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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】次亜塩素酸塩臭のマスキング剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20230623BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20230623BHJP
   A23L 5/20 20160101ALI20230623BHJP
【FI】
A23L19/00 Z
A23L27/00 Z
A23L19/00 A
A23L5/20
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019087707
(22)【出願日】2019-05-07
(65)【公開番号】P2020182405
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 敦嗣
(72)【発明者】
【氏名】東條 裕一
(72)【発明者】
【氏名】金子 裕司
(72)【発明者】
【氏名】小林 泰行
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-153616(JP,A)
【文献】特開2003-052796(JP,A)
【文献】特開2005-137283(JP,A)
【文献】特開2002-065177(JP,A)
【文献】日本食品保蔵科学会誌,1998年,Vol.24, No.4,pp.267-280
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 19/00
A23L 27/00
A23L 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)大豆タンパク又はとうもろこしタンパク及び(b)HLBが5未満の乳化剤を含有する、次亜塩素酸塩により処理された青果物の次亜塩素酸塩臭のマスキング剤。
【請求項2】
(b)HLBが5未満の乳化剤がポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1記載の次亜塩素酸塩により処理された青果物の次亜塩素酸塩臭のマスキング剤。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載の次亜塩素酸塩により処理された青果物の次亜塩素酸塩臭のマスキング剤を青果物に接触させる工程を含む、次亜塩素酸塩により処理された青果物の次亜塩素酸塩臭をマスキングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次亜塩素酸塩臭のマスキング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜類や果実類等の青果物は、安全性の確保と鮮度維持のために、店頭に陳列する前に次亜塩素酸塩の水溶液で処理し、雑菌類の繁殖を抑制することが行われている。しかし、青果物に残存した次亜塩素酸塩に由来する刺激臭(以下、「次亜塩素酸塩臭」という。)は、電子レンジ等で加熱調理した際等に感じられることがあり、それらの美味しさが損なわれることが懸念される。
【0003】
次亜塩素酸塩臭を低減する方法としては、例えば、芯物質として香料を含有するマイクロカプセル、及び次亜塩素酸水を含有し、かつ3.0以上7.0以下のpH値、及び1mg/kg以上の次亜塩素酸濃度を有する次亜塩素酸水溶液(特許文献1)、殺菌装置において、野菜を塩素系殺菌剤に接触させて野菜を殺菌する殺菌工程と、ヒートショック装置において、前記殺菌工程において殺菌された野菜を温水に接触させてヒートショック処理を行うヒートショック工程と、を含むことを特徴とする殺菌野菜の生産方法(特許文献2)等が知られている。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の方法は、青果物への使用を想定したものではなく、特許文献2に記載の方法は、特別な設備・装置の導入が必要である。このため、次亜塩素酸塩の水溶液により処理された青果物について、次亜塩素酸塩臭をより簡便に低減する方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-160174号公報
【文献】特開2016-086756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、次亜塩素酸塩臭を低減し得る次亜塩素酸塩臭のマスキング剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、タンパク質及び比較的低いHLBを有する乳化剤を併用することにより、上記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の(1)~(3)からなっている。
(1)タンパク質及びHLBが5未満の乳化剤を含有する、次亜塩素酸塩臭のマスキング剤。
(2)HLBが5未満の乳化剤がポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される1種又は2種以上である、前記(1)記載の次亜塩素酸塩臭のマスキング剤。
