪い傾向があり、特に、植物由来樹脂を原料として開口部を有する製品を注型で成形しようとすると、成型品の開口部に石油由来の樹脂に比べ成型不良などの欠陥を起こしやすいという課題がある。
本発明は、金型の構造を複雑化することなく、成型品の開口部に欠陥を生じさせることなく、良好な成型品を形成できる成型品の加工方法、成型品の加工システム、加工装置、及び金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の成型品の加工方法は、成型品に削除予定部の位置を示す輪郭を一体に成型する成型工程と、前記成型品の前記輪郭に沿って加工して前記削除予定部を削除する加工工程と、を含み、前記成型工程は、前記成型品の表面に輪郭を凹状又は凸状の形態で成型し、前記加工工程は、測定機器により前記輪郭を測定して集まったデータ群である測定データ群を取得し、前記測定データ群から、前記削除予定部から見て前記輪郭の外側の座標群を取得し、前記座標群ごとに座標変換することで、前記輪郭の外側の情報を取得して、前記輪郭の外側に沿って加工する。
また、本発明の成型品の加工方法は、成型品に削除予定部の位置を示す輪郭を一体に成型する成型工程と、前記成型品の前記輪郭に沿って加工して前記削除予定部を削除する加工工程と、を含み、前記成型工程は、前記成型品の表面に面取り予定部を含んで前記輪郭を凹状の形態で成型し、前記加工工程は、測定機器により前記輪郭を測定して集まったデータ群である測定データ群を取得し、前記測定データ群から、前記削除予定部から見て前記輪郭の内側の座標群を取得し、前記座標群ごとに座標変換することで、前記輪郭の内側の情報を取得して、前記面取り予定部を残して、前記輪郭の内側に沿って加工する。
【0007】
また、上記目的を達成するために、本発明の成型品の加工システムは、成型品に削除予定部の位置を示す輪郭を一体に成型する金型と、前記成型品の前記輪郭に沿って加工して前記削除予定部を削除する加工装置と、を備え、前記金型は、前記成型品の表面に前記輪郭を凹状又は凸状の形態で成型し、前記加工装置は、測定機器により前記輪郭を測定して集まったデータ群である測定データ群を取得し、前記測定データ群から、前記削除予定部から見て前記輪郭の外側の座標群を取得し、前記座標群ごとに座標変換することで、前記輪郭の外側の情報を取得して、前記輪郭の外側に沿って加工する。
また、本発明の成型品の加工システムは、成型品に削除予定部の位置を示す輪郭を一体に成型する金型と、前記成型品の前記輪郭に沿って加工して前記削除予定部を削除する加工装置と、を含み、前記金型は、前記成型品の表面に面取り予定部を含んで前記輪郭を凹状の形態で成型し、前記加工装置は、測定機器により前記輪郭を測定して集まったデータ群である測定データ群を取得し、前記測定データ群から、前記削除予定部から見て前記輪郭の内側の座標群を取得し、前記座標群ごとに座標変換することで、前記輪郭の内側の情報を取得して、前記面取り予定部を残して、前記輪郭の内側に沿って加工する。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明の加工装置は、成型品を二次加工する加工工具をアーム先端部に備える多関節ロボットと、金型での成型時に削除予定部の位置を示す輪郭が一体に成型された成型品を前記輪郭に沿って加工して前記削除予定部を削除する指令を前記多関節ロボットに与える制御部と、PCと、を備え、前記成型品の表面に前記輪郭を凹状又は凸状の形態で成型し、前記PCは、測定機器により前記輪郭を測定して集まったデータ群である測定データ群を取得し、前記測定データ群から、前記削除予定部から見て前記輪郭の外側の座標群を取得し、前記座標群ごとに座標変換することで、前記輪郭の外側の情報を取得し、前記制御部は、前記PCが取得した前記輪郭の外側の情報に基づいて前記輪郭の外側に沿って加工する。
