IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 電気化学工業株式会社の特許一覧 ▶ 日本車輌製造株式会社の特許一覧

特許7300883鋼材被覆用積層体、前記積層体を備えた鋼構造物、及び鋼構造物の保護又は補修方法
<>
  • 特許-鋼材被覆用積層体、前記積層体を備えた鋼構造物、及び鋼構造物の保護又は補修方法 図1
  • 特許-鋼材被覆用積層体、前記積層体を備えた鋼構造物、及び鋼構造物の保護又は補修方法 図2
  • 特許-鋼材被覆用積層体、前記積層体を備えた鋼構造物、及び鋼構造物の保護又は補修方法 図3
  • 特許-鋼材被覆用積層体、前記積層体を備えた鋼構造物、及び鋼構造物の保護又は補修方法 図4
  • 特許-鋼材被覆用積層体、前記積層体を備えた鋼構造物、及び鋼構造物の保護又は補修方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】鋼材被覆用積層体、前記積層体を備えた鋼構造物、及び鋼構造物の保護又は補修方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/082 20060101AFI20230623BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230623BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20230623BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230623BHJP
【FI】
B32B15/082 B
B32B27/30 D
C09J7/24
C09J7/38
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019083322
(22)【出願日】2019-04-24
(65)【公開番号】P2020179569
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大石 真之
(72)【発明者】
【氏名】庄司 慎
(72)【発明者】
【氏名】山下 智弘
(72)【発明者】
【氏名】神頭 峰磯
(72)【発明者】
【氏名】土井 一慶
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/010013(WO,A1)
【文献】特開2005-200958(JP,A)
【文献】特開2016-194217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
C09J 7/00 - 7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体よりなる群から選択される一方又は両方を含有するフッ素系樹脂層及び粘着剤層をこの順に備えた鋼材被覆用積層体が、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物を構成する鋼材の部材角部(コバ面)、溶接部、稜部、及び角部(多角形の頂点部分)から選択される少なくとも一つの部分に、前記粘着剤層を貼り付け側として、貼り付けられている鋼構造物
【請求項2】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体よりなる群から選択される一方又は両方を含有するフッ素系樹脂層及び粘着剤層をこの順に備えた鋼材被覆用積層体が、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物を構成する鋼材の表面に、前記粘着剤層を貼り付け側として、貼り付けられている鋼構造物であって、
前記フッ素系樹脂層は、少なくとも下記A層及びB層をこの順に備え、B層が粘着剤層に面している積層体である鋼構造物。
A層;ポリフッ化ビニリデン系樹脂50質量部以上100質量部以下とポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂0質量部以上50質量部以下(両者の合計を100質量部とする)を含有する樹脂組成物からなる層。
B層;ポリフッ化ビニリデン系樹脂0質量部以上50質量部未満とポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂50質量部超100質量部以下(両者の合計を100質量部とする)を含有する樹脂組成物からなる層。
【請求項3】
前記鋼材被覆用積層体が、塗料を塗布した鋼材の表面に貼り付けて使用される請求項1又は2に記載の鋼構造物
【請求項4】
前記塗料がフッ素樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、及びエポキシ樹脂塗料よりなる群から選択される一種又は二種以上を含有する請求項に記載の鋼構造物
【請求項5】
前記塗料を塗布した鋼材の表面の、JIS R3257:1999で規定される静滴法に従って測定される水の接触角が90°未満である、請求項又はに記載の鋼構造物
【請求項6】
JIS K7361-1-1997で規定された測定方法に準拠して測定した前記鋼材被覆用積層体の全光線透過率が90%以上である、請求項1~の何れか一項に記載の鋼構造物
【請求項7】
JIS K7136-2000で規定された測定方法に準拠して測定した前記鋼材被覆用積層体のHAZEが60%以下である、請求項1~の何れか一項に記載の鋼構造物
【請求項8】
前記粘着剤層が(メタ)アクリル系粘着剤を含有する、請求項1~の何れか一項に記載の鋼構造物
【請求項9】
前記鋼材被覆用積層体が鋼材防食用である、請求項1~の何れか一項に記載の鋼構造物
【請求項10】
前記フッ素系樹脂層が、少なくとも下記A層及びB層をこの順に備え、B層が粘着剤層に面している積層体である請求項に記載の鋼構造物
A層;ポリフッ化ビニリデン系樹脂50質量部以上100質量部以下とポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂0質量部以上50質量部以下(両者の合計を100質量部とする)を含有する樹脂組成物からなる層。
B層;ポリフッ化ビニリデン系樹脂0質量部以上50質量部未満とポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂50質量部超100質量部以下(両者の合計を100質量部とする)を含有する樹脂組成物からなる層。
【請求項11】
A層を構成する樹脂組成物中、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の合計含有量が80質量%以上である請求項2又は10に記載の鋼構造物
【請求項12】
B層を構成する樹脂組成物中、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の合計含有量が80質量%以上である請求項2、10、又は11に記載の鋼構造物
【請求項13】
前記B層を構成する樹脂組成物が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の合計100質量部に対して、紫外線吸収剤を0.05~15質量部含有する、請求項2、10~12の何れか一項に記載の鋼構造物
【請求項14】
前記粘着剤層が、二液混合型粘着剤である、請求項1~13の何れか一項に記載の鋼構造物
【請求項15】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体よりなる群から選択される一方又は両方を含有するフッ素系樹脂層及び粘着剤層をこの順に備えた鋼材被覆用積層体を、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物を構成する鋼材の部材角部(コバ面)、溶接部、稜部、及び角部(多角形の頂点部分)から選択される少なくとも一つの部分に、前記粘着剤層を貼り付け側として、貼り付ける工程を備える鋼構造物の保護又は補修方法。
【請求項16】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体よりなる群から選択される一方又は両方を含有するフッ素系樹脂層及び粘着剤層をこの順に備えた鋼材被覆用積層体を、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物を構成する鋼材の表面に、前記粘着剤層を貼り付け側として、貼り付ける工程を備える鋼構造物の保護又は補修方法であって、
前記フッ素系樹脂層は、少なくとも下記A層及びB層をこの順に備え、B層が粘着剤層に面している積層体である、鋼構造物の保護又は補修方法。
A層;ポリフッ化ビニリデン系樹脂50質量部以上100質量部以下とポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂0質量部以上50質量部以下(両者の合計を100質量部とする)を含有する樹脂組成物からなる層。
B層;ポリフッ化ビニリデン系樹脂0質量部以上50質量部未満とポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂50質量部超100質量部以下(両者の合計を100質量部とする)を含有する樹脂組成物からなる層。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の鋼構造物の保護又は補修方法であって、下記工程1を備える、鋼構造物の保護又は補修方法。
工程1;前記鋼構造物を構成する鋼材の部材角部(コバ面)へ、前記鋼材被覆用積層体を貼り付ける工程。
【請求項18】
工程1は、前記鋼材被覆用積層体を折り曲げることにより、部材角部(コバ面)に隣接する一対の対向する平面部のそれぞれの少なくとも一部に跨って前記鋼材被覆用積層体を貼り付けることを含む、請求項17に記載の鋼構造物の保護又は補修方法。
【請求項19】
請求項15~18の何れか一項に記載の鋼構造物の保護又は補修方法であって、下記工程2を備える、鋼構造物の保護又は補修方法。
工程2;前記鋼構造物を構成する鋼材の溶接部へ、前記鋼材被覆用積層体を貼り付ける工程。
【請求項20】
工程2は、前記鋼材被覆用積層体を折り曲げることにより、溶接部を介して接合された二つの部材の平面部のそれぞれの少なくとも一部に跨って前記鋼材被覆用積層体を貼り付けることを含む、請求項19に記載の鋼構造物の保護又は補修方法。
【請求項21】
請求項17~20の何れか一項に記載の鋼構造物の保護又は補修方法であって、下記工程3を備える、鋼構造物の保護又は補修方法。
工程3;工程1又は/及び工程2の後に、前記鋼構造物を構成する鋼材の平面部へ、前記鋼材被覆用積層体を貼り付ける工程であって、工程1又は/及び工程2で貼り付けた前記鋼材被覆用積層体の端部へ重ね合わせて貼り付ける工程。
【請求項22】
前記貼り付ける工程の前に、鋼材の表面をケレン処理する工程を備える、請求項15~21の何れか一項に記載の鋼構造物の保護又は補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物の保護又は補修に適用可能な鋼材被覆用積層体に関する。また、本発明は前記積層体を備えた鋼構造物に関する。また、本発明は前記積層体を用いた鋼構造物の保護又は補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁、水門、建築物、海洋構造物及びプラント等の主要な部材が鋼材で構成される鋼構造物は、屋外に暴露した状態で設置されることが多く、水分や塩分の付着等によって鋼材が発錆及び腐食しやすい。鋼材が発錆又は腐食した場合には、肉厚が部分的に薄くなり、強度低下の懸念がある。そこで、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物は一般に、フッ素樹脂等を用いた防食塗装により発錆及び腐食から保護される(特許文献2:特開2018-135645号公報、特許文献8:特開2008-087242号公報、特許文献10:特開2012-143668号公報、特許文献12:特開2018-140351号公報)
【0003】
