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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】ケースモールド型コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 2/10 20060101AFI20230623BHJP
【FI】
H01G2/10 600
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019108568
(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公開番号】P2020202304
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】森 隆志
(72)【発明者】
【氏名】熊田 英樹
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-103777(JP,A)
【文献】特開2007-189124(JP,A)
【文献】特開平08-335504(JP,A)
【文献】実開昭59-169030(JP,U)
【文献】実開昭54-026045(JP,U)
【文献】特開2010-129573(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0108945(US,A1)
【文献】特開2008-085273(JP,A)
【文献】特開2013-089654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子の両端の金属電極に一対のバスバーを接続してなるコンデンサ主要部が開口を有する外装ケースに収容され、前記コンデンサ素子および前記一対のバスバーの基部側が前記外装ケース内に充填された充填樹脂に埋入され、前記一対のバスバーの遊端側が前記外装ケースの外部に延出されてなるケースモールド型コンデンサであって、
前記コンデンサ素子は、前記両端の金属電極のうちの一方の金属電極が前記外装ケースの底面側に、他方の金属電極が前記外装ケースの開口側に向くように配置され、
前記一対のバスバーのうちの一方のバスバーは、前記コンデンサ素子の前記一方の金属電極と接続され、前記外装ケースにおけるケース側壁板の内側面に沿い、さらに屈折して前記ケース側壁板の上端面に沿って前記外装ケース外へ延出され、
前記一対のバスバーのうちの他方のバスバーは、前記コンデンサ素子の前記両端の金属電極のうちの他方の金属電極と接続され、かつ前記一方のバスバーと絶縁材を介して対向しながら前記外装ケース外に引き出され、さらに屈折して前記ケース側壁板の上端面との間に前記絶縁材と前記一方のバスバーとが介在した状態で前記外装ケース外へ延出され、
前記ケース側壁板の上端面は平面で構成されて、前記一方のバスバーと第1の微小隙間を隔てた状態で対向し、
前記一方のバスバーは前記ケース側壁板の内側面と第2の微小隙間を隔てた状態で対向し、
前記第1および第2の微小隙間は、前記外装ケース内の充填樹脂に対する毛細管現象を生じさせる連続した隙間を形成し、
前記第2の微小隙間での毛細管現象により吸い上げられ、次いで前記第1の微小隙間での毛細管現象により前記外装ケース外に吸い出され、前記ケース側壁板の外側面に対応する位置で前記第1の微小隙間から漏れ出して流下する充填樹脂を受け止める樹脂溜め部が、前記ケース側壁板の外側面よりも外方に臨む姿勢で前記ケース側壁板に設けられていることを特徴とするケースモールド型コンデンサ。
【請求項2】
前記樹脂溜め部は、前記一方のバスバーが前記ケース側壁板の上端面に対向している領域に対応して水平方向に延在して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項3】
前記外装ケースは樹脂成形体であって、前記樹脂溜め部は、前記ケース側壁板に対して同じ樹脂成形体によって一体的に構成されている請求項1または請求項2に記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項4】
前記樹脂溜め部は、板状体で構成され、その板状体の先端部が前記ケース側壁板への付け根部よりも高い位置に位置する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項5】