また、本発明の加工装置は、成型品を二次加工する加工工具をアーム先端部に備える多関節ロボットと、金型での成型時に削除予定部の位置を示す輪郭が一体に成型された成型品を前記輪郭に沿って加工して前記削除予定部を削除する指令を前記多関節ロボットに与える制御部と、PCと、を備え、前記成型品の表面に面取り予定部を含んで前記輪郭を凹状の形態で成型し、前記PCは、測定機器により前記輪郭を測定して集まったデータ群である測定データ群を取得し、前記測定データ群から、前記削除予定部から見て前記輪郭の内側の座標群を取得し、前記座標群ごとに座標変換することで、前記輪郭の内側の情報を取得し、前記制御部は、前記PCが取得した前記輪郭の内側の情報に基づいて、前記面取り予定部を残して、前記輪郭の内側に沿って加工する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、開口部を形成するための形状を金型に作りこむ必要がなくなるため、金型の構造を複雑化することなく、成型品の開口部に欠陥を生じさせることなく、良好な成型品を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】金型で成型された樹脂成型品の一例を示す図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3】加工システムの構成を示す図である。
図4】加工装置の全体構成を示す図である。
図5】測定データ、及び座標群を説明するための図である。
図6】樹脂成型品の加工方法を示すフローチャートである。
図7】加工装置の動作を示すフローチャートである。
図8】(A)~(C)は、樹脂成型品の裏面に輪郭を成型した例を示す図である。
図9】(A)~(B)は、面取り予定部を含む輪郭の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、金型1(図3参照)で成型された樹脂成型品2(成型品)の一例を示す平面図である。
本実施形態による金型1は、加工により削除する削除予定部3を有する樹脂成型品2を成型し、削除予定部3の位置を示す輪郭4を樹脂成型品2の表面2Aに凹状又は凸状の形態で成型する。樹脂成型品2は、植物由来の樹脂を原料として成型される。なお、樹脂成型品2は、石油由来の樹脂を原料として成型されてもよい。
【0013】
樹脂成型品2は、例えばディスプレイ装置の裏板であり、削除予定部3ごとに、表面2Aに輪郭4を備えている。図1に示す樹脂成型品2は、第1輪郭41、第2輪郭42、第3輪郭43、第4輪郭44、及び第5輪郭45の5つの輪郭4を備えている。本実施形態の金型1は、樹脂成型品2の成型と、第1輪郭41~第5輪郭45の成型とを同時成型可能に構成されている。以下において、第1乃至第5輪郭を区別する際は41乃至45を用い、総じて輪郭4と表記することもある。
【0014】
第1輪郭41~第3輪郭43は、略円形の形状であり、直径が6mmである。
第4輪郭44は、略円形の形状であり、直径が25mmである。
第5輪郭45は、略矩形の形状であり、短手方向の長さが20mmであり長手方向の長さが40mmである。第5輪郭45の各角は、R3の角丸である。
【0015】
なお、樹脂成型品2が有する輪郭4の数、形状、及び大きさは、本実施形態で示す数、形状、及び大きさに限定されない。
【0016】
図2は、図1のII-II線断面図である。
図2に示すように、輪郭4は、凸状のライン(形態)である。輪郭4は、断面の形状が略三角形状であり、表面2Aから頂点Vまでの高さがH1であり、幅がW1であり、外側傾斜面OSと内側傾斜面ISとがなす角の角度がθ1である。なお、輪郭4の形態は、凸状のラインに限定されず、凹状のラインでもよい。本実施形態では、金型1を作成した後に開口予定の輪郭4を描いているので、樹脂成型品2に形成された輪郭4は凸線となっている。
【0017】
第1輪郭41~第5輪郭45を有する樹脂成型品2を成型した後、樹脂成型品2は、金型1から取り外される。樹脂成型品2は、図3に示す加工装置5の受け治具60にセットされる。そして、樹脂成型品2は、第1輪郭41~第5輪郭45の外側に沿って、加工工具59により一周に亘って加工され、輪郭4毎、削除予定部3が削除される。この場合、金型1の成型が一次加工、加工工具59による加工が二次加工である。このように削除予定部3が削除されるため、樹脂成型品2には削除予定部3があった位置に所定の開口が形成される。特に、輪郭4の外側に沿って削除予定部3が削除されることで、樹脂成型品2の表面2Aには輪郭4が残ることはない。なお、輪郭4の外側とは、削除予定部3から輪郭4を見た場合の外側を示す。
【0018】
図3は、加工装置5を備える加工システム1000の構成を示す図である。図4は、加工装置5の全体構成を示す図である。
