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特許7300937自立型パウチ入りこんにゃくゼリー及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】自立型パウチ入りこんにゃくゼリー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 21/12 20160101AFI20230623BHJP
   A23L 29/244 20160101ALI20230623BHJP
   B65D 30/16 20060101ALI20230623BHJP
   B65D 33/38 20060101ALI20230623BHJP
   B65D 85/72 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
A23L21/12
A23L29/244
B65D30/16 A
B65D33/38
B65D85/72
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019159688
(22)【出願日】2019-09-02
(65)【公開番号】P2021036809
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】506011021
【氏名又は名称】オリヒロプランデュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 織寛
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-223166(JP,A)
【文献】特許第6389949(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
B65D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立型パウチに収容されたこんにゃくゼリーであって、該こんにゃくゼリーがパウチ内面との接触面に緻密面を有し、パウチ内で2分割または3分割に分割されているか、進展することで2分割または3分割となる亀裂をパウチ内で1塊としてなる該こんにゃくゼリーに有しており、前記パウチは、パウチ内部に垂下する部材を有さないことを特徴とする自立型パウチ入りこんにゃくゼリー。
【請求項2】
前記分割されたこんにゃくゼリーのうち最大の分割片が、前記パウチ内に分割されずに同量封入されたこんにゃくゼリーの75体積%以下の大きさである請求項1に記載の自立型パウチ入りこんにゃくゼリー。
【請求項3】
前記分割されたこんにゃくゼリーのうち最小の分割片が、前記パウチからこんにゃくゼリーを吸い出す開口部を無加圧状態で通過しない大きさである請求項1または2に記載の自立型パウチ入りこんにゃくゼリー。
【請求項4】
前記自立型パウチが、前記こんにゃくゼリーを吸い出す開口部として、キャップを有する口栓を、パウチを構成するフィルムに設けた口栓付きパウチである請求項1~のいずれか1項に記載の自立型パウチ入りこんにゃくゼリー。
【請求項5】
前記口栓付きパウチが、前記口栓を上として、底面にマチを有するスタンディングパウチである請求項に記載の自立型パウチ入りこんにゃくゼリー。
【請求項6】
パウチ内部に垂下する部材を有さない自立型パウチに収容されたこんにゃくゼリーを製造する方法であって、
(1)前記パウチ内に前記こんにゃくゼリーの原料溶液を封入する工程、
(2)前記原料溶液をゲル化して、前記パウチ内で前記パウチ内面に倣った緻密面を有する1塊のこんにゃくゼリーを形成する工程、
(3)前記1塊のこんにゃくゼリーを前記パウチ外部からブレード部材で前記パウチの長手方向に押圧することにより、前記こんにゃくゼリーが前記パウチ内で2分割または3分割に分割するか、進展することで2分割または3分割となる亀裂を導入する工程とを含む、自立型パウチ入りこんにゃくゼリーの製造方法。
【請求項7】
前記自立型パウチが、前記こんにゃくゼリーを吸い出す開口部として、キャップを有する口栓を、パウチを構成するフィルムに設けた口栓付きパウチである請求項に記載の自立型パウチ入りこんにゃくゼリーの製造方法。
【請求項8】
