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特許7300959水槽接続部材とこれを用いた水耕栽培用水槽構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】水槽接続部材とこれを用いた水耕栽培用水槽構造
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20230623BHJP
【FI】
A01G31/00 601Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019188413
(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公開番号】P2020068769
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2018201801
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晋康
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-182937(JP,U)
【文献】特開2012-107451(JP,A)
【文献】実開昭53-156927(JP,U)
【文献】特開2002-034364(JP,A)
【文献】特開2011-254737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽接続部材と、水耕栽培用水槽と、排水管と、を具備し、
前記水槽接続部材は、
第一接続部と、第二接続部と、排水口と、を具備し、水耕栽培用水槽の後端部に収穫作業用水槽を接続するための水槽接続部材であって、
前記第一接続部と前記第二接続部が、略対向して配設され、
前記第二接続部が、前記第一接続部より高い位置に配設され、
前記排水口が、前記第一接続部と前記第二接続部の間に配設されており、
前記水耕栽培用水槽は前記第一接続部に接続され、前記排水管は前記排水口に接続されていること、
を特徴とする水耕栽培用水槽構造
【請求項2】
前記第二接続部が、前記第一接続部側に下降傾斜していること、
を特徴とする請求項1に記載の水耕栽培用水槽構造
【請求項3】
複数の前記水槽接続部材を有し、
前記排水管が、前記複数の水槽接続部材の排水口に接続される略水平排水路と、前記略水平排水路の両端にそれぞれ接続される略垂直排水路と、を具備すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の水耕栽培用水槽構造。
【請求項4】
前記排水口近傍に、前記水耕栽培用水槽の貯水量を調整する貯水量調整手段を具備すること、
を特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の水耕栽培用水槽構造。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕栽培装置に用いる水耕栽培用水槽を接続するための水槽接続部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、土壌を用いる必要が無く、屋内の狭い空間において高密度な生産が可能で、また、天候の影響を受けること無く温度や湿度等を調整でき、さらには、雑菌や害虫等による汚染を除去しやすい等の多くの利点から、水耕栽培装置が注目されている。当該水耕栽培装置は、植物を生育する栽培棚を上下方向に所定の離間距離で多段に配置すると共に、各水耕容器の上方部側に照明装置を設けた水耕栽培装置が一般に採用されている。
【0003】
上記水耕栽培装置を用いた水耕栽培では、植物の根部を浸す養液を専用の水耕栽培用水槽内で流動的に貯水し、育苗工程や収穫工程等の栽培工程内容に応じて適宜排水を行う必要があるが、植物の根部等が養液の流動性を妨げて排水性を低下させるケースがある。このような問題に対して、一部では樋状の水耕栽培用水槽を採用し、更に養液の流動性を向上するために当該水耕栽培用水槽を排水口が配設された川下側に傾斜させて構成された植物栽培装置が存在する(特に特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-082996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の植物栽培装置では、養液を排水口に誘導させるために川下側の端部から排水口に下降傾斜させた傾斜板の配設を必要としているが、樋状の水耕栽培用水槽内部に当該傾斜板を配設することは困難であり、水槽全体の水密性を低下させてしまうばかりか養液の滞留を引き起こすおそれがあった。また、特許文献1の水耕栽培用水槽では所望量の養液を貯水する構造を有しておらず、水耕栽培の種々の栽培工程に対して簡便に対応することができなかった。
