(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】樹脂シート
(51)【国際特許分類】
B32B 7/023 20190101AFI20230623BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230623BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230623BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20230623BHJP
B29C 48/21 20190101ALI20230623BHJP
B29C 48/305 20190101ALI20230623BHJP
B29C 48/88 20190101ALI20230623BHJP
B29K 25/00 20060101ALN20230623BHJP
B29L 7/00 20060101ALN20230623BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20230623BHJP
【FI】
B32B7/023
B32B27/30 B
C08J5/18 CET
B29C48/08
B29C48/21
B29C48/305
B29C48/88
B29K25:00
B29L7:00
B29L9:00
(21)【出願番号】P 2019136981
(22)【出願日】2019-07-25
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100094547
【氏名又は名称】岩根 正敏
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 康行
(72)【発明者】
【氏名】秋山 光宏
(72)【発明者】
【氏名】半根 隆巳
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-174965(JP,A)
【文献】特開平09-302171(JP,A)
【文献】特開2004-075865(JP,A)
【文献】特開2019-034481(JP,A)
【文献】特開2017-115056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02
C08J 5/12-5/22
B32B 1/00-43/00
B29C 48/08
B29C 48/21
B29C 48/305
B29C 48/88
B29K 25/00
B29L 7/00
B29L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形により形成された樹脂シートであり、
上記樹脂シートは、芯層と該芯層の両面に積層された表層部分を形成する表面層とからなる多層シートであり、該樹脂シートの
両面に、算術平均粗さ0.2~1.0μmの微細な凹凸が形成されており、
上記表面層は、メルトフローレイト(温度200℃、荷重5.00kg)が3g/10分以下であり、分岐構造を有する分岐状ポリスチレン樹脂からなり、かつ光拡散剤を含有せず、
該樹脂シートは、厚み1~10mm、全光線透過率80%以上、ヘーズ10%以上であることを特徴とする、樹脂シート。
【請求項2】
上記微細な凹凸は、粗さ曲線要素の平均長さが300μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂シート。
【請求項3】
上記樹脂シートは、厚み2~8mmであり、かつヘーズ30%以上であることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の樹脂シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートに関するもので、特に、透光性と光拡散性を有する樹脂シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
透光性と光拡散性を有する所謂マット調の樹脂シートは、室内の仕切板や戸棚の前面板といった室内建材やディスプレイ材等といった様々な用途で用いられている。
【0003】
樹脂シートに光拡散性能を付与する方法として、一般的に、表面に微細な凹凸を有するロールの表面凹凸を樹脂シートの表面に転写する方法(例えば、特許文献1)、サンドブラスト加工により樹脂シートの表面に微細な凹凸を形成する方法(例えば、特許文献2)、樹脂シートの内層、表層、あるいはその両方に光拡散剤を添加する方法(例えば、特許文献3)などがあり、それらの方法、またはそれらを組み合わせることにより透光性と光拡散性を有する樹脂シートを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-155101号公報
【文献】特開平11-245293号公報
【文献】特開2006-195218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、表面に微細な凹凸を有するロールの表面凹凸を樹脂シートの表面に転写することやサンドブラスト加工により樹脂シートの表面に微細な凹凸を形成するには限界があり、樹脂シートの表面に多数の微細な凹凸を形成することが困難な場合があった。特に、厚みが1mm以上のような厚い樹脂シートでは、製造時に溶融した樹脂シートの熱が下がりにくく、その傾向が顕著であった。
