(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-22
(45)【発行日】2023-06-30
(54)【発明の名称】ポット用フィルム及び水耕栽培ポット
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20230623BHJP
A01G 13/00 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
A01G31/00 617
A01G13/00 301A
(21)【出願番号】P 2020198860
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2021-08-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500559972
【氏名又は名称】日本ロックウール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】多田 亘児
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-158140(JP,U)
【文献】特開2004-166541(JP,A)
【文献】特開2000-4686(JP,A)
【文献】実開昭55-63653(JP,U)
【文献】実開平6-9440(JP,U)
【文献】実開昭49-44747(JP,U)
【文献】実開昭63-127349(JP,U)
【文献】実開平6-60335(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00
A01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象植物を生育する水耕栽培ポットにおいて、保水性を有するポット本体の栽培面を覆うためのポット用フィルムであって、
前記対象植物が通過する第1開口部を有し、
前記第1開口部は、互いに交差する複数の線状切断部によって形成され、
阻害対象植物の光合成に利用される波長帯域において、光透過率が
0.48%以下であり、
順に、
第1白色系フィルムと、
黒色系フィルムと、
第2白色系フィルムと、
が積層した積層体を備え、
色彩値において、前記積層体のおもて面およびうら面のL値が70~80であり、
色彩値において、前記積層体のおもて面およびうら面のa値が-1~-5であり、b値が-5~-10であり、
前記第1白色系フィルムおよび前記第2白色系フィルムが低密度ポリエチレンフィルムであり、
前記黒色系フィルムが低密度ポリエチレンフィルムである、ポット用フィルム。
【請求項2】
前記ポット本体に液体を供給するための少なくとも1つの第2開口部を有し、前記第2開口部は、互いに交差する複数の線状切断部によって形成される、請求項1に記載のポット用フィルム。
【請求項3】
機械的強度が0.6kgf以上である、請求項1または2に記載のポット用フィルム。
【請求項4】
厚さが0.05~0.3mmである、請求項1~3のいずれかに記載のポット用フィルム。
【請求項5】
一対の前記第2開口部が、前記第1開口部を挟むように配置されている、請求項2に記載のポット用フィルム。
【請求項6】
前記第1開口部の最大開口面積が、全体面積の30~50%である、請求項1~5のいずれかに記載のポット用フィルム。
【請求項7】
対象植物を生育する水耕栽培ポットであって、
請求項1~6のいずれかに記載のポット用フィルムと、
前記ポット本体と、を備える水耕栽培ポット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポット用フィルム及び該ポット用フィルムを備える水耕栽培ポットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土面を覆うことで雑草の生育を防止するカバーが提案されている。(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたカバーは、中央部に円形のミシン線が形成されていることで、生育する対象植物の茎の太さに応じて中央部を切り取り、開口の大きさが調節可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロックウールポット等の水耕栽培用のポットにおいても、対象植物以外に藻類等の植物が意図せずに生育してしまうことがあった。藻類等が生育することによって対象植物が生育しにくくなってしまうため、対象植物以外の植物の生育を阻害することが望まれていた。そこで、光を透過しにくいフィルムをカバーとして用いることにより、対象植物以外の植物(阻害対象植物)の光合成を阻害する方法が考えられる。
【0005】
