(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】パイロットガバナ、及びそれを備えた逆作動型整圧装置
(51)【国際特許分類】
   G05D  16/16        20060101AFI20230623BHJP        
   F16K  17/30        20060101ALI20230623BHJP        
   F16K  31/128       20060101ALI20230623BHJP        
【FI】
G05D16/16 Z 
F16K17/30 A 
F16K31/128 
(21)【出願番号】P 2019135656
(22)【出願日】2019-07-23
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高野  雅之
【審査官】今井  貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-182718(JP,A)      
【文献】特開2015-103013(JP,A)      
【文献】特開2006-285660(JP,A)      
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D    16/00-16/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  逆作動型整圧装置として用いるパイロットガバナであって、
  筐体と第1ダイヤフラムとにより区画され二次側圧力導入路が連通接続される第1室と、前記筐体と前記第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムとにより区画され外部へ開放される開放孔が前記筐体に形成される第2室と、前記筐体と前記第2ダイヤフラムと第3ダイヤフラムとにより区画され一次側圧力導入路が連通接続されると共にメインガバナの駆動圧室に駆動圧を導入する駆動圧導入路が連通接続される第3室と、前記第3ダイヤフラムを前記第3室の側へ付勢する第1付勢部材とを備え、
  前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムと前記第3ダイヤフラムとを変位方向で同一の変位量となるよう連結する連結部材と、
  前記変位方向において前記第2ダイヤフラムの側から前記一次側圧力導入路の導入端である一次側圧力導入端へ向けて第2付勢部材により付勢されて、前記一次側圧力導入端を開閉して前記一次側圧力導入端から前記第3室へ導入される一次側流体の流入量を調整する排気弁と、
  当該排気弁に連結されると共に、前記第2ダイヤフラムに形成される開孔を開閉して前記第3室の側から前記第2室の側へ逃がす排出量を調整する開放弁とを備えるパイロットガバナ。
【請求項2】
  前記連結部材は、内部が中空の中空部材から構成されている請求項1に記載のパイロットガバナ。
【請求項3】
  前記第1室に対して周期圧力振動を付与する圧力振動付与部と、
  前記第1室に導入される前記周期圧力振動を伴う模擬二次圧を計測可能な第1圧力計測部と、
  前記駆動圧導入路に導入される前記駆動圧を計測可能な第2圧力計測部とを備える請求項1又は2に記載のパイロットガバナ。
【請求項4】
  前記第1圧力計測部にて計測された前記第1室に導入される模擬二次圧振動の振幅及び位相と、前記第2圧力計測部にて計測された前記駆動圧導入路に導入される駆動圧振動の振幅及び位相とに基づいて周波数応答解析を実行する制御装置を備える請求項3に記載のパイロットガバナ。
【請求項5】
  請求項1~4の何れか一項に記載のパイロットガバナを備えた逆作動型整圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、逆作動型整圧装置として用いるパイロットガバナ、及びそれを備えた逆作動型整圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
  従来、二次圧が設定圧力よりも上昇・降下した場合に、メインガバナの主弁体の変位を制御できる整圧装置として、逆作動型整圧装置と、それに用いられるパイロットガバナが知られている(特許文献1を参照)。