前記樹脂溜め部は、前記ケース側壁板の上端面の下方近傍位置を含む上端側に設けられている請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のケースモールド型コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ素子からバスバーが引き出されたコンデンサ主要部を外装ケースに収容し、樹脂モールドしたケースモールド型コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ケースモールド型コンデンサは、コンデンサ素子の正負一対の電極に外部接続用のバスバーの一方端(基部側)が接続され、コンデンサ素子およびバスバーの一部が外装ケース内に収容される。外装ケース内に充填固化したモールド樹脂によってコンデンサ素子およびバスバーの一方端が埋入され、他方端がモールド樹脂から引き出されて外部接続端子部となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-129573号公報(特許第5257677号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一対のバスバーのうち少なくとも一方のバスバーはその一部が外装ケースにおけるケース側壁板に近接して配置される関係で、バスバーとケース側壁板との微小隙間における毛細管現象が生じ、液状の充填樹脂が外部に溢れ出す傾向がある。
【0005】
バスバーにおける外部接続端子部がケース側壁板の上端面と対向する領域でのクリアランス(離間寸法)が毛細管現象を起こさせる程度に小さいと、充填樹脂の溢れ出しが激しくなり、外装ケースの外部近傍にある治具などが溢れ出した充填樹脂の付着・固化のために使用不能になってしまうという問題があった。
【0006】
クリアランスを大きく確保すれば上記の問題は回避することができる反面、バスバーが必要以上に長いものとなってしまい、高背化(縦方向への大型化)のためにスイッチング速度など回路特性の劣化につながるインダクタンスの増大を引き起こすという問題があった。
【0007】
低インダクタンス化のためにコンデンサを小型化するには、ケースの上端とバスバー間のクリアランスを可能な限り小さくすることが求められる。しかし、クリアランスを小さくすると、樹脂注入時に毛細管現象により充填樹脂がバスバーの立ち上げ板部に沿って這い上がりケース外部に漏れ出し、外装ケースの外部近傍にある治具などが充填樹脂の付着・固化によって使用不能になるおそれがある。そこで、漏れ出す充填樹脂を受け止める構造が必要となる。
【0008】
特許文献1では、外装ケースにおけるケース側壁板の肉厚内部に樹脂受け溝部を設けて、毛細管現象を利用することによりその樹脂受け溝部へ充填樹脂を引き込む構造となっている。その樹脂受け溝部は、外部接続端子部とケース側壁板の上端面が交差する部分のケース側壁板に、ケース側壁板の上端面に開口するとともに底部側に凹入する形態となっている。そして、この構成によって、毛細管現象を利用して外部接続端子部とケース側壁板との間の微小隙間に吸い上げられた充填樹脂を、引き続いての毛細管現象によって樹脂受け溝部の内部に導くようになっている。
【0009】
しかし、ケース側壁板の肉厚内部に樹脂受け溝部を設けると、そのケース側壁板は必然的に板厚が厚くなり、ケースの大型化・重量化を招くばかりか、外装ケース自体の成形時に樹脂ヒケ(成形体表面の凹み)やボイド(未含浸部)の発生が懸念される。すなわち、空洞である樹脂受け溝部のない領域ではケース側壁板の中実の肉厚はより太くなっている。肉厚が大きいと充填樹脂が浸入していくべき空間容積が拡大されることになるが、容積が大きすぎると、充填樹脂が隅々にまで行き渡らないことになり、ヒケ・ボイドが発生する。樹脂受け溝部のある領域では、対向する二重壁薄板の間に形成される空間(つまり樹脂受け溝部)に入り込む部分金型(入れ子)が相当に肉厚の薄いものとなるため、使用する成形金型の強度が弱いものとなり、破損しやすく耐久性が低い金型となってしまう。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みて創作したものであり、ケースモールド型コンデンサに関して、〔1〕毛細管現象によって吸い上げられてくる充填樹脂の溢れ出しの防止と〔2〕低背化による小型化と低インダクタンス化の促進の二律背反(従来認識)を両立できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、次の手段を講じることにより上記の課題を解決する。
