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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20230623BHJP
   E05F 11/04 20060101ALI20230623BHJP
   E06B 3/38 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
E06B5/16
E05F11/04
E06B3/38
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020007158
(22)【出願日】2020-01-20
(65)【公開番号】P2021113463
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184066
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 恭
(72)【発明者】
【氏名】三室 智史
(72)【発明者】
【氏名】山田 正義
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-074316(JP,A)
【文献】特開2018-127792(JP,A)
【文献】特開2016-061020(JP,A)
【文献】特開2019-218789(JP,A)
【文献】実開平05-078890(JP,U)
【文献】特開2020-063652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/16
E05F 11/04
E06B 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、枠体の内周に設けられる障子と、障子を開閉するオペレータを備え、
障子は、竪框の見込面のほぼ全幅に亘る補強部材が配置されているとともに、下框と枠体の下の間に設けられた回転軸によって開閉自在に支持されており、
オペレータは、枠体の上枠と障子の上框とを連絡し、回転軸を中心に開放方向へ回転する障子を閉鎖状態に維持するワイヤを有し、
枠体の竪枠は、見込壁と、障子の竪框の見付面に対向する見付壁を有し、見付壁には障子の見付面に対向する加熱膨張材が配置されているとともに、見込壁には見込み方向で開放側の内周面の少なくとも上方部分に加熱により膨張する加熱膨張材が配置されている建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オペレータを操作して開閉することのできる建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オペレータを操作して開閉することのできる外倒し窓が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-167802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、オペレータを操作して開閉する外倒し窓等についても、高い防火性能が求められるようになっている。
【0005】
本発明の実施形態は、オペレータを操作して開閉する外倒し窓等に対して、高い防火性能を付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、枠体と、枠体の内周に設けられる障子と、障子を開閉するオペレータを備え、障子は、竪框の見込面のほぼ全幅に亘る補強部材が配置されているとともに、下框と枠体の下の間に設けられた回転軸によって開閉自在に支持されており、オペレータは、枠体の上枠と障子の上框とを連絡し、回転軸を中心に開放方向へ回転する障子を閉鎖状態に維持するワイヤを有し、枠体の竪枠は、見込壁と、障子の竪框の見付面に対向する見付壁を有し、見付壁には障子の見付面に対向する加熱膨張材が配置されているとともに、見込壁には見込み方向で開放側の内周面の少なくとも上方部分に加熱により膨張する加熱膨張材が配置されている建具である。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態によれば、オペレータを操作して開閉する外倒し窓等に対して、高い防火性能を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る建具の内観図である。