前記口栓付きパウチが、前記口栓を上として、底面にマチを有するスタンディングパウチである請求項に記載の自立型パウチ入りこんにゃくゼリーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自立型パウチに収容されたこんにゃくゼリー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
簡易的な食事、あるいはダイエットや美容の観点から、パウチに収容されたゼリー飲食品が広く知られている。特に比較的厚みのある、自立させることのできるスタンディングパウチやガゼットパウチに収納されたゼリー飲食品はパウチ上部に口栓(スパウト)を備え、口栓部のキャップをひねってすぐに喫食できることで広く普及している。
【0003】
また、こんにゃく粉とゲル化剤(増粘多糖類)とを含むゼリーはこんにゃくゼリーとして、こんにゃく由来の独特の食感と、低カロリーの観点から広く普及している。しかし、こんにゃくゼリーは、ゼラチンを原料とするゼリーと比べて弾力が高く、口腔内の温度でも溶解しないため、幼児や老人が誤って噛まずに飲み込むと喉に詰まらせる恐れが指摘されている。
【0004】
自立型パウチに収容されたゼリー飲食品、特にこんにゃくゼリーの場合、パウチを押しながら口栓部等の開口部からゼリーを吸い出すことで喫食するため、喉に詰まらせる可能性があり、よく噛んで食すことを注意書きとして記載しているが、万全とは言い難い。そのため、収容するゼリーを予め細かく切断したものや粒状ゲルを内包するもの(特許文献1)、一度にゼリーが飛び出さすことを抑制するとともにゼリーを分割するために口栓部に十字リブなどを設けたパウチを使用するなどの工夫がなされている(特許文献2)。
【0005】
また、ゼリーなどのゲル状食品を包装袋内でゲル化し、包装袋の外から複数のブロック片にカットする方法が知られている(特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-158261号公報
【文献】特開2001-328649号公報
【文献】特開2002-65178号公報
【文献】特開2015-223166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自立型パウチ入りこんにゃくゼリーは100g~200g程度の内容量が一般的であり、口栓部の径を小さくしたり、十字リブなどを設けたりすると、弾力のあるこんにゃくゼリーの場合、より吸い出しにくく、全量を喫食するまでに時間を要するようになる。これは自立型パウチの利点である、容易に、短時間での喫食という他のゼリーで可能な機能を達成できないものとしている。また、口栓部に十字リブ等を設けることで容器コストも増加している。
【0008】
こんにゃくゼリーは容器(パウチ)内面を成形面として容器内でゲル化させると、容器内面に倣って緻密な面形状を有しており、水分の分離が非常に少なく抑えられる。しかし、予め細かく切断したこんにゃくゼリーの場合、運搬中の振動や温度条件(凍結や高温)によって断面から水分が分離し、こんにゃくゼリー本来の食感が損なわれることがある。そのため小片個体状に成形したり、小片化した後に表面コーティングしたりするなどの対策が必要となる。また、予め細かく小片化したこんにゃくゼリーの場合、口栓部の内径を比較的大きくしている。これは小片化したこんにゃくゼリーがそのまま通過する程度の大きさであるため、誤って内容物が飛び出す場合もある。
また、特許文献2等に記載の十字リブがパウチ内部に延在(垂下)する部材(延長片)を設ける構成も、振動によるこんにゃくゼリーの分裂を促すことがあるため、断面から水分が分離し、こんにゃくゼリー本来の食感が損なわれるという同様の問題を有している。また、吸い出しに際して必要以上に分裂/分断されているために、他のゼリー飲料と差別化しているこんにゃくゼリーののど越し感がさらに損なわれる。
【0009】
つまり、こんにゃくゼリーの場合、喫食直前まで容器内で緻密な成形面を有した状態を維持し、喫食に際してある程度の大きさに分割できることが好ましい。
【0010】
しかしながら、スタンディングパウチやガゼットパウチはある程度厚みがあることで、弾性の高いこんにゃくゼリーの場合は手でもんで細かく分割することが困難になっている。この傾向は内容量が大きく、容器厚みが増すほど顕著となる。