  一方で、制御システムを解析する一つの手法として、正弦波等の入力に対する応答から制御特性を調べる周波数応答解析が知られている。当該周波数応答解析は、電気系・メカトロ系システムで使用される場合が多いが、電気を必要としないフィードバック制御装置であるパイロットガバナ等の整圧器にも当然のことながら適用可能である。例えば、パイロット式ガバナにおいては、入力信号をパイロットに入力する二次圧、出力信号を本体弁下流側配管の二次圧として、パイロットガバナ単体においては、入力信号を二次圧、出力信号を駆動圧として、種々の周波数での入力に対する周波数応答解析を行うことにより、系の安定性を判定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
  さて、上述の如く、パイロット式ガバナもしくはパイロットガバナの周波数応答解析を行う場合、周期振動である正弦波等を入力信号として二次圧検知室へ付与する必要がある。しかしながら、特許文献1に示されるような一般に知られる逆作動型整圧装置に用いられるパイロット式ガバナもしくはパイロットガバナは、二次圧検知室に対して駆動圧室から排出された駆動圧が流入してくるため、正確な正弦波を入力信号として付与することができない。例えば、二次圧検知室に連通接続される二次側圧力導入路の管路抵抗を減らすことにより、当該二次側圧力導入路からの駆動圧排出抵抗を小さくできる。しかしながら、当該方法では、二次圧検知室を気密に構成し、その体積を強制的に変化させて圧力として正弦波を与えるような方法は適用できなくなる。
【0005】
  本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、入力として実際の圧力正弦波等を適切に投入できると共にその出力応答としての駆動圧を計測でき、それらの値から制御特性を解析する周波数応答解析を実行可能な逆作動型整圧装置のパイロットガバナ、及びそれを備えた逆作動型整圧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
  上記目的を達成するためのパイロットガバナは、
  逆作動型整圧装置として用いるパイロットガバナであって、その特徴構成は、
  筐体と第1ダイヤフラムとにより区画され二次側圧力導入路が連通接続される第1室と、前記筐体と前記第1ダイヤフラムと第2ダイヤフラムとにより区画され外部へ開放される開放孔が前記筐体に形成される第2室と、前記筐体と前記第2ダイヤフラムと第3ダイヤフラムとにより区画され一次側圧力導入路が連通接続されると共にメインガバナの駆動圧室に駆動圧を導入する駆動圧導入路が連通接続される第3室と、前記第3ダイヤフラムを前記第3室の側へ付勢する第1付勢部材とを備え、
  前記第1ダイヤフラムと前記第2ダイヤフラムと前記第3ダイヤフラムとを変位方向で同一の変位量となるよう連結する連結部材と、
  前記変位方向において前記第2ダイヤフラムの側から前記一次側圧力導入路の導入端である一次側圧力導入端へ向けて第2付勢部材により付勢されて、前記一次側圧力導入端を開閉して前記一次側圧力導入端から前記第3室へ導入される一次側流体の流入量を調整する排気弁と、
  当該排気弁に連結されると共に、前記第2ダイヤフラムに形成される開孔を開閉して前記第3室の側から前記第2室の側へ逃がす排出量を調整する開放弁とを備える点にある。
【0007】
  上記特徴構成を有する3枚のダイヤフラムを有するパイロットガバナは、従来から逆作動型整圧装置として一般的に用いられている2枚のダイヤフラムを有するパイロットガバナと異なる構成を有するが、両者とも、二次圧が上昇すると、すべてのダイヤフラムが下降して、駆動圧が排出(3枚ダイヤフラムの構成の場合には第2室を介して外部へ排出、2枚ダイヤフラムの構成の場合には二次圧検知室へ排出)され、二次圧が低下すると、駆動圧がメインガバナに供給される構成となるため、基本的には、二枚のダイヤフラムを有するパイロットガバナと同様の周波数応答特性を示すものと考えられる。
  更に、上記特徴構成を有するパイロットガバナによれば、開放弁を介して第3室から逃がされる排出圧は、第2室へ導かれ第1室へは導かれることはないから、第1室では、当該排出圧に乱されることのない入力として二次圧を導入できる。