また、光拡散剤を添加することにより光拡散性を有する樹脂シートとする場合、光拡散剤の添加量が多くなると費用がかかるといった問題があり、光拡散性能を維持しつつ、低価格化することが求められていた。
【0006】
本発明は、上述した背景技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、透光性を有し、かつ表層部分に光拡散剤を含有せず良好な光拡散性能を呈する樹脂シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するため、本発明は、次の〔1〕~〔3〕に記載した樹脂シートとした。
〔1〕押出成形により形成された樹脂シートであり、
上記樹脂シートは、芯層と該芯層の両面に積層された表層部分を形成する表面層とからなる多層シートであり、該樹脂シートの両面に、算術平均粗さ0.2~1.0μmの微細な凹凸が形成されており、
上記表面層は、メルトフローレイト(温度200℃、荷重5.00kg)が3g/10分以下であり、分岐構造を有する分岐状ポリスチレン樹脂からなり、かつ光拡散剤を含有せず、
該樹脂シートは、厚み1~10mm、全光線透過率80%以上、ヘーズ10%以上であることを特徴とする、樹脂シート。
〔2〕上記微細な凹凸は、粗さ曲線要素の平均長さが300μm以下であることを特徴とする、上記〔1〕に記載の樹脂シート。
〔3〕上記樹脂シートは、厚み2~8mmであり、かつヘーズ30%以上であることを特徴とする、上記〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂シート。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る樹脂シートは、表層部分に光拡散剤を使用せず、特定の微細な凹凸を表面に形成し、特定の全光線透過率及びヘーズの樹脂シートとしたものであり、安価に製造できると共に、良好な光拡散性能を有する樹脂シートとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の樹脂シートの製造に使用される代表的な成形装置の概念的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る樹脂シートについて、詳細に説明する。
【0011】
本発明に係る樹脂シートは、単層又は多層の押出成形により形成された樹脂シートであり、該樹脂シートの少なくとも片面に、算術平均粗さ0.2~1.0μmの微細な凹凸が形成されており、上記微細な凹凸が形成された側の樹脂シートの表層部分は、ポリスチレン樹脂からなり、該樹脂シートは、表層部分に光拡散剤を含有せず、厚み1~10mm、全光線透過率80%以上、ヘーズ10%以上である樹脂シートである。
【0012】
本発明は、算術平均粗さ0.2~1.0μmの微細な凹凸が、樹脂シートの少なくとも片面に形成されていることが重要である。算術平均粗さ0.2~1.0μmの微細な凹凸が樹脂シートの表面に形成されていることにより、良好な光拡散性能を有する樹脂シートとすることができ、0.2μmに満たない凹凸である場合には、ヘーズが低くなり、光拡散性に劣るものとなり、逆に1.0μmを超える凹凸を形成した場合には、表面の凹凸が大きすぎるため外観に劣る樹脂シートとなる。かかる観点から、算術平均粗さ0.2~0.8μmの微細な凹凸が形成されていることが好ましく、算術平均粗さ0.2~0.7μmの微細な凹凸が形成されていることがより好ましい。
なお、「算術平均粗さ」は、JIS B0601(2013)にて定義され、該JISに準拠して測定した値である。上記「算術平均粗さ」は、10点を測定した算術平均値を採用するものとする。
【0013】
上記樹脂シートの表面に形成された微細な凹凸は、凹凸が非常に密で且つ比較的シャープな山型形状をしており、しかも極めて微細な凹凸が多数一様に存在している。この微細な凹凸が多数一様に存在していることにより、室内の仕切板や戸棚の前面板といった室内建材やディスプレイ材等として好適に使用することができる。上記観点から、樹脂シートの表面において、10点の算術平均粗さRaを測定し、それらの標準偏差を求め、その値が低いことが好ましい。上記標準偏差の値は、0.1以下であることが好ましく、0.06以下であることがより好ましい。なお、上記標準偏差の値は、不偏分散の平方根により与えられる値である。
【0014】
また、本発明においては、上記樹脂シートの表面に形成された微細な凹凸は、粗さ曲線要素の平均長さが300μm以下であることが好ましい。粗さ曲線要素の平均長さが300μm以下の凹凸を樹脂シートの表面に形成することにより、ヘーズが高く、光拡散性に優れる樹脂シートとなる。かかる観点から、粗さ曲線要素の平均長さが250μm以下の凹凸を形成することがより好ましく、粗さ曲線要素の平均長さが200μm以下の凹凸を形成することが更に好ましい。粗さ曲線要素の平均長さは、基準長さにおける山と谷の長さの平均を意味することから、粗さ曲線要素の平均長さの値が小さいと微細な凹凸が密に存在することを意味する。
なお、上記「粗さ曲線要素の平均長さ」は、JIS B0601:2013に準拠して測定した値である。上記「粗さ曲線要素の平均長さ」は、10点を測定した算術平均値を採用するものとする。
【0015】
