(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20230623BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230623BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230623BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 A
H01M4/36 C
C01G53/00 A
(21)【出願番号】P 2021517665
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 KR2019012631
(87)【国際公開番号】W WO2020067795
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】10-2018-0116034
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(73)【特許権者】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(74)【代理人】
【識別番号】100134382
【氏名又は名称】加藤 澄恵
(73)【特許権者】
【識別番号】523180436
【氏名又は名称】ポスコヒューチャーエム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】チェ、 クォン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】イ、 サン ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】ソン、 チュン フン
(72)【発明者】
【氏名】ナム、 サン チョル
(72)【発明者】
【氏名】パク、 ジョン イル
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/189887(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M、C01G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの1次粒子が組み立てられた2次粒子を含み、下記化学式1で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン系酸化物;および
前記2次粒子の内部に位置する平均粒径(D50)がナノメートルの大きさである金属酸化物粒子を含み、
前記2次粒子は、ニッケルのモル含有量が一定の領域であるコア部、および前記コア部の外面を囲んで、前記コア部との境界面から最外郭に至る方向にニッケルのモル含有量が漸進的に減少する濃度勾配(gradient)が存在するシェル部を含
み、
前記金属酸化物粒子は、ZrO
2
、WO
3
、CeO
2
、TiO
2
、HfO
2
、Co
3
O
4
、La
2
O
3
、BaO、SrOおよびこれらの組み合わせからなるグループより選ばれた1種以上である、リチウム二次電池用正極活物質。
[化学式1]
Li
a[Ni
xCo
yMn
z]
tM
1-tO
2-pX
p
(前記化学式1において、
MはAl、Mg、Sn、Ca、Ge、Ga、B、Ti、Mo、NbおよびWを含む群より選ばれたいずれか一つの元素であり、
XはF、N、およびPを含む群より選ばれたいずれか一つの元素であり、
aは0.8≦a≦1.3であり、
0.6≦x≦0.95、0<y≦0.2、0<z≦0.2、x+y+z=1、0≦t≦1、0≦p≦0.1である。)
【請求項2】
前記化学式1において、0.8≦x≦0.95、0<y≦0.1、0<z≦0.1である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
少なくとも一つの1次粒子が組み立てられた2次粒子を含み、下記化学式1で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン系酸化物;および
前記2次粒子の内部に位置する平均粒径(D50)がナノメートルの大きさである金属酸化物粒子を含み、
前記金属酸化物粒子は、ZrO
2、WO
3、CeO
2、TiO
2、HfO
2、Co
3O
4、La
2O
3、BaO、SrOおよびこれらの組み合わせからなるグループより選ばれた1種以上である、リチウム二次電池用正極活物質。
[化学式1]
Li
a[Ni
xCo
yMn
z]
tM
1-tO
2-pX
p
(前記化学式1において、
MはAl、Mg、Sn、Ca、Ge、Ga、B、Ti、Mo、NbおよびWを含む群より選ばれたいずれか一つの元素であり、
XはF、N、およびPを含む群より選ばれたいずれか一つの元素であり、
aは0.8≦a≦1.3であり、
0.6≦x≦0.95、0<y≦0.2、0<z≦0.2、x+y+z=1、0≦t≦1、0≦p≦0.1である。)
【請求項4】
前記金属酸化物粒子は、50nm~800nmの平均粒径(D50)を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記金属酸化物粒子で金属含有量は、前記正極活物質100重量%に対して0.1重量%~0.7重量%である、請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記2次粒子表面に位置するコート層をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項7】
ニッケル、コバルトおよびマンガンを含むヒドロキシド前駆体粒子を準備する段階;
前記ヒドロキシド前駆体粒子を1次焼成して多孔性酸化物前駆体粒子を準備する段階;
前記多孔性酸化物前駆体粒子および金属酸化物を混合して1次混合物を製造する段階;
前記1次混合物とリチウム原料物質を混合して2次混合物を製造する段階;および
前記2次混合物を2次焼成する段階を含
み、
前記金属酸化物は、ZrO
2
、WO
3
、CeO
2
、TiO
2
、HfO
2
、Co
3
O
4
、La
2
O
3
、BaO、SrOおよびこれらの組み合わせからなるグループより選ばれた1種以上である、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記1次焼成は、1℃/分~5℃/分の昇温条件で400℃~800℃まで加熱し、3時間~20時間の間維持する段階で実施する、請求項7に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記1次焼成は、空気または酸素を10ml/分~50L/分で吹き込みながら実施する、請求項7又は8に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記多孔性酸化物前駆体粒子および金属酸化物を混合して1次混合物を製造する段階で、ドーピング原料物質をさらに混合する、請求項7から9のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記ニッケル、コバルトおよびマンガンを含むヒドロキシド前駆体粒子を準備する段階は、ニッケル原料物質、コバルト原料物質、マンガン原料物質および溶媒を含み、前記ニッケル原料物質のモル濃度が互いに異なる第1金属塩溶液および第2金属塩溶液をそれぞれ製造する段階;
pHが一定に維持され、キレート剤が供給される反応器に、前記第1金属塩溶液を一定の濃度で供給してコア部を形成する第1共沈段階;
前記第1共沈段階以後、前記第1金属塩溶液の供給速度を漸進的に減少させるとともに、前記第2金属塩溶液の供給速度を漸進的に増加させ、前記コア部の外面を囲むシェル部を形成する生成物を形成する第2共沈段階;および
前記生成物を乾燥する段階を含む、請求項7から10のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項12】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の正極活物質を含む正極;
負極;および
非水電解質
を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施例はリチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近ITモバイル機器および小型電力駆動装置(電気自転車(e-bike)、小型電気自動車(electric vehicle)など)の爆発的な需要の増大、走行距離400km以上の電気車の要求につれて、これを駆動するための高容量、高エネルギ密度を有する二次電池の開発が全世界的に活発に進められており、このような高容量電池を製造するためには高容量正極活物質が求められている。
【0003】
