(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】生育状況または病害虫発生状況の予測システム、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
A01G7/00 603
(21)【出願番号】P 2019556441
(86)(22)【出願日】2017-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2017042696
(87)【国際公開番号】W WO2019106733
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-04-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】500521522
【氏名又は名称】株式会社オプティム
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 俊二
【合議体】
【審判長】前川 慎喜
【審判官】土屋 真理子
【審判官】津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-143959(JP,A)
【文献】特開2016-167214(JP,A)
【文献】特開2005-85059(JP,A)
【文献】特開2014-225249(JP,A)
【文献】米国特許第9652840(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0101934(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場における生育状況を予測する生育状況予測システムであって、
前記圃場を撮影した画像を取得する画像取得手段と、
前記画像を解析して、対象物の生育状況及び病害虫の被害状況を検出する検出手段と、
前記圃場の現在の環境情報を取得する環境情報取得手段と、
前記圃場における対象物の過去の環境情報である過去環境情報を取得する過去環境情報取得手段と、
前記検出した生育状況、病害虫の被害状況、前記現在の環境情報、前記過去環境情報、に基づいて、将来の生育状況を予測し、前記対象物に病害虫の被害が発生する可能性の高い区画や箇所を特定し、当該区画や箇所について、前記取得した画像における当該対象物の該当区画や箇所に印をつけて出力する予測手段と、
を備え、
前記環境情報取得手段が取得する環境情報とは、圃場の積算温度、積算雨量、積算日照量と、外部から配信されている病害虫に関する予察情報、予察注意報情報、警報情報である生育状況予測システム。
【請求項2】
前記予測の結果に基づいて、対処方法を表示する対処方法表示手段を備える請求項1に記載の生育状況予測システム。
【請求項3】
前記予測手段は、前記過去環境情報を入力して学習した結果から予測する請求項1に記載の生育状況予測システム。
【請求項4】
圃場における生育状況を予測する生育状況予測システムが実行する生育状況予測方法であって、
前記圃場を撮影した画像を取得するステップと、
前記画像を解析して、対象物の生育状況及び病害虫の被害状況を検出するステップと、
前記圃場の現在の環境情報を取得するステップと、
前記圃場における対象物の過去の環境情報である過去環境情報を取得するステップと、
前記検出した生育状況、病害虫の被害状況、前記現在の環境情報、前記過去環境情報、に基づいて、将来の生育状況を予測し、前記対象物に病害虫の被害が発生する可能性の高い区画や箇所を特定し、当該区画や箇所について、前記取得した画像における当該対象物の該当区画や箇所に印をつけて出力するステップと、
を有し、
前記
圃場の現在の環境情報を取得するステップが取得する環境情報とは、圃場の積算温度、積算雨量、積算日照量と、外部から配信されている病害虫に関する予察情報、予察注意報情報、警報情報である生育状況予測方法。
【請求項5】
圃場における生育状況を予測するコンピュータに、
前記圃場を撮影した画像を取得するステップ、
前記画像を解析して、対象物の生育状況及び病害虫の被害状況を検出するステップ、
前記圃場の現在の環境情報を取得するステップ、
前記圃場における対象物の過去の環境情報である過去環境情報を取得するステップ、
前記検出した生育状況、病害虫の被害状況、前記現在の環境情報、前記過去環境情報、に基づいて、将来の生育状況を予測し、前記対象物に病害虫の被害が発生する可能性の高い区画や箇所を特定し、当該区画や箇所について、前記取得した画像における当該対象物の該当区画や箇所に印をつけて出力する出力するステップ、