本発明の樹脂シートは、厚み1~10mmであることが重要であり、2~8mmであることが好ましく、3~6mmであることがより好ましい。厚みを上記とすることで、背面側からの光が適度に拡散され、透光性と光拡散性とが適度となり、室内の仕切板や戸棚の前面板といった室内建材やディスプレイ材等として優れたものとなる。なお、厚さが1mmに満たないものであると、室内建材やディスプレイ材等として必要な曲げ剛性や耐衝撃性等の強度が得られにくくなる。逆に、厚さが10mmを超えると、製造時に樹脂シートの自重により垂れ易くなり樹脂シート形状に成形しにくくなったり、重くて取り扱いが困難となったりするおそれがある。また、樹脂シートを得た後の二次加工が困難となる。
【0016】
また、本発明の樹脂シートは、長さ50~300cm、幅20~200cmであることが室内建材やディスプレイ材等の用途として適当であり、長さ80~250cm、幅25~180cmであることがより好ましく、長さ100~200cm、幅30~160cmであることが更に好ましい。
【0017】
本発明の樹脂シートは、全光線透過率が80%以上である。全光線透過率を80%以上とすることで、光の透過量を好ましいものとすることができる。かかる観点から、全光線透過率は82%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。また、全光線透過率の上限は特に限定することはないが、概ね98%以下であることが好ましい。
なお、本発明でいう「全光線透過率」は、JIS K7361-1:1997に準拠して測定した値である。上記「全光線透過率」は、10点を測定した算術平均値を採用するものとする。
【0018】
また、本発明の樹脂シートは、ヘーズが10%以上であることが重要であり、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。樹脂シートのヘーズを上記とすることで、光の拡散を好ましくすることができ、マット調を呈する室内の仕切板や戸棚の前面板といった室内建材やディスプレイ材等として好適に使用することができるものとなる。
なお、本発明でいう「ヘーズ」は、JIS K7136:2000に準拠して測定した値である。上記「ヘーズ」は、10点を測定した算術平均値を採用するものとする。
【0019】
本発明の樹脂シートにおいて、微細な凹凸が形成された側の樹脂シートの表層部分は、ポリスチレン樹脂からなる。ポリスチレン樹脂は、吸水性が低く、剛性に優れる。そのため、表層部分がポリスチレン樹脂からなる樹脂シートは、反りや変形を抑制することができるため好ましい。
上記ポリスチレン樹脂としては、例えばポリスチレン、スチレン-αメチルスチレン共重合体、スチレン-pメチルスチレン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ポリフェニレンエーテル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレンアクリレート共重合体、スチレン-メチルスチレン共重合体、スチレン-ジメチルスチレン共重合体、スチレン-エチルスチレン共重合体、スチレン-ジエチルスチレン共重合体、ハイインパクトポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン樹脂)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して使用される。なお、上記ポリスチレン樹脂は、スチレンに基づく単位又はスチレン成分含有量が50モル%を超えるものであり、80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
【0020】
上記ポリスチレン樹脂は、厚さ2mmの試験片を作製し、JIS K7361-1:1997により求められる全光線透過率が80%以上を有する樹脂である。
【0021】
また、上記ポリスチレン樹脂は、分岐構造を有する分岐状ポリスチレン樹脂からなることが好ましい。分岐状ポリスチレン樹脂は、分岐状ポリスチレン樹脂の単独樹脂であってもよく、直鎖状ポリスチレン樹脂と分岐状ポリスチレン樹脂との混合樹脂であってもよい。
【0022】
上記分岐状ポリスチレン樹脂は、分岐の構造として、一般的には、ランダム分岐型構造、星形構造、又はポンポン型構造などがある。スチレン系樹脂に分岐を導入する方法としては、有機過酸化物を用いる方法、多官能モノマーを用いる方法、イオン架橋による方法、又は多分岐状マクロモノマーを用いる方法などがある。本発明は、上記したいずれの分岐の構造を有するものであってもよく、また上記したいずれの方法で製造されたものであってもよい。
【0023】
分岐状ポリスチレン樹脂は、同一の条件下で他の樹脂と比較すると流動性が少なく、溶融粘度及び溶融張力が高い傾向にあるため、ダイから樹脂を押出した直後に微細な凹凸による凹凸表面を形成し易い。該微細な凹凸は、凹凸が非常に密で且つ比較的シャープな山型形状をしており、しかも極めて微細な凹凸が多数均一に存在しているものとなるために好ましい。
一般的に、分岐を有する樹脂は、同一の絶対分子量である直鎖状の樹脂と比較した場合に、分子の大きさが小さくなる傾向にある。本発明の収縮因子は、想定上同一の絶対分子量である直鎖状重合体に対する、分子の占める大きさの比率の指標である。すなわち、樹脂の分岐度が大きくなれば、収縮因子は小さくなる傾向にある。このことから、収縮因子が1.0未満のポリスチレン系樹脂である場合、分岐状ポリスチレン樹脂であることがわかる。
【0024】
上記収縮因子を求める方法としては、例えば、GPC-MALS法により以下のようにして測定される。収縮因子gは、下記式(1)に示すように、同一絶対分子量における、分岐構造を有するスチレン系樹脂の二乗平均回転半径<Rg