現存する層状系(layered)正極活物質のうちの最も容量が高い素材はLiNiO2であるが(275mAh/g)、充放電時の構造崩壊が起きやすく酸化数の問題による熱的安定性が低いため商用化が難しい実情である。そこで、このような問題を解決するために不安定なNiサイトに他の安定した遷移金属(Co、Mnなど)を置き換えてCoとMnが置換された3元系Li、Ni、CoおよびMn含有NCM系活物質が開発された。しかし、このような3元系NCM系活物質はNiの含有量が増加するほど構造的安全性の確保のために様々なドーピング添加剤を適用しなければならず、この場合容量が低下し得る。またNiの含有量が増加するほど放電初期に抵抗が増加する現象が現れる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一実施形態は、高温で低い初期抵抗を示し、優れた放電容量を示すリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
他の一実施形態は、上記リチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
また他の一実施形態は、上記正極活物質を含むリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、一つ以上の1次粒子が組み立てられた2次粒子を含み、下記化学式1で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン系酸化物;および前記2次粒子の内部に位置する平均粒径(D50)がナノメートルの大きさである金属酸化物粒子を含む、リチウム二次電池用正極活物質を提供する。
[化学式1]
Lia[NixCoyMnz]tM1-tO2-pXp
前記化学式1において、
MはAl、Mg、Sn、Ca、Ge、Ga、B、Ti、Mo、NbおよびWを含む群より選ばれたいずれか一つの元素であり、
Xは、F、N、およびPを含む群より選ばれたいずれか一つの元素であり、
aは0.8≦a≦1.3であり、
0.6≦x≦0.95、0<y≦0.2、0<z≦0.2、x+y+z=1、0≦t≦1、0≦p≦0.1である。
【0006】
一実施形態において、0.8≦x≦0.95、0<y≦0.1、0<z≦0.1であり得る。
前記金属酸化物は、ZrO2、WO3、CeO2、TiO2、HfO2、Co3O4、La2O3、BaO、SrOおよびこれらの組み合わせからなるグループより選ばれた1種以上であり得る。
前記金属酸化物は、50nm~800nmの平均粒径(D50)を有し得る。
前記金属酸化物の金属含有量は、前記正極活物質100重量%に対して0.1重量%~0.7重量%であり得る。
【0007】
一実施形態で、前記2次粒子はニッケルのモル含有量が一定の領域であるコア部および前記コア部の外面を囲んで、前記コア部との境界面から最外郭に至る方向にニッケルのモル含有量が漸進的に減少する濃度勾配(gradient)が存在するシェル部を含み得る。
前記2次粒子表面に位置するコート層をさらに含み得る。
【0008】
他の一実施形態によれば、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含むヒドロキシド前駆体粒子を準備する段階;前記ヒドロキシド前駆体粒子を1次焼成して多孔性酸化物前駆体粒子を準備する段階;前記酸化物前駆体粒子および金属酸化物を混合して1次混合物を製造する段階;前記1次混合物とリチウム原料物質を混合して2次混合物を製造する段階;および前記2次混合物を2次焼成する段階を含むリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0009】
前記1次焼成は1.0℃/分~5.0℃/分の昇温条件で400℃~800℃まで加熱し、3時間~20時間の間維持する段階で実施し得る。また、前記1次焼成は空気または酸素を10mL/分~50L/分で吹き込みながら実施し得る。
前記酸化物前駆体と金属酸化物を混合して1次混合物を製造する段階で、ドーピング原料物質をさらに混合し得る。
【0010】
また他の一実施形態は、前記正極活物質を含む正極;負極;および非水電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0011】
一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質は、高温で低い初期抵抗を示し、優れた放電容量を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態によるリチウム二次電池の構造を概略的に示す図である。
【
図2】製造例1により製造されたヒドロキシド前駆体の表面SEM写真である。
【
図3】製造例3により製造された多孔性酸化物前駆体の表面SEM写真である。
【
図4】実施例1により製造された正極活物質の断面EDS測定写真である。
【
図5】比較例1により製造された正極活物質の断面EDS測定写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものであり、本発明はこれによって制限されず、本発明は後述する請求項の範疇によってのみ定義される。
【0014】
一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質は、少なくとも一つの1次粒子が組み立てられた2次粒子を含み、下記化学式1で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン系酸化物、および上記2次粒子の内部に位置して平均粒径(D50)がナノメートルの大きさである金属酸化物粒子を含む。
【0015】
[化学式1]
Lia[NixCoyMnz]tM1-tO2-pXp
上記化学式1において、
MはAl、Mg、Sn、Ca、Ge、Ga、B、Ti、Mo、NbおよびWを含む群より選ばれたいずれか一つの元素であり、Xは、F、N、およびPを含む群より選ばれたいずれか一つの元素である。
【0016】
また、aは0.8≦a≦1.3であり、0.6≦x≦0.95、0<y≦0.2、0<z≦0.2、x+y+z=1、0≦t≦1、0≦p≦0.1である。また、0.8≦x≦0.95、0<y≦0.1、0<z≦0.1であり得る。
上記金属酸化物は、ZrO2、WO3、CeO2、TiO2、HfO2、Co3O4、La2O3、BaO、SrOおよびこれらの組み合わせからなるグループより選ばれた1種以上であり得る。
【0017】
上記金属酸化物は50nm~800nmの平均粒径(D50)を有し得、上記金属酸化物の平均粒径(D50)がこの範囲に含まれる場合、上記金属酸化物が2次粒子の内部に挿入される長所を示し得る。仮に上記金属酸化物の平均粒径(D50)が50nmより小さいと金属酸化物の固まる現象により2次粒子の内部に挿入される可能性が低い問題がある。また、金属酸化物の平均粒径(D50)が600nmより大きいと2次粒子の気孔の大きさより酸化物粒子が大きいので、2次粒子の内部に挿入される可能性が低くなる問題がある。本明細書で特に定義がない限り、平均粒径(D50)は50体積%である粒子の直径を意味する。
【0018】
このように、一実施形態による正極活物質は2次粒子の内部にZrO2のような金属酸化物、特にnmサイズの平均粒径(D50)を有する金属酸化物を粒子形態で含むことにより、高温初期抵抗が減少し、向上した放電容量を示すことができる。特に、nmサイズの平均粒径(D50)を有する金属酸化物粒子を含むことによるこのような効果は、高含量Ni正極活物質である場合より激しく発生し得る初期放電時の抵抗増加および構造的安全性の劣化問題をより効果的に解決することができるため適切である。この際、高含量Ni正極活物質は上記化学式1で表すように、Ni、CoおよびMnを主成分として含み、かつNiをNi、CoおよびMnの全体100モル%に対して、60モル%以上または80モル%以上の正極活物質を意味する。
【0019】
仮に、金属が酸化物形態でない活物質にドーピングされた形態で存在する、すなわち粒子形態で別に存在しない場合には上記化学式1で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン系酸化物の金属サイト(metal site)構造に挿入されて充放電容量が低下する。また、高温初期抵抗が増加し、また、充放電効率が低下する問題があり得る。
【0020】
上記金属酸化物で金属含有量は正極活物質100重量%に対して、0.1重量%~0.7重量%であり得る。金属酸化物で金属の含有量がこの範囲に含まれる場合には初期放電容量をより効果的に増加させることができ、初期放電直流内部抵抗(direct-current internal resistance:DC-IR)をより効果的に減少させることができる。
【0021】
