(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】ボトル
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
B65D1/02 250
B65D1/02 221
(21)【出願番号】P 2019082746
(22)【出願日】2019-04-24
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】栗原 誠明
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3056271(JP,U)
【文献】特開2004-231275(JP,A)
【文献】特開2009-143582(JP,A)
【文献】米国特許第05178289(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0349349(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部、肩部、胴部、および底部が、ボトル軸方向に沿って上方から下方に向けてこの順に連設され、
前記胴部の上部に、径方向の内側に向けて窪む上パネル部が形成され、
前記胴部の下部に、径方向の内側に向けて窪む下パネル部が形成され、
前記下パネル部における周方向の両端部のボトル軸方向の中央部に、径方向の外側に向けて突出した隆起部が設けられ、
前記隆起部の表面のうち、前記下パネル部の底面から径方向の外側に向けて立ち上がる側面は、この側面、および前記下パネル部の底面を含む断面視で、前記下パネル部の底面に対して交差する方向に延びる直線状を呈する
とともに、前記下パネル部の底面と鈍角をなしている、ボトル。
【請求項2】
前記隆起部は、径方向の外側から見て、上底および下底がボトル軸方向に延びる横向きの台形状を呈し、前記上底は、前記下底より前記下パネル部における周方向の内側に位置している、請求項1に記載のボトル。
【請求項3】
前記胴部において、前記下パネル部をボトル軸方向に挟む両側に位置する各部分のうちの少なくとも一方に、周方向に延び、かつ前記下パネル部より深い横溝が形成されている、請求項1または2に記載のボトル。
【請求項4】
前記隆起部の表面のうち、径方向の外側を向く外面は、前記胴部の外周面に段差なく連なっている、請求項1から3のいずれか1項に記載のボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、口部、肩部、胴部、および底部が、ボトル軸方向に沿って上方から下方に向けてこの順に連設され、胴部の上部に、径方向の内側に向けて窪む上パネル部が形成され、胴部の下部に、径方向の内側に向けて窪む下パネル部が形成されたボトルが知られている。
この種のボトルでは、一般に、加熱された内容物を充填する、いわゆる熱充填時に、上パネル部、および下パネル部が径方向の外側に向けて膨出変形し、その後、口部にキャップを装着した状態で内容物が冷却するのに伴い、ボトル内が減圧することで、上パネル部、および下パネル部が径方向の内側に向けて変形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のボトルでは、軽量化のために薄肉にすると、内容物の自重等の影響もあって、熱充填後にボトル内が減圧しても、特に下パネル部が径方向の内側に向けて変形せず、下パネル部の径方向の外側に向けた膨出変形が維持されるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、熱充填後にボトル内が減圧したときに、下パネル部を径方向の内側に向けて変形させることができるボトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のボトルは、口部、肩部、胴部、および底部が、ボトル軸方向に沿って上方から下方に向けてこの順に連設され、前記胴部の上部に、径方向の内側に向けて窪む上パネル部が形成され、前記胴部の下部に、径方向の内側に向けて窪む下パネル部が形成され、前記下パネル部における周方向の両端部のボトル軸方向の中央部に、径方向の外側に向けて突出した隆起部が設けられ、前記隆起部の表面のうち、前記下パネル部の底面から径方向の外側に向けて立ち上がる側面は、この側面、および前記下パネル部の底面を含む断面視で、前記下パネル部の底面に対して交差する方向に延びる直線状を呈するとともに、前記下パネル部の底面と鈍角をなしている。
【0007】