  結果、上記特徴構成を有するパイロットガバナは、一般的に用いられる逆作動型整圧装置のパイロットガバナの周波数応答特性と略同等の特性が得られるパイロットガバナとして活用することができる。
  従って、入力として実際の圧力正弦波等を適切に投入できると共にその出力を駆動圧として、それらの値から制御特性を解析する周波数応答解析を実行可能な逆作動型整圧装置のパイロットガバナを実現できる。
【0008】
  尚、上記特徴構成を有するパイロットガバナは、上述したような従来のパイロットガバナの周波数応答特性を知るための検証用として用いることができる他、逆作動型整圧装置のパイロットガバナとして実用に供することもできる。
【0009】
  本発明に係るパイロットガバナの更なる特徴構成は、
  前記連結部材は、内部が中空の中空部材から構成されている点にある。
【0010】
  本発明に係るパイロットガバナにおいては、3枚のダイヤフラムを連結する連結部材を備える必要があり、当該連結部材は、従来の2枚のダイヤフラムを有するパイロットガバナのダイヤフラムを連結する連結部材よりも、ダイヤフラムの変位方向で大型化する場合が想定される。
  上記特徴構成によれば、連結部材を内部が中空に加工された中空部材から構成することで、軽量化を図ることができ、仮に大型になる場合であっても、重量の増加を抑制して、重量増加に伴う周波数応答特性の変動を抑制できる。
【0011】
  本発明に係るパイロットガバナの更なる特徴構成は、
  前記第1室に対して周期圧力振動を付与する圧力振動付与部と、
  前記第1室に導入される前記周期圧力振動を伴う模擬二次圧を計測可能な第1圧力計測部と、
  前記駆動圧導入路に導入される前記駆動圧を計測可能な第2圧力計測部とを備える点にある。
【0012】
  上記特徴構成によれば、第1室に対して圧力振動付与部により周期圧力振動を、模擬の二次圧として入力でき、第1圧力計測部にて計測した周期圧力振動と、当該周期圧力振動に伴って発生し第2圧力計測部にて計測される駆動圧とから、パイロットガバナの周波数を応答解析を実行できる。
  そして、例えば、複数の周波数毎に、周期圧力振動を伴う模擬二次圧振動の振幅及び位相と、駆動圧振動の振幅及び位相とからボード線図を作成することで、ゲイン余裕及び位相余裕を導出し、それらの値から、系の安定性を好適に判定できる。
  尚、当該判定は、実測に基づいた解析による判定であるため、種々の仮定を前提とする数値解析に基づく方法に比べ、より実態に即した判定を行うことができる。
【0013】
  本発明に係るパイロットガバナとしては、
  前記第1圧力計測部にて計測された前記第1室に導入される模擬二次圧振動の振幅及び位相と、前記第2圧力計測部にて計測された前記駆動圧導入路に導入される駆動圧振動の振幅及び位相とに基づいて周波数応答解析を実行する制御装置を備えることが好ましい。
【0014】
  ただし、本発明のパイロットガバナは、制御装置を設けていなくても、第1圧力計測部や第2圧力計測部の計測値を、他の演算装置にて解析するような構成を採用しても構わない。
【0015】
  上記目的を達成するための整圧装置の特徴構成は、これまで説明してきたパイロットガバナを備える点にある。
【0016】
  上記特徴構成によれば、これまで説明してきたパイロットガバナが奏する特異な作用効果を良好に発揮する逆作動型整圧装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
            【
図1】本発明の実施形態に係るパイロットガバナの概略構成図である
 
            【
図2】本発明の実施形態に係るパイロットガバナが作動する場合の作用図である
 
            【
図3】パイロットガバナへの入力としての周期圧力振動を伴う模擬二次圧のグラフ図、及び出力としての駆動圧のグラフ図である
 
          
【発明を実施するための形態】
【0018】
  本発明の実施形態に係るパイロットガバナ100、及びそれを備えた逆作動型整圧装置200は、入力として実際の圧力正弦波等を適切に投入できると共にその出力応答としての駆動圧を計測でき、それらの値から制御特性を解析する周波数応答解析を実行可能なものに関する。