一実施形態で、上記2次粒子はニッケルのモル含有量が一定の領域であるコア部、およびこのコア部の外面を囲んで、コア部との境界面から最外郭に至る方向にニッケルのモル含有量が漸進的に減少する濃度勾配(gradient)が存在するシェル部を含み得る。すなわち、コア-シェル濃度勾配(Core-Shell Gradient、「CSG」)を有する。このように、1次粒子がコア-シェル濃度勾配を有する場合、コア部では高いニッケル含有量を維持するので、高含量ニッケルによる高容量は得ることができ、シェル部ではニッケルの含有量が漸進的に減少する。そのためシェル部ではニッケル以外のMn、Co選択的にMの含有量が増加するので、正極活物質の構造的安定性をより向上させることができる。
【0022】
結果的に、上記正極活物質は下記化学式1aで表されるコア部および下記化学式1bで表されるシェル部を含む1次粒子が組み立てられた2次粒子を含む。この際、コア部でニッケルのモル含有量、すなわち上記化学式1においてxが0.6以上で、正極活物質を構成する金属元素のうち、ニッケル、コバルトおよびマンガン全体100モル%に対して60モル%以上の値が一定に維持され、シェル部ではニッケルのモル含有量がコア部との境界面から最外郭に至る方向に漸進的に減少する。したがって、正極活物質の全体組成は上記化学式1を有し、かつコア部とシェル部はそれぞれ下記化学式1aおよび1bの組成を有し、コア部はNiを一定のモル含有量を有し、シェル部はニッケルのモル含有量が漸進的に減少する条件を満たす。
【0023】
[化学式1a]
Lia1[Nix1Coy1Mnz1]t1M1-t1O2-p1Xp1
上記化学式1aにおいて、
MはAl、Mg、Sn、Ca、Ge、Ga、B、Ti、Mo、NbおよびWを含む群より選ばれたいずれか一つの元素であり、Xは、F、N、およびPを含む群より選ばれたいずれか一つの元素であり、
a1は0.8≦a≦1.3であり、0.6≦x1≦1.0、0<y1≦0.2、0<z1≦0.2、x1+y1+z1=1、0≦t1≦1、0≦p1≦0.1である。
【0024】
[化学式1b]
Lia2[Nix2Coy2Mnz2]t2M1-t2O2-p2Xp2
上記化学式1bにおいて、
MはAl、Mg、Sn、Ca、Ge、Ga、B、Ti、Mo、NbおよびWを含む群より選ばれたいずれか一つの元素であり、XはF、N、およびPを含む群より選ばれたいずれか一つの元素であり、
a2は0.8≦a≦1.3であり、0.4≦x2≦0.9、0<y2≦0.2、0<z2≦0.2、x2+y2+z2=1、0≦t2≦1、0≦p2≦0.1である。
【0025】
このような構造を有する正極活物質は、コア部でニッケルのモル含有量が一定であり、特に高い含有量で維持するので、これによる高容量化が可能である。また、シェル部でニッケルの含有量を減少させながら、ニッケル以外にコバルト、マンガンおよびMの含有量を増加させるので、正極活物質の構造を安定化させることができる。さらに、ZrO2のような金属酸化物を2次粒子の内部に含むので、初期放電時の抵抗減少および容量増加の効果をさらに向上させることができる。
【0026】
上記濃度勾配は、コア部との境界面でのニッケルモル含有量に対する最外郭でのニッケルモル含有量の比が0.6~0.95であることが適切である。ニッケル濃度勾配が上記条件を満たす場合、正極活物質の容量をより増加させることができ、正極活物質の表面部の構造安定化により充放電サイクル性能向上と熱的安全性をより向上させることができる。
【0027】
上記正極活物質の2次粒子で、コア部の平均粒径(D50)は正極活物質2次粒子の全体平均粒径(D50)100%に対して60%~90%であり得る。
【0028】
上記正極活物質は1次粒子が組み立てられた(agglomerated)、すなわち一つ以上の1次粒子が組み立てられた2次粒子を含むものであり、この2次粒子の平均粒径(D50)は7μm~20μmであり得る。2次粒子の平均粒径(D50)がこの範囲に含まれる場合、充填密度をより向上させることができるため適切である。1次粒子の平均粒径(D50)は2次粒子より小さく、かつ適宜調節できるものであって、特に限定する必要はない。
【0029】
また、上記正極活物質は、上記平均粒径(D50)を有する2次粒子のみで構成されることもでき、大粒径粒子および小粒径粒子が混合されたバイモーダル(bi-modal)形態でもあり得る。正極活物質がバイモーダル形態である場合、大粒径粒子は平均粒径(D50)が10μm~20μmであり得、小粒径粒子は平均粒径(D50)が3μm~7μmであり得る。この際、大粒径粒子および小粒径粒子も、少なくとも一つの1次粒子が組み立てられた2次粒子形態であり得るのはもちろんである。また、大粒径粒子および小粒径粒子の混合比率は全体100重量%基準として大粒径粒子が50~80重量%であり得る。このようなバイモーダル粒子分布によってエネルギ密度を改善させることができる。
【0030】
一実施形態において、上記正極活物質の2次粒子表面に位置するコート層をさらに含み得る。このコート層は、ホウ素、ホウ素酸化物、リチウムホウ素酸化物またはこれらの組み合わせを含み得る。ただし、これは例示であるだけであり、正極活物質に使用される多様なコート物質が用いられる。また、コート層の含有量および厚さは適宜調節することができ、特に限定する必要はない。
【0031】
一実施形態において、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含むヒドロキシド前駆体粒子を準備する段階;ヒドロキシド前駆体粒子を1次焼成して多孔性酸化物前駆体粒子を準備する段階;酸化物前駆体粒子および金属酸化物を混合して1次混合物を製造する段階;1次混合物とリチウム原料物質を混合して2次混合物を製造する段階;および2次混合物を2次焼成する段階を含む、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
以下で、正極活物質の製造方法をより詳しく説明する。
【0032】
先に、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含むヒドロキシド前駆体粒子を準備する。
上記ヒドロキシド前駆体粒子は、ニッケル原料物質、コバルト原料物質、マンガン原料物質および溶媒を混合し、この混合物を共沈した後、乾燥して製造することができる。ニッケル原料物質、コバルト原料物質およびマンガン原料物質の使用量は、所望する組成の化合物に合わせて適切なモル比に調節することができ、混合物のうち、ニッケル、コバルトおよびマンガンの全体金属濃度は1M~3Mであり得る。
【0033】
上記ニッケル原料物質は、ニッケルヒドロキシド、ニッケルカーボネート、ニッケルニトラート、ニッケルスルファート、これらの水和物またはこれらの組み合わせであり得、上記コバルト原料物質は、Co(OH)2、Co3O4、CoO、Co(SO4)、これらの水和物またはこれらの組み合わせであり得る。また、マンガン原料物質はマンガンヒドロキシド、マンガンカーボネート、マンガンニトラート、マンガンスルファート、これらの水和物またはこれらの組み合わせであり得る。
【0034】
上記媒は水、例えば脱イオン水、または蒸溜水などを使用することができる。共沈工程で、キレート剤およびpH調節剤をさらに使用することができる。キレート剤としては、NH4(OH)、NH2CH2CH2NH2またはこれらの組み合わせを使用することができる。また、pH調節剤は、NaOH、アンモニアなどのアルカリを使用し、pHを10.0~12.0に調節することができる。キレート剤およびpH調節剤を使用する際、供給速度は特に限定する必要はなく、例えば、それぞれ0.05リットル/時間~0.5リットル/時間の供給速度で供給することができる。
【0035】
上記共沈工程は、Niの酸化を防止するために、不活性気体、例えば窒素ガス(N2)を供給して溶存酸素を除去する条件で実施することができる。窒素ガス供給は溶存酸素の除去に適当な供給速度であればよく、特に限定する必要はなく、例えば1リットル/分~4リットル/分の供給速度で供給することができる。また、共沈工程は30℃~60℃で実施することができ、120rpm~160rpmで攪拌しながら実施できるが、温度および攪拌速度をこれに限定する必要はない。
【0036】
また、上記乾燥工程は80℃~120℃の温度で実施することができる。
【0037】
上記共沈工程は、ニッケル原料物質、コバルト原料物質、マンガン原料物質および溶媒を含むが、ニッケル原料物質のモル濃度が互いに異なる第1金属塩溶液および第2金属塩溶液をそれぞれ製造する。その後、pHが一定に維持され、キレート剤が供給される反応器に、第1金属塩溶液を一定の濃度で供給してコア部を形成する第1共沈段階を行う。この第1共沈段階の後、第1金属塩溶液の供給速度を漸進的に減少させるとともに、第2金属塩溶液の供給速度を漸進的に増加させ、コア部の外面を囲むシェル部を形成する第2共沈段階で実施することもできる。共沈工程を第1共沈および第2共沈段階を実施する場合には、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含み、ニッケルのモル含有量が一定の領域であるコア部およびこのコア部の外面を囲んでこのコア部との境界面から最外郭に至る方向にニッケルのモル含有量が漸進的に減少する濃度勾配が存在するシェル部を含むヒドロキシド前駆体粒子を形成されることができる。