(3)前記(1)又は(2)のいずれかに記載の次亜塩素酸塩臭のマスキング剤を青果物に接触させる工程を含む、次亜塩素酸塩により処理された青果物の次亜塩素酸塩臭をマスキングする方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の次亜塩素酸塩臭のマスキング剤を次亜塩素酸塩により処理された青果物に使用することにより、次亜塩素酸塩臭を十分に低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いられるタンパク質としては、動植物由来で食用可能なものであれば特に制限は無く、例えば、全卵、卵白、卵黄等の卵タンパク、脱脂乳、脱脂粉乳、全脂肪乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、ホエータンパク、カゼインナトリウム等の乳タンパク、大豆タンパク、小麦タンパク、えんどうタンパク、とうもろこしタンパク等の植物性タンパク、ゼラチン等の動物性タンパク等が挙げられる。これらタンパク質の中でも、植物性タンパクが好ましく、大豆タンパク、とうもろこしタンパクがより好ましい。これらタンパク質は、いずれか1種のみを用いても良いし、2種以上を任意に組み合わせて用いても良い。
【0011】
本発明に用いられるタンパク質の形態に特に制限はないが、粉末状のマスキング剤の調製が容易であるため、粉末状のものが好ましい。
【0012】
本発明に用いられるタンパク質としては、SUPRO 710(商品名;粉末状大豆タンパク;デュポン社製)、SUPRO XT-219D(商品名;粉末状大豆タンパク;デュポン社製)、小林ツェインDP-N(商品名;とうもろこし蛋白;小林香料社製)等が商業的に販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0013】
本発明で用いられるHLBが5未満の乳化剤は、食品用として使用される乳化剤であって、アトラス法により計算されたHLB値(以下、単に「HLB」という)が5未満、好ましくは4未満、更に好ましくは3未満、更に好ましくは2未満のものである。
【0014】
食品用として使用される非イオン性の界面活性剤は親水基と親油基のバランスが重要であることから、その性質を表わす方法としてGriffinの発表したHLBが一般に用いられている。GriffinはHLBを0~20と規定し、分子中の親水基部分の分子量の割合が0.5である時、そのHLBを10とした。ただし、一般に工業製品として製造・販売されている食品用乳化剤は純品ではなく混合物であり、Griffin式でHLBを求めることは実際上不可能であることから、それらのHLBは、通常アトラス法により計算される。アトラス法による計算式を以下に示す。
HLB=20×(1-S/A)
S:多価アルコール脂肪酸エステルのけん化価
A:原料脂肪酸の中和価
尚、けん化価及び中和価は、例えば「基準油脂分析試験法(1)」((社)日本油化学協会、1996年)に記載の方法等に基づき測定できる。
【0015】
本発明に用いられる乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等であってHLBが5未満のものが挙げられる。ここで、グリセリン脂肪酸エステルには、グリセリンと脂肪酸のエステルの他、例えば、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が含まれ、該グリセリン有機酸脂肪酸エステルには、例えば、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル等が含まれる。また、該ポリグリセリン脂肪酸エステルには、例えば、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル等が含まれる。これら乳化剤の中でも、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えば、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル)、グリセリン有機酸脂肪酸エステル(例えば、グリセリン酢酸脂肪酸エステル)、ショ糖脂肪酸エステルが好ましい。これら乳化剤は、いずれか1種のみを用いても良いし、2種以上を任意に組み合わせて用いても良い。
【0016】
本発明に用いられる乳化剤の形態に特に制限はないが、例えば、粉末状、液状又はペースト状のものが挙げられ、本発明の効果が十分に発揮される観点から、液状又はペースト状のものが好ましい。
【0017】
本発明に用いられる乳化剤としては、ポエムPR-100(商品名;ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル;液状;HLB0.5;理研ビタミン社製)、ポエムG-002(商品名;グリセリン酢酸脂肪酸エステル;液状;HLB0;理研ビタミン社製)、リョートーシュガーエステルS-170(商品名;ショ糖脂肪酸エステル;粉末状;HLB約1;三菱化学フーズ社製)等が商業的に販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0018】
本発明の次亜塩素酸塩臭のマスキング剤(以下、単に「マスキング剤」ともいう)は、タンパク質及びHLBが5未満の乳化剤を含有する。該マスキング剤は、タンパク質及びHLBが5未満の乳化剤を自体公知の方法により混合し、製剤化したものである。製剤化の際は、液状又はペースト状の乳化剤を用いる場合は、予め乳化剤を40~90℃に加温して粘度を低減することが混合の均一性が高まる観点から好ましい。
【0019】