2>
Bと直鎖スチレン系樹脂の二乗平均回転半径<Rg
2>
Lの比として求められる。
【数1】
収縮因子の重量平均値gwは、GPC-MALS法を用いて次のように特定できる。GPCによりポリスチレン系樹脂の試料液の溶出クロマトグラムを得る。そして、溶出クロマトグラムの任意の区間iにおいて、MALSにより区間iにおけるポリスチレン系樹脂の収縮因子giが特定される。区間iにおけるポリスチレン系樹脂の濃度ciは、市販の濃度検出器等を適宜用いて特定される。
これらの値から収縮因子の重量平均値gwは、下記式(2)により求められる。
【数2】
GPC-MALS法の測定機器は、島津製作所社製Prominence LC-20AD(2HGE)/WSシステム、Wyatt Technology社製の多角度光散乱検出器 DAWN HELEOS II等を用いて、溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、流量1.0ml/minという条件で測定できる。カラムとしては、例えば、東ソー社製TSKgel HHR-H×1本、TSKgel GMHHR×2本を直列に接続して用いることができる。測定の解析は、Wyatt社の解析ソフト ASTRA等により行い、スチレン系樹脂の収縮因子の重量平均値が求められる。
【0025】
また、流動性が少なく、微細な凹凸が形成し易いという観点から、上記表層部分を構成するポリスチレン樹脂は、メルトフローレイトが3g/10分以下である分岐状ポリスチレン樹脂からなることが好ましく、メルトフローレイトが2g/10分以下である分岐状ポリスチレン樹脂からなることがより好ましい。
なお、本発明の上記「メルトフローレイト」(以下「MFR」ともいう。)は、JIS K7210-1:2014に規定する試験方法に従い、温度200℃、荷重5.00kgの条件で測定した値である。
【0026】
本発明において「表層部分」とは、樹脂シートが単層であるときには、樹脂シートの表面から厚さ方向中央に向かって100μmまでの部分のことをいい、樹脂シートが多層であるときには、芯層に積層された表面層の厚さのことをいう。
【0027】
上記表層部分を構成するポリスチレン樹脂は、相対重量平均分子量が40万以上であることが好ましく、45万以上であることがより好ましい。一方、上記表層部分を構成するポリスチレン樹脂の相対重量平均分子量の上限は、概ね100万である。上記表層部分を構成するポリスチレン樹脂の相対重量平均分子量が上記範囲であると微細な凹凸が形成し易くなる。
なお、本発明で用いる「相対重量平均分子量」は、試料10mgをテトラヒドロフラン(THF)10mlに溶解させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法により測定し、標準ポリスチレンで校正した値である。
【0028】
また、上記微細な凹凸が形成し易いという観点から、樹脂シートの200℃、剪断速度100sec-1の条件下における溶融粘度は、1200~3000Pa・sであることが好ましく、1500~2500Pa・sであることがより好ましい。
また、同様の観点から200℃における溶融張力が、300~1000mNであることが好ましく、400~600mNであることがより好ましい。
なお、上記「溶融粘度」及び「溶融張力」は、後の〔実施例〕の項において説明する、株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ型式1Dなどの測定機を使用して測定することができる。
【0029】
本発明の樹脂シートは、単層であっても多層であってもよい。多層の樹脂シートにおける芯層を構成する樹脂は、厚さ2mmの試験片を作製し、JIS K7361-1:1997により求められる全光線透過率が80%以上を有する樹脂であれば、公知の熱可塑性樹脂を使用することができる。樹脂シートの全光線透過率が80%以上であることを満足させる観点から、該熱可塑性樹脂は、JIS K 7361(1997年)で知られた「透明プラスチック」に該当する樹脂が好適に用いられる。このような熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、環状オレフィン樹脂等が挙げられる。中でも、共押出により表面層と積層し易いという観点から、ポリスチレン又はメタクリル酸メチル-スチレン共重合体を好適に用いることができる。熱可塑性樹脂として、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体からなる樹脂を用いる場合、スチレンに基づく単位又はスチレン成分含有量が30モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましい。上記熱可塑性樹脂は、単独又は2種以上を混合して使用することができるが、全光線透過率80%以上を満足させる観点からは、単独で用いることが好ましい。なお、本発明の樹脂シートは、90質量%以上が上記熱可塑性樹脂からなることが好ましく、上記熱可塑性樹脂のみからなることがより好ましい。
【0030】
本発明の樹脂シートは、芯層と該芯層の片面に積層された上記表層部分を形成する表面層とからなる多層であってもよく、芯層と該芯層の両面に積層された上記表層部分を形成する表面層とからなる多層であってもよい。多層の樹脂シートである場合の表面層の厚みは、50~500μmであることが好ましく、100~300μmであることがより好ましい。また、多層の樹脂シートである場合、芯層の厚みに対して片面あたりの表面層の厚みの比率が、2~10%であることが好ましく、3~6%であることがより好ましい。