図2】本発明の実施形態に係る建具の竪断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る建具の右側の横断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る建具の右竪枠及び右竪框の横断面図であり、(a)は通常時であり、(b)は加熱により右竪框が変形したときの図である。
図5】本発明の実施形態に係る建具について、内周側から右竪框を見た竪断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る建具の右側の横断面図であり、(a)は火災時にオペレータのワイヤが緩んだときの右側の横断面図であり、(b)は加熱により加熱膨張材が膨張したときの図である。
図7】本発明の実施形態に係る建具の右側の横断面図であり、(a)、(b)は加熱により加熱膨張材が膨張したときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態の建具について、図面を参考にして、説明する。
なお、本実施形態の建具として、躯体開口部に配置され、オペレータが屋内側に露出した状態で配置される外倒し窓を例示して説明するが、建具は外倒し窓に限定されず、例えば内倒し窓等の建具であってもよい。
【0010】
(全体の構成)
本実施形態の建具は、図1に示すように、アルミ等の金属材料からなる上枠11、下枠及び左、右竪枠13,14を四周に組んでなり躯体開口部に固定される枠体1に対して、アルミ等の金属材料からなる上框21、下框22及び左、右竪框23,24を四周に組み内周にガラス等のパネル25が嵌め込まれた障子2が、下枠と下框22と間に設けられたヒンジ部材(回転軸)を中心に外倒し開閉自在に支持されている。
【0011】
枠体1の竪枠13,14と障子2の竪框23,24との間には障子2を開放方向に付勢するダンパ8,8が配置されており、ダンパ8,8の付勢力に抗して障子2を閉鎖状態に維持する、すなわち障子2を開閉操作するオペレータ6のワイヤ6aが枠体1の上枠11と障子2の上框21とを連絡している。
オペレータ6の操作装置61は、操作可能位置に適宜配置されている。
【0012】
上枠11は、図2に示すように、複数の中空部を有し躯体開口部Aの内周に固定される上枠本体部11aと、上枠本体部11aの屋内寄りの内周面から下方に延設された屋内側壁11bを有し、屋内側壁11bの屋内側面に外倒し窓の障子2を開閉するオペレータ6の枠側部材62が固定されている。
【0013】
上枠本体部11aの屋外側端の内周面(下面)及び屋内側壁11bの屋外側面に気密材s,sが設けられており、上枠11と障子2の上框21との間を気密している。また、屋内側壁11bの屋外側面には、加熱膨張材等を保持する膨張材保持溝11cが形成されており、必要に応じて加熱膨張材を配置することができる。
【0014】
下枠12は、複数の中空部を有し躯体開口部Aの内周に固定される下枠本体部12aと、下枠本体部12aの屋内側内周面に立ち上がる屋内側中空壁12bを有し、下枠本体部12aの上面には、障子2を外倒し自在に支持するヒンジ部材7の枠側ウイング71が固定されている。
【0015】
屋内側中空壁12bの屋外側面に気密材sが設けられており、下枠12と障子2の下框22との間を気密している。また、屋内側中空壁12bの屋外側面には、加熱膨張材等を保持する膨張材保持溝12cが形成されており、必要に応じて加熱膨張材を配置することができる。
【0016】
左,右竪枠13,14は、同一の構成を有しているので、以下、右竪枠14を用いて竪框の構成を説明する。
右竪枠14は、図3に示すように、躯体開口部Aに固定される見込壁14aと、見込壁14aの屋内寄りの内周面から内周方向に延設された屋内側見付壁14bを有し、見込壁14aの内周面に外倒し窓の障子2を開放方向に付勢するダンパ8の一端部81が固定されている。
【0017】
屋内側見付壁14bの屋外側面に気密材sが設けられており、右竪枠14と障子2の右竪框24との間を気密している。
また、見込壁14aの屋外側寄りの内周面及び屋内側見付壁14bの屋外側面には、加熱膨張材等を保持する膨張材保持溝14c,14dが形成されている。
【0018】
障子2の上框21は、図2に示すように、中空部を有し内周にガラス間口21dを有する上框本体部21aと、上框本体部21aの屋外側端部から上方に延設される屋外壁部21bを有し、上框本体部21aの屋内側面にはオペレータ6の障子側部材63が固定されている。