本発明のマスキング剤100質量%中のタンパク質及びHLBが5未満の乳化剤の含有量は、デキストリン等の賦形剤を配合しない場合、タンパク質が50.0~99.0質量%、好ましくは80.0~99.0質量%、より好ましくは90.0~99.0質量%、、HLBが5未満の乳化剤が0.1~20.0質量%、好ましくは1.0~10.0質量%、より好ましくは2.0~8.0質量%である。また、デキストリン等の賦形剤を配合する場合、前記含有量は、タンパク質が10.0~90.0質量%、好ましくは15.0~70.0質量%、より好ましくは20.0~50.0質量%、HLBが5未満の乳化剤が0.02~5.0質量%、好ましくは0.2~3.0質量%、より好ましくは0.5~2.0質量%、残余を賦形剤とすることができる。
【0020】
本発明のマスキング剤中のタンパク質及びHLBが5未満の乳化剤の配合比率は、質量比(タンパク質:HLBが5未満の乳化剤)で99.98:0.02~66.67:33.33、好ましくは99.7:0.3~83.3:16.7、より好ましくは99.0:1.0~90.9:9.1である。
【0021】
本発明のマスキング剤の形態に特に制限はなく、例えば、粉末状、液状又はペースト状等が挙げられるが、安定性や使用の簡便さの面から粉末状が好ましい。
【0022】
本発明のマスキング剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で上記タンパク質及びHLBが5未満の乳化剤以外のその他の物質、例えば、賦形剤(例えば、デキストリン、乳糖等)、酸化防止剤(例えばビタミンE、ビタミンC等)、基礎調味料(例えば、食塩、砂糖等)、旨味調味料(L-グルタミン酸ナトリウム等)、タンパク加水分解物、食用エキス(例えば、畜肉エキス、野菜エキス、酵母エキス等)、香辛料、節粉、野菜(例えば、粉末野菜等)、果実(例えば、粉末果実等)、動植物油脂(例えば、粉末動植物油脂)、リン酸カリウム等のリン酸塩、クエン酸ナトリウム等のクエン酸塩、グルコン酸ナトリウム等のグルコン酸塩、色素等を配合しても良い。
【0023】
本発明のマスキング剤の使用方法に特に制限はないが、例えば、次亜塩素酸塩により処理された青果物の次亜塩素酸塩臭をマスキングする用途に好ましく用いられる。
【0024】
本発明において青果物とは、野菜類及び果実類をいい、具体的には、例えばキャベツ、レタス、白菜、小松菜、ホウレンソウ、水菜等の葉菜類、大根、ニンジン、カブ、レンコン等の根菜類、トマト、キュウリ、ピーマン、カボチャ、インゲン、ゴーヤ、ズッキーニ等の果菜類、もやし、かいわれ大根等の発芽野菜、長ねぎ、玉ねぎ、ショウガ、ニンニク、アスパラガス等の茎菜類、ブロッコリー、カリフラワー、ミョウガ等の花菜類等、シイタケ、シメジ、エリンギ、マイタケ、マツタケ等の菌茸類、バナナ、マンゴー、ウメ、リンゴ、イチゴ、ミカン、ブドウ、和梨、西洋梨等の果実類が挙げられる。
【0025】
本発明のマスキング剤の使用方法としては、次亜塩素酸塩(例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム等)により処理された青果物(次亜塩素酸塩による処理中の青果物を含む。)に本発明のマスキング剤が接触するような方法であれば特に制限はなく、例えば、(1)次亜塩素酸塩の水溶液に青果物を浸漬して処理した後、該水溶液から青果物を取り出し、本発明のマスキング剤を分散させた水分散液に浸漬することにより、次亜塩素酸塩による処理後に次亜塩素酸塩臭のマスキングを行う方法、(2)次亜塩素酸塩の水溶液に本発明のマスキング剤を分散させて得た水分散液(以下、「次亜塩素酸塩-マスキング剤水分散液」という。)を調製し、該液に青果物を浸漬することにより、次亜塩素酸塩による処理と次亜塩素酸塩臭のマスキングを同時に行う方法等が挙げられる。
【0026】
前記(1)及び(2)の方法において、次亜塩素酸塩の水溶液及び次亜塩素酸塩-マスキング剤水分散液は、有効塩素濃度が25~500ppm、好ましくは50~300ppmである。
【0027】
前記(1)及び(2)の方法において、本発明のマスキング剤の使用量は、次亜塩素酸塩による処理の程度や目的とするマスキング効果の程度等により異なるため一様ではないが、例えば、水分散液100質量%中、本発明のマスキング剤の含有量が0.01質量%~20.0質量%、好ましくは0.05質量%~10.0質量%、更に好ましくは0.1質量%~5.0質量%である。
【0028】
前記(1)の方法において、次亜塩素酸塩の水溶液に青果物を浸漬する時間は20秒~180分、好ましくは30分~180分であり、該水溶液から取り出した青果物を本発明のマスキング剤の水分散液に浸漬する時間は10秒~30分、好ましくは30秒~30分である。
【0029】
前記(2)の方法において、次亜塩素酸塩-マスキング剤水分散液に青果物を浸漬する時間は、20秒~180分、好ましくは30分~180分である。
【0030】
本発明のマスキング剤を使用した青果物は、通常の青果物と同様に利用することができ、例えば、カット野菜、カットフルーツ、冷凍野菜、冷凍フルーツ、野菜ジュース、フルーツジュース、野菜ピューレ、フルーツピューレ、サラダ、野菜いため、その他青果物を原料とするスープ、ポタージュ、シチュー、煮物等に利用することができる。
【0031】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0032】
[マスキング剤の製造]
(1)原材料
1)タンパク質