【0012】
本発明によるケースモールド型コンデンサは、
コンデンサ素子の両端の金属電極に一対のバスバーを接続してなるコンデンサ主要部が開口を有する外装ケースに収容され、前記コンデンサ素子および前記一対のバスバーの基部側が前記外装ケース内に充填されたモールド樹脂に埋入され、前記一対のバスバーの遊端側が前記外装ケースの外部に延出されてなるケースモールド型コンデンサであって、
前記一対のバスバーの少なくとも一方のバスバーは、前記外装ケースにおけるケース側壁板の内側面に沿い、さらに屈折して前記ケース側壁板の上端面に沿ってケース外へ延出され、
前記少なくとも一方のバスバーと前記ケース側壁板の内側面との間の微小隙間での毛細管現象により吸い上げられ、前記ケース側壁板の外側面に対応する位置で当該ケース側壁板の前記上端面と前記少なくとも一方のバスバーとの対向間隙から漏れ出して流下する充填樹脂を受け止める樹脂溜め部が、前記ケース側壁板の前記外側面よりも外方に臨む姿勢で前記ケース側壁板に設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明の上記の構成によれば、次のような作用が発揮される。
【0014】
上記における「少なくとも一方のバスバー」は、外装ケース内に注入充填された充填樹脂が、当該のバスバーとケース側壁板の内側面との間の微小隙間での毛細管現象によって吸い上げの作用を起こすバスバーである。このバスバーはさらに屈折してケース側壁板の上端面に沿ってケース外へ延出されており、充填樹脂はケース側壁板の上端面と当該のバスバーとの対向間隙から漏れ出し、流下する。この流下する充填樹脂を樹脂溜め部によって受け止める。
【0015】
このようにして漏れ出した充填樹脂を樹脂溜め部によって受け止めるので、充填樹脂の付着・固化により外装ケースの外部近傍にある治具などが使用不能になるといった不都合を回避することが可能となる。
【0016】
一方、ケース側壁板の上端面に対するバスバーのクリアランスを充分に小さくして低背化を実現するので、ケースモールド型コンデンサの小型化とバスバーの短縮化による低インダクタンス化とをともに満足させることが可能となる。
【0017】
さらに、流下してくる充填樹脂を受け止める機能の樹脂溜め部はケース側壁板の外側面よりも外方に臨む姿勢で設けられていて、ケース側壁板自体の板厚の増大化を伴うものではないので、副次的な作用として、外装ケース自体を射出成形する際の、太い板厚に起因する成形樹脂のヒケ・ボイドの発生を抑制する上で有効である(樹脂溜め部の形成においてケース側壁板の板厚を必要以上に厚肉化する必要がないため)。同様の理由により、成形金型の入れ子やコアなどの構成部品の強度不足を招かずにすみ、金型耐久性の確保に有利に作用する。
【0018】
上記構成の本発明のケースモールド型コンデンサには、次のようないくつかの好ましい態様ないし変化・変形の態様がある。
【0019】
〔1〕樹脂溜め部は、前記少なくとも一方のバスバーが前記ケース側壁板の上端面に対向している領域に対応して水平方向に延在して形成されている、という態様がある。この構成によれば、充填樹脂が対向間隙のどの位置から流下してきても、樹脂溜め部によって確実に受け止めることができる。
【0020】
〔2〕前記外装ケースは樹脂成形体であって、前記樹脂溜め部は、前記ケース側壁板に対して同じ樹脂成形体によって一体的に構成されている、という態様がある。
【0021】
これは、外装ケースにおけるケース側壁板に樹脂溜め部を設けるに当たり、その樹脂溜め部付きの外装ケースの全体を樹脂の射出成形によって一連一体に構成する、というものである。樹脂溜め部はケース側壁板の外側面よりも外方に臨む姿勢で設けられるので、ケース側壁板の肉厚内部に樹脂受け溝部を凹入形成するような従来例に比べて、樹脂溜め部付きの外装ケース全体の構造・形状がより簡単であり、樹脂溜め部付きの外装ケースの作製を容易化する上で有利に作用する。
【0022】
〔3〕また、前記樹脂溜め部は、板状体で構成され、その板状体の先端部が前記ケース側壁板への付け根部よりも高い位置に位置する、という態様がある。この場合、樹脂溜め部を構成する板状体の厚みはケース側壁板の厚みとほぼ同じかそれよりやや小さめとするのがより好ましい。
【0023】
樹脂溜め部を外装ケースに形成するに当たり、その先端部を付け根部よりも高くすることによって形状・構造の簡素化を図りながら、流下してくる充填樹脂を確実に樹脂溜め部に溜めることができる。その結果、充填樹脂の樹脂溜め部外への流出を防止しながら、ケース側壁板と樹脂溜め部を含めて外装ケースの全体を樹脂の射出成形で一体的に構成することが容易に行える。