【0038】
上記第1金属塩溶液の供給は0.5リットル/時間~1.0リットル/時間で供給し始め、0.05リットル/時間~0.5リットル/時間まで漸進的に減少させながら実施し、上記第2金属塩溶液の供給は0.5リットル/時間~1.0リットル/時間で供給実施することができる。
【0039】
引き続き、上記ヒドロキシド前駆体粒子を1次焼成して多孔性酸化物前駆体粒子を製造する。上記1次焼成工程は1.0℃/分~5.0℃/分の昇温条件で400℃~800℃まで加熱し、3時間~20時間の間維持する段階で実施することができる。また、上記1次焼成は空気または酸素を10ml/分~50L/分で吹き込みながら実施することができる。
【0040】
上記1次焼成工程を上記条件で実施する場合、ヒドロキシド前駆体が酸化物前駆体に転換されることにより、表面に気孔が形成された多孔性酸化物前駆体が製造される。この気孔は今後の金属酸化物と混合工程で金属酸化物が挿入されて位置する空間として、このような気孔が形成されることにより金属酸化物が粒子形態で最終活物質に残存し得る。
【0041】
仮に、上記1次焼成工程の昇温条件がこの範囲より遅いかもしくは速い場合、または維持される温度が低いかもしくは高い場合、または維持時間がこのとき間より短い場合は表面に気孔が形成されることはできない。これはヒドロキシド前駆体の酸化反応であるMe(OH)2(s)→MeO(s)+H2O(g)反応が完了せず、すなわち生成されたH2Oが揮発されることにより気孔が形成される工程が起きないからである。
【0042】
上記酸化物前駆体粒子と金属酸化物を混合して1次混合物を製造する。この際、酸化物前駆体粒子の表面に形成された気孔に金属酸化物が挿入されて位置する。金属酸化物は、ZrO2、WO3、CeO2、TiO2、HfO2、Co3O4、La2O3、BaO、SrOまたはこれらの組み合わせであり得る。
【0043】
上記酸化物前駆体と金属酸化物を混合して1次混合物を製造する段階で、ドーピング原料物質をさらに混合することができる。このドーピング原料物質は、Al、Mg、Sn、Ca、Ge、Ga、B、Ti、Mo、NbおよびWを含む群より選ばれたいずれか一つの元素を含有する化合物として、ヒドロキシド、カーボネート、ニトラート、スルファート、これらの水和物またはこれらの組み合わせであり得る。
【0044】
得られた1次混合物とリチウム原料物質を混合して2次混合物を製造する。このリチウム原料物質としてはリチウムヒドロキシド、リチウムカーボネート、リチウムニトラート、リチウムスルファート、これらの水和物またはこれらの組み合わせであり得る。
【0045】
このように、前駆体とリチウム原料物質を混合する前に金属酸化物を先に混合する工程を実施するので、酸化物前駆体粒子の表面に形成された気孔には金属酸化物がほとんど位置し得、気孔が金属酸化物で埋められた後、リチウム原料物質と混合されるので、金属酸化物がリチウム原料物質で覆われる構造の2次混合物が形成される。
【0046】
引き続き、上記2次混合物を2次焼成してリチウム二次電池用正極活物質を製造する。2次焼成工程は1.0℃/分~5.0℃/分の昇温条件で700℃~900℃まで加熱し、10時間~24時間の間維持する段階と冷却する工程で実施することができる。また、2次焼成は空気または酸素を10ml/分~50L/分で吹き込みながら実施することができる。
【0047】
上記2次焼成工程を実施した後、コート層をさらに形成することができる。コート層形成工程は、2次焼成工程を実施した生成物とコート原料物質を混合した後、熱処理して実施することができる。コート原料物質としてはホウ素、ホウ素酸化物、H3BO3、リチウムホウ素酸化物またはこれらの組み合わせであり得る。熱処理工程は300℃~500℃で5時間~10時間の間実施し得る。
【0048】
上記2次焼成工程および選択的にコート層をさらに形成する工程を実施しても、金属酸化物が酸化物前駆体粒子の表面に形成された気孔に位置し、これをリチウム原料物質が覆う状態であるので、最終正極活物質で金属酸化物が金属酸化物粒子形態を維持することができる。
【0049】
また、他の一実施形態は、正極;負極;および非水電解質を含み、上記正極は前述した一実施形態による正極活物質を含むものであるリチウム二次電池を提供する。
【0050】
上記正極は、正極集電体上に位置する正極活物質層を含む。正極活物質層は正極活物質を含み、この正極活物質は前述した一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質を含み得る。
上記正極活物質層において、正極活物質の含有量は正極活物質層全体重量に対して90重量%~98重量%であり得る。
【0051】
一実施形態において、上記正極活物質層はバインダおよび導電材をさらに含み得る。この際、バインダおよび導電材の含有量は正極活物質層全体重量に対してそれぞれ1重量%~5重量%であり得る。
【0052】
上記バインダは、正極活物質粒子を互いによく付着させ、また、正極活物質を電流集電体によく付着させる役割をする。バインダの代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロライド、カルボキシル化したポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンゴム、アクリレーティッドスチレン-ブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0053】
上記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず電子伝導性材料であればいかなるものを使用してもよい。導電材の例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料が挙げられる。
【0054】
上記正極集電体としては、アルミニウム箔、ニッケル箔またはこれらの組み合わせを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0055】
上記負極は、負極集電体、および電流集電体上に位置する負極活物質層を含む。負極活物質層は負極活物質を含む。
上記負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションできる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質または遷移金属酸化物を使用することができる。
【0056】
上記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションできる物質としては、その例として炭素物質、すなわちリチウム二次電池において一般的に使用される炭素系負極活物質が挙げられる。炭素系負極活物質の代表的な例としては結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらを共に使用することができる。結晶質炭素の例としては、無定形、板状、片状(flake)、球形または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェースピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0057】
上記リチウム金属の合金としては、リチウムと、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnからなる群より選ばれる金属の合金が使用される。
【0058】
上記リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質としては、シリコン系物質、例えば、Si、SiOx(0<x<2)、Si-Q合金(前記Qはアルカリ金属、アルカリ土金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる元素であり、Siではない)、Si-炭素複合体、Sn、SnO2、Sn-R(前記Rはアルカリ金属、アルカリ土金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる元素であり、Snではない)、Sn-炭素複合体などが挙げられ、また、これらの中から少なくとも一つとSiO2を混合して使用することもできる。前記元素QおよびRとしてはMg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Poおよびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるものを使用することができる。