【0011】
このように、こんにゃくゼリー本来の食感を長く維持しつつ、比較的短時間で喫食を容易とする自立型パウチ入りこんにゃくゼリーが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は、自立型パウチに収容されたこんにゃくゼリーであって、該こんにゃくゼリーがパウチ内面との接触面に緻密面を有し、パウチ内で2分割または3分割に分割されているか、進展することで2分割または3分割となる亀裂をパウチ内で1塊としてなる該こんにゃくゼリーに有しており、前記パウチは、パウチ内部に垂下する部材を有さないことを特徴とする自立型パウチ入りこんにゃくゼリーに関する。
【0013】
また、本発明は、パウチ内部に垂下する部材を有さない自立型パウチに収容されたこんにゃくゼリーを製造する方法であって、
(1)前記パウチ内に前記こんにゃくゼリーの原料溶液を封入する工程、
(2)前記原料溶液をゲル化して、前記パウチ内で前記パウチ内面に倣った緻密面を有する1塊のこんにゃくゼリーを形成する工程、
(3)前記1塊のこんにゃくゼリーを前記パウチ外部からブレード部材で前記パウチの長手方向に押圧することにより、前記こんにゃくゼリーが前記パウチ内で2分割または3分割に分割するか、進展することで2分割または3分割となる亀裂を導入する工程とを含む、自立型パウチ入りこんにゃくゼリーの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、こんにゃくゼリー本来の食感を長く維持しつつ、比較的短時間で喫食を容易とする自立型パウチ入りこんにゃくゼリーの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】自立型パウチの一例としてスタンディングパウチを示す概念図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は口栓部の正面図、(d)は口栓部の上面図である。
図2】自立型パウチの一例としてガゼットパウチを示す概念図である。
図3】パウチ内で成形したこんにゃくゼリーを分割する対応を示す概略透視図である。
図4】こんにゃくゼリーを分割する装置を説明する概略図である。
図5】こんにゃくゼリーに導入される亀裂の例を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、自立型パウチに入ったこんにゃくゼリーに関する。このような自立型パウチ入りこんにゃくゼリーについては、事前に所定形状に細分化した状態の内容物をパウチに充填するか、容器内でゲル化してそのままとされることが通例である。これは、自立型パウチがある程度の厚みを有することで、容器外部から細かく切断することが困難であることに起因している。そのため、容器内でゲル化させる製品では、内部からこんにゃくゼリーを崩せるように口栓部から容器内に垂下させた部材(延長片)を有している自立型パウチが多く採用されている。
【0017】
前述の通り、このような延長片が存在する場合、容器内でゲル化させたこんにゃくゼリーは、この延長片と接触している部位で分断されやすい。したがって、手でもむことで容易に喫食に適した大きさにすることができるが、弊害として輸送中の振動などでもこんにゃくゼリーが崩されてしまう。さらに十字リブ等が設けられている場合はさらに細かく崩さないと容易に吸い出すことはできない。その結果、こんにゃくゼリー本来の食感が犠牲になる。
【0018】
本発明が適用される自立型パウチでは、パウチ内部に垂下する部材を有さず、容器の内外を単純に接続している口栓を有するものを使用する。あるいは、パウチの一部に開口可能な切り取り部を有し、喫食の際に切り取り部を切り取って開封口を形成するものである。また、本発明ではこのような自立型パウチ内でゲル化して固めたこんにゃくゼリーを有することを特徴とする。そして本発明では、このようにパウチ内でゲル化した1塊のこんにゃくゼリーがパウチ内で2分割以上に分割されているか、進展することで2分割以上となる亀裂を1塊のこんにゃくゼリーに有していることを特徴とする。分割数の上限として、本発明では切断によって滲出する水分がこんにゃくゼリーの食感や風味に影響しない範囲であり、細分化するものではない。