【0031】
上記樹脂シートが単層シートである場合、上記微細な凹凸が形成された側の樹脂シートの表層部分は、メルトフローレイト(温度200℃、荷重5.00kg)が3g/10分以下であり、かつ分岐構造を有する分岐状ポリスチレン樹脂からなることが好ましい。一方、上記樹脂シートが、芯層と該芯層の両面に積層された上記表層部分を形成する表面層とからなる多層シートである場合、上記表面層は、メルトフローレイト(温度200℃、荷重5.00kg)が3g/10分以下であり、かつ分岐構造を有する分岐状ポリスチレン樹脂からなり、該樹脂シートの両面に、上記微細な凹凸が形成されていることが好ましい。
【0032】
また、本発明の樹脂シートに使用する樹脂には、必要に応じて、酸化防止剤、着色剤、充填材、スリップ剤(滑剤)、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤をその目的・性能を損なわない範囲内で含有することができる。微細な凹凸を形成し易くする観点から、上記添加剤は、樹脂シートの表層部分には含有せず、表層部分以外の部分に含有することが好ましい。
但し、本発明の樹脂シートの表層部分には、光拡散剤を含有していないことが重要である。本発明は、樹脂シートの表層部分に光拡散剤を使用することなく、押出直後に上述した特定の算術平均粗さの微細な凹凸を樹脂シートの表面に形成したものとし、特定の全光線透過率及びヘーズを呈する樹脂シートとしたものである。なお、樹脂シートの表層部分以外の部分であれば光拡散剤を含有していても構わないが、表層部分に光拡散剤を使用せずに特定の微細な凹凸を表面に形成し、特定の全光線透過率及びヘーズの樹脂シートとすることができることから、光拡散剤を用いる必要がない。上記観点から、樹脂シートの表層部分以外の部分に含有する光拡散剤の量は、表層部分以外の部分の樹脂シート中に3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましく、光拡散剤を含有しないことが特に好ましい。
【0033】
本発明に係る樹脂シートを製造する方法としては、Tダイ成形法等の押出し成形法が挙げられ、例えば、
図1に概念的に示した装置により製造することができる。
【0034】
図1において、押出機1から溶融した熱可塑性樹脂をシート状に押し出し、挟圧ロール2により挟圧引き取り後、直線状に並ぶ複数の移送ロール3上でシートを徐冷し、切断機4において目的の長さにシートを切断する。
【0035】
シートを押し出すために押出機1のダイには通常使用されるTダイを使用することができる。単層の樹脂シートを成形する場合は、溶融樹脂はマニホールドを通って吐出口であるリップ出口から押し出され、単層の樹脂シートに成形される。複数の樹脂を同時に押し出す「共押し出し」により、多層の樹脂シートの成形が可能である。その手法として、Tダイの手前で樹脂を合流させる「フィードブロック法」と、単層をそれぞれマニホールド内で広げてから、Tダイの吐出口であるリップ出口付近で合流させる「マルチマニホールド法」などがあるが、本発明においてはその製法が限定されるものではない。
【0036】
本発明においては、押出機1から押し出される溶融樹脂の押出温度、押出速度を調整することにより、ダイから押出された直後に樹脂シートの表面に多数の微細な凹凸が形成されたものとする。この多数の微細な凹凸は、樹脂シートの両面又は片面に形成される。この多数の微細な凹凸は、ダイから押出された直後に樹脂シートの表面に形成されることから、メルトフラクチャーによる現象であると考えられる。
【0037】
ダイから押出される時の溶融樹脂の押出温度は、200~250℃であることが好ましい。
【0038】
上記押し出された樹脂シートを挟圧し、厚みを整えると共に樹脂シートを引き取る挟圧ロール2は、所謂鏡面ロールと呼ばれる算術平均粗さ0.1μm以下の鏡面処理が施されたロールが使用される。各挟圧ロール、図示した実施形態においては3本の挟圧ロール2a,2b,2cの表面温度をそれぞれ調節することにより、上記樹脂シートの表面に形成された多数の微細な凹凸を潰すことなく、その厚みが整えられる。また、樹脂シートを第1ロール2aと第2ロール2bとで挟圧する際、上記樹脂シートの表面に形成された多数の微細な凹凸を潰さないようにするため、樹脂シートを第1ロール2aと第2ロール2bとで挟圧する時の線圧は、10N/cm以下であることが好ましく、3N/cm以下であることがより好ましい。なお、線圧とは、1対のロールを押し当てた時のロール長さ方向1cmあたりの力(N)を意味し、シート状物を第1ロールと第2ロールとで挟むときの圧力により決まる。
【0039】
挟圧ロール2のいずれかまたは全てのロールを冷却ロールとすることが好ましい。また、樹脂シートを第1ロール2aと第2ロール2bとで挟圧した後にさらにロールを用いる場合には、それらのロールも冷却ロールとすることが好ましい。各ロールの冷却機構は特に限定されないが、例えばロールを内筒と外筒との二重構造とし、これらの間に冷却溶媒を流通させることでロール表面を冷却するものが例示される。第1ロール2aの温度は、50~70℃が好ましい。第2ロール2bの温度は、80~100℃が好ましい。ロールの表面温度が上記範囲であれば、上記樹脂シートの表面に形成された多数の微細な凹凸を潰すことなく、その厚みを整えることが容易となる。
