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  • 特許-回路基板および回路基板の製造方法 図1
  • 特許-回路基板および回路基板の製造方法 図2
  • 特許-回路基板および回路基板の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】回路基板および回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20230623BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K1/09 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020115999
(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公開番号】P2022013437
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390022471
【氏名又は名称】アオイ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(72)【発明者】
【氏名】大西 憲貴
【審査官】柴垣 宙央
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-098825(JP,A)
【文献】特開2000-183530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 1/09
H05K 1/02
H01L 23/12
H01L 23/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緻密金属層および多孔質金属層からなる回路である第1の配線層と、
前記第1の配線層を封止する絶縁性樹脂と、
前記絶縁性樹脂上に形成され、前記絶縁性樹脂に形成された開口部を介して前記第1の配線層に接続された、多孔質金属層からなる第2の配線層と、を有し、
前記第1の配線層の前記緻密金属層が暴露面に配置される回路基板。
【請求項2】
請求項1に記載の回路基板において、
前記緻密金属層は、Cu、Tiからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属からなり、
前記多孔質金属層は、Cu、Agからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属からなる、回路基板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回路基板において、
前記第1の配線層の前記緻密金属層の厚さは10μm以下であり、
前記第1の配線層の前記多孔質金属層の厚さは40μm以下である、回路基板。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の回路基板において、
前記第1の配線層の前記多孔質金属層は導電性ペーストを加熱することにより形成される、回路基板。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の回路基板において、
前記第1の配線層の前記緻密金属層はスパッタリングにより形成される、回路基板。
【請求項6】
表面に第1層が形成された基板に、第2層を形成する工程と、
前記第2層の表面に導電性ペーストにより回路パターンを形成する工程と、
導電性ペーストを加熱する工程と、
前記導電性ペーストにより前記回路パターンが形成された領域以外の前記第2層を除去
する工程と、
前記基板を剥離する工程と、を有する回路基板の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の回路基板の製造方法において、
前記基板を剥離する工程において、前記基板から剥離して前記第2層に付着した状態となった前記第1層を除去する、回路基板の製造方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の回路基板の製造方法において、
前記第1層は、Ti、Cr、W、Ta、Ni、C及びMoからなる群から選択される少なくとも1種類の金属を含み、
前記第2層は、Cu、Tiからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属からなる、回路基板の製造方法。
【請求項9】
請求項6から8までのいずれか一項に記載の回路基板の製造方法において、
前記第2層の厚さは10μm以下である、回路基板の製造方法。
【請求項10】
請求項6から9までのいずれか一項に記載の回路基板の製造方法において、
前記第2層はスパッタリングにより形成する、回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板および回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるチップラスト型(RDLファースト型)の半導体装置は、一時的に使用する仮の支持基板(キャリア)上に配線層及び絶縁層を形成し、半導体チップを配置してモールドした後、仮の支持基板を除去する工程を経て製造される。仮の支持基板の除去は、モールドされた半導体チップ、配線層および絶縁層から、仮の支持基板を機械的に引き剥がして分離することにより行われる。
特許文献1には、キャリアが備える極薄銅層上に電気銅めっき層を形成した後、キャリアを剥離することにより製造されたプリント配線板(半導体装置)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-029184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のプリント配線板は、気相法により成膜された極薄銅層の表面に電気銅めっき層が形成された配線層を有する。しかし、配線層を形成するために、極薄銅層の表面にめっき処理を行うため製造工程が煩雑で製造コストがかかるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によると、回路基板は、緻密金属層および多孔質金属層からなる回路を有し、前記緻密金属層が暴露面に配置される。