上記遷移金属酸化物としてはリチウムチタン酸化物を使用することができる。
【0059】
上記負極活物質層において負極活物質の含有量は、負極活物質層全体重量に対して95重量%~99重量%であり得る。
【0060】
上記負極活物質層は、負極活物質とバインダを含み、選択的に導電材をさらに含み得る。
【0061】
上記負極活物質層において、負極活物質の含有量は、負極活物質層全体重量に対して95重量%~99重量%であり得る。負極活物質層からバインダの含有量は、負極活物質層全体重量に対して1重量%~5重量%であり得る。また、導電材をさらに含む場合には負極活物質を90重量%~98重量%、バインダを1~5重量%、導電材を1重量%~5重量%使用することができる。
【0062】
上記バインダは、負極活物質粒子を互いによく付着させ、また、負極活物質を電流集電体によく付着させる役割をする。バインダとしては、非水溶性バインダ、水溶性バインダまたはこれらの組み合わせを使用することができる。
非水溶性バインダとしては、ポリビニルクロライド、カルボキシル化したポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
水溶性バインダとしては、スチレン-ブタジエンゴム、アクリレーティッドスチレン-ブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、プロピレンと炭素数が2~8のオレフィン共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0063】
上記負極バインダとして、水溶性バインダを使用する場合、粘性を付与できるセルロース系化合物を増粘剤としてさらに含み得る。このセルロース系化合物としてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用することができる。アルカリ金属としてはNa、KまたはLiを使用することができる。このような増粘剤使用含有量は、負極活物質100重量部に対して0.1重量部~3重量部であり得る。
【0064】
上記導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず電子伝導性材料であれば、いかなるものを使用してもよい。導電材の例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、デンカブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料が挙げられる。
【0065】
上記負極集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタニウム箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコートされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるものを使用することができる。
【0066】
上記非水電解液は非水性有機溶媒とリチウム塩を含む。
非水性有機溶媒は電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割をする。
【0067】
非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非プロトン性溶媒を使用することができる。前記カーボネート系溶媒としてはジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などが使用され得、前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)、などが使用されることができる。前記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが使用され得、前記ケトン系溶媒としてはシクロヘキサノンなどが使用されることができる。また、前記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが使用され得、前記非プロトン性溶媒としてはR-CN(Rは炭素数2~20の直鎖状、分枝状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合方向環またはエーテル結合を含み得る)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)類などが使用されることができる。
【0068】
非水性有機溶媒は単独でまたは一つ以上混合して使用することができ、一つ以上混合して使用する場合の混合比率は目的とする電池性能に応じて適宜調節することができ、これは当該分野に従事する者に広く理解され得る。
【0069】
また、カーボネート系溶媒の場合、環状(cyclic)カーボネートと鎖状(chain)カーボネートを混合して使用した方が良い。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは1:1~1:9の体積比で混合して使用することが優れた電解液の性能を奏することができる。
【0070】
上記非水性有機溶媒は、カーボネート系溶媒に芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含んでもよい。この際、カーボネート系溶媒と芳香族炭化水素系有機溶媒は1:1~30:1の体積比で混合され得る。
【0071】
芳香族炭化水素系有機溶媒としては下記化学式2の芳香族炭化水素系化合物が使用される。
【0072】
【0073】
化学式2において、R1~R6は互いに同一または相異し、水素、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、ハロアルキル基およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるものである。
【0074】
芳香族炭化水素系有機溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、1,2,4-トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、1,3-ジヨードベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1,2,3-トリヨードベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、2,3-ジフルオロトルエン、2,4-ジフルオロトルエン、2,5-ジフルオロトルエン、2,3,4-トリフルオロトルエン、2,3,5-トリフルオロトルエン、クロロトルエン、2,3-ジクロロトルエン、2,4-ジクロロトルエン、2,5-ジクロロトルエン、2,3,4-トリクロロトルエン、2,3,5-トリクロロトルエン、ヨードトルエン、2,3-ジヨードトルエン、2,4-ジヨードトルエン、2,5-ジヨードトルエン、2,3,4-トリヨードトルエン、2,3,5-トリヨードトルエン、キシレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるものである。
【0075】
非水性電解質は電池寿命を向上させるためにビニレンカーボネートまたは下記化学式3のエチレンカーボネート系化合物をさらに含むこともできる。
【0076】
【0077】
化学式3において、R7およびR8は互いに同一または相異し、水素、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO2)およびフッ素化した炭素数1~5のアルキル基からなる群より選ばれ、R7とR8のうち少なくとも一つはハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO2)およびフッ素化した炭素数1~5のアルキル基からなる群より選ばれるが、ただしR7とR8はすべて水素ではない。
【0078】
エチレンカーボネート系化合物の代表的な例としてはジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネートまたはフルオロエチレンカーボネートなどが挙げられる。このような寿命向上添加剤をさらに使用する場合はその使用量は適宜調節することができる。
【0079】