【0040】
本発明においては、樹脂シートを第1ロール2aと第2ロール2bとで挟圧した後、さらに第2ロール2bに樹脂シートを抱かせて引き取ることができる。第2ロール2bに樹脂シートを抱かせて引き取ることにより樹脂シートを冷却することができる。次に、樹脂シートは、第2ロール2bから第3ロール2cにより引き取られる。
【0041】
第3ロール2cから剥離した樹脂シートは、その後直線状に並んだ複数の移送ロール3上で冷却される。ここで樹脂シートを平坦な状態で徐冷することにより、樹脂シート全面に光学歪みがなく、平坦な樹脂シートが得られる。この時、樹脂シートの流れ方向に過大な引き取り張力を付加すると樹脂シートの流れ方向に光学歪みが発生するため、樹脂シートが第3ロール2cと移送ロール3間で弛みを発生しない程度に、引き取り張力は調整される。
【0042】
冷却された樹脂シートは、切断機4により目的とする大きさに切断される。切断には鋏、カッター、レーザー等の方法が使用できる。切断され、製品とされた樹脂シートには、必要に応じてポリエチレン等でできた保護フィルムを樹脂シート表面に張り付けることも可能である。
【0043】
本発明に係る樹脂シートは、上述した構成であり、表層部分に光拡散剤を使用せず、特定の微細な凹凸を表面に形成し、特定の全光線透過率及びヘーズの樹脂シートとしたものであることから、安価に製造できるとともに、良好な光拡散性能を有する樹脂シートとなる。
【実施例】
【0044】
次に、本発明の樹脂シートについて、実施例、比較例によりさらに詳細に説明する。但し、本発明は、何ら次の実施例に限定されるものでない。
【0045】
図1に概念的に示した押出成形装置を使用した。
この装置は、押出機1にTダイ(リップ幅:130mm、リップ間隙:1.0mm)を取付け、挟圧ロール2として3本の鏡面ロール(直径:160mm、幅:350mm)を回転軸が同一高さになるように配置し、その下流側に移送ロール3、切断機4を配置したものである。
多層の装置は、押出機1にTダイ(リップ幅:300mm、リップ間隙:2.5mm)を取付け、挟圧ロール2として3本の鏡面ロール(直径:195mm、幅:700mm)を回転軸が同一高さになるように配置し、その下流側に移送ロール3、切断機4を配置したものである。
【0046】
原料(熱可塑性樹脂)として、次のものを使用した。
(A)HIMETREN(=29重量%):G9305(=71重量%)
・収縮因子:0.96
・相対重量平均分子量:46.9万
・MFR(温度200℃、荷重5.00kg):0.9g/10分
・溶融粘度(温度200℃、せん断速度100s-1):1930Pa・s
・溶融張力(200℃):540mN
なお、「HIMETREN」は、株式会社ジェイエスピー社製分岐状ポリスチレン(収縮因子:0.72、相対重量平均分子量:120万、溶融粘度(温度200℃、せん断速度100s-1):1900Pa・s、溶融張力(200℃):1100mN)、「G9305」は、PSジャパン社製直鎖状ポリスチレンである。また、原料(A)は、「HIMETREN」と「G9305」とを上記重量比率とし、単軸押出機にて200℃の条件で混練押出した混合樹脂である。上記混合樹脂を原料(A)として用いて、上記物性を測定した。
(B)HP780AN(DIC社製分岐状ポリスチレン)
・収縮因子:0.71
・相対重量平均分子量:47.9万
・MFR(温度200℃、荷重5.00kg):1.2g/10分
・溶融粘度(温度200℃、せん断速度100s-1):1840Pa・s
・溶融張力(200℃):430mN
(C)GX156(PSジャパン社製分岐状ポリスチレン)
・収縮因子:0.90
・相対重量平均分子量:43.3万
・MFR(温度200℃、荷重5.00kg):1.8g/10分
・溶融粘度(温度200℃、せん断速度100s-1):1650Pa・s
・溶融張力(200℃): 470mN
(D)HP600ANJ(DIC社製分岐状ポリスチレン)
・収縮因子:0.85
・相対重量平均分子量:32.2万
・MFR(温度200℃、荷重5.00kg):5.0g/10分
・溶融粘度(温度200℃、せん断速度100s-1): 1130Pa・s
・溶融張力(200℃): 190mN
(E)G9305(PSジャパン社製直鎖状ポリスチレン)
・収縮因子:1.0
・相対重量平均分子量:35.6万
・MFR(温度200℃、荷重5.00kg):1.5g/10分
・溶融粘度(温度200℃、せん断速度100s-1):1510Pa・s
・溶融張力(200℃):310mN
(F)680(PSジャパン社製直鎖状ポリスチレン)
・収縮因子:1.0
・相対重量平均分子量:20.9万
・MFR(温度200℃、荷重5.00kg):7.0g/10分
・溶融粘度(温度200℃、せん断速度100s-1): 960Pa・s
・溶融張力(200℃):70mN
【0047】
なお、上記各原料の「収縮因子」などの測定は、それぞれ次の方法で行った。
【0048】
[収縮因子]
収縮因子は、GPC-MALS(多角度光散乱検出器)法により測定された値を用いた。
収縮因子gは、下記式(1)に示すように、同一絶対分子量における、分岐構造を有するスチレン系樹脂の二乗平均回転半径<Rg
2>
Bと直鎖スチレン系樹脂の二乗平均回転半径<Rg
2>
Lの比として求められる。
【数3】
収縮因子の重量平均値gwは、GPC-MALS法を用いて次のように特定した。