また、金属製又は樹脂製のシート等を、各種構造物の表面に貼り付けることで金属基体を保護する各種技術が存在する(特許文献1:国際公開第2016/010013号、特許文献3:特開2013-071267号公報、特許文献4:特開2005-200958号公報、特許文献5:特開平11-262977号公報、特許文献6:特開2000-280402号公報、特許文献7:特開2004-058583号公報、特許文献9:特開2009-138214号公報、特許文献11:国際公開第2016/152631号、特許文献13:特表2018-517000号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/010013号
【文献】特開2018-135645号公報
【文献】特開2013-071267号公報
【文献】特開2005-200958号公報
【文献】特開平11-262977号公報
【文献】特開2000-280402号公報
【文献】特開2004-058583号公報
【文献】特開2008-087242号公報
【文献】特開2009-138214号公報
【文献】特開2012-143668号公報
【文献】国際公開第2016/152631号
【文献】特開2018-140351号公報
【文献】特表2018-517000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物を塗装により保護したとしても、経年劣化によって塗装が退色することは避けられない。特に、部材角部(コバ面)においては塗装膜厚の確保が困難となっており、想定している耐久性(例:30年以上)が得られないという問題がある。また、溶接部においても、部材角部(コバ面)と同様の問題がある。塗装が退色した場合、すなわち塗装が経年劣化した場合、外観劣化及び鋼材露出による発錆及び腐食のおそれがある。
【0006】
各種構造部を保護するためのシートも提案されているが、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物、とりわけ塗装された鋼構造物に対する貼り付け施工を容易に実施でき、鋼材表面の防食性及び耐候性(耐退色性)に優れたシートは未だ明らかにされていない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物へ容易に貼り付け施工可能であり、鋼材表面の防食性及び耐候性にも優れた積層体を提供することを課題の一つとする。また、本発明はこのような積層体を備えた鋼構造物を提供することを別の課題の一つとする。また、本発明は鋼構造物の保護又は補修方法を提供することを更に別の課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を達成するべく種々の研究を行った結果、少なくともフッ素系樹脂層と粘着剤層をこの順に備えた積層体を、粘着剤層を貼り付け側として、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物に使用される鋼材の表面に貼り付け施工することにより、上記の課題が達成し得ることを見出し、以下に例示される本発明に至った。
【0009】
[1]
ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体よりなる群から選択される一方又は両方を含有するフッ素系樹脂層及び粘着剤層をこの順に備え、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物を構成する鋼材の表面に、粘着剤層を貼り付け側として、貼り付けて使用される鋼材被覆用積層体。
[2]
塗料を塗布した鋼材の表面に貼り付けて使用される[1]に記載の鋼材被覆用積層体。
[3]
前記塗料がフッ素樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、及びエポキシ樹脂塗料よりなる群から選択される一種又は二種以上を含有する[2]に記載の鋼材被覆用積層体。
[4]
前記塗料を塗布した鋼材の表面の、JIS R3257:1999で規定される静滴法に従って測定される水の接触角が90°未満である、[2]又は[3]に記載の鋼材被覆用積層体。
[5]
JIS K7361-1-1997で規定された測定方法に準拠して測定した全光線透過率が90%以上である、[1]~[4]の何れか一項に記載の鋼材被覆用積層体。
[6]
JIS K7136-2000で規定された測定方法に準拠して測定したHAZEが60%以下である、[1]~[5]の何れか一項に記載の鋼材被覆用積層体。
[7]
前記粘着剤層が(メタ)アクリル系粘着剤を含有する、[1]~[6]の何れか一項に記載の鋼材被覆用積層体。
[8]
前記積層体が鋼材防食用である、[1]~[7]の何れか一項に記載の鋼材被覆用積層体。
[9]
前記フッ素系樹脂層が、少なくとも下記A層及びB層をこの順に備え、B層が粘着剤層に面している積層体である[1]~[8]の何れか一項に記載の鋼材被覆用積層体。
A層;ポリフッ化ビニリデン系樹脂50質量部以上100質量部以下とポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂0質量部以上50質量部以下(両者の合計を100質量部とする)を含有する樹脂組成物からなる層。
B層;ポリフッ化ビニリデン系樹脂0質量部以上50質量部未満とポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂50質量部超100質量部以下(両者の合計を100質量部とする)を含有する樹脂組成物からなる層。
[10]
A層を構成する樹脂組成物中、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の合計含有量が80質量%以上である[9]に記載の鋼材被覆用積層体。
[11]
B層を構成する樹脂組成物中、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の合計含有量が80質量%以上である[9]又は[10]に記載の鋼材被覆用積層体。
[12]
前記B層を構成する樹脂組成物が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の合計100質量部に対して、紫外線吸収剤を0.05~15質量部含有する、[9]~[11]の何れか一項に記載の鋼材被覆用積層体。
[13]
前記粘着剤層が、二液混合型粘着剤である、[1]~[12]の何れか一項に記載の鋼材被覆用積層体。
[14]
[1]~[13]の何れか一項に記載の鋼材被覆用積層体を備えた鋼構造物であって、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物を構成する鋼材の表面に、前記粘着剤層を貼り付け側として、前記鋼材被覆用積層体が貼り付けられている鋼構造物。
[15]
[1]~[13]の何れか一項に記載の鋼材被覆用積層体を、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物を構成する鋼材の表面に、前記粘着剤層を貼り付け側として、貼り付ける工程を備える鋼構造物の保護又は補修方法。
[16]
[15]に記載の鋼構造物の保護又は補修方法であって、下記工程1を備える、鋼構造物の保護又は補修方法。
工程1;前記鋼構造物を構成する鋼材の部材角部(コバ面)へ、[1]~[13]の何れか一項に記載の鋼材被覆用積層体を貼り付ける工程。
[17]
工程1は、前記鋼材被覆用積層体を折り曲げることにより、部材角部(コバ面)に隣接する一対の対向する平面部のそれぞれの少なくとも一部に跨って鋼材被覆用積層体を貼り付けることを含む、[16]に記載の鋼構造物の保護又は補修方法。
[18]
[15]~[17]の何れか一項に記載の鋼構造物の保護又は補修方法であって、下記工程2を備える、鋼構造物の保護又は補修方法。
工程2;前記鋼構造物を構成する鋼材の溶接部へ、[1]~[13]の何れか一項に記載の鋼材被覆用積層体を貼り付ける工程。
[19]
工程2は、前記鋼材被覆用積層体を折り曲げることにより、溶接部を介して接合された二つの部材の平面部のそれぞれの少なくとも一部に跨って鋼材被覆用積層体を貼り付けることを含む、[18]に記載の鋼構造物の保護又は補修方法。
[20]
[16]~[19]の何れか一項に記載の鋼構造物の保護又は補修方法であって、下記工程3を備える、鋼構造物の保護又は補修方法。
工程3;工程1又は/及び工程2の後に、前記鋼構造物を構成する鋼材の平面部へ、[1]~[13]の何れか一項に記載の鋼材被覆用積層体を貼り付ける工程であって、工程1又は/及び工程2で貼り付けた鋼材被覆用積層体の端部へ重ね合わせて貼り付ける工程。
[21]
前記貼り付ける工程の前に、鋼材の表面をケレン処理する工程を備える、[15]~[20]の何れか一項に記載の鋼構造物の保護又は補修方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態に係る積層体は、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物に貼り付け施工可能であるため、部材角部(コバ面)及び溶接部といった塗装膜厚の確保が困難な箇所であっても容易に被覆施工可能である。また、当該積層体は、鋼材表面の防食性及び耐候性に優れている。このため、当該積層体が表面に貼り付け施工された鋼構造物は長期間にわたって劣化が抑制されるので、鋼構造物のメンテナンス業務を軽減することが可能となる。
【0011】
また、本発明の一実施形態に係る積層体は、全光線透過率及び/又はHAZEが良好であり、鋼材表面を容易に視認可能である。このため、積層体を剥がすことなく、鋼材表面の状態を把握することが可能であり、鋼構造物の劣化予知保全作業も容易となる。また、鋼材表面が塗装されている場合、塗装の退色度合いにより塗装及び鋼構造物の経年劣化の度合いを容易に判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る鋼材被覆用積層体の積層構造を示す模式的な断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る鋼材被覆用積層体が貼り付けられている鋼構造物の積層構造を示す模式的な断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る鋼材被覆用積層体が、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物の一部を構成する鋼材の部材角部(コバ面)へ貼り付けられたときの模式的な断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る鋼材被覆用積層体が、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物の一部を構成する鋼材の溶接部へ貼り付けられたときの模式的な断面図である。
図5】T型鋼材へ防食シートを貼り付け施工する方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態を例示的に示したものであり、これにより本発明の技術的範囲が狭く解釈されることを意図するものではない。
【0014】
<1.鋼材被覆用積層体>
図1には本発明の一実施形態に係る鋼材被覆用積層体(100)の積層構造を示す模式的な断面図が示されている。鋼材被覆用積層体(100)は、少なくともフッ素系樹脂層(110)及び粘着剤層(120)をこの順に備える。典型的には、フッ素系樹脂層(110)と粘着剤層(120)の間には他の樹脂層が介在することなく、両者は直接接合されている。鋼材被覆用積層体(100)は、粘着剤層(120)を貼り付け側として、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物を構成する鋼材の表面へ貼り付け施工することにより、当該構造物の鋼材表面の防食性及び耐候性を顕著に向上させることが可能である。
【0015】
鋼材被覆用積層体(100)は、例えば、新設の鋼構造物を構成する鋼材を保護する用途で利用可能である。本発明に係る鋼材被覆用積層体を、新設の鋼構造物を構成する鋼材の表面に貼り付けることで、防食性及び耐候性を高めることが可能となる。また、本発明に係る鋼材被覆用積層体は、既設の鋼構造物を構成する鋼材を補修する用途で利用可能である。本発明に係る鋼材被覆用積層体を、既設の鋼構造物を構成する鋼材に貼り付けることで、腐食や発錆等による鋼材の劣化が現状よりも進行するのを遅らせることができる。
【0016】