ガラス間口21dには、パネル25の上端縁がバックアップ材及びシール材を介して嵌め込まれている。
【0019】
障子2の下框22は、図2に示すように、中空部を有し内周にガラス間口22dを有する下框本体部22aと、下框本体部22aの屋外側端部から下方に延設される屋外壁部22bを有し、下框本体部22aの下面にはヒンジ部材7の障子側ウイング72が固定されている。
【0020】
下框本体部22aの中空部内には、例えばスチール製の補強部材92が設けられている。ガラス間口22dの適宜位置には、アルミ製の短尺部材からなるセッティングブロック221が複数配置され、パネル25の下端縁が緩衝材を介して支持しており、バックアップ材及びシール材を介して嵌め込まれている。
したがって、パネル25の荷重をセッティングブロック221と補強部材92とで支持することができる。
【0021】
右竪框24は、中空部を有する竪框本体部24aと、竪框本体部24aの屋外側端から外周方向に延設された屋外壁部24bと、竪框本体部24aの屋外側端から内周方向に延設されたガラス間口壁部24cと、竪框本体部24aの屋内側内周面に取付けられる押縁241を有しており、ガラス間口壁部24cと押縁241とによってガラス間口24dが形成されている。
【0022】
竪框本体部24aの外周面にはダンパ8の他端部82が固定されており、屋外壁部24bの外周端には竪枠14に当接する気密材sが配置されており、右竪枠14と障子2の右竪框24との間を気密している。
【0023】
以上の本実施形態の外倒し窓においては、上枠11と障子2の上框21とを連絡させたワイヤ6aを備えるオペレータ6を操作して開閉するので、障子2の竪框24の見付壁にハンドル等を設ける必要がなく、障子2の竪框24の見付寸法を小さくして、採光面積を大きく確保することができる。
【0024】
ここで、近年、オペレータ6による開閉操作が可能な外倒し窓においても、高い防火性能が求められている。しかし、見付寸法の小さい外倒し窓の竪框24は、図4(b)に示すように、火災時に竪框本体部24aが熱で変形しやすく、その結果、ガラス等のパネル25を保持することができずに脱落し延焼する可能性がある。
【0025】
また、オペレータ6による開閉操作が可能な外倒し窓は、熱によってオペレータのワイヤが伸びたり滑車が溶融するなどして緩んでしまい、障子2の閉鎖状態が保持できずに枠体1と障子2との間に隙間が生じる可能性がある。そのため、枠体1の各枠材と障子2の各框材との間に加熱膨張材を配置することが好ましい。
しかし、外倒し窓は、下枠12と下框22との間のヒンジ部材7(回転軸)を中心に開閉することから、枠体1の竪枠13,14と障子2の竪框23,24との間に生じる隙間は下方部分と上方部分とで大きさが異なり、加熱膨張材を有効に配置することが煩雑であった。
【0026】
本実施形態の外倒し窓は、オペレータによる開閉操作が可能な外倒し窓の利点を維持しながら、防火性能上の不利を解消することができる。
以下、本実施形態の外倒し窓における防火性能を向上させるための特徴的な構成について、右竪枠14及び右竪框24を用いて説明する。
【0027】
本実施形態の外倒し窓の障子2の右竪框24は、竪框本体部24aの見付寸法が小さいことから、特に、上框21と下框22が固定される部位の間に熱による変形が発生しやすい。そこで、本実施形態の外倒し窓は、図4(a)、図5に示すように、竪框本体部24aの上框21と下框22が固定される部位間における中空部内にスチール等の金属材料からなる長尺平板状の補強部材9が配置されている。
【0028】
補強部材9は、竪框本体部24aの中空部内のガラス間口側見込面に当接して配置されており、右竪框24のガラス間口24dの底壁からビス等の固定手段b1によって固定されている。
【0029】
補強部材9は、竪框本体部24aの中空部の見込幅の寸法とほぼ同程度の見込幅寸法を有しており、見付寸法が小さく形成された竪框本体部24aが熱によって変形してガラス等のパネル25が脱落することを抑制することができる。
【0030】
図5に示すように、竪框24のガラス間口24dの底面には、下框22のガラス間口22dに溜まった水を竪框本体部24aの中空部内に導く排水孔24fが形成されているが、補強部材9を上框21と下框22が固定される部位の間に設けることで排水孔24fを塞ぐことがない。
【0031】
また、図4(a)に示すように、本実施形態の外倒し窓の竪枠14は、見込壁14aの屋外側すなわち見込み方向で開放側の内周面に膨張材保持溝14cが形成されており、膨張材保持溝14cの少なくとも上方部分(例えば、上端から2分の1の範囲)に渡って加熱膨張材f41が配置されている。