GPCによりポリスチレン系樹脂の試料液の溶出クロマトグラムを得る。そして、溶出クロマトグラムの任意の区間iにおいて、MALSにより区間iにおけるポリスチレン系樹脂の収縮因子giが特定される。区間iにおけるポリスチレン系樹脂の濃度ciは、市販の濃度検出器等を適宜用いて特定される。
これらの値から収縮因子の重量平均値gwは、下記式(2)により求めた。
【数4】
GPC-MALS法の測定機器は、島津製作所社製Prominence LC-20AD(2HGE)/WSシステム、Wyatt Technology社製の多角度光散乱検出器 DAWN HELEOS IIを用いて、溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、流量1.0ml/minという条件で測定した。カラムとしては、東ソー社製TSKgel HHR-H×1本、TSKgel GMHHR×2本、を直列に接続して用いた。測定の解析は、Wyatt社の解析ソフト ASTRAにより行い、スチレン系樹脂の収縮因子の重量平均値が求められた。
【0049】
[相対重量平均分子量]
相対重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析法により測定を行った。
樹脂試料10mgをテトラヒドロフラン(THF)10mlに溶解させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析法により測定し、標準ポリスチレンで校正した値である。
GPC分析条件の詳細は以下の通りである。
・使用機器:株式会社ジーエルサイエンス製GPC仕様高速液体クロマトグラフ
・カラム:昭和電工株式会社製カラム、商品名ShodexGPC KF-806、同KF-805、同KF-803をこの順に直列に連結して使用
・カラム温度:40℃
・溶媒:THF
・流速:1.0mL/分
・濃度:0.15w/v%
・注入量:0.2ml
・検出器:株式会社ジーエルサイエンス製紫外可視検出器、商品名UV702型(測定波長254nm)
・分子量分布の計算に用いた較正曲線の分子量範囲:1.2×107~5.2×103
【0050】
[MFR(メルトフローレイト)]
MFRは、JIS K7210(2014)に規定する試験方法に従い、温度200℃、荷重5.00kgの条件で測定した。
【0051】
[溶融粘度]
溶融粘度は、株式会社東洋精機製作所のキャピログラフ 型式1Dにて測定を行って得られた値である。
具体的には、シリンダー径9.55mm、長さ350mmのシリンダーと、ノズル径1.0mm、長さ10.0mmのオリフィスを用い、シリンダー及びオリフィスの設定温度を200℃とし、シリンダー内に測定試料(樹脂ペレット)を充填した。充填後、シリンダー内にピストンを充填し、4分間の予備加熱にて溶融させた。なお、予備加熱中にピストンを一時的に押し下げ溶融状態の測定試料から気泡を十分に除去した。また、測定試料の充填量は、気泡除去後に測定試料が15cc以上確保できる十分な量とした。予備加熱終了後、ピストンにてキャピラリー部のせん断速度が100s-1となる様にシリンダー内の測定試料を押出し、そのときの溶融粘度を計測した。原料から無作為に採取した5つの測定用試料に対して溶融粘度の測定を行い、それらの測定値の算術平均値を原料の溶融粘度とした。
【0052】
[溶融張力]
溶融張力は、株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ型式1Dにて測定を行って得られた値である。
具体的には、シリンダー径9.55mm、長さ350mmのシリンダーと、ノズル径2.095mm、長さ8.0mmのオリフィスを用い、シリンダー及びオリフィスの設定温度を200℃とし、試料の必要量を該シリンダー内に入れ、4分間放置してから、ピストン速度を10mm/分として溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出して、この紐状物を直径45mmの張力検出用プーリーに掛け、4分で引き取り速度が0m/分から200m/分に達するように一定の増速で引取り速度を増加させながら引取りローラーで紐状物を引取って紐状物が破断した際の直前の張力の極大値を得る。ここで、引取り速度が0m/分から200m/分に達するまでの時間を4分とした理由は、樹脂の熱劣化を抑えるとともに得られる値の再現性を高めるためである。
【0053】
上記した押出成形装置及び原料を使用し、次の実施例1~7、比較例1~3、そして参考例に記載した樹脂シートを製作した。
【0054】
実施例1:上記(A)の混合原料を使用し、押出樹脂温度を210℃(溶融粘度:1500Pa・s、溶融張力:320mN)とし、吐出量20.4kg/hで押出機1のTダイより溶融樹脂をシート状に押し出し、押し出されたシート状物を挟圧ロール2で挟圧して厚みを整え、移送ロール3上で徐冷後、切断機4により切断することにより、厚み1.0mm、長さ600mm、幅120mmの樹脂シートを得た。
実施例2:上記(B)の分岐状ポリスチレンを使用し、押出樹脂温度を210℃(溶融粘度:1500Pa・s、溶融張力:300mN)とした以外は、実施例1と同様にして樹脂シートを得た。
実施例3:上記(B)の分岐状ポリスチレンを使用し、押出樹脂温度を220℃(溶融粘度:1200Pa・s、溶融張力:200mN)とした以外は、実施例1と同様にして樹脂シートを得た。
実施例4:上記(B)の分岐状ポリスチレンを使用し、押出樹脂温度を250℃(溶融粘度:600Pa・s、溶融張力:50mN)とした以外は、実施例1と同様にして樹脂シートを得た。