ところで、水耕栽培においては、ロックウール等によって構成される保水性のポット本体によって対象植物を支持するとともに、このポット本体に対して水分や肥料等を供給する必要があり、対象植物が通過する開口部以外にも点滴用の開口部を形成する必要がある。これらの開口部は、通過する対象物に対して大きすぎると、隙間が形成されて光が通過しやすくなってしまうため、開口寸法が調節可能であることが好ましい。しかしながら、光を透過しにくい部材によってフィルムが形成構成されている場合、特許文献1に記載されたようなミシン線を形成することが困難となってしまう可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、容易に製造することができるとともに阻害対象植物の生育を抑制することができるポット用フィルム及び該ポット用フィルムを備える水耕栽培ポットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のポット用フィルムは、対象植物を生育する水耕栽培ポットにおいて、保水性を有するポット本体の栽培面を覆うためのポット用フィルムであって、前記対象植物が通過する第1開口部を有し、前記第1開口部は、互いに交差する複数の線状切断部によって形成され、阻害対象植物の光合成に利用される波長帯域において、光透過率が0.5%以下である。
【0008】
以上のような本発明によれば、ポット用フィルムにおいて、阻害対象植物の光合成に利用される波長帯域(以下、光合成帯域とする)の光透過率が、0.5%以下であることで、阻害対象植物による光合成を阻害し、生育を抑制することができる。尚、ポット用フィルムの光透過率は、使用地域における通常の日光の強さを基準としたものであればよく、例えば照度176000ルクスを基準としたものであればよい。また、光合成帯域は、阻害対象植物の種類によって定まり、例えば可視光域(約400~700nm)であればよい。
【0009】
また、第1開口部が、互いに交差する複数の線状切断部によって形成されていることで、これらの開口部には、少なくとも2本の線状切断部による辺と、フィルム本体と連続する辺と、によって囲まれた可動部が形成される。開口部を通過する対象植物や点滴用のチューブ等の太さに応じて可動部を変形させることにより、開口部の実質的な開口寸法を調節して隙間が形成されにくくし、光の通過を抑制することができる。このように開口寸法が調節可能な開口部は、線状切断部によって形成されることから、ミシン線等を形成することで開口部の開口寸法が調節可能な構成と比較して加工が容易であり、ポット用フィルムを容易に製造することができる。
【0010】
また、本発明のポット用フィルムでは、順に、第1白色系フィルムと、黒色系フィルムと、第2白色系フィルムと、が積層した積層体を備え、色彩値において、前記積層体のおもて面およびうら面のL値が70~80であってもよい。
【0011】
ポット用フィルムがめくれ上がると、ポット用フィルムによるポット本体への光の遮蔽が出来なくなることで、ポット本体において阻害対象植物が生育しやすい環境となってしまう。ただし、このような構成であれば、対象植物を生育中にポット用フィルムが変形してめくれ上がることを抑制することができる。その結果として、ポット本体における阻害対象植物の生育を抑制することができる。
【0012】
また、本発明のポット用フィルムでは、色彩値において、前記積層体のおもて面およびうら面のa値が-1~-5であり、b値が-5~-10であってもよい。
【0013】
このような構成であれば、対象植物を生育中にポット用フィルムが変形してめくれ上がることを抑制することができる。
【0014】
また、本発明のポット用フィルムでは、前記第1白色系フィルムおよび前記第2白色系フィルムが低密度ポリエチレンフィルムであり、前記黒色系フィルムが高密度ポリエチレンフィルムであってもよい。
【0015】
このような構成であれば、対象植物を生育中にポット用フィルムが変形してめくれ上がることを抑制することができる。
【0016】
また、本発明のポット用フィルムでは、前記ポット本体に液体を供給するための少なくとも1つの第2開口部を有し、前記第2開口部は、互いに交差する複数の線状切断部によって形成されてもよい。
【0017】
第2開口部が、互いに交差する複数の線状切断部によって形成されていることで、これらの開口部には、少なくとも2本の線状切断部による辺と、フィルム本体と連続する辺と、によって囲まれた可動部が形成される。開口部を通過する対象植物や点滴用のチューブ等の太さに応じて可動部を変形させることにより、開口部の実質的な開口寸法を調節して隙間が形成されにくくし、光の通過を抑制することができる。このように開口寸法が調節可能な開口部は、線状切断部によって形成されることから、ミシン線等を形成することで開口部の開口寸法が調節可能な構成と比較して加工が容易であり、ポット用フィルムを容易に製造することができる。
【0018】
また、第2開口部を通じてポット本体に供給される液体は、例えば水分や養分等を含むものであればよい。
【0019】
また、本発明のポット用フィルムでは、機械的強度が0.6kgf以上であってもよい。
【0020】
このような構成によれば、使用時にポット用フィルムの損傷を抑制することができる。一方、機械的強度が低すぎると、例えば線状切断部に連続するようにポット用フィルムが切断されてしまうといった損傷が生じてしまうことがある。尚、フィルムの機械的強度とは、フィルムに対して引っ張る力を加えた際に破断に耐えられる力の大きさを意味する。