また、こんにゃくゼリーの食感や風味に影響しない範囲としては、分割により現れた分割面の総面積が、パウチ内で一塊に形成された時のこんにゃくゼリーの総表面積よりも小さい範囲である。なお、分割面の総面積とは、分割した面を平面に投影した時の面積であり、微小な凹凸を含む真の表面積ではない。こんにゃくゼリーの総表面積も微小な凹凸を含む真の表面積ではなく、目視可能な外表面の見かけの面積である。亀裂の断面の合計量も分割面の総面積と同様である。また、分割面とは2分割で2面、3分割では4面というように、2×(x-1)面(xは分割数)となる。パウチの内容量にもよるが、通常は6分割程度までが適当である。好ましくは2分割または3分割である。以下では、2分割または3分割するものとして説明する。なお、特許文献4では誤って噛まずに飲み込んだ場合でも、のどに詰まらせる可能性がほとんどない大きさまで細分化することを想定している。また、特許文献3は凍結を前提としたフルーツゼリーの解凍性を良好にするために包装袋の外からカットするものであり、凍結することが不適なこんにゃくゼリーを想定してはいない。
【0019】
つまり、内容量が100~200gの自立型パウチに充填して、パウチ内でゲル化したこんにゃくゼリーに対して、2つまたは3つに分割することには、喫食の安全性を確保するためには一見して意味がないように見える。しかしながら、延長片の存在しない口栓付きの自立型パウチに分割していない1塊のこんにゃくゼリーが内包されている場合、手で揉むだけでは容易に吸い出すことができる大きさまで分割することはできず、中身を押出しながら内径の小さい口栓部で分断されるに任せて吸い出すことになり、完食までに時間が掛かる。特許文献4に示されるような開封型の袋入りゼリーの場合、開封した開封口を通過できない大きさであると、吸引喫食が困難となる。一方、事前に2つまたは3つに分割しておく、あるいは2つ以上に分割されるように亀裂を導入しておくことで、驚くべきことに手で揉むことで容易に吸い出すことができる大きさまで分割することができることを見出した。また、2つまたは3つに分割しておいても、自立型パウチ内ではほとんど移動しないために、細かく分割した場合と比較して食感の低下が起こらないことを確認している。また、2つまたは3つに機械的に分割することは、マチの深い、すなわち厚みのある自立型パウチでも外部からの押圧により、こんにゃくゼリーが切断されるというよりも裂ける(亀裂が導入される)という効果により可能な分割数でもある。つまり、人の手では困難であっても機械的には分割乃至は亀裂の導入ができるということに起因している。
【0020】
口栓付きの自立型パウチでは、口栓部がパウチを構成するフィルム材よりも硬い樹脂部材で構成されているため、吸い出す際に口栓部でもこんにゃくゼリーの分裂が起こる。予めパウチ内で2つまたは3つに分割しておくと、手で揉み込むことをせずとも、分割面で口栓部によるこんにゃくゼリーの分裂が起こりやすくなるという効果も奏する。
しかしながら、幼児や老人などの誤飲を防止するため、あるいは完食までの時間を短縮するには、十分に手で揉み込むことが好ましい。
【0021】
亀裂が導入されている場合は、搬送中の振動により亀裂が進展しても、2分割または3分割となる程度の亀裂を導入しておくことが好ましい。また、手で揉み込むことで、亀裂から2分割または3分割への進展とともにさらに喫食に適した大きさまでの細分化が可能となる。搬送中の振動ではこんにゃくゼリーの分断に至らない小さな亀裂を2分割または3分割用の亀裂以外に導入しておいてもよい。このような小さな亀裂は、手で揉み込むことで初めて亀裂から進展して分断に至ることになり、さらなる細分化に役立つ。
【0022】
また、本発明では、所定の位置にてパウチ内のこんにゃくゼリーを分割乃至は亀裂を導入しているため、揉み込みの手順あるいは押し出しの手順をパウチ外部に表示することができる。つまり、より効果的な揉み込みあるいは押し出しを示唆しておくことで、ユーザーはより少ない手順で効果的な揉み込みあるいは押し出しを行うことができるようになる。
【0023】
次に本発明の各構成要素について説明する。
<こんにゃくゼリー>
本発明が適用されるこんにゃくゼリーとしては清涼飲料水(ゼリー飲料)に分類されるものから、洋生菓子(フルーツゼリー)に分類されるものまで、様々な分類のこんにゃくゼリーに適用できる。特に、比較的硬めにゲル化したフルーツゼリータイプのこんにゃくゼリーが好ましい。