リチウム塩は有機溶媒に溶解され、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進する役割をする物質である。このようなリチウム塩の代表的な例としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiN(SO2C2F5)2、Li(CF3SO2)2N、LiN(SO3C2F5)2、LiC4F9SO3、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(ここで、xおよびyは自然数である)、LiCl、LiIおよびLiB(C2O4)2(リチウムビスオキザレートボレート(lithium bis(oxalato) borate;LiBOB)からなる群より選ばれる一つまたは二つ以上を支持(supporting)する電解塩として含む。リチウム塩の濃度は0.1~2.0Mの範囲内で使用した方が良い。リチウム塩の濃度がこの範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度および粘度を有するので優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0080】
また、上記リチウム二次電池は正極および負極の間に介在するセパレータを含み得る。正極、負極およびセパレータは電解液に含浸されていてもよい。
上記セパレータは正極と負極を分離してリチウムイオンの移動通路を提供するものであり、リチウム二次電池において通常使用されるものであればいかなるものを使用してもよい。すなわち、電解質のイオンの移動に対して低抵抗でありかつ電解液含湿能力に優れるものが使用される。
【0081】
セパレータは、例えば、ガラス繊維、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンまたはこれらの組み合わせ物の中から選ばれたものであり得、不織布または織布形態であり得る。例えば、リチウム二次電池にはポリエチレン、ポリプロピレンなどのようなポリオレフィン系高分子セパレータが主に使用され、耐熱性または機械的強度の確保のためにセラミック成分または高分子物質が含まれた組成物でコートされたセパレータが使用されることもでき、選択的に単層または多層構造で使用されることができる。
【0082】
また、セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライドまたはこれらの2層以上の多層膜が使用され得、ポリエチレン/ポリプロピレン2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレン3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層セパレータなどのような混合多層膜が使用され得るのはもちろんである。
【0083】
図1は、一実施形態によるリチウム二次電池を概略的に示したものである。一実施形態によるリチウム二次電池は円筒形であることを例として説明するが、本発明はこれに制限されるものではなく、角型、パウチ型など多様な形態の電池に適用することができる。
【0084】
図1を参照すると、リチウム二次電池100は円筒形で負極112、正極114および負極112と正極114の間に配置されたセパレータ113、負極112、正極114およびセパレータ113に含浸された電解質(図示せず)、電池容器120、そして電池容器120を封入する封入部材140を主な部分として構成されている。
【0085】
このようなリチウム二次電池100は、負極112、正極114およびセパレータ113を順に積層した後スパイラル状に巻き取られた状態で電池容器120に収納して構成される。
【実施例】
【0086】
以下、本発明の実施例および比較例を説明する。下記で説明する実施例は本発明の一実施例であり、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0087】
(製造例1:大粒径活物質ヒドロキシド前駆体)
1)金属塩溶液の製造
ニッケル原料物質としてはNiSO4・6H2O、コバルト原料物質としてはCoSO4・7H2O、マンガン原料物質としてはMnSO4・H2Oを用いて、これらを脱イオン水に添加して溶解させ、Ni、Co、およびMnの濃度が互いに異なる二つの金属塩水溶液を製造した。
【0088】
コア部の形成のための第1金属塩水溶液は、脱イオン水内で(Ni0.98Co0.01Mn0.01)(OH)2の化学量論的モル比を満たすように上記した各原料物質を混合するが、全体金属塩のモル濃度が2.5Mになるように製造した。
これとは独立して、シェル部の形成のための第2金属塩水溶液は、脱イオン水内で(Ni0.64Co0.23Mn0.13)(OH)2の化学量論的モル比を満たすように上記各原料物質を混合するが、全体金属塩のモル濃度が2.5Mになるように製造した。
【0089】
2)共沈工程
二つの金属塩水溶液供給タンクが直列に連結された共沈反応器を準備し、それぞれの金属塩水溶液供給タンクに上記第1金属塩水溶液および上記第2金属塩水溶液を装入した。
上記共沈反応器(容量20L、回転モータの出力200W)に蒸溜水3リットルを入れた後、窒素ガスを2リットル/分の供給速度で供給することによって、溶存酸素を除去して反応器の温度を50℃に維持させながら140rpmで攪拌した。
【0090】
また、キレート剤として14M濃度のNH4(OH)を0.06リットル/時間で、pH調節剤として8M濃度のNaOH溶液を0.1リットル/時間で、それぞれ反応器に連続的に投入するが、工程進行中の反応器内はpH12を維持するようにその投入量を適宜制御した。
【0091】
上記pHが維持され、キレート剤が供給される反応器に、この反応器に直列に連結された二つの金属塩水溶液供給タンクから、上記第1金属塩水溶液は0.4リットル/時間で投入しながら、反応器のインペラ速度を140rpmに調節し、沈殿物の直径が約11.1μmになるまで(最終生成物直径に対して75%に該当する)共沈反応を行った。このとき、流量を調節して溶液の反応器内の平均滞留時間は10時間程度になるようにし、反応が定常状態に到達した後に上記反応物に対して正常状態持続時間を与えてさらに密度が高い共沈化合物を得るようにした。
【0092】
引き続き、上記第1金属塩水溶液と上記第2金属塩水溶液の混合比率を変更させながら、全体供給溶液を0.5リットル/時間で投入するが、上記第1金属塩水溶液の供給速度は0.5リットル/時間で供給し始め、0.05リットル/時間で漸進的に減少させ、上記第2金属塩水溶液の供給速度は0.5リットル/時間で供給した。このとき、流量を調節して溶液の反応器内の平均滞留時間は20時間以内になるようにし、最終的に沈殿物の直径が14.8μmになるまで共沈反応を行った。
【0093】
3)後処理工程
上記共沈工程により収得される沈殿物を濾過し、水で洗浄した後、100℃のオーブン(oven)で24時間の間乾燥し、粒子全体での組成が(Ni0.88Co0.095Mn0.025)(OH)2であり、平均粒径が15μmである大粒径粒子活物質前駆体を製造した。
【0094】
(製造例2:小粒径正極活物質ヒドロキシド前駆体)
1)金属塩溶液の製造
製造例1と同じ第1金属塩水溶液および第2金属塩水溶液を製造した。
【0095】
2)共沈工程
製造例1と同じ反応器を用いて、他の条件は同様にするが、各金属塩溶液の投入時間および投入量を異にした。
具体的には、上記第1金属塩水溶液を0.3リットル/時間で投入しながら、反応器のインペラ速度を140rpmに調節し、沈殿物の直径が約15.0μmになるまで共沈反応を行った。このとき、流量を調節して溶液の反応器内の平均滞留時間は15時間以上になるようにし、反応が定常状態に到達した後に上記反応物に対して正常状態持続時間を与えてさらに密度が高い共沈化合物を得るようにした。
【0096】
引き続き、上記第1金属塩水溶液と上記第2金属塩水溶液の混合比率を変更させながら、全体供給溶液を0.5リットル/時間で投入するが、上記第1金属塩水溶液の供給速度は0.5リットル/時間で供給し始め、0.05リットル/時間で漸進的に減少させ、上記第2金属塩水溶液の供給速度は0.5リットル/時間で供給した。このとき、流量を調節して溶液の反応器内の平均滞留時間は15時間以内になるようにし、最終的に沈殿物の直径が5.3μmになるまで共沈反応を行った。
【0097】
3)後処理工程
上記共沈工程により収得される沈殿物を濾過し、水で洗浄した後、100℃のオーブン(oven)で24時間の間乾燥し、粒子全体での組成が(Ni0.88Co0.095Mn0.025)(OH)2であり、平均粒径が5μmである小粒径ヒドロキシド活物質前駆体を製造した。
【0098】
(製造例3:大粒径酸化物前駆体の製造)
上記製造例1で製造されたコア-シェル濃度勾配大粒径(Ni0.88Co0.095Mn0.025)(OH)2組成を有する前駆体を熱処理炉に装入して空気の雰囲気を200mL/分で流入しながら、熱処理を実施して大粒径である多孔性Ni0.88Co0.095Mn0.025O2酸化物前駆体を製造した。上記熱処理工程は2.5℃/minの昇温速度で700℃まで加熱した後、700℃で5時間の間維持する工程で実施した。
【0099】
(製造例4:小粒径酸化物前駆体の製造)
上記製造例2で製造されたコア-シェル濃度勾配小粒径(Ni0.88Co0.095Mn0.025)(OH)2組成を有する前駆体を熱処理炉に装入して空気の雰囲気を200mL/分で流入しながら、熱処理を実施して小粒径である多孔性Ni0.88Co0.095Mn0.025O2酸化物前駆体を製造した。上記熱処理工程は2.5℃/minの昇温速度で700℃まで加熱した後、700℃で5時間の間維持する工程で実施した。