本発明に係る鋼材被覆用積層体を鋼材の表面へ貼り付け施工する前に、鋼材の表面をケレン処理してもよい。ケレン処理を行う鋼材の表面は塗装されていてもよい。ケレン処理によって鋼材の表面の錆を除去しておくことは、特に既設の鋼構造物を構成する鋼材を補修する場合に、鋼材被覆用積層体の密着性を高める上で有利である。
【0017】
鋼材被覆用積層体(100)は例えばシート状(フィルム状及びテープ状を含む)の形態で提供することができる。後述するような、部材角部(コバ面)及び溶接部などの細長い部分に貼り付け易いように、長尺テープとして提供することもできる。長尺テープはロール状に巻いた状態で提供してもよい。長尺テープの長手方向の長さには特に制限はなく、使い勝手を考慮して適宜設定すればよいが、例えば5~100mとすることができ、好ましくは10~50mとすることもでき、より好ましくは10~30mとすることもできる。長尺テープの短手方向(幅方向)の長さは、限定的ではないが、部材角部(コバ面)又は溶接部に貼り付けることを想定すると、例えば、10~150mmとすることができ、好ましくは20~120mmとすることができ、より好ましくは30~100mmとすることもできる。
【0018】
一実施形態において、鋼材被覆用積層体(100)は、JIS K7361-1-1997で規定された測定方法に準拠して測定した全光線透過率が80%以上であり、好ましくは90%以上(例えば90~99%)である。また、一実施形態において、鋼材被覆用積層体(100)は、JIS K7136-2000で規定された測定方法に準拠して測定したHAZEが60%以下であり、好ましくは50%以下であり、より好ましくは40%以下であり、更により好ましくは30%以下であり、更により好ましくは20%以下であり、更により好ましくは10%以下であり、更により好ましくは5%以下であり、例えば0.1~60%の範囲とすることができる。全光線透過率及びHAZEは透明性と関連するパラメータであるところ、高い全光線透過率及び低いHAZEを示すことは鋼材被覆用積層体の透明性が高いことを意味する。これにより、鋼材被覆用積層体を貼り付けた後も鋼構造物の劣化が目視確認可能となるため、鋼構造物の劣化予知保全作業が容易となる。
【0019】
鋼材被覆用積層体(100)は、後述するように、部材角部(コバ面)に貼り付ける際や溶接部に貼り付ける際など、重ね合わせて貼り付ける可能性が考えられる。そこで、鋼材被覆用積層体(100)における粘着剤層(120)とは反対側の表面は、鋼材被覆用積層体同士の接着強度を高めるために、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理(大気圧、及び真空)、高周波スパッタエッチング処理、フレーム処理、イトロ処理、エキシマUV処理、プライマー処理などの表面処理がされていてもよい。また、サンドペーパーやケレン、ブラスト処理等で物理的に表面を削るような目粗し処理を行ってもよい。プライマーとしては、アクリル系、エチレン酢酸ビニル系、ウレタン系及びエポキシ系等があるが、積層シート同士の接着強度を高めるという観点からはアクリル系が好ましい。
【0020】
鋼材被覆用積層体(100)における粘着剤層(120)とは反対側の表面は、典型的には、フッ素系樹脂層(110)の表面であり、フッ素系樹脂層(110)が複数層で形成されているときは、後述するA層の表面である。
【0021】
粘着剤層(120)のフッ素系樹脂層(110)が積層されていない側の表面には、使用時まで、セパレータ(130)を貼り付けておくことができる。セパレータ(130)としては、公知の一般的なセパレータを使用することができる。例えば、PETシート表面にシリコーン系剥離剤が塗布されているもの、紙とポリエチレンのラミネートシートのポリエチレン側にシリコーン系剥離剤が塗布されたもの(離型紙)等が挙げられる。セパレータ(130)は施工時に剥がし、その後、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物を構成する鋼材の表面へ、粘着剤層(12)を貼り付け側として、鋼材被覆用積層体(100)を貼り付け施工する。
【0022】
(1-1.フッ素系樹脂層)
フッ素系樹脂層(110)は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体よりなる群から選択される一方又は両方を含有することが、鋼材表面の防食性及び耐候性を有意に向上させる上で好ましい。
【0023】
エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)は、エチレン(以下、「Et」と称することがある)とクロロトリフルオロエチレン(別名「三フッ化塩化エチレン」、以下、「CTFE」と称することがある)の共重合体である。
本発明実施形態において、ECTFE樹脂組成物は、EtモノマーとCTFEモノマーとのみからなる共重合体に限定されない。本実施形態におけるECTFEには、前記Etモノマー及びCTFEモノマーの他に、例えば、(パーフルオロヘキシル)エチレン、(パーフルオロブチル)エチレン、(パーフルオロオクチル)エチレン、[4-(ヘプタフルオロイソプロピル)パーフルオロブチル]エチレン等を、第3モノマーとして使用した共重合体等も含まれる。
【0024】
EtとCTFEとの共重合における各構成単位の組成比(モル比)は、19F-NMR、FT-IR等の手法で測定することができる。ECTFE中のEtとCTFEとのモル比(Et/CTFE比)は、特に限定されないが、好ましくはEt/CTFE=30/70~70/30であり、より好ましくは40/60~60/40である。Et/CTFE比が70/30以下であると、相対的にCTFEのモノマー比率が低下し過ぎないため、フッ素樹脂の特徴である透明性、耐候性、防汚性等を損なわないようにすることができる。また、Et/CTFE比が30/70以上であると、高温使用時における酸性ガス発生量が高くなり過ぎないようにすることができる。
【0025】
本発明実施形態に用いるECTFEは、任意のEt/CTFE比のECTFEを単独で使用してもよいし、二種類以上の異なるEt/CTFE比のECTFEと混合して使用してもよい。更に、本発明実施形態のECTFE樹脂組成物の透明性を阻害しない範囲で、必要に応じECTFE以外の樹脂を添加してもよい。ECTFE以外の樹脂として、例えば、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンのターポリマー等が挙げられる。
【0026】
エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体のMFRは、ISO1133に準拠し、275℃、2.16kg荷重での測定条件にて、2~50g/10分が好ましい。MFRが高いほど溶融押出時の流動性が向上するため、成形加工性が向上する傾向があり、MFRが低いほど、積層体の衝撃強度が向上する傾向がある。強度と成形加工性を両立する観点から、MFRは4~30g/10分がより好ましく、10~30g/10分が更に好ましく、15~26g/10分が特に好ましい。なお、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の好ましい実施形態については後述する。
【0027】
フッ素系樹脂層(110)の厚さについては、20~200μmであることが好ましく、25~150μmであることがより好ましく、30~100μmであることが更により好ましく、40~75μmが特に好ましい。フッ素系樹脂層(110)が20μm以上であると防食性、施工性及び耐候性の高い向上効果が期待でき、200μm以下とすることにより、柔軟性が高まり、凹凸面があっても凹凸形状に合わせて折り曲げることで容易に貼り付けることができる。フッ素系樹脂層(110)は、例えば押出成形機を利用して所定の厚さに成形可能である。この際、透明性を高めるために、フッ素系樹脂層の引き取りに使用するピンチロールは鏡面仕上げされたものを採用することが好ましい。
【0028】
また、フッ素系樹脂層(110)の粘着剤層(120)が積層されている側の面には、粘着剤層(120)との接着強度を高めるために、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理(大気圧、及び真空)、高周波スパッタエッチング処理、フレーム処理、イトロ処理、エキシマUV処理、プライマー処理などの表面処理がされていてもよい。また、サンドペーパーやケレン、ブラスト処理等で物理的に表面を削るような目粗し処理を行ってもよい。プライマーとしては、アクリル系、エチレン酢酸ビニル系、ウレタン系及びエポキシ系等があるが、アクリル系が好ましい。
【0029】
フッ素系樹脂層(110)は、単層で形成してもよいが、複数層で形成してもよい。好ましい実施形態において、フッ素系樹脂層(110)は、少なくとも下記のA層(110a)及びB層(110b)をこの順に備え、B層(110b)が粘着剤層(120)に面している。
A層;ポリフッ化ビニリデン系樹脂50質量部以上100質量部以下とポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂0質量部以上50質量部以下(両者の合計を100質量部とする)を含有する樹脂組成物からなる層。
B層;ポリフッ化ビニリデン系樹脂0質量部以上50質量部未満とポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂50質量部超100質量部以下(両者の合計を100質量部とする)を含有する樹脂組成物からなる層。
【0030】
一実施形態において、A層は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂50質量部以上100質量部以下とポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂0質量部以上50質量部以下(両者の合計を100質量部とする)を含有する樹脂組成物からなる層である。A層におけるポリフッ化ビニリデン系樹脂とポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の混合比は、両者の合計100質量部に対して、ポリフッ化ビニリデン系樹脂:ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂=95~55質量部:5~45質量部であることが好ましく、85~60質量部:15~40質量部であることがより好ましい。ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の合計100質量部に対して、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が50質量部以上であると、耐候性及び耐汚染性等の特性を向上させることができる。また、A層中にポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が少量含有することで、B層との接着性、密着性を向上させることができる。
【0031】
A層は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の他に、本発明の目的を損なわれない範囲において、他の樹脂、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、シール性改良剤、離型剤、着色剤、顔料、発泡剤、難燃剤などを適宜含有することができる。しかしながら、一般的には、A層におけるポリフッ化ビニリデン系樹脂及びポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の合計含有量は80質量%以上であり、典型的には90質量%以上であり、より典型的には95質量%以上であり、100質量%とすることもできる。A層は単層で形成してもよいし、複数層で形成してもよい。また、A層に紫外線吸収剤を含有させてもよいが、コストやブリードアウトの観点からは、含有させないことが好ましい。
【0032】