【0006】
そこで、従来の水耕栽培用水槽の川下側の構造に着目すると、水槽の傾斜に応じた簡素な工夫で養液を排水口へ誘導する構造が採用されたのみであり、確実な排水性を有しておらず藻等が派生してしまうおそれがあった。また水耕栽培に要する工程全体を考慮した構造を備えていないことは明らかであって、未だ改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みて創作されたものであり、優れた水密性及び排水性を有し、水耕栽培の各工程に応じて養液の貯水及び排水を切替えることが可能な水槽接続部材及びこれを用いた水耕栽培用水槽構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決すべく、本発明は、
第一接続部と、第二接続部と、排水口と、を具備し、水耕栽培用水槽の後端部に収穫作業用水槽を接続するための水槽接続部材であって、
前記第一接続部と前記第二接続部が、略対向して配設され、
前記第二接続部が、前記第一接続部より高い位置に配設され、
前記排水口が、前記第一接続部と前記第二接続部の間に配設されていること、
を特徴とする水槽接続部材を提供する。
【0009】
このような構成を有する本発明の水槽接続部材では、水耕栽培用水槽の後端部に収穫作業用水槽を接続することが可能で、当該接続部近傍の水密性を確実に担保しつつ適宜排水を行って所望しない養液の滞留及びこれによる藻の発生を好適に防止することができる。特に第二接続部が第一接続部より高い位置に配設されているため、第一接続部側(水耕栽培用水槽)から流入した養液が第二接続部側(収穫作業用水槽)に移動することを防止し、確実に排水口に導くことができる。また、上記水密及び排水に係る機能性を確実に維持しつつも簡素な構造を有するため、製造コストを低減することができる。
【0010】
また、上記の本発明の水槽接続部材においては、
前記第二接続部が、前記第一接続部側に下降傾斜していることが望ましい。
【0011】
このような構成を有する本発明の水槽接続部材では、収穫作業用水槽を水槽接続部材側に下降傾斜させた状態で第二接続部に接続することができる。養液が第一接続部側(水耕栽培用水槽)から第二接続部側(収穫作業用水槽)に流入した場合、及び収穫作業時に植物から養液が収穫作業用水槽に垂下した場合でも、これら養液を速やかに水槽接続部材に戻し、排水口から排水することができる。
【0012】
また、上記の本発明においては、
水耕栽培用水槽と、
上記本発明の水槽接続部材と、
排水管と、を具備して構成され、
前記水耕栽培用水槽を前記第一接続部に接続し、前記排水管を前記排水口に接続すること、
を特徴とする水耕栽培用水槽構造をも提供する。
【0013】
このような構成を有する本発明の水耕栽培用水槽構造では、水密性を確実に担保しつつ適宜排水を行って所望しない養液の滞留を好適に防止する水耕栽培用水槽を得ることができる。
【0014】
また、上記の本発明の水耕栽培用水槽構造においては、
前記排水管が、前記複数の水槽接続部材の排水口に接続される略水平排水路と、前記略水平排水路の両端にそれぞれ接続される略垂直排水路と、を具備すること、が好ましい。
【0015】
このような構成を有する本発明の水耕栽培用水槽構造では、複数の水槽接続部材の排水口からの排水を略水平排水路に集約させることができ、これにより配管数を減らすこともできる。また、略水平排水路の両端にそれぞれ接続される略垂直排水路から排水を排出できるため、目詰まりのリスクを低減させることができる。更に、略水平排水路と略垂直排水路とによって、排水管を横方向及び縦方向に接続できるため本数の増減及びレイアウトの設計が自由かつ容易である。
【0016】
また、上記の本発明の水耕栽培用水槽構造においては、
貯水量調整手段を具備することが望ましい。
【0017】