【0019】
  逆作動型整圧装置200は、
図1に示すように、流体流路L0の二次圧を設定圧力に調整する逆作動型のメインガバナ10と、そのメインガバナ10へ駆動圧を導入するパイロットガバナ100とを備えて構成されている。
 
【0020】
  メインガバナ10は、ダイヤフラムプレート14に沿って設けられる主ダイヤフラムD0を備えており、その内部空間が主ダイヤフラムD0にて第5室H5と第6室H6とに区画されている。そして、メインガバナ10は、流体流路L0に設けられる主開口部K0を開閉する主弁体V0を備えており、この主弁体V0は連結棒16にて主ダイヤフラムD0と連結され主ダイヤフラムD0と連動して動く形態で、開閉される構成となっている。また、第5室H5には、主ダイヤフラムD0を主弁体V0の閉弁方向側に付勢する主付勢バネG0が配設されている。
【0021】
  パイロットガバナ100は、筐体Kと第1ダイヤフラムD1とにより区画され二次側圧力導入路L2が連通接続される第1室H1と、筐体Kと第1ダイヤフラムD1と第2ダイヤフラムD2とにより区画され外部へ開放される開放孔K1が筐体Kに形成される第2室H2と、筐体Kと第2ダイヤフラムD2と第3ダイヤフラムD3とにより区画され一次側圧力導入路L1が連通接続されると共にメインガバナ10の第6室H6(駆動圧室の一例)に駆動圧を導入する駆動圧導入路L4が連通接続される第3室H3と、第3ダイヤフラムD3を第3室H3の側へ付勢する第1付勢部材G1と、第1ダイヤフラムD1と第2ダイヤフラムD2と第3ダイヤフラムD3とを変位方向(
図1で矢印Z方向)で同一の変位量となるよう連結する連結部材Rと、変位方向において第2ダイヤフラムD2の側から一次側圧力導入路L1の導入端である一次側圧力導入端L1aへ向けて第2付勢部材G2により付勢されて、一次側圧力導入端L1aを開閉して一次側圧力導入端L1aから第3室H3へ導入される一次側流体の流入量を調整する排気弁V1と、当該排気弁V1に連結されると共に、第2ダイヤフラムD2に形成される開孔DP2aを開閉して第3室H3の側から第2室H2の側へ逃がす排出量を調整する開放弁V2とを有する。
  ここで、駆動圧導入路L4は、流路径を絞る絞り39を有する第3流体流路L3を介して、二次側圧力導入路L2に連通接続されている。また、第1付勢部材G1の第3ダイヤフラムD3と逆側の基端側端部は、筐体Kの内周面に設けられた雌螺子部G2bに螺合する形態で設けられる受け皿G2aに当接しており、当該受け皿G2aは雌螺子部G2bへ螺合しながら回転することで、変位方向(
図1で矢印Z方向)に移動自在に構成されている。
 
【0022】
  尚、第1ダイヤフラムD1には第1ダイヤフラムプレートDP1が設けられ、第2ダイヤフラムD2には第2ダイヤフラムプレートDP2が設けられ、第3ダイヤフラムD3には第3ダイヤフラムプレートDP3が設けられており、連結部材Rは、第1ダイヤフラムプレートDP1と第2ダイヤフラムプレートDP2と第3ダイヤフラムプレートDP3とを連結する形態で設けられている。
【0023】
  上述の構成において第1付勢部材G1及び第2付勢部材G2の付勢力を適切に設定することで、流体流路L0の二次圧P2が設定圧力よりも昇圧した場合、
図2(a)に示すように、第1室H1の圧力が昇圧することにより、第1付勢部材G1の付勢力に抗して、第1ダイヤフラムD1と第2ダイヤフラムD2と第3ダイヤフラムD3とが第1付勢部材G1の側へ変位する。これにより、排気弁V1が閉じ側へ動作されると共に開放弁V2が開き側へ動作され、第3室H3への一次圧P1の導入が停止されると共に、第3室H3の圧が第2室H2及び開放孔K1を介して外部へ放出される。これにより、第6室H6の圧は、駆動圧導入路L4、開孔DP2a、開放孔K1を介して、外部へ排出され、第6室H6の圧力は低下し、第5室H5と第6室H6との圧力差により主ダイヤフラムD0が第6室H6側に変位する。よって、メインガバナ10の主弁体V0が閉じ側に動作され、流体流路L0の二次圧P2を低下させて二次圧P2を設定圧力に調整する。
  尚、開孔DP2aの開度は、二次圧P2と設定圧力との圧力差が大きいほど大きくなるように構成されている。
 
【0024】
  一方、流体流路L0の二次圧P2が設定圧力よりも降圧した場合、