加工システム1000は、一次加工を行う金型1と、二次加工を行う加工装置5とを備えている。加工システム1000は、金型1によって一次加工された樹脂成型品2を加工装置5によって二次加工する。
【0019】
加工装置5は、アーム先端に加工工具59が装着された多関節ロボット50と、PC90と、多関節ロボット50の作動を制御するロボットコントローラー100(制御部)と、レーザ光を使用して輪郭4の形状を測定する測定機器140と、測定機器140を制御する測定機器コントローラー200と、を備えている。なお、測定機器140は、画像データを撮影するカメラ等であってもよい。
【0020】
多関節ロボット50は、所謂6軸ロボットである。多関節ロボット50は、架台6に固定されたロボット台51と、ロボット台51に固定された回転ステージ52と、回転ステージ52に取り付けたベースアーム53と、ベースアーム53と接続する第1アーム54と、第1アーム54と接続する第2アーム55と、第2アーム55に接続する第3アーム56と、第3アーム56の先端部57と、を備える。
【0021】
第3アーム56の先端部57には、工具保持具58が取り付けられ、工具保持具58には、回転により切削を行うエンドミル等の加工工具59が保持されている。加工工具59により加工される樹脂成型品2は、受け治具60にセットされる。受け治具60は、架台6の所定箇所に設置された台61に設けられている。
【0022】
加工システム1000は、第3アーム56の先端部57に、受け治具60にセットされた樹脂成型品2の表面2Aの形状を測定する測定機器140が取り付けられている。測定機器140は、加工システム1000が具備する測定機器コントローラー200の指令によって動作する。測定機器140は、多関節ロボット50が動作することで、受け治具60にセットされた樹脂成型品2の表面2Aの全域を含む範囲を測定できる。樹脂成型品2は金型によって注型で作成された製品であるので、多くの場合、当該位置に設置された測定機器140からは、樹脂成型品2の表面2Aほぼ死角なく測定が可能である。測定機器140の測定により得られた測定データ群SDは、測定機器コントローラー200を介してPC90に出力される。測定データ群SDについては、後述する。
なお、測定機器140は、多関節ロボット50とは別に用意したロボットに取り付けられてもよい。
【0023】
PC90は、第1入出力インターフェース910、測定機器制御部920、加工制御部930、及びロボットコントローラー制御部940を備える。測定機器制御部920、加工制御部930、及びロボットコントローラー制御部940は、PC90が具備するプロセッサが、PC90が具備する第1メモリ950が記憶するプログラムを読み出して実行することで実現される機能部である。
【0024】
第1入出力インターフェース910は、測定機器コントローラー200、及びロボットコントローラー100と通信可能に接続されている。
【0025】
まず、ロボットコントローラー制御部940について説明する。ロボットコントローラー制御部940は、第1入出力インターフェース910を介して、後述のロボットコントローラー100のロボット制御部120に、輪郭4ごとの測定経路が記述されたセンサースキャンプログラム131の実行命令を送信し、ロボットコントローラー100に測定機器140の測定を行わせる。ロボットコントローラー制御部940は、測定機器140が測定中、第1入出力インターフェース910を介して、測定機器140の位置データをロボット制御部120から取得する。また、ロボットコントローラー制御部940は、後述の加工制御部930から加工実行プログラムを受信すると、第1入出力インターフェース910を介して、受信した加工実行プログラムをロボットコントローラー100に送信し、当該送信の完了後に、送信した加工実行プログラムの実行命令をロボットコントローラー100に送信する。
【0026】
次に、測定機器制御部920について説明する。測定機器制御部920は、ロボットコントローラー100によるセンサースキャンプログラム131の実行が完了するまでの間、測定機器コントローラー200に測定機器140による測定指示と、測定機器コントローラー200からの測定データ群SDの取得を行う。
【0027】