を実行させ
るためのコンピュータ読み取り可能なプログラムであって、
前記
圃場の現在の環境情報を取得するステップが取得する環境情報とは、圃場の積算温度、積算雨量、積算日照量と、外部から配信されている病害虫に関する予察情報、予察注意報情報、警報情報
であるコンピュータ読み取り可能なプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生育状況または病害虫発生状況の予測システム、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農作物の生育状況や病害虫発生状況を予測する技術が進歩している。
【0003】
例えば、農作物の品質や収量のばらつきを抑制するために農作物の生育状況を予測するシステム提供されている(特許文献1)。また、病害虫に関する情報を詳細まで把握するためのシステムが提供されている(特許文献2)。
【0004】
すなわち、特許文献1においては、天候、温度、風、霜、害虫、土壌成分、農作物の数、日照量に関する情報を取得し、それらの情報に基づいて生育状況を予測して圃場の管理に活用することで、栽培者の勘や経験に頼ることがなくばらつきのない圃場管理方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献2においては、営農者が栽培する農作物と一致する農作物についての病害虫発生予報を、当該農作物を栽培する地域の画像とともに表示させることで、自身が栽培している農作物に関する情報のみを詳細まで把握するためのシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-49102号公報
【文献】特開2016-167214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載のシステムでは、農作物の画像解析も加味して現在の生育状況や病害虫発生状況を検出して予測に活用することまではできていない。
【0008】
すなわち、実際の農作物の状況を知るには、圃場を撮影することが最も直接的に把握できる方法であり、将来の成長を予測するためには、現状の状態をできるだけ正確に把握する必要がある。
【0009】
加えて、農作物の病害虫発生状況を知るにあたっても、圃場を撮影することが最も直接的に状況と程度を把握できる方法であり、将来の病害虫被害を予測するためには、現状の被害状況をできるだけ正確に把握する必要がある。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、画像解析も加味して、圃場における将来の生育状況や病害虫を予測するシステム、方法及びプログラムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、現在の環境情報及び過去の環境情報に加え、圃場を撮影した画像の解析結果を使用することで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0012】
(1)本発明は、圃場における生育状況を予測する生育状況予測システムであって、前記圃場を撮影した画像を取得する画像取得手段と、前記画像を解析して、対象物の生育状況及び病害虫の被害状況を検出する検出手段と、前記圃場の現在の環境情報を取得する環境情報取得手段と、前記圃場における対象物の過去の環境情報である過去環境情報を取得する過去環境情報取得手段と、前記検出した生育状況、病害虫の被害状況、前記現在の環境情報、前記過去環境情報、に基づいて、将来の生育状況を予測し、前記対象物に病害虫の被害が発生する可能性の高い区画や箇所を特定し、当該区画や箇所について、前記取得した画像における当該対象物の該当区画や箇所に印をつけて出力する予測手段と、を備え、前記環境情報取得手段が取得する環境情報とは、圃場の積算温度、積算雨量、積算日照量と、外部から配信されている病害虫に関する予察情報、予察注意報情報、警報情報である生育状況予測システムである。
【0013】
(2)また、本発明は、前記予測の結果に基づいて、対処方法を表示する対処方法表示手段を備える、(1)に記載の生育状況予測システムである。
【0015】
(4)また、本発明は、前記予測手段は、前記過去環境情報を入力して学習した結果から予測する、(1)に記載の生育状況予測システムである
【0016】