【0024】
こんにゃくゼリーの原材料としては、こんにゃく粉(こんにゃく精粉)とゲル化剤(増粘多糖類)を含む。そのほか、各種糖類、果汁、香料、酸味料、着色剤等を必要に応じて含んでいてもよい。また、果肉やタピオカ粒などの粒状物を含むこともできるが、このような粒状物を含む場合は、比較的容易に分裂する傾向にあり、本発明の適用が必ずしも有効とはならない場合もある。
【0025】
このような原材料を用いて、こんにゃくゼリー溶液を調製する。本発明ではパウチ内でこんにゃくゼリー溶液をゲル化して固化させる。パウチ内でゲル化して固めることで、こんにゃくゼリーの表面は少なくとも容器内面に倣った緻密面を有する1塊のゲル化物となる。こんにゃくゼリーの緻密面からは水分の分離は起こりにくい。一方、分割された切断面からは水分の分離が起こり易く、細かく切断するほど食感の低下が起こりやすくなる。したがって、本発明では、この分割数を2または3とするか、亀裂の導入に留めておくことで、水分の分離による食感の低下を抑制している。また、喫食に際しても、必要以上に細かく分断されることを防止することで、こんにゃくゼリー本来ののど越しを損なうことがなく、他のゼリー飲料との差別化が可能となる。
【0026】
<自立型パウチ>
本発明における自立型パウチとしては、底面にマチを有し、側面にマチのないスタンディングパウチと、側面にマチのあるガゼット袋状のパウチ(ガゼットパウチ)のいずれも含むものである。ガゼットパウチは底面にもマチを有してもよく、底面にマチのないものでも、側面のマチと内容物の自重により自立することが可能である。パウチの形態については、内容量に応じて適宜選択すればよく、内容量の少ない場合はスタンディングパウチ、内容量が多い場合はガゼットパウチが好ましい。
【0027】
(口栓付きパウチ)
本発明で用いられる容器としては、こんにゃくゼリーを吸い出す開口部として、キャップを有する口栓を、パウチを構成するフィルムに設けた口栓付きパウチであることが好ましい。
図1は、自立型パウチの一例として口栓付きスタンディングパウチ10を示す概念図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は口栓部の正面図、(d)は口栓部の上面図である。図2は、自立型パウチの一例として口栓付きガゼットパウチ20を示す概念図である。これらのパウチは収容部11(または21)、口栓部12(または22)、口栓部に嵌合してなるキャップ13(または23)を有する。
【0028】
パウチ容量としては、100g~200g、好ましくは120g~180g、より好ましくは130g~160gである。パウチ容量は、こんにゃくゼリーの内容量よりも若干余裕を持たせた容量であることが好ましい。
【0029】
パウチを構成する材料としては、食品衛生法に基づいて許容される公知のプラスチックフィルム、金属箔含有ラミネートフィルムなど特に制限なく使用することができる。パウチ表面には商品に関する表示を施すことができる。
【0030】
口栓部12は、パウチ収容部11上部のシール部に一体にシールされて固定されている。口栓部12は、パウチシール部と一体にシールするための基部121と、口にくわえて吸い出すための筒部122と、キャップ13と嵌合する筒部外面に形成された凸部123を有する。キャップ13は凸部123と嵌合可能な凹凸を内面に有する。基部121と筒部122は一体に成形されており、図1(c)に示すように本発明では基部121からパウチ内部に垂下する延長片は含まない。また、図1(d)に示すように、筒部122の内面124はリブがなく、収容部11と直接連通している。
【0031】
筒部122の内径は、7~17mmの範囲であることが好ましい。7mm以上であることでこんにゃくゼリーとしての食感を維持することができ、また、17mm以下であることで、こんにゃくゼリーがパウチを押した際に急激に飛び出すことを防止できる。また、13mmを越える内径の筒部にリブを設けて内容物の飛び出し防止を行うこともできる。
口栓部の材料としても食品衛生法に基づいて許容される公知の樹脂材料を用いることができる。一般的にはポリエチレンが採用される。
【0032】
(開封型パウチ)