次に、加工制御部930について説明する。加工制御部930は、測定データ演算部931と加工プログラム生成部932として機能する。
測定データ演算部931は、外部装置や記録媒体から加工情報データ951を取得し、第1メモリ950に保存する。加工情報データ951には、受け治具60にセットされた樹脂成型品2に対して加工工具59による切削加工を行う際の多関節ロボット50の位置(以下、「加工実施位置」という)のデータが含まれている。本実施形態の加工情報データ951には、樹脂成型品2に成型された輪郭4ごとに、加工実施位置のデータが含まれる。なお、樹脂成型品2の加工において複数の箇所で切削加工が行われる場合、加工情報データ951は、切削加工する箇所の順番のデータも含まれている。
【0028】
測定データ演算部931は、第1入出力インターフェース910を介して、測定機器制御部920から、輪郭4ごとに測定データ群SDを取得する。そして、測定データ演算部931は、取得した測定データ群SDから輪郭4の情報を取得する。
【0029】
ここで、図5を参照しつつ、輪郭4の情報の取得について説明する。
図1に示す樹脂成型品2の場合、測定データ演算部931は、第1輪郭41について第1測定データ群SD1を取得し、第2輪郭42について第2測定データ群を取得し、第3輪郭43について第3測定データ群を取得し、第4輪郭44について第4測定データ群を取得し、第5輪郭45について第5測定データ群を取得する。ここで、測定データ群SDとは、輪郭4の一部を測定した測定データSDnが輪郭4一周分集まったデータ群である。
【0030】
図5は、測定データSDn、及び後述の座標群CSを説明するための図である。図5では、第1測定データ群SD1の測定データSDnを示している。なお、図5においては、第1測定データ群SD1を構成するn(nは1以上の整数)番目の測定データSDnに、「SD1-n」の符号を付している。図5に示すように、測定データSDnの各々には、座標系が定義されている。図5では、測定データSDnに定義されたX軸及びZ軸の座標系は、輪郭4の中心から外側に向かった方向を正に定義している場合を例示している。
【0031】
測定データ演算部931は、取得した測定データ群SDから、輪郭4一周分の輪郭4に対応する座標群CSを取得する。測定データ演算部931は、座標群CSの取得において、輪郭4の幅方向における座標のうち輪郭4の外側の座標、又は輪郭4の内側の座標を取得する。図5では、第1測定データ群SD1の座標群CSを示している。なお、図5においては、第1測定データ群SD1の座標群CSを構成するn(nは1以上の整数)番目の座標に、「CS1-n」の符号を付している。図1に示す樹脂成型品2の場合、測定データ演算部931は、第1輪郭41について第1座標群CS1を取得し、第2輪郭42について第2座標群を取得し、第3輪郭43について第3座標群を取得し、第4輪郭44について第4座標群を取得し、第5輪郭45について第5座標群を取得する。
【0032】
次いで、測定データ演算部931は、ロボットコントローラー制御部940が取得した位置データに基づいて、取得した座標群CSごとに座標変換することで、輪郭4ごとに輪郭4の情報を取得する。
なお、座標変換は、測定データSDnに定義された座標系から、移動可能面に定義された座標系への変換である。移動可能面とは、受け治具60にセットされた樹脂成型品2の表面2Aに平行な面であって加工工具59が移動可能な面である。
【0033】
測定データ演算部931は、取得した輪郭4の情報、及び、第1メモリ950に保存された加工情報データ951に基づいて、加工パスを作成する。加工パスは、加工工具59を変位させるための多関節ロボット50の変位経路を示す。また、加工パスは、輪郭4ごとに、輪郭4の外側又は内側に沿って加工工具59を変位させる変位経路を示す。
【0034】
加工プログラム生成部932は、加工実行プログラムを生成する。加工実行プログラムは、測定データ演算部931が作成した加工パスと加工条件との組み合わせが、輪郭4の数分記録されている。なお、加工条件は、加工工具59の種別や、加工時の多関節ロボット50の初期姿勢、加工時の多関節ロボット50の移動速度などである。ロボットコントローラー制御部940は、加工プログラム生成部932が生成した加工実行プログラムを、第1入出力インターフェース910を介して、ロボットコントローラー100に出力する。