本発明において、ポリフッ化ビニリデン系樹脂とは、フッ化ビニリデンのホモポリマーの他、フッ化ビニリデン及びフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体の共重合体をいう。フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体としては、例えばフッ化ビニル、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、六フッ化イソブチレン、三フッ化塩化エチレン、各種のフッ化アルキルビニルエーテル、更にはスチレン、エチレン、ブタジエン、及びプロピレン等の公知のビニル単量体などがあり、これらを単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、フッ化ビニル、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン及び三フッ化塩化エチレンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、六フッ化プロピレンがより好ましい。
【0033】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂を得るための重合反応としては、ラジカル重合、アニオン重合等の公知の重合反応が挙げられる。また、重合方法としては、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法が挙げられる。重合反応及び重合方法により、得られる樹脂の結晶化度、力学的性質等が変化する。
【0034】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂の融点は、150℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましい。ポリフッ化ビニリデン系樹脂の融点の上限は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)の融点に等しい170℃が好ましい。
【0035】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂の融点は、熱流束示差走査熱量測定(熱流束DSC)にて測定することができる。例えば、ブルカー・エイエックスエス社製、示差走査熱量測定装置DSC3100SAを用い、サンプル質量1.5mg、昇温速度10℃/分で室温から200℃まで加熱したときに得られるDSC曲線(first run)から求めることができる。
【0036】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂のMFRは、ISO1133に準拠し、230℃、3.8kg荷重での測定条件にて、5~50g/10分が好ましい。MFRが高いほど溶融押出時の流動性が向上するため、成形加工性が向上する傾向があり、MFRが低いほど、積層体の衝撃強度が向上する傾向がある。強度と成形加工性を両立する観点から、MFRは5~30g/10分がより好ましく、10~30g/10分が更に好ましく、15~26g/10分が特に好ましい。
【0037】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量(Mw)の下限は、40,000以上が好ましく、50,000以上がより好ましく、60,000以上が更に好ましい。ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量(Mw)の上限は、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましく、350,000以下が更に好ましい。重量平均分子量(Mw)が高いほど積層シートの衝撃強度が向上する傾向があり、重量平均分子量(Mw)が低いほど溶融押出時の流動性が向上するため、成形加工性が向上する傾向がある。強度と成形加工性とを両立する観点から、重量平均分子量(Mw)は、40,000~1,000,000が好ましく、50,000~500,000がより好ましく、60,000~350,000が更に好ましい。
【0038】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂の分散度(Mw/Mn、ここでMnは数平均分子量である。)の下限は、1.0以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましい。ポリフッ化ビニリデン系樹脂の分散度(Mw/Mn)の上限は、4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.0以下が更に好ましい。分散度(Mw/Mn)が大きいほど、積層体の厚み精度が向上する傾向があり、分散度(Mw/Mn)が小さいほど、溶融押出時の流動性が向上するため、成形加工性が向上する傾向がある。厚み精度と成形加工性とを両立する観点から、分散度(Mw/Mn)は、1.0~4.0が好ましく、1.5~3.5がより好ましく、2.0~3.0が更に好ましい。
【0039】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散度(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。例えば、10mmol/Lの臭化リチウム入りのN,N’-ジメチルホルムアミドを溶離液とし、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールを標準物質として求めることができる。
【0040】
本発明において、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とは、アクリル酸メチル及びメタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマー、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体の共重合体をいう。(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、トリスチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;1,3-ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;マレイン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸系単量体;ビニルメチルケトン等のエノン系単量体などがあり、これらを単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、ポリフッ化ビニリデン系樹脂との相溶性、積層体の強度、及びB層との接着性、密着性の理由により、(メタ)アクリル酸メチルのホモポリマー、又は、(メタ)アクリル酸ブチルを主体としたアクリル系ゴムに対して(メタ)アクリル酸メチルを主体としたモノマーを共重合させたアクリル系ゴム変性アクリル系共重合体が好ましい。
【0041】
共重合体としては、ランダム共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体(例えばジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、グラジエントコポリマー等のリニアタイプ、アームファースト法又はコアファースト法で重合した星型共重合体など)、重合可能な官能基を持つ高分子化合物であるマクロモノマーを用いた重合により得られる共重合体(マクロモノマー共重合体)、及びこれらの混合物などが挙げられる。なかでも、樹脂の生産性の観点から、グラフト共重合体及びブロック共重合体が好ましい。
【0042】
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を得るための重合反応としては、ラジカル重合、リビングラジカル重合、リビングアニオン重合、リビングカチオン重合等の公知の重合反応が挙げられる。また、重合方法としては、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の公知の重合方法が挙げられる。重合反応及び重合方法により、得られる樹脂の力学的性質が変化する。
【0043】
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂のMFRは、ISO1133に準拠し、230℃、10kg荷重での測定条件にて、2~30g/10分が好ましい。MFRが高いほど溶融押出時の流動性が向上するため、成形加工性が向上する傾向があり、MFRが低いほど、積層シートの衝撃強度が向上する傾向がある。強度と成形加工性を両立する観点から、MFRは3~20g/10分がより好ましく、4~15g/10分が更に好ましく、5~10g/10分が特に好ましい。
【0044】
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)の下限は、50,000以上が好ましく、70,000以上がより好ましく、100,000以上が更に好ましい。ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)の上限は、1,000,000以下が好ましく、750,000以下がより好ましく、500,000以下が更に好ましい。積層体の衝撃強度を保つには重量平均分子量(Mw)が高いほど好ましく、重量平均分子量(Mw)が低いほど溶融押出時の流動性が向上するため、成形加工性が向上する傾向がある。強度と成形加工性を両立する観点から、重量平均分子量(Mw)は、50,000~1,000,000が好ましく、70,000~750,000がより好ましく、100,000~500,000が更に好ましい。
【0045】
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の分散度(Mw/Mn、ここでMnは数平均分子量である。)の下限は、1.0以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましい。ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の分散度(Mw/Mn)の上限は、4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.0以下が更に好ましい。分散度(Mw/Mn)が大きいほど、積層体の厚み精度が向上する傾向があり、分散度(Mw/Mn)が小さいほど、溶融押出時の流動性が向上するため、成形加工性が向上する傾向がある。厚み精度と成形加工性を両立する観点から、分散度(Mw/Mn)は、1.0~4.0が好ましく、1.5~3.5がより好ましく、2.0~3.0が更に好ましい。
【0046】
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散度(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。例えば、テトラヒドロフランを溶離液とし、ポリスチレンを標準物質として求めることができる。
【0047】
アクリル系ゴム変性アクリル系共重合体において、分散相を形成するゴム状分散粒子の体積中位粒子径は5.0μm以下が好ましい。体積中位粒子径が大きいほど積層体の衝撃強度が優位となり、小さいほど透明性が優位となる。強度と透明性を両立する観点から、体積中位粒子径は0.05~3.0μmが好ましく、0.1~2.0μmがより好ましく、0.5~1.5μmが特に好ましい。
【0048】
ゴム状分散粒子の体積中位粒子径を調整する方法としては、重合工程においてゴム粒子の相転域での攪拌速度を調整する方法、原料液中の連鎖移動剤の量を調整する方法等が挙げられる。
【0049】
ゴム状分散粒子の体積中位粒子径は、例えば、アクリル系ゴム変性アクリル系共重合体を電解液(3%テトラ-n-ブチルアンモニウム/97%ジメチルホルムアミド溶液)に溶解させ、コールターマルチサイザー法(コールター社製マルチサイザーII;アパチャーチューブのオリフィス径30μm)により測定して求めた体積基準の累積粒径分布曲線の50体積%粒子径を用いることができる。
【0050】
A層の厚さについては、5~70μmであることが好ましく、9~50μmであることがより好ましく、15~34μmであることが更により好ましく、15~25μmが特に好ましい。A層が5μm以上であると保護層としての機能を向上させることができ、70μm以下とすることにより、コスト削減を実現することができる。A層は、単層で形成してもよいし、複数層で形成してもよいが、合計厚みが上述した厚さに収まるようにすることが望ましい。