(5)また、本発明は、圃場における生育状況を予測する生育状況予測システムが実行する生育状況予測方法であって、前記圃場を撮影した画像を取得するステップと、前記画像を解析して、対象物の生育状況及び病害虫の被害状況を検出するステップと、前記圃場の現在の環境情報を取得するステップと、前記圃場における対象物の過去の環境情報である過去環境情報を取得するステップと、前記検出した生育状況、病害虫の被害状況、前記現在の環境情報、前記過去環境情報、に基づいて、将来の生育状況を予測し、前記対象物に病害虫の被害が発生する可能性の高い区画や箇所を特定し、当該区画や箇所について、前記取得した画像における当該対象物の該当区画や箇所に印をつけて出力するステップと、を有し、前記圃場の現在の環境情報を取得するステップが取得する環境情報とは、圃場の積算温度、積算雨量、積算日照量と、外部から配信されている病害虫に関する予察情報、予察注意報情報、警報情報である生育状況予測方法である。
【0017】
(6)また、本発明は、圃場における生育状況を予測するコンピュータに、前記圃場を撮影した画像を取得するステップ、前記画像を解析して、対象物の生育状況及び病害虫の被害状況を検出するステップ、前記圃場の現在の環境情報を取得するステップ、前記圃場における対象物の過去の環境情報である過去環境情報を取得するステップ、前記検出した生育状況、病害虫の被害状況、前記現在の環境情報、前記過去環境情報、に基づいて、将来の生育状況を予測し、前記対象物に病害虫の被害が発生する可能性の高い区画や箇所を特定し、当該区画や箇所について、前記取得した画像における当該対象物の該当区画や箇所に印をつけて出力するステップ、を実行させるためのコンピュータ読み取り可能なプログラムであって、前記環境情報取得手段が取得する環境情報とは、圃場の積算温度、積算雨量、積算日照量と、外部から配信されている病害虫に関する予察情報、予察注意報情報、警報情報であるコンピュータ読み取り可能なプログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、雨量や日照量などの情報に加え、圃場の画像解析も加味して生育状況や病害虫状況を検出して予測に活用するため、より精度が高く好適な予測システム、予測方法及びプログラムを提供できる。
【0019】
また、本発明によると、予測の結果に基づいて、対処方法を表示する対処方法表示手段を備えるため、予測結果だけでなく、発生が予想される問題を解決するための最適な対処方法を取得することができる予測システムを提供できる。
【0020】
また、本発明によると、環境情報として積算温度、積算雨量、積算日照量を使用して予測に活用するため、対象物の生育を決定する重要な項目に着目することで、より精度が高く好適な予測システムを提供できる。
【0021】
また、本発明によると、予測手段が過去環境情報を入力して学習した結果から予測するため、過去のデータを効果的に活用することができ、より精度が高く好適な予測システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】生育状況予測システムの機能構成を示すブロック図。
【
図4】生育状況予測システムが実行する生育状況予測処理を示すフローチャート。
【
図5】取得された画像及び画像解析から得られた生育データの一例を示す図。
【
図6】現在の環境情報及び過去の環境情報の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0024】
〔生育状況予測システム1の概要〕
図1は、本発明の好適な実施形態である生育状況予測システム1の概要を説明するための図である。生育状況予測システム1は、生育状況予測装置100及び、ユーザ端末500から構成される。
【0025】
生育状況予測システム1において、初めにユーザ端末500は、生育状況予測装置100に生育状況予測リクエストを送信する(ステップS01)。生育状況予測リクエストは、予測する地域に関する情報、及び、予測する日付や時期に関する情報の組み合わせにより構成される。
【0026】
生育状況予測リクエストを受信した生育状況予測装置100は、生育状況予測リクエストに含まれる地域に関する情報にしたがって、当該地域の画像データを取得する(ステップS02)。これは、生育状況予測装置100自体が撮影機能を備えて撮影を行ってもよいし、例えばカメラを備えた無人航空機のような、撮影機能を備えた他の装置からネットワーク経由で画像データを受信してもよい。また、画像は撮影されたものに限らず、生成、加工されたデータであってもよい。
【0027】
画像データを取得した生育状況予測装置100は、画像データを解析し、画像解析結果として、現在の生育状況を検出する。