【0035】
ロボットコントローラー100は、第2入出力インターフェース120、及びロボット制御部120を備える。ロボット制御部120は、ロボットコントローラー100が具備するプロセッサが、ロボットコントローラー100が具備する第2メモリ140が記憶するプログラムを読み出して実行することで実現される機能部である。
【0036】
第2入出力インターフェース120は、PC90、多関節ロボット50、及び工具交換ステーション80と通信可能に接続されている。
【0037】
ロボット制御部120は、第2入出力インターフェース110を介して、PC90から加工実行プログラムを受信する。そして、ロボット制御部120は、受信した加工実行プログラムに記録されている加工パスに従って削除予定部3を削除することで完成品を作成する。上述したように、輪郭4の情報は、外側又は内側の座標群CSが座標変換された情報である。そのため、加工パスの作成で反映される輪郭4の位置及び範囲は、樹脂成型品2の表面2Aと輪郭4の外側斜面OSとが交差する線で規定される位置及び範囲、又は、樹脂成型品2の表面2Aと輪郭4の内側斜面ISとが交差する線で規定される位置及び範囲である。よって、ロボット制御部120は、加工実行プログラムに記録されている加工パスに従って加工することで、輪郭4の外側に沿って、又は輪郭4の外側に沿って削除予定部3を削除できる。
【0038】
工具交換ステーション80は、受け治具60の設置箇所から回転ステージ52を反時計回りに90度回転させた箇所に設置されている。工具交換ステーション80は、交換用の加工工具が収容された複数の工具ラック81~84を備えている。
【0039】
ロボットコントローラー制御部940は、工具保持部58が保持する加工工具59を、工具交換ステーション80の工具ラック81~84のいずれかの位置に変位させて、工具保持部58に保持される加工工具59を交換する。
【0040】
次に、加工システム1000による樹脂成型品2の加工方法について説明する。
図6は、加工システム1000による樹脂成型品2の加工方法を示すフローチャートFAである。
【0041】
樹脂成型品2の加工方法は、成型工程SA1と、加工工程SA2とを含む。
成型工程SA1は、金型1によって樹脂成型品2を成型する工程である。成型工程SA1においては、樹脂成型品2の表面2Aに輪郭4を一体に成型する。
この時、金型には開口部となる予定の部位は形成されていない。従来の金型の場合、樹脂成型品2で開口部となる箇所は金型の雄型と雌型が接触しており、成形中の樹脂の流路を分岐させる障害物となる。本実施形態においては、金型1の内部には成形のための樹脂が流れ込んだ際に、流路が分岐することがなく、よって温度に差がある樹脂が混在することがなくなって、均一な品質の樹脂成型品2とすることができる。
加工工程SA2は、成型工程SA1で成型された樹脂成型品2を加工する工程である。加工工程SA2における一連の処理は、図7のフローチャートFBに従う。
【0042】
図7は、加工装置5の動作を示すフローチャートFBである。
ステップSB1で、加工制御部930は、受け治具60への樹脂成型品2のセット完了を示す入力があったか否かを判定する。受け治具60への樹脂成型品2のセット完了を示す入力には、センサによる樹脂成型品2の検出信号の入力、或いは作業者によるセット完了スイッチの操作信号の入力等が用いられる。
【0043】
加工制御部930が、受け治具60への樹脂成型品2のセット完了を示す入力があったと判定した場合、ロボットコントローラー制御部940、及び測定機器制御部920は、ステップSB2で、多関節ロボット50を動作させて測定機器140に測定させる。
【0044】
次いで、ステップSB3で、加工制御部930は、ステップSB2の測定により得られた測定データSDに基づいて、加工パスを作成する。
【0045】
次いで、ステップSB4で、加工制御部930は、加工実行プログラムを生成し、ロボットコントローラー制御部940は、生成された加工実行プログラムをロボットコントローラー100に出力する。
【0046】
次いで、ステップSB5で、ロボット制御部120は、PC90から加工実行プログラムを受信する。
【0047】