このような構成を有する本発明の水耕栽培用水槽構造では、排水口を囲って養液の排水を意図的に防止し、かつ貯水量調整手段(貯水量調整具)の高さに応じた水位分の養液を貯水して植物の根部を養液内に浸し育苗時に対応することができる。よって、例えば多段構成された水耕栽培装置を用い、各段で異なる栽培工程を実施する場合であっても、状況に応じて簡便に養液の排水(栽培工程)及び養液の貯水(育苗工程)を切替えることができ、水耕栽培全体の作業効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、優れた水密性及び排水性を有し、水耕栽培の各工程に応じて養液の貯水及び排水を切替えることが可能な水槽接続部材及びこれを用いた水耕栽培用水槽構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係る水槽接続部材1を用いた水耕栽培装置51の概要を示す概略側面図である。
図2】水槽接続部材1の構造を示す図であって、図2(a)は、水槽接続部材1を上方から下方視した平面図であり、図2(b)は、図2(a)における矢視Aの側面図であり、図2(c)は、図2(a)における矢視Bの側面図である。
図3】水槽接続部材1の構造を示す図であって、図3(a)は水槽接続部1の斜視図であり、図3(b)は、図2(a)における矢視Cの断面図である。
図4】貯水量調整具9の構造を示す図であって、図4(a)は、貯水量調整具9の平面図であり、図4(b)は、貯水量調整具9の一部を断面視した側面図である。
図5】水槽接続部材1の使用方法を示す図であって、図5(a)は、水槽接続部材1に水耕栽培用水槽53及び収穫作業用水槽55を接続する状態を断面視した模式図であり、図5(b)は、水耕栽培用水槽53及び収穫作業用水槽55を接続した後の水槽接続部材1を断面視した模式図である。
図6】貯水量調整具9を用いた養液の貯水量調整を示す図であって、図6(a)は、貯水量調整具9により養液の排水を堰き止めた状態を示す模式図であり、図6(b)は、設定した水位を超えた際の養液の排水を示す模式図である。
図7】水耕栽培装置51の変形例の構造を示す図であって、図7(a)は、略水平排水路11aの部分を上方からみた概略上面図であり、図7(b)は、図1における矢印Xの方向から水耕栽培装置51をみた図に相当する概略正面図である。
図8図7に示す水耕栽培装置51を矢印Yの方向からみた概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る水槽接続部材及びこれを用いた水耕栽培用水槽構造の代表的な実施形態を、図を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明は図示されるものに限られるものではなく、各図面は本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。更に、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。また、各図に示すように、理解容易のために水耕栽培用水槽の長さ方向をX、幅方向をY、高さ方向をZとして説明する。
【0021】
1.水槽接続部材1の概要
図1を用いて、本実施形態に係る水槽接続部材1の概要を説明する。図1は、本実施形態に係る水槽接続部材1の概要を示す模式図である。図1に示すとおり、水槽接続部材1は、水耕栽培装置51内の水耕栽培用水槽53の後端部に収穫作業用水槽55を接続(連結)するための水槽接続部材1であって、接続部近傍の水密性を確実に担保しつつ、適宜排水を行って所望しない養液の滞留を好適に防止可能とするものである。また、本実施形態の水槽接続部材1は、機能性を維持しつつも簡素な構造を有するため、水耕栽培用水槽53との接続が簡便で多角的に導入障壁を下げるものである。
【0022】
なお、水耕栽培装置51は、天候及び温度、更に害虫等の種々の影響を低減し、植物59の光合成を高効率化しつつ安定した栽培を行うものである。また、水耕栽培用水槽53は、上記水耕栽培装置51の内部に配設された構成部品であって、養液の貯水性及び排水性を良好に得られる略樋状かつ長尺に形成されたものである。水耕栽培用水槽53の内部に養液を貯水し、植生プレート57に植生された植物59の根部を当該養液に浸す役割を担う。
【0023】
本実施形態では、一部用途の異なる二つの水耕栽培用水槽を接続する例を代表して説明する。本実施形態の水槽接続部材1は、水耕栽培用水槽53と収穫作業用水槽55とを接続するものであって、水耕栽培用水槽53は水耕栽培装置51内に配設されて種々の栽培工程で使用する水槽であり、収穫作業用水槽55は水耕栽培装置51の収穫側外部に配設されて栽培可能な植物59が植生された植生プレート57を一時的に載置し、この植生プレート57を支持しつつ植物59の根部に付着した養液の垂下を受け止める等、収穫作業を補助する水槽である。