【0028】
画像データを解析し生育状況を検出した生育状況予測装置100は、現在の環境に関する情報である環境情報、及び、過去の環境に関する情報である過去環境情報を取得する。
【0029】
そして、画像解析結果、環境情報、及び過去環境情報に基づいて、予測リクエストに含まれる日付あるいは時期における生育状況を予測する(ステップS03)。
【0030】
さらに、生育状況予測装置100は、予測された結果に対処するための対処方法を取得し、予測結果とともにユーザ端末500に送信する(ステップS04)。
【0031】
予測結果及び対処方法を受信したユーザ端末500は、予測結果及び対処方法を表示手段によって表示する。
【0032】
以上が、生育状況予測システム1の概要である。
【0033】
〔生育状況予測システム1のシステム構成〕
図2は、本発明の好適な実施形態である生育状況予測システム1のシステム構成図である。
図2に示した通り、生育状況予測システム1は、生育状況予測装置100、ユーザ端末500によって構成される。生育状況予測装置100は、公衆回線網300(インターネット網や第3世代、第4世代通信網など)を介して、ユーザ端末500と通信可能である。
【0034】
生育状況予測装置100は、後述の機能を備え、データ通信を行うことが可能であり、家庭用又は業務用に用いられる電化製品である。生育状況予測装置100は、例えば、パーソナルコンピュータやサーバ装置に加えて、携帯電話、携帯情報端末、スマートフォン、タブレット端末、ネットブック端末、スレート端末、電子書籍端末、携帯型音楽プレーヤ等の情報家電であってよい。
【0035】
ユーザ端末500は、同様に、後述の機能を備え、データ通信を行うことが可能であり、家庭用又は業務用に用いられる電化製品である。
【0036】
〔各機能の説明〕
図3に基づいて、各装置の構成について説明する。
【0037】
生育状況予測装置100は、制御部120として、CPU(Central Processing Unit),RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)等を備え、通信部12として、他の機器と通信可能にするためのデバイス、例えば、IEEE802.11に準拠したWiFi(Wireless Fidelity)対応デバイスを備える。
【0038】
また、生育状況予測装置100は、データやファイルを記憶する記憶部130として、ハードディスクや半導体メモリ、記録媒体、メモリカード等による、データのストレージ部を備える。
【0039】
生育状況予測装置100において、制御部120が所定のプログラムを読み込むことで、記憶部130と協働して、検出モジュール122、環境情報取得モジュール123、過去環境取得モジュール124を実現する。また、生育状況予測装置100において、制御部120が所定のプログラムを読み込むことで、通信部110と協働して、予測モジュール125を実現する。さらに、生育状況予測装置100において、制御部120が所定のプログラムを読み込むことで、通信部110及び記憶部130と協働して、画像取得モジュール121、対処方法取得モジュール126を実現する。
【0040】
ユーザ端末500は、生育状況予測装置100と同様に、制御部520として、CPU,RAM,ROM等を備え、通信部510として、例えば、IEEE802.11に準拠したWiFi対応デバイス又は、有線ケーブルによる接続可能とするデバイス等の、他の電化製品、及び無線アクセスポイントとのデータ通信を実現するデバイスを備える。
【0041】
ユーザ端末500において、制御部520が所定のプログラムを読み込むことで、通信部510と協働して、予測リクエスト送信モジュール521、予測表示モジュール522、対処方法表示モジュール523を実現する。
【0042】
〔生育状況予測処理〕
図4は、生育状況予測装置100とユーザ端末500が実行する生育状況予測処理のフローチャートである。上述した各装置のモジュールが行う処理について、本処理にて併せて説明する。
【0043】
はじめに、ユーザ端末500の予測リクエスト送信モジュール521は、生育状況予測装置100に生育状況予測リクエストを送信する(ステップS510)。予生育状況測リクエストは、前述のとおり、予測する地域に関する情報、及び、予測する日付や時期に関する情報の組み合わせにより構成される。
【0044】