【0021】
また、本発明のポット用フィルムでは、厚さが0.05~0.3mmであってもよい。
【0022】
このような構成によれば、ポット用フィルムの機械的強度を確保しやすく、且つ、取り扱いが容易となる。一方、ポット用フィルムが薄すぎると、材質によっては機械的強度を確保しにくくなる場合があり、厚すぎると、変形させにくくなって扱いにくくなる場合がある。
【0023】
また、本発明のポット用フィルムでは、一対の前記第2開口部が、前記第1開口部を挟むように配置されていてもよい。
【0024】
このような構成によれば、ポット本体の全体に対し、水分や肥料、薬品等を均等に供給しやすくすることができる。
【0025】
また、本発明のポット用フィルムでは、前記第1開口部の最大開口面積が、全体面積の30~50%であってもよい。
【0026】
このような構成によれば、様々な太さの対象植物に対応することができ、且つ、第1開口部に隙間が形成されにくい。一方、最大開口面積が小さすぎると、対象植物が太い場合に通過させにくくなってしまう場合がある。また、最大開口面積が大きすぎると、可動部を変形させた際に隙間が大きくなってしまう場合がある。
【0027】
一方、本発明の水耕栽培ポットは、対象植物を生育する水耕栽培ポットであって、上記のいずれかに記載のポット用フィルムと、前記ポット本体と、を備える。
【0028】
このような本発明の水耕栽培ポットによれば、上記のポット用フィルムと同様に、光透過率が0.5%以下であり、互いに交差する複数の線状切断部によって第1開口部が形成されていることで、容易に製造することができるとともに阻害対象植物の生育を抑制することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上のような本発明のポット用フィルム及び水耕栽培ポットによれば、光透過率が0.5%以下であり、互いに交差する複数の線状切断部によって開口部が形成されていることで、容易に製造することができるとともに阻害対象植物の生育を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態に係る水耕栽培ポットを示す斜視図である。
【
図3】前記水耕栽培ポットにおいて開口部が最も開口した様子を示す平面図である。
【
図5】本発明の変形例に係る水耕栽培ポットのポット用フィルムを示す平面図である。
【
図6】本発明の他の変形例に係る水耕栽培ポットのポット用フィルムの開口部を示す平面図である。
【
図7】本発明の実施例のポット用フィルムを用いた場合及び用いない場合のポット本体の温度変化を示すグラフである。
【
図8】藻の発生抑制の評価を行う前(
図8(a))、及び水耕栽培ポットを日光が照射される場所に1週間放置した後(
図8(b))の実施例10及び参考例1のポット用フィルムのめくれ上がりの状態を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の水耕栽培ポット1は、
図1に示すように、ポット用フィルム2と、保水性のポット本体3と、を備え、例えばパプリカやトマト等の対象植物を生育するために用いられる。本実施形態では、鉛直方向をZ方向とし、水平面内の2方向をX方向及びY方向とする。
【0032】
ポット用フィルム2には、ポット本体3において意図せずに育成してしまう藻類を阻害対象植物とし、阻害対象植物の生育を阻害するものであって、
図2にも示すように、対象植物が通過する第1開口部21と、ポット本体3に液体を供給することのできる一対の第2開口部22、23と、スリット24と、が形成されている。本実施形態では、ポット用フィルム2は、各辺がX方向又はY方向に沿って延びるように配置されているものとする。
【0033】
第1開口部21は、ポット用フィルム2の中央部に配置され、互いに交差する4本の線状切断部L1~L4によって形成されている。線状切断部L1はX方向に沿って延びており、線状切断部L2はY方向に沿って延びており、線状切断部L3はX方向に対して略45°傾斜して延びており、線状切断部L4は線状切断部L3に略直交するように延びている。4本の線状切断部L1~L4は、中心点Oにおいて交差している。
【0034】
X方向の一方側(
図2における右側)において線状切断部L3の端部と線状切断部L4の端部とを仮想的に結ぶ線分である開口端縁L5は、Y方向に沿って延びており、X方向の他方側において線状切断部L3の端部と線状切断部L4の端部とを仮想的に結ぶ線分である開口端縁L6は、Y方向に沿って延びており、Y方向の一方側(
図2における上側)において線状切断部L3の端部と線状切断部L4の端部とを仮想的に結ぶ線分である開口端縁L7は、X方向に沿って延びており、Y方向の他方側において線状切断部L3の端部と線状切断部L4の端部とを仮想的に結ぶ線分である開口端縁L8は、X方向に沿って延びている。このような開口端縁L5~L8によって正方形が形成される。即ち、線状切断部L3、L4が、開口端縁L5~L8によって形成される正方形の対角線となっている。また、線状切断部L1、L2の端部は、開口端縁L5~L8上に位置する。