【0024】
2.水槽接続部材1の構造
次に、図2及び図3を用いて本実施形態に係る水槽接続部材1の構造について詳細に説明する。図2(a)(b)(c)は、本実施形態に係る水槽接続部材1の構造を示す図であって、図2(a)は、水槽接続部材1を上方から下方視した平面図であり、図2(b)は、図2(a)における矢視Aの側面図であり、図2(c)は、図2(a)における矢視Bの側面図である。また、図3(a)及び(b)は、本実施形態に係る水槽接続部材1の構造を示す図であって、図3(a)は水槽接続部1の斜視図であり、図3(b)は、図2(a)における矢視Cの断面図である。
【0025】
図2及び図3に示すとおり水槽接続部材1は、第一接続部3と、第二接続部5と、排水口7と、を具備して構成され、第一接続部3と第二接続部5が、略対向して配設され、第二接続部5が、第一接続部3より高い位置に配設され、排水口7が、第一接続部3と第二接続部5の間に配設して構成されている。
【0026】
水槽接続部材1の構造についてより具体的には、長さ方向Xに延び高さ方向Zに立ち上がる二枚の壁部13Aと、高さ方向Zの下端でこの二枚の壁部13Aをつなぐ床部13Bと、により略コ字状の本体部13が構成され、この本体部13の一方の端部に第一接続部3が配設され、他方の端部に第二接続部5が配設されている。また、本体部13の二枚の壁部13A及び床部13Bは、水耕栽培用水槽53及び収穫作業用水槽55を接続する際にこれらを保持する複数の係止片15を具備している(特に図3(a)参照)。
【0027】
係止片15は、第一接続部3及び第二接続部5の双方の端縁から本体部13内部側に対して距離L1の位置を起点とし、該起点から第一接続部3及び第二接続部5の双方の端縁側に対して寸法L2で形成されており、この係止片15と床部13B(壁部13A)との間で水耕栽培用水槽53(第一接続部3側)及び収穫作業用水槽55(第二接続部5側)を略押圧して強固に保持する(特に図2(a)及び図3(b)参照)。
【0028】
床部13Bの略中央には、この床部13Bを高さ方向Zに貫通する略円状の排水口7が設けられ、更にこの排水口7に対して排水管11を接続可能にする接続ガイド17が高さ方向Zの下方側に向けて配設されている。接続ガイド17は略円筒状であるが、下方に向かって内径が減少する態様を有しており、いわば略先細円筒状である。なお、排水口7の内径は使用する水耕栽培装置51及び接続する水耕栽培用水槽53のサイズに応じて適宜決定すればよく、更に必ずしも円形の貫通孔に限定されるものではなく養液の排水を行えれば種々の形状を採用してもよい(特に図3(a)及び(b)参照)。
【0029】
第一接続部3と第二接続部5は、双方の配設位置の床部13Bの高さを異にすることで、本体部13内部に段差を形成している。この段差についてより具体的には、床部13Bを排水口7の第二接続部5側端縁から第二接続部5側の床部13Bに配設された係止片15の起点までの位置で、第二接続部5側が高さ方向Zの上方に所定量ずらした態様となっている。なお、床部13Bの段差に応じて壁部13Aの上端及び壁部13Aに配設された係止片15の高さ方向Zの位置も第二接続部5側は第一接続部3側より高い位置となる。
【0030】
これにより、第一接続部3で接続した水耕栽培用水槽53から流入した養液が上記段差に衝突するため収穫作業用水槽55にまで到達することが防止され、かつ養液を床部13Bの排水口7に容易に誘導することができる(特に図3(b)参照)。
【0031】
また、第二接続部5が、第一接続部3側に下降傾斜しており、収穫作業用水槽55を水槽接続部材1側に傾斜させた状態で本体部13に接続可能とする特徴を有している。より具体的には、本体部13の第二接続部5側の壁部13A、床部13B、及びこれらに配設された係止部15が第一接続部3側に下降傾斜するようそれぞれ同じ角度θが配されている(特に図3(b)参照)。
【0032】
第二接続部5近傍を上記のように傾斜させて形成することにより、養液が耕栽培用水槽53から本体部13の段差を乗り越えて収穫作業用水槽55側に流入した場合、及び収穫作業時に植物59から養液が収穫作業用水槽55内に垂下した場合でも、これら養液を速やかに水槽接続部材1に戻し、排水口7から排水することができる。なお、壁部13A、床部13B、及び係止片15のサイズは、使用する水耕栽培装置51や接続する水耕栽培用水槽53及び収穫作業用水槽55のサイズに応じて適宜決定することが好ましい。