この発明によれば、下パネル部における周方向の両端部に、径方向の外側に向けて突出した隆起部が設けられているので、隆起部の側面が、前述のように断面視で直線状を呈することと相俟って、軽量化のために胴部を薄肉にしても、下パネル部の剛性を確保することができる。これにより、熱充填時に、下パネル部が径方向の外側に向けて大きく膨出変形するのを抑制することが可能になるとともに、熱充填後にボトル内が減圧したときに、下パネル部を径方向の内側に向けて変形させやすくすることができる。
隆起部が、下パネル部における周方向の両端部のなかでも、ボトル軸方向の中央部という限られた部分に位置しているので、下パネル部に隆起部を形成したことによる減圧吸収容量の低下を抑えることができる。
【0008】
ここで、前記隆起部は、径方向の外側から見て、上底および下底がボトル軸方向に延びる横向きの台形状を呈し、前記上底は、前記下底より前記下パネル部における周方向の内側に位置してもよい。
【0009】
この場合、隆起部が、径方向の外側から見て、上底が下底より下パネル部における周方向の内側に位置している台形状を呈するので、例えば、四角形状、若しくは三角形状を呈する構成等と比べて、下パネル部の径方向の変形が、隆起部により阻害されるのを抑制することができるとともに、下パネル部が径方向に変形したときに応力が集中する部分を生じさせにくくすることができる。
【0010】
また、前記胴部において、前記下パネル部をボトル軸方向に挟む両側に位置する各部分のうちの少なくとも一方に、周方向に延び、かつ前記下パネル部より深さが深い横溝が形成されてもよい。
【0011】
この場合、胴部において、下パネル部をボトル軸方向に挟む両側に位置する各部分のうちの少なくとも一方に、周方向に延び、かつ下パネル部より深さが深い横溝が形成されているので、下パネル部の剛性を確実に確保することができる。
【0012】
また、前記隆起部の表面のうち、径方向の外側を向く外面は、前記胴部の外周面に段差なく連なってもよい。
【0013】
この場合、隆起部の表面のうち、径方向の外側を向く外面が、胴部の外周面に段差なく連なっているので、下パネル部の径方向の変形に追従させて、隆起部を円滑に変形させることが可能になり、下パネル部の径方向の変形が、隆起部により阻害されるのを抑制することができるとともに、下パネル部が径方向に変形したときに応力が集中する部分を生じさせにくくすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱充填後にボトル内が減圧したときに、下パネル部を径方向の内側に向けて変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る一実施形態として示したボトルの側面図である。
【
図2】
図1に示すボトルのII-II線矢視断面図である。
【
図3】
図1に示すボトルのIII-III線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るボトル1について説明する。
ボトル1は、
図1に示されるように、口部11、肩部12、胴部13、および底部14が、ボトル軸O方向に沿って上方から下方に向けてこの順に連設されて構成されている。
以下、ボトル軸O方向から見て、ボトル軸Oに交差する方向を径方向といい、ボトル軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0017】
ボトル1は、単層構造とされ、射出成形により形成したプリフォームを二軸延伸ブロー成形して形成されている。ボトル1の内容量は、1500ml以下、好ましくは300ml以上1000ml以下となっている。図示の例では、ボトル1の内容量は、例えば約1000mlとされ、重量は約36gとなっている。
なお、ボトル1は、単層構造に限らず積層構造であってもよく、積層構造は、例えば押出成形などによって二重(内外)に組み合わされた積層パリソンをブロー成形することで形成してもよい。
【0018】
図1に示されるように、ボトル1は、胴部13および底部14が、パネル面部15とコーナ面部16とが周方向に交互に連設されてなる角形ボトルとなっている。パネル面部15は、コーナ面部16よりも周方向に沿う幅が広くなっている。パネル面部15とコーナ面部16とは、区画稜線部17を介して周方向に交互に連設されている。パネル面部15およびコーナ面部16はそれぞれ4つ備えられている。
【0019】
胴部13の上部に、径方向の内側に向けて窪む上パネル部18が形成され、胴部13の下部に、径方向の内側に向けて窪む下パネル部19が形成されている。