本発明の第2の態様によると、回路基板の製造方法は、表面に第1層が形成された基板に、第2層を形成する工程と、前記第2層の表面に導電性ペーストにより回路パターンを形成する工程と、導電性ペーストを加熱する工程と、前記導電性ペーストにより前記回路パターンが形成された領域以外の前記第2層を除去する工程と、前記基板を剥離する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、煩雑な工程を用いることなく、緻密金属層および多孔質金属層からなる配線層が形成された回路基板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施の形態による回路基板の概略構成を示す断面図である。
図2】本発明の実施の形態による回路基板の製造方法を説明する図である。
図3】本発明の実施の形態による回路基板の製造方法を説明する図であり、図2に続く工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照しながら、本発明の実施の形態による回路基板について説明する。
図1は、本実施の形態の回路基板30の概略構成を示す断面図である。回路基板30は、緻密金属層15および多孔質金属層16からなる回路である配線層28を有し、緻密金属層15が暴露面(図1における下方の面)に配置される。なお、図1では、回路基板30が封止層24と第2多孔質金属層27とを有している場合の断面図を一例として示している。緻密金属層15は、Cu、Tiからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属からなり、多孔質金属層16は、Cu、Agからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属からなる。緻密金属層15の厚さは10μm以下であり、好ましくは3μm以下、より好ましくは0.3μm程度である。多孔質金属層16の厚さは40μm以下であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm程度である。
【0009】
以下、図2図3を参照して、上述した回路基板30の製造方法について説明する。回路基板30の製造方法は、表面に金属および/または非金属からなる第1層12が形成された支持基板11上に第2層である緻密金属層15を形成させる工程(緻密金属層15形成工程)と、緻密金属層15の表面に導電性ペーストにより回路パターンを形成する工程(回路パターン形成工程)と、導電性ペーストを加熱する工程(焼成工程)と、導電性ペーストにより回路パターンが形成された領域以外の緻密金属層15を除去する工程(除去工程)と、支持基板11を剥離する工程(剥離工程)と、を有する。
以下、各工程についての詳細な説明を行う。
【0010】
(緻密金属層15形成工程)
図2(a)は、製造工程の初期における支持基板11の断面構造を示す図である。支持基板11はガラスからなり、その主面(おもて側の面であって、図中の上方の面)に、第1層12が形成されている。
【0011】
支持基板11の厚さは100~2000μmが好ましい。
第1層12には、例えばCr、W、Ta、Ti、Ni、C及びMoからなる群から選択される少なくとも1種の金属が含まれてよい。第1層12の厚さは10~300nm程度が好ましい。
【0012】
第1層12の上面には、緻密金属層15が形成される。緻密金属層15は、厚さが0.3μm程度のCuを主成分とする層である。なお、緻密金属層15としてTiを主成分としてもよい。緻密金属層15は、真空蒸着、スパッタリング、無電解めっき、電界めっき等により形成することが好ましい。
上記の工程により形成された緻密金属層15は、後述する導電性ペーストにより形成される多孔質金属層16と比較して、緻密な構造を有する。
【0013】
なお、第1層12の形成についてもスパッタリング等の気相成長によることが好ましい。
上記の条件に適した、第1層12が形成された支持基板11が販売されていれば、それを購入して、使用してもよい。
【0014】
(回路パターン形成工程)
図2(b)は、支持基板11上に形成された緻密金属層15の上に、多孔質金属層16を形成した状態を示している。多孔質金属層16は、緻密金属層15の表面に導電性ペーストを塗布してパターンを形成する。この導電性ペーストによるパターンは、回路基板30における回路を形成する部分に相当する。導電性ペーストのパターンは回路基板30の回路のパターンに応じて適宜設定する。緻密金属層15上に導電性ペーストを塗布する方法としては、印刷法が好ましい。印刷法としては、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。
【0015】
導電性ペーストとしては、導電性材料である金属粒子と分散媒とを含む。導電性ペーストは有機材料(樹脂)等のバインダーを含んでいてもよい。金属粒子としては、例えばCu粒子またはAg粒子がある。金属粒子としてCu粒子を用いる場合には、導電性ペーストはバインダーを含まなくてよく、金属粒子としてAg粒子を用いる場合には、導電性ペーストとしてバインダーを含んでよい。
【0016】
分散媒としては特に限定されず、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤等が挙げられる。分散媒としては、上記の1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
(焼成工程)