【0033】
3.水槽接続部材1の使用方法
続いて図5を示し、本実施形態に係る水槽接続部材1の使用方法について詳細に説明する。図5(a)及び(b)は、本実施形態に係る水槽接続部材1の使用方法を示す図であって、図5(a)は、水槽接続部材1に水耕栽培用水槽53及び収穫作業用水槽55を接続する状態を断面視した模式図であり、図5(b)は、水耕栽培用水槽53及び収穫作業用水槽55を接続した後の水槽接続部材1を断面視した模式図である。
【0034】
図5(a)及び(b)に示すとおり、水槽接続部材1は、水耕栽培用水槽53及び収穫作業用水槽55を接続して使用する。まず、水耕栽培用装置51の収穫側において、水耕栽培用水槽53の端部に水槽接続部材1を接近させつつ、双方の方向を合わせる(高さ方向Zの上方に開口側を向ける)。
【0035】
続いて、水耕栽培用水槽53の端部に第一接続部3を高さ方向Zの下方から被せるように当接し、そのまま水槽接続部1を水耕栽培用水槽53側に摺動させて水耕栽培用水槽53の三方の端部を第一接続部3に配設された係止片15に係止させる。これにより、まず水槽接続部材1と水耕栽培用水槽53との接続が完了する。
【0036】
次に、収穫作業用水槽55を水槽接続部材1に接続する。水耕栽培用水槽53の端部に固定された水槽接続部材1に収穫作業用水槽55を接近させつつ、収穫作業用水槽55の方向を水槽接続部材1に合わせる(高さ方向Zの上方に開口側を向ける)。
【0037】
続いて、第二接続部5に収穫作業用水槽55の端部を高さ方向Zの上方から挿入するように当接し、そのまま収穫作業用水槽55を水槽接続部1側に摺動させて収穫作業用水槽55の三方の端部を第二接続部5に配設された係止片15に係止させる。これにより、水槽接続部材1と収穫作業用水槽55との接続が完了する。なお、水槽接続部材1と水耕栽培用水槽53及び収穫作業用水槽55の接続には接着剤等を用いてより強固に固定してもよい。
【0038】
更に、水耕栽培装置51が具備する養液排水用の排水管11を排水口7に接続する。排水管11の端部を排水口7に配設された接続ガイド17に接近させつつ、接続ガイド17の開口と排水管11の端部の開口を対向させ、徐々に接続ガイド17に排水管11を被覆させつつ高さ方向Zの上方に押圧して双方を接続する。これにより、排水口7と排水管11との接続が完了し、双方が連通して水槽接続部材1から排水管11に排水を行うことができる。
【0039】
上述において、本実施形態に係る水槽接続部材1を用いた水耕栽培用水槽53及び収穫作業用水槽55の接続について詳述したが、水槽接続部材1を介して水耕栽培用水槽53と収穫作業用水槽55を一体的に形成した水耕栽培用水槽構造を採用してもよい。
【0040】
4.貯水量調整具9(貯水量調整手段)を用いた養液の貯水量調整
次に、図4及び図6を用いて、貯水量調整具9を用いた養液の貯水量調整方法について詳述する。苗を栽培する際には、育苗工程と栽培工程とがあるが、前者では後者よりも各種水槽における貯水量を多くしておくことが好ましく、図4及び図6に示す貯水量調整具9はこの育苗工程に好適に用いることができる。
【0041】
図4(a)及び(b)は、貯水量調整具9の構造を示す図であって、図4(a)は、貯水量調整具9の平面図であり、図4(b)は、貯水量調整具9の一部を断面視した側面図である。また、図6(a)及び(b)は、貯水量調整具9を用いた養液の貯水量調整を示す図であって、図6(a)は、貯水量調整具9により養液の排水を堰き止めた状態を示す模式図であり、図6(b)は、設定した水位を超えた際の養液の排水を示す模式図である。
【0042】
本実施形態に係る水槽接続部材1は、上述したとおり好適に養液を排水して収穫時の作業性を大幅に向上することができるが、別個の貯水量調整具9を用いれば養液を所望量貯水可能となり育苗時にも対応することができる。
【0043】
図4(a)及び(b)に示すとおり貯水量調整具9は、高さL3及び外径L4を設定して形成された略円筒状の部品であって、水槽接続部材1内部から排水口7内部に挿入し、接続ガイド17の内壁に当接して使用する部品である。貯水量調整具9の外径L4は排水口7の直径より小さく設定すること望ましい。、
【0044】
また、高さL3は、本体部13の床部13Bを基準とした所望する貯水量の水位高さと、水槽接続部材1に貯水量調整具9を載置する際に排水口7から下方へ挿入した挿入深さと、の和とすることが望ましい。更に、貯水量調整具9の上下の端面は平滑に形成することが望ましい。勿論、この貯水量調整具9の構造は、上述した水槽接続部材1の構造に対応させたものであるから、例えば排水口7や接続ガイド17等の態様が異なる場合は、適宜その構造に合わせて形成すればよい。