【0051】
A層におけるB層が積層されている側の面は、A層とB層の間の接着強度を高めるために、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理(大気圧、及び真空)、高周波スパッタエッチング処理、フレーム処理、イトロ処理、エキシマUV処理、プライマー処理などの表面処理がされていてもよい。またサンドペーパーやケレン、ブラスト処理等で物理的に表面を削るような目粗し処理を行ってもよい。プライマーとしては、アクリル系、エチレン酢酸ビニル系、ウレタン系及びエポキシ系等があるが、B層との接着強度を高めるという観点からはアクリル系が好ましい。
【0052】
一実施形態において、B層は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂0質量部以上50質量部未満とポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂50質量部超100質量部以下(両者の合計を100質量部とする)を含有する樹脂組成物からなる層である。B層におけるポリフッ化ビニリデン系樹脂とポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の混合比は、両者の合計100質量部に対して、ポリフッ化ビニリデン系樹脂:ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂=5~45質量部:95~55質量部であることが好ましく、15~40質量部:85~60質量部であることがより好ましい。ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の合計100質量部に対して、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が50質量部超であると粘着剤層との密着性を向上させることができる。また、B層中にポリフッ化ビニリデン系樹脂が少量含有することで、耐候性やA層との接着性、密着性を向上させることができる。
【0053】
B層は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及びポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の他に、本発明の目的を損なわれない範囲において、紫外線吸収剤、他の樹脂、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、シール性改良剤、離型剤、着色剤、顔料、発泡剤、難燃剤などを適宜含有することができる。しかしながら、一般的には、B層におけるポリフッ化ビニリデン系樹脂及びポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の合計含有量は80質量%以上であり、典型的には90質量%以上であり、より典型的には95質量%以上であり、100質量%とすることもできる。
【0054】
B層は好ましくは紫外線吸収剤を含有する。B層が紫外線吸収剤を含有することで、紫外線が遮断され、耐候性を効果的に高めることができる。紫外線吸収剤としては、限定的ではないが、ハイドロキノン系、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系、オキザリックアシッド系、ヒンダードアミン系、サリチル酸誘導体等が挙げられ、これらを単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。中でも紫外線遮断効果の持続性からベンゾトリアゾール系、トリアジン系化合物が好ましい。B層中の紫外線吸収剤の含有量は、B層のポリフッ化ビニリデン系樹脂とポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の合計100質量部に対して0.05~15質量部であることが好ましい。B層中の紫外線吸収剤の含有量を、ポリフッ化ビニリデン系樹脂とポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の合計100質量部に対して、0.05質量部以上とすることにより、好ましくは1質量部以上とすることにより、より好ましくは2質量部以上とすることにより、耐候性の更なる向上効果と共に、紫外線吸収効果、更にはUVカット性付与による鋼材表面の劣化抑制効果が期待でき、また、B層中の紫外線吸収剤の含有量を、ポリフッ化ビニリデン系樹脂とポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の合計100質量部に対して、15質量部以下とすることにより、好ましくは10質量部以下とすることにより、より好ましくは5質量部以下とすることにより、紫外線吸収剤が積層体表面にブリードアウトすることを防止し、A層との密着性低下を防止でき、また、コスト削減を実現することができる。
【0055】
B層の厚さについては、10~140μmであることが好ましく、16~100μmであることがより好ましく、27~66μmであることが更により好ましく、27~50μmが特に好ましい。B層が10μm以上であると粘着剤層(120)との密着性を向上させることができ、140μm以下とすることにより、コスト削減を実現することができる。B層は、単層で形成してもよいし、複数層で形成してもよいが、合計厚みが上述した厚さに収まるようにすることが望ましい。
【0056】
A層とB層とが積層された積層体は、例えば複数の押出成形機を利用して複数の樹脂を溶融状態で接着積層する共押出成形法により製造可能である。共押出成形法には、複数の樹脂をシートの状態にした後に、Tダイ内部の先端で各層を接触接着するマルチマニホールドダイ方式と、複数の樹脂を合流装置(フィードブロック)内で接着後にシート状に拡げるフィードブロックダイ方式と、複数の樹脂をシートの状態に成形した後、Tダイ外部の先端で各層を接触させて接着するデュアルスロットダイ方式がある。また丸型ダイを使用するインフレーション成形法でも製造可能である。
【0057】
また、押出ラミネート法と称し、一体に結合すべき層のうち、一方の層を予めフィルム状に成形しておき、他層を押出成形しながら熱又は粘接着剤(一般には前もって粘接着剤を塗布しておく)で圧着結合する方法も採用できる。更に、両層とも予めフィルム状に成形したのち、両層を熱又は粘接着剤を使用して一体化する方法もあるが、工程数及びコストの観点から先の方法に比べて不利である。
【0058】
A層とB層とが積層された積層体を成形する際、積層体の透明性を高めるためには、積層体の引き取りに使用するピンチロールは鏡面仕上げされたものを採用することが好ましい。
【0059】
<1-2.粘着剤層>
粘着剤層(120)は、粘着剤で構成される層であり、鋼材被覆用積層体を鋼材表面へ貼り付ける際の両者間の密着性を確保する機能を果たす。粘着剤層(120)は鋼材表面に対する視認性を高めるために、透明であることが好ましい。本発明において粘着剤を使用するのは、施工性が接着剤に比べて顕著に高いためである。粘着剤と接着剤の違いは、粘着剤が貼り合わせ時からゲル状の柔らかい固体であり、そのままの状態で被着体に濡れ広がり、その後も態の変化を起こさず、剥離に抵抗する力を発揮する、つまり粘着剤は貼り合わせるとすぐに実用に耐える接着力を発現するのに対して、接着剤が貼り合わせ時は流動性のある液体で貼り合わせ界面に濡れ広がり、その後化学反応により固体に変化し、界面で強固に結びつき、剥離に抵抗する力を発揮する点である。接着剤は貼り合わせた後に、実用に耐える接着力を発現するまでに接着剤が化学反応により固化する時間が必要である。
【0060】
粘着剤は、25℃、1.0Hzにおける貯蔵弾性率が1.0×104~1.0×106Pa、かつ100℃、1.0Hzにおけるtanδが0.6以下であることが好ましい。より好ましくは25℃、1.0Hzにおける貯蔵弾性率が5.0×104~5.0×105Pa、かつ100℃、1.0Hzにおけるtanδが0.4以下である。貯蔵弾性率が1.0×104Pa以上であると、粘着剤の凝集力が向上し、粘着フィルムを被着体に貼り付けた後、粘着フィルムの被着体からのずれや剥がれを防止することができる。また、貯蔵弾性率が1.0×106Pa以下であると、粘着剤に適度な柔軟性があり、被着体の凹凸への追従性を向上させることができる。tanδが0.6以下であると、耐熱性が向上し、粘着フィルムを被着体に貼り付けた後、太陽光等の熱で粘着フィルムが被着体からずれたり、剥がれたりすることを防止することができる。
【0061】
貯蔵弾性率、及びtanδはRheometric Scientific社製の粘弾性測定装置等を用いて測定することができる。本発明における貯蔵弾性率は、せん断モード、周波数1.0Hzにおいて、25℃における貯蔵弾性率G’とし、tanδは、せん断モード、周波数1.0Hzにおいて、100℃における貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’の比(G’’/G’)から求めた値とした。
【0062】
粘着剤層(120)の厚さは特に制限はない。しかしながら、粘着剤層(120)の厚さが小さくなると鋼材表面に対する密着性は低下しやすくなる傾向にあることや、鋼材表面の不陸箇所を粘着剤で埋没させることができず、鋼材表面凹凸への追従性が低下するため、粘着剤層(120)と鋼材表面の間に気泡が入り、外観が低下しやすくなる傾向にあることから、例えば、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることが更により好ましく、20μm以上であることが特に好ましい。粘着剤層(120)の厚さは、150μmを超える場合、粘着剤層(120)に起因する各種性能が頭打ちとなる傾向があり、また、コスト高となるため、150μm以下であることが好ましく、110μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが更により好ましく、75μm以下であることが特に好ましい。これらの観点から、粘着剤層(120)の厚さは、5~150μmであることが好ましく、10~110μmであることがより好ましく、15~100μmであることが更により好ましく、20~75μmであることが特に好ましい。なお、上記厚さは粘着剤層(120)の乾燥後の厚さ(μm/Dry)を意味する。
【0063】
粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤等を挙げることができる。このような粘着剤は、単独で使用してもよいし、又は二種以上を混合して使用してもよい。
【0064】
粘着剤は、粘着形態で分類すると、ホットメルト粘着剤、二液混合型粘着剤、熱硬化型粘着剤、及びUV硬化型粘着剤などに分けることができるが、これらの中でも取り扱いの容易さと安定した接着強度発現の理由により、二液混合型粘着剤が好適に利用可能である。
【0065】
これらの中でも、透明であること及び優れた粘着性を有しているという観点から、二液混合型(メタ)アクリル系粘着剤は好適に使用可能である。(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの両者を意味する。“粘着剤層が(メタ)アクリル系粘着剤を含有する”というのは、粘着剤層がアクリル系粘着剤及びメタクリル粘着剤の一方又は両方を含有するという意味である。本発明に好適に用いられる(メタ)アクリル系粘着剤の詳細は国際公開第2016/010013号に記載されている。
【0066】
(メタ)アクリル系粘着剤の具体例としては、たとえば、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、2-メチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のC2~C12アルキルエステルの少なくとも一種(モノマーA)と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等の官能基含有アクリル系モノマーの少なくとも一種(モノマーB)との共重合体を好適に使用することができる。上記モノマーAとモノマーBの共重合比は、モノマーAとモノマーBの合計100質量部中、質量比で表して、モノマーA/モノマーB=99.9/0.1~70/30であり、好ましくは99/1~75/25の範囲である。