1-1)大豆タンパク(商品名:SUPRO XT-219D;粉末状;デュポン社製)
1-2)とうもろこしタンパク(商品名:小林ツェインDP-N;粉末状;小林香料社製)
2)乳化剤
2-1)ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(商品名:ポエムPR-100;液状;HLB0.5;理研ビタミン社製)
2-2)グリセリン酢酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムG-002;液状;HLB0;理研ビタミン社製)
2-3)ショ糖脂肪酸エステル(商品名:リョートーシュガーエステルS-170;粉末状;HLB約1;三菱化学フーズ社製)
2-4)ポリグリセリンステアリン酸エステル(商品名:ポエムJ-2081V;HLB6.0;粉末状;理研ビタミン社製)
2-5)ポリグリセリンラウリン酸エステル(商品名:ポエムJ-0021;HLB15.5;ペースト状;理研ビタミン社製)
3)その他原材料
デキストリン(商品名:サンデックNo.70;三和澱粉工業社製)
【0033】
(2)マスキング剤の配合
上記原材料を用いて作製したマスキング剤1~9の配合組成を表1に示した。この内、マスキング剤1~4は本発明に係る実施例であり、マスキング剤5~9はそれらに対する比較例である。
【0034】
【表1】
【0035】
(3)マスキング剤の製造方法
表1に示した配合割合に従って原材料を量りとり、フードプロセッサー(型式:MK-K48P;パナソニック社製)に入れ、1分間均一になるように撹拌及び混合し(フードプロセッサーの回転数:2,900rpm)、マスキング剤1~6各400gを得た。尚、撹拌及び混合では、液状及びペースト状の乳化剤は、予め50℃に加温したものを用いた。また、マスキング剤7~9は、原材料が1種類のみであるため、当該原材料そのものをマスキング剤とした。
【0036】
[マスキング剤の評価]
(1)次亜塩素酸塩処理後にマスキング剤処理を行う場合の官能評価試験
30mm巾にカットしたキャベツ100gを有効塩素濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液(25℃)1Lに10分間浸漬処理した。浸漬処理したカットキャベツを水道水1Lに加え、25℃で60秒間攪拌することにより洗浄した。洗浄したカットキャベツをざるに上げ1分間水切り処理を行い、マスキング剤(1~8のうちいずれか)の1質量%水分散液(25℃)1L又はマスキング剤9の0.05質量%水分散液(25℃)1Lに10分間浸漬処理した。浸漬処理したカットキャベツを水道水1Lに加え、25℃で60秒間攪拌することにより洗浄した。洗浄したカットキャベツをざるに上げ1分間水切り処理を行い、カットキャベツ100gを調製し、試験区1~9とした。これらのカットキャベツについて次亜塩素酸塩臭のマスキング効果を評価するため、マスキング剤の1質量%水分散液への浸漬処理をしなかったこと以外は試験区1~9と同様に調製したカットキャベツを基準(対照)とし、次亜塩素酸塩臭について官能試験を行った。試験では、各カットキャベツを電子レンジ(型式:ER-H3;東芝社製)で500W・1分間加熱してから表2に示す評価基準に従い10名のパネラーで評価を行い、評価点の平均値を求め、下記基準に従って記号化した。結果を表3に示す。
◎:平均値1.5未満
〇:平均値1.5以上2.5未満
△:平均値2.5以上3.5未満
×:平均値3.5以上
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
表3の結果から明らかなように、マスキング剤1~4を添加した試験区1~4では、「○」以上の結果を得たことから、本発明のマスキング剤は、次亜塩素酸塩臭のマスキング効果に優れていることが分かった。これに対し、比較例のマスキング剤5~9を添加した試験区5~9では、「△」以下の結果であり、マスキング効果が十分ではなかった。
【0040】
(2)次亜塩素酸塩処理とマスキング剤処理を同時に行う場合の官能評価試験
30mm巾にカットしたキャベツ100gを次亜塩素酸塩-マスキング剤水分散液(マスキング剤1の含有量1質量%;有効塩素濃度200ppm;25℃)1Lに10分間浸漬処理した。浸漬処理したカットキャベツを水道水1Lに加え、25℃で60秒間攪拌することにより洗浄した。洗浄したカットキャベツをざるに上げ1分間水切り処理を行い、カットキャベツ100gを調製し、試験区10とした。このカットキャベツについて次亜塩素酸塩臭のマスキング効果を評価するため、前記水分散液に替えて有効塩素濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いたこと以外は試験区10と同様に調製したカットキャベツを基準(対照)とし、次亜塩素酸塩臭について官能試験を行った。試験では、各カットキャベツを電子レンジ(型式:ER-H3;東芝社製)で500W・1分間加熱してから表4に示す評価基準に従い10名のパネラーで評価を行い、評価点の平均値を求め、下記基準に従って記号化した。結果を表5に示す。
◎:平均値1.5未満
〇:平均値1.5以上2.5未満
△:平均値2.5以上3.5未満
×:平均値3.5以上
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
表5の結果から明らかなように、マスキング剤1を添加した試験区10では、「○」の結果を得た。この結果は、次亜塩素酸塩処理とマスキング剤処理を同時に行う場合でも、本発明の効果が発揮されることを示すものである。