【0035】
第1開口部21には、線状切断部L1と線状切断部L3と開口端縁L5とによって囲まれた三角形状の可動部21Aが形成されている。同様に、第1開口部21には、線状切断部L1~L4のうち2本と、開口端縁L5~L8のうち1本と、によって可動部21B~21Hが形成されている。8つの可動部21A~21Hは、線状切断部L1~L4において他の可動部と切り離されており、開口端縁L5~L8においてフィルム本体(ポット用フィルム2のうち第1開口部21及び第2開口部22を除く部分)20と連続している。
【0036】
可動部21A~21Hは、開口縁部L5~L8を基端としてまくれ上がるように変形可能となっている。即ち、可動部21A~21Hは、XY平面から外れるように移動可能となっている。全ての可動部21A~21Hが、フィルム本体20に対して垂直になるように変形すると、
図3に示すように、第1開口部21が最も大きく開口した状態(最大開口状態)となる。
【0037】
第1開口部21には、
図4に示すように、対象植物の茎Pが通過する。このとき、可動部21A~21Hの先端(中心点Oに相当する部分)及びその近傍が茎Pに接触する。茎Pが太いほど可動部21A~21Hが大きくまくれ上がり、可動部21A~21Hの先端同士を仮想的に結ぶことによって形成される実質開口が大きくなる。即ち、第1開口部21の実質的な開口寸法が調節可能となっている。また、可動部21A~21Hがまくれ上がった際、隣り合う可動部21A~21H同士の間に多少の隙間が形成されるものの、開口端縁L5~L8によって形成される正方形全体が開口する場合と比較して、可動部21A~21Hによって光の通過を遮ることができるようになっている。
【0038】
尚、
図4では、可動部21A~21Hは後述する凹部311から遠ざかる方向に移動しているが、凹部311内に入り込む方向に移動してもよい。
【0039】
第2開口部22、23には、第1開口部21と同様に、それぞれ4本の線状切断部が形成されており、その結果、4本の開口縁部と、8つの可動部が形成されている。従って、第2開口部22、23は、第1開口部21と同様に実質的な開口寸法が調節可能となっている。また、一対の第2開口部22、23は、第1開口部21をY方向から挟むように配置されている。
【0040】
第2開口部22、23には、液体が通過可能なチューブや、液体を収容した容器の先端部等の点滴手段が差し込まれることにより、ポット本体3に水分が供給されたり、溶液中に溶解又は分散された肥料(養分)が供給されたりする。尚、第2開口部22、23に点滴手段が差し込まれる際、可動部は栽培面31に潜り込むように移動してもよいし、栽培面31から離れるように移動してもよい。
【0041】
スリット24は、線状切断部L1からポット用フィルム2の外縁にまで連続するとともにX方向に沿って延びる切断部である。対象植物が既に植えられたポット本体3に対してポット用フィルム2を被せる際、対象植物の茎Pがスリット24を通過して第1開口部21内に位置付けられるようになっている。
【0042】
ポット本体3は、例えばロックウール等の鉱物繊維によって直方体のブロック状に形成され、その上面が栽培面31となっている。尚、ポット本体は、保水性材料によって構成されていればよく、鉱物繊維によって構成されたものに限定されない。例えば、ガラスや金属、樹脂等を繊維状に形成したものや、培土やヤシガラなどの有機質資材によってポット本体を構成してもよい。
【0043】
栽培面31には凹部311が形成されており、対象植物の根が配置されるようになっている。栽培面31の全体がポット用フィルム2によって覆われており、即ち、栽培面31よりもポット用フィルム2の方が大きく形成されている。例えば、ポット用フィルム2の一辺の長さが、栽培面31の一辺の長さの1~1.5倍程度、好ましくは1.1~1.3倍程度、より好ましくは1.1~1.2倍程度となっており、ポット用フィルム2の全体面積が、栽培面31の全体面積の1~2.25倍程度、好ましくは1.21~1.69倍程度、より好ましくは、1.21~1.44倍程度となっている。図示の例では、平面視円状の凹部311の直径と、第1開口部21の開口端縁L5~L8の長さと、が略等しくなっているが、凹部311の直径は、開口端縁L5~L8の長さよりも大きくてもよいし小さくてもよい。凹部311に配置された対象植物の根には、ポット本体3に蓄えられた水が供給される。
【0044】
ポット本体3の外周面(栽培面31及び底面32以外の面)には、保護用のフィルム4が巻き付けられており、作業者が素手でポット本体3を持つことができるようになっている。
【0045】
ここで、ポット用フィルム2の材質、寸法及び各種特性について説明する。ポット用フィルム2は、フィルム4と同様の材質によって構成することができ、例えばポリエチレンによって構成することができる。これにより、ポット用フィルム2は、撥水性及び断熱性を有している。ポット用フィルム2は、例えば一辺の長さが110~150mm、好ましくは110~140mm、より好ましくは120~130mmの正方形状に形成される。また、ポット用フィルム2の厚さは、0.05~0.3mm、好ましくは0.05~0.2mm、0.05~0.08mm、より好ましくは0.05~0.1mmであり、その他0.05~0.08mmや0.05~0.07mmとしたり、例えば0.12、0.15、0.18又は0.20mmとしたりすることもできる。ポット用フィルム2の機械的強度は、0.6~1.8kgf、好ましくは0.75~1.4kgf、より好ましくは0.9~1.4kgfとなっている。