次に、生育状況予測装置100の画像取得モジュール121は、生育状況予測リクエストを取得すると(ステップS110)、生育状況予測リクエストに含まれる地域に関する情報にしたがって、当該地域の画像データを取得する(ステップS120)。なお、生育状況予測リクエストは、必ずしもユーザ端末500から送られるだけでなく、生育状況予測装置100内で生成されるものであっても構わない。
【0045】
ここで、画像取得の方法としては、生育状況予測装置100自体が撮影機能を備えて撮影を行ってもよいし、例えばカメラを備えた無人航空機のような、撮影機能を備えた他の装置から通信部110を介して画像データを受信してもよい。また、画像は撮影されたものに限らず、生成、加工されたデータであってもよい。
【0046】
次に、生育状況予測装置100の検出モジュール122は、取得した画像データを解析することで、生育状況を検出し、対象物の生育データを取得する(ステップS130)。
【0047】
図5に、生育状況を予測する対象物として、ほうれん草を使用する場合の、画像データ及び画像解析から得られた生育データの一例を示す。
図5(a)に示す画像データの例は、簡略化のため、対象物を拡大して示しているが、実際には、圃場全体を撮影したものが画像データとして取得される。
【0048】
圃場全体を撮影した画像を解析することにより、
図5(b)に示されるような、生育データを取得することができる。この例では、撮影された圃場におけるほうれん草の平均値として、対象物の地面からの高さ、葉の面積、葉の数、及び、葉の色が取得される。そして、例えば、圃場における一部の区画において、葉の色が一部黄色く変色していることが検出される。
【0049】
次に、生育状況予測装置100の環境情報取得モジュール123は、圃場における現在の環境情報を取得する(ステップS140)。取得する環境情報は、例えば、作付けを開始してから現在までの積算温度、積算雨量、積算日照量などである。また、環境情報として、農林水産省から配信されている病害虫に関する予察情報や、各都道府県防除所から配信されている病害虫に関する予察注意報情報及び警報情報を使用し、その圃場における病害虫が飛来する過去の暦年予測を含めて予測してもよい。その場合、圃場の緯度及び経度を位置を特定するための情報として使用してよい。
【0050】
次に、生育状況予測装置100の過去環境情報取得モジュール124は、圃場における過去の環境情報を取得する(ステップS150)。圃場における過去の環境情報は、現在の環境情報と同様の情報に関して、前年や前々年など、前回以前に生育させた際の情報をいう。なお、過去の環境情報は、生育状況予測装置100の記憶部130に予め記憶されているものを使用してもよく、また、通信部110を介して他のデータベースから取得してもよい。
【0051】
図6に現在の環境情報及び過去の環境情報の一例を示す。
図6(a)に現在の環境情報として、現在生育を実施している対象物(この例ではほうれん草)に関して、作付けの日から現在(この例では8日目)までの積算温度、積算雨量及び積算日照量が示されている。
図6(b)に過去の環境情報として、前年及び前々年における、現在と同一の積算日数の日(この例では8日目)における環境情報が示されている。
【0052】
また、本実施形態における生育状況予測システムにおいては、過去の10日目の状態を正解データとして、環境情報を入力して機械学習を行う。そのため、
図6(b)に示される例では、前年及び前々年における作付け後10日目の状態が過去環境情報として取得される。
【0053】
すなわち、前年における作付けから8日目の環境情報として、積算温度が85℃、積算雨量が89mm、積算日照量が0.4Mj/m2というデータが得られ、10日目の状態を表す正解データとして、「雨が多く多湿でベト病が発生」というデータが得られる。
【0054】
また、前々年における作付けから8日目の環境情報として、積算温度が80℃、積算雨量が56mm、積算日照量が2Mj/m2というデータが得られ、10日目の状態を表す正解データとして、「良好」というデータが得られる。
【0055】
そして、過去環境情報を取得したのち、生育状況予測装置100の予測モジュール125は、ステップS130で検出した生育状況、ステップS140で取得した現在の環境情報、及び、ステップS150で取得した過去環境情報に基づいて、生育状況を予測する(ステップS160)。
【0056】
本実施例においては、
図6に示すように、過去2年と比較すると、積算日照量がやや少なく、かつ、積算雨量が多い。そのため、予測結果として、
図7に示すように、2016年と同様に、ベト病が発生する可能性が高い、という結果を得ることができる。
【0057】