実施例5:上記(C)の分岐状ポリスチレンを使用し、押出樹脂温度を205℃(溶融粘度:1500Pa・s、溶融張力:350mN)とした以外は、実施例1と同様にして樹脂シートを得た。
実施例6:上記(B)の分岐状ポリスチレンを使用し、押出樹脂温度を210℃(溶融粘度:1500Pa・s、溶融張力:300mN)とした以外は、実施例1と同様にして樹脂シートを得た。
実施例7:上記(B)の分岐状ポリスチレンを表面層(厚み:0.2mm)として使用し、芯層(厚み:3.6mm)として上記(E)の直鎖状ポリスチレンを使用し、押出樹脂温度を210℃(溶融粘度:1500Pa・s、溶融張力:300mN)とし、吐出量42.5kg/hで押出機1のTダイより溶融樹脂をシート状に押し出し、押し出されたシート状物を挟圧ロール2で挟圧して厚みを整え、移送ロール3上で徐冷後、切断機4により切断することにより厚み4.0mm、長さ900mm、幅290mmの樹脂シートを得た。
比較例1:上記(D)の分岐状ポリスチレンを使用し、押出樹脂温度を193℃(溶融粘度:1500Pa・s、溶融張力:400mN)とした以外は、実施例1と同様にして樹脂シートを得た。
比較例2:上記(E)の直鎖状ポリスチレンを使用し、押出樹脂温度を200℃(溶融粘度:1500Pa・s、溶融張力:300mN)とした以外は、実施例1と同様にして樹脂シートを得た。
比較例3:上記(F)の直鎖状ポリスチレンを使用し、押出樹脂温度を185℃(溶融粘度:1500Pa・s、溶融張力:200mN)とした以外は、実施例1と同様にして樹脂シートを得た。
参考例1:上記(F)の直鎖状ポリスチレンを表面層(厚み:0.2mm)として使用し、表面層中にスチレン-メタアクリル酸共重合体架橋微粒子からなる光拡散剤(アイカ工業社製 スタフィロイド(登録商標)GSM-1261:重量平均粒子径12μm)を濃度が10重量%となるように添加し、芯層(厚み:3.6mm)として上記(E)の直鎖状ポリスチレンを使用し、押出樹脂温度を250℃とし、吐出量42.5kg/hで押出機1のTダイより溶融樹脂をシート状に押し出し、押し出されたシート状物を挟圧ロール2で挟圧して厚みを整え、移送ロール3上で徐冷後、切断機4により切断することにより厚み4.0mm、長さ900mm、幅290mmの樹脂シートを得た。
【0055】
上記実施例1~7、比較例1~3、そして参考例で得られた各樹脂シートについて、「算術平均粗さ」、「粗さ曲線要素の平均長さ」、「全光線透過率」及び「ヘーズ」を、それぞれ測定した。
その測定結果を、表1に記載する。
なお、「算術平均粗さ」、「粗さ曲線要素の平均長さ」などの測定は、それぞれ次の方法で行った。
【0056】
[算術平均粗さ(Ra)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)]
樹脂シートの表面における算術平均粗さ(Ra)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は、JIS B0601(2013)に準拠し、カットオフλc=0.8、測定長さ=8mmとして、表面粗さ測定機(株式会社小坂研究所製 表面粗さ測定機 サーフコーダSE1700α)を用いて測定した。
具体的には、得られた樹脂シート(幅方向の長さは得られたシートの幅)の表面から無作為に選択し、幅方向の全幅を5等分に区切り、5等分したそれぞれの位置の中央部について測定を行い、5箇所の測定値を得た。上記操作を樹脂シートの長さ方向に100mm離れた位置について同様に測定を行い、さらに5箇所の測定値を得た。得られた10箇所の値の算術平均値を樹脂シートの表面における算術平均粗さ(Ra)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)とした。また、算術平均粗さ(Ra)を得るために測定した10箇所の値の標準偏差を求めた。なお、上記標準偏差の値は、不偏分散の平方根により求めた。
【0057】
[全光線透過率、ヘーズ]
得られた樹脂シート(幅方向の長さは得られたシートの幅)の表面から無作為に選択し、幅方向の全幅を5等分に区切り、5等分したそれぞれの位置の中央部について、JIS K7361-1:1997に準拠して全光線透過率を、JIS K7136:2000に準拠してヘーズをそれぞれ測定し、5箇所の測定値を得た。上記操作を樹脂シートの長さ方向に100mm離れた位置について同様に測定を行い、さらに5箇所の測定値を得た。得られた10箇所の値の算術平均値を全光線透過率、ヘーズとした。測定は、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製 NDH7000SP)を用いた。
【0058】
また、実施例1~7および比較例1~3で得られた各樹脂シートについて、外観について以下の基準で評価した。
○:全光線透過率が80%以上であり、かつヘーズが10%以上である
×:ヘーズが10%未満である
その評価結果を、表1に併記する。
【0059】
【0060】
本発明に係る樹脂シートは、光拡散剤を使用せず、特定の微細な凹凸を表面に形成し、特定の全光線透過率及びヘーズの樹脂シートとしたものであり、安価に製造できると共に、良好な光拡散性能を有する樹脂シートとなるので、室内の仕切板や戸棚の前面板といった室内建材やディスプレイ材等として、好適に使用することができるものである。
【符号の説明】
【0061】
1 押出機
2 挟圧ロール
2a 第1ロール
2b 第2ロール
2c 第3ロール
3 移送ロール
4 切断機