図2(b)に示すように、二次側圧力導入路L2にて流体流路L0の二次側に連通接続されたパイロットガバナ100の第1室H1の圧力が低下し、第1付勢部材G1の付勢力により第1ダイヤフラムD1と第2ダイヤフラムD2と第3ダイヤフラムD3とが第1室H1の側へ変位する。これにより、排気弁V1が開き側へ動作すると共に開放弁V2が閉じ側へ動作し、一次側圧力導入路L1を介して第3室H3へ流体流路L0の一次側が導入され、第3室H3の圧力が上昇する。そして、その圧力上昇した第3室H3の圧力が駆動圧導入路L4を介してメインガバナ10の第6室H6へ駆動圧として導入され、第6室H6の圧力も上昇し、第5室H5と第6室H6との圧力差により主ダイヤフラムD0が第5室H5側に変位する。よって、メインガバナ10の主弁体V0が開き側に動作され、流体流路L0の二次圧P2を上昇させて二次圧P2を設定圧力に調整する。
 
【0025】
  さて、これまで説明してきた3枚のダイヤフラムを有するパイロットガバナ100は、周期圧力振動を伴う模擬二次圧P2を二次圧検知室としての第1室H1へ加えたときに、特許文献1(特開2017-12718号公報)に示される従来の逆作動型整圧装置に用いられる2枚のダイヤフラムを有するパイロットガバナと略同等の周波数応答特性を得られるよう以下のような構成を有している。
【0026】
  第1ダイヤフラムD1と第2ダイヤフラムD2と第3ダイヤフラムD3の有効受圧面積は、略同等に構成されており、好ましくは、当該有効受圧面積は、従来の逆作動型のパイロットガバナのダイヤフラムの有効受圧面積と等しく構成されている。
  また、第1ダイヤフラムD1と第2ダイヤフラムD2と第3ダイヤフラムD3を連結する連結部材Rは、例えば、変位方向(
図1で矢印Z方向)に沿って伸びると共に第1ダイヤフラムプレートDP1と第2ダイヤフラムプレートDP2と第3ダイヤフラムプレートDP3とを連結する複数の棒状部材R1(当該実施形態では、2本で、且つ内部が中空の部材)にて構成することができる。
 
【0027】
  また、二次圧P2と排気弁V1のストロークや振動可能部の質量の関係は、従来のパイロットガバナと略同等の性能が得られる。因みに、振動可能部は、連結部材R、第1ダイヤフラムD1、第2ダイヤフラムD2、第3ダイヤフラムD3を含むものである。より厳密には、上記関係は、排気弁V1、開放弁V2、第1ダイヤフラムD1、第2ダイヤフラムD2、第3ダイヤフラムD3の質量の影響も受けるものである。
【0028】
  更に、二次圧計測室としての第1室H1に対して、入力として周期圧力振動を伴う模擬二次圧を導入するべく、二次側圧力導入路L2には、二次側圧力導入路L2の開閉を切り替える開閉弁51が設けられている。
  更に、第1室H1に対して、第1室H1に対して周期圧力振動を付与する圧力振動発生装置50(圧力振動付与部の一例)が設けられており、当該圧力振動発生装置50は、第1室H1への圧力導入を制御する圧力導入弁V3と、第1室H1からの圧力排出を制御する圧力排出弁V4とから構成されている。説明を追加すると、圧力導入弁V3は、第1室H1に連通接続されている一次側圧力導入路L1を開閉する形態で設けられ、圧力排出弁V4は、第1室H1に連通接続されている大気開放流路L5を開閉する形態で設けられている。
  制御装置Cが、開閉弁51を閉止している状態で、第1圧力センサS1の検知圧力値に基づいて、圧力導入弁V3及び圧力排出弁V4の開閉を交互に切換制御することで、圧力振動を発生させることができる。
【0029】
  更に、第1室H1に導入される周期圧力振動を伴う模擬二次圧を計測可能な第1圧力センサS1(第1圧力計測部の一例)が、開閉弁51よりも第1室H1の側に設けられている。更に、駆動圧を計測可能な第2圧力センサS2(第2圧力計測部の一例)が、駆動圧導入路L4に設けられ、制御装置Cは、当該第1圧力センサS1及び第2圧力センサS2にて計測された圧力を受信可能に構成されている。
  制御装置Cは、第1圧力センサS1にて計測された第1室H1に導入される周期圧力振動を伴う模擬二次圧振動の振幅及び位相と、第2圧力センサS2にて計測された駆動圧振動の振幅及び位相とに基づいて周波数応答解析を実行する。
【0030】
  さて、これまで説明してきたパイロットガバナ100の周波数応答解析方法の一例を説明する。