また、画像解析の結果から、ベト病が発生する可能性が高い箇所を特定することができる。つまり、取得された画像内にベト病になりそうな箇所を検出し、印をつけて出力する。本実施例では、ベト病が発生する可能性が高い箇所を検出しているが、同様に、他の病気が発生する可能性の高い箇所や、害虫による被害が大きくなりそうな箇所を検出してもよい。このように、単に病気の発生や害虫の発生を予測できるだけでなく、発生する区画や箇所まで特定することができるため、精度の高い生育状況予測システムを実現することが可能となる。
【0058】
予測結果が得られると、生育状況予測装置100は、ユーザ端末500に対し予測結果を送信し(ステップS170)、予測結果を受信したユーザ端末500は、受信した予測結果をユーザ端末500が有するディスプレイ等に表示する(ステップS520)。
【0059】
予測結果をユーザ端末500に送信したのち、生育状況予測装置100の対処方法取得モジュール126は、ステップS160で取得された予測結果に基づいて対処方法を取得する(ステップS180)。
【0060】
本実施例においては、
図7に示すように、予測結果として、「積算日照量がやや少なく、積算雨量が多い。」「2016年と同様に、ベト病が発生する可能性が高い。」との予測がなされており、また、画像解析からベト病になる可能性の高い箇所が特定され、印Aが付されている。ステップS180では、このような予測結果に基づき、「印をつけた箇所に殺菌剤をまく」「早急に施肥を行う」という対処方法が取得される。
【0061】
対処方法が得られると、生育状況予測装置100は、ユーザ端末500に対し対処方法を送信し(ステップS190)、対処方法を受信したユーザ端末500は、受信した対処方法をユーザ端末500が有するディスプレイ等に表示する(ステップS530)。
【0062】
なお、本実施例においては、予測結果と併せて対処方法を取得するよう制御されているが、必ずしも対処方法を取得する機能を設ける必要はなく、生育状況を予測する機能のみを有するシステムであってもよい。あるいは、ステップS510における生育状況予測リクエストに、対処方法も取得するかどうかに関するユーザの選択情報を含めてもよい。その場合、ユーザが対処方法の取得を希望する場合のみ、対処方法をユーザに送信することになる。
【0063】
以上が、生育状況予測装置100とユーザ端末500が実行する生育状況予測処理の処理手順である。
【0064】
上述した手段、機能は、コンピュータ(CPU,情報処理装置,各種端末を含む)が、所定のプログラムを読み込んで、実行することによって実現される。プログラムは、例えば、フレキシブルディスク、CD(CD-ROMなど)、DVD(DVD-ROM、DVD-RAMなど)等のコンピュータ読取可能な記録媒体に記録された形態で提供される。この場合、コンピュータはその記録媒体からプログラムを読み取って内部記憶装置または外部記憶装置に転送し記憶して実行する。また、そのプログラムを、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク等の記憶装置(記録媒体)に予め記録しておき、その記憶装置から通信回線を介してコンピュータに提供するようにしてもよい。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限
るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好
適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたもの
に限定されるものではない。
【0066】
生育状況を予測する対象物として、農場におけるほうれん草の例について説明したが、本発明はこの実施形態に限るものでなく、農業のほかに、林業や水産業について、特に海苔の養殖についても適用可能である。
【0067】
生育状況予測装置100とユーザ端末500を別々の装置として構成しているが、生育状況予測装置100とユーザ端末500を一体のものとして構成してもよい。
【0068】
予測結果及び対処方法として、病害虫判定、生育調査、施肥タイミング、肥料の種類、農薬散布タイミング、農薬の種類を使用してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 生育状況予測システム
100 生育状況予測装置
500 ユーザ端末
121 画像取得モジュール
122 検出モジュール
123 環境情報取得モジュール
124 過去環境取得モジュール
125 予測モジュール
126 対処方法取得モジュール