【0067】
特に好適な(メタ)アクリル系共重合体としては、ブチルアクリレート(BA)とアクリル酸(AA)の共重合体が挙げられる。この場合、ブチルアクリレート(BA)とアクリル酸(AA)の共重合比は、BAとAA合計100質量部中、質量比で表して、BA/AA=99.9/0.1~70/30であり、好ましくは99.5/0.5~80/20の範囲である。BAとAAの合計100質量部中、AAが0.1質量部以上であると、架橋剤併用での粘着物性コントロールが容易になる。また、BAとAAの合計100質量部中、AAが30質量部以下であると、ガラス転移点(Tg)が下がり、低温における鋼材表面への貼り付きが良くなり、施工性も向上する。
【0068】
上記(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは200,000~1,000,000、より好ましくは400,000~800,000であり、かかる分子量は、重合開始剤の量によって、また、連鎖移動剤を添加することによって調整することができる。重量平均分子量(Mw)が200,000以上であると、(メタ)アクリル系共重合体の凝集力が向上し、構造物への糊残りや粘着シートの剥がれを防止することができる。また、1,000,000以下であると、(メタ)アクリル系共重合体に適度な柔軟性があり、鋼材表面の凹凸への追従性が向上する。
【0069】
粘着剤には、必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加物を添加することができる。
【0070】
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。特に好適な架橋剤はイソシアネート系架橋剤であり、粘着剤を構成するポリマーの構成単位となるモノマー(例えば、BAとAAの合計)100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤0.3~4質量部であり、好ましくは0.5~3質量部である。イソシアネート系架橋剤が0.3質量部以上であると、粘着剤の凝集力が向上し、構造物から粘着シートを剥がす際、構造物への糊残りを防止でき、再剥離性を向上させることができる。また、イソシアネート系架橋剤が4質量部以下であると、粘着剤に適度な柔軟性があり、構造物表面の凹凸への追従性を向上し、粘着シートを貼る際、気泡を巻き込むことを防止することができる。
【0071】
イソシアネート系架橋剤の具体例としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート、リジンイソシアネート等の多価イソシアネート化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0072】
上記粘着剤が(メタ)アクリル系共重合体の架橋体を含む場合、粘着剤の架橋度(ゲル分率)は、特に制限されないが、例えば10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、25質量%以上が特に好ましい。粘着剤の架橋度(ゲル分率)は、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましく、60質量%以下が特に好ましい。すなわち、粘着剤の架橋度(ゲル分率)は、例えば、10~80質量%が好ましく、15~75質量%がより好ましく、20~70質量%が更に好ましく、25~60質量%が特に好ましい。架橋度(ゲル分率)は、例えば、(メタ)アクリル系共重合体のベースポリマー(粘着剤)の組成、分子量、架橋剤の使用の有無及びその種類並びに使用量の選択等により調節することができる。なお、架橋度の上限は、原理上、100質量%である。
【0073】
粘着付与剤は、軟化点、各成分との相溶性等を考慮して選択することができる。例えば、テルペン樹脂、ロジン樹脂、水添ロジン樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、テルペン-フェノール樹脂、キシレン系樹脂、その他脂肪族炭化水素樹脂又は芳香族炭化水素樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0074】
紫外線吸収剤は、紫外線吸収能や使用する(メタ)アクリル系粘着剤との相溶性等を考慮して選択することができる。例えば、ハイドロキノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0075】
光安定剤は、使用する(メタ)アクリル系粘着剤との相溶性や厚み等を考慮して選択することができる。例えば、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ベンゾエート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0076】
粘着剤層は、一般的な方法で形成することができる。例えば、フッ素系樹脂層における粘着剤層との貼合面に粘着剤を直接塗布し乾燥させる方法(ダイレクト塗工法)がある。また、セパレータに粘着剤を塗工し、乾燥させてからフッ素系樹脂層に貼り合せる方法もある。
【0077】
粘着剤の塗工は、例えば、グラビアロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ドクターブレード、コンマコーター、リバースコーター等、従来公知の塗工装置を用いて行うことができる。また、含浸、カーテンコート法等により粘着剤を塗工してもよい。必要に応じて冷却、加熱、又は電子線照射を行いながら粘着剤を塗工してもよい。
【0078】
粘着剤を塗工した後の乾燥は、架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば40℃以上(通常は60℃以上)であり、150℃以下(通常は130℃以下)程度とすることが好ましい。
【0079】
粘着剤層を形成する工程では、粘着剤を塗工し、乾燥させた後、更に、粘着剤層内における成分移行の調整、架橋反応の進行、並びに、鋼材被覆用積層体に存在し得る歪の緩和などを目的としてエージングを行ってもよい。
【0080】
<2.鋼材被覆用積層体を備えた鋼構造物>
本発明の一実施形態によれば、図2に示すように、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物を構成する鋼材(200)の表面に、粘着剤層(120)を貼り付け側として、前記鋼材被覆用積層体(100)が貼り付けられている鋼構造物が提供される。屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物を構成する鋼材の表面は、塗料が塗布されていなくてもよいが、一般には塗料が塗布されており、典型的には防錆塗料が塗布される。このため、鋼材の表面は一般に塗膜、典型的には防錆塗膜で保護されている。前記鋼材被覆用積層体(100)は、一実施形態において、塗料を塗布した鋼材の表面が撥水域に近い特性を有していても貼り付けることができるという利点がある。一実施形態においては、塗料を塗布した鋼材の表面は、JIS R3257:1999で規定される静滴法に従って測定される水の接触角が90°未満である。当該接触角は好ましくは60°以上90°未満であり、より好ましくは70°以上85°以下である。
【0081】
防錆塗料としては、限定的ではないが、例えば、フッ素樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、及びエポキシ樹脂塗料が挙げられる。これらは単独で使用してもよいが、防食性を高める上では、組み合わせて使用することが好ましい。塗装を行うに当たっては、鋼材の表面を予めブラスト処理等で下地処理しておくことが塗装の密着性を高める上で好ましい。
【0082】
屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物には特に制約はないが、例えば橋梁、水門、鉄塔、パイプライン、海洋構造物、ガスタンク、プラント、風力発電プロペラ塔、ビル、工場、倉庫、駐車場、フェンス、屋根(例えば、高速道路内へのゴルフ場からの飛球防止のネットを支持する構造物)、起伏ゲート等が挙げられる。屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物は、水分や塩分の付着によって腐食しやすい環境に暴露されるため、本発明に係る鋼材被覆用積層体を用いたときの効果が顕著に表れる。
【0083】
好適な実施形態において、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物を構成する鋼材の表面には、防食下地、下塗層、中塗層、上塗層の4層からなる重防食塗装を施すことができる。防食下地用の塗料としては、例えば、無機ジンクリッチペイント及び有機ジンクリッチペイントが挙げられる。下塗層を形成する塗料としては、例えば、エポキシ樹脂塗料が挙げられる。中塗層を形成する塗料としては、例えば、エポキシ樹脂塗料及びフッ素樹脂塗料が挙げられる。上塗層を形成する塗料としては、例えば、フッ素樹脂塗料及びポリウレタン樹脂塗料が挙げられる。各層を形成する塗料は単独で使用してもよいし、複数種類を混合して使用してもよい。
【0084】
一実施形態において、本発明に係る鋼材被覆用積層体は鋼材表面が塗装されているか否かに関わらず、鋼材表面への高い密着強度を示すことができる。従って、例えば、本発明に係る鋼材被覆用積層体は、塗料を塗布した鋼材の表面に貼り付けて、すなわち、鋼材被覆用積層体の粘着剤層が塗装面と接触するように使用することができる。また、本発明に係る鋼材被覆用積層体は、フッ素樹脂塗料を塗布した鋼材の表面に貼り付けて、すなわち、鋼材被覆用積層体の粘着剤層がフッ素樹脂塗膜と接触するように、使用することができる。また、本発明に係る鋼材被覆用積層体は、重防食塗装を施した鋼材の表面に貼り付けて、すなわち、鋼材被覆用積層体の粘着剤層が重防食塗装の上塗層と接触するように使用することができる。
【0085】
屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物を構成する鋼材の表面には、所望の塗装膜厚を容易に確保できる部分と、所望の塗装膜厚を確保するのが難しい部分とが存在する。屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物においては、塗装膜厚を確保するのが難しい部分を起点として錆及び腐食が発生することが多い。このため、このような塗装膜厚を確保するのが難しい部分に本発明に係る鋼材被覆用積層体を貼り付けることが、鋼構造物の保護又は補修するにあたって好ましい。鋼構造物を構成する鋼材の表面全体に鋼材被覆用積層体を貼り付けなくても、塗装膜厚を確保するのが難しい部分に鋼材被覆用積層体を貼り付けることができれば高い保護又は補修効果が得られるので経済的である。
【0086】
塗装膜厚を確保するのが難しい部分としては、限定的ではないが、部材角部(コバ面)、溶接部、稜部、角部(多角形の頂点部分)などが挙げられる。なお、部材角部(コバ面)とは、鋼構造物を構成する鋼材が板状部分を有するときの当該板状部分の露出した板厚面を指す。部材角部(コバ面)の板厚方向の長さは、限定的ではないが、一般には1.6~100mmであり、典型的には9~50mmである。
【0087】
前記鋼構造物を構成する鋼材の部材角部(コバ面)へ、本発明に係る鋼材被覆用積層体を貼り付ける際には、部材角部(コバ面)のみに鋼材被覆用積層体を貼り付けることも可能であるが、隣接する一対の平面部のそれぞれの少なくとも一部に跨って貼り付けることが、鋼構造物の耐久性を高める上でより好ましい。図3には、本発明に係る鋼材被覆用積層体(100)が、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物の一部を構成する鋼材(200)の部材角部(コバ面)(212)へ貼り付けられたときの断面構造が模式的に示されている。図示の実施形態においては、長尺テープ状の鋼材被覆用積層体(100)が、部材角部(コバ面)(212)に貼り付けられている。また、長尺テープ状の鋼材被覆用積層体(100)は、稜部(214)に沿って折り曲げられており、部材角部(コバ面)(212)に隣接する一対の対向する平面部(215a、215b)のそれぞれの一部に跨って貼り付けられている。当該構成により、部材角部(コバ面)(212)及び稜部(214)に対して同時に鋼材被覆用積層体(100)の貼り付け施工をすることができるので、効率的である。