特許文献4に示される包装袋のうち、ガゼットタイプやスタンディングタイプのまち付き包装袋についても、本発明の適用が可能である。特に、マチの深いタイプであっても、本発明では完全に内部のこんにゃくゼリーを細かく切断する必要がないため、亀裂の導入等が可能である。パウチ容量としては、口栓付きパウチと同様に100g~200gの容量を有するものである。例えば内容量130gの包装袋の場合、封入部の長手方向(高さ方向)の長さ(高さ)は120mm程度である。したがって、この内容物を2または3分割した場合、特許文献4が規定する8~20mmの長さを大きく超える大きさのため、開封口を通常的には通過できない。しかしながら、開封前に手で揉み込むことで、開封口を通過できる大きさに細分化することができる。
【0033】
<製造方法>
図3に示すように、得られたこんにゃくゼリー31を内包するパウチ30の外側から、ブレード32等の押圧部材を用いて分割する。分割の方向はパウチの長手方向(通常は自立させた際の上下方向)に対して略垂直な方向に2分割または3分割するが、長手方向に略平行な方向に分割してもよい。さらに中心から放射状に3分割したり、長手方向に対して斜めに2分割または3分割したりする方法でもよい。
図3では、長手方向(口栓部を上とした場合)に対して略垂直な方向に、上部31a、中央部31b、下部31cの3分割する態様を示している。
実際には図4に示すような切断装置を用いて内包されるこんにゃくゼリーを2分割または3分割する。図4では、コンベア41上でスタンディングパウチ10が所定位置に来たとき、分割押し板42が下降してパウチ内のこんにゃくゼリーを分割する。分割押し板42の上下移動はエアシリンダや電動シリンダで駆動し、コンベア41を停止した状態で分割押し板42が下降して分割してもよいし、コンベア41が駆動した状態で分割押し板42を同期させて分割してもよい。
なお、口栓付きパウチについて、長手方向に略平行な方向に分割する場合、口栓部に分割押し板が接触しないように位置を調整して行う。
【0034】
マチの深いパウチの場合、完全に分割することが困難な場合がある。本発明では完全に分割する必要は必ずしもなく、パウチ内面に倣って固化された緻密なゼリー表面に少なくとも亀裂が形成出来ればよい。このような亀裂は、搬送中の振動により亀裂が進展し、消費者の手に渡る段階ではこんにゃくゼリーが分断された状態になることがある。また、分断されない状態であっても、亀裂の形成されたこんにゃくゼリーは手で揉み込むことで容易に分割することができる。また、厚みのあるこんにゃくゼリーの場合、切断装置のブレードを振動させることで、一定方向に亀裂を進展させ、分断することもできる。図5は、パウチ内に内包される1塊としてのこんにゃくゼリー51に導入される亀裂の状態を説明する概念図である。図5(a)では口栓部を上として、パウチの幅方向をX、厚み方向をY、高さ方向をZとし、幅方向Xの一部に亀裂52を形成した状態を示している。また、図5(b)では、マチの深いパウチ等の場合(こんにゃくゼリーの厚みが厚い場合)に、厚み方向Yの一部に亀裂53を形成した状態を示している。このような亀裂も進展することで2分割または3分割となるような位置に導入することができる。
【0035】
分割/分断されたこんにゃくゼリーの大きさは、パウチの形状により一概に限定できないが、分割/分断前の大きさに対して、最大でも3/4(75体積%)以下となる大きさとする。つまり、2分割の場合、ほぼ半分となる大きさが好ましいが、多少はどちらかに偏ってもよい。3分割の場合、理想的には1/3程度の大きさとなるが、口栓部近傍の上部は比較的厚みが薄く、体積比では小さな分割片となりやすい。つまり、この場合も残りの中央部と下部の分割片の大きさが最大でも3/4以下となるように分割しておくことが好ましい。なお、小さな分割片でもパウチを外部から押さない状態では口栓部から出ない、すなわち、パウチの口栓部を無加圧状態で通過しない大きさであることが好ましい。この無加圧状態とは、こんにゃくゼリーの自重による圧力は含まず、パウチの外から押圧しないことを意味する。したがって、口栓部を開封し、下向きに保持した際に、固形分のこんにゃくゼリーが口栓部から出ない大きさである。開封型パウチの場合、開封口はパウチを構成するフィルムであることから、口栓部のような硬度は有しておらず、弾性変形で通過できる大きさよりも大きい場合、開封口が裂ける可能性がある。したがって、開封型パウチの場合は、開封前に手で揉み込むことで、細分化してから開封することが好ましい。