【0100】
(実施例1)
1)大粒径活物質の製造
上記大粒径多孔性Ni0.88Co0.095Mn0.025O2酸化物前駆体、平均粒径(D50)が50nmであるZrO2(Aldrich、4N)およびAl(OH)3(Aldrich、4N)を均一に混合して1次混合物を製造した。この混合において、ZrO2の使用量は最終生成物でZrが0.34重量%になるように、Al(OH)3はAlが0.014重量%になるように使用した。
【0101】
上記1次混合物とLiOH・H2O(samchun化学、battery grade)を最終生成物でNi、Co、Mnの全体モルとLiが1:1.05モル比になるように混合して2次混合物を製造した。
【0102】
上記2次混合物をチューブ(tube furnace、内径50mm、長さ1、000mm)に装入して酸素を200mL/分で流入させながら2次焼成した。この2次焼成工程は2.5℃/分の昇温速度で730℃まで昇温後、この温度で16時間維持し、引き続き、焼成工程を実施した生成物を25℃まで自然冷却した。
【0103】
引き続き、冷却生成物を水洗し、表面の残留リチウムを除去し、H3BO3を乾式混合し、この混合物を380℃で5時間の間維持して正極活物質を製造した。製造された正極活物質はBが表面にコートされ、平均粒径(D50)が0.75μmである1次粒子が組み立てられた平均粒径(D50)が16.0μmである2次粒子であり、2次粒子の内部に平均粒径(D50)が50nmであるZrO2粒子が含まれた大粒径活物質であった。製造された活物質で全体組成はLi1.05(Ni0.88Co0.095Mn0.025)0.995Al0.005O2であり、製造された活物質はLi1.05(Ni0.92Co0.067Mn0.013)0.995Al0.005O2コア部とLi1.05(Ni0.85Co0.12Mn0.03)0.995Al0.005O2シェル部を含む2次粒子を含み、このときコア部は全体的にNiが92モル%を一定に維持しており、シェル部はコア部との境界面から最外郭に至る方向にニッケルのモル含有量が減少し、コア部に境界面でのニッケルモル含有量に対する最外郭でのニッケルモル含有量の比が0.92であった。また、2次粒子のコア部の平均粒径(D50)は2次粒子の平均粒径(D50)100%に対して63%であった。
【0104】
製造された活物質でZrの含有量は製造された正極活物質100重量%に対して0.34重量%であった。またコートされたB含有量は0.1重量%であった。
【0105】
2)小粒径活物質の製造
大粒径酸化物前駆体の代わりに、小粒径酸化物前駆体を使用して3)と同様に実施し、Bが表面にコートされ、平均粒径(D50)が0.5μmである1次粒子が組み立てられた平均粒径(D50)が5.0μmである2次粒子であり、2次粒子の内部にZrO2が含まれた小粒径平均粒径(D50)が50.0nmであるZrO2粒子が含まれた小粒径活物質を製造した。製造された活物質で、全体組成はLi1.05(Ni0.88Co0.095Mn0.025)0.995Al0.005O2であり、製造された活物質はLi1.05(Ni0.92Co0.067Mn0.013)0.995Al0.005O2コア部とLi1.05(Ni0.85Co0.12Mn0.03)0.995Al0.005O2シェル部を含む2次粒子を含み、このときコア部は全体的にNiが92モル%を一定に維持しており、シェル部はコア部との境界面から最外郭に至る方向にニッケルのモル含有量が減少し、コア部との境界面でのニッケルモル含有量に対する最外郭でのニッケルモル含有量の比が0.92であった。また、2次粒子のコア部の平均粒径(D50)は2次粒子の平均粒径(D50)100%に対して70%であった。
【0106】
製造された活物質でZrの含有量は製造された正極活物質100重量%に対して0.34重量%であった。またコートされたB含有量は0.1重量%であった。
製造された大粒径活物質および小粒径活物質を8:2重量比で混合し、最終正極活物質を製造した。最終正極活物質でZrの含有量は正極活物質全体100重量%に対して0.34重量%であった。
【0107】
3)半電池の製造
上記製造された最終正極活物質、ポリビニリデンフルオライドバインダ(商品名:KF1100)およびデンカブラック導電材を92.5:3.5:4の重量比で混合し、この混合物をN-メチル-2-ピロリドン(N-Methyl-2-pyrrolidone)溶媒に添加して正極活物質スラリーを製造した。
【0108】
上記スラリーをドクターブレード(Doctor blade)を用いてAl箔(Al foil、厚さ:15μm)電流集電体上にコートし、乾燥した後圧延して正極を製造した。正極のローディング量は14.6mg/cm2であり、圧延密度は3.1g/cm3であった。
【0109】
上記正極、リチウム金属負極(厚さ200μm、Honzo metal)、電解液とポリプロピレンセパレータを用いて通常の方法で2032半電池を製造した。電解液としては1M LiPF6が溶解したエチレンカーボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートの混合溶媒(混合比3:4:3体積%)にビニレンカーボネートを添加したものを使用した。このとき、ビニレンカーボネートの含有量は1M LiPF6が溶解した混合溶媒100重量%に対して1.5重量%になるようにした。
【0110】
(実施例2)
上記大粒径または小粒径多孔性Ni0.88Co0.095Mn0.025O2酸化物前駆体、平均粒径(D50)が50nmであるZrO2(Aldrich、4N)およびAl(OH)3(Aldrich、4N)を均一に混合して1次混合物を製造する工程で、ZrO2の使用量は最終生成物でZrが0.1重量%になるように変更したことを除いては上記実施例1と同様に実施して大粒径活物質および小粒径活物質を製造し、これを8:2で混合して活物質を製造した。
【0111】
(実施例3)
上記大粒径または小粒径多孔性Ni0.88Co0.095Mn0.025O2酸化物前駆体、平均粒径(D50)が50nmであるZrO2(Aldrich、4N)およびAl(OH)3(Aldrich、4N)を均一に混合して1次混合物を製造する工程で、ZrO2の使用量は最終生成物でZrが0.35重量%になるように変更したことを除いては上記実施例1と同様に実施して大粒径活物質および小粒径活物質を製造し、これを8:2で混合して活物質を製造した。
【0112】
(実施例4)
上記大粒径または小粒径多孔性Ni0.88Co0.095Mn0.025O2酸化物前駆体、平均粒径(D50)が50nmであるZrO2(Aldrich、4N)およびAl(OH)3(Aldrich、4N)を均一に混合して1次混合物を製造する工程で、ZrO2の使用量は最終生成物でZrが0.7重量%になるように変更したことを除いては上記実施例1と同様に実施して大粒径活物質および小粒径活物質を製造し、これを8:2で混合して活物質を製造した。
【0113】
(実施例5)
上記大粒径または小粒径多孔性Ni0.88Co0.095Mn0.025O2酸化物前駆体、平均粒径(D50)が50nmであるZrO2(Aldrich、4N)およびAl(OH)3(Aldrich、4N)を均一に混合して1次混合物を製造する工程で、ZrO2の使用量は最終生成物でZrが0.34重量%になるようにし、平均粒径(D50)が500nmであるZrO2を使用したことを除いては上記実施例5と同様に実施して大粒径活物質および小粒径活物質を製造し、これを8:2で混合して活物質を製造した。
【0114】
(実施例6)
上記大粒径または小粒径多孔性Ni0.88Co0.095Mn0.025O2酸化物前駆体、ZrO2(Aldrich、4N)およびAl(OH)3(Aldrich、4N)を均一に混合して1次混合物を製造する工程で、平均粒径(D50)が800nmであるZrO2を使用したことを除いては上記実施例5と同様に実施して大粒径活物質および小粒径活物質を製造し、これを8:2で混合して活物質を製造した。
【0115】
(比較例1)
1)大粒径活物質の製造
上記製造例1で製造された(Ni0.88Co0.095Mn0.025)(OH)2組成を有する大粒径ヒドロキシド前駆体と、LiOH・H2O(samchun化学、battery grade)リチウム原料物質、ZrO2(Aldrich、4N)およびAl(OH)3(Aldrich、4N)を混合した。この混合工程で、最終活物質で、Ni、CoおよびMnの全体モル比とLiのモル比が1:1.05になるようにヒドロキシド前駆体とリチウム原料物質を使用し、最終活物質でZrとAlの含有量、すなわちドーピング量は0.34重量%およびAlは0.014重量%になるようにした。
【0116】