【0088】
更には、上記のようにして本発明に係る鋼材被覆用積層体(100)を、部材角部(コバ面)(212)に加えて部材角部(コバ面)(212)に隣接する一対の平面部(215a、215b)のそれぞれの少なくとも一部に跨って貼り付けた後、図3に示すように、貼り付けた鋼材被覆用積層体(100)の端部へ重ね合わせて、別の鋼材被覆用積層体(300a、300b)を、前記鋼構造物を構成する鋼材の平面部(215a、215b)に貼り付けてもよい。これにより、先に部材角部(コバ面)(212)に貼り付けた鋼材被覆用積層体(100)は、端部が保護されるため、剥がれにくくなる。
【0089】
前記鋼構造物を構成する鋼材の溶接部へ、本発明に係る鋼材被覆用積層体を貼り付ける際には、溶接部のみに鋼材被覆用積層体を貼り付けることも可能であるが、溶接部を介して接合された二つの部材の平面部のそれぞれの少なくとも一部に跨って鋼材被覆用積層体を貼り付けることが、鋼構造物の耐久性を高める上でより好ましい。図4には、本発明に係る鋼材被覆用積層体(100)が、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物(200)の一部を構成する鋼材(200)の溶接部(216)へ貼り付けられたときの断面構造が模式的に示されている。図示の実施形態においては、長尺テープ状の鋼材被覆用積層体(100)が、溶接部(216)に貼り付けられている。また、長尺テープ状の鋼材被覆用積層体(100)は、溶接部(216)に沿って折り曲げられており、溶接部(216)を介して接合された二つの部材の平面部(217a、217b)のそれぞれの一部に跨って貼り付けられている。当該構成により、溶接部(216)を確実に保護又は補修することができる。
【0090】
更には、上記のようにして本発明に係る鋼材被覆用積層体(100)を、溶接部(216)に加えて溶接部(216)を介して接合された二つの部材の平面部(217a、217b)のそれぞれの少なくとも一部に跨って貼り付けた後、図4に示すように、貼り付けた鋼材被覆用積層体(100)の端部へ重ね合わせて、別の鋼材被覆用積層体(400a、400b)を、前記鋼構造物を構成する鋼材(200)の平面部(217a、217b)に貼り付けてもよい。これにより、先に溶接部(216)に貼り付けた鋼材被覆用積層体(100)は、端部が保護されるため、剥がれにくくなる。
【実施例
【0091】
以下、本発明を実施例に基づいて、比較例と対比しつつ詳細に説明する。
【0092】
(1.材料)
ポリフッ化ビニリデン系樹脂として、アルケマ社製の商品名Kynar720(フッ化ビニリデンのホモポリマー、MFR(ISO1133準拠、230℃、3.8kg荷重):18~26g/10分、以下「PVDF1」と略称する)を用意した。
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂として、三菱ケミカル社製の商品名ハイペットHBS000Z60(メチルメタクリレート-ブチルアクリレート共重合体、MFR(ISO1133準拠、230℃、10kg加重):5~9g/10分、以下「アクリル1」と略称する)を用意した。
エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体として、Solvay社製の商品名Halar500LC(MFR(ISO1133準拠、275℃、2.16kg加重):15~22g/10分、以下「ECTFE1」と略称する)を用意した。
ポリ塩化ビニルシートとして、森野化工社製の商品名エムロン(カラー:トーメー、表面仕上げ:ツヤ、厚み50μm、以下「PVC1」と略称する)を用意した。
ポリフッ化ビニルフィルムとして、DowDuPont社製の商品名Tedlar SP(厚み25μm、以下「PVF1」と略称する)を用意した。
ポリテトラフルオロエチレンシートとして、日東電工社製の商品名NITOFLON No.900UL(厚み130μm、以下「PTFE1」と略称する)を用意した。
四フッ化エチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体シートとして、ダイキン工業社製の商品名ネオフロンPFAフィルム(厚み100μm、以下「PFA1」と略称する)を用意した。
エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体フィルムとして、AGC社製の商品名アフレックス25N 1250S(厚み25μm、以下「ETFE1」と略称する)を用意した。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、BASF社製の商品名Tinuvin234(以下「UVA1」と略称する)を用意した。
トリアジン系紫外線吸収剤として、BASF社製の商品名Tinuvin1577ED(以下「UVA2」と略称する)を用意した。
【0093】
(2.単層シートの成形)
<成形例1~5>
単層シートを構成する樹脂組成物全体の質量に対する各材料の含有率が表1に記載の値となるように、成形番号に応じて所定の比率でブレンドし、φ30mm異方向回転二軸押出機(神戸製鋼所社製、KTX-30)を用い、押出温度240℃、スクリュー回転数200rpmの条件にて溶融混練し、ストランド状に押し出した。ストランド状の混練物を冷却した後、ペレタイザーにてペレット化した。
【0094】
φ40mm短軸押出機の先端に、リップ幅550mmのTダイを取り付け、上記で用意した各種ペレットに対して単層押出成形を行い、表1に記載の厚みの単層シートを成形した。押出温度240℃、Tダイ温度240℃、冷却ロール温度30℃の条件にて実施した。ピンチロールとしては、鏡面加工されたものを使用した。
【0095】
<成形例6>
ECTFE1に対して、押出温度を285℃に変更した以外は、成形例1~5と同様の条件でペレット化した。次いで、得られたペレットに対して、押出温度を285℃、Tダイ温度を285℃に変更した以外は、成形例1~5と同様の条件で単層押出成形を行い、表1に記載の厚みの単層シートを成形した。
【0096】
<成形例7A>
PVC1をそれ以上加工することなくそのまま用いた。
【0097】
<成形例7B>
PVF1をそれ以上加工することなくそのまま用いた。
【0098】
<成形例7C>
PTFE1をそれ以上加工することなくそのまま用いた。
【0099】
<成形例7D>
PFA1をそれ以上加工することなくそのまま用いた。
【0100】
<成形例7E>
ETFE1をそれ以上加工することなくそのまま用いた。
【0101】
【表1】
【0102】
(3.二層シートの成形)
<成形例8~27、29~33>
A層を構成する樹脂組成物全体の質量に対する各材料の含有率が表2に記載の値となるように成形番号に応じて所定の比率でブレンドし、φ30mm異方向回転二軸押出機(神戸製鋼所社製、KTX-30)を用い、押出温度240℃、スクリュー回転数200rpmの条件にて溶融混練し、ストランド状に押し出した。ストランド状の混練物を冷却した後、ペレタイザーにてペレット化した。
【0103】
同様に、B層を構成する樹脂組成物全体の質量に対する各材料の含有率が表2に記載の値となるように成形番号に応じて所定の比率でブレンドし、φ30mm異方向回転二軸押出機(神戸製鋼所社製、KTX-30)を用い、押出温度240℃、スクリュー回転数200rpmの条件にて溶融混練し、ストランド状に押し出した。ストランド状の混練物を冷却した後、ペレタイザーにてペレット化した。
【0104】
上記で作製したA層用ペレットとB層用ペレットを、φ40mm短軸押出機2台と先端にフィードブロック、リップ幅550mmのTダイを取り付けたフィードブロック方式のTダイ式多層押出機を使用して二種二層共押出成形を行い、A層とB層が表2に記載の厚みで積層された種々のシート状成形体を得た。A層及びB層の押出は、共に押出温度240℃、Tダイ温度240℃の条件にて実施した。なお、引取装置のダイに最も近いピンチロールは温度30℃とした。ピンチロールとしては、成形番号に応じて、鏡面加工されたもの又はエンボス加工されたものを使用した。
【0105】
<成形例28>
A層を構成するECTFE1を、押出温度を285℃に変更した以外は、成形例8~27、29~33と同様の条件で、ペレット化した。
【0106】
B層を構成するECTFE1及びUVA1を表2に記載の比率でブレンドし、押出温度を285℃に変更した以外は、成形例8~27、29~33と同様の条件で、ペレット化した。
【0107】
上記で作製したA層用ペレットとB層用ペレットに対して、押出温度を285℃、Tダイ温度を285℃に変更した以外は、成形例8~27、29~33と同様の条件で、二種二層共押出成形を行い、A層とB層が表2に記載の厚みで積層されたシート状成形体を得た。ピンチロールとしては、鏡面加工されたものを使用した。
【0108】
【表2】
【0109】
(4.粘着剤の作製)
粘着剤1:表3に記載のアクリル系粘着剤100質量部に対し、表3に記載のイソシアネート系架橋剤を表3に記載の質量部でブレンドして粘着剤1を作製した。
粘着剤2:表3に記載のアクリル系粘着剤100質量部に対して、表3に記載のイソシアネート系架橋剤を表3に記載の質量部でブレンドして粘着剤2を作製した。
接着剤1:表3に記載のエポキシ系接着剤(主剤)66.7質量部に対して、表3に記載のアミン系硬化剤(副材)を表3に記載の質量部でブレンドして接着剤1を作製した。
接着剤2:表3に記載のアクリル系接着剤A剤50質量部に対して、表3に記載のアクリル系架橋剤B剤を表3に記載の質量部でブレンドして接着剤2を作製した。
【0110】
【表3】
【0111】
(5.鋼材の用意)
鋼材1;一方の主表面をブラスト処理(Sa2.5:IS0 8501-1)した矩形板状(150mm×70mm×3.2mm)の普通鋼材(未塗装)を用意した。鋼材1の表面は、JIS R3257:1999で規定される静滴法に従って測定される水の接触角が、75°であった。
鋼材2;鋼材1の表面に以下の手順で防食塗膜を形成したものを用意した。鋼材1の表面に、エポキシ樹脂塗料を用いて乾燥後厚み120μmで下塗りを行った。次いで、下塗りの上に、フッ素樹脂塗料用中塗(エポキシ樹脂塗料)を用いて乾燥後厚み30μmで中塗りを行った。次いで、中塗りの上に、フッ素樹脂塗料を用いて乾燥後厚み25μmで上塗りを行った。鋼材2の表面は、JIS R3257:1999で規定される静滴法に従って測定される水の接触角が、85°であった。
鋼材3;鋼材1の表面に以下の手順で防食塗膜を形成したものを用意した。鋼材1の表面に、フッ素樹脂塗料を用いて乾燥後厚み25μmで塗装した。鋼材3の表面は、JIS R3257:1999で規定される静滴法に従って測定される水の接触角が、80°であった。
【0112】
(6.防食シートの作製)
<実施例1~29、比較例1~2:粘着剤使用>
上記の成形例で作製した単層シート及び二層シートについて、粘着剤を塗布する側(二層シートについてはB層)の主表面をコロナ放電処理した。次いで、粘着剤を厚みが50μmになるように離型紙(住化加工紙社製、SLB-50BD)に塗布し、乾燥させ、単層シート及び二層シートの当該主表面に貼り合わせることで積層し、試験番号に応じて表4及び表5に記載の積層構造を有する各種防食シートを作製した。
【0113】
(7.複合サイクル試験(防食性試験))
<実施例1~29、比較例1~2>
上記手順で作製した粘着剤層を有する各種防食シートを、150mm×70mmの長方形状に切断し、離型紙を剥がした上で、粘着剤層側から鋼材1のブラスト処理面に貼り付けた。その後、20℃、相対湿度60%の環境下で2日間養生した。なお、貼り付け作業は、鋼材1に対するブラスト処理(Sa2.5:IS0 8501-1)後、4時間以内に実施した。
【0114】
次いで、防食シートを貼り付けた鋼材1に対して、複合サイクル試験機CYP-90(スガ試験機社製)を用い、以下の(1)~(6)までの工程を1サイクルとして、200サイクルの腐食促進のための複合サイクル試験を行った。