【0036】
このように、パウチ内で2~3分割されたこんにゃくゼリーは、パウチ内では動きが制限されて、搬送中の振動等ではさらに押圧された部分以外で分割されることはない。亀裂を導入している場合は、搬送中の振動等で亀裂が進展することはあるが、2~3分割された状態で留まり、それ以上に分割されることはない。そしてユーザーが喫食する段階では、手で揉み込むことで容易にさらに小片へと分割できる。したがって、本発明による自立型パウチ入りこんにゃくゼリーは、ユーザーが喫食するまではその少ない分割/分断数あるいは分断面により、分断面からの水の分離による食感の低下を最小限に抑え、喫食に際しては容易に適度な大きさに分断でき、安全性の確保や喫食時間の短縮が可能となる。
また、自立型パウチにて販売されるこんにゃくゼリーは、カップ型容器にて販売されるこんにゃくゼリー、いわゆる「食べるゼリー」に比較すると柔らかく、「飲むゼリー」あるいは「ゼリー飲料」に位置付けされることが多い。一方、本発明により「食べるゼリー」に位置付けされる硬さのこんにゃくゼリーについても、自立型パウチでの提供が可能となる。
【実施例
【0037】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。以下において、「部」は質量基準を示す。
【0038】
原料として、こんにゃく粉(オリヒロ株式会社製、商品名「ティマックマンナン」)、カラギーナン(三晶株式会社製「GENUGEL(登録商標)carrageenan type WR-80-J」)、果糖ブドウ糖液糖(群栄化学工業株式会社製、商品名「スリーシュガーHF55」)を使用した。
こんにゃくゼリー溶液は、こんにゃく粉1部及びカラギーナン1部を果糖ブドウ糖液糖300部に混合分散させ、水675部を加え、80℃に加温し、さらに、リンゴ果汁10部、塩化カリウム1部、クエン酸3.4部、クエン酸三ナトリウム2.4部、香料少々を加えて調製した。該溶液130gをスタンディングパウチ(容量:130g、こんにゃくゼリー封入時の厚み:底部約40mm、上部約10mm、口栓部内径:約10mm)に詰め、80℃で加熱殺菌後に冷却して、スタンディングパウチ入りこんにゃくゼリーを得た。なお、このスタンディングパウチの口栓部は、パウチ内に垂下する延長片を有さず、また、筒部においてこんにゃくゼリーを分割するためのリブも有さないものである。また、封入されたこんにゃくゼリーは「食べるゼリー」に位置付けされる硬さのこんにゃくゼリーである。
【0039】
ゼリーの分割の効果を検証する為に、以下のような実験をおこなった。
分割加工無し、2分割、3分割した3種類の製品を、口栓を開封した状態で計量器(デジタル式台はかり「CAS DB-II」(商品名))の測定面に横に寝かせ、パウチの上部から平らな板でパウチ全体に圧力を加え、パウチ内のゼリーが口栓から飛び出る時の値(荷重)を測定した。また、3分割した製品について開封前に両手で20秒間軽く揉んだものについても同様に評価した。なお、値は10回試験した際の平均値で示した。また、分割はスタンディングパウチの高さ方向(口栓部を上として)に等分割とした。このとき、分割後に最大となる2分割の下部でも分割加工無しのゼリーの75体積%以下となった。
【0040】
【表1】
【0041】
測定開始時は口栓部付近のゼリーが出始めた時の荷重であり、最大値はパウチ中心付近のゼリーが口栓部から押し出される時の荷重に相当する。このように分割加工していないものと比較して2分割または3分割したものはより弱い力でこんにゃくゼリーの押出が可能であることが確認された。さらに手で揉み込むことでより喫食し易い状態になることが分かる。
また、2分割、3分割したものは、水の分離もほとんどなく、食感の変化もなかった。
また、こんにゃくゼリーの塊の高さ方向の2か所に亀裂を入れたものについても押出前に手で揉み込むことで、3分割+揉み込みと同程度の荷重での押し出しが可能であった。
【符号の説明】
【0042】
10 スタンディングパウチ
11 収容部
12 口栓部
121 基部
122 筒部
123 凸部
13 キャップ
20 ガゼットパウチ
21 収容部
22 口栓部
23 キャップ
図1
図2
図3
図4
図5