【0024】
なお、前記樹脂溜め部のケース側壁板における高さ位置については、任意的に定めてよきものとする。すなわち、前記樹脂溜め部は、前記ケース側壁板の上端面の下方近傍位置を含む上端側に設けられているのでもよいし、あるいは前記ケース側壁板の上下幅のほぼ中間位置、あるいは前記ケース側壁板の下端近傍位置に設けられているのでもよい。
【0025】
また、前記一対のバスバーは、互いに近接する状態で並行的に対向して配置されているとともに、両者の対向間隙部に両者間の電気的絶縁のためのシート状の絶縁材を挿入介在させている、という態様がある。
【0026】
このように構成すれば、一対のバスバーどうし間の電気的絶縁を確保しながらも、両バスバーが占める空間を小さくし、両バスバーの低背化によるケースモールド型コンデンサのより一層の小型化と低インダクタンス化とを図ることが可能となる。
【0027】
なお、一対のバスバー間に絶縁材を介在させない態様の構成も本発明は含み得るものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ケース側壁板の上端面とバスバーとの対向間隙から漏れ出し、ケース側壁板の外側面を流下する充填樹脂を樹脂溜め部によって確実に受け止めるように構成してあるので、外装ケースの外部近傍にある治具などに充填樹脂が付着・固化するのを回避しながら、低背化による小型化と低インダクタンス化を図ることができ、併せて、ヒケ・ボイドを発生させない外装ケースの射出成形と成形金型の強度不足の防止とを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施例におけるケースモールド型コンデンサの斜視図(モールド樹脂の透視状態)
図2】本発明の実施例におけるケースモールド型コンデンサの平面図
図3】本発明の実施例におけるケースモールド型コンデンサの縦断側面図
図4】本発明の実施例におけるケースモールド型コンデンサの分解状態の斜視図
図5】本発明の実施例におけるケースモールド型コンデンサの斜視図(外観図)
図6】本発明の別の実施例におけるケースモールド型コンデンサの斜視図(外観図)
図7】本発明のさらに別の実施例におけるケースモールド型コンデンサの斜視図(外観図)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、上記構成の本発明のケースモールド型コンデンサにつき、その実施の形態を具体的な実施例のレベルで詳しく説明する。まず、基本的な実施例を図1図5を用いて説明する。
【0031】
図において、1はコンデンサ素子、2は第1のバスバー,3は第2のバスバー、4はシート状の絶縁材、5はコンデンサ主要部、6は外装ケース、7はモールド(充填)樹脂である。複数のコンデンサ素子1と一対のバスバー2,3と絶縁材4とでコンデンサ主要部5が構成されている。一対のバスバー2,3における立ち上げ板部2b,3bおよび外部接続端子部2c,3cは互いに近接する状態で並行的に対向して配置されているとともに、両者の対向間隙部に両者間の電気的絶縁のための絶縁材4を挿入介在させている。
【0032】
コンデンサ素子1は、その軸方向が上下方向となるように置かれている。コンデンサ素子1の軸方向の下端面における電極(一方の電極、例えばP極(陽極))1aに第1のバスバー2の一方端が接続され、軸方向の上端面における電極(他方の電極、例えばN極(陰極))1bに第2のバスバー3の一方端が接続されている。これら一対のバスバー2,3はそれぞれ、その全体が1枚物の銅板などの導電性金属の薄板で全体的にクランク形を呈するように折り曲げられ、一方端側に基部2a,3a、他方端側に外部接続端子部2c,3cおよび基部2a,3aと外部接続端子部2c,3cとの間に立ち上げ板部2b,3bを有している。
【0033】
立ち上げ板部2b,3bのそれぞれは基部2a,3aに対してほぼ直角に折り曲げられ、外部接続端子部2c,3cのそれぞれは立ち上げ板部2b,3bに対してほぼ直角に折り曲げられている。外部接続端子部2c,3cの先端部には幅狭な締結用舌片部2c1 ,3c1 が突出し、これら締結用舌片部2c1 ,3c1 には締結用ネジを挿通するための締結孔2d,3dが形成されている。
【0034】
第1のバスバー2はその水平姿勢の基部2aがコンデンサ素子1の下面側の電極1aに重ね合わされ、第2のバスバー3はその水平姿勢の基部3aがコンデンサ素子1の上面側の電極1bに重ね合わされ、基部2a,3aから一体的に突出された接続用小突片がはんだ付けにより電極1a,1bに電気的かつ機械的に接続されている。