次いで、ステップSB6で、ロボット制御部120は、受信した加工実行プログラムに従って加工工具59の位置を多関節ロボット50により変位させ、加工工具59を回転させながら削除予定部3を削除する。
【0048】
上述の実施形態では、図2で用いて説明したように、削除予定部3の位置を示す凸状又は凹状の輪郭4を、樹脂成型品2の表面2Aに成型したが、これに限定されない。
別の実施形態として、図8(A)~図8(C)に示すように、削除予定部3の位置を示す輪郭4を、樹脂成型品2の裏面2Bに成型してもよい。
図8は、樹脂成型品2の裏面2Bに輪郭4を成型した例を示す図である。図8において、破線は、加工装置5が削除していく位置を示す。
この場合には、加工装置5により樹脂成型品2の削除予定部3を削除するとき、図8(A)に示すように、輪郭4の内側に沿って削除予定部3を削除してもよく、図8(B)に示すように、輪郭4の中央に沿って削除予定部3を削除してもよく、或いは、図8(C)に示すように、輪郭4の外側に沿って削除予定部3を削除してもよい。図8(A)、図8(B)の場合、残存する輪郭4の全部又は一部は、樹脂成型品2の裏面2Bに残り、表面2Aには出現しない。
【0049】
なお、輪郭4を裏面2Bに成型した場合、測定機器140による輪郭4の形状測定は、樹脂成型品2の裏面2B側から行われ、削除予定部3を削除する切削加工も、輪郭4に沿って裏面2B側から行われる。
【0050】
上述の実施形態では、図2で用いて説明したように、削除予定部3の位置を示す輪郭4が凸状又は凹状であるが、輪郭4の形状は、これに限定されない。
別の実施形態として、図9(A)で示すように、輪郭4は、表面2Aから削除予定部3に向かって下方に傾斜する斜面である面取り予定部7を含む形状でもよい。なお、ここで下方とは、表面2Aから裏面2Bに向かう方向を意味する。図9(B)は、図9(A)に示す削除予定部3を輪郭4の内側に沿って削除した場合を示している。すなわち、図9(B)は、面取り予定部7を残して輪郭4に沿って削除した場合を示している。図9(B)に示すように、輪郭4が図9(A)のように形成されることで、加工後の開口部の縁に斜面が形成される。そのため、加工後の面取り加工が不要になる。
【0051】
以上、説明したように、樹脂成型品2の加工方法は、樹脂成型品2の表面2A又は裏面2Bに削除予定部3の位置を示す輪郭4を一体に成型する成型工程と、樹脂成型品2の輪郭4に沿って加工して削除予定部3を削除する加工工程と、を含む。
【0052】
これによれば、金型1で削除予定部3の輪郭4を成型し、輪郭4に沿って加工して削除予定部3を削除するため、金型1での開口等の同時成型が不要となり、金型1の構造が複雑化することなく、成型品の開口部に欠陥を生じさせることなく、良好な成型品を形成できる。
【0053】
樹脂成型品2の加工方法において、成型工程は、輪郭4を凹状又は凸状のラインで成型する。
【0054】
これによれば、輪郭4を凹状又は凸状のラインで成型するため、金型1の構造が複雑化することをより抑制できる。
【0055】
樹脂成型品2の加工方法において、成型工程は、面取り予定部7を含んで輪郭4を凹状のラインで成型する。加工工程は、面取り予定部7を残して、輪郭4に沿って加工して、削除予定部3を削除する。
【0056】
これによれば、加工後、削除予定部3が削除された開口部の縁に面取り予定部7が残るため、削除予定部3が削除された開口部に対して面取り加工が不要になる。
【0057】
樹脂成型品2の加工方法において、加工工程は、樹脂成型品2の表面2A又は裏面2Bの輪郭4を検出し、検出した輪郭4に沿って加工して削除予定部3を削除する。
【0058】
これによれば、樹脂成型品2のセット位置にずれが発生しても、検出された輪郭4に沿って加工されるため、適切に削除予定部3を削除できる。従来、樹脂製品の成型後に追加工する場合、成型後の収縮により、そりや、ひずみ、変形などが発生し、3次元データに基づいて加工しようとしても、加工の位置があわないことが多く、手作業に頼る必要があった。しかしながら、本実施形態の樹脂成型品2の加工方法によれば、検出された輪郭4に沿って加工されるため、成型後の収縮により、そりや、ひずみ、変形などが樹脂成型品2に発生しても、適切に樹脂成型品2を加工できる。
【0059】