上記混合物をチューブ(tube furnace、内径50mm、長さ1、000mm)に装入して酸素を200mL/分で流入させながら2次焼成した。2次焼成工程は2.5℃/minの昇温速度で730℃まで昇温後、この温度で16時間維持し、引き続き、焼成工程を実施した生成物を25℃まで自然冷却した。
【0117】
引き続き、冷却生成物を水洗し、表面の残留リチウムを除去し、H3BO3を乾式混合し、この混合物を380℃で5時間の間維持し、正極活物質を製造した。製造された正極活物質はBが表面にコートされ、平均粒径(D50)が0.75μmである1次粒子が組み立てられた平均粒径(D50)が15.0μmである2次粒子である、大粒径であり全体組成はLi1.05(Ni0.88Co0.095Mn0.025)0.9985Zr0.0037Al0.005O2である活物質であり、製造された活物質はLi1.05(Ni0.92Co0.067Mn0.013)0.9985Zr0.0037Al0.005O2コア部とLi1.05(Ni0.85Co0.12Mn0.03)0.9985Zr0.0037Al0.005O2シェル部を含み、このときコア部は全体的にNiが92モル%を一定に維持しており、シェル部はコア部との境界面から最外郭に至る方向にニッケルのモル含有量が減少し、コア部との境界面でのニッケルモル含有量に対する最外郭でのニッケルモル含有量の比が0.92であった。また、コア部の平均粒径(D50)は2次粒子の平均粒径(D50)100%に対して63%であった。
コートされたB含有量は0.1重量%であった。
【0118】
2)小粒径活物質の製造
上記製造例2で製造された(Ni0.88Co0.095Mn0.025)(OH)2組成を有する小粒径ヒドロキシド前駆体を使用したことを除いては、大粒径ヒドロキシド前駆体を用いた工程と同様に実施してBが表面にコートされ、平均粒径(D50)が0.5μmである1次粒子が組み立てられた平均粒径(D50)が5.0μmである2次粒子である、小粒径活物質を製造した。製造された活物質で、全体組成はLi1.05(Ni0.88Co0.095Mn0.025)0.9985Zr0.0037Al0.005O2であり、製造された活物質はLi1.05(Ni0.92Co0.067Mn0.013)0.9985Zr0.0037Al0.005O2コア部とLi1.05(Ni0.85Co0.12Mn0.03)0.9985Zr0.0037Al0.005O2シェル部を含み、このときコア部は全体的にNiが92モル%を一定に維持しており、シェル部はコア部との境界面から最外郭に至る方向にニッケルのモル含有量が減少し、コア部との境界面でのニッケルモル含有量に対する最外郭でのニッケルモル含有量の比が0.92であった。また、コア部の平均粒径(D50)は2次粒子の平均粒径(D50)100%に対して70%であった。
コートされたB含有量は0.1重量%であった。
【0119】
製造された大粒径活物質および小粒径活物質を8:2重量比で混合し、最終正極活物質を製造した。
上記正極活物質を用いて上記実施例1と同様に実施して半電池を製造した。
【0120】
(比較例2)
上記大粒径または小粒径多孔性Ni0.88Co0.095Mn0.025O2酸化物前駆体、ZrO2(Aldrich、4N)およびAl(OH)3(Aldrich、4N)を均一に混合して1次混合物を製造する工程で、ZrO2の使用量は最終生成物でZrが0.05重量%になるように変更したことを除いては上記実施例1と同様に実施して大粒径活物質および小粒径活物質を製造し、これを8:2で混合して活物質を製造した。
【0121】
(比較例3)
上記大粒径または小粒径多孔性Ni0.88Co0.095Mn0.025O2酸化物前駆体、ZrO2(Aldrich、4N)およびAl(OH)3(Aldrich、4N)を均一に混合して1次混合物を製造する工程で、ZrO2の使用量は最終生成物でZrが1.0重量%になるように変更したことを除いては上記実施例1と同様に実施して大粒径活物質および小粒径活物質を製造し、これを8:2で混合して活物質を製造した。
【0122】
(比較例4)
上記大粒径または小粒径多孔性Ni0.88Co0.095Mn0.025O2酸化物前駆体、ZrO2(Aldrich、4N)およびAl(OH)3(Aldrich、4N)を均一に混合して1次混合物を製造する工程で、平均粒径(D50)が20nmであるZrO2を使用したことを除いては上記実施例5と同様に実施して大粒径活物質および小粒径活物質を製造し、これを8:2で混合して活物質を製造した。
【0123】
(比較例5)
上記大粒径または小粒径多孔性Ni0.88Co0.095Mn0.025O2酸化物前駆体、ZrO2(Aldrich、4N)およびAl(OH)3(Aldrich、4N)を均一に混合して1次混合物を製造する工程で、平均粒径(D50)が1000nmであるZrO2を使用したことを除いては上記実施例5と同様に実施して大粒径活物質および小粒径活物質を製造し、これを8:2で混合して活物質を製造した。
【0124】
(*SEM分析)
製造例1のNi
0.88Co
0.095Mn
0.025OH
2組成を有する大粒径ヒドロキシド前駆体の表面モルフォロジー(morphology)と製造例3のNi
0.88Co
0.095Mn
0.025O
2組成を有する大粒径酸化物前駆体の表面モルフォロジーを調べるために、製造例1の大粒径ヒドロキシド前駆体と製造例3のNi
0.88Co
0.095Mn
0.025O
2組成を有する大粒径酸化物前駆体の表面SEM写真を
図2および
図3にそれぞれ示した。
【0125】
図2に示すように、製造例1のヒドロキシド前駆体は表面が非常に緻密に形成されたことに対し、
図3に示すように、製造例3の酸化物前駆体は表面が非常にポーラスである、すなわち、多孔性表面を有することがわかる。
【0126】
(*EDS(Energy dispersive x-ray spectroscopy)分析)
実施例1および比較例1で製造された正極活物質をFIB(focused Ion Beam)で断面を切断し、エネルギ分散分光(Energy dispersive x-ray spectroscopy)分析を実施し、断面形状、Ni、Co、MnおよびZr分布を分析し、その結果を
図4および
図5にそれぞれ示した。
【0127】
図4に示すように、実施例1により製造された正極活物質は粒子断面部に50nmの大きさを有するZrO
2粒子が観察されることに対し、
図5に示すように、比較例1により製造された正極活物質は粒子形状のZrが観察されなかった。
【0128】
(*電気化学特性の評価)
上記実施例1~7および上記比較例1~5により製造された半電池を定電流-定電圧2.5V~4.25V、1/20Cカット-オフ条件で、0.2C充電および0.2放電放電を1回実施し、初期充放電容量を測定した。その結果のうち実施例1~4および比較例1~3の結果を下記表1に示し、充放電容量からクーロン効率を求めてその結果も下記表1に示した。また、実施例5~6および比較例4~5の結果は下記表2に示した。さらに、比較のために、実施例1の結果を下記表2にも示した。
【0129】
また、上記実施例1~7および上記比較例1~5により製造された半電池を45℃で、定電流-定電圧2.5V~4.25V、1/20Cカット-オフ条件で、0.2C充電および0.2放電放電を1回実施し、4.25V充電100%で放電電流印加後、60秒後の電圧変動を測定し、この結果から直流内部抵抗(DC-IR:Direct current internal resistance)を求めた。その結果のうち実施例1~4および比較例1~3の結果は下記表1に示し、実施例5~6および比較例4~5の結果は下記表2に示した。
【0130】
【0131】
上記表1に示すように、ナノメートルの大きさのZrO2粒子が2次粒子の内部に含まれた実施例1~4の正極活物質を含む半電池は比較例1に比べて、充放電容量が高く、優れたクーロン効率を示し、高温で低い初期抵抗を示すことを確認することができる。
【0132】
さらに、ナノメートルの大きさのZrO2粒子が2次粒子の内部に含まれているが、過度に少量であるか(比較例2)および過度に過量(比較例3)である場合は高温で初期抵抗が増加して適切でないことがわかる。
【0133】
【0134】
上記表2に示すように、平均粒径(D50)が50nm~800nmであるZrO2粒子が2次粒子の内部に含まれた実施例1、5および6の正極活物質を含む半電池は、平均粒径(D50)が過度に小さいか(比較例4)および過度に大きい場合(比較例5)に比べて、高温初期抵抗が低いことがわかる。
【0135】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造することができ、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施できることを理解することができる。したがって、上記一実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。