【0046】
例えば、ポット用フィルム2の表面(栽培面31とは反対側を向く面)2Aを光の反射面とし、裏面(栽培面31側を向く面)2Bを光の吸収面とすることができる。表面2Aは、少なくとも、阻害対象植物の光合成に利用される波長帯域(光合成帯域)の光を反射するように形成されており、例えば白色や赤色であればよい。また、裏面2Bを光の吸収面とする場合には、少なくとも、光合成帯域の光を吸収するように形成されており、例えば黒色や緑色であればよい。尚、光合成帯域は、例えば可視光域(約400~700nm)であればよい。
【0047】
このような構成であれば、ポット用フィルム2を透過したり開口部21~23の隙間を通過したりすることで栽培面31に到達した光は、栽培面31によって反射されてポット用フィルム2の裏面2Bに照射される。この裏面2Bに対する照射光は、吸収面である裏面2Bによって吸収される。従って、裏面2Bに到達した光が栽培面31に再照射されることが抑制されている。
【0048】
また、ポット用フィルム2としては、順に、第1白色系フィルムと、黒色系フィルムと、第2白色系フィルムと、が積層した積層体を備えてもよい。この場合、表面2Aと裏面2Bが白色系となり、内部に黒色系フィルムが挟まれたポット用フィルムとなる。なお、第1白色系フィルムのおもて面を表面2Aとし、第2白色系フィルムのおもて面を裏面2Bとしてもよく、第1白色系フィルムのおもて面を裏面2Bとし、第2白色系フィルムのおもて面を表面2Aとしてもよい。
【0049】
ポット用フィルム2をこのような白色系/黒色系/白色系の3層構造の積層体とした場合、表面2Aが光の反射面となる。また、裏面2Bも光の反射面となるが、黒色系フィルムによって光が吸収されるため、ポット用フィルム2を透過して栽培面31に到達する光が少ない。そのため、裏面2Bに到達して栽培面31に再照射される光が対象植物へ与える影響は極めて少なく、また、栽培面31における阻害対象植物による光合成を阻害することができる。
【0050】
ここで、白色系フィルムは、白色フィルムのみならず、白色を基本とし、赤、緑、黄、青、黒等の色が一色または複数混じったフィルムであってもよい。なお、第1白色系フィルムと第2白色系フィルムとは、まくれ上がりの点より同一色が好ましい。
【0051】
また、黒色系フィルムは、黒色フィルムのみならず、黒色を基本とし、赤、緑、黄、青、黒等の色が一色または複数混じったフィルムであってもよい。
【0052】
ポット用フィルム2を白色系/黒色系/白色系の3層構造の積層体とした場合、色彩値において、積層体のおもて面(表面2A)およびうら面(裏面2B)のL値が70~80であれば、表面2Aおよび裏面2Bが光の反射面として機能する。なお、L値が70未満の場合、光の反射性能が低下するおそれがあり、阻害対象植物による光合成を阻害することができない場合がある。なお、L値は80以上であっても問題ない。
【0053】
また、色彩値において、積層体のおもて面およびうら面のa値が-1~-5であり、b値が-5~-10であってもよい。すなわち、積層体のおもて面およびうら面が白色であるのみならず、白色を基本とし、赤、緑、黄、青、黒等の色が一色または複数混じった色相であってもよい。a値およびb値が上記範囲であれば、表面2Aおよび裏面2Bが光の反射面として機能する。なお、a値およびb値が上記範囲から外れる場合、光の反射性能が低下するおそれがあり、阻害対象植物による光合成を阻害することができない場合がある。
【0054】
対象植物を生育中に、ポット用フィルムが光や熱によって変形してめくれ上がると、ポット用フィルムによるポット本体への光の遮蔽が出来なくなることで、栽培面31が露出してしまい、これにより阻害対象植物による光合成を阻害できなくなる場合がある。ただし、ポット用フィルム2をこのような白色系/黒色系/白色系の3層構造の積層体とした場合、対象植物を生育中にポット用フィルムが変形してめくれ上がることを抑制することができる。その結果として、ポット本体における阻害対象植物の生育を抑制することができる。
【0055】
第1白色系フィルムおよび第2白色系フィルムが低密度ポリエチレンフィルム(LDPE)であり、黒色系フィルムが低密度ポリエチレンフィルム(LDPE)であってもよい。いわゆる硬質のポリエチレンと軟質のポリエチレンを積層することで、ポット用フィルムの変形の抑制効果が期待でき、めくれ上がりを抑制することができる。
【0056】