上記のようにして導電性ペーストが塗布された支持基板11を加熱する焼成処理を施すことにより、導電性ペーストに含まれる分散媒と、バインダーが含まれる場合にはバインダーとが除去され、空隙が生じて多孔質(ポーラス)となり、多孔質金属層16が形成される。形成された多孔質金属層16の厚さは10μm程度である。多孔質金属層16は、緻密金属層15に比べて密度が小さいため、緻密金属層15に比べて体積抵抗値は高い。多孔質金属層16の空隙率は20%以下であることが好ましく、10%以下であればより好ましい。緻密金属層15は、真空蒸着、スパッタリング、無電解めっき、電界めっき等により形成されるため、多孔質金属層16に比べて密度が高く、多孔質金属層16より体積抵抗値が低い。
【0018】
(除去工程)
図2(c)は、多孔質金属層16が形成された後、エッチング処理により不要な緻密金属層15が除去されて回路パターンの形成が完了した状態を示す。エッチング処理としては、例えば、一般的なウエットエッチングやドライエッチングを採用することができる。例えば、支持基板11上に緻密金属層15と多孔質金属層16とを形成した後に、支持基板11をエッチング液に浸漬し、多孔質金属層16が形成された領域(すなわち、導電性ペーストにより回路パターンが形成された領域)以外の緻密金属層15をエッチング液により溶解して除去する。多孔質金属層16は緻密金属層15に比べはるかに厚いので、緻密金属層15がエッチングにより除去されても、充分な厚さの多孔質金属層16が残留する。これにより、所望のパターンの回路を構成する配線層28を形成することができる。
なお、エッチング液としては、公知のエッチング液を使用でき、例えば、HCl、FeCl、CuClの水溶液等が挙げられる。
また、緻密金属層15がTiにより形成されている場合には、ドライエッチングを採用することが好ましい。
【0019】
除去工程の後、支持基板11上の緻密金属層15および多孔質金属層16を封止層24により封止する(封止工程)。
図2(d)は、上記で形成した支持基板11上の緻密金属層15および多孔質金属層16を封止層24で封止した状態を示している。本実施の形態においては、緻密金属層15、多孔質金属層16および支持基板11の主面(図2(d)の上側の面)および側面を覆うように、トランスファー成形、コンプレッションモールド法などにより樹脂による封止層24を形成する。封止層24として用いる樹脂の好ましい例としては、P E T 樹脂、P E N 樹脂、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ナイロン樹脂、液晶ポリマー、P E E K 樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、P T F E 樹脂、E T F E 樹脂等が挙げられる。
【0020】
封止工程により形成された封止層24に開口部を設ける(開口工程)。
図3(a)は、封止工程により形成された封止層24に開口部26が設けられた状態を示している。この開口部26は、配線層28の上部(すなわち、多孔質金属層16の最上面)の少なくとも一部を露出するために形成される。開口部26は、例えばレーザ加工により形成される。
【0021】
開口工程により形成された開口部26に、第2多孔質金属層27を形成する。
図3(b)は、第2多孔質金属層27の形状に応じて、開口部26を含む所定の範囲に、導電性ペーストが塗布された状態を示している。第2多孔質金属層27は、上述した多孔質金属層16を形成した場合と同様の導電性ペーストを、開口部26を含む所定の範囲に塗布する。導電性ペーストを塗布する方法としては、印刷法が好ましい。印刷法としては、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。導電性ペーストが塗布された支持基板11を加熱する焼成処理を施すことにより、導電性ペーストに含まれる分散媒と、バインダーが含まれる場合にはバインダーとが除去され、第2多孔質金属層27が形成される。
以上の工程により、支持基板11には、封止層24、第2多孔質金属層27、及び配線層28(緻密金属層15及び多孔質金属層16)からなる積層体29が形成される。
【0022】
(剥離工程)
上記のようにして形成された積層体29を支持基板11から剥離する。剥離の際には、支持基板11へ、機械的、物理的なストレスを加えることにより剥離のきっかけを作り、引き剥がしを行う。
【0023】
次に、支持基板11から剥離した積層体29から、剥離面に残存する第1層12を除去する。第1層12の除去についても、ドライエッチングまたはウエットエッチング等の公知の一般的な除去方法を使用することができる。上記のようにして第1層12が除去されることにより、緻密金属層15が回路基板30の外部に暴露する暴露面(図1における下方の面)に配置された図1に示す回路基板30を製造することができる。
【0024】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)回路基板30は、緻密金属層15および多孔質金属層16からなる回路である配線層28を有し、緻密金属層15が暴露面に配置される。これにより、機械的特性の脆弱な多孔質金属層16のうち、直接外力の加わる表面のみを緻密金属層15で保護することができる。また、体積抵抗率を下げることが可能である。
【0025】
(2)回路基板30の製造方法は、緻密金属層15形成工程と、回路パターン形成工程と、焼成工程と、除去工程と、剥離工程とを含む。緻密金属層15形成工程では、表面に第1層12が形成された支持基板11に、第2層である緻密金属層15を形成する。回路パターン形成工程では、緻密金属層15の表面に導電性ペーストにより回路パターンを形成する。焼成工程では、導電性ペーストを加熱して多孔質金属層16を形成する。除去工程では、導電性ペーストにより回路パターンが形成された領域以外の緻密金属層15を除去する。剥離工程では、支持基板11を剥離する。これにより、めっき等を用いる場合と比較して、多孔質金属層16を簡便な工程にて形成できる。そして、多孔質金属層16のうち、直接外力の加わる表面のみを緻密金属層15で保護することができる。
【0026】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
11…支持基板、12…第1層、
15…緻密金属層、16…多孔質金属層、
24…封止層、28…配線層、
30…回路基板
図1
図2
図3