【0045】
貯水量調整具9を上記のように形成すれば、水槽接続部材1の内部において、排水口7と開口中心を合わせつつ立設させ、かつ排水口7から下方に脱落しないようこれを囲うことができる。即ち、貯水量調整具9を排水口7内で立設させることにより、養液が排水口7から排水されることを意図的かつ一時的に防止し、略高さL3の水位分の養液を水耕栽培用水槽53、水槽接続部材1、及び収穫作業用水槽55内で貯水することができる(特に図6(a)及び(b)参照)。
【0046】
植物59の根部の長さ等に応じて貯水量調整具9の高さL3を調整することで、確実に根部を養液内に浸すことができるため、本実施形態に係る水槽接続部材1及び貯水量調整具9の態様を用いれば、簡便に育苗時に対応することができる。
【0047】
よって、多段構成された水耕栽培装置51を用い、各段で異なる栽培工程を実施する場合であっても、状況に応じて簡便に養液の排水(栽培工程)及び養液の貯水(育苗工程)を切替えることができ、水耕栽培全体の作業効率を向上することができる。
【0048】
5.水耕栽培装置51の変形例
図1に示す水耕栽培装置51の変形例として、図7及び8を用いて異なる態様の排水管11を有する水耕栽培用装置51について説明する。図7は、水耕栽培装置51の変形例の構造を示す図であって、図7(a)は、略水平排水路11aの部分を上方からみた概略上面図であり、図7(b)は、図1における矢印Xの方向から水耕栽培装置51をみた図に相当する概略正面図である。また、図8は、図7の水耕栽培装置51を矢印Yの方向からみた概略側面図である。
【0049】
この変形例に係る水耕栽培装置51は、水耕栽培用水槽53に対応して複数の水槽接続部材1を有しており、複数の水槽接続部材1の排水口7に接続される略水平排水路11aと、略水平排水路11aの両端に排水路接続部11cによってそれぞれ接続される略垂直排水路11bと、を具備する排水管11を有している。即ち、この変形例では、排水管11は水耕栽培装置51の両側から下方に排水する構造となっている。
【0050】
ここで、図7(a)に示すように、略水平排水路11aの上面には、水槽接続部材1の排水口7に続く接続ガイド17を収容して接続する開口19a及び19bが設けられている。開口19aは略円状であり、開口19bは略角丸長方形状(二つの等しい長さの平行線と二つの半円形からなり、陸上競技場の形状)である。
【0051】
なお、図7(a)では説明のために開口19a及び19bの両方を図示しているが、いずれを採用してもよい。開口19bの場合は、接続した接続ガイド17の外面との間に隙間ができるため、空気の出入りを確保でき好ましい。また、複数の開口部7及び接続ガイド17を有する水槽接続部材1を採用することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明してきたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の精神及び教示を逸脱しない範囲でその他の改良例や変形例が存在する。そして、かかる改良例や変形例は全て本発明の技術的範囲に含まれることは、当業者にとっては容易に理解されるところである。例えば図1及び図7に示す水耕栽培装置51において、水耕栽培用水槽53は何段であってもよいし、図7に示す水耕栽培装置51では、矢印Yの方向において水槽接続部材1が8個並んでいるがこれに限定されるわけではない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本実施形態における水槽接続部材は、優れた水密性及び排水性を有し、水耕栽培の各工程に応じて養液の貯水及び排水を切替可能とするものであり、水耕栽培装置において好適に用いることができる。
【0054】
1 水槽接続部材
3 第一接続部
5 第二接続部
7 排水口
9 貯水量調整具
11 排水管
11a 略水平排水路
11b 略垂直排水路
11c 排水路接続部
13 本体部
13A 壁部
13B 床部
15 係止片
17 接続ガイド
19a 開口
19b 開口
51 水耕栽培装置
53 水耕栽培用水槽
55 収穫作業用水槽
57 植生プレート
59 植物
L1 距離
L2 寸法
L3 高さ
L4 外径
θ 角度



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8