ポット用フィルム2は、光合成帯域における光透過率が、水耕栽培ポット1の使用地域における通常の日光の強さ(例えば照度176000ルクス)を基準として0.5%以下となっている。例えば、フィルム無の条件で176000ルクスの照度が計測される場合に、フィルム有の条件で880ルクスの照度が計測されるような光透過率であればよい。尚、ポット用フィルム2の光透過率の基準となる指標は、照度に限定されず、光度エネルギーや光束、光度、輝度等であってもよい。
【0057】
また、第1開口部21の最大開口面積(開口端縁L5~L8によって形成される正方形の面積)が、ポット用フィルム2の全体面積の30~50%、好ましくは30~40%、より好ましくは30~35%となっている。また、第2開口部22、23の最大開口面積が、ポット用フィルム2の全体面積の4~13%、好ましくは6~10%、より好ましくは8~10%となっている。
【0058】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。即ち、ポット用フィルム2の光合成帯域における光透過率が0.5%以下であることで、阻害対象植物による光合成を阻害し、生育を抑制することができる。
【0059】
また、第1開口部21及び第2開口部22、23が、互いに交差する複数の線状切断部によって形成され、可動部が形成されていることで、開口部21~23を通過する対象植物や点滴手段の太さに応じて可動部を変形させることにより、開口部21~23の実質的な開口寸法を調節して隙間が形成されにくくし、光の通過を抑制することができる。このように実質的な開口寸法が調節可能な開口部21~23は、線状切断部によって形成されることから加工が容易であり、ポット用フィルム2を容易に製造することができる。
【0060】
また、可動部がフィルム本体20から切り離されないことから、フィルムの一部を切り取って開口を形成する構成と比較して、廃棄物を発生しにくくすることができる。
【0061】
また、ポット用フィルム2の機械的強度が0.6kgf以上、好ましくは0.75kgf以上、より好ましくは0.9kgf以上であることで、使用時に損傷を抑制することができる。一方、ポット用フィルム2の機械的強度が低すぎると、例えば線状切断部L1~L4に連続するようにポット用フィルムが切断されてしまう(即ち開口部21~23が意図せずに拡がってしまう)といった損傷が生じてしまうことがある。
【0062】
また、ポット用フィルム2の厚さが0.05~0.3mmであることで、機械的強度を確保しやすく、且つ、取り扱いが容易となる。一方、ポット用フィルム2が薄すぎると、材質によっては機械的強度を確保しにくくなる場合があり、厚すぎると、変形させにくくなって扱いにくくなる場合がある。
【0063】
また、一対の第2開口部22、23が第1開口部21を挟むように配置されていることで、ポット本体3の全体に対し、水分や肥料を均等に供給しやすくすることができる。さらに、複数の水耕栽培ポット1を所定方向に整列配置して苗を育てる場合、一対の第2開口部22、23が第1開口部21を挟むように配置されていることで、複数の水耕栽培ポット1の第2開口部22を所定方向に沿って一列に並べるとともに、複数の水耕栽培ポット1の第2開口部23を所定方向に沿って一列に並べることができる。これにより、液体(養分、水分等)を注入するための注入具(例えばスポイト状やペグ状の用具(ドリッパー))を第2開口部22、23に挿通する作業効率を極めて向上させることができる。また、第2開口部が少なくとも一つ形成されていれば、第1開口部21に挿通される苗等の植物と、第2開口部に挿通される注入具とによって、ポット用フィルム2をポット本体3に対して位置決め固定(又は係止)することができ、風雨や虫等によりポット用フィルム2がポット本体3から飛ばされたり外れたりすることを抑制することができる。
【0064】
また、第1開口部21の最大開口面積が、ポット用フィルム2の全体面積の30~50%であることで、様々な太さの対象植物に対応することができ、且つ、第1開口部21に隙間が形成されにくい。一方、最大開口面積が小さすぎると、対象植物が太い場合に通過させにくくなってしまう場合がある。また、最大開口面積が大きすぎると、可動部21A~21Hを変形させた際に隙間が大きくなってしまう場合がある。
【0065】
また、ポット用フィルム2が撥水性を有する部材によって形成されていることから、ポット本体3に蓄えられた水が蒸発した際に、この水分が通過しにくい。従って、ポット本体3の含水率の低下を抑制することができる。
【0066】
また、ポット用フィルム2が断熱性を有する部材によって形成されていることから、水耕栽培ポット1の外的環境(日照量や気温等)が変化した際に、ポット本体3内の温度変化を小さくすることができる。従って、対象植物の生育環境を良好なものとすることができる。
【0067】
また、ポット用フィルム2に3つの開口部21~23が形成されていることから、第1開口部21において対象植物が通過し、一対の第2開口部22、23のうち少なくとも一方において点滴手段が通過した場合に、ポット本体3に対してポット用フィルム2が平行移動したり回転したりすることを抑制することができる。
【0068】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0069】