従って、図6(a)に示すように、火災時にオペレータ6のワイヤ6aが緩んで竪枠14の室内側見付壁14bの気密材sと竪框24の見付面との当接が離れて隙間が生じた場合であっても、図6(b)に示すように、補強部材9によって竪框24の状態を維持しながら、加熱膨張材f41が膨張することで竪枠14と竪框24との間の屋内外の連通を抑制することができる。
【0032】
なお、竪枠14と竪框24との間を閉塞する加熱膨張材としては、竪枠14の見込壁14aの内周面に配置した加熱膨張材f41のほかに、竪枠14の屋内側見付壁14bの屋外側面に形成された膨張材保持溝14dに右竪框24の屋内側見付面に対向する加熱膨張材f42を配置してもよい。
【0033】
例えば、竪枠14と竪框24との間において、図7(a)に示すような、発生する隙間の比較的小さな竪枠14の下方部分については、屋内側見付壁14bの屋外側に配置された比較的少量の加熱膨張材f42によって竪枠14と竪框24との隙間を閉塞し、図7(b)に示すような、発生する隙間の比較的大きな竪枠14の上方部分(上端から2分の1の範囲)については、竪枠14の見込壁14aの内周面に配置された加熱膨張材f41によって竪枠14と竪框24との隙間を閉塞してもよい。
【0034】
以上のように、本実施形態の建具は、見込み寸法の小さな竪框の見込壁を補強部材によって補強することで、熱による見込壁の変形を防ぎ、竪框によるパネルの保持を維持することができる。
そして、補強部材を板状の部材により形成し、竪框の中空部内のガラス間口側の面に固定することで、竪框の中空部内にスムーズに挿入することができるとともに、固定するためのビス等がガラス間口の中に隠れるし、竪框の外周側にダンパなどの装置を取り付けることの邪魔になることがない。
【0035】
さらに、竪框の中空部内に補強部材を配置してもなお火災時に発生するおそれのあるワイヤのゆるみに対しては、補強部材によって補強された竪框の外周面に向けて膨張する加熱膨張材を竪枠の屋外側内周面に設けることで、枠体と障子との隙間を確実に塞ぐことができる。
【0036】
このとき、竪枠と竪框との間が比較的小さく離れる下方の部位については、竪枠の屋内側見付壁の屋外側に加熱膨張材を設け、竪枠と竪框との間が比較的大きく離れる上方の部位については、竪枠の屋外側内周面に加熱膨張材を設けることで、比較的使用する加熱膨張材の量が少なくて済み、枠体と障子との隙間を効率的に塞ぐことができる。
【0037】
なお、本発明の建具の構成は、上記実施形態の外倒し窓に限定されるものではない。
例えば、窓を開閉するオペレータは、上枠と上框との間に内装されるタイプのオペレータでもよい。
【0038】
また、本実施形態の外倒し窓の上枠11もしくは下枠12に形成された膨張材保持溝にも、必要に応じて加熱膨張材が配置されてもよいことはいうまでもない。
また、各加熱膨張材は、膨張材保持溝によって保持するのではなく、両面接着テープ等によって枠材もしくは框材に取付けられるものであってもよい。
【0039】
また、障子の竪框の中空部に配置される補強部材は、竪框の見込面の全幅に亘って設けられることが好ましいが、製造上中空部と補強部材には遊び部分が必要であることから、補強部材の見込幅寸法は竪框の見込面の少なくとも8割以上(ほぼ全幅)の幅寸法を有していればよい。
また、補強部材は、竪框の中空部内に配置して、竪框の見込面のほぼ全幅に亘って当接する部位を有するものであれば、平板状の一辺もしくは両辺から長手方向に沿って見付壁を有する断面略U字状もしくはL字状のものであってもよい。
【0040】
その他、以上の実施形態は,請求項に記載された発明を限定するものではなく,例示として取り扱われることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0041】
1 :枠体
14 :右竪枠
14a :見込壁
14b :屋内側壁
14c :膨張材保持溝
14d :膨張材保持溝
2 :障子
24 :右竪框
24a :竪框本体部
24b :屋外壁部
24c :ガラス間口壁部
24d :ガラス間口
24f :排水孔
25 :パネル
6 :オペレータ
6a :ワイヤ
7 :ヒンジ部材(回転軸)
9 :補強部材
f41 :加熱膨張材
f42 :加熱膨張材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7