胴部13のボトル軸O方向の中央部に、周方向の全長にわたって連続して延びる周溝13aが形成されている。周溝13aは、
図2に示されるような縦断面視で、径方向の内側に向けて窪む曲面状を呈する。
胴部13のうち、周溝13aより上方に位置する部分に、上パネル部18が形成され、周溝13aより下方に位置する部分に、下パネル部19が形成されている。上パネル部18、および下パネル部19は、パネル面部15に配置されている。
【0020】
上パネル部18は、径方向の外側から見て、ボトル軸O方向に長い長方形状を呈する。胴部13において、上パネル部18と周溝13aとの間に位置する部分に、周方向に延びる上横溝21が形成されている。上横溝21の深さは、上パネル部18の深さより深く、周溝13aの深さより浅くなっている。上横溝21の周方向の両端部は、上パネル部18の周方向の両端部より周方向の外側に位置している。上横溝21の周方向の両端部は、パネル面部15の周方向の端部に位置しており、区画稜線部17に対して周方向に近接している。
【0021】
下パネル部19は、径方向の外側から見て、ボトル軸O方向に長い長方形状を呈する。下パネル部19の周方向の大きさは、上パネル部18の周方向の大きさと同等になっている。下パネル部19、および上パネル部18それぞれの周方向の中央部は、周方向の同等の位置に位置している。
下パネル部19のボトル軸O方向の大きさは、周溝13aと下パネル部19との間のボトル軸O方向の間隔、および胴部13のうち、下パネル部19より下方に位置する部分のボトル軸O方向の大きさより大きくなっている。下パネル部19の周方向の大きさは、下パネル部19と区画稜線部17との間の周方向の間隔より大きくなっている。
【0022】
胴部13において、周溝13aと下パネル部19との間に位置する部分に、周方向に延びる中横溝(横溝)22が形成されている。中横溝22の深さは、下パネル部19の深さより深く、上横溝21の深さと同等になっている。中横溝22の周方向の両端部は、下パネル部19の周方向の両端部より周方向の外側に位置している。中横溝22の周方向の両端部は、パネル面部15の周方向の端部に位置しており、区画稜線部17に対して周方向に近接している。中横溝22、および下パネル部19それぞれの周方向の中央部は、周方向の同等の位置に位置している。
【0023】
胴部13において、下パネル部19より下方に位置する部分に、周方向に延びる下横溝23が形成されている。下横溝23の深さは、下パネル部19の深さと同等になっている。下横溝23の周方向の大きさは、下パネル部19の周方向の大きさより小さくなっている。下横溝23、および下パネル部19それぞれの周方向の中央部は、周方向の同等の位置に位置している。下横溝23と下パネル部19との間のボトル軸O方向の間隔は、中横溝22と下パネル部19との間のボトル軸O方向の間隔と同等になっている。
【0024】
下パネル部19におけるボトル軸O方向の両端部に、周方向に延びるパネル溝19aが形成されている。パネル溝19aは、下パネル部19における周方向の全長にわたって形成されている。パネル溝19aの深さは、中横溝22の深さより浅くなっている。なお、下パネル部19にパネル溝19aを形成しなくてもよい。
下パネル部19のうち、パネル溝19aにボトル軸O方向の内側で連なる部分は、ボトル軸O方向の内側に向かってパネル溝19aから離れるに従い、径方向の内側に向けて延びている。下パネル部19の周方向の両端部は、周方向の外側から内側に向かうに従い、径方向の内側に向けて延びている。
【0025】
そして、本実施形態では、下パネル部19における周方向の両端部のボトル軸O方向の中央部に、径方向の外側に向けて突出した隆起部25が設けられている。
図3に示されるように、隆起部25の表面のうち、下パネル部19の底面19bから径方向の外側に向けて立ち上がる側面25aは、この側面25a、および下パネル部19の底面19bを含む断面視で、下パネル部19の底面19bに対して交差する方向に延びる直線状を呈する。隆起部25の側面25aは、下パネル部19の底面19bと鈍角をなしている。
【0026】
下パネル部19に設けられた各隆起部25の大きさは互いに同じになっている。各隆起部25は、径方向の外側から見て、ボトル軸Oに対して対称形状を呈する。各隆起部25のボトル軸O方向の大きさは、下パネル部19のボトル軸O方向の大きさの3分の1未満となっている。各隆起部25の周方向の大きさは、下パネル部19の周方向の大きさの3分の1未満となっている。
【0027】
隆起部25は、径方向の外側から見て、上底25cおよび下底25dがボトル軸O方向に延びる横向きの台形状を呈する。