樹脂成型品2の加工システム1000は、樹脂成型品2の表面2A又は裏面2Bに削除予定部3の位置を示す輪郭4を一体に成型する金型1と、樹脂成型品2の輪郭4に沿って加工して削除予定部3を削除する加工装置5と、を備える。
【0060】
これによれば、上述した樹脂成型品2の加工方法と同様の効果を奏する。
【0061】
加工装置5は、成型品を二次加工する加工工具59をアームの先端部57に備える多関節ロボット50と、金型1での成型時に表面2A又は裏面2Bに削除予定部3の位置を示す輪郭4が一体に成型された樹脂成型品2を、輪郭4に沿って加工して削除予定部3を削除する指令を多関節ロボット50に出力するロボットコントローラー100とを備える。
【0062】
これによれば、上述した樹脂成型品2の加工方法と同様の効果を奏する。
【0063】
金型1は、樹脂成型品2の表面2A又は裏面2Bに削除予定部3の位置を示す輪郭4を一体に成型する。
【0064】
これによれば、上述した樹脂成型品2の加工方法と同様の効果を奏する。
【0065】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
【0066】
上述した実施形態では、加工装置5の加工工具59として、回転により切削を行う切削工具を示したが、加工装置5は、超音波カッターやレーザ加工等を行う加工工具や、NC加工装置等で加工を行ってもよい。
【0067】
上述した実施形態では、成型品として樹脂成型品2を例示したが、成型品は原材料に限定されず、金型1で成型可能であればいずれの材料を採用できる。
【0068】
上述した実施形態では、輪郭4の断面形状が略三角形状である場合を例示したが、輪郭4の断面形状は、円形状でも矩形でもよい。
【0069】
上述した実施形態では、樹脂成型品2の種類としてディスプレイ装置の裏板を例示したが、樹脂成型品2の種類はディスプレイ装置の裏板に限定されない。
【0070】
上述した輪郭4は開口の形状に沿った線状の輪郭線として描かれているが、輪郭4は、開口を認識するためものであれば、その形態は凸状や凹状でなくてもよい。
【0071】
PC90のプロセッサ、及びロボットコントローラー100のプロセッサは、単一のプロセッサにより構成されてもよいし、複数のプロセッサにより構成されていてもよい。これらプロセッサは、対応する機能部を実現するようプログラムされたハードウェアでもよい。すなわち、これらプロセッサは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成されてもよい。
【0072】
図6、及び図7に示す動作のステップ単位は、動作の理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものであり、処理単位の分割の仕方や名称によって、動作が限定されることはない。処理内容に応じて、さらに多くのステップ単位に分割してもよい。また、1つのステップ単位がさらに多くの処理を含むように分割してもよい。また、そのステップの順番は、本発明の趣旨に支障のない範囲で適宜に入れ替えてもよい。
【0073】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。本発明は、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【0074】
本発明の適用は、例えば、石油由来の樹脂を用いた場合でも、植物由来の樹脂を用いた場合でも適用が可能であるが、本発明は、植物由来の樹脂を原料として開口部を有する製品に対して、特に効果的である。
【符号の説明】
【0075】
1 金型
2 樹脂成型品(成型品)
3 削除予定部
4 輪郭
5 加工装置
7 面取り予定部
50 多関節ロボット
59 加工工具
100 ロボットコントローラー(制御部)
1000 加工システム
SA1 成型工程
SA2 加工工程
【要約】
【課題】金型の構造を複雑化することなく、成型品の開口部に欠陥を生じさせることなく、良好な成型品を形成できる樹脂成型品2の加工方法を提供する。
【解決手段】樹脂成型品2の加工方法は、樹脂成型品2に削除予定部3の位置を示す輪郭4を一体に成型する成型工程と、樹脂成型品2の輪郭4に沿って加工して削除予定部3を削除する加工工程と、を含む。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9