【0031】
  操作者は、第1室H1と流体流路L0の二次側とを圧力の伝播を禁止するよう隔離すべく、開閉弁51を閉止する。
  次に、制御装置Cが、圧力振動発生装置50に生成する周期圧力振動の周波数を初期値(例えば、複数の周波数の最小値が設定される:一例としては、0.1Hz)を設定され、圧力振動発生装置50が、設定された周波数の周期圧力振動を生成する圧力振動付与工程を実行する。
  その後、制御装置Cは、設定された周波数において、第1圧力センサS1により計測された周期圧力振動に伴う模擬二次圧としての圧力を受信する圧力振動計測工程を実行すると共に、第2圧力センサS2により計測された駆動圧を受信する駆動圧計測工程を実行する。
  所定の設定された周波数にて、計測される入力としての模擬二次圧と、出力としての駆動圧としては、例えば、
図3に示すような値となる。因みに、
図3にて設定されている周波数は、0.5Hzである。尚、
図3では、実測値がプロットにて表示されると共に、そのサイン近似を曲線にて示している。
 
【0032】
  制御装置Cは、圧力振動発生装置50にて生成される周期圧力振動の周波数を段階的に増加させる。尚、ここで、周波数は、設定している周期圧力振動の周波数が所定の上限値に達するまで指数関数的に増加させることが好ましい。
  次に、制御装置Cは、周波数毎で計測された周期圧力振動に伴う模擬二次圧振動の振幅及び位相と、駆動圧振動の振幅及び位相とからボード線図を出力する。
  具体的には、計測された複数の異なる周波数毎で圧力振動計測工程にて計測された周期圧力振動を伴う模擬二次圧の振幅A1と駆動圧計測工程にて計測された駆動圧の振幅A2との比から導出されるゲインGを複数の周波数毎に出力するゲイン出力工程と、複数の異なる周波数毎で圧力振動計測工程にて計測された周期圧力振動を伴う模擬二次圧の位相と駆動圧計測工程にて計測された駆動圧の位相との差を複数の周波数毎に出力する位相出力工程とを実行し、ゲイン出力工程にて出力されたゲイン及び位相出力工程にて出力された位相の差を、ボード線図上にプロットする。
【0033】
  制御装置Cは、ゲイン出力工程にて出力されたゲインから導出されるゲイン余裕と、位相出力工程から導出される位相余裕とから作成されるボード線図に基づいて、パイロットガバナ100の安定性を判定する安定性判定工程を実行する。
【0034】
〔別実施形態〕
(1)第1圧力センサS1は、二次圧検知室としての第1室H1の圧力を直接計測するものであっても構わない。
  また、第2圧力センサS2にて計測される駆動圧は、主弁体V0の下流側配管の二次圧としても良い。
【0035】
(2)圧力発生装置50の他の構成例としては、例えば、ルーツポンプにより第1室H1の内部圧力を振動させる形や、第1室H1に連通接続するチャンバ室を加熱・冷却してチャンバ内の気体の膨張・収縮により圧力振動を形成させる構成を採用することも可能である。
【0036】
  尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
  本発明のパイロットガバナ、及びそれを備えた逆作動型整圧装置は、入力として実際の圧力正弦波等を適切に投入できると共にその出力応答としての駆動圧を計測でき、それらの値から制御特性を解析する周波数応答解析を実行可能な逆作動型整圧装置のパイロットガバナ、及びそれを備えた逆作動型整圧装置として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
10    :メインガバナ
14    :ダイヤフラムプレート
100  :パイロットガバナ
200  :逆作動型整圧装置
D1    :第1ダイヤフラム
D2    :第2ダイヤフラム
D3    :第3ダイヤフラム
G1    :第1付勢部材
G2    :第2付勢部材
H1    :第1室
H2    :第2室
H3    :第3室
K      :筐体
K1    :開放孔
L0    :流体流路
L1    :一次側圧力導入路
L1a  :一次側圧力導入端
L2    :二次側圧力導入路
L4    :駆動圧導入路
P1    :一次圧
P2    :二次圧
R      :連結部材
V0    :主弁体
V1    :排気弁
V2    :開放弁