上底25cは、下底25dより下パネル部19における周方向の中央部側である内側に位置している。下底25dは、胴部13の外周面における下パネル部19の開口周縁Lの延長線上に位置している。
なお、隆起部25は、径方向の外側から見て、例えば、円弧および弦を有した円形の一部、三角形状、若しくは四角形状を呈する構成にする等適宜変更してもよい。
【0028】
隆起部25は、胴部13の外周面における下パネル部19の開口周縁Lに連なっている。図示の例では、隆起部25の表面のうち、径方向の外側を向く外面25bは、胴部13の外周面に段差なく連なっている。つまり、隆起部25の外面25bは、胴部13の外周面と同一平面上に位置している。
なお、隆起部25の外面25bは、胴部13の外周面に対して径方向の外側に位置してもよいし、径方向の内側に位置してもよい。
【0029】
以上説明したように、本実施形態によるボトル1によれば、下パネル部19における周方向の両端部に、径方向の外側に向けて突出した隆起部25が設けられているので、隆起部25の側面25aが、前述のように断面視で直線状を呈することと相俟って、軽量化のために胴部13を薄肉にしても、下パネル部19の剛性を確保することができる。これにより、熱充填時に、下パネル部19が径方向の外側に向けて大きく膨出変形するのを抑制することが可能になるとともに、熱充填後にボトル1内が減圧したときに、下パネル部19を径方向の内側に向けて変形させやすくすることができる。
隆起部25が、下パネル部19における周方向の両端部のなかでも、ボトル軸O方向の中央部という限られた部分に位置しているので、下パネル部19に隆起部25を形成したことによる減圧吸収容量の低下を抑えることができる。
【0030】
隆起部25が、径方向の外側から見て、上底25cが下底25dより下パネル部19における周方向の内側に位置している台形状を呈するので、例えば、四角形状、若しくは三角形状を呈する構成等と比べて、下パネル部19の径方向の変形が、隆起部25により阻害されるのを抑制することができるとともに、下パネル部19が径方向に変形したときに応力が集中する部分を生じさせにくくすることができる。
【0031】
胴部13において、下パネル部19をボトル軸O方向に挟む両側に位置する各部分のうちの少なくとも一方に、周方向に延び、かつ下パネル部19より深さが深い中横溝22が形成されているので、下パネル部19の剛性を確実に確保することができる。
【0032】
隆起部25の外面25bが、胴部13の外周面に段差なく連なっているので、下パネル部19の径方向の変形に追従させて、隆起部25を円滑に変形させることが可能になり、下パネル部19の径方向の変形が、隆起部25により阻害されるのを抑制することができるとともに、下パネル部19が径方向に変形したときに応力が集中する部分を生じさせにくくすることができる。
【0033】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0034】
例えば前記実施形態では、角形ボトルを示したが、横断面が円形状の丸形ボトルを採用してもよい。
胴部13に、周溝13a、上横溝21、中横溝22、および下横溝23を形成したが、胴部13に、周溝13a、上横溝21、中横溝22、および下横溝23を形成しなくてもよい。
【0035】
下横溝23の深さは、下パネル部19の深さより深くしてもよく、中横溝22の深さは、下パネル部19の深さ以下としてもよい。すなわち、胴部13において、下パネル部19をボトル軸O方向に挟む両側に位置する各部分のうちの少なくとも一方に、周方向に延び、かつ下パネル部19より深い横溝を形成してもよい。
【0036】
また、ボトル1を形成する合成樹脂材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、または、ポリエチレン、およびポリプロピレンなどのポリオレフィン、または、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)などを採用してもよい。このうち、ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などが挙げられる。
【0037】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 ボトル
11 口部
12 肩部
13 胴部
14 底部
18 上パネル部
19 下パネル部
22 中横溝(横溝)
25 隆起部
25a 側面
25b 外面
25c 上底
25d 下底
O ボトル軸