(1)湿潤(95%RH、30℃:1h)→(2)塩水噴霧(5%NaCl、30℃:2h)→(3)乾燥(20%RH、50℃:1.5h)→(4)湿潤(95%RH、50℃:1.5h)→(5)乾燥(20%RH、50℃:1.5h)→(6)乾燥(20%RH、30℃:1.5h)(但し、1サイクル中、(3)及び(4)は交互に繰り返して6回ずつ行う。)
【0115】
複合サイクル試験後、防食シートを貼り付けた鋼材の表面の外観を目視により確認し、錆の有無及び防食シートの膨れの有無を調査した。そして、錆及び膨れの何れも見られなかったものを「異常なし」とし、錆及び膨れの少なくとも一方が見られたものを「異常あり」と評価した。また、「異常あり」であったものは、防食シートを貼り付けた鋼材の表面のうち、腐食が確認された面積の比率も求めた。結果を表4及び表5に示す。
【0116】
<参考例1>
鋼材1に防食シートを貼り付けることなく、上記複合サイクル試験を実施した。その後、上記と同様の外観チェックを行った。結果を表5に示す。
【0117】
<参考例2>
鋼材1のブラスト処理面に、接着剤1を乾燥後厚み0.5mmで塗布し、その後、20℃、相対湿度60%の環境下で2日間養生した。なお、接着剤1の塗布作業は、ブラスト処理後、4時間以内に実施した。次いで、上記複合サイクル試験を実施し、上記と同様の外観チェックを行った。結果を表5に示す。
【0118】
<比較例3~8>
上記の成形例で作製した単層シート及び二層シートに対して、接着剤を塗布する側(二層シートについてはB層)の主表面をコロナ放電処理した。次いで、これらの単層シート及び二層シートを、150mm×70mmの長方形状に切断した。そして、鋼材1のブラスト処理面へ試験番号に応じた接着剤を乾燥後厚み25μmで塗布した上で、単層シート及び二層シートの当該主表面を貼り合わせることで積層し、20℃、相対湿度60%の環境下で2日間養生した。その後、上記複合サイクル試験を実施し、上記と同様の外観チェックを行った。結果を表5に示す。
【0119】
(8.付着力試験)
<実施例1~29、比較例1~2>
上記手順で作製した粘着剤層を有する各種防食シートを、150mm×70mmの長方形状に切断し、離型紙と逆側の主表面をコロナ放電処理した後、離型紙を剥がした上で、粘着剤層側から鋼材2の防食塗膜に貼り付けた。その後、20℃、相対湿度60%の環境下で2日間養生した。
【0120】
防食シートを貼り付けた鋼材2に対して、プルオフ法付着性試験用引張試験機「アドヒージョンテスター」PosiTest AT-A(DeFelsko社製)を用い、付着力試験(JIS K5600-5-7:2014に規定するプルオフ法に準拠)を行って防食シートの防食塗膜への付着力(破壊力)を測定した。また、防食シートを貼り付けた鋼材2に対して先述した複合サイクル試験を行った後、同様に付着力試験を行い、防食シートの防食塗膜への付着力(破壊力)を測定した。複合サイクル試験前の破壊力を「促進前」、複合サイクル試験後の破壊力を「促進後」として、結果を表4及び表5に示す。
【0121】
<参考例1>
鋼材2に防食シートを貼り付けることなく、上記複合サイクル試験前後での防食塗膜の付着力を上記と同様の方法で測定した。結果を表5に示す。
【0122】
<参考例2>
鋼材2の防食塗膜に、接着剤1を乾燥後厚み0.5mmで塗布し、その後、20℃、相対湿度60%の環境下で2日間養生した。次いで、上記複合サイクル試験前後での接着剤1の防食塗膜への付着力を上記と同様の方法で測定した。結果を表5に示す。
【0123】
<比較例3~8>
上記の成形例で作製した単層シート及び二層シートに対して、接着剤を塗布する側(二層シートについてはB層)の主表面、及びそれとは逆側の面をコロナ放電処理した。次いで、これらの単層シート及び二層シートを、150mm×70mmの長方形状に切断した。そして、鋼材2の防食塗膜へ接着剤を、乾燥後厚み25μmで塗布した上で、単層シート及び二層シートの当該主表面を貼り合わせることで積層し、20℃、相対湿度60%の環境下で2日間養生した。次いで、上記複合サイクル試験前後での防食シートの防食塗膜への付着力を上記と同様の方法で測定した。結果を表5に示す。
【0124】
(9.耐候性試験)
<実施例1~29、比較例1~2>
上記手順で作製した粘着剤層を有する各種防食シートを、150mm×70mmの長方形状に切断し、離型紙を剥がした上で、粘着剤層側から鋼材3の防食塗膜に貼り付けた。その後、20℃、相対湿度60%の環境下で2日間養生した。
【0125】
防食シートを貼り付けた鋼材3のシート表面に対して、60°光沢計を用いて光沢度を測定し、また、測色色差計を用いて基準色を測定した。次いで、メタルハライドランプ式超促進耐候性試験機アイスーパーUVテスター SUV-W161(岩崎電気社製)を利用し、UV照射強度1,320w/m2、湿度50%、ブラックパネル温度63℃、UV照射条件2分シャワー、8分休止の3サイクルでの照射を1時間、シャワーなしの暗黒を0.5時間の計1.5時間を1サイクルとし、試験時間525hrの条件で、防食シートを貼り付けた鋼材3に対して耐候性試験を行った。耐候性試験後、防食シートを貼り付けた鋼材3のシート表面に対して、60°光沢計を用いて光沢度を測定し、また、測色色差計を用いて基準色との色差(△E525)を測定した。耐候性試験前の光沢度に対する耐候性試験後の光沢度の比率である光沢保持率を表4及び表5に示す。また、耐候性試験前に対する耐候性試験後の色差保持率を表4及び表5に示す。なお光沢度はBYK-Gardner社製、micro-glass 60°を用い、JIS Z8741に準拠し、60°鏡面光沢を測定した。色差は日本電色工業社製、測色色差計(型式:ZE6000)を用い、JIS Z8722に準拠し、分光透過率を測定した。色差保持率は下記式を用いて算出した。
色差保持率(%)=100-△E525
【0126】
<参考例1>
鋼材3に防食シートを貼り付けることなく、上記耐候性試験前後での防食塗膜の光沢保持率及び色差保持率を上記と同様の方法で測定した。結果を表5に示す。
【0127】
<参考例2>
鋼材3の防食塗膜に、接着剤1を、乾燥後厚み25μmで塗布し、その後、25℃、相対湿度50%の環境下で2日間養生した。次いで、上記耐候性試験前後での接着剤面の光沢保持率及び色差保持率を上記と同様の方法で測定した。結果を表5に示す。
【0128】
<比較例3~8>
上記の成形例で作製した単層シート及び二層シートに対して、接着剤を塗布する側(二層シートについてはB層)の主表面をコロナ放電処理した。次いで、これらの単層シート及び二層シートを、150mm×70mmの長方形状に切断した。そして、鋼材3の防食塗膜へ接着剤を、乾燥後厚み25μmで塗布した上で、単層シート及び二層シートの当該主表面を貼り合わせることで積層し、25℃、相対湿度50%の環境下で2日間養生した。次いで、上記耐候性試験前後でのシート表面の光沢保持率及び色差保持率を上記と同様の方法で測定した。結果を表5に示す。
【0129】
(10.施工性)
<実施例1~29、比較例1~2>
上記手順で作製した粘着剤層を有する各種防食シート500を、820×120mmの長方形状に切断した。そして図5に示すように、T型鋼材200へ部材角部(コバ面)212を覆うように貼り付け施工し、その時間を計測した。この際、粘着剤付き防食シートは離型紙を剥がして施工し、接着剤を用いる防食シートは、接着剤を鋼材表面へ塗布してから貼り付けた。試験回数2回の平均値を測定値とした。また、施工後の防食シートの外観を目視で確認した。結果を表4及び表5に示す。
【0130】
(11.全光線透過率)
ヘーズメーターNDH7000(日本電色工業社製)を使用し、JIS K7361-1-1997に準拠して、上記の成形例で作製した単層シート及び二層シート(成形例1~33)の全光線透過率を求めた。結果を表4及び表5に示す。
【0131】
(12.HAZE)
ヘーズメーターNDH7000(日本電色工業社製)を使用し、JIS K7136-2000に準拠して、上記の成形例で作製した単層シート及び二層シート(成形例1~33)のHAZE値を測定した。結果を表4及び表5に示す。
【0132】
【表4】
【0133】
【表5】
【0134】
<考察>
何れの実施例に係る鋼材被覆用積層体についても、複合サイクル試験(防食性試験)、付着力試験、耐候性試験、施工性、透明性(全光線透過率、HAZE)が優れていた。一方、比較例に係る鋼材被覆用積層体は、これらの特性の少なくとも一つにおいて満足のいく特性が得られなかった。以下に詳細な考察を加える。
【0135】
実施例1、5、比較例1、2(2-1~2-5)より、優れた防食性、耐候性及び施工性が発現するためには、フッ素系樹脂層としてポリフッ化ビニリデン系樹脂及びエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体よりなる群から選択される一方又は両方を用いることが重要であることが分かる。
【0136】
実施例2~4、比較例1より、ポリフッ化ビニリデンとポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂をブレンドしてフッ素系樹脂層を形成しても、防食性が発現したことが分かる。また、ポリフッ化ビニリデンとポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂をブレンドすることで、耐候性と付着力のバランスが向上することが分かる。
【0137】
実施例6~18より、ポリフッ化ビニリデンとポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の配合比や、配合組成の異なる樹脂組成物を積層させ、フッ素系樹脂層を形成しても、他の物性に影響を及ぼすことなく、防食性、耐候性が発現することが分かる。また、A層においてはポリフッ化ビニリデンの配合比率を高く、B層においてはポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の配合比率を高くすることで、防食性、耐候性が高度に発現することが分かる。
【0138】
実施例7、19~25、及び実施例5、26より、B層にUV吸収剤を配合することで、他の物性に影響を及ぼすことなく、耐候性試験後の色差保持率が向上することが分かる。
【0139】
実施例7、24より、B層のUV吸収剤を変更しても、物性に影響を及ぼすことがないことを確認した。
【0140】
実施例7、25より、フッ素系樹脂層の製造時にエンボスロールによるエンボス加工を施すことで、HAZE以外の物性を損なうことなく、全光線透過率を維持することが分かる。これにより、つや消しフィルムとしても使用できることを確認した。
【0141】
実施例2、5、7、27~29より、粘着剤層を変更しても、物性に影響を及ぼすことがないことを確認した。
【0142】
実施例2、5、7、27~29、比較例3~8より、接着剤を用いると、鋼材被覆用サンプルを鋼材へ貼り付ける際の施工時間が長くなり、施工性が大きく低下することを確認した。
【0143】
参考例1、2より、防食性が発現するためにはフッ素系樹脂層を用いることが重要であることが分かる。
【0144】
実施例7、実施例30~34より、フッ素系樹脂層は厚みを変更しても物性に影響を及ぼさないことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明に係る鋼材被覆用積層体は、屋外に暴露した状態で設置される鋼構造物を構成する鋼材の表面へ貼り付け施工することにより、経年劣化した構造物の補修工事、補強工事、事後保全、及び劣化補修作業へ広く利用できる。また、新設や経年劣化前の構造物へ積層体を貼り付け施工することにより、劣化進行防止工事等の予防保全、劣化進行防止作業へ広く利用できる。また、本発明に係る鋼材被覆用積層体が透明性を有する実施態様においては、鋼材表面の劣化が目視確認可能となるため、劣化予知保全作業へ広く利用できる。特に鋼材表面が塗装されている場合、塗装の退色度合いにより塗装及び鋼構造物の経年劣化の度合いを容易に判別できる。
【符号の説明】
【0146】
100 鋼材被覆用積層体
110 フッ素系樹脂層
110a A層
110b B層
120 粘着剤層
130 セパレータ
200 鋼材
212 部材角部(コバ面)
214 稜部
215a、215b 平面部
216 溶接部
217a、217b 平面部
300a、300b 鋼材被覆用積層体
400a、400b 鋼材被覆用積層体
図1
図2
図3
図4
図5