【0035】
絶縁材4は例えば1枚物の板状体がL字状に折り曲げられた鉛直板部4aと水平板部4bとを有している。第1のバスバー2の立ち上げ板部2bと第2のバスバー3の立ち上げ板部3bとは互いに平行な鉛直姿勢で対向するように近接配置され、これら一対の立ち上げ板部2b,3bの間には絶縁材4の鉛直板部4aが挿入介在されている。第1のバスバー2の外部接続端子部2cの幅の大きい基部と第2のバスバー3の外部接続端子部3cの幅の大きい基部とは互いに平行な水平姿勢で対向するように近接配置され、これら一対の幅の大きい基部の間には絶縁材4の水平板部4bが挿入介在されている。絶縁材4は、一対のバスバー2,3において互いに対向する立ち上げ板部2b,3bおよび外部接続端子部2c,3cの重なり領域の全幅範囲を含めてその両サイドまで延在する範囲にわたる状態に配置されている(この様子は図2(平面図)に現れている)。
【0036】
外部接続端子部2cにおける幅の小さい締結用舌片部2c1 は一側方端部に片寄って配置され、外部接続端子部3cにおける幅の小さい締結用舌片部3c1 は他側方端部に片寄って配置されている。締結用舌片部2c1 と締結用舌片部3c1 とは重なり合うことはなく、これらの部分には絶縁材4の水平板部4bは介在されない。
【0037】
絶縁材4としては、樹脂製の板状部材が用いられるが、板状の絶縁部材に代えて絶縁紙等のシート状の絶縁部材を用いてもよく、絶縁性を有していれば材質は任意である。絶縁材4としては、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)が用いられる。
【0038】
外装ケース6は直方体を呈して上方への開口6aを有しており、樹脂で成形されている。外装ケース6はケース底板部6bと四面のケース側壁板6cとを有し、1つのケース側壁板6cの外側面6c2 に樹脂溜め部6dが連接されている。
【0039】
外装ケース6の内部に、コンデンサ主要部5におけるコンデンサ素子1と一対のバスバー2,3の一方端側(外部接続端子部を除く基部の全体と立ち上げ板部の一部)と絶縁材4の鉛直板部4aの一部が収容され、エポキシ樹脂等のモールド樹脂7によって固定化されている。モールド樹脂7は、外装ケース6の開口6aの高さ位置よりやや低い位置まで充填されている。コンデンサ素子1やバスバー2,3の固定化において、コンデンサ素子1の姿勢は外装ケース6に対して図示の通りの所定の平行性、直交性を確保する状態で行われている。
【0040】
一対のバスバー2,3の遊端側である水平姿勢の外部接続端子部2c,3cは外装ケース6におけるケース側壁板6cの外部に延出されている。
【0041】
一対のバスバー2,3のうちの下位の第1のバスバー2における鉛直姿勢の立ち上げ板部2bは外装ケース6におけるケース側壁板6cの内側面6c1 に対して微小隙間を隔てて沿う姿勢となっている。この微小隙間が充填樹脂に対する毛細管現象の発生原因となる。立ち上げ板部2bの上端部をさらに水平に屈折した水平姿勢の外部接続端子部2cはケース側壁板6cの上端面6c3 に対して微小隙間を隔てて沿う姿勢となっている。この微小隙間もその出口まで毛細管現象の発生原因となる。
【0042】
下位の第1のバスバー2における鉛直姿勢の立ち上げ板部2bはケース側壁板6cの内側面6c1 に対して鉛直の微小隙間を介して沿う状態に配置されている関係で、固化後のモールド樹脂7の元である液状の充填樹脂を外装ケース6にその開口6aから注入充填したときに、充填樹脂の一部がその鉛直方向に延びる微小隙間での毛細管現象により吸い上げられる。さらに、水平姿勢の外部接続端子部2cがケース側壁板6cの上端面6c3 に対して水平方向に延びる微小隙間を介して沿う状態に配置されている関係で、前記の毛細管現象で吸い上げられた充填樹脂はその鉛直方向に延びる微小隙間での毛細管現象によりさらに水平方向外方へ吸い出される。水平方向に延びる微小隙間が途切れた位置すなわちケース側壁板6cの外側面6c2 に対応する位置(そこでは毛細管現象も途切れる出口の位置)からは、漏れ出した充填樹脂は重力によってケース側壁板6cの外側面6c2 に沿って流下する。
【0043】
このように毛細管現象が途切れ、重力によって流下する充填樹脂をケース側壁板6cの外側面6c2 に連接した樹脂溜め部6dが受け止めて溜めてゆく。
【0044】