例えば、前記実施形態では、一対の第2開口部22、23がY方向から第1開口部21を挟むように配置されているものとしたが、一対の第2開口部は、X方向から第1開口部を挟んでいてもよいし、
図5に示すように、X方向に対して傾斜した方向から第1開口部を挟んでいてもよい。
図5の例では、一対の第2開口部24、25が、正方形状の第1開口部21の対角線の延長線上に配置されている。また、ポット用フィルムには、第1開口部を囲むように3つ以上の第2開口部が形成されていてもよい。
【0070】
また、ポット本体3内において液体が拡散されやすく、水分や肥料の分布に偏りが生じにくい場合には、一対の第2開口部が第1開口部を挟まない構成としてもよいし、1つの第2開口部のみが形成される構成としてもよい。
【0071】
また、前記実施形態では、第1開口部21が4本の線状切断部L1~L4によって形成されているものとしたが、第1開口部は、互いに交差する少なくとも2本の線状切断部によって形成されていればよい。例えば、
図6に示すように、2本の線状切断部L11、L12が略直交することにより、第1開口部26が形成されていてもよい。第2開口部も同様に、互いに交差する少なくとも2本の線状切断部によって形成されていればよい。
【0072】
また、前記実施形態では、ポット用フィルム2の機械的強度が0.6~1.8kgfであり、厚さが0.05~0.3mmであり、第1開口部21の最大開口面積がポット用フィルム2の全体面積の30~50%であるものとしたが、前記実施形態に示す寸法や特性等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は前記実施形態により限定的に解釈されるべきものではない。
【0073】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0075】
〈試験例1〉
試験例1では、以下の試験によりポット用フィルムによる光透過率、藻の発生の抑制効果、ポット本体の温度変化、およびポット本体の水分量変化について検証した。
【0076】
水耕栽培ポットにおいて、ポット本体の栽培面を、表1に示すような実施例1~9及び比較例1~5のポット用フィルムによって覆い、各種特性について評価した。また、ポット用フィルムを用いない条件を比較例6とした。
【0077】
【0078】
[光透過率及び藻の抑制]
昼光色32Wの蛍光ランプ(FL-32SP、株式会社高儀製)を光源として、ランプから100mm離れた位置に照度計(MT-912、Urceri社製)を設置するともに、光源と照度計との間に実施例1~9及び比較例1~5のポット用フィルムを配置し、各ポット用フィルムの光透過率を測定した。即ち、各ポット用フィルムを配置して測定した場合の照度(具体的には、400~700nmの波長域の照度の積算値)を、ポット用フィルムなし(比較例6)で測定した場合の照度(具体的には、400~700nmの波長域の照度の積算値)で除して百分率表示したものを光透過率とした。
【0079】
また、阻害対象植物としての藻類を懸濁させた大塚ハウスSA処方溶液(pH6.8、EC2.4dS/m)にポット本体を浸け、充分に吸水させてポット表面に藻類を付着させる処理を施した。ポット本体として、平面寸法100mm×100mm且つ高さ75mmの直方体状のロックウール製ポットを用いた。実施例1~9及び比較例1~5のポット用フィルム(平面寸法120mm×120mm、第1開口部および第2開口部は備えない)がめくれ上がらないよう、かつ、外部からの光がポット本体内部に直接入射する隙間ができないように、ポット用フィルムをポット本体に固定して、栽培面を覆った状態とし、水耕栽培ポットを日光が照射される場所に33日間放置した。各条件における光透過率及び藻の発生抑制度の結果は、上記の表1に示す通りである。表1の藻の発生抑制度において、ポット表面に藻の発生が認められない場合を「〇」、ポット表面に藻の発生が認められた場合を「×」と判定した。
【0080】
表1に示すように、実施例1~9のポット用フィルムを用いた場合に、藻の発生を抑制することができた。即ち、光透過率が0.48%以下の条件において、藻の発生が抑制された。
【0081】
[温度変化]
ポット用フィルムを用いる条件と用いない条件とでポット本体の温度変化を測定した。ポット用フィルムとしては実施例2のものを用いた。温度計を栽培面から10mmほど内部に潜り込ませ、温度を測定した。日照が少なかった日の温度変化を
図7(A)に示し、日照が多かった日の温度変化を
図7(B)に示す。また、日照が多かった日における各条件での平均温度、最高温度及び最低温度を表2に示す。
【0082】
【0083】
いずれの日においても、フィルム有の条件の方がフィルム無の条件よりも最高温度が低く、最低温度が高かった。即ち、フィルム有の条件の方がフィルム無の条件よりも温度変化が小さかった。
【0084】
[水分量変化]
ポット用フィルムを用いる条件と用いない条件とでポット本体の水分量を測定した。ポット用フィルムとしては実施例2のものを用いた。ポット本体に充分に水を含ませ、この状態の水分量を100%とし、ポット本体の重量変化に基づいて水分量の変化を評価した。測定は、水耕栽培ポットを中苗用育苗箱の上に置き、さらにハウス内に静置する条件で行った。水分量の変化を表3に示す。