樹脂溜め部6dは、ケース側壁板6cに対して外側面6c2 よりもさらに外方に臨む姿勢で設けられ、かつ第1のバスバー2がケース側壁板6cの上端面6c1 に対向している領域に対して樹脂溜め部6dは水平方向で位置対応して延在している。樹脂溜め部6dの構成を以下、具体的に説明する。
【0045】
樹脂溜め部6dはほぼ一定厚さの板状体で構成されている。その板状体の水平方向幅は溢れ出した充填樹脂が重力によって流下する可能性のある水平方向領域をカバーするに足るだけの幅に設定されている。本実施例では、下位の第1のバスバー2における外部接続端子部2cの幅の大きい基部の全幅範囲からその両外側にそれぞれ所定寸法延長した水平範囲にわたるように樹脂溜め部6dが配置されている。
【0046】
樹脂溜め部6dを構成する板状体は、その先端部(遊端部)がケース側壁板6cへの付け根部(基端部)よりも高い位置に位置する状態に構成されている。すなわち、付け根部を下位とし先端部を上位として、適当な仰角(水平線と下位から上位に向かう視線とのなす角度)で傾斜する平板状の板状体を有し、その板状体の水平方向両端部には流下防止用の堰板6d1 ,6d1 が連接されている。
【0047】
この実施例では、樹脂溜め部6dの縦断面形状は斜め上方に延出する直線的な平板状のものであったが、流下してくる充填樹脂を受け止めて溜める機能を有するものであればどのような断面形状のものであってもよい。例えば、付け根部より水平方向外方に延在し、さらに鉛直方向上方へ延出するようなL字状の断面形状、あるいは単に付け根部より水平方向外方に延出する断面形状であってもよい。樹脂溜め部6dは、毛細管現象により這い上がった充填樹脂が微小隙間の出口から重力によって垂れ落ちるのを受け止めているだけで、従来例(特許文献1に開示された構成)のように毛細管現象によって充填樹脂を導き入れるようなものではない。
【0048】
樹脂溜め部6dは、ケース側壁板6cにおける連接位置がケース側壁板6cの上端面6c3 の下方直近位置に設定されている。なお、樹脂溜め部6dは、ケース側壁板6cにおける連接位置が図6に示すように、ケース側壁板6cの上下幅のほぼ中間位置に設定されていてもよい。あるいは、樹脂溜め部6dは、ケース側壁板6cにおける連接位置が図7に示すように、ケース側壁板6cの下端近傍位置に設定されていてもよい。
【0049】
なお、上記の実施例では、外装ケース6を樹脂成形体とし、樹脂溜め部6dも同じ樹脂成形体として、射出成形により樹脂溜め部6d付きの外装ケース6を一発成形するように構成したが、変形例として、樹脂溜め部6dは外装ケース6とは別体とし、外装ケース6に対して樹脂溜め部6dを取り付けるようにしてもよい。その取り付けの手段としては、接着、ネジ止め、スポット溶接など任意である。また、外装ケース6(ケース側壁板6c)の構成材料と樹脂溜め部6dの構成材料については、同種の合成樹脂に限定されるものではなく、異種の合成樹脂の組み合わせ、合成樹脂と金属との組み合わせ(いずれが合成樹脂でいずれが金属であってもよい)など、その組み合わせは任意である。
【0050】
なお、上記実施例では、コンデンサ主要部5におけるコンデンサ素子1の個数を2個としているが、その個数については、2個以上の任意の複数でよく、あるいは単数でもかまわない。上記の実施例では、一対のバスバー2,3のうち下位の第1のバスバー2の立ち上げ板部2bがケース側壁板6cの内側面6c1 に対して微小隙間を介して沿うように構成されたが、これに代えて、上位の第2のバスバー3の立ち上げ板部3bがケース側壁板6cの内側面6c1 に対して微小隙間を介して沿うように構成してもよいし、あるいは両方の立ち上げ板部2b,3bがともにケース側壁板6cの内側面6c1 に対して微小隙間を介して沿うように構成してもよい。なお、絶縁材4は省略される場合もある。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、ケースモールド型コンデンサに関して、ケース側壁板とバスバーとの微小隙間に起因した毛細管現象で漏れ出し、重力によって流下する充填樹脂が外装ケースの外部近傍にある治具などに付着・固化する不都合を回避するとともに、低背化による小型化と低インダクタンス化を実現する技術として有用である。
【符号の説明】
【0052】
1 コンデンサ素子
1a,1b 電極
2 第1のバスバー
3 第2のバスバー
4 絶縁材
5 コンデンサ主要部
6 外装ケース
6a 開口
6c ケース側壁板
6c1 内側面
6c2 外側面
6c3 上端面
6d 樹脂溜め部
7 モールド(充填)樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7