【0085】
【0086】
フィルム有の条件の方がフィルム無の条件よりも水分量が低下しにくかった。即ち、栽培面から水分が蒸発してポット本体から逃げてしまうことを抑制することができた。
【0087】
〈試験例2〉
試験例2では、以下の試験により、ポット用フィルムのめくれ上がりによる藻の発生抑制効果について検証した。
【0088】
水耕栽培ポットにおいて、ポット本体の栽培面を、表4、5に示すような実施例10及び参考例1のポット用フィルム2によって覆い、光透過率、色彩値及び藻の抑制について評価した。
【0089】
ここで、実施例10のポット用フィルムは、順に、第1白色系フィルムと、黒色系フィルムと、第2白色系フィルムと、が積層した3層構造の積層体からなるポット用フィルムであり、第2白色系フィルムが栽培面側となるようにした。また、参考例1のポット用フィルムは、順に、第1白色系フィルムと、黒色系フィルムとが積層した2層構造の積層体からなるポット用フィルムであり、黒色系フィルムが栽培面側となるようにした。
【0090】
なお、実施例1及び参考例1のポット用フィルム2としては、
図2に示すように、対象植物が通過する第1開口部21と、ポット本体3に液体を供給するための一対の第2開口部22、23と、スリット24と、同じように形成されているものを使用した。
【0091】
【0092】
【0093】
[光透過率]
昼光色32Wの蛍光ランプ(FL-32SP、株式会社高儀製)を光源として、ランプから100mm離れた位置に照度計(MT-912、Urceri社製)を設置するともに、光源と照度計との間に実施例10及び参考例1のポット用フィルムを配置し、各ポット用フィルムの光透過率を測定した。即ち、各ポット用フィルムを配置して測定した場合の照度(具体的には、400~700nmの波長域の照度の積算値)を、ポット用フィルムなし(比較例6)で測定した場合の照度(具体的には、400~700nmの波長域の照度の積算値)で除して百分率表示したものを光透過率とした。
【0094】
[色彩値]
色彩計(コニカミノルタジャパン株式会社製「COLOR READER CR-20」)を使用し、実施例1及び参考例1のポット用フィルムの第1白色系フィルム、黒色系フィルム、第2白色系フィルムのL値、a値、b値を測定した。
【0095】
[藻の発生抑制の評価]
阻害対象植物としての藻類を懸濁させた大塚ハウスSA処方溶液(pH6.8、EC2.4dS/m)にポット本体を浸け、充分に吸水させてポット表面に藻類を付着させる処理を施した。ポット本体として、平面寸法100mm×100mm且つ高さ75mmの直方体状のロックウール製ポットを用いた。実施例10及び参考例1のポット用フィルム2(平面寸法120mm×120mm)を、外部からの光がポット本体内部に直接入射する隙間ができないように、ポット本体に固定せずに栽培面に載せて栽培面を覆った状態とし、水耕栽培ポットを日光が照射される場所に1週間放置した。ポット用フィルムのめくれ上がりの有無及び藻の発生抑制度の結果は、上記の表4に示す通りである。表1の藻の発生抑制度において、ポット表面に藻の発生が認められない場合を「〇」、ポット表面に藻の発生が認められた場合を「×」と判定した。
【0096】
表4、5に示すように、実施例10のポット用フィルムを用いた場合に、藻の発生を抑制することができた。この結果は、実施例10において、ポット用フィルムをポット本体に固定しなくても、栽培面に載せておくことでめくれ上がりが発生せず、外部からの光がポット本体内部に直接入射する隙間が出来ることを防止できたためと考えられる。
【0097】
一方で、参考例1のポット用フィルムを用いた場合に、藻の発生を抑制することができなかった。この結果は、参考例1において、ポット用フィルムをポット本体に固定せずに栽培面に載せておくことのみでは、ポット用フィルムのめくれ上がりが発生してしまい、外部からの光がポット本体内部に直接入射する隙間が出来てしまったためと考えられる。
【0098】
図8は、藻の発生抑制の評価を行う前(
図8(a))、及び水耕栽培ポットを日光が照射される場所に1週間放置した後(
図8(b))の実施例10及び参考例1のポット用フィルムのめくれ上がりの状態を撮影した写真である。
図8(a)では、実施例10及び参考例1のポット用フィルムのいずれもめくれ上がりの状態は認められない。一方で、
図8(b)では、実施例10のポット用フィルムはめくれ上がりの状態は認められないものの、参考例1のポット用フィルムはめくれ上がり、露出した栽培面では藻の発生が認められた。
【0099】
なお、
図8(b)の状態からさらに3週間、実施例10のポット用フィルムを用いた水耕栽培ポットを日光が照射される場所に放置したが、実施例10のポット用フィルムはめくれ上がらずに、栽培面は露出することがなく、藻の発生を継続して防止できた。
【符号の説明】
【0100】
1 水耕栽培ポット
2 ポット用フィルム
21 第1開口部
22、23 第2開口部
3 ポット本体
31 栽